説明

動力伝達装置及びベルト研磨機

【課題】伝動体に動力の伝達ロスのない適切な張力を付与することができるとともに該張力を一定に保持することができる動力伝達装置及びこれを用いたベルト研磨機を提供する。
【解決手段】動力伝達装置100を、出力軸102及びゴムロール(入力軸)30と平行に配置される回動シャフト111と、該回動シャフト111からその径方向に沿って延びる支持アーム112と、該支持アーム112の先端部に回動可能に取り付けられタイミングベルト105を巻き掛けるとともにそのループ内側に向かって押圧するテンションプーリ113と、回動シャフト111を回転させることで支持アーム112を旋回させるシリンダ(駆動機構)114と、回動シャフト111を回転不能に固定する電磁ブレーキ120とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機等の出力軸(駆動軸)及び回転対象の入力軸(従動軸)のそれぞれにプーリやスプロケット等の回転体が固定され、これら回転体にベルトやチェーン等の伝動体が巻き掛けられて出力軸の回転が入力軸に伝達される動力伝達装置、及びこの動力伝達装置を用いたベルト研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような巻き掛け伝動タイプの動力伝達装置にあっては、動力の伝達ロスを少なくするためベルトに常時所定の張力を付与しておくことが要求される。そのため、従来においては、出力軸及び入力軸の軸間距離(回転軸線の離隔距離)を調節可能とし、ベルトの巻き掛けに緩みが生じた場合には出力軸及び入力軸を離間させることで該ベルトに張力を付与することとしている。
【0003】
なお、上記のような動力伝達装置は、例えばベルト研磨機等の回転軸を備えた種々の機器に採用されている。
ベルト研磨機としては、無端状のベルトがゴムロール等の押圧ロールとテンションロールとの間に巻きかけられるとともに、これらの押圧ロールとテンションロールとが、上記ベルトを研磨する研磨ロールに対して接近、離間自在に設けられ、かつ上記テンションロールが上記押圧ロール対して水平方向かつ直線的に接近、離間自在に設けられたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
このベルト研磨機の押圧ロール、テンションロール及びこれらに巻き掛けられるベルトは、押圧ロールを入力軸、テンションロールを出力軸、ベルトを伝動体とした一種の動力伝達装置を構成している。
そして、テンションロールが押圧ロールに対して接近、離間することによりベルトの張力が調整され、精度を高くしてベルトを研磨することが可能となっている。
【0004】
また、上記動力伝達装置の他、ベルトに張力を付与する構成として、二つのプーリ間に巻き掛けたベルトに,回転自在に枢着したテンションアームの先端に設けたテンションプーリを接触させ、このテンションプーリをテンションばねにてベルトに対して弾性的に押圧してベルトに張力を付与する動力伝達装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
これによれば、ベルトにテンションばねの付勢力に応じた張力を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような特許文献1に記載の動力伝達装置においては、出力軸と入力軸とが接近、離間することで張力が調整されるため、これら出力軸と入力軸とを接近、離間させる機構が必要となる。さらに、入力軸と出力軸の離間する距離に応じてこれら出力軸と入力軸とが移動し得るスペースを確保する必要がある。よって、装置自体が大型になってしまうという欠点がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の動力伝達装置においては、ベルトに与えられる張力はテンションばねのバネ定数に委ねられ、張力を柔軟に変更することができないという欠点がある。また、機器やベルトの振動等の外的要因によってテンションプーリが変位してしまう場合があり、これによりベルトに付与される張力が変動してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、べルト等の伝動体に動力の伝達ロスのない適切な張力を付与することができるとともに該張力を一定に保持することができる動力伝達装置及びこれを用いたベルト研磨機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る動力伝達装置は、互いに平行に配置される出力軸と入力軸とにそれぞれ回転体を固定し、これら各軸の回転体にループ状の伝動体を巻き掛けて出力軸の回転を入力軸に伝達する動力伝達装置において、前記出力軸及び入力軸と平行に配置される回動シャフトと、該回動シャフトからその径方向に延びる支持アームと、該支持アームの先端部に回転可能に取り付けられ、前記伝動体を巻き掛けるとともに該伝動体をループ内側に向かって押圧する回転部材と、前記回動シャフトを回転させることで前記支持アームを旋回させる駆動機構と、前記回動シャフトを保持して該回動シャフトの回転を抑制するシャフト固定手段が設けられたことを特徴とする。
【0010】
このような特徴の動力伝達装置によれば、駆動機構による回動シャフトの回転とともに支持アームが旋回することにより、伝動体をループ内側に向かって押圧する回動部材が変位し、該伝動体に付与される張力を適宜変更することが可能となる。
また、伝動体に適した張力を付与できる回動部材の位置が定まった後は、シャフト固定手段により回動シャフトを保持することで、支持アームを介して回動シャフトと接続された回動部材の回動方向の位置が固定される。これにより、外的要因により回動部材が変位してしまうことはないため、伝動体に付与される張力を保持することができる。
【0011】
また、本発明に係る動力伝達手段においては、前記シャフト固定手段が、通電又は非通電により前記回動シャフトの回転を抑制する電磁ブレーキであることを特徴とする。
【0012】
このような特徴の動力伝達手段によれば、電磁ブレーキを通電状態又は非通電状態とすることにより回動シャフトの回動を抑制することができるため、容易に回動シャフトを所定の回転方向位置保持することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明に係る動力伝達手段においては、前記駆動機構が前記回動シャフトに回転モーメントを与えるシリンダであることを特徴とする。
【0014】
このような特徴の動力伝達装置によれば、シリンダを動作させることによって回動部材の回動方向の位置を任意に定めることができ、伝動体に適切な張力を付与することが可能となる。
【0015】
本発明に係るベルト研磨機は、研磨ロールとこれに対向するゴムロールとを備え、表面を研磨すべき帯状のベルトを前記研磨ロールと前記ゴムロールとの間に送り込んで前記ベルトを研磨するベルト研磨機において、前記ゴムロールが前記研磨ロールに対して接近、離間可能とされ、前記ゴムロールの回転軸を前記入力軸とした上記の動力伝達装置が設けられたことを特徴とする。
【0016】
このような特徴のベルト研磨機においては、上記動力伝達装置が設けられたことによって伝動体に適切な張力を付与することができるとともに該張力を一定に保持することができる。これによって、動力の伝達ロスを生じさせることなくゴムロールを高効率で回転させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の動力伝達装置及びベルト研磨機によれば、伝動体を押圧する回動部材が変位することで該伝動体に適切な張力を付与することができ、また、回動部材の位置を固定することで伝動体に付与される張力を一定に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るベルト研磨機の概略構成を示す側面図である。
【図2】ワークのパスラインを説明する模式図である。
【図3】実施形態に係るベルト研磨機のゴムロールを駆動する動力伝達装置の概略構成を示す側面図である。
【図4】図3のX方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の動力伝達装置及びベルト研磨機の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは本発明の実施形態の動力伝達装置については、それを用いたベルト研磨機とともに説明する。
図1は実施形態に係るベルト研磨機の概略構成を示す側面図、図2はワークのパスラインを説明する模式図、図3は実施形態に係るベルト研磨機のゴムロールを駆動する動力伝達装置の概略構成を示す側面図、図4は図3のX方向矢視図である。なお、図3は図1を紙面裏側から見た図に相当する。
【0020】
本実施形態のベルト研磨機1は、タイミングベルト等の帯状のワークWの表面を一定の厚さに研磨する際に用いられる。
図1から図3に示すように、ベルト研磨機1は、研磨機本体10、研磨ロール20、ゴムロール30、移動機構40、入側ロール50、プレスロール60、ゴムロール用ブラシロール70、表面用ブラシロール80a、裏面用ブラシロール80b、出側ロール90及びゴムロール30の動力伝達装置100とから概略構成されている。
【0021】
研磨ロール20はワークWを研磨するものであって、その両端部で回転可能に研磨機本体10に支持されている。この研磨ロール20はその一端側に取り付けられたプーリ21がタイミングベルト22を介して電動機23のプーリ24と連結されており、この電動機23の動力によって研磨ロール20が回転されるように構成されている。
また、研磨ロール20の表面は、摩擦係数の大きなサンドペーパーや硬度が高く磨耗耐性に優れたダイヤモンド砥粒等で覆われており、これにワークWの表面が接することよって該ワークWが研磨されるようになっている。
【0022】
ゴムロール30は、ワークWを滑りを生じさせることなく巻き掛けてワークWをパスライン前方に送るとともに、該ワークWを研磨ロール20に押し当てるためのものである。このゴムロール30は移動機構40の上部に位置するように両端部が研磨機本体10に設置された軸受31(図4参照)にそれぞれ回動可能に支持されている。そして、このゴムロール30は、詳細は後述する動力伝達装置100によって軸線回りに回転される。
【0023】
移動機構40は、可動台41、ガイドレール42、送りねじ機構43、ハンドル44等を備えており、ハンドル44を回転させると、その回転が送りねじ機構43によって水平方向の直線運動に変換され、これにより可動台41がガイドレール42上を移動する。このようにして、可動台41上に配設されたゴムロール30を研磨ロール20に対して水平方向に沿って近接、離間移動させることができるようになっている。
【0024】
プレスロール60は、ゴムロール30に巻き掛けられたワークWを上方から押さえ付けるためのものであり、研磨ロール20の上部からゴムロール30との上部に向かって張り出すようにして設けられている。
【0025】
次にこのベルト研磨機1におけるワークWのパスラインについて図2を参照して説明する。ベルト研磨機1の上方から下方に向けて供給される帯状のワークWは、入側ロール50に巻き掛けられてその移動方向が水平方向に変換させられる。そして、ワークWはゴムロール30に巻き掛けられて下方斜め方向に向かって折り返される。また、プレスロール60が上方からワークWを押さえ付けることによって該ワークWがゴムロールに密着する。なお、ゴムロール30の表面はゴムであることからワークWとの摩擦力は大きなものとなり、ゴムロール30とワークWとの間に滑りが生じることはない。これによりゴムロール30が回転するに従ってワークWがパスライン前方に確実に送られることになる。
また、ゴムロール30の研磨ロール20と反対側の位置には、該ゴムロール30と接触回転するゴムロール用ブラシロール70が設けられている。このゴムロール用ブラシロール70は図1に示すようにゴムロール30と同じく移動機構40上に設けられおり、該ゴムロール用ブラシロール70によってゴムロール30の表面がブラッシングされる。
【0026】
そして、ゴムロール30が移動機構40によって研磨ロール20に接近状態とされているときは、ワークWは研磨ロール20とゴムロール30とによって挟み込まれ、ワークWの表面が研磨ロール20によって研磨される。このように研磨された後、斜め下方に向かって送られたワークWは、その表面が表面用ブラシロール80aによって、裏面が裏面用ブラシロール80bによってそれぞれブラッシングされた後、出側ロール90によって移動方向が下方に変換されてベルト研磨機1外部に送られていく。
【0027】
このようにして、ワークWはゴムロール30の駆動回転によってパスライン上を送られその裏面が研磨されていく。次に、このゴムロール30を回転させる動力伝達装置100について図3及び図4を用いて説明する。図3において、ゴムロール30は研磨ロール20に最も接近した接近位置Aに位置しており、ゴムロール30は上記移動機構40によって、該接近位置Aと最も離間した離間位置Bとの間を水平方向に沿って移動する。
【0028】
この動力伝達装置100は、図3に示すように電動機101の出力軸102に取り付けられたプーリ(回転体)103とゴムロール30の回転軸である入力軸32に取り付けられたプーリ(回転体)104とにループ状のタイミングベルト(伝動体)105が巻き掛けられることで構成されている。
なお、本実施形態においては、電動機101の出力軸102とゴムロール30の入力軸32とはその軸線が互いに並行となるように配置され、出力軸102がベルト研磨機1の下方に位置するとともにゴムロール(入力軸)30が出力軸102の上方に配置され、これによってタイミングベルト105は上下にわたって延びるように出力軸102、入力軸32間に巻き掛けられる。
このような構成とすることにより電動機101の出力軸102が回転した際には、その回転力がプーリ103、タイミングベルト105、プーリ104を介してゴムロール30の入力軸32に伝達される。
【0029】
さらに、動力伝達装置100は、図3及び図4に示すように、タイミングベルト105の張力を調整する張力調整機構110を備えている。この張力調整機構110は、回動シャフト111と、一対の支持アーム112と、テンションプーリ(回動部材)113と、上記回動シャフト111を回転させるシリンダ(駆動機構)114と、電磁ブレーキ(シャフト固定手段)120とから構成される。
【0030】
回動シャフト111は、その軸線が上記出力軸102及び入力軸32と平行となるように、離間位置Bに位置するゴムロール30の直下かつ出力軸102とゴムロール30との中間位置よりも出力軸102寄りの位置に配置され、研磨機本体10に設けられた軸受部111bによって軸線回りに回動可能に支持されている。
このような回動シャフト111にはその径方向延びる一対の支持アーム112の基端が固定されており、回動シャフト111が回転することによって支持アーム112は鉛直面に沿って旋回する。なお、本実施形態においては、支持アーム112は回動シャフト111からその略上方に向かって延びている。
【0031】
そして、この支持アーム112の先端には、テンションプーリ113が一対の支持アーム112に挟み込まれるようにして回転可能に支持されている。なお、テンションプーリ113の回転軸は上記回動シャフト111と平行とされている。
このテンションプーリ113は、その外周面の一部がタイミングベルト105に接触するようにして、換言すれば、タイミングベルト105が該テンションプーリ113の外周面の一部に巻き掛けられるようにして、タイミングベルト105をそのループの内側に向かって押圧している。これによって、タイミングベルト105はその一部がくの字をなすように変形し、これによってタイミングベルト105に張力が付与される。
また、テンションプーリ113は上記支持アーム112の旋回によって、円弧状の軌跡に沿って変位可能とされている。
【0032】
シリンダ114は、研磨機本体10に固定されており、そのロッド114aが突出可能とされている。該ロッド114aの先端側は、回動シャフト111に固定されたブラケット111aに連結されている。これによってロッド114aが突出又は後退することにより回動シャフト111に回転モーメントが与えられ、該回動シャフト111がその軸線回りに回転する。
【0033】
なお、本実施形態においては、ロッド114aが突出した際には、回動シャフト111が図3における時計回りに回転し、これにより支持アーム112の先端に支持されるテンションプーリ113が図3の右側、即ちタイミングベルト105のループ内側に向かって変位する。これによりタイミングベルト105により大きな張力を付与することができる。
一方、ロッド114aが後退した際には、回動シャフト111が図3における半時計回りに回転し、これによりテンションプーリ113が図3の左側、即ち、タイミングベルト105のループ外側に向かって変位する。これによって、タイミングベルト105に付与する張力を小さくすることができる。
【0034】
このようにして、テンションプーリ113が変位させられてその位置に応じた張力をタイミングベルト105を付与している際に、例えばベルト研磨機1やタイミングベルト105の振動等の外的要因が加わるとテンションプーリ113が変位してしまい、タイミングベルト105に付与する張力が変動する事態が生ずる。
電磁ブレーキ120はこのような事態を防止すべく回動シャフト111を回動不能に固定するものであって、図4に示すように、円筒型軸受121と、ブラケット122と、固定鉄心123と、可動鉄心124と、ブレーキハブ125とから概略構成されている。
【0035】
円筒型軸受121は、その内径側を挿通する回動シャフト111を回動可能に支持する部材であって、研磨機本体10に固定されたブラケット122を介して研磨機本体10に取り付けられている。
また、この円筒型軸受121の一面(研磨機本体10を向く面とは反対側の面、即ち図4の左側を向く面)には、該円筒型軸受121と同様に円筒状をなす固定鉄心123が、その端面を円筒型軸受121の一面と密着させた常態でボルト止めにより固定されている。この固定鉄心123の内部には、その該固定鉄心の中心軸線、即ち回動シャフト111の軸線を中心としたソレノイドコイル(図示省略)が埋設されている。
【0036】
この固定鉄心123の内周面と回動シャフト111の外周面との間には円筒型の空間が形成されており、回動シャフト111の端部に外嵌固定されたブレーキハブ125の円筒部分125aがこの空間に収容されている。また、ブレーキハブ125の円筒部分125aの端部には、径方向外側に張り出すようにしてフランジ部125bが形成されている。
【0037】
このブレーキハブ125の円筒部分125aには、ドーナツ板状をなす可動鉄心124が外嵌されており、該可動鉄心124はその一面がブレーキハブ125のフランジ部125bに密着するとともにボルト止めによって固定されている。これにより、該可動鉄心124と固定鉄心123とが対向状態で配置されることになる。そして、これら可動鉄心124と固定鉄心123との互いに対向する面がそれぞれ可動側接触面124a、固定側接触面123aとされている。なお、これら可動側接触面124a及び固定側接触面123aの少なくとも一方には摩擦板(図示省略)が設けられている。
【0038】
ここで、本実施形態の電磁ブレーキ120においては、固定鉄心123と可動鉄心124との間には例えばコイルスプリング、板ばね等の弾性体が介在させられることにより、上記ソレノイドコイルに通電しない状態の場合には可動側接触面124aと固定側接触面123aとが非接触の状態とされている。これにより、回動シャフト111が回動したとしても、該回動シャフト111に固定されたブレーキハブ125及び可動鉄心124はが回動シャフト111とともに回動する。即ち、回動シャフト111の回動が制限されることはない。
【0039】
一方、ソレノイドコイルに通電した場合には、該ソレノイドコイルが励磁されて磁場を生じさせることにより可動鉄心124が固定鉄心123に引き付けられて可動側接触面124aと固定側接触面123aとが接触する。この際、両接触面123a、124bとには摩擦板による摩擦力が働き可動鉄心124と固定鉄心123との周方向の相対移動が制限される。したがって、回動シャフト111が回動しようとしても、該回動シャフト111にブレーキハブ125を介して固定された可動鉄心124が回動することができないため、回動シャフト111自体の回動が制限される。
【0040】
このようにして、本実施形態の電磁ブレーキ120においては、ソレノイドコイルに通電した際のみ、回動シャフト111の回動を制限することができるようになっている。
【0041】
上記のような構成の動力伝達装置100によれば、シリンダ114のロッド114aの突出又は後退によって回動シャフト111が回転することで支持アームが旋回し、タイミングベルト105を押圧するテンションプーリ113が円弧状の軌跡を描くようにして変位する。これによって、テンションプーリ113が、タイミングベルト105のループ内側に変位する際には張力を大きくし、タイミングベルト105のループ外側に変位する際には張力を小さくすることができる。このようにして、本実施形態の動力伝達装置100においては、タイミングベルト105に付与する張力を適宜調整することができる。
【0042】
したがって、タイミングベルト105が巻き掛けられるゴムロールが接近位置Aと離間位置Bとの間で移動してタイミングベルト105の張力が変化する場合であっても、上記のようにテンションプーリ113を変位させることによってタイミングベルト105に適切な張力を付与することが可能となる。
【0043】
また、上記のようにタイミングベルト105に適した張力を付与できるテンションプーリ113の位置が定まった後は、電磁ブレーキ120により回動シャフト111を固定することで、支持アーム112を介して回動シャフト111と接続されたテンションプーリ113の位置も固定される。これにより、外的要因によりテンションプーリ113が変位するのを防止することができるため、タイミングベルト105に付与される張力を一定に保持することができる。
【0044】
また、本実施形態の動力伝達装置100においては、ゴムロール30の入力軸32と電動機101の出力軸102とが近接、離間することでタイミングベルト105の張力が調整されるのではなく、テンションプーリ113が取り付けられた支持アーム112が旋回することによって張力を調整する構成のため、張力調整機構110をコンパクトな構成とすることが可能となる。
【0045】
また、シリンダ114のロッド114aの圧力を調節することによってテンションプーリ113の変位量を任意に定めることができるため、タイミングベルト105に適切な張力を容易に付与することができる。
【0046】
さらに、本実施形態のベルト研磨機1はこのような動力伝達装置100を備えているため、タイミングベルト105に張力を付与することができるとともに該張力を一定に保持することができるため、動力の伝達ロスを生じさせることなくゴムロール30を高効率で回転させることが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態であるベルト研磨機1及び動力伝達装置100について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態においては、ベルト研磨機1に適用した例を示したが、これに限定されず、他の機械、装置等にも適用可能である。
【0048】
また、実施形態においては、回転体としてプーリ103、104が、伝動体としてタイミングベルト105が、回動部材としてテンションプーリ113が用いられているが、これらに代えて、回転体としてスプロケットを、伝動体としてチェーンを、回動部材としてテンションスプロケットを用いた構成であってもよい。これによっても実施形態のベルト研磨機1及び動力伝達装置100と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、駆動機構としてはシリンダ114に限定されず、回動シャフト111を回転させるものであれば他の駆動源、例えば電動機等であってもよい。
【0050】
さらに、実施形態における電磁ブレーキ120は通電することにより回動シャフト111を固定するものであるが、これとは逆に、通電時に回動シャフト111の回動を許容し、非通電時に回動シャフト111を固定するものであってもよい。
この場合、固定鉄心123にソレノイドコイルを埋設するとともに固定鉄心123と可動鉄心124のそれぞれに互いに引力を生ずる永久磁石を埋設する構成とする。これにより、非通電時には永久磁石により固定側接触面123aと可動側接触面124aとが接触して回動シャフト111の回動が固定される。一方、通電時にはソレノイドコイルが生ずる磁場によって永久磁石の磁場が消磁し、回動固定側接触面123aと可動側接触面124aとが非接触状態となり回動シャフト111の回動が許容される。
【0051】
また、シャフト固定手段としては、上述のような電磁ブレーキ120の他、油圧や空圧で作動するメカニカルブレーキであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ベルト研磨機
10 研磨機本体
20 研磨ロール
30 ゴムロール
40 移動機構
100 動力伝達装置
102 出力軸
103 プーリ(回転体)
104 プーリ(回転体)
105 タイミングベルト(伝動体)
110 張力調整機構
111 回動シャフト
112 支持アーム
113 テンションプーリ(回転部材)
114 シリンダ(駆動機構)
114aロッド
120 電磁ブレーキ(シャフト固定手段)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置される出力軸と入力軸とにそれぞれ回転体を固定し、これら各軸の回転体にループ状の伝動体を巻き掛けて出力軸の回転を入力軸に伝達する動力伝達装置において、
前記出力軸及び入力軸と平行に配置される回動シャフトと、
該回動シャフトからその径方向に延びる支持アームと、
該支持アームの先端部に回転可能に取り付けられ、前記伝動体を巻き掛けるとともに該伝動体をループ内側に向かって押圧する回転部材と、
前記回動シャフトを回転させることで前記支持アームを旋回させる駆動機構と、
前記回動シャフトを保持して該回動シャフトの回転を抑制するシャフト固定手段が設けられたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記シャフト固定手段が、通電又は非通電により前記回動シャフトの回動を抑制する電磁ブレーキであることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
前記駆動機構が前記回動シャフトに回転モーメントを与えるシリンダであることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
研磨ロールとこれに対向するゴムロールとを備え、表面を研磨すべき帯状のベルトを前記研磨ロールと前記ゴムロールとの間に送り込んで前記ベルトを研磨するベルト研磨機において、
前記ゴムロールが前記研磨ロールに対して接近、離間可能とされ、
前記ゴムロールの回転軸を前記入力軸とした請求項1又は2に記載の動力伝達装置が設けられたことを特徴とするベルト研磨機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−242939(P2010−242939A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95042(P2009−95042)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】