説明

半導体チップの樹脂封止方法及び半導体チップ樹脂封止用離型フィルム

【課題】 離型フィルムにより端子等の露出を好適に行いながら、端子等の間に樹脂を良好に充填することができる半導体チップの樹脂封止方法及び半導体チップ樹脂封止用離型フィルムを提供する。
【解決手段】 端子22または電極が配設された被封止面と金型4内面との間に離型フィルムFを介在させつつ、半導体チップ2を配置した金型内に樹脂を注入・硬化させる半導体チップの樹脂封止方法において、前記離型フィルムFとして、少なくとも厚さ方向の一部分が多孔質層11である複層フィルムを使用する事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、端子または電極が配設された被封止面と金型内面との間に離型フィルムを介在させつつ、半導体チップを配置した金型内に樹脂を注入・硬化させる半導体チップの樹脂封止方法、及びそれに用いる半導体チップ樹脂封止用離型フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、LSIの実装技術においてCSP (Chip Scale/SizePackage) 技術が注目されている。この技術の内、QFN (Quad Flat Non−leaded package) 、SON (Small Outline Non−leaded package) に代表されるリード端子がパッケージ内部に取りこまれた形態のパッケージについては、端子が封止樹脂面より露出した形状となる。またこれらのパッケージに関しては小型化が要求される為、封止樹脂の使用量もより少なくする技術開発が進んでおり、それに伴い封止性の信頼性を向上さるため封止樹脂中に配合される離型剤量を減少させる傾向が見られる。このため、端子を確実に露出させる事と、樹脂と金型との離型性を確保する対策として、端子等が配設された被封止面と金型内面との間に離型フィルムを介在させた状態で樹脂封止が行われていた。
【0003】即ち、CSP製造のための半導体チップの樹脂封止方法は、図4(イ)〜(ハ)に示すように、半導体チップ2の電極とリードフレーム21のリード端子22との間をワイヤ23でボンディングしたものを、下金型3のキャビティ31内に配置し、離型フィルム1を介して上金型4で型閉し、トランスファー成形によりキャビティ31内に樹脂5を注入・硬化させ、次いで型開した後、リード端子22を残してリードフレーム21をトリミングによりカットしている。
【0004】その際、金型が150〜200℃程度に保たれた状態で封止が行われる為、離型フィルムにはこの温度に耐えうる耐熱性および封止樹脂に対する離型性が要求され、これよりポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略する)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(以下ETFEと略する)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下FEPと略する)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下PFAと略する)が用いられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の離型フィルムの場合、上記のように離型フィルムを介在させた状態で樹脂封止を行う際、図5に示すように、金型の型締め圧力により離型フィルム1が変形し、特にリード端子部においてはリード端子22により圧縮され変形した離型フィルム1aがリード端子22間に押し出される場合があった。この状態で樹脂封止を行った場合、樹脂が完全にリード端子22間に充填されず、リード端子22間に溝が形成された状態となり、結果としてリードカット時にリード端子22間の封止樹脂5が欠けるという問題が生じていた。
【0006】一方、上記のような問題は、離型フィルムの厚みを薄くすることにより、幾らか改善することができるが、その場合、リード端子と離型フィルムとの密着力等が低下するため、封止樹脂の被りが生じ易くなり、リード端子を確実に露出させるのが困難になる。
【0007】そこで、本発明の目的は、離型フィルムにより端子等の露出を好適に行いながら、端子等の間に樹脂を良好に充填することができる半導体チップの樹脂封止方法及び半導体チップ樹脂封止用離型フィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、離型フィルムとして、少なくとも厚さ方向の一部分が多孔質層である複層フィルムを使用することにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明の樹脂封止方法は、端子または電極が配設された被封止面と金型内面との間に離型フィルムを介在させつつ、半導体チップを配置した金型内に樹脂を注入・硬化させる半導体チップの樹脂封止方法において、前記離型フィルムとして、少なくとも厚さ方向の一部分が多孔質層である複層フィルムを使用する事を特徴とする。
【0010】一方、本発明の離型フィルムは、上記の半導体チップの樹脂封止方法に使用する離型フィルムであって、少なくとも厚さ方向の一部分に多孔質層を有しているものである。
【0011】上記において、離型フィルムは少なくとも片方の表面に非多孔質層を有することが好ましい。また、前記多孔質層及び前記非多孔質層がフッ素系樹脂からなり、更に前記多孔質層の気孔率が20%以上80%以下であることが好ましい。
【0012】[作用効果]本発明の樹脂封止方法によると、前記離型フィルムとして少なくとも厚さ方向の一部分が多孔質層である複層フィルムを使用するため、金型の型締め時の変形が多孔質層の空隙部の圧縮により吸収されるので、複層フィルムが変形してリード端子間に押出されにくく、結果として封止樹脂がリード端子間に良好に充填され、溝が形成されなくなる。また成型圧力によりリード端子等と接触している部分の多孔質層は完全に押し漬されることにより、リード端子面とフィルムの密着性が維持される為、リード端子面への樹脂被りが起こりにくい。その結果、離型フィルムにより端子等の露出を好適に行いながら、端子等の間に樹脂を良好に充填して、リードカットも好適に行うことができるようになる。
【0013】一方、本発明の離型フィルムによると、上記の如き作用効果により、半導体チップの樹脂封止に用いる際に、離型フィルムにより端子等の露出を好適に行いながら、端子等の間に樹脂を良好に充填することができるようになる。
【0014】離型フィルムが少なくとも片方の表面に非多孔質層を有する場合、非多孔質層を被封止面側に配置することで、離型フィルムと端子等との間に封止樹脂が浸入するのをより確実に防止することができる。
【0015】前記多孔質層及び前記非多孔質層がフッ素系樹脂からなる場合、封止樹脂との離型性が高くなり、また半導体パッケージの一般的な封止温度である175℃での耐熱性が優れたものとなる。
【0016】前記多孔質層の気孔率が20%以上80%以下である場合、金型の型締め時の変形の吸収量が適度になり、また離型フィルムと端子等との密着力を適度に維持することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、半導体チップ樹脂封止用離型フィルム、半導体チップの樹脂封止方法の順で説明する。
【0018】〔半導体チップ樹脂封止用離型フィルム〕本発明の半導体チップ樹脂封止用離型フィルムは、少なくとも厚さ方向の一部分に多孔質層を有するものであり、全体が多孔質層で形成されていてもよい。但し、非多孔質層を端子または電極が配設された被封止面に配置すべく、少なくとも片方の表面に非多孔質層を有するものが好ましい。
【0019】離型フィルムの非多孔質層としては、封止樹脂との離型性および半導体パッケージの一般的な封止温度である175℃での耐熱性という点でフッ素系樹脂が好ましい。フッ素樹脂に関しては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA) 、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等を適宜用いることが出来るが、離型性という点でPTFEが最も好ましい。
【0020】また多孔質層としては、上記の通り封止加工時耐熱性が必要となることより、フッ素系樹脂である事が好ましい。中でも、PTFEファインパウダーを用いた場合、ペースト押出しにより成形体を得た後、圧延、延伸することにより容易に多孔質体を得られ、また圧延および延伸条件を制御することにより容易に多孔質層の設計を行えることより、これを多孔質層に用いることが好ましい。
【0021】また非多孔質層の厚さに関しては20μm以下、更には10μm以下である事が好ましい。20μmを超えると従来技術と同様に封止金型の型締めによりフィルムの変形が起き易くなる傾向がある。また多孔質層の厚さに関しては10μm以上150μm以下である事が好ましい。10μm未満では多孔質層の変形量が少なく、型締め時の応力の吸収量が小さくなり、またリード端子上への封止樹脂被りを起し易い傾向があり、150μmを超えると型締め時の多孔質層の変形量が大きくなりすぎ、結果としてリード端子間に注入される樹脂量が少なくなる傾向がある。
【0022】多孔質層の気孔率は20%以上80%以下であることが好ましい。20%未満では、金型の型締め時の変形の吸収量が不十分になる傾向があり、80%を超えると離型フィルムと端子等との密着力を維持しにくくなる傾向がある。
【0023】多孔質層と非多孔質層との積層一体化は、熱融着や接着等により行うことができ、また、多孔質層を予め形成したものに、非多孔質層の原料となる分散液を塗布・焼結等する方法も可能である。
【0024】〔半導体チップの樹脂封止方法〕本発明の半導体チップの樹脂封止方法は、端子または電極が配設された被封止面と金型内面との間に離型フィルムを介在させつつ、半導体チップを配置した金型内に樹脂を注入・硬化させる半導体チップの樹脂封止方法において、前記離型フィルムとして、以上のような複層フィルムを使用する事を特徴とする。本実施形態では、樹脂封止によってQFNを製造する場合を例示する。
【0025】図1(イ)〜(ハ)は、本発明の半導体チップの樹脂封止方法の一例の工程を示すものである。封止の対象となる半導体チップ2は、通常、図2(イ)に示すようなリードフレーム内の複数のユニット(図2(ロ)は1ユニットを示す)に、半導体チップ2が各々ワイヤボンディング等されたものを使用する。図1(イ)〜(ハ)は、理解を容易にすべく、1ユニット分について図示してある。
【0026】まず、図1(イ)に示すように、半導体チップ2の電極とリードフレーム21のリード端子22との間を金等のワイヤ23でボンディングしたものを、下金型3のキャビティ31内に配置する。リード端子22の配置は、図2(ロ)のように全周に間隔をおいて配置する場合に限られず、全面に配置したり、対辺のみに配置してももよい。
【0027】次に、図1(ロ)に示すように、本発明の離型フィルムFを介して上金型4で型閉し、トランスファー成形によりキャビティ31内に樹脂5を注入・硬化させる。かかるトランスファー成形は、通常、温度175℃、成形圧力490N/cm2 程度で行われる。なお、通常、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が使用される。
【0028】その際、図1(ロ)のI−I断面を示した図3に示すように、離型フィルムFの多孔質層11は、リード端子22の部分だけが押しつぶされて変形しており、また非多孔質層12はリード端子22に接する部分だけが変形している。このため、リード端子22間で離型フィルムFが変形して押出されにくいので、封止樹脂5がリード端子22間に良好に充填されると共に、リード端子22面と非多孔質層12の密着性が維持される為、リード端子22面への封止樹脂5の被りが起こりにくい。
【0029】その後、図1(ハ)に示すように型開する。その後、必要により脱型及びアフターキュアを行った後、リード端子22を残してリードフレーム21をトリミングによりカットすればよい。
【0030】また本発明の離型フィルムの特性上、QFNに限らず、例えばウエハレベルCSPに代表されるはんだボール等の外部接続端子と接触する端子が、封止樹脂面より露出した構造を持つパッケージにおいて、端子を封止樹脂面より安定して露出させる事が出来、良好に封止加工を行なう事が出来る。つまり露出させる端子についてはリードフレームに含まれていても、ウエハ、チップ面に形成されていても、本発明の離型フィルムを用いれば良好な樹脂封止加工を行なう事が出来る。
【0031】
【実施例】以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0032】(実施例1)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを円筒状の金型に充填し加圧する事により成形体を得、これをラム押出しする。次いでこれを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。そしてこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム1を得た。得られた離型フィルム1の多孔質層は、厚さ50μm気孔率45%であった。
【0033】(実施例2)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを円筒状の金型に充填し加圧する事により成形体を得、これをラム押出しする。次いでこれを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。そしてこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム2を得た。得られた離型フィルム2の多孔質層は、厚さ50μm気孔率23%であった。
【0034】(実施例3)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを円筒状の金型に充填し加圧する事により成形体を得、これをラム押出しする。次いでこれを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。そしてこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム3を得た。得られた離型フィルム3の多孔質層は、厚さ50μm気孔率76%であった。
【0035】(実施例4)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを円筒状の金型に充填し加圧する事により成形体を得、これをラム押出しする。次いでこれを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。そしてこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム4を得た。得られた離型フィルム4の多孔質層は、厚さ12μm気孔率45%であった。
【0036】(実施例5)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを円筒状の金型に充填し加圧する事により成形体を得、これをラム押出しする。次いでこれを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。そしてこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム5を得た。得られた離型フィルム5の多孔質層は、厚さ140μm気孔率45%であった。
【0037】(比較例1)キャスト法により作製した非多孔質フィルムであり、厚さ40μmのPTFEフィルムを離型フィルム6として使用した。
【0038】(比較例2)キャスト法により作製した非多孔質フィルムであり、厚さ10μmのPTFEフィルムを離型フィルム7として使用した。
【0039】(参考例1)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。次いでこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム11を得た。得られた離型フィルム11の多孔質層は、厚さ50μm気孔率17%であった。
【0040】(参考例2)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。次いでこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム12を得た。得られた離型フィルム12の多孔質層は、厚さ50μm気孔率85%であった。
【0041】(参考例3)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。次いでこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ22μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム13を得た。得られた離型フィルム13の多孔質層は、厚さ50μm気孔率45%であった。
【0042】(参考例4)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。次いでこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム14を得た。得られた離型フィルム14の多孔質層は、厚さ8μm気孔率45%であった。
【0043】(参考例5)PTFEファインパウダーに押出助剤としてゴム揮発油18重量%を配合し混合する。これを圧延し、フィルム化した後、トルエンを用いて押出し助剤の抽出を行う。次いでこのフィルムを370℃の雰囲気下で2軸延伸した後、厚さ10μmのPTFEフィルムを熱融着させる事により離型フィルム15を得た。得られた離型フィルム15の多孔質層は、厚さ160μm気孔率45%であった。
【0044】(評価試験例)次に樹脂封止による評価について説明する。図1(イ)〜(ハ)に示したように、175℃に加熱された樹脂封止用金型内にチップをワイヤボンディングした状態のリードフレームと封止用フィルムを配置した。ここで、封止樹脂面から露出させるべき端子についてはリードフレームに含まれている。次いで金型を閉じて175℃の加熱条件下で成形圧力490N/cm2 で加圧した状態でトランスファー成形を行なった。なお成形時間120秒で樹脂を硬化させた。そして上金型および封止用フィルムを持ち上げパッケージの自重により封止用フィルムを剥離させることにより、リードフレームの端子部が露出した状態で封止されたパッケージを得た。
【0045】この様にして封止加工を行なった後、加工品中から50個のパッケージを抜き取り端子部の露出状態を検査した。更に得られた半導体パッケージについてアフターキュアを行った後、リードカットを行い、端子部の樹脂欠けの状態の検査を行った。結果を表1にまとめる。
【0046】
【表1】


表1の結果が示すように、実施例1〜5の離型フィルムを用いた場合、ほぼ全てのパッケージの端子部が露出しており、またリードカット時のリード端子間の樹脂欠けもほぼ発生せず良好に加工が行なえた。これについては図3に示す様に、型締め圧力により多孔質層の空隙が変形する事により、リード端子を始めとするリードフレームの凹凸に追従した為である。
【0047】これに対し、非多孔質の離型フィルムを用いた比較例1の場合、50個中10個でリード端子間の樹脂欠けが発生した。これは金型型締め時にフィルムの変形を吸収する多孔質層が存在しないため、図5に示す様に離型フィルムのリード端子間への食込みが大きくなったものである。また、比較例1より薄い離型フィルムを用いた比較例2の場合、リード端子間の樹脂欠けは改善されたが、密着性、シール性の低下により、50個中10個の端子の露出不良が発生したなお、参考例1については50個中5個でリード端子間の樹脂欠けが発生したが、多孔質層の気孔率が小さすぎる為である。参考例2については50個中6個の端子の露出不良が発生したが、多孔質層の気孔率が大きすぎる為である。参考例3については50個中6個でリード端子間の樹脂欠けが発生したが、非多孔質層の厚さが厚すぎた為である。参考例4については50個中4個で端子の露出不良が発生したが、多孔質層の厚さが薄すぎた為である。参考例5については50個中4個でリード端子間の樹脂欠けが発生したが、多孔質層の厚さが厚すぎた為である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂封止方法の一例を示す工程図
【図2】本発明に用いるリードフレームの一例を示す図
【図3】図1(ロ)のI−I断面を示す断面図
【図4】従来の樹脂封止方法の一例を示す工程図
【図5】従来の樹脂封止方法において型締めした状態を示す断面図
【符号の説明】
2 半導体チップ
3 金型(下型)
4 金型(上型)
5 封止樹脂
11 多孔質層
12 非多孔質層
22 リード端子
F 離型フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 端子または電極が配設された被封止面と金型内面との間に離型フィルムを介在させつつ、半導体チップを配置した金型内に樹脂を注入・硬化させる半導体チップの樹脂封止方法において、前記離型フィルムとして、少なくとも厚さ方向の一部分が多孔質層である複層フィルムを使用する事を特徴とする半導体チップの樹脂封止方法。
【請求項2】 請求項1に記載の半導体チップの樹脂封止方法に使用する離型フィルムであって、少なくとも厚さ方向の一部分に多孔質層を有している半導体チップ樹脂封止用離型フィルム。
【請求項3】 少なくとも片方の表面に非多孔質層を有する請求項2に記載の半導体チップ樹脂封止用離型フィルム。
【請求項4】 前記多孔質層及び前記非多孔質層がフッ素系樹脂からなる請求項3に記載の半導体チップ樹脂封止用離型フィルム。
【請求項5】 前記多孔質層の気孔率が20%以上80%以下である請求項2〜4いずれかに記載の半導体チップ樹脂封止用離型フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−284378(P2001−284378A)
【公開日】平成13年10月12日(2001.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−90202(P2000−90202)
【出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】