説明

動物用耳穴洗浄剤

【課題】抗菌洗浄効果に優れ、安全性が高い動物用耳穴洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】グレープフルーツ種子抽出物を含有する動物用耳穴洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌洗浄効果に優れる動物用耳穴洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
犬や猫等の愛玩動物は人間と違い耳の構造が特異であり、耳垢や分泌物が集まる内耳から分泌物の排出が難しいため、他の部位と比べ耳の清潔を維持することが非常に難しい。動物の耳穴を洗浄する方法として、洗浄成分としてサリチル酸、抗菌剤としてエタノール、保湿剤としてグリセリン等を配合する方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、軟弱で敏感な内耳の皮膚に対し、サリチル酸やエタノールは刺激があることから、刺激が少なく、安全性が高い動物用耳穴洗浄剤が望まれていた。なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−335459号公報
【特許文献2】特開2004−24064号公報
【特許文献3】特開平10−109928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、抗菌洗浄効果に優れ、安全性が高い動物用耳穴洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、グレープフルーツ種子抽出物が、動物用耳穴内で優れた抗菌効果を有すること、さらに、ブロメラインを併用することにより、より優れた抗菌洗浄効果を示すことを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は、
[1].グレープフルーツ種子抽出物を含有する動物用耳穴洗浄剤、
[2].さらに、ブロメラインを含有する[1]記載の動物用耳穴洗浄剤、
[3].合成抗菌剤、サリチル酸及びエタノールを含有しない[1]又は[2]記載の動物用耳穴洗浄剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた抗菌洗浄効果を有する動物用耳穴洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の動物用耳穴洗浄剤は、有効成分としてグレープフルーツ種子抽出物を含有する。グレープフルーツ種子抽出物は、グレープフルーツ種子を抽出原料とし、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法により得ることができる。グレープフルーツ種子は、果物のグレープフルーツの種子部分であり、グレープフルーツの種類等に限定されない。抽出方法としては、グレープフルーツ種子を生のまま又は乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。抽出に用いる溶媒としては、水又は親水性有機溶媒あるいはこれらの混合液を室温〜溶媒の沸点程度の温度で用いることが好ましい。
【0010】
この場合、親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒等を用いることができる。なお、水と親水性有機溶媒との混合系溶媒を使用する場合には、水10質量部に対して1〜90質量部添加することが好ましい。
【0011】
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、撹拌可溶性成分を溶出する。その後、濾過して抽出残査を除き、得られた抽出液を濃縮、乾燥することにより、抽出物を得ることができる。抽出条件としては、例えば、室温〜溶媒の沸点程度の温度で1時間〜1週間程度が挙げられるが、これに限定されず、適宜温度・時間を調整することができる。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであればそのままグレープフルーツ種子抽出物として用いることができる。
【0012】
また、得られる抽出液を脱色、脱臭、活性向上等を目的として精製することもできる。精製手段としては、特に制限されず、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂処理、樹脂吸着精製法等を採用することができる。なお、樹脂に吸着された有効成分は水、エタノール等で溶出させることができる。
【0013】
グレープフルーツ種子抽出物は、耳の内部で棲息する病原菌を抗菌する効果に優れる。耳の内部で棲息する病原菌としては、外耳道炎の病原菌として、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staphylococcus intermedius)、緑膿菌等が挙げられる。
【0014】
グレープフルーツ種子抽出物の配合量は、抗菌洗浄効果の点から、動物用耳穴洗浄剤全量に対して0.02〜0.1質量%が好ましく、より好ましくは0.03〜0.05質量%である。
【0015】
本発明の動物用耳穴洗浄剤には、ブロメラインを併用することが好ましい。ブロメラインを併用することにより、耳の内部にある耳垢や分泌物の分解を促進し、優れた抗菌洗浄作用を有する。ブロメラインはパイナップル由来のタンパク分解酵素である。ブロメラインは市販されているものを用いることができ、抽出部位や力価の違うものを組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ブロメラインの配合量は、抗菌洗浄効果の点から、動物用耳穴洗浄剤全量に対して0.002〜0.08質量%が好ましく、より好ましくは0.006〜0.04質量%であり、動物用耳穴洗浄剤中7.5〜300U/mL、好ましくは25〜150U/mLになるように配合するとよい。
【0017】
ブロメラインの酵素活性は以下に示す「Kunits」の方法で測定する。
Hammarsten(ハンマーステン)ガゼインを0.1Mリン酸バッファー(pH7.0、5mMシステイン、2mM EDTA)に1質量%となるように溶解し、90℃・15分で熱処理し、溶解して冷却させて基質溶液を得る。使用する際に37℃のウォーターバスで加熱する。
試験管中の1質量%のカゼイン基質溶液1mLに、試料2mLを添加し、40℃で20分間反応させる。その後、5質量%のTCA(トリクロロ酢酸)液3mLを添加して、常温で30分間放置して沈殿させ、分解されていないカゼインをホワットマンNo.40ろ過紙でろ過させた後、ろ液の280nmの吸光度を測定する。タンパク質の定量は、ローリー法により、540nmで吸光度を測定し、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質に使用し、タンパク質量を測定する。酵素活性単位は1分間で1μM/mLのチロシンを生成する酵素の量を1U(unit)とする。
【0018】
本発明の動物用耳穴洗浄剤には、本発明の効果を損なわない範囲で適量の任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。任意成分としては、水、ヒアルロン酸及びその塩、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の保湿剤、グレープフルーツ種子抽出物以外の植物抽出物、ブロメライン以外のパパイン等のプロテアーゼ、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、イプシロナミノカプロン酸等の抗炎症剤、グレープフルーツ種子抽出物以外の抗菌剤、香料、pH調製剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、ビタミン類、アミノ酸類、生薬等が挙げられる。
【0019】
本発明の動物用耳穴洗浄剤は、天然成分のみで優れた抗菌洗浄効果を有するため、合成抗菌剤及びエタノール等の抗菌成分、サリチル酸等の洗浄成分を含有しない組成にすることができる。このような組成にすることで、軟弱で敏感な内耳の皮膚に対しても刺激、毒性がなく、高い安全性を有する動物用耳穴洗浄剤となる。合成抗菌剤としては、具体的にイオウ、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、イセパマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸ネチルマイシン、硫酸フラジオマイシン、エノキサシン、塩酸シブロフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、オルビフロキサシン等が挙げられる。
【0020】
本発明の動物用耳穴洗浄剤の剤型は特に限定されず、液体、固体、ゲル状、泡状等の剤型にすることができる。この中でも、使用のしやすさの点から、液体にすることが好ましい。動物用耳穴洗浄剤は、上記必須成分、任意成分及び水を混合し、必要によりpHを調整することにより得ることができる。使用方法としては、動物用耳穴洗浄剤を耳穴に添加又は挿入する。耳穴洗浄剤は、液体の場合、動物が首を振る等して自発的に耳穴洗浄剤を耳穴外に排出してもよく、固体等の場合は、飼い主が耳穴洗浄剤を取り出してもよい。本発明の動物用耳穴洗浄剤は、イヌ、ネコ等の愛玩動物、特にイヌに好適である。
【実施例】
【0021】
以下、試験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0022】
[試験例1]
供試菌株をミューラーヒントン ブロス(Muller−Hinton Broth)培地に接種し、37℃で24時間培養後、菌を滅菌生理食塩水で107CFU/mLの濃度に希釈して接種菌液を得た。この接種菌液1mLを試験液(原液)9mLに接種し、37℃で反応させた。反応20秒、40秒、60秒、120秒、180秒後、反応液の1mLを氷水で保冷した中和剤(レクチン6g、Tween80 60g、チオ硫酸ナトリウム8g、L−ヒスチジン5g、牛血清アルブミン7.2gをpH7.3のSorenson’s(ソレンソン)リン酸バッファー(Na2HPO4 0.71gとNaH2PO4・2H20 0.20gとを脱イオン水1000mLに溶解、pH7.3)に溶解し、1000mLとしたもの)9mLに接種して15分間反応させた後、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.0)で適当な菌数となるように10倍段階希釈したものを、ミューラーヒントン寒天平板培地に接種し、37℃で48時間培養し、試験液処理後の生残菌数を計測した。なお、ネガティブコントロールとしてPBS(pH7.0)を用いた。
【0023】
表1には、試験液としてグレープフルーツ種子抽出物(商品名「DF−100LIQUID(Quimica Natural Brasileira Ltd.,製)」(0.05g/100mL水溶液(pH5.7)、供試菌株として表中に記載のものを使用した結果を示す。以上のように、グレープフルーツ種子抽出物はスタフィロコッカス・アウレウス及びスタフィロコッカス・インターメディウスに対して優れた抗菌作用を有した。
【0024】
【表1】

【0025】
[実施例1]
精製水にグレープフルーツ種子抽出物350mg/L(耳穴洗浄剤最終濃度)を添加して、リン酸カルシウムと酢酸でpHを3.8に合わせて耳穴洗浄剤Aを得た。
【0026】
[実施例2]
精製水にグレープフルーツ種子抽出物350mg/L(耳穴洗浄剤最終濃度)及びブロメライン330mg/L(耳穴洗浄剤最終濃度)を添加して、リン酸カルシウムと酢酸にて、pHを4.0に合わせ耳穴洗浄剤Bを得た。
なお、グレープフルーツ種子抽出物は商品名「DF−100LIQUID(Quimica Natural Brasileira Ltd.,製)」を使用した。ブロメラインは商品名「Bromelain(Great Food Biochem Co.Ltd.,)製」を使用し、耳穴洗浄剤中の活性は75U/mLであった。
【0027】
実施例1で得られた耳穴洗浄剤A(pH3.8)と、pHを水酸化ナトリウムで7.0に調整した耳穴洗浄剤A(pH7.0)を試験液とし、菌株として、スタフィロコッカス・アウレウス179株、スタフィロコッカス・アウレウス(外耳道炎由来)、スタフィロコッカス・インターメディウス1106株、スタフィロコッカス・インターメディウス1301株(Staphylococcus intermedius)を使用して、上記試験例1と同様に、抗菌効果を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
[試験例2]
体重3〜4kgのイヌ10匹と体重3.5〜4kgのネコ10匹の片耳に、実施例2で得られた耳穴洗浄剤B0.6mLを1週間2回・4週間、耳に投与し、未投与の片耳と比較した。耳穴洗浄剤Bを投与した片耳は、投与しない片耳と比べ耳垢が著しく減少した。
【0030】
[実施例3,4、比較例1]
精製水、酢酸及びリン酸水素二カリウムを混合し、さらに、ブロメラインを混合して溶解させた後、グレープフルーツシード抽出物及びマンゴフレーバーを混合して溶解させ、表3に示す組成の耳穴洗浄剤を得た。グレープフルーツ種子抽出物は実施例で用いたものと同じものを使用した。
【0031】
[試験例3]
得られた耳穴洗浄剤について下記方法で、汚れと臭いについて下記方法で評価した。結果を表中に併記する。
外耳道炎に罹患した(原因がスタフィロコッカスに起因)ビーグル犬各5頭(体重11〜15kg)の罹患した耳に、1週間連続的(毎日朝の食事後)に耳穴洗浄剤1mLを点耳した。点耳後、耳根部をやさしくもんで中まで浸透させ、ビーグル犬が自然に首をふって耳の外についた耳穴洗浄剤をふき取った。1週間後に、耳内部の汚れ状態及び匂いを官能検査(10名の専門パネル)で、下記評価基準で評価した。表中には10名の平均値を示す。結果は点数が低いほどよい。
<評価基準>
汚れ評価
1:非常にきれい
2:ややきれい
3:どちらともいえない
4:ややきたない
5:非常にきたない
臭い評価
1:全く臭わない
2:あまり臭う
3:どちらともいえない
4:やや臭う
5:非常に臭う
【0032】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレープフルーツ種子抽出物を含有する動物用耳穴洗浄剤。
【請求項2】
さらに、ブロメラインを含有する請求項1記載の動物用耳穴洗浄剤。
【請求項3】
合成抗菌剤、サリチル酸及びエタノールを含有しない請求項1又は2記載の動物用耳穴洗浄剤。

【公開番号】特開2007−145931(P2007−145931A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340081(P2005−340081)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(505437099)イコバイオ (1)
【氏名又は名称原語表記】ECOBIO INC
【住所又は居所原語表記】大韓民国 光州市 北区 龍鳳洞 全南大学校 産学協力關 802号
【Fターム(参考)】