医療移植片への/医療移植片からの薬物または分析物の輸送の測定および輸送の増強のためのデバイスおよび方法
移植後、移植された医療デバイスの周囲に形成される任意の線維組織嚢を介した物質輸送を増強するための方法およびデバイスが提供される。移植されたデバイス周囲の血管新生を増強するための方法およびデバイスがさらに提供され、これはデバイスへの/デバイスからの物質輸送をさらに支援する。このデバイスは、(i)短期または長期送達、徐放性送達製剤、(ii)患者の分析物を検出するセンサー、あるいは(iii)これらの組み合わせを有する複数のリザーバを含むことが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年6月1日出願の米国仮特許出願第60/575,946号明細書、2004年12月13日出願の第60/635,780号明細書、2005年2月17日出願の第60/593,832号明細書、および2005年2月24日出願の第60/655,785号明細書の優先権を主張するものである。本出願は、その内容全体を参照によって本明細書に引用される。
【0002】
本発明は全体として、移植用医療デバイスの分野に関する。特に本発明は、移植された医療デバイスへ/移植された医療デバイスから組織嚢構造を通る薬剤あるいは分析物の物質輸送を測定および調節するため、および移植体の機能、組み込み、および耐用年数を改善するために組織/移植体相互作用を制御するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトおよび動物患者内への移植のための種々の医療デバイスが開発されてきており、現在も開発中である。事例としては、薬物供給装置、バイオセンサー、整形外科人工補綴物、およびその類似物などがある。医療デバイスの移植は、身体が異物に反応すると炎症および線維症を誘発する可能性がある。線維症により、デバイスの近接部での線維組織嚢の形成が引き起こされる。このような嚢では、血管分布の範囲、水および細胞性内容物、および一般に原材料であるコラーゲンの架橋度を含めその組成が変化する可能性がある。嚢の厚さは数ミクロンから数mmまでの範囲に及ぶ。
【0004】
移植された薬物供給装置またはバイオセンサーの寿命の間に、線維組織嚢の構造が変化するおそれがある。このような変化はデバイスからの薬剤の輸送、またはデバイスへの分析物の輸送に悪影響を及ぼすおそれがある。例えば、骨粗鬆症を治療する副甲状腺ホルモンなど、有効とするために毎日ボーラス投与(例えばパルス)によって供給する必要のある薬剤は、放出速度が治療以下のレベル、あるいはむしろ有害なレベルの放出速度まで遅くなる可能性がある。さらに、プロスタサイクリンなどのように循環から速やかに除去される薬剤が組織嚢を介してあまりにも緩徐に放出される場合、薬剤は治療濃度に達することができない。同様に、組織嚢は、移植されたデバイス内あるいはデバイス上に含まれるセンサーへ分析物またはその他の物質が拡散するのを遅らせる。分析物のセンサーへの拡散速度の緩徐化は、分析物の変化を検出するために必要な時間を増加させるか、あるいはセンサーの感度を低下させ、そのいずれかによって、分析物または治療薬のモニタリングにおけるセンサーの働きが無効となる。例えば、組織嚢はグルコースセンサーへのグルコース輸送速度を遅くし、時間の遅延を引き起こし、その結果、体内の実際のグルコースレベルと測定されたグルコースレベルとの間に矛盾が生じる。遅延が大きくなりすぎると、測定されたグルコースレベルはもはや実際のグルコースレベルを示さない。この場合、測定されたグルコースレベルを使用して、I型糖尿病のインシュリン投与を決定すると、過剰または過少投与の危険が生じると予想され、低血糖などの危険な状態に至る可能性がある。
【0005】
したがって、例えば、移植された薬物供給デバイスから効果的な薬物放出速度をある期間にわたって維持することができるように、あるいは移植されたセンサーが有効性を維持することができるように、組織嚢の拡散速度緩徐化効果を打ち消すための方法、デバイス、組成物、あるいはこれらの組み合わせを提供することが望ましい。
【0006】
研究者らは嚢を介した分子輸送の特徴を明らかにし、改善する方法として、多様な手段を使用し組織嚢の構造を改質することを試みた。現行の方法論は、おおまかに(1)生体外試験(例えば、組織嚢を動物から取り除き、拡散細胞中に配置し、さらに「生きていない」嚢を介した輸送を測定する)、または(2)動物内に標識を注入する(例えば、マーカーを動物へ注入し、動物を犠牲にして、組織嚢を除去し、凍結し、さらに嚢についてマーカー含有量および位置を分析する)方法に限定されているが、分析は1頭の動物当たり1回のみに制限され、非常に非効率的で、無駄が多い。これらの方法では、より現実的で信頼性のあるデータを提供すると考えられるインサイチュまたは生体内での複数回またはリアルタイムでの定量的測定はできない。センサーの生体適合性、および長期信頼性および機能性を改善し、さらにこの目的のために、組織嚢全体にわたる分子輸送のインサイチュ測定を得る必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
移植後、移植された医療デバイスの周囲に形成される線維組織嚢を介した物質輸送を増強するため、デバイスへまたはデバイスからの物質輸送をさらに補助する移植されたデバイス周囲の血管新生を増強するための方法およびデバイスが開発された。
【0008】
一実施形態において、組織嚢全体にわたる移植された薬物供給デバイスからの薬剤輸送を増強するための方法が提供される。この実施形態では、この方法は移植部位のデバイス周囲に存在する(万一存在する場合)線維組織嚢を介した製剤の輸送を促進するため、患者に移植された医療デバイスに位置する複数の離散したリザーバから製剤を制御可能な様式で放出すること、患者に移植されたこの医療デバイスから輸送エンハンサーの有効量を制御可能な様式で放出することを含む。
【0009】
種々の実施形態において、増強薬剤はデバイス中に位置する1つ以上のリザーバ、デバイス上の表面コーティング、あるいはこれらの位置の両方より放出される。輸送エンハンサーの放出は製剤の放出と同時、または時間的に切り離されて行われる。輸送エンハンサーの放出が、連続的に、あるいはとびとびの間隔で行われる。
【0010】
一実施形態において、製剤はさらに輸送エンハンサーを含み、製剤および輸送エンハンサーは同一のリザーバから放出される。
【0011】
一実施形態において、輸送エンハンサーは薬剤のための溶媒または共溶媒を含む。別の実施形態では、輸送エンハンサーは界面活性剤を含む。ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンはその例である。さらに別の実施形態において、薬物分子は電荷分子を含み、および輸送エンハンサーはイオン対形成対イオンを含む。
【0012】
一実施形態において、輸送エンハンサーは組織嚢の成分を溶解または分解する分子を含む。例としては、コラゲナーゼ、トロンビン、フィブリノリジン、ヒアルロニダーゼ、トリプシン、およびこれらの組み合わせなどがある。
【0013】
一実施形態において、デバイスはリザーバから、および組織嚢を介して製剤を機械的に駆動するための手段をさらに含む。例えば、製剤を機械的に駆動するための手段としては、ピストン、水膨潤性材料、あるいはこれらの組み合わせなどがある。
【0014】
さらに別の実施形態において、デバイスは放出のための脈管形成性コーティングまたは脈管形成性分子をさらに含む。血管内皮細胞増殖因子はこのような材料の例である。別の実施形態では、デバイスは抗炎症薬をさらに含み、これらはリザーバ、デバイス上のコーティング、あるいはリザーバおよびコーティングの両方から放出される。デキサメサゾンはこのような薬剤の例である。
【0015】
別の態様において、移植された薬物供給デバイスから、および組織嚢全体にわたる薬剤の輸送を増強するための方法が提供され、この方法は荷電した薬物分子を含み、患者に移植された医療デバイスの多数の離散性リザーバから、製剤を制御可能な様式で放出する工程を含み、薬剤の放出、および増強薬剤の放出はデバイスにある1つ以上のリザーバに由来し、(万一存在する場合は)移植された医療デバイスを包囲する組織嚢を介して荷電した薬物分子の輸送を増強する電動方法を利用する。一実施例において、電動方法は
イオントフォレシスを含む。一実施形態において、医療デバイスの外面は、その中またはその上にある電子部品により帯電されており、移植された医療デバイスを包囲する組織嚢を介して薬物分子を押し出すのに行う推進力を生み出す。
【0016】
別の態様では、患者に移植されたセンサーデバイスへの分析物の輸送を増強するための方法が提供される。一実施形態において、この方法は移植されたセンサーデバイスから輸送エンハンサーの有効量を制御可能な様式で放出する工程を含み、このデバイスはそこに配置されたセンサーを有する複数のとびとびのリザーバを有する。一実施形態において、デバイスはリザーバキャップ、およびリザーバキャップを破裂させるための手段をさらに含む。
【0017】
別の態様では、本体部分、本体部分にありかつ本体部分によって規定された2つ以上のリザーバ、リザーバのリザーバ内容物、および物質輸送を増強するための手段、リザーバ内容物の全てまたは一部、あるいはリザーバ内容物の全てまたは一部との接触するための環境成分の全てまたは一部を含む移植後にデバイスの周囲に形成される任意の線維組織嚢を介した移植用医療デバイスが提供される。一実施形態において、リザーバ内容物は製剤を含む。別の実施形態では、リザーバ内容物はセンサーまたはセンサー成分を含む。一実施形態において、物質輸送を増強するための手段、輸送エンハンサー、電動デバイス、容積式機構、あるいはこれらの組み合わせを含む。このデバイスは、任意に放出のための脈管形成性コーティングまたは脈管形成性分子を含む。例えば、放出のための脈管形成性コーティング、脈管形成性分子、あるいはその両方は、血管内皮細胞増殖因子を含む。一実施形態において、デバイスは抗炎症薬をさらに含み、リザーバから、またはデバイス上のコーティングから、あるいはリザーバおよびコーティングの両方から放出される。
【0018】
別の態様では、組織嚢を介した薬剤または分析物の輸送を試験するために移植用デバイスが提供される。一実施形態において、デバイスは、外面、灌流液の液体注入口、灌流液の液体排出口、および注入口および排出口の間で延在する液体導管を有する第1の本体、第1の本体に付着した基板、基板内に規定、および基板を経由して延在した少なくとも1つのリザーバ、液体導管中に第1の開口部、およびデバイスの外面に開放されている第2の開口部を有するリザーバ、リザーバの第2の開口部を被う少なくとも1つのリザーバキャップ、およびリザーバキャップを選択的に崩壊または除去するための手段を含む。デバイスは、一般に灌流液の液体注入口に接続された第1のフレキシブルチューブ、灌流液の液体排出口に接続された第2のフレキシブルチューブ、および液体の導管およびフレキシブルチューブに徹底して灌流液を流すための手段、を含む。一実施形態において、デバイスはリザーバキャップが崩壊あるいは除去されて後に、一方または両方のリザーバ開口部を通る液体の流れをブロックする半透性障壁構造をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の詳細な説明)
一態様において、移植後に移植された医療デバイスの周囲で形成されるあらゆる線維組織嚢を介した物質輸送を増強するため、および/または移植されたデバイス周囲の血管新生を増強し、これによってデバイスへまたはデバイスからの物質輸送をさらに補助するための方法およびデバイスが開発された。
【0020】
一実施形態において、本体部分、本体部分内および本体部分により規定された1つ以上のリザーバ、リザーバ内容物、および移植後にそのデバイスの周囲に形成される任意の線維組織嚢を介する物質輸送を増強するための手段を含む移植用医療デバイスが提供される。デバイスが患者内に移植された後、これらのデバイスの周りでは組織嚢を介する薬物分子および分析物の輸送が生じると思われるが、この輸送を増強するために、および第1の事例において組織嚢の成長を減少させるために方法およびデバイスが提供される。
【0021】
好ましい実施形態では、このデバイスは複数のリザーバを含み、その内容物は、(i)短期、または長期、徐放性の薬剤送達、(ii)分析物または治療薬をモニタリングするためのセンサー、あるいは(iii)薬物およびセンサーの両方を含む。一実施形態において、このデバイスは、リザーバ中に蓄えられリザーバから選択的に放出される製剤、および組織嚢を横切って、その嚢から(リザーバから放出された)薬剤を物質輸送する増強するための手段を含む。別の実施形態では、このデバイスはセンサーおよび組織嚢を介する分析物の輸送を増強する物質輸送を増強するための手段を含む。
【0022】
別の態様では、組織被包化の影響を排除するためにデバイスおよび方法が開発された。このデバイスは、インサイチュで(動物内で)完全な組織嚢内部へのアクセスを効果的に可能とし、これにより有意に組織嚢全体にわたる分子輸送の詳細なインサイチュ測定値が得られる。このデバイスにより、組織嚢(例えば、厚さ、血管分布、密度、空隙率、透過性など)の特性または構造を改質し/調節する方法を評価し、例えば、異なる方法、あるいは異なる条件の影響下で形成された2つの組織嚢を比較するなど、輸送を改善するための種々の方法について定量的な比較を行うことが可能となる。このデバイスは、さらに異なる材料またはデバイス構造を試験することを可能とする。一実施形態において、この嚢の内部にアクセスする目的は、デバイスを試験することである。例えば、デバイス本体中の開口部からリザーバキャップを機械的に破裂させるか、電気化学的にあるいは電熱的に崩壊させるか、あるいは別の方法で除去することなどによって特定の時間にこのデバイス内に経路を開通する手段を含むデバイスを比較することができる。別の実施形態において、その目的は移植材料用として考えられているバルク材料を試験し、どのような種類の嚢を形成するか、さらにこのような材料/デバイスが薬剤伝達またはバイオセンシングデバイスとして有用である可能性があるか否かを観察することである。
【0023】
本明細書で使用される用語「含む」、「含んでいる」、「含む」、および「含んでいる」は明示的に指示のない限り、制限のないオープンな用語を意味する。
【0024】
(移植用医療デバイスおよびそれらの成分)
本医療デバイスは本体部分、本体部分内および本体部分により規定された1つ以上のリザーバ、リザーバ内容物、移植後にそのデバイスの周囲に形成される任意の線維組織嚢を介する(リザーバ内容物の全てあるいはその一部、またはリザーバ内容物の全てまたはその一部と接触することを目的とする環境成分の物質輸送)を増強するための手段を含む。一実施形態において、リザーバ内容物は製剤、製剤を貯蔵するリザーバ、および製剤の放出をコントロールするコントロール手段を含む。別の実施形態において、リザーバ内容物はセンサーを含み、リザーバはセンサーを格納および保護し、センサーが身体(例えば生体内での生理的液体)に曝される時間をコントロール手段が制御する。
【0025】
コントロール手段は種々の形式をとることができる。一実施形態において、それぞれのリザーバは、リザーバからの薬物の放出を開始するために選択的に破裂(例えば、崩壊)させることができるリザーバキャップで蓋をした開口部を有する。例えば、米国特許出願公開第2004/0121486Al号に記載されるように、リザーバキャップは電熱的切除により崩壊する金属膜を含むことができる。その他のリザーバ開放、および放出制御方法は、全て参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第2002/0072784A1号、第2002/0099359A1号、第2002/0187260A1号、第2003/0010808A1号、第2004/0106914A1号、および第2005/0055014A1号、および米国特許出願公開第5,797,898、6,123,861、6,527,762、6,551,838、6,773,429、6,808,522号に記載されている。
【0026】
(デバイス本体およびリザーバ)
デバイスは本体部分、すなわち1つ以上のリザーバを有する基板を含む。リザーバは、ウェル、くぼみ、あるいは空洞であり、一体構造物中に配置され、別の材料の一定量および/または小型デバイスを含むのに適する。好ましい実施形態において、デバイスは、本体部分の少なくとも1つの表面全体にわたって、別個の場所に配置された複数のリザーバを含む。
【0027】
様々な実施形態では、本体部分はケイ素、金属、セラミック、ポリマー、あるいはこれらの組み合わせを含む。適切な基板材料の事例としては、金属、セラミック、半導体、ガラス、および分解性および非分解性のポリマーなどがある。それぞれのリザーバは気密性材料(例えば金属、ケイ素、眼鏡、セラミック)から作られることが好ましく、リザーバキャップにより密閉して封止される。生体内でデバイス適用のために基板材料の生体適合性を有することが好ましい。生体適合性および非生体適合性材料については、基板またはその一部に、用時塗布し、被包し、あるいはそれ以外にポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン類似材料、ダイヤモンド状カーボン、不活性セラミック、チタン、およびその類似物などの生物学的適合の材料中に含めてもよい。一実施形態において、基板は気密であり、(少なくともリザーバデバイスの使用中は)送達される分子および周囲ガスあるいは液体(例えば水、血液、電解質、あるいは他の溶液)に不透過性である。別の実施形態では、基板は生体適合性成分内へ規定された時間の間に分解するか溶解する材料で作られている。このような材料の実例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ならびに分解性ポリ(無水物−co−イミド)などの生体適合性ポリマーが挙げられる。
【0028】
基板は1つのみの材料から成ってもよいし、あるいは複合または多層構成、すなわち互いに接着された同一のまたは異なる基板材料によるいくつかの層で構成される材料でもよい。一実施形態において、基板は互いの接合されたシリコンおよびパイレックス(登録商標)の層を有する。別の実施形態では、基板は、互いに接合された複数のシリコンウェハーを有する。さらに別の実施形態では、基板は低温同時焼成セラミック(LTCC)を含む。一実施形態において、本体部分はマイクロチップデバイスの支持体である。1例において、この基板はシリコンから作られる。
【0029】
本体部分は種々の形状または成形表面を有する。それは、例えば、平面または曲面の放出サイド(すなわちリザーバキャップを有する部位)が可能である。基板は例えば、環状または卵形ディスク、シリンダー、あるいは球から選択された形状であってもよい。一実施形態において、放出サイドは曲がった組織表面に一致させて成形、あるいは体管腔状に成形することができる。別の実施形態において、裏面(放出サイドの遠位)は付着表面に一致させて成形される。様々な実施形態では、本体部分はチップ、ディスク、管、あるいは球の形状である。本体部分はフレキシブルまたは固い状態が可能である。
【0030】
トータルの基板厚およびリザーバ容量は、基板材料のウェハーまたは層の相互の接合または付着により増加さることができる。デバイス厚は、各リザーバの容量に影響し、および/または1つの基板上に実装することができるリザーバの最大数に影響する。基板およびリザーバのサイズおよび数は、患者への移植に適し、好ましくは侵襲性手技を最小限に使用するべく、特定の用途、製造上の制限、および/またはトータルのデバイスサイズ制限に必要なリザーバ内容物の量および容量に適応させるために選択することができる。
【0031】
基板は1つ、2つあるいは好ましくは多数のリザーバを有することができる。様々な実施形態において、数十、数百あるいは数千ものリザーバが基板全体にわたって配列される。例えば、移植用薬物供給デバイスに関する一実施形態では、250〜750のリザーバを含み、それぞれのリザーバには放出のための薬剤の1回量を有する。これは例えば数か月から2年までの期間にわたり毎日放出することができる。ある程度頻繁な服薬スケジュールおよびより短いまたはより長い治療期間が可能である。1つのセンシング実施形態では、デバイス中のリザーバの数は個々のセンサーの操作寿命によって決定される。例えば、1年の移植可能なグルコースモニタリングデバイスでは、身体への接触の後に30日間機能を維持する個々のセンサーでは、(1つのリザーバ当たり1つのセンサーを想定すると)少なくとも12個のリザーバを有する。
【0032】
1つのセンサー実施形態では、センサー表面およびリザーバ開口手段の間の距離は、最小限であり、好ましくは数ミクロンである。この場合、リザーバの容量は主にセンサーの表面積によって決定される。例えば、典型的な酵素グルコースセンサーの電極は、400μm×800μmのスペースを占領する。
【0033】
一実施形態において、リザーバはマイクロリザーバである。本明細書で使用される用語「マイクロリザーバ」は、放出可能な状態にある材料を含むのに適する凹面形状の一体構造物を指し、薬剤を含むマイクロ量の材料を充填するのに適したサイズおよび形状である。一実施形態において、マイクロリザーバは500μL以下(例えば250μL未満、100μL未満、50μL未満、25μL未満、10μL未満など)、および約1nLをこえる(例えば約5μLをこえる、10nLをこえる、約25nLをこえる、約50nLをこえる、約1nLをこえるなど)容量を有する。マイクロリザーバの形状および寸法は、薬物材料とマイクロリザーバの周囲表面との間の接触領域を最大または最小化するために選択することができる。本明細書で使用される用語「マイクロ量」は1nL〜10μLの間の小さな容量を指す。一実施形態において、マイクロ量は1nL〜1μLの間である。別の実施形態では、マイクロ量が10nL〜500nLの間である。
【0034】
他の実施形態では、このリザーバはマイクロリザーバより大きく、マイクロ量より多い製剤量を含むことができる。例えば、各リザーバの容量は10μLよりも多く(例えば少なくとも20μL、少なくとも50μL、少なくとも100μL、少なくとも250μLなど)、および10,000μL未満(例えば5000μL未満、1000μL未満、750μL未満、500μL未満、100μL未満など)が可能である。これらをそれぞれマクロリザーバおよびマクロ量と呼ぶ。マイクロスケールあるいはマクロスケール容量/量の一方に限定されることを明示的に指示なき場合は、用語「リザーバ」は両方を含むことを意味する。
【0035】
当業者において公知の任意の適切な製造技術を使用して、リザーバを構造本体部分内に製造することができる。代表的な製造技術には、MEMS製造プロセスあるいはその他のミクロ機械加工プロセス、様々なドリル加工技術(例えば、レーザ、機械、および超音波ドリル加工)、およびLTCC(低温同時焼成セラミックス)などの形成技術、ならびに成形過程などがある。例えば、米国特許出願公開第6,123,861号、および6,808,522号、ならびに米国特許出願公開第2004/0106914号および2005/0055014号を参照のこと。リザーバの表面を任意に処理または塗布し、表面の1つ以上の特性を変化させることができる。このような特性の事例としては、親水性/疎水性、湿潤性(表面エネルギー、接触角など)、表面粗さ、電荷、剥離性、およびその類似特性などがある。
【0036】
一実施形態において、このデバイスはマイクロチップ化学供給デバイスを含む。別の実施形態では、デバイスはポリマーチップ、または「マイクロチップ」とは呼ばれない非シリコンベースの材料からできているデバイスを含む。多様な基板およびデバイス構造の実施例は、米国特許出願公開第2004/0121486 Al号に記載されている。一実施形態において、このデバイスは浸透圧ポンプ、例えばVIADURTM(Bayer Healthcare PharmaceuticalsおよびAiza Corporation)などの商用デバイス中に含まれるDUROSTM浸透圧ポンプ技術(Alza Corporation)を含む。別の実施形態では、デバイスはLTCC本体を含む。一実施形態において、本体部分がマイクロチップデバイスの支持体である。1例において、この基板はシリコンから作ることができる。
【0037】
(物質輸送を増強するための手段)
移植用デバイスは、組織嚢を介した物質輸送速度を増強するのに有用な成分の1つまたは組み合わせを含む。これらは、高度に濃縮され、安定な製剤、対イオン製剤、酵素分解、および起電性デバイスを作成するに有用な、酵素、補助溶剤、界面活性剤、あるいはこれらの組み合わせの使用を含む。デバイスリザーバより、および組織嚢を介した物質輸送を増強するための別の手段としては、PCT国際公開第2004/026281 Al号パンフレットに記載された容積式および/または促進放出技術などがある。さらに物質輸送を増強するための別の手段としては、デバイス上またはデバイスから遊離された1つ以上の脈管形成性薬剤(それを介した薬物または分析物輸送を促進すると予想される)によるなどの組織嚢の血管分布を増強することを含む。多様な実施形態では、これらの異なる組み合わせ手段、材料、および技術を使用して、組織嚢を介して薬物または分析物の輸送が増強される。
【0038】
一実施形態において、1つの特定の実施形態では、抗炎症薬はデキサメサゾンである。これらの実施形態では、抗炎症薬は移植後の炎症を減少させ、線維性被膜の全厚を減少させることができる。別の特定の実施形態において、デバイスはリザーバからデキサメサゾンおよびVEGFの組み合わせを放出、および/またはこの組み合わせで塗布され、これにより炎症を減少させ移植されたデバイスのまわりの血管分布を増加させることができる。Nortonら,“Dual Release of VEGF and Dexamethasone from Microspheres Incorporated in Anti−fouling Hydrogels”p.357,Proceedings 7th World Biomaterials Congress(Sydney,Australia)May 2004を参照。
【0039】
本明細書で使用される用語「輸送エンハンサー」は、組織透過性を変化させる溶媒、補助溶剤、および界面活性剤、および組織嚢を分解する酵素を指し含んでおり、これらにより薬物分子が組織嚢を浸透し、有効(例えば、治療)濃度および割合でそれらの標的に到達することが可能となり、あるいは分析物が組織嚢を浸透し、臨床的に/診断上有用な濃度および割合でセンサー材料に達することを可能となる。
【0040】
(溶媒/界面活性剤配合物)
一実施形態において、物質輸送を増強するための手段は組織嚢透過性を変化させるのに有効な材料を有するリザーバ内容物を含む。組織嚢の変化した透過性により、これらを介した薬物または分析物のより多くの物質輸送が可能となる。一実施形態において、この製剤は、高度に濃縮され、安定な製剤に有用な、および/または組織透過性を変化させるのに有用な1つ以上の溶媒、補助溶剤、界面活性剤、あるいはこれらの組み合わせを含む。リザーバデバイスの少ない投与量により、普通により多くの容量で使用する場合に組織刺激または損傷を引き起こすと予想される強力な溶媒、補助溶剤、および/または界面活性剤に、活性成分(つまり薬剤)を溶解させ、あるいは物理的に混合させることが効果的に可能となる。このような溶媒、および許容される1日暴露(Permitted Daily Exposure)限度の事例は、ICHガイドラインQ3Cに提供される。これらの限度は加工作業に由来する製剤の中に残留する残留溶媒のためのものであるが、リストされた溶媒の多くが推奨された限度を越えずにデバイスリザーバに含まれる可能性がある。例えば、合衆国食品医薬品局(FDA)における薬物評価および研究センター(the Center for Drug Evaluation and Research:CDER)では、ニトロメタンを500μg(440nL)の1日当たり暴露(PDE)限界(これは最も厳密なものであるが、クラス2溶媒において推奨される限界である)を有するクラス2溶媒に分類した。本発明のデバイスの1つの実施形態では、それぞれのリザーバはクラス2溶媒200nLを含み、1日当たり1つのリザーバのみが放出される場合、溶媒への接触はこのPDEの半分未満になるであろう。
【0041】
適切な溶媒の代表的例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ならびにジメチルピロリドン(DMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、およびその他のコラーゲンおよびコラーゲンネットワークの構造を変化させる極性、非プロトン溶媒などがある。一実施形態において、1回の投与量当たり少ない容量(200nL/投与量以下)は、クラス2溶媒における毎日の暴露限度より十分低レベルにある。適切な界面活性剤の代表的な例としては、ポリソルベート、スパン、モノアルキルポリオキシエテン(monoalkylpolyoxythenes)、ジアルキルポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンモノエステル、ポリオキシエチレンジエステル、およびポリオキシエチレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体などがある。適切な配合物を得るために、例えば、(1)必要な薬剤溶解度および安定性を提供する単独あるいは組み合わせの溶媒または界面活性剤を同定し、(2)適切な嚢組織の試料全体にわたって、フランツ細胞あるいは多重ウェル微小透析ユニットなどのデバイスを使用して、薬物移動の割合を比較することにより浸透増強について選別することができる(以下に述べるように)。適切な溶媒、補助溶剤、および界面活性剤の選択により、高度に濃縮され(例えば、100mg/mL、10%w/v、あるいは10%v/v以上)体温で安定な小分子、ペプチドおよびタンパク薬剤配合物を製造することができる。
【0042】
更に、薬剤の濃縮溶液の使用により、リザーバサイズしたがってデバイスサイズを制限することが可能となり、その結果として有利に移植片移動度を制限することができ、組織嚢成長を減少させる。高い濃度により有利に移植用デバイスのサイズを比較的小さく保つことができ、(余分な溶媒容量を含めるためにデバイスを所定の大きさに作る必要がないので)これにより、より安全にかつ目立たずに患者へのそれらの留置が可能となる。さらに、縫合固定によるより小さな移植片は大きなデバイスよりも移動性が少ないと予想される。移動度は組織嚢成長に寄与する因子として確認されている。
【0043】
一実施形態において、輸送エンハンサーがいくつかのリザーバから遊離される。リザーバは放出のための1つ以上の輸送エンハンサーを単独あるいは製剤と併用して含むことができる。別の実施形態では、デバイスは徐放性コーティングなどのコーティングを有し、輸送エンハンサーを含む。1つの変形では、デバイス中の1つ以上のリザーバ内に放出のための製剤を含むリザーバから分離されて輸送エンハンサーが提供される。例えば、リザーバ配列を有する基板を含むデバイス中で、リザーバに輸送エンハンサーおよび製剤を交互に貯蔵することができ、製剤が放出される直前、または放出後直ちに輸送エンハンサーの放出を指示することができる。あるいは、輸送エンハンサーの放出を製剤の放出と同時、あるいは放出に続き行うことができる。
【0044】
一実施形態において、輸送エンハンサーは1つ以上のリザーバ内に、グルコースセンサーを含むリザーバの近くに、それとは分離されて含まれる。輸送エンハンサーの放出をグルコースセンサーの暴露にタイミングをあわせることができ、あるいは規則的なスケジュールでリザーバから輸送エンハンサーを放出することができる。後者の状況は、この嚢を維持するために長い移植期間にわたり同じレベルの透過性で機能すると予想される。
【0045】
(酵素分解)
さらに別のアプローチでは、移植デバイスは、組織嚢の輸送を制限する効果を低減させることに使用できる組織嚢成分を溶解または分解することが知られている分子を含む。例えば、コラゲナーゼ、トロンビン、フィブリノリジン、トリプシン、ヒアルロニダーゼあるいはこれらの組み合わせを含む組成物をデバイス中、デバイス上に、あるいはデバイスとともに含めることができる。この酵素をリザーバ内に包み、デバイスの表面へ付着させ、
あるいは放出修正基質に混合することができる。
【0046】
一実施形態において、輸送を増強するための酵素はデバイスの1つ以上のリザーバに含まれる。酵素が少なくとも薬剤リザーバの近くの嚢の一部を溶解するように、1つ以上の隣接するリザーバから薬剤が遊離される前にリザーバを開くことができ、これにより薬剤リザーバが開放される場合に、嚢のバリヤー性を減少させ、さらに薬物放出割合に対する嚢の影響を最小化することができる。同様の戦略をグルコースなどの分析物に対する嚢の透過性を増加させるバイオセンシングデバイスと共に使用することができる。組織嚢が有意な量のフィブリンあるいはフィブリノーゲンを含む場合、続いてデバイスはトロンビン、フィブリノリジン、トリプシン、あるいは別の有効な酵素を放出することができる。
【0047】
(対イオン製剤)
別の実施形態では、薬剤は電荷分子で構成され、組織嚢を介して薬剤輸送を調節するためにイオン対を形成する対イオンが製剤中に含まれる。ペプチドおよび薬物を含む電荷分子の結合を変化させる材料に対する対イオンの機能は、RP−HPLC、蛋白質構造におけるホーフマイスター系列イオンの影響、およびイオン交換クロマトグラフィーリテンションにより示されるように公知なものである。反応物および生成物の有機相と水相との間の移動を促進し、原位置での反応区画化を提供するためにイオン対形成が有機化学において使用されている。脂溶性、粒径、あるいはミセル形成を変更するにより、それらの性能を変化させるため薬剤のイオン対形成が検討されている(Choi,et al.,Int’l J.Pharmaceutics 203(1):193−202(2000);Kendrick,et al.,Arch.Biochem.Biophys.347:113−18(1997);Meyer,et al.,Pharm.Res.1 5(2):188−93(1998))。コラーゲコラーゲンを有する薬剤対イオンの相互作用あるいは交換により、構造内の水素結合またはイオン結合を分裂あるいは改質することも可能である。
【0048】
(起電デバイスおよび方法)
さらに別の実施形態では、当業者において公知の帯電、イオントフォレシス、あるいは他の起電方法を使用して、薬剤の組織嚢を介した輸送を増強できる。例えば、移植されたデバイスの露出面をその内部電気によって帯電させることができ、同じ電荷を有する薬剤分子が嚢を介して前進させる推進力を生み出すことができる。一実施形態において、1対の反対に帯電した電極を同じデバイスまたはこのデバイスの表面に配置するが、組織障壁により最小の電気絶縁経路となるように、互いに十分に離れた位置に設置する。別の実施形態では、薬剤伝達成分と離れている対電極は組織嚢の外側に位置する。
【0049】
(容積式デバイスおよび方法)
一実施形態において、容積式機構を使用し、リザーバから製剤を駆出させる。さらにこれらの同じ機構を使用し組織嚢を介して製剤を駆出または押し出す。一実施形態において、材料あるいは他の膨潤性材料を生み出す浸透圧はピストンを駆動し、リザーバから製剤を駆出させる。これおよび他の実施形態は、PCT国際公開第2004/026281A1号パンフレットにおいて詳述されている。
【0050】
一実施形態において、リザーバ内容物は、圧縮下でガス漏れしないあるいは気密のリザーバで封止され、あるいは内容物がリザーバキャップ活性化で放出されるように、陽圧内部環境を生み出す条件下で封止される。
【0051】
別の実施形態では、デバイスは3つの区画(リザーバ)に整列され、規定されたリザーバスペースを有し、互いにパッケージされた3つの基板部を含む。底部区画は乾燥した膨潤性ゲルを含み、中央の区画は液体材料(あるいは少なくとも体温下で液体)を含み、上部の区画は放出のための製剤を含む。放出が意図されるまで、この層間の膜(あるいはリザーバキャップ)は隣接した区画と分離されている。薬剤導入されたリザーバの外面開口部の上のリザーバキャップの崩壊の後、あるいはその崩壊と同時に、膨潤性ゲル上の膜は開放され、中央の区画由来の液体がこのゲルと接触することが可能となり、その結果膨潤性ゲルが膨張する。ゲル材料はリザーバ区画の結合容量を超える拡張した容量を有するように選択される。任意に、そのゲルが温度により拡大/収縮することは当業者において公知であり、制御された温度変化により(例えばリザーバに配置された抵抗性発熱体により)膨張を増大させることができる。その液体を覆う膜が開放され、この膨潤ゲルにより上部区画から製剤を移動させることが可能となる。
【0052】
(脈管形成性材料および薬剤)
一実施形態において、移植されたデバイスの周囲の血管新生を促進するために1つ以上の脈管形成性材料あるいは因子を含むデバイスは、コーティングとともに提供される。これは、移植用薬物供給デバイスおよび移植用分析物モニタリングデバイス(例えばグルコースセンサー)の両方で有用と予想される。本明細書で使用される用語「脈管形成性」は、移植されたデバイス周囲の血管および微小循環の成長を促進し、維持する材料あるいは分子を指す。1つの実施形態実施例において、デバイスは血管性成長因子などの血管誘起あるいは脈管形成性薬剤とともに放出され、あるいはこのデバイスにこれらの薬剤が塗布される。このタイプの適切な成長因子としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板成長因子、血管透過性因子、繊維芽細胞成長因子、およびトランスフォーミング成長因子βなどがある。
【0053】
別の実施形態において、デバイスはそれ自体が脈管形成性特性を示す外部膜またはコーティング層を含む。これらの層は、例えば発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、親水性ポリフッ化ビニリデン、混合セルロースエステル、および/またはその他のポリマーで作製できる。
【0054】
(デバイス表面改質および足場材料)
さらに別の実施形態において、この移植用医療デバイスは、未改質表面のベースライン事例に対する輸送を促進するのに有効な組織足場材料あるいは他の物理的表面改質材料を含む。組織嚢析出に影響を及ぼす潜在的な材料特性としては、表面親水性の交代、表面積、空隙率(個々の細孔の割合および直径の両方)、およびナノメータスケールの粗さなどがある。これらの概念は当業者において把握されており、当業者は本明細書に記載された移植用マルチリザーバデバイスとともに使用するための従来のアプローチを適用することができる。本明細書で使用される用語「足場材料」は、粗さまたは空隙率などのナノメータスケールの特性を含む三次元の表面微細構成を指す。すなわち、微細構成は、制御された様式で細胞接着が生じる骨格として寄与し、無血管性組織の形成を減少させ、その結果、交差組織の輸送を可能となるような組織品質となる。結果として、異なる材料の補足層の析出により、あるいは細胞接着に影響を及ぼす化学的あるいは生化学的な装飾により表面が改質される。
【0055】
(リザーバコントロール手段)
リザーバコントロール手段は、リザーバ内容物の放出あるいは暴露が開始される時間をコントロールするための(複数の)構造部材を含む。好ましい実施形態では、リザーバコントロール手段は、リザーバキャップおよび電源から選択されたリザーバへ、作動のため(例えばリザーバ開放)に電力量をコントロールし、供給するために必要とされるハードウェア、電気部品、およびソフトウェアを含む。
【0056】
(リザーバキャップ)
本明細書で使用される用語「リザーバキャップ」は、リザーバの外部環境からリザーバの内容物を分離するのに適した個別の膜あるいは他の構造を含んでいる。付加的構造を有しキャップに対して機械的支持を提供するキャップを製造することができるが、これは一般にリザーバ開放全体にわたって自立的である。例えば米国特許出願公開第6,875,208号参照のこと。選択的にリザーバキャップを除去し、あるいはそれを浸透性にさせることにより、その後リザーバの内容物(あるいはそれらの選択された成分)がリザーバを取り囲む環境に「曝露」されるであろう。好ましい実施形態では、リザーバキャップは選択的に崩壊する。本明細書で使用される用語「崩壊する」は、これらの機構の特定の1つが指定されなければ、分解すること、溶解すること、破裂すること、破断すること、あるいは機械的破損のその他の形態、ならびに温度変化に応じた化学反応(例えば電気化学的分解)あるいは相転移(例えば融解)による構造の完備性の損失を含む。いくつかの好ましい実施形態では、リザーバキャップの除去は、機械的に活性化された破裂(例えば、プレストレスに依存すること、圧電素子からの機械力によって破断される脆性膜、あるいは機械的破裂を生み出すガス圧力)に対立するものとして、主に化学反応または相転移成分を含んでいる。
【0057】
1つの特定の実施形態では、参照によって本明細書に引用されている米国特許出願公開第5,797,898号に記載されるように、崩壊が電気化学的活性化技術による。例えば、リザーバキャップは包囲する環境(例えば、溶体液あるいは塩素を含むその他の溶液)に対して不透過性である薄い金属膜が可能である。1つの変形では、特定の電位が金属リザーバキャップに印加されると、その後、電気化学反応によって酸化され崩壊し、リザーバから薬剤が放出される。適切なリザーバキャップ材料の実施例としては、金、銀、銅、および亜鉛などがある。
【0058】
別の特定の実施形態では、参照によって本明細書に引用されている米国特許出願公開第6,527,762号に記載されるように、崩壊が熱活性化技術による。例えば、リザーバを開くために、リザーバキャップを(例えば、別個の抵抗ヒータによる抵抗加熱法を使用して)加熱し、リザーバキャップを融解させ、リザーバ開口部から除去することができる。例えば、金属あるいは非金属材料(例えばポリマー)から作られたリザーバキャップと共に、この後者の変形を使用することができる。さらに別の変形では、あらかじめ選択された温度に加熱されると、リザーバキャップを介してリザーバから薬剤を放出できるように、リザーバが薬剤および体液に対して浸透性となるように、リザーバキャップは透過性に温度依存的変化を受けるポリマーあるいは他の材料から作られる。
【0059】
好ましい実施形態では、参照によって本明細書に引用されている米国特許出願公開第2004/0121486A1号に記載されるように、「崩壊」が電熱切除技術による。例えば、リザーバキャップは、金属膜などの電熱的に切断するために電流を通すことができる導体材料から作られる。適切なリザーバキャップ材料の代表的な実施例としては、当業者において公知の金、銅、アルミニウム、銀、白金、チタン、パラジウム、多様な合金(例えばAu−Si、Au−Ge、Pt−Ti、Ni−Ti、Pt−Si、SS304、SS316)、および電気伝導率を増加させるために不純物でドープされたシリコンなどがある。一実施形態において、リザーバキャップは薄い金属膜の形状である。一実施形態において、リザーバキャップは複数の層状構造の一部であり、例えば白金/チタン/白金の多層/ラミネート構造などの複数の金属層でリザーバキャップを作ることができる。リザーバキャップは電気入力リードおよび電気出力リードに操作的に(すなわち電気的に)接続され、このリザーバキャップによって電流の流れが促進される。有効量の電流がリードおよびリザーバキャップを介して印加されると、このリザーバキャップの温度が抵抗加熱により局所的に増加し、さらにリザーバキャップ内に生じた熱は、電熱的に破裂させ、切断を引き起こすために十分な程度にリザーバキャップの温度を増加させる。
【0060】
好ましい実施形態では、別個のリザーバキャップは完全に一つのリザーバ開口部をカバーする。別の実施形態において、別個のリザーバキャップはすべてではないが、2つ以上のリザーバ開口部をカバーする。
【0061】
受動リリースデバイスでは、リザーバキャップは、ある期間にわたって分解、溶解、または崩壊する、もしくは分解、溶解、または崩壊しないが、薬剤または分析物分子に対して浸透性である、あるいは浸透性になる材料または材料の混合物から形成される。リザーバキャップ材料の代表的な例としては、高分子材料、および金属、半導体、およびセラミックスの多孔質形状の非高分子材料などがある。受動的半導体リザーバキャップ材料としては、ナノ多孔質、あるいはマイクロポーラスシリコン膜などがある。
【0062】
各々のリザーバキャップの特性を変え、製剤の種々の放出時間を提供することができる。例えば、ポリマーの任意の組み合わせ、架橋度、あるいはポリマー厚さを変更し、特定の放出時間または放出割合を得ることができる。受動的および/または能動的な放出リザーバキャップの任意の組み合わせを単一の供給デバイス中に存在させることができる。例えば、リザーバキャップは電熱的切除によって除去され、このリザーバキャップが能動的に除去された後にのみ受動的放出を開始する受動的放出システムに曝露させることができる。あるいは、所定のデバイスでは、受動的および能動的放出リザーバの両方を含むことができる。
【0063】
一実施形態において、デバイスは(i)製剤を含む能動的放出リザーバ、および(ii)1つ以上の輸送エンハンサーを含む受動的放出リザーバを有する。この実施形態による1つの方法では、受動的放出リザーバから輸送増強分子が連続的に放出され一定の嚢透過性が維持される一方、医師により処方された薬物療法の種類によって決定されたスケジュールにより能動的放出リザーバが開放される。
【0064】
別の実施形態では、デバイスは(i)センサーを含む能動的放出リザーバ、および(ii)1つ以上の輸送エンハンサーを含む受動的放出リザーバを有する。この実施形態による1つの方法では、受動的放出リザーバから輸送増強分子が連続的に放出され一定の嚢透過性が維持される一方、能動的放出リザーバが必要に応じて(例えばセンサーの汚損に依存して)、あるいは予定されたスケジュールにより指示されるように開放される。
【0065】
さらに別の実施形態では、(i)製剤を含む能動的放出リザーバ、および(ii)1つ以上の輸送エンハンサーを含む能動的放出リザーバを有する。この実施形態による1つの方法では、輸送増強分子が定期的に、あるいは処方された薬物療法により決定されたスケジュールで開放される薬剤を含む能動的放出リザーバの開放と同時、あるいは開放に先立つスケジュールに従って放出される。
【0066】
(他の成分)
このコントロール手段は、製剤および/または輸送エンハンサーの間欠的あるいは実質的に連続的な放出、および/またはセンサーの選択的暴露を提供することができる。コントロール手段の特定の特徴は、本明細書に記載されたリザーバキャップ活性化の機構に依存する。例えば、コントロール手段は入力源、マイクロプロセッサー、タイマー、デマルチプレクサー(あるいはマルチプレクサー)、および電源を含むことができる。本明細書で使用される用語「デマルチプレクサー」はさらにマルチプレクサーを指す。電源は、例えば、所望の投与量のための特定のリザーバから製剤の放出を作動させるために選択されたリザーバを活性化するエネルギーを提供する。例えば、リザーバ開放システムの操作は、実装されたマイクロプロセッサー(例えば、マイクロプロセッサーが移植用あるいは挿入可能なデバイス内にある)により制御することができる。あらかじめ選択された時間に、あるいは1つ以上の信号、または別のデバイスからの信号の受信(例えばリモートコントロールまたは無線手法による)、バイオセンサーなどのセンサーを使用した特定の条件の検出などの測定パラメータに応じて、リザーバキャップの崩壊または透過化を開始するようにマイクロプロセッサーをプログラムすることができる。別の実施形態において、マイクロプロセッサーよりも一般により単純で、より小型、および/または少ない電力で使用するような、単純な状態の機械が使用される。このデバイスは、例えばSheppardら、米国特許出願公開第2002/0072784A1号で記載されるように、無線手段を使用して活性化または電力が供給される。
【0067】
一実施形態において、デバイスは、とびとびに間隔を空けて配置されたリザーバの二次元配列を有する基板、このリザーバに含まれる製剤、各々のリザーバの半透膜を被う陽極リザーバキャップ、陽極の近くの基板に置かれた陰極、およびリザーバキャップの崩壊を能動的に制御するための手段を含む。この手段としては、電位を制御し供給するための電源および回路を含み、このエネルギーは選択された陽極および陰極の間の反応を進行させる。電極間の電位の印加と同時に、電子は外部回路を陽極から陰極まで通り抜け、陽極材料(リザーバキャップ)を酸化させ、周囲の液体中に溶解させ、製剤が曝露され放出される。マイクロプロセッサーは、EPROM、リモートコントロール、あるいはバイオセンサーにより誘導されるような、デマルチプレクサーを介して特定の電極対にパワーを誘導する。
【0068】
別の実施形態では、例えば米国特許出願公開第6,527,762号に記載されるように活性化エネルギーにより熱誘導された破裂、透過化処理が開始される。例えば、抵抗ヒータを使用する放出を制御するための手段により、能動的に崩壊させ、または透過性にさせる。抵抗ヒータにより、例えばリザーバキャップまたは放出システムの熱膨張の結果、リザーバキャップは相転移または破断を引き起こし、これによりリザーバキャップを破裂させ、選択されたリザーバから薬剤が放出される。電気化学的崩壊実施形態としてすでに述べたような成分を使用して、抵抗器への電流の印加により供給し、制御することができる。例えば、マイクロプロセッサーは電流を誘導し、所望の間隔でリザーバを選択することができる。
【0069】
好ましい実施形態において、コントロール手段はリザーバキャップの電熱切除を制御する。例えば、薬物供給デバイスは、入力リードおよび出力リードを介し、リザーバキャップを局所的に加熱し破裂させるために、例えば製剤を放出するか、あるいはそこに配置されたセンサーを曝露させるために、導電性材料から作られたリザーバキャップ、リザーバキャップに接続された電気入力リード、リザーバキャップに接続された電気出力リード、リザーバキャップによって電流の有効量を供給するコントロール手段を含むことができる。一実施形態において、リザーバキャップおよび伝導性リードは同じ材料から作られ、そこではリザーバキャップは基板よりも熱伝導性のより低い基質内で懸垂されているので、印加された電流下でリザーバキャップの温度が局所的に増加する。あるいは、リザーバキャップおよび伝導性リードは同じ材料から作られ、さらにこのリザーバキャップは電流の流れる方向により小さな断面積を有し、リザーバキャップによる電流密度の増加は局部加熱を増加させる。あるいは、リードを形成する材料とは異なる材料からリザーバキャップを作ることができ、リザーバキャップを形成する材料が異なる電気抵抗率、熱拡散係数、熱伝導度、および/またはリードを形成する材料よりも低い融解温度を有する。米国特許出願公開第2004/0121486A1号に記載されるように、これらの実施形態の多様な組み合わせを使用することができる。
【0070】
移植用デバイスは一般に、実質的にリザーバキャップのみを曝露する例えばチタン容器中で密閉して封止される。
【0071】
一実施形態において、コントロール手段としては、マイクロプロセッサー、タイマー、デマルチプレクサー、および入力源(例えばメモリー源、信号受信機、あるいはバイオセンサー)、および電源などがある。電極製造中にタイマーおよびデマルチプレクサー回路をマイクロチップの表面に直接デザインし、組み込むことができ、あるいは個別のマイクロチップ中に組み込んでもよい。マイクロプロセッサーは、メモリー源、信号受信機、あるいはバイオセンサーからの出力を、デバイス上の特定のリザーバに対するデマルチプレクサーによるパワーの方向に関するアドレスに翻訳する。メモリー源、信号受信機、あるいはバイオセンサーなどのマイクロプロセッサーへの入力源の選択は、マイクロチップデバイスの特定の用途、およびデバイス操作がプリプログラムされているかどうか、遠隔手段によって制御されるかどうか、あるいはその環境(すなわち生体フィードバック)からのフィードバックによって制御されるかどうかにより依存する。例えば、マイクロプロセッサーは、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリー(EPROM)、タイマー、デマルチプレクサー、およびバッテリーまたは生物電池などの電源などのメモリー源と併用して使用することができる。リザーバが開かれることになっている時間、およびリザーバの位置またはアドレスを含むイベントのプログラムされたシーケンスは、ユーザによってEPROMに保存される。タイマーにより指示されるように暴露または放出の時間に達すると、マイクロプロセッサーは、特定のリザーバのアドレス(位置)に相当する信号をデマルチプレクサーへ送信する。デマルチプレクサーは、マイクロプロセッサーによりアドレスされたリザーバへ、電位または電流などの入力を送る。
【0072】
(リザーバ内容物)
リザーバは、製剤、検出デバイス、輸送エンハンサー、あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0073】
(薬剤)
製剤は、薬剤を含む組成物である。本明細書で使用される用語「薬剤」は、任意の治療、または予防薬(例えば、医薬品原薬、またはAPI)を含む。一実施形態において、薬剤は、特に市販上および医学的に有効な時間にわたり、例えば薬剤を投与する必要があるまで薬物供給デバイス内に貯蔵中に、薬剤の安定性を維持し、あるいは延長させる目的で固形形状で提供される。固形薬剤基質は精製形態、あるいは薬剤が含まれるか、懸濁されているか、あるいは分散されている別の材料の固形粒子の形態であってもよい。一実施形態において、薬剤は放出を促進するのに有用な医薬品添加物、例えばリザーバから薬剤を押し出し、およびリザーバ上の任意の組織嚢を介して支援できる水膨潤性材料とともに配合される。
【0074】
薬剤は小分子、大きな(すなわちマクロ)分子、あるいはこれらの組み合わせを含むことができる。一実施形態において、大分子薬剤がタンパク質またはペプチドである。様々な他の実施形態では、薬剤は、アミノ酸、ワクチン、抗ウイルス薬、遺伝子送達ベクター、インターロイキン阻害薬、免疫調節物質、向神経性因子、神経保護剤、抗悪性腫瘍薬、化学療法薬、多糖類、抗凝血剤(例えばLMWH、五糖類)、抗生物質(例えば免疫抑制薬)、鎮痛薬、およびビタミン類から選択することができる。一実施形態において、薬剤がタンパク質である。適切な種類のタンパク質の実施例としては、糖タンパク質、酵素(例えばタンパク質分解酵素)、ホルモンまたは他の類似物(例えばLFLRH、ステロイド、コルチコイド、成長因子)、抗体(例えば抗VEGF抗体、腫瘍壊死因子阻害薬)、サイトカイン(例えばα−、β−あるいはγ−インターフェロン)、インターロイキン(例えばIL−2、IL−10)および糖尿病/肥満関連治療薬剤(例えばインシュリン、エキセナチド(exenatide)、PYY、GLP−1、およびその類似物)などがある。一実施形態において、薬剤はロイプロリド(leuprolide)などの性腺刺激ホルモン放出(LHRH)ホルモン類似物である。別の代表的な実施形態では、薬剤は、ヒト副甲状腺ホルモンあるいはその類似物、例えばhPTH(1−84)、またはhPTH(l−34)などの副甲状腺ホルモンを含む。さらなる実施形態において、薬剤はヌクレオシド、ヌクレオチド、およびそれらの類似物および接合体から選択される。さらに別の実施形態では、薬剤はナトリウム排泄増加活性を有するペプチドを含む。さらに別の実施形態において、薬剤は、利尿薬、血管拡張剤、陽性変力薬、抗不整脈薬剤、Ca+チャネル遮断薬、抗アドレナリン作動性神経薬/交感神経遮断薬、およびレニンアンジオテンシンシステム拮抗薬から選択される。一実施形態において、薬剤はVEGF阻害薬、VEGF抗体、VEGF抗体フラグメント、あるいは別の抗脈管形成性薬剤である。実施例としては、脈絡膜血管新生の予防に使用することができるMACUGEN(ファイザー/Eyetech)か、LUCENTIS(登録商標)(Genetech/ノバルティス)(rhuFab VEGF、あるいはranibizumab)(pegaptanibナトリウム)などのアプタマーなどがある。さらに別の実施形態では、薬剤はプロスタグランジン、プロスタサイクリン、あるいは末梢血管疾患の治療に有効な別の薬剤である。
【0075】
さらに別の実施形態において、薬剤はVEGFなどの脈管形成性薬剤である。さらなる実施形態では、薬剤はデキサメサゾンなどの抗炎症薬である。一実施形態において、デバイスは脈管形成性薬剤および抗炎症薬の両方を含む。
【0076】
多様な実施形態では、薬剤は骨形態形成蛋白質(BMP)、成長因子(GF)、あるいは成長または分化因子(GDF)である。代表的な実施例としては、BMP−2、OP−1(骨原性タンパク質−1、すなわちBMP−7)、形態発生タンパク質(CDMP)、骨再生因子(osteogenin)、BMP−2/4、BMP−3、BMP−9、BMP−10、BMP−15、およびBMP−16、GDF−5またはrhGDF−5上皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換発育因子−αおよび−β(TGF−αおよびTGF−β)、エリスロポエチン(EPO)、インシュリン様成長因子−Iおよび―II(IGF−IおよびIGF−II)、腫瘍壊死因子−αおよび−β(腫瘍壊死因子−α、また腫瘍壊死因子−β)、コロニー刺激因子(CSF)、およびニューロン成長因子(NGF)などがある。
【0077】
1つのデバイス中のリザーバには、単一の薬剤あるいは2つ以上の薬剤の組み合わせ、および/または2つ以上の輸送エンハンサーを含むことができ、さらに1つ以上の薬学的に許容可能な担体を含むことができる。2つ以上の輸送エンハンサー、脈管形成性薬剤、抗炎症薬、あるいはこれらの組み合わせは、ともに貯蔵し、同じ1つ以上のリザーバから放出させることができ、あるいは各々を別のリザーバに貯蔵し、放出させることができる。
【0078】
(賦形剤および基質材料)
薬剤、輸送エンハンサー、あるいはその両方を基質材料中に分散させ、薬剤、輸送エンハンサー、あるいはその両方のほう出割合をさらに制御することができる。この基質材料は米国特許出願公開第5,797,898号に記載されるように「放出システム」である、すなわち化学分子の放出割合を制御する方法を提供することができるような分解、溶解、あるいは拡散特性を有することが可能である。
【0079】
放出システムは1つ以上の賦形剤を含む。適切な薬剤的に許容できる賦形剤としては、非経口投与として認められたほとんどの担体を含む。リザーバ充填、安定性、あるいは放出を支援するように、他の賦形剤を使用して懸濁液中で薬剤を維持してもよい。薬剤の特性に依存して、このような賦形剤は水性または非水性、親水性または疎水性、極性または無極性、プロトン性または非プロトン性であってもよい。例えば米国特許出願公開第6,264,990号を参照。放出システムは任意にインビボで、安定剤、抗酸化剤、抗菌剤、防腐剤、緩衝剤、界面活性剤、およびリザーバからの分子を貯蔵し放出するのに有用なその他の添加物を含む。
【0080】
放出システムは、血漿レベルの時間変動が必要である場合、時間的に変調された放出プロファイルを、あるいは例えば治療効果を増強するために一定の血漿レベルが必要な場合、より連続的または一貫した放出プロファイルを提供する。拍動的放出は個々のリザーバ、複数のリザーバ、あるいはこれらの組み合わせより達成することができる。例えば、各々のリザーバは単一パルスのみを提供するが、いくつかのリザーバの各々からの単一パルス放出を時間的にずらすことにより、複数パルス(すなわち拍動性放出)が達成される。あるいは、放出システムのいくつかの層および他の材料を一つのリザーバ中へ組み込むことにより、一つのリザーバから複数パルスを達成することができる。連続的放出は、長期間にわたって分子を分解し、溶解し、あるいは拡散を可能とする放出システムの組み込みにより達成することができる。さらに連続的放出は、(複数の)リザーバ開口部内またはその上に律速半透膜の組み込むことにより、リザーバから制御することができる。さらに、ラピッドサクセション(デジタル放出)で分子のいくつかのパルスを放出することにより、連続的放出に近づけることができる。例えば、米国特許出願公開第5,797,898号に記載されるように、本明細書に記載された能動的放出システムを単独で、あるいは受動的放出システムと組み合わせて使用することができる。例えば、動的放出システムを曝露する能動的手段によってリザーバキャップを除去することができる。あるいは受動的および能動的放出リザーバの両方に所定の基板を含めることができる。
【0081】
一実施形態において、リザーバ内の製剤は、薬剤および非薬剤材料の層を含む。能動的放出機序がリザーバ内容物と接触した後、非薬剤の介在層により、複数層は薬物放出の複数パルスを提供する。
【0082】
(検出装置)
いくつかの実施形態において、センシング成分またはデバイスは、一つあるいは好ましくはいくつかのデバイスのリザーバ中で提供される。好ましい実施形態では、インビボにてある部位における化学種またはイオン種中の存在、存在しないこと、あるいは変化またはエネルギーを検出するために使用することができる2つ以上のリザーバがバイオセンサーを含んでいる。例えば、このセンサーは、患者の血液、血漿、間質液、またはその他の体液中に存在するグルコース、尿素、カルシウム、あるいはホルモンの濃度をモニターすることができる。
【0083】
センサーの種類としては、バイオセンサー、化学センサー、物理センサー、あるいは光センサーなどがある。本明細書に記載されたリザーバデバイスで/とともに使用することに適するバイオセンサーの実施例は、参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第6,486,588号、6,475,170号、および6,237,398号に開示されている。その他の検出デバイスは、参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第6,551,838号、および米国特許出願公開第2005/0096587A1号に記載されている。本明細書で使用される用語「バイオセンサー」は、対象とする分析物の化学ポテンシャルを電気信号に変換する検出デバイス、ならびに電気信号を直接、あるいは間接的に測定する電極(例えば、機械的または熱エネルギーを電気信号に変換することによる)を含む。例えば、バイオセンサーは、多様な生体内位置で内因性電気信号(EKG、EEG、あるいは他の神経信号)、圧力、温度、pH、あるいは組織構造上の負荷を測定する。続いてバイオセンサーからの電気信号は、例えばマイクロプロセッサー/コントローラーによって測定することができ、その後、遠隔制御装置、別のローカルコントローラ、あるいはその両方に情報を伝達することができる。例えば、システムを使用し、患者の生命徴候あるいは薬物濃度などの移植環境に関する情報を中継または記録することができる。
【0084】
検出デバイスで得られたデータを受け取り、さらに分析するために、いくつかの選択肢が存在する。デバイスはローカルマイクロプロセッサーまたはリモートコントロールによって制御される。バイオセンサー情報は、コントローラーへ自動的に、ヒトの介在により、あるいはこれらの組み合わせにより活性化を行う時間およびその種類を決定するための入力を提供する。例えば、植え込み型薬物送達システム(あるいは、その他の徐放/制御されたリザーバ暴露システム)の操作を、内蔵のマイクロプロセッサ(すなわち、移植用デバイスパッケージ内の)によってコントロールすることができる。デバイスからの出力信号は、必要に応じ適切な回路構成によって条件付けされた後に、マイクロプロセッサに捕獲される。分析およびプロセシングの後、書き込み可能なコンピュータメモリーチップに出力信号を貯蔵し、および/または移植用デバイスから離れた遠隔地へ(例えば無線で)転送することができる。バッテリーにより局所に、あるいは無線伝送により遠隔的に、移植用デバイスに動力を供給することができる。例えば米国特許出願公開/0072784号を参照のこと。
【0085】
一実施形態において、放出およびセンサー/センシング成分のための薬物分子を含むリザーバ内容物を有するデバイスが提供される。例えば、センサーまたはセンシング成分はリザーバに位置することができ、あるいはデバイス基板に付着させることができる。このセンサーは、例えばマイクロプロセッサーを介して、操作的に情報交換を行い、投与量および頻度、放出時間、放出有効レート、薬剤あるいは複合薬の選択、および類似のものを含む薬物放出変数を制御あるいは改質することができる。センサーまたはセンシング成分は、生体内移植部位での種類または特性を検出する(またはしない)、さらにデバイスからの放出を制御するために使用されるマイクロプロセッサーへ信号を中継する。このような信号は、薬剤の放出を制御する、および/または精密に制御するフィードバック提供することができる。
【0086】
一実施形態において、デバイスはグルコースモニタリングおよびインシュリン制御に使用される1つ以上のセンサーを含む。センサーからの情報を使用し、同じデバイスから、あるいは個別のインシュリン放出デバイス(例えば、従来のインシュリンポンプ、外部に着用されたバージョン、あるいは移植バージョンのいずれか)からのインスリンの放出を能動的にコントロールすることができる。
【0087】
(移植用医療デバイスの使用)
移植用医療デバイスは種々の形態をとり、様々な治療および/または診断アプリケーションにおいて使用することができる。リザーバ手段、リザーバ内容物、リザーバコントロール手段、および輸送増強手段を含む移植用デバイスは、別の医療システムあるいはデバイスへ統合することができる。実施例としては、移植用の制御された医薬品送達デバイス、薬剤ポンプ(移植用浸透圧または機械ポンプなどの)およびこれらの組み合わせなどがある。
【0088】
このデバイスを使用および操作する方法は、全ては参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第5,797,898号、6,527,762号、6,491,666号、6,551,838号、および6,875,208号、ならびに、米国特許出願公開第2002/0099359A1号、2004/0082937A1号、2004/0127942A1号、2004/0106953A1号、および2005/0096587A1号にさらに記載される。
【0089】
(実施形態の例示)
本発明のデバイスおよび方法はさらに添付の図面を参照して理解することができ、類似の番号は同じデバイスまたは成分を表す。
【0090】
図1は、マルチリザーバ移植用医療デバイスのリザーバおよびリザーバキャップの1つの実施形態を示す。デバイス10(単に部分的に示された)は、第1の基板部18および第2の基板部16を有する本体部分12を含む。リザーバ14は本体部分内に規定される。(この図解中の本体部分内には、2つが設けられているが、第1の基板部の切り取り部分からは一方だけが見える。)リザーバの放出開口部は、リザーバキャップ20aおよび20bで被われている。金属導線22aおよび22bは、リザーバキャップに電流を供給するために、リザーバキャップと電気的に接続されている(電熱的切除によるリザーバ開放のため)。誘電体層25は第1の基板部の外側表面上に提供され、この導線の真下にある。リザーバは製剤またはセンサーなどのリザーバ内容物(表示せず)を含み、さらにデバイスは組織嚢経由輸送を増強する1つ以上の手段を含む。
【0091】
図2は、本体部分内のリザーバの一実施形態の断面図を示し、製剤が導入されているリザーバを示す。リザーバキャップ38で被われた放出開口部33を有する基板30はリザーバ31を含む(ここに表示していないが、リザーバの広い方の充填側は、本明細書に記載された薬剤を導入し配合するプロセスの完了後に封止される。)金属導線36は、製剤46の放出を開始するためにリザーバを開放するのに必要な時間で、リザーバキャップ38を介して電流を供給することができる。誘電体層32および上部不活性化層34も示す。液状の薬液または懸濁液40をリザーバに堆積させ、凍結乾燥あるいは乾燥によって薬剤基質42を乾燥させておき、続いて組織嚢経由輸送を増強する溶媒などの医薬品添加物44で基質を裏込めすることにより、製剤46がリザーバに導入される。
【0092】
図3は、移植された薬物供給デバイス50の1つの実施形態を示し、本体部分(あるいは基板)52、製剤が導入され、リザーバキャップ60に被われたリザーバ54を含む。分極した電極56は開口部の遠位のリザーバ内部に位置する。電極56は、製剤中の荷電した薬物分子と同じ電荷で荷電している(例えば、両方が「プラスに」荷電しているところが示されている)。デバイスは線維組織嚢、および微小血管系/キャピラリーに包囲され、プラスに荷電した薬物分子がリザーバから放出され(図の右側)、分極した電極は荷電した薬剤を押し出す。その薬物分子の方向は、開放されたリザーバからある距離だけ離れた位置にある反対の電荷に荷電した電極58にほぼ向かっている。
【0093】
図4および図5は、移植用薬剤貯蔵および送達デバイスの2つの可能性のある構造を示す。図4左側においては、チタン気密エンクロージャ63を含むデバイス62の外面、および製剤を含むリザーバを有する本体部分64の放出側/表面を示す。図4右側においては、マイクロプロセッサー66、バッテリー67、および無線遠隔アンテナ68を含むデバイスの内部部分65を示す。図5は製剤を含むリザーバを有する第1の部分72、および全ての調節素子(例えば電気的、電源、無線遠隔など)を含む第2の部分70を含むデバイスの別の実施形態を示す。
【0094】
本明細書に記載された製剤を有する使用に適する移植用デバイスの代表的な実施例としては、移植用ポンプ(例えば、Medtronic−MiniMedおよびArrowで製造されるような機械ポンプ、あるいはDUROS(登録商標)またはViadur(登録商標)のような浸透圧ポンプ)、およびマイクロチップ化学送達デバイスおよびマイクロチップバイオセンサーデバイス(例えば米国特許出願公開第5,797,898号、米国特許出願公開第6,527,762号、米国特許出願公開第6,491,666号、米国特許出願公開第6,551,838号、および米国特許出願公開第6,849,463号)などがある。
【0095】
一実施形態において、このデバイスはリザーバが提供される少なくともデバイスの表面上に位置する保護メッシュを含む。この保護メッシュは、例えば移植前、移植中、あるいは移植後のデバイス面に向けたランダムな機械力に起因する早発性破裂からリザーバキャップを保護することができる。この保護性メッシュはこの保護機能を提供するために実質的に固いものである必要がある。例えば、生体適合性金属、ポリマー、あるいはセラミックから作ることができる。任意に、デバイスのこのリザーバ部分で血管新生を促進する、および/または嚢厚さを最小化する1つ以上の薬剤を保護性メッシュに塗布してもよい。一実施形態において、例えば、メッシュは脈管形成性薬剤、抗炎症薬、あるいは両方の脈管形成性薬剤および抗炎症薬で塗布される。一例を図6に示すが、デバイス80は、チタンハウジング82(電子部品、電源、および遠隔操作部品を内側に含む)、薬剤送達本体部分84(リザーバ、および薬剤、あるいは貯蔵と徐放のための他の分子を含む)、気密性フィードスルー86、および保護メッシュ88を含む。保護メッシュはハウジングから分離して示すが、安全な方法で(例えば溶接によって)ハウジングあるいは気密フィードスルーに取り付けられる。同様に組織内殖を誘発するためにメッシュ中の細孔を調整することができる。
【0096】
(組織嚢経由輸送の測定)
別の態様では、交差組織嚢輸送における異なる製剤およびデバイス改質の影響をより良好に理解する手段として試験デバイスおよび方法が開発されている。重要なことは、このデバイスおよび方法は、完全な組織嚢を崩壊させる必要なく組織被包化の影響を排除して試験することができる。このデバイスは、インサイチュ(動物中で)で完全な組織嚢内部へのアクセスを有利に可能とし、顕著に組織嚢を介する分子輸送の詳細なインサイチュ測定を得ることを可能とする。このデバイスは組織嚢の特性または構造(例えば、厚さ、血管分布、密度、空隙率、透過性など)を改質/調節する方法を評価し、さらに例えば異なる方法、あるいは異なる条件の影響下で形成された2つの組織嚢を比較することなど、輸送を改善するための異なる戦略の定量的比較を行うことを可能とする。
【0097】
このデバイスは、さらに異なる材料またはデバイス構成を試験することができる。一実施形態において、嚢内部にアクセスする目的はデバイスを試験することである。例えば、特定の時間に、例えばリザーバキャップをデバイス本体の開口部から機械的に破裂させるか、電気化学的にまたは電熱的に崩壊させるか、あるいは別の方法で除去することにより、デバイス内への経路を開放する手段を含むデバイスを比較することができる。別の実施形態において、目的は移植材料として考慮されているバルク材料を試験すること、如何なる種類の嚢形態であるか、このような材料/デバイスが薬剤伝達またはバイオセンシングデバイスとして、あるいは薬剤伝達またはバイオセンシングデバイスの中で有用であると考えられるかどうかを観察することである。
【0098】
これらのデバイスおよび方法は、リザーバベース(特に、マイクロリザーバ)の移植用医療デバイスへの影響を評価するために特に適用可能であるが、このデバイスおよび方法は、例えば、リザーバ内容物(例えば構成または膜)に依存しない。このデバイスおよび方法を使用または適用すれば、いずれか一方の方向における輸送すなわち、リザーバ内へ(例えば、センシング用途のため)、あるいはリザーバから(例えば、薬剤伝達用途のため)の輸送を測定することができる。
【0099】
試験デバイスおよび方法は、灌流液が半透膜材料から作製されたチューブ材料を流れ、或る分子種がチューブ材料を通り灌流液へ、または灌流液から流れる際の微小透析の一般概念に由来する。図7A−Bを参照すること。例えばチューブを通って流れた後の灌流液中にある分子種(例、グルコースあるいは他の分析物)の量を測定することにより、あるいはチューブを通って流れた後どの程度の分子種(例えば薬剤)が灌流液から出たのかを測定することにより、輸送された分子種を収集するか、あるいは測定することができる。しかしながら、数日あるいは数週後に、組織嚢が半透膜チューブ材料のまわりに形成され、膜の細孔内で成長すると予想されるので、この従来の微小透析プロセスは長期間の輸送観察には適さない。この被包化および内殖はこの膜を介した輸送を妨害し、この膜内にあるいは直下に含まれるセンサー酵素の分解を促進する可能性がある。これは、移植用センサーの失敗となる2つの主要な理由のうちの1つであるセンサー膜のバイオ汚損になると思われる。(別の主な理由は嚢で生じる遅延である。)
本発明の試験デバイスおよび方法の一つの実施形態では、図8−14の非限定的な例で示されるように、デバイスはリザーバベースの移植用医療デバイスおよび不浸透性チューブ材料の組み合わせを含み、その結果、灌流液へ/灌流液からの全ての輸送は医療デバイスのリザーバ開口部を介して行われる。別の実施形態では、図9−10の非限定的な実施例で示されるように、デバイスはリザーバベースの移植用医療デバイスと併用する半透性材料を含む。例えば、この半透膜は対流を阻止するが、約20kDa未満の分子量を有する種の拡散を可能とする典型的な微小透析膜である。移植後にどのくらい長く機能することが想定されるかにより、この膜をデバイスの内側にしてもよいし、外側にしてもよい。この装置は半透膜を必要とするかどうかは、例えばどの程度良好に組織嚢がデバイスに接着されるか、および/または組織嚢がどの程度柔軟性あるいは弾性があるかなど、チューブから嚢内への流体の流動抵抗性に影響を及ぼす因子に依存する。
【0100】
本明細書では、試験デバイスおよび方法のいくつかの実施形態において、例えば内側の開口部が管腔へ開放されているなどの両方の表面で封止/閉鎖されていない場合でもチューブ内の開口部を「リザーバ」と呼ぶ。すなわち用語「リザーバ」は、別の材料が貯蔵される閉空間であるか、あるいは単に嚢の内部にアクセスするためのチューブ壁の開口部である。これらのリザーバからの材料輸送は、対流のないかあるいは対流が最小である必須の拡散ベースのものとしてデザインされる。
【0101】
図8A−Bは、試験デバイスの一部の1つの実施形態を示す。デバイス110は、外側表面124を有するセンサーパッケージ113が取り付けられているチューブ材料112を含む。チューブ材料112およびパッケージ113の間に延在するチャネル122に灌流液が流れる。センサーパッケージは、基板114、リザーバ118(一つが示される)、およびリザーバキャップ116を含む。チューブ材料112は、当業者において公知の接着剤あるいは他のシーリング材料である不透過性の生体適合性材料120で基板に固定される。例えば米国特許出願公開第6,730,072号、米国特許出願公開第6,827,250号、およびPCT公開第WO2005/010240号パンフレット参照。このチューブ材料は本質的に任意の分析物不透過性あるいは代謝産物不透過性の生体適合性材料である。これは比較的柔軟で、動物内への移植に適するものであることが好ましい。
【0102】
一実施形態において、デバイスはリザーバキャップの崩壊あるいは除去に続いて、リザーバ開口部を通る半透性障壁構造ブロッキングバルク流体流を含む。図9および10は、灌流液とリザーバキャップとの間に置かれた半透性材料を含み、このためリザーバキャップが活性化された(すなわち崩壊した)場合、この半透性材料は灌流液と環境との間に置かれる。図9では、半透性材料はチャネル122内部のチューブ130の形態をとり、灌流液はチューブ130の内部空間132を通って流れ、チャネル122内の他の如何なる空間も通過しない。図10では、半透性材料は、リザーバ開口部118に配置されたプラグ140の形態を有する。別の実施形態では、半透膜は基板製造プロセスの間に基板中に直接組み込むことができる。例えば、膜は多孔質シリコン膜である。
【0103】
組織嚢構造特性に影響を及ぼすように、パッケージの外側表面(特に隣接するリザーバ開口部)を任意に塗布し、織込み、あるいはそれ以外に改質することができる。代表的な改質方法としては、(1)タンパク質吸着を減少させるアプローチ、(2)サイトカイン、ヘパリン、代謝中間体、中和抗体、NSAID、およびTGFBなどの接着配位子、成長因子および組織反応修飾因子を使用するヒドロゲル改質、および(3)局所薬剤送達方法、などがある。一実施形態では、当業者に公知の1種以上の脈管形成性薬剤をデバイス上に付着させるか、あるいは別の方法で塗布し、組織嚢の血管分布を増強する。別の実施形態では、輸送計測デバイスの一部が脈管形成性薬剤および/または抗炎症薬とともに導入され、その後密閉され、一方、リザーバの別の部分は輸送に関する情報を提供するために未充填のままで開放されている。続いて、治癒プロセスの間に脈管形成性薬剤および/または抗炎症薬が放出される。本明細書で使用される用語「脈管形成性」は、移植されたデバイス周囲の血管および微小循環の発達を促進し維持する材料、あるいは分子を指す。一実施例において、デバイスは血管性成長因子などの血管誘導性または脈管形成性の薬剤を放出するか、あるいはその薬剤で塗布される。この種の適切な成長因子は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板成長因子、血管透過性因子、繊維芽細胞増殖因子、およびトランスフォーミング成長因子βとして含まれる。別の実施形態では、デバイスは脈管形成性特性を示す外部膜またはコーティング層を含む。これらの層は、例えばテトラフロオルエチレン、親水性ポリフッ化ビニリデン、混合セルロースエステル、および/またはその他のポリマーで作ることができる。別の実施形態では、例えば線維性被膜の全厚を減少させることができるデキサメサゾンのような1種以上の抗炎症薬がこのデバイスに塗布される。さらに別の実施形態では、移植されたデバイスの周りの炎症を減少させ、血管分布を増加させることができるデキサメサゾンおよびVEGFの組み合わせがこのデバイスに塗布される。
【0104】
図11は灌流液の流れが通ることを示す試験デバイス200の平面図である。破線は生体内領域を表し、代表的な実施形態では、試験のために動物に移植されるデバイス部分がどこであるのか、どの部分が外部に残されるのかがわかる。デバイス200はリザーバキャップ216、リザーバキャップの崩壊を活性化するための電気トレース226および外部配線227と共に、注入口チューブ材料212および排出口チューブ材料214、チューブ/マイクロチップ部品213を含む。この実施形態では、デバイスから動物内へと放出された薬剤は、動物の血液および/または尿の周期的サンプリングにより測定することができる。センシング試験では、例えば動物に大量のグルコースを投与し、さらにどの程度の速さでグルコースが嚢を透過し、センサーに達するかをモニターすることができる。
【0105】
図12は試験デバイスのチューブ/マイクロチップ要素300を示す。これはチューブ本体302、およびそこに付着した薬剤伝達パッケージ304を含む。薬剤を含む灌流液はチャネル306に流れる。薬剤伝達パッケージは、基板314、リザーバキャップ308a−eにより被われたリザーバ、リザーバキャップへ/リザーバキャップからの電気トレース、および外部配線316を含んでいる。5つのリザーバの直線配列が図示されている。試験操作では、リザーバキャップが崩壊し、これによりデバイスからの流路が作り出される。薬剤は灌流液から、さらに試験動物の体内の隣接する組織嚢へ向けて/通過して拡散する。
【0106】
図13および14は、マイクロチップ部分402、固いチューブ本体404、および可動性注入口/排出口チューブ材料408aおよび408bを含む試験デバイス400の別の実施形態を示す。チューブ本体は生体適合性金属(例えば、ステンレス鋼、チタンなど)またはポリマーで作ることができる。リザーバ膜410はリザーバ開口部内に配置される。操作では、分析物405は組織嚢401からリザーバ開口部を通り、灌流液内に流れ、そこで分析物を測定することができる。
【0107】
代表的な試験では、嚢を特定の期間の間に形成させることができ、続いてリザーバを開き、さらに続いてある期間(例えば数日から2週間まで)の間測定値を得ることができる。またどの程度早く嚢組織が成長をはじめ、開口部をふさぐかにより大きく依存する。このデバイスおよび方法が人類以外の哺乳類での使用を主に意図しているが、ヒトにおいて嚢透過性を試験するために本明細書に記載されたデバイスおよび方法を使用することができる。
【0108】
本質的には、特定の試験用途に適した任意のものを灌流液とすることができる。例えば、リザーバの薬剤含量をシミュレートするためのものとして灌流液を設計することもできるし、グルコースの拡散に対する単純な液体受容体とすることもできる。灌流液の代表的な例としては、非水性の生体適合性溶中のPBS、別の生理的液体または緩衝液、薬液などがある。シリンジ、定量ポンプ、その類似物を含む当業者において公知の本質的に任意のポンピング手段を使用して、デバイスのチューブ材料を通して、この灌流液をポンプすることができる。
【0109】
実際には、一実施形態において、試験デバイスのチューブを移植時に完全に試験動物の皮膚の下に配置し、この部位の皮膚を修正させて、例えばチューブが外に出ている部位で感染の機会が減るように治癒することができる。その後、チューブにアクセスし実験を実行する時に、チューブにアクセスするために小さな切開を入れ、例えば、部分的にチューブを取りだせばよい。実験の間(例えば数日あるいは週)、他の創傷治癒でのような感染を回避させるため部位を清潔にしておくことが必要である。別の実施形態では、移植期間中ずっとチューブを外に出されたままにしている。
【0110】
本発明の試験デバイスおよび方法は、生体内において、移植された医療デバイス上での組織嚢形成の影響を研究するのに有用である。有利なことに、このデバイスおよび方法は被包化の影響を排除し、移植されたデバイスの特定のリザーバ内容物に無関係である。デバイスおよび方法により、例えば移植された医療デバイスの周りに形成される組織嚢を通るグルコース(あるいは他の分析物あるいは薬剤)を定量することができる。試験デバイスおよび方法をデザインし、嚢に関する結果のみが得られるように分子輸送に及ぼすデバイスのあらゆる影響を最小化することができる。
【0111】
本発明のデバイスおよび方法は、以下の限定されない実施例を参照することによりさらに理解することができる。
【実施例】
【0112】
(実施例1:試験デバイスデザイン)
試験デバイスは、閉ループ移植体試験システムの形態をとるものとする。このデザインでは実質的に図13に示されるように、マイクロチップデバイスは代謝産物不透過性チューブ材料の長手方向に沿って取り付けられる。マイクロチップは、移植後の任意の時間に選択的に崩壊することのできる能動的リザーバキャップを含む。このデザインでは必要に応じて縫合ループの配置、あるいは正常な創傷治癒反応を破綻させる移植体の動作を低減させるために外科用メッシュの配置を含んでもよい。マイクロチップは試験ループシステムに密閉され、電気システムに含まれ、膜を活性化し、リザーバおよび経皮コネクターを開放するために使用される。
【0113】
試験デバイスは動物モデルの皮下空間内に移植され、この切開を所定の期間で修復させる。配線およびチューブ材料には、経皮コネクターを介してアクセスすることができる。その後、所定の時間に、代謝産物の皮下注射に合わせて、リザーバキャップを電熱的切除により崩壊させる。試験ループシステム(すなわち内部の液体)は、露出したリザーバ開口部により生体内環境に曝露される。代謝産物は図14に実質的に示すように、続いて生体内環境と試験ループシステムとの間を輸送される。生理食塩水が試験ループシステムを通りポンプされ、リザーバの下のデバイスから代謝産物が取り除かれる。その後、代謝産物濃度について排出された生理食塩水を試験する。
【0114】
(実施例2:漏れ試験)
移植に先立ち、動物に使用される試験デバイスを生体外実験することが重要である。システムの漏れについては漏れ試験が行なわれる。デバイスは食塩水中に置かれる。実験中は、デバイスの膜をそのまま維持する。システムからは、容易に検出可能な化合物(例えば、放射線標識マンニトール)が、ポンプの利用によって押し出される。所定の時点で、生理食塩水が採取され、分子がシステムを通り押し出された形跡すべてについて分析される。この実験は適切なデバイスアセンブリを確保するため、複数のデバイス上で繰り返す必要がある。図15に試験のセットアップを示す。
【0115】
(実施例3:生体外試験)
任意の生体内試験に先立ち、デバイスはデバイス機能性を確認するために生体外で試験される。デバイスは食塩水中に置かれる。生理食塩水はシステムを通りポンプされる。続いて、マイクロチップリザーバが切断され、開口部から試験ループシステムへアクセスする。デバイスが浸されている生理食塩水に、検出され易い化合物を所定量注入する。この食塩水はシステムを通りポンプされ、一定の間隔で収集される。排出された生理食塩水について、所定の時間ポイントで化合物の濃度を分析する。適切なデバイス機能を確保するため、この実験を複数のデバイス上で繰り返し行う必要がある。この生体外試験により比較用として最良の実験事例が得られる。図16は試験セットアップを示す。生体内試験に先立ち、再現性のある結果が得られなければならない。
【0116】
機能試験に加えて、これらの試験方法は、デバイスの性能あるいは特定の輸送増強特性を評価するのに有用である。例えば、デバイスが濃度Yを有する溶液に浸される場合、続いて、どの程度の灌流液がリザーバ開口部を通して失われるのか、注入口と排出口との静水圧差により押し出される流量の関数としてまたは流量を所定値して、溶質中に回収される濃度を定量することができる。
【0117】
(実施例4:生体内試験)
試験システムを皮下空間内に移植しておく。移植後、システムを食塩水で連続的に充填し、さらに周期的に洗浄する。必要に応じ、マイクロチップリザーバを被うリザーバキャップを電気的に切断する。試験日におけるこの操作に先立ち、皮下グルコースセンサーを皮下に移植し、新しい対照群とする。「0」日および「x」日における読み取り値を得るために当日またはその前に、別のマルチリザーバ輸送手段を移植することもできる。切断直後に、皮下(SC)、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、および/または腹膜内(IP)に所望の代謝産物を注入する。注入後あらかじめ定められた時点で、システム中の液体(約1−2ml)を完全に新鮮な溶液と入れ換える。この時点で血液を採取し、代謝産物レベルを分析する。これは第2の対照群として有用である。最後のシステム試料が得られた後、動物を安楽死させ、デバイスおよび組織嚢を除去する。嚢血管分布の測定に従って、嚢の組織学的な評価を行う。この情報を代謝産物注入後に得られた輸送量と比較する。
【0118】
試験デザインには、特定の試験時点に各々指定された複数の動物の群が含まれる。移植特性および動物の健康状態が移植期間全体にわたり同一のままである場合は、移植後3〜6月は嚢特性が変化しないので、個別の各試験を6ヶ月実施する。
【0119】
チューブ材料、ステンレス鋼、およびシリコンマイクロチップの単純なシステムを使用して最初の試験が行われる。得られたデータからは、嚢修飾因子のないベースラインが得られる。生体内でのベースラインが完成してから、多様な線維性被膜修飾因子を使用する複数の試験を行う。例えば、嚢形成における多孔質材料の影響、およびVEGF(注射またはヒドロゲル)の局所送達の影響が検討される。各時点で、注入試験および組織学的データをベースライン移植試験のデータと比較する。
【0120】
本明細書に引用された出版物、およびそれらで列挙される材料は、特に参照によって引用される。本明細書に記載された方法およびデバイスの修飾および変形は、先に示した詳細な説明により当業者において明白であろう。このような修飾および変形は、添付された特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、電熱的切除によって開放するためのリザーバおよびリザーバキャップを有するデバイス本体の1つの実施形態の断面図および透視図である。
【図2】図2は、リザーバに製剤および輸送増強溶媒を導入するプロセスが行われるデバイスの一つのリザーバの断面図である。
【図3】図3は、デバイスリザーバから周囲の線維組織嚢および微小血管系内へ/を通って荷電された薬剤を押し出すために電動式押し出し手段を使用して、移植された薬物供給デバイスの1つの実施形態の断面図および部分投影図である。
【図4】図4は、本明細書で述べたように、移植用マルチリザーバ医療デバイスの一実施形態の透視図および部分分解立体図である。
【図5】図5は、本明細書に記載するような、移植用マルチリザーバ医療デバイスの第2の実施形態の透視図である。
【図6】図6は、リザーバキャップ上に保護メッシュ構造を有する移植用マルチリザーバ医療デバイスの一実施形態の透視図および部分分解立体図である。
【図7】図7A−Bは、先行技術のチューブ形状の半透膜により、薬剤および分析物の潅流プロセスを示す断面図および透視図である。
【図8】図8Aは、組織嚢経由輸送の測定に使用される試験デバイスの1つの実施形態の透視図および断面図であり、図8Bは同じ実施形態の断面図である。
【図9】図9は、組織嚢経由輸送の測定に使用するための、第1の灌流液流管内部の半浸透性チューブを含む試験デバイスの別の実施形態の断面図である。
【図10】図10は、組織嚢経由輸送の測定に使用するための、リザーバ開口部内に配置された半浸透性プラグを含む試験デバイスの別の実施形態の断面図である。
【図11】図11は、組織嚢経由輸送の生体内測定のために、本明細書に記載される試験デバイスの一実施形態の平面図である。
【図12】図12は、組織嚢経由輸送の測定に使用するために、試験デバイスのさらに別の実施形態の透視図および断面図である。
【図13】図13は、組織嚢経由輸送の測定で使用するために、個別に開放可能な複数のリザーバを含む試験デバイスのさらに別の実施形態の透視図である。
【図14】図14は、組織嚢を通る分析物の流れを測定するために使用される図13に示す試験デバイスの断面図である。
【図15】図15は、組織嚢経由輸送の測定に使用される試験デバイスの一つをリーク試験するためのセットアップ/プロセス実験装置の透視図である。
【図16】図16は、組織嚢経由輸送の測定に使用される試験デバイスの一つを生体外試験するためのセットアップ/プロセス実験装置の透視図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年6月1日出願の米国仮特許出願第60/575,946号明細書、2004年12月13日出願の第60/635,780号明細書、2005年2月17日出願の第60/593,832号明細書、および2005年2月24日出願の第60/655,785号明細書の優先権を主張するものである。本出願は、その内容全体を参照によって本明細書に引用される。
【0002】
本発明は全体として、移植用医療デバイスの分野に関する。特に本発明は、移植された医療デバイスへ/移植された医療デバイスから組織嚢構造を通る薬剤あるいは分析物の物質輸送を測定および調節するため、および移植体の機能、組み込み、および耐用年数を改善するために組織/移植体相互作用を制御するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトおよび動物患者内への移植のための種々の医療デバイスが開発されてきており、現在も開発中である。事例としては、薬物供給装置、バイオセンサー、整形外科人工補綴物、およびその類似物などがある。医療デバイスの移植は、身体が異物に反応すると炎症および線維症を誘発する可能性がある。線維症により、デバイスの近接部での線維組織嚢の形成が引き起こされる。このような嚢では、血管分布の範囲、水および細胞性内容物、および一般に原材料であるコラーゲンの架橋度を含めその組成が変化する可能性がある。嚢の厚さは数ミクロンから数mmまでの範囲に及ぶ。
【0004】
移植された薬物供給装置またはバイオセンサーの寿命の間に、線維組織嚢の構造が変化するおそれがある。このような変化はデバイスからの薬剤の輸送、またはデバイスへの分析物の輸送に悪影響を及ぼすおそれがある。例えば、骨粗鬆症を治療する副甲状腺ホルモンなど、有効とするために毎日ボーラス投与(例えばパルス)によって供給する必要のある薬剤は、放出速度が治療以下のレベル、あるいはむしろ有害なレベルの放出速度まで遅くなる可能性がある。さらに、プロスタサイクリンなどのように循環から速やかに除去される薬剤が組織嚢を介してあまりにも緩徐に放出される場合、薬剤は治療濃度に達することができない。同様に、組織嚢は、移植されたデバイス内あるいはデバイス上に含まれるセンサーへ分析物またはその他の物質が拡散するのを遅らせる。分析物のセンサーへの拡散速度の緩徐化は、分析物の変化を検出するために必要な時間を増加させるか、あるいはセンサーの感度を低下させ、そのいずれかによって、分析物または治療薬のモニタリングにおけるセンサーの働きが無効となる。例えば、組織嚢はグルコースセンサーへのグルコース輸送速度を遅くし、時間の遅延を引き起こし、その結果、体内の実際のグルコースレベルと測定されたグルコースレベルとの間に矛盾が生じる。遅延が大きくなりすぎると、測定されたグルコースレベルはもはや実際のグルコースレベルを示さない。この場合、測定されたグルコースレベルを使用して、I型糖尿病のインシュリン投与を決定すると、過剰または過少投与の危険が生じると予想され、低血糖などの危険な状態に至る可能性がある。
【0005】
したがって、例えば、移植された薬物供給デバイスから効果的な薬物放出速度をある期間にわたって維持することができるように、あるいは移植されたセンサーが有効性を維持することができるように、組織嚢の拡散速度緩徐化効果を打ち消すための方法、デバイス、組成物、あるいはこれらの組み合わせを提供することが望ましい。
【0006】
研究者らは嚢を介した分子輸送の特徴を明らかにし、改善する方法として、多様な手段を使用し組織嚢の構造を改質することを試みた。現行の方法論は、おおまかに(1)生体外試験(例えば、組織嚢を動物から取り除き、拡散細胞中に配置し、さらに「生きていない」嚢を介した輸送を測定する)、または(2)動物内に標識を注入する(例えば、マーカーを動物へ注入し、動物を犠牲にして、組織嚢を除去し、凍結し、さらに嚢についてマーカー含有量および位置を分析する)方法に限定されているが、分析は1頭の動物当たり1回のみに制限され、非常に非効率的で、無駄が多い。これらの方法では、より現実的で信頼性のあるデータを提供すると考えられるインサイチュまたは生体内での複数回またはリアルタイムでの定量的測定はできない。センサーの生体適合性、および長期信頼性および機能性を改善し、さらにこの目的のために、組織嚢全体にわたる分子輸送のインサイチュ測定を得る必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
移植後、移植された医療デバイスの周囲に形成される線維組織嚢を介した物質輸送を増強するため、デバイスへまたはデバイスからの物質輸送をさらに補助する移植されたデバイス周囲の血管新生を増強するための方法およびデバイスが開発された。
【0008】
一実施形態において、組織嚢全体にわたる移植された薬物供給デバイスからの薬剤輸送を増強するための方法が提供される。この実施形態では、この方法は移植部位のデバイス周囲に存在する(万一存在する場合)線維組織嚢を介した製剤の輸送を促進するため、患者に移植された医療デバイスに位置する複数の離散したリザーバから製剤を制御可能な様式で放出すること、患者に移植されたこの医療デバイスから輸送エンハンサーの有効量を制御可能な様式で放出することを含む。
【0009】
種々の実施形態において、増強薬剤はデバイス中に位置する1つ以上のリザーバ、デバイス上の表面コーティング、あるいはこれらの位置の両方より放出される。輸送エンハンサーの放出は製剤の放出と同時、または時間的に切り離されて行われる。輸送エンハンサーの放出が、連続的に、あるいはとびとびの間隔で行われる。
【0010】
一実施形態において、製剤はさらに輸送エンハンサーを含み、製剤および輸送エンハンサーは同一のリザーバから放出される。
【0011】
一実施形態において、輸送エンハンサーは薬剤のための溶媒または共溶媒を含む。別の実施形態では、輸送エンハンサーは界面活性剤を含む。ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンはその例である。さらに別の実施形態において、薬物分子は電荷分子を含み、および輸送エンハンサーはイオン対形成対イオンを含む。
【0012】
一実施形態において、輸送エンハンサーは組織嚢の成分を溶解または分解する分子を含む。例としては、コラゲナーゼ、トロンビン、フィブリノリジン、ヒアルロニダーゼ、トリプシン、およびこれらの組み合わせなどがある。
【0013】
一実施形態において、デバイスはリザーバから、および組織嚢を介して製剤を機械的に駆動するための手段をさらに含む。例えば、製剤を機械的に駆動するための手段としては、ピストン、水膨潤性材料、あるいはこれらの組み合わせなどがある。
【0014】
さらに別の実施形態において、デバイスは放出のための脈管形成性コーティングまたは脈管形成性分子をさらに含む。血管内皮細胞増殖因子はこのような材料の例である。別の実施形態では、デバイスは抗炎症薬をさらに含み、これらはリザーバ、デバイス上のコーティング、あるいはリザーバおよびコーティングの両方から放出される。デキサメサゾンはこのような薬剤の例である。
【0015】
別の態様において、移植された薬物供給デバイスから、および組織嚢全体にわたる薬剤の輸送を増強するための方法が提供され、この方法は荷電した薬物分子を含み、患者に移植された医療デバイスの多数の離散性リザーバから、製剤を制御可能な様式で放出する工程を含み、薬剤の放出、および増強薬剤の放出はデバイスにある1つ以上のリザーバに由来し、(万一存在する場合は)移植された医療デバイスを包囲する組織嚢を介して荷電した薬物分子の輸送を増強する電動方法を利用する。一実施例において、電動方法は
イオントフォレシスを含む。一実施形態において、医療デバイスの外面は、その中またはその上にある電子部品により帯電されており、移植された医療デバイスを包囲する組織嚢を介して薬物分子を押し出すのに行う推進力を生み出す。
【0016】
別の態様では、患者に移植されたセンサーデバイスへの分析物の輸送を増強するための方法が提供される。一実施形態において、この方法は移植されたセンサーデバイスから輸送エンハンサーの有効量を制御可能な様式で放出する工程を含み、このデバイスはそこに配置されたセンサーを有する複数のとびとびのリザーバを有する。一実施形態において、デバイスはリザーバキャップ、およびリザーバキャップを破裂させるための手段をさらに含む。
【0017】
別の態様では、本体部分、本体部分にありかつ本体部分によって規定された2つ以上のリザーバ、リザーバのリザーバ内容物、および物質輸送を増強するための手段、リザーバ内容物の全てまたは一部、あるいはリザーバ内容物の全てまたは一部との接触するための環境成分の全てまたは一部を含む移植後にデバイスの周囲に形成される任意の線維組織嚢を介した移植用医療デバイスが提供される。一実施形態において、リザーバ内容物は製剤を含む。別の実施形態では、リザーバ内容物はセンサーまたはセンサー成分を含む。一実施形態において、物質輸送を増強するための手段、輸送エンハンサー、電動デバイス、容積式機構、あるいはこれらの組み合わせを含む。このデバイスは、任意に放出のための脈管形成性コーティングまたは脈管形成性分子を含む。例えば、放出のための脈管形成性コーティング、脈管形成性分子、あるいはその両方は、血管内皮細胞増殖因子を含む。一実施形態において、デバイスは抗炎症薬をさらに含み、リザーバから、またはデバイス上のコーティングから、あるいはリザーバおよびコーティングの両方から放出される。
【0018】
別の態様では、組織嚢を介した薬剤または分析物の輸送を試験するために移植用デバイスが提供される。一実施形態において、デバイスは、外面、灌流液の液体注入口、灌流液の液体排出口、および注入口および排出口の間で延在する液体導管を有する第1の本体、第1の本体に付着した基板、基板内に規定、および基板を経由して延在した少なくとも1つのリザーバ、液体導管中に第1の開口部、およびデバイスの外面に開放されている第2の開口部を有するリザーバ、リザーバの第2の開口部を被う少なくとも1つのリザーバキャップ、およびリザーバキャップを選択的に崩壊または除去するための手段を含む。デバイスは、一般に灌流液の液体注入口に接続された第1のフレキシブルチューブ、灌流液の液体排出口に接続された第2のフレキシブルチューブ、および液体の導管およびフレキシブルチューブに徹底して灌流液を流すための手段、を含む。一実施形態において、デバイスはリザーバキャップが崩壊あるいは除去されて後に、一方または両方のリザーバ開口部を通る液体の流れをブロックする半透性障壁構造をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の詳細な説明)
一態様において、移植後に移植された医療デバイスの周囲で形成されるあらゆる線維組織嚢を介した物質輸送を増強するため、および/または移植されたデバイス周囲の血管新生を増強し、これによってデバイスへまたはデバイスからの物質輸送をさらに補助するための方法およびデバイスが開発された。
【0020】
一実施形態において、本体部分、本体部分内および本体部分により規定された1つ以上のリザーバ、リザーバ内容物、および移植後にそのデバイスの周囲に形成される任意の線維組織嚢を介する物質輸送を増強するための手段を含む移植用医療デバイスが提供される。デバイスが患者内に移植された後、これらのデバイスの周りでは組織嚢を介する薬物分子および分析物の輸送が生じると思われるが、この輸送を増強するために、および第1の事例において組織嚢の成長を減少させるために方法およびデバイスが提供される。
【0021】
好ましい実施形態では、このデバイスは複数のリザーバを含み、その内容物は、(i)短期、または長期、徐放性の薬剤送達、(ii)分析物または治療薬をモニタリングするためのセンサー、あるいは(iii)薬物およびセンサーの両方を含む。一実施形態において、このデバイスは、リザーバ中に蓄えられリザーバから選択的に放出される製剤、および組織嚢を横切って、その嚢から(リザーバから放出された)薬剤を物質輸送する増強するための手段を含む。別の実施形態では、このデバイスはセンサーおよび組織嚢を介する分析物の輸送を増強する物質輸送を増強するための手段を含む。
【0022】
別の態様では、組織被包化の影響を排除するためにデバイスおよび方法が開発された。このデバイスは、インサイチュで(動物内で)完全な組織嚢内部へのアクセスを効果的に可能とし、これにより有意に組織嚢全体にわたる分子輸送の詳細なインサイチュ測定値が得られる。このデバイスにより、組織嚢(例えば、厚さ、血管分布、密度、空隙率、透過性など)の特性または構造を改質し/調節する方法を評価し、例えば、異なる方法、あるいは異なる条件の影響下で形成された2つの組織嚢を比較するなど、輸送を改善するための種々の方法について定量的な比較を行うことが可能となる。このデバイスは、さらに異なる材料またはデバイス構造を試験することを可能とする。一実施形態において、この嚢の内部にアクセスする目的は、デバイスを試験することである。例えば、デバイス本体中の開口部からリザーバキャップを機械的に破裂させるか、電気化学的にあるいは電熱的に崩壊させるか、あるいは別の方法で除去することなどによって特定の時間にこのデバイス内に経路を開通する手段を含むデバイスを比較することができる。別の実施形態において、その目的は移植材料用として考えられているバルク材料を試験し、どのような種類の嚢を形成するか、さらにこのような材料/デバイスが薬剤伝達またはバイオセンシングデバイスとして有用である可能性があるか否かを観察することである。
【0023】
本明細書で使用される用語「含む」、「含んでいる」、「含む」、および「含んでいる」は明示的に指示のない限り、制限のないオープンな用語を意味する。
【0024】
(移植用医療デバイスおよびそれらの成分)
本医療デバイスは本体部分、本体部分内および本体部分により規定された1つ以上のリザーバ、リザーバ内容物、移植後にそのデバイスの周囲に形成される任意の線維組織嚢を介する(リザーバ内容物の全てあるいはその一部、またはリザーバ内容物の全てまたはその一部と接触することを目的とする環境成分の物質輸送)を増強するための手段を含む。一実施形態において、リザーバ内容物は製剤、製剤を貯蔵するリザーバ、および製剤の放出をコントロールするコントロール手段を含む。別の実施形態において、リザーバ内容物はセンサーを含み、リザーバはセンサーを格納および保護し、センサーが身体(例えば生体内での生理的液体)に曝される時間をコントロール手段が制御する。
【0025】
コントロール手段は種々の形式をとることができる。一実施形態において、それぞれのリザーバは、リザーバからの薬物の放出を開始するために選択的に破裂(例えば、崩壊)させることができるリザーバキャップで蓋をした開口部を有する。例えば、米国特許出願公開第2004/0121486Al号に記載されるように、リザーバキャップは電熱的切除により崩壊する金属膜を含むことができる。その他のリザーバ開放、および放出制御方法は、全て参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第2002/0072784A1号、第2002/0099359A1号、第2002/0187260A1号、第2003/0010808A1号、第2004/0106914A1号、および第2005/0055014A1号、および米国特許出願公開第5,797,898、6,123,861、6,527,762、6,551,838、6,773,429、6,808,522号に記載されている。
【0026】
(デバイス本体およびリザーバ)
デバイスは本体部分、すなわち1つ以上のリザーバを有する基板を含む。リザーバは、ウェル、くぼみ、あるいは空洞であり、一体構造物中に配置され、別の材料の一定量および/または小型デバイスを含むのに適する。好ましい実施形態において、デバイスは、本体部分の少なくとも1つの表面全体にわたって、別個の場所に配置された複数のリザーバを含む。
【0027】
様々な実施形態では、本体部分はケイ素、金属、セラミック、ポリマー、あるいはこれらの組み合わせを含む。適切な基板材料の事例としては、金属、セラミック、半導体、ガラス、および分解性および非分解性のポリマーなどがある。それぞれのリザーバは気密性材料(例えば金属、ケイ素、眼鏡、セラミック)から作られることが好ましく、リザーバキャップにより密閉して封止される。生体内でデバイス適用のために基板材料の生体適合性を有することが好ましい。生体適合性および非生体適合性材料については、基板またはその一部に、用時塗布し、被包し、あるいはそれ以外にポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン類似材料、ダイヤモンド状カーボン、不活性セラミック、チタン、およびその類似物などの生物学的適合の材料中に含めてもよい。一実施形態において、基板は気密であり、(少なくともリザーバデバイスの使用中は)送達される分子および周囲ガスあるいは液体(例えば水、血液、電解質、あるいは他の溶液)に不透過性である。別の実施形態では、基板は生体適合性成分内へ規定された時間の間に分解するか溶解する材料で作られている。このような材料の実例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ならびに分解性ポリ(無水物−co−イミド)などの生体適合性ポリマーが挙げられる。
【0028】
基板は1つのみの材料から成ってもよいし、あるいは複合または多層構成、すなわち互いに接着された同一のまたは異なる基板材料によるいくつかの層で構成される材料でもよい。一実施形態において、基板は互いの接合されたシリコンおよびパイレックス(登録商標)の層を有する。別の実施形態では、基板は、互いに接合された複数のシリコンウェハーを有する。さらに別の実施形態では、基板は低温同時焼成セラミック(LTCC)を含む。一実施形態において、本体部分はマイクロチップデバイスの支持体である。1例において、この基板はシリコンから作られる。
【0029】
本体部分は種々の形状または成形表面を有する。それは、例えば、平面または曲面の放出サイド(すなわちリザーバキャップを有する部位)が可能である。基板は例えば、環状または卵形ディスク、シリンダー、あるいは球から選択された形状であってもよい。一実施形態において、放出サイドは曲がった組織表面に一致させて成形、あるいは体管腔状に成形することができる。別の実施形態において、裏面(放出サイドの遠位)は付着表面に一致させて成形される。様々な実施形態では、本体部分はチップ、ディスク、管、あるいは球の形状である。本体部分はフレキシブルまたは固い状態が可能である。
【0030】
トータルの基板厚およびリザーバ容量は、基板材料のウェハーまたは層の相互の接合または付着により増加さることができる。デバイス厚は、各リザーバの容量に影響し、および/または1つの基板上に実装することができるリザーバの最大数に影響する。基板およびリザーバのサイズおよび数は、患者への移植に適し、好ましくは侵襲性手技を最小限に使用するべく、特定の用途、製造上の制限、および/またはトータルのデバイスサイズ制限に必要なリザーバ内容物の量および容量に適応させるために選択することができる。
【0031】
基板は1つ、2つあるいは好ましくは多数のリザーバを有することができる。様々な実施形態において、数十、数百あるいは数千ものリザーバが基板全体にわたって配列される。例えば、移植用薬物供給デバイスに関する一実施形態では、250〜750のリザーバを含み、それぞれのリザーバには放出のための薬剤の1回量を有する。これは例えば数か月から2年までの期間にわたり毎日放出することができる。ある程度頻繁な服薬スケジュールおよびより短いまたはより長い治療期間が可能である。1つのセンシング実施形態では、デバイス中のリザーバの数は個々のセンサーの操作寿命によって決定される。例えば、1年の移植可能なグルコースモニタリングデバイスでは、身体への接触の後に30日間機能を維持する個々のセンサーでは、(1つのリザーバ当たり1つのセンサーを想定すると)少なくとも12個のリザーバを有する。
【0032】
1つのセンサー実施形態では、センサー表面およびリザーバ開口手段の間の距離は、最小限であり、好ましくは数ミクロンである。この場合、リザーバの容量は主にセンサーの表面積によって決定される。例えば、典型的な酵素グルコースセンサーの電極は、400μm×800μmのスペースを占領する。
【0033】
一実施形態において、リザーバはマイクロリザーバである。本明細書で使用される用語「マイクロリザーバ」は、放出可能な状態にある材料を含むのに適する凹面形状の一体構造物を指し、薬剤を含むマイクロ量の材料を充填するのに適したサイズおよび形状である。一実施形態において、マイクロリザーバは500μL以下(例えば250μL未満、100μL未満、50μL未満、25μL未満、10μL未満など)、および約1nLをこえる(例えば約5μLをこえる、10nLをこえる、約25nLをこえる、約50nLをこえる、約1nLをこえるなど)容量を有する。マイクロリザーバの形状および寸法は、薬物材料とマイクロリザーバの周囲表面との間の接触領域を最大または最小化するために選択することができる。本明細書で使用される用語「マイクロ量」は1nL〜10μLの間の小さな容量を指す。一実施形態において、マイクロ量は1nL〜1μLの間である。別の実施形態では、マイクロ量が10nL〜500nLの間である。
【0034】
他の実施形態では、このリザーバはマイクロリザーバより大きく、マイクロ量より多い製剤量を含むことができる。例えば、各リザーバの容量は10μLよりも多く(例えば少なくとも20μL、少なくとも50μL、少なくとも100μL、少なくとも250μLなど)、および10,000μL未満(例えば5000μL未満、1000μL未満、750μL未満、500μL未満、100μL未満など)が可能である。これらをそれぞれマクロリザーバおよびマクロ量と呼ぶ。マイクロスケールあるいはマクロスケール容量/量の一方に限定されることを明示的に指示なき場合は、用語「リザーバ」は両方を含むことを意味する。
【0035】
当業者において公知の任意の適切な製造技術を使用して、リザーバを構造本体部分内に製造することができる。代表的な製造技術には、MEMS製造プロセスあるいはその他のミクロ機械加工プロセス、様々なドリル加工技術(例えば、レーザ、機械、および超音波ドリル加工)、およびLTCC(低温同時焼成セラミックス)などの形成技術、ならびに成形過程などがある。例えば、米国特許出願公開第6,123,861号、および6,808,522号、ならびに米国特許出願公開第2004/0106914号および2005/0055014号を参照のこと。リザーバの表面を任意に処理または塗布し、表面の1つ以上の特性を変化させることができる。このような特性の事例としては、親水性/疎水性、湿潤性(表面エネルギー、接触角など)、表面粗さ、電荷、剥離性、およびその類似特性などがある。
【0036】
一実施形態において、このデバイスはマイクロチップ化学供給デバイスを含む。別の実施形態では、デバイスはポリマーチップ、または「マイクロチップ」とは呼ばれない非シリコンベースの材料からできているデバイスを含む。多様な基板およびデバイス構造の実施例は、米国特許出願公開第2004/0121486 Al号に記載されている。一実施形態において、このデバイスは浸透圧ポンプ、例えばVIADURTM(Bayer Healthcare PharmaceuticalsおよびAiza Corporation)などの商用デバイス中に含まれるDUROSTM浸透圧ポンプ技術(Alza Corporation)を含む。別の実施形態では、デバイスはLTCC本体を含む。一実施形態において、本体部分がマイクロチップデバイスの支持体である。1例において、この基板はシリコンから作ることができる。
【0037】
(物質輸送を増強するための手段)
移植用デバイスは、組織嚢を介した物質輸送速度を増強するのに有用な成分の1つまたは組み合わせを含む。これらは、高度に濃縮され、安定な製剤、対イオン製剤、酵素分解、および起電性デバイスを作成するに有用な、酵素、補助溶剤、界面活性剤、あるいはこれらの組み合わせの使用を含む。デバイスリザーバより、および組織嚢を介した物質輸送を増強するための別の手段としては、PCT国際公開第2004/026281 Al号パンフレットに記載された容積式および/または促進放出技術などがある。さらに物質輸送を増強するための別の手段としては、デバイス上またはデバイスから遊離された1つ以上の脈管形成性薬剤(それを介した薬物または分析物輸送を促進すると予想される)によるなどの組織嚢の血管分布を増強することを含む。多様な実施形態では、これらの異なる組み合わせ手段、材料、および技術を使用して、組織嚢を介して薬物または分析物の輸送が増強される。
【0038】
一実施形態において、1つの特定の実施形態では、抗炎症薬はデキサメサゾンである。これらの実施形態では、抗炎症薬は移植後の炎症を減少させ、線維性被膜の全厚を減少させることができる。別の特定の実施形態において、デバイスはリザーバからデキサメサゾンおよびVEGFの組み合わせを放出、および/またはこの組み合わせで塗布され、これにより炎症を減少させ移植されたデバイスのまわりの血管分布を増加させることができる。Nortonら,“Dual Release of VEGF and Dexamethasone from Microspheres Incorporated in Anti−fouling Hydrogels”p.357,Proceedings 7th World Biomaterials Congress(Sydney,Australia)May 2004を参照。
【0039】
本明細書で使用される用語「輸送エンハンサー」は、組織透過性を変化させる溶媒、補助溶剤、および界面活性剤、および組織嚢を分解する酵素を指し含んでおり、これらにより薬物分子が組織嚢を浸透し、有効(例えば、治療)濃度および割合でそれらの標的に到達することが可能となり、あるいは分析物が組織嚢を浸透し、臨床的に/診断上有用な濃度および割合でセンサー材料に達することを可能となる。
【0040】
(溶媒/界面活性剤配合物)
一実施形態において、物質輸送を増強するための手段は組織嚢透過性を変化させるのに有効な材料を有するリザーバ内容物を含む。組織嚢の変化した透過性により、これらを介した薬物または分析物のより多くの物質輸送が可能となる。一実施形態において、この製剤は、高度に濃縮され、安定な製剤に有用な、および/または組織透過性を変化させるのに有用な1つ以上の溶媒、補助溶剤、界面活性剤、あるいはこれらの組み合わせを含む。リザーバデバイスの少ない投与量により、普通により多くの容量で使用する場合に組織刺激または損傷を引き起こすと予想される強力な溶媒、補助溶剤、および/または界面活性剤に、活性成分(つまり薬剤)を溶解させ、あるいは物理的に混合させることが効果的に可能となる。このような溶媒、および許容される1日暴露(Permitted Daily Exposure)限度の事例は、ICHガイドラインQ3Cに提供される。これらの限度は加工作業に由来する製剤の中に残留する残留溶媒のためのものであるが、リストされた溶媒の多くが推奨された限度を越えずにデバイスリザーバに含まれる可能性がある。例えば、合衆国食品医薬品局(FDA)における薬物評価および研究センター(the Center for Drug Evaluation and Research:CDER)では、ニトロメタンを500μg(440nL)の1日当たり暴露(PDE)限界(これは最も厳密なものであるが、クラス2溶媒において推奨される限界である)を有するクラス2溶媒に分類した。本発明のデバイスの1つの実施形態では、それぞれのリザーバはクラス2溶媒200nLを含み、1日当たり1つのリザーバのみが放出される場合、溶媒への接触はこのPDEの半分未満になるであろう。
【0041】
適切な溶媒の代表的例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ならびにジメチルピロリドン(DMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、およびその他のコラーゲンおよびコラーゲンネットワークの構造を変化させる極性、非プロトン溶媒などがある。一実施形態において、1回の投与量当たり少ない容量(200nL/投与量以下)は、クラス2溶媒における毎日の暴露限度より十分低レベルにある。適切な界面活性剤の代表的な例としては、ポリソルベート、スパン、モノアルキルポリオキシエテン(monoalkylpolyoxythenes)、ジアルキルポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンモノエステル、ポリオキシエチレンジエステル、およびポリオキシエチレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体などがある。適切な配合物を得るために、例えば、(1)必要な薬剤溶解度および安定性を提供する単独あるいは組み合わせの溶媒または界面活性剤を同定し、(2)適切な嚢組織の試料全体にわたって、フランツ細胞あるいは多重ウェル微小透析ユニットなどのデバイスを使用して、薬物移動の割合を比較することにより浸透増強について選別することができる(以下に述べるように)。適切な溶媒、補助溶剤、および界面活性剤の選択により、高度に濃縮され(例えば、100mg/mL、10%w/v、あるいは10%v/v以上)体温で安定な小分子、ペプチドおよびタンパク薬剤配合物を製造することができる。
【0042】
更に、薬剤の濃縮溶液の使用により、リザーバサイズしたがってデバイスサイズを制限することが可能となり、その結果として有利に移植片移動度を制限することができ、組織嚢成長を減少させる。高い濃度により有利に移植用デバイスのサイズを比較的小さく保つことができ、(余分な溶媒容量を含めるためにデバイスを所定の大きさに作る必要がないので)これにより、より安全にかつ目立たずに患者へのそれらの留置が可能となる。さらに、縫合固定によるより小さな移植片は大きなデバイスよりも移動性が少ないと予想される。移動度は組織嚢成長に寄与する因子として確認されている。
【0043】
一実施形態において、輸送エンハンサーがいくつかのリザーバから遊離される。リザーバは放出のための1つ以上の輸送エンハンサーを単独あるいは製剤と併用して含むことができる。別の実施形態では、デバイスは徐放性コーティングなどのコーティングを有し、輸送エンハンサーを含む。1つの変形では、デバイス中の1つ以上のリザーバ内に放出のための製剤を含むリザーバから分離されて輸送エンハンサーが提供される。例えば、リザーバ配列を有する基板を含むデバイス中で、リザーバに輸送エンハンサーおよび製剤を交互に貯蔵することができ、製剤が放出される直前、または放出後直ちに輸送エンハンサーの放出を指示することができる。あるいは、輸送エンハンサーの放出を製剤の放出と同時、あるいは放出に続き行うことができる。
【0044】
一実施形態において、輸送エンハンサーは1つ以上のリザーバ内に、グルコースセンサーを含むリザーバの近くに、それとは分離されて含まれる。輸送エンハンサーの放出をグルコースセンサーの暴露にタイミングをあわせることができ、あるいは規則的なスケジュールでリザーバから輸送エンハンサーを放出することができる。後者の状況は、この嚢を維持するために長い移植期間にわたり同じレベルの透過性で機能すると予想される。
【0045】
(酵素分解)
さらに別のアプローチでは、移植デバイスは、組織嚢の輸送を制限する効果を低減させることに使用できる組織嚢成分を溶解または分解することが知られている分子を含む。例えば、コラゲナーゼ、トロンビン、フィブリノリジン、トリプシン、ヒアルロニダーゼあるいはこれらの組み合わせを含む組成物をデバイス中、デバイス上に、あるいはデバイスとともに含めることができる。この酵素をリザーバ内に包み、デバイスの表面へ付着させ、
あるいは放出修正基質に混合することができる。
【0046】
一実施形態において、輸送を増強するための酵素はデバイスの1つ以上のリザーバに含まれる。酵素が少なくとも薬剤リザーバの近くの嚢の一部を溶解するように、1つ以上の隣接するリザーバから薬剤が遊離される前にリザーバを開くことができ、これにより薬剤リザーバが開放される場合に、嚢のバリヤー性を減少させ、さらに薬物放出割合に対する嚢の影響を最小化することができる。同様の戦略をグルコースなどの分析物に対する嚢の透過性を増加させるバイオセンシングデバイスと共に使用することができる。組織嚢が有意な量のフィブリンあるいはフィブリノーゲンを含む場合、続いてデバイスはトロンビン、フィブリノリジン、トリプシン、あるいは別の有効な酵素を放出することができる。
【0047】
(対イオン製剤)
別の実施形態では、薬剤は電荷分子で構成され、組織嚢を介して薬剤輸送を調節するためにイオン対を形成する対イオンが製剤中に含まれる。ペプチドおよび薬物を含む電荷分子の結合を変化させる材料に対する対イオンの機能は、RP−HPLC、蛋白質構造におけるホーフマイスター系列イオンの影響、およびイオン交換クロマトグラフィーリテンションにより示されるように公知なものである。反応物および生成物の有機相と水相との間の移動を促進し、原位置での反応区画化を提供するためにイオン対形成が有機化学において使用されている。脂溶性、粒径、あるいはミセル形成を変更するにより、それらの性能を変化させるため薬剤のイオン対形成が検討されている(Choi,et al.,Int’l J.Pharmaceutics 203(1):193−202(2000);Kendrick,et al.,Arch.Biochem.Biophys.347:113−18(1997);Meyer,et al.,Pharm.Res.1 5(2):188−93(1998))。コラーゲコラーゲンを有する薬剤対イオンの相互作用あるいは交換により、構造内の水素結合またはイオン結合を分裂あるいは改質することも可能である。
【0048】
(起電デバイスおよび方法)
さらに別の実施形態では、当業者において公知の帯電、イオントフォレシス、あるいは他の起電方法を使用して、薬剤の組織嚢を介した輸送を増強できる。例えば、移植されたデバイスの露出面をその内部電気によって帯電させることができ、同じ電荷を有する薬剤分子が嚢を介して前進させる推進力を生み出すことができる。一実施形態において、1対の反対に帯電した電極を同じデバイスまたはこのデバイスの表面に配置するが、組織障壁により最小の電気絶縁経路となるように、互いに十分に離れた位置に設置する。別の実施形態では、薬剤伝達成分と離れている対電極は組織嚢の外側に位置する。
【0049】
(容積式デバイスおよび方法)
一実施形態において、容積式機構を使用し、リザーバから製剤を駆出させる。さらにこれらの同じ機構を使用し組織嚢を介して製剤を駆出または押し出す。一実施形態において、材料あるいは他の膨潤性材料を生み出す浸透圧はピストンを駆動し、リザーバから製剤を駆出させる。これおよび他の実施形態は、PCT国際公開第2004/026281A1号パンフレットにおいて詳述されている。
【0050】
一実施形態において、リザーバ内容物は、圧縮下でガス漏れしないあるいは気密のリザーバで封止され、あるいは内容物がリザーバキャップ活性化で放出されるように、陽圧内部環境を生み出す条件下で封止される。
【0051】
別の実施形態では、デバイスは3つの区画(リザーバ)に整列され、規定されたリザーバスペースを有し、互いにパッケージされた3つの基板部を含む。底部区画は乾燥した膨潤性ゲルを含み、中央の区画は液体材料(あるいは少なくとも体温下で液体)を含み、上部の区画は放出のための製剤を含む。放出が意図されるまで、この層間の膜(あるいはリザーバキャップ)は隣接した区画と分離されている。薬剤導入されたリザーバの外面開口部の上のリザーバキャップの崩壊の後、あるいはその崩壊と同時に、膨潤性ゲル上の膜は開放され、中央の区画由来の液体がこのゲルと接触することが可能となり、その結果膨潤性ゲルが膨張する。ゲル材料はリザーバ区画の結合容量を超える拡張した容量を有するように選択される。任意に、そのゲルが温度により拡大/収縮することは当業者において公知であり、制御された温度変化により(例えばリザーバに配置された抵抗性発熱体により)膨張を増大させることができる。その液体を覆う膜が開放され、この膨潤ゲルにより上部区画から製剤を移動させることが可能となる。
【0052】
(脈管形成性材料および薬剤)
一実施形態において、移植されたデバイスの周囲の血管新生を促進するために1つ以上の脈管形成性材料あるいは因子を含むデバイスは、コーティングとともに提供される。これは、移植用薬物供給デバイスおよび移植用分析物モニタリングデバイス(例えばグルコースセンサー)の両方で有用と予想される。本明細書で使用される用語「脈管形成性」は、移植されたデバイス周囲の血管および微小循環の成長を促進し、維持する材料あるいは分子を指す。1つの実施形態実施例において、デバイスは血管性成長因子などの血管誘起あるいは脈管形成性薬剤とともに放出され、あるいはこのデバイスにこれらの薬剤が塗布される。このタイプの適切な成長因子としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板成長因子、血管透過性因子、繊維芽細胞成長因子、およびトランスフォーミング成長因子βなどがある。
【0053】
別の実施形態において、デバイスはそれ自体が脈管形成性特性を示す外部膜またはコーティング層を含む。これらの層は、例えば発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、親水性ポリフッ化ビニリデン、混合セルロースエステル、および/またはその他のポリマーで作製できる。
【0054】
(デバイス表面改質および足場材料)
さらに別の実施形態において、この移植用医療デバイスは、未改質表面のベースライン事例に対する輸送を促進するのに有効な組織足場材料あるいは他の物理的表面改質材料を含む。組織嚢析出に影響を及ぼす潜在的な材料特性としては、表面親水性の交代、表面積、空隙率(個々の細孔の割合および直径の両方)、およびナノメータスケールの粗さなどがある。これらの概念は当業者において把握されており、当業者は本明細書に記載された移植用マルチリザーバデバイスとともに使用するための従来のアプローチを適用することができる。本明細書で使用される用語「足場材料」は、粗さまたは空隙率などのナノメータスケールの特性を含む三次元の表面微細構成を指す。すなわち、微細構成は、制御された様式で細胞接着が生じる骨格として寄与し、無血管性組織の形成を減少させ、その結果、交差組織の輸送を可能となるような組織品質となる。結果として、異なる材料の補足層の析出により、あるいは細胞接着に影響を及ぼす化学的あるいは生化学的な装飾により表面が改質される。
【0055】
(リザーバコントロール手段)
リザーバコントロール手段は、リザーバ内容物の放出あるいは暴露が開始される時間をコントロールするための(複数の)構造部材を含む。好ましい実施形態では、リザーバコントロール手段は、リザーバキャップおよび電源から選択されたリザーバへ、作動のため(例えばリザーバ開放)に電力量をコントロールし、供給するために必要とされるハードウェア、電気部品、およびソフトウェアを含む。
【0056】
(リザーバキャップ)
本明細書で使用される用語「リザーバキャップ」は、リザーバの外部環境からリザーバの内容物を分離するのに適した個別の膜あるいは他の構造を含んでいる。付加的構造を有しキャップに対して機械的支持を提供するキャップを製造することができるが、これは一般にリザーバ開放全体にわたって自立的である。例えば米国特許出願公開第6,875,208号参照のこと。選択的にリザーバキャップを除去し、あるいはそれを浸透性にさせることにより、その後リザーバの内容物(あるいはそれらの選択された成分)がリザーバを取り囲む環境に「曝露」されるであろう。好ましい実施形態では、リザーバキャップは選択的に崩壊する。本明細書で使用される用語「崩壊する」は、これらの機構の特定の1つが指定されなければ、分解すること、溶解すること、破裂すること、破断すること、あるいは機械的破損のその他の形態、ならびに温度変化に応じた化学反応(例えば電気化学的分解)あるいは相転移(例えば融解)による構造の完備性の損失を含む。いくつかの好ましい実施形態では、リザーバキャップの除去は、機械的に活性化された破裂(例えば、プレストレスに依存すること、圧電素子からの機械力によって破断される脆性膜、あるいは機械的破裂を生み出すガス圧力)に対立するものとして、主に化学反応または相転移成分を含んでいる。
【0057】
1つの特定の実施形態では、参照によって本明細書に引用されている米国特許出願公開第5,797,898号に記載されるように、崩壊が電気化学的活性化技術による。例えば、リザーバキャップは包囲する環境(例えば、溶体液あるいは塩素を含むその他の溶液)に対して不透過性である薄い金属膜が可能である。1つの変形では、特定の電位が金属リザーバキャップに印加されると、その後、電気化学反応によって酸化され崩壊し、リザーバから薬剤が放出される。適切なリザーバキャップ材料の実施例としては、金、銀、銅、および亜鉛などがある。
【0058】
別の特定の実施形態では、参照によって本明細書に引用されている米国特許出願公開第6,527,762号に記載されるように、崩壊が熱活性化技術による。例えば、リザーバを開くために、リザーバキャップを(例えば、別個の抵抗ヒータによる抵抗加熱法を使用して)加熱し、リザーバキャップを融解させ、リザーバ開口部から除去することができる。例えば、金属あるいは非金属材料(例えばポリマー)から作られたリザーバキャップと共に、この後者の変形を使用することができる。さらに別の変形では、あらかじめ選択された温度に加熱されると、リザーバキャップを介してリザーバから薬剤を放出できるように、リザーバが薬剤および体液に対して浸透性となるように、リザーバキャップは透過性に温度依存的変化を受けるポリマーあるいは他の材料から作られる。
【0059】
好ましい実施形態では、参照によって本明細書に引用されている米国特許出願公開第2004/0121486A1号に記載されるように、「崩壊」が電熱切除技術による。例えば、リザーバキャップは、金属膜などの電熱的に切断するために電流を通すことができる導体材料から作られる。適切なリザーバキャップ材料の代表的な実施例としては、当業者において公知の金、銅、アルミニウム、銀、白金、チタン、パラジウム、多様な合金(例えばAu−Si、Au−Ge、Pt−Ti、Ni−Ti、Pt−Si、SS304、SS316)、および電気伝導率を増加させるために不純物でドープされたシリコンなどがある。一実施形態において、リザーバキャップは薄い金属膜の形状である。一実施形態において、リザーバキャップは複数の層状構造の一部であり、例えば白金/チタン/白金の多層/ラミネート構造などの複数の金属層でリザーバキャップを作ることができる。リザーバキャップは電気入力リードおよび電気出力リードに操作的に(すなわち電気的に)接続され、このリザーバキャップによって電流の流れが促進される。有効量の電流がリードおよびリザーバキャップを介して印加されると、このリザーバキャップの温度が抵抗加熱により局所的に増加し、さらにリザーバキャップ内に生じた熱は、電熱的に破裂させ、切断を引き起こすために十分な程度にリザーバキャップの温度を増加させる。
【0060】
好ましい実施形態では、別個のリザーバキャップは完全に一つのリザーバ開口部をカバーする。別の実施形態において、別個のリザーバキャップはすべてではないが、2つ以上のリザーバ開口部をカバーする。
【0061】
受動リリースデバイスでは、リザーバキャップは、ある期間にわたって分解、溶解、または崩壊する、もしくは分解、溶解、または崩壊しないが、薬剤または分析物分子に対して浸透性である、あるいは浸透性になる材料または材料の混合物から形成される。リザーバキャップ材料の代表的な例としては、高分子材料、および金属、半導体、およびセラミックスの多孔質形状の非高分子材料などがある。受動的半導体リザーバキャップ材料としては、ナノ多孔質、あるいはマイクロポーラスシリコン膜などがある。
【0062】
各々のリザーバキャップの特性を変え、製剤の種々の放出時間を提供することができる。例えば、ポリマーの任意の組み合わせ、架橋度、あるいはポリマー厚さを変更し、特定の放出時間または放出割合を得ることができる。受動的および/または能動的な放出リザーバキャップの任意の組み合わせを単一の供給デバイス中に存在させることができる。例えば、リザーバキャップは電熱的切除によって除去され、このリザーバキャップが能動的に除去された後にのみ受動的放出を開始する受動的放出システムに曝露させることができる。あるいは、所定のデバイスでは、受動的および能動的放出リザーバの両方を含むことができる。
【0063】
一実施形態において、デバイスは(i)製剤を含む能動的放出リザーバ、および(ii)1つ以上の輸送エンハンサーを含む受動的放出リザーバを有する。この実施形態による1つの方法では、受動的放出リザーバから輸送増強分子が連続的に放出され一定の嚢透過性が維持される一方、医師により処方された薬物療法の種類によって決定されたスケジュールにより能動的放出リザーバが開放される。
【0064】
別の実施形態では、デバイスは(i)センサーを含む能動的放出リザーバ、および(ii)1つ以上の輸送エンハンサーを含む受動的放出リザーバを有する。この実施形態による1つの方法では、受動的放出リザーバから輸送増強分子が連続的に放出され一定の嚢透過性が維持される一方、能動的放出リザーバが必要に応じて(例えばセンサーの汚損に依存して)、あるいは予定されたスケジュールにより指示されるように開放される。
【0065】
さらに別の実施形態では、(i)製剤を含む能動的放出リザーバ、および(ii)1つ以上の輸送エンハンサーを含む能動的放出リザーバを有する。この実施形態による1つの方法では、輸送増強分子が定期的に、あるいは処方された薬物療法により決定されたスケジュールで開放される薬剤を含む能動的放出リザーバの開放と同時、あるいは開放に先立つスケジュールに従って放出される。
【0066】
(他の成分)
このコントロール手段は、製剤および/または輸送エンハンサーの間欠的あるいは実質的に連続的な放出、および/またはセンサーの選択的暴露を提供することができる。コントロール手段の特定の特徴は、本明細書に記載されたリザーバキャップ活性化の機構に依存する。例えば、コントロール手段は入力源、マイクロプロセッサー、タイマー、デマルチプレクサー(あるいはマルチプレクサー)、および電源を含むことができる。本明細書で使用される用語「デマルチプレクサー」はさらにマルチプレクサーを指す。電源は、例えば、所望の投与量のための特定のリザーバから製剤の放出を作動させるために選択されたリザーバを活性化するエネルギーを提供する。例えば、リザーバ開放システムの操作は、実装されたマイクロプロセッサー(例えば、マイクロプロセッサーが移植用あるいは挿入可能なデバイス内にある)により制御することができる。あらかじめ選択された時間に、あるいは1つ以上の信号、または別のデバイスからの信号の受信(例えばリモートコントロールまたは無線手法による)、バイオセンサーなどのセンサーを使用した特定の条件の検出などの測定パラメータに応じて、リザーバキャップの崩壊または透過化を開始するようにマイクロプロセッサーをプログラムすることができる。別の実施形態において、マイクロプロセッサーよりも一般により単純で、より小型、および/または少ない電力で使用するような、単純な状態の機械が使用される。このデバイスは、例えばSheppardら、米国特許出願公開第2002/0072784A1号で記載されるように、無線手段を使用して活性化または電力が供給される。
【0067】
一実施形態において、デバイスは、とびとびに間隔を空けて配置されたリザーバの二次元配列を有する基板、このリザーバに含まれる製剤、各々のリザーバの半透膜を被う陽極リザーバキャップ、陽極の近くの基板に置かれた陰極、およびリザーバキャップの崩壊を能動的に制御するための手段を含む。この手段としては、電位を制御し供給するための電源および回路を含み、このエネルギーは選択された陽極および陰極の間の反応を進行させる。電極間の電位の印加と同時に、電子は外部回路を陽極から陰極まで通り抜け、陽極材料(リザーバキャップ)を酸化させ、周囲の液体中に溶解させ、製剤が曝露され放出される。マイクロプロセッサーは、EPROM、リモートコントロール、あるいはバイオセンサーにより誘導されるような、デマルチプレクサーを介して特定の電極対にパワーを誘導する。
【0068】
別の実施形態では、例えば米国特許出願公開第6,527,762号に記載されるように活性化エネルギーにより熱誘導された破裂、透過化処理が開始される。例えば、抵抗ヒータを使用する放出を制御するための手段により、能動的に崩壊させ、または透過性にさせる。抵抗ヒータにより、例えばリザーバキャップまたは放出システムの熱膨張の結果、リザーバキャップは相転移または破断を引き起こし、これによりリザーバキャップを破裂させ、選択されたリザーバから薬剤が放出される。電気化学的崩壊実施形態としてすでに述べたような成分を使用して、抵抗器への電流の印加により供給し、制御することができる。例えば、マイクロプロセッサーは電流を誘導し、所望の間隔でリザーバを選択することができる。
【0069】
好ましい実施形態において、コントロール手段はリザーバキャップの電熱切除を制御する。例えば、薬物供給デバイスは、入力リードおよび出力リードを介し、リザーバキャップを局所的に加熱し破裂させるために、例えば製剤を放出するか、あるいはそこに配置されたセンサーを曝露させるために、導電性材料から作られたリザーバキャップ、リザーバキャップに接続された電気入力リード、リザーバキャップに接続された電気出力リード、リザーバキャップによって電流の有効量を供給するコントロール手段を含むことができる。一実施形態において、リザーバキャップおよび伝導性リードは同じ材料から作られ、そこではリザーバキャップは基板よりも熱伝導性のより低い基質内で懸垂されているので、印加された電流下でリザーバキャップの温度が局所的に増加する。あるいは、リザーバキャップおよび伝導性リードは同じ材料から作られ、さらにこのリザーバキャップは電流の流れる方向により小さな断面積を有し、リザーバキャップによる電流密度の増加は局部加熱を増加させる。あるいは、リードを形成する材料とは異なる材料からリザーバキャップを作ることができ、リザーバキャップを形成する材料が異なる電気抵抗率、熱拡散係数、熱伝導度、および/またはリードを形成する材料よりも低い融解温度を有する。米国特許出願公開第2004/0121486A1号に記載されるように、これらの実施形態の多様な組み合わせを使用することができる。
【0070】
移植用デバイスは一般に、実質的にリザーバキャップのみを曝露する例えばチタン容器中で密閉して封止される。
【0071】
一実施形態において、コントロール手段としては、マイクロプロセッサー、タイマー、デマルチプレクサー、および入力源(例えばメモリー源、信号受信機、あるいはバイオセンサー)、および電源などがある。電極製造中にタイマーおよびデマルチプレクサー回路をマイクロチップの表面に直接デザインし、組み込むことができ、あるいは個別のマイクロチップ中に組み込んでもよい。マイクロプロセッサーは、メモリー源、信号受信機、あるいはバイオセンサーからの出力を、デバイス上の特定のリザーバに対するデマルチプレクサーによるパワーの方向に関するアドレスに翻訳する。メモリー源、信号受信機、あるいはバイオセンサーなどのマイクロプロセッサーへの入力源の選択は、マイクロチップデバイスの特定の用途、およびデバイス操作がプリプログラムされているかどうか、遠隔手段によって制御されるかどうか、あるいはその環境(すなわち生体フィードバック)からのフィードバックによって制御されるかどうかにより依存する。例えば、マイクロプロセッサーは、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリー(EPROM)、タイマー、デマルチプレクサー、およびバッテリーまたは生物電池などの電源などのメモリー源と併用して使用することができる。リザーバが開かれることになっている時間、およびリザーバの位置またはアドレスを含むイベントのプログラムされたシーケンスは、ユーザによってEPROMに保存される。タイマーにより指示されるように暴露または放出の時間に達すると、マイクロプロセッサーは、特定のリザーバのアドレス(位置)に相当する信号をデマルチプレクサーへ送信する。デマルチプレクサーは、マイクロプロセッサーによりアドレスされたリザーバへ、電位または電流などの入力を送る。
【0072】
(リザーバ内容物)
リザーバは、製剤、検出デバイス、輸送エンハンサー、あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0073】
(薬剤)
製剤は、薬剤を含む組成物である。本明細書で使用される用語「薬剤」は、任意の治療、または予防薬(例えば、医薬品原薬、またはAPI)を含む。一実施形態において、薬剤は、特に市販上および医学的に有効な時間にわたり、例えば薬剤を投与する必要があるまで薬物供給デバイス内に貯蔵中に、薬剤の安定性を維持し、あるいは延長させる目的で固形形状で提供される。固形薬剤基質は精製形態、あるいは薬剤が含まれるか、懸濁されているか、あるいは分散されている別の材料の固形粒子の形態であってもよい。一実施形態において、薬剤は放出を促進するのに有用な医薬品添加物、例えばリザーバから薬剤を押し出し、およびリザーバ上の任意の組織嚢を介して支援できる水膨潤性材料とともに配合される。
【0074】
薬剤は小分子、大きな(すなわちマクロ)分子、あるいはこれらの組み合わせを含むことができる。一実施形態において、大分子薬剤がタンパク質またはペプチドである。様々な他の実施形態では、薬剤は、アミノ酸、ワクチン、抗ウイルス薬、遺伝子送達ベクター、インターロイキン阻害薬、免疫調節物質、向神経性因子、神経保護剤、抗悪性腫瘍薬、化学療法薬、多糖類、抗凝血剤(例えばLMWH、五糖類)、抗生物質(例えば免疫抑制薬)、鎮痛薬、およびビタミン類から選択することができる。一実施形態において、薬剤がタンパク質である。適切な種類のタンパク質の実施例としては、糖タンパク質、酵素(例えばタンパク質分解酵素)、ホルモンまたは他の類似物(例えばLFLRH、ステロイド、コルチコイド、成長因子)、抗体(例えば抗VEGF抗体、腫瘍壊死因子阻害薬)、サイトカイン(例えばα−、β−あるいはγ−インターフェロン)、インターロイキン(例えばIL−2、IL−10)および糖尿病/肥満関連治療薬剤(例えばインシュリン、エキセナチド(exenatide)、PYY、GLP−1、およびその類似物)などがある。一実施形態において、薬剤はロイプロリド(leuprolide)などの性腺刺激ホルモン放出(LHRH)ホルモン類似物である。別の代表的な実施形態では、薬剤は、ヒト副甲状腺ホルモンあるいはその類似物、例えばhPTH(1−84)、またはhPTH(l−34)などの副甲状腺ホルモンを含む。さらなる実施形態において、薬剤はヌクレオシド、ヌクレオチド、およびそれらの類似物および接合体から選択される。さらに別の実施形態では、薬剤はナトリウム排泄増加活性を有するペプチドを含む。さらに別の実施形態において、薬剤は、利尿薬、血管拡張剤、陽性変力薬、抗不整脈薬剤、Ca+チャネル遮断薬、抗アドレナリン作動性神経薬/交感神経遮断薬、およびレニンアンジオテンシンシステム拮抗薬から選択される。一実施形態において、薬剤はVEGF阻害薬、VEGF抗体、VEGF抗体フラグメント、あるいは別の抗脈管形成性薬剤である。実施例としては、脈絡膜血管新生の予防に使用することができるMACUGEN(ファイザー/Eyetech)か、LUCENTIS(登録商標)(Genetech/ノバルティス)(rhuFab VEGF、あるいはranibizumab)(pegaptanibナトリウム)などのアプタマーなどがある。さらに別の実施形態では、薬剤はプロスタグランジン、プロスタサイクリン、あるいは末梢血管疾患の治療に有効な別の薬剤である。
【0075】
さらに別の実施形態において、薬剤はVEGFなどの脈管形成性薬剤である。さらなる実施形態では、薬剤はデキサメサゾンなどの抗炎症薬である。一実施形態において、デバイスは脈管形成性薬剤および抗炎症薬の両方を含む。
【0076】
多様な実施形態では、薬剤は骨形態形成蛋白質(BMP)、成長因子(GF)、あるいは成長または分化因子(GDF)である。代表的な実施例としては、BMP−2、OP−1(骨原性タンパク質−1、すなわちBMP−7)、形態発生タンパク質(CDMP)、骨再生因子(osteogenin)、BMP−2/4、BMP−3、BMP−9、BMP−10、BMP−15、およびBMP−16、GDF−5またはrhGDF−5上皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換発育因子−αおよび−β(TGF−αおよびTGF−β)、エリスロポエチン(EPO)、インシュリン様成長因子−Iおよび―II(IGF−IおよびIGF−II)、腫瘍壊死因子−αおよび−β(腫瘍壊死因子−α、また腫瘍壊死因子−β)、コロニー刺激因子(CSF)、およびニューロン成長因子(NGF)などがある。
【0077】
1つのデバイス中のリザーバには、単一の薬剤あるいは2つ以上の薬剤の組み合わせ、および/または2つ以上の輸送エンハンサーを含むことができ、さらに1つ以上の薬学的に許容可能な担体を含むことができる。2つ以上の輸送エンハンサー、脈管形成性薬剤、抗炎症薬、あるいはこれらの組み合わせは、ともに貯蔵し、同じ1つ以上のリザーバから放出させることができ、あるいは各々を別のリザーバに貯蔵し、放出させることができる。
【0078】
(賦形剤および基質材料)
薬剤、輸送エンハンサー、あるいはその両方を基質材料中に分散させ、薬剤、輸送エンハンサー、あるいはその両方のほう出割合をさらに制御することができる。この基質材料は米国特許出願公開第5,797,898号に記載されるように「放出システム」である、すなわち化学分子の放出割合を制御する方法を提供することができるような分解、溶解、あるいは拡散特性を有することが可能である。
【0079】
放出システムは1つ以上の賦形剤を含む。適切な薬剤的に許容できる賦形剤としては、非経口投与として認められたほとんどの担体を含む。リザーバ充填、安定性、あるいは放出を支援するように、他の賦形剤を使用して懸濁液中で薬剤を維持してもよい。薬剤の特性に依存して、このような賦形剤は水性または非水性、親水性または疎水性、極性または無極性、プロトン性または非プロトン性であってもよい。例えば米国特許出願公開第6,264,990号を参照。放出システムは任意にインビボで、安定剤、抗酸化剤、抗菌剤、防腐剤、緩衝剤、界面活性剤、およびリザーバからの分子を貯蔵し放出するのに有用なその他の添加物を含む。
【0080】
放出システムは、血漿レベルの時間変動が必要である場合、時間的に変調された放出プロファイルを、あるいは例えば治療効果を増強するために一定の血漿レベルが必要な場合、より連続的または一貫した放出プロファイルを提供する。拍動的放出は個々のリザーバ、複数のリザーバ、あるいはこれらの組み合わせより達成することができる。例えば、各々のリザーバは単一パルスのみを提供するが、いくつかのリザーバの各々からの単一パルス放出を時間的にずらすことにより、複数パルス(すなわち拍動性放出)が達成される。あるいは、放出システムのいくつかの層および他の材料を一つのリザーバ中へ組み込むことにより、一つのリザーバから複数パルスを達成することができる。連続的放出は、長期間にわたって分子を分解し、溶解し、あるいは拡散を可能とする放出システムの組み込みにより達成することができる。さらに連続的放出は、(複数の)リザーバ開口部内またはその上に律速半透膜の組み込むことにより、リザーバから制御することができる。さらに、ラピッドサクセション(デジタル放出)で分子のいくつかのパルスを放出することにより、連続的放出に近づけることができる。例えば、米国特許出願公開第5,797,898号に記載されるように、本明細書に記載された能動的放出システムを単独で、あるいは受動的放出システムと組み合わせて使用することができる。例えば、動的放出システムを曝露する能動的手段によってリザーバキャップを除去することができる。あるいは受動的および能動的放出リザーバの両方に所定の基板を含めることができる。
【0081】
一実施形態において、リザーバ内の製剤は、薬剤および非薬剤材料の層を含む。能動的放出機序がリザーバ内容物と接触した後、非薬剤の介在層により、複数層は薬物放出の複数パルスを提供する。
【0082】
(検出装置)
いくつかの実施形態において、センシング成分またはデバイスは、一つあるいは好ましくはいくつかのデバイスのリザーバ中で提供される。好ましい実施形態では、インビボにてある部位における化学種またはイオン種中の存在、存在しないこと、あるいは変化またはエネルギーを検出するために使用することができる2つ以上のリザーバがバイオセンサーを含んでいる。例えば、このセンサーは、患者の血液、血漿、間質液、またはその他の体液中に存在するグルコース、尿素、カルシウム、あるいはホルモンの濃度をモニターすることができる。
【0083】
センサーの種類としては、バイオセンサー、化学センサー、物理センサー、あるいは光センサーなどがある。本明細書に記載されたリザーバデバイスで/とともに使用することに適するバイオセンサーの実施例は、参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第6,486,588号、6,475,170号、および6,237,398号に開示されている。その他の検出デバイスは、参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第6,551,838号、および米国特許出願公開第2005/0096587A1号に記載されている。本明細書で使用される用語「バイオセンサー」は、対象とする分析物の化学ポテンシャルを電気信号に変換する検出デバイス、ならびに電気信号を直接、あるいは間接的に測定する電極(例えば、機械的または熱エネルギーを電気信号に変換することによる)を含む。例えば、バイオセンサーは、多様な生体内位置で内因性電気信号(EKG、EEG、あるいは他の神経信号)、圧力、温度、pH、あるいは組織構造上の負荷を測定する。続いてバイオセンサーからの電気信号は、例えばマイクロプロセッサー/コントローラーによって測定することができ、その後、遠隔制御装置、別のローカルコントローラ、あるいはその両方に情報を伝達することができる。例えば、システムを使用し、患者の生命徴候あるいは薬物濃度などの移植環境に関する情報を中継または記録することができる。
【0084】
検出デバイスで得られたデータを受け取り、さらに分析するために、いくつかの選択肢が存在する。デバイスはローカルマイクロプロセッサーまたはリモートコントロールによって制御される。バイオセンサー情報は、コントローラーへ自動的に、ヒトの介在により、あるいはこれらの組み合わせにより活性化を行う時間およびその種類を決定するための入力を提供する。例えば、植え込み型薬物送達システム(あるいは、その他の徐放/制御されたリザーバ暴露システム)の操作を、内蔵のマイクロプロセッサ(すなわち、移植用デバイスパッケージ内の)によってコントロールすることができる。デバイスからの出力信号は、必要に応じ適切な回路構成によって条件付けされた後に、マイクロプロセッサに捕獲される。分析およびプロセシングの後、書き込み可能なコンピュータメモリーチップに出力信号を貯蔵し、および/または移植用デバイスから離れた遠隔地へ(例えば無線で)転送することができる。バッテリーにより局所に、あるいは無線伝送により遠隔的に、移植用デバイスに動力を供給することができる。例えば米国特許出願公開/0072784号を参照のこと。
【0085】
一実施形態において、放出およびセンサー/センシング成分のための薬物分子を含むリザーバ内容物を有するデバイスが提供される。例えば、センサーまたはセンシング成分はリザーバに位置することができ、あるいはデバイス基板に付着させることができる。このセンサーは、例えばマイクロプロセッサーを介して、操作的に情報交換を行い、投与量および頻度、放出時間、放出有効レート、薬剤あるいは複合薬の選択、および類似のものを含む薬物放出変数を制御あるいは改質することができる。センサーまたはセンシング成分は、生体内移植部位での種類または特性を検出する(またはしない)、さらにデバイスからの放出を制御するために使用されるマイクロプロセッサーへ信号を中継する。このような信号は、薬剤の放出を制御する、および/または精密に制御するフィードバック提供することができる。
【0086】
一実施形態において、デバイスはグルコースモニタリングおよびインシュリン制御に使用される1つ以上のセンサーを含む。センサーからの情報を使用し、同じデバイスから、あるいは個別のインシュリン放出デバイス(例えば、従来のインシュリンポンプ、外部に着用されたバージョン、あるいは移植バージョンのいずれか)からのインスリンの放出を能動的にコントロールすることができる。
【0087】
(移植用医療デバイスの使用)
移植用医療デバイスは種々の形態をとり、様々な治療および/または診断アプリケーションにおいて使用することができる。リザーバ手段、リザーバ内容物、リザーバコントロール手段、および輸送増強手段を含む移植用デバイスは、別の医療システムあるいはデバイスへ統合することができる。実施例としては、移植用の制御された医薬品送達デバイス、薬剤ポンプ(移植用浸透圧または機械ポンプなどの)およびこれらの組み合わせなどがある。
【0088】
このデバイスを使用および操作する方法は、全ては参照によって本明細書に引用される米国特許出願公開第5,797,898号、6,527,762号、6,491,666号、6,551,838号、および6,875,208号、ならびに、米国特許出願公開第2002/0099359A1号、2004/0082937A1号、2004/0127942A1号、2004/0106953A1号、および2005/0096587A1号にさらに記載される。
【0089】
(実施形態の例示)
本発明のデバイスおよび方法はさらに添付の図面を参照して理解することができ、類似の番号は同じデバイスまたは成分を表す。
【0090】
図1は、マルチリザーバ移植用医療デバイスのリザーバおよびリザーバキャップの1つの実施形態を示す。デバイス10(単に部分的に示された)は、第1の基板部18および第2の基板部16を有する本体部分12を含む。リザーバ14は本体部分内に規定される。(この図解中の本体部分内には、2つが設けられているが、第1の基板部の切り取り部分からは一方だけが見える。)リザーバの放出開口部は、リザーバキャップ20aおよび20bで被われている。金属導線22aおよび22bは、リザーバキャップに電流を供給するために、リザーバキャップと電気的に接続されている(電熱的切除によるリザーバ開放のため)。誘電体層25は第1の基板部の外側表面上に提供され、この導線の真下にある。リザーバは製剤またはセンサーなどのリザーバ内容物(表示せず)を含み、さらにデバイスは組織嚢経由輸送を増強する1つ以上の手段を含む。
【0091】
図2は、本体部分内のリザーバの一実施形態の断面図を示し、製剤が導入されているリザーバを示す。リザーバキャップ38で被われた放出開口部33を有する基板30はリザーバ31を含む(ここに表示していないが、リザーバの広い方の充填側は、本明細書に記載された薬剤を導入し配合するプロセスの完了後に封止される。)金属導線36は、製剤46の放出を開始するためにリザーバを開放するのに必要な時間で、リザーバキャップ38を介して電流を供給することができる。誘電体層32および上部不活性化層34も示す。液状の薬液または懸濁液40をリザーバに堆積させ、凍結乾燥あるいは乾燥によって薬剤基質42を乾燥させておき、続いて組織嚢経由輸送を増強する溶媒などの医薬品添加物44で基質を裏込めすることにより、製剤46がリザーバに導入される。
【0092】
図3は、移植された薬物供給デバイス50の1つの実施形態を示し、本体部分(あるいは基板)52、製剤が導入され、リザーバキャップ60に被われたリザーバ54を含む。分極した電極56は開口部の遠位のリザーバ内部に位置する。電極56は、製剤中の荷電した薬物分子と同じ電荷で荷電している(例えば、両方が「プラスに」荷電しているところが示されている)。デバイスは線維組織嚢、および微小血管系/キャピラリーに包囲され、プラスに荷電した薬物分子がリザーバから放出され(図の右側)、分極した電極は荷電した薬剤を押し出す。その薬物分子の方向は、開放されたリザーバからある距離だけ離れた位置にある反対の電荷に荷電した電極58にほぼ向かっている。
【0093】
図4および図5は、移植用薬剤貯蔵および送達デバイスの2つの可能性のある構造を示す。図4左側においては、チタン気密エンクロージャ63を含むデバイス62の外面、および製剤を含むリザーバを有する本体部分64の放出側/表面を示す。図4右側においては、マイクロプロセッサー66、バッテリー67、および無線遠隔アンテナ68を含むデバイスの内部部分65を示す。図5は製剤を含むリザーバを有する第1の部分72、および全ての調節素子(例えば電気的、電源、無線遠隔など)を含む第2の部分70を含むデバイスの別の実施形態を示す。
【0094】
本明細書に記載された製剤を有する使用に適する移植用デバイスの代表的な実施例としては、移植用ポンプ(例えば、Medtronic−MiniMedおよびArrowで製造されるような機械ポンプ、あるいはDUROS(登録商標)またはViadur(登録商標)のような浸透圧ポンプ)、およびマイクロチップ化学送達デバイスおよびマイクロチップバイオセンサーデバイス(例えば米国特許出願公開第5,797,898号、米国特許出願公開第6,527,762号、米国特許出願公開第6,491,666号、米国特許出願公開第6,551,838号、および米国特許出願公開第6,849,463号)などがある。
【0095】
一実施形態において、このデバイスはリザーバが提供される少なくともデバイスの表面上に位置する保護メッシュを含む。この保護メッシュは、例えば移植前、移植中、あるいは移植後のデバイス面に向けたランダムな機械力に起因する早発性破裂からリザーバキャップを保護することができる。この保護性メッシュはこの保護機能を提供するために実質的に固いものである必要がある。例えば、生体適合性金属、ポリマー、あるいはセラミックから作ることができる。任意に、デバイスのこのリザーバ部分で血管新生を促進する、および/または嚢厚さを最小化する1つ以上の薬剤を保護性メッシュに塗布してもよい。一実施形態において、例えば、メッシュは脈管形成性薬剤、抗炎症薬、あるいは両方の脈管形成性薬剤および抗炎症薬で塗布される。一例を図6に示すが、デバイス80は、チタンハウジング82(電子部品、電源、および遠隔操作部品を内側に含む)、薬剤送達本体部分84(リザーバ、および薬剤、あるいは貯蔵と徐放のための他の分子を含む)、気密性フィードスルー86、および保護メッシュ88を含む。保護メッシュはハウジングから分離して示すが、安全な方法で(例えば溶接によって)ハウジングあるいは気密フィードスルーに取り付けられる。同様に組織内殖を誘発するためにメッシュ中の細孔を調整することができる。
【0096】
(組織嚢経由輸送の測定)
別の態様では、交差組織嚢輸送における異なる製剤およびデバイス改質の影響をより良好に理解する手段として試験デバイスおよび方法が開発されている。重要なことは、このデバイスおよび方法は、完全な組織嚢を崩壊させる必要なく組織被包化の影響を排除して試験することができる。このデバイスは、インサイチュ(動物中で)で完全な組織嚢内部へのアクセスを有利に可能とし、顕著に組織嚢を介する分子輸送の詳細なインサイチュ測定を得ることを可能とする。このデバイスは組織嚢の特性または構造(例えば、厚さ、血管分布、密度、空隙率、透過性など)を改質/調節する方法を評価し、さらに例えば異なる方法、あるいは異なる条件の影響下で形成された2つの組織嚢を比較することなど、輸送を改善するための異なる戦略の定量的比較を行うことを可能とする。
【0097】
このデバイスは、さらに異なる材料またはデバイス構成を試験することができる。一実施形態において、嚢内部にアクセスする目的はデバイスを試験することである。例えば、特定の時間に、例えばリザーバキャップをデバイス本体の開口部から機械的に破裂させるか、電気化学的にまたは電熱的に崩壊させるか、あるいは別の方法で除去することにより、デバイス内への経路を開放する手段を含むデバイスを比較することができる。別の実施形態において、目的は移植材料として考慮されているバルク材料を試験すること、如何なる種類の嚢形態であるか、このような材料/デバイスが薬剤伝達またはバイオセンシングデバイスとして、あるいは薬剤伝達またはバイオセンシングデバイスの中で有用であると考えられるかどうかを観察することである。
【0098】
これらのデバイスおよび方法は、リザーバベース(特に、マイクロリザーバ)の移植用医療デバイスへの影響を評価するために特に適用可能であるが、このデバイスおよび方法は、例えば、リザーバ内容物(例えば構成または膜)に依存しない。このデバイスおよび方法を使用または適用すれば、いずれか一方の方向における輸送すなわち、リザーバ内へ(例えば、センシング用途のため)、あるいはリザーバから(例えば、薬剤伝達用途のため)の輸送を測定することができる。
【0099】
試験デバイスおよび方法は、灌流液が半透膜材料から作製されたチューブ材料を流れ、或る分子種がチューブ材料を通り灌流液へ、または灌流液から流れる際の微小透析の一般概念に由来する。図7A−Bを参照すること。例えばチューブを通って流れた後の灌流液中にある分子種(例、グルコースあるいは他の分析物)の量を測定することにより、あるいはチューブを通って流れた後どの程度の分子種(例えば薬剤)が灌流液から出たのかを測定することにより、輸送された分子種を収集するか、あるいは測定することができる。しかしながら、数日あるいは数週後に、組織嚢が半透膜チューブ材料のまわりに形成され、膜の細孔内で成長すると予想されるので、この従来の微小透析プロセスは長期間の輸送観察には適さない。この被包化および内殖はこの膜を介した輸送を妨害し、この膜内にあるいは直下に含まれるセンサー酵素の分解を促進する可能性がある。これは、移植用センサーの失敗となる2つの主要な理由のうちの1つであるセンサー膜のバイオ汚損になると思われる。(別の主な理由は嚢で生じる遅延である。)
本発明の試験デバイスおよび方法の一つの実施形態では、図8−14の非限定的な例で示されるように、デバイスはリザーバベースの移植用医療デバイスおよび不浸透性チューブ材料の組み合わせを含み、その結果、灌流液へ/灌流液からの全ての輸送は医療デバイスのリザーバ開口部を介して行われる。別の実施形態では、図9−10の非限定的な実施例で示されるように、デバイスはリザーバベースの移植用医療デバイスと併用する半透性材料を含む。例えば、この半透膜は対流を阻止するが、約20kDa未満の分子量を有する種の拡散を可能とする典型的な微小透析膜である。移植後にどのくらい長く機能することが想定されるかにより、この膜をデバイスの内側にしてもよいし、外側にしてもよい。この装置は半透膜を必要とするかどうかは、例えばどの程度良好に組織嚢がデバイスに接着されるか、および/または組織嚢がどの程度柔軟性あるいは弾性があるかなど、チューブから嚢内への流体の流動抵抗性に影響を及ぼす因子に依存する。
【0100】
本明細書では、試験デバイスおよび方法のいくつかの実施形態において、例えば内側の開口部が管腔へ開放されているなどの両方の表面で封止/閉鎖されていない場合でもチューブ内の開口部を「リザーバ」と呼ぶ。すなわち用語「リザーバ」は、別の材料が貯蔵される閉空間であるか、あるいは単に嚢の内部にアクセスするためのチューブ壁の開口部である。これらのリザーバからの材料輸送は、対流のないかあるいは対流が最小である必須の拡散ベースのものとしてデザインされる。
【0101】
図8A−Bは、試験デバイスの一部の1つの実施形態を示す。デバイス110は、外側表面124を有するセンサーパッケージ113が取り付けられているチューブ材料112を含む。チューブ材料112およびパッケージ113の間に延在するチャネル122に灌流液が流れる。センサーパッケージは、基板114、リザーバ118(一つが示される)、およびリザーバキャップ116を含む。チューブ材料112は、当業者において公知の接着剤あるいは他のシーリング材料である不透過性の生体適合性材料120で基板に固定される。例えば米国特許出願公開第6,730,072号、米国特許出願公開第6,827,250号、およびPCT公開第WO2005/010240号パンフレット参照。このチューブ材料は本質的に任意の分析物不透過性あるいは代謝産物不透過性の生体適合性材料である。これは比較的柔軟で、動物内への移植に適するものであることが好ましい。
【0102】
一実施形態において、デバイスはリザーバキャップの崩壊あるいは除去に続いて、リザーバ開口部を通る半透性障壁構造ブロッキングバルク流体流を含む。図9および10は、灌流液とリザーバキャップとの間に置かれた半透性材料を含み、このためリザーバキャップが活性化された(すなわち崩壊した)場合、この半透性材料は灌流液と環境との間に置かれる。図9では、半透性材料はチャネル122内部のチューブ130の形態をとり、灌流液はチューブ130の内部空間132を通って流れ、チャネル122内の他の如何なる空間も通過しない。図10では、半透性材料は、リザーバ開口部118に配置されたプラグ140の形態を有する。別の実施形態では、半透膜は基板製造プロセスの間に基板中に直接組み込むことができる。例えば、膜は多孔質シリコン膜である。
【0103】
組織嚢構造特性に影響を及ぼすように、パッケージの外側表面(特に隣接するリザーバ開口部)を任意に塗布し、織込み、あるいはそれ以外に改質することができる。代表的な改質方法としては、(1)タンパク質吸着を減少させるアプローチ、(2)サイトカイン、ヘパリン、代謝中間体、中和抗体、NSAID、およびTGFBなどの接着配位子、成長因子および組織反応修飾因子を使用するヒドロゲル改質、および(3)局所薬剤送達方法、などがある。一実施形態では、当業者に公知の1種以上の脈管形成性薬剤をデバイス上に付着させるか、あるいは別の方法で塗布し、組織嚢の血管分布を増強する。別の実施形態では、輸送計測デバイスの一部が脈管形成性薬剤および/または抗炎症薬とともに導入され、その後密閉され、一方、リザーバの別の部分は輸送に関する情報を提供するために未充填のままで開放されている。続いて、治癒プロセスの間に脈管形成性薬剤および/または抗炎症薬が放出される。本明細書で使用される用語「脈管形成性」は、移植されたデバイス周囲の血管および微小循環の発達を促進し維持する材料、あるいは分子を指す。一実施例において、デバイスは血管性成長因子などの血管誘導性または脈管形成性の薬剤を放出するか、あるいはその薬剤で塗布される。この種の適切な成長因子は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板成長因子、血管透過性因子、繊維芽細胞増殖因子、およびトランスフォーミング成長因子βとして含まれる。別の実施形態では、デバイスは脈管形成性特性を示す外部膜またはコーティング層を含む。これらの層は、例えばテトラフロオルエチレン、親水性ポリフッ化ビニリデン、混合セルロースエステル、および/またはその他のポリマーで作ることができる。別の実施形態では、例えば線維性被膜の全厚を減少させることができるデキサメサゾンのような1種以上の抗炎症薬がこのデバイスに塗布される。さらに別の実施形態では、移植されたデバイスの周りの炎症を減少させ、血管分布を増加させることができるデキサメサゾンおよびVEGFの組み合わせがこのデバイスに塗布される。
【0104】
図11は灌流液の流れが通ることを示す試験デバイス200の平面図である。破線は生体内領域を表し、代表的な実施形態では、試験のために動物に移植されるデバイス部分がどこであるのか、どの部分が外部に残されるのかがわかる。デバイス200はリザーバキャップ216、リザーバキャップの崩壊を活性化するための電気トレース226および外部配線227と共に、注入口チューブ材料212および排出口チューブ材料214、チューブ/マイクロチップ部品213を含む。この実施形態では、デバイスから動物内へと放出された薬剤は、動物の血液および/または尿の周期的サンプリングにより測定することができる。センシング試験では、例えば動物に大量のグルコースを投与し、さらにどの程度の速さでグルコースが嚢を透過し、センサーに達するかをモニターすることができる。
【0105】
図12は試験デバイスのチューブ/マイクロチップ要素300を示す。これはチューブ本体302、およびそこに付着した薬剤伝達パッケージ304を含む。薬剤を含む灌流液はチャネル306に流れる。薬剤伝達パッケージは、基板314、リザーバキャップ308a−eにより被われたリザーバ、リザーバキャップへ/リザーバキャップからの電気トレース、および外部配線316を含んでいる。5つのリザーバの直線配列が図示されている。試験操作では、リザーバキャップが崩壊し、これによりデバイスからの流路が作り出される。薬剤は灌流液から、さらに試験動物の体内の隣接する組織嚢へ向けて/通過して拡散する。
【0106】
図13および14は、マイクロチップ部分402、固いチューブ本体404、および可動性注入口/排出口チューブ材料408aおよび408bを含む試験デバイス400の別の実施形態を示す。チューブ本体は生体適合性金属(例えば、ステンレス鋼、チタンなど)またはポリマーで作ることができる。リザーバ膜410はリザーバ開口部内に配置される。操作では、分析物405は組織嚢401からリザーバ開口部を通り、灌流液内に流れ、そこで分析物を測定することができる。
【0107】
代表的な試験では、嚢を特定の期間の間に形成させることができ、続いてリザーバを開き、さらに続いてある期間(例えば数日から2週間まで)の間測定値を得ることができる。またどの程度早く嚢組織が成長をはじめ、開口部をふさぐかにより大きく依存する。このデバイスおよび方法が人類以外の哺乳類での使用を主に意図しているが、ヒトにおいて嚢透過性を試験するために本明細書に記載されたデバイスおよび方法を使用することができる。
【0108】
本質的には、特定の試験用途に適した任意のものを灌流液とすることができる。例えば、リザーバの薬剤含量をシミュレートするためのものとして灌流液を設計することもできるし、グルコースの拡散に対する単純な液体受容体とすることもできる。灌流液の代表的な例としては、非水性の生体適合性溶中のPBS、別の生理的液体または緩衝液、薬液などがある。シリンジ、定量ポンプ、その類似物を含む当業者において公知の本質的に任意のポンピング手段を使用して、デバイスのチューブ材料を通して、この灌流液をポンプすることができる。
【0109】
実際には、一実施形態において、試験デバイスのチューブを移植時に完全に試験動物の皮膚の下に配置し、この部位の皮膚を修正させて、例えばチューブが外に出ている部位で感染の機会が減るように治癒することができる。その後、チューブにアクセスし実験を実行する時に、チューブにアクセスするために小さな切開を入れ、例えば、部分的にチューブを取りだせばよい。実験の間(例えば数日あるいは週)、他の創傷治癒でのような感染を回避させるため部位を清潔にしておくことが必要である。別の実施形態では、移植期間中ずっとチューブを外に出されたままにしている。
【0110】
本発明の試験デバイスおよび方法は、生体内において、移植された医療デバイス上での組織嚢形成の影響を研究するのに有用である。有利なことに、このデバイスおよび方法は被包化の影響を排除し、移植されたデバイスの特定のリザーバ内容物に無関係である。デバイスおよび方法により、例えば移植された医療デバイスの周りに形成される組織嚢を通るグルコース(あるいは他の分析物あるいは薬剤)を定量することができる。試験デバイスおよび方法をデザインし、嚢に関する結果のみが得られるように分子輸送に及ぼすデバイスのあらゆる影響を最小化することができる。
【0111】
本発明のデバイスおよび方法は、以下の限定されない実施例を参照することによりさらに理解することができる。
【実施例】
【0112】
(実施例1:試験デバイスデザイン)
試験デバイスは、閉ループ移植体試験システムの形態をとるものとする。このデザインでは実質的に図13に示されるように、マイクロチップデバイスは代謝産物不透過性チューブ材料の長手方向に沿って取り付けられる。マイクロチップは、移植後の任意の時間に選択的に崩壊することのできる能動的リザーバキャップを含む。このデザインでは必要に応じて縫合ループの配置、あるいは正常な創傷治癒反応を破綻させる移植体の動作を低減させるために外科用メッシュの配置を含んでもよい。マイクロチップは試験ループシステムに密閉され、電気システムに含まれ、膜を活性化し、リザーバおよび経皮コネクターを開放するために使用される。
【0113】
試験デバイスは動物モデルの皮下空間内に移植され、この切開を所定の期間で修復させる。配線およびチューブ材料には、経皮コネクターを介してアクセスすることができる。その後、所定の時間に、代謝産物の皮下注射に合わせて、リザーバキャップを電熱的切除により崩壊させる。試験ループシステム(すなわち内部の液体)は、露出したリザーバ開口部により生体内環境に曝露される。代謝産物は図14に実質的に示すように、続いて生体内環境と試験ループシステムとの間を輸送される。生理食塩水が試験ループシステムを通りポンプされ、リザーバの下のデバイスから代謝産物が取り除かれる。その後、代謝産物濃度について排出された生理食塩水を試験する。
【0114】
(実施例2:漏れ試験)
移植に先立ち、動物に使用される試験デバイスを生体外実験することが重要である。システムの漏れについては漏れ試験が行なわれる。デバイスは食塩水中に置かれる。実験中は、デバイスの膜をそのまま維持する。システムからは、容易に検出可能な化合物(例えば、放射線標識マンニトール)が、ポンプの利用によって押し出される。所定の時点で、生理食塩水が採取され、分子がシステムを通り押し出された形跡すべてについて分析される。この実験は適切なデバイスアセンブリを確保するため、複数のデバイス上で繰り返す必要がある。図15に試験のセットアップを示す。
【0115】
(実施例3:生体外試験)
任意の生体内試験に先立ち、デバイスはデバイス機能性を確認するために生体外で試験される。デバイスは食塩水中に置かれる。生理食塩水はシステムを通りポンプされる。続いて、マイクロチップリザーバが切断され、開口部から試験ループシステムへアクセスする。デバイスが浸されている生理食塩水に、検出され易い化合物を所定量注入する。この食塩水はシステムを通りポンプされ、一定の間隔で収集される。排出された生理食塩水について、所定の時間ポイントで化合物の濃度を分析する。適切なデバイス機能を確保するため、この実験を複数のデバイス上で繰り返し行う必要がある。この生体外試験により比較用として最良の実験事例が得られる。図16は試験セットアップを示す。生体内試験に先立ち、再現性のある結果が得られなければならない。
【0116】
機能試験に加えて、これらの試験方法は、デバイスの性能あるいは特定の輸送増強特性を評価するのに有用である。例えば、デバイスが濃度Yを有する溶液に浸される場合、続いて、どの程度の灌流液がリザーバ開口部を通して失われるのか、注入口と排出口との静水圧差により押し出される流量の関数としてまたは流量を所定値して、溶質中に回収される濃度を定量することができる。
【0117】
(実施例4:生体内試験)
試験システムを皮下空間内に移植しておく。移植後、システムを食塩水で連続的に充填し、さらに周期的に洗浄する。必要に応じ、マイクロチップリザーバを被うリザーバキャップを電気的に切断する。試験日におけるこの操作に先立ち、皮下グルコースセンサーを皮下に移植し、新しい対照群とする。「0」日および「x」日における読み取り値を得るために当日またはその前に、別のマルチリザーバ輸送手段を移植することもできる。切断直後に、皮下(SC)、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、および/または腹膜内(IP)に所望の代謝産物を注入する。注入後あらかじめ定められた時点で、システム中の液体(約1−2ml)を完全に新鮮な溶液と入れ換える。この時点で血液を採取し、代謝産物レベルを分析する。これは第2の対照群として有用である。最後のシステム試料が得られた後、動物を安楽死させ、デバイスおよび組織嚢を除去する。嚢血管分布の測定に従って、嚢の組織学的な評価を行う。この情報を代謝産物注入後に得られた輸送量と比較する。
【0118】
試験デザインには、特定の試験時点に各々指定された複数の動物の群が含まれる。移植特性および動物の健康状態が移植期間全体にわたり同一のままである場合は、移植後3〜6月は嚢特性が変化しないので、個別の各試験を6ヶ月実施する。
【0119】
チューブ材料、ステンレス鋼、およびシリコンマイクロチップの単純なシステムを使用して最初の試験が行われる。得られたデータからは、嚢修飾因子のないベースラインが得られる。生体内でのベースラインが完成してから、多様な線維性被膜修飾因子を使用する複数の試験を行う。例えば、嚢形成における多孔質材料の影響、およびVEGF(注射またはヒドロゲル)の局所送達の影響が検討される。各時点で、注入試験および組織学的データをベースライン移植試験のデータと比較する。
【0120】
本明細書に引用された出版物、およびそれらで列挙される材料は、特に参照によって引用される。本明細書に記載された方法およびデバイスの修飾および変形は、先に示した詳細な説明により当業者において明白であろう。このような修飾および変形は、添付された特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、電熱的切除によって開放するためのリザーバおよびリザーバキャップを有するデバイス本体の1つの実施形態の断面図および透視図である。
【図2】図2は、リザーバに製剤および輸送増強溶媒を導入するプロセスが行われるデバイスの一つのリザーバの断面図である。
【図3】図3は、デバイスリザーバから周囲の線維組織嚢および微小血管系内へ/を通って荷電された薬剤を押し出すために電動式押し出し手段を使用して、移植された薬物供給デバイスの1つの実施形態の断面図および部分投影図である。
【図4】図4は、本明細書で述べたように、移植用マルチリザーバ医療デバイスの一実施形態の透視図および部分分解立体図である。
【図5】図5は、本明細書に記載するような、移植用マルチリザーバ医療デバイスの第2の実施形態の透視図である。
【図6】図6は、リザーバキャップ上に保護メッシュ構造を有する移植用マルチリザーバ医療デバイスの一実施形態の透視図および部分分解立体図である。
【図7】図7A−Bは、先行技術のチューブ形状の半透膜により、薬剤および分析物の潅流プロセスを示す断面図および透視図である。
【図8】図8Aは、組織嚢経由輸送の測定に使用される試験デバイスの1つの実施形態の透視図および断面図であり、図8Bは同じ実施形態の断面図である。
【図9】図9は、組織嚢経由輸送の測定に使用するための、第1の灌流液流管内部の半浸透性チューブを含む試験デバイスの別の実施形態の断面図である。
【図10】図10は、組織嚢経由輸送の測定に使用するための、リザーバ開口部内に配置された半浸透性プラグを含む試験デバイスの別の実施形態の断面図である。
【図11】図11は、組織嚢経由輸送の生体内測定のために、本明細書に記載される試験デバイスの一実施形態の平面図である。
【図12】図12は、組織嚢経由輸送の測定に使用するために、試験デバイスのさらに別の実施形態の透視図および断面図である。
【図13】図13は、組織嚢経由輸送の測定で使用するために、個別に開放可能な複数のリザーバを含む試験デバイスのさらに別の実施形態の透視図である。
【図14】図14は、組織嚢を通る分析物の流れを測定するために使用される図13に示す試験デバイスの断面図である。
【図15】図15は、組織嚢経由輸送の測定に使用される試験デバイスの一つをリーク試験するためのセットアップ/プロセス実験装置の透視図である。
【図16】図16は、組織嚢経由輸送の測定に使用される試験デバイスの一つを生体外試験するためのセットアップ/プロセス実験装置の透視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植された薬物供給デバイスから組織嚢を通過させて薬剤を輸送することを増強する方法であって、該方法は、
患者に移植された医療デバイスに配置された複数の別個のリザーバから、制御可能に製剤を放出する工程と、
患者に移植された該医療デバイスから、制御可能に輸送エンハンサーを有効量放出し、存在する場合、該移植部位の該デバイス周囲に存在する線維組織嚢を通る放出された該製剤の輸送を促進する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記増強薬剤の放出は、デバイス内にある1つ以上のリザーバから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増強薬剤の放出は、デバイス上の表面コーティングから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記輸送エンハンサーの放出が、前記製剤の放出と同時に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記輸送エンハンサーの放出が連続的に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記製剤は前記輸送エンハンサーをさらに含み、該製剤および該輸送エンハンサーが同一のリザーバから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記輸送エンハンサーは、前記薬剤のための溶媒または共溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記輸送エンハンサーは、界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記輸送エンハンサーは、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬物分子は荷電分子を含み、前記輸送エンハンサーはイオン対形成の対イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記輸送エンハンサーは、組織嚢の成分を溶解または分解する分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記分子はコラゲナーゼを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分子はトロンビン、フィブリノリジン、ヒアルロニダーゼ、またはトリプシンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
デバイスは、前記リザーバから前記組織嚢を介して前記製剤を機械的に押し出すための手段をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤を機械的に押し出すための手段は、ピストン、水膨潤性材料、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デバイスは、放出用の脈管形成性コーティングまたは脈管形成性分子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
放出用の前記脈管形成性コーティング、前記脈管形成性分子、または両方は、血管内皮細胞増殖因子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスは、抗炎症薬をさらに含み、該抗炎症薬は前記リザーバから、あるいは該デバイス上のコーティングから、あるいは該リザーバおよび該コーティングの両方から放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記抗炎症薬は、デキサメサゾンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
移植された薬物供給デバイスから組織嚢を通過させて薬剤を輸送することを増強する方法であって、該方法は、
患者に移植された医療デバイスの複数の別個のリザーバから、荷電された薬物分子を含む製剤を制御可能に放出する工程であって、該薬剤の放出および該増強薬剤の放出が該デバイスに配置された1つ以上のリザーバに由来するものである工程と、
存在する場合、該移植された医療デバイスの周囲にある、組織嚢を通る該荷電された薬物分子の輸送を増強する電動式方法を利用する工程と
を含む方法。
【請求項21】
前記電動式方法がイオントフォレシスを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記医療デバイスの外面がその中あるいはその上にある電子部品により帯電され、存在する場合、前記移植された医療デバイスの周囲にある組織嚢を通る、薬剤分子を推進するのに有効な推進力を生み出す、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
患者に移植されたセンサーデバイスに分析物を輸送することを増強する方法であって、該方法は、
該移植されたセンサーデバイスから輸送エンハンサーを有効量制御可能に放出する工程を含み、該デバイスはセンサーが配置された複数の別個のリザーバを含む、方法。
【請求項24】
前記デバイスは、
リザーバキャップ、および
該リザーバキャップを破裂させるための手段
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
移植用医療デバイスであって、
本体部分、
該本体部分内配置され、該本体部分によって規定された2つ以上のリザーバ、
該リザーバ内のリザーバ内容物、および
移植後に該デバイスの周囲に形成され得る任意の線維組織嚢を介して、該リザーバ内容物の全てまたは一部、あるいは該リザーバ内容物の全てまたは一部と接触することを目的とする環境成分の物質輸送を増強するための手段、
を含む、デバイス。
【請求項26】
前記リザーバ内容物が製剤を含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記リザーバ内容物がセンサーを含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
物質輸送を増強するための前記手段が輸送エンハンサー、電動デバイス、容積式機構、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
放出用の脈管形成性コーティングあるいは脈管形成性分子をさらに含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項30】
放出用の前記脈管形成性コーティング、前記脈管形成性分子、あるいは両方は血管内皮細胞増殖因子を含む、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記リザーバから、前記デバイス上のコーティングから、あるいは該リザーバおよびコーティングの両方から放出される抗炎症薬をさらに含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項32】
組織嚢を介する薬剤または分析物の輸送を試験するための移植用デバイスであって、該デバイスは、
外面、灌流液の液体注入口、灌流液の液体排出口、および該注入口と該排出口との間に延在する液体導管を有する主要本体、
該主要本体に取り付けられている基板、
該基板内に規定され、および該基板を通って延在する少なくとも1つのリザーバであって、該リザーバは流体導管中に第1の開口部、および該デバイスの外面へ開放することができる第2の開口部を有する、リザーバ、
該リザーバの該第2の開口部を被う少なくとも1つのリザーバキャップ、および
該リザーバキャップ選択的に崩壊または除去するための手段、
を含む、デバイス。
【請求項33】
灌流液の流体注入口に接続された第1のフレキシブルチューブ、灌流液の流体排出口に接続された第2のフレキシブルチューブ、および該液体導管および該フレキシブルチューブに灌流液を流すための手段をさらに含む、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
リザーバキャップが崩壊あるいは除去された後、一方または両方のリザーバ開口部を介するバルク液体流れをブロックする半透性障壁構造をさらに含む、請求項34に記載のデバイス。
【請求項1】
移植された薬物供給デバイスから組織嚢を通過させて薬剤を輸送することを増強する方法であって、該方法は、
患者に移植された医療デバイスに配置された複数の別個のリザーバから、制御可能に製剤を放出する工程と、
患者に移植された該医療デバイスから、制御可能に輸送エンハンサーを有効量放出し、存在する場合、該移植部位の該デバイス周囲に存在する線維組織嚢を通る放出された該製剤の輸送を促進する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記増強薬剤の放出は、デバイス内にある1つ以上のリザーバから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増強薬剤の放出は、デバイス上の表面コーティングから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記輸送エンハンサーの放出が、前記製剤の放出と同時に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記輸送エンハンサーの放出が連続的に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記製剤は前記輸送エンハンサーをさらに含み、該製剤および該輸送エンハンサーが同一のリザーバから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記輸送エンハンサーは、前記薬剤のための溶媒または共溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記輸送エンハンサーは、界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記輸送エンハンサーは、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリドンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬物分子は荷電分子を含み、前記輸送エンハンサーはイオン対形成の対イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記輸送エンハンサーは、組織嚢の成分を溶解または分解する分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記分子はコラゲナーゼを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分子はトロンビン、フィブリノリジン、ヒアルロニダーゼ、またはトリプシンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
デバイスは、前記リザーバから前記組織嚢を介して前記製剤を機械的に押し出すための手段をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤を機械的に押し出すための手段は、ピストン、水膨潤性材料、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デバイスは、放出用の脈管形成性コーティングまたは脈管形成性分子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
放出用の前記脈管形成性コーティング、前記脈管形成性分子、または両方は、血管内皮細胞増殖因子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスは、抗炎症薬をさらに含み、該抗炎症薬は前記リザーバから、あるいは該デバイス上のコーティングから、あるいは該リザーバおよび該コーティングの両方から放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記抗炎症薬は、デキサメサゾンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
移植された薬物供給デバイスから組織嚢を通過させて薬剤を輸送することを増強する方法であって、該方法は、
患者に移植された医療デバイスの複数の別個のリザーバから、荷電された薬物分子を含む製剤を制御可能に放出する工程であって、該薬剤の放出および該増強薬剤の放出が該デバイスに配置された1つ以上のリザーバに由来するものである工程と、
存在する場合、該移植された医療デバイスの周囲にある、組織嚢を通る該荷電された薬物分子の輸送を増強する電動式方法を利用する工程と
を含む方法。
【請求項21】
前記電動式方法がイオントフォレシスを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記医療デバイスの外面がその中あるいはその上にある電子部品により帯電され、存在する場合、前記移植された医療デバイスの周囲にある組織嚢を通る、薬剤分子を推進するのに有効な推進力を生み出す、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
患者に移植されたセンサーデバイスに分析物を輸送することを増強する方法であって、該方法は、
該移植されたセンサーデバイスから輸送エンハンサーを有効量制御可能に放出する工程を含み、該デバイスはセンサーが配置された複数の別個のリザーバを含む、方法。
【請求項24】
前記デバイスは、
リザーバキャップ、および
該リザーバキャップを破裂させるための手段
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
移植用医療デバイスであって、
本体部分、
該本体部分内配置され、該本体部分によって規定された2つ以上のリザーバ、
該リザーバ内のリザーバ内容物、および
移植後に該デバイスの周囲に形成され得る任意の線維組織嚢を介して、該リザーバ内容物の全てまたは一部、あるいは該リザーバ内容物の全てまたは一部と接触することを目的とする環境成分の物質輸送を増強するための手段、
を含む、デバイス。
【請求項26】
前記リザーバ内容物が製剤を含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記リザーバ内容物がセンサーを含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
物質輸送を増強するための前記手段が輸送エンハンサー、電動デバイス、容積式機構、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
放出用の脈管形成性コーティングあるいは脈管形成性分子をさらに含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項30】
放出用の前記脈管形成性コーティング、前記脈管形成性分子、あるいは両方は血管内皮細胞増殖因子を含む、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記リザーバから、前記デバイス上のコーティングから、あるいは該リザーバおよびコーティングの両方から放出される抗炎症薬をさらに含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項32】
組織嚢を介する薬剤または分析物の輸送を試験するための移植用デバイスであって、該デバイスは、
外面、灌流液の液体注入口、灌流液の液体排出口、および該注入口と該排出口との間に延在する液体導管を有する主要本体、
該主要本体に取り付けられている基板、
該基板内に規定され、および該基板を通って延在する少なくとも1つのリザーバであって、該リザーバは流体導管中に第1の開口部、および該デバイスの外面へ開放することができる第2の開口部を有する、リザーバ、
該リザーバの該第2の開口部を被う少なくとも1つのリザーバキャップ、および
該リザーバキャップ選択的に崩壊または除去するための手段、
を含む、デバイス。
【請求項33】
灌流液の流体注入口に接続された第1のフレキシブルチューブ、灌流液の流体排出口に接続された第2のフレキシブルチューブ、および該液体導管および該フレキシブルチューブに灌流液を流すための手段をさらに含む、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
リザーバキャップが崩壊あるいは除去された後、一方または両方のリザーバ開口部を介するバルク液体流れをブロックする半透性障壁構造をさらに含む、請求項34に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−501037(P2008−501037A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515479(P2007−515479)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019021
【国際公開番号】WO2006/085908
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(501228004)マイクロチップス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019021
【国際公開番号】WO2006/085908
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(501228004)マイクロチップス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】
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