加熱調理器
【課題】発火状態に伴う炎の存在を検知し、燃焼状態の検知を迅速に行える加熱調理器を得る。
【解決手段】電気加熱手段23,24を備えた調理庫20内の発火を検知する火炎センサ157と、調理庫20内で発生する煙等を調理庫外へ排出させる空気流を発生する送風手段136及び触媒加熱ヒータ86Aを備えた除煙手段と、火炎センサ157より入力する信号に基づき調理庫20内で電気加熱手段23、24の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段150と、電気加熱手段および前記送風手段の双方を通電制御する制御手段200を具備しており、この制御手段は、発火検知手段150からの信号に基づき調理庫20内で火炎が発生していることを検知すると、送風手段136への通電を遮断又は抑制する。
【解決手段】電気加熱手段23,24を備えた調理庫20内の発火を検知する火炎センサ157と、調理庫20内で発生する煙等を調理庫外へ排出させる空気流を発生する送風手段136及び触媒加熱ヒータ86Aを備えた除煙手段と、火炎センサ157より入力する信号に基づき調理庫20内で電気加熱手段23、24の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段150と、電気加熱手段および前記送風手段の双方を通電制御する制御手段200を具備しており、この制御手段は、発火検知手段150からの信号に基づき調理庫20内で火炎が発生していることを検知すると、送風手段136への通電を遮断又は抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器、特に、電気ヒータ等の加熱源で加熱されるグリル室(以下、「調理庫」という)を有する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
システムキッチン家具や流し台に組み込まれて使用するタイプ(ビルトイン式又は組み込み式と呼ばれる)や、キッチンキャビネット等の上にセットされて使用されるタイプ(据え置き式と呼ばれる)の加熱調理器には、被加熱物を加熱するためグリル加熱室とも呼ばれている調理庫(電気ヒータ等の加熱手段が設置されている)を有している。
【0003】
従来のこの種の加熱調理器では、油脂分の多い魚や肉類などを加熱調理した場合、それら被加熱物から出た油脂類が電気加熱手段で加熱されて調理中に突然発火することがある。
そこでこのような問題を解決するものとして、調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、前記調理庫内の温度を検知する温度センサと、前記調理庫内で発生する煙等を調理庫外へ除去する除煙手段と、前記温度センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で発火が発生していることを検知する発火検知手段と、発火報知を行う報知手段と、前記加熱手段および前記除煙手段を通電制御し、かつ前記発火検知手段より入力する信号に基づき前記調理庫内で発火が発生していることを検知すると前記加熱手段および前記除煙手段への通電を抑制し、所定時間経過した後に前記報知手段を駆動制御する制御手段を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3687645号(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、調理庫内で発火を検知する手段が温度センサであったため、発火時点を迅速に検知できないという問題があった。例えば誘導加熱源と電気輻射式加熱源を備えた複合式加熱調理器の調理庫は、内側の有効横幅寸法が36cm以上、奥行き29cm以上、高さも10cm以上のものがあり、このような大きな空間容積の中の空気の温度の変化を検知して発火検知するため、発火時点から相当時間が経過し、火炎が広がり燃焼規模が大きくなってから発火検知することになるという問題があった。そのため発火に対応した制御動作が遅れ、有効な制御ができないという課題があった。またこの特許文献1に開示された発明では、調理庫内に電気加熱手段を1つ設け、除煙手段に1つのファンを設けたものであるため、調理庫内と調理庫外の2箇所で個別同時的に調理する複合式調理器についての適切な発火検知制御については提案されていなかった。
また最近は電磁誘導加熱源と併用できる複合型加熱調理器(IHクッキングヒータと呼ばれることもある)が普及拡大しており、特に台所の厨房家具に組み込まれる組み込み式(ビルトイン式)では、電気輻射式加熱源のみ備えた調理器に比較して高級感のある製品であるため、加熱室の発火を迅速に検知できることに期待が大きい。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑み、発火検知を迅速に行えるようにする加熱調理器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、前記電気加熱手段および前記送風手段を通電制御し、かつ前記発火検知手段からの信号に基づき、前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記送風手段への通電を遮断又は抑制する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る加熱調理器は、調理庫内の被加熱物を加熱する第1の電気加熱手段と、
前記調理庫外で被加熱物を加熱する第2の電気加熱手段と、前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、前記第2の電気加熱手段の通電中、その第2の電気加熱手段を冷却するため運転される第2の送風手段と、前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記第1の電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、前記第1、第2の電気加熱手段および前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、を備え、
この通電制御手段は、前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の双方が同時に通電されて加熱調理されている状態において前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、かつ第2の送風手段への通電条件は変更しないことを特徴とする。
【0009】
さらに本発明に係る加熱調理器は、上面がトップテーブルで覆われ、内部に調理庫を備えた本体と、前記調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、前記トップテーブルの下方に設置され、前記電気加熱手段と独立して通電が制御されて当該トップテーブル上の被加熱物を加熱する誘導加熱手段と、前記電気加熱手段と誘導加熱手段の各通電状態を一元的に報知する報知手段と、前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、前記誘導加熱手段の通電中、その加熱手段を冷却するため運転される第2の送風手段と、前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段に通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、前記電気加熱手段と誘導加熱手段並びに前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、を備え、この通電制御手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記報知手段にて発火を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る加熱調理器は、発火を迅速に検知し、調理庫内で発生する煙等を外部へ排出させる空気流を発生する送風手段を迅速に制御することができる。またその他付随する制御や発火を報知する手段がある場合、それらも迅速に実行させることが可能となる。
さらに個別に通電制御できる加熱体を複数有する複合式加熱調理器においては、他の電気加熱手段による調理制御に悪影響を与えることなく発火時の対応を適切に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
(加熱調理器)
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る複合式加熱調理器を模式的に示すものであって、図1は一部を削除した斜視図、図2は側面視の断面図である。
なお、以下のそれぞれの図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、複数の部材であって、符号に「a、b、あるいはc等」を付記するものについて、共通する内容を説明する際には、符号に付した「a、b、あるいはc等」を削除して、その一方の部材について説明する。
【0012】
本発明の実施の形態において、加熱手段の動作条件とは、加熱するための電気的、物理的な条件をいい、通電時間、通電量、加熱温度、通電パターン(連続通電、断続通電等)等を総称したものである。従って、加熱動作のための通電とは、必ずしも一定の電力で連続的に通電するという意味ではなく、供給電力の大きさを変化させ、また通電も1秒間に数回以上の短時間で繰り返し行うようなものも通電状態を意味する。
【0013】
本発明の実施の形態において、電気加熱とは、電気輻射式熱源を用いた加熱、電磁誘導式加熱(Induction Heating)、誘電加熱(高周波加熱)等を総称したものである。
【0014】
表示とは、文字や記号、イラスト、色彩や発光有無や発光輝度等の変化により、使用者に動作条件や調理に有益、参考となる関連情報(以下、「参考情報」という)や、異常使用を注意する目的や異常運転状態の発生を知らせる目的のもの(以下、単に「調理関連情報」という)を視覚的に知らせる動作をいう。発火状態にあるという情報もここでいう調理関連情報に含まれる。
【0015】
表示手段とは、特に明示のない限り、液晶や各種発光素子(一例としては発光ダイオード、レーザダイオード等、有機電界発光素子など)を含む。このため表示手段の意味には、液晶画面(LCD)やEL画面等の表示画面を含んでいる。
【0016】
報知とは、表示又は電気的音声(電気的に作成又は合成された音声をいう)により、制御手段の動作条件や調理関連情報を使用者に認識させる目的で知らせる動作をいう。
【0017】
報知手段とは、特に明示のない限り、ブザーやスピーカ等の可聴音による聴覚による報知手段と、文字や記号、イラスト、あるいは可視光による視覚的な報知手段とを含んでいる。
【0018】
図1および図2において、加熱調理器100は、略直方体の函体である本体10と、本体10の内部に設けられた調理庫20と、この調理庫に挿入自在な金属製載置皿30と、載置皿30の前方(図2において左側)に設置された扉40と、調理庫20の後方開口部に連通する排気手段60と、本体10の上面に形成された耐熱ガラス製の天板70と、天板70に連続して外周に向かって突出する枠体80と、を有している。
【0019】
(調理庫)
調理庫20は、略直方体状の空間であって、前方(図2において左側)に前方開口部21と、後方(図2において右側)に後方開口部22が形成され、天井近くに輻射式電気ヒータとしてのシーズヒータ等の上ヒータ23と、底面近くに同じくシーズヒータ等の下ヒータ24と、がそれぞれ配置されている。これらヒータ23,24は水平面内で広がりを持つように電源線が接続される両方の端子間は、予め数回屈曲させることでU字又はW字形等の平面形状に形成されている。
【0020】
この2つのヒータ23、24を同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)や調理庫20内の雰囲気温度を設定し、後述する温度センサ142からの温度情報によって火力調節して調理するオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行えるようになっている。例えば、上部天井付近のヒータ23は最大消費電力(最大火力)1200W、底部付近のヒータ24は最大消費電力800Wのものが使用されている。
また、2つのヒータ23、24の火力を含む通電条件、通電時間、あるいは調理庫20の雰囲気温度を設定するための各種操作キー群は、後述する天板操作部81に設けてある。
【0021】
そして、本体10の上面の後方(天板70の後方に同じ)に2つに区画された排気口64が形成され、その1つの排気口64と調理庫20の後方開口部22とを連通する排気風路用のダクト63が設けられている。なお、排気風路用ダクト63には触媒還元作用で排気を浄化する浄化フィルター61と送風機62とが配置されているから、被加熱物(たとえば、魚)の加熱によって発生した煙や臭いが分解され、発生した熱気や蒸気等は排気口64から排出されることになる。その浄化フィルターには浄化作用を活性化するための電気ヒータ61Aが設けられている。この電気ヒータは150W又は300W程度の電力が供給される。なお、もう一方の排気口は本体10の内部空間に連通し、本体内部の各種発熱部品を冷却した空気の排出路の終端になっている。63Aはダクトの上端に形成した排気口で、前記天板70の排気口64と対応したその直下位置にある。
【0022】
(扉)
扉40は調理庫20の前方開口部21を覆うものであって、前面(図2において左側の面)には、縦断面形状が庇状になっている取っ手50が設けられている。したがって、調理者は取っ手50に手を掛けて載置皿30を調理庫20に出し入れすることができる。また、載置皿30を最も奥に押し込んだとき、扉40は調理庫20の前方開口部21の周囲に気密的に密着するものである(正確には、後記する吸気孔45a、45bに限って通気性がある)。
【0023】
(載置皿)
さらに、扉40の裏板42には、載置皿30を支持する皿支持フレーム31が固定または傾動自在に設置されている。皿支持フレーム31はグリル加熱室の側壁に形成されたフレームガイド(図示しない)に案内されて、これに摺動するものである。
【0024】
なお、載置皿30の上方には、被加熱物を直接載置するための載置網32が配置されるが、載置網32を載置皿30の上縁で支持するようにしても、皿支持フレーム31で支持するようにしてもよい。さらに、載置皿30自体に皿支持フレーム31に相当する部位を形成してもよい。
【0025】
(天板)
天板70の上面には、鍋載置サークル71a、71b、71c(以下まとめて「鍋載置サークル71」と称する場合がある)が描かれ、天板70の下面でそれぞれの直下に加熱体72a、72b、72c(以下まとめて「加熱体72」と称する場合がある)が設置されている。加熱体72a、72b、72cは、本体10の前面に設けられた前面操作部11に設置されている(ダイヤル式)火力設定スイッチ73a、73b、73cによって、あるいは枠体80の前方に設けられた天板操作部81に設置されている押圧式火力設定スイッチ74a、74b、74c(図1では代表符号74)によって、操作され、通電条件が設定されるものである。なお、操作や調理の状態は、天板70に設けられた後述する報知手段としての表示部75、例えば天板70の下方に設置された液晶画面により天板上に表示される。なおこの天板には前記した排気窓70Aが形成されている。また前記火力設定スイッチ73a、73b、73c、及び押圧式火力設定スイッチ74a、74b、74cは、全て電源スイッチ(図示せず)を介して電源が供給される。つまり通電制御回路200により、それらスイッチの操作信号が有効、無効になるように構成されている。また天板操作部81には火力設定スイッチ74a、74b、74c以外に、通電時間設定タイマーの操作キーや温度設定キー等各種キーが設置されている。
【0026】
(報知手段)
図1に示すように、天板70の左右方向の中央部で、前後方向の前側に報知手段の一例としての表示部75が設置されている。この表示部は全部の加熱体72の状況を視覚的手段で示すことから「統合表示画面」ともいうが、液晶パネルを主体に構成され、天板70を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つように天板70の下面近傍に設けられている。
【0027】
表示部75は、左側の誘導加熱式加熱体72a、右側の誘導加熱式加熱体72b、中央の加熱体72c及び調理庫20のヒータ23、24の各通電条件やその運転状態(停止や通電等)の設定を入力したり、設定情報を視覚的に確認したりすることができるものである。
すなわち、以下の3つの場面に対応して、通電されているかどうかという動作状況やその通電条件の情報が、文字やイラスト、グラフなどによって表示されるものである。具体的な構造と表示動作について省略する。
(1)左側の加熱体72a、右側の加熱体72bの状態。
(2)中央の加熱体72cの状態。
(3)調理庫20の状態。
なお各加熱体72で加熱調理を行う場合の操作手順や機能(例えば、現在ロースター、グリル、オーブンの何れの種類の調理が行われているか否か)も表示される。また中央の加熱体72cを速熱式輻射型ヒータ(ラジアントヒータともいう)に変えても良く、左側の誘導加熱加熱体72aと右側の誘導加熱加熱体72bの何れかを同様に変えても良い。
【0028】
この表示部75において、実際に情報を表示する画面区域は加熱体72毎に複数個に分割されている。例えば画面を合計12個のエリアに割り当てしてあり、次のように定義してある。
(1)左加熱体72aの対応エリア(火力と時間と温度で各1個)。
(2)中央加熱源72cの対応エリア(火力と時間で各1個)。
(3)右加熱体72bの対応エリア(火力と時間と温度で各1個)。
(4)調理庫20の対応エリア(火力と温度、時間で各1個)。
(5)各種調理における「参考情報」を随時又は使用者の操作で表示するガイドエリア(1個)。
(6)発火検知、異常運転検知時及び不適正操作使用時に使用者に報知する重要な「調理関連情報」の表示エリア(1個)。このエリアは発火検知や異常時における使用者への助言や対処方法などの情報も表示される(その表示内容は合成音声手段によって音声で使用者へ報知しても良い)。
【0029】
上記の合計12個の各エリア(表示領域)は、液晶画面の上に実現されたものではあるが、画面自体に物理的に個別に形成され、又は区画されているものではない。すなわち、画面表示のソフトウエア(マイコンのプログラム)により確立されたものであるので、そのソフトウエアによりその都度面積や形、位置を変えることは可能であるが、使用者の使い勝手を考え、各加熱源72の左右の並び順序に合わせて常に同じ並び順序にしている。つまり、画面上では相対的な位置として、左側に左加熱体72a、真中に中央加熱体72c、右側に右加熱体72bについての情報がそれぞれ表示される。なお、この表示部の表示動作は後述する駆動回路134を通じて通電制御回路200により行われる。上記した表示エリアの切り替え等のソフトウエアはその通電制御回路に格納されている。
【0030】
なお、前記重要表示エリアの表示は、通電条件の表示よりも常に時間的にも、表示面積的にも優先するようになっている。つまり加熱体72やヒータ23、24の火力等を表示している状態で、例えば発火検知された場合、その発火検知を使用者が容易に、かつ明瞭に認識できるように、直ちに表示し、かつ表示文字なども大きく、色彩上も目立つように工夫されている。
【0031】
またこのように各加熱体に共通な統合表示手段としての表示部75において、実際に情報を表示する画面区域を、加熱体72毎に複数個に分割すべく、表示エリアを割り当てておくという技術は特開2008−171757号に詳しく紹介してある。
【0032】
前記加熱体72a、72bは、何れも誘導加熱式加熱体であり、後部中央位置にある加熱体72cは誘導加熱式加熱体又はラジアントヒータ等で知られる輻射式電熱体である。
【0033】
(扉)
図3〜図6は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器における扉を模式的に示すものであり、図3の(a)は部分を分離して示す斜め前方から後方に向かって見た斜視図、図3の(b)は平面視の断面図、図4は斜め後方から前方に向かって見た斜視図、図5は風路を示す斜視図、図6の(a)は側方から見た中央部の断面図、図6の(b)は側方から見た側部の断面図である。
【0034】
(扉)
図6において、扉40は、前面上側の金属製表板41および前面下側のプラスチック製前板45と、後面の金属製裏板42と、表板41および前板45の外周と裏板42の外周とを連結する金属製又はプラスチック製外周板43と、を有する函体である。
表板41は、外周が矩形の耐熱性ガラスから形成されており、透明窓41w(図6において複斜線が付されている)が形成されている。すなわち、透明窓41wを除く裏面全体には不透過性の耐熱塗装面が形成されており、透明窓41wの部分だけは当該耐熱性塗装を施していないので、透明性が確保されている。そして、表板41の下端部41cは、前板45の上端部に形成された垂直方向の溝に挿入されてネジ等の固定手段(図示せず)で固定されている。
【0035】
裏板42は外周が矩形の金属製であって、開口部42wが形成され、表板41に対して後述するシール材121を介して略平行に配置されている。そして、裏板42の外周から前方へ一体に伸びている外周板43(略矩形筒状)と、開口部42w(内周に同じ)から前方へ一体に伸びている内周板44(略矩形筒状)と、を有している。
【0036】
さらに、透明窓41wの背面(後面)には、その全体を覆うような大きさの耐熱性ガラスからなる平板状の内側透明窓120(図6において複斜線が付されている)が設置されている。このとき、表板41の透明窓41wの周囲には耐熱性のゴム等からなる枠状のシール材121が配置され、シール材121を挟んで透明窓41wと内側透明窓120とが対向するから、かかる対向面同士の間には密閉された空気層からなる断熱層Sが形成されている。
【0037】
そして、内側透明窓120の後面には内周板44の前端面が当接しているから、シール材121および内側透明窓120とは重なった状態で、表板41と内周板44とによって挾持されている。
そのため、表板41と、裏板42と、外周板43の上部のコ字状の範囲と、内周板44の上側と、シール材121および内側透明窓120の一部と、によって囲まれた密閉構造の上部ドアー空間49Uが形成されている。また、前板45と、裏板42と、外周板43の下部のコ字状の範囲と、内周板44の下側と、シール材121および内側透明窓120の一部と、によって囲まれた下部ドアー空間49Lが形成されている。
すなわち、扉40には、上部ドアー空間49Uおよび下部ドアー空間49Lの2つの空間が区画形成されている。
【0038】
(通気孔)
図3の(a)において、グリル扉40の前板45の前面には前方に突出する取っ手50が設けられており、前板45の側方寄りに貫通する吸気孔45a、45bが形成されている。なお、図3において、吸気孔45a、45bは6個の丸孔を示しているが、その数量や形状はこれに限定されるものではない。
図4において、グリル扉40の裏板42には側方吹出孔46および中央吹出孔47が形成されている(これについては別途詳細に説明する)。
【0039】
なお、「前板45の側方寄り」とは、使用者が取っ手50に手を掛けた際、手の位置に一致しない範囲を指し、たとえば、前板45の幅方向の中央範囲である約100〜150mmを除く部分で、表板41の側縁41a、41b寄りの範囲を指している。
したがって、図3に示すような表板41の全幅に渡る取っ手50においては、取っ手50の中央範囲である約100〜150mmを除く、側縁41a、41b寄りの範囲を指している。あるいは、取っ手50が表板41の幅方向の中央範囲である約100〜150mmの範囲に設置された場合には、取っ手50を除く側縁41a、41b寄りの範囲を指している。
【0040】
(取っ手)
取っ手50は、前板45の略全幅に渡って設置されるものであって、取っ手50の端部50a、50b(手掛け部52の端部52a、52bに同じ)が、それぞれ前板45の左右両側縁に設置(ネジなどで固定接続)されている。
【0041】
取っ手50は、前板45の前方に向かって略水平に伸びたフランジ部51と、前板45に略平行(正確にはアーチ状)で上下方向に伸びた手掛け部52と、前板45の前面に当接する後面壁55と、が一体に形成された側面視で断面略h字状である。そして、手掛け部52と後面壁55とを連結する一対の仕切壁53a、53bが、所定間隔を空けて設置されている。
さらに、側方寄りで、取っ手50のフランジ部51と後面壁55とが交わる角部に、フランジ部51を上下に貫通するように、細長形状のスリット90が形成されている。
【0042】
(取っ手空間)
したがって、手掛け部52および後面壁55の中央部と一対の仕切壁53a、53bとによって囲まれ、上方をフランジ部51の中央部によって覆われた中央取っ手空間59c(略四角柱状)が形成されている。
また、手掛け部52および後面壁55の側方寄り部と一方の仕切壁53aとによって囲まれ、上方をフランジ部51の側方寄り部によって覆われた側方取っ手空間59a(略直角三角柱状)が形成され、同様に、手掛け部52および後面壁55の側方寄り部と他方の仕切壁53bとによって囲まれ、上方をフランジ部51の側方寄り部によって覆われた側方取っ手空間59b(略直角三角柱状)が形成されている。
【0043】
(透孔)
そして、略直角三角柱状の側方取っ手空間59a、59bにおける後面壁55に、透孔56a、56bが形成されている。取っ手50が設置された状態で、透孔56a、56bはそれぞれ吸気孔45a、45bに一致し、透孔56aと吸気孔45aとによって、透孔56bと吸気孔45bとによって、それぞれ通気路が形成されるようになっている。すなわち、扉40の下部ドアー空間49Lに通ずる吸気通路になる。したがって、台所等の室内の空気は、側方取っ手空間59a、59bから、前記吸気通路を経由して扉40の下部ドアー空間49Lに吸引される。
【0044】
また、取っ手50は、正面視において、吸気孔45a、45bが手掛け部52に覆われているから、直接視認することができない。
そして、平面視において前方中央に行くに従って徐々に突出した「アーチ形状」であるため、手掛け部52の端部50a、50bに近い範囲は、手掛け部52と後面壁55との間隔が狭くなり、使用者が手指を掛けることが困難になっている。すなわち、使用者の手指が側方取っ手空間59a、59bに侵入しないため、調理の際、吸気孔45a、45bが塞がれるおそれがない。また、万一、調理庫20の圧力が上昇して熱気が逆流し、連通している吸気孔45aおよび透孔56a、あるいは連通している吸気孔45bおよび透孔56bから側方取っ手空間59a、59bに熱気が流出した場合であっても、下方のみが開口しているから、かかる熱気は下方に向かって流れ出し、使用者の手指に熱気が触れることがない(図6の(b)参照)。
【0045】
また、仕切壁53a、53bによって中央取っ手空間59cが形成されているから、使用者が仕切壁53a、53bよりも側方に手指を掛けること、あるいは、手指を側方に移動させることがさらに困難になっている。
なお、取っ手50は断面略h字状であって、下方が開口した函体であるから、大きな断面二次モーメントを具備するものであるが、仕切壁53a、53bを設けたことによって、剛性がさらに大きくなっている。また、取っ手50(含む、仕切壁53)は前板45と一体的に成形してもよい。
【0046】
(吹出孔)
図4において、グリル扉40の裏板42の側縁42a、42b寄りの範囲に、貫通する側方吹出孔46a、46b(以下まとめて「側方吹出孔46」と称する場合がある)と、裏板42の中央範囲に、貫通する中央吹出孔47と、が形成されている。
【0047】
図4および図5において、側方吹出孔46は、前板45に形成された吸気孔45a、45bと同様に「側方寄り」に配置されているものの、吸気孔45a、45bとは上下方向で位相が一致していない(ズレている)。このため、透孔56aおよび吸気孔45aと透孔56bおよび吸気孔45bとを通過した吸気(空気)は、側方吹出孔46に直接侵入することはなく、裏板42に衝突して下部ドアー空間49Lに充満した後、側方吹出孔46および中央吹出孔47から調理庫20に吹き出すことになる。
【0048】
このとき、中央吹出孔47の開口面積が側方吹出孔46の開口面積より大きくなっているから、吸気の吹き出しが吸気孔45a、45bに近い側方吹出孔46に集中することがない。したがって、吸気孔45a、45bから遠い中央吹出孔47からの吹き出し量が確保されるから、調理庫20の全幅に渡って、比較的均一な風流れが形成され、被加熱物Nの均一な冷却が可能になる。
【0049】
また、後面壁55の左右両端部に形成された透孔56aおよび吸気孔45aの通路と、透孔56bおよび吸気孔45bの通路とが、扉40の外部からドアー空間49に通ずる吸気通路になるから、室内の新鮮な空気が吸気となって下部ドアー空間49Lに充満するから、かかる吸気によって透明窓41wや取っ手50が冷却されることになる。
【0050】
なお、図4において、側方吹出孔46および中央吹出孔47はそれぞれ長穴であるが、その形状、数量さらに、配置の範囲をこれに限定するものではない。たとえば、それぞれを複数の丸孔によって構成してもよい。このとき、当該丸孔の単位面積当たりの形成数あるいは開口面積(丸孔の直径)を、中央吹出孔47の方が側方吹出孔46よりも、密にあるいは大きくしておけば、調理庫20において全幅に渡る均一な風流れが形成される。
【0051】
また、裏板42の全幅に渡って側方吹出孔46および中央吹出孔47を形成してもよい(このとき、側方吹出孔46および中央吹出孔47の境界が明確でなくなる)。このとき、かかる吹出孔の開口面積(丸孔のとき、その直径)を、裏板42の中央に近づく程大きく、あるいは、かかる吹出孔同士の間隔を中央に近づく程狭くしておけば、グリル加熱室20において全幅に渡る均一な風流れが形成される。
【0052】
さらに、下部ドアー空間49Lに、風流れを誘導する誘導板(いわゆる「邪魔板」)やオリフィスを形成して、吹き出す空気の流れを均一にしてもよい。なお、側方吹出孔46および中央吹出孔47から吸引導入される空気は、調理庫20内部から(温度上昇に伴って空気が膨張することや前記排気用送風機62による誘引作用によるもので)排気される空気量を補う程度である。過剰に空気を調理庫20に押し込むと調理庫20内部にヒータ23,24で蓄えた熱気(熱エネルギー)を無駄に放出してしまうことになり、加熱効率低下を招き、電気エネルギーの無駄に繋がってしまうからである。
【0053】
(シール用パッキン)
図4において、裏板42の外周にそって、矩形環状にシール用パッキン48が固定されている。シール用パッキン48は扉40を後方に押し込んだ際、調理庫20の前方開口部21の前面周囲に結合された金属製前板169に気密的に当接するものであって、吸気孔45a、45b以外の個所から空気がグリル加熱室に侵入しないようにシールしており、断面が真円形や楕円形又は2重の円形などの形状になっていて扉40閉鎖時に圧縮力を受けた際に容易に変形するよう全体が柔軟性のある耐熱性ゴムで形成されている。
【0054】
前記調理庫20は、前方開口部21と、後方開口部22が形成された筒形の金属製内ケース25と、この内ケースの外側を一定の間隙27を置いて囲んだ筒形の金属製外ケース26とを備えている。28は図2に示すように内ケース25底部を上下に二分するように水平に設置した金属仕切り板で、この仕切り板の上方に有効内寸法(高さ)Hの調理庫20が形成される。つまり仕切り板28は調理庫20の実質的な内側底面になる。内ケース25と外ケース26とが密閉された微小間隙27を置いて二重壁構造になっているため、内ケース25の内側空間の高温状態が外ケース26を通じて外部へ伝達されにくいようになっており、熱効率を高めている。
【0055】
29は前記仕切り板28の中央に大きく形成した凹み部の前方垂直部に形成した小さな口径の貫通孔、122は調理庫20の中に設置した状態の載置皿30の前縁と扉40の裏板42との間に形成される空隙、28Aは前記仕切り板28の前方端部に形成した通気孔であり、この通気孔と前記空隙122と前記貫通孔29は調理庫20内部へ扉40を通じて流入する空気の流路になる。
【0056】
(通電制御手段)
図7に示すように、本発明の実施の形態1における通電制御手段200は、1つ又は複数のマイクロコンピュータを内蔵して構成されている通電制御回路によって形成されている(以下、通電制御手段は、通電制御回路と称する)。
通電制御回路200は、入力部110と、出力部111と、記憶部112と、演算処理制御部113とから構成されている。通電制御回路200は、定電圧回路(図示せず)を介して直流電源が供給されて、全ての加熱体と表示部75を制御する中心的な制御手段の役目を果たすものである。
【0057】
図7において、100V又は200V電圧の商用電源に対し、整流回路114(整流ブリッジ回路ともいう。)を介して、右加熱体72bのインバータ回路172bが接続されている。
同様に、この右加熱源体のインバータ回路172bと並列に、左加熱体72aのインバータ回路172aが整流回路221(図示せず)を介して、前記商用電源に接続されている。
【0058】
130は中央加熱体72cのヒータ駆動回路である。131は調理庫20の庫内加熱用の上ヒータ23を駆動するヒータ駆動回路、132は同じくヒータ24を駆動するヒータ駆動回路である。
133は前記排気風路用ダクト63の途中に設けた触媒ヒータ61Aを駆動するヒータ駆動回路、134は表示部75の液晶画面を駆動する駆動回路である。135は本体10の内部空間を一定の温度範囲に保つための冷却用送風機136のモータの駆動回路である。なお、この送風機は、本体10の前面操作部11の後方空間に設置されており、その送風路の中に前記加熱体72a、72bの誘導加熱コイル部があり、そのコイル部が空冷される構成になっている。
【0059】
137は前記表示部75の周辺に冷却用の空気を供給する補助冷却用送付機138のモータの駆動回路である。
【0060】
右加熱源体72bのインバータ回路172bは、細い銅線を円盤状に巻いて構成された誘導加熱コイル部(図2で符号72を付けている部分)と、商用電源の母線に入力側が接続された整流回路114と、この直流側出力端子に接続されたコイル及び平滑化コンデンサからなる直列回路と、そのコイルと平滑化コンデンサの直列回路に接続された共振コンデンサを有する共振回路と、この共振回路にコレクタ側が接続された電力制御用半導体素子としてのスイッチング手段(IGBT等)と、を備えている。
【0061】
116は電流検出センサである。この電流検出センサは、誘導加熱コイルと共振コンデンサの並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出する。電流検出センサ116の検出出力は通電制御回路200の入力部110に供給され、誘導加熱に不適当な鍋などが用いられた場合や、何らかの事故などによって正規の電流値に比較して所定値以上の差の過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200により駆動回路117を介してIGBT117が制御され、瞬時に右側加熱体72bの通電を停止するようになっている。
左側加熱体72aのインバータ回路172aは、右側加熱体72bと同等の回路構成であるので説明は省略する。
【0062】
また電流検出センサ116と同様なセンサが左側加熱体72aのインバータ回路172aにも同様に設けられている。
【0063】
本実施の形態1のような誘導加熱方式で被加熱物Nを加熱する調理器においては、加熱コイル6RC、6LCに高周波電力を流すための電力制御回路は、いわゆる共振型インバータと呼ばれている。共振型インバータには、200V電源用に適すると言われている電流共振型と、100V電源に適すると言われている電圧共振型とがある。
このような共振型インバータ回路の構成には、加熱コイルと共振用コンデンサの接続先をどのように切り替えるかによって、いわゆるハーフ・ブリッジ回路とフル・ブリッジ回路と呼ばれる方式に分かれるが、本発明はこのような基本的な回路方式の違いは一切関係しないので、適宜選択すれば良い。
【0064】
(温度検出回路)
図7において、139は温度検出回路である。この温度検出回路には、以下の各温度検出素子(以下、温度センサと称する)からの温度検出情報が入力される。
(1)左側加熱体72aの加熱コイル中央部に設けた温度センサ140L。
(2)右側加熱体72bの加熱コイル中央部に設けた温度センサ140R。
(3)中央加熱体72cの近傍で真上に設けた温度センサ141。
(4)調理庫20の庫内温度検出用温度センサ142。
(5)表示部(統合表示手段)75の近傍に設置した温度検出素子143。
(6)本体10の右側空間の電気部品室に設置された放熱フィンに密着して取り付けられた温度センサ144R(右側加熱体72b用)。
(7)本体10の右側空間の電気部品室に設置された放熱フィンに密着して取り付けられた温度センサ144L(左側加熱体72a用)。
なお、ここでいう放熱フィンとは、前記インバータ回路172a、172bを構成している前記IGBTなどの発熱性電気部品を取り付けたものであり、前記冷却用送風機136が本体10外部から吸引して供給する冷却風の風路内に位置している。
【0065】
なお、上記温度センサは温度検出対象物に対して2箇所以上設けても良い。例えば右側加熱体72b用の温度センサ140Rを、その加熱コイルの中央部と、外周部分に設け、より正確に温度制御を実現しようとするものでも良い。また温度検出素子を異なる原理を利用したもので構成しても良い。例えば加熱コイル中央部の温度検出素子は赤外線方式で、外周部分に設けたものはサーミスタ方式としても良い。
【0066】
冷却用送風機136の駆動回路135は、温度検出回路139からの温度測定状況に応じ、それぞれの温度測定部分が所定温度以上高温にならないように常に送風機136を運転して、必要な運転状態(送風量の大小)で十分な冷却風を供給して各所を冷却する。
【0067】
同様に補助冷却用送風機138の駆動回路137は、表示部75の液晶画面部分が所定温度以上高温にならないように、温度検出回路139からの温度検出情報に基づき必要な運転状態(送風量の大小)で表示部75とその周辺を冷却する。これら駆動回路135、137は前記通電制御回路200によって送風用モータの駆動信号を発生する。
【0068】
(発火検出手段)
図7において、150は発火検知手段である。この発火検知手段は、以下の構成を備えている。
151は発火検知手段150の全体の動作を制御する制御部、152は発火状態かどうかを判定する判定部で、予め発火判定基準のデータが格納された半導体記憶部153からの判定基準データと、赤外線信号を受信する受信部154からの検出データとを比較して出火判定を行う。155は受信部154の動作確認のために擬似的赤外線信号(波長4.4μm)を前記受信部154に向けて発信する発信部である。
【0069】
図8に示すように前記受信部154は、断熱性材料から形成された箱形ケース162と、このケースに内蔵された赤外線受光センサ156と、発火状態を検知する炎センサ157とを備えている。
前記受信部154は、外ケース26の天井面の前方部中央に形成された開口159に臨ませてあり、その開口159に対応してその下方の内ケース25天井面には窓161が形成されている。
【0070】
161は前記窓161の下方全体を覆うようにその窓の中に上端部がネジ込み等の固定手段で着脱自在に固定された保護ケースで、耐熱性プラスチックや耐熱ガラス等のような透明材料より四角錘や円錐形状に形成されている。
【0071】
図8に示すように前記発信部155は、前記扉40の上部ドアー空間49Uの内部に格納されている。165は断熱性材料から形成された箱形ケース、158はこのケースに内蔵された擬似的赤外線信号発信する発光素子である。この発光素子の発光面は前記調理庫20の天井部に設置した赤外線受光センサ156の受光面に向かい合うように上方に傾いて設置されている。前記受光センサ156と発光素子158を結ぶ直線を横切るように前記保護ケース161の外周面が位置しているため、受光素子158は発光素子158から放射される所定波長域の赤外線信号を、その保護ケース161を介して受信することになる。このため、この発光素子158から受信する赤外線信号の受信強度を見て保護ケース161外周面に付着した汚れの状態を判定部152が判定できる。これにより発火状態を検知する炎センサ157が、保護ケース161の表面に堆積した汚れによって発火状態を検知できないようになる前に、その保護ケース161の汚れを検知できる。
【0072】
163は前記発信部155の発光素子158の発光経路に該当する扉40の裏板42に形成した窓で、耐熱性の板で密封されている。164はこの窓163部分を含めて裏板42の表面(調理庫20に臨む側)を覆った保護材で、耐熱性でかつ赤外線透過性の薄い透明シート又は板材から形成され、裏板42に着脱自在に取り付けられている。
【0073】
なお、燃焼時の炎を検知する炎検知器は火災報知機で実用化され、また学会誌等でも紹介されている。
炎から放射される赤外線には、単なる高温物体や太陽光等から放射される赤外線とは異なる顕著な特徴があるので、そのような特徴を利用して発火検知できる。
【0074】
その特徴の一つは、二酸化炭素(CO2)共鳴放射といわれる現象で、物質が燃焼するときに、多量の二酸化炭素が発生するが、この二酸化炭素は近赤外線域の特有な波長帯に二つの放射スペクトルのピークを示す。その一つはCO2共鳴放射と呼ばれており、波長4.4μmでスパイク状に立ち上がるピークがあることで、これを検出してCO2共鳴放射を検出し、炎検知を行うことである。
【0075】
さらに炎に顕著な別の現象として、「ちらつき」現象がある。物質が燃焼するときには酸素の供給が必要であり、その中に拡散燃焼という状態があり、一般的な燃焼はこの拡散燃焼状態で、この拡散燃焼状態で炎はゆらぐ(ちらつく)現象が生じることから、このゆらぎを検出することで発火検知できる。なお、炎のゆらぎ時に放射される赤外線量は常に変動し、その変動周波数は1〜15Hzの間に集中する。
そこで、CO2共鳴放射の波長帯のみを検出するように、光学フィル夕を赤外線受光センサより前段に設け、入射した赤外線から上記特定波長(4.4μmを中心にこの前後の2つの周波数、例えば4.0μmと4.8μmの2つを加え計3波長)付近の赤外線を赤外線センサに入射し、電気信号に変換すれば良い。この後その電気信号を3つの波長域毎に電気的バンドパスフィルタを持つ信号増幅部にて、1〜10Hzのちらつき周波数成分だけを選択すれば、火炎が発生したことを判別できる。なお室内の人工照明や自然光などに影響されずに発火を検知できる。
【0076】
(加熱調理器の動作)
次に、上記の構成からなる加熱調理器の動作の概要を説明する。
図9〜14は、通電制御回路200の内部にある記憶部112に格納された基本動作プログラムに基づく動作を示すフローチャートである。その基本動作プログラムは、電源投入から調理準備開始、調理、終了、電源切りまでの基本動作を規定している。
【0077】
図9において、まず電源プラグを200Vの商用電源に接続し(ビルトイン型では通常常時接続されているので接続動作不要)、主電源スイッチ(前面操作部11にあるが、図示せず)の操作ボタンを押して電源を投入する(ステップ1。以下、ステップはSTと省略する)。
すると、定電圧回路(図示せず)を介して所定の電源電圧が通電制御回路200に供給され(ST2)、通電制御回路200は自身に格納されている制御プログラムを起動する。
通電制御回路200は、調理器の自己診断チェックを開始し、調理前異常監視処理を行うため、表示部75用の駆動回路134と、その表示部の冷却用送風機138用の駆動回路137を駆動する(ST3)。
【0078】
(調理開始前の異常監視)
温度検出回路139は、合計7個所に設けた温度検出素子140、141、142、143、144からの温度データを読み込み、その温度データを通電制御回路200に送る(ST4)。
以上のようにして通電制御回路200には、調理器本体10の主要な構成部分の温度データが集まるので、調理前に異常に高温度になっている部分があるかどうかを判定する(ST5)。例えば、温度検出素子143により検出された表示部75の液晶基板周辺の温度が、その液晶表示基板の耐熱温度(例えば70℃)を基準に、それよりも所定温度(例えば5℃低い場合、つまり65℃)を超えた場合は、異常高温と判定する。通常は起動直後で、そのように表示部75の液晶表示基板周辺が高温になっているはずはないが、例えば前回高温の天ぷら調理し、その高温の鍋がそのまま表示部75の真上位置で天板70上に置かれ、調理器の電源が切られているケースが想定される。また右側加熱体72bの加熱コイルの中央部に設けた前記温度センサ140Rの温度が例えば100℃となっている場合も、(通電開始前)には通常あり得ない事態である。
【0079】
また温度センサ141が高温を示している場合は、天板70が未だ熱い可能性があるので、表示部75やその他表示部(図示していないが、天板70直下にあってその上方に光を点滅するなどの方法)で高温報知をする(使用者が触れないような注意情報を示す)。
【0080】
以上の自己診断ステップによって異常判定(異常高温)があると、調理前異常処理1のステップに移る。調理前異常処理1では、調理開始の指令を無効とするため、使用者が指令しても調理開始にならない。また表示部75にて「異常」の内容を表示し、通電開始した各部分の電源を切る動作をする。再度起動するには、ST1の主電源スイッチ投入が必要になるが、高温状態に変化なければ同じ動作フローになり、再度電源は強制的に遮断される。なお、高温報知は専用の警告ランプや表示部で表示することでも良く、使用者が最も見る頻度が高い表示部75だけではなく、それらの専用表示部での表示を併用し、あるいは専用表示部の表示で代用するようにしても良い。
【0081】
異常判定が無かった場合は「調理開始準備完了」となる。そして、異常がない場合には、表示部75に「正常」状態で調理開始できることを表示し、誘導加熱にするのか又は調理庫20を使ったグリル調理やオーブン調理を希望するのか等、調理メニューの選択を促す表示をする(ST6)。
【0082】
調理メニューの選択があったかどうかを判定し(ST7)、選択があった場合は、当該調理メニューの動作プログラムが実行される。しかし選択がなかった場合、10分間はそのまま待つが、10分を過ぎても何も選択されない場合は、安全上の観点と省エネの観点から、10分経過の判定(ST8)により、自動停止の処理(ST9)に進む。自動停止の処理では、表示部75にて「自動停止」の内容を表示し、通電開始した各部分の電源、例えば送風機136の電源を順次切る動作をして終了する。再度起動するには、ST1の主電源スイッチ投入が必要になる。
【0083】
(誘導加熱調理)
誘導加熱調理を選択した場合について説明する。図10は右側の加熱体72bで調理する動作を示している。まず調理メニューの選択動作を選ぶと、その指令信号を通電制御回路200が受信し、選択された加熱源の調理開始プログラムを起動する。
なお、誘導加熱調理を選択する操作は、前記前面操作部11の火力スイッ73bが非使用時は前面操作部11表面と面一状態になるよう内部に没しており、これを押す操作すると、内部のバネ機構の力で突出状態になるが、この瞬間にその突出動作で選択動作が行われる。つまり、火力スイッチ73bを全面操作部11表面に突出させたことが右側加熱体72bによる調理を選択したことになる(ST10)。
【0084】
通電制御回路200が右側加熱体72bの調理開始プログラムを起動し、そのインバータ回路172bに駆動部117を介して所定のチェック電流(誘導加熱のために最小の電力)を流すと同時に冷却用送風機136を最小能力で回転駆動する(ST11)。これにより右側加熱体72bの加熱コイルから高周波磁束が発生する(ST12)。
インバータ回路172b設けられた電流検出センサ116は、インバータ回路の共振回路に流れる電流を検出し、この検出結果を通電制御回路200の入力部110に供給する。
【0085】
通電制御回路200は、入力部110に入力された共振回路の電流検出結果と、記憶部112に記憶されている判定基準データの正規の電流値とを比較して、過少電流や過大電流が検出された場合には、何らかの事故や導通不良などと判定し、異常と判定する(ST13)して、異常時処理2のステップに移る。
異常時処理2では、その使用開始していた右側の誘導加熱体72bによる調理動作は緊急で停止される。また表示部75にて「異常」の内容を表示し、通電した各部分の電源を切る動作をする。再度起動しても異常状態に変化なければ同じ動作フローになり、再度電源は強制的に遮断される。
【0086】
この状態では補助冷却用送風機138は所定の定格電流で既に運転されており、表示部75の液晶基板部とその周辺に冷却風を送って冷却されている。なお、冷却用送風機136は、左側加熱体7272aなど他の加熱体72のインバータ回路172a等発熱部を冷却していない場合は、その送風機136も短時間の内に停止される。
【0087】
次に、通電制御回路200は、異常判定ステップ(ST13)で異常が無かった場合は「調理開始準備完了」となり、表示部75に「火力設定」を促す表示をする(ST14)。なお、使用者が前記前面操作部11の各電源スイッ73を押し出し、その直後瞬時に回動操作すれば、その回動量に応じて火力が決定されるが、実際にその設定火力で加熱調理が開始されるタイミングは遅れ、その間に前記したST11〜14までに異常チェックのステップが実行されて異常がなければ設定された火力での調理に入るという安全策を採用している。
【0088】
図11は右側の加熱体72bで誘導加熱が開始された場合の制御動作の過程を示している。使用者が火力スイッチ73bを回動操作して火力が決定された場合(天板操作部81の操作キーの操作で火力設定しても同じ)(ST15)、その設定火力(例えば1Kw)に基づいて、通電制御回路200はインバータ回路172bの駆動回路117を駆動する(ST16)。また、通電制御回路200は、表示部75の駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、加熱動作実行中の火力(この場合、1Kw)や通電時間などの通電条件の情報を文字や記号、イラスト等で表示させる(ST17)。さらに送風機136は設定火力で発生する熱量に対応できるよう、最小能力運転から所定の定格能力運転に変更される(ST17)。もし、火力が最大(3Kw)に設定された場合、送風機136の運転能力も定格最大能力になるよう変更される。
【0089】
これにより、駆動回路117がスイッチング回路115に内蔵されたIGBTなどの電力制御用半導体スイッチング素子のゲートに対して駆動電圧を印加することにより、誘導加熱コイルに対してインバータ回路172bで発生した高周波電流が供給される(ST18)。
【0090】
このため加熱コイルからの高周波磁束により被加熱物の金属製鍋に高周波磁束が交鎖し、渦電流によるジュール熱の発生で鍋が高温になり、導加熱調理モードに入る(ST19)。
【0091】
(誘導加熱中の異常監視)
本実施の形態1における加熱調理器は、加熱開始前の異常判定に加えて図11に示すように、誘導加熱調理時も異常監視制御を行う。
誘導加熱調理中に温度が上昇する部分は、左右の加熱体72の加熱コイルの他に、本体10の前面操作部11後方空間の電気部品室内部に設置された2つの放熱フィンと、表示部75の部分が考えられる。
そこで通電制御回路200は、温度検出回路139を介して、左右の加熱体72の加熱コイルの中央部に設けた前記温度センサ140R、140Lや、温度センサ143からの温度データを監視し、異常な温度になっていないかどうかを監視する。
【0092】
まず温度センサ143からの温度データで、異常高温と判定された場合に対しては、通電制御回路200は、図14に示すように是正可能な異常であるかどうか判断する(ST23)。
是正可能な異常としては、表示部75の温度異常や加熱体72の温度異常がある。
(1)表示部72の温度異常:表示部75の検出温度が65℃を超えている場合、その表示部75を冷却する送風機駆動回路135を制御して、その送風機の回転数を増加させて冷却風量を増加させ、これを所定時間継続しても改善の効果が現れない場合は、加熱体72bの火力(電力)を(使用者が設定したものから)強制的に下げる。
(2)加熱体の温度異常:例えば右側加熱体72bの加熱コイルが異常高温になっていると判定した場合は、送風機136の駆動回路135を制御して、その送風機の回転数を増加させて冷却風量を増加させ、これを所定時間継続しても改善の効果が現れない場合は、加熱体72bの火力(電力)を(使用者が設定したものから)強制的に下げる。例えば、1段階下の火力、300W下の火力、又は10%の火力、の3者の内で、最大の火力までダウンさせる(3KW火力で使用していた場合は、送風機の送風能力増加させず、直ちに火力を2.5KWに下げる)。
【0093】
このような異常是正処理(ST24)で火力ダウンを実行した場合、通電制御回路200は表示部75の駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、火力を自動的に下げた旨の情報を表示させる(ST25)。なお、送風機136、138の回転数を増加させて送風能力増加させた場合は、何も表示しない。
【0094】
その次の処理ステップへ進み、インバータ回路172bの電流異常を判定する(ST21)。ここでは、通電制御回路200が電流検出センサ116により検出された電流値が正規の電流値に比較して過少電流や過大電流であるか否かを判断する。もし、電流検出センサ116により検出された電流値が過少電流や過大電流である場合、異常是正可否判定処理(ST23)は是正不可と判定し、通電制御回路200は駆動回路117を介してインバータ回路172bのスイッチング回路115を制御し、瞬時に誘導加熱動作を停止する。その上で駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、異常電流検知したため、緊急停止した旨の情報を表示させる(ST26)。
【0095】
前記電流異常を判定するステップ(ST21)で異常なしと判定されると再び温度異常の判定ステップ(ST20)に戻るが、ここでは以前に異常是正処理(ST24)が行われている場合、その是正処理前の温度と今度の温度との比較が行われる。送風機136,138の送風能力を増大させても直ぐに効果が現れない場合があるので、このような是正処理の場合は、同じ異常是正処理(ST24)を繰り返すことはなく、このような異常監視を反復実行している中で、一定時間経過後に異常判定処理(ST20)が行われる。そこで異常是正処理の効果が現れていない場合、例えば最初表示部75の温度センサ143が65℃を検出し、送風機138の運転速度を上げたにも拘らず依然として危険温度の70℃まで温度上昇していることが判明した場合は、是正不可の異常であると判断(ST23)し、異常時処理2のステップへ進め、瞬時に右側加熱体72bの誘導加熱動作を停止する。その上で駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、異常な高温度になったため、緊急停止した旨の情報を表示させる(ST26)。なお、この異常判定処理(ST23)時、仮に左側加熱体72aも同時使用していた場合、それも通電停止される。
【0096】
また是正可能な異常であるかどうか判断するステップ(ST23)で、表示部75の液晶表示基板用温度センサ143の検出温度が所定温度(例えば70℃)になった場合、は、異常時処理2のステップ(ST26)へ進め、加熱体72bの通電を直ちに停止する。
【0097】
このように何らかの異常により通電を停止した場合、通電制御回路200は表示部75の駆動回路134を駆動して、右側加熱体72bを自動停止した旨の情報を表示させる。そのため使用者が調理の途中で最も注目する表示部分である表示部75の画面表示を見れば、異常発生で自動停止したことが容易に理解できる状態になる(表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い)。これにより使用者の無用の不安感や混乱を払拭できる。
【0098】
異常状態検知されたことで右側加熱体72b(左側加熱体でも同じ)の通電停止指令が出された異常時処理2(ST26)の段階で、その加熱体の通電は瞬時に停止されるが、加熱コイル等を冷却している冷却用の送風機135,138は、前記通電停止後も2分間〜5分間運転継続する(ST42)。これにより、冷却用の送風機135,138からの送風停止直後から本体10内部に熱気が滞留したままになり、温度が急激に上昇するというオーバーシュート問題も未然に防ぐことができる。また、表示部75周辺の温度が高くなるという弊害も防ぐことができ、天板70が高温になったまま停止するということを防ぐ。
これら送風機の運転継続時間は、通電停止までの温度上昇の様子や室内気温、使用された加熱体72の運転火力大小等の条件に対応して通電制御回路200が予め決められた算式や数値テーブルから決定する。
【0099】
なお、異常発生による異常時処理2(ST26)のあと、本体10の内部を送風機235,136で所定時間空冷した後、通電制御回路200は最後に自らの電源を遮断するために主電源回路の遮断動作を行う。本体10の内部が所定温度以下まで温度が下がるまで送風機235,136を運転し、その上で主電源回路の遮断を行うように、温度によって運転時間の終わりを決定するようにしても良い。
【0100】
(調理庫での調理)
前記誘導加熱調理の期間中であるかに拘わらず、天面操作部81の操作キーを操作すると、調理庫20の上ヒータ23と下ヒータ24を同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)やオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行える(図12のST27参照)。
但し、本実施の形態1のように、同時に使用可能な多数の加熱手段を有する複合形加熱調理器の場合、複数の加熱手段を同時使用したときの総入力電流が家庭の配電盤の電流容量制限を超過しないようにそれぞれの加熱手段の最大設定可能火力を制御する必要があるので、すでに右側加熱体72aが3KWの火力で運転している状態では、通電制御回路200は、ヒータ23、24の火力が、(総電力容量4.8KW)−3KW)=(1.8KW)を超えないように、火力設定範囲を制限する(このような制御はデマンド制御と呼ばれている)。誘導加熱調理が行われていない場合は、ヒータ23は最大消費電力(最大火力)1200W、ヒータ24は最大消費電力800Wのものが使用されているので、合計2000Wで加熱調理できる。
【0101】
なお、先にヒータ23、24の通電が開始されて調理開始されている場合は、その後から他の加熱体を使用しても、そのヒータ23、24の火力は自動的に下げられることはない。また、通電制御回路200は、所定の優先順位を各加熱体について定めておき、優先度の高い加熱体の火力設定を優先して各加熱体の火力を割り振るようにしてもよい。
【0102】
調理庫20の上ヒータ23と下ヒータ24に通電されて例えばオーブン調理(例えば、ケーキ)を行った場合、庫内温度センサ142から随時温度測定情報が温度検出回路139に入力され、この温度検出回路からの情報に基づき通電制御回路200は駆動回路131,132を介してヒータ23,24の通電条件、例えば通電火力や通電率を変更し、使用者が設定した調理に適する温度に調理庫20内が保たれるように制御する。
このオーブン調理の場合、上ヒータ23と下ヒータ24に通電開始と同時又は所定時間遅れて、前記触媒ヒータ61Aと送風機62は運転開始される。また上ヒータ23と下ヒータ24の通電が終了してもそれらは所定時間運転継続され、その後運転が停止される。
【0103】
図15は、上ヒータ23と下ヒータ24と前記触媒ヒータ61Aの通電状態を示す説明図で、横軸が調理開始からの時間軸、縦軸は供給される電力(W)を示している。
この図9に示すように、調理庫20で加熱調理を行った場合、ほぼ同時に上ヒータ23と下ヒータ24と前記触媒ヒータ61Aの3者に通電が開始されるが、触媒ヒータ61Aは加熱庫20内の温度が所定の高温に至るまで、または所定の時間を経過するまで
は通電しないようにしても良い。
使用者がタイマーにて設定した所定時間又は調理に応じて予め設定されている時間を経過した時点(図9のT3)で上ヒータ23と下ヒータ24の通電が終了し、そのあとも前記触媒ヒータ61Aと送風機62は所定時間(例えば5分間)はそのまま運転継続され、T4の時点でそれらへの通電は停止される。
【0104】
(調理庫調理中の異常監視)
本実施の形態1における加熱調理器は、調理庫20による加熱調理中も図12に示したように異常監視制御を行う。
なお、通電制御回路200が最初に起動された際には、前述したように図9に示した動作フローチャートのST4の通り、温度検出回路139は、合計7個所に設けた温度検出素子140、141、142、143、144からの温度データを読み込み、その温度データを通電制御回路200に送って、通電制御回路200によって、調理開始前に異常に高温度になっているかどうか判定されている(ST5)。
このように調理開始前に異常判定がない場合、使用者が調理メニューを選択し、通電条件などを入力する(ST27)と、通電制御回路200は駆動回路130,131を通じてヒータ23,24に通電を開始し、使用者が選択した調理に相応しい通電条件でヒータ23,24を制御する(ST28)。
【0105】
通電制御回路200は、加熱調理中において、温度センサ142により検出された温度が予め設定した温度の上限を超えた場合、あるいは調理開始からその火力に応じた温度上昇速度が異常に速い場合、または異常に遅く温度上昇が緩慢な場合等の場合、通電制御回路200は異常と判定する(ST29)。
もし、温度異常と判定された場合、通電制御回路200は、所定の異常時処理3を実行する。
例えば、温度上昇が十分でない場合は、扉40を完全に閉めていない場合が想定されるので表示部75の所定の表示エリアでその旨使用者に注意喚起する文字や記号等を表示し、扉40の密閉確認を促す(表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い)。この報知後に異常状態が解消されているかどうかは再度所定時間後(次の発火有無検知のステップST30を終えたあと)、再び判定され、解消していない場合は、ヒータ23、24の通電は緊急停止され、表示部75の所定の表示エリアに、異常温度で緊急停止した旨の情報を表示させる(ST26)。
【0106】
(調理中の発火監視)
本実施の形態1における加熱調理器は、調理庫20による加熱調理中に被加熱物Nが燃焼することも異常の1つと捉え、この発火監視制御を行う。
図13に示すように、まず最初に、制御部151は送信部155を起動(ST32)し、所定の周波数帯域の赤外線信号を試験用の擬似的赤外線信号として発光素子158から発信する(ST33)。
発光素子158の発光面は前記調理庫20の天井部に設置した赤外線受光センサ156の受光面に向かい合うように設置されており、また前記受光センサ156と発光素子158を結ぶ直線を横切るように前記保護ケース161の外周面が位置しているため、受光センサ156は発光素子158から放射される所定波長域(4.4μm)の赤外線信号を、その保護ケース161を介して受信することになる。
【0107】
このため、この発光素子158から受信する赤外線信号の受信強度を判定部152が見て保護ケース161外周面に付着した汚れの状態を判定する(ST34)。長期間の使用により油煙成分が付着したりして調理庫20の内側壁面が汚れている場合もあり、その場合保護ケース161も同様に汚れている場合が予想されるが、この実施の形態1によれば、前記したように保護ケース161の汚れ検知が事前にできるので、発火状態を検知する最も重要なセンサである炎センサ157が、保護ケース161の表面に堆積した汚れによって発火状態を検知できないようになる前に、汚れの有無を検知できる。
【0108】
制御部151は汚れ判定がなされるとその旨通電制御回路200に報告するので、通電制御回路200は表示部75の所定の表示エリアにて清掃を促すメッセージを表示する(ST37)なお、表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い。
ここで保護ケース161の周面を清掃することが望ましいが、発信部155の発光素子158の発光経路上にある扉40の裏板42に形成した窓163には、保護材164が着脱自在に取り付けられているので、これを取り外して清掃したり、あるいは新しい保護材164に交換したりすることが望ましい。なお、このように保護材164の汚れがあると発火検知に影響があることを使用者に意識付けることは保護ケース161の汚れに認識を深めることにも繋がる。
【0109】
汚れ判定がない場合は、受光素子158は被加熱物Nから放射される所定波長域の赤外線信号を監視する動作に入る(ST35)。被加熱物Nが油脂の多い魚や肉などの場合、その油脂がヒータ23,24の高熱で発火する場合がある。このような魚や肉だけに特有の現象ではないが、物体は高温になるに伴いそれ自体から放射される赤外線の量が増えるが、発火して燃焼すると、前記したように燃焼特有の現象として、燃焼による炎から、特定波長(4.4μm)帯付近の赤外線が放射され、また「ゆらぎ現象」が発生するという特徴がある。
【0110】
このため、このゆらぎ現象を検知し、炎があるかどうか、発火したかどうかを判定部152は記憶部153に記憶された基準データとの比較で判断する。
もし発火と判定された場合、その判定信号を受けて通電制御回路200は発火時処理(ST38)という制御を行う。発火時処理とは例えば次のようなものである。
【0111】
(ア)排気風路用ダクト63にある浄化フィルター61の電気ヒータ61Aと送風機62の運転の内、送風機62の運転は直ちに停止される。一方、電気ヒータ61Aの運転はそのまま継続され、調理庫20内で発生する煙や臭いの分解作用を行う。送風機62だけを停止する理由は、調理庫20内で発生した燃焼を促進するような酸素の供給を抑制するためにある。排気口64からの積極的な排気動作に伴うことで調理庫20内部への酸素の供給(導入)が行うことから、その排気を停止又は抑制(この抑制とは送風機62を低速回転に変更)する。これにより小さな発火が急速に大きな燃焼までに発展しないよう抑制できる。
【0112】
(イ)表示部75の所定の表示エリアには、発火している旨の表示が行われる(表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い)。
発火している場合、不用意に扉40を開けると一気に燃焼が拡大したり、煙が調理庫20の前方開口から溢れ出たりするようなことが想定されるので、使用者にはその旨注意を喚起する表示も行う。また扉40を開けると外気が一気に流入し、雰囲気温度が一気に下がってしまうことにもなる。そこで注意喚起の表示や報知とは、例えば、「今は扉40を開けないように」というものである。
【0113】
(ウ)ヒータ23、24の通電条件はそのまま維持する。不意に発生する発火に伴って通電条件を途中で変更して火力ダウンさせたり停止させたりした場合、ヒータ23,24の発熱量は減少又はゼロになるが、それによって調理に必要な時間が変化してしまったり、せっかく所定の高温度まで上げた雰囲気温度が下がったりしてしまい、再度上昇するまで時間を要するなどの問題があるためである。なお、実際に発火するのは、下側のヒータ24に被調理物(魚や肉等)の油脂が滴下して発火することが多いので、下側ヒータ24だけ通電停止するという制御でも良い。この思想に基づき、この実施の形態1では、図15に示すように発火検知の時点(T1)で速やかに下側のヒータ24の通電を実線C2で示すように遮断して供給電力をゼロまで落とし、上側のヒータ23の通電は一点破線で示すようにそのまま維持する。
【0114】
発火検知があった場合、予め定めた所定時間(図15のT1〜T2の間、例えば10秒間)だけ前記送風機62の運転やそれに加えて下側ヒータ24の通電を停止するという制御がされる。この所定時間の間に再度発火検知がされた場合、同様に通電停止動作をする。このため、発火検知手段150は少なくとも数秒以内に反復して炎センサ157からの入力信号を分析し、発火があるかどうかを検知するようにすることが望ましい。
【0115】
(エ)右側加熱体72bや左側加熱体72bなどの他の加熱体72による加熱調理を行っていた場合、それら加熱体72の通電はそのままの通電条件で継続される。また誘導加熱コイル等を冷却している冷却用の送風機135も、そのまま運転継続する。さらに、補助冷却用送風機138の運転もそのままの通電条件で継続される。なお、この場合、前記表示部75は、それら加熱体72が使用中であることから、使用している加熱体72の特定、設定火力や加熱している火力、加熱時間や加熱温度(誘導加熱でてんぷら用の油の温度設定する場合等)の情報などが表示され、そのままでは発火状態であることの表示スペースが十分ではないので、発火報知を表示スペース的に優先させるため、一時的に発火報知を最優先にし、逆に優先度の低い情報(例:通電加熱の残り時間表示など)の表示を保留にする。
あるいは視覚的に優先表示するため、表示文字を赤く表示したり、「発火注意」という文字を点滅させたりして強調するなどの方法が実施される。
【0116】
発火時処理を行ったあとは再び発火検知動作(ST35)に戻り、ヒータ23、24の通電加熱中は、常時(少なくとも数秒間隔、望ましくは1秒間隔以内)このような発火検知の監視が行われる。また数秒置きには調理庫20の温度監視動作のステップST28を実行する。
【0117】
なお、このように赤外線で炎を検知する方式は、他の光による発火検知方式に比較して有利である。すなわち、家庭用で主に使用されるこの種の調理器は、台所の照明用の人工的な光やあるいは屋外からの自然光も浴びる可能性があるから、発火検知に利用する場合、それらの光との混同を防止する必要がある。しかし、この実施の形態のように炎で発生する赤外線特有の性質を利用するものではそのような対策は簡略化でき、コスト的、技術的に有利となる。
【0118】
(加熱体のバリエーション)
なお、以上の実施の形態では、複数の加熱体72(図2参照)の一部として、高周波電流が流れるコイルであって、被加熱物を電磁誘導によって加熱するものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、また、これを必須とするものではない。たとえば、1つの加熱体72が、電熱ヒータやガスバーナ等であってもよい。このとき、加熱体の形式に応じて、天板70が撤去され、電源スイッチ73、74の形式が変動することになる。また、調理庫20のみにおいて調理し、天面に加熱手段を具備しないものであってもよい。
【0119】
さらに、調理庫20には、上ヒータ23および下ヒータ24が配置されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、上ヒータ23および下ヒータ24の一方のみが配置されたものであってもよい。なお、上ヒータ23および下ヒータ24はシーズヒータを用いていたが、他の電気輻射式発熱体(ニクロム線やハロゲンヒータ等)であってもよい。
【0120】
(発火検知手段のバリエーション)
なお、以上の実施の形態では、発光素子158の発光面は前記調理庫20の天井部に設置した赤外線受光センサ156の受光面に向かい合うように設置させて保護ケース161の汚れ検知を行い、発光素子158に向かう被加熱物から放射される赤外線信号が、その保護ケース161の外側が汚れて受信に支障ないように事前に検知することにしていたが、例えば調理庫20の左側壁部に受光センサ156を設け、これと対向する右側壁側に発光素子158を設置し、その発光素子で受光センサ156の受光面の汚れを検知しても良い。この場合、保護ケース161を省略し、受光センサ156の受光面を清掃できるようにすることになる。
【0121】
また、扉40に電源供給することを避けるため、例えば本体10の前面操作部11内部に、その左側面部に発光素子158の発光部を望ませるよう設置し、その素子からの赤外線光線を、左横に近接して対面する扉40の右側壁面の窓(ガラス板等で覆われている)から扉40の中に導入し、この赤外線信号を扉の中に設置した反射鏡で調理庫20側に設置した受光センサ156の方向に向きを変換しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上より、本発明の加熱調理器は、発火現象の初期の火炎の状態を検知して発火現象を捉えるので、発火を迅速に検知し、調理庫内で発生する煙等を外部へ排出させる空気流を発生する送風手段を迅速に制御することができるから、調理庫を具備する各種加熱調理器に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器を模式的に示す一部を削除した斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る加熱調理器を模式的に示す側面視の断面図。
【図3】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉の部分を示す斜視図と断面図。
【図4】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉を斜め後方から見た斜視図。
【図5】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉の風路を示す斜視図
【図6】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉を側方から見た断面図。
【図7】図1に示す加熱調理器の制御手段を説明するブロック図。
【図8】図1に示す加熱調理器における発火検知手段を示す主要部側面視の断面図。
【図9】図1に示す加熱調理器の基本動作を示すフローチャート。
【図10】図1に示す加熱調理器で誘導加熱調理を行う場合の調理前異常監視動作を示すフローチャート。
【図11】図1に示す加熱調理器で誘導加熱調理開始した後の基本動作を示すフローチャート。
【図12】図1に示す加熱調理器で調理庫における電気輻射加熱を行う場合の基本動作を示すフローチャート1。
【図13】図1に示す加熱調理器で調理庫における電気輻射加熱を行う場合の基本動作を示すフローチャート2。
【図14】図1に示す加熱調理器で異常時の基本動作を示すフローチャートである。
【図15】図1に示す加熱調理器で異常時(発火検知時)の基本動作を示す通電状態説明図である。
【符号の説明】
【0124】
10:本体、 11:前面操作部、 20:グリル加熱室、 21:前方開口部、 22:後方開口部、 23:上ヒータ、 24:下ヒータ、 25:内ケース、 26:外ケース、 27:間隙、 28:仕切り板、 29:貫通孔、 30:載置皿、 31:皿支持フレーム、 32:載置網、 40:グリル扉、 41:表板、 41a:側縁、 41c:下端部、 41w:透明窓、 42:裏板、 42a:側縁、 42w:開口部、 43:外周板、 44:内周板、 45:前板、 45a:吸気孔、 45b:吸気孔、 46a:側方吹出孔、 46b:側方吹出孔、 47:中央吹出孔、 48:シール用パッキン、 49L:下部ドアー空間、 49U:上部ドアー空間、 50:取っ手、 50a:端部、 51:フランジ部、 52:手掛け部、 52a:端部、 52b:端部、 53a:仕切壁、 53b:仕切壁、 55:後面壁、 56a:透孔、 56b:透孔、 59a:側方取っ手空間、 59b:側方取っ手空間、 59c:中央取っ手空間、 60:排気手段、 61:浄化フィルター、 62:送風機(第1の送風手段)、 63:排気風路用ダクト、 63A:排気口、 64:排気口、 70:天板、 71:鍋載置サークル、 71a:鍋載置サークル、 72:加熱体、 72a:加熱体、 72c:加熱体、 73:火力スイッチ、 73a:火力スイッチ、 74b:火力スイッチ、 75:表示部、 80:枠体、 81:天板操作部、 90:スリット、 100:加熱調理器、 120:内側透明窓、 121:シール材、 122:空隙、 136:冷却用送風機(第2の送風手段)、 139:温度検出回路、 150:発火検知手段、 151:制御部、 152:判定部、 154:受信部、 155:送信部、 156:受光センサ、 157:炎センサ、 158:発光素子、 161:保護ケース、 163:窓、 164:保護材、 169:前板、 S:断熱層(空気層)。
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器、特に、電気ヒータ等の加熱源で加熱されるグリル室(以下、「調理庫」という)を有する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
システムキッチン家具や流し台に組み込まれて使用するタイプ(ビルトイン式又は組み込み式と呼ばれる)や、キッチンキャビネット等の上にセットされて使用されるタイプ(据え置き式と呼ばれる)の加熱調理器には、被加熱物を加熱するためグリル加熱室とも呼ばれている調理庫(電気ヒータ等の加熱手段が設置されている)を有している。
【0003】
従来のこの種の加熱調理器では、油脂分の多い魚や肉類などを加熱調理した場合、それら被加熱物から出た油脂類が電気加熱手段で加熱されて調理中に突然発火することがある。
そこでこのような問題を解決するものとして、調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、前記調理庫内の温度を検知する温度センサと、前記調理庫内で発生する煙等を調理庫外へ除去する除煙手段と、前記温度センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で発火が発生していることを検知する発火検知手段と、発火報知を行う報知手段と、前記加熱手段および前記除煙手段を通電制御し、かつ前記発火検知手段より入力する信号に基づき前記調理庫内で発火が発生していることを検知すると前記加熱手段および前記除煙手段への通電を抑制し、所定時間経過した後に前記報知手段を駆動制御する制御手段を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3687645号(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、調理庫内で発火を検知する手段が温度センサであったため、発火時点を迅速に検知できないという問題があった。例えば誘導加熱源と電気輻射式加熱源を備えた複合式加熱調理器の調理庫は、内側の有効横幅寸法が36cm以上、奥行き29cm以上、高さも10cm以上のものがあり、このような大きな空間容積の中の空気の温度の変化を検知して発火検知するため、発火時点から相当時間が経過し、火炎が広がり燃焼規模が大きくなってから発火検知することになるという問題があった。そのため発火に対応した制御動作が遅れ、有効な制御ができないという課題があった。またこの特許文献1に開示された発明では、調理庫内に電気加熱手段を1つ設け、除煙手段に1つのファンを設けたものであるため、調理庫内と調理庫外の2箇所で個別同時的に調理する複合式調理器についての適切な発火検知制御については提案されていなかった。
また最近は電磁誘導加熱源と併用できる複合型加熱調理器(IHクッキングヒータと呼ばれることもある)が普及拡大しており、特に台所の厨房家具に組み込まれる組み込み式(ビルトイン式)では、電気輻射式加熱源のみ備えた調理器に比較して高級感のある製品であるため、加熱室の発火を迅速に検知できることに期待が大きい。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑み、発火検知を迅速に行えるようにする加熱調理器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、前記電気加熱手段および前記送風手段を通電制御し、かつ前記発火検知手段からの信号に基づき、前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記送風手段への通電を遮断又は抑制する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る加熱調理器は、調理庫内の被加熱物を加熱する第1の電気加熱手段と、
前記調理庫外で被加熱物を加熱する第2の電気加熱手段と、前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、前記第2の電気加熱手段の通電中、その第2の電気加熱手段を冷却するため運転される第2の送風手段と、前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記第1の電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、前記第1、第2の電気加熱手段および前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、を備え、
この通電制御手段は、前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の双方が同時に通電されて加熱調理されている状態において前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、かつ第2の送風手段への通電条件は変更しないことを特徴とする。
【0009】
さらに本発明に係る加熱調理器は、上面がトップテーブルで覆われ、内部に調理庫を備えた本体と、前記調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、前記トップテーブルの下方に設置され、前記電気加熱手段と独立して通電が制御されて当該トップテーブル上の被加熱物を加熱する誘導加熱手段と、前記電気加熱手段と誘導加熱手段の各通電状態を一元的に報知する報知手段と、前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、前記誘導加熱手段の通電中、その加熱手段を冷却するため運転される第2の送風手段と、前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段に通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、前記電気加熱手段と誘導加熱手段並びに前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、を備え、この通電制御手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記報知手段にて発火を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る加熱調理器は、発火を迅速に検知し、調理庫内で発生する煙等を外部へ排出させる空気流を発生する送風手段を迅速に制御することができる。またその他付随する制御や発火を報知する手段がある場合、それらも迅速に実行させることが可能となる。
さらに個別に通電制御できる加熱体を複数有する複合式加熱調理器においては、他の電気加熱手段による調理制御に悪影響を与えることなく発火時の対応を適切に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
(加熱調理器)
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る複合式加熱調理器を模式的に示すものであって、図1は一部を削除した斜視図、図2は側面視の断面図である。
なお、以下のそれぞれの図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、複数の部材であって、符号に「a、b、あるいはc等」を付記するものについて、共通する内容を説明する際には、符号に付した「a、b、あるいはc等」を削除して、その一方の部材について説明する。
【0012】
本発明の実施の形態において、加熱手段の動作条件とは、加熱するための電気的、物理的な条件をいい、通電時間、通電量、加熱温度、通電パターン(連続通電、断続通電等)等を総称したものである。従って、加熱動作のための通電とは、必ずしも一定の電力で連続的に通電するという意味ではなく、供給電力の大きさを変化させ、また通電も1秒間に数回以上の短時間で繰り返し行うようなものも通電状態を意味する。
【0013】
本発明の実施の形態において、電気加熱とは、電気輻射式熱源を用いた加熱、電磁誘導式加熱(Induction Heating)、誘電加熱(高周波加熱)等を総称したものである。
【0014】
表示とは、文字や記号、イラスト、色彩や発光有無や発光輝度等の変化により、使用者に動作条件や調理に有益、参考となる関連情報(以下、「参考情報」という)や、異常使用を注意する目的や異常運転状態の発生を知らせる目的のもの(以下、単に「調理関連情報」という)を視覚的に知らせる動作をいう。発火状態にあるという情報もここでいう調理関連情報に含まれる。
【0015】
表示手段とは、特に明示のない限り、液晶や各種発光素子(一例としては発光ダイオード、レーザダイオード等、有機電界発光素子など)を含む。このため表示手段の意味には、液晶画面(LCD)やEL画面等の表示画面を含んでいる。
【0016】
報知とは、表示又は電気的音声(電気的に作成又は合成された音声をいう)により、制御手段の動作条件や調理関連情報を使用者に認識させる目的で知らせる動作をいう。
【0017】
報知手段とは、特に明示のない限り、ブザーやスピーカ等の可聴音による聴覚による報知手段と、文字や記号、イラスト、あるいは可視光による視覚的な報知手段とを含んでいる。
【0018】
図1および図2において、加熱調理器100は、略直方体の函体である本体10と、本体10の内部に設けられた調理庫20と、この調理庫に挿入自在な金属製載置皿30と、載置皿30の前方(図2において左側)に設置された扉40と、調理庫20の後方開口部に連通する排気手段60と、本体10の上面に形成された耐熱ガラス製の天板70と、天板70に連続して外周に向かって突出する枠体80と、を有している。
【0019】
(調理庫)
調理庫20は、略直方体状の空間であって、前方(図2において左側)に前方開口部21と、後方(図2において右側)に後方開口部22が形成され、天井近くに輻射式電気ヒータとしてのシーズヒータ等の上ヒータ23と、底面近くに同じくシーズヒータ等の下ヒータ24と、がそれぞれ配置されている。これらヒータ23,24は水平面内で広がりを持つように電源線が接続される両方の端子間は、予め数回屈曲させることでU字又はW字形等の平面形状に形成されている。
【0020】
この2つのヒータ23、24を同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)や調理庫20内の雰囲気温度を設定し、後述する温度センサ142からの温度情報によって火力調節して調理するオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行えるようになっている。例えば、上部天井付近のヒータ23は最大消費電力(最大火力)1200W、底部付近のヒータ24は最大消費電力800Wのものが使用されている。
また、2つのヒータ23、24の火力を含む通電条件、通電時間、あるいは調理庫20の雰囲気温度を設定するための各種操作キー群は、後述する天板操作部81に設けてある。
【0021】
そして、本体10の上面の後方(天板70の後方に同じ)に2つに区画された排気口64が形成され、その1つの排気口64と調理庫20の後方開口部22とを連通する排気風路用のダクト63が設けられている。なお、排気風路用ダクト63には触媒還元作用で排気を浄化する浄化フィルター61と送風機62とが配置されているから、被加熱物(たとえば、魚)の加熱によって発生した煙や臭いが分解され、発生した熱気や蒸気等は排気口64から排出されることになる。その浄化フィルターには浄化作用を活性化するための電気ヒータ61Aが設けられている。この電気ヒータは150W又は300W程度の電力が供給される。なお、もう一方の排気口は本体10の内部空間に連通し、本体内部の各種発熱部品を冷却した空気の排出路の終端になっている。63Aはダクトの上端に形成した排気口で、前記天板70の排気口64と対応したその直下位置にある。
【0022】
(扉)
扉40は調理庫20の前方開口部21を覆うものであって、前面(図2において左側の面)には、縦断面形状が庇状になっている取っ手50が設けられている。したがって、調理者は取っ手50に手を掛けて載置皿30を調理庫20に出し入れすることができる。また、載置皿30を最も奥に押し込んだとき、扉40は調理庫20の前方開口部21の周囲に気密的に密着するものである(正確には、後記する吸気孔45a、45bに限って通気性がある)。
【0023】
(載置皿)
さらに、扉40の裏板42には、載置皿30を支持する皿支持フレーム31が固定または傾動自在に設置されている。皿支持フレーム31はグリル加熱室の側壁に形成されたフレームガイド(図示しない)に案内されて、これに摺動するものである。
【0024】
なお、載置皿30の上方には、被加熱物を直接載置するための載置網32が配置されるが、載置網32を載置皿30の上縁で支持するようにしても、皿支持フレーム31で支持するようにしてもよい。さらに、載置皿30自体に皿支持フレーム31に相当する部位を形成してもよい。
【0025】
(天板)
天板70の上面には、鍋載置サークル71a、71b、71c(以下まとめて「鍋載置サークル71」と称する場合がある)が描かれ、天板70の下面でそれぞれの直下に加熱体72a、72b、72c(以下まとめて「加熱体72」と称する場合がある)が設置されている。加熱体72a、72b、72cは、本体10の前面に設けられた前面操作部11に設置されている(ダイヤル式)火力設定スイッチ73a、73b、73cによって、あるいは枠体80の前方に設けられた天板操作部81に設置されている押圧式火力設定スイッチ74a、74b、74c(図1では代表符号74)によって、操作され、通電条件が設定されるものである。なお、操作や調理の状態は、天板70に設けられた後述する報知手段としての表示部75、例えば天板70の下方に設置された液晶画面により天板上に表示される。なおこの天板には前記した排気窓70Aが形成されている。また前記火力設定スイッチ73a、73b、73c、及び押圧式火力設定スイッチ74a、74b、74cは、全て電源スイッチ(図示せず)を介して電源が供給される。つまり通電制御回路200により、それらスイッチの操作信号が有効、無効になるように構成されている。また天板操作部81には火力設定スイッチ74a、74b、74c以外に、通電時間設定タイマーの操作キーや温度設定キー等各種キーが設置されている。
【0026】
(報知手段)
図1に示すように、天板70の左右方向の中央部で、前後方向の前側に報知手段の一例としての表示部75が設置されている。この表示部は全部の加熱体72の状況を視覚的手段で示すことから「統合表示画面」ともいうが、液晶パネルを主体に構成され、天板70を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つように天板70の下面近傍に設けられている。
【0027】
表示部75は、左側の誘導加熱式加熱体72a、右側の誘導加熱式加熱体72b、中央の加熱体72c及び調理庫20のヒータ23、24の各通電条件やその運転状態(停止や通電等)の設定を入力したり、設定情報を視覚的に確認したりすることができるものである。
すなわち、以下の3つの場面に対応して、通電されているかどうかという動作状況やその通電条件の情報が、文字やイラスト、グラフなどによって表示されるものである。具体的な構造と表示動作について省略する。
(1)左側の加熱体72a、右側の加熱体72bの状態。
(2)中央の加熱体72cの状態。
(3)調理庫20の状態。
なお各加熱体72で加熱調理を行う場合の操作手順や機能(例えば、現在ロースター、グリル、オーブンの何れの種類の調理が行われているか否か)も表示される。また中央の加熱体72cを速熱式輻射型ヒータ(ラジアントヒータともいう)に変えても良く、左側の誘導加熱加熱体72aと右側の誘導加熱加熱体72bの何れかを同様に変えても良い。
【0028】
この表示部75において、実際に情報を表示する画面区域は加熱体72毎に複数個に分割されている。例えば画面を合計12個のエリアに割り当てしてあり、次のように定義してある。
(1)左加熱体72aの対応エリア(火力と時間と温度で各1個)。
(2)中央加熱源72cの対応エリア(火力と時間で各1個)。
(3)右加熱体72bの対応エリア(火力と時間と温度で各1個)。
(4)調理庫20の対応エリア(火力と温度、時間で各1個)。
(5)各種調理における「参考情報」を随時又は使用者の操作で表示するガイドエリア(1個)。
(6)発火検知、異常運転検知時及び不適正操作使用時に使用者に報知する重要な「調理関連情報」の表示エリア(1個)。このエリアは発火検知や異常時における使用者への助言や対処方法などの情報も表示される(その表示内容は合成音声手段によって音声で使用者へ報知しても良い)。
【0029】
上記の合計12個の各エリア(表示領域)は、液晶画面の上に実現されたものではあるが、画面自体に物理的に個別に形成され、又は区画されているものではない。すなわち、画面表示のソフトウエア(マイコンのプログラム)により確立されたものであるので、そのソフトウエアによりその都度面積や形、位置を変えることは可能であるが、使用者の使い勝手を考え、各加熱源72の左右の並び順序に合わせて常に同じ並び順序にしている。つまり、画面上では相対的な位置として、左側に左加熱体72a、真中に中央加熱体72c、右側に右加熱体72bについての情報がそれぞれ表示される。なお、この表示部の表示動作は後述する駆動回路134を通じて通電制御回路200により行われる。上記した表示エリアの切り替え等のソフトウエアはその通電制御回路に格納されている。
【0030】
なお、前記重要表示エリアの表示は、通電条件の表示よりも常に時間的にも、表示面積的にも優先するようになっている。つまり加熱体72やヒータ23、24の火力等を表示している状態で、例えば発火検知された場合、その発火検知を使用者が容易に、かつ明瞭に認識できるように、直ちに表示し、かつ表示文字なども大きく、色彩上も目立つように工夫されている。
【0031】
またこのように各加熱体に共通な統合表示手段としての表示部75において、実際に情報を表示する画面区域を、加熱体72毎に複数個に分割すべく、表示エリアを割り当てておくという技術は特開2008−171757号に詳しく紹介してある。
【0032】
前記加熱体72a、72bは、何れも誘導加熱式加熱体であり、後部中央位置にある加熱体72cは誘導加熱式加熱体又はラジアントヒータ等で知られる輻射式電熱体である。
【0033】
(扉)
図3〜図6は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器における扉を模式的に示すものであり、図3の(a)は部分を分離して示す斜め前方から後方に向かって見た斜視図、図3の(b)は平面視の断面図、図4は斜め後方から前方に向かって見た斜視図、図5は風路を示す斜視図、図6の(a)は側方から見た中央部の断面図、図6の(b)は側方から見た側部の断面図である。
【0034】
(扉)
図6において、扉40は、前面上側の金属製表板41および前面下側のプラスチック製前板45と、後面の金属製裏板42と、表板41および前板45の外周と裏板42の外周とを連結する金属製又はプラスチック製外周板43と、を有する函体である。
表板41は、外周が矩形の耐熱性ガラスから形成されており、透明窓41w(図6において複斜線が付されている)が形成されている。すなわち、透明窓41wを除く裏面全体には不透過性の耐熱塗装面が形成されており、透明窓41wの部分だけは当該耐熱性塗装を施していないので、透明性が確保されている。そして、表板41の下端部41cは、前板45の上端部に形成された垂直方向の溝に挿入されてネジ等の固定手段(図示せず)で固定されている。
【0035】
裏板42は外周が矩形の金属製であって、開口部42wが形成され、表板41に対して後述するシール材121を介して略平行に配置されている。そして、裏板42の外周から前方へ一体に伸びている外周板43(略矩形筒状)と、開口部42w(内周に同じ)から前方へ一体に伸びている内周板44(略矩形筒状)と、を有している。
【0036】
さらに、透明窓41wの背面(後面)には、その全体を覆うような大きさの耐熱性ガラスからなる平板状の内側透明窓120(図6において複斜線が付されている)が設置されている。このとき、表板41の透明窓41wの周囲には耐熱性のゴム等からなる枠状のシール材121が配置され、シール材121を挟んで透明窓41wと内側透明窓120とが対向するから、かかる対向面同士の間には密閉された空気層からなる断熱層Sが形成されている。
【0037】
そして、内側透明窓120の後面には内周板44の前端面が当接しているから、シール材121および内側透明窓120とは重なった状態で、表板41と内周板44とによって挾持されている。
そのため、表板41と、裏板42と、外周板43の上部のコ字状の範囲と、内周板44の上側と、シール材121および内側透明窓120の一部と、によって囲まれた密閉構造の上部ドアー空間49Uが形成されている。また、前板45と、裏板42と、外周板43の下部のコ字状の範囲と、内周板44の下側と、シール材121および内側透明窓120の一部と、によって囲まれた下部ドアー空間49Lが形成されている。
すなわち、扉40には、上部ドアー空間49Uおよび下部ドアー空間49Lの2つの空間が区画形成されている。
【0038】
(通気孔)
図3の(a)において、グリル扉40の前板45の前面には前方に突出する取っ手50が設けられており、前板45の側方寄りに貫通する吸気孔45a、45bが形成されている。なお、図3において、吸気孔45a、45bは6個の丸孔を示しているが、その数量や形状はこれに限定されるものではない。
図4において、グリル扉40の裏板42には側方吹出孔46および中央吹出孔47が形成されている(これについては別途詳細に説明する)。
【0039】
なお、「前板45の側方寄り」とは、使用者が取っ手50に手を掛けた際、手の位置に一致しない範囲を指し、たとえば、前板45の幅方向の中央範囲である約100〜150mmを除く部分で、表板41の側縁41a、41b寄りの範囲を指している。
したがって、図3に示すような表板41の全幅に渡る取っ手50においては、取っ手50の中央範囲である約100〜150mmを除く、側縁41a、41b寄りの範囲を指している。あるいは、取っ手50が表板41の幅方向の中央範囲である約100〜150mmの範囲に設置された場合には、取っ手50を除く側縁41a、41b寄りの範囲を指している。
【0040】
(取っ手)
取っ手50は、前板45の略全幅に渡って設置されるものであって、取っ手50の端部50a、50b(手掛け部52の端部52a、52bに同じ)が、それぞれ前板45の左右両側縁に設置(ネジなどで固定接続)されている。
【0041】
取っ手50は、前板45の前方に向かって略水平に伸びたフランジ部51と、前板45に略平行(正確にはアーチ状)で上下方向に伸びた手掛け部52と、前板45の前面に当接する後面壁55と、が一体に形成された側面視で断面略h字状である。そして、手掛け部52と後面壁55とを連結する一対の仕切壁53a、53bが、所定間隔を空けて設置されている。
さらに、側方寄りで、取っ手50のフランジ部51と後面壁55とが交わる角部に、フランジ部51を上下に貫通するように、細長形状のスリット90が形成されている。
【0042】
(取っ手空間)
したがって、手掛け部52および後面壁55の中央部と一対の仕切壁53a、53bとによって囲まれ、上方をフランジ部51の中央部によって覆われた中央取っ手空間59c(略四角柱状)が形成されている。
また、手掛け部52および後面壁55の側方寄り部と一方の仕切壁53aとによって囲まれ、上方をフランジ部51の側方寄り部によって覆われた側方取っ手空間59a(略直角三角柱状)が形成され、同様に、手掛け部52および後面壁55の側方寄り部と他方の仕切壁53bとによって囲まれ、上方をフランジ部51の側方寄り部によって覆われた側方取っ手空間59b(略直角三角柱状)が形成されている。
【0043】
(透孔)
そして、略直角三角柱状の側方取っ手空間59a、59bにおける後面壁55に、透孔56a、56bが形成されている。取っ手50が設置された状態で、透孔56a、56bはそれぞれ吸気孔45a、45bに一致し、透孔56aと吸気孔45aとによって、透孔56bと吸気孔45bとによって、それぞれ通気路が形成されるようになっている。すなわち、扉40の下部ドアー空間49Lに通ずる吸気通路になる。したがって、台所等の室内の空気は、側方取っ手空間59a、59bから、前記吸気通路を経由して扉40の下部ドアー空間49Lに吸引される。
【0044】
また、取っ手50は、正面視において、吸気孔45a、45bが手掛け部52に覆われているから、直接視認することができない。
そして、平面視において前方中央に行くに従って徐々に突出した「アーチ形状」であるため、手掛け部52の端部50a、50bに近い範囲は、手掛け部52と後面壁55との間隔が狭くなり、使用者が手指を掛けることが困難になっている。すなわち、使用者の手指が側方取っ手空間59a、59bに侵入しないため、調理の際、吸気孔45a、45bが塞がれるおそれがない。また、万一、調理庫20の圧力が上昇して熱気が逆流し、連通している吸気孔45aおよび透孔56a、あるいは連通している吸気孔45bおよび透孔56bから側方取っ手空間59a、59bに熱気が流出した場合であっても、下方のみが開口しているから、かかる熱気は下方に向かって流れ出し、使用者の手指に熱気が触れることがない(図6の(b)参照)。
【0045】
また、仕切壁53a、53bによって中央取っ手空間59cが形成されているから、使用者が仕切壁53a、53bよりも側方に手指を掛けること、あるいは、手指を側方に移動させることがさらに困難になっている。
なお、取っ手50は断面略h字状であって、下方が開口した函体であるから、大きな断面二次モーメントを具備するものであるが、仕切壁53a、53bを設けたことによって、剛性がさらに大きくなっている。また、取っ手50(含む、仕切壁53)は前板45と一体的に成形してもよい。
【0046】
(吹出孔)
図4において、グリル扉40の裏板42の側縁42a、42b寄りの範囲に、貫通する側方吹出孔46a、46b(以下まとめて「側方吹出孔46」と称する場合がある)と、裏板42の中央範囲に、貫通する中央吹出孔47と、が形成されている。
【0047】
図4および図5において、側方吹出孔46は、前板45に形成された吸気孔45a、45bと同様に「側方寄り」に配置されているものの、吸気孔45a、45bとは上下方向で位相が一致していない(ズレている)。このため、透孔56aおよび吸気孔45aと透孔56bおよび吸気孔45bとを通過した吸気(空気)は、側方吹出孔46に直接侵入することはなく、裏板42に衝突して下部ドアー空間49Lに充満した後、側方吹出孔46および中央吹出孔47から調理庫20に吹き出すことになる。
【0048】
このとき、中央吹出孔47の開口面積が側方吹出孔46の開口面積より大きくなっているから、吸気の吹き出しが吸気孔45a、45bに近い側方吹出孔46に集中することがない。したがって、吸気孔45a、45bから遠い中央吹出孔47からの吹き出し量が確保されるから、調理庫20の全幅に渡って、比較的均一な風流れが形成され、被加熱物Nの均一な冷却が可能になる。
【0049】
また、後面壁55の左右両端部に形成された透孔56aおよび吸気孔45aの通路と、透孔56bおよび吸気孔45bの通路とが、扉40の外部からドアー空間49に通ずる吸気通路になるから、室内の新鮮な空気が吸気となって下部ドアー空間49Lに充満するから、かかる吸気によって透明窓41wや取っ手50が冷却されることになる。
【0050】
なお、図4において、側方吹出孔46および中央吹出孔47はそれぞれ長穴であるが、その形状、数量さらに、配置の範囲をこれに限定するものではない。たとえば、それぞれを複数の丸孔によって構成してもよい。このとき、当該丸孔の単位面積当たりの形成数あるいは開口面積(丸孔の直径)を、中央吹出孔47の方が側方吹出孔46よりも、密にあるいは大きくしておけば、調理庫20において全幅に渡る均一な風流れが形成される。
【0051】
また、裏板42の全幅に渡って側方吹出孔46および中央吹出孔47を形成してもよい(このとき、側方吹出孔46および中央吹出孔47の境界が明確でなくなる)。このとき、かかる吹出孔の開口面積(丸孔のとき、その直径)を、裏板42の中央に近づく程大きく、あるいは、かかる吹出孔同士の間隔を中央に近づく程狭くしておけば、グリル加熱室20において全幅に渡る均一な風流れが形成される。
【0052】
さらに、下部ドアー空間49Lに、風流れを誘導する誘導板(いわゆる「邪魔板」)やオリフィスを形成して、吹き出す空気の流れを均一にしてもよい。なお、側方吹出孔46および中央吹出孔47から吸引導入される空気は、調理庫20内部から(温度上昇に伴って空気が膨張することや前記排気用送風機62による誘引作用によるもので)排気される空気量を補う程度である。過剰に空気を調理庫20に押し込むと調理庫20内部にヒータ23,24で蓄えた熱気(熱エネルギー)を無駄に放出してしまうことになり、加熱効率低下を招き、電気エネルギーの無駄に繋がってしまうからである。
【0053】
(シール用パッキン)
図4において、裏板42の外周にそって、矩形環状にシール用パッキン48が固定されている。シール用パッキン48は扉40を後方に押し込んだ際、調理庫20の前方開口部21の前面周囲に結合された金属製前板169に気密的に当接するものであって、吸気孔45a、45b以外の個所から空気がグリル加熱室に侵入しないようにシールしており、断面が真円形や楕円形又は2重の円形などの形状になっていて扉40閉鎖時に圧縮力を受けた際に容易に変形するよう全体が柔軟性のある耐熱性ゴムで形成されている。
【0054】
前記調理庫20は、前方開口部21と、後方開口部22が形成された筒形の金属製内ケース25と、この内ケースの外側を一定の間隙27を置いて囲んだ筒形の金属製外ケース26とを備えている。28は図2に示すように内ケース25底部を上下に二分するように水平に設置した金属仕切り板で、この仕切り板の上方に有効内寸法(高さ)Hの調理庫20が形成される。つまり仕切り板28は調理庫20の実質的な内側底面になる。内ケース25と外ケース26とが密閉された微小間隙27を置いて二重壁構造になっているため、内ケース25の内側空間の高温状態が外ケース26を通じて外部へ伝達されにくいようになっており、熱効率を高めている。
【0055】
29は前記仕切り板28の中央に大きく形成した凹み部の前方垂直部に形成した小さな口径の貫通孔、122は調理庫20の中に設置した状態の載置皿30の前縁と扉40の裏板42との間に形成される空隙、28Aは前記仕切り板28の前方端部に形成した通気孔であり、この通気孔と前記空隙122と前記貫通孔29は調理庫20内部へ扉40を通じて流入する空気の流路になる。
【0056】
(通電制御手段)
図7に示すように、本発明の実施の形態1における通電制御手段200は、1つ又は複数のマイクロコンピュータを内蔵して構成されている通電制御回路によって形成されている(以下、通電制御手段は、通電制御回路と称する)。
通電制御回路200は、入力部110と、出力部111と、記憶部112と、演算処理制御部113とから構成されている。通電制御回路200は、定電圧回路(図示せず)を介して直流電源が供給されて、全ての加熱体と表示部75を制御する中心的な制御手段の役目を果たすものである。
【0057】
図7において、100V又は200V電圧の商用電源に対し、整流回路114(整流ブリッジ回路ともいう。)を介して、右加熱体72bのインバータ回路172bが接続されている。
同様に、この右加熱源体のインバータ回路172bと並列に、左加熱体72aのインバータ回路172aが整流回路221(図示せず)を介して、前記商用電源に接続されている。
【0058】
130は中央加熱体72cのヒータ駆動回路である。131は調理庫20の庫内加熱用の上ヒータ23を駆動するヒータ駆動回路、132は同じくヒータ24を駆動するヒータ駆動回路である。
133は前記排気風路用ダクト63の途中に設けた触媒ヒータ61Aを駆動するヒータ駆動回路、134は表示部75の液晶画面を駆動する駆動回路である。135は本体10の内部空間を一定の温度範囲に保つための冷却用送風機136のモータの駆動回路である。なお、この送風機は、本体10の前面操作部11の後方空間に設置されており、その送風路の中に前記加熱体72a、72bの誘導加熱コイル部があり、そのコイル部が空冷される構成になっている。
【0059】
137は前記表示部75の周辺に冷却用の空気を供給する補助冷却用送付機138のモータの駆動回路である。
【0060】
右加熱源体72bのインバータ回路172bは、細い銅線を円盤状に巻いて構成された誘導加熱コイル部(図2で符号72を付けている部分)と、商用電源の母線に入力側が接続された整流回路114と、この直流側出力端子に接続されたコイル及び平滑化コンデンサからなる直列回路と、そのコイルと平滑化コンデンサの直列回路に接続された共振コンデンサを有する共振回路と、この共振回路にコレクタ側が接続された電力制御用半導体素子としてのスイッチング手段(IGBT等)と、を備えている。
【0061】
116は電流検出センサである。この電流検出センサは、誘導加熱コイルと共振コンデンサの並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出する。電流検出センサ116の検出出力は通電制御回路200の入力部110に供給され、誘導加熱に不適当な鍋などが用いられた場合や、何らかの事故などによって正規の電流値に比較して所定値以上の差の過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200により駆動回路117を介してIGBT117が制御され、瞬時に右側加熱体72bの通電を停止するようになっている。
左側加熱体72aのインバータ回路172aは、右側加熱体72bと同等の回路構成であるので説明は省略する。
【0062】
また電流検出センサ116と同様なセンサが左側加熱体72aのインバータ回路172aにも同様に設けられている。
【0063】
本実施の形態1のような誘導加熱方式で被加熱物Nを加熱する調理器においては、加熱コイル6RC、6LCに高周波電力を流すための電力制御回路は、いわゆる共振型インバータと呼ばれている。共振型インバータには、200V電源用に適すると言われている電流共振型と、100V電源に適すると言われている電圧共振型とがある。
このような共振型インバータ回路の構成には、加熱コイルと共振用コンデンサの接続先をどのように切り替えるかによって、いわゆるハーフ・ブリッジ回路とフル・ブリッジ回路と呼ばれる方式に分かれるが、本発明はこのような基本的な回路方式の違いは一切関係しないので、適宜選択すれば良い。
【0064】
(温度検出回路)
図7において、139は温度検出回路である。この温度検出回路には、以下の各温度検出素子(以下、温度センサと称する)からの温度検出情報が入力される。
(1)左側加熱体72aの加熱コイル中央部に設けた温度センサ140L。
(2)右側加熱体72bの加熱コイル中央部に設けた温度センサ140R。
(3)中央加熱体72cの近傍で真上に設けた温度センサ141。
(4)調理庫20の庫内温度検出用温度センサ142。
(5)表示部(統合表示手段)75の近傍に設置した温度検出素子143。
(6)本体10の右側空間の電気部品室に設置された放熱フィンに密着して取り付けられた温度センサ144R(右側加熱体72b用)。
(7)本体10の右側空間の電気部品室に設置された放熱フィンに密着して取り付けられた温度センサ144L(左側加熱体72a用)。
なお、ここでいう放熱フィンとは、前記インバータ回路172a、172bを構成している前記IGBTなどの発熱性電気部品を取り付けたものであり、前記冷却用送風機136が本体10外部から吸引して供給する冷却風の風路内に位置している。
【0065】
なお、上記温度センサは温度検出対象物に対して2箇所以上設けても良い。例えば右側加熱体72b用の温度センサ140Rを、その加熱コイルの中央部と、外周部分に設け、より正確に温度制御を実現しようとするものでも良い。また温度検出素子を異なる原理を利用したもので構成しても良い。例えば加熱コイル中央部の温度検出素子は赤外線方式で、外周部分に設けたものはサーミスタ方式としても良い。
【0066】
冷却用送風機136の駆動回路135は、温度検出回路139からの温度測定状況に応じ、それぞれの温度測定部分が所定温度以上高温にならないように常に送風機136を運転して、必要な運転状態(送風量の大小)で十分な冷却風を供給して各所を冷却する。
【0067】
同様に補助冷却用送風機138の駆動回路137は、表示部75の液晶画面部分が所定温度以上高温にならないように、温度検出回路139からの温度検出情報に基づき必要な運転状態(送風量の大小)で表示部75とその周辺を冷却する。これら駆動回路135、137は前記通電制御回路200によって送風用モータの駆動信号を発生する。
【0068】
(発火検出手段)
図7において、150は発火検知手段である。この発火検知手段は、以下の構成を備えている。
151は発火検知手段150の全体の動作を制御する制御部、152は発火状態かどうかを判定する判定部で、予め発火判定基準のデータが格納された半導体記憶部153からの判定基準データと、赤外線信号を受信する受信部154からの検出データとを比較して出火判定を行う。155は受信部154の動作確認のために擬似的赤外線信号(波長4.4μm)を前記受信部154に向けて発信する発信部である。
【0069】
図8に示すように前記受信部154は、断熱性材料から形成された箱形ケース162と、このケースに内蔵された赤外線受光センサ156と、発火状態を検知する炎センサ157とを備えている。
前記受信部154は、外ケース26の天井面の前方部中央に形成された開口159に臨ませてあり、その開口159に対応してその下方の内ケース25天井面には窓161が形成されている。
【0070】
161は前記窓161の下方全体を覆うようにその窓の中に上端部がネジ込み等の固定手段で着脱自在に固定された保護ケースで、耐熱性プラスチックや耐熱ガラス等のような透明材料より四角錘や円錐形状に形成されている。
【0071】
図8に示すように前記発信部155は、前記扉40の上部ドアー空間49Uの内部に格納されている。165は断熱性材料から形成された箱形ケース、158はこのケースに内蔵された擬似的赤外線信号発信する発光素子である。この発光素子の発光面は前記調理庫20の天井部に設置した赤外線受光センサ156の受光面に向かい合うように上方に傾いて設置されている。前記受光センサ156と発光素子158を結ぶ直線を横切るように前記保護ケース161の外周面が位置しているため、受光素子158は発光素子158から放射される所定波長域の赤外線信号を、その保護ケース161を介して受信することになる。このため、この発光素子158から受信する赤外線信号の受信強度を見て保護ケース161外周面に付着した汚れの状態を判定部152が判定できる。これにより発火状態を検知する炎センサ157が、保護ケース161の表面に堆積した汚れによって発火状態を検知できないようになる前に、その保護ケース161の汚れを検知できる。
【0072】
163は前記発信部155の発光素子158の発光経路に該当する扉40の裏板42に形成した窓で、耐熱性の板で密封されている。164はこの窓163部分を含めて裏板42の表面(調理庫20に臨む側)を覆った保護材で、耐熱性でかつ赤外線透過性の薄い透明シート又は板材から形成され、裏板42に着脱自在に取り付けられている。
【0073】
なお、燃焼時の炎を検知する炎検知器は火災報知機で実用化され、また学会誌等でも紹介されている。
炎から放射される赤外線には、単なる高温物体や太陽光等から放射される赤外線とは異なる顕著な特徴があるので、そのような特徴を利用して発火検知できる。
【0074】
その特徴の一つは、二酸化炭素(CO2)共鳴放射といわれる現象で、物質が燃焼するときに、多量の二酸化炭素が発生するが、この二酸化炭素は近赤外線域の特有な波長帯に二つの放射スペクトルのピークを示す。その一つはCO2共鳴放射と呼ばれており、波長4.4μmでスパイク状に立ち上がるピークがあることで、これを検出してCO2共鳴放射を検出し、炎検知を行うことである。
【0075】
さらに炎に顕著な別の現象として、「ちらつき」現象がある。物質が燃焼するときには酸素の供給が必要であり、その中に拡散燃焼という状態があり、一般的な燃焼はこの拡散燃焼状態で、この拡散燃焼状態で炎はゆらぐ(ちらつく)現象が生じることから、このゆらぎを検出することで発火検知できる。なお、炎のゆらぎ時に放射される赤外線量は常に変動し、その変動周波数は1〜15Hzの間に集中する。
そこで、CO2共鳴放射の波長帯のみを検出するように、光学フィル夕を赤外線受光センサより前段に設け、入射した赤外線から上記特定波長(4.4μmを中心にこの前後の2つの周波数、例えば4.0μmと4.8μmの2つを加え計3波長)付近の赤外線を赤外線センサに入射し、電気信号に変換すれば良い。この後その電気信号を3つの波長域毎に電気的バンドパスフィルタを持つ信号増幅部にて、1〜10Hzのちらつき周波数成分だけを選択すれば、火炎が発生したことを判別できる。なお室内の人工照明や自然光などに影響されずに発火を検知できる。
【0076】
(加熱調理器の動作)
次に、上記の構成からなる加熱調理器の動作の概要を説明する。
図9〜14は、通電制御回路200の内部にある記憶部112に格納された基本動作プログラムに基づく動作を示すフローチャートである。その基本動作プログラムは、電源投入から調理準備開始、調理、終了、電源切りまでの基本動作を規定している。
【0077】
図9において、まず電源プラグを200Vの商用電源に接続し(ビルトイン型では通常常時接続されているので接続動作不要)、主電源スイッチ(前面操作部11にあるが、図示せず)の操作ボタンを押して電源を投入する(ステップ1。以下、ステップはSTと省略する)。
すると、定電圧回路(図示せず)を介して所定の電源電圧が通電制御回路200に供給され(ST2)、通電制御回路200は自身に格納されている制御プログラムを起動する。
通電制御回路200は、調理器の自己診断チェックを開始し、調理前異常監視処理を行うため、表示部75用の駆動回路134と、その表示部の冷却用送風機138用の駆動回路137を駆動する(ST3)。
【0078】
(調理開始前の異常監視)
温度検出回路139は、合計7個所に設けた温度検出素子140、141、142、143、144からの温度データを読み込み、その温度データを通電制御回路200に送る(ST4)。
以上のようにして通電制御回路200には、調理器本体10の主要な構成部分の温度データが集まるので、調理前に異常に高温度になっている部分があるかどうかを判定する(ST5)。例えば、温度検出素子143により検出された表示部75の液晶基板周辺の温度が、その液晶表示基板の耐熱温度(例えば70℃)を基準に、それよりも所定温度(例えば5℃低い場合、つまり65℃)を超えた場合は、異常高温と判定する。通常は起動直後で、そのように表示部75の液晶表示基板周辺が高温になっているはずはないが、例えば前回高温の天ぷら調理し、その高温の鍋がそのまま表示部75の真上位置で天板70上に置かれ、調理器の電源が切られているケースが想定される。また右側加熱体72bの加熱コイルの中央部に設けた前記温度センサ140Rの温度が例えば100℃となっている場合も、(通電開始前)には通常あり得ない事態である。
【0079】
また温度センサ141が高温を示している場合は、天板70が未だ熱い可能性があるので、表示部75やその他表示部(図示していないが、天板70直下にあってその上方に光を点滅するなどの方法)で高温報知をする(使用者が触れないような注意情報を示す)。
【0080】
以上の自己診断ステップによって異常判定(異常高温)があると、調理前異常処理1のステップに移る。調理前異常処理1では、調理開始の指令を無効とするため、使用者が指令しても調理開始にならない。また表示部75にて「異常」の内容を表示し、通電開始した各部分の電源を切る動作をする。再度起動するには、ST1の主電源スイッチ投入が必要になるが、高温状態に変化なければ同じ動作フローになり、再度電源は強制的に遮断される。なお、高温報知は専用の警告ランプや表示部で表示することでも良く、使用者が最も見る頻度が高い表示部75だけではなく、それらの専用表示部での表示を併用し、あるいは専用表示部の表示で代用するようにしても良い。
【0081】
異常判定が無かった場合は「調理開始準備完了」となる。そして、異常がない場合には、表示部75に「正常」状態で調理開始できることを表示し、誘導加熱にするのか又は調理庫20を使ったグリル調理やオーブン調理を希望するのか等、調理メニューの選択を促す表示をする(ST6)。
【0082】
調理メニューの選択があったかどうかを判定し(ST7)、選択があった場合は、当該調理メニューの動作プログラムが実行される。しかし選択がなかった場合、10分間はそのまま待つが、10分を過ぎても何も選択されない場合は、安全上の観点と省エネの観点から、10分経過の判定(ST8)により、自動停止の処理(ST9)に進む。自動停止の処理では、表示部75にて「自動停止」の内容を表示し、通電開始した各部分の電源、例えば送風機136の電源を順次切る動作をして終了する。再度起動するには、ST1の主電源スイッチ投入が必要になる。
【0083】
(誘導加熱調理)
誘導加熱調理を選択した場合について説明する。図10は右側の加熱体72bで調理する動作を示している。まず調理メニューの選択動作を選ぶと、その指令信号を通電制御回路200が受信し、選択された加熱源の調理開始プログラムを起動する。
なお、誘導加熱調理を選択する操作は、前記前面操作部11の火力スイッ73bが非使用時は前面操作部11表面と面一状態になるよう内部に没しており、これを押す操作すると、内部のバネ機構の力で突出状態になるが、この瞬間にその突出動作で選択動作が行われる。つまり、火力スイッチ73bを全面操作部11表面に突出させたことが右側加熱体72bによる調理を選択したことになる(ST10)。
【0084】
通電制御回路200が右側加熱体72bの調理開始プログラムを起動し、そのインバータ回路172bに駆動部117を介して所定のチェック電流(誘導加熱のために最小の電力)を流すと同時に冷却用送風機136を最小能力で回転駆動する(ST11)。これにより右側加熱体72bの加熱コイルから高周波磁束が発生する(ST12)。
インバータ回路172b設けられた電流検出センサ116は、インバータ回路の共振回路に流れる電流を検出し、この検出結果を通電制御回路200の入力部110に供給する。
【0085】
通電制御回路200は、入力部110に入力された共振回路の電流検出結果と、記憶部112に記憶されている判定基準データの正規の電流値とを比較して、過少電流や過大電流が検出された場合には、何らかの事故や導通不良などと判定し、異常と判定する(ST13)して、異常時処理2のステップに移る。
異常時処理2では、その使用開始していた右側の誘導加熱体72bによる調理動作は緊急で停止される。また表示部75にて「異常」の内容を表示し、通電した各部分の電源を切る動作をする。再度起動しても異常状態に変化なければ同じ動作フローになり、再度電源は強制的に遮断される。
【0086】
この状態では補助冷却用送風機138は所定の定格電流で既に運転されており、表示部75の液晶基板部とその周辺に冷却風を送って冷却されている。なお、冷却用送風機136は、左側加熱体7272aなど他の加熱体72のインバータ回路172a等発熱部を冷却していない場合は、その送風機136も短時間の内に停止される。
【0087】
次に、通電制御回路200は、異常判定ステップ(ST13)で異常が無かった場合は「調理開始準備完了」となり、表示部75に「火力設定」を促す表示をする(ST14)。なお、使用者が前記前面操作部11の各電源スイッ73を押し出し、その直後瞬時に回動操作すれば、その回動量に応じて火力が決定されるが、実際にその設定火力で加熱調理が開始されるタイミングは遅れ、その間に前記したST11〜14までに異常チェックのステップが実行されて異常がなければ設定された火力での調理に入るという安全策を採用している。
【0088】
図11は右側の加熱体72bで誘導加熱が開始された場合の制御動作の過程を示している。使用者が火力スイッチ73bを回動操作して火力が決定された場合(天板操作部81の操作キーの操作で火力設定しても同じ)(ST15)、その設定火力(例えば1Kw)に基づいて、通電制御回路200はインバータ回路172bの駆動回路117を駆動する(ST16)。また、通電制御回路200は、表示部75の駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、加熱動作実行中の火力(この場合、1Kw)や通電時間などの通電条件の情報を文字や記号、イラスト等で表示させる(ST17)。さらに送風機136は設定火力で発生する熱量に対応できるよう、最小能力運転から所定の定格能力運転に変更される(ST17)。もし、火力が最大(3Kw)に設定された場合、送風機136の運転能力も定格最大能力になるよう変更される。
【0089】
これにより、駆動回路117がスイッチング回路115に内蔵されたIGBTなどの電力制御用半導体スイッチング素子のゲートに対して駆動電圧を印加することにより、誘導加熱コイルに対してインバータ回路172bで発生した高周波電流が供給される(ST18)。
【0090】
このため加熱コイルからの高周波磁束により被加熱物の金属製鍋に高周波磁束が交鎖し、渦電流によるジュール熱の発生で鍋が高温になり、導加熱調理モードに入る(ST19)。
【0091】
(誘導加熱中の異常監視)
本実施の形態1における加熱調理器は、加熱開始前の異常判定に加えて図11に示すように、誘導加熱調理時も異常監視制御を行う。
誘導加熱調理中に温度が上昇する部分は、左右の加熱体72の加熱コイルの他に、本体10の前面操作部11後方空間の電気部品室内部に設置された2つの放熱フィンと、表示部75の部分が考えられる。
そこで通電制御回路200は、温度検出回路139を介して、左右の加熱体72の加熱コイルの中央部に設けた前記温度センサ140R、140Lや、温度センサ143からの温度データを監視し、異常な温度になっていないかどうかを監視する。
【0092】
まず温度センサ143からの温度データで、異常高温と判定された場合に対しては、通電制御回路200は、図14に示すように是正可能な異常であるかどうか判断する(ST23)。
是正可能な異常としては、表示部75の温度異常や加熱体72の温度異常がある。
(1)表示部72の温度異常:表示部75の検出温度が65℃を超えている場合、その表示部75を冷却する送風機駆動回路135を制御して、その送風機の回転数を増加させて冷却風量を増加させ、これを所定時間継続しても改善の効果が現れない場合は、加熱体72bの火力(電力)を(使用者が設定したものから)強制的に下げる。
(2)加熱体の温度異常:例えば右側加熱体72bの加熱コイルが異常高温になっていると判定した場合は、送風機136の駆動回路135を制御して、その送風機の回転数を増加させて冷却風量を増加させ、これを所定時間継続しても改善の効果が現れない場合は、加熱体72bの火力(電力)を(使用者が設定したものから)強制的に下げる。例えば、1段階下の火力、300W下の火力、又は10%の火力、の3者の内で、最大の火力までダウンさせる(3KW火力で使用していた場合は、送風機の送風能力増加させず、直ちに火力を2.5KWに下げる)。
【0093】
このような異常是正処理(ST24)で火力ダウンを実行した場合、通電制御回路200は表示部75の駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、火力を自動的に下げた旨の情報を表示させる(ST25)。なお、送風機136、138の回転数を増加させて送風能力増加させた場合は、何も表示しない。
【0094】
その次の処理ステップへ進み、インバータ回路172bの電流異常を判定する(ST21)。ここでは、通電制御回路200が電流検出センサ116により検出された電流値が正規の電流値に比較して過少電流や過大電流であるか否かを判断する。もし、電流検出センサ116により検出された電流値が過少電流や過大電流である場合、異常是正可否判定処理(ST23)は是正不可と判定し、通電制御回路200は駆動回路117を介してインバータ回路172bのスイッチング回路115を制御し、瞬時に誘導加熱動作を停止する。その上で駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、異常電流検知したため、緊急停止した旨の情報を表示させる(ST26)。
【0095】
前記電流異常を判定するステップ(ST21)で異常なしと判定されると再び温度異常の判定ステップ(ST20)に戻るが、ここでは以前に異常是正処理(ST24)が行われている場合、その是正処理前の温度と今度の温度との比較が行われる。送風機136,138の送風能力を増大させても直ぐに効果が現れない場合があるので、このような是正処理の場合は、同じ異常是正処理(ST24)を繰り返すことはなく、このような異常監視を反復実行している中で、一定時間経過後に異常判定処理(ST20)が行われる。そこで異常是正処理の効果が現れていない場合、例えば最初表示部75の温度センサ143が65℃を検出し、送風機138の運転速度を上げたにも拘らず依然として危険温度の70℃まで温度上昇していることが判明した場合は、是正不可の異常であると判断(ST23)し、異常時処理2のステップへ進め、瞬時に右側加熱体72bの誘導加熱動作を停止する。その上で駆動回路134を駆動して、表示部75の所定の表示エリアに、異常な高温度になったため、緊急停止した旨の情報を表示させる(ST26)。なお、この異常判定処理(ST23)時、仮に左側加熱体72aも同時使用していた場合、それも通電停止される。
【0096】
また是正可能な異常であるかどうか判断するステップ(ST23)で、表示部75の液晶表示基板用温度センサ143の検出温度が所定温度(例えば70℃)になった場合、は、異常時処理2のステップ(ST26)へ進め、加熱体72bの通電を直ちに停止する。
【0097】
このように何らかの異常により通電を停止した場合、通電制御回路200は表示部75の駆動回路134を駆動して、右側加熱体72bを自動停止した旨の情報を表示させる。そのため使用者が調理の途中で最も注目する表示部分である表示部75の画面表示を見れば、異常発生で自動停止したことが容易に理解できる状態になる(表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い)。これにより使用者の無用の不安感や混乱を払拭できる。
【0098】
異常状態検知されたことで右側加熱体72b(左側加熱体でも同じ)の通電停止指令が出された異常時処理2(ST26)の段階で、その加熱体の通電は瞬時に停止されるが、加熱コイル等を冷却している冷却用の送風機135,138は、前記通電停止後も2分間〜5分間運転継続する(ST42)。これにより、冷却用の送風機135,138からの送風停止直後から本体10内部に熱気が滞留したままになり、温度が急激に上昇するというオーバーシュート問題も未然に防ぐことができる。また、表示部75周辺の温度が高くなるという弊害も防ぐことができ、天板70が高温になったまま停止するということを防ぐ。
これら送風機の運転継続時間は、通電停止までの温度上昇の様子や室内気温、使用された加熱体72の運転火力大小等の条件に対応して通電制御回路200が予め決められた算式や数値テーブルから決定する。
【0099】
なお、異常発生による異常時処理2(ST26)のあと、本体10の内部を送風機235,136で所定時間空冷した後、通電制御回路200は最後に自らの電源を遮断するために主電源回路の遮断動作を行う。本体10の内部が所定温度以下まで温度が下がるまで送風機235,136を運転し、その上で主電源回路の遮断を行うように、温度によって運転時間の終わりを決定するようにしても良い。
【0100】
(調理庫での調理)
前記誘導加熱調理の期間中であるかに拘わらず、天面操作部81の操作キーを操作すると、調理庫20の上ヒータ23と下ヒータ24を同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)やオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行える(図12のST27参照)。
但し、本実施の形態1のように、同時に使用可能な多数の加熱手段を有する複合形加熱調理器の場合、複数の加熱手段を同時使用したときの総入力電流が家庭の配電盤の電流容量制限を超過しないようにそれぞれの加熱手段の最大設定可能火力を制御する必要があるので、すでに右側加熱体72aが3KWの火力で運転している状態では、通電制御回路200は、ヒータ23、24の火力が、(総電力容量4.8KW)−3KW)=(1.8KW)を超えないように、火力設定範囲を制限する(このような制御はデマンド制御と呼ばれている)。誘導加熱調理が行われていない場合は、ヒータ23は最大消費電力(最大火力)1200W、ヒータ24は最大消費電力800Wのものが使用されているので、合計2000Wで加熱調理できる。
【0101】
なお、先にヒータ23、24の通電が開始されて調理開始されている場合は、その後から他の加熱体を使用しても、そのヒータ23、24の火力は自動的に下げられることはない。また、通電制御回路200は、所定の優先順位を各加熱体について定めておき、優先度の高い加熱体の火力設定を優先して各加熱体の火力を割り振るようにしてもよい。
【0102】
調理庫20の上ヒータ23と下ヒータ24に通電されて例えばオーブン調理(例えば、ケーキ)を行った場合、庫内温度センサ142から随時温度測定情報が温度検出回路139に入力され、この温度検出回路からの情報に基づき通電制御回路200は駆動回路131,132を介してヒータ23,24の通電条件、例えば通電火力や通電率を変更し、使用者が設定した調理に適する温度に調理庫20内が保たれるように制御する。
このオーブン調理の場合、上ヒータ23と下ヒータ24に通電開始と同時又は所定時間遅れて、前記触媒ヒータ61Aと送風機62は運転開始される。また上ヒータ23と下ヒータ24の通電が終了してもそれらは所定時間運転継続され、その後運転が停止される。
【0103】
図15は、上ヒータ23と下ヒータ24と前記触媒ヒータ61Aの通電状態を示す説明図で、横軸が調理開始からの時間軸、縦軸は供給される電力(W)を示している。
この図9に示すように、調理庫20で加熱調理を行った場合、ほぼ同時に上ヒータ23と下ヒータ24と前記触媒ヒータ61Aの3者に通電が開始されるが、触媒ヒータ61Aは加熱庫20内の温度が所定の高温に至るまで、または所定の時間を経過するまで
は通電しないようにしても良い。
使用者がタイマーにて設定した所定時間又は調理に応じて予め設定されている時間を経過した時点(図9のT3)で上ヒータ23と下ヒータ24の通電が終了し、そのあとも前記触媒ヒータ61Aと送風機62は所定時間(例えば5分間)はそのまま運転継続され、T4の時点でそれらへの通電は停止される。
【0104】
(調理庫調理中の異常監視)
本実施の形態1における加熱調理器は、調理庫20による加熱調理中も図12に示したように異常監視制御を行う。
なお、通電制御回路200が最初に起動された際には、前述したように図9に示した動作フローチャートのST4の通り、温度検出回路139は、合計7個所に設けた温度検出素子140、141、142、143、144からの温度データを読み込み、その温度データを通電制御回路200に送って、通電制御回路200によって、調理開始前に異常に高温度になっているかどうか判定されている(ST5)。
このように調理開始前に異常判定がない場合、使用者が調理メニューを選択し、通電条件などを入力する(ST27)と、通電制御回路200は駆動回路130,131を通じてヒータ23,24に通電を開始し、使用者が選択した調理に相応しい通電条件でヒータ23,24を制御する(ST28)。
【0105】
通電制御回路200は、加熱調理中において、温度センサ142により検出された温度が予め設定した温度の上限を超えた場合、あるいは調理開始からその火力に応じた温度上昇速度が異常に速い場合、または異常に遅く温度上昇が緩慢な場合等の場合、通電制御回路200は異常と判定する(ST29)。
もし、温度異常と判定された場合、通電制御回路200は、所定の異常時処理3を実行する。
例えば、温度上昇が十分でない場合は、扉40を完全に閉めていない場合が想定されるので表示部75の所定の表示エリアでその旨使用者に注意喚起する文字や記号等を表示し、扉40の密閉確認を促す(表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い)。この報知後に異常状態が解消されているかどうかは再度所定時間後(次の発火有無検知のステップST30を終えたあと)、再び判定され、解消していない場合は、ヒータ23、24の通電は緊急停止され、表示部75の所定の表示エリアに、異常温度で緊急停止した旨の情報を表示させる(ST26)。
【0106】
(調理中の発火監視)
本実施の形態1における加熱調理器は、調理庫20による加熱調理中に被加熱物Nが燃焼することも異常の1つと捉え、この発火監視制御を行う。
図13に示すように、まず最初に、制御部151は送信部155を起動(ST32)し、所定の周波数帯域の赤外線信号を試験用の擬似的赤外線信号として発光素子158から発信する(ST33)。
発光素子158の発光面は前記調理庫20の天井部に設置した赤外線受光センサ156の受光面に向かい合うように設置されており、また前記受光センサ156と発光素子158を結ぶ直線を横切るように前記保護ケース161の外周面が位置しているため、受光センサ156は発光素子158から放射される所定波長域(4.4μm)の赤外線信号を、その保護ケース161を介して受信することになる。
【0107】
このため、この発光素子158から受信する赤外線信号の受信強度を判定部152が見て保護ケース161外周面に付着した汚れの状態を判定する(ST34)。長期間の使用により油煙成分が付着したりして調理庫20の内側壁面が汚れている場合もあり、その場合保護ケース161も同様に汚れている場合が予想されるが、この実施の形態1によれば、前記したように保護ケース161の汚れ検知が事前にできるので、発火状態を検知する最も重要なセンサである炎センサ157が、保護ケース161の表面に堆積した汚れによって発火状態を検知できないようになる前に、汚れの有無を検知できる。
【0108】
制御部151は汚れ判定がなされるとその旨通電制御回路200に報告するので、通電制御回路200は表示部75の所定の表示エリアにて清掃を促すメッセージを表示する(ST37)なお、表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い。
ここで保護ケース161の周面を清掃することが望ましいが、発信部155の発光素子158の発光経路上にある扉40の裏板42に形成した窓163には、保護材164が着脱自在に取り付けられているので、これを取り外して清掃したり、あるいは新しい保護材164に交換したりすることが望ましい。なお、このように保護材164の汚れがあると発火検知に影響があることを使用者に意識付けることは保護ケース161の汚れに認識を深めることにも繋がる。
【0109】
汚れ判定がない場合は、受光素子158は被加熱物Nから放射される所定波長域の赤外線信号を監視する動作に入る(ST35)。被加熱物Nが油脂の多い魚や肉などの場合、その油脂がヒータ23,24の高熱で発火する場合がある。このような魚や肉だけに特有の現象ではないが、物体は高温になるに伴いそれ自体から放射される赤外線の量が増えるが、発火して燃焼すると、前記したように燃焼特有の現象として、燃焼による炎から、特定波長(4.4μm)帯付近の赤外線が放射され、また「ゆらぎ現象」が発生するという特徴がある。
【0110】
このため、このゆらぎ現象を検知し、炎があるかどうか、発火したかどうかを判定部152は記憶部153に記憶された基準データとの比較で判断する。
もし発火と判定された場合、その判定信号を受けて通電制御回路200は発火時処理(ST38)という制御を行う。発火時処理とは例えば次のようなものである。
【0111】
(ア)排気風路用ダクト63にある浄化フィルター61の電気ヒータ61Aと送風機62の運転の内、送風機62の運転は直ちに停止される。一方、電気ヒータ61Aの運転はそのまま継続され、調理庫20内で発生する煙や臭いの分解作用を行う。送風機62だけを停止する理由は、調理庫20内で発生した燃焼を促進するような酸素の供給を抑制するためにある。排気口64からの積極的な排気動作に伴うことで調理庫20内部への酸素の供給(導入)が行うことから、その排気を停止又は抑制(この抑制とは送風機62を低速回転に変更)する。これにより小さな発火が急速に大きな燃焼までに発展しないよう抑制できる。
【0112】
(イ)表示部75の所定の表示エリアには、発火している旨の表示が行われる(表示と同時並行的に、音声で報知しても良いし、表示に代えて音声だけで報知しても良い)。
発火している場合、不用意に扉40を開けると一気に燃焼が拡大したり、煙が調理庫20の前方開口から溢れ出たりするようなことが想定されるので、使用者にはその旨注意を喚起する表示も行う。また扉40を開けると外気が一気に流入し、雰囲気温度が一気に下がってしまうことにもなる。そこで注意喚起の表示や報知とは、例えば、「今は扉40を開けないように」というものである。
【0113】
(ウ)ヒータ23、24の通電条件はそのまま維持する。不意に発生する発火に伴って通電条件を途中で変更して火力ダウンさせたり停止させたりした場合、ヒータ23,24の発熱量は減少又はゼロになるが、それによって調理に必要な時間が変化してしまったり、せっかく所定の高温度まで上げた雰囲気温度が下がったりしてしまい、再度上昇するまで時間を要するなどの問題があるためである。なお、実際に発火するのは、下側のヒータ24に被調理物(魚や肉等)の油脂が滴下して発火することが多いので、下側ヒータ24だけ通電停止するという制御でも良い。この思想に基づき、この実施の形態1では、図15に示すように発火検知の時点(T1)で速やかに下側のヒータ24の通電を実線C2で示すように遮断して供給電力をゼロまで落とし、上側のヒータ23の通電は一点破線で示すようにそのまま維持する。
【0114】
発火検知があった場合、予め定めた所定時間(図15のT1〜T2の間、例えば10秒間)だけ前記送風機62の運転やそれに加えて下側ヒータ24の通電を停止するという制御がされる。この所定時間の間に再度発火検知がされた場合、同様に通電停止動作をする。このため、発火検知手段150は少なくとも数秒以内に反復して炎センサ157からの入力信号を分析し、発火があるかどうかを検知するようにすることが望ましい。
【0115】
(エ)右側加熱体72bや左側加熱体72bなどの他の加熱体72による加熱調理を行っていた場合、それら加熱体72の通電はそのままの通電条件で継続される。また誘導加熱コイル等を冷却している冷却用の送風機135も、そのまま運転継続する。さらに、補助冷却用送風機138の運転もそのままの通電条件で継続される。なお、この場合、前記表示部75は、それら加熱体72が使用中であることから、使用している加熱体72の特定、設定火力や加熱している火力、加熱時間や加熱温度(誘導加熱でてんぷら用の油の温度設定する場合等)の情報などが表示され、そのままでは発火状態であることの表示スペースが十分ではないので、発火報知を表示スペース的に優先させるため、一時的に発火報知を最優先にし、逆に優先度の低い情報(例:通電加熱の残り時間表示など)の表示を保留にする。
あるいは視覚的に優先表示するため、表示文字を赤く表示したり、「発火注意」という文字を点滅させたりして強調するなどの方法が実施される。
【0116】
発火時処理を行ったあとは再び発火検知動作(ST35)に戻り、ヒータ23、24の通電加熱中は、常時(少なくとも数秒間隔、望ましくは1秒間隔以内)このような発火検知の監視が行われる。また数秒置きには調理庫20の温度監視動作のステップST28を実行する。
【0117】
なお、このように赤外線で炎を検知する方式は、他の光による発火検知方式に比較して有利である。すなわち、家庭用で主に使用されるこの種の調理器は、台所の照明用の人工的な光やあるいは屋外からの自然光も浴びる可能性があるから、発火検知に利用する場合、それらの光との混同を防止する必要がある。しかし、この実施の形態のように炎で発生する赤外線特有の性質を利用するものではそのような対策は簡略化でき、コスト的、技術的に有利となる。
【0118】
(加熱体のバリエーション)
なお、以上の実施の形態では、複数の加熱体72(図2参照)の一部として、高周波電流が流れるコイルであって、被加熱物を電磁誘導によって加熱するものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、また、これを必須とするものではない。たとえば、1つの加熱体72が、電熱ヒータやガスバーナ等であってもよい。このとき、加熱体の形式に応じて、天板70が撤去され、電源スイッチ73、74の形式が変動することになる。また、調理庫20のみにおいて調理し、天面に加熱手段を具備しないものであってもよい。
【0119】
さらに、調理庫20には、上ヒータ23および下ヒータ24が配置されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、上ヒータ23および下ヒータ24の一方のみが配置されたものであってもよい。なお、上ヒータ23および下ヒータ24はシーズヒータを用いていたが、他の電気輻射式発熱体(ニクロム線やハロゲンヒータ等)であってもよい。
【0120】
(発火検知手段のバリエーション)
なお、以上の実施の形態では、発光素子158の発光面は前記調理庫20の天井部に設置した赤外線受光センサ156の受光面に向かい合うように設置させて保護ケース161の汚れ検知を行い、発光素子158に向かう被加熱物から放射される赤外線信号が、その保護ケース161の外側が汚れて受信に支障ないように事前に検知することにしていたが、例えば調理庫20の左側壁部に受光センサ156を設け、これと対向する右側壁側に発光素子158を設置し、その発光素子で受光センサ156の受光面の汚れを検知しても良い。この場合、保護ケース161を省略し、受光センサ156の受光面を清掃できるようにすることになる。
【0121】
また、扉40に電源供給することを避けるため、例えば本体10の前面操作部11内部に、その左側面部に発光素子158の発光部を望ませるよう設置し、その素子からの赤外線光線を、左横に近接して対面する扉40の右側壁面の窓(ガラス板等で覆われている)から扉40の中に導入し、この赤外線信号を扉の中に設置した反射鏡で調理庫20側に設置した受光センサ156の方向に向きを変換しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上より、本発明の加熱調理器は、発火現象の初期の火炎の状態を検知して発火現象を捉えるので、発火を迅速に検知し、調理庫内で発生する煙等を外部へ排出させる空気流を発生する送風手段を迅速に制御することができるから、調理庫を具備する各種加熱調理器に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器を模式的に示す一部を削除した斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る加熱調理器を模式的に示す側面視の断面図。
【図3】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉の部分を示す斜視図と断面図。
【図4】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉を斜め後方から見た斜視図。
【図5】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉の風路を示す斜視図
【図6】図1に示す加熱調理器におけるグリル扉を側方から見た断面図。
【図7】図1に示す加熱調理器の制御手段を説明するブロック図。
【図8】図1に示す加熱調理器における発火検知手段を示す主要部側面視の断面図。
【図9】図1に示す加熱調理器の基本動作を示すフローチャート。
【図10】図1に示す加熱調理器で誘導加熱調理を行う場合の調理前異常監視動作を示すフローチャート。
【図11】図1に示す加熱調理器で誘導加熱調理開始した後の基本動作を示すフローチャート。
【図12】図1に示す加熱調理器で調理庫における電気輻射加熱を行う場合の基本動作を示すフローチャート1。
【図13】図1に示す加熱調理器で調理庫における電気輻射加熱を行う場合の基本動作を示すフローチャート2。
【図14】図1に示す加熱調理器で異常時の基本動作を示すフローチャートである。
【図15】図1に示す加熱調理器で異常時(発火検知時)の基本動作を示す通電状態説明図である。
【符号の説明】
【0124】
10:本体、 11:前面操作部、 20:グリル加熱室、 21:前方開口部、 22:後方開口部、 23:上ヒータ、 24:下ヒータ、 25:内ケース、 26:外ケース、 27:間隙、 28:仕切り板、 29:貫通孔、 30:載置皿、 31:皿支持フレーム、 32:載置網、 40:グリル扉、 41:表板、 41a:側縁、 41c:下端部、 41w:透明窓、 42:裏板、 42a:側縁、 42w:開口部、 43:外周板、 44:内周板、 45:前板、 45a:吸気孔、 45b:吸気孔、 46a:側方吹出孔、 46b:側方吹出孔、 47:中央吹出孔、 48:シール用パッキン、 49L:下部ドアー空間、 49U:上部ドアー空間、 50:取っ手、 50a:端部、 51:フランジ部、 52:手掛け部、 52a:端部、 52b:端部、 53a:仕切壁、 53b:仕切壁、 55:後面壁、 56a:透孔、 56b:透孔、 59a:側方取っ手空間、 59b:側方取っ手空間、 59c:中央取っ手空間、 60:排気手段、 61:浄化フィルター、 62:送風機(第1の送風手段)、 63:排気風路用ダクト、 63A:排気口、 64:排気口、 70:天板、 71:鍋載置サークル、 71a:鍋載置サークル、 72:加熱体、 72a:加熱体、 72c:加熱体、 73:火力スイッチ、 73a:火力スイッチ、 74b:火力スイッチ、 75:表示部、 80:枠体、 81:天板操作部、 90:スリット、 100:加熱調理器、 120:内側透明窓、 121:シール材、 122:空隙、 136:冷却用送風機(第2の送風手段)、 139:温度検出回路、 150:発火検知手段、 151:制御部、 152:判定部、 154:受信部、 155:送信部、 156:受光センサ、 157:炎センサ、 158:発光素子、 161:保護ケース、 163:窓、 164:保護材、 169:前板、 S:断熱層(空気層)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、
前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、
前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、
前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、
前記電気加熱手段および前記送風手段の通電を制御する通電制御手段と、
を備え、
この通電制御手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記送風手段への通電を遮断又は抑制することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
調理庫内の被加熱物を加熱する第1の電気加熱手段と、
前記調理庫外で被加熱物を加熱する第2の電気加熱手段と、
前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、
前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、
前記第2の電気加熱手段の通電中、その第2の電気加熱手段を冷却するため運転される第2の送風手段と、
前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記第1の電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、
前記第1、第2の電気加熱手段および前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、
を備え、
この通電制御手段は、前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の双方が同時に通電加熱されている状態において前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、かつ第2の送風手段への通電条件は変更しないことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の各通電状態を報知する報知手段を設け、この報知手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると前記通電制御手段によって発火状態を報知することを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記報知手段は、前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の通電状態を視認できる文字や記号等の手段で同時に表示する統合表示画面を有し、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記統合表示画面において前記第1の電気加熱手段及び第2の電気加熱手段の各通電状態の表示と発火状態の表示とを同時又は交互に切り替えて行うことを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
上面がトップテーブルで覆われ、内部に調理庫を備えた本体と、
前記調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、
前記トップテーブルの下方に設置され、前記電気加熱手段と独立して通電が制御されて当該トップテーブル上の被加熱物を加熱する誘導加熱手段と、
前記電気加熱手段と誘導加熱手段の各通電状態を一元的に報知する報知手段と、
前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、
前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、
前記誘導加熱手段の通電中、その加熱手段を含め前記本体内部を冷却するため運転される第2の送風手段と、
前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、
前記電気加熱手段と誘導加熱手段並びに前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、を備え、
この通電制御手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記報知手段にて発火を報知することを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
前記通電制御手段は、前記電気加熱手段の通電中において、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記報知手段での発火報知に加え、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制することを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記報知手段は、前記トップテーブルの上方から視認可能となるよう前記本体に設置され、前記電気加熱手段と誘導加熱手段の通電状態を表示する表示手段であることを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記誘導加熱手段と電気加熱手段を同時に通電中、前記制御手段が前記発火検知手段より入力する信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、誘導加熱手段の加熱条件は変更せず、また第2の送風手段の運転も継続することを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記誘導加熱手段と電気加熱手段で同時に通電加熱中、前記制御手段が前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、誘導加熱手段の加熱条件は変更せず、また第2の送風手段の運転も継続し、前記報知手段は発火検知を音声手段で報知又は視認可能な手段で表示することを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記発火検知手段は、発火に伴う赤外線信号を受信する赤外線センサと、このセンサの赤外線受信経路に汚れがあるかどうかを検出するため、試験用の赤外線信号を送信する送信部と、この送信部からの赤外線信号の受信状態から前記赤外線センサの受信経路の汚れがあることを判定する判定部とを具備したことを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記送信部は、前記調理庫の開口部を開閉する扉の内側壁面を透過させて試験用赤外線信号を送信することを特徴とする請求項10記載の加熱調理器。
【請求項1】
調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、
前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、
前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、
前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、
前記電気加熱手段および前記送風手段の通電を制御する通電制御手段と、
を備え、
この通電制御手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記送風手段への通電を遮断又は抑制することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
調理庫内の被加熱物を加熱する第1の電気加熱手段と、
前記調理庫外で被加熱物を加熱する第2の電気加熱手段と、
前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、
前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、
前記第2の電気加熱手段の通電中、その第2の電気加熱手段を冷却するため運転される第2の送風手段と、
前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記第1の電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、
前記第1、第2の電気加熱手段および前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、
を備え、
この通電制御手段は、前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の双方が同時に通電加熱されている状態において前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、かつ第2の送風手段への通電条件は変更しないことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の各通電状態を報知する報知手段を設け、この報知手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると前記通電制御手段によって発火状態を報知することを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記報知手段は、前記第1の電気加熱手段と第2の電気加熱手段の通電状態を視認できる文字や記号等の手段で同時に表示する統合表示画面を有し、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生していることを検知すると、前記統合表示画面において前記第1の電気加熱手段及び第2の電気加熱手段の各通電状態の表示と発火状態の表示とを同時又は交互に切り替えて行うことを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
上面がトップテーブルで覆われ、内部に調理庫を備えた本体と、
前記調理庫内の被加熱物を加熱する電気加熱手段と、
前記トップテーブルの下方に設置され、前記電気加熱手段と独立して通電が制御されて当該トップテーブル上の被加熱物を加熱する誘導加熱手段と、
前記電気加熱手段と誘導加熱手段の各通電状態を一元的に報知する報知手段と、
前記調理庫内の発火を検知する火炎センサと、
前記調理庫内で発生する煙等を前記調理庫外へ排出させる空気流を発生する第1の送風手段及び触媒加熱ヒータを備えた除煙手段と、
前記誘導加熱手段の通電中、その加熱手段を含め前記本体内部を冷却するため運転される第2の送風手段と、
前記火炎センサより入力する信号に基づき前記調理庫内で前記電気加熱手段の通電中に火炎が発生したことを検知する発火検知手段と、
前記電気加熱手段と誘導加熱手段並びに前記第1、第2の送風手段の通電を制御する通電制御手段と、を備え、
この通電制御手段は、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記報知手段にて発火を報知することを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
前記通電制御手段は、前記電気加熱手段の通電中において、前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記報知手段での発火報知に加え、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制することを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記報知手段は、前記トップテーブルの上方から視認可能となるよう前記本体に設置され、前記電気加熱手段と誘導加熱手段の通電状態を表示する表示手段であることを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記誘導加熱手段と電気加熱手段を同時に通電中、前記制御手段が前記発火検知手段より入力する信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、誘導加熱手段の加熱条件は変更せず、また第2の送風手段の運転も継続することを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記誘導加熱手段と電気加熱手段で同時に通電加熱中、前記制御手段が前記発火検知手段からの信号に基づき前記調理庫内で火炎が発生したことを検知すると、前記第1の送風手段への通電を遮断又は抑制し、誘導加熱手段の加熱条件は変更せず、また第2の送風手段の運転も継続し、前記報知手段は発火検知を音声手段で報知又は視認可能な手段で表示することを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記発火検知手段は、発火に伴う赤外線信号を受信する赤外線センサと、このセンサの赤外線受信経路に汚れがあるかどうかを検出するため、試験用の赤外線信号を送信する送信部と、この送信部からの赤外線信号の受信状態から前記赤外線センサの受信経路の汚れがあることを判定する判定部とを具備したことを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記送信部は、前記調理庫の開口部を開閉する扉の内側壁面を透過させて試験用赤外線信号を送信することを特徴とする請求項10記載の加熱調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−75623(P2010−75623A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250404(P2008−250404)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】
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