説明

動力伝達装置

【課題】 オイルポンプから吐出されるオイルを利用して、車輪に伝達されるトルクを増加することの可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 動力伝達可能に連結された第1の回転部材6,8および第2の回転部材2,9を有し、第1の回転部材6,8と第2の回転部材2,9との相対回転により、第1の油路18からオイルを吸引し、かつ、吸引したオイルを第2の油路19に吐出する構成を有するオイルポンプ7が設けられているとともに、駆動力源1と車輪5との間で、第1の回転部材6,8および第2の回転部材2,9を経由して動力伝達がおこなわれるように構成されている動力伝達装置において、オイルポンプ7から吐出されるオイルの機械的エネルギを、車輪76に伝達する機械的エネルギに変換する変換装置27が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動力源の出力側に配置される動力伝達装置であり、特に、オイルポンプを有する動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の動力伝達装置を制御するためのアクチュエータとして油圧制御装置が用いられており、その油圧制御装置の油圧回路に供給される作動油は、オイルポンプにより流通する構成が採用されている。一方、オイルポンプを作動油の輸送機器以外の用途で使用する技術も知られており、その技術の一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1は、遊星歯車装置を有する無段変速装置に関するものであり、遊星歯車装置は、入力軸と一体回転するサンギヤと、リングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛合するピニオンギヤを保持するキャリヤとを有している。このキャリヤは出力軸と一体回転するように構成され、リングギヤの外周には所定間隔おきに複数のブレードが取り付けられている。このリングギヤは変速機カバー内で回転可能に保持されており、変速機カバーにはオイルポンプの吐出口および吸入口が形成されている。また、吐出口と吸入口とを接続する油圧回路が形成されており、油圧回路の途中にはオイルタンクが配置されている。また、油圧回路であって、吐出口とオイルタンクとの間には、調整バルブが設けられている。
【0003】
上記構成において、入力軸にトルクが伝達されるとサンギヤが回転し、リングギヤが反力要素となって、キャリヤからトルクが出力される。また、リングギヤの回転により吸入口からオイルが吸入され、そのオイルが吐出口から吐出される。ここで、調整バルブを調整して、油圧回路における吐出口と調整バルブとの間の油圧を制御することにより、リングギヤの反力トルクおよび回転数が調整され、入力軸と出力軸との間の変速比が無段階に制御される。さらに、吐出口から吐出されたオイルは調整バルブを経由してオイルパンに戻され、そのオイルパンのオイルは再び吸入口に吸入される。このようにして、油圧回路内をオイルが循環する構成となっている。なお、駆動力源から車輪に至る経路に、駆動力源の動力により駆動されるオイルポンプを有する車両の一例が、特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平4−88241号公報
【特許文献2】特開2001−323978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されている無段変速装置においては、オイルが油圧回路を循環する構成ととともに、その油圧回路の油圧により反力トルクが制御される構成となっている。つまり、無段変速装置の変速比に応じたトルク増幅をおこなうことが可能となっているものの、オイルポンプから吐出されたオイルを利用して、出力軸のトルクを増幅するという点で改善の余地があった。
【0005】
この発明は上記事情を背景としてなされたものであって、オイルポンプから吐出されるオイルを利用して、車輪に伝達されるトルクを増加することの可能な動力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、動力伝達可能に連結された第1の回転部材および第2の回転部材を有し、この第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転により、第1の油路からオイルを吸引し、かつ、吸引したオイルを第2の油路に吐出する構成を有するオイルポンプが設けられているとともに、駆動力源と車輪との間で、前記第1の回転部材および第2の回転部材を経由して動力伝達がおこなわれるように構成されている動力伝達装置において、前記オイルポンプから吐出されるオイルの機械的エネルギを、車輪に伝達する機械的エネルギに変換する変換装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記変換装置にはオイルモータが含まれており、前記第2の油路のオイルが前記オイルモータを経由して第3の油路に至る構成を有しているとともに、前記オイルの油圧により回転する第3の回転部材を前記オイルモータが有し、この第3の回転部材のトルクが車輪に伝達される構成であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記第2の油路の油圧を制御する第1の圧力制御弁と、前記第3の油路の油圧を制御する第2の圧力制御弁とが、更に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2の構成に加えて、車両の惰力走行による機械的エネルギが前記第2の回転部材に伝達され、かつ、その機械的エネルギが前記第1の回転部材を経由して前記駆動力源に伝達された場合に、前記駆動力源により制動力が生じる構成を有しているとともに、前記車両の惰力走行による機械的エネルギが前記第2の回転部材に伝達された場合は、前記第2の油路から吸引したオイルを前記第1の油路に吐出する構成を、前記オイルポンプが更に有しているとともに、前記第1の油路におけるオイルの流量を制御することにより、前記第2の回転部材から前記第1の回転部材に伝達される動力を制御する第1の流量制御装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2の構成に加えて、前記第1の油路の油圧および前記第2の油路の油圧を同じに制御する第3の圧力制御弁と、前記オイルモータを前記第2の油路またはオイル保持部のいずれか一方に接続する第2の流量制御装置と、前記第2の回転部材から車輪に至る動力伝達経路に設けられたオイル必要部とを有し、前記第1の油路の油圧および前記第2の油路の油圧が同一に制御された場合に、前記オイル保持部と前記オイルモータとを接続することにより、前記オイル保持部のオイルを、前記オイルモータを経由させて前記オイル必要部に供給する構成を、更に有していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項2の構成に加えて、前記第2の油路から前記第3の油路に至る経路に形成された油圧室と、この油圧室の油圧に応じて往復移動し、かつ、前記第3の回転部材と接触する場合の係合力に応じて、前記第3の回転部材との間で動力伝達をおこなう動作部材とを、前記オイルモータが更に有しており、前記油圧室の油圧が上昇することにともない前記動作部材と前記第3の回転部材との間で伝達されるトルクを増加する構成を、前記オイルモータが更に有しているとともに、前記第2の油路から前記油圧室に供給されるオイル量を減少させることにより、前記油圧室の油圧の上昇を抑制する第3の流量制御装置が、更に設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
各請求項の発明で対象とする車両のパワートレーンには、駆動力源から動力が伝達される車輪と、オイルの機械的エネルギがトルクに変換され、そのトルクが伝達される車輪とが同じである構成のパワートレーンと、駆動力源から動力が伝達される車輪と、オイルの機械的エネルギがトルクに変換され、そのトルクが伝達される車輪とが異なる構成のパワートレーンとが含まれる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との間で、オイルポンプを経由して動力伝達がおこなわれる。また、第1の回転部材と第2の回転部材とが相対回転して、第2の油路にオイルが吐出された場合は、そのオイルの機械的エネルギが、車輪に伝達される機械的エネルギに変換される。したがって、車輪に伝達されるトルクを可及的に増加することが可能であり、車両の駆動力が高められる。また、車両の要求駆動力に対応する目標トルクのうち、駆動力源で負担する目標トルクを低減することが可能となり、駆動力源の運転状態の自由度が拡大する。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、オイルの油圧が第3の回転部材のトルクに変換され、この第3の回転部材のトルクが車輪に伝達される。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、第1の圧力制御弁により第1の油路の油圧を制御することにより、第1の回転部材と第2の回転部材との間で伝達される動力を制御することが可能である。また、第2の圧力制御弁により第2の油路の油圧を制御することにより、オイルモータから車輪に伝達される動力を制御することが可能である。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、車両の惰力走行による機械的エネルギが、第2の回転部材および第1の回転部材を経由して駆動力源に伝達されて、駆動力源による制動力が生じる。また、車両の惰力走行による機械的エネルギが第2の回転部材に伝達された場合は、第2の通路から吸引されたオイルが第1の油路に吐出されるオイルの流量が制御されて、第2の回転部材から第1の回転部材に伝達される動力が制御される。したがって、駆動力源により生じる制動力を制御することが可能である。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、第1の油路と第2の油路との油圧を同一に制御することにより、第1の回転部材と第2の回転部材とが一体回転して、オイルポンプによるオイルの吸入および吐出が停止される。また、オイル保持部のオイルがオイルモータを経由してオイル必要部に供給されるため、オイル必要部に供給されるオイル量の低下を抑制できる。
【0018】
請求項6の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、油圧室の油圧に応じて動作部材が往復移動し、動作部材と第3の回転部材との間における係合力に応じて、第3の回転部材に伝達されるトルクが変化する。そして、オイルの機械的エネルギを、車輪に伝達するトルクに変換する必要がない場合は、第2の油路から油圧室に供給されるオイル量を減少させて、油圧室の油圧の上昇を抑制することが可能である。このため、駆動力源の動力で車両が走行する場合に、動作部材と第3の回転部材との間における係合力が低減されて、オイルモータの回転による動力損失の増加を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。この発明は、オイルポンプが、オイル輸送機能と、動力伝達機能とを兼備している構成の動力伝達装置であり、その動力伝達装置の実施例を順次説明する。
【実施例1】
【0020】
この実施例1は、請求項1および請求項2の発明に対応する実施例であり、実施例1を図1に基づいて説明する。図1には、この発明の動力伝達装置を有する車両Veのパワートレーンの一例が模式的に示されており、図2には、図1に示す車両Veのパワートレーンの具体的な構成および制御系統が示されている。まず、車両Veのパワートレーンについて説明すれば、駆動力源としてのエンジン1が設けられており、このエンジン1は、燃料の燃焼による熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。
【0021】
エンジン1としては、例えば内燃機関、具体的には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。エンジン1は吸排気装置および燃料噴射装置および点火時期制御装置などを有しており、エンジン出力を電子制御することが可能である。そして、エンジントルクが、インプットシャフト6およびインターミディエイトシャフト2および前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3およびデファレンシャル4を経由して、第1駆動軸である前輪5に伝達される構成となっている。前記インターミディエイトシャフト2および前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3およびデファレンシャル4などは、ケーシング60内に設けられている。
【0022】
また、エンジン1のクランクシャフト(図示せず)およびインプットシャフト6およびインターミディエイトシャフト2は、回転軸線A1を中心として回転可能に配置されているとともに、インプットシャフト6からインターミディエイトシャフト2に至る動力伝達経路に、オイルポンプ7が設けられている。この実施例では、オイルポンプ7として、定吐出量形ポンプの一種であるラジアル形ピストンポンプが用いられている。このオイルポンプ7の構成を図3および図4に基づいて説明する。図3は、回転軸線A1を含む平面における断面図であり、図4は、回転軸線A1に直交する平面における断面図である。このオイルポンプ7は、インプットシャフト6に設けられたインナーレース8と、インターミディエイトシャフト2に設けられたアウターレース9とを有している。
【0023】
まず、インナーレース8は回転軸線A1を中心とする円板形状を有しているとともに、インナーレース8には、円周方向に所定間隔をおいて複数のシリンダ10が形成されている。各シリンダ10は、インナーレース8の外周面に開口された略円筒形状の凹部であり、図3に示すように、各シリンダ10の軸線B1と、回転軸線A1とが略直交する構成となっている。さらに、図4に示すように、軸線B1の延長上に回転軸線A1が位置する。
【0024】
そして、各シリンダ10内にはピストン11が各々配置されており、各ピストン11は軸線B1方向に往復移動自在に構成されている。つまり、ピストン11は、インナーレース8の半径方向に移動可能である。また各ピストン11における外側の端面に凹部12が形成されている。この凹部12は半球形状に構成されており、凹部12によりボール13が保持されている。ボール13は凹部12内で転動可能である。一方、シリンダ10の奥端面10Aとピストン11との間には油室14が形成されている。この油室14には弾性部材15が設けられており、ピストン11をシリンダ10の外に押し出す向きの力が、弾性部材15からピストン11に加えられる。
【0025】
前記アウターレース9は、インターミディエイトシャフト2に形成された外向きフランジ35と、外向きフランジ35に連続する円筒部35Aとを有している。円筒部35Aはインナーレース8の外側を取り囲むように配置されているとともに、円筒部35Aの内周にはカム面36が形成されている。このカム面36は回転軸線A1を中心とする環状に構成されているとともに、略波形に構成されている。つまり、半径方向の外側に向けて突出するように湾曲した凸部と、半径方向の内側に向けて突出するように湾曲した凹部とが、円周方向で交互に、かつ、連続して配置されている。そして、このカム面36と、インナーレース8に取り付けられたボール13とが接触されているとともに、ボール13はカム面36に沿って転動可能である。
【0026】
一方、インプットシャフト6には回転軸線方向に吸入油路16および吐出油路17が設けられているとともに、インプットシャフト6の外周面には、2条の環状溝16A,17Aが形成されている。この環状溝16A,17Aは回転軸線方向の異なる位置に配置されている。そして、吸入油路16と環状溝16Aとが接続され、吐出油路17と環状溝17Aとが接続されている。ところで、ケーシング60内には、前記回転軸線A1の半径方向に延ばされた隔壁61が設けられており、この隔壁61には軸孔20が形成されている。この隔壁61は、回転軸線方向においてエンジン1とオイルポンプ7との間に配置されており、隔壁61には、吸入油路18および吐出油路19が設けられている。また隔壁61は、回転軸線A1に交差する方向に延ばされており、隔壁61の軸孔20内にインプットシャフト6が回転可能に配置されている。吸入油路18および吐出油路19は軸孔20に開口されており、吸入油路18と環状溝16Aとが接続され、吐出油路19と環状溝17Aとが接続されている。
【0027】
このように、インプットシャフト6が回転している場合、または停止している場合のいずれにおいても、吸入油路16と吸入油路18とが接続され、吐出油路17と吐出油路19とが接続される構成となっている。さらに、吸入油路18および吐出油路19および環状溝16A,17Aのオイルが軸孔20から漏れることを防止する密封装置20Aが設けられている。さらに、ケーシング60にはオイルパン21が設けられており、吸入油路18はオイルパン21に接続されている。このオイルパン21には、ベルト式無段変速機3および前後進切換装置37に供給された後のオイルが貯留される。
【0028】
さらに、吸入油路16と油室14とを連通する油路22が設けられ、吐出油路17と油室14とを連通する油路23が設けられており、油路22には逆止弁24が設けられており、油路23には逆止弁25が設けられている。逆止弁24は、吸入油路16のオイルが油室14に吸入されることを許容し、油室14のオイルが吸入油路16に逆流することを防止する構成を有している。これに対して、逆止弁25は、油室14のオイルが吐出油路17に吐出されることを許容し、吐出油路17のオイルが油室14に逆流することを防止する構成を有している。
【0029】
一方、図1に示すように、吐出油路19は2方向に分岐されており、分岐のされた一方が油圧制御装置26に接続され、分岐された他方がオイルモータ27を経由して油圧制御装置26に接続されている。図1においては、オイルモータ27の一例として、定吐出量形モータの一種である外接形ギヤモータが示されている。すなわち、このオイルモータ27は、噛合された一対のギヤ70,71と、吸入口72および吐出口73とを有している。この吸入口72が吐出油路19に接続され、吐出口73は、油路34を経由して油圧制御装置26に接続されている。
【0030】
この油圧制御装置26は、前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3を制御する機能と、前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3の発熱部分を潤滑および冷却する機能とを有している。この油圧制御装置26は、油圧回路(図示せず)およびソレノイドバルブ(図示せず)などを有しているとともに、油圧制御装置26から前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3にオイルを供給する油路74が設けられている。さらに、図2に示すように、オイルモータ27の各ギヤ70,71のうちの少なくとも一方と、第2駆動軸である後輪76とを動力伝達可能に連結する伝動装置77が設けられている。
【0031】
前記インターミディエイトシャフト2からベルト式無段変速機3に至る経路に、前後進切換装置37が設けられている。前後進切換装置37は、エンジン1の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、インターミディエイトシャフト2の回転方向に対するプライマリシャフト38の回転方向を切り換える構成を備えている。図2に示す例では、前後進切換装置37としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、インターミディエイトシャフト2と一体回転するサンギヤ39と、サンギヤ39と同心状に配置されたリングギヤ40と、サンギヤ39に噛合したピニオンギヤ41と、ピニオンギヤ41およびリングギヤ40に噛合した他のピニオンギヤ42とが設けられ、ピニオンギヤ41,42がキャリヤ43によって、自転かつ公転自在に保持されている。このキャリヤ43とプライマリシャフト38とが一体回転するように連結されている。
【0032】
さらに、インターミディエイトシャフト2と、キャリヤ43とを選択的に連結・解放する前進用クラッチ44が設けられている。またリングギヤ40を選択的に固定することにより、インターミディエイトシャフト2の回転方向に対するプライマリシャフト38の回転方向を反転する後進用ブレーキ45が設けられている。上記前進用クラッチ44および後進用ブレーキ45の係合・解放は、油圧制御装置26により制御される構成となっている。
【0033】
前記ベルト式無段変速機3は、互いに平行に配置されたプライマリプーリ46とセカンダリプーリ47とを有するとともに、プライマリプーリ46およびセカンダリプーリ47にはベルト48が巻き掛けられている。また、プライマリプーリ46からベルト48に加えられる挟圧力を制御する油圧サーボ機構49と、セカンダリプーリ47からベルト48に加えられる挟圧力を制御する油圧サーボ機構50とが設けられている。この油圧サーボ機構49,50の油圧室(図示せず)の油圧は、油圧制御装置26により制御される構成となっている。
【0034】
前記プライマリプーリ46はプライマリシャフト38と一体回転するように構成され、セカンダリプーリ47はセカンダリシャフト51と一体回転するように構成されている。プライマリシャフト38とセカンダリシャフト51とは相互に並行に配置され、セカンダリシャフト51のトルクが、伝動機構52およびデファレンシャル4を経由して前輪5に伝達される構成となっている。
【0035】
つぎに、図2に示された車両Veの制御系統を説明すれば、車両Veの全体を制御するコントローラとしての電子制御装置53が設けられている。電子制御装置53には、加速要求、制動要求、エンジン回転数、スロットル開度、インターミディエイトシャフト2の回転数、プライマリシャフト38の回転数、セカンダリシャフト51の回転数、シフトポジションなどの信号が入力される。これに対して、電子制御装置53からは、油圧制御装置26を制御する信号、エンジン1を制御する信号などが出力される。
【0036】
上記のように構成された車両Veの作用を説明する。エンジントルクがインプットシャフト6に伝達された場合は、インプットシャフト6のトルクはオイルポンプ7を経由してインターミディエイトシャフト2に伝達される。なお、オイルポンプ7におけるトルクの伝達原理は後述する。ここで、シフトポジションとして前進ポジションが選択されている場合は、前後進切換装置37において、前進用クラッチ44が係合され、かつ後進用ブレーキ45が解放される。その結果、インターミディエイトシャフト2およびキャリヤ43が一体回転可能に連結されて、インターミディエイトシャフト2のトルクがプライマリシャフト38に伝達される。この場合、インターミディエイトシャフト2の回転方向とプライマリシャフト38の回転方向とが同じになる。
【0037】
これに対して、シフトポジションとして後進ポジションが選択された場合は、後進用ブレーキ45が係合されて、前進用クラッチ44が解放される。その結果、リングギヤ40が反力要素となり、インターミディエイトシャフト2のトルクがプライマリシャフト38に伝達される。この場合、プライマリシャフト38の回転方向は、インターミディエイトシャフト2の回転方向とは逆になる。
【0038】
一方、ベルト式無段変速機3においては、油圧サーボ機構49,50における圧油の供給状態が油圧制御装置26により制御される。具体的には、油圧サーボ機構49に供給される圧油の流量が制御されて、プライマリプーリ46におけるベルト48の巻き掛け半径、およびセカンダリプーリ47におけるベルト48の巻き掛け半径が制御され、ベルト式無段変速機3の変速比、つまり、プライマリシャフト38の回転速度と、セカンダリシャフト51の回転速度との比を無段階(連続的)に制御することができる。また、この変速制御に加えて、セカンダリプーリ47からベルト48に加える挟圧力が調整されて、ベルト式無段変速機3のトルク容量が制御される。
【0039】
例えば、車速および加速要求(例えばアクセル開度)などに基づいて、車両Veにおける目標駆動力が判断され、その判断結果に基づいて目標エンジン出力が求められる。その目標エンジン出力を最適燃費で達成する目標エンジン回転数が求められ、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、ベルト式無段変速機3の変速比が制御される。これらの制御と並行して、実エンジントルクを目標エンジントルクに近づけるように、電子スロットルバルブの開度などが制御される。上記のようにして、インターミディエイトシャフト2のトルクが、前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3を経由して伝動機構52に伝達されるとともに、伝動機構52のトルクがデファレンシャル4を経由して前輪5に伝達される。
【0040】
つぎに、インターミディエイトシャフト2とインプットシャフト6との間におけるトルクの伝達原理について説明する。エンジン1が運転されると、インナーレース8を図4の所定方向、例えば、時計方向に回転させる向きのトルクが発生する。この実施例1においては、インプットシャフト6とインターミディエイトシャフト2との間で伝達されるトルク、およびオイルポンプ7からのオイル吐出量が、以下のようにして制御される。まず、インナーレース8に取り付けられているボール13が、弾性部材15の付勢力により、シリンダ10の外側に向けて付勢されており、押圧インナーレース8が回転すると、ボール13は、アウターレース9のカム面36に沿って転動するとともに、カム面36の半径方向の凹凸形状により、ボール13およびピストン11が、シリンダ10内を軸線B1方向に往復移動する。
【0041】
ピストン11がシリンダ10内を往復移動することにより、油室14の容積が変化する。すなわち、ピストン11が、軸線B1に沿って外側に動作すると油室14の容積が拡大され、ピストン11が、軸線B1に沿って内側に動作すると油室14の容積が縮小される。油室14の容積が拡大される場合は、油室14が負圧となる。すると、逆止弁24が開いて、オイルパン21のオイルが、吸入油路18および吸入油路16を経由して油室14に吸引される。この場合、逆止弁25が閉じられるため、吐出油路17のオイルが油室14に逆流することはない。
【0042】
ついで、インナレース8とアウターレース9との相対回転にともない、ピストン11が内側に動作すると、油室14の容積が縮小されて、その内部の油圧が上昇する。そして、油室14の油圧が吸入油路16の油圧よりも高圧となった場合は、逆止弁24が閉じられる。その結果、吸入油路16のオイルが油室14に吸入されなくなるとともに、油室14のオイルが吸入油路16に逆流することが防止される。一方、油室14の容積の縮小により、その内部の油圧が吐出油路17の油圧よりも高圧になると、逆止弁25が開く。その結果、油室14のオイルは、吐出油路17および吐出油路19を経由して、オイルモータ27に供給される。以後、ピストン11が往復運動を繰り返すことにより、オイルポンプ7からオイルが吐出される。
【0043】
一方、吐出油路19に吐出されたオイルの一部は、オイルモータ27の吸入口72に供給されており、吐出油路19の油圧と油路34の油圧との差に応じて、ギヤ70,71の間を通過するオイル量が変化する。ここで、ギヤ70とギヤ71との間をオイルが通過する際に、オイルの機械的エネルギが、ギヤ70,71の機械的エネルギに変換されて、ギヤ70,71が回転する。ここで、オイルの機械的エネルギは、圧力×流量で表すことが可能であり、ギヤ70,71の機械的エネルギは、動力であるトルク×回転数で表すことが可能である。そして、ギヤ70,71のうちの少なくとも一方のトルクは、伝動装置77を経由して後輪76に伝達される。このように、図2に示す車両Veは、前輪5および後輪76にトルクを伝達することの可能な四輪駆動車である。
【0044】
前記のようにして、吐出油路19のオイルが、オイルモータ27を経由して油圧制御装置26に供給される。一方、吐出油路19のオイルの一部は、オイルモータ27を迂回して油圧制御装置26に供給される。このようにして、油圧制御装置26にオイルが供給されると、前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3におけるオイルの必要流量に応じて油圧制御装置26のソレノイドバルブが制御され、吐出油路19および油路34から油路74に排出されるオイル量が制御される。このようにして、油路19,34の油圧が調圧される。なお、前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3に供給されたオイルは、その後にオイルパン21に流れ込み、ついで、吸入油路18を経由してオイルポンプ7に吸引される。
【0045】
ところで、吐出油路19の油圧は、シリンダ10におけるピストン11の動作特性に影響を及ぼす。つまり、ピストン11を内側に押圧する力が同じであった場合、ピストン11が内側に動作して油室14の容積を狭める場合は、吐出油路19の油圧が高いほど、油室14から吐出油路17に吐出される単位時間あたりのオイル量が低下する。一方、吐出油路19の油圧が低いほど、油室14から吐出油路17に吐出される単位時間あたりのオイル量が増加する。
【0046】
また、吐出油路19の油圧が高いほど、油室14の油圧が低下しにくく、ピストン11を内側に動作させるために必要な荷重が増加する。一方、吐出油路19の油圧が低いほど、油室14の油圧が低下しやすく、ピストン11を内側に動作させるために必要な荷重が低下する。この実施例1においては、インナーレース8とアウターレース9とが相対回転することにより、ボール13がカム面36を転動して、アウターレース9からピストン11を内側に押圧する荷重が加えられる構成となっている。したがって、ピストン11を内側に動作させるために必要な荷重が高くなるほど、インナーレース8とアウターレース9とを相対回転させるために必要な円周方向の荷重が高くなる。言い換えれば、オイルポンプ7を経由して伝達されるトルクを増加することが可能になる。
【0047】
以上のように、この実施例1においては、オイルポンプ7から吐出されるオイルの機械的エネルギをギヤ70,71の機械的エネルギ(動力)に変換し、そのギヤ70,71の少なくとも一方のトルクを後輪76に伝達することが可能であり、車両Veの駆動力が高まり、車両Veの発進性能および動力性能が向上する。つまり、要求駆動力に対応する要求トルクの一部を、オイルモータ27から後輪76に伝達されるトルクで賄うことが可能であり、エンジン1の運転状態の制御自由度が拡大され、エンジン1の運転状態を最適燃費線に一層近づけ易くなる。
【0048】
したがって、エンジン1の燃費が一層向上する。さらにまた、オイルモータ27から吐出されたオイルにより、ベルト式無段変速機3および前後進切換装置37を潤滑および冷却することが可能であり、潤滑性能および冷却性能が一層向上する。また、オイルモータ27から吐出されたオイルにより、前後進切換装置37の前進用クラッチ44や後進用ブレーキ45の係合油圧を高めることが可能であり、前後進切換装置37における動力伝達効率の低下を抑制できる。
【0049】
この実施例1で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、インプットシャフト6およびインナーレース8が、この発明の第1の回転部材に相当し、インターミディエイトシャフト2およびアウターレース9が、この発明の第2の回転部材に相当し、吸入油路18が、この発明の第1の油路に相当し、吐出油路19が、この発明の第2の油路に相当し、エンジン1がこの発明の駆動力源に相当し、前輪5が、この発明における「駆動力源の動力が伝達される車輪」に相当し、後輪76が、この発明の「車輪に伝達する機械的エネルギ」における「車輪」に相当し、オイルモータ27が、この発明の変換装置に相当し、ギヤ70,71の少なくとも一方が、この発明の第3の回転部材に相当する。すなわち、図1および図2に示すパワートレーンにおいては、「駆動力源の動力が伝達される車輪(前輪5)」と「オイルの機械的エネルギをトルクに変換し、かつ、そのトルクが伝達される車輪(後輪76)」とが異なっている。
【実施例2】
【0050】
つぎに、この発明の実施例2の構成を図5に基づいて説明する。この実施例2は、請求項1ないし3に対応する実施例である。この実施例2の構成において、実施例1の構成と同じ構成については、実施例1の構成と同じ符号を付してその説明を省略する。この実施例2における油圧制御装置26の構成を具体的に説明する。まず、圧力制御弁80が設けられている。この圧力制御弁80は、吐出油路19を油圧を制御するものである。この圧力制御弁80は、直線方向に動作可能なスプール81と、このスプール81を所定方向に付勢する弾性部材82とを有している。
【0051】
また、圧力制御弁80は、入力ポート83およびドレーンポート84を有しており、入力ポート83と吐出油路19とが接続され、ドレーンポート84と油路94とが接続されている。この油路94は、油路34,74に接続されている。さらに、フィードバックポート85および信号圧ポート86が設けられており、フィードバックポート85と吐出油路19とが接続されている。そして、信号圧ポート86の信号圧に応じて、弾性部材82の付勢力と同じ向きの付勢力がスプール81に加えられ、フィードバックポート85の油圧に応じて、弾性部材82の付勢力とは逆向きの付勢力がスプール81に加えられる構成となっている。
【0052】
また、油路94に接続された圧力制御弁87が設けられている。この圧力制御弁87は、油路94の油圧を制御するものである。この圧力制御弁87は、直線方向に動作可能なスプール88と、このスプール88を所定方向に付勢する弾性部材89とを有している。また、圧力制御弁87は、入力ポート90およびドレーンポート91を有しており、入力ポート90と油路94とが接続されている。さらに、フィードバックポート92および信号圧ポート93が設けられており、フィードバックポート92と油路94とが接続されている。そして、信号圧ポート93の信号圧に応じて、弾性部材89の付勢力と同じ向きの付勢力がスプール88に加えられ、フィードバックポート92の油圧に応じて、弾性部材89の付勢力と逆向きの付勢力がスプール88に加えられる構成となっている。
【0053】
つぎに、実施例2の作用を説明する。まず、エンジントルクがインプットシャフト6を経由してインターミディエイトシャフト2に伝達される場合は、実施例1と同様の原理により、吸入油路18のオイルが吐出油路19に供給される。
【0054】
そして、吐出油路19の油圧が所定値以下である場合は、入力ポート83とドレーンポート84とが遮断されており、吐出油路19のオイルは油路94には排出されない。したがって、吐出油路19の油圧の低下が抑制されるか、または吐出油路19の油圧が上昇する。これに対して、吐出油路19の油圧が所定値を越えた場合は、スプール81が動作して入力ポート83とドレーンポート84とが連通され、吐出油路19から油路94に排出されるオイルの流量が増加する。
【0055】
したがって、吐出油路19の油圧の上昇が抑制されるか、または吐出油路19の油圧が低下する。このようにして、圧力制御弁80により吐出油路19の油圧が調圧される。より具体的には、圧力制御弁80の信号圧ポート86に入力する信号圧を制御することにより、吐出油路19の油圧PL1を制御することが可能である。このようにして、吸入油路18における油圧PLOと、吐出油路19の油圧PL1との差圧ΔPL1を制御することができる。ここで、インターミディエイトシャフト2に伝達されるトルクTout1は式(1)により求められる。
【0056】
Tout1≒ΔPL1・q1/2π ・・・(1)
上記の式(1)において、q1は、インプットシャフト6の1回転あたりにおけるオイルポンプ7のオイル吐出容積[cc/rev]である。したがって、圧力制御弁80の信号圧ポート86に入力される信号圧を制御することにより、オイルポンプ7により伝達されるトルクを制御することができる。言い換えれば、オイルポンプ7として可変容量形ポンプを用いることなく、伝達トルクを制御可能である。
【0057】
つぎに、油路94の油圧制御について説明する。油路94の油圧が所定値以下である場合は、圧力制御弁87における入力ポート90とドレーンポート91とが遮断されており、油路94のオイルはドレーンポート91には排出されない。したがって、油路94の油圧の低下が抑制されるか、または油路94の油圧が上昇する。これに対して、油路94の油圧が所定値を越えた場合は、スプール88の動作により入力ポート90とドレーンポート91とが連通されて、油路94からドレーンポート91に排出されるオイルの流量が増加する。
【0058】
したがって、油路94の油圧の上昇が抑制されるか、または油路94の油圧が低下する。このようにして、圧力制御弁87により油路94の油圧が調圧される。より具体的には、圧力制御弁87の信号圧ポート93に入力する信号圧を制御することにより、油路94の油圧PL2を制御することが可能である。このようにして、油路94における油圧PL2と、吐出油路19の油圧PL1との差圧ΔPL2を制御することができる。ここで、オイルモータ27から後輪76に伝達されるトルクTout2は式(2)により求められる。
【0059】
Tout2≒ΔPL2・q2/2π ・・・(2)
上記の式(2)において、q2は、ギヤ70,71の1回転あたりにおけるオイルモータ27のオイル吐出容積[cc/rev]である。したがって、圧力制御弁87の信号圧ポート93に入力される信号圧を制御することにより、オイルモータ27から後輪76により伝達されるトルクを制御することができる。言い換えれば、オイルモータ27として可変容量形オイルモータを用いることなく、伝達トルクを制御可能である。
【0060】
この実施例2で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、油路94が、この発明の第3の油路に相当し、圧力制御弁80が、この発明の第1の圧力制御弁に相当し、圧力制御弁87が、この発明の第2の圧力制御弁に相当する。この実施例2におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
【実施例3】
【0061】
つぎに、この発明の実施例3の構成を図6に基づいて説明する。この実施例3は、請求項1ないし5の発明に対応する実施例である。実施例3の構成において、実施例1および実施例2の構成と同じ構成については、実施例1および実施例2の構成と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0062】
この実施例3においては、オイルポンプ100の構成が実施例1および実施例2とは異なる。このオイルポンプ100を、図2に示されたオイルポンプ7に代えて用いることが可能である。まず、オイルポンプ100として、定吐出量形オイルポンプの一種である内接形オイルポンプが示されている。すなわち、このオイルポンプ100は、インプットシャフト6と一体回転するインナーギヤ101と、インターミディエイトシャフト2と一体回転するアウターギヤ102とを有しており、インナーギヤ101とアウターギヤ102とが噛合されている。
【0063】
また、インターミディエイトシャフト2とインプットシャフト6とが偏心して配置されている。さらに、インナーギヤ101とアウターギヤ102との間にはクレッセンド(図示せず)が形成されている。そして、オイルポンプ100には吸入口103および吐出口104が形成されており、吸入口103と吸入油路18とが接続され、吐出口104と吐出油路19とが接続されている。さらに、エンジン1からインプットシャフト6に至る経路にはクラッチ105が設けられている。クラッチ105は電子制御装置53により制御されて、エンジン1とインプットシャフト6との間で伝達されるトルクを制御するものである。
【0064】
つぎに、油圧制御装置26の構成において、実施例2と異なる構成を説明する。まず、吐出油路19から分岐する油路75が設けられており、油路75とオイルパン77とが接続されている。油路75には逆止弁78が設けられている。逆止弁78は、オイルパン77のオイルが吐出油路19に流れ込むことを許容し、かつ、吐出油路19のオイルがオイルパン77に逆流することを防止する構成を有している。
【0065】
また、油圧制御装置26は、カットバルブ(切換弁)79を有している。このカットバルブ79は、ポート79A,79B,79Cおよびスプール79Dを有しており、ポート79Aは、油路113を経由してオイルモータ27の吸入口72に接続され、ポート79Bが吐出油路19に接続され、ポート79Cがオイルパン77に接続されている。スプール79Dの動作は、電子制御装置53により制御される構成となっており、スプール79Dの動作により、ポート79Aを、吐出油路19またはオイルパン77のいずれか一方に選択的に接続する制御、またはポート79Aを遮断する制御を実行可能である。
【0066】
この実施例3において、実施例1および実施例2の構成と同じ構成部分については、実施例1および実施例2と同様の作用効果を得られる。また、この実施例3において、エンジントルクが前輪5に伝達される場合は、インプットシャフト6の回転によりインナーギヤ101およびアウターギヤ102が回転して、吸入油路18のオイルが、オイルポンプ100の吸入口103に吸入されるとともに、吐出口104から吐出油路19にオイルが吐出される。
【0067】
また、エンジントルクを前輪5に伝達する場合は、カットバルブ79の制御により、ポート79Aとポート79Bとが接続され、ポート79Cが遮断される。このようなカットバルブ79の制御により、吐出油路19のオイルが、オイルモータ27に供給されて、実施例1および実施例2と同様の作用効果が生じる。なお、吸入油路18のオイルが吐出油路19に吐出され、吐出油路19のオイルが油路75に流れ込んだ場合でも、逆止弁78が閉じられるため、吐出油路19のオイルはオイルパン77に排出されないとともに、オイルパン77のオイルが吐出油路19に吸引されることもない。
【0068】
これに対して、車両Veが惰力走行してその機械的エネルギに対応するトルクが、前輪5からインターミディエイトシャフト2に伝達される場合は、カットバルブ79の制御により、ポート78Bが遮断される。すると、吐出油路19のオイルが吐出口104を経由してオイルポンプ100に吸引され、そのオイルが、吸入口103を経由して吸入油路18にオイルが吐出される。このようにして、吐出油路19が負圧になると、逆止弁78が開放されて、オイルパン77のオイルが吸引されて、そのオイルが吐出油路19およびオイルポンプ100を経由して吸入油路18に吐出される。すると、逆止弁95が閉じられて吸入油路18の油圧が上昇し、インターミディエイトシャフト2からインプットシャフト6に伝達されるトルクが上昇する。このようにして、エンジン1の回転抵抗による制動力、すなわち、エンジンブレーキ力が強められる。
【0069】
また、車両Veの惰力走行時には、カットバルブ79の制御により、ポート79Aとポート79Cとが接続されて、後輪76から伝達される動力により、ギヤ70,71が回転して、オイルモータ27がオイルポンプとして機能する。その結果、オイルパン77のオイルが、カットバルブ79およびオイルモータ27を経由して、油路34,94に供給される。
【0070】
なお、車両Veの惰力走行時には、
Tout1<ΔPL1・q1/2π ・・・(3)
となるように、吐出油路19の油圧PL1を制御することにより、車両Veが惰力走行状態から、エンジントルクを前輪5に伝達する走行状態に切り替わった場合におけるオイルポンプ100の吐出量を略ゼロとし、オイルモータ27から油路94に供給されるオイルにより、ベルト式無段変速機3および前後進切換装置37における必要オイルを賄うことが可能である。
【0071】
ここで、実施例3の構成とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、逆止弁95が、この発明における第1の流量制御装置に相当し、圧力制御弁80が、この発明の第3の圧力制御弁に相当し、カットバルブ79が、この発明の第2の流量制御装置に相当し、ベルト式無段変速機3および前後進切換装置37が、この発明のオイル必要部に相当し、オイルパン77が、この発明のオイル保持部に相当する。この実施例3におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1および実施例2の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
【実施例4】
【0072】
つぎに、この発明の実施例4の構成を図7に基づいて説明する。この実施例4は、請求項1ないし5の発明に対応する実施例である。実施例4の構成において、実施例1および実施例2および実施例3の構成と同じ構成については、実施例1および実施例2および実施例3の構成と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0073】
この実施例4と実施例3とを比較すると、逆止弁95に代えて圧力制御弁106が設けられている点が異なる。この圧力制御弁106は、直線状に往復動可能なスプール107と、スプール107を所定の向きで付勢する弾性部材108と、入力ポート109および出力ポート110と、信号圧ポート111と、フィードバックポート112とを有している。フィードバックポート112は吸入油路18に接続されており、フィードバックポート112の油圧に応じて、弾性部材108の付勢力と同じ向きの付勢力が、スプール107に加えられる。一方、信号圧ポート111の信号圧は、電子制御装置53により制御される構成となっており、信号圧ポート111の信号圧に応じて、弾性部材108の付勢力とは逆向きの付勢力がスプール107に加えられる。そして、圧力制御弁106は、信号圧ポート111の油圧が低圧である場合は、入力ポート109と出力ポート110とが接続された状態となる構成を有している。
【0074】
この実施例4においては、エンジントルクを前輪5に伝達して車両Veが走行する場合は、圧力制御弁106における信号圧ポート111の信号圧が低圧に制御される、このため、入力ポート109と出力ポート110とが接続されて、オイルパン21のオイルがオイルポンプ100に吸引され、オイルポンプ100から吐出油路19にオイルが吐出される。そして、実施例1ないし実施例3の構成と同じ構成部分については、実施例1ないし実施例3と同じ作用効果を得ることができる。
【0075】
一方、この実施例4において、車両Veの惰力走行する場合は、実施例3で説明した原理と同じ原理により、オイルが吐出油路19およびオイルポンプ100を経由して吸入油路18に排出される。また、この実施例3において、車両Veの惰力走行する場合は、信号圧ポート111に入力される信号圧が上昇されて、スプール107が動作して、吸入油路18からオイルパン21に排出されるオイルの流量が減少する。そして、吸入油路18の油圧が上昇すると、フィードバックポート112の油圧が上昇して、スプール107が信号圧ポート111の信号圧に抗して動作し、吸入油路18からオイルパン21に排出されるオイルの流量が増加する。
【0076】
このように、実施例4においては、信号圧ポート111に入力される信号圧を制御することにより、吐出油路19から吸入油路18に排出されるオイル量を制御することが可能である。したがって、オイルポンプ100により伝達されるトルクを制御することができ、エンジンブレーキ力を制御することが可能である。ここで、実施例4で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、圧力制御弁106が、この発明における第1の流量制御装置に相当する。この実施例4におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1ないし実施例3の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
【実施例5】
【0077】
つぎに、この発明の実施例5を図8および図9に基づいて説明する。図8における基本的な構成は、実施例3に対応する図6の構成と同じである。図8におけるオイルモータ200の構成が、図6におけるオイルモータ27の構成とは異なる。このオイルモータ200を、図2のオイルモータ27に代えて用いることが可能である。このオイルモータ200は、ラジアルピストン形のオイルモータであり、このオイルモータ200の構成は、図3および図4に示されたオイルポンプ7の構成と共通している。このオイルモータ200は、インナーレース208およびアウターレース209を有しており、インナーレース208は回転不可能に固定されている。アウターレース209は回転可能に配置されており、このアウターレース209と後輪76とが動力伝達可能に連結されている。図9は、アウターレース209の回転軸線に直交する平面における断面図である。インナーレース208には、円周方向に所定間隔をおいて複数のシリンダ210が形成されている。各シリンダ210は、インナーレース208の外周面に開口された略円筒形状の凹部であり、図9に示すように、各シリンダ210の軸線B2と、アウターレース209の回転軸線とが略直交する構成となっている。
【0078】
そして、各シリンダ210内にはピストン211が各々配置されており、各ピストン211は軸線B2方向に往復移動自在に構成されている。つまり、ピストン211は、インナーレース208の半径方向に移動可能である。また各ピストン211における外側の端面に凹部212が形成されている。この凹部212は半球形状に構成されており、凹部212によりボール213が保持されている。ボール213は凹部212内で転動可能である。一方、シリンダ210の奥端面210Aとピストン211との間には油室214が形成されている。この油室214には弾性部材215が設けられており、ピストン211をシリンダ210の外に押し出す向きの力が、弾性部材215からピストン211に加えられる。
【0079】
前記アウターレース209は円筒部235Aを有しており、円筒部235Aはインナーレース208の外側を取り囲むように配置されている。また、円筒部235Aの内周にはカム面236が形成されている。このカム面236は回転軸線を中心とする環状に構成されているとともに、略波形に構成されている。つまり、半径方向の内側に向けて突出するように湾曲した凸部236Aと、半径方向の外側に向けて突出するように湾曲した凹部236Bとが、円周方向で交互に、かつ、連続して配置されている。そして、このカム面236と、インナーレース208に取り付けられたボール213とが接触されているとともに、ボール213はカム面236に沿って転動可能である。
【0080】
一方、インナーレース208には軸線方向に吸入油路216および吐出油路217が設けられている。この吸入油路216と前記油路113とが接続され、吐出油路217と前記油路34とが接続されている。さらに、吸入油路216と油室214とを連通する油路222が設けられ、吐出油路217と油室214とを連通する油路223が設けられている。また、油路222には逆止弁224が設けられており、油路223には逆止弁225が設けられている。逆止弁224は、吸入油路216のオイルが油室214に吸入されることを許容し、油室214のオイルが吸入油路216に逆流することを防止する構成を有している。これに対して、逆止弁225は、油室214のオイルが吐出油路217に吐出されることを許容し、吐出油路217のオイルが油室214に逆流することを防止する構成を有している。
【0081】
この実施例5において、実施例1ないし実施例3の構成と同じ構成部分については、実施例1ないし実施例3と同じ作用効果を得られる。つぎに、オイルモータ200の作用について説明する。まず、エンジントルクが前輪5に伝達されて車両Veが走行し、かつ、カットバルブ79のポート79Aとポート79Bとが接続され、かつ、ポート79Cが遮断される場合について説明する。車両Veの機械的エネルギにより後輪76が回転すると、そのトルクがアウターレース209に伝達されて、アウターレース209とインナーレース208とが相対回転する。すると、アウターレース209とインナーレース208との相対回転にともない、ボール213がカム面236に沿って転動し、かつ、ピストン211が、インナーレース208の半径方向に往復移動する。このピストン211が半径方向に動作する場合に生じる作用を具体的に説明する。
【0082】
まず、ボール213が凸部236Aの頂点から凹部236Bに向けて転動する場合は、ピストン211が半径方向の外側に向けて動作する。この場合、油室214の油圧が吸入油路216の油圧よりも低圧となり、吸入油路216のオイルが油路222を経由して油室214に供給されるとともに、逆止弁225が閉じられて、油室214の油圧が上昇する。このため、ピストン211を軸線B2方向に沿って外側に付勢する押圧力が増加し、ボール213とカム面236との接触部分において、前記押圧力に応じた回転方向の分力が増加する。このようにして、アウターレース209の回転を促進する向きのトルクが増加する。
【0083】
ついで、ボール213が凹部236Bの最深部に到達するとともに、インナーレース208とアウターレース209との相対回転にともない、ボール213が凹部236Bから凸部236Aにさしかかると、ピストン211が半径方向で内側に向けて動作する。すると、逆止弁225が開放され、かつ、逆止弁224が閉じられて、油室214のオイルが油路217を経由して油路34に排出される。上記のようにして、インナーレース208とアウターレース209との相対回転にともない、油路113のオイルがオイルモータ200を経由して油路34に供給され、そのオイルの機械的エネルギが、ピストン211の直線運動に変換され、かつ、ピストン211の半径方向の動作力の一部が、アウターレース209の回転を促進する向きの分力、すなわちトルクに変換される。したがって、この実施例5においても、実施例1と同様の効果を得ることが可能である。
【0084】
一方、後輪76にトルクを伝達することなく、エンジン1の動力で車両Veが走行する場合は、カットバルブ79のポート79Aが遮断される。また、後輪76の回転トルクがアウターレース209に伝達されて、ピストン211が半径方向に動作する。このように、ピストン211が半径方向の外側に動作する場合は、逆止弁24が開放されても、油室214にはオイルが供給されない。また、ピストン211が半径方向の内側に動作する場合は、油室214が高圧となり、逆止弁225が開放されて、油室214のオイルが排出される。このため、インナーレース208とアウターレース209との相対回転が継続されても、油室214にはオイルが吸引されず、油室214の油圧は上昇しない。つまり、ピストン211は最も内側に動作位置で停止し、ボール213とカム面236との摩擦力が低減される。したがって、エンジン1の動力の一部が、オイルモータ200で浪費されることを回避できる。
【0085】
なお、この実施例5に示すオイルモータ200を、実施例4におけるオイルモータ27に代えて用いることも可能である。ここで、実施例5で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、オイルモータ200が、この発明の変換装置に相当し、油室214が、この発明の油圧室に相当し、アウターレース209が、この発明における第3の回転部材に相当し、ピストン211およびボール213が、この発明における動作部材に相当し、カットバルブ79が、この発明の第3の流量制御装置に相当する。この実施例5におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1ないし実施例4の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
【実施例6】
【0086】
つぎに、カットバルブ79を有する実施例3ないし実施例5で実行可能な制御の一例を、図10のフローチャートに基づいて説明する。まず、車速、加速要求などの信号および電子制御装置53に記憶されているデータなどに基づいて、前輪5に伝達する目標トルクおよび後輪76に伝達する目標トルクが算出される(ステップS301)。このステップS301についで、後輪76に伝達する目標トルクが「零ニュートンメートルであるか否か」が判断される(ステップS302)。このステップS302で肯定的に判断された場合は、カットバルブ79のポート79Bを遮断する制御を実行し(ステップS303)、ステップS304に進む。
【0087】
これに対して、ステップS302で否定的に判断された場合は、油路94の目標油圧の変化率ΔPL2が算出され(ステップS305)、ステップS304に進む。前記ステップS305においては、前述した式(2)が用いられる。また、ステップS304においては、エンジン1から前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3に伝達する目標入力トルクが算出される。このステップS304についで、吐出油路19における目標油圧の変化率ΔPL1が算出される(ステップS306)。このステップS306においては、前述した式(1)が用いられる。このステップS306についで、目標油圧PL1および目標油圧PL2が算出される(ステップS307)。このステップS307についで、吐出油路19の実油圧を目標油圧PL1に近づけるように圧力制御弁80が制御され、かつ、油路94の実油圧を目標油圧PL2に近づけるように圧力制御弁87が制御され(ステップS308)、図10に示す制御ルーチンを終了する。
【0088】
なお、図1、図5、図6、図7に対応する実施例おいては、特に示されていないが、ギヤ70,71のうちの少なくとも一方の動力を、前輪5に伝達する構成のパワートレーンを採用することも可能である。このパワートレーンを採用した場合は、「駆動力源の動力が伝達される車輪」と「オイルの機械的エネルギをトルクに変換し、かつ、そのトルクが伝達される車輪」とが同じとなる。
【0089】
また、図8、図9に対応する実施例おいては、特に示されていないが、アウターレース209の動力を、前輪5に伝達する構成のパワートレーンを採用することも可能である。このパワートレーンを採用した場合は、「駆動力源の動力が伝達される車輪」と「オイルの機械的エネルギをトルクに変換し、かつ、そのトルクが伝達される車輪」とが同じとなる。
【0090】
さらに、各実施例のいずれにおいても図示されていないが、エンジントルクの動力が後輪に伝達され、オイルモータのギヤの動力が前輪に伝達される構成のパワートレーンを採用することも可能である。さらに、各実施例において、駆動力源としては、エンジンに代えてモータ・ジェネレータが用いられていてもよいし、駆動力源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータが用いられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】この発明の動力伝達装置の実施例1を示す概念図である。
【図2】この発明の動力伝達装置の実施例1に相当するパワートレーンおよびその制御系統を示す概念図である。
【図3】図1に示されたオイルポンプの構成例を示す断面図である。
【図4】図1に示されたオイルポンプの構成例を示す断面図である。
【図5】この発明の動力伝達装置の実施例2を示す概念図である。
【図6】この発明の動力伝達装置の実施例3を示す概念図である。
【図7】この発明の動力伝達装置の実施例4を示す概念図である。
【図8】この発明の動力伝達装置の実施例5を示す概念図である。
【図9】この発明の実施例5に対応するオイルモータの部分的な断面図である。
【図10】実施例3ないし実施例5で実行可能な制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0092】
1…エンジン、 2…インターミディエイトシャフト、 5…前輪、 6…インプットシャフト、 7…オイルポンプ、 8…インナーレース、 9,209…アウターレース、 18…吸入油路、 19…吐出油路、 27,200…オイルモータ、 70,71…ギヤ、 76…後輪、 79…カットバルブ、 80,87,106…圧力制御弁、 95…逆止弁、 211…ピストン、 213…ボール、 214…油室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達可能に連結された第1の回転部材および第2の回転部材を有し、この第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転により、第1の油路からオイルを吸引し、かつ、吸引したオイルを第2の油路に吐出する構成を有するオイルポンプが設けられているとともに、駆動力源と車輪との間で、前記第1の回転部材および第2の回転部材を経由して動力伝達がおこなわれるように構成されている動力伝達装置において、
前記オイルポンプから吐出されるオイルの機械的エネルギを、車輪に伝達する機械的エネルギに変換する変換装置が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記変換装置にはオイルモータが含まれており、前記第2の油路のオイルが前記オイルモータを経由して第3の油路に至る構成を有しているとともに、
前記オイルの油圧により回転する第3の回転部材を前記オイルモータが有し、この第3の回転部材のトルクが車輪に伝達される構成であることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第2の油路の油圧を制御する第1の圧力制御弁と、前記第3の油路の油圧を制御する第2の圧力制御弁とが、更に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
車両の惰力走行による機械的エネルギが前記第2の回転部材に伝達され、かつ、その機械的エネルギが前記第1の回転部材を経由して前記駆動力源に伝達された場合に、前記駆動力源により制動力が生じる構成を有しているとともに、
前記車両の惰力走行による機械的エネルギが前記第2の回転部材に伝達された場合は、前記第2の油路から吸引したオイルを前記第1の油路に吐出する構成を、前記オイルポンプが更に有しているとともに、
前記第1の油路におけるオイルの流量を制御することにより、前記第2の回転部材から前記第1の回転部材に伝達される動力を制御する第1の流量制御装置が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記第1の油路の油圧および前記第2の油路の油圧を同じに制御する第3の圧力制御弁と、前記オイルモータを前記第2の油路またはオイル保持部のいずれか一方に接続する第2の流量制御装置と、前記第2の回転部材から車輪に至る動力伝達経路に設けられたオイル必要部とを有し、
前記第1の油路の油圧および前記第2の油路の油圧が同一に制御された場合に、前記オイル保持部と前記オイルモータとを接続することにより、前記オイル保持部のオイルを、前記オイルモータを経由させて前記オイル必要部に供給する構成を、更に有していることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記第2の油路から前記第3の油路に至る経路に形成された油圧室と、この油圧室の油圧に応じて往復移動し、かつ、前記第3の回転部材と接触する場合の係合力に応じて、前記第3の回転部材との間で動力伝達をおこなう動作部材とを、前記オイルモータが更に有しており、前記油圧室の油圧が上昇することにともない前記動作部材と前記第3の回転部材との間で伝達されるトルクを増加する構成を、前記オイルモータが更に有しているとともに、
前記第2の油路から前記油圧室に供給されるオイル量を減少させることにより、前記油圧室の油圧の上昇を抑制する第3の流量制御装置が、更に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−2926(P2006−2926A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183010(P2004−183010)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】