説明

加速度センサ

【課題】信号線に発生する静電容量を低減して、特性向上を図ったセンサの製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】加速度検出部を有する検出素子1を備え、この検出素子1は、可撓部を介して錘部2を連結した固定部4と、錘部2と対向させた対向基板6と、錘部2と対向基板6の各々の対向面に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20と、これら電極から引き出した信号線21とを有し、加速度検出部では、錘部2と対向基板6の各々の対向面に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20の静電容量変化を検出して加速度を検出しており、全ての信号線21の端部を検出素子1の上面側または下面側のいずれか一方側に配置し、信号線21の端部にて実装基板と電気的に接続した構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、自動車、ロボット、船舶、車両等の移動体の姿勢制御やナビゲーション等、各種電子機器に用いる加速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の加速度センサについて説明する。
【0003】
従来の加速度センサは、図9に示すように、加速度を検出する検出素子50と、この検出素子50で検出された検出信号を処理して加速度を算出する処理回路と、この処理回路が配置され、検出素子50を実装する実装基板52を備えている。検出素子50は、ベース基板53と、このベース基板53と対向させて配置したダイアフラム54と、このダイアフラム54の下方に連結した錘部55とを有する。互いに対向するベース基板53とダイアフラム54の対向面には対向電極56を配置している。また、ベース基板53とダイアフラム54との間には、所望箇所に接着剤57を塗布して、この接着剤57により、ベース基板53とダイアフラム54とを接着固定している。あるいは、他の接合方法により固定してもよい。
【0004】
次に、加速度の検出について説明する。
【0005】
加速度が生じると、錘部55が加速度の生じた軸方向に移動しようとするために、錘部55を配置したダイアフラム54に撓みが発生する。そうすると、ベース基板53とダイアフラム54とのギャップが変化するので、このギャップの変化に起因した対向電極56間の静電容量の変化に基づいて、加速度を検出するものである。
【0006】
このような加速度センサを検出したい検出軸に対応させて、車両等の移動体の姿勢制御装置やナビゲーション装置等に用いている。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平11−344506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記構成では、対向電極56間の静電容量の変化に基づいて加速度を検出するが、ベース基板53に配置した対向電極56およびダイアフラム54に配置した対向電極56からは信号線59が引き出されている。これらの信号線59の端部は電極パッド60、61に接続されており、この電極パッド60、61を介して、実装基板52に配置された配線パターン62とワイヤボンディング63で電気的に接続される。
【0009】
この際、上記構成では、ベース基板53に配置された対向電極55から引き出された信号線59と接続された電極パッド60と、ダイアフラム52に配置された対向電極56から引き出された信号線59と接続された電極パッド61は、互いに対向しており、対向した状態にて、実装基板52の配線パターン62にワイヤボンディング63で電気的に接続されていた。
【0010】
上記構成では、実装基板52に配置された配線パターン62と電気的に接続される電極パッド60は下面方向、電極パッド61は上面方向であるために、ワイヤボンディング63による電気的接続が困難であるという問題点を有していた。
【0011】
本発明は上記問題点を解決し、実装基板に配置された配線パターンと、対向電極との電気的接続を容易にした加速度センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために本発明は、特に、検出素子は、可撓部を介して錘部を連結した固定部と、前記錘部と対向させた対向基板と、前記錘部と前記対向基板の各々の対向面に配置した対向電極と、前記対向電極から引き出した信号線とを有し、前記加速度検出部では、前記錘部と前記対向基板の各々の対向面に配置した対向電極間の静電容量を検出して加速度を検出しており、全ての前記信号線の端部を前記検出素子の上面側または下面側のいずれか一方側に配置し、前記信号線の端部にて実装基板と電気的に接続した構成である。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、錘部と対向基板の各々の対向面に配置した対向電極から引き出された信号線の端部は、検出素子の上面側または下面側のいずれか一方側に配置し、信号線の端部にて実装基板と電気的に接続しているので、接続面が検出素子の上面側または下面側のいずれかに統一されるので、接続が容易となる。したがって、接続不良等の発生も低減し、信頼性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施の形態における複合センサの検出素子の分解斜視図、図2は図1における対向基板配置前のA−A断面図、図3は図1における対向基板配置前のB−B断面図、図4は図1における対向基板配置時のB−B断面図、図5は図1における対向基板配置時のC−C断面図である。
【0015】
図1において、本発明の一実施の形態における複合センサは、加速度検出部と角速度検出部を有する検出素子1を備え、この検出素子1は、可撓部を介して錘部2を連結した固定部4と、錘部2と対向させた対向基板6と、錘部2と対向基板6の各々の対向面に配置した第1電極と、可撓部に配置した第2電極とを有する。
【0016】
具体的には、この検出素子1は、第1アーム8を第2アーム10に略直交方向に連結して形成した2つの直交アームと、2つの第1アーム8の一端を支持する支持部12と、2つの第1アーム8の他端を接続した枠体形状の固定部4とを有する。第1アーム8の厚みは第2アーム10の厚みよりも非常に薄く形成しており、第2アーム10は第2アーム10自身と対向するまで折曲し、折曲した第2アーム10の先端部に錘部2を連結している。第1アーム8と支持部12とは略同一直線上に配置し、第1アーム8および第2アーム10は検出素子1の中心に対して対称配置している。ここで、可撓部は固定部4と錘部2とを連結する部分を指しており、第1アーム8、第2アーム10が少なくとも可撓部に相当する。
【0017】
また、錘部2に対向させて対向基板6を配置している。この対向基板6は、突起部13により、一定のギャップを介して錘部2と対向させている。この際、所望の位置に接着剤を塗布しておけば、固定部4と対向基板6とを容易に固定できる。
【0018】
錘部2と対向基板6の各々の対向面には、第1電極として第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20を配置し、互いに対向する一方の2つの第2アーム10には錘部2を駆動振動させる駆動電極22および検知電極24を配置し、互いに対向する他方の2つの第2アーム10には、第2電極として第2アーム10の歪を感知する第1感知電極26、第2感知電極28を配置している。さらに、錘部2に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20を延長して引き出した信号線21を、第2アーム10および第1アーム8を介して固定部4に設けた電極パッド23まで配置している。
【0019】
上記の錘部2に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20、駆動電極22、検知電極24、第1感知電極26、第2感知電極28は、図2、図3に示すように、圧電層30を介在させた上部電極32と下部電極34とを有し、信号線21も同様の構成である。
【0020】
また、全ての信号線21の端部を電極パッド23として、検出素子1の固定部4の上面側に配置しており、この信号線21の端部である電極パッド23にて、ワイヤボンディング等を用いて、実装基板の配線パターンと電気的に接続している。このとき、対向基板6に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21を、導電性ペースト15を介して固定部4に引き出している。
【0021】
そして、対向基板6は高抵抗のシリコンあるいは絶縁基板からなる。固定部4と第1アーム8と第2アーム10と錘部2とは、下部電極34よりも高抵抗のシリコン等からなる半導体基板あるいは絶縁基板からなり、固定部4と第1アーム8と第2アーム10と錘部2とを一体成形してなる。
【0022】
次に、角速度検出部および加速度検出部について説明する。
【0023】
まず、角速度検出部について説明する。
【0024】
図6に示すように、互いに直交したX軸、Y軸、Z軸において、検出素子1の第1アーム8をX軸方向に配置して、第2アーム10をY軸方向に配置した場合、駆動電極22に共振周波数の交流電圧を印加すると、駆動電極22が配置された第2アーム10を起点に第2アーム10が駆動振動し、それに伴って錘部2も第2アーム10の対向方向(実線の矢印と点線の矢印で記した駆動振動方向)に駆動振動する。また、4つの第2アーム10および4つの錘部2の全てが同調して第2アーム10の対向方向に駆動振動する。この検出素子1における駆動振動方向はX軸方向となる。
【0025】
このとき、例えば、Z軸の左周りに角速度が生じた場合は、錘部2の駆動振動と同調して、錘部2に対して駆動振動方向と直交した方向(実線の矢印と点線の矢印で記したコリオリ方向(Y軸方向))にコリオリ力が発生するので、第2アーム10にZ軸の左周りの角速度に起因した歪を発生させることができる。すなわち、コリオリ力に起因して撓むこの第2アーム10の状態変化(第2アーム10に発生した歪)によって、第1、第2感知電極28から電圧が出力され、この出力電圧に基づき角速度が検出される。
【0026】
次に、加速度検出部について説明する。
【0027】
図7に示すように、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸において、対向基板6をXY平面に配置した場合、加速度が発生していなければ、対向基板6と錘部2の対向面の第1対向電極14のギャップ(H1)と、対向基板6と錘部2との対向面の第2対向電極16のギャップ(H2)は等しい。図示していないが、第3対向電極18の対向距離と第4対向電極20のギャップも等しくなる。
【0028】
このとき、例えば、X軸方向に加速度が生じた場合、図8に示すように、錘部2は支持部12を中心にしてY軸周りに回転しようとする。この結果、対向基板6と錘部2の対向面の第1対向電極14のギャップ(H1)が小さくなり、対向基板6と錘部2との対向面の第2対向電極16のギャップ(H2)が大きくなる。第3対向電極18の対向距離と第4対向電極20のギャップも同様である。
【0029】
一方、Y軸方向に加速度が生じた場合も同様に、錘部2は支持部12を中心にしてX軸周りに回転しようとするため、例えば、第3、第4対向電極18、20のギャップが大きくなり、第1、第2対向電極14、16のギャップが小さくなる。すなわち、各々の電極間の静電容量が変化するので、この静電容量の変化に基づいてX軸方向またはY軸方向の加速度を検出するものである。
【0030】
上記構成により、加速度検出部によって、錘部2と対向基板6の各々の対向面に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20の静電容量を検出して加速度を検出し、角速度検出部によって、コリオリ力に起因して撓む可撓部の状態変化を第1感知電極26、第2感知電極28で検出し、一つの検出素子1で加速度と角速度を検出できるので、実装面積を低減して小型化を図れる。
【0031】
また、錘部2と対向基板6の各々の対向面に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出された信号線21の端部である電極パッド23は、検出素子1の上面側に配置し、この電極パッド23にてワイヤボンディング等を介して実装基板に配置された配線パターンと電気的に接続しているので、電極パッド23の接続面が検出素子1の上面側に統一されるので、実装基板との接続が容易に行える。したがって、接続不良等の発生も低減し、信頼性の向上が図れる。固定部4または対向基板6のいずれかに全ての信号線21の端部を配置し、これら全ての信号線21の端部を検出素子1の上面側または下面側のいずれか一方側に配置された信号線21の端部にて、実装基板と電気的に接続すればよいものである。
【0032】
さらに、対向基板6に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21を、導電性ペースト15を介して固定部4に引き出しているので、電極パッド23の接続面を検出素子1の上面側に配置することが容易に行える。
【0033】
なお、本発明の実施の形態では、対向基板6に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21を、導電性ペースト15を介して固定部4に第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21を、導電性ペースト15を介して固定部4に引き出したが、錘部2に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21を、導電性ペースト15を介して対向基板6に引き出してもよい。このように対向基板6側に信号線21を引き出すことで、信号線の引き回しの自由度が向上する。また、対向基板6には絶縁性基板を用いることができるので、信号線間やその他の配線との間との容量が発生しないという利点がある。
【0034】
また、錘部2に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21をフレキシブル基板に引き出して、対向基板6に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21と同一面側に配置してもよい。その逆に、対向基板6に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21を、プラスチック等の可撓性のあるフレキシブル基板に引き出すとともに、錘部2に配置した第1対向電極〜第4対向電極14、16、18、20から引き出した信号線21と同一面側に配置してもよい。配置状況に応じて、フレキシブル基板を撓ませたり変形させたりすることができ、信号線21の引き廻しの設計が容易となる。この検出素子1は、あらかじめ、対向基板6に配置された信号線21にフレキシブル基板を電気的に接続しておき、フレキシブル基板が接続された対向基板6を固定部4の突起部13に載置して、形成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る加速度センサは、静電容量変化にバラツキが生じにくく、検出精度を向上させることができ、各種電子機器に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態における複合センサの検出素子の分解斜視図
【図2】図1における対向基板配置前のA−A断面図
【図3】図1における対向基板配置前のB−B断面図
【図4】図1における対向基板配置時のB−B断面図
【図5】図1における対向基板配置時のC−C断面図
【図6】角速度発生時における同検出素子の動作状態を示す説明図
【図7】同検出素子の断面図
【図8】加速度発生時における同検出素子の動作状態を示す説明図
【図9】従来の加速度センサの断面図
【符号の説明】
【0037】
1 検出素子
2 錘部
4 固定部
6 対向基板
8 第1アーム
10 第2アーム
12 支持部
13 突起部
14 第1対向電極
15 導電性ペースト
16 第2対向電極
18 第3対向電極
20 第4対向電極
21 信号線
22 駆動電極
23 電極パッド
24 検知電極
26 第1感知電極
28 第2感知電極
30 圧電層
32 上部電極
34 下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度検出部を有する検出素子を備え、
前記検出素子は、可撓部を介して錘部を連結した固定部と、前記錘部と対向させた対向基板と、前記錘部と前記対向基板の各々の対向面に配置した対向電極と、前記対向電極から引き出した信号線とを有し、前記加速度検出部では、前記錘部と前記対向基板の各々の対向面に配置した対向電極間の静電容量を検出して加速度を検出しており、
全ての前記信号線の端部を前記検出素子の上面側または下面側のいずれか一方側に配置し、前記信号線の端部にて実装基板と電気的に接続した加速度センサ。
【請求項2】
前記固定部または前記対向基板のいずれかに全ての前記信号線の端部を配置した請求項1記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記対向基板に配置した対向電極から引き出した信号線を、導電ペーストを介して前記固定部に引き出した請求項2記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記錘部に配置した対向電極から引き出した信号線を、導電ペーストを介して前記対向基板に引き出した請求項2記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記錘部に配置した対向電極から引き出した信号線をフレキシブル基板に引き出すとともに、前記対向基板に配置した対向電極から引き出した信号線と同一面側に配置した請求項1記載の加速度センサ。
【請求項6】
前記対向基板に配置した対向電極から引き出した信号線をフレキシブル基板に引き出すとともに、前記錘部に配置した対向電極から引き出した信号線と同一面側に配置した請求項1記載の加速度センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−261636(P2008−261636A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102423(P2007−102423)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】