説明

加熱熱源、それを用いた食品の加熱方法及び調理済み再加熱還元食品

【課題】 非常食の1食単位毎に、安全な水と、保水還元に要する熱源を設けた、調理済み再加熱還元食品の再加熱に適した、加熱熱源、それを用いた食品の再加熱方法及び再加熱還元食品を提供する。
【解決手段】 耐熱性フィルムからなる扁平な加熱用の袋体(1)と、反応水を吸収して発熱反応が起こる発熱材を封入した透水性袋(42)とを含んで構成され、前記加熱用袋体(1)の上端部には、開口可能な封止チャック(12)と、該封止チャック(12)の下側に位置する通気孔(13)とを設けてなり、前記加熱用袋体(1)の下端部は、中央部において山折りされて山折り部(15)が形成され、該山折り部(15)を平らにして前記袋体(1)の底面部(14)を形成した場合、前記透水性袋(42)は、前記底面部(14)に水平に配設可能な大きさである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存可能な状態に脱水加工した調理済み食品を、非常時に、再加熱して調理後の加熱状態に還元しうるようにした非常用食品の再加熱に適した、加熱熱源、それを用いた食品の加熱方法及び調理済み再加熱還元食品である。
【背景技術】
【0002】
従来の非常用食品としては、長期保存を可能とする保管包装を解くと、直ちに食しうるように、調理を済ませてある缶詰と、予め調理は済ませてあるが、再加熱することにより、食しやすくなるようにしたレトルト食品と、予め調理した後に脱水加工し、食するときに加水加熱して、調理後の状態に近いものに復元するようにしたインスタント食品と、加熱処理した後、脱水乾燥して、食するとき加水還元するか、そのままで食しうる乾燥食品等がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、缶詰は、肉や魚等の副食の保存には適するが、嵩の多い米飯等の保存には、乾燥食品とする方が適している。
【0004】
通常、アルミニウム箔や合成樹脂フィルムの袋体に密封収納されているレトルト食品は、完全調理済みの食品であり、摂取に際し、密封状態のまま再加熱される。しかし、完全調理済みであるから、水分が多く、長期保存に難があるとともに、1食当たりの重量が多くなって、再加熱の熱量も多く必要となり、そのため、長期保存、緊急輸送、加熱熱源の確保等の点から、非常食用には適しない。
【0005】
インスタント食品中の麺類は、100℃近くに加熱された多量の湯を必要とし、非常時に、このような高温の湯を多量に確保することは、必ずしも容易ではない。
【0006】
乾燥食品は、乾燥状態のままで摂取することは可能であるが、より食べやすくするために、短時間に食するのに適した保水状態に還元するには、安全な水と加熱用熱源が必要となる。
【0007】
地震や台風等の自然災害時の非常事態の下においては、電気やガス等の熱源と、断水による安全な水の確保とが不可能となることが想定され、かつ避難先においても、熱源と安全な水の確保は保証されない。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑み、非常食の1食単位毎に、安全な水と、保水還元に要する熱源を設けた、調理済み再加熱還元食品の再加熱に適した、加熱熱源、それを用いた食品の加熱方法及び調理済み再加熱還元食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、耐熱性フィルムからなる扁平な加熱用の袋体と、反応水を吸収して発熱反応が起こる発熱材を封入した透水性袋とを含んで構成され、前記加熱用袋体の上端部には、開口可能な封止チャックと、該封止チャックの下側に位置する通気孔とを設けてなり、前記加熱用袋体の下端部は、中央部において山折りされて山折り部が形成され、該山折り部を平らにして前記袋体の底面部を形成した場合、前記透水性袋は、前記底面部に水平に配設可能な大きさであることを特徴とする加熱熱源である。
【0010】
また、本発明は、耐熱性フィルムからなる扁平な加熱用の袋体と、反応水を吸収して発熱反応が起こる発熱材を封入した透水性袋と、前記反応水を封入した水密性の反応水袋とを含んで構成され、前記加熱用袋体の上端部には、開口可能な封止チャックと、該封止チャックの下側に位置する通気孔とを設けてなり、前記加熱用袋体の下端部は、中央部において山折りされて山折り部が形成され、該山折り部を平らにして前記袋体の底面部を形成した場合、前記透水性袋は、前記底面部に水平に配設可能な大きさであることを特徴とする加熱熱源である。
【0011】
前記透水性袋は、水密性袋内に封入されていることが好ましい。
【0012】
このような加熱熱源を用いれば、加熱用袋体の封止チャックを開く工程、底面部の山折り部を平らにして平らな底面部を形成する工程、該底面部の上に透水性袋を載置する工程、封止チャックの開口部から反応水を注水する工程、封止チャックの開口部から加熱すべき食品を挿入する工程、封止チャックを閉じる工程、加熱用袋体の底面部を水平に維持することにより、上方に設けた通気孔から水蒸気の一部を放出しつつ前記食品の加熱を行う工程の各工程を行うことにより食品を加熱することができる。
【0013】
また、本発明によれば、発熱体を収納する袋は扁平ではあるが、使用時には発熱材を封入した透水性袋が、加熱用袋体の水平で平らな内底に載置可能となる。これにより、使用時には、水平で平らな底に溜まる反応水に満遍なく均一に浸ることができので、均一な発熱と、均一な高温水蒸気の発生が得られ、食品を均一に加熱させることができる。
【0014】
また、前記反応水を封入した水密性の反応水袋とを含んで構成されれば、災害時において、別途に調理器具、調理の機材等を、何ら必要とすることなく、食品を加熱することができる。
【0015】
ここで、上記発熱材として、アルミニウム粉末と生石灰の混合物を使用することが好ましい。これにより、発生する熱量に比して、重量と嵩の少ない発熱材料を得ることができるとともに、発熱反応においても、発生する加熱水蒸気は、無味、無臭で、有害物質は一切含まれていないため、安全である。
【0016】
また、上記食品としては、気密性フィルム製の内袋に調理済み脱水食品を封入したものが好ましい。また、この場合、発熱材は、1食分の脱水乾燥した調理済み食品を含水還元させる分量を、1食分の他の材料とともに保存包装するのが好ましい。
【0017】
これにより、調理済みの食品を脱水乾燥して長期保存しうるとともに、その脱水乾燥した調理済み食品を、緊急時に食するに際、速やかに食しうる状態に含水還元するための、水、熱、用具のすべてを、適切な量をもって用意しておくことができ、いつ如何なる状態においても、容易かつ簡単に、加熱調理された暖かい食品を得ることができる。また、多量の保存食品を輸送したり、倉庫等に保管しておいても、湿気や冠水等によって、火災等の事故を発生する恐れはなくなる。
【0018】
このような調理済み脱水食品としては、たとえば、(a)米を炊いた後脱水した乾燥飯、(b)米を炊いた後脱水した乾燥飯と脱水した乾燥具を混ぜ合わせたもの、(c)米を炊いた後脱水した乾燥飯と、脱水した乾燥具を、別々のフィルム製袋体に密閉収容したものが例示される。
【0019】
このような調理済み脱水食品は、密閉容器に収容され、前記調理済み脱水食品を脱水前の状態に還元するのに当量する還元用水に調味料を添加してなるものであってもよい。
【0020】
また、このような調味料は別途密封容器に収容した脱水固形調味料とし、前記調理済み脱水食品と還元するに当量する還元用水を混ぜるに際して、その還元用水に、前記脱水固形調味料を溶解添加するようにすることもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、非常食の1食単位毎に、安全な水と、保水還元に要する熱源を設けた、調理済み再加熱還元食品の再加熱に適した、加熱熱源、それを用いた食品の加熱方法及び再加熱還元食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1〜図3は、本発明の一実施形態を示す。
【0023】
図1は、本発明に係る調理済み再加熱還元食品の1食分を、保存用包装(図示略)から取り出した状態を示す斜視図である。図2は、図1における再加熱還元食品を加水加熱して、調理直後とほぼ同様の暖かい食品に還元する状態の斜視図、図3は、図2における、III−III線縦断面図である。
【0024】
加熱用袋体としての再加熱用袋体(1)の中に、調理済み脱水食品袋(2)、還元用水袋(3)、発熱材袋(4)および反応水袋(5)を密封して構成されている。
【0025】
再加熱用袋体(1)は、耐熱性フィルムからなる扁平のもので、その上端開口部(11)には封止チャック(12)が、その下方には、シール(13’)を貼付した通気孔(13)が設けられており、かつ底面部(14)は、中央部において山折りされて山折り部(15)が形成されている。
【0026】
調理済み脱水食品袋(2)は、気密性フィルム製の内袋(21)の中に、調理済み脱水食品(22)を収容して密封したものである。
【0027】
還元用水袋(3)は、水密性内袋(31)の中に、上記脱水食品を脱水前の状態に還元するのに要する量の還元用水(32)を収容して密封したものである。
【0028】
発熱材袋(4)は、アルミニウム粉末と生石灰を混ぜてなる発熱材(41)を封入した透水性内袋(42)を、水密性内袋(43)の中に収容して密封したものである。
【0029】
反応水袋(5)は、上記発熱材(41)の発熱反応に要する量の反応水(51)を水密性内袋(52)の中に密封したものである。
【0030】
調理済み脱水食品(2)を再加熱するに際しては、図2、図3に示すように、再加熱用袋体(1)の封止チャック(12)を開くとともに、底面部(14)の山折り部(15)を平らにして、その上に、水密性内袋(43)から取り出した透水性内袋(42)を載置し、ついで、反応水袋(5)の水密性内袋(52)を破って、その中の反応水(51)を再加熱用袋体(1)の上端開口部よりそそぎ込こむ。
【0031】
ついで、調理済み脱水食品袋(2)の中へ、還元用水袋(3)内の還元用水を注入することによって準備した調理済み脱水食品(22)を、調理済み脱水食品袋(2)のまま、速やかに再加熱用袋体(1)の中に挿入し、その上端部の封止チャック(12)を閉じる。
【0032】
再加熱用袋体(1)の水平で平らとなった底面部(14)上に載置された発熱材(41)が封入された透水性内袋(42)は水平となるので、その中の発熱材(41)は、再加熱用袋体(1)の平らな底に溜まっている反応水(51)に満遍なく均一に浸る。
【0033】
そのため、発熱材(41)は、表面全体から均一に反応水(51)を吸収し、生石灰は発熱を開始する。その反応熱により、アルミニウム粉末が高温の反応水と反応し、さらに発熱して高温となる。
【0034】
高温になった反応水(51)の一部は、水蒸気となって、再加熱用袋体(1)の中に充満するとともに、その上方に設けた通気孔(13)のシール(13’)を剥がし、水蒸気の一部が抜け出て、再加熱用袋体(1)の内圧は調整される。
【0035】
再加熱用袋体(1)の中の加水された調理済み脱水食品(22)は、内袋(21)の外側から加熱され、例えば調理済み脱水食品(22)が、乾燥飯である場合には、約20分程で適度に含水され、炊いた直後の米と同様の堅さに還元される。
【0036】
なお、調理済み脱水食品(22)に対する還元用水(32)の当量は、還元したときの含水量に基づいて決められる。
【0037】
還元用水(32)には、調理済み脱水食品(22)の種類によって、塩、醤油、出汁、化学調味料等の調味料を適宜添加しておくこともある。
【0038】
なお、調味料は、乾燥固化したものを、別途密封包装しておき、調理済み脱水食品(22)に、還元用水(32)を混ぜる時に、還元用水(32)に溶解させて添加することもある。
【0039】
さらに、調理済み脱水食品(22)が、五目ご飯などの具(23)を含む場合には、具(23)を別途脱水乾燥させてから、乾燥飯と混ぜて、内袋(21)で密封包装するか、もしくは、脱水乾燥した具(23)のみを別途密封包装して、乾燥飯を含水還元するときに混ぜて使用することもある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る調理済み再加熱還元食品の1食分を、図示を省略した保存用包装から取り出した状態を示す斜視図である。
【図2】図1の再加熱還元食品を、加水加熱して、調理直後とほぼ同様の暖かい食品に還元する状態の斜視図である。
【図3】図2における、III−III線縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
(1)再加熱用袋体(加熱用袋体)
(11)開口部
(12)封止チャック
(13)通気孔
(13’)シール
(14)底面部
(15)山折り部
(2)調理済み脱水食品袋
(21)内袋
(22)調理済み脱水食品
(23)具
(3)還元用水袋
(31)水密性内袋
(32)還元用水
(4)発熱材袋
(41)発熱材
(42)透水性内袋
(43)水密性内袋
(5)反応水袋
(51)反応水
(52)水密性内袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性フィルムからなる扁平な加熱用の袋体と、反応水を吸収して発熱反応が起こる発熱材を封入した透水性袋とを含んで構成され、
前記加熱用袋体の上端部には、開口可能な封止チャックと、該封止チャックの下側に位置する通気孔とを設けてなり、
前記加熱用袋体の下端部は、中央部において山折りされて山折り部が形成され、
該山折り部を平らにして前記袋体の底面部を形成した場合、前記透水性袋は、前記底面部に水平に配設可能な大きさであることを特徴とする加熱熱源。
【請求項2】
耐熱性フィルムからなる扁平な加熱用の袋体と、反応水を吸収して発熱反応が起こる発熱材を封入した透水性袋、前記反応水を封入した水密性の反応水袋とを含んで構成され、
前記加熱用袋体の上端部には、開口可能な封止チャックと、該封止チャックの下側に位置する通気孔とを設けてなり、
前記加熱用袋体の下端部は、中央部において山折りされて山折り部が形成され、
該山折り部を平らにして前記袋体の底面部を形成した場合、前記透水性袋は、前記底面部に水平に配設可能な大きさであることを特徴とする加熱熱源。
【請求項3】
前記透水性袋は、水密性袋内に封入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱熱源。
【請求項4】
上記発熱材は、アルミニウム粉末と生石灰の混合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の加熱熱源。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱熱源を用いた食品の加熱方法であって、
加熱用袋体の封止チャックを開く工程、
底面部の山折り部を平らにして平らな底面部を形成する工程、
該底面部の上に透水性袋を載置する工程、
封止チャックの開口部から反応水を注水する工程、
封止チャックの開口部から加熱すべき食品を挿入する工程、
封止チャックを閉じる工程、
加熱用袋体の底面部を水平に維持することにより、上方に設けた通気孔から水蒸気の一部を放出しつつ前記食品の加熱を行う工程
の各工程を行うことを特徴とする食品の加熱方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱熱源と、
気密性フィルム製の内袋に調理済み脱水食品を封入した脱水食品袋とを含んで構成されることを特徴とする調理済み再加熱還元食品。
【請求項7】
前記発熱材は、1食分の前記調理済み脱水食品を含水還元させる分量を、1食分の調理済み脱水食品とともに保存包装されていることを特徴とする請求項6に記載の再加熱還元食品。
【請求項8】
前記調理済み脱水食品は、(a)米を炊いた後脱水した乾燥飯、(b)米を炊いた後脱水した乾燥飯と脱水した乾燥具を混ぜ合わせたもの、(c)米を炊いた後脱水した乾燥飯と、脱水した乾燥具を、別々のフィルム製袋体に密閉収容したもののいずれかであることを特徴とする請求項6又は7に記載の再加熱還元食品。
【請求項9】
前記調理済み脱水食品は、密閉容器に収容され、前記調理済み脱水食品を脱水前の状態に還元するのに当量する還元用水に調味料を添加してなるものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の再加熱還元食品。
【請求項10】
前記調味料は別途密封容器に収容した脱水固形調味料とし、前記調理済み脱水食品と還元するに当量する還元用水を混ぜるに際して、その還元用水に、前記脱水固形調味料を溶解添加するようにしてなる、請求項6〜9のいずれかに記載の再加熱還元食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−23363(P2008−23363A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243543(P2007−243543)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【分割の表示】特願2000−116982(P2000−116982)の分割
【原出願日】平成12年4月18日(2000.4.18)
【出願人】(500067606)株式会社協同 (12)
【Fターム(参考)】