説明

加飾シート、多層成形品およびその製造方法

【課題】簡便な方法で製造することができ、熱成形性に優れる加飾シートであって、しかも成形品の表層とする場合に耐擦傷性に優れる成形品が得られる加飾シートを提供する。
【解決手段】第1の熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体の表面に、水酸基とカルボキシル基とを、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5(個数比)で含む第1の重合体成分と、第1の無機層状化合物と、第1のアルカリ金属イオンとを含有する第1の樹脂組成物からなる第1の被膜が形成されてなる加飾シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート、該加飾シートを表層として有する多層成形品、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加飾シートは、折り曲げ加工や真空成形などの熱成形によって、成形品の表層となるように成形して使用されている。そのため加飾シートは、熱成形性に優れることと、成形品の表層とした場合に耐擦傷性に優れることが求められる。このような加飾シートとして、例えば特許文献1には、成形品としたときに表層となる保護層が、電離放射線硬化型樹脂からなる加飾シートが開示されている。
【特許文献1】特開2000−326446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献1に開示された加飾シートを得るためには、保護層を形成するために用いる組成物における硬化成分の配合比や組成物の混合分散処理、保護層を硬化させるためのエネルギー線照射条件といった精密な反応条件制御が必要であるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、かかる問題点を解決し、簡便な方法で製造することができ、熱成形性に優れる加飾シートであって、しかも成形品の表層とする場合に耐擦傷性に優れる成形品が得られる加飾シート、および該加飾シートを表層として有する多層成形品を提供するものである。さらに本発明は、前記加飾シートおよび多層成形品の製造方法を提供するものである。
【0005】
すなわち本発明は、第1の熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体の表面に、水酸基とカルボキシル基とを、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5(個数比)で含む第1の重合体成分と、第1の無機層状化合物と、第1のアルカリ金属イオンとを含有する第1の樹脂組成物からなる第1の被膜が形成されてなる加飾シートである。
本発明の第2は、前記加飾シートを三次元形状に熱成形して得られる一次成形品の支持体側に、可塑化した熱可塑性樹脂を供給し賦形して得られる多層成形品である。
本発明の第3は、加飾シートの製造方法であって、
第1の熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体の表面に、
第1の液体媒体と、該第1の液体媒体中に分散された、第1の重合体成分と、第1のアルカリ金属イオンと、第1の無機層状化合物とからなる第1の分散液を塗布して前記支持体上に第1の分散液膜を形成する工程(ここで、第1の重合体成分は水酸基およびカルボキシル基を水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5のモル比で含む);
前記第1の分散液膜から前記第1の液体媒体を除去して第1の被膜を形成し、これにより前記支持体と該第1の被膜とからなる加飾シートを形成する工程;
を含む方法である。
本発明の第4は、多層成形品の製造方法であって、
第1の熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体の表面に、
第1の液体媒体と、該第1の液体媒体中に分散された、第1の重合体成分と、第1のアルカリ金属イオンと、第1の無機層状化合物とからなる第1の分散液を塗布して前記支持体上に第1の分散液膜を形成する工程(ここで、第1の重合体成分は水酸基およびカルボキシル基を水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5のモル比で含む);
前記第1の分散液膜から前記第1の液体媒体を除去して第1の被膜を形成し、これにより前記支持体と該第1の被膜とからなる加飾シートを形成する工程;
前記加飾シートを、前記第1の被膜中で水酸基とカルボキシル基との縮合反応が起きる温度以上に加熱して、該被膜を硬化させる工程;および
前記加飾シートの前記支持体の第1の熱可塑性樹脂からなる層上に、可塑化されている第2の熱可塑性樹脂を供給し、これを所定の形状に賦形して、前記加飾シートと前記第2の熱可塑性樹脂の層とを有する多層成形品を形成する工程
とを含む方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加飾シートは、簡便な方法で製造することができ、熱成形性に優れる加飾シートであって、しかも成形品の表層とする場合に耐擦傷性に優れる成形品が得られる加飾シートである。また該加飾シートを表層として有する本発明の多層成形品は、耐擦傷性に優れるものである。さらに本発明の加飾シートの製造方法によれば、熱成形性に優れる加飾シートであって、しかも成形品の表層とする場合に耐擦傷性に優れる成形品が得られる加飾シートを簡便に製造することができる。また本発明の多層成形品の製造方法によれば、耐擦傷性に優れる多層成形品を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の多層成形品の製造方法は、概略において、最終的に形成された多層成形品において表面保護機能を発揮する表面保護部の形成と、熱可塑性樹脂からなるいわゆるコア部の形成とを含む。表面保護部の形成には、熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体が用いられる。かかる支持体は、熱可塑性樹脂からなる層のみで構成された単層支持体でよく、また、熱可塑性樹脂からなる層の上に他の材料からなる層が配置されている多層支持体でもよい。このような支持体は、通常シート状であり、真空成形などの熱成形により三次元形状に賦型可能であることが好ましい。支持体において必須の熱可塑性樹脂からなる層の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1などのオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体またはそのケン化物、エチレン−α・β不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α・β不飽和カルボン酸共重合体などのエチレン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアリレート;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂;ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系樹脂を挙げられる。なお、本発明の方法では、支持体を構成するための熱可塑性樹脂と、多層成形体のコア部を構成するための熱可塑性樹脂が使用される。そこで、前者を「第1の熱可塑性樹脂」、後者を「第2の熱可塑性樹脂」と称して区別することがある。
【0008】
第1の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などが好ましく、また環境負荷が少ないと言われる非ハロゲン系樹脂の使用も好ましい。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂としては、特にポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンとしては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとα−オレフィンとのランダムコポリマーやブロックコポリマーが挙げられる。また、プロピレンとα−オレフィンとのランダムコポリマーとしては、プロピレンとプロピレン以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1から選ばれる1種以上のコモノマーをランダム共重合した、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が挙げられる。
【0010】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを縮合重合したポリエステル樹脂のほかに、脂肪族または脂環族ジカルボン酸とポリエーテル系ジオールとを縮合重合させた構造単位を有し熱可塑性エラストマー的な性質を有する共重合ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0011】
アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタアクリレートの他に、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、メタアクリル酸またはアクリル酸エステルなどのアクリル酸誘導体などを単独重合または共重合して得られる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0012】
支持体における第1の熱可塑性樹脂からなる層は2種類以上の熱可塑性樹脂から構成されていてもよく、また樹脂用添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、ワックス、石油樹脂、帯電防止剤、無機充填剤などを含んでいてもよい。また熱可塑性樹脂からなる層には、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン系ゴムなどの改質剤が含有されていてもよい。
【0013】
支持体中の第1の熱可塑性樹脂からなる層の厚みは、該支持体を用いて作製される加飾シートの熱成形性や、最終的に得られる多層成形品のデザインを考慮して設定すればよいが、通常0.1〜2.0mmの範囲である。
【0014】
また、支持体における第1の熱可塑性樹脂からなる層は、単層構成であってもよく、2層以上の多層構成であってもよい。特に、該支持体を用いて作製される積層体の熱成形性と、最終製品である多層成形品の耐擦傷性、光沢、深み感などの表面特性とを効果的に発現させる観点から、多層構成が好ましい。
多層構成の熱可塑性樹脂層を有する支持体を使用する場合には、後述する被膜を形成する側の層には、硬度、光沢、深み感などに優れる熱可塑性樹脂を用い、多層成形品の熱可塑性樹脂コア部が形成される側の層には、熱成形性や、コア部を構成することになる熱可塑性樹脂との密着性に優れる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。このような観点から、ポリプロピレンからなる多層構成が好ましい。
【0015】
支持体における第1の熱可塑性樹脂からなる層には、後述する被膜を形成する側の表面に絵柄や紋様などの印刷を施したり、アルミニウムや酸化チタンで被覆したマイカなどの光輝材を添加したりすることができる。支持体における多層構成の熱可塑性樹脂層は、例えば、押出ラミネート法、ドライラミネート法などにより形成させることができる。
【0016】
本発明の加飾シートは、前記支持体の表面に、液体媒体と、該液体媒体中に分散された、重合体成分と、アルカリ金属イオンと、無機層状化合物とからなる分散液を塗布して前記支持体上に分散液膜を形成する工程、および前記分散液膜から前記液体媒体を除去して被膜を形成し、これにより前記支持体と該被膜とからなる加飾シートを形成する工程、を含む方法により製造することができる。ここで、前記重合体成分は、水酸基とカルボキシル基とを、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5のモル比で含んでいる。
なお、後述する多層支持体を作製するための操作と区別するために、前述手順における液体媒体、重合体成分、アルカリ金属イオン、無機層状化合物、分散液、分散液膜および被膜を、それぞれ、第1の液体媒体、第1の重合体成分、第1のアルカリ金属イオン、第1の無機層状化合物、第1の分散液、第1の分散液膜および第1の被膜と記載することがある。前記加飾シートにおいて、第1の被膜は最表層である。
【0017】
本発明では、前記支持体として、第1の熱可塑性樹脂からなる層と、該熱可塑性樹脂からなる層の一方の表面上に形成された被膜とからなる多層支持体を使用することができる。このような多層支持体は、第1の熱可塑性樹脂からなる層の表面に、液体媒体と、該液体媒体中に分散された、重合体成分と、アルカリ金属イオンとからなる分散液を塗布して前記熱可塑性樹脂からなる層上に分散液膜を形成する工程(ここで、重合体成分は水酸基とカルボキシル基とを、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5のモル比で含む。)、および
前記分散液膜から前記液体媒体を除去して被膜を形成し、これにより前記熱可塑性樹脂と該被膜とからなる多層支持体を形成する工程を行うことにより形成させることができる。分散液には、更に無機層状化合物を含有させてもよい。
ここで、支持体上に第1の被膜を形成させるための前述の操作と区別するために、上述の多層支持体の作製における液体媒体、重合体成分、アルカリ金属イオン、無機層状化合物、分散液、分散液膜および被膜を、それぞれ、第2の液体媒体、第2の重合体成分、第2のアルカリ金属イオン、第2の無機層状化合物、第2の分散液、第2の分散液膜および第2の被膜と記載することがある。支持体としてこのような第2の被膜を有する多層支持体を用いる場合、該第2の被膜と前記第1の被膜とは隣接して積層されてなることが成形性の点から好ましい。
【0018】
水酸基およびカルボキシル基を含む第1の重合体成分および第2の重合体成分は、一分子中に水酸基とカルボキシル基とを含む重合体成分(A1)であってもよいし、水酸基を含むがカルボキシル基を含まない重合体成分(A2)とカルボキシル基を含むが水酸基を含まない重合体成分(A3)との混合物である重合体成分であってもよい。一分子中に水酸基とカルボキシル基とを含む重合体成分(A1)としては、ビニルアルコール−アクリル酸共重合体や、ビニルアルコール−メタアクリル酸共重合体が挙げられる。水酸基を含むがカルボキシル基を含まない重合体成分(A2)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、多糖類が挙げられる。カルボキシル基を含むが水酸基を含まない重合体成分(A3)としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、ポリメタアクリル酸部分中和物が挙げられる。ここで、「水酸基」とは、いわゆる「アルコール性水酸基」であり、カルボキシル基中の水酸基は含まない。
【0019】
水酸基を含むがカルボキシル基を含まない重合体成分(A2)としては、水系の溶媒への溶解性や、得られる多層成形品の耐擦傷性の観点から、ポリビニルアルコール系重合体を含むことが最も好ましい。ポリビニルアルコール系重合体とは、ビニルアルコール単位を主な構成単位とするポリマーである。このような「ポリビニルアルコール系重合体」としては、例えば、酢酸ビニル重合体や酢酸ビニル−α−オレフィン共重合体の酢酸エステル部分の全てまたは一部を加水分解して得られるポリマーや、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、tert−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等を加水分解して得られるポリマーが挙げられる。ポリビニルアルコール系重合体のビニルアルコール単位含有量は通常50モル%を超え、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは85モル%以上である。前記α−オレフィンとしては、エチレンやプロピレンが挙げられ、その含有量は、40モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましい。ポリマーのエステル部分の「ケン化」の程度は、70モル%以上が好ましく、85モル%以上のものがより好ましく、98%モル以上のいわゆる完全ケン化品がさらに好ましい。また、使用するポリビニルアルコール系重合体の重合度は、100以上5000以下、1000以上2000以下であることがより好ましい。
【0020】
また、ポリビニルアルコール系重合体として、水酸基以外の官能基を有するいわゆるポリビニルアルコール誘導体も使用でき、水酸基以外の官能基として例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基、シリル基、シロキサン基、アルキル基、アリル基、フルオロアルキル基、アルコシキ基、カルボニル基、ハロゲン基等が例示できる。ポリビニルアルコール中の水酸基の一部がこれら官能基の1種または2種以上と置き換わっていてもよい。
またさらに、水酸基を含むがカルボキシル基を含まない重合体成分(A2)は、ポリビニルアルコール系重合体に加えて、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれに水酸基が少なくとも1個ずつ結合している化合物(E)を含むことが好ましい。
化合物(E)は、水への溶解性の点から、一般式Cn2(n+1)nで表される鎖式多価アルコールであることが好ましい。該鎖式多価アルコールの具体例としては、例えば、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール、グリセリン等が挙げられ、またさらに、これらの多量体も化合物(E)として適用可能である。また化合物(E)として、2種類以上の化合物を併用してもよい。
加飾シートの熱成形性と、最終的に得られる多層成形品の耐擦傷性の観点から、化合物(E)としては、モノグリセリンおよびポリグリセリンが好ましく、ポリグリセリンがより好ましい。またポリグリセリンとしては、3〜50量体が好ましく、5〜40量体がさらに好ましく、7〜30量体が最も好ましい。
加飾シートの成形性の点からは、第1の被膜中に含まれる化合物(E)の量は、重合体成分の全重量の9〜60%であることが好ましく、20〜55%であることがさらに好ましく、29〜55%であることがさらに好ましく、38〜52%であることが最も好ましい。
【0021】
カルボキシル基を含むが水酸基を含まない重合体成分(A3)は、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物およびポリメタアクリル酸部分中和物からなる群から選択される1種以上の樹脂成分であることが好ましい。またアクリル酸とメタアクリル酸との共重合体も使用できるが、ポリアクリル酸やポリアクリル酸部分中和物等のポリアクリル酸系重合体であることが好ましい。
上記カルボキシル基を含むが水酸基を含まない重合体成分(A3)の重量平均分子量は、2,000〜5,000,000の範囲内が好ましく、より好ましくは100,000〜5,000,000の範囲内、さらに好ましくは500,000〜5,000,000の範囲内が好ましい。
【0022】
ポリアクリル酸部分中和物は、通常、ポリアクリル酸の水溶液に水酸化ナトリウム等のアルカリ成分を添加することにより得ることができる。ポリアクリル酸とアルカリの量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。ポリアクリル酸完全中和物をイオン交換により部分中和物に変換することもできる。ポリメタクリル酸部分中和物も同様にしてポリメタクリル酸から得ることができる。ポリアクリル酸部分中和物およびポリメタクリル酸部分中和物は、以下の式により算出される中和度が0.1%〜20%であることが好ましい。
中和度=(A/B)×100
A:ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸1g中に含まれる中和されたカルボキシル基の全モル数
B:ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸1g中に含まれる中和前のカルボキシル基の全モル数
【0023】
第1の重合体成分に含まれる水酸基とカルボキシル基のモル比および第2の重合体成分に含まれる水酸基とカルボキシル基のモル比は、それぞれ、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5の範囲内であり、好ましくは70:30〜95:5の範囲内である。また、耐擦傷性により優れる多層成形品を製造するためには、第1の重合体成分に含まれる水酸基およびカルボキシル基の合計重量が該重合体成分の重量の30〜60%であることが好ましく、より好ましくは35〜55%である。
【0024】
第1の重合体成分に含まれる水酸基とカルボキシル基のモル比および第2の重合体成分に含まれる水酸基とカルボキシル基のモル比は、それぞれ、公知のNMR法、IR法等により求めることができる。例えばIR法であれば、水酸基とカルボキシル基のモル比が既知のサンプルを用いて作成した検量線を用いて算出することができる。またビニルアルコール単独重合体と、アクリル酸単独重合体および/またはメタアクリル酸単独重合体を用いる場合は、予めこれらの重合体の重量から水酸基およびカルボキシル基のモル数を求め、モル比を算出することができる。重合体成分に含まれる水酸基およびカルボキシル基の合計重量測定については、モル比と同様、公知のNMR法、IR法等にて求めることができる。例えばIR法であれば、ポリオールユニット数が既知であるポリオール重合体および、ポリカルボン酸ユニット数が既知であるポリカルボン酸重合体について検量線を求め、水酸基およびカルボキシル基の合計重量を算出することができる。またビニルアルコール単独重合体と、アクリル酸単独重合体および/またはメタアクリル酸単独重合体を用いる場合は、予めこれらの重合体の重量から水酸基およびカルボキシル基の重量を求め、この合計量を用いることができる。
【0025】
第1の重合体成分および第2の重合体成分は、それぞれ、ポリビニルアルコール系重合体95〜5重量%と、ポリアクリル酸系重合体5〜95重量%の混合物であることが好ましい。
またさらに、カルボキシル基を含むが水酸基を含まない重合体成分(A3)は、ポリアクリル酸系重合体に加えて、分子内の連続する2個以上の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が少なくとも1個ずつ結合されている化合物(F)を含むことが好ましい。化合物(F)は、2つのカルボキシル基の間で形成される無水物構造を1つ以上有する化合物であってもよい。
【0026】
化合物(F)は、高分子、オリゴマー、低分子化合物の何れでもよい。高分子やオリゴマーとしては、ポリマレイン酸やポリマレイン酸無水物、およびこれらの共重合体、例えば(無水)マレイン酸とアクリル酸の(交互)共重合体、などが挙げられるが、数平均分子量が10,000未満であるオリゴマーが好ましい。
【0027】
低分子化合物がより好ましく用いられる。その様な化合物としては1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、およびこれら化合物の無水物などが挙げられるが、加飾シートの熱成形性、最終的に得られる多層成形品の耐擦傷性の観点から、化合物(F)は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が好ましい。
加飾シートの成形性の点から、第1の被膜中に含まれる化合物(F)の量は、第1の重合体成分の全重量の9〜60%であることが好ましく、20〜55%であることがさらに好ましく、29〜55%であることがさらに好ましく、38〜52%であることが最も好ましい。
第1の分散液に含まれる第1の重合体成分と、第2の分散液に含まれる第2の重合体成分は、同一であっても良く、また異なっていても良い。
【0028】
第1の分散液に含まれる第1の無機層状化合物および第2の分散液に含まれることがある第2の無機層状化合物は、液状媒体への添加前の原料の状態で、単位結晶層が互いに積み重なった層状構造を有する物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。第1の無機層状化合物および第2の無機層状化合(D)は、加飾シートにおける第1の被膜および第2の被膜中ではへき開した状態で存在する。
【0029】
第1および第2の無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸ジルコニウム系化合物、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物等を挙げることができる。ここに、「カルコゲン化物」とはIV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)およびまたはVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX2(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表されるものをいう。分散性の観点から、後述するような溶媒に膨潤しへき開する性質を有する無機層状化合物が好ましく、溶媒に膨潤しへき開する性質を有する粘土鉱物が特に好ましい。
【0030】
無機層状化合物が溶媒に膨潤しへき開する性質の程度は、以下の試験により評価することができる。該無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において5以上が好ましく、さらには20以上が好ましい。一方、該無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において5以上が好ましく、さらには20以上が好ましい。
【0031】
無機層状化合物を膨潤させへき開させる溶媒としては、無機層状化合物が親水性の膨潤性粘土鉱物の場合には、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられるが、とりわけ水、アルコール、水−アルコール混合物が好ましい。
【0032】
また、無機層状化合物が有機修飾粘土鉱物の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、フタル酸ジオクチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、シリコンオイルなどを液体媒体として用いることができる。
【0033】
〔膨潤性試験〕
100mlメスシリンダーに溶媒100mlを入れ、これに無機層状化合物2gを徐々に加える。23℃にて24時間静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合分散層の体積(ml)を読む。この数値(膨潤値)が大きい程、膨潤性が高い。
【0034】
〔へき開性試験〕
無機層状化合物30gを溶媒1,500ml中に徐々に加え、分散機(浅田鉄工株式会社製、デスパMH−L、羽根径52mm、回転数3,100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて、周速8.5m/分、23℃で90分間分散させた後、この分散液100mlをメスシリンダーに採取する。60分静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(へき開値)が大きい程、へき開性が高い。
【0035】
無機層状化合物としては、アスペクト比が30〜3,000のものが好ましく、30〜1,500のものがより好ましい。アスペクト比が大きすぎる場合には分散性が損なわれるため、多層成形品の耐擦傷性が不十分となる傾向がある。
【0036】
本発明において、粘土鉱物のアスペクト比(Z)とは、式:Z=L/aで定義される。式中、Lは粘土鉱物の平均粒径であり、aは、粘土鉱物の単位厚さ、即ち、粘土鉱物の単位結晶層の厚みを示す。
前記粘度鉱物の単位厚さであるaは、粉末X線回析法により求められる。層状構造を有する粘土鉱物の粉末X線反射は、底面反射と非底面反射とに分けられ、底面反射は層面に垂直の原子配列を反映する。一連の底面反射のうち、Braggの式(2d sinθ=λ)にて求められる最も大きなd値を有する反射の面間隔が底面間隔を示し、本発明では、この値を粘土鉱物の単位厚みaとする。
【0037】
本発明において、無機層状化合物の平均粒径Lとは、溶媒中の回折/散乱法により求めた粒径(体積基準のメジアン径)である。すなわち、無機層状化合物の分散液に光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンから、ミー散乱理論等により、粒度分布を計算することにより平均粒径Lが求められる。具体的には、粒度分布の測定範囲を適当な区間に分け、それぞれの区間について、代表粒子径を決定し、本来連続的な量である粒度分布を離散的な量に変換させて計算する。無機層状化合の平均粒径を回折/散乱法で求める際に用いた溶媒と同種の溶媒で前記無機層状化合物を充分に膨潤させへき開させた後に第1の重合体成分と混合した場合には、該重合体成分中における無機層状化合物の粒径と溶媒中で測定した無機層状化合物の粒径とは等しい。
第1の分散液中に含まれる第1の無機層状化合物の量は特に限定されるものではないが、支持体と第1の被膜とからなる積層体の熱成形性、最終的に得られる多層成形品の耐擦傷性の点から、第1の重合体成分と第1の無機層状化合物の体積比が、50/50〜99/1であることが好ましく、70/30〜99/1であることがより好ましい。
第2の分散液が第2の無機層状化合物を含有するとき、第2の分散液中に含まれる第2の無機層状化合物の量は特に限定されるものではないが、加飾シートの熱成形性、最終的に得られる多層成形品の耐擦傷性の点から、第2の重合体成分と第2の無機層状化合物の体積比が、100/0〜95/5であることが好ましく、100/0〜97/3であることがより好ましい。
第1の無機層状化合物と第2の無機層状化合物は同一であっても良く、異なっていても良い。
また、前記第1の分散液の調製において第1の液体媒体に添加する第1の重合体成分と第1の無機層状化合物の合計体積に対する第1の無機層状化合物の体積の比率を、前記第2の分散液の調製において第2の液体媒体に添加する第2の重合体成分と第2の無機層状化合物の合計体積に対する第2の無機層状化合物の体積の比率よりも高くすることが好ましい。
【0038】
第1のアルカリ金属イオンおよび第2のアルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。第1の被膜中に含まれる第1のアルカリ金属イオンの重量および第2の被膜中に含まれる第2のアルカリ金属イオンの重量はいずれも特に限定されるものではないが、被膜に含まれる重合体成分の重量に対し、好ましくは0.2〜5%であり、より好ましくは0.2〜2%である。
【0039】
前記第1のアルカリ金属イオンおよび第2のアルカリ金属イオンは、アルカリ金属イオン供与化合物に由来する。すなわち第1の分散液および第2の分散液の調製には、アルカリ金属イオン供与化合物を使用する。アルカリ金属イオン供与化合物としては、水酸化ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アルカリ金属イオン含有粘土鉱物等が挙げられる。2種類以上のアルカリ金属イオン供与化合物を併用してもよい。
【0040】
粘土鉱物は、通常、層状化合物である。本発明に適用可能な粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、金雲母等が挙げられる。また、これら粘土鉱物を有機物でイオン交換等の処理し、分散性等を改良したもの(以下、有機修飾粘土鉱物と称する場合もある)もアルカリ金属イオン含有粘土鉱物として用いることができる。粘土鉱物を処理する前記有機物としては、ジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩やフォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩等を用いることができる。
【0041】
加飾シートを加熱する工程において、加飾シート中の第1の被膜の熱反応を促進し耐擦傷性を高める観点から、アルカリ金属イオンはナトリウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン供与化合物としては、ナトリウムイオン含有粘土鉱物が好ましい。とりわけモンモリロナイトが好ましく用いられる。
【0042】
層間にアルカリ金属イオンを有する無機層状化合物は、アルカリ金属イオン供与化合物として機能することができる。このような化合物は、液体媒体中でアルカリ金属イオンを放出すると共に、アルカリ金属イオン非含有の無機層状化合物、またはアルカリ金属イオン含有量が低減された無機層状化合物を生じる。また、第1の重合体成分や第2の重合体成分として、ポリアクリル酸水溶液に水酸化ナトリウムを添加して得られるポリアクリル酸部分中和物を使用する場合には、該ポリアクリル酸部分中和物はアルカリ金属イオン供与化合物として作用することができる。
【0043】
第1の分散液および第2の分散液には、目的や用途に応じて、添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、着色剤など等の公知の添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもかまわない。
【0044】
支持体として、第1の熱可塑性樹脂からなる層と、第2の被膜とからなる多層支持体を用い、その第2の被膜の表面に第1の被膜を形成する場合、該第1の被膜および第2の被膜の厚みは、加飾シートの熱成形性、最終的に得られる多層成形品の耐擦傷性の点から、それぞれ通常0.1〜5.0μmの範囲である。第1の被膜の厚みは、前記第2の被膜の厚み以下であることが好ましい。
【0045】
第1の被膜と支持体との密着性や、第2の被膜と第1の熱可塑性樹脂からなる層との密着性を改良する目的で、該支持体や第1の熱可塑性樹脂からなる層に予め表面処理することが好ましい。表面処理の方法としては、例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電子線放射処理、酸処理、アンカーコート処理、プライマー処理などが挙げられる。これらの方法は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。またこれらの表面処理の方法は、第1の熱可塑性樹脂からなる層の表面に絵柄や紋様などの印刷を施す際の表面処理方法としても有効である。
【0046】
第1の分散液の製造方法としては、第1の重合体成分、アルカリ金属イオン供与化合物、および無機層状化合物をそれぞれ液体媒体に溶解あるいは分散させた後、これらの液を混合する方法や、第1の重合体成分、第1の無機層状化合物、アルカリ金属イオン供与化合物を同じ液体媒体に溶解または分散させる方法などが挙げられる。第1の重合体成分が、水酸基を含む重合体成分(A2)とカルボキシル基を含む重合体成分(A3)との混合物である場合には、重合体成分(A2)と重合体成分(A3)とをそれぞれ液体媒体に溶解させてもよく、両方を同じ液体媒体に溶解させてもよい。
第2の分散液は、無機層状化合物が必須成分でないこと以外は第1の分散液と同様のものであるから、無機層状化合物を配合しないことがある以外は、上記の第1の分散液の調製方法と同様にして調製することができる。
【0047】
液体媒体に膨潤しへき開する無機層状化合物を用いて分散液を製造する場合には、該無機層状化合物を媒体に十分に膨潤させへき開させるために、高圧分散処理により前記無機層状化合物を媒体に分散させることが好ましい。高圧分散処理とは、無機層状化合物を液体媒体に混合した混合液を複数本の細管中に高速通過させた後に合流させて、前記混合液同士あるいは該混合液と細管内壁とを衝突させることにより、混合液に高剪断および/または高圧を付加する処理方法である。高圧分散処理では、混合液を管径1μm〜1000μm程度の細管中に通過させ、このとき100kgf/cm2以上の最大圧力が印加されるように処理することが好ましい。最大圧力は500kgf/cm2以上であることがより好ましく、1000kgf/cm2以上であることが特に好ましい。また、混合液が細管内を通過する際、該液の最高到達速度は100m/秒以上であることが好ましく、圧力損失による伝熱速度は100kcal/hr以上であることが好ましい。前記高圧分散処理には、Microfluidics Corporation 社製超高圧ホモジナイザー(商品名:マイクロフルイダイザー)、ナノマイザー社製ナノマイザー、マントンゴーリン型高圧分散装置、イズミフードマシナリ製ホモゲナイザー等の高圧分散装置を用いることができる。高圧分散処理する液には、重合体成分(A)が含有されていてもよい。
【0048】
第1の分散液や第2の分散液には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤を含有する分散液を塗布することによって、形成される被膜の密着性を向上させることができる。分散液中の界面活性剤の含有量は、通常、0.001〜5重量%である。界面活性剤の添加量が少なすぎる場合には密着性の向上効果が十分でなく、界面活性剤の添加量が多すぎる場合には、耐擦傷性を低下させることがある。
【0049】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など、公知の界面活性剤を用いることができる。とりわけ炭素原子数6以上24以下のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体等のエーテル型の非イオン性界面活性剤(シリコーン系非イオン性界面活性剤)や、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド化合物等のフッ素型非イオン性界面活性剤(フッ素系非イオン性界面活性剤)を使用することが密着性向上の観点から好ましい。
【0050】
分散液を塗布する方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法などのグラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法などのロールコーティング法、ドクターナイフ法、ダイコート法、バーコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法などが挙げられる。均一な厚みの層を設けることができることからグラビア法を採用することが好ましい。
分散液(第1の分散液や第2の分散液)の塗布に続き、該分散液から液体媒体を除去することにより被膜を形成する。液体媒体の除去は、常圧または減圧下での加熱により行うことができる。
なお、第1の被膜を形成するための第1の分散液の塗布の前に、支持体は所望の三次元形状に賦形されていてもよく、また、第2の被膜を形成するための第2の分散液の塗布の前に、第1の熱可塑性樹脂からなる層は所望の三次元形状に賦形されていてもよい。
【0051】
支持体上に第1の被膜を形成して加飾シートを製造したのち、前記加飾シートを前記第1の被膜中で水酸基とカルボキシル基との縮合反応が起きる温度以上に加熱する工程を行う。前記加飾シートは、加熱前は、被膜に含まれる水酸基とカルボキシル基とがほとんど反応していないが、加熱する工程にて、水酸基をカルボキシル基とが反応して表面硬度が高くなる。この工程を実施することにより、最終的に得られる多層成形品は、優れた耐擦傷性を有するものとなる。加熱工程後の成形体および最終的な多層成形品における表面の鉛筆硬度は、2B以上であることが好ましい。該加熱工程において、第1の熱可塑性樹脂からなる層と第2の被膜とからなる前記多層支持体を使用する場合には、第2の被膜中でも水酸基とカルボキシル基との縮合反応が起きる温度以上で加熱することが好ましい。
また、該加熱工程の途中で、または加熱工程の終了後に、該加熱した加飾シートを所望の三次元形状に成形してもよい。このように加飾シートを三次元形状に熱成形したものを、以下、一次成形品と称することもある。
支持体中の第1の熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である場合、前記加熱工程において、該加飾シートの温度を100〜180℃で1〜60秒間保持した後に、さらに加飾シートの温度が(該熱可塑性樹脂の融点−30℃)以上(該熱可塑性樹脂の融点+30℃)以下の範囲内にある時に該加飾シートを成形することが好ましい。ここでいう結晶性熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度および融点が存在する熱可塑性組成樹脂である。該ガラス転移温度および融点は示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。
また、第1の熱可塑性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂である場合、前記加熱工程において、該加飾シートの温度を100〜180℃で1〜60秒間保持した後に、さらに加飾シートの温度が(該熱可塑性樹脂のガラス転移点−30℃)以上(該熱可塑性樹脂のガラス転移点+30℃)以下の範囲内にある時に該加飾シートを成形することが好ましい。ここでいう非晶性熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度のみ存在し、融点が存在しない熱可塑性組成樹脂である。該ガラス転移温度および融点の存在については前述したDSC等を用いて測定することができる。
加熱した加飾シートを所望の三次元形状に成形する工程は、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の、真空吸引して加飾シートを前記三次元形状を有する金型面に密着させる工程、または加飾シートに加圧空気を吹き付け金型面に密着させる工程であることが好ましい。
【0052】
本発明の多層成形品の製造方法は、前記加飾シートの前記支持体の第1の熱可塑性樹脂からなる層に、可塑化した第2の熱可塑性樹脂を供給し、これを所定の形状に賦形する工程を含む。この工程を行うことにより、最終製品である、前記加飾シートと前記第2の熱可塑性樹脂の層とを有する多層成形品を得ることができる。具体的には前記加飾シートを、該加飾シートにおける第1の被膜が成形用金型のキャビティ内面と接するように金型キャビティ内に配置し、次いで、射出成形法や、射出圧縮成形法、射出プレス成形法等により、可塑化した第2の熱可塑性樹脂を供給し、これを賦形するとともに前記加飾シートと一体化させ、さらに冷却固化する。すなわち最終製品である多層成形品において、第1の被膜を熱成形した層が最表層となる。
【0053】
本発明の方法により得られる多層成形品は、住宅外装部品、住宅内装材、家具用部材、自動車外装部品、自動車内装部品、二輪車外装部品、家電部品、雑貨部品、看板等の高い耐擦傷性が求められる各種用途に好適である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。はじめに、以下の実施例における物性値の測定方法を説明する。
〔厚み測定〕
0.5μm以上の厚みは、市販のデジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッド MH−15M、日本光学社製)を用いて測定した。0.5μm未満の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)の断面観察より求めた。
【0055】
〔粒径測定〕
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を用いて測定した。後述する塗工液(1)、(2)、(4)中の粘土鉱物の平均粒径をペーストセルにて光路長50μmで測定し、さらに該塗工液(1)、(2)、(4)の希釈液中の粘土鉱物の平均粒径をフローセル法にて光路長4mmで測定した。いずれの場合も平均粒径の値は変わらず、分散液中で粘土鉱物が充分に膨潤し劈開していることを確認した。この値を、被膜を形成する樹脂組成物中の粘土鉱物の平均粒径Lとみなした。
【0056】
〔重合体成分に含まれる水酸基とカルボキシル基の個数比測定〕
水酸基を含む重合体成分(A2)としてポリビニルアルコール(完全ケン化物)および、カルボキシル基を含む重合体成分(A3)としてポリアクリル酸を用いた。以下の式により、ポリビニルアルコール中の水酸基数およびポリアクリル酸中のカルボキシル基数を算出し、その比を求めた。
水酸基数=(重合体成分(A2)添加量)/(重合体成分(A2)を構成するモノマー単位1単位あたりの分子量)
カルボキシル基数=(重合体成分(A3)添加量)/(重合体成分(A2)を構成するモノマー単位1単位あたりの分子量)
【0057】
〔重合体成分(A)に含まれる水酸基およびカルボキシル基の合計重量測定〕
水酸基を含む重合体成分(A2)としてポリビニルアルコール(完全ケン化物)および、カルボキシル基を含む重合体成分(A3)としてポリアクリル酸を用いた。以下の式より水酸基量およびカルボキシル基量算出し、合計した。
水酸基量=(17/(重合体成分(A2)を構成するモノマー単位1単位あたりの分子量))×(重合体成分(A2)添加量/重合体成分(A)添加量)×100
カルボキシル基量=(45/(重合体成分(A3)を構成するモノマー単位1単位あたりの分子量))×(重合体成分(A3)添加量/重合体成分(A)添加量)×100
【0058】
〔アルカリ金属イオン濃度測定〕
誘導結合プラズマ発光分析装置(Optima 3000、パーキンエルマー社製)を用いて、加飾シート全体のナトリウムイオン濃度を測定し、そこから被膜を形成する樹脂組成物以外の層に含まれるナトリウムイオン濃度を差し引くことによって、該樹脂組成物中のナトリウムイオン濃度を求めた。試料の調製方法は以下のとおりである。加飾シートおよび支持体をそれぞれ1gずつ採取し、96%硫酸1ml添加した後、電気炉で灰化し、残った残渣物を5%塩酸に溶解させ、定容した。その定容した液を誘導結合プラズマ発光分析装置に供試し、それぞれナトリウムイオン濃度を測定し、その差を求めた。
【0059】
〔アスペクト比計算〕
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、粘土鉱物の回折測定を粉末法により行い、粘土鉱物の単位厚さaを求めた。上述の方法で求めた平均粒径Lを用いて、該粘土鉱物のアスペクト比Zを、Z=L/aの式により算出した。なお塗工液(1)、(2)、(4)を乾燥したものについてもX線回折測定を行ない、粘土鉱物の面間隔が広がっていることを確認した。
【0060】
〔熱成形〕
得られた加飾シートを、真空成形機を用いて、加熱ゾーンに固定し、該加飾シート両面を遠赤外線ヒーターを用いて、温度設定430℃、該ヒーターと加飾シートの間隔を125mmとし、20秒間加熱した後、該加飾シートを金型に接触させ、型と加飾シートとの間の空気を真空引きすることにより、加飾シートを賦形し、送風機により冷却固化を行った後に、賦形された加飾シート(一次成形品)を取り出した。一次成形品の形状を図1に示した。
〔賦形性の評価〕
一次成形品の形状を目視にて観察し、真空成形で用いた型の形状との相違の程度を、下記基準に従って評価した。
○:型の形状通りに賦形された一次成形品が得られる。
×:型の形状通りに賦形された一次成形品が得られない。
〔鉛筆硬度〕
耐擦傷性の評価は、一次成形品についてJIS K−5400に示されている鉛筆引っ掻き試験法に従って実施した。初めに硬度6Bの鉛筆で試験し、硬度を5B、4B、・・・と順次上げ、最後に表面に傷が付かなかったときの鉛筆の硬度で表した。
【0061】
〔塗工液(分散液)の作製〕
塗工液(1)の作製
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1300gと、ポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)130gとを混合し、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で95℃に昇温した。該混合系を同温度で30分間攪拌してポリビニルアルコールを溶解させたのち、60℃に冷却し、ポリビニルアルコール水溶液を得た。該ポリビニルアルコール水溶液(60℃)を前記同様の条件で攪拌しながら、1−ブタノール122g、イソプロピルアルコール122gおよびイオン交換水520gを混合してなるアルコール水溶液を5分間かけて滴下した。滴下終了後、高速攪拌(3,000rpm、周速度=8.2m/分)に切り替え、該攪拌系に高純度モンモリロナイト(商品名:クニピアG;クニミネ工業(株)製)36gを徐々に加え、添加終了後、60℃で60分間攪拌を続けた。その後、さらにイソプロパノール243gを15分間かけて加え、次いで該混合系を室温まで冷却し、粘土鉱物含有液を得た。
この粘土鉱物含有液に対し、非イオン性界面活性剤(ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、商品名:SH3746、東レ・ダウコーニング(株)製)0.1重量%(前記分散液の重量を基準とする)を低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において添加し、その後系のpHが6となるようにイオン交換樹脂で調整し、粘土鉱物分散液を調製した。
またさらに別の分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1067gと、ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、平均分子量100,0000)33gとを混合し、常温にて低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で重合体成分(A3)溶液を作製した。
粘土鉱物分散液2519gと重合体成分(A3)溶液1100gを、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において徐々に混合して混合液とし、さらに該混合液を高圧分散装置(商品名:超高圧ホモジナイザーM110−E/H、Microfluidics Corporation 製)を用いて、1100kgf/cm2の条件で処理することにより、塗工液(1)を得た。
塗工液(1)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは560nm、粉末X線回折から得られるa値は1.2156nmであり、アスペクト比Zは460であった。
塗工液(2)の作製
塗工液(1)の調製におけるポリビニルアルコール(PVA117H)の代わりにポリビニルアルコール(AQ2117;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)を、また高純度モンモリロナイトを80g用いた以外は塗工液(1)の調製と同様にして、塗工液(2)を得た。
塗工液(3)の作製
塗工液(2)の調製における高純度モンモリロナイトのかわりに次亜リン酸ナトリウム15gを用いたこと以外は塗工液(2)の調製と同様にして、塗工液(3)を得た。
塗工液(4)の作製
塗工液(2)の調製における高純度モンモリロナイトの量を17gに変更したこと以外は塗工液(2)の調製と同様にして、塗工液(4)を得た。
【0062】
〔実施例1〕
厚さ300μmの無延伸ポリプロピレンシートの片面にコロナ処理したものを支持体として用いた。該支持体のコロナ処理面上にアンカ−コート剤(EL510−1/CAT−RT87=5/1(重量比):東洋モートン(株)製)を、テストコーター(康井精機製)を用いて、マイクログラビア塗工法により、塗工速度3m/分、乾燥温度80℃でグラビア塗工し、アンカーコート層を形成した。当該アンカーコート層の乾燥厚みは0.05μmであった。
次に前述の塗工液(1)をテストコーター(康井精機製)を用いてマイクログラビア塗工法(グラビアロールの線数を150、♯:GM)により、塗工速度3m/分でグラビア塗工して100℃で乾燥し、これを5回繰り返すことにより、支持体上に被膜が積層されてなる加飾シートを得た。該被膜の厚みは2.0μmであり、被膜中のNa濃度は7000ppmであった。得られた加飾シートを前述した方法により熱成形し、一次成形品を得た。その後、一次成形品について評価を行った。結果を表1に示した。
〔比較例1〕
実施例1において塗工液(1)を用いなかったこと以外は同様にしてアンカーコート層を有する支持体を得た。得られた支持体を前述した方法により熱成形し、その後、評価を行った。結果を表1に示した。
〔実施例2〕
厚さ100μmのホモポリプロピレンの無延伸シートの片側にコロナ処理したものと、厚さ300μmのランダムポリプロピレンの無延伸シートの片面にコロナ処理したものを、コロナ処理面同士をドライラミネートにより貼合した。該ホモポリプロピレンのシート側にコロナ処理を施し、該コロナ処理面上にアンカ−コート剤を実施例1と同様に塗工し、アンカーコート層を形成した。当該アンカーコート層の乾燥厚みは0.05μmであった。
次に前述の塗工液(3)をテストコーター(康井精機製)を用いてマイクログラビア塗工法(グラビアロールの線数を150、♯:GM)により、塗工速度3m/分でグラビア塗工して100℃で乾燥し、これを4回繰り返し、前記アンカーコート層上に第2の被膜を積層した。さらに上記と同様の方法にて塗工液(2)を第2の被膜上に1回塗工し、100℃で乾燥し、第1の被膜を形成し、加飾シートを得た。該第2の被膜の厚みは1.6μm、第1の被膜の厚みは0.4μmであり、第1の被膜および第1の被膜中のNa濃度は7000ppmであった。得られた加飾シートを前述した方法により熱成形し、一次成形品を得た。その後、一次成形品について評価を行った。結果を表2に示した。
〔比較例2〕
実施例2において、塗工液(3)の代わり塗工液(2)を用いて無機層状化合物を含有する被膜を形成し、塗工液(2)の代わりに塗工液(3)を用いて無機層状化合物を含有しない被膜を形成したこと以外は実施例2と同様にして加飾シートを得た。該無機層状化合物を含有する被膜の厚みは0.4μm、無機層状化合物を含有しない被膜の厚みは1.6μmであり、無機層状化合物を含有する被膜および無機層状化合物を含有しない被膜中のNa濃度は7000ppmであった。得られた加飾シートを前述した方法により熱成形し、一次成形品を得た。その後、一次成形品について評価を行った。結果を表2に示した。
〔比較例3〕
実施例2において、塗工液(2)および塗工液(3)を用いなかったこと以外は同様にしてアンカーコート層を有する支持体を得た。得られた支持体を前述した方法により熱成形し、その後、評価を行った。結果を表2に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例で製造した一次成形品の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体の表面に、水酸基とカルボキシル基とを、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5(個数比)で含む第1の重合体成分と、第1の無機層状化合物と、第1のアルカリ金属イオンとを含有する第1の樹脂組成物からなる第1の被膜が形成されてなる加飾シート。
【請求項2】
前記第1の重合体成分が、ポリビニルアルコール系重合体95〜5重量%と、ポリアクリル酸系重合体5〜95重量%との混合物である請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記第1の被膜に含まれる前記第1のアルカリ金属イオンが、前記第1の重合体成分100重量部に対し0.2〜5重量%である請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記第1の無機層状化合物として、層間に、第1のアルカリ金属イオンを有する無機層状化合物を用いる請求項1〜3いずれかに記載の加飾シート。
【請求項5】
前記支持体が、第1の熱可塑性樹脂からなる層と、該第1の熱可塑性樹脂からなる層の一方の表面上に形成された第2の被膜とからなる多層支持体であって、前記第2の被膜が、第2の重合体成分と第2のアルカリ金属イオンとを含有する被膜であり、該第2の被膜と前記第1の被膜とが隣接して積層されてなる請求項1〜3いずれかに記載の加飾シート。
【請求項6】
前記第1の被膜の厚みが前記第2の被膜の厚み以下である請求項5に記載の加飾シート。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の加飾シートを三次元形状に熱成形して得られる一次成形品。
【請求項8】
熱成形が、真空成形または圧空成形である請求項7に記載の一次成形品。
【請求項9】
請求項6または7に記載の一次成形品の支持体側に、可塑化した熱可塑性樹脂を供給し賦形して得られる多層成形品。
【請求項10】
自動車部品である請求項9に記載の多層成形品。
【請求項11】
家電部品である請求項9に記載の多層成形品。
【請求項12】
加飾シートの製造方法であって、
第1の熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体の表面に、
第1の液体媒体と、該第1の液体媒体中に分散された、第1の重合体成分と、第1のアルカリ金属イオンと、第1の無機層状化合物とからなる第1の分散液を塗布して前記支持体上に第1の分散液膜を形成する工程(ここで、第1の重合体成分は水酸基およびカルボキシル基を水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5のモル比で含む);
前記第1の分散液膜から前記第1の液体媒体を除去して第1の被膜を形成し、これにより前記支持体と該第1の被膜とからなる加飾シートを形成する工程;
を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記支持体は、第1の熱可塑性樹脂からなる層と、該第1の熱可塑性樹脂からなる層の一方の表面上に形成された第2の被膜とからなる多層支持体であり、
該方法は、前記多層支持体を調製する工程を更に有し、該工程は、
第1の熱可塑性樹脂からなる層の表面に、
第2の液体媒体と、該第2の液体媒体中に分散された、第2の重合体成分と、第2のアルカリ金属イオンとからなる第2の分散液を塗布して前記第1の熱可塑性樹脂からなる層上に第2の分散液膜を形成する工程、および
前記第2の分散液膜から前記第2の液体媒体を除去して前記第2の被膜を形成し、これにより前記多層支持体を形成する工程
であることを特徴とする方法。
【請求項14】
多層成形品の製造方法であって、
第1の熱可塑性樹脂からなる層を有する支持体の表面に、
第1の液体媒体と、該第1の液体媒体中に分散された、第1の重合体成分と、第1のアルカリ金属イオンと、第1の無機層状化合物とからなる第1の分散液を塗布して前記支持体上に第1の分散液膜を形成する工程(ここで、第1の重合体成分は水酸基およびカルボキシル基を水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5のモル比で含む);
前記第1の分散液膜から前記第1の液体媒体を除去して第1の被膜を形成し、これにより前記支持体と該第1の被膜とからなる加飾シートを形成する工程;
前記加飾シートを、前記第1の被膜中で水酸基とカルボキシル基との縮合反応が起きる温度以上に加熱して、該被膜を硬化させる工程;および
前記加飾シートの前記支持体の第1の熱可塑性樹脂からなる層上に、可塑化されている第2の熱可塑性樹脂を供給し、これを所定の形状に賦形して、前記加飾シートと前記第2の熱可塑性樹脂の層とを有する多層成形品を形成する工程
とを含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記支持体は、第1の熱可塑性樹脂からなる層と、該第1の熱可塑性樹脂からなる層の一方の表面上に形成された第2の被膜とからなる多層支持体であり、
該方法は、前記多層支持体を調製する工程を更に有し、該工程は、
第1の熱可塑性樹脂からなる層の表面に、
第2の液体媒体と、該第2の液体媒体中に分散された、第2の重合体成分と、第2のアルカリ金属イオンとからなる第2の分散液を塗布して前記第1の熱可塑性樹脂からなる層上に第2の分散液膜を形成する工程、および
前記第2の分散液膜から前記第2の液体媒体を除去して前記第2の被膜を形成し、これにより前記多層支持体を形成する工程
であることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1の被膜の厚みを前記第2の被膜の厚み以下とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の分散液は、第2の無機層状化合物を更に含有し、
前記第1の分散液の調製において第1の液体媒体に添加する第1の重合体成分と第1の無機層状化合物の合計体積に対する第1の無機層状化合物の体積の比率を、前記第2の分散液の調製において第2の液体媒体に添加する第2の重合体成分と第2の無機層状化合物の合計体積に対する第2の無機層状化合物の体積の比率よりも高くする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の重合体成分が、水酸基を含むがカルボキシル基を含まない重合体成分(A2)と、カルボキシル基を含むが水酸基を含まない重合体成分(A3)とを含有する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
重合体成分(A2)の重合体成分(A3)に対する重量比が5/95〜50/50の混合物である請求項18記載の方法。
【請求項20】
重合体成分(A2)がポリビニルアルコール系重合体である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ポリビニルアルコール系重合体の重合度が1000〜2000である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
重合体成分(A3)がポリアクリル酸系重合体である請求項16に記載の方法。
【請求項23】
ポリアクリル酸系重合体の重量平均分子量が500,000〜5,000,000である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の分散液に含まれる第1のアルカリ金属イオンの量が、前記第1の重合体成分の重量の0.2〜5%である請求項14に記載の方法。
【請求項25】
第1の無機層状化合物として、層間に、第1のアルカリ金属イオンを有する無機層状化合物を用いる請求項14に記載の方法。
【請求項26】
支持体の第1の熱可塑性樹脂が、融点を有する結晶性熱可塑性樹脂であり、
前記加飾シートを加熱する工程において、該加飾シートの温度を100〜180℃で1〜60秒間保持し、
該加飾シートの温度が(前記結晶性熱可塑性樹脂の融点−30℃)以上(前記結晶性熱可塑性樹脂の融点+30℃)以下の範囲内にある時に該加飾シートを所定形状に成形する工程を更に有する請求項14に記載の方法。
【請求項27】
支持体の第1の熱可塑性樹脂がガラス転移点を有する非晶性熱可塑性樹脂であり、
前記加飾シートを加熱する工程において、該加飾シートの温度を100〜180℃で1〜60秒間保持し、
該加飾シートの温度が(前記非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移点−30℃)以上(前記非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移点+30℃)以下の範囲内にある時に該加飾シートを所定形状に成形する工程を更に有する請求項14に記載の方法。
【請求項28】
前記加飾シートを成形する工程が、真空吸引して加飾シートを三次元形状を有する金型面に密着させる工程または加飾シートに加圧空気吹き付け三次元形状を有する金型面に密着させる工程である請求項26または27に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−105419(P2008−105419A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253865(P2007−253865)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】