説明

化学量論的組成勾配層及び層構造の製造方法及び装置

【課題】本発明は、連続成膜設備において、化学量論的組成勾配を有する形で基板に成膜するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明では、それぞれ一つの蒸発器チューブを有する少なくとも二つの蒸発機器が配備され、両方の蒸発器チューブは、互いに独立して傾斜可能な形に構成されており、そうすることによって、両方の蒸気ビームの移行領域を勾配形態の要件に適合させることができる。 更に、基板に対する蒸発器チューブの間隔及び蒸発器チューブの互いの間隔を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ一つの蒸発器チューブを有する少なくとも二つの蒸発機器を備えた、連続成膜設備内で基板に成膜する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明手段、モニタ、光起電回路、電子回路又はそれ以外の製品で使用するための、所謂「小分子」から成る有機半導体を大量生産する場合、二つ又はそれ以上の有機材料を共蒸着することが非常に重要となる。
【0003】
それは、特に、OLED(有機発光ダイオード)の発光層やOSC(有機太陽電池)の吸収層、並びに多くの場合に荷電粒子を注入する役割を果たすこともできるドープされた電荷輸送層にも当てはまる。
【0004】
多くの場合、複層式構成部品の一つの層内における二つ又はそれ以上の有機材料の化学量論的組成が一定であることが望ましい。 他方では、一方の境界面には一つの材料を100%析出させ、他方の境界面には、例えば、10%だけ析出させるか、或いは全く析出させないケースがある。 この場合、最適な荷電粒子の注入(100%の割合)、優れた電荷輸送(10%)、或いは隣接する層の材料に対する化学的不適合性(0%)などの一連の理由が、一定の役割を果たす。
【0005】
最後から二番目のケースは、一般に、先ずは第一の層用の一つの材料だけを析出させ(100%の割合)、次に、同じ材料(10%の割合)と第二の層用の第二の材料(90%の割合)を組み合わせた共蒸着を行うことによって実現される。
【0006】
第一及び第二の層の間の化学量論的組成の急激な移行又は各層の様々な形態の形状が、場合によっては、構成部品の機能にとって望ましくないことがある。 そのため、そのような場合には、例えば、第一及び第二の層の化学量論的組成の比率の平均値に等しい化学量論的組成を有する第三の層が、第一と第二の層の間に析出される。
【0007】
クラスター型設備で構成部品を製造する場合、三つの層に対して、時間的に順番に作動、停止される蒸発源が二つだけ必要である。 それに対して、生産設備では、コスト上の理由から、より大きな処理量が必要であり、そのような処理量は、基本的にインライン式又はロール・ ツー・ ロール式設備によって実施することができる。 しかし、その結果、直前に述べた二つの形式の設備では、全体で五つの蒸発源(材料1用に三つ、材料2用に二つ)が必要であり、そのため、設備の複雑さとコストが上昇する。
【0008】
三層システムに渡って、化学量論的組成又は形状を階段状ではなく徐々に移行するような実現形態が、場合によっては望ましい。
【0009】
更に、インライン式又はロール・ ツー・ ロール式設備では、一つの層内の化学量論的組成を出来る限り一定に保持することも重要である。
【0010】
従来技術では、基板上に勾配層を生成するための様々な手段が知られている。
【0011】
例えば、特許文献1は、基板上に勾配層又は一連の層を製造する方法を開示している。 その場合、一つの成膜区画内に少なくとも二つの材料を析出することが、それぞれ一つのターゲット粒子を搭載した二つのマグネトロンカソードを用いたスパッタリングによって行われる。 この場合、第一のターゲット粒子から第二のターゲット粒子への移行領域に混合層が生じる。 更に、基板に対するターゲット粒子の遮蔽を互いに独立して可能にするバッフルが設けられている。
【0012】
特許文献2は、同様の形態を開示しており、遮蔽板を用いて二つのターゲット粒子の移行領域を実現することが可能な二つのマグネトロンカソードが同じく配置されている。 そうすることによって、一定の混合層を析出することができる。
【0013】
有利には、有機材料の勾配層を生成するためにスパッタリング設備を使用することの欠点は、有機材料がスパッタリングプロセスによって大部分破壊されてしまうということであり、そのため、スパッタリングは、有機材料の析出方法として適さない。
【0014】
従って、有機材料に関して、蒸発は坩堝内で行われる。 インライン式又はロール・ ツー・ ロール式設備の従来技術で公知の典型的な蒸発源はチューブであり、その中で、坩堝から流出する蒸気を均一に分散させている。 そのチューブは、基板の進行方向と交差するように一列に配置された多くのノズルを有する。 二つの(有機)材料を共蒸着する場合、通常各材料用の二つのチューブが、ノズルを通して基板上に蒸気を放出する。
【0015】
特許文献3は、変換層の製造方法を開示しており、その場合、有機変換材料を無機マトリックスに混合させている。 それは、両方の材料を交差して蒸着させることによって実現されている。 両方の材料は、異なる二つの蒸発機器内で加熱されて蒸発し、その結果生じる蒸気ビームは、交差しており、共通の蒸着ゾーンを形成している。 連続的な蒸着のために、両方の蒸発機器は、互いに固定した方向に向けられている。
【0016】
そのようにして実現される混合層は、同じ構造形態を有し、勾配の形態を決して柔軟に変更することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ特許第102004014323号明細書
【特許文献2】米国特許第6,488,824号明細書
【特許文献3】ドイツ特許公開第10312646号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以上のことから、本発明の課題は、最小限の数の蒸発源を用いて、層内の化学量論的組成を徐々に変化させるとともに、蒸気を最大限に利用することによって、層内の化学量論的組成を出来る限り一定にすることができる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。 有利な実施構成は、従属請求項に記載されている。
【0020】
同様に、本課題は、請求項11に記載の装置によって解決される。 有利な実施構成は、従属請求項に記載されている。
【0021】
本発明では、連続真空成膜設備内で基板に成膜するために、それぞれ一つの蒸発器チューブを有する少なくとも二つの蒸発機器が配備されている。 第一の蒸発機器では、第一の材料を加熱して蒸発させる一方、第二の蒸発機器では、第二の材料を加熱して蒸発させる。 次に、これらの蒸発させた材料は、蒸発器チューブを介して、それぞれ一つの蒸気入射方向を向いた形で真空成膜設備内に導入され、その場合、蒸発させた材料は、蒸発器チューブの開口部の幾何学的な形状に対応した蒸気ローブを形成する。 この場合、基板に対する蒸発器チューブの角度は調整可能であり、そのため、基板に対する蒸気ローブの位置決めは、位置を変更可能な形で行われる。 そのようにして、これらの材料が蒸気ローブの重なり合う領域で混合し、その結果、蒸発した両方の材料の混合層が析出するように、基板上での蒸気ローブの互いの位置を調整することができる。 二つの(有機)材料の共蒸着では、通常各材料用の二つのチューブが、ノズルを通して基板上に蒸気を放出する。
【0022】
本発明の実施構成では、基板に対する蒸気入射方向の角度xは、+90°<x<−90°の範囲で調整され、その場合、個々の蒸発器チューブの角度は、互いに独立して調整される。
【0023】
本発明の別の実施構成では、基板に対する蒸発器チューブの間隔を調整する。 そうすることによって、蒸気ローブの幅を調整して、混合層内において、蒸発した材料の所望の勾配を生成することができる。
【0024】
本発明の別の実施構成では、成膜プロセス中に蒸発器チューブの間隔を互いに可変に調整する。 それは、プロセスパラメータが既知である時に、蒸発器チューブの間隔の変更によって生じる勾配の形態の変化を利用して、混合層を最適化することができる場合、特に有利である。
【0025】
本発明の別の実施構成では、蒸発器チューブの間隔を互いに調整する。 そうすることによって、基板上での蒸気ローブの位置を変更する。 更に、そうすることによって、両方の蒸気ローブの重なり合う領域の割合も調整することができ、それによって、重なり合う領域内で混合する蒸発した両方の材料の割合を変化させ、そうすることによって、混合層内の勾配の形態を変化させる。
【0026】
本発明の別の実施構成では、成膜プロセス中に、蒸発器チューブの間隔を可変に調整する。 そうすることによって、プロセスの経過に応じて、重なり合う領域での蒸発した材料の割合を変更して、勾配の形態の最適化を行うことができる。
【0027】
本発明の別の実施構成では、混合層に第一と第二の材料の勾配を生成し、その場合、混合層内での勾配の形態は、基板に対する蒸発器チューブの間隔、蒸発器チューブの互いの間隔、並びに基板に対する蒸発器チューブの垂直二等分線の角度を変更することによって調整することが可能である。
【0028】
本発明の別の実施構成では、真空成膜設備内に入射する蒸気は、蒸気ローブの形状をしており、その場合、蒸発した材料の蒸気ローブの形状は、蒸発器チューブの開口部の前に配置されたバッフルによって調整される。 開口部の前のバッフルによって、蒸気ローブの形状を変更することができる。 そのため、バッフルの形状に対応して、蒸気ローブの形状を所望の勾配の形態に適合させる手段が得られる。
【0029】
本発明の別の実施構成では、蒸発すべき材料として、有機材料が使用される。 二つの有機材料を使用することによって、例えば、有機太陽電池やOLEDなどの有機光活性部品で使用するための有機混合層を生成することができる。 特に、ドープ層を生成することができ、その場合、蒸発すべき二つの有機材料の一方はドーパントを形成し、他方の材料は、混合層のアクセプタを形成する。
【0030】
実施構成の改善形態では、混合層内に本発明によるドーパントの勾配を生成することができ、その場合、勾配の形態は、蒸気入射方向の角度、基板に対する蒸発器チューブの間隔、並びに蒸発器チューブの互いの間隔を調整することによって適合させることができる。
【0031】
本発明の別の実施構成では、有利には、所謂小分子を蒸発させる。 小分子とは、本発明の意味において、標準圧(周囲環境の空気圧)下及び室温において固体相で存在する100〜2000の単分散モル量の非ポリマー有機分子であると解釈する。 特に、これらの小分子は、光活性とすることもでき、その場合、光活性とは、分子が光の入射下で分子の電荷状態を変えることであると解釈する。
【0032】
本発明の別の実施構成では、使用する有機材料は、少なくとも部分的にポリマーである。
【0033】
本発明の実施構成では、本発明による連続真空成膜設備内で基板に成膜するための装置は、それぞれ一つの蒸発器チューブを有する、析出させる材料を加熱して蒸発させるための少なくとも二つの蒸発機器を有し、その場合、蒸発した材料を真空成膜設備内に導入するための蒸発器チューブには、開口部が設けられる。 この場合、基板に対する蒸発器チューブの間隔及び基板に対する蒸気入射方向の角度は、互いに独立して調整可能な形で実現される。
【0034】
本発明の別の実施構成では、基板に対する蒸気入射方向の角度xは、+90°<x<−90°の範囲で調整可能な形で実現される。 そうすることによって、所望の勾配形態の要件に応じて、蒸気入射方向の角度を調整することができる。
【0035】
本発明の別の実施構成では、蒸発器チューブの開口部は、ノズルとして構成される。
【0036】
本発明の別の実施構成では、蒸発器チューブの開口部は、スリットとして構成される。
【0037】
本発明の別の実施構成では、基板の方向に対して蒸発器チューブの開口部の前に、バッフルが配置される。 これらのバッフルによって、蒸気ローブの形状を所望の勾配形態の要件に適合する形状、例えば、蒸気ローブを収束する形状にすることが可能となる。
【0038】
本発明の別の実施構成では、バッフルは、基板の前に配置される。 そうすることによって、蒸発すべき材料による成膜を基板の一部だけに施して、それによって、蒸発した材料が、基板の蒸着すべき領域の外側に望ましくない形で析出することが回避される。
【0039】
本発明の別の実施構成では、バッフルは、加熱可能な形で構成される。 それは、蒸発した材料がバッフルに析出することを防止するのに特に有利である。
【0040】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下における実施例の詳細な説明及び添付図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】連続成膜設備又はロール・ ツー・ ロール式設備内で共蒸着させる場合の基本構成の模式図
【図2】蒸気フローの放出強度が同じであり、幾何学的な形状が対称的であり、ノズル用バッフルと基板用バッフルの中央に設けられた大きな開口部が無い場合の、蒸発器チューブの標準設定における層厚に対する化学量論的組成の差をモンテカルロ法によりシミュレーションしたグラフ
【図3】ノズルと基板の角度及び蒸発器チューブ間の間隔を変更した場合の、層厚に対する化学量論的組成の差をモンテカルロ法によりシミュレーションしたグラフ
【図4】一方の境界面での割合を100%とし、他方の境界面での割合を0%とした場合の、材料の移行形態をモンテカルロ法によりシミュレーションしたグラフ
【図5】層厚全体に渡って両方の材料の割合を出来る限り同じにした場合の、境界面間の材料の移行形態をモンテカルロ法によりシミュレーションしたグラフ
【図6】一方の境界面での割合を100%とし、他方の境界面での割合を100%とし、第二の材料が専ら層の中央に存在する場合の、材料の移行形態をモンテカルロ法によりシミュレーションしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、連続成膜設備内で共蒸着させる場合の基本的な構成を図示している。 第一の有機材料は、第一の蒸発機器で加熱して蒸発される。 その蒸気は、第一の蒸発機器の蒸発器チューブ1を介して連続成膜設備内に導入される。 この場合、蒸気は、蒸気入射方向4に入射する。 蒸気入射方向4は、スリット又はノズルとして形成することができる蒸発器チューブの開口部の幾何学的な形状と、基板3に対する開口部の角度とに依存する。 第二の蒸発機器では、第二の材料が、加熱して蒸発され、その蒸気は、第二の蒸発器チューブ2を介して連続成膜設備内に導入される。 第二の蒸発機器で設定される蒸気入射方向5は、第一の蒸気入射方向4と同様に、蒸発器チューブ2の開口部の幾何学的な形状と、開口部の角度とに依存する。 蒸発器チューブ1,2は、図面の平面に対して垂直に延びており、基板3の幅よりも幾分大きな長さを有する。
【0043】
この場合、第一と第二の蒸発機器から連続成膜設備内に入射する蒸気の設定する角度6,7は、勾配の形態にとって重要である。 両方の角度6,7の調整に応じて、異なる移行領域13が得られ、その領域では、第一と第二の材料の混合が起こり、その結果、基板3上には、勾配形態を持つ混合層が析出される。 両方の角度6,7は、互いに独立して調整可能である。
【0044】
第一と第二の蒸発器チューブ1,2の間の間隔14を変更することによって、移行領域13の変更が行われ、その結果として勾配の形態の変更が行われる。
【0045】
別の変更手段は、基板3からの両方の蒸発器チューブ1,2の間隔を変更することによって得られる。 その場合、基板3に対する第一の蒸発器チューブ1の間隔8と第二の蒸発器チューブ2の間隔9は、互いに独立して調整することができる。 そのような変更手段でも、勾配形態の変更が達成される。
【0046】
基板3に対する蒸発器チューブ1,2の開口部の角度6,7と、第一と第二の蒸発器チューブ1,2の間の間隔14と、基板に対する蒸発器チューブ1,2の間隔8,9とを適切に選択することによって、所定の化学量論的組成に調整することができる。
【0047】
更に、蒸発器チューブ1,2の直ぐ前に存在するバッフル11,12又は基板3の直ぐ前に存在するバッフル10によって、化学量論的組成を制御することができる。 しかし、当該のバッフル10,11,12は、常に材料の収量の低下と関連しており、最後の選択肢として、或いは微調整のためだけに考慮すべきである。 前述のバッフル11,12によって、蒸気ローブの集束を実現することができ、それによって、化学量論的組成の勾配の要件に適合させるための別の手段が得られる。
【0048】
冒頭に既述した通り、基板15の進行方向における基板用バッフル10の開口部の大きさ及び蒸発器チューブ1,2に対する前記バッフルの位置も、化学量論的組成に対して一定の役割を果たす。 同様のことが、蒸発器チューブ1,2の開口部の前に配置されたバッフル11,12にも当てはまり、それらのバッフルは、互いに独立して調整することができる。
【0049】
次の図2〜図6に図示されているグラフは、幾何学的な形状を考慮しつつモンテカルロ法によるシミュレーションを用いて得られた結果の例である。 全てのグラフにおいて、化学量論的組成の差DB=(N2−N1)/(N2+N1)であり、この場合、層厚を0〜1として、材料1の粒子数がN1であり、材料2の粒子数がN2である。
【0050】
図2には、蒸気フローの放出強度が同じであり、幾何学的な形状が対称的であり(A1=A2,a=b)、蒸発器チューブ1,2の前のバッフル11,12と基板用バッフルの中央に設けられた大きな開口部が無い場合の蒸発器チューブ1,2の標準設定での結果が図示されている。 この標準設定は、両方の蒸発器チューブ1,2の開口部の垂直二等分線が基板3上の一つの線で交差することを特徴とする。 この場合、放出強度が同じとは、両方の材料が同じ量で放出され、理想的な場合、基板3に析出される材料の比率が一定であることを意味する。 蒸発器チューブ1,2の開口部によって形成される蒸気ローブ、実際に生じている幾何学的な形状、並びに蒸発器チューブ1,2に対する基板3の進行運動のために、析出される材料の化学量論的組成は著しく変動する。 図示した例では、DBの変動は、±20%である。
【0051】
DBの公差を低下したい場合、即ち、材料の化学量論的組成を出来る限り一定に保持しようとする場合、それは、図3から理解できる通り、蒸発器チューブ1,2の間の間隔14を小さくすること、並びに蒸発器チューブ1,2の傾斜角6,7を変更することによって(同じ傾斜角で)実現することができる。 その場合、DBの変化は、±10%に、即ち、標準パラメータと比較して半分に低下する。
【0052】
同様のことは、1と異なる材料の比率を実現するために選択された異なる放出強度に対しても当てはまる。
【0053】
一つの材料の割合を一方の境界面で100%とし、他方の境界面で0%にするとともに、それらの境界面の間で連続的かつ直線的に低下させることを目標とする場合、それは、又もや幾何学的な形状のパラメータ、即ち、傾斜角6と7及び間隔8,9,14に関するパラメータを適切に選択することによって達成することができる。 これに関する一例が図4に図示されている。
【0054】
実際には、むしろ、前述した実施例と比較して、一方の境界面での100%から他方の境界面での最小限10%までの低下が必要である。 それは、片側の基板用バッフル10によって、例えば、図1の右のバッフルを左にスライドさせることによって比較的簡単に達成することができ、その結果、図4に図示された曲線の右端が幾分切れている、即ち、DBが、−1.0に達することはない。 それに代わって、間隔9を拡大し、そうすることによって、バッフル10のスライドと比較して、材料の収量を改善することができる。
【0055】
図4に代わって、割合を一方の境界面で100%に、他方の境界面で0%に調整するとともに、中間領域での材料の割合を出来る限り一定に、この場合、同じに調整することが可能である(図5参照)。
【0056】
別の重要な例が、図6に図示されている。 その場合、一方の材料、例えば、光吸収分子又は発光分子は、専ら層の中央に存在する。 第二の材料、例えば、電荷輸送分子のみが、境界面において、隣接した層と接触する。 そのような層構造は、光吸収分子又は発光分子と隣接する層の分子との直接接触で生じる意図しない荷電粒子の再結合を防止することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 第一の蒸発機器の蒸発器チューブ
2 第二の蒸発機器の蒸発器チューブ
3 基板
4 第一の蒸発機器の蒸気入射方向
5 第二の蒸発機器の蒸気入射方向
6 第一の蒸発機器の蒸気入射方向の角度
7 第二の蒸発機器の蒸気入射方向の角度
8 基板に対する第一の蒸発器チューブの間隔
9 基板に対する第二の蒸発器チューブの間隔
10 基板の前のバッフル
11 第一の蒸発器チューブの前のバッフル
12 第二の蒸発器チューブの前のバッフル
13 両方の材料の移行領域
14 第一と第二の蒸発器チューブの間の間隔
15 基板の進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ一つの蒸発器チューブを有する少なくとも二つの蒸発機器を備えた、連続真空成膜設備内で基板に成膜する方法において、
第一の蒸発機器で第一の材料を加熱して蒸発させ、
第二の蒸発機器で第二の材料を加熱して蒸発させ、
これらの蒸発させた材料を、蒸発器チューブ(1,2)を介して、それぞれ一つの蒸気入射方向(4,5)に向けて真空成膜設備内に導入し、
基板(3)に対する蒸気入射方向(4,5)の角度(6,7)が調整可能である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
+90°<x<−90°の範囲で、基板(3)に対する蒸気入射方向(6,7)の角度xを調整し、その場合、個々の蒸発器チューブ(1,2)の角度(6,7)を互いに独立して調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板(3)に対する蒸発器チューブ(1,2)の間隔(8,9)を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
成膜プロセス中に、基板(3)に対する蒸発器チューブ(1,2)の間隔(8,9)を可変に調整することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
蒸発器チューブ(1,2)の互いの間隔(14)を調整することを特徴とする請求項1から4のまでのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
成膜プロセス中に、蒸発器チューブ(1,2)の互いの間隔(14)を可変に調整することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
混合層において、第一と第二の材料の勾配を生成し、その混合層内の勾配の形態を、基板(3)に対する蒸発器チューブ(1,2)の間隔(8,9)、蒸発器チューブ(1,2)の互いの間隔(14)、並びに基板(3)に対する蒸気入射方向(4,5)の角度(6,7)によって調整することを特徴とする請求項2から6までのいずれか一つにに記載の方法。
【請求項8】
真空成膜設備内に導入される蒸気が、蒸気ローブの形状を有し、蒸発器チューブ(1,2)の開口部の前に配置されたバッフル(11,12)によって、蒸発させた材料の蒸気ローブの形状を調整することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つにに記載の方法。
【請求項9】
蒸発すべき材料として、有機材料を使用することを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つにに記載の方法。
【請求項10】
蒸発すべき第一の材料と蒸発すべき第二の材料が異なることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つにに記載の方法。
【請求項11】
連続真空成膜設備内で基板に成膜するための装置であって、
それぞれ一つの蒸発器チューブ(1,2)を有する、析出すべき材料を加熱して蒸発させるための少なくとも二つの蒸発機器を備えており、
蒸発させた材料を真空成膜設備内に導入するための蒸発器チューブ(1,2)に、開口部が配置されており、
基板(3)に対する蒸発器チューブ(1,2)の間隔(8,9)が、調整可能な形に構成されており、
基板(3)に対する蒸気入射方向(4,5)の角度(6,7)が、互いに独立して調整可能な形に構成されている、
装置。
【請求項12】
基板(3)に対する蒸気入射方向(4,5)の角度x(6,7)が、+90°<x<−90°の範囲で調整可能な形に構成されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
蒸発器チューブ(1,2)の開口部が、ノズルとして形成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
蒸発器チューブ(1,2)の開口部が、スリットとして形成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項15】
基板(3)の方向に対して、蒸発器チューブ(1,2)の開口部の前に、バッフル(11,12)が配置されていることを特徴とする請求項11から14までのいずれか一つにに記載の装置。
【請求項16】
バッフル(10)が、基板(3)の前に配置されていることを特徴とする請求項11から15までのいずれか一つにに記載の装置。
【請求項17】
バッフル(10,11,12)が、加熱可能な形に構成されていることを特徴とする請求項15又は16に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−47051(P2011−47051A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186889(P2010−186889)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(595160477)フオン・アルデンネ・アンラーゲンテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (16)
【Fターム(参考)】