説明

化粧料、化粧料用ナノ粒子及び化粧料用粉体

【課題】優れた皮膚バリア機能や毛髪保護効果を発現し、各種化粧料材料への配合が容易な化粧料用ナノ粒子及び化粧料用粉体を提供する。
【解決手段】化粧料材料と、式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体を含む単量体原料を重合したGU重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な感触を有しながら、皮膚や毛髪に対するバリア効果に優れた化粧料、該化粧料等に用いることができる化粧料用ナノ粒子及び化粧料用粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季の乾燥や、過剰な皮膚洗浄、加齢等により皮膚バリア機能が低下し、肌荒れが発生する。この状態では、皮膚において、皮脂、細胞間脂質、天然保湿因子の減少が観測される。そこで、従来、高い皮膚バリア機能を保つ化粧料や医薬品等の外用剤が開発されており、毛髪の保護にも応用されてきた。
これら化粧料用の外用剤の中でも、細胞間脂質のセラミドがバリア機能に果たす役割が確認され、幅広く化粧料等の皮膚外用剤に配合することが検討されてきた。しかし、セラミド類は、一般に融点が高い、結晶性が高い、他の化合物との相溶性が低い等の特徴から外用剤への配合の方法に大きな制約があり、セラミドの持つ機能を十分に発現する外用剤を得ることは困難である。
【0003】
そこで、特許文献1〜4において、セラミド類を安定に配合する方法が検討されている。しかしながら、これらの方法においても、依然として配合する処方が限定される問題が残り、高濃度で配合でき、良好な感触で、セラミドの機能を十分に引き出し高い皮膚バリア機能や毛髪保護効果を持つ化粧料を得るには至っていない。
また、特許文献5〜7等において、セラミドに類似した新しい化合物も提案されているが、その効果も十分であるとは言えない。
この為、更に新たなセラミド類似物質を用いた化粧料の開発が強く求められている。
【特許文献1】特開2000−239151号公報
【特許文献2】特開2001−122724号公報
【特許文献3】特開2003−55129号公報
【特許文献4】特開2003−300842号公報
【特許文献5】特開平9−241144号公報
【特許文献6】特開平10−226674号公報
【特許文献7】特開2001−316384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、本来セラミドの持つ細胞間脂質としての皮膚バリア機能や毛髪保護効果を十分に発現させることができ、良好な感触が得られる化粧料を提供することにある。
本発明の別の課題は、前記化粧料等に使用可能で、優れた皮膚バリア機能や毛髪保護効果を発現し、更には、各種化粧料材料への配合が容易なセラミド類似の重合体を含む化粧料用ナノ粒子及び化粧料用粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、分子構造中にグリセロール基とウレタン結合を両方あわせ持つ、セラミドの化学構造に類似した単量体を含む単量体原料を重合した重合体が所望の効果を発揮し、他の化粧料材料と容易に配合し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、化粧料材料と、式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体を含む単量体原料を重合したGU重合体とを含む化粧料が提供される。
【化3】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は−(CH2)n−を示す。ここで、nは1〜4の整数である。)
また本発明によれば、前記式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体を含む単量体原料を重合したGU重合体を含む平均粒子径5〜500nmの化粧料用ナノ粒子が提供される。
更に本発明によれば、化粧料材料粉体を、前記式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体を含む単量体原料を重合したGU重合体により表面処理した化粧料用粉体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化粧料は、前記特定のGU重合体を含むので、本来セラミドの持つ細胞間脂質としての皮膚バリア機能や毛髪保護効果を十分に発現させることができ、良好な感触が得られる。従って、本発明の化粧料は、優れたバリア機能により、刺激物質から皮膚を保護したり、毛髪化粧料や洗浄料とした場合には、刺激物質より毛髪を保護することができる。本発明の化粧料用ナノ粒子及び化粧料用粉体は、前記セラミド類似の特定のGU重合体を含むので、優れた皮膚バリア機能や毛髪保護効果を発現し、更には、各種化粧料材料への配合が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の化粧料は、前記式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体(以下、GU単量体と略す)を含む単量体原料を重合したGU重合体を含む。
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、安定性の高さの観点からはメチル基が好ましい。R2は−(CH2)n−を示す。ここで、nは1〜4の整数である。R2は具体的に−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−のいずれかであり、入手のし易さから−CH2CH2−が好ましい。
GU単量体としては、例えば、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、グリセロール−1−メタクリロイルオキシプロピルウレタン等が挙げられ、合成のし易さからグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンが好ましく挙げられる。
【0009】
GU単量体を調製するには、例えば、式(3)で表される環状ケタールと式(4)で表される(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアナートとをウレタン化反応させて得られる化合物を、ウレタン化反応用触媒の存在下に水含有溶媒中で加水開環反応させる方法等により得ることができる。
ウレタン化反応の反応条件は、通常0〜100℃、6〜24時間の条件で行うことができる。加水開環反応は、有機酸等の触媒を用い、水含有溶媒中、通常0〜50℃で、1〜6時間程度の反応条件で行うことができる。
【0010】
【化4】

式(3)中、R3及びR4は同一であっても異なっても良く、水素原子又はメチル基又はエチル基を表す。また式(4)中、R1及びR2は、前記式(1)と同一の基を示し、好ましい具体例も同様なものが挙げられる。
【0011】
GU重合体を製造するための単量体原料は、GU単量体単独でも、GU単量体と、該GU単量体と共重合可能な他の単量体との混合物であっても良い。他の単量体としては、GU単量体と共重合可能であれば、公知の重合性単量体を幅広く利用可能であるが、化粧料中でナノ粒子を形成し易い等の特徴を持たせる点では、式(2)で表される長鎖アルキル基含有単量体(以下、LA単量体という)等が好ましく挙げられる。
【0012】
【化5】

式中、L1は−C64−、−C610−、−(C=O)−O−、−O−、−(C=O)NH−、−O−(C=O)−又は−O−(C=O)−O−を示し、L2は、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコサニル基の直鎖又は分岐アルキル基等の炭素数10〜22のアルキル基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。
【0013】
LA単量体としては、例えば、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコサニル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;デカン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、ヘキサデカン酸ビニル、オクタデカン酸ビニル、ドコサン酸ビニル等のビニルエステル系単量体等が挙られる。中でもオクタデシルメタクリレートが、例えば、GU重合体を化粧料中でナノスフェアー等のナノ粒子として存在させ易い等の安定性の面で最も好ましく挙げられる。また、前記単量体原料においてLA単量体は、1種でも2種以上の混合物であっても良い。
【0014】
前記LA単量体以外の他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸、アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
前記単量体原料において、GU単量体の含有割合は20〜100モル%、好ましくは30〜90モル%である。前記LA単量体等の他の単量体を含有する場合の該他の単量体の含有割合は10〜80モル%、好ましくは20〜70モル%である。単量体原料において、GU単量体の含有割合が20モル%未満では、所望の皮膚バリア機能や毛髪保護効果等が得られ難い恐れがある。一方、他の単量体を用いる場合の他の単量体の含有割合が10モル%未満では、他の単量体による効果が得られない恐れがある。
GU重合体を、後述するナノ粒子とする場合の単量体原料は、GU単量体とLA単量体とを含むことが好ましい。該ナノ粒子とする際の単量体原料中のGU単量体とLA単量体との含有割合は、GU単量体20〜90モル%、特に15〜60モル%及びLA単量体10〜80モル%、特に40〜85モル%の割合が好ましい。GU単量体の割合が20モル%未満であると得られる重合体をナノスフェア分散液等のナノ粒子分散液とした場合、安定性を持たせることが困難となる恐れがあり、90モル%を超えるとナノスフェアとしての形態を形成することが難しくなる恐れがある。
【0016】
GU重合体の分子量は、平均重量分子量で、5000〜5000000の範囲が好ましく、更に好ましくは100000〜2000000の範囲である。GU重合体の平均重量分子量が5000未満では、皮膚バリア機能や毛髪保護効果が十分発揮できない恐れがあり、5000000より大きいと化粧料への配合が困難となる恐れがある。
【0017】
GU重合体を製造するには、GU単量体を含む前記単量体原料を、そのままバルク状態で重合してもよく、また溶液を加えて溶液重合を行うこともでき、分散状態での分散重合を行うこともできる。
溶液重合や分散重合で使用する溶媒としては、いずれの溶媒も利用可能であるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、酢酸エチル、又は水とこれら有機溶媒の少なくとも1種との混合物、他の各種溶媒が挙げられる。
【0018】
GU単量体を含む単量体原料の重合は、ラジカル重合により行うことができる。
ラジカル重合は、ラジカル開始剤を用いて行うことができる。該ラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンソイル、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、コハク酸パーオキサイド等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物が挙げられるが、重合特性や入手性、精製での易除去性等の観点から、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルが好ましく挙げられる。
ラジカル開始剤の使用量は、単量体原料100質量部に対して通常0.1〜5.0質量部が好ましい。重合温度及び重合時間は、ラジカル開始剤の種類や他の単量体の有無や種類等によって適宜選択して決定することができる。例えば、GU単量体を、単独でラジカル重合する場合には、ラジカル開始剤として2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチルを用いて、重合温度は好ましくは50〜70℃、重合時間8〜48時間程度が適当である。
【0019】
ラジカル重合して得られるGU重合体は、再沈殿法、膜分離法、溶媒抽出法、超臨界抽出法、抽出蒸留法、凍結乾燥、噴霧乾燥等の公知の方法により精製・乾燥することができ、残留の単量体や有機溶媒等の不純物量を5000ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは500ppm以下である。
【0020】
GU重合体は、ナノ粒子とすることにより、本発明の化粧料により優れた、エモリエント効果付与や、親油性の有用成分の内包等が可能となる。このようなGU重合体をナノ粒子とした化粧料用ナノ粒子は、本発明の化粧料において、特に皮膚用化粧品や毛髪用外用剤に有用である。
GU重合体をナノ粒子とするには、前述のとおり、例えば、GU単量体とLA単量体とを含む単量体原料を共重合し、後述の条件により調製することができる。尚、GU単量体とLA単量体とを含む単量体原料を共重合した重合体を、以下、GU-LA重合体と略す。
【0021】
GU重合体をナノ粒子とした場合の平均粒子径は、化粧料中において通常5〜500nm、好ましくは10〜200nmである。ナノ粒子の平均粒子径が500nmを超えると凝集し易くなり分散液の安定性が低下する恐れがあり、また、化粧料に使用した場合にざらつき感が感じられ易くなる恐れがある。尚、ナノ粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を測定原理とする市販の測定装置を用いて測定することができる。
【0022】
GU重合体をナノ粒子とするには、例えば、公知の真空乳化や高圧乳化、転相乳化、ゲル乳化、溶融乳化、多相乳化、強制機械乳化等の乳化方法でも得られる場合もあるが、アルコール又はアルコール/水等の高極性溶媒中に、上記GU-LA重合体等のGU重合体を溶解させ、その液を攪拌しながら水中に滴下する方法により、自発的にナノ粒子を得ることもできる。この方法において、GU重合体のアルコール又はアルコール/水の溶液に親油性成分を混合しておくと、通常水難溶性である油溶性成分も安定にナノ粒子に内包され、水へ分散させることができる。このような内包により、被内包物の使用感や安定性を改善することもできる。
【0023】
前記ナノ粒子を得る際に使用するアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等が好ましく挙げられるが、中でもエタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、グリセリン、ブタンジオールが最も好ましく挙げられ、これらの2種以上を用いても良い。
【0024】
前記ナノ粒子に内包させることができる成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンE、ポリフェノール、アスタキサンチン、カテキン等の抗酸化剤類;ビタミンC誘導体、コウジ酸、プラセンタエキス、アルブチン、エラグ酸、ルシノール、リノール酸等の美白剤類;スクワラン、オリーブオイル等の油脂類;キレート剤、N−メチル−L−セリン、ウルソール酸等の老化防止剤類;パラアミノ安息香酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、サリチル酸誘導体等の紫外線吸収剤類;酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線散乱剤類;カフェイン、有機ヨード等の収斂剤類;各種保湿剤類、各種香料類、各種抗菌剤、各種殺菌剤等が挙げられる。
【0025】
GU重合体は、化粧料材料粉体を表面処理して化粧料用粉体とすることもできる。
化粧料材料粉体は、化粧料材料であって粉体を形成しうるものであれば特に限定されず、
例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、雲母、セリサイト、ベントナイト、チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、ゼオライト等の無機粉体、更にはセルロース粉末、シルク粉末、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、ポリプロピレン粉末等のほか、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン−スチレン樹脂、セルロース樹脂等からなる有機粉体を好ましく挙げることができる。
化粧料材料粉体の粒径は、化粧料の種類等に応じて適宜選択できるが、通常10nm〜100μm程度が好ましい。
【0026】
前記GU重合体による化粧料材料粉体の表面処理は、例えば、GU重合体を適当な溶媒に溶解し、化粧料材料粉体を浸漬した後、該溶液から溶媒を除去し、乾燥する等の方法により行うことができる。
前記GU重合体を溶解した溶液中におけるGU重合体の濃度は特に限定されないが、0.01〜10質量%程度とすることが望ましい。GU重合体の濃度が0.01質量%未満では、粉体表面に均一に被覆することが困難になる恐れがある。また、GU重合体の濃度が10質量%より高い場合は、粉体の凝集が生じる恐れがある。
【0027】
本発明の化粧料は、前記GU重合体とともに化粧料材料を含む。
化粧料材料としては、本発明の化粧料の種類に応じて公知の化粧料材料等から適宜選択することができる。またGU重合体を含む化粧料材料として、前記化粧料材料粉体の表面をGU重合体で表面処理した化粧料用粉体を用いることもできる。このような化粧料用粉体は、化粧料に含まれる化粧料材料の少なくとも一部が粉体であって、該化粧料材料粉体の全部又は一部が前記GU重合体により表面処理されている粉体である。
本発明の化粧料は、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液等の基礎化粧料;ファンデーション、アイカラー、チークカラー、リップカラー等のメイクアップ化粧料;ヘアトニック、ヘアクリーム、リンス等の毛髪用化粧料;シャンプー、石鹸等の洗浄料;ネイルカラー等の美爪化粧料、バスバブル等の浴用剤等とすることができる。
【0028】
前記化粧料材料としては、例えば、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の水酸含有低分子化合物;コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性ポリマー;アニオン性、カチオン性、両性イオン性等の界面活性剤;ホスファチジルコリン、フォスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質、シリコーン油、油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸エステル、アミノ酸誘導体類、フッ素系油剤類、高重合度のジメチルポリシロキサン、アルコキシ変性シリコーン、炭化水素ワックス、ラノリン誘導体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0029】
本発明の化粧料において、GU重合体と化粧料材料との含有割合は、所望の効果を得るために化粧料の種類等に応じて適宜選択でき、通常GU重合体が0.001〜50質量%、特に0.01〜30質量%となるように決定することが好ましい。
本発明の化粧料の製造は、化粧料の種類や化粧料材料の種類等に応じて公知の方法に準じて適宜行うことができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
合成例1:グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンの合成
4口フラスコに、合成した(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール330g及びピリジン50mlを加え、滴下ロート及びカルシウム管を装着した。メタクリロイルオキシエチルイソシアナート368g(昭和電工株式会社製)を秤取って、室温、遮光下においてゆっくりと滴下した。50℃に設定したオイルバス中で7時間反応させた。反応終了後、ピリジン及び過剰の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールを減圧留去することにより、収量621g、収率91%で、白色固体の(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。
得られた(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール−3−メタクリロイルオキシエチルウレタン500gに、メタノール1.95L及び4Nの塩酸50mlを加え、室温下30分間攪拌反応させたところ、懸濁液が透明溶液となった。更に60分間攪拌反応させた後、減圧乾燥により溶媒を留去し、無色粘性液体のグリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン(以下、GMUと略す)を得た。収量は412g、収率は96%であった。
【0031】
合成例2:GMUホモポリマーの合成
GMU20.0gをエタノール140gに溶解して、4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹き込んだ後に、60℃で2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.12gを加えて8時間重合反応させた。重合液を3Lのジエチルエーテル中にかき混ぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末15.1gを得た。この粉末ポリマーを以下(P−1)とする。
尚、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析した。分析条件はメタノールを溶離液とし、ポリエチレングリコールを標準物質とし、屈折率により検出した。分析結果を表1に示す。
【0032】
合成例3〜5:GMU共重合体の合成
共重合モノマーとして、GMU、ブチルメタクリレート(以下、BMAと略す)、ステアリルメタクリレート(以下、SMAと略す)を使用し、表1のモノマー組成にしたがって仕込み、合成例2と同様に溶液重合を行った。得られた各GMU重合体を(P−2)〜(P−4)とし、分子量を合成例2と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
製造例1:ナノスフェアの製造
合成例5で合成した(P−4)の粉末2.0gに対し、1,3−ブタンジオール/グリセリン(質量比5/5)混合液18.0gを加え、70℃の水浴中で激しく撹拌し、白濁した粘性液を得た。この粘性液に70℃に加温した60gの水を撹拌しながら徐々に加え、青白色の散乱のある、濃度2.5質量%のナノスフェア分散液(以下、(N−1)と略す)を得た。この液の一部を採取し、水で希釈して粒子径を、登録商標NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて動的光散乱法により測定した結果、25nmであった。また、(N−1)製造4週間後の粒子径を測定したところ、26nmと一定であり、凝集も無く安定な分散液であった。
【0035】
実施例1−1〜1−5、比較例1−1及び1−2(化粧水)
表2の処方に従い、イの各成分を室温下にて溶解した。一方、表2に示すロの各成分を60℃にて均一に溶解し、これをかき混ぜながらイの成分を加え、ローション状化粧水を調製した。得られた化粧水に関して、下記官能試験及び安定性テストを実施した。結果を表2に示す。
【0036】
<官能試験>
21〜55歳の女性10人を対象として、化粧水を前腕内側部に適量塗布し、のび、滑り、肌への馴染みについて、下記基準により5段階評価した。更にそれを平均して判定した。
評価点;5点:非常に良好、4点:良好、3点:普通、2点:やや不良、1点:不良。
判定記号;平均点4.0点以上:◎、平均点3.0点以上4.0点未満:○、平均点2.0点以上3.0点未満:△、平均点1.0点以上2.0点未満:×。
<安定性テスト>
化粧水50mlをサンプルボトルにとり蓋をして、調製直後から40℃の恒温槽に静置した。1ヶ月後にボトルを取り出し、目視により溶液状態を確認し、下記基準により3段階評価した。
評価記号;○:不溶物なし、△:僅かに不溶物あり、×:明らかに不溶物あり。
<刺激抑制効果測定試験>
ICRマウス1群10匹(雄性、体重20〜30g)を用いて、刺激防御作用の検討を行った。即ち、背部を剃毛し化粧水0.05mlを塗布し、更にラウリル硫酸ナトリウムの1質量%水溶液0.05mlを24時間クローズドパッチした。この操作を4回繰り返し、最後のパッチ除去後72時間に皮膚の鱗屑、紅斑、コンダクタンスについて測定した。鱗屑と紅斑は非常に強いを2点、明らかを1点、微弱を0.5点として評点をつけ、平均を結果とした。コンダクタンス(μO-1)はコルネオメーターによって測定した。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例2−1〜2−5、比較例2−1及び2−2(乳液)
表3の処方に従い、イの各成分を75℃にて均一に溶解した。またロの各成分を同様に75℃にて均一に溶解し、イを徐々に加えて予備乳化した。次に、75℃に温度を保ちながらホモミキサーにて均一に乳化した。これをかき混ぜながら冷却し、乳液を調製した。得られた乳液に関して、実施例1−1〜1−5と同様に官能試験及び安定性テストを実施した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
実施例3−1〜3−5、比較例3−1及び3−2(O/W型クリーム)
表4の処方に従い、イの各成分を75℃にて均一に溶解した。またロの各成分を同様に75℃にて均一に溶解し、イを徐々に加えて予備乳化した。次に、75℃に温度を保ちながらホモミキサーにて均一に乳化した。これをかき混ぜながら冷却し、O/W型クリームを調製した。得られたクリームに関して、実施例1−1〜1−5と同様に官能試験及び安定性テストを実施した。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
実施例4−1〜4−5、比較例4−1及び4−2(ヘアトニック)
表5の処方に従い、イの各成分を室温下にて溶解した。一方、ロの各成分は40℃にて溶解し、これを攪拌しながらイを加え、ローション状のヘアトニックを調製した。得られたヘアトニックに関して、25〜53歳の男女10人を対象として、使用時の指通り性、乾燥した時の櫛通り性、髪のまとまり感について官能試験を行った。また実施例1−1〜1−5と同様に安定性テストを実施した。官能試験の評価基準及び判定は、実施例1−1〜1−5と同様とした。結果を表5に示す。
【0043】
【表5】

【0044】
実施例5−1〜5−5、比較例5−1及び5−2(シャンプー)
表6の処方に従い、シャンプーを調製した。得られたシャンプーに関して、実施例4−1〜4−5と同様な官能試験及び実施例1−1〜1−5と同様な安定性テストを実施した。結果を表6に示す。
【0045】
【表6】

【0046】
実施例6−1〜6−5、比較例6−1及び6−2(リンス)
表7の処方に従い、リンスを調製した。得られたリンスに関して、実施例4−1〜4−5と同様な官能試験及び実施例1−1〜1−5と同様な安定性テストを実施した。結果を表7に示す。
【0047】
【表7】

【0048】
実施例7−1〜7−4、比較例7−1(ファンデーション)
酸化チタン30.0g、タルク14.3g、雲母チタン5.0g、セリサイト30.0g、微粒子酸化チタン5.0g、微粒子酸化亜鉛5.0g、黄酸化鉄8.0g、ベンガラ2.0g及び黒酸化鉄0.7gをへンシェルミキサーに秤り込み、高速で2分間混合し、調色粉体100gを得た。この調色粉体を(UP−1)とする。
一方、合成例2〜5で合成した(P−1)〜(P−4)が各々別に0.1質量%濃度になるように、エタノール10質量%/n−ヘキサン60質量%/アセトン30質量%の溶媒に溶解させて各ポリマー溶液を調製した。続いて、各ポリマー溶液100ml中に、上記調色粉体100gをそれぞれ別に浸漬し、攪拌した後、吸引ろ過し、粉体を取り出した。溶媒を80℃のオーブン内で攪拌しながら留去し、1mmヘリングボーン・スクリーン装着パルベライザーで粉砕した後、混合し、表面被覆処理した調色粉体100gをそれぞれ調製した。得られた各処理粉体を、用いた(P−1)〜(P−4)に従って、それぞれ(CP−1)〜(CP−4)とする。
次に、表8の処方に従い、イ及びハの各成分を別に混合し、それぞれを80℃で加熱溶解した。続いて、ロに示す(CP−1)〜(CP−4)又は(UP−1)をイに加えミキサーで混合した後、ハを徐々に加えて乳化し、攪拌しながら冷却して各ファンデーション100gを調製した。
得られたファンデーションに関して、21〜55歳の女性10人を対象として、顔に塗布して、シットリ感、化粧映え、密着性及び化粧持ちの4項目について評価した。評価基準及び判定は、実施例1−1〜1−5と同様に行った。結果を表9に示す。
【0049】
【表8】

【0050】
表2〜表4より、本発明の化粧料は、比較例に示したGU重合体の代わりにセラミドを用いた化粧料及びGU重合体を含まない化粧料と比較して、のび、滑り、肌への馴染みのいずれの評価項目においても優れていることがわかった。中でもGU重合体をナノ粒子化した分散液を配合した化粧料は、特に使用感に優れ、また製剤化した際の安定性も良好であることが明らかになった。
更に、表2に示す刺激抑制効果の測定結果から、本発明の化粧料は、外部からの化学的刺激に対する抑制効果、即ち優れたバリア機能を有していることが明らかになった。該バリア機能は、GU重合体をナノ粒子化した分散液を配合した化粧料において特に顕著であった。
表5〜表7の毛髪用化粧料及び表8のメークアップ用化粧料においても上記と同様な傾向が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料材料と、式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体を含む単量体原料を重合したGU重合体とを含む化粧料。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は−(CH2)n−を示す。ここで、nは1〜4の整数である。)
【請求項2】
前記単量体原料が、式(2)で示される長鎖アルキル基含有単量体を含む請求項1記載の化粧料。
【化2】

(式中、L1は、−C64−、−C610−、−(C=O)−O−、−O−、−(C=O)NH−、−O−(C=O)−又は−O−(C=O)−O−を示し、L2は、炭素数10〜22のアルキル基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項3】
GU重合体の含有割合が、化粧料全体に対して0.001〜50質量%である請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
GU重合体が、平均粒子径5〜500nmのナノ粒子である請求項1〜3のいずれか1項記載の化粧料。
【請求項5】
化粧料材料の少なくとも一部が粉体であって、該化粧料材料粉体の全部又は一部が前記GU重合体により表面処理されている請求項1〜4のいずれか1項記載の化粧料。
【請求項6】
前記式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体を含む単量体原料を重合したGU重合体を含む平均粒子径5〜500nmの化粧料用ナノ粒子。
【請求項7】
化粧料材料粉体を、前記式(1)で表されるグリセロール(メタ)アクリレート単量体を含む単量体原料を重合したGU重合体により表面処理した化粧料用粉体。

【公開番号】特開2007−119374(P2007−119374A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311298(P2005−311298)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】