説明

半導体ウェーハの洗浄方法および半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法

【課題】フッ酸と有機酸との混合液中のフッ酸濃度および有機酸濃度の双方をそれぞれ別々に測定する方法を提供し、フッ酸と有機酸との混合液を用いて複数枚の半導体ウェーハに対し洗浄処理を行った場合におけるウェーハ表面等への微粒子や金属不純物の残留を安定して抑制する。
【解決手段】フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法であって、半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれるフッ酸の濃度を求めるフッ酸濃度測定工程と、半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルを測定し、紫外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれる有機酸の濃度を求める有機酸濃度測定工程とを含むことを特徴とする半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法である。また、その濃度測定方法を用いた半導体ウェーハの洗浄方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの洗浄方法および半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハを洗浄する方法として、過酸化水素と水酸化アンモニウムとの混合液(所謂SC−1溶液)を用いて半導体ウェーハを酸化還元する酸化還元工程と、酸化液を用いて半導体ウェーハを酸化する酸化工程と、有機酸若しくは有機酸塩とフッ酸(フッ化水素)との混合液を用いて半導体ウェーハを還元する還元工程とを含む半導体ウェーハの洗浄方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、上記特許文献1に記載の洗浄方法では、まず、酸化還元工程において、水酸化アンモニウムのエッチング作用により微粒子および有機物がウェーハ表面から除去されると共に、ウェーハ表面の微小ダメージが除去される。次に、酸化工程において、ウェーハ表面に形成される酸化膜中に金属不純物および微粒子が取り込まれる。更に、還元工程において、金属不純物および微粒子が取り込まれた酸化膜をフッ酸が溶解することで、ウェーハ表面から金属不純物および微粒子が離脱させられる。また、有機酸若しくは有機酸塩由来の有機酸イオンが、ウェーハ表面から離脱した金属不純物と負電荷を帯びた錯イオンを形成すると共にウェーハ表面に吸着することで、錯塩とウェーハ表面に吸着した有機酸イオンとの電気的反発により金属不純物のウェーハ表面への再付着が防止される。
よって、特許文献1に記載の洗浄方法によれば、半導体ウェーハの表面に付着している有機物、金属不純物および微粒子を少ない工程数で良好に除去することができる。
【0004】
ここで、一般に、半導体ウェーハ洗浄液を貯留したウェーハ洗浄槽中で複数枚の半導体ウェーハを連続的に洗浄する際には、効果的且つ安定的に洗浄を行う観点から、ウェーハの洗浄に使用する半導体ウェーハ洗浄液の濃度を測定し、半導体ウェーハ洗浄液濃度を所定の範囲内に維持しつつ洗浄が実施される。
【0005】
そして、特に、特許文献1に記載の洗浄方法の還元工程では、フッ酸の濃度を所定の範囲内に維持して酸化膜を効率的に溶解させつつ、有機酸または有機酸塩(以下、有機酸と有機酸塩とを併せて単に「有機酸」という。)の濃度を所定の範囲内に維持してウェーハ表面への金属イオンの再付着を確実に防止する必要がある。
【0006】
しかし、従来、有機酸のみを含有する有機酸水溶液中の有機酸濃度を近赤外分光分析計の吸光度スペクトルから測定する方法や(例えば、特許文献2参照)、エチレングリコール等の水溶性の有機性溶液を50質量%超含む有機溶液中のフッ酸濃度を1800〜2600nmの波長範囲での近赤外吸収スペクトルから測定する方法(例えば、特許文献3参照)は知られているものの、フッ酸と有機酸との混合液中のフッ酸濃度および有機酸濃度の双方をそれぞれ別々に測定する方法は確立されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−138198号公報
【特許文献2】特開2004−186389号公報
【特許文献3】特開2001−66251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、近赤外吸収スペクトルを用いた既知の濃度測定方法では、フッ酸と有機酸との混合液からなる半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度の双方を分離測定して制御することができない。このため、上記従来の半導体ウェーハの洗浄方法では、濃度既知のフッ酸溶液と濃度既知の有機酸溶液とを混合して所定のフッ酸濃度および有機酸濃度とした混合液を半導体ウェーハ洗浄液として用いて半導体ウェーハの洗浄を行っていた。そのため、上記洗浄方法では、複数枚の半導体ウェーハを連続して洗浄すると、半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度が変動(低下)して、半導体ウェーハに対し十分な洗浄効果を発揮し得なくなる、即ち、半導体ウェーハ表面等から微粒子や金属不純物を十分に除去できなくなることがあった。
【0009】
そこで、本発明は、フッ酸と有機酸との双方を含む半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度を測定する方法およびその濃度測定方法を用いた半導体ウェーハの洗浄方法を提供して、フッ酸と有機酸との混合液を用いて複数枚のウェーハに対し洗浄処理を行った場合におけるウェーハ表面等への微粒子や金属不純物の残留を安定して抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度の双方を正確に測定することを目的として、鋭意研究を行った。そして、半導体ウェーハ洗浄液ではフッ酸濃度および有機酸濃度が比較的低いので、赤外領域の吸収スペクトルを用いてフッ酸濃度を測定し、紫外領域の吸収スペクトルを用いて有機酸濃度を測定することにより、半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度の双方を正確に測定できることを見出し、本発明を完成させた
【0011】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法は、フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液中に半導体ウェーハを浸漬し、該半導体ウェーハを洗浄するウェーハ洗浄工程と、前記半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれるフッ酸の濃度を求めるフッ酸濃度測定工程と、前記半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルを測定し、該紫外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれる有機酸の濃度を求める有機酸濃度測定工程と、前記フッ酸濃度測定工程および前記有機酸濃度測定工程で測定したフッ酸濃度および有機酸濃度に基づき、前記半導体ウェーハ洗浄液中に純水、フッ酸および有機酸の何れか1種以上を添加して半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を所定の範囲内に制御する濃度制御工程とを含むことを特徴とする。このように、フッ酸濃度測定工程で赤外吸収スペクトルからフッ酸濃度を測定し、有機酸濃度測定工程で紫外吸収スペクトルから有機酸濃度を測定すれば、フッ酸濃度と有機酸濃度との双方を別々かつ正確に測定することができる。そして、濃度制御工程で、測定したフッ酸濃度および有機酸濃度に基づいて半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を制御すれば、適当な濃度の半導体ウェーハ洗浄液を用いて複数枚のウェーハを洗浄処理し、ウェーハ表面等への微粒子や金属不純物の残留を安定して抑制することができる。
【0012】
ここで、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法は、前記フッ酸濃度測定工程において、前記赤外吸収スペクトルを1〜3μmの波長範囲内で測定し、前記有機酸濃度測定工程において、前記紫外吸収スペクトルを200〜400nmの波長範囲内で測定することが好ましい。1〜3μmの波長範囲内で測定した赤外吸収スペクトルを用いればフッ酸濃度を更に正確に測定することができ、また、200〜400nmの波長範囲内で測定した紫外吸収スペクトルを用いれば有機酸濃度を更に正確に測定することができるからである。
【0013】
また、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法は、前記濃度制御工程で、前記フッ酸濃度を0.01〜0.1質量%の範囲内に制御し、前記有機酸濃度を0.005〜0.1質量%の範囲内に制御することが好ましい。フッ酸濃度を0.01〜0.1質量%の範囲内に制御し、且つ、有機酸濃度を0.005〜0.1質量%の範囲内に制御すれば、半導体ウェーハ表面等から微粒子や金属不純物を十分に除去することができるからである。
【0014】
更に、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法は、前記有機酸が、シュウ酸、クエン酸およびそれらの塩の何れか1種以上であることが好ましい。シュウ酸、クエン酸およびそれらの塩は、半導体ウェーハ洗浄液に用いる有機酸として特に適しているからである。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法は、フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法であって、前記半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれるフッ酸の濃度を求めるフッ酸濃度測定工程と、前記半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルを測定し、該紫外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれる有機酸の濃度を求める有機酸濃度測定工程とを含むことを特徴とする。このように、フッ酸濃度測定工程で赤外吸収スペクトルからフッ酸濃度を測定し、有機酸濃度測定工程で紫外吸収スペクトルから有機酸濃度を測定すれば、フッ酸濃度と有機酸濃度との双方を別々かつ正確に測定することができる。
【0016】
ここで、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法は、前記フッ酸濃度測定工程において、前記赤外吸収スペクトルを1〜3μmの波長範囲内で測定し、前記有機酸濃度測定工程において、前記紫外吸収スペクトルを200〜400nmの波長範囲内で測定することが好ましい。1〜3μmの波長範囲内で測定した赤外吸収スペクトルを用いればフッ酸濃度を更に正確に測定することができ、また、200〜400nmの波長範囲内で測定した紫外吸収スペクトルを用いれば有機酸濃度を更に正確に測定することができるからである。
【0017】
また、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法は、前記フッ酸濃度測定工程の後に前記有機酸濃度測定工程を行うことが好ましい。フッ酸濃度測定工程を先に行えば、有機酸濃度測定工程において紫外吸収スペクトルを測定する際に半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸が多少分解したとしても、有機酸の分解に起因する測定誤差の発生を抑制することができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法によれば、フッ酸と有機酸との双方を含む半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度を測定することができる。また、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法によれば、フッ酸と有機酸との混合液を用いて複数枚のウェーハに対して洗浄処理を行った場合におけるウェーハ表面等への微粒子や金属不純物の残留を安定して抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従う代表的な半導体ウェーハの洗浄方法を適用した半導体ウェーハ洗浄プロセスを示すフローチャートである。
【図2】図1に示す半導体ウェーハ洗浄プロセスで使用し得る半導体ウェーハ洗浄装置の一例の構成を示す説明図である。
【図3】複数枚の半導体ウェーハを連続洗浄した際の半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸およびシュウ酸濃度の経時変化と、半導体ウェーハの表面の微粒子数の経時変化との関係を示すグラフであり、(a)は実施例の洗浄方法で半導体ウェーハを連続洗浄した場合のグラフを示し、(b)は比較例の洗浄方法で半導体ウェーハを連続洗浄した場合のグラフを示す。
【図4】(a)は半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度のみを変化させた場合の赤外吸収スペクトルおよび紫外吸収スペクトルの吸光度の変化を示すグラフであり、(b)は半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度のみを変化させた場合の赤外吸収スペクトルおよび紫外吸収スペクトルの吸光度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ここで、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法および半導体ウェーハの洗浄方法は、フッ酸濃度および有機酸濃度が比較的低い(例えば、0.1質量%以下である)半導体ウェーハ洗浄液では、赤外領域の吸収スペクトルを用いてフッ酸濃度を測定し、紫外領域の吸収スペクトルを用いて有機酸濃度を測定することにより、半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度の双方を別々かつ正確に測定することができるという本発明者の知見に基づきなされたものである。
【0021】
より詳細に説明すると、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法および半導体ウェーハの洗浄方法は、以下に記載する本発明者の知見(1)〜(3)に基づきなされたものである。
(1)図4(a)に半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度を一定(0.055質量%)にした状態で液中の有機酸(シュウ酸)濃度を変化させた場合の赤外吸収スペクトルおよび紫外吸収スペクトルの吸光度の変化を示すように、半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度が変化した場合、紫外吸収スペクトルの吸光度は有機酸濃度に比例して変化するが、赤外吸収スペクトルの吸光度は殆ど変化しない。
(2)図4(b)に半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸(シュウ酸)濃度を一定(0.01質量%)にした状態で液中のフッ酸濃度を変化させた場合の赤外吸収スペクトルおよび紫外吸収スペクトルの吸光度の変化を示すように、半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度が変化した場合、赤外吸収スペクトルの吸光度はフッ酸濃度に比例して変化するが、紫外吸収スペクトルの吸光度は殆ど変化しない。
(3)従って、フッ酸と有機酸との混合液からなる半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルの測定結果に変化があれば、それは有機酸濃度が変化したことを意味するので、紫外吸収スペクトルを測定することで半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度を求めることができる。また、半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルの測定結果に変化があれば、それは液中のフッ酸濃度が変化したことを意味するので、赤外吸収スペクトルを測定することで半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度を求めることができる。
なお、液中の有機酸(シュウ酸)濃度を変化させた際に赤外吸収スペクトルの吸光度が殆ど変化しないのは、明らかではないが、半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度が比較的低濃度であるからと推察されている。
【0022】
そして、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法は、フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定に用いることができる。また、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法は、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハの表面の洗浄に用いることができる。
【0023】
<半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法>
本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法は、フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度の測定に用いられ、半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルからフッ酸の濃度を求めるフッ酸濃度測定工程と、半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルを測定し、該紫外吸収スペクトルから有機酸の濃度を求める有機酸濃度測定工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
ここで、測定対象となる半導体ウェーハ洗浄液は、半導体ウェーハの洗浄に用いられるものである。そして、半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度は、特に限定されることは無いが、フッ酸濃度は例えば0.1質量%以下の範囲内であり、有機酸濃度は例えば0.1質量%以下の範囲内である。
【0025】
フッ酸濃度測定工程では、まず、既知の赤外吸収スペクトル測定装置を用いて半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルを測定する。次に、得られた赤外吸収スペクトルの変化からフッ酸濃度を求める。具体的には、濃度既知の複数の標準溶液の赤外吸収スペクトルを測定し、フッ酸分子に対応する吸収ピークの変化量に基づいて検量線を作成し、作成した検量線を用いてフッ酸濃度を算出する。なお、赤外吸収スペクトルを測定する際に用いる赤外線の波長範囲は、例えば1〜3μmとすることができる。
【0026】
なお、このフッ酸濃度測定工程におけるフッ酸濃度の測定は、以下のようにして、赤外吸収スペクトルを利用して液中の成分(フッ酸を含む)濃度を測定する近赤外液体成分濃度計を用いて実施しても良い。
(1)まず、半導体ウェーハ洗浄液に含まれる有機酸と同一の有機酸を添加した濃度既知の標準フッ酸溶液を近赤外液体成分濃度計で測定し、標準フッ酸溶液中のフッ酸濃度と、近赤外液体成分濃度計に表示されるフッ酸濃度との関係から検量線を作成する。
(2)次に、半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度を近赤外液体成分濃度計で測定する。
(3)最後に、近赤外液体成分濃度計に表示されたフッ酸濃度と、上記(1)で作成した検量線とを用いて、半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度を算出する。
【0027】
なお、標準フッ酸溶液を用いて検量線を作成する際に標準フッ酸溶液へ添加する有機酸の量は、測定対象の半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度に影響されることなく、例えば0.001〜0.1質量%とすることができる。
【0028】
有機酸濃度測定工程では、まず、既知の紫外吸収スペクトル測定装置を用いて半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルを測定する。次に、得られた紫外吸収スペクトルの変化から有機酸濃度を求める。具体的には、濃度既知の複数の標準溶液の紫外吸収スペクトルを測定し、有機酸分子に対応する吸収ピークの変化量に基づいて検量線を作成し、作成した検量線を用いて有機酸濃度を算出する。なお、紫外吸収スペクトルを測定する際に用いる紫外線の波長範囲は、例えば200〜400nmとすることができる。
【0029】
ここで、この有機酸濃度測定工程で濃度を測定できる有機酸としては、特に限定されることなく、分子内にカルボキシル基を有する有機酸、例えばシュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、マレイン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸およびフマル酸からなる群より選ばれた1種以上の有機酸またはその塩が挙げられる。
【0030】
なお、この有機酸濃度測定工程では、紫外吸収スペクトルは、250〜300nmの波長範囲内で測定することが好ましい。紫外吸収スペクトルを測定する波長範囲を250nm以上300nm以下とすれば、紫外吸収スペクトル測定時の半導体ウェーハ洗浄液に対する紫外線の照射に起因する有機酸の分解を抑制し、且つ、正確な有機酸濃度を測定することができるからである。因みに、230nm以下の波長範囲で紫外吸収スペクトルを測定すると、紫外線の照射に起因する有機酸の分解が起こりやすく、長波長側の波長範囲で紫外吸収スペクトルを測定すると、フッ酸との分離測定が困難になり易い。
【0031】
また、紫外吸収スペクトルを測定する際に半導体ウェーハ洗浄液に照射する紫外線の強度(紫外線照射強度)は、100mW・s/cm以下とすることが好ましい。紫外線照射強度を100mW・s/cm以下とすれば、紫外吸収スペクトル測定時の半導体ウェーハ洗浄液に対する紫外線の照射に起因する有機酸の分解を抑制し、より正確な有機酸濃度を測定することができるからである。
【0032】
なお、この有機酸濃度測定工程における有機酸濃度の測定は、以下のようにして、吸光度計で紫外吸光スペクトルを測定して実施しても良い。
(4)まず、フッ酸を添加した濃度既知の標準有機酸溶液の紫外吸光スペクトルを吸光度計で測定し、標準有機酸溶液中の有機酸濃度と、有機酸分子に対応する吸収ピークの吸光度との関係から検量線を作成する。
(5)次に、半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸光スペクトルを吸光度計で測定する。
(6)最後に、(5)で測定した紫外吸光スペクトルの有機酸分子に対応する吸収ピークの吸光度と、上記(4)で作成した検量線とを用いて、半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度を算出する。
因みに、標準有機酸溶液を用いて検量線を作成する際に標準有機酸溶液へ添加するフッ酸の量は、測定対象の半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度に影響されることなく、例えば0.001〜0.1質量%とすることができる。
【0033】
なお、フッ酸濃度測定工程と有機酸濃度測定工程の実施順序は特に限定されることはないが、有機酸濃度測定工程で紫外吸収スペクトルを測定する際に半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸が分解し、フッ酸濃度測定工程で測定誤差が発生するのを抑制する観点からは、フッ酸濃度測定工程を先に実施することが好ましい。
【0034】
そして、上述した半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法によれば、フッ酸濃度測定工程において赤外吸収スペクトルからフッ酸濃度を測定し、有機酸濃度測定工程において紫外吸収スペクトルから有機酸濃度を測定しているので、フッ酸濃度と有機酸濃度との双方を別々に、且つ、正確に測定することができる。
【0035】
<半導体ウェーハの洗浄方法>
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法は、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハの洗浄に用いられ、半導体ウェーハを浸漬して洗浄する半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を上述した半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法で測定し、所定の範囲内に制御することを特徴とする。
【0036】
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法の一例は、図1に示すような、SC−1溶液を用いて半導体ウェーハを酸化還元する酸化還元工程(S1)と、酸化還元した半導体ウェーハを酸化液で酸化する第1酸化工程(S2)と、酸化した半導体ウェーハを有機酸とフッ酸との混合液(半導体ウェーハ洗浄液)で還元する還元工程(S3)と、還元した半導体ウェーハをリンス液でリンスするリンス工程(S4)と、リンスした半導体ウェーハを酸化液で再び酸化する第2酸化工程(S5)とを含む半導体ウェーハ洗浄プロセスの還元工程(S3)等で用いることができる。
【0037】
ここで、この一例の半導体ウェーハ洗浄プロセスの酸化還元工程(S1)、第1酸化工程(S2)、リンス工程(S4)および第2酸化工程(S5)は、例えば特許文献1(特開2000−138198号公報)に記載の技術を用いて実施する。
【0038】
具体的には、酸化還元工程(S1)では、過酸化水素と水酸化アンモニウムとの混合液からなるSC−1溶液を用いて半導体ウェーハの表面から微小ダメージ、微粒子および有機物を除去する。また、第1酸化工程(S2)では、オゾン水、硝酸、過酸化水素水等の酸化液を用いて半導体ウェーハの表面に酸化膜を形成し、後段の還元工程(S3)において金属不純物および微粒子が半導体ウェーハの表面から離脱し易くなるようにする。更に、リンス工程(S4)では、有機酸と、任意にフッ酸とを含むリンス液を用いて、半導体ウェーハの表面に残留している、後に詳細に説明する還元工程(S3)では除去しきれなかった金属不純物および微粒子を除去する。そして、第2酸化工程(S5)では、オゾン水、硝酸、過酸化水素水等の酸化液を用いて、Cuや残留有機物等を除去すると共に、半導体ウェーハの表面に酸化膜を再び形成してウェーハ表面を酸化膜で保護する。
【0039】
また、この一例の半導体ウェーハ洗浄プロセスの還元工程(S3)では、フッ酸と有機酸との混合液からなる半導体ウェーハ洗浄液中に第1酸化工程(S2)で酸化膜を形成した半導体ウェーハを浸漬することにより、フッ酸を用いて酸化膜を溶解し、酸化膜に取り込まれた金属不純物および微粒子を半導体ウェーハの表面から離脱させる。更に、還元工程(S3)では、有機酸と、半導体ウェーハの表面から離脱した金属不純物とが負電荷を帯びた金属錯イオンを形成し、且つ、有機酸が半導体ウェーハの表面に吸着して半導体ウェーハの表面に負電荷を帯びさせることにより、離脱した金属不純物および微粒子の半導体ウェーハ表面への再付着を防止する。なお、半導体ウェーハ洗浄液の有機酸としては、特に限定されることなく、分子内にカルボキシル基を有する有機酸、例えばシュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、マレイン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸およびフマル酸からなる群より選ばれた1種以上の有機酸またはその塩を用いることができる。
【0040】
ここで、この還元工程(S3)では、半導体ウェーハの洗浄に伴い、半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度が低く(例えば0.01質量%未満に)なると、酸化膜の溶解が十分に進まず、金属不純物および微粒子が十分に離脱しなくなる場合がある。また、フッ酸濃度が高く(例えば0.1質量%超に)なると、半導体ウェーハ洗浄液が強酸性になり、有機酸の解離が抑制されて金属不純物の錯化が十分に起こらなくなると共に、微粒子の表面電位がゼロに近くなって、金属不純物および微粒子の半導体ウェーハの表面への再付着が起こりやすくなる場合がある。更に、半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度が低く(例えば0.005質量%未満に)なると、金属不純物の錯化が十分に起こらなくなって、金属不純物の半導体ウェーハの表面への再付着が起こりやすくなる場合がある。また、半導体ウェーハ洗浄液中の有機酸濃度が高く(例えば0.1質量%超に)なると、有機酸が半導体ウェーハ表面に付着したまま残留する場合がある。
【0041】
そのため、この還元工程(S3)では、半導体ウェーハ洗浄液中に半導体ウェーハを浸漬し、該半導体ウェーハを還元して洗浄する際に(ウェーハ洗浄工程)、上述した本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法を用いて半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を測定し(フッ酸濃度測定工程および有機酸濃度測定工程からなる濃度測定工程(S31))、測定したフッ酸濃度および有機酸濃度に基づき、半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を制御する(濃度制御工程(S32))。
【0042】
具体的には、半導体ウェーハ洗浄液を断続的にサンプリングして半導体ウェーハ洗浄液の濃度を断続的に測定し、或いは、半導体ウェーハ洗浄液の濃度をオンラインで連続的に測定して、フッ酸濃度が0.01質量%を下回った場合には半導体ウェーハ洗浄液に高濃度フッ酸溶液を添加し、有機酸濃度が0.005質量%を下回った場合には半導体ウェーハ洗浄液に高濃度有機酸溶液を添加し、フッ酸濃度および有機酸濃度が0.1質量%を上回った場合には半導体ウェーハ洗浄液に純水を添加して、半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を所定の範囲内に制御する。
【0043】
そして、この一例の半導体ウェーハの洗浄プロセスでは、特に還元工程(S3)において、フッ酸および有機酸の双方の濃度を正確に測定し、フッ酸および有機酸の濃度を所定の範囲内に制御した条件下で半導体ウェーハを洗浄して、半導体ウェーハ表面等への微粒子や金属不純物の残留を安定して抑制することができる。なお、フッ酸濃度および有機酸濃度を更に正確に測定する観点からは、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法では、赤外吸収スペクトルを1〜3μmの波長範囲内で測定し、紫外吸収スペクトルを200〜400nmの波長範囲内で測定することが好ましい。
【0044】
<半導体ウェーハの洗浄装置>
ここで、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法の一例の半導体ウェーハ洗浄プロセスの還元工程(S3)は、例えば以下のような半導体ウェーハ洗浄装置を用いて実施することができる。
【0045】
図2に示すように、この一例のウェーハ洗浄装置1は、半導体ウェーハ洗浄液を貯留するウェーハ洗浄槽20と、ウェーハ洗浄槽20中の半導体ウェーハ洗浄液をサンプリングした後、該サンプリングした半導体ウェーハ洗浄液を、フィルター32を通して再びウェーハ洗浄槽20へと戻すサンプリングポンプ31と、サンプリングポンプ31でサンプリングした半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度を測定するフッ酸濃度測定手段としての赤外吸収スペクトル測定装置40と、赤外吸収スペクトル測定装置40でフッ酸濃度を測定した半導体ウェーハ洗浄液の有機酸濃度を測定する有機酸濃度測定手段としての紫外吸収スペクトル測定装置50とを備えている。
【0046】
また、このウェーハ洗浄装置1は、純水供給槽71からウェーハ洗浄槽20へ純水を供給する純水供給ポンプ72と、フッ酸溶液供給槽81からウェーハ洗浄槽20へ高濃度フッ酸溶液を供給するフッ酸供給ポンプ82と、有機酸溶液供給槽91からウェーハ洗浄槽20へ高濃度有機酸溶液を供給する有機酸供給ポンプ92と、赤外吸収スペクトル測定装置40で測定したフッ酸濃度および紫外吸収スペクトル測定装置50で測定した有機酸濃度に基づき、ウェーハ洗浄槽20内の半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸および有機酸濃度が所定の範囲内になるように純水供給ポンプ72、フッ酸供給ポンプ82および有機酸供給ポンプ92の動作を制御する制御装置(PC)60とを備えている。
【0047】
そして、ウェーハ洗浄装置1では、制御装置60、純水供給ポンプ72、フッ酸供給ポンプ82および有機酸供給ポンプ92が、半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を所定の範囲内、例えばフッ酸濃度を0.01〜0.1質量%の範囲内に制御し、有機酸濃度を0.005〜0.1質量%の範囲内に制御する濃度制御手段として機能する。具体的には、ウェーハ洗浄装置1では、フッ酸濃度が0.01質量%を下回った場合にはフッ酸供給ポンプ82が高濃度フッ酸溶液をウェーハ洗浄槽20に供給し、有機酸濃度が0.005質量%を下回った場合には有機酸供給ポンプ92が高濃度有機酸溶液をウェーハ洗浄槽20に供給し、フッ酸濃度および有機酸濃度が0.1質量%を上回った場合には純水供給ポンプ72が純水をウェーハ洗浄槽20に供給して、半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を所定の範囲内に制御する。なお、ウェーハ洗浄槽20中の半導体ウェーハ洗浄液の量を一定に保つために、高濃度フッ酸溶液、高濃度有機酸溶液または純水が供給された場合には、ウェーハ洗浄槽20中の半導体ウェーハ洗浄液の一部は排出される。
【0048】
ここで、赤外吸収スペクトル測定装置40は、例えば1〜3μmの波長範囲内で赤外吸収スペクトルを測定し、得られた赤外吸収スペクトルからフッ酸濃度を求める装置である。
【0049】
また、紫外吸収スペクトル測定装置50は、例えば200〜400nmの波長範囲内で紫外吸収スペクトルを測定し、得られた紫外吸収スペクトルから有機酸濃度を求める装置である。
【0050】
そして、この一例の半導体ウェーハの洗浄装置では、フッ酸および有機酸の濃度の双方を正確に測定し、半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸および有機酸の濃度を所定の範囲内に制御した条件下で半導体ウェーハを洗浄して、半導体ウェーハ表面等への微粒子や金属不純物の残留を安定して抑制することができる。
【0051】
なお、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法および半導体ウェーハの洗浄方法は、上記一例に限定されることはなく、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法および半導体ウェーハの洗浄方法には、適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1〜2、参考例1)
フッ酸を0.06質量%含有する標準シュウ酸溶液と、紫外吸収スペクトル測定装置(測定波長範囲:200〜400nm)とを用いてシュウ酸濃度測定用の検量線を作成した。また、シュウ酸を0.05質量%含有する標準フッ酸溶液と、赤外吸収スペクトル測定装置(測定波長範囲:1〜3μm)とを用いてフッ酸濃度測定用の検量線を作成した。
そして、表1に示す濃度既知の半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を本発明の濃度測定方法に従い測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1の実施例1〜2より、本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法によれば、フッ酸と有機酸との双方を含む半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度を正確に測定し得ることが分かる。
【0056】
(実施例3)
図2に示す装置を用いて、半導体ウェーハ250枚を連続して洗浄した。なお、半導体ウェーハ洗浄液の濃度は、フッ酸が0.050〜0.055質量%、シュウ酸が0.008〜0.010質量%となるように制御した。
そして、洗浄後の半導体ウェーハ表面のサイズ50nm以上の微粒子数を表面検査装置(KLA−Tencor社製:SP−2)で測定した。また、半導体ウェーハ表面のAl量を、ウェーハ表層部をフッ酸と過酸化水素との混合酸溶液で溶解し、その溶解液をICP−MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometer)で分析することにより求めた。半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸およびシュウ酸濃度の経時変化および洗浄後の半導体ウェーハ表面の微粒子数の経時変化を図3(a)に示す。また、微粒子数および半導体ウェーハ表面のAl量の平均値を表2に示す。
【0057】
(比較例1)
半導体ウェーハ洗浄液を用いて半導体ウェーハ250枚を連続して洗浄した。なお、半導体ウェーハ洗浄液の濃度は制御しなかった。
そして、洗浄後の半導体ウェーハ表面の微粒子数を実施例3と同様の方法で測定した。半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸およびシュウ酸濃度の経時変化および洗浄後の半導体ウェーハ表面の微粒子数の経時変化を図3(b)に示す。
【0058】
図3(a)より、実施例3では、フッ酸と有機酸との混合液を用いた洗浄を行った後のウェーハ表面等への微粒子の残留を安定して抑制し得ることが分かる。一方、図3(b)より、比較例1では、フッ酸濃度の低下に伴いウェーハ表面等への微粒子の残留が増加していることが分かる。
【0059】
(実施例4〜8)
半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度およびシュウ酸濃度が表2に示す濃度となるように制御した以外は、実施例3と同様にして半導体ウェーハ250枚を連続して洗浄した。
そして、洗浄後の半導体ウェーハ表面の微粒子数および半導体ウェーハ表面のAl量を実施例3と同様の方法で測定し、微粒子数および半導体ウェーハ表面のAl量の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2より、半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度を0.050〜0.055質量%、シュウ酸濃度を0.008〜0.01質量%とした実施例3では、ウェーハ表面への微粒子や金属不純物の残留を特に良好に抑制できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法によれば、フッ酸と有機酸との双方を含む半導体ウェーハ洗浄液中のフッ酸濃度および有機酸濃度を測定することができる。また、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法によれば、フッ酸と有機酸との混合液を用いて洗浄処理を行った場合におけるウェーハ表面等への微粒子や金属不純物の残留を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ウェーハ洗浄装置
20 ウェーハ洗浄槽
31 サンプリングポンプ
32 フィルター
40 赤外吸収スペクトル測定装置
50 紫外吸収スペクトル測定装置
60 制御装置
71 純水供給槽
72 純水供給ポンプ
81 フッ酸溶液供給槽
82 フッ酸供給ポンプ
91 有機酸溶液供給槽
92 有機酸供給ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液中に半導体ウェーハを浸漬し、該半導体ウェーハを洗浄するウェーハ洗浄工程と、
前記半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれるフッ酸の濃度を求めるフッ酸濃度測定工程と、
前記半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルを測定し、該紫外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれる有機酸の濃度を求める有機酸濃度測定工程と、
前記フッ酸濃度測定工程および前記有機酸濃度測定工程で測定したフッ酸濃度および有機酸濃度に基づき、前記半導体ウェーハ洗浄液中に純水、フッ酸および有機酸の何れか1種以上を添加して半導体ウェーハ洗浄液のフッ酸濃度および有機酸濃度を所定の範囲内に制御する濃度制御工程と、
を含むことを特徴とする、半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記フッ酸濃度測定工程において、前記赤外吸収スペクトルを1〜3μmの波長範囲内で測定し、
前記有機酸濃度測定工程において、前記紫外吸収スペクトルを200〜400nmの波長範囲内で測定することを特徴とする、請求項1に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記濃度制御工程で、前記フッ酸濃度を0.01〜0.1質量%の範囲内に制御し、前記有機酸濃度を0.005〜0.1質量%の範囲内に制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記有機酸が、シュウ酸、クエン酸およびそれらの塩の何れか1種以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
フッ酸と有機酸とを含有する半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法であって、
前記半導体ウェーハ洗浄液の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれるフッ酸の濃度を求めるフッ酸濃度測定工程と、
前記半導体ウェーハ洗浄液の紫外吸収スペクトルを測定し、該紫外吸収スペクトルから半導体ウェーハ洗浄液中に含まれる有機酸の濃度を求める有機酸濃度測定工程と、
を含むことを特徴とする、半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法。
【請求項6】
前記フッ酸濃度測定工程において、前記赤外吸収スペクトルを1〜3μmの波長範囲内で測定し、
前記有機酸濃度測定工程において、前記紫外吸収スペクトルを200〜400nmの波長範囲内で測定することを特徴とする、請求項5に記載の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法。
【請求項7】
前記フッ酸濃度測定工程の後に前記有機酸濃度測定工程を行うことを特徴とする、請求項5または6に記載の半導体ウェーハ洗浄液の濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94715(P2012−94715A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241382(P2010−241382)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】