医療装置およびその作成方法
医療装置、例えば、カテーテル、ステンまたはバルーンなどを、氷またはワックスからなる型(30)上に放射線硬化性組成物を付着させて成形する。付着組成物は、適当にはUV光を照射して硬化させ得る。像をなすように付着または硬化を実施することにより、複合構造を形成することができる。光硬化により、ポリエステル、ポリアミドまたはポリイミドを形成する組成物を用い得る。特定の構造は、バルーンのコーン部壁(86,87)を通過するガイドワイヤ管腔(85)を有するラピッドエクスチェンジ型カテーテル用バルーンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療装置およびその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば診断用カテーテルやバルーンカテーテルなどのポリマーを含む多くの医療装置は、現在のところ、従来の熱可塑性ポリマー熱成形技術、例えば、押出、射出成形、延伸ブロー成形などを利用して製造されている。これらの方法では、熱可塑性ポリマーを軟化または溶融させ、これを所望形状に再成形する。これらの熱成形法は広く普及しているが、そのような医療品のサイズを縮小する必要に迫られている。同時に、医療装置内の局所的機能特性の多様性も増大している。したがって、所望の結果を得るためには、ますます多くの複雑な加工工程を実施しなければならない。
【0003】
補強材を含む熱可塑性ポリマー組成物からのバルーン形成は、ほとんどのタイプの補強材がブロー成形プロセス中にほとんど変形しないために困難である。バルーンのディップ成形は可能ではあるが、バルーン内から内型を取り出さなければならないので、強化バルーンの形成に最適な方法ではない。
【0004】
血管形成術用バルーンにおいて高い引張強度は重要である。これは、引張強度が高いと、壁厚が比較的薄いバルーンに対して高い圧力を用いることができるからである。ある種の狭窄の治療には高い圧力が必要なことが多い。壁厚が薄いと、収縮したバルーンを細く保つことができるので、バルーンを動脈系中に進めやすくなる。カテーテルシャフト材料の場合にも同様な要素が重要である。
【0005】
ブロー成形バルーンの不利点の1つは、そのコーン部の壁が中心部の壁より厚いことである。その結果、折り畳んだときにバルーンのプロファイルが大きくなる。コーン部の厚さを減少させるさまざまな技術が提案されたが、それらの技術は必ずしも所与のバルーンに適しているとは限らない。
【0006】
これらの要因から、そのような装置部品の製造技術は、サイズを小さく保つのには不適であり、装置の複雑さを増大させ、かつ/または新たな装置を使用する。したがって、多様な局所的機能特性を提供すると共にさらなるサイズの縮小を可能にする新たな製造技術が必要である。
【0007】
液状で分注または塗布し、その後硬化させる硬化性組成物は、従来のカテーテル装置の製造、主として接着剤またはコーティング用に有用である。しかし、硬化性組成物は、本明細書に記載する本発明以前には広く利用されてはいなかった。
【0008】
硬化ポリイミド材料から形成された装置はいくつかの文献に記載されている。超高温高強度で知られているポリイミドポリマーは、通常、ポリアミド−酸前駆体ポリマー材料を、ポリマーに沿ったアミド基と酸基が縮合して主鎖ポリマー中に環状イミド基を生成する硬化温度に加熱することによって形成される。この技術は、例えばアイテンアワー(Euteneuer)の特許文献1でバルーン形成に用いられている。しかし、この製造法は、ポリイミドの硬化に高温を必要とするために多くの装置形成用には不適である。さらに、ポリイミドは優れた強度特性を有してはいるが、得られるポリマーは、可撓性、伸びおよび軟度が比較的低い。さらにまた、この製造手順は、ガラス基体上で溶液からの付着によりポリアミド酸を形成するが、ガラス基体を溶かすのにHFを用いる。ガラス基体の形成およびその後のHF破壊は比較的危険かつ費用のかかるプロセスである。
【0009】
カテーテルシャフト用のポリイミドチューブは、例えば、マコールドら(Machold et al)の特許文献2に記載されているが、その製法は記載されていない。
例えば、バーンズ(Burns)の特許文献3は、ポリイミドまたはポリイミド−ポリテトラフルオロエチレン複合材料からなるシャフト部分を有する血管形成術用カテーテルを記載している。
【0010】
例えば、ラウら(Rau et al)の特許文献4は、バルーンカテーテル構成法、すなわち、カテーテルシャフト、ガイドカテーテル、注入カテーテルおよびバルーンに熱可塑性ポリイミドを用いている。しかし、この材料の使用は、一般的な熱可塑性ポリマーに関して既に認識されているものと同じ制約を免れない。
【0011】
例えば、ハーゲンローザーら(Hergenrother et al)の特許文献5は、熱可塑性であるが、UVを照射するか、275℃を超える温度に暴露すると架橋状態に硬化可能なメチル置換ポリイミドポリマーを記載している。しかし、UV照射プロセスは時間がかかるようである〔1.7〜2.4ミル(0.04〜0.06mm)の膜の硬化に0.21ワット/cm2で100時間〕。したがって、医療装置の形成にこの材料を使うのは、他のポリイミドに比べてほとんど利点がないばかりか、さらなる加工上の問題を招くと思われる。
【0012】
ポリアミド−酸ポリマーからの縮合の他に、ビスマレイミド化合物からディールス−アルダー付加環化によりポリイミドを形成する方法が提案されたが、これらの反応も200℃を超える温度で行われる。より最近では、周囲温度近くまたは周囲温度よりも低い温度下にUV照射により触媒されるジエン付加環化を用いてポリイミドを調製する方法が提案された。
【特許文献1】米国特許第4952357号明細書
【特許文献2】米国特許第4976720号明細書
【特許文献3】米国特許第5100381号明細書
【特許文献4】米国特許第6024722号明細書
【特許文献5】米国特許第5145942号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、一態様において、放射線硬化性組成物から、物品、特に医療装置を形成する方法に関する。この方法では、パターン化硬化法(pattern−wise curing)を用いて医療装置または該医療装置上のコーティングを形成する。医療装置は、ポリマー装置、またはポリマー表面(コーティング)を含む金属もしくはセラミック装置であり得る。本発明は、さらなる態様において、そのようにして形成された装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、その外側に硬化性ポリマー形成組成物を付着させる、所望の装置形状、例えば、バルーン形状を有する基体を形成するために、氷(凍結水)、ワックス、ポリビニルアルコールまたは他の容易に流動化可能な固体材料を使用する。噴霧、印刷または浸漬による付着法を用い得る。ポリマーを付着させた後、そのポリマーを装置形状で硬化させるために付着層にUVまたは他の硬化誘導エネルギーを当て、次いで、流動化工程を実施して流動化可能な材料を除去し得る。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、100℃未満、好ましくは50℃以下、特に周囲温度(約22℃)以下の温度で溶融する材料からなる医療装置用成形型に関する。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、例えば、流動化可能な材料からなる基
体に液状の硬化性配合物をパターン化してまたは一様に塗布し、かつ/または形成する医療装置に応じて適切に、パターン状に、連続的に、または一様に放射線を照射して、同硬化性配合物を硬化させるさまざまな形成技術を可能にする。硬化性配合物は、医療装置の物理的性質を所望通りに変化させるためにオンザフライで変えることができる。さらに、例えば、融点もしくは溶解度といった流動化特性を変えたり、または基体が占める容積内に医療装置の複数部分間の所望ブリッジ構造もしくは他の望ましい連結部を提供し得る繊維などの材料を残留させたりするように、基体を変更してもよい。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、約50℃未満の温度で硬化してポリイミドポリマーを形成する放射線硬化性組成物から医療装置を形成する方法に関する。
また本発明の方法は、形成する物品に対応して物理的性質を調整することが可能である。
【0017】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本願で言及するすべての米国特許文献を含めたすべての公開文献はそのまま本明細書に文献援用される。本願で言及するいずれの同時係属特許出願もその全容が本明細書に援用される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態は、医療装置、特に種々の脈管内に配置して操作する医療装置の形成法、そのような方法によって得られる装置、およびそのような方法において有用な新規改質ポリマーに関する。
【0020】
図1を参照すると、長尺状のチューブ12と、その端部に取り付けられたバルーン14とを備えるカテーテル10が示されている。このバルーンは本発明の硬化ポリマー材料から形成されている。
【0021】
図2A〜図2Cは、バルーン14を形成するための本発明の1つの方法を例示している。図2Aに示すように、基体30は、バルーン14の内面を決定する外面形状を有する。この外面形状は、バルーン14を完全に膨張させたときのバルーン14の所望の内面形状と一致する。少なくともいくつかのケースでは、基体30の外面は、通常、そこに塗布される重合性材料が極めて薄いであろうことから、実質的にバルーンの外面をも決定するであろう。基体は、形成された装置(この場合はバルーン)の完全性を損なわない条件下において容易に流動化可能な固体材料から形成されている。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、基体30は、融点が約100℃以下、好ましくは約50℃以下であることを特徴とする、氷または別の溶融性材料、例えばワックスである。しかし、いくつかの実施形態では、より融点が高い材料を用いてもよいし、または、用いる基体の流動化条件下で形成された装置を実質的に攻撃しない水もしくは別の溶剤による溶解などの別の作用によって基体材料を流動化してもよい。そのような材料の一例としては、英国、アーラム(Irlam)所在のエンバイアロンメンタル・ポリマーズ(Environmental Polymers)社で製造され、商品名Depart(商標)で販売されている水溶性ポリビニルアルコール(PVA)がある。Depart(商標)ポリマー組成物は、約185〜210℃の溶融温度を有し、室温から熱水、例えば20〜80℃で完全に溶解可能になるように改質され得る。Depart(商標)製品に関するさらに詳細な情報は、Materials World、2002年8月、第10巻、第8号、p.36−38に見られる。このように、本明細書中の特定の実施形態における氷および/またはワックスへの言及は、Depart(商標)PVA組成物および他の容易に流動化し得る材料などの代替流動化可能な材料を使えるように容易に改変され得る実
例実施形態とみなされるべきである。
【0023】
基体30は、流動化可能な材料からなる固体マトリックス中の流動化し得ない固体粒子、例えば強度を増強する無機粒子を含む複合材料であってもよい。場合により、マトリックス材料を流動化したときに、形成された装置からマトリックス材料と一緒に粒状材料を除去できることが望ましいであろう。しかし、本明細書でさらに詳細に説明するように、場合によっては、流動化可能な材料を除去するときに、基体30の流動化不能成分、例えば繊維または他の粒状材料などを残留させることが望ましいことがある。そのような成分は、残留すると、本明細書に記載のような多重層または他の機構間のブリッジ構造を構成し得る。
【0024】
図2Aに示すように、基体30は、基端胴部34と、大きな外径を有するバルーン部36と、小さな外径を有する先端チップ部38とを有する。
図2Bに示すように、放射線硬化性組成物の膜40を付着用基体30の外面上に付着させる。この工程は、例えば、付着用基体30を、硬化性組成物溶液、または、硬化性組成物が低粘度を有する場合には、純(希釈していない)組成物に浸漬し、基体30を取り出し、溶媒が存在する場合には蒸発させ、次いで、得られた膜に基体30の溶融温度より低い温度において放射線を照射して、付着用基体30上に硬化膜40を形成することによって実施され得る。硬化性組成物は噴霧塗布してもよい。付着および硬化工程を複数回行なって、硬化材料の厚さを所望の厚さにしてもよい。いくつかの実施形態において、この技術で形成された各付着膜は、約0.25〜約25.4ミクロンメートル(μm)(約0.00001〜約0.001インチ)厚、適当には、約2.5μm(約0.0001インチ)厚であり得る。本発明のいくつかの実施形態においては、所望の厚さの膜40が形成されるまでディップコーティングおよび放射線硬化工程を繰り返し実施する。いくつかのバルーン実施形態の場合、最終壁厚は、約2.5〜約50μm(約0.0001〜約0.002インチ)、例えば、約5〜25μm(約0.0002〜約0.001インチ)のオーダーであり得る。他のバルーンは、上記よりも厚いかまたは薄い壁を有することが望ましく、例えば、薬剤を運んで送出するためにバルーン壁を多孔質外層で形成する場合、所望の総壁厚は実質的に50μmを超えることもある。
【0025】
本発明の方法の次の工程は、硬化ポリマー膜40内からの付着用基体30の除去である。基体材料が溶融により流動化可能な場合、除去は、単純に付着用基体30/硬化膜40アセンブリを基体30の融点を超える温度に加熱して行うことが好ましい。付着用基体は溶解して、硬化膜装置を残して流出する。例えば、基体30が氷から形成されている場合、アセンブリは基体を一定時間にわたって周囲温度に暴露することにより加熱され得る。基体30が選択的溶解により流動化可能な場合、アセンブリは、適当な溶媒中に一定時間浸し、かつ/または基体に溶媒流を当てて、基体を溶解して除去し得る。基体の形成に用いる材料は、必要により、回収して再使用し得る。基体を除去した後に、所望装置、この場合はバルーンが得られる。
【0026】
基体30は、対応する雌型に水または溶融ワックスを充填し、次いで、その温度を使用基体材料の凝固点より低下させることにより容易に形成され得る。氷またはワックスから付着用基体30を形成する方法は、米国特許第4952357号で用いられているポリイミドバルーン形成法より多くの利点を提供する。本発明の基体材料はより安価で、リサイクルもより容易であり、毒性または腐食性材料も必要としない。
【0027】
本発明は、少なくともある種の実施形態においていくつかの重要な利点を有する。第1に、本発明は、超薄壁を提供し、そのために、低プロファイルカテーテルおよびバルーンに極めて適している。第2に、本発明の方法は、図2A〜図2Cに示すように、バルーン14の内径公差の精密な制御を提供する。第3に、本発明の方法は、他のバルーン形成技
術とは異なり、薄型コーン、レリーフパターン付き表面または同種のものであるかを問わず、所望の壁厚プロファイルを得るのに用いることができる。第4に、本発明の方法を用いると、医療装置の異なる区域に対して付着させるポリマー材料の特性を最適化することができる。第5に、極めて複雑な装置構造を容易に形成することができる。
【0028】
図2A〜図2Cに示す本発明の方法の実施形態において、基体30は、完全に膨脹した状態のバルーンの所望形状に一致する表面形状を有する。これとは反対に、基体30の表面形状は、収縮した状態(または部分膨脹状態)のバルーンの所望形状に一致することがある。この後者の実施形態は、収縮したバルーンの形状を予測可能にすることにより、バルーンが収縮したときに最小プロファイルを有することを保証するために特に有用である。この実施形態を用いれば、折り目付けおよび熱処理特性が不要になり得る。図3Aおよび図3Bは、この実施形態の実施例を示している。図3Aは収縮した状態のバルーン50の断面であり、この断面は、3つの突出部54A〜54Cを有する基体52で規定されている。その結果、バルーン50は、収縮したときに3つの対応する突出部56A〜56Cを有する。図3Bはバルーン50の完全膨脹状態を示している。
【0029】
氷またはワックス型は、そのような材料からなる本体、例えばロッドまたはキューブ形状を機械または熱処理して所望のバルーンまたは他の形状にすることによって形成することもできる。例えば、氷およびワックスもまた、適当な低温下で、機械的にまたはレーザーを用いて容易に彫刻できる。
【0030】
上述したことすべてを考慮すれば、例えば、約1.5〜25mmの直径、約5〜200mmの長さ、約7.5〜750μm(約0.0003〜0.03インチ)の厚さ、いつくかの実施形態では約7.5〜76.2μm(約0.0003〜0.003インチ)の厚さを有するバルーンから、従来医療産業で一般に利用されているような通常のバルーン寸法および強度範囲を有するバルーンまで容易に製造し得る。
【0031】
いずれのカテーテル構成の場合にも、バルーンはシャフトに接着され、シャフトは、ポリエステル、ポリアミド、例えば、ナイロン10、ナイロン6/10、ナイロン11、ナイロン12、またはそれらの混合物、ポリエチレン、熱硬化性ポリイミド、ポリエーテルアミドブロックコポリマー、例えば、PEBAX(登録商標)という商品名で販売されているエステル結合ポリエーテルアミド、ARNITEL(登録商標)およびHYTREL(登録商標)という商品名で販売されているポリエーテルエステルブロックコポリマー、または当業では周知の他の材料で形成し得る。しかし、別の実施形態では、バルーンをシャフトまたはその一部と一体成形し得る。
【0032】
付着技術は求める特性によってさまざまであり得る。一般的なディップおよびスプレーコーティング技術を用いてもよい。さらに、より高度な技術を用いることもできる。バルーンの形成に複数の層を用いると、バルーンに対して部位に特異的な特性を与えることができるとともに、全体的な特性プロファイルは実質的に損なわれないバルーンを得ることができる。例えば、一実施形態では、インクジェットプリントヘッドに類似した1つ以上のコンピュータ制御のスプレーヘッドを用いるアプリケータによって硬化性組成物を塗布する。複数のスプレーヘッドを介して異なる硬化性配合物を噴霧することにより、オンザフライで、すなわち噴霧時に種々の色を印刷するのと同様に、硬化配合物を変えることができる。このようにして、例えば胴部の最内層は、その後のシャフトへの接着を容易にする粘着性硬化特性を与えるように配合し、バルーンの膨脹可能部分では、同じ最内層を、粘着接着を回避するために粘着力を最小限にするように配合し得る。同様に、最外面は、粘着性を有さず柔軟性および/または潤滑性を与えるように配合し得る。このようにして、剛性、柔軟性、親水性、粘着性、引張強度、伸びおよび/またはMRI蛍光透視可視性に関連した遷移部を形成するために、2種以上の異なるポリマーブレンドをバルーンまた
は他の装置内にオンザフライで形成し得る。
【0033】
親水性の側鎖または主鎖部分を有する硬化性化合物を用いることによって、硬化外層ポリマー材料を親水性にすることができる。そのような部分は、アニオン基もしくはカチオン基またはポリエチレンオキシドブロックであり得る。これは、例えばポリイミドの場合のように、基材樹脂の特性が概して高疎水性であるときに特に有利である。
【0034】
したがって、(例えば高精度超音波スプレーノズルを用いて)軟質ポリエステル上または軟質ポリエステル中に硬質ポリエステルのらせんパターンを噴霧してシャフトを形成することができる。(例えば、スプレー、ディップコート、ブラシなどにより)ナノクレイ含有ポリマーを、充填材を含まない同じ溶液と併せて任意のパターンで塗布し得る。同様なことを、放射線不透過性物質(バリウム塩、タングステン塩)または種々の磁性物質、すなわち、強磁性、常磁性、超常磁性、または反磁性物質(例えば、ジスプロシウムまたはガドリニウム塩)を用いて実施してもよい。2、3種以上の組成物を任意のパターン(例えば、軸線方向(複数のリング)、円周方向(複数の縞模様)または半径方向(複数の層)に離間したパターン)で用い得る。あるいは、または同時に、噴霧時に複数種のポリマーを混合して段階的遷移部を得ることもできる。
【0035】
本発明に使用し得る高精度噴霧技術は、超音波噴霧を用いる。適当な超音波噴霧システムは、米国ニューヨーク州ミルトン(Milton)所在のソノテック社(Sono−Tek Corp.)から入手でき、http://www.sono−tek.com/に記載されている。高精度の線またはフィーチャを形成する他の技術は電気流体力学式印刷(electrohydrodynamic printing)であり、例えば、プリンストン大学セラミック材料ラボラトリー(Princeton University Ceramic Materials Laboratory)で入手可能であるとともに、http://www.princeton.edu/〜cml/html/research/ehdp.htmlに記載されている。ピコリッターディスペンサ(picoliter dispensers)は、http://www.microdrop.de/html/about.htmlに記載され、ドイツ、ノルダーシュテット(Norderstedt)所在のマイクロドロップ社(Microdrop GmbH)から入手可能である。
【0036】
これらの技術は、放射線硬化性組成物の塗布に適しているだけでなく、塗布前に流動化可能な型を変形させるのにも用い得る。例えば、より基本となる氷型の上に氷で複数の構造を形成し、それを基体として用い、放射線硬化性配合物で被覆し得る。このようにして、異なる構造的特徴を有する多様な製品が得られるように基本型を容易に変更することが可能である。1つの特定実施例の目的は、凸凹表面と均一な壁厚とを有するバルーンである。本発明に従って形成した標準的なバルーン成形氷型は、氷点下環境下で水を用いて表面の特定位置に凸凹を付けることによって変更され得る。次いで、変更された氷型に放射線硬化性配合物を塗布した後硬化させて、目的バルーンを得ることができる。
【0037】
噴霧法では、バルーン全面の壁厚を精密に規定することができ、それによって、コーン部や中央部の壁厚を均一にしたり、またはコーン部の壁厚をより薄くしたりすることもできる。厳密な精度で噴霧する(空間的のみならず流速の急速な変化を可能にする)ために、上述のような超音波スプレーノズルを用い得る。
【0038】
基体の形状は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コートコアワイヤを覆うポリテトラフルオロエチレンコートクラムシェル型中で、または任意の他の適当な手段で形成され得る。氷型中に金属製中心コアワイヤを入れることにより、高均質層を得る手段として静電噴霧を使用することができる。金属製コアワイヤは、医療装置を形成・硬化した後
の型の溶融を促進する抵抗加熱器として用いることもできる。
【0039】
前記装置を軸線方向において補強する1つの方法は、中心軸と平行な数本の縞に沿ってより多くの材料を噴霧することである。そのような縞模様は、例えば、ビジルら(Vigil et al)の米国特許第5320634号に記載されているように、カッティングバルーンのブレードパッド下の長手方向のバルーン本体領域を強化するのに用いられ得る。
【0040】
本発明の方法は、従来のブロー成形工程に良く用いられるバルーンパリソンのプレフォームの形状の形成に使うこともできる。理想的なプレフォームの形状および好ましい厚さは、多重ポリマーコーティング噴霧工程により達成し得る。
【0041】
本発明の方法によって複合材も作成し得る。例えば、
SPECTRA(登録商標)、KEVLAR(登録商標)などや、ポリイミド、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ガラス、フレキシブルセラミックまたは金属材料からなるワイヤまたは繊維をバルーン形状の氷またはワックス型の周りにらせん状またはコイル状に巻き、次いで、光硬化性組成物を噴霧し、硬化させる。いくつかの実施形態では、先ず、光硬化性組成物の下層を塗布し、硬化させる。
【0042】
氷またはワックス上に硬質材料の小型の縞状物を配置し、例えば、先端のプッシュピンを使って機械的にピン止めするか、型内の縞状物材料を湿らせて型内で凍結させることによって、硬質材料を適所に保持し、光硬化性材料を噴霧し、硬化させて、形成するバルーンまたは他の装置に縞状物が組み込まれた型材を形成する。
【0043】
氷型もしくはワックス型上、または型にすでに塗布されている硬化層上に繊維材料からなるブレードソックスを滑らせ、次いで、噴霧、光硬化を行ってもよい。
氷型もしくはワックス型上、または型にすでに塗布されている硬化層上にカーボンナノチューブからなる「バッキー」ペーパー細片を載置して、次いで、噴霧、光硬化させ得る。
【0044】
先に述べたように、ポリマー組成物に、場合により官能化した種々の充填材を含ませてもよい。充填材粒子は、繊維状、球状、板状、または非晶形状を有し得る。使用し得る充填材粒子には、放射線不透過性材料や常磁性材料が含まれる。強化粒子を用いてもよい。炭素、粘土、シリカ、アルミナまたは液晶ポリマーの粒子がその例である。約100nm以下の直径を特徴とするナノフィラー、例えば、ナノクレイ、ナノセラミックス、カーボンナノファイバーおよびチューブが特定の例である。そのような粒子は、組成物の透光度を実質的に低下させないくらい小さく、また、使用UV光波長より小さいので、溶液中のUV光の透過を妨げないであろう。
【0045】
従来の熱可塑性ポリマー法では、ナノ粒子を高度に分散させることは非常に難しい。超低粘性組成物を用い得る本発明の場合、混合および分散ははるかに容易に達成できる。
薬剤は、直接または充填材に担持されて、硬化性配合物に組み込まれ得る。これによって、薬剤は硬化後にポリマーマトリックス中に固定されるであろう。硬化は室温で行なわれるので、多様な医薬物質を用い得る。そのような物質は、薬効を最大限にすると共に、副作用を最小限にし、かつ/または医療装置の物理的性質を弱めるために、医療装置上の特定の組織または体液接触域に局所的に付与され得る。ある種の薬剤は、充填材上に組み込まれる代わりに、またはそれに加えて、ナノチューブなどの充填材内に組み込まれ得る。ステントは、薬剤を組み込むのに望ましい装置の特定例である。
【0046】
バルーン破裂強度、バーストプロファイル、コンプライアンス、コンプライアンス曲線
プロファイル、および弾性応力応答などの物理的性質の所望の組み合せを有する最終製品を得るために、上述のような多頭噴霧印刷(multi−head spray printing)技術を用いて、上記補強材を含む組成物をパターン通りに塗布し、介在スペースには比較的補強材を含まない(unreinforced)組成物を充填し得る。
【0047】
硬化放射線は、UV源、すなわち、約150〜約400nmの範囲の少なくとも一部で有意な出力を有するものが好ましい。広または狭スペクトル源を用い得る。
オンザフライで配合物を変える代わりに、またはそれに加えて、パターン状に硬化させることによって硬化特性を改変し得る。例えば、層全体が硬化するまで、硬化性コーティングにUVレーザーまたは集束広帯域UV源を重複らせんまたはメッシュパターンで指向させ得る。そのようにして硬化させると、必要な照射を実質的に均一に加える硬化と比較して、硬化関連層の物理的性質を実質的に変えることができる。
【0048】
組成物を硬化した後、アセンブリを加熱して水またはワックス型を溶融し、排出する。氷型の場合、水を迅速に除去するためには、水のマイクロ波吸収速度がポリマーの場合よりはるかに速いので、マイクロ波加熱を用いることができる。
【0049】
放射線硬化性配合物は、簡単な基体上で複雑な装置を形成する場合にも利用し得る。ステント装置が特定例である。別の例は、膨脹時にステントを滑らないように係合する隆起パターンを備える外面を有するバルーンである。そのような複雑な構造は、適当な位置にくぼみを残すパターンを用いて1つ以上の硬化性材料層をパターン通りに塗布するか、均一に塗布されたコーティングをパターン通りに硬化させることによって得られる。光学系およびマスクを用いて、特定域のみを硬化させた後、隣接域の非硬化性材料を洗い流すことができる。UV光はサブミクロン範囲内まで集束し得るので、サブミクロンレベルの細部を形成できる。チューブ構造を一様に照射するための1つの方法としては、チューブ構造(バルーンまたはシャフト)が中心軸に沿って配向される円錐ミラーに平行放射光ビームを集束させることがある。
【0050】
以下に述べるのはバルーンの形成に用い得る特定の変形形態である。
噴霧法と、氷、ワックスおよび塩からなる可溶性のロストワックス型とを併用して、コア部、コーン部および胴部の壁厚が等しいポリエステルまたはポリイミドバルーンを形成することができる。噴霧後または噴霧時に、UVを照射してポリマーを形成し得る。型を回転させると、溶媒が分散するであろう。
【0051】
直線状またはらせん状に縞状部を噴霧して縞付きバルーンを形成することができる。これは、例えば、ナイフの下に、ブレードとポリマーとの間の接着層を壊すので軸線方向には伸びない材料を必要とするようなカッティングバルーン用に用い得る。
【0052】
バルーンのコーンと本体の遷移部に、患者の血管系に挿入するために、バルーンを収縮させて折り畳んだときに露出されるように離間して配置された外面隆起部を形成し得る。次いで、折り畳まれた本体部上の隆起部間にステントを圧着して、隆起部がステントの滑落を防止するようにしてもよい。そのような隆起部は、適切に成形することにより、例えば、折り畳まれたバルーンから圧着されたステントの直径まで直径をテーパー状にすることによって、カテーテル/バルーン/ステントアセンブリの横断能力(cross−ability)を改良することもできる。
【0053】
バルーンのコーン部外面上にカテーテル/バルーン/ステントアセンブリにも適用可能である親水性ポリマー形成組成物を噴霧して硬化させ、一方、コア部上には、ステントをさらに確実に固定するために疎水性ポリマー形成組成物を用い得る。
【0054】
コア部に非常に平滑な外面を形成する代わりに、ステントをより確実に固定するために型押しパターンを形成することもできる。これは、例えば、所定のパターンで小さな「ドット」を噴霧し得る超音波スプレーノズルを利用して実施し得る。
【0055】
軟質外層を有する多層バルーンを形成し得る。
また、従来法で作成された既存のバルーン上に層またはパターンを噴霧することもできる。
【0056】
テーパーバルーンまたはテーパーカーブバルーンでさえ極めて簡単に形成することができる。
本発明のさらに他の用途には以下のものが含まれる。
【0057】
流動化可能な材料からなる固体管型上に、像をなすように(image−wise)パターンを形成して硬化性組成物を塗布するか、またはパターンを形成するように硬化性組成物を硬化させて、本発明のステントを作成し得る。使用する硬化性組成物には、有機または無機補強材、例えば、繊維または液晶ポリマー、金属、炭素、ナノチューブ、シリカなどの他の粒子が含まれ得る。特性プロファイルは、組成物を望ましい特定の特性プロファイルに応じて変えることにより長手方向または軸線方向に変更し得る。
【0058】
装置の一部、例えば金属ステント支柱構造は、硬化性組成物を塗布する前に成形型に取り付けるか、支柱構造上に第2硬化性組成物層を塗布する前に第1硬化層に取り付け得る。硬化させると、そのような構造は成形装置に埋め込まれる。
【0059】
連続材料からなるチューブグラフトはチューブ成形型上で成形され得るが、強化構造パターンは、上述のバルーン強化法と類似の方法でグラフト材料に噴霧され得る。
ステント、グラフトまたはバルーン強化構造には、例えば図13に関連して本明細書に記載されているような薬剤保持チャンバを設け得る。
【0060】
ポリエステルステントグラフトはこの技術を用いて噴霧できる。
溶液に低揮発性ナノ粒子またはミクロ粒子を加えて、多孔質構造を形成することができる。層の加熱とUV硬化を同時に行うと、揮発性粒子によって表面へのミクロチャンネルまたはナノチャンネルが形成されるであろう。したがって、これを利用して、2層間に薬剤を備え、バルーン膨脹時にその薬剤を押し出す2層バルーンを形成することができる。また、薬剤含有ポリマー上にそのような層を噴霧することも可能である。
【0061】
バルーンに関して記載されているものと同じ技術および変形形態を用いてカテーテルシャフトを形成することができる。したがって、ブレード付きシャフトもブレード無しシャフトも形成でき、異なるポリマー組成を有したり、またはブレード付き基端部およびブレードなし先端部を有するシャフトを形成することができる。
【0062】
噴霧および硬化時の厚さ測定。フィードバックシステムを得るために噴霧時レーザー厚さ測定システムを組み込むと有利であろう。
図4は、適当なシャフト型の作成に用い得るワイヤ60を示している。例えばディップコーティングによりワイヤに水または溶融ワックス層を塗布し、次いで冷却して固化させる。このサイクルを必要なだけ繰り返して、シャフト型を図5の数字65で示すような所望直径にし得る。次いで、放射線硬化性組成物を塗布し、上述のように硬化させる。ワックスまたは氷型を溶融、除去して、ワイヤを取り出す空間をつくる。氷またはワックス型の代わりに、シャフトを、直接、非粘着性PTFEまたは銀コートマンドレルワイヤ上に噴霧してもよい。
【0063】
バルーンとシャフトは、一体成形、すなわちワンピース成形することもできる。図6は、図5の氷またはワックス型の先端部をバルーン成形型内に配置し、その上でバルーン型部分75を成形することによって得られたシャフト/バルーン一体型70を示している。次いで、上述の方法により、型70上において一体シャフト/バルーンを成形する。
【0064】
タンデム型バルーンは簡単な方法で作成できる。図6に示すような1バルーン型の代わりに、シャフト型65を、2つ以上のバルーン成形型を含むように改変し、前と同じように、噴霧および硬化を実施する。
【0065】
図7、8および9は、図5の型70を改変して作成し得るより複雑なバルーン型を示している。このバルーンは、ラピッドエクスチェンジ型カテーテルシステムに用いられ得る。
【0066】
現在のラピッドエクスチェンジ型カテーテルは、カテーテルの少なくとも一部を横切る2つの管腔であって、一方はバルーンへの流体アクセスを提供し、他方はガイドワイヤ通路となる2つの管腔を必要とする。この二重管腔の構想によって、バルーンチャンバとの間の流体アクセスが制限され、膨脹・収縮時間が増大する。また、断面に4つの壁が存在するので、システム全体のプロファイルが大きくなる。米国特許第5409458号〔ハイルハーンら(Khairkhahan et al)〕および米国特許第5549553号〔レスマン(Resseman)、スティーブランド(Stivland)およびブレーザー(Blaeser)〕で、バルーン壁にガイドワイヤ管腔を取り付けることによりこの問題を解決する2種の設計が提案された。米国特許第5409458号は、片側扁平バルーン設計を示しており、ガイドワイヤ管腔は扁平面の内側に接着する。米国特許第5549553号は、ガイドワイヤがバルーン壁の一部を通って延びるバルーンを示している。
【0067】
どちらの解決法も、バルーン膨脹時にガイドワイヤがバルーンの一方の側に押し付けられるので理想的ではない。このために、両解決法はステント拡張配置システムとして用いるのには不適である。先ず第1に、ステントにかかる圧力が円周に沿って非均一であるために、ガイドワイヤはバルーン膨脹チャンバとステントの間に押し込まれる。第2に、ガイドワイヤがバルーンによって血管壁に圧迫されるので、ガイドワイヤも、拡張時に拡張域の先端側および基端側の両側において血管壁に押し付けられる。一般に、血管の拡張領域とそれに接する先端側と基端側の非拡張領域の間には滑らかな遷移部が求められる。
【0068】
ラピッドエクスチェンジ型カテーテル用バルーン、特にステントの配置に用いるバルーンの設計問題に対する代替解決法が本発明のさらなる態様である。本発明のバルーンは、図9に示すように、バルーンを通過するガイドワイヤチャンネルを有する。図9は、上述特許におけるようにガイドワイヤの片側に圧力チャンバを有する代わりに、長手方向軸線82と、中央本体部84と、基端および先端テーパーコーン部86,87とを有するバルーン80を示している。テーパーコーン壁86,87を通り抜ける長手方向に沿うガイドワイヤチャンネル85が設けられている。この設計によれば、圧力チャンバはガイドワイヤチャンネル85を完全に取り囲む。その結果、ガイドワイヤチャンネルにかかる圧力は、すべての方向から等しく及ぼされる。したがって、バルーン膨脹時にガイドワイヤチャンネルがバルーンの壁に押し付けられることはなく、ステントにかかる圧力は等しく分散される。
【0069】
そのようなバルーンの1つの作成法は、図6に示すような型から出発する。次いで、氷型70のバルーン部75に、軸線から半径方向に外壁には到達しない距離だけ離間した位置に軸線方向に延びる孔90を穿孔して、図7に示すような改変した型を形成する。光硬化性組成物の浸漬または噴霧、その後の放射線硬化により、一体成形された軸心から外れ
た長手方向ガイドワイヤチャンネル95を有するバルーン96を形成する。光硬化性組成物の放射線硬化は、例えば、氷型を介して照射するか、孔90に沿って斜め方向にビームを当てることによって達成し得る。組成物膜を硬化させ、氷またはワックスを溶融させると、バルーン壁が孔の長さまで延びる図8に示すようなバルーン形状が残るであろう。凍結プロセス中にワイヤを適所に配置し、後でワイヤを取り出すことにより、この孔を氷型作成時に形成することも勿論可能である。このために金属ワイヤを用いる場合には、電流を流してワイヤを加熱すれば、ワイヤを氷型から容易に解放することができる。
【0070】
図9に見られるようなバルーンのガイドワイヤチャンネル95を形成する別の方法は、図7の型70の外側を被覆して硬化させる前に、別途形成されたチューブを用いて、そのチューブを型70の孔90に挿入する。そのようなチューブは、本明細書に記載の方法または任意の他の手段によって形成可能であり、またその材料はバルーンの残りの部分と同じであっても異なっていてもよい。このチューブは、バルーンの外壁と別途形成されるガイドワイヤチャンネルとの接着力を高めるために、その両端においてチューブの厚さを越えて外側に延びる繊維を含んで形成されてもよい。
【0071】
本発明のシステムをステントデリバリーシステムとして用いたい場合には、噴霧前にある種の他の材料製チューブを孔90に埋設して形成した図9に見られるようなバルーンが望ましいかもしれない。チューブ95は、薄過ぎたり、柔らか過ぎたりすると、ステントをクリンプするときに潰れてしまう可能性がある。バルーン構成にある種の硬質材料製チューブを組み込めば、この潜在的問題を克服できる。
【0072】
図9のバルーンの変形形態においては、バルーンを通過する長手方向のチャンネルを増やし、バルーン膨脹時にもこのシステムを通って血液が流れるようにチャンネルを開放したままにする。
【0073】
噴霧・硬化によるバルーン形成はさらに、1回の作業で組み合せシャフト/バルーン構造を作成する方法を提供する。これは、例えば、マンドレルを利用してその全長にわたって氷またはワックスの薄層を形成することにより実施し得る。次に、バルーン型を末端部の氷に加える。上述のようにバルーン型に穿孔して、次いで、システム全体に硬化性組成物を噴霧する。次に、組成物を硬化させ、氷またはワックス型を溶融させる。
【0074】
月形の断面を有するPTFEコートワイヤマンドレルを用いる本発明の別の実施形態では、長い長さにわたる二重管腔シャフトを作成することができる。この場合も、マンドレル上に氷の薄層を形成し、次いで、内側管腔を形成するプレフォームチューブを月形の内側丸み内に配置し、構造全体に硬化性組成物を噴霧し、次いで硬化させる。氷を溶かせば、マンドレルを容易に除去することができる。図10はこのようにして形成したシャフト100の断面図を示している。このシャフトは、外壁102と、内壁104と、外側管腔106と、内側管腔108とを有する。内壁104は月形に湾曲した基体型に挿入したチューブ、すなわち、PTFEコートワイヤを流動化可能な基体材料で被覆した後で前記チューブから形成されるのに対し、外壁はその後で塗布したUV硬化ポリマーから形成される。
【0075】
図11A〜Cは、本発明のさらに別の実施形態を示している。図11Aは、氷または他の流動化可能な固体からなる基本バルーン型110を示している。この型110には、環状バンド112,114が付いている。バンド112,114は、その静止直径から型上での直径に達するまで伸長されている弾性材料である。弾性材料は、シリコーンまたは他のゴム材料であってよいが、硬化性組成物からなる硬化ポリマー膜が接着する材料である。次いで、図11Bに示すように、バンド112,114を含む型全体の上に、噴霧または他の技術を用いて硬化性組成物116を塗布し、その後、硬化させて、バンド112,
114が組み込まれたバルーンを形成する。図11Cでは、流動化可能な型を除去すると、複合バルーンはバンド112,114から圧力を受けて静止位置に縮まる。これは収縮プロファイルを小さくするのに役立つ。この図に示すか、他の配置で設置されたバンドは、バルーン膨脹曲線を変えるのにも用い得る。
【0076】
図11Cのバルーンの変更形態は、バンド112,114を取り付ける前に型上に噴霧して硬化させた第1ポリマー層を用いる。この実施形態に用いるバンドも、噴霧ポリマーで封入されるように、上述のようにオーバーコートして硬化させるのが適当である。この技術により、バルーン本体を構成する硬化ポリマーと弾性バンドとの間に強力な接着層を維持する必要性が回避される。このバルーン、すなわち図11Cのバルーンのさらなる変形形態では、バンド112,114は、バルーンコンプライアンスを変えるためにノンコンプライアント材料で構成し得る。バルーン本体を構成する硬化ポリマーは、コンプライアント材料、セミコンプライアント材料またはノンコンプライアント材料であり得る。
【0077】
図12Aおよび図12Bは、本発明によって得られる別のバルーン実施形態を示している。軸線方向軸に沿って対称なバルーン型の代わりに、バルーン120をバルーン軸122の方向に沿って湾曲している。ほとんどの動脈は湾曲しているので、これは実際に多くのケースで有利であろう。バルーンとカテーテルシャフトとを血管の湾曲方向に向け得る1つの方法は、図12Bに示すように、内側管腔124に楕円形断面を用いることであろう。これにより、湾曲部を通過することによって、シャフトは湾曲部に整合されるであろう。
【0078】
本発明の別の実施形態は、第1氷成形型を使い、この氷層上に少なくとも1つの第1層を噴霧し、層を硬化させて、原型バルーンを形成する。次いで、氷型を溶かすが、水は原型バルーン内に保持し、この水を実際に加圧して原型バルーンを第2直径まで拡張する。拡張直径は、第1氷成形型の直径よりわずかに大きいだけでよい。拡張直径を維持するために圧力を保持し続けながら、水を再凍結させて拡張形状を固定し、その後、原型バルーン上に少なくとも1つの第2層を噴霧し、硬化させる。このようにして、バルーン層内に、バルーンの強化に役立つとともに、種々の膨脹/圧力曲線の形成を可能にする負圧を生成することができる。型の溶融、硬化バルーンの加圧、型材料の再凍結、さらなる層の塗布、およびさらなる層の硬化というサイクルを、所望のバルーン厚が得られるまで何回も繰り返し得る。この実施形態では、外側に延びる強化繊維を備えた第1層を形成すれば、第1層と第2層との接着を強化することができる。第2層を塗布して硬化させると、繊維は両層に埋設された状態になる。
【0079】
図13は、本発明の別のバルーン成形法を図解的に示しており、この方法では、バルーンに、治療部位に薬剤を運んで分注するのに用い得る中空チャンバ構造を設ける。基体型130に硬化性組成物からなる第1層を塗布し、硬化させて、バルーン内層132を形成した後、バルーンにポジ型のチャンバ型136を取り付ける。次いで、脚領域134を除くチャンバ型を含むバルーン上に第2層135を噴霧して、硬化させる。層135は、内層136の形成に用いたものと同一か、異なる組成物で形成し得る。第2層135を硬化させた後、チャンバ型を除去して、外面に開放した中空チャンバを内包するバルーン140を得る。これらのポケットには、膨脹前に1種以上の薬剤を充填し得る。膨脹時、バルーンが血管壁に向かって加圧されるにつれ、薬剤がチャンバから絞り出される。
【0080】
本発明の別の実施形態では、2層間にチャンバを有する二重層バルーンを形成することができ、このバルーンは、第1ポリマー形成層を付着させ、第1層を硬化させ、第1ポリマー層の上に追加の氷(ワックス)層を噴霧し、水またはワックスを消失させるための1つ以上のチャンネルを残して追加の氷(ワックス)層を第2ポリマー形成層で被覆し、次いで第2層を硬化させることにより形成し得る。このようにして、層間において接触がな
い二重層バルーンを形成することができる。あるいは、第1層を部分的にのみ被覆すれば、第1層と第2層との間に、例えば薬剤などを充填する接触点を形成し得る。繊維は、第1ポリマー層において噴霧され得、第1ポリマー層から突出するような寸法を有する。繊維の一部のみを被覆するように(言い換えれば、繊維が氷層および第1ポリマー層から突出するように)、第1ポリマー層上に水の薄層を噴霧し、次いで上面のポリマー層を噴霧すれば、第1ポリマー層と第2ポリマー層を連結することができる。また、この技術により、導電性ワイヤまたは繊維を使って分離層間を電気的に接続することもできる。
【0081】
本明細書に記載されている本発明のさらなる実施形態の実施例では、氷型に、物体の1つの表面からその表面の別の部分に向かって延びるとともに両端で突出する長い繊維を組み込むことができる。この型の上にポリマーを噴霧すると、繊維の両端はポリマー層に埋設されるであろう。氷を溶かすと、表面の2点間の繊維による連結がそのまま残るであろう。1本以上の繊維で表面間のあらゆる種類の点を連結できる。例えば、氷型に、両端部が氷型表面を越えてすぐのところまで長手方向軸線に関して90度で延びる繊維からなる長手方向に延びる縞状物を配置し、次いで、硬化性配合物を塗布、硬化させて繊維の対向端部を埋設すると、繊維配向の拡大が制限されるので、バルーン内の圧力がさらに増大すると、円形から楕円形になるバルーンができるであろう。
【0082】
別の実施例では、先の実施例と類似であるが、但し、すべての繊維の一端のみをバルーン表面に結合して繊維端部をバルーン壁に組み込み、他端はバルーンの基端部方向に誘導する。この手順に従うと、繊維束がバルーンの基端部から突出するバルーンができる。これらの繊維は、カテーテルシャフト、例えば、カテーテルシャフトリングに連結され得る。繊維は高弾性材料から形成されており、バルーン膨脹時に容易に伸長する。バルーンをしぼませると、繊維は収縮し、バルーンの収縮を助けるであろう。繊維を、バルーン壁内に少なくとも主として所望の折り畳みパターンに沿って、例えば3つ以上の長手方向に延びる縞模様に沿って分布させれば、繊維の収縮はバルーンを安全に回収するために再度折り畳むのに役立つであろう。
【0083】
あるいは、そのような一端を表面に埋設した繊維(この場合はノンコンプライアント)をカテーテルの基端側まで接続することが可能であり、医師は、例えば回転されることにより繊維の長さを増減する回転装置に繊維を接続することによりバルーンの膨脹量を決定することができる。繊維の数および表面に沿った繊維の配分に応じて、バルーンの膨脹特性をオンザフライで変えて、バルーン長の一部に沿ってバルーン膨脹直径を変えることが可能であり、例えば、より短いバルーン長の部分上に膨脹圧を局部化したり、異なるバルーン断面形状、例えば、バルーン長の一部もしくは全体に沿って断面を楕円形または多角形にしたり、バルーンを曲げたり、かつ/またはバルーンの再折り畳みを調節したりし得る。
【0084】
本発明の方法を用いて形成し得る別の装置は、(第1弾性層を用い、次いで氷層を加え、次いで、第2ノンコンプライアント層を加え、2層間に、任意で上述のように2層間を繊維接続により支持し得る空間を残した)二重層バルーン構造である。第2層を通過するマイクロチャンネルは、自在成形(formed−in−place)してもよいし、UVレーザーアブレーションによりくり貫いてもよい。中間氷層を除去した後、得られた中間チャンバにカプセル化薬剤を充填し得る。カプセルは外圧に応じて破れるように設計し得る。言い換えれば、バルーンの内圧を上げると、弾性内膜が外側のノンコンプライアントバルーンに向かって膨脹し、中間薬剤層を圧迫するであろう。圧力が特定しきい値を超えると、カプセルはパチンと破れて、薬剤を一斉に放出し、放出された薬剤は、マイクロチャンネルを介して脈管壁に注入されるであろう。種々の圧力レベルで破裂する多様なタイプの球体中の多様な薬剤を用い得ることは勿論である。
【0085】
図14は、拡張形状のステント150を示している。このステントは、氷または他の流動化可能な材料からなる成形型、例えばチューブ型上に硬化性組成物を、像をなすように噴霧し、次いで噴霧組成物を硬化させることにより成形し得る。ステント材料は上述のような複合材料であり得る。
【0086】
上述のように、本発明は、流動化可能な基体型材料の融点より低い温度、適当には100℃未満の温度で固体ポリマーに放射線硬化可能な組成物を用い得る。氷型の場合、材料は0℃未満で放射線硬化可能でなければならない。(メタ)アクリレートエステル(すなわち、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物)からなる放射線硬化性組成物は周知であり、本発明に使用し得る。多様な硬化特性はそのような組成物から得られる。電子ビーム源を使用する場合を除いて、そのような組成物は、通常、光開始剤を用いる。
【0087】
放射線硬化性組成物、例えばUVまたは可視光線で開始される組成物は、事実上、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、またはポリマーであり得る。一般的にはそのような化合物の混合物が用いられる。通常、これらの組成物は、組成物を塗布し易くするために硬化前には液体であり、次いで、UVまたは可視光線などの放射線に暴露された後固体となる。
【0088】
(メタ)アクリレート末端放射線硬化性化合物の例としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(脂肪族および芳香族)、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレートなどおよびそれらの混合物が挙げられるが、それらには限定されない。噴霧塗布するには、粘度が、適当には約350mPa.s以下、好ましくは約150mPa.s以下の低粘性組成物が好ましい。高粘性化合物を用いる場合には、反応性モノマー希釈剤および/または非反応性溶媒を用いて組成物全体の粘度を低下させ得る。高粘性組成物は、他の塗布技術、例えば、ディップコーティングまたはブラシコーティングなどに使用し得る。
【0089】
(メタ)アクリレート官能性モノマーは、通常、約86〜約500の分子量範囲であり、通常、25℃で200mPa.sの粘度を有する。モノマーをオリゴマーと併用して所望のコーティング粘度を得るのが望ましいであろう。そのようなモノマーをオリゴマーと併用する場合、モノマーをオリゴマーと共重合させて、硬化コーティングの一体部を形成する。一般に、放射線硬化にはメタクリレートモノマーよりアクリレートモノマーの方が好ましい。他の放射線硬化性エチレン不飽和モノマーを単独または(メタ)アクリレートモノマーと混合して用いることも勿論可能である。
【0090】
使用し得るエチレン不飽和オリゴマーおよびプレポリマーは、通常、室温では粘性の液体であり、25℃で数千から百万mPa.sを超える範囲の粘度を有する。エチレン不飽和オリゴマーおよびプレポリマーは、通常、1分子当たり最高20個、恐らく最も一般的には1分子当たり2〜6個のアクリレート基を有し、約500〜約20,000g/molの範囲の分子量を有するが、分子量が200,000g/mol程度のものもあり得る。オリゴマーは、通常、モノマーで達成できるものより優れた膜特性を与える。オリゴマーは、通常、放射線硬化性官能基が結合する炭素含有骨格を有する。適当な炭素含有骨格の例としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンなどがあるが、それらには限定されない。炭素含有骨格のサイズは所望の分子量が得られるように選択する。
【0091】
他の適当なUV硬化性組成物としては、カチオン重合性化合物、とりわけエポキシが挙げられる。適当な市販の硬化性エポキシの例には、ユーシービー・ラドキュア(UCB Radcure)社から入手し得るUVACURE(登録商標) 1500、1530お
よび1534、サートマー(Sartomer)社から入手し得るSARCAT(登録商標) K126などが含まれるが、それらには限定されない。使用可能な他のカチオン重合性化合物は、ビニルエーテルおよびスチリルオキシエーテルである。
【0092】
光開始剤を放射線硬化性化合物と併用すると有利である。光開始剤は、通常、UV光に暴露されるとフリーラジカル種を形成する。光開始剤は、一般的には、UV配合物の約0.5〜約15重量%、より一般的には、組成物の約0.5〜10重量%、望ましくは、1〜7重量%、より望ましくは、3〜5重量%の量で用いられる。通常、この量はバインダー組成物に基づくであろうが、バインダー組成物を磁性材料と混合する前に調製する場合には特にそうである。
【0093】
光開始剤は、通常、UV/可視域、約250〜850nm、またはその一部で活性である。フリーラジカル機構下で開始する光開始剤の例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩化アセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノンエステル、ベンゾイン、酢酸ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジメトキシベンゾイン、ジベンジルケトン、ベンゾイルシクロヘキサノールおよび他の芳香族ケトン、アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキシド、アシルホスホスホネート(acylphosphosphonates)、ケトスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオカーボネートおよびジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドがある。
【0094】
放射線硬化性化合物と併用し得る光開始剤としては、米国ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown)所在のチバガイギー社(Ciba−Geigy Corp.)から、商品名「IRGACURE」および「DAROCUR」で市販されている光開始剤、特に、「IRGACURE」184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)、369(2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ブタノン)、500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの組合わせ)、651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)(例えば、「IRGACURE」651)、1700〔ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン〕の組み合せ〕ならびに「DAROCUR」1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン)および4265(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの組み合せ);米国コネティカット州ダンバリー(Danbury)所在のユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスチックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.Inc.)から商品名「CYRACURE」で市販されている光開始剤、例えば、「CYRACURE」UVI−6974(トリアリールスルホニウムのヘキサフルオロアンチモン酸塩混合物)およびUVI−6990(トリアリールスルホニウムのヘキサフルオロリン酸塩混合物);可視光[ブルー]光開始剤、dl−樟脳キノンおよび「IRGACURE」784DCが挙げられる。本発明には、これらの材料の組み合せも用い得ることは勿論である。
【0095】
放射線硬化性組成物中にカチオン重合性化合物を用いる場合、光開始剤はカチオン光開始剤が適当であり、多くのカチオン光開始剤が市販されている。
上記リストは、例示目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。そのようなUV硬化システムは当業では周知である。
【0096】
あるいは、x線、γ線または電子ビーム硬化を用いてもよい。UV硬化の場合には一般
に光開始剤を用いるが、組成物の硬化に上記の高エネルギー源を用いる場合には光開始剤は通常必要とされない。
【0097】
本発明に利用し得る別のタイプの配合物は、以下の方程式(I)で表されるような、芳香族2,5−ジアルキル−1,4−ジケトンと、2個以上の(メタ)アクリレート基またはマレイミド基を有する化合物と、任意で、連鎖を停止するモノマレイミド、または(メタ)アクリレートとの光活性化ディールス−アルダー付加反応である。
【0098】
【化1】
【0099】
上記式中、Xは炭素結合オルガノ基であり、Arは任意で置換された芳香族部分である。Xは、芳香族基または脂肪族基からなり得、またO、N、S、P、Cl、FおよびSiなどのヘテロ原子をさらに含み得る。Xも重合部分であり得る。使用可能なX基の例は、アリーレン、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、並びに下記化合物
【化2】
【0100】
およびその置換体;メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルキレン、;例えば、メチレンフェニレンメチレンなどのアルキレンアラルキレン、;アルキレンエーテルアルキレンである。重合部分の例としては、アルキレン出発ポリエーテルがあり、このポリエーテルは、脂肪族ポリエーテル部分、例えば、ポリオキシエチレン(EO)n、ポリオキシプロピレン(PO)n、ポリオキシブチレンおよびそれらのコポリマー、例えば、(EO)n(PO)m(ここで、nおよびmは正数)である。Xは、炭素結合芳香族ポリエーテル部分、芳香族または脂肪族ポリエステル、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサン、上記のいずれかのコポリマー、特にブロックコポリマーであってもよい。
【0101】
使用し得る特定のビスマレイミド化合物としては、
N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、
N,N′−エチレンビスマレイミド、
N,N′−ヘキサメチレンビスマレイミド、
N,N′−ドデカメチレンビスマレイミド、
N,N′−m−キシリレンビスマレイミド、
N,N′−p−キシリレンビスマレイミド、
N,N′−1,3−ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、
N,N′−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、
N,N′−2,4−トリレンビスマレイミド、
N,N′−2,6−トリレンビスマレイミド、
N,N′−3,3−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
3,3−ジフェニルスルホンビスマレイミド、
4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、
N,N′−4,4−ジフェニルスルフィドビスマレイミド、
N,N′−p−ベンゾフェノンビスマレイミド、
N,N′−ジフェニルエタンビスマレイミド、
N,N′−ジフェニルエーテルビスマレイミド、
N,N′−(メチレンジテトラヒドロフェニル)ビスマレイミド、
N,N′−(3−エチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−(3,3−ジメチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−(3,3−ジエチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−(3,3−ジクロロ)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−トリジンビスマレイミド、
N,N′−イソホロンビスマレイミド、
N,N′−p,p′−ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、
N,N′−ベンゾフェノンビスマレイミド、
N,N′−ジフェニルプロパンビスマレイミド、
N,N′−ナフタレンビスマレイミド、
N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、
N,N′−4,4−(1,1−ジフェニルシクロヘキサン)ビスマレイミド、
N,N′−3,5−(1,2,4−トリアゾール)ビスマレイミド、
N,N′−ピリジン−2,6−ジイルビスマレイミド、
N,N′−5−メトキシ−1,3−フェニレンビスマレイミド、
1,2−ビス(2−マレイミドエトキシ)エタン、
1,3−ビス(3−マレイミドプロポキシ)プロパン、
N,N′−ヘキサメチレンビスジメチルマレイミド、
N,N′−4,4′−1−(ジフェニルエーテル)−ビス−ジメチルマレイミド、
N,N′−4,4′−(ジフェニルスルホン)−ビス−ジメチルマレイミド
N,N′−4,4′−(ジアミノ)トリフェニルホスフェートなどのN,N′−ビスマレイミド;
芳香族ビスマレイミド化合物、例えば、
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−エチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−プロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−イソプロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−sec−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−メトキシ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
1,1−ビス[3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
1,1−ビス[3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
3,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ペンタン、
1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3,5−ジメチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3,5−ジブロモ−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、および
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−または5−メチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどがある。
【0102】
方程式(I)の反応に用いる芳香族2,5−ジアルキル−1,4−ジケトンも構造が多様に異なり得る。Arは、同じでも異なっていてもよく、例えば、フェニルおよび置換フェニル、例えば、R−C6H4−(ここで、Rはアルキル、アルコキシ、シアノ、フルオロ、ヒドロキシアルキルなどであり、アルキルおよびアルコキシ基は、例えば1〜20個の炭素原子を有し、場合により1個以上のエーテル酸素原子で遮断される)であり得る。Arはナフチルおよび置換ナフチルであってもよい。特定のAr基は、ヒドロキシメチルフェニル、ジメトキシフェニル、ジエトキシフェニル、ドデシルフェニル、ドデシルオキシフェニル、2−ヒドロキシエトキシフェニル、およびそれらの混合物であり得る。場合により、脂肪族基、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシル基をAr位で置換し得る。
【0103】
方程式(I)において、ビスマレイミド化合物の一部またはすべては、3個以上のマレイミド基を有する化合物で置換可能であり、そのような化合物の例としては、無水マレイン酸と、アニリンとホルマリンを反応させて得たポリアミン縮合物とを反応させて得た多官能マレイミド化合物、3,4,4′−トリアミノジフェニルメタン、トリアミノフェノール、トリス(4−アミノフェニル)ホスフェート、トリス(4−アミノフェニル)チオホスフェート、または他のポリアミンがある。
【0104】
(メタ)アクリレートおよびアクリルアミド化合物も、方程式(I)で表されるマレイミド化合物の一部またはすべてと置き換えられ得る。複数の(メタ)アクリレート基を有する化合物を用いると、生成物はポリイミドではなく、ポリエステルである。同様に、アクリルアミド化合物を用いると、生成物はポリアミドとなる。ビスマレイミドと多官能性(メタ)アクリレート(multi(meth)acrylates)および/または多官能性アクリルアミド(multiacrylamides)との混合物からはコポリマーが生成し得る。
【0105】
本発明の組成物は、マレイミドおよび/または(メタ)アクリレート基とジケトン化合物の当量比が約1:1〜約4:1、より好ましくは約1:2になるように配合するのが適当である。
【0106】
X基は、これまで従来のポリイミドによって得られたものより軟質で弾性が高い硬化ポリマーが得られるように修飾され得る。詳細に言えば、X基として、より長鎖のアルキレンまたは(ポリ)アルキレンオキシ基を用いると、ポリマーの弾性や伸び特性が高まるで
あろうし、軟度も高くなり得る。Ar部分を長鎖アルキレンまたは(ポリ)アルキレンオキシ基にしても軟度が高まるであろう。異なるX基を有するマレイミド化合物を組み合せるか、かつ/または芳香族ジケトンの組み合せを用いて、弾性、靭性および強度のバランスを最適にし得るように硬化ポリマーの特性を改変し得る。
【0107】
従来のポリイミドはその強度特性で知られているが、高温性能が市販ポリマーの主要特徴と考えられている。したがって、これまで、イミド環および芳香環の外側のヘテロ原子含量が極く低いかまたはゼロであり、かつ芳香族含量が極めて高いポリイミドが製造されてきた。本発明の場合、医療装置メーカーは、ビスマレイミドの選択、芳香族ケトンの選択、または材料のブレンドもしくはそれらの任意の組み合せにより、硬化ポリマーの特性を調整することができる。
【0108】
放射線硬化の代わりに、2種以上の成分を混合すると硬化し得る組成物を用いることも可能であり、個々の成分は混合するまでは安定である。個々の成分は、オンザフライでブレンドすることができ、その結果として生成する組成物は、塗布すると即座に硬化するが、塗布装置中では硬化しない。
【0109】
上記の実施例および開示内容は、例示を目的とし、包括的なものではない。これらの実施例および説明は当業者に多くの変形形態および代替形態を示唆するであろう。これらの代替形態および変形形態はすべて特許請求の範囲内に包含されるものとし、特許請求の範囲において、用語「含む」は、「〜を含むが、〜には限定されない」ことを意味する。当業者は、本明細書に記載されている特定の実施形態と等価の他の実施形態に気づくかもしれないが、それらの等価形態も特許請求の範囲内に包含されるものとする。さらに、従属請求項に呈示されている特定の特徴は、本発明が明確に従属請求項の特徴の任意の他の可能な組合わせを有する他の実施形態をも対象とするものと認識されるように、本発明の範囲内の他の方法で互いに組み合わせることができる。例えば、請求項の公開および/または請求項の提示時期要件のために、後続の従属請求項は、管轄権内で多数項従属形式が受容される場合には、そのような従属請求項で引用されたすべての先行詞を保有するすべての前項および後続項請求項から多数項従属形式で択一的に記載されたものとみなされる(例えば、請求項1の請求項に直接従属する各項の請求項は、択一的にすべての前項請求項に従属するものとみなされる)。多数項従属形式が制限される管轄権内では、後続項請求項の主題もそれぞれ、そのような下位の従属請求項に列挙されている特定請求項以外の前項または後続項の先行詞保有請求項から従属関係を生じる各項従属請求項形式で択一的に記載されたものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明のバルーンを用いたバルーンカテーテルの斜視図。
【図2A】本発明の拡張バルーンの好ましい成形法を例示する図。
【図2B】本発明の拡張バルーンの好ましい成形法を例示する図。
【図2C】本発明の拡張バルーンの好ましい成形法を例示する図。
【図3A】通常の収縮状態で成形され、加圧状態で膨脹したバルーンの図。
【図3B】通常の収縮状態で成形され、加圧状態で膨脹したバルーンの図。
【図4】本発明の方法におけるカテーテルシャフトの製造に有用な氷またはワックス成形型の形成に用い得るワイヤの略側断面図。
【図5】ワイヤ上に氷またはワックス型が形成されている図4と同様な図。
【図6】先端部にバルーン型を設けるように型がさらに改変されている図5と同様な図。
【図7】バルーン型中にバルーン型のコーン壁を通過する縦孔を設けるようにさらに型がさらに改変されている図6と同様な図。
【図8】図8の改変型由来のラピッドエクスチェンジ型カテーテル用バルーンの斜視図。
【図9】本発明に従って作成し得るラピッドエクスチェンジ型カテーテル用バルーンの斜視図。
【図10】本発明の一実施形態に従って作成したカテーテルシャフトの断面図。
【図11A】本発明の一実施形態に従って自動収縮バルーンを作成する工程を示す側断面概略図。
【図11B】本発明の一実施形態に従って自動収縮バルーンを作成する工程を示す側断面概略図。
【図11C】本発明の一実施形態に従って自動収縮バルーンを作成する工程を示す側断面概略図。
【図12A】軸線方向に湾曲させて形成されたバルーンを示す図。
【図12B】軸線方向に湾曲させて成形されたバルーンを取り付け得る楕円断面の先端チューブを示す図。
【図13】治療部位に薬剤を運んで分注するように適合されたチャンバ構造を有するバルーンを作成するための本発明の一実施形態プロセスを断面で示す概略図。
【図14】本発明に従って作成し得るステントを拡張形状で示す斜視図。
【技術分野】
【0001】
本発明は医療装置およびその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば診断用カテーテルやバルーンカテーテルなどのポリマーを含む多くの医療装置は、現在のところ、従来の熱可塑性ポリマー熱成形技術、例えば、押出、射出成形、延伸ブロー成形などを利用して製造されている。これらの方法では、熱可塑性ポリマーを軟化または溶融させ、これを所望形状に再成形する。これらの熱成形法は広く普及しているが、そのような医療品のサイズを縮小する必要に迫られている。同時に、医療装置内の局所的機能特性の多様性も増大している。したがって、所望の結果を得るためには、ますます多くの複雑な加工工程を実施しなければならない。
【0003】
補強材を含む熱可塑性ポリマー組成物からのバルーン形成は、ほとんどのタイプの補強材がブロー成形プロセス中にほとんど変形しないために困難である。バルーンのディップ成形は可能ではあるが、バルーン内から内型を取り出さなければならないので、強化バルーンの形成に最適な方法ではない。
【0004】
血管形成術用バルーンにおいて高い引張強度は重要である。これは、引張強度が高いと、壁厚が比較的薄いバルーンに対して高い圧力を用いることができるからである。ある種の狭窄の治療には高い圧力が必要なことが多い。壁厚が薄いと、収縮したバルーンを細く保つことができるので、バルーンを動脈系中に進めやすくなる。カテーテルシャフト材料の場合にも同様な要素が重要である。
【0005】
ブロー成形バルーンの不利点の1つは、そのコーン部の壁が中心部の壁より厚いことである。その結果、折り畳んだときにバルーンのプロファイルが大きくなる。コーン部の厚さを減少させるさまざまな技術が提案されたが、それらの技術は必ずしも所与のバルーンに適しているとは限らない。
【0006】
これらの要因から、そのような装置部品の製造技術は、サイズを小さく保つのには不適であり、装置の複雑さを増大させ、かつ/または新たな装置を使用する。したがって、多様な局所的機能特性を提供すると共にさらなるサイズの縮小を可能にする新たな製造技術が必要である。
【0007】
液状で分注または塗布し、その後硬化させる硬化性組成物は、従来のカテーテル装置の製造、主として接着剤またはコーティング用に有用である。しかし、硬化性組成物は、本明細書に記載する本発明以前には広く利用されてはいなかった。
【0008】
硬化ポリイミド材料から形成された装置はいくつかの文献に記載されている。超高温高強度で知られているポリイミドポリマーは、通常、ポリアミド−酸前駆体ポリマー材料を、ポリマーに沿ったアミド基と酸基が縮合して主鎖ポリマー中に環状イミド基を生成する硬化温度に加熱することによって形成される。この技術は、例えばアイテンアワー(Euteneuer)の特許文献1でバルーン形成に用いられている。しかし、この製造法は、ポリイミドの硬化に高温を必要とするために多くの装置形成用には不適である。さらに、ポリイミドは優れた強度特性を有してはいるが、得られるポリマーは、可撓性、伸びおよび軟度が比較的低い。さらにまた、この製造手順は、ガラス基体上で溶液からの付着によりポリアミド酸を形成するが、ガラス基体を溶かすのにHFを用いる。ガラス基体の形成およびその後のHF破壊は比較的危険かつ費用のかかるプロセスである。
【0009】
カテーテルシャフト用のポリイミドチューブは、例えば、マコールドら(Machold et al)の特許文献2に記載されているが、その製法は記載されていない。
例えば、バーンズ(Burns)の特許文献3は、ポリイミドまたはポリイミド−ポリテトラフルオロエチレン複合材料からなるシャフト部分を有する血管形成術用カテーテルを記載している。
【0010】
例えば、ラウら(Rau et al)の特許文献4は、バルーンカテーテル構成法、すなわち、カテーテルシャフト、ガイドカテーテル、注入カテーテルおよびバルーンに熱可塑性ポリイミドを用いている。しかし、この材料の使用は、一般的な熱可塑性ポリマーに関して既に認識されているものと同じ制約を免れない。
【0011】
例えば、ハーゲンローザーら(Hergenrother et al)の特許文献5は、熱可塑性であるが、UVを照射するか、275℃を超える温度に暴露すると架橋状態に硬化可能なメチル置換ポリイミドポリマーを記載している。しかし、UV照射プロセスは時間がかかるようである〔1.7〜2.4ミル(0.04〜0.06mm)の膜の硬化に0.21ワット/cm2で100時間〕。したがって、医療装置の形成にこの材料を使うのは、他のポリイミドに比べてほとんど利点がないばかりか、さらなる加工上の問題を招くと思われる。
【0012】
ポリアミド−酸ポリマーからの縮合の他に、ビスマレイミド化合物からディールス−アルダー付加環化によりポリイミドを形成する方法が提案されたが、これらの反応も200℃を超える温度で行われる。より最近では、周囲温度近くまたは周囲温度よりも低い温度下にUV照射により触媒されるジエン付加環化を用いてポリイミドを調製する方法が提案された。
【特許文献1】米国特許第4952357号明細書
【特許文献2】米国特許第4976720号明細書
【特許文献3】米国特許第5100381号明細書
【特許文献4】米国特許第6024722号明細書
【特許文献5】米国特許第5145942号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、一態様において、放射線硬化性組成物から、物品、特に医療装置を形成する方法に関する。この方法では、パターン化硬化法(pattern−wise curing)を用いて医療装置または該医療装置上のコーティングを形成する。医療装置は、ポリマー装置、またはポリマー表面(コーティング)を含む金属もしくはセラミック装置であり得る。本発明は、さらなる態様において、そのようにして形成された装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、その外側に硬化性ポリマー形成組成物を付着させる、所望の装置形状、例えば、バルーン形状を有する基体を形成するために、氷(凍結水)、ワックス、ポリビニルアルコールまたは他の容易に流動化可能な固体材料を使用する。噴霧、印刷または浸漬による付着法を用い得る。ポリマーを付着させた後、そのポリマーを装置形状で硬化させるために付着層にUVまたは他の硬化誘導エネルギーを当て、次いで、流動化工程を実施して流動化可能な材料を除去し得る。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、100℃未満、好ましくは50℃以下、特に周囲温度(約22℃)以下の温度で溶融する材料からなる医療装置用成形型に関する。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、例えば、流動化可能な材料からなる基
体に液状の硬化性配合物をパターン化してまたは一様に塗布し、かつ/または形成する医療装置に応じて適切に、パターン状に、連続的に、または一様に放射線を照射して、同硬化性配合物を硬化させるさまざまな形成技術を可能にする。硬化性配合物は、医療装置の物理的性質を所望通りに変化させるためにオンザフライで変えることができる。さらに、例えば、融点もしくは溶解度といった流動化特性を変えたり、または基体が占める容積内に医療装置の複数部分間の所望ブリッジ構造もしくは他の望ましい連結部を提供し得る繊維などの材料を残留させたりするように、基体を変更してもよい。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、約50℃未満の温度で硬化してポリイミドポリマーを形成する放射線硬化性組成物から医療装置を形成する方法に関する。
また本発明の方法は、形成する物品に対応して物理的性質を調整することが可能である。
【0017】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本願で言及するすべての米国特許文献を含めたすべての公開文献はそのまま本明細書に文献援用される。本願で言及するいずれの同時係属特許出願もその全容が本明細書に援用される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態は、医療装置、特に種々の脈管内に配置して操作する医療装置の形成法、そのような方法によって得られる装置、およびそのような方法において有用な新規改質ポリマーに関する。
【0020】
図1を参照すると、長尺状のチューブ12と、その端部に取り付けられたバルーン14とを備えるカテーテル10が示されている。このバルーンは本発明の硬化ポリマー材料から形成されている。
【0021】
図2A〜図2Cは、バルーン14を形成するための本発明の1つの方法を例示している。図2Aに示すように、基体30は、バルーン14の内面を決定する外面形状を有する。この外面形状は、バルーン14を完全に膨張させたときのバルーン14の所望の内面形状と一致する。少なくともいくつかのケースでは、基体30の外面は、通常、そこに塗布される重合性材料が極めて薄いであろうことから、実質的にバルーンの外面をも決定するであろう。基体は、形成された装置(この場合はバルーン)の完全性を損なわない条件下において容易に流動化可能な固体材料から形成されている。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、基体30は、融点が約100℃以下、好ましくは約50℃以下であることを特徴とする、氷または別の溶融性材料、例えばワックスである。しかし、いくつかの実施形態では、より融点が高い材料を用いてもよいし、または、用いる基体の流動化条件下で形成された装置を実質的に攻撃しない水もしくは別の溶剤による溶解などの別の作用によって基体材料を流動化してもよい。そのような材料の一例としては、英国、アーラム(Irlam)所在のエンバイアロンメンタル・ポリマーズ(Environmental Polymers)社で製造され、商品名Depart(商標)で販売されている水溶性ポリビニルアルコール(PVA)がある。Depart(商標)ポリマー組成物は、約185〜210℃の溶融温度を有し、室温から熱水、例えば20〜80℃で完全に溶解可能になるように改質され得る。Depart(商標)製品に関するさらに詳細な情報は、Materials World、2002年8月、第10巻、第8号、p.36−38に見られる。このように、本明細書中の特定の実施形態における氷および/またはワックスへの言及は、Depart(商標)PVA組成物および他の容易に流動化し得る材料などの代替流動化可能な材料を使えるように容易に改変され得る実
例実施形態とみなされるべきである。
【0023】
基体30は、流動化可能な材料からなる固体マトリックス中の流動化し得ない固体粒子、例えば強度を増強する無機粒子を含む複合材料であってもよい。場合により、マトリックス材料を流動化したときに、形成された装置からマトリックス材料と一緒に粒状材料を除去できることが望ましいであろう。しかし、本明細書でさらに詳細に説明するように、場合によっては、流動化可能な材料を除去するときに、基体30の流動化不能成分、例えば繊維または他の粒状材料などを残留させることが望ましいことがある。そのような成分は、残留すると、本明細書に記載のような多重層または他の機構間のブリッジ構造を構成し得る。
【0024】
図2Aに示すように、基体30は、基端胴部34と、大きな外径を有するバルーン部36と、小さな外径を有する先端チップ部38とを有する。
図2Bに示すように、放射線硬化性組成物の膜40を付着用基体30の外面上に付着させる。この工程は、例えば、付着用基体30を、硬化性組成物溶液、または、硬化性組成物が低粘度を有する場合には、純(希釈していない)組成物に浸漬し、基体30を取り出し、溶媒が存在する場合には蒸発させ、次いで、得られた膜に基体30の溶融温度より低い温度において放射線を照射して、付着用基体30上に硬化膜40を形成することによって実施され得る。硬化性組成物は噴霧塗布してもよい。付着および硬化工程を複数回行なって、硬化材料の厚さを所望の厚さにしてもよい。いくつかの実施形態において、この技術で形成された各付着膜は、約0.25〜約25.4ミクロンメートル(μm)(約0.00001〜約0.001インチ)厚、適当には、約2.5μm(約0.0001インチ)厚であり得る。本発明のいくつかの実施形態においては、所望の厚さの膜40が形成されるまでディップコーティングおよび放射線硬化工程を繰り返し実施する。いくつかのバルーン実施形態の場合、最終壁厚は、約2.5〜約50μm(約0.0001〜約0.002インチ)、例えば、約5〜25μm(約0.0002〜約0.001インチ)のオーダーであり得る。他のバルーンは、上記よりも厚いかまたは薄い壁を有することが望ましく、例えば、薬剤を運んで送出するためにバルーン壁を多孔質外層で形成する場合、所望の総壁厚は実質的に50μmを超えることもある。
【0025】
本発明の方法の次の工程は、硬化ポリマー膜40内からの付着用基体30の除去である。基体材料が溶融により流動化可能な場合、除去は、単純に付着用基体30/硬化膜40アセンブリを基体30の融点を超える温度に加熱して行うことが好ましい。付着用基体は溶解して、硬化膜装置を残して流出する。例えば、基体30が氷から形成されている場合、アセンブリは基体を一定時間にわたって周囲温度に暴露することにより加熱され得る。基体30が選択的溶解により流動化可能な場合、アセンブリは、適当な溶媒中に一定時間浸し、かつ/または基体に溶媒流を当てて、基体を溶解して除去し得る。基体の形成に用いる材料は、必要により、回収して再使用し得る。基体を除去した後に、所望装置、この場合はバルーンが得られる。
【0026】
基体30は、対応する雌型に水または溶融ワックスを充填し、次いで、その温度を使用基体材料の凝固点より低下させることにより容易に形成され得る。氷またはワックスから付着用基体30を形成する方法は、米国特許第4952357号で用いられているポリイミドバルーン形成法より多くの利点を提供する。本発明の基体材料はより安価で、リサイクルもより容易であり、毒性または腐食性材料も必要としない。
【0027】
本発明は、少なくともある種の実施形態においていくつかの重要な利点を有する。第1に、本発明は、超薄壁を提供し、そのために、低プロファイルカテーテルおよびバルーンに極めて適している。第2に、本発明の方法は、図2A〜図2Cに示すように、バルーン14の内径公差の精密な制御を提供する。第3に、本発明の方法は、他のバルーン形成技
術とは異なり、薄型コーン、レリーフパターン付き表面または同種のものであるかを問わず、所望の壁厚プロファイルを得るのに用いることができる。第4に、本発明の方法を用いると、医療装置の異なる区域に対して付着させるポリマー材料の特性を最適化することができる。第5に、極めて複雑な装置構造を容易に形成することができる。
【0028】
図2A〜図2Cに示す本発明の方法の実施形態において、基体30は、完全に膨脹した状態のバルーンの所望形状に一致する表面形状を有する。これとは反対に、基体30の表面形状は、収縮した状態(または部分膨脹状態)のバルーンの所望形状に一致することがある。この後者の実施形態は、収縮したバルーンの形状を予測可能にすることにより、バルーンが収縮したときに最小プロファイルを有することを保証するために特に有用である。この実施形態を用いれば、折り目付けおよび熱処理特性が不要になり得る。図3Aおよび図3Bは、この実施形態の実施例を示している。図3Aは収縮した状態のバルーン50の断面であり、この断面は、3つの突出部54A〜54Cを有する基体52で規定されている。その結果、バルーン50は、収縮したときに3つの対応する突出部56A〜56Cを有する。図3Bはバルーン50の完全膨脹状態を示している。
【0029】
氷またはワックス型は、そのような材料からなる本体、例えばロッドまたはキューブ形状を機械または熱処理して所望のバルーンまたは他の形状にすることによって形成することもできる。例えば、氷およびワックスもまた、適当な低温下で、機械的にまたはレーザーを用いて容易に彫刻できる。
【0030】
上述したことすべてを考慮すれば、例えば、約1.5〜25mmの直径、約5〜200mmの長さ、約7.5〜750μm(約0.0003〜0.03インチ)の厚さ、いつくかの実施形態では約7.5〜76.2μm(約0.0003〜0.003インチ)の厚さを有するバルーンから、従来医療産業で一般に利用されているような通常のバルーン寸法および強度範囲を有するバルーンまで容易に製造し得る。
【0031】
いずれのカテーテル構成の場合にも、バルーンはシャフトに接着され、シャフトは、ポリエステル、ポリアミド、例えば、ナイロン10、ナイロン6/10、ナイロン11、ナイロン12、またはそれらの混合物、ポリエチレン、熱硬化性ポリイミド、ポリエーテルアミドブロックコポリマー、例えば、PEBAX(登録商標)という商品名で販売されているエステル結合ポリエーテルアミド、ARNITEL(登録商標)およびHYTREL(登録商標)という商品名で販売されているポリエーテルエステルブロックコポリマー、または当業では周知の他の材料で形成し得る。しかし、別の実施形態では、バルーンをシャフトまたはその一部と一体成形し得る。
【0032】
付着技術は求める特性によってさまざまであり得る。一般的なディップおよびスプレーコーティング技術を用いてもよい。さらに、より高度な技術を用いることもできる。バルーンの形成に複数の層を用いると、バルーンに対して部位に特異的な特性を与えることができるとともに、全体的な特性プロファイルは実質的に損なわれないバルーンを得ることができる。例えば、一実施形態では、インクジェットプリントヘッドに類似した1つ以上のコンピュータ制御のスプレーヘッドを用いるアプリケータによって硬化性組成物を塗布する。複数のスプレーヘッドを介して異なる硬化性配合物を噴霧することにより、オンザフライで、すなわち噴霧時に種々の色を印刷するのと同様に、硬化配合物を変えることができる。このようにして、例えば胴部の最内層は、その後のシャフトへの接着を容易にする粘着性硬化特性を与えるように配合し、バルーンの膨脹可能部分では、同じ最内層を、粘着接着を回避するために粘着力を最小限にするように配合し得る。同様に、最外面は、粘着性を有さず柔軟性および/または潤滑性を与えるように配合し得る。このようにして、剛性、柔軟性、親水性、粘着性、引張強度、伸びおよび/またはMRI蛍光透視可視性に関連した遷移部を形成するために、2種以上の異なるポリマーブレンドをバルーンまた
は他の装置内にオンザフライで形成し得る。
【0033】
親水性の側鎖または主鎖部分を有する硬化性化合物を用いることによって、硬化外層ポリマー材料を親水性にすることができる。そのような部分は、アニオン基もしくはカチオン基またはポリエチレンオキシドブロックであり得る。これは、例えばポリイミドの場合のように、基材樹脂の特性が概して高疎水性であるときに特に有利である。
【0034】
したがって、(例えば高精度超音波スプレーノズルを用いて)軟質ポリエステル上または軟質ポリエステル中に硬質ポリエステルのらせんパターンを噴霧してシャフトを形成することができる。(例えば、スプレー、ディップコート、ブラシなどにより)ナノクレイ含有ポリマーを、充填材を含まない同じ溶液と併せて任意のパターンで塗布し得る。同様なことを、放射線不透過性物質(バリウム塩、タングステン塩)または種々の磁性物質、すなわち、強磁性、常磁性、超常磁性、または反磁性物質(例えば、ジスプロシウムまたはガドリニウム塩)を用いて実施してもよい。2、3種以上の組成物を任意のパターン(例えば、軸線方向(複数のリング)、円周方向(複数の縞模様)または半径方向(複数の層)に離間したパターン)で用い得る。あるいは、または同時に、噴霧時に複数種のポリマーを混合して段階的遷移部を得ることもできる。
【0035】
本発明に使用し得る高精度噴霧技術は、超音波噴霧を用いる。適当な超音波噴霧システムは、米国ニューヨーク州ミルトン(Milton)所在のソノテック社(Sono−Tek Corp.)から入手でき、http://www.sono−tek.com/に記載されている。高精度の線またはフィーチャを形成する他の技術は電気流体力学式印刷(electrohydrodynamic printing)であり、例えば、プリンストン大学セラミック材料ラボラトリー(Princeton University Ceramic Materials Laboratory)で入手可能であるとともに、http://www.princeton.edu/〜cml/html/research/ehdp.htmlに記載されている。ピコリッターディスペンサ(picoliter dispensers)は、http://www.microdrop.de/html/about.htmlに記載され、ドイツ、ノルダーシュテット(Norderstedt)所在のマイクロドロップ社(Microdrop GmbH)から入手可能である。
【0036】
これらの技術は、放射線硬化性組成物の塗布に適しているだけでなく、塗布前に流動化可能な型を変形させるのにも用い得る。例えば、より基本となる氷型の上に氷で複数の構造を形成し、それを基体として用い、放射線硬化性配合物で被覆し得る。このようにして、異なる構造的特徴を有する多様な製品が得られるように基本型を容易に変更することが可能である。1つの特定実施例の目的は、凸凹表面と均一な壁厚とを有するバルーンである。本発明に従って形成した標準的なバルーン成形氷型は、氷点下環境下で水を用いて表面の特定位置に凸凹を付けることによって変更され得る。次いで、変更された氷型に放射線硬化性配合物を塗布した後硬化させて、目的バルーンを得ることができる。
【0037】
噴霧法では、バルーン全面の壁厚を精密に規定することができ、それによって、コーン部や中央部の壁厚を均一にしたり、またはコーン部の壁厚をより薄くしたりすることもできる。厳密な精度で噴霧する(空間的のみならず流速の急速な変化を可能にする)ために、上述のような超音波スプレーノズルを用い得る。
【0038】
基体の形状は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コートコアワイヤを覆うポリテトラフルオロエチレンコートクラムシェル型中で、または任意の他の適当な手段で形成され得る。氷型中に金属製中心コアワイヤを入れることにより、高均質層を得る手段として静電噴霧を使用することができる。金属製コアワイヤは、医療装置を形成・硬化した後
の型の溶融を促進する抵抗加熱器として用いることもできる。
【0039】
前記装置を軸線方向において補強する1つの方法は、中心軸と平行な数本の縞に沿ってより多くの材料を噴霧することである。そのような縞模様は、例えば、ビジルら(Vigil et al)の米国特許第5320634号に記載されているように、カッティングバルーンのブレードパッド下の長手方向のバルーン本体領域を強化するのに用いられ得る。
【0040】
本発明の方法は、従来のブロー成形工程に良く用いられるバルーンパリソンのプレフォームの形状の形成に使うこともできる。理想的なプレフォームの形状および好ましい厚さは、多重ポリマーコーティング噴霧工程により達成し得る。
【0041】
本発明の方法によって複合材も作成し得る。例えば、
SPECTRA(登録商標)、KEVLAR(登録商標)などや、ポリイミド、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ガラス、フレキシブルセラミックまたは金属材料からなるワイヤまたは繊維をバルーン形状の氷またはワックス型の周りにらせん状またはコイル状に巻き、次いで、光硬化性組成物を噴霧し、硬化させる。いくつかの実施形態では、先ず、光硬化性組成物の下層を塗布し、硬化させる。
【0042】
氷またはワックス上に硬質材料の小型の縞状物を配置し、例えば、先端のプッシュピンを使って機械的にピン止めするか、型内の縞状物材料を湿らせて型内で凍結させることによって、硬質材料を適所に保持し、光硬化性材料を噴霧し、硬化させて、形成するバルーンまたは他の装置に縞状物が組み込まれた型材を形成する。
【0043】
氷型もしくはワックス型上、または型にすでに塗布されている硬化層上に繊維材料からなるブレードソックスを滑らせ、次いで、噴霧、光硬化を行ってもよい。
氷型もしくはワックス型上、または型にすでに塗布されている硬化層上にカーボンナノチューブからなる「バッキー」ペーパー細片を載置して、次いで、噴霧、光硬化させ得る。
【0044】
先に述べたように、ポリマー組成物に、場合により官能化した種々の充填材を含ませてもよい。充填材粒子は、繊維状、球状、板状、または非晶形状を有し得る。使用し得る充填材粒子には、放射線不透過性材料や常磁性材料が含まれる。強化粒子を用いてもよい。炭素、粘土、シリカ、アルミナまたは液晶ポリマーの粒子がその例である。約100nm以下の直径を特徴とするナノフィラー、例えば、ナノクレイ、ナノセラミックス、カーボンナノファイバーおよびチューブが特定の例である。そのような粒子は、組成物の透光度を実質的に低下させないくらい小さく、また、使用UV光波長より小さいので、溶液中のUV光の透過を妨げないであろう。
【0045】
従来の熱可塑性ポリマー法では、ナノ粒子を高度に分散させることは非常に難しい。超低粘性組成物を用い得る本発明の場合、混合および分散ははるかに容易に達成できる。
薬剤は、直接または充填材に担持されて、硬化性配合物に組み込まれ得る。これによって、薬剤は硬化後にポリマーマトリックス中に固定されるであろう。硬化は室温で行なわれるので、多様な医薬物質を用い得る。そのような物質は、薬効を最大限にすると共に、副作用を最小限にし、かつ/または医療装置の物理的性質を弱めるために、医療装置上の特定の組織または体液接触域に局所的に付与され得る。ある種の薬剤は、充填材上に組み込まれる代わりに、またはそれに加えて、ナノチューブなどの充填材内に組み込まれ得る。ステントは、薬剤を組み込むのに望ましい装置の特定例である。
【0046】
バルーン破裂強度、バーストプロファイル、コンプライアンス、コンプライアンス曲線
プロファイル、および弾性応力応答などの物理的性質の所望の組み合せを有する最終製品を得るために、上述のような多頭噴霧印刷(multi−head spray printing)技術を用いて、上記補強材を含む組成物をパターン通りに塗布し、介在スペースには比較的補強材を含まない(unreinforced)組成物を充填し得る。
【0047】
硬化放射線は、UV源、すなわち、約150〜約400nmの範囲の少なくとも一部で有意な出力を有するものが好ましい。広または狭スペクトル源を用い得る。
オンザフライで配合物を変える代わりに、またはそれに加えて、パターン状に硬化させることによって硬化特性を改変し得る。例えば、層全体が硬化するまで、硬化性コーティングにUVレーザーまたは集束広帯域UV源を重複らせんまたはメッシュパターンで指向させ得る。そのようにして硬化させると、必要な照射を実質的に均一に加える硬化と比較して、硬化関連層の物理的性質を実質的に変えることができる。
【0048】
組成物を硬化した後、アセンブリを加熱して水またはワックス型を溶融し、排出する。氷型の場合、水を迅速に除去するためには、水のマイクロ波吸収速度がポリマーの場合よりはるかに速いので、マイクロ波加熱を用いることができる。
【0049】
放射線硬化性配合物は、簡単な基体上で複雑な装置を形成する場合にも利用し得る。ステント装置が特定例である。別の例は、膨脹時にステントを滑らないように係合する隆起パターンを備える外面を有するバルーンである。そのような複雑な構造は、適当な位置にくぼみを残すパターンを用いて1つ以上の硬化性材料層をパターン通りに塗布するか、均一に塗布されたコーティングをパターン通りに硬化させることによって得られる。光学系およびマスクを用いて、特定域のみを硬化させた後、隣接域の非硬化性材料を洗い流すことができる。UV光はサブミクロン範囲内まで集束し得るので、サブミクロンレベルの細部を形成できる。チューブ構造を一様に照射するための1つの方法としては、チューブ構造(バルーンまたはシャフト)が中心軸に沿って配向される円錐ミラーに平行放射光ビームを集束させることがある。
【0050】
以下に述べるのはバルーンの形成に用い得る特定の変形形態である。
噴霧法と、氷、ワックスおよび塩からなる可溶性のロストワックス型とを併用して、コア部、コーン部および胴部の壁厚が等しいポリエステルまたはポリイミドバルーンを形成することができる。噴霧後または噴霧時に、UVを照射してポリマーを形成し得る。型を回転させると、溶媒が分散するであろう。
【0051】
直線状またはらせん状に縞状部を噴霧して縞付きバルーンを形成することができる。これは、例えば、ナイフの下に、ブレードとポリマーとの間の接着層を壊すので軸線方向には伸びない材料を必要とするようなカッティングバルーン用に用い得る。
【0052】
バルーンのコーンと本体の遷移部に、患者の血管系に挿入するために、バルーンを収縮させて折り畳んだときに露出されるように離間して配置された外面隆起部を形成し得る。次いで、折り畳まれた本体部上の隆起部間にステントを圧着して、隆起部がステントの滑落を防止するようにしてもよい。そのような隆起部は、適切に成形することにより、例えば、折り畳まれたバルーンから圧着されたステントの直径まで直径をテーパー状にすることによって、カテーテル/バルーン/ステントアセンブリの横断能力(cross−ability)を改良することもできる。
【0053】
バルーンのコーン部外面上にカテーテル/バルーン/ステントアセンブリにも適用可能である親水性ポリマー形成組成物を噴霧して硬化させ、一方、コア部上には、ステントをさらに確実に固定するために疎水性ポリマー形成組成物を用い得る。
【0054】
コア部に非常に平滑な外面を形成する代わりに、ステントをより確実に固定するために型押しパターンを形成することもできる。これは、例えば、所定のパターンで小さな「ドット」を噴霧し得る超音波スプレーノズルを利用して実施し得る。
【0055】
軟質外層を有する多層バルーンを形成し得る。
また、従来法で作成された既存のバルーン上に層またはパターンを噴霧することもできる。
【0056】
テーパーバルーンまたはテーパーカーブバルーンでさえ極めて簡単に形成することができる。
本発明のさらに他の用途には以下のものが含まれる。
【0057】
流動化可能な材料からなる固体管型上に、像をなすように(image−wise)パターンを形成して硬化性組成物を塗布するか、またはパターンを形成するように硬化性組成物を硬化させて、本発明のステントを作成し得る。使用する硬化性組成物には、有機または無機補強材、例えば、繊維または液晶ポリマー、金属、炭素、ナノチューブ、シリカなどの他の粒子が含まれ得る。特性プロファイルは、組成物を望ましい特定の特性プロファイルに応じて変えることにより長手方向または軸線方向に変更し得る。
【0058】
装置の一部、例えば金属ステント支柱構造は、硬化性組成物を塗布する前に成形型に取り付けるか、支柱構造上に第2硬化性組成物層を塗布する前に第1硬化層に取り付け得る。硬化させると、そのような構造は成形装置に埋め込まれる。
【0059】
連続材料からなるチューブグラフトはチューブ成形型上で成形され得るが、強化構造パターンは、上述のバルーン強化法と類似の方法でグラフト材料に噴霧され得る。
ステント、グラフトまたはバルーン強化構造には、例えば図13に関連して本明細書に記載されているような薬剤保持チャンバを設け得る。
【0060】
ポリエステルステントグラフトはこの技術を用いて噴霧できる。
溶液に低揮発性ナノ粒子またはミクロ粒子を加えて、多孔質構造を形成することができる。層の加熱とUV硬化を同時に行うと、揮発性粒子によって表面へのミクロチャンネルまたはナノチャンネルが形成されるであろう。したがって、これを利用して、2層間に薬剤を備え、バルーン膨脹時にその薬剤を押し出す2層バルーンを形成することができる。また、薬剤含有ポリマー上にそのような層を噴霧することも可能である。
【0061】
バルーンに関して記載されているものと同じ技術および変形形態を用いてカテーテルシャフトを形成することができる。したがって、ブレード付きシャフトもブレード無しシャフトも形成でき、異なるポリマー組成を有したり、またはブレード付き基端部およびブレードなし先端部を有するシャフトを形成することができる。
【0062】
噴霧および硬化時の厚さ測定。フィードバックシステムを得るために噴霧時レーザー厚さ測定システムを組み込むと有利であろう。
図4は、適当なシャフト型の作成に用い得るワイヤ60を示している。例えばディップコーティングによりワイヤに水または溶融ワックス層を塗布し、次いで冷却して固化させる。このサイクルを必要なだけ繰り返して、シャフト型を図5の数字65で示すような所望直径にし得る。次いで、放射線硬化性組成物を塗布し、上述のように硬化させる。ワックスまたは氷型を溶融、除去して、ワイヤを取り出す空間をつくる。氷またはワックス型の代わりに、シャフトを、直接、非粘着性PTFEまたは銀コートマンドレルワイヤ上に噴霧してもよい。
【0063】
バルーンとシャフトは、一体成形、すなわちワンピース成形することもできる。図6は、図5の氷またはワックス型の先端部をバルーン成形型内に配置し、その上でバルーン型部分75を成形することによって得られたシャフト/バルーン一体型70を示している。次いで、上述の方法により、型70上において一体シャフト/バルーンを成形する。
【0064】
タンデム型バルーンは簡単な方法で作成できる。図6に示すような1バルーン型の代わりに、シャフト型65を、2つ以上のバルーン成形型を含むように改変し、前と同じように、噴霧および硬化を実施する。
【0065】
図7、8および9は、図5の型70を改変して作成し得るより複雑なバルーン型を示している。このバルーンは、ラピッドエクスチェンジ型カテーテルシステムに用いられ得る。
【0066】
現在のラピッドエクスチェンジ型カテーテルは、カテーテルの少なくとも一部を横切る2つの管腔であって、一方はバルーンへの流体アクセスを提供し、他方はガイドワイヤ通路となる2つの管腔を必要とする。この二重管腔の構想によって、バルーンチャンバとの間の流体アクセスが制限され、膨脹・収縮時間が増大する。また、断面に4つの壁が存在するので、システム全体のプロファイルが大きくなる。米国特許第5409458号〔ハイルハーンら(Khairkhahan et al)〕および米国特許第5549553号〔レスマン(Resseman)、スティーブランド(Stivland)およびブレーザー(Blaeser)〕で、バルーン壁にガイドワイヤ管腔を取り付けることによりこの問題を解決する2種の設計が提案された。米国特許第5409458号は、片側扁平バルーン設計を示しており、ガイドワイヤ管腔は扁平面の内側に接着する。米国特許第5549553号は、ガイドワイヤがバルーン壁の一部を通って延びるバルーンを示している。
【0067】
どちらの解決法も、バルーン膨脹時にガイドワイヤがバルーンの一方の側に押し付けられるので理想的ではない。このために、両解決法はステント拡張配置システムとして用いるのには不適である。先ず第1に、ステントにかかる圧力が円周に沿って非均一であるために、ガイドワイヤはバルーン膨脹チャンバとステントの間に押し込まれる。第2に、ガイドワイヤがバルーンによって血管壁に圧迫されるので、ガイドワイヤも、拡張時に拡張域の先端側および基端側の両側において血管壁に押し付けられる。一般に、血管の拡張領域とそれに接する先端側と基端側の非拡張領域の間には滑らかな遷移部が求められる。
【0068】
ラピッドエクスチェンジ型カテーテル用バルーン、特にステントの配置に用いるバルーンの設計問題に対する代替解決法が本発明のさらなる態様である。本発明のバルーンは、図9に示すように、バルーンを通過するガイドワイヤチャンネルを有する。図9は、上述特許におけるようにガイドワイヤの片側に圧力チャンバを有する代わりに、長手方向軸線82と、中央本体部84と、基端および先端テーパーコーン部86,87とを有するバルーン80を示している。テーパーコーン壁86,87を通り抜ける長手方向に沿うガイドワイヤチャンネル85が設けられている。この設計によれば、圧力チャンバはガイドワイヤチャンネル85を完全に取り囲む。その結果、ガイドワイヤチャンネルにかかる圧力は、すべての方向から等しく及ぼされる。したがって、バルーン膨脹時にガイドワイヤチャンネルがバルーンの壁に押し付けられることはなく、ステントにかかる圧力は等しく分散される。
【0069】
そのようなバルーンの1つの作成法は、図6に示すような型から出発する。次いで、氷型70のバルーン部75に、軸線から半径方向に外壁には到達しない距離だけ離間した位置に軸線方向に延びる孔90を穿孔して、図7に示すような改変した型を形成する。光硬化性組成物の浸漬または噴霧、その後の放射線硬化により、一体成形された軸心から外れ
た長手方向ガイドワイヤチャンネル95を有するバルーン96を形成する。光硬化性組成物の放射線硬化は、例えば、氷型を介して照射するか、孔90に沿って斜め方向にビームを当てることによって達成し得る。組成物膜を硬化させ、氷またはワックスを溶融させると、バルーン壁が孔の長さまで延びる図8に示すようなバルーン形状が残るであろう。凍結プロセス中にワイヤを適所に配置し、後でワイヤを取り出すことにより、この孔を氷型作成時に形成することも勿論可能である。このために金属ワイヤを用いる場合には、電流を流してワイヤを加熱すれば、ワイヤを氷型から容易に解放することができる。
【0070】
図9に見られるようなバルーンのガイドワイヤチャンネル95を形成する別の方法は、図7の型70の外側を被覆して硬化させる前に、別途形成されたチューブを用いて、そのチューブを型70の孔90に挿入する。そのようなチューブは、本明細書に記載の方法または任意の他の手段によって形成可能であり、またその材料はバルーンの残りの部分と同じであっても異なっていてもよい。このチューブは、バルーンの外壁と別途形成されるガイドワイヤチャンネルとの接着力を高めるために、その両端においてチューブの厚さを越えて外側に延びる繊維を含んで形成されてもよい。
【0071】
本発明のシステムをステントデリバリーシステムとして用いたい場合には、噴霧前にある種の他の材料製チューブを孔90に埋設して形成した図9に見られるようなバルーンが望ましいかもしれない。チューブ95は、薄過ぎたり、柔らか過ぎたりすると、ステントをクリンプするときに潰れてしまう可能性がある。バルーン構成にある種の硬質材料製チューブを組み込めば、この潜在的問題を克服できる。
【0072】
図9のバルーンの変形形態においては、バルーンを通過する長手方向のチャンネルを増やし、バルーン膨脹時にもこのシステムを通って血液が流れるようにチャンネルを開放したままにする。
【0073】
噴霧・硬化によるバルーン形成はさらに、1回の作業で組み合せシャフト/バルーン構造を作成する方法を提供する。これは、例えば、マンドレルを利用してその全長にわたって氷またはワックスの薄層を形成することにより実施し得る。次に、バルーン型を末端部の氷に加える。上述のようにバルーン型に穿孔して、次いで、システム全体に硬化性組成物を噴霧する。次に、組成物を硬化させ、氷またはワックス型を溶融させる。
【0074】
月形の断面を有するPTFEコートワイヤマンドレルを用いる本発明の別の実施形態では、長い長さにわたる二重管腔シャフトを作成することができる。この場合も、マンドレル上に氷の薄層を形成し、次いで、内側管腔を形成するプレフォームチューブを月形の内側丸み内に配置し、構造全体に硬化性組成物を噴霧し、次いで硬化させる。氷を溶かせば、マンドレルを容易に除去することができる。図10はこのようにして形成したシャフト100の断面図を示している。このシャフトは、外壁102と、内壁104と、外側管腔106と、内側管腔108とを有する。内壁104は月形に湾曲した基体型に挿入したチューブ、すなわち、PTFEコートワイヤを流動化可能な基体材料で被覆した後で前記チューブから形成されるのに対し、外壁はその後で塗布したUV硬化ポリマーから形成される。
【0075】
図11A〜Cは、本発明のさらに別の実施形態を示している。図11Aは、氷または他の流動化可能な固体からなる基本バルーン型110を示している。この型110には、環状バンド112,114が付いている。バンド112,114は、その静止直径から型上での直径に達するまで伸長されている弾性材料である。弾性材料は、シリコーンまたは他のゴム材料であってよいが、硬化性組成物からなる硬化ポリマー膜が接着する材料である。次いで、図11Bに示すように、バンド112,114を含む型全体の上に、噴霧または他の技術を用いて硬化性組成物116を塗布し、その後、硬化させて、バンド112,
114が組み込まれたバルーンを形成する。図11Cでは、流動化可能な型を除去すると、複合バルーンはバンド112,114から圧力を受けて静止位置に縮まる。これは収縮プロファイルを小さくするのに役立つ。この図に示すか、他の配置で設置されたバンドは、バルーン膨脹曲線を変えるのにも用い得る。
【0076】
図11Cのバルーンの変更形態は、バンド112,114を取り付ける前に型上に噴霧して硬化させた第1ポリマー層を用いる。この実施形態に用いるバンドも、噴霧ポリマーで封入されるように、上述のようにオーバーコートして硬化させるのが適当である。この技術により、バルーン本体を構成する硬化ポリマーと弾性バンドとの間に強力な接着層を維持する必要性が回避される。このバルーン、すなわち図11Cのバルーンのさらなる変形形態では、バンド112,114は、バルーンコンプライアンスを変えるためにノンコンプライアント材料で構成し得る。バルーン本体を構成する硬化ポリマーは、コンプライアント材料、セミコンプライアント材料またはノンコンプライアント材料であり得る。
【0077】
図12Aおよび図12Bは、本発明によって得られる別のバルーン実施形態を示している。軸線方向軸に沿って対称なバルーン型の代わりに、バルーン120をバルーン軸122の方向に沿って湾曲している。ほとんどの動脈は湾曲しているので、これは実際に多くのケースで有利であろう。バルーンとカテーテルシャフトとを血管の湾曲方向に向け得る1つの方法は、図12Bに示すように、内側管腔124に楕円形断面を用いることであろう。これにより、湾曲部を通過することによって、シャフトは湾曲部に整合されるであろう。
【0078】
本発明の別の実施形態は、第1氷成形型を使い、この氷層上に少なくとも1つの第1層を噴霧し、層を硬化させて、原型バルーンを形成する。次いで、氷型を溶かすが、水は原型バルーン内に保持し、この水を実際に加圧して原型バルーンを第2直径まで拡張する。拡張直径は、第1氷成形型の直径よりわずかに大きいだけでよい。拡張直径を維持するために圧力を保持し続けながら、水を再凍結させて拡張形状を固定し、その後、原型バルーン上に少なくとも1つの第2層を噴霧し、硬化させる。このようにして、バルーン層内に、バルーンの強化に役立つとともに、種々の膨脹/圧力曲線の形成を可能にする負圧を生成することができる。型の溶融、硬化バルーンの加圧、型材料の再凍結、さらなる層の塗布、およびさらなる層の硬化というサイクルを、所望のバルーン厚が得られるまで何回も繰り返し得る。この実施形態では、外側に延びる強化繊維を備えた第1層を形成すれば、第1層と第2層との接着を強化することができる。第2層を塗布して硬化させると、繊維は両層に埋設された状態になる。
【0079】
図13は、本発明の別のバルーン成形法を図解的に示しており、この方法では、バルーンに、治療部位に薬剤を運んで分注するのに用い得る中空チャンバ構造を設ける。基体型130に硬化性組成物からなる第1層を塗布し、硬化させて、バルーン内層132を形成した後、バルーンにポジ型のチャンバ型136を取り付ける。次いで、脚領域134を除くチャンバ型を含むバルーン上に第2層135を噴霧して、硬化させる。層135は、内層136の形成に用いたものと同一か、異なる組成物で形成し得る。第2層135を硬化させた後、チャンバ型を除去して、外面に開放した中空チャンバを内包するバルーン140を得る。これらのポケットには、膨脹前に1種以上の薬剤を充填し得る。膨脹時、バルーンが血管壁に向かって加圧されるにつれ、薬剤がチャンバから絞り出される。
【0080】
本発明の別の実施形態では、2層間にチャンバを有する二重層バルーンを形成することができ、このバルーンは、第1ポリマー形成層を付着させ、第1層を硬化させ、第1ポリマー層の上に追加の氷(ワックス)層を噴霧し、水またはワックスを消失させるための1つ以上のチャンネルを残して追加の氷(ワックス)層を第2ポリマー形成層で被覆し、次いで第2層を硬化させることにより形成し得る。このようにして、層間において接触がな
い二重層バルーンを形成することができる。あるいは、第1層を部分的にのみ被覆すれば、第1層と第2層との間に、例えば薬剤などを充填する接触点を形成し得る。繊維は、第1ポリマー層において噴霧され得、第1ポリマー層から突出するような寸法を有する。繊維の一部のみを被覆するように(言い換えれば、繊維が氷層および第1ポリマー層から突出するように)、第1ポリマー層上に水の薄層を噴霧し、次いで上面のポリマー層を噴霧すれば、第1ポリマー層と第2ポリマー層を連結することができる。また、この技術により、導電性ワイヤまたは繊維を使って分離層間を電気的に接続することもできる。
【0081】
本明細書に記載されている本発明のさらなる実施形態の実施例では、氷型に、物体の1つの表面からその表面の別の部分に向かって延びるとともに両端で突出する長い繊維を組み込むことができる。この型の上にポリマーを噴霧すると、繊維の両端はポリマー層に埋設されるであろう。氷を溶かすと、表面の2点間の繊維による連結がそのまま残るであろう。1本以上の繊維で表面間のあらゆる種類の点を連結できる。例えば、氷型に、両端部が氷型表面を越えてすぐのところまで長手方向軸線に関して90度で延びる繊維からなる長手方向に延びる縞状物を配置し、次いで、硬化性配合物を塗布、硬化させて繊維の対向端部を埋設すると、繊維配向の拡大が制限されるので、バルーン内の圧力がさらに増大すると、円形から楕円形になるバルーンができるであろう。
【0082】
別の実施例では、先の実施例と類似であるが、但し、すべての繊維の一端のみをバルーン表面に結合して繊維端部をバルーン壁に組み込み、他端はバルーンの基端部方向に誘導する。この手順に従うと、繊維束がバルーンの基端部から突出するバルーンができる。これらの繊維は、カテーテルシャフト、例えば、カテーテルシャフトリングに連結され得る。繊維は高弾性材料から形成されており、バルーン膨脹時に容易に伸長する。バルーンをしぼませると、繊維は収縮し、バルーンの収縮を助けるであろう。繊維を、バルーン壁内に少なくとも主として所望の折り畳みパターンに沿って、例えば3つ以上の長手方向に延びる縞模様に沿って分布させれば、繊維の収縮はバルーンを安全に回収するために再度折り畳むのに役立つであろう。
【0083】
あるいは、そのような一端を表面に埋設した繊維(この場合はノンコンプライアント)をカテーテルの基端側まで接続することが可能であり、医師は、例えば回転されることにより繊維の長さを増減する回転装置に繊維を接続することによりバルーンの膨脹量を決定することができる。繊維の数および表面に沿った繊維の配分に応じて、バルーンの膨脹特性をオンザフライで変えて、バルーン長の一部に沿ってバルーン膨脹直径を変えることが可能であり、例えば、より短いバルーン長の部分上に膨脹圧を局部化したり、異なるバルーン断面形状、例えば、バルーン長の一部もしくは全体に沿って断面を楕円形または多角形にしたり、バルーンを曲げたり、かつ/またはバルーンの再折り畳みを調節したりし得る。
【0084】
本発明の方法を用いて形成し得る別の装置は、(第1弾性層を用い、次いで氷層を加え、次いで、第2ノンコンプライアント層を加え、2層間に、任意で上述のように2層間を繊維接続により支持し得る空間を残した)二重層バルーン構造である。第2層を通過するマイクロチャンネルは、自在成形(formed−in−place)してもよいし、UVレーザーアブレーションによりくり貫いてもよい。中間氷層を除去した後、得られた中間チャンバにカプセル化薬剤を充填し得る。カプセルは外圧に応じて破れるように設計し得る。言い換えれば、バルーンの内圧を上げると、弾性内膜が外側のノンコンプライアントバルーンに向かって膨脹し、中間薬剤層を圧迫するであろう。圧力が特定しきい値を超えると、カプセルはパチンと破れて、薬剤を一斉に放出し、放出された薬剤は、マイクロチャンネルを介して脈管壁に注入されるであろう。種々の圧力レベルで破裂する多様なタイプの球体中の多様な薬剤を用い得ることは勿論である。
【0085】
図14は、拡張形状のステント150を示している。このステントは、氷または他の流動化可能な材料からなる成形型、例えばチューブ型上に硬化性組成物を、像をなすように噴霧し、次いで噴霧組成物を硬化させることにより成形し得る。ステント材料は上述のような複合材料であり得る。
【0086】
上述のように、本発明は、流動化可能な基体型材料の融点より低い温度、適当には100℃未満の温度で固体ポリマーに放射線硬化可能な組成物を用い得る。氷型の場合、材料は0℃未満で放射線硬化可能でなければならない。(メタ)アクリレートエステル(すなわち、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物)からなる放射線硬化性組成物は周知であり、本発明に使用し得る。多様な硬化特性はそのような組成物から得られる。電子ビーム源を使用する場合を除いて、そのような組成物は、通常、光開始剤を用いる。
【0087】
放射線硬化性組成物、例えばUVまたは可視光線で開始される組成物は、事実上、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、またはポリマーであり得る。一般的にはそのような化合物の混合物が用いられる。通常、これらの組成物は、組成物を塗布し易くするために硬化前には液体であり、次いで、UVまたは可視光線などの放射線に暴露された後固体となる。
【0088】
(メタ)アクリレート末端放射線硬化性化合物の例としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(脂肪族および芳香族)、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレートなどおよびそれらの混合物が挙げられるが、それらには限定されない。噴霧塗布するには、粘度が、適当には約350mPa.s以下、好ましくは約150mPa.s以下の低粘性組成物が好ましい。高粘性化合物を用いる場合には、反応性モノマー希釈剤および/または非反応性溶媒を用いて組成物全体の粘度を低下させ得る。高粘性組成物は、他の塗布技術、例えば、ディップコーティングまたはブラシコーティングなどに使用し得る。
【0089】
(メタ)アクリレート官能性モノマーは、通常、約86〜約500の分子量範囲であり、通常、25℃で200mPa.sの粘度を有する。モノマーをオリゴマーと併用して所望のコーティング粘度を得るのが望ましいであろう。そのようなモノマーをオリゴマーと併用する場合、モノマーをオリゴマーと共重合させて、硬化コーティングの一体部を形成する。一般に、放射線硬化にはメタクリレートモノマーよりアクリレートモノマーの方が好ましい。他の放射線硬化性エチレン不飽和モノマーを単独または(メタ)アクリレートモノマーと混合して用いることも勿論可能である。
【0090】
使用し得るエチレン不飽和オリゴマーおよびプレポリマーは、通常、室温では粘性の液体であり、25℃で数千から百万mPa.sを超える範囲の粘度を有する。エチレン不飽和オリゴマーおよびプレポリマーは、通常、1分子当たり最高20個、恐らく最も一般的には1分子当たり2〜6個のアクリレート基を有し、約500〜約20,000g/molの範囲の分子量を有するが、分子量が200,000g/mol程度のものもあり得る。オリゴマーは、通常、モノマーで達成できるものより優れた膜特性を与える。オリゴマーは、通常、放射線硬化性官能基が結合する炭素含有骨格を有する。適当な炭素含有骨格の例としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンなどがあるが、それらには限定されない。炭素含有骨格のサイズは所望の分子量が得られるように選択する。
【0091】
他の適当なUV硬化性組成物としては、カチオン重合性化合物、とりわけエポキシが挙げられる。適当な市販の硬化性エポキシの例には、ユーシービー・ラドキュア(UCB Radcure)社から入手し得るUVACURE(登録商標) 1500、1530お
よび1534、サートマー(Sartomer)社から入手し得るSARCAT(登録商標) K126などが含まれるが、それらには限定されない。使用可能な他のカチオン重合性化合物は、ビニルエーテルおよびスチリルオキシエーテルである。
【0092】
光開始剤を放射線硬化性化合物と併用すると有利である。光開始剤は、通常、UV光に暴露されるとフリーラジカル種を形成する。光開始剤は、一般的には、UV配合物の約0.5〜約15重量%、より一般的には、組成物の約0.5〜10重量%、望ましくは、1〜7重量%、より望ましくは、3〜5重量%の量で用いられる。通常、この量はバインダー組成物に基づくであろうが、バインダー組成物を磁性材料と混合する前に調製する場合には特にそうである。
【0093】
光開始剤は、通常、UV/可視域、約250〜850nm、またはその一部で活性である。フリーラジカル機構下で開始する光開始剤の例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩化アセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノンエステル、ベンゾイン、酢酸ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジメトキシベンゾイン、ジベンジルケトン、ベンゾイルシクロヘキサノールおよび他の芳香族ケトン、アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキシド、アシルホスホスホネート(acylphosphosphonates)、ケトスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオカーボネートおよびジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドがある。
【0094】
放射線硬化性化合物と併用し得る光開始剤としては、米国ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown)所在のチバガイギー社(Ciba−Geigy Corp.)から、商品名「IRGACURE」および「DAROCUR」で市販されている光開始剤、特に、「IRGACURE」184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)、369(2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ブタノン)、500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの組合わせ)、651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)(例えば、「IRGACURE」651)、1700〔ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン〕の組み合せ〕ならびに「DAROCUR」1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン)および4265(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの組み合せ);米国コネティカット州ダンバリー(Danbury)所在のユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスチックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.Inc.)から商品名「CYRACURE」で市販されている光開始剤、例えば、「CYRACURE」UVI−6974(トリアリールスルホニウムのヘキサフルオロアンチモン酸塩混合物)およびUVI−6990(トリアリールスルホニウムのヘキサフルオロリン酸塩混合物);可視光[ブルー]光開始剤、dl−樟脳キノンおよび「IRGACURE」784DCが挙げられる。本発明には、これらの材料の組み合せも用い得ることは勿論である。
【0095】
放射線硬化性組成物中にカチオン重合性化合物を用いる場合、光開始剤はカチオン光開始剤が適当であり、多くのカチオン光開始剤が市販されている。
上記リストは、例示目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。そのようなUV硬化システムは当業では周知である。
【0096】
あるいは、x線、γ線または電子ビーム硬化を用いてもよい。UV硬化の場合には一般
に光開始剤を用いるが、組成物の硬化に上記の高エネルギー源を用いる場合には光開始剤は通常必要とされない。
【0097】
本発明に利用し得る別のタイプの配合物は、以下の方程式(I)で表されるような、芳香族2,5−ジアルキル−1,4−ジケトンと、2個以上の(メタ)アクリレート基またはマレイミド基を有する化合物と、任意で、連鎖を停止するモノマレイミド、または(メタ)アクリレートとの光活性化ディールス−アルダー付加反応である。
【0098】
【化1】
【0099】
上記式中、Xは炭素結合オルガノ基であり、Arは任意で置換された芳香族部分である。Xは、芳香族基または脂肪族基からなり得、またO、N、S、P、Cl、FおよびSiなどのヘテロ原子をさらに含み得る。Xも重合部分であり得る。使用可能なX基の例は、アリーレン、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、並びに下記化合物
【化2】
【0100】
およびその置換体;メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルキレン、;例えば、メチレンフェニレンメチレンなどのアルキレンアラルキレン、;アルキレンエーテルアルキレンである。重合部分の例としては、アルキレン出発ポリエーテルがあり、このポリエーテルは、脂肪族ポリエーテル部分、例えば、ポリオキシエチレン(EO)n、ポリオキシプロピレン(PO)n、ポリオキシブチレンおよびそれらのコポリマー、例えば、(EO)n(PO)m(ここで、nおよびmは正数)である。Xは、炭素結合芳香族ポリエーテル部分、芳香族または脂肪族ポリエステル、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサン、上記のいずれかのコポリマー、特にブロックコポリマーであってもよい。
【0101】
使用し得る特定のビスマレイミド化合物としては、
N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、
N,N′−エチレンビスマレイミド、
N,N′−ヘキサメチレンビスマレイミド、
N,N′−ドデカメチレンビスマレイミド、
N,N′−m−キシリレンビスマレイミド、
N,N′−p−キシリレンビスマレイミド、
N,N′−1,3−ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、
N,N′−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、
N,N′−2,4−トリレンビスマレイミド、
N,N′−2,6−トリレンビスマレイミド、
N,N′−3,3−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
3,3−ジフェニルスルホンビスマレイミド、
4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、
N,N′−4,4−ジフェニルスルフィドビスマレイミド、
N,N′−p−ベンゾフェノンビスマレイミド、
N,N′−ジフェニルエタンビスマレイミド、
N,N′−ジフェニルエーテルビスマレイミド、
N,N′−(メチレンジテトラヒドロフェニル)ビスマレイミド、
N,N′−(3−エチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−(3,3−ジメチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−(3,3−ジエチル)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−(3,3−ジクロロ)−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N′−トリジンビスマレイミド、
N,N′−イソホロンビスマレイミド、
N,N′−p,p′−ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、
N,N′−ベンゾフェノンビスマレイミド、
N,N′−ジフェニルプロパンビスマレイミド、
N,N′−ナフタレンビスマレイミド、
N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、
N,N′−4,4−(1,1−ジフェニルシクロヘキサン)ビスマレイミド、
N,N′−3,5−(1,2,4−トリアゾール)ビスマレイミド、
N,N′−ピリジン−2,6−ジイルビスマレイミド、
N,N′−5−メトキシ−1,3−フェニレンビスマレイミド、
1,2−ビス(2−マレイミドエトキシ)エタン、
1,3−ビス(3−マレイミドプロポキシ)プロパン、
N,N′−ヘキサメチレンビスジメチルマレイミド、
N,N′−4,4′−1−(ジフェニルエーテル)−ビス−ジメチルマレイミド、
N,N′−4,4′−(ジフェニルスルホン)−ビス−ジメチルマレイミド
N,N′−4,4′−(ジアミノ)トリフェニルホスフェートなどのN,N′−ビスマレイミド;
芳香族ビスマレイミド化合物、例えば、
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−エチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−プロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−イソプロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−sec−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[3−メトキシ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、
1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
1,1−ビス[3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
1,1−ビス[3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、
3,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ペンタン、
1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3,5−ジメチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3,5−ジブロモ−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、および
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−または5−メチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどがある。
【0102】
方程式(I)の反応に用いる芳香族2,5−ジアルキル−1,4−ジケトンも構造が多様に異なり得る。Arは、同じでも異なっていてもよく、例えば、フェニルおよび置換フェニル、例えば、R−C6H4−(ここで、Rはアルキル、アルコキシ、シアノ、フルオロ、ヒドロキシアルキルなどであり、アルキルおよびアルコキシ基は、例えば1〜20個の炭素原子を有し、場合により1個以上のエーテル酸素原子で遮断される)であり得る。Arはナフチルおよび置換ナフチルであってもよい。特定のAr基は、ヒドロキシメチルフェニル、ジメトキシフェニル、ジエトキシフェニル、ドデシルフェニル、ドデシルオキシフェニル、2−ヒドロキシエトキシフェニル、およびそれらの混合物であり得る。場合により、脂肪族基、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシル基をAr位で置換し得る。
【0103】
方程式(I)において、ビスマレイミド化合物の一部またはすべては、3個以上のマレイミド基を有する化合物で置換可能であり、そのような化合物の例としては、無水マレイン酸と、アニリンとホルマリンを反応させて得たポリアミン縮合物とを反応させて得た多官能マレイミド化合物、3,4,4′−トリアミノジフェニルメタン、トリアミノフェノール、トリス(4−アミノフェニル)ホスフェート、トリス(4−アミノフェニル)チオホスフェート、または他のポリアミンがある。
【0104】
(メタ)アクリレートおよびアクリルアミド化合物も、方程式(I)で表されるマレイミド化合物の一部またはすべてと置き換えられ得る。複数の(メタ)アクリレート基を有する化合物を用いると、生成物はポリイミドではなく、ポリエステルである。同様に、アクリルアミド化合物を用いると、生成物はポリアミドとなる。ビスマレイミドと多官能性(メタ)アクリレート(multi(meth)acrylates)および/または多官能性アクリルアミド(multiacrylamides)との混合物からはコポリマーが生成し得る。
【0105】
本発明の組成物は、マレイミドおよび/または(メタ)アクリレート基とジケトン化合物の当量比が約1:1〜約4:1、より好ましくは約1:2になるように配合するのが適当である。
【0106】
X基は、これまで従来のポリイミドによって得られたものより軟質で弾性が高い硬化ポリマーが得られるように修飾され得る。詳細に言えば、X基として、より長鎖のアルキレンまたは(ポリ)アルキレンオキシ基を用いると、ポリマーの弾性や伸び特性が高まるで
あろうし、軟度も高くなり得る。Ar部分を長鎖アルキレンまたは(ポリ)アルキレンオキシ基にしても軟度が高まるであろう。異なるX基を有するマレイミド化合物を組み合せるか、かつ/または芳香族ジケトンの組み合せを用いて、弾性、靭性および強度のバランスを最適にし得るように硬化ポリマーの特性を改変し得る。
【0107】
従来のポリイミドはその強度特性で知られているが、高温性能が市販ポリマーの主要特徴と考えられている。したがって、これまで、イミド環および芳香環の外側のヘテロ原子含量が極く低いかまたはゼロであり、かつ芳香族含量が極めて高いポリイミドが製造されてきた。本発明の場合、医療装置メーカーは、ビスマレイミドの選択、芳香族ケトンの選択、または材料のブレンドもしくはそれらの任意の組み合せにより、硬化ポリマーの特性を調整することができる。
【0108】
放射線硬化の代わりに、2種以上の成分を混合すると硬化し得る組成物を用いることも可能であり、個々の成分は混合するまでは安定である。個々の成分は、オンザフライでブレンドすることができ、その結果として生成する組成物は、塗布すると即座に硬化するが、塗布装置中では硬化しない。
【0109】
上記の実施例および開示内容は、例示を目的とし、包括的なものではない。これらの実施例および説明は当業者に多くの変形形態および代替形態を示唆するであろう。これらの代替形態および変形形態はすべて特許請求の範囲内に包含されるものとし、特許請求の範囲において、用語「含む」は、「〜を含むが、〜には限定されない」ことを意味する。当業者は、本明細書に記載されている特定の実施形態と等価の他の実施形態に気づくかもしれないが、それらの等価形態も特許請求の範囲内に包含されるものとする。さらに、従属請求項に呈示されている特定の特徴は、本発明が明確に従属請求項の特徴の任意の他の可能な組合わせを有する他の実施形態をも対象とするものと認識されるように、本発明の範囲内の他の方法で互いに組み合わせることができる。例えば、請求項の公開および/または請求項の提示時期要件のために、後続の従属請求項は、管轄権内で多数項従属形式が受容される場合には、そのような従属請求項で引用されたすべての先行詞を保有するすべての前項および後続項請求項から多数項従属形式で択一的に記載されたものとみなされる(例えば、請求項1の請求項に直接従属する各項の請求項は、択一的にすべての前項請求項に従属するものとみなされる)。多数項従属形式が制限される管轄権内では、後続項請求項の主題もそれぞれ、そのような下位の従属請求項に列挙されている特定請求項以外の前項または後続項の先行詞保有請求項から従属関係を生じる各項従属請求項形式で択一的に記載されたものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明のバルーンを用いたバルーンカテーテルの斜視図。
【図2A】本発明の拡張バルーンの好ましい成形法を例示する図。
【図2B】本発明の拡張バルーンの好ましい成形法を例示する図。
【図2C】本発明の拡張バルーンの好ましい成形法を例示する図。
【図3A】通常の収縮状態で成形され、加圧状態で膨脹したバルーンの図。
【図3B】通常の収縮状態で成形され、加圧状態で膨脹したバルーンの図。
【図4】本発明の方法におけるカテーテルシャフトの製造に有用な氷またはワックス成形型の形成に用い得るワイヤの略側断面図。
【図5】ワイヤ上に氷またはワックス型が形成されている図4と同様な図。
【図6】先端部にバルーン型を設けるように型がさらに改変されている図5と同様な図。
【図7】バルーン型中にバルーン型のコーン壁を通過する縦孔を設けるようにさらに型がさらに改変されている図6と同様な図。
【図8】図8の改変型由来のラピッドエクスチェンジ型カテーテル用バルーンの斜視図。
【図9】本発明に従って作成し得るラピッドエクスチェンジ型カテーテル用バルーンの斜視図。
【図10】本発明の一実施形態に従って作成したカテーテルシャフトの断面図。
【図11A】本発明の一実施形態に従って自動収縮バルーンを作成する工程を示す側断面概略図。
【図11B】本発明の一実施形態に従って自動収縮バルーンを作成する工程を示す側断面概略図。
【図11C】本発明の一実施形態に従って自動収縮バルーンを作成する工程を示す側断面概略図。
【図12A】軸線方向に湾曲させて形成されたバルーンを示す図。
【図12B】軸線方向に湾曲させて成形されたバルーンを取り付け得る楕円断面の先端チューブを示す図。
【図13】治療部位に薬剤を運んで分注するように適合されたチャンバ構造を有するバルーンを作成するための本発明の一実施形態プロセスを断面で示す概略図。
【図14】本発明に従って作成し得るステントを拡張形状で示す斜視図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置を形成する方法であって、
(a)医療装置表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体の成形型を作成する工程と、
(b)成形型上に硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)前記成形型の材料を流動化させることによって成形型を除去し、硬化組成物からなる医療装置の少なくとも一部を得る工程とを有する方法。
【請求項2】
流動化可能な組成物は、形成された装置の物理的な完全性が維持される条件下において溶融することにより流動化し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流動化可能な組成物が氷または固体ワックス材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
硬化性組成物が光硬化性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硬化性組成物層を、像をなすように光硬化させる、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
硬化性組成物を、成形型上に像をなすように付着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化工程の後で、先に形成された硬化層の上に少なくとも1つの追加の硬化性組成物層を付着させ、その追加層もまた前記成形型を流動化させる前に硬化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの前記層において硬化性組成物の組成が異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの追加層は、前記医療装置内に薬剤を収容するのに適合された少なくとも1つのチャンバを前記医療装置に設けるように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
硬化性組成物は医療装置の一部分上においてその配合が変更されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
医療装置が、ステントもしくはその一部、カテーテルシャフトもしくはその一部、カテーテルバルーン、または一体成形カテーテルバルーン/カテーテルシャフトもしくはその一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
硬化性組成物を噴霧によって付着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
医療装置の少なくとも一部上に異なる混合組成物を形成するように、少なくとも2種の異なる硬化性配合物を噴霧して硬化性組成物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化性組成物が、ポリイミドまたはポリエステルを形成する光硬化可能な配合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
硬化性組成物が、少なくとも1種の芳香族2,5−ジアルキル−1、4−ジケトンと、2個以上の(メタ)アクリレート基またはマレイミド基を有する少なくとも1種の化合物とを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
成形型が100℃以下の融点を有する材料からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
硬化性組成物を成形型表面上に一様に付着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
少なくともその一部が約400〜約150ナノメートルの範囲内の波長を有する光エネルギーを照射することによって硬化性組成物を硬化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
流動化可能な組成物は、硬化した硬化性組成物に実質的に有害な作用を及ぼさない溶媒に溶解することによって流動化し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
溶媒が水である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
流動化可能な組成物が熱可塑性ポリビニルアルコールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法で形成した医療装置。
【請求項23】
前記硬化性組成物を50℃未満の温度で硬化させる、請求項22に記載の医療装置。
【請求項24】
請求項7に記載の方法で形成した医療装置。
【請求項25】
医療装置であって、少なくともその一部が、少なくとも1種の芳香族2,5−ジアルキル−1、4−ジケトンと、2個以上のマレイミド基、(メタ)アクリレート基、および(メタ)アクリルアミド基のいずれかを有する少なくとも1種の化合物とを含む組成物を光硬化することによって生成されるポリイミド、ポリエステル、およびポリアミドのいずれかからなる医療装置。
【請求項26】
医療装置が、ステント、カテーテルシャフトもしくはその一部、カテーテルバルーン、および一体成形カテーテルバルーン/カテーテルシャフトもしくはその一部のいずれかである、請求項25に記載の医療装置。
【請求項27】
長手方向軸線と、基端と、先端とを有する医療用バルーンであって、該バルーンはポリマー材料から形成されているとともに、前記基端において同軸シャフトに結合されており、かつ前記先端においては同一または異なる同軸シャフトに結合されており、該バルーンは同バルーンの両端からそれぞれ離間された端部の間に位置してテーパー状の基端壁部分および先端壁部分によってバルーンの両端に接続される中央本体壁部分を有し、該バルーンは同バルーンを通って長手方向に延びる管腔をさらに備え、前記管腔がバルーンの基端壁部分および先端壁部分を通過する、医療用バルーン。
【請求項28】
請求項27に記載のバルーンであって、
(a)医療装置表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体バルーン型を形成する工程と、
(b)バルーン型上に硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)バルーン型材料を流動化してバルーン型を除去し、硬化組成物からなる医療装置の少なくとも一部を得る工程とを含む方法で形成されたバルーン。
【請求項29】
硬化性組成物が放射線重合性組成物である、請求項27に記載のバルーン。
【請求項30】
請求項27に記載のバルーンを含むラピッドエクスチェンジ型カテーテル。
【請求項31】
バルーン上に取り付けられたステントを有する請求項30に記載のラピッドエクスチェンジ型カテーテルを含むアセンブリ。
【請求項32】
少なくとも第1層および第2層を有する多層ポリマー材料膜を含む物品であって、前記第1層および第2層は、それぞれの外面と内面とに沿った同一の広がりを有する区域にわたって互いに密着接触しており、前記第1層および第2層はそれぞれ、前記それぞれの外面および内面上に同一の広がりを有する区域に対応する静止域を規定する静止形状を有し、前記第1層外面の静止域は前記第2層内面の静止域より小さい、物品。
【請求項33】
前記物品が医療装置である、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記物品が拡張バルーンであり、前記膜がバルーン壁である、請求項32に記載の物品。
【請求項35】
前記バルーン壁が略同一平面内に位置する内面および外面を有し、前記同一の広がりを有する区域は、内側バルーン壁表面と外側バルーン壁表面との間の領域であり、前記表面と略同一平面内にある、請求項34に記載の拡張バルーン。
【請求項36】
前記同一の広がりを有する区域がバルーン壁全体より小さい範囲の領域である、請求項35に記載の拡張バルーン。
【請求項37】
前記層の一方は、バルーン壁内に封入される前に静止形状から伸長されたエラストマーバンドである、請求項36に記載の拡張バルーン。
【請求項38】
前記同一の広がりを有する区域が実質的にバルーン壁全体にわたって延びている、請求項35に記載の拡張バルーン。
【請求項39】
物品を形成する方法であって、
(a)物品表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体成形型を形成する工程と、
(b)成形型上に放射線硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した放射線硬化性組成物の少なくとも一部を照射して硬化させる工程と、
(d)成形型材料を流動化して成形型を除去し、光硬化組成物からなる物品の少なくとも一部を得る工程とを含む方法。
【請求項40】
放射線硬化性組成物が約400〜約150nmの範囲の光エネルギーで光硬化可能である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
硬化性組成物が、ポリイミド、ポリエステルまたはポリアミドを形成するように光硬化可能である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
硬化性組成物が、少なくとも1種の芳香族2,5−ジアルキル−1,4−ジケトンと、2個以上のマレイミド基、(メタ)アクリレート基、および(メタ)アクリルアミド基のいずれかを有する少なくとも1種の化合物とを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
光硬化性組成物が、2個以上のマレイミド基を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
光硬化組成物が、下記一般式で表されるポリマーであり、
【化1】
前記式中、Xは炭素結合オルガノ基であり、Arは任意で置換された芳香族部分であり、nは正数である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
硬化性組成物は物品の一部上においてその配合が変更されている、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
物品を形成する方法であって、
(a)物品表面を規定する氷からなる固体成形型を作成する工程と、
(b)氷成形型上に硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)氷を溶解することによって成形型を除去し、硬化組成物からなる物品の少なくとも一部を得る工程とを有する方法。
【請求項47】
硬化性組成物は物品の少なくとも一部上でその配合が変更されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
物品を形成する方法であって、
(a)物品表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体成形型を作成する工程と、
(b)成形型上に硬化性組成物層を付着させる工程であって、硬化性組成物層は物品の一部上でその配合が変更されている工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)成形型材料を流動化させて成形型を除去し、硬化組成物からなる物品の少なくとも一部を得る工程とを含む方法。
【請求項49】
ポリイミド形成組成物を50℃以下の温度で硬化させることによって得られるポリイミド材料製の医療装置。
【請求項50】
ポリイミド材料が、下記一般式で表されるポリマーであり、
【化2】
前記式中、Xは炭素結合オルガノ基であり、Arは任意で置換された芳香族部分であり、nは正数である、請求項49に記載の医療装置。
【請求項51】
ポリイミド形成組成物が、約400〜約150nmの範囲の光エネルギーを照射することにより硬化可能である、請求項49に記載の医療装置。
【請求項52】
医療装置および医療装置の一部のいずれかのための成形型であって、該成形型の上に前記医療装置が直接形成され、該成形型は100℃以下の温度で流動化し得る材料からなる
、成形型。
【請求項53】
前記材料は50℃以下の温度で流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項54】
前記材料は100℃以下の温度で溶融することにより流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項55】
前記材料は50℃以下の温度で溶融することにより流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項56】
前記材料が氷である、請求項52に記載の成形型。
【請求項57】
前記材料はワックスである、請求項52に記載の成形型。
【請求項58】
前記材料は水または有機溶媒に溶解することによって流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項59】
前記材料はポリビニルアルコールを含む、請求項58に記載の成形型。
【請求項60】
成形型材料を流動化する条件下では流動化不能であるが、成形型が流動化された後で成形された装置から除去可能である支持構造が埋設されている、請求項52に記載の成形型。
【請求項61】
隣接する装置容積を規定する請求項52に記載の成形型であって、成形型の内部には複数の繊維が埋設されており、前記繊維は、成形型材料を流動化する条件下では流動化不能であり、成形型上で装置が形成され、成形型が流動化されたときに装置構造内に組み込まれた状態になるように、装置容積内に突出している、成形型。
【請求項62】
カテーテル、ステント、カテーテルバルーン、およびそれらの一部のいずれかを形成するためのものである、請求項52に記載の成形型。
【請求項1】
医療装置を形成する方法であって、
(a)医療装置表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体の成形型を作成する工程と、
(b)成形型上に硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)前記成形型の材料を流動化させることによって成形型を除去し、硬化組成物からなる医療装置の少なくとも一部を得る工程とを有する方法。
【請求項2】
流動化可能な組成物は、形成された装置の物理的な完全性が維持される条件下において溶融することにより流動化し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流動化可能な組成物が氷または固体ワックス材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
硬化性組成物が光硬化性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硬化性組成物層を、像をなすように光硬化させる、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
硬化性組成物を、成形型上に像をなすように付着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化工程の後で、先に形成された硬化層の上に少なくとも1つの追加の硬化性組成物層を付着させ、その追加層もまた前記成形型を流動化させる前に硬化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの前記層において硬化性組成物の組成が異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの追加層は、前記医療装置内に薬剤を収容するのに適合された少なくとも1つのチャンバを前記医療装置に設けるように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
硬化性組成物は医療装置の一部分上においてその配合が変更されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
医療装置が、ステントもしくはその一部、カテーテルシャフトもしくはその一部、カテーテルバルーン、または一体成形カテーテルバルーン/カテーテルシャフトもしくはその一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
硬化性組成物を噴霧によって付着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
医療装置の少なくとも一部上に異なる混合組成物を形成するように、少なくとも2種の異なる硬化性配合物を噴霧して硬化性組成物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化性組成物が、ポリイミドまたはポリエステルを形成する光硬化可能な配合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
硬化性組成物が、少なくとも1種の芳香族2,5−ジアルキル−1、4−ジケトンと、2個以上の(メタ)アクリレート基またはマレイミド基を有する少なくとも1種の化合物とを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
成形型が100℃以下の融点を有する材料からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
硬化性組成物を成形型表面上に一様に付着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
少なくともその一部が約400〜約150ナノメートルの範囲内の波長を有する光エネルギーを照射することによって硬化性組成物を硬化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
流動化可能な組成物は、硬化した硬化性組成物に実質的に有害な作用を及ぼさない溶媒に溶解することによって流動化し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
溶媒が水である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
流動化可能な組成物が熱可塑性ポリビニルアルコールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法で形成した医療装置。
【請求項23】
前記硬化性組成物を50℃未満の温度で硬化させる、請求項22に記載の医療装置。
【請求項24】
請求項7に記載の方法で形成した医療装置。
【請求項25】
医療装置であって、少なくともその一部が、少なくとも1種の芳香族2,5−ジアルキル−1、4−ジケトンと、2個以上のマレイミド基、(メタ)アクリレート基、および(メタ)アクリルアミド基のいずれかを有する少なくとも1種の化合物とを含む組成物を光硬化することによって生成されるポリイミド、ポリエステル、およびポリアミドのいずれかからなる医療装置。
【請求項26】
医療装置が、ステント、カテーテルシャフトもしくはその一部、カテーテルバルーン、および一体成形カテーテルバルーン/カテーテルシャフトもしくはその一部のいずれかである、請求項25に記載の医療装置。
【請求項27】
長手方向軸線と、基端と、先端とを有する医療用バルーンであって、該バルーンはポリマー材料から形成されているとともに、前記基端において同軸シャフトに結合されており、かつ前記先端においては同一または異なる同軸シャフトに結合されており、該バルーンは同バルーンの両端からそれぞれ離間された端部の間に位置してテーパー状の基端壁部分および先端壁部分によってバルーンの両端に接続される中央本体壁部分を有し、該バルーンは同バルーンを通って長手方向に延びる管腔をさらに備え、前記管腔がバルーンの基端壁部分および先端壁部分を通過する、医療用バルーン。
【請求項28】
請求項27に記載のバルーンであって、
(a)医療装置表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体バルーン型を形成する工程と、
(b)バルーン型上に硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)バルーン型材料を流動化してバルーン型を除去し、硬化組成物からなる医療装置の少なくとも一部を得る工程とを含む方法で形成されたバルーン。
【請求項29】
硬化性組成物が放射線重合性組成物である、請求項27に記載のバルーン。
【請求項30】
請求項27に記載のバルーンを含むラピッドエクスチェンジ型カテーテル。
【請求項31】
バルーン上に取り付けられたステントを有する請求項30に記載のラピッドエクスチェンジ型カテーテルを含むアセンブリ。
【請求項32】
少なくとも第1層および第2層を有する多層ポリマー材料膜を含む物品であって、前記第1層および第2層は、それぞれの外面と内面とに沿った同一の広がりを有する区域にわたって互いに密着接触しており、前記第1層および第2層はそれぞれ、前記それぞれの外面および内面上に同一の広がりを有する区域に対応する静止域を規定する静止形状を有し、前記第1層外面の静止域は前記第2層内面の静止域より小さい、物品。
【請求項33】
前記物品が医療装置である、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記物品が拡張バルーンであり、前記膜がバルーン壁である、請求項32に記載の物品。
【請求項35】
前記バルーン壁が略同一平面内に位置する内面および外面を有し、前記同一の広がりを有する区域は、内側バルーン壁表面と外側バルーン壁表面との間の領域であり、前記表面と略同一平面内にある、請求項34に記載の拡張バルーン。
【請求項36】
前記同一の広がりを有する区域がバルーン壁全体より小さい範囲の領域である、請求項35に記載の拡張バルーン。
【請求項37】
前記層の一方は、バルーン壁内に封入される前に静止形状から伸長されたエラストマーバンドである、請求項36に記載の拡張バルーン。
【請求項38】
前記同一の広がりを有する区域が実質的にバルーン壁全体にわたって延びている、請求項35に記載の拡張バルーン。
【請求項39】
物品を形成する方法であって、
(a)物品表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体成形型を形成する工程と、
(b)成形型上に放射線硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した放射線硬化性組成物の少なくとも一部を照射して硬化させる工程と、
(d)成形型材料を流動化して成形型を除去し、光硬化組成物からなる物品の少なくとも一部を得る工程とを含む方法。
【請求項40】
放射線硬化性組成物が約400〜約150nmの範囲の光エネルギーで光硬化可能である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
硬化性組成物が、ポリイミド、ポリエステルまたはポリアミドを形成するように光硬化可能である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
硬化性組成物が、少なくとも1種の芳香族2,5−ジアルキル−1,4−ジケトンと、2個以上のマレイミド基、(メタ)アクリレート基、および(メタ)アクリルアミド基のいずれかを有する少なくとも1種の化合物とを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
光硬化性組成物が、2個以上のマレイミド基を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
光硬化組成物が、下記一般式で表されるポリマーであり、
【化1】
前記式中、Xは炭素結合オルガノ基であり、Arは任意で置換された芳香族部分であり、nは正数である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
硬化性組成物は物品の一部上においてその配合が変更されている、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
物品を形成する方法であって、
(a)物品表面を規定する氷からなる固体成形型を作成する工程と、
(b)氷成形型上に硬化性組成物層を付着させる工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)氷を溶解することによって成形型を除去し、硬化組成物からなる物品の少なくとも一部を得る工程とを有する方法。
【請求項47】
硬化性組成物は物品の少なくとも一部上でその配合が変更されている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
物品を形成する方法であって、
(a)物品表面を規定する流動化可能な組成物からなる固体成形型を作成する工程と、
(b)成形型上に硬化性組成物層を付着させる工程であって、硬化性組成物層は物品の一部上でその配合が変更されている工程と、
(c)付着した硬化性組成物の少なくとも一部を硬化させる工程と、
(d)成形型材料を流動化させて成形型を除去し、硬化組成物からなる物品の少なくとも一部を得る工程とを含む方法。
【請求項49】
ポリイミド形成組成物を50℃以下の温度で硬化させることによって得られるポリイミド材料製の医療装置。
【請求項50】
ポリイミド材料が、下記一般式で表されるポリマーであり、
【化2】
前記式中、Xは炭素結合オルガノ基であり、Arは任意で置換された芳香族部分であり、nは正数である、請求項49に記載の医療装置。
【請求項51】
ポリイミド形成組成物が、約400〜約150nmの範囲の光エネルギーを照射することにより硬化可能である、請求項49に記載の医療装置。
【請求項52】
医療装置および医療装置の一部のいずれかのための成形型であって、該成形型の上に前記医療装置が直接形成され、該成形型は100℃以下の温度で流動化し得る材料からなる
、成形型。
【請求項53】
前記材料は50℃以下の温度で流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項54】
前記材料は100℃以下の温度で溶融することにより流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項55】
前記材料は50℃以下の温度で溶融することにより流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項56】
前記材料が氷である、請求項52に記載の成形型。
【請求項57】
前記材料はワックスである、請求項52に記載の成形型。
【請求項58】
前記材料は水または有機溶媒に溶解することによって流動化可能である、請求項52に記載の成形型。
【請求項59】
前記材料はポリビニルアルコールを含む、請求項58に記載の成形型。
【請求項60】
成形型材料を流動化する条件下では流動化不能であるが、成形型が流動化された後で成形された装置から除去可能である支持構造が埋設されている、請求項52に記載の成形型。
【請求項61】
隣接する装置容積を規定する請求項52に記載の成形型であって、成形型の内部には複数の繊維が埋設されており、前記繊維は、成形型材料を流動化する条件下では流動化不能であり、成形型上で装置が形成され、成形型が流動化されたときに装置構造内に組み込まれた状態になるように、装置容積内に突出している、成形型。
【請求項62】
カテーテル、ステント、カテーテルバルーン、およびそれらの一部のいずれかを形成するためのものである、請求項52に記載の成形型。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−535418(P2007−535418A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520383(P2006−520383)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/022999
【国際公開番号】WO2005/007375
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/022999
【国際公開番号】WO2005/007375
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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