説明

加熱体

【課題】 AlN基板の熱伝導の良さを最大限に生かした発熱面積のより大きな加熱体とその製造方法を提供する。
【解決手段】AlN基板1と、上記AlN基板1の表面もしくは裏面に、上記AlN基板1の長手方向に沿って帯状に延びるように形成された発熱抵抗体3と、上記発熱抵抗体3を覆うように形成された保護膜とを有する加熱体であって、上記保護膜は、少なくとも発熱抵抗体をその土台の一部として覆う第1保護膜4aと、この第1保護膜4aを覆う第2保護膜4bとを有しており、上記AlN基板1の表面および裏面に形成される酸化膜2の厚みがいずれも上記AlN基板1の厚みの2%以内であり、上記発熱抵抗体3および上記第1保護膜4aがいずれもポーラスな膜に形成されており、上記第2保護膜4bは非ポーラスな膜に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電子写真プロセスにおいてトナーを記録紙に熱定着させるために、記録紙を加熱する場合等に使用される加熱体に関し、特に基板にAlNを用いた加熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電子写真プロセスにおいては、感光ドラム表面に形成されたトナー像を記録紙上に転写した後に、上記記録紙を加熱体によって加熱し、この加熱体の熱によってトナーを記録紙に定着させている。このような定着処理は、通常、この記録紙の裏面側に配置した加熱体と表面側に配置したローラとの間に上記記録紙を挟圧しつつ搬送することにより行われる。記録紙を高速搬送しつつ上記のトナー定着処理を効率的に行うためには、加熱体による加熱面積、すなわち、記録紙搬送方向についての加熱幅をできるだけ拡げることが有効である。
【0003】
図2は、上記の考え方にしたがって構成された加熱体の一例を示している(特許文献1参照)。なお、図2はこの加熱体の断面を表しており、この加熱体は図2の紙面垂直方向を長手方向とする略短冊板状の形態を有する。
【0004】
図2に示す加熱体Aは、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミック基板(以下、これをAlN基板という。)101の表面および裏面を覆う酸化膜102を有し、上記AlN基板101の裏面、図2においては下面に、上記酸化膜102を隔てて厚膜印刷された帯状の発熱抵抗体103と、それを覆うように厚膜印刷されたたとえばガラスを主成分とする保護膜104とを有している。また、上記AlN基板101表面、図2においては上面は、酸化膜102を隔てて加圧ローラRと対向させられる。トナーTが転写された記録紙Pを上記加圧ローラRと加熱体Aとの間で挟圧しつつ搬送することにより、上記加熱体Aの熱により、記録紙PにトナーTを定着させることができる。
【0005】
上記AlN基板101は熱伝導性が非常に良いので、上記のように発熱抵抗体103を基板裏面に設置し、上記AlN基板の表面側を加熱面とすると、発熱抵抗体103の形成幅が基板の幅より狭くとも、発熱抵抗体103が発した熱を上記AlN基板101の表面側の加熱面全域に拡げることができる。そのため、図2に示した加熱体Aは、発熱面の面積が拡張されたものとなる。
【0006】
他方、たとえば、加熱体の基板としてアルミナセラミック製の基板を用いる場合には、発熱抵抗体は加熱面となる基板表面側に形成されるが、基板の熱伝導性がそれほど良くないので、加熱体の表面側における記録紙が接触搬送される部分の熱が記録紙に奪い取られてその他の部分に比べて温度が低くなり、このような表面側とそれ以外の部分との温度差が原因で基板が割れてしまうという問題があったが、熱伝導性のよい上記AlN基板101においては、接触搬送される記録紙に熱を奪い取られた部分に速やかに熱が供給されるために、上記のような基板割れの問題は発生しない。
【0007】
しかしながら、AlN基板101には直接ガラス等を厚膜形成するとその過程においてガラスに発泡が生じ、孔欠陥が生じやすいという欠点があり、その欠点を補うためにAlN基板101の表面を酸化処理して10〜100μmの厚みをもつAl23を主成分とする酸化膜102を形成していた。上記酸化処理を基板101の片面のみに施すと、加熱体Aとしての使用時に基板101に反りが生じるため、基板101の両面に酸化膜102が形成されていた。
【0008】
上記酸化膜102によって、上記AlN基板101は保護膜104の形成時の発泡による問題を防止することができる。しかし、上記酸化膜102の主成分であるAl23の層は熱伝導率が約20W/m・Kであるのに対してAlN基板101の熱伝導率は95〜200W/m・Kであり、その差は大きい。そのため、酸化膜102が厚くなると、AlN基板101を用いる理由である高い熱伝導性が失われるという問題があった。
【0009】
例えば、上記AlN基板101の厚みが0.6mm程度であるとき、その基板の表裏面に0.1mmの厚みのAl23層を形成した場合と形成しなかった場合における裏面において発熱した熱の表面に伝わる面積を較べると、Al23層を形成した場合は形成しなかった場合の7割程度でしかなくなる。この面積の削減量は、そのまま加熱体Aの実質発熱面積が狭くなることを意味し、同じ定着効果を得るためには記録紙の搬送スピードを遅くする必要が生じる。これでは定着速度を高め、ひいては電子写真プロセスの処理速度を所定以上に高めることができない。
【0010】
【特許文献1】特開平11−273836
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は以上の事情のもとで考え出されたものであって、AlN基板の熱伝導の良さを最大限に生かした発熱面積のより大きな加熱体とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の発明者は、 従来のAlN基板を用いた加熱体においては酸化膜が発熱面積を実質的に削減し、これが加熱体の熱効率を低下させていることに着目し、酸化膜を極力形成せずに保護膜形成時の発泡に起因した問題を補う方法を種々検討した結果、本願発明に到達した。
【0013】
すなわち、本願発明の第1の側面により提供される加熱体は、AlN基板と、上記AlN基板の表面もしくは裏面に、上記AlN基板の長手方向に沿って帯状に延びるように形成された発熱抵抗体と、上記発熱抵抗体を覆うように形成された保護膜とを有する加熱体であって、上記保護膜は、少なくとも発熱抵抗体をその土台の一部として覆う第1保護膜と、この第1保護膜を覆う第2保護膜とを有しており、上記AlN基板の表面および裏面に形成される酸化膜の厚みがいずれも上記AlN基板の厚みの2%以内であり、上記発熱抵抗体および上記第1保護膜がいずれもポーラスな膜に形成されており、上記第2保護膜は非ポーラスな膜に形成されていることを特徴とする。なお、上記発熱抵抗体は、上記AlN基板に対して直接的に形成されている。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記発熱抵抗体は、上記AlN基板の裏面に形成されており、上記AlN基板の表面が加熱面として機能させられる。
【0015】
好ましい実施の形態においては、Pdの重量比率が15%以上のAg・Pd抵抗体であり、上記第1保護層はガラス軟化点が700℃以上であるガラス保護膜によって形成されている。上記第1保護膜がポーラスな膜になりやすい結晶化ガラスまたは半結晶化ガラスであってもよい。また、好ましくは上記AlN基板の厚みが0.5〜0.7mmであり、上記AlN基板の上記酸化膜の厚みが1.0〜10μm以内である。
【0016】
本願発明の第1の側面に係る加熱体は、AlN基板を覆う酸化膜が従来に較べて大幅に薄くなっている。この酸化膜は、AlN基板に対して意識的に形成したものではなく、AlN基板に対して発熱抵抗体を厚膜形成する際の熱の影響で必然的に形成されるのであるが、焼成温度を所定の範囲内とすることにより、上記のようにして必然的に形成される酸化膜であっても、その厚みを所定以下にすることができる。しかも、この加熱体においては、AlN基板とこれに対して形成される発熱抵抗体との間には基本的に酸化膜は介在しない。したがって、発熱抵抗体をAlN基板の裏面側に形成し、AlN基板の表面を加熱面として機能させる場合についていえば、発熱抵抗体からAlN基板への熱伝達がきわめて良好になされ、かつ、発熱面から記録紙への熱伝達もまた、良好になされる。このため、従来の加熱体では酸化膜によって十分に発揮されなかったAlN基板本来の高い熱伝導性が、本願発明による加熱体では発揮される。
【0017】
本願発明の第2の側面により提供される加熱体の製造方法は、AlN基板の表面もしくは裏面にこのAlN基板の長手方向に沿って帯状に延びる発熱抵抗体を形成するステップと、上記発熱抵抗体を覆うように第1保護膜を形成するステップと、上記第1保護膜を覆うように第2保護膜を形成するステップとを含む加熱体の製造方法であって、上記発熱抵抗体を形成するステップは、抵抗体成分に対するPdの重量比率が15%以上のAg・Pd抵抗体ペーストを印刷するステップ、および、上記印刷されたペーストを700〜850℃で焼成するステップを含み、上記第1保護膜を形成するステップは、ガラス軟化点が700℃以上であるガラスペーストを上記発熱抵抗体を覆うように印刷するステップ、および、上記印刷されたペーストを800〜850℃で焼成するステップを含むことを特徴とする。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記第1保護膜を形成するステップにおいて、ガラスペーストとして結晶化ガラスまたは半結晶化ガラスを主成分とするペーストを使用することが考えられる。
【0019】
本願発明の第2の側面に係る加熱体の製造方法は、AlN基板に酸化膜を極力形成せずに加熱体を製造する方法である。従来、AlN基板に酸化膜が必要であったのは、AlN基板に発熱抵抗体およびガラス保護膜を厚膜印刷する際に、AlN基板とガラス成分等の反応によって発泡することを防ぐためであった。この問題を本願発明の第2の側面に係る加熱体の製造方法においては、ガラス成分とAlN基板との反応をできるだけ抑えることと、発熱抵抗体および第1保護膜をポーラスな膜に形成することで、発生したガスを速やかに抜くこととで解決している。従って、酸化膜を形成する必要はない。
【0020】
ただし、空気中で厚膜形成するために、AlN基板表面は幾分酸化されてしまう。たとえば、700〜850℃での焼成であれば1〜8μmの酸化膜が形成される。しかし、この厚みは従来の酸化膜の厚みに較べれば10分の1程度であり、AlN基板の熱伝導性を大幅に下げることはない。
【0021】
上記発熱抵抗体はAgとPdの重量比率により膜表面の状態が変化し、Agが90%以上でPdが10%以下の場合、Agの膜焼結が進む。この状態では、AlN基板と発熱抵抗体中のガラス成分が反応して発生するガスが抜ける前に焼結が進むため、膜のふくれや発泡につながる。このため、AgとPdの重量比率は少なくともPdの15%以上、望ましくはPd30%以上が良い。
【0022】
上記第1保護膜はAlN基板との反応を出来る限り抑制するために、流動性を極力抑える必要がある。そのため、ガラス軟化点が厚膜印刷時の焼成温度800〜850℃に近い、具体的には700℃以上であるガラスを用いる。さらに、ポーラスな膜になりやすい結晶化ガラス又は半結晶化ガラスを用いればより効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について図1を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1に示すように、この加熱体Aは、AlN基板1の裏面側に形成された発熱抵抗体3と、この発熱抵抗体3を覆うように形成された第1保護膜4aと、この第1保護膜4aをさらに覆うように形成された第2保護膜4bとを有する。なお、図1に示されているように、AlN基板1の裏面において、発熱抵抗体3が形成された領域以外の領域、および、AlN基板1の表面には、所定厚みの酸化膜(Al23)2が形成されているが、後記するように、この酸化膜2は、意識的に形成したものではなく、発熱抵抗体3の形成時に必然的に形成されるものである。
【0025】
AlN基板1は、窒化アルミニウム・セラミック製の基板であり、たとえば厚み0.5〜0.7mmであり、7〜14mmの幅を有する図1の紙面直交方向に所望長さを有する短冊板状の外形を有する。このAlN基板1は、たとえば、95〜200W/m・Kといったきわめて良好な熱伝導性能をもっている。
【0026】
発熱抵抗体3は、厚膜印刷法によってAlN基板1の長手方向に沿って帯状に形成されており、比較的大電流を流すことによって大きなジュール熱を発する必要から、Ag・Pdを主成分とする発熱抵抗体3としてある。なお、このAg・Pd抵抗体は、Pdの重量比率が15%以上としてある。その理由は、製造方法の説明においても後述するが、この発熱抵抗体3の焼成時に抵抗体ペーストのガラス成分とAlN基板1の成分との反応によって発生するガスを好適に外部に逃がし、ポーラスな性状をもった発熱抵抗体3を形成するためである。なお、この発熱抵抗体3の厚みは、必要な発生熱量に応じて定めればよいが、たとえば7〜23μmとされる。
【0027】
酸化膜2は、上記のように発熱抵抗体3を形成する際の熱によって必然的に形成されるが、その厚みは、発熱抵抗体3の焼成温度を通常の焼成温度よりも低い温度に制御することにより、1.0〜10μmといった、きわめて薄状のものとすることができる。なお、このような酸化膜2の厚みは、AlN基板の厚みの2%以内とするべきである。
【0028】
第1保護膜4aは、結晶化ガラス、または半結晶化ガラスを主成分とするガラスペーストを用いて厚膜形成されたものであり、ポーラスな性状をもっているとともに、たとえば、20〜40μmの厚みに形成される。
【0029】
第2保護膜4bは、非晶質ガラスを主成分とするガラスペースト用いて厚膜形成されたものであり、なめらかな表面をもっている。この第2保護膜4bは、たとえば、30〜50μmの厚みに形成される。
【0030】
次に、上記加熱体Aの製造方法の一例について、説明する。
【0031】
第1のステップとして、AlN基板1の裏面側に、発熱抵抗体3を形成する。このステップは、Ag・Pdからなる抵抗体成分を含むとともに、この抵抗体成分中、Pdの重量比率を15%以上とした抵抗体ペーストを用いて印刷し、これを700〜850℃で焼成する。Pdの重量比率を上記のように設定したことにより、焼成時にAgの膜焼結を抑制しつつ焼成が進行するため、抵抗体ペーストのガラス成分とAlN基板1の成分との反応によって生じるガスを好適に逃がし、焼成された発熱抵抗体3中に発泡に起因した孔欠陥が生じることを防止することができる。同時に、焼成後の発熱抵抗体3がポーラスな性状をもつことができるようになる。また、この発熱抵抗体3の焼成温度(700〜850℃)は、通常の焼成温度(たとえば1200℃)よりも低い温度であるため、AlN基板1における発熱抵抗体3が形成されない領域に必然的に形成される酸化膜2の厚みを1.0〜10μmといったきわめて薄状に抑制することができる。
【0032】
第2のステップとして、発熱抵抗体3を覆うように、第1保護膜4aを形成する。この第1保護膜4aは、ガラスペーストを用いて印刷をするとともに、これを焼成することによって形成するが、使用するガラスは、そのガラス軟化点が焼成温度に比較的近いものを使用する。具体的には、使用するガラスは、そのガラス軟化点が通常の焼成温度である800〜850℃に近い、700℃以上のものを使用する。そうして、より好ましくは、使用するガラスとして、結晶化ガラスまたは半結晶化ガラスが選択できる。このようにすることにより、焼成時におけるガラスの流動性が抑制され、ガラス成分とAlN基板1の成分の反応を極力抑制し、ガス発泡に起因した孔欠陥の発生を抑制することができるし、また、この第1保護膜4aにポーラスな性状を与えることができる。
【0033】
第3のステップとして、上記の第1保護膜4aを覆うようにして、第2保護膜4bを形成する。この第2保護膜4bは、好ましくは、非晶質ガラスを主成分としたガラスペーストを用いて印刷するとともに、これを焼成することによって形成される。非晶質ガラスを用いることにより、この第2保護膜4bはポーラスな性状をもつことはなく、また、表面は比較的滑らかとなる。また、第1保護膜4aがポーラスな膜としてあることから、第1保護膜4aと第2保護膜4bとの間の密着性が高まり、外的な衝撃に起因して第2保護膜4bが剥がれるといったことは回避される。
【0034】
上記の方法によって製造される加熱体Aの作用効果について説明する。
【0035】
発熱抵抗体3の成分および焼成温度を上記のように選択しているので、焼成時にAlN基板成分との反応によって生じるガスをうまく逃がすことができる。したがって、従来のように発熱抵抗体の形成前に意識的にAlN基板表面に酸化膜を形成する必要がなくなり、発熱抵抗体3は、AlN基板1の表面に直接的に形成される。しかも、焼成時に必然的に形成される酸化膜2の厚みは、上記したように非常に薄状である。その結果、発熱抵抗体3によって発生させられる熱がまずAlN基板1に直接的に伝達され、AlN基板1の表面全域を加熱面として機能されることに問題はなくなる。そして、AlN基板1の表面側に形成される酸化膜2の厚みも非常に薄いので、この加熱体3を電子写真プロセスのトナー定着用熱源として用いる場合においても、発熱面から記録紙への熱伝達がきわめて良好に行われる。
【0036】
AlN基板1の裏面側に形成される発熱抵抗体3およびこれを覆う第1保護膜4aは、いずれもポーラスな膜となる。したがって、この第1保護膜4aが良好な断熱材として機能し、発熱抵抗体3が発する熱が無駄にAlN基板1の裏面側から逃げて熱効率が悪化するといったことも、好適に回避される。
【0037】
そうして、発熱抵抗体3および第1保護膜4aには、発泡による孔欠陥が生じるといった問題も同時に解消されている。
【0038】
さらに、第2保護膜4bの表面性状は滑らかであるので、かりに、この加熱体Aを裏面側を加熱面として用いる場合においても、加熱対象との円滑な摺動性を確保することができる。
【0039】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本願発明の範囲に包摂される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願発明に係る加熱体の一実施例を表した断面図である。
【図2】従来の加熱体の一実施例を表した断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 AlN基板
2 酸化膜
3 発熱抵抗体
4 保護膜
4a 第1保護膜
A 加熱体
P 記録紙
T トナー
R 加圧用ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlN基板と、上記AlN基板の表面もしくは裏面に、上記AlN基板の長手方向に沿って帯状に延びるように形成された発熱抵抗体と、上記発熱抵抗体を覆うように形成された保護膜とを有する加熱体であって、
上記保護膜は、少なくとも上記発熱抵抗体をその土台の一部として覆う第1保護膜と、この第1保護膜を覆う第2保護膜とを有しており、
上記AlN基板の表面および裏面に形成される酸化膜の厚みがいずれも上記AlN基板の厚みの2%以内であり、上記発熱抵抗体および上記第1保護膜がいずれもポーラスな膜に形成されており、上記第2保護膜は非ポーラスな膜に形成されていることを特徴とする、加熱体。
【請求項2】
上記発熱抵抗体は、上記AlN基板の裏面に直接的に形成されており、上記AlN基板の表面が加熱面として機能させられる、請求項1に記載の加熱体。
【請求項3】
上記発熱抵抗体は、上記Pdの重量比率が15%以上のAg・Pd抵抗体である、請求項1または2に記載の加熱体。
【請求項4】
上記第1保護層はガラス軟化点が700℃以上であるガラス保護膜によって形成されている、請求項3に記載の加熱体。
【請求項5】
上記第1保護膜は、結晶化ガラスまたは半結晶化ガラスによって形成されている、請求項3に記載の加熱体。
【請求項6】
上記AlN基板の厚みが0.5〜0.7mmであり、上記AlN基板の上記酸化膜の厚みが1.0〜10μmである、請求項1ないし5のいずれかに記載の加熱体。
【請求項7】
AlN基板の表面もしくは裏面にこのAlN基板の長手方向に沿って帯状に延びる発熱抵抗体を形成するステップと、上記発熱抵抗体を覆うように第1保護膜を形成するステップと、上記第1保護膜を覆うように第2保護膜を形成するステップとを含む加熱体の製造方法であって、
上記発熱抵抗体を形成するステップは、
抵抗体成分に対するPdの重量比率が15%以上のAg・Pd抵抗体ペーストを印刷するステップ、および、上記印刷されたペーストを700〜850℃で焼成するステップを含み、
上記第1保護膜を形成するステップは、
ガラス軟化点が700℃以上であるガラスペーストを上記発熱抵抗体を覆うように印刷するステップ、および、上記印刷されたペーストを800〜850℃で焼成するステップを含むことを特徴とする、加熱体の製造方法。
【請求項8】
上記第1保護膜を形成するステップにおいて、ガラスペーストとして結晶化ガラスまたは半結晶化ガラスを主成分とするペーストを使用する、請求項6に記載の加熱体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−351366(P2006−351366A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176324(P2005−176324)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】