説明

包接体及びこれを含有する皮膚外用剤

【課題】水難溶性成分を効率良く可溶化できる包接体と、これを含有し、使用感に優れる皮膚外用剤の提供。
【解決手段】ポリエチレンオキサイドマクロモノマー(例えばポリエチレンオキサイドのアクリレート、メタクリレート等)と疎水性モノマー(例えばメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等)と、架橋性モノマー(例えばエチレングリコールジメタクリレート等)とを重合して得られる共重合体に、水難溶性成分が包接されたことを特徴とする包接体及びこれを含有する皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水難溶性成分が包接された共重合体からなる包接体及びこれを含有する皮膚外用剤に関する。特に香料成分をミクロゲルで包接することにより、安定性および残香性に優れ、かつ使用感触にも優れる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水に溶け難い香料や薬剤を化粧料に可溶化するために包接体が利用されている(特許文献1〜5)。これらの包接体は主にシクロデキストリンを利用したものである。
【0003】
一方、多くの化粧料には香料が配合されており、香料は使用時の効果感を高めるためにも重要な役割を担っている。また、香りを楽しむことを第一の目的としたフレグランス製品が国内外問わず多く利用されている。したがって、水難溶性の香料を可溶化して各種製品に安定に配合できる技術が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−196709
【特許文献2】特開平3−157314
【特許文献3】特開2001−316219
【特許文献4】特開平11−222455
【特許文献5】特開平10−067639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シクロデキストリンを利用した包接体は、香料等の水難溶性成分の可溶化量を上げるためには、その配合量を増やさなければならない。その結果、系が不安定になったり、べたついて使用感が悪くなるという解決すべき課題がある。
【0006】
特にフレグランス製品は水及びアルコールを主成分としており、香料を溶かすためにも高アルコール含量のものが多い。しかし、今後、ヨーロッパからVOC規制(アルコール含量80質量%以下)が適用されることもあり、低アルコール含量のフレグランス製品の開発が非常に重要である。一方、アルコールフリーフレグランス製品の開発として、界面活性剤の組み合わせにより実現しているものもあるが、香料の賦香率が高くなるにつれ、配合する界面活性剤の配合量を増やさなければならない。その結果、系の不安定化や使用感が悪くなるといった問題があった。
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究した結果、香料等の水難溶性成分を特定の共重合体からなるミクロゲルで包接すると、水難溶性成分を可溶化できるだけではなく、低いアルコール含量でも安定に配合できることを見出した。特に香料の高賦香率が実現でき、さらには香料の残香感が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと下記式(2)の疎水性モノマーと下記式(3)の架橋性モノマーとを重合して得られる共重合体に、水難溶性成分が包接されたことを特徴とする包接体を提供するものである。



【化1】

(1)
1は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、nは20〜200の数である。XはHまたはCH3を表す。
【化2】

(2)
2は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、R3は炭素原子数1〜8のアルキルを表す。
【化3】

(3)
4とR5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキルを表し、mは0〜2の数である。
【0009】
また、本発明は、下記(A)、(B)、(C)、(D)の条件下に、前記(1)〜(3)のモノマーを水−エタノール混合溶媒中にてラジカル重合して得られる共重合体からなるミクロゲルに、水難溶性成分が包接されたことを特徴とする包接体を提供するものである。
(A)疎水性モノマーは炭素原子数1〜8のアルキルを有するメタクリル酸誘導体を一種もしくは二種以上を混合した組成であること
(B)ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量が、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)であること
(C)架橋性モノマーの仕込み量が、疎水性モノマーの仕込み量に対して、0.1〜1.5質量%であること
(D)水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)であること
【0010】
さらに、本発明は、前記水難溶性成分が香料であることを特徴とする上記の包接体を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記の包接体を含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明の包接体は、水難溶性成分を安定に包接して可溶化することが可能であり、特に皮膚外用剤に好適に利用出来る。
(2)本発明の皮膚外用剤は使用感に優れている。すなわち、なめらかであり、べたつきがない。
(3)香料包接体を配合した本発明の皮膚外用剤は、高賦香率である。また、低いアルコール含量でも配合可能である。
(4)香料包接体を配合した本発明の皮膚外用剤は優れた残香感を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
【0014】
「本発明に用いる共重合体について:包接体のホスト」
式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーは、例えばAldrich社から市販されている試薬、あるいは日本油脂から発売されているブレンマー(登録商標)を使用することが出来る。これら市販品の式(1)のポリエチレンオキサイド部分の分子量(即ちnの値)は幅広く、これを使用することができる。このポリエチレンオキサイド部分の分子量の好ましいサイズはn=20〜200のものである。例えば、日本油脂製ブレンマー(登録商標)PME1000あるいはブレンマー(登録商標)PME4000などが好適である。
【0015】
式(2)の疎水性モノマーは、例えば、Aldrich社もしくは東京化成社から市販されている試薬を使用することができる。式(2)のR3のアルキル鎖は炭素原子数1〜8のアルキルである。式(2)は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸へプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸へプチル、メタクリル酸オクチルなどである。特に、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレートが好適である。これらの疎水性モノマーは汎用原料であり、一般工業原料としても容易に入手することができる。
【0016】
式(3)の架橋性モノマーは、市販の試薬あるいは工業用原料として入手が可能である。この架橋性モノマーは疎水的であることが好ましい。式(3)のmの値は好ましくは1〜3である。具体的にはAldrich社から発売されているエチレングリコールジメタクリレート、日本油脂製ブレンマー(登録商標)PDE−50などが好適である。
【0017】
本発明に用いる共重合体は、任意の重合法により上記モノマーを共重合体させたものであるが、特に下記(A)、(B)、(C)の条件下に、前記(1)〜(3)のモノマーを水−エタノール混合溶媒中にてラジカル重合して得られる共重合体(ミクロゲル)であることが好ましい。
(A)ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量が、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)であること
(B)架橋性モノマーの仕込み量が、疎水性モノマーの仕込み量に対して、0.1〜1.5質量%であること
(C)水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)であること
【0018】
(A)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量は、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)の範囲でコロナ−コア型ミクロゲルが重合可能である。エチレンオキサイドマクロモノマーの仕込み量が、モル比で疎水性モノマーの10分の1を下回ると重合されるポリマーは水溶性になり、コロナ−コア型ポリマーミクロゲルは形成しない。また、ポリエチレンオキサイドマクロモノマーのモル量に対して疎水性モノマーが250倍以上になるとポリエチレンオキサイドマクロモノマーによる分散安定化が不完全になり不溶性の疎水性モノマーによる疎水性ポリマーが凝集、沈殿する。ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み比は、好ましくは1:10〜1:200の範囲である。さらに好ましくは1:25から1:100の範囲である。
【0019】
(B)の架橋性モノマーを共重合することでコア部分の疎水性ポリマーが架橋されたミクロゲルを重合することが出来る。架橋性モノマーの仕込み量が疎水性モノマーの仕込み量の0.1重量%未満であると、架橋密度が低く、このミクロゲルは膨潤時に崩壊してしまう。また1.5重量%を上回ると、ミクロゲル粒子同士の凝集が生じ、粒度分布の狭い好適なミクロゲル粒子を重合することは出来ない。好ましい架橋性モノマーの仕込み量は、0.2〜1.0、さらに好ましくは0.2〜0.8、最も好ましくは0.2〜0.5質量%である。
【0020】
(C)の重合溶媒である水/エタノールの混合比は、水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)である。重合溶媒は疎水性モノマーを均一溶解するためにエタノールを加えることが必要である。エタノールの混合比は10〜60容量比である。エタノールの混合比が10容量比より低い場合は疎水性モノマーを可溶化することが困難になり、重合されるミクロゲル粒子の粒度分布が広くなってしまう。またエタノールの混合比が60容量比を上回ると、重合されるポリマーは重合溶媒に溶解してしまい、ミクロゲル粒子は得られない。好ましい水/エタノールの混合比は、水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜60:10〜40(20℃の容積比)である。さらに好ましくは水:エタノール=80〜70:20〜30(20℃の容積比)である。
【0021】
この重合系に用いられる重合開始剤は通常の水溶性熱ラジカル重合に用いられる市販の重合開始剤を用いることが出来る。
この重合系では特に攪拌条件を厳密にコントロールすることなく重合を行っても重合されるミクロゲル粒子の粒度分布は非常に狭いものを得ることが出来る。
【0022】
本発明で使用するミクロゲルは、親水性マクロモノマーと疎水性モノマーとが溶媒中にて図1に示すように秩序化が起り、粒子径がほぼ一定で、かつコア部分が架橋されたコロナ−コア型高分子ミクロゲルが生成すると考えられる。そしてこのコア部分の疎水性ポリマーが架橋された部分に水難溶性成分が効率良く包接される。
【0023】
なお、医薬品や化粧品の配合成分として応用を考える際、生理的条件化での適応においては耐酸性や耐塩性は非常に重要な性能である。包接体を構成する上記ミクロゲルは非イオン性高分子であるポリエチレンオキサイド鎖で安定化されたミクロゲルであり、その水中での分散安定性は耐酸性や耐塩性が期待できる。
【0024】
「本発明に用いる水難溶性成分について:包接体のゲスト」
包接される水難溶性成分としては、香料(高賦香率、残香感が期待される);ビタミンEアセテート、レチノール、コエンザイムQ10等の薬剤(皮膚上での徐放効果が期待される);オクチルメトキシシンナメート等の紫外線吸収剤(皮膚上に均一に塗布でき紫外線吸収効果の向上が期待される);パラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤(皮膚への経皮吸収抑制効果が期待される)等が挙げられる。
【0025】
化粧料に有用な高賦香率で優れた残香感を与えることから、香料の包接体が特に望ましい。香料は極性油、非極性油のいずれでも構わない。香料を包接した香料包接体は、皮膚外用剤、特に化粧料に配合することが好ましい。なぜなら、香料を配合した化粧料は、従来の技術では安定性と使用感のバランスの調整が非常に困難であり、使用感を重視する化粧料の製造が困難だからである。
【0026】
本発明の包接体は、上記共重合体を、水及び/又はアルコール中にて水難溶性成分(香料など)を常法により混合分散させることによって製造される。通常、水及び/又はアルコール等からなる溶液全量に対して、共重合体を0.01〜5.0質量%、水難溶性成分を0.001〜15質量%添加して混合する。水難溶性成分の包接量は任意であるが、香料の場合は配合する皮膚外用剤全量に対して0.001〜10質量%の範囲で包接されることが好ましい。また、香料を包接する共重合体は、配合する皮膚外用剤全量に対して0.01〜10質量%になることが好ましく、0.1〜5.0質量%が特に好ましい。
界面活性剤を加えて乳化混合して包接体を得ることも好ましい。包接体は溶媒を除去し乾燥した状態でも得られ、皮膚外用剤やその他の組成物に添加することが好ましい。
また、水中に他の成分(例えば皮膚外用剤成分)を加えて混合することにより、目的とする組成物中にて製造することも可能である。この場合は、極めて簡単な製造プロセスによって生産可能という優れた商業的価値を有する皮膚外用剤が製造できる。
【0027】
本発明において、包接体を構成する上記ミクロゲルは、水に僅か0.01質量%配合するだけでさらさら感を付与することが確認でき、皮膚外用剤の使用性改善剤としても機能する。シクロデキストリン包接体や界面活性剤の高配合による従来の技術では、香料を安定に可溶化しつつ、塗布時及び乾燥後の肌のべたつきを抑制することが極めて難しく、その使用性が良くないものであった。
【0028】
本発明の包接体は、化粧料や医薬部外品を初めとする皮膚外用剤、塗料、接着剤等の各種用途に配合可能である。
本発明の皮膚外用剤は、スキンケア製品、メーキャップ製品、ヘアケア製品、フレグランス製品等の化粧料として使用することが好ましい。特に香りの徐放性を生かしたフレグランス製品として使用されることが好ましいが、適用形態は限定されず、化粧水、乳液、美容液、クリーム、含浸マスク、ボディーローション、洗顔料、ファンデーション、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、育毛剤、香水等に使用されることが好ましい。
【0029】
本発明の皮膚外用剤には、さらに化粧料、医薬品等に通常使用される薬効剤、保湿成分、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機及び無機粉体、香料、色素などを必要に応じて配合することができる。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。最初に、実施例に使用した共重合体(ミクロゲル)の製造例を示す。配合量は特に断りのない限り、質量%で表す。
【0031】
「ミクロゲルの製造例」
ミクロゲルの重合は以下の方法で実施した。還流管と窒素導入管を備えた200mLの三口フラスコに水−エタノール混合溶媒(水:エタノール=60:40容量比)50mLにPME−4000、メチルメタクリレート(MMA)、ブチルメタクリレート(nBMA)、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を溶解する。十分溶解した後、2,2'アゾビス(2メチルプロピオンアミジン 2塩酸塩)を全モノマー量に対して1mol%の割合で添加してさらに溶解する。完全に均一になった重合溶液を20分間窒素置換して溶存酸素を除いた後、マグネチックスターラーで攪拌しながら、オイルバスにて65から70℃に8時間保って重合する。重合終了後、重合液を室温に戻した後、重合液を水に対して5日間透析して、残存モノマーを除去し、同時に分散液を水に置換する。
用いたモノマーの量(g)を「表1」に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
次に上記ミクロゲルからなる包接体及びこれを配合した実施例について説明する。なお、本発明の実施例説明に先立ち、評価方法を以下に示す。
【0034】
「評価(1):香料添加前後のミクロゲルの体積変化」
香料添加前と香料添加後のミクロゲルの粒子径(香料添加前をd0、香料添加後をdとする。)を測定し、この変化率(d/d03から香料成分がミクロゲル内に取り込まれ、包接体を形成していることを確認した。なお、(d/d03が高いほど、香料成分がミクロゲルコア内に多く取り込まれていると評価できる。
【0035】
「粒子径及び分散度の測定方法」
上記ミクロゲルの粒子径の測定は、マルバーン社製 ゼータサイザーを用いて測定した。ミクロゲル分散液のミクロゲル濃度を約0.1%に調製し測定サンプルを作成し、25℃での散乱強度を散乱角度178度で測定し、測定装置に搭載されている解析ソフトで平均粒子径および分散度を算出した。粒子径はキュムラント解析法により解析し、粒子径解析に必要な溶媒の粘度は25℃の水とアルコールの混合溶媒の粘度の値を用いた。
測定は各サンプルについて10回の測定を行いその平均値をとった。
【0036】
「評価(2):経時安定性」
経時安定性を50℃、37℃、RT、0℃の恒温槽に静置し、安定性試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
○:各温度にて1ヶ月以上、沈降又は浮遊がないことを認めた。
×:各温度にて1ヶ月以内に、沈降又は浮遊が生じた。
【0037】
「評価(3):肌へのべたつきのなさ」
使用中及び使用後の肌へのべたつきのなさを専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:専門パネラー8名以上が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
○:専門パネラー6名以上8名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
△:専門パネラー3名以上6名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
×:専門パネラー3名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
【0038】
「評価(4):残香感」
サンプル塗布から1時間の残香感を専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:専門パネラー8名以上が残香を認めた。
○:専門パネラー6名以上8名未満が残香を認めた。
△:専門パネラー3名以上6名未満が残香を認めた。
×:専門パネラー3名未満が残香を認めた。
【0039】
「包接体におけるミクロゲルの組成の影響」
下記試験用基本組成を用いて、本発明の包接体の水溶液の評価を行った。
<包接体水溶液>
イオン交換水 to 100 質量%
エチルアルコール 90
製造例1−7のミクロゲル(A) 0.1
リモネン(香料) 3
【0040】
【表2】

【0041】
上記表2に示されるように、ミクロゲルはリモネンを取り込み体積が増加し、包接体を形成していることがわかる。また、上記製造例1〜7で得られた様々な組成のミクロゲルからなる包接体は、経時安定性、べたつき、残香感の全てに優れている。
【0042】
「ミクロゲルの配合量の影響」
下記試験用基本組成を用いて、本発明の包接体の水溶液の評価を行った。
<包接体水溶液>
イオン交換水 to 100 質量%
エチルアルコール 90
製造例4のミクロゲル 表3に記載した量
リモネン (香料) 3
【0043】
【表3】

【0044】
上記表3に示されるように、包接体を含有する水溶液への共重合体の配合量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%が特に好ましい。
【0045】
「香料の配合量の影響」
下記試験用基本組成を用いて本発明の包接体の水溶液の評価を行った。
<包接体水溶液>
イオン交換水 to 100 質量%
エチルアルコール 90
製造例4のミクロゲル 0.1
リモネン (香料) 表4に記載した量
【0046】
【表4】

【0047】
上記表4に示されるように、包接体を含有する水溶液へのリモネン(香料)の配合量は0.001〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
【0048】
「アルコール含有量の影響」
下記試験用基本組成を用いて本発明の包接体の水溶液の評価を行った。
<包接体水溶液>
イオン交換水 to 100 質量%
エチルアルコール 表5に記載した量
製造例4のミクロゲル 0.1
リモネン (香料) 3
【0049】
【表5】

【0050】
<包接体水溶液>
イオン交換水 to 100 質量%
エチルアルコール 表6に記載した量
製造例4のミクロゲル 0.1
リモネン (香料) 0.001
【0051】
【表6】

【0052】
上記表5及び6に示されるように、経時安定性は高賦香率の場合、60〜80質量%のエタノール含有量が優れており、低賦香率の場合、エタノール含有量によっては影響を受けない。一方、べたつき・残香感は、高賦香率・低賦香率のどちらの場合もエタノール含有量の影響を受けないが、高賦香率の場合は、特に50〜70質量%が優れている。
【0053】
下記に、香料包接体を含有する本発明の皮膚外用剤を挙げる。配合される包接体は、上記実施例のように、水−エタノール溶液中にミクロゲルと香料とを下記処方に示す配合量添加した混合水溶液と、その他の配合成分とを常法により混合して製造することが可能である。また、包接体乾燥物を配合することも可能である。
【0054】
「実施例26 乳液」
製造例1のミクロゲル 1.0
ジメチルポリシロキサン 3.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 4.0
エチルアルコール 5.0
グリセリン 6.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 3.0
POE(14)POP(7)ジメチルエーテル 1.0
アスコルビン酸グルコシド 2.0
ヒマワリ油 1.0
スクワラン 2.0
水酸化カリウム 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
ビワ葉エキス 0.1
L−グルタミン酸ナトリウム 0.05
ウイキョウエキス 0.1
酵母エキス 0.1
ラベンダー油 0.1
ジオウエキス 0.1
ジモルホリノピリダジノン 0.1
キサンタンガム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(ペミュレンTR−1) 0.1
ベンガラ 適量
黄酸化鉄 適量
パラベン 適量
香料(包接成分) 適量
精製水 残余
【0055】
「実施例27 化粧水」
製造例4のミクロゲル 0.8
グリセリン 1.0
ジプロピレングリコール 12
エタノール 8.0
POEメチルグルコシド 3.0
POE(24)POP(13)デシルテトラデシルエーテル 0.5
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.08
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 0.5
チオタウリン 0.1
アデノシン3リン酸−2ナトリウム 0.1
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.01
EDTA3ナトリウム 0.01
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
水酸化カリウム 0.2
パラベン (包接成分) 適量
精製水 残余
香料 適量
【0056】
「実施例28 抗シワクリーム」
製造例2のミクロゲル 0.5
流動パラフィン 8
ワセリン 3
ジメチルポリシロキサン 2
ステアリルアルコール 3
ベヘニルアルコール 2
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 4
トレハロース 1
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 4
モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
親油型モノステアリン酸グリセリン 2
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
水酸化カリウム 0.015
油溶性甘草エキス 0.1
レチノールパルミテート(包接成分) 0.25
酢酸トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
フェノキシエタノール 適量
ジブチルヒドロキシトルエン 適量
エデト酸三ナトリウム 0.05
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 0.01
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 0.1
β−カロチン 0.01
ポリビニルアルコール 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.05
精製水 残余
香料 適量
【0057】
「実施例29 コンディショナー」
製造例7のミクロゲル 5.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
ステアリルアルコール 2.0
ベヘニルアルコール 1.0
グリセリン 1.5
パルミチン酸オクチル 1.0
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 0.2
クエン酸 0.05
パラオキシ安息香酸エステル 適量
フェノキシエタノール 適量
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1
高重合メチルポリシロキサン 1.5
精製水 残余
香料(包接成分) 適量
【0058】
「実施例30 クリームファンデーション」
製造例3のミクロゲル 0.1
ベヘニルアルコール 0.5
ジプロピレングリコール 6.0
ステアリン酸 1.0
モノステアリン酸グリセリン 1.0
水酸化カリウム 0.2
トリエタノールアミン 0.8
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
黄酸化鉄 1.0
α−オレフィンオリゴマー 3.0
ジメチルポリシロキサン(6mPa.s) 2.0
ジメチルポリシロキサン(100mPa.s) 5.0
バチルアルコール 0.5
イソステアリン酸 1.0
ベヘニン酸 0.5
2−エチルヘキサン酸セチル 10
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1.0
酸化チタン 3.0
雲母チタン・ポリアクリル酸アルキル複合粉末 0.5
シリカ/アルミナ処理酸化チタン 10
ポリアクリル酸アルキル被覆雲母チタン 0.5
黒酸化鉄被覆雲母チタン 0.5
無水ケイ酸 6.0
パラメトキシケイ皮酸2−エチルへキシル 2.0
ベンガラ 適量
群青 適量
黒酸化鉄 適量
法定色素 適量
キサンタンガム 0.1
ベントナイト 1.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
精製水 残余
香料(包接成分) 適量
【0059】
「実施例31 ボディーシャンプー」
製造例4のミクロゲル 0.5
エタノール 10
グリセリン 1.0
オレンジ油 0.05
ローズマリー油 0.05
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 0.5
ヤシ油脂肪酸アシル−グルタミン酸カリウム混合液 10
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 5.0
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
1.5
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.2
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム 適量
キサンタンガム 0.5
香料(包接成分) 適量
精製水 残余
【0060】
「実施例32 ボディークリーム」
製造例7のミクロゲル 0.2
エタノール 15
グリセリン 1.0
ポリエチレングリコール20000 1.0
1,3-ブチレングリコール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.1
アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体(ペミュレン TR-2) 0.1
水酸化カリウム 0.05
メチルシロキサン 1
デカメチルシクロペンタシロキサン 4
スクワラン 0.5
ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン 0.05
イソステアリン酸 0.05
EDTA−3ナトリウム 0.1
パラベン 適量
香料 (包接成分) 0.2
精製水 残余
【0061】
「実施例33 サンスクリーン」
製造例5のミクロゲル 1.0
メチルフェニルポリシロキサン 5.0
ステアリルアルコール 2.0
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 5.0
ソルビット液(70%) 5.0
ステアリン酸 1.5
パルミチン酸 1.0
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 4.0
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1.0
水酸化カリウム 0.15
オクチルメトキシシンナメート (包接成分) 6.0
ワセリン 2.0
トラネキサム酸 2.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
スクワラン 3.0
クエン酸ナトリウム 0.1
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.2
ベントナイト 1.0
パラベン 適量
精製水 残余
香料 適量
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の包接体は、水難溶性成分を水性組成物に可溶化するために有用であり、皮膚外用剤、塗料、接着剤等を初めとする各種用途に利用される。
特に香料を包接する包接体は、香料の可溶化と残香感の向上効果があり、徐放性と使用感に優れた皮膚外用剤を提供することが出来る。
本発明の皮膚外用剤が化粧料の場合には、その優れた使用感から、化粧効果の印象を使用者に極めて有効にアピールできる有用な化粧料となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の包接体に使用するミクロゲルのコロナ−コア型高分子ナノスフェア生成メカニズムを示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)のポリエチレンオキサイドマクロモノマーと下記式(2)の疎水性モノマーと下記式(3)の架橋性モノマーとを重合して得られる共重合体に、水難溶性成分が包接されたことを特徴とする包接体。
【化1】

(1)
1は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、nは20〜200の数である。XはHまたはCH3を表す。
【化2】

(2)
2は炭素原子数1〜3のアルキルを表し、R3は炭素原子数1〜8のアルキルを表す。
【化3】

(3)
4とR5はそれぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキルを表し、mは0〜2の数である。
【請求項2】
下記(A)、(B)、(C)、(D)の条件下に、前記(1)〜(3)のモノマーを水−エタノール混合溶媒中にてラジカル重合して得られる共重合体からなるミクロゲルに、
水難溶性成分が包接されたことを特徴とする包接体。
(A)疎水性モノマーは炭素原子数1〜8のアルキルを有するメタクリル酸誘導体を一種もしくは二種以上を混合した組成であること
(B)ポリエチレンオキサイドマクロモノマーと疎水性モノマーの仕込み量が、ポリエチレンオキサイドマクロモノマー:疎水性モノマー=1:10〜1:250(モル比)であること
(C)架橋性モノマーの仕込み量が、疎水性モノマーの仕込み量に対して、0.1〜1.5質量%であること
(D)水−エタノール混合溶媒が、水:エタノール=90〜30:10〜70(20℃の容積比)であること
【請求項3】
前記水難溶性成分が香料であることを特徴とする請求項1又は2記載の包接体。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の包接体を含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−238521(P2007−238521A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64452(P2006−64452)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】