説明

半導体デバイスの製造方法及び基板処理装置

複数の反応物の供給工程を複数回繰り返すことにより基板を処理するものにおいて、反応物である原料を無駄に捨てることなく、基板処理のスループットを向上させる。 基板処理装置は、反応物として液体原料を気化した原料ガスを含み、その原料ガスの処理室1内への供給と、その後に行う原料ガスとは異なる反応物の処理室1への供給を複数回繰り返すことにより、基板を処理するものである。液体原料の流量制御は吐出駆動制御機構6によって制御する。吐出駆動制御機構6は、気化器3内に一体的に組込まれた弁体33を制御することにより、気化器3や気化器3に接続される外部配管ではなく、気化器3中の気化部へ直接流れ込む液体原料の1回の吐出動作における流量を固定化し、液体原料を気化部31に間欠的に吐出させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、半導体デバイスの製造方法及び基板処理装置に係り、特に液体原料を気化させた原料ガスを含む反応物を用いて基板を処理するものに関する。
【背景技術】
一般に、液体原料を用いて基板を処理する半導体デバイスを製造するための基板処理装置には、液体原料を気化させる液体原料気化システムが必要となる。液体原料気化システムで液体原料を高温化して気化させたガス(以下、気化ガスと称す)は、液化するのを防ぐために、必要に応じて配管を加熱しなければならない。特に、原料が気化させた金属のガス状のものでは、蒸気圧が低く配管で冷やされて液化するので、配管を加熱する必要がある。このような気化ガスを使って基板を処理するには、気化ガスの流れを適切に制御する必要がある。気化ガスの流れを制御する最も簡単な方法は、バルブを用いる方法である。
しかし、単純にバルブで気化ガスの流れを制御しようとした場合、バルブも加熱しなければならないが、一般に加熱できるタイプのバルブは寿命が短い。頻繁にバルブの開閉を繰り返すと、我々の試算によると100日の使用で、寿命が来てしまう恐れがある。また気化ガスをバルブで制御しても、気化ガス原料がバルブの内部、特に駆動部に吸着し、反応して、膜剥れを起こし、パーティクルが発生するという問題がある。このパーティクルのウェハ表面への付着は、半導体デバイスの最小加工寸法が小さくなるにつれ、チップの不良の原因になるため、極力避けなければならない。また、バルブを閉じている間は、気化ガスを搬送する配管の圧力が上昇し、ガスが液化する可能性がある。ここで発生した液体は、そのうち自己分解反応により、配管内部に成膜され、徐々に配管径がせまくなり、配管が詰まる恐れがある。
そこで、バルブを用いて原料の流れを制御するには、気化する前の液体状態で制御することが考えられる。液体状態では原料を構成する分子の状態は活性化されていないので、気体の状態よりは成膜されにくいからである。一般に、液体原料の流量制御には、流量情報によりフィードバック制御する方法がとられている。しかし、この液体原料のフィードバック制御は、流量制御対象が気化ガスである場合に比べて、制御性が非常に悪いという問題があった。そこで、従来、これを改善すべく種々の方法が提案されている。
例えば、CVD装置の液体金属気化ユニットであって、金属液体流量コントローラと気化器とを有し、流量コントローラはその流路を開閉するバルブをパルス幅及び周波数の両方により制御可能であり、流量コントローラにより制御された金属液体を微小粒として間欠的に気化器に投入している(例えば、特許文献1参照)。
また、MOCVD法を用いた液体原料供給装置であって、圧電素子の駆動により体積が変化する圧力室と、この圧力室内に原料を導く導入部と、圧力室で圧縮された原料液体を噴出して気相化する噴出ノズルと、液体原料の噴出量を制御する制御部を有する。なお気化器は有さない。圧電素子に制御部の電源回路で発生させた駆動電圧パルスを印加して原料液体の噴出量を制御している(例えば、特許文献2参照)。
また、CVD装置のマスフローコントローラであって、液相材料を所定流量で流出させるための制御信号を流量制御バルブに供給する制御装置と、流入した液相材料を液滴として出力する液滴出力構造を備える流量制御バルブを備え、液滴出力構造は液相材料を貯める圧力室と、圧力室の体積を変化させることが可能な振動板と、制御信号に対応した体積変化を生じ振動板を変形させる圧電素子とを有している(例えば、特許文献3参照)。
また、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いた薄膜成長方法であって、反応物発生源から気化した反応物を第1導管を通じて反応室に導き、上記反応物を気相パルスの形態で、他の反応物の気相パルスと交互に繰り返し反応室に供給し、基板の表面と反応させて基板上に薄膜化合物を形成する。反応物の気相パルスと気相パルスの間に、第1導管に接続する第2導管を通じて不活性ガスを第1導管に供給することにより反応物発生源から第1導管を通って反応室内に至る気相反応物の流れに対して気相バリヤを形成し、この気相バリアを用いてバブルレスで原料高速切換えを行っている(例えば、特許文献4参照)。
特許文献1:特開2002−173777号公報
特許文献2:特開2002−175987号公報
特許文献3:特開2000−121400号公報
特許文献4:特開2002−4054号公報
【発明の開示】
上述した従来技術には次のような問題があった。特許文献1〜特許文献3に記載された半導体デバイスの製造方法は、いずれも、1回の液体の吐出動作における流量は固定であり、液体原料を間欠的に吐出させるよう制御する吐出駆動制御機構を備えており、流量制御方法は吐出回数により制御するようになっている。しかし、上述したものは、いずれも複数の反応物を混合して一緒に基板に供給するプロセスを用いたCVD法やMOCVD法に適用することを前提としている。したがって、複数の反応物の切換えを想定していないため、ALD法などのように複数の反応物を切換えて供給するプロセスを用いたデバイス製造方法に適用する場合には、複数の反応物を高速に切換えることができず、CVD法やMOCVD法に比べて吐出回数が多くなるため、スループットを向上できないという問題があった。
この点で、特許文献4に記載されたものは、気相バリアを用いて反応物を高速に切換えることができるので、ALD法を用いた薄膜成長方法において、スループットを向上することは可能である。しかし、気相バリアを用いて反応物である原料の高速切換えを行う場合、原料は供給し続けるので、反応室への原料導入時以外は原料を無駄に捨てることとなり、その分コストが高くなるという欠点があった。
本発明の課題は、複数の反応物の供給工程を複数回繰り返すことにより基板を処理するものにおいて、反応物である原料を無駄に捨てることなく、基板処理のスループットを向上させることが可能な半導体デバイスの製造方法及び基板処理装置を提供することにある。
第1の発明は、一つの反応物を基板上に供給する工程と、他の反応物を基板上に供給する工程と、これらの工程を複数回繰り返すことにより基板を処理する工程とを有する半導体デバイスの製造方法であって、前記反応物の両方又は何れか一つは液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を固定化し、液体原料を気化部に間欠的に吐出させるように制御することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
液体原料を気化する気化部に流入する液体原料の吐出量を直接制御しているので、より短時間に一定量の液体原料を気化させることができ、気化部からより短時間に一定量の原料ガスを基板上に供給することができる。したがって、液体原料を気化部で気化させたガスを含む複数の反応物の供給を複数回繰り返すことにより基板を処理する場合に、その繰り返しを高速に行うことができ、基板処理のスループットを向上できる。
第2の発明は、第1の発明において、液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、前記気化部で気化させた原料ガスの基板上への1回の供給動作に対応する流量と同等にしたことを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、反応物の基板への1回の供給動作に対応する流量と同等とすると、制御が容易になる。
第3の発明は、第1の発明において、液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、前記気化部で気化させた原料ガスの基板への1回の供給動作に対応する流量よりも少なくし、吐出回数により流量を制御することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、反応物の基板への1回の供給動作に対応する流量よりも少なくし、吐出回数により流量を制御すると、1回の供給動作期間中に液体原料が気化部へ吐出されない非吐出期間が形成されて、その期間中、気化部の温度を回復させることができる。したがって、気化部の温度低下に起因して気化効率が下がることを防止できる。
第4の発明は、第1の発明において、前記処理とは、一つの反応物を基板上に供給して吸着させる工程と、基板上に吸着させた反応物に対して他の反応物を供給して反応を起こさせ膜を形成する工程と、を複数回繰り返す制御を行うことにより所望の膜厚の膜を形成するALD処理であることを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。成膜工程と改質工程とを複数繰り返すことにより、所望の膜を形成する処理(以下、MRCVD処理又はMRCVD法という)等にも有効であるが、特に、吸着工程と成膜工程とを複数回繰り返すことにより所望の膜厚の膜を形成するALD処理では、1サイクルで形成される膜厚が決まっているため、MOCVD処理よりも吐出回数が多くなるが、繰り返し速度を上げることができるので、スループットの向上に大きく寄与できる。
第5の発明は、基板を処理する処理室と、液体原料を収容する容器と、液体原料を気化させる気化部を有する気化器と、前記容器内に収容された液体原料を気化器へ供給する液体原料供給管と、前記気化器で気化した原料ガスを処理室内に供給する原料ガス供給管と、前記液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を固定化し、液体原料を気化部に間欠的に吐出させるよう制御する吐出駆動制御機構と、前記原料ガスとは異なる反応物を処理室内に供給する供給管と、前記原料ガスの処理室内への供給と、その後に行う原料ガスとは異なる反応物の処理室内への供給を複数回繰り返すよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする基板処理装置である。
液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を固定化し、液体原料を気化部に間欠的に吐出させるよう制御する吐出駆動制御機構と、前記原料ガスの処理室内への供給と、その後に行う原料ガスとは異なる反応物の処理室内への供給を複数回繰り返すよう制御する制御手段とを備えれば、第1の発明の半導体デバイスの製造方法を容易に実施できる。
第6の発明は、第5の発明において、前記制御手段は、更に液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、気化部で気化させた原料ガスの基板への1回の供給動作に対応する量と同等にするよう制御する機能を有することを特徴とする基板処理装置である。このような機能を制御手段が有すると、第2の発明の半導体デバイスの製造方法を容易に実施できる。
第7の発明は、第5の発明において、前記制御手段は、更に液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、前記気化部で気化させた原料ガスの基板への1回の供給動作に対応する流量よりも少なくし、吐出回数により流量を制御する機能を有することを特徴とする基板処理装置である。このような機能を制御手段が有すると、第3の発明の半導体デバイスの製造方法を容易に実施できる。
第8の発明は、第5の発明において、前記制御手段は、更に一つの反応物を基板上に供給して吸着させる工程と、基板上に吸着させた反応物に対して他の反応物を供給して反応を起こさせ膜を形成する工程と、を複数回繰り返すことにより、基板に対してALDによる成膜を行うよう制御する機能を有することを特徴とする基板処理装置である。このような機能を制御手段が有すると、第4の発明の半導体デバイスの製造方法を容易に実施できる。
第9の発明は、第5の発明において、前記制御手段は、更に液体原料を気化部へ圧送する圧力と気化部への1回の吐出動作における流量との相関関係を予め測定しておき、その相関関係に基づいて1回の吐出動作における流量を校正する機能を有することを特徴とする基板処理装置である。制御手段が、圧力と流量との相関関係に基づいて流量を校正する機能を備えたので、圧力変化の影響を受けずに、気化部への1回の吐出動作における流量を固定化することができる。
第10の発明は、第5の発明において、気化部と容器との間に液体流量計を設け、液体流量計に電気的に接続された流量調節機構を有する吐出駆動制御機構を設置し、流量調節機構は液体流量計からの電気信号に基づいて、ある一定時間或いはある一定吐出回数の積分流量を計算し、経時的にその積分流量を監視し、気化部への1回の吐出動作における流量の経時的な変化を調節する制御手段を有することを特徴とする基板処理装置である。制御手段が、気化部への1回の吐出動作における流量の経時的な変化を調節する機能を有するので、吐出駆動制御機構や気化部の経時的変化の影響を受けずに、気化部への1回の吐出動作における流量を固定化することができる。
第11の発明は、第5の発明において、前記気化器を、液体原料を気化する気化部と、該気化部へ液体原料を送る流路と、前記気化部への液体原料の吐出/非吐出を弁の開閉により制御するとともに、開制御時に前記流路に送られる液体原料の流量を弁の開度調節により制御する弁体とを一体的に有するインジェクション方式の気化器で構成し、前記弁体の開度調節、開閉を前記吐出駆動制御機構により行うことを特徴とする基板処理装置である。弁体を一体的に有する気化器を用いて気化部へ送る液体原料を制御するようにしたので、弁体を別体に有する気化器と比べて、制御性がよくなり、優れた気化特性が得られる。また、弁体は開閉のみならず開度調整可能に構成されているので、液体原料の気化部への1回の吐出動作における固定化した流量の校正も可能である。
第12の発明は、第1の発明において、前記反応物のいずれか一つが前記液体原料を気化部で気化させたガスであり、前記反応物のいずれか他の一つが前記気化ガスとは異なる反応ガスである場合に、前記反応ガスの基板への供給を弁の開閉により制御し、前記反応ガスの流量を流路に設けた絞りによって制御することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。反応ガスを弁の開閉制御及び絞りによって制御すると、マスフローコントローラと比べて反応ガスをより高速に制御できる。したがって、基板上への気化ガスと反応ガスとの供給を複数回繰り返すことにより基板を処理する場合に、気化ガスのみならず、反応ガスの供給の繰り返しもより高速に行うことができるので、基板処理のスループットをより向上できる。この場合において、反応ガスをプラズマにより活性化して基板へ供給するときは、前記プラズマの生成に先立って予備プラズマを生成するようにしておくとよい。反応ガスを活性化する際、予備プラズマを生成しておくと、本プラズマにより反応ガスを瞬時に活性化できる。したがって、反応ガスをプラズマにより活性化して基板へ供給する場合においても、基板処理のスループットをより向上できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の半導体デバイスの製造方法を実施するための基板処理装置のブロック構成図である。
第2図は、実施の形態による気化器の縦断面図である。
第3図は、コントローラ(制御装置)指示に応じた気化特性を示す従来例と実施の形態との比較説明図であり、(A)は従来例、(B)は実施の形態を示す。
第4図は、実施の形態によるクラスタ型半導体製造装置で用いられるALD装置の全体構成図である。
第5図は、実施の形態によるALD装置の要部構成図である。
第6図は、実施の形態によるALD法の反応物供給シーケンス図である。
第7図は、実施の形態によるALD法の反応物供給シーケンス図である。
第8図は、実施の形態と従来例との吐出方法を比較したタイミングチャートである。
第9図は、実施の形態による弁体の開度をパラメータとして吐出流量とN圧送圧力との関係を測定した特性図である。
第10図は、実施の形態による半導体デバイスの製造方法を実施するための基板処理装置のブロック構成図である。
第11図は、実施の形態による反応ガス供給システムの構成図である。
第12図は、実施の形態による反応ガス供給システムを考慮に入れたALD法の反応物供給シーケンス図である。
第13図は、実施の形態による予備プラズマを起こすことが可能なリモートプラズマユニットの説明図である。
第14図は、実施の形態による予備プラズマを起こす微小プラズマ発生器の概略構成図である。
第15図は、実施の形態による反応ガス供給システムの構成図である。
第16図は、実施の形態による反応ガス供給システムの要部図である。
1 処理室
2 容器
3 気化器
4 液体原料供給管
5 原料ガス供給管
6 吐出駆動制御機構
7 供給管
8 制御手段
31 気化部
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
第1図は半導体デバイスの製造方法を実施するための装置であって、液体原料気化システムを採用した基板処理装置例のブロック図を示す。この基板処理装置で採用する半導体デバイスの製造方法は、一つの反応物を基板上に供給する工程と、他の反応物を基板上に供給する工程と、これらの工程を複数回繰り返すことにより基板を処理する工程とを有する方法である。
基板処理装置は、処理室1と、原料容器2と、気化器3と、液体原料供給管4と、原料ガス供給管5と、吐出駆動制御機構6と、反応ガス供給管7と、制御手段8とを有する。
処理室1は、その内部で基板が処理されるように構成され、ポンプ9に接続されて排気可能になっている。
原料容器2は、液体原料を収容し、収容された液体原料をHe、Ar、Nなどの不活性ガスの圧力で液体原料供給管4を介して気化器3に圧送するように構成される。
気化器3は、前記液体原料を高温化して気化させ、一つの反応物としての原料ガスを発生させる。気化器3は、液体原料を気化する気化部31と、気化部31へ液体原料を送る液体原料流路32と、気化部31への液体原料の吐出/非吐出を弁の開閉により制御するとともに、開制御時に液体原料流路32に送られる液体原料の流量を弁の開度調節により制御する液体流量コントロール用の弁体33と、弁体33より下流の液体原料流路32に接続されて気化部31へ送られる液体原料を希釈化するための希釈ガスを送る希釈ガス流路34とを一体的に有する。
希釈ガス供給管10は、図示しない希釈ガス供給源と気化器3の希釈ガス流路34とを接続し、希釈ガスを希釈ガス供給源からマスフローコントローラ13を介して気化器3へ供給するように構成される。
液体原料供給管4は、原料容器2と気化器3の液体原料流路32とを接続し、原料容器2内に収容された液体原料を液体流量計11を介して気化器3へ供給するように構成される。
原料ガス供給管5は、気化器3の気化部31と処理室1とを接続し、気化器3で気化した一つの反応物としての原料ガスを処理室1内の基板上に供給するように構成される。
反応ガス供給管7は、他の反応物としての反応ガスを供給する図示しない反応ガス供給源と処理室1とを接続し、反応ガスを処理室1内の基板上に供給するように構成される。反応ガスは反応ガス供給管7に設けたコントローラ機構12により流量制御される。このコントローラ機構12には、マスフローコントローラを用いてもよいが、液体原料を高速で流量制御する吐出駆動制御機構6及び気化器3に合わせて、動作速度が速いものを用いることが好ましい。
吐出駆動制御機構6は、気化器3の気化部31への1回の吐出動作における液体原料の流量を固定化し、液体原料を気化部31に間欠的に吐出させるように機能する。吐出駆動制御機構6は、そのためにプログラムで動く流量調節機構61を有し、この流量調節機構61を気化器3に電気的に接続して、吐出駆動制御機構6からの指令により気化器3を動作させるようになっている。すなわち、流量調節機構61から、振幅、パルス幅、周期から構成されるパルス的な電気的信号を気化器3の弁体33に加えて、弁体33をオープンループ制御する。振幅に応じて弁体33の弁開度が決定され、パルス幅に相当する時間だけ弁が開いて液体原料が吐出される。また、周期により吐出回数が決定される。気化部31への液体原料の1回の吐出動作における流量は、これらの振幅、パルス幅によって固定化される。また、周期によって気化ガスを基板上に供給する1回の供給動作(1ステップ)中での吐出回数が決定され、この吐出回数と前述した振幅・パルス幅とによって、1ステップ中の吐出流量の総量が決定される。これらの値は使用者が予め流量調節機構61に設定することも、プログラムによって自動的に変更することも可能である。
上述したように、液体原料の気化部31への1回の吐出動作における流量は固定化するが、その固定化は、通常、所定の吐出圧力の下で決定される。しかし、吐出圧力の変動によって、固定化した流量を校正する必要が生じる場合もある。そのような流量を校正する必要のある使用形態によっては、流量の校正は、気化器3に一体的に設けた弁体33の弁の開度、すなわち振幅を調節することにより行うようになっている。なお、振幅のみならず、パルス幅、あるいは振幅及びパルス幅によって校正するようにしてもよい。
また、吐出駆動制御機構6や気化器3を長時間使用すると、吐出量に経時変化が生じるので、固定化した流量を調整する必要が生じる場合もある。そのような吐出量の経時変化の調整を行うという使用形態によっては、吐出駆動制御機構6は、気化器3とだけでなく、前述した液体流量計11とも電気的に接続して、吐出駆動制御機構6からの指令により弁の調整を行う。すなわち、液体流量計11で検出した流量を吐出駆動制御機構6に通知し、その通知に基づいてある決められた吐出回数の積算流量を流量調節機構61で監視する。その監視結果に応じて、吐出駆動制御機構6からの指令により気化器3の弁体33を制御して吐出量を調節する。
なお、吐出駆動制御機構6には、Nなどの不活性ガスを原料容器2へ供給する配管内の圧力を測定する圧力計66からの信号が入力されて、流量調節機構61は配管内の圧力を監視できるようになっている。
制御手段8は、気化器3で気化させた原料ガスの処理室1内への供給と、その後に行う原料ガスとは異なる反応ガスの処理室1への供給とを複数回繰り返すよう、コントローラ機構12と吐出駆動制御機構6とを制御するように構成される。
なお、第1図中の液体流量計11及び気化器3に示した符号ACはAC電源を意味する。
上述したような基板処理装置における作用を説明する。
反応物の供給を複数回繰り返して成膜する成膜方法を、例示すれば、MRCVD法とALD法がある。ALD法は処理温度、圧力が低く、膜を1原子層ずつ形成していくことで、所望の膜厚の膜を形成する。これに対して、MRCVD法は、ALD法よりも処理温度、圧力は高く、薄い膜(数原子層〜数十原子層)を複数回形成して、所望の膜厚の膜を形成する。温度が高いとMRCVD法となり、温度が低いとALD法となる。本発明の半導体デバイスの製造方法は、これらの方法のいずれにも適用できる。
半導体デバイスは、上記基板処理装置を用いて、主に次の3つの工程を含む方法を実施することによって製造される。
(1)液体原料を気化した一の反応物である原料ガスを基板上に供給する工程
(2)他の反応物である反応ガスを基板上に供給する工程
(3)原料ガス供給工程、反応ガス供給工程を複数回繰り返す工程
以下、これらの工程を個別に説明する。
(1)液体原料を気化した一の反応物である気化ガスを基板上に供給する工程 予め吐出駆動制御機構6には気化部31へ吐出すべき流量値を設定しておく。そのうえで、処理室1をポンプ9で真空引きして所定圧にし、処理室1内の基板を所定の温度に加熱する。液体原料をNガスで原料容器2から液体原料供給管4に圧送して、液体流量計11を介して気化器3へ供給する。気化器3には、その弁体33に、吐出駆動制御機構6からのパルス振幅、パルス幅、周期から構成されるパルス的な制御用電気的信号が加えられており、それにより弁体33が動作して、パルス幅に相当する時間、液体原料は気化部31へ吐出される。
ここで液体原料の1回の吐出動作における流量は固定化されているので、フィードバック制御により流量を可変する場合に比して、吐出動作の即応性が高い。また、1回の吐出動作における流量を固定化した液体原料をパルス的に吐出させるようにしているので、1回の吐出動作における流量を固定化しても、吐出回数によって液体原料の供給量を調節できる。さらに、気化器3に通じる外部配管や、気化器3内の気化部31に通じる流路ではなく、液体原料を気化する気化部31へ吐出する液体原料の流量を直接制御しているので、気化器3に通じる外部配管や、気化器3内の気化部31に通じる流路に流入する液体原料の吐出量を制御する場合に比べて、より短時間に一定量の液体原料を気化させることができ、気化部31からより短時間に一定量の原料ガスを基板上に供給することができる。
(2)他の反応物であるガスを基板上に供給する工程
気化ガスの処理室内への供給後に、図示しない反応ガス供給源から他の反応物としての反応ガスを反応ガス供給管7に送ってコントローラ機構12を介して処理室1内の基板に供給する。コントローラ機構12によって流量制御する他の反応物は常温でガスであり液体ではない。したがって、コントローラ機構12にフィードバック制御となるマスフローコントローラを用いても制御性は良好である。その結果、短時間に一定流量の原料ガスを基板に供給するといった機敏な動作を保証できる。特に、コントローラ機構12に液体原料を高速で流量制御する吐出駆動制御機構6に合わせて、動作速度が速いものを用いると、より機敏な動作を保証できる。
(3)気化ガス供給工程、ガス供給工程を複数回繰り返す工程
制御手段8によって、コントローラ機構12及び流量調節機構61を制御することによって基板上に気化ガスと反応ガスとの供給を複数回繰り返し、基板上に所望の膜厚の膜を形成する。
上述した半導体デバイスの製造方法によれば、気化ガスのみならず反応ガスも短時間に一定量を基板に供給できるから、複数のガスの切換えを高速に行うことが可能になる。したがって、実施の形態のように、複数のガスを切換えて供給するプロセスにおいて、基板成膜処理のスループットを向上できる。
第2図に上述した基板処理装置に用いるのに適した気化器の構造例を示す。この気化器は流体流量コントロール用弁体が本体と一体的に設けられており、一般にはインジェクション方式の気化器と呼ばれる。気化器3は、気化器本体30と、液体原料の供給を制御する液体流量コントロール用の弁体33とを主に有し、弁体33の直下に気化部分を配置することにより構成してある。
気化器本体30は、液体原料を希釈ガスと混合させて霧化させたうえ、加熱して気化させる。気化器本体30は金属製の円柱状ブロックで構成される。その材料には、例えば、ステンレスや、これにテフロン(登録商標)コートを施したものなどが用いられる。気化器本体30の上面に液体充てん容器35と混合容器36とが設けられる。
液体充てん容器35は、弁体33の閉時に液体原料が溜められ、弁体33の開時に溜められた液体原料を混合容器36へ、その混合容器36の外周から均一に送り込むために設けられる。そのために液体充てん容器35は、気化器本体30の上面をリング状に凹ませて形成してある。液体充てん容器35の底部は、気化器本体30内に設けた液体原料導入路37を介して気化器本体30側面に設けた液体導入口38に通じている。弁体33が閉じているとき、液体充てん容器35に液体原料が溜められ、弁体33が開になると、液体充てん容器35と混合容器36とが連通されて、液体充てん容器35に溜められた液体原料が混合容器36に送り込まれる。弁体33の上下位置に応じて、送り込まれる液体原料の流量が変る。上記液体充てん容器35、混合容器36、液体原料導入路37、液体導入口38から、本発明の液体原料流路32が構成される。
混合容器36は、液体充てん容器35から送り込まれた液体原料を希釈ガスと混合させて希釈し、混合容器36の底部に設けたオリフィス39から押し出す量を調節して、液体原料を気化させやすくするために設けられる。また、混合容器36を設けることで、弁体33が閉の状態でも、この混合容器36を中継させることで、気化器本体30内に常時希釈ガスが流れるようにしている。ここで、弁体33が閉のときでも気化器本体30内に希釈ガスを流すのは、弁体33が閉のとき、混合容器36および気化容器40から残留液体原料を排除するとともに、希釈ガスを常時流すことにより気化ガスの供給→停止、および気化ガスの停止→供給の切換え速度を高めるためである。なお、上記オリフィス39と気化容器40とから本発明の気化部31が構成される。
混合容器36は、リング状の液体充てん容器35の内側に、液体充てん容器35と同様に気化器本体30上面42を凹ませて形成してある。混合容器36の底部は、気化器本体30内に設けた希釈ガス導入路34を介して気化器本体30の側面に設けた希釈ガス導入口41に通じている。希釈ガス導入路34は途中から導入路を絞って混合容器36に通じている。希釈ガス導入路34を途中で絞っているのは、希釈ガスの流速を上げて液体原料をオリフィス39から押し出すためである。希釈ガスは加熱された状態で気化器3に供給される。気化器3において希釈ガスを液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度となるように希釈ガスは加熱される。「液体原料が気化する程度の温度」は、液体原料を気化させるのに最適な温度であり、その温度としては、液体原料種、気化器3の形状や熱容量でも異なるが、途中で奪われる熱を補うために、例えば気化温度よりも10〜20℃程度高い温度である。加熱された希釈ガスは希釈ガス供給管10に送られる。希釈ガス導入路34と希釈ガス導入口41とから、上記希釈ガス流路34が構成される。
また、混合容器36の底部は、オリフィス39を介して気化容器40と通じている。気化容器40はオリフィス39から霧状に噴出される液体原料を希釈ガスと混合して気化させるために設けられる。混合容器36と同様に気化容器40における混合も必須要件である。霧状に噴出された液体原料を、加熱された希釈ガスと混合しなければ、液体原料は十分に気化しないからである。気化容器40は、気化器本体30の厚さ方向に形成され、気化器本体30下面に設けた原料ガス導出口43と通じている。気化容器40は、オリフィス39を頂部とすると、頂部から下方に向けて漸次拡径する肩部と、この肩部と連続する同一径の胴部とを有する。
気化器本体30内にヒータ44が埋め込まれ、気化器本体30を液体原料の気化温度よりも低い温度に加熱するようになっている。ここで、気化温度よりも低い温度とは、気化温度よりも低いが、気化器本体の壁面に液体原料が吸着せず、壁面から脱離するような温度である。ここで、「気化温度」は原料によって異なるが、例えばPET(Ta(OC)、Hf(MMP)(Hf[OC(CHCHOCH)では180℃、TDEAHf(Hf[N(C)])では120℃である。また、「気化温度よりも低い温度」としては、例えば気化温度よりも50℃くらい低い温度である。気化器本体30を加熱するのは、気化器本体30内に導入される液体原料や希釈ガスを保温するためである。また、気化器本体30を気化温度よりも低い温度に加熱するのは、気化器本体30内に導入される液体原料が、気化器本体30の熱によって自己分解し、気化器本体に成膜しないようにするためである。ヒータ44は、気化器本体30を均一に加熱できるように設けられることが好ましい。図示例では、ヒータ44は、絞り込んだ希釈ガス流路34の下流側と気化容器40のオリフィス39近傍側とをリング状に囲むように設けられる。また、気化器本体30の温度を液体原料の気化温度よりも低い温度に設定できるようにするために、気化器本体30に、気化器本体温度を測定する温度センサ45、例えば熱電対が設けられる。なお、ヒータ44は気化器本体30内に設ける代りに、気化器本体30の外周に設けても良い。
弁体33は、気化器本体30の表面を封止、又はその封止を解除することにより気化部31への液体原料の吐出動作における流量を制御する。弁体33は、シリンダ型をしており、液体充てん容器35および混合容器36の上部開口を覆うように、気化器本体30の上面42に気密に取り付けられる。弁体33は、シリンダ21と、弁としてのピストン22と、ピストンロッド23と、アクチュエータ24とを備える。シリンダ21は、気化器本体30上面42であって、リング状の液体充てん容器35の外周に、液体充てん容器35を取り囲むように気密に載置される。シリンダ21内に昇降自在にピストン22が嵌合される。シリンダ21内をピストン22が上昇して気化器本体30の上面42から離れて、空間25が形成されると、その空間25を介して液体充てん容器35と混合容器36とが連通して、液体充てん容器35の封止が解除される。ピストン22が下降して気化器本体30の上面42に圧接されると、液体充てん容器35と混合容器36との連通は断たれて、液体充てん容器35は封止される。白抜き矢印で示すピストン22の昇降動作は、アクチュエータ24によってなされる。このアクチュエータ24に加えられる振幅、パルス幅、周期から構成されるパルス的な電気的信号によって、液体原料の気化部31への吐出動作における流量が決まる。なお、弁体33は、一般的に使用されるシリンダ型を採用しているが、シリンダ型以外のバルブを採用してもよい。上記液体導入口38、液体原料導入路37、液体充てん容器35で液体原料流路32が構成される。
上記のような気化器3の構成において、搬送気体を原料容器2に供給することにより、原料容器2内の液体原料が加圧され、必要に応じて保温された液体原料供給管4を通して気化器3に供給される。また液体原料を希釈する希釈ガスは加熱され、保温された希釈ガス供給管10を通して気化器3に供給される。気化器3に供給された液体原料と希釈ガスとは気化器3で混合されて、加熱されて気化する。気化した原料ガスは気化器3から保温された原料ガス供給管5を通って処理室1に供給されつつ排気される。このとき、気化ガスは基板上の成膜に寄与する。
次に上述した気化器3の構成の作用について説明する。弁体33は閉じてピストン22が下降して点線位置にあり、液体充てん容器35は封止されている。液体原料は、液体導入口38から気化器本体30内に圧入され、液体原料導入路37を通って封止された液体充てん容器35に溜められている。液体原料をオリフィス39から噴出するには、ピストン22を実線位置まで上昇させて液体充てん容器35の封止を解除し、シリンダ21内の気化器本体30上面42に空間25を形成して、この空間25を介して液体充てん容器35と混合容器36とを連通させる。この連通により液体充てん容器35に溜められた液体原料は、混合容器36に流れ込む。
一方、加熱された希釈ガスは、弁体33の開閉にかかわらず、常時、気化器本体30に供給されている。すなわち、希釈ガスは、希釈ガス導入口41から希釈ガス導入路34を通り、途中で流速を高められて、混合容器36に流入し、流入後、オリフィス39を経て気化容器40から原料ガス導出口43を介して排出されている。
したがって、弁体33が開き、液体充てん容器35と混合容器36とが連通して、混合容器36に液体原料が流れ込むと、液体原料は流速の高められた希釈ガスと混合容器36で直ちに混合される。混合された液体原料は気化しやすい量となるように希釈され、希釈ガスによりオリフィス39から気化容器40へ押し出される。このとき液体原料はオリフィス39から気化容器40へ霧状に噴出されて、気化容器40で液体原料と一緒に押し出された希釈ガスと混合される。液体原料は細かい霧状となっているので、液体原料は加熱された希釈ガスによって気化温度にまで高められて一瞬のうちに気化する。気化した原料ガスは、原料ガス導出口43から矢印に示すように排出される。
このようにして吐出駆動制御機構6から気化器3の弁体33のアクチュエータ24にパルス幅、振幅、周期から構成される電気的信号指令が送られ、気化器3内部では、この指令どおり、ピストン22が上下に操作され、ピストン22が上方操作されたとき、液体充てん容器35に溜まっている液体原料が混合容器36に瞬時に吐出され、オリフィス39を通って気化容器40で気化される。
上述したようなインジェクション方式の気化特性を、他の方式の気化特性と比較して説明すれば、次の通りである。例えば、液体流量コントローラを気化器と別体に設けて両者を配管で接続した気化ユニットを用いた特許文献1では、二つの要素間に液体が流れるための時間差や、配管の液体残留物によって、第3図(A)に示すように、コントローラの指示(a)どおりの気化特性が得られず、(b)のように立下がりがだれる。この点で、実施の形態の気化器3では、液体流量コントロール用の弁体33の直下に気化部分を配置するので、そのような時間差や液体残留部の影響を大幅に低減でき、その結果、第3図(B)に示すように、吐出駆動制御機構6の指示(a)どおりの、立下がりが急峻な気化特性(b)を得ることができる。
ところで、本発明において、1回の吐出動作における流量は、液体原料を気化器3までに圧送するNの圧力に依存する。したがって、1回の吐出動作における流量をNの圧力にかかわらず固定化するためには、圧送Nの圧力と液体原料の1回の吐出動作における流量との相関関係を予め求め、その関係から吐出流量を校正する必要がある。
その方法を第1図を用いて具体的に説明する。同図のNの圧送圧力をある一定圧力に保ち、ある決められた弁体33の開度で、数百から数千回を数十Hzの速度で吐出させ、吐出駆動制御機構6は、その際の流量変化を液体流量計11からの流量通知に基づいて観測し、その積分値を積算流量として用い、1回の吐出量を求める。ここで、通常の流量制御は、液体流量計11をマスフローコントローラで構成し、マスフローコントローラと気化器3とを点線でしめすように電気的に接続して、気化器3に流入する流量をマスフローコントローラにフィードバック制御するというものである。しかし、ここでは×印で示すように結線をせず、そのような通常の流量制御は行わない。なお、上記速度で吐出させると、液体の流量が高速で変動するので、液体流量計11の示す値に信頼性がないことがある。その場合は、液体原料を保管している原料容器2の重さの変動で流量を観測する必要がある。具体的には、第10図に示すように、原料容器2の下に重量計62を配置し、原料容器2への配管は、フレキシブルの配管を用い、原料容器2の重量変動が正確に重量計62に反映されるようにする。
上記方法で、弁体開度をパラメータとしたN圧送圧力に対する吐出流量の関係を数パターン測定すると、第9図のような流量特性を得ることができる。この流量特性に基づいて、必要な吐出流量を得るために必要となるNの圧送圧力と弁体の開度を決定する。この場合、この流量特性を電子的なデータ(ルックアップテーブル)として吐出駆動制御機構6に保持し、使用者がこの吐出駆動制御機構6に1回の吐出動作における流量を設定する。吐出駆動制御機構6に組み込まれたプログラムが、圧力と弁体の開度を上記ルックアップテーブルから求めて、それらの値になるように制御することにより、設定流量を校正する。
上述したように液体圧送の圧力と吐出流量の関係に基づいて流量を校正するようにしたので、Nの圧送圧力が変動しても、液体原料の気化部31への1回の吐出動作における流量を固定化できるようになる。ところで、1回の吐出動作における流量は経時的に変化することも考えられる。流量の経時的変化を改善するためには、経時的に流量を監視し、吐出量を調節する必要がある。
第10図は、そのような流量の経時変化の改善を図った基板処理装置例のブロック図を示す。第1図に示す基板処理装置と異なる点は、吐出駆動制御機構6と電気的に接続される上位の制御装置63を設けた点である。この上位の制御装置63には、Nガスボンベ64と原料容器2とを接続するNガス供給管67内の圧力を測定する圧力計66から圧力通知がなされる。また、原料容器2の下に配置されて容器の重量を測定する重量計62からの重量通知がなされる。また、液体原料供給管4に設けられて液体原料供給管4内を流れる液体の流量を測定する液体流量計11からの流量通知がなされる。他方、上位の制御装置63からは、Nガスボンベ64と原料容器2とを接続するNガス供給管67に設けられたマスフローコントローラ65へ流量指示がなされる。また、吐出駆動制御機構6へ振幅(弁体の開度)、パルス幅、周期の指示がなされるように構成される。
上位の制御装置63は、液体流量計11からの流量通知の電気信号に基づいて、数百〜数万回の吐出回数にあたる積算吐出流量を計算する。この積算吐出流量を記憶しておき、1回の吐出量に経時的に変化がないか監視しておく。もし、変化があり、その変化が経時変化の校正が可能である数〜十数パーセントの許容範囲内であれば、気化器3又は吐出駆動制御機構6の特性に変化があったものとし、1回の吐出量の経時的な変化を調節する弁体の上下動指示を気化器3に与えて、弁体33の開度を調節する。しかし、その変化量が許容範囲を超えるようであれば、気化器3の寿命を示すアラームを表示し、気化器3の交換を促すようにする。なお、上述した吐出駆動制御機構6の特性の変化は、例えば、吐出駆動制御機構中に使用されているピエゾバルブの劣化により起こる。ピエゾバルブは強誘電体で構成されており、強誘電体は長時間の動作を続けていると、疲労するためである。
この第10図に示す実施の形態によれば、上位の制御装置63により、液体流量計11からの電気信号に基づいて一定時間/一定吐出回数の積分流量を計算し、その積分流量を監視して、1回の吐出量の経時的な変化を調節するので、液体原料供給システムの信頼性を高めることができ、ウェハの処理精度を常に維持できる。
なお、前述した流量特性のルックアップテーブルは、第10図に示すようなシステムにおいては、吐出駆動制御機構6に保持するのではなく、吐出駆動制御機構6と電気的に接続される上位の制御装置63に保持し、使用者がこの制御装置63に流量を設定することにより、それに組み込まれたプログラムが圧力と弁体33の開度をこのルックアップテーブルから求め、吐出駆動制御機構6に指示を与えるようにするとよい。
なお、本発明において、液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を固定化するにあたって、固定化するのは、気化器3に対する流量ではなく、気化器3の気化部31に対する流量である。したがって、気化器3は弁体一体型のものに限定されず、弁体33が別体のものにも適用可能である。
上述した実施の形態では、半導体デバイスの製造方法を、複数のガスを供給し、この供給を繰り返して成膜するプロセスに限定したが、そのプロセスとしてはMRCVD法、ALD法のどちらにも限定しないという一般的な説明を行った。ここでは、さらに本発明をALD法に限定した具体的な説明を行う。
第4図及び第5図は、本発明を適用すると特にメリットが大きいALD装置の構成例を示す。この例では、基板としてのウェハ上に酸化膜をつける場合を想定している。
ALD装置は、第4図に示すようなクラスタ型半導体製造装置で用いられることが多い。この装置は、大気ウェハ搬送機16、ロードロック室17、真空搬送室18、処理室1から主に構成される。処理室1には、液体原料を流量制御するとともに気化して供給する反応物供給システム19と、反応ガスとして用いられる活性化された酸素を生成するリモートプラズマユニット20が取り付けられている。
ウェハカセット15から、大気ウェハ搬送機16へとウェハが渡され、ロードロック室17にウェハが入れられ、ここで、ロードロック室17は大気から真空へと排気される。次に、真空搬送室18を経由して、処理室1にウェハが搬送される。処理室1で気化ガスと活性化された酸素とを交互に切換えて供給して、所望の厚さの膜をウェハ上に成膜する。成膜後は、上述した流れと逆の流れで、ウェハがウェハカセット15へと戻される。
第5図に、第4図の要部を構成する真空搬送室18、反応物供給システム19、リモートプラズマユニット20、処理室1の詳細図を示す。
真空搬送室18は、室内に搬送ロボット26を備える。搬送ロボット26は伸縮自在で旋回自在なアーム27を有し、アーム27上にウェハWを保持して搬送するように構成される。真空搬送室18の一側はロードロック室に連結され、他側は処理室1に連結される。搬送ロボット26は、ロードロック室から処理前のウェハWを受け取り、処理室1に搬送して、サセプタ56上に移載する。また、処理室1から処理済みのウェハWを受け取り、ロードロック室に搬送して、移載する。
ALD法では、第6図に示すように、原料供給、パージ、反応ガス供給、パージの4つのステップを反応物導入シーケンスの1サイクルとして、成膜を繰り返す。この反応物供給ステップに反応物供給システム19を用いる。反応物供給システム19は、リモートプラズマユニット20へリモートプラズマ源を供給して反応ガスとしての活性化された酸素を処理室1へ供給する反応ガス供給システム28と、液体原料を気化して処理室1へ供給する液体原料気化システム29との2系統から構成される。
反応ガス供給システム28は、ここでは概略的に示されているが、マスフローコントローラ46、47をそれぞれ設けた酸素(O)ガスを供給するO供給管48と、アルゴン(Ar)ガスを供給するAr供給管49とから主に構成される。Arガスは放電用のガスであり、リモートプラズマユニット20によって、OはArプラズマにより活性化される。リモートプラズマユニット20は、O供給管48とAr供給管49とから供給されるOガス、ArガスのうちのArが放電を起こしてプラズマを形成し、このプラズマによりOを励起して活性化する。活性化したOはArプラズマとともに、リモートプラズマユニット20から反応ガス供給管50へ供給される。
この活性化された酸素は、吐出駆動制御機構により制御される液体原料の制御速度と合わせるために高速制御するが、その高速制御はプラズマをON/OFF制御することによって行う。反応ガス供給システム28は、具体的には、第11図に示すように構成され、このシステムを用いて、第12図に示すシーケンスに従い、高速に活性化した酸素を処理室へ送り込む。
第11図の反応ガス供給システムは、リモートプラズマユニット20と配管72、70とを備える。配管72はArを流し、配管70は酸素OとアルゴンArとの混合ガスを流す。リモートプラズマユニット20の導出側には反応ガス供給管50が接続されて活性化された酸素を反応ガス供給管50を介して処理室へ供給する。リモートプラズマユニット20の導入側には前述した配管70が接続され、この配管70に配管72が合流接続されて、OとArの混合ガスをリモートプラズマユニット20に供給する。
供給管48とAr供給管49とは合流接続されて前述した配管70に接続される。混合ガスを流す配管70には上流側から下流側にわたって混合器74、第2バルブ75、絞り73が設けられる。絞り73は配管72との合流接続点の上流側に設けられる。また、配管72、O供給管48、及びAr供給管49にはマスフローコントローラ71、46、47がそれぞれ設けられ、O供給管48、及びAr供給管49にはさらに第2バルブ76、第3バルブ77がそれぞれ設けられる。
配管72から導入されるArは常にリモートプラズマユニット20を通って処理室へ流している。これは、リモートプラズマユニット20内に、もう一方の原料である気化ガスが拡散されて入ってこないようにするためである。もし、気化ガスが入ってきた場合には、プラズマによって反応を起こし、パーティクルの原因となるからである。
また、混合器74には、第1バルブ75が閉の状態で、第2バルブ76と第3バルブ77を一定時間開け、Arと酸素Oの混合気体を封じ込め、第2バルブ76および第3バルブ77を閉じておく。これは、第1バルブ75を開にした場合に、いきなり多量の酸素がリモートプラズマユニット20に導入された場合、プラズマが消える可能性があるからであるが、リモートプラズマユニット20の能力により、不要な場合もある。
また、第1バルブ75とリモートプラズマユニット20の間の配管70には、流路断面を調節して混合ガスの流量を調整するための絞り73を入れ、多量のガスが流れないようにしてある。すなわち流量を固定化している。第6図のシーケンスにおける反応ガスの導入時には、第12図に示すように、プラズマをONし、第1バルブ75を開き、Arと酸素Oの混合ガスを流し、反応ガスの導入の停止時には、プラズマをOFFし、第1バルブ75を閉じる。ここで、プラズマONの場合に、瞬時にプラズマ(これを本プラズマという)を生成するために、第13図のように、小型のプラズマ発生器78をリモートプラズマユニット20の上流側の配管70に設置し、高周波電源79から微小電力を投入して、わずかにプラズマ(予備プラズマ)を生成しておくことが有効である。第14図に小型プラズマ発生器78を示すが、数百μm〜数mm程度離れた端子80、81間に高周波電源79から小電力を投入し、微小のプラズマを生成する。
このように反応ガスをマスフローコントローラで制御するのではなく、予め流量を設定した絞り73によって活性化した酸素を流量制御し、予備プラズマ及び本プラズマにより瞬時に酸素Oを活性化するので、活性化した酸素を高速に処理室へ送り込むことが可能となる。
ここで説明を再び第5図へ戻す。液体原料気化システム29は、原料容器2、液体流量計11、気化器3、液体原料供給管4、マスフローコントローラ13を設けた希釈ガス供給管10、ヒータ14から構成される。液体原料をNガスで原料容器2から液体原料供給管4に圧送して、液体流量計11を介して気化器3へ供給する。ここで、気化器3が吐出駆動制御機構によって制御され、パルス幅に相当する時間、液体原料は1回の吐出動作における流量が固定化されて気化器3の気化部へ吐出される。液体原料は、希釈ガス供給管10から供給される希釈ガスNと混合され希釈され、気化部へ吐出される。気化部で気化された気化ガスは、パルス的な制御用電気的信号に応じて間欠的に原料ガス供給管5に導入される。
ヒータ14は、液体原料供給管4、原料ガス供給管5、及び希釈ガス供給管10に設けられ、必要に応じて配管を加熱し、内部を搬送される液体またはガスの温度が低下しないように加熱する。
処理室1は、枚葉式で例えば1枚の基板を処理するように構成される。処理室1の一側部にゲートバルブ51を介して真空搬送室18に通じるウェハ搬送口52が設けられる。処理室1の他側部には、排気口53が設けられ、ポンプ9によって処理室1を排気可能にしている。処理室1の上部にはシャワーヘッド53が設けられ、このシャワーヘッド53に原料ガス供給管5と反応ガス供給管50が接続され、これらの供給管5、50からシャワー状に2種類のガスをウェハW上に供給できるようになっている。また、シャワーヘッド53には、図示していないが、パージガス供給管が接続され、パージガスを処理室1内に導入してウェハW上に供給できるようになっている。
ヒータユニット54は、ウェハWを保持して加熱し、処理室1内に上下矢印で示す方向に昇降自在、かつ矢印で示すように回転自在に設けられる。ヒータユニット54は、ユニット本体55と、ユニット本体55上部に設けられてウェハを保持するサセプタ56と、ユニット本体55内部に設けられてサセプタ56を介してウェハWを加熱するヒータ57とから構成される。なお、ユニット本体55内部からは、ウェハ温度を制御するために必要な光ファイバ58や熱電対59などが処理室1の外部に引き出されている。成膜時は図示するように、ウェハWをシャワーヘッド53の近傍位置に来るようにヒータユニット54を上昇させ、搬送時はサセプタ56がウェハ搬送口52に臨む位置に来るように下降する。
上記したALD装置の作用を説明する。真空搬送室18に取り付けられた搬送ロボット26が、ロードロック室からウェハWを取り出す。ウェハWを処理室1に搬送するには、サセプタ56とヒータ57から構成されるヒータユニット54が下降し、ウェハ搬送口52とサセプタ56表面をほぼ同じ高さにし、ゲートバルブ51を開き、搬送ロボット26のアーム27がウェハWを処理室1へ送り込む。その際、サセプタ56から3本の突き上げピン(図示せず)が下から上がってきてウェハWを保持する。次に、搬送ロボット26のアーム27を処理室1から取り出し、ゲートバルブ51を閉じる。ポンプ9により処理室1内を排気口53を介して真空引きする。
ヒータユニット54を上昇して、突き上げピンを下方に下げ、ウェハWをサセプタ56上に移載する。ヒータユニット54をさらに上昇して、サセプタ56上に保持されたウェハWを、シャワーヘッド53との間隔が、例えば10mm〜20mmになる位置まで移動する。そして、ウェハWをサセプタ56とともに回転させる。この際、ヒータ57は固定されている。ウェハWを回転させるのは、ヒータ57の加熱によるウェハ面内温度不均一性を緩和させるためである。処理室内が所定圧力となり、ウェハWの温度がサセプタ温度に近づきほぼ一定になったら、ALD法による成膜プロセスを行う。
ALD法では、第6図に示すように、原料供給、パージ、反応ガス供給、パージの4つのステップを1サイクルとして、成膜を繰り返す。この反応物供給ステップに液体原料気化システム29と反応ガス供給システム28とを用いる。
(1)原料供給ステップ
液体原料気化システム29によって、原料容器2から液体原料を気化器3の気化容器31に吐出して気化し、気化した原料ガスAを処理室1に導入し、ガス原料をウェハWの表面に吸着させる。
(2)パージステップ
吸着後、不活性ガスなどからなる非反応物を処理室1内に導入して、処理室1内の余分なガスAを排気口53から排出して取り除く。
(3)反応ガス供給ステップ
余分なガスAを取り除いた後、基板に吸着したガス原料と反応を起こし、酸化薄膜を形成させることができるプラズマ励起した反応ガスB(活性化した酸素O)を反応ガス供給システム28から処理室1に導入して、ウェハ表面反応により薄膜の1原子層をウェハ上に形成させる。
(4)パージステップ
1原子層を形成後、不活性ガスなどからなる非反応物を処理室1に導入して、処理室1内の余分なガスBおよび反応副生成物を排気口53から排出して取り除く。
この(1)〜(4)のステップを1サイクルとして、所望の膜厚に達するまで、複数のサイクル処理を行う。所望の膜厚になったら、ヒータユニット54の回転を停止し、サセプタ56の表面の高さが、ウェハ搬送口52と同じくらいの高さになるように下げる。引き続き、突き上げピンを上げてウェハWをサセプタ56から離し、ゲートバルブ51を開けてウェハWを搬送ロボット26により処理室1から取り出す。
このALDのような方法においては、決められたある条件においては、1サイクルにおいて形成される膜厚は決まっており、要求される時間内に所望の膜厚を形成するためには、要求される時間内に必要なサイクル数の処理を行うことが必要になってくる。要求される時間内に必要なサイクル数を行うためには、1サイクルあたりの時間が必然的に決まってくるが、生産に関する経済性を満足する時間あたりの成膜可能枚数、つまりスループットを達成するには、1サイクルあたりの時間に対し、例えば1秒以内が要求される場合がある。
この場合、上記ガスA、Bおよび非反応物は、各ステップに要する時間を同じとすると、4分の1秒間だけ処理室1に供給されなければならない。ガスAが液体を気化させて生成するものである場合、4分の1秒間だけ一定流量を流すといった機敏な動作が必要になってくる。この点で、上述したALD装置の液体原料供給システム19では、吐出駆動制御機構からの吐出指令でオープンループ制御しながら気化部31への吐出量を制御することにより、4分の1秒間だけ一定流量を流すといった機敏な動作を容易に実現できる。また、反応ガス供給システム28でも、絞り73とプラズマのON/OFF制御で処理室1への流量を制御することにより、4分の1秒間だけ一定流量を流すといった機敏な動作を容易に実現できる。したがって、実施形態の反応物供給システム19は、特にALD法に用いることが好ましい。
また、ALD法では、第6図に示すようなシーケンスでガスを切換えるが、原料導入後のパージのサイクルでは、残留した余分な原料を完全に排気することが望まれる。コントローラが気化器と別体の従来方式をALD法に適用した場合では、第3図(A)(b)のように気化特性の立下がりがだれるため、原料がパージシーケンス中でも導入されつづけ、処理室1から十分に原料ガスを排気させることができない。これに対し、コントローラが気化器と一体の実施の形態による方式では、第3図(B)(b)のように、原料を吐出駆動制御機構6の指令に対して応答性良く液体原料を封止できるので、パージシーケンス中に処理室1から完全に原料を排気することが可能となる。また、反応ガスである活性化した酸素Oも同様にパージシーケンス中に処理室1から完全に原料を排気することが可能となる。
また、ALD法は、成膜機構にセルフリミットがかかっているので、1サイクルあたりの成膜膜厚は数Å〜十分の数Åになる。そのため、単位時間あたりの成膜レートを向上させるには、第6図に示すような1サイクルの周期をできるだけ短くする必要がある。この見地からするとオープンループ制御で高速に原料の吐出/非吐出(導入/封止)を制御できる実施の形態の方式は、フィードバック制御方式に比べて優位にある。また、最近では、成膜機構にセルフリミットがかからない場合でも、短時間の原料導入による原子層に近い単位での成膜、反応ガス導入による酸化あるは窒化や、不純物除去を繰り返す処理もALDと呼ぶことがあるが、これらの方式にも、本発明を適用することができ、これらも従来方式に比べて優位である。なお、短時間の原料導入による原子層に近い単位での成膜と不純物除去を繰り返す処理としては、例えば、有機液体原料を気化したガス供給による成膜と、プラズマ励起ガス供給による改質とを繰り返すMRCVD法がある。
また、ALD成膜のための装置の実施例としては、前述したように、特許文献4のようにバルブレスで気相バリアを用いて原料高速切換を行うようにする方法もあるが、この場合、原料は供給し続けるので、処理室への原料導入時以外は原料を無駄に捨てることとなり、その分コストが高くなるというデメリットがある。この点で、実施の形態による弁体ないしバルブ切換え方式では、原料を処理室に導入する場合だけしか原料を消費しないので、原料資源の有効利用が図れる。
ところで、上述したALD法では、第6図に示すように、液体原料供給シーケンスにおいて、液体原料の気化部31への1回の吐出動作における流量を、気化ガスの基板への1回の供給動作に対応する流量と同等になるように液体流量を制御する場合について、すなわち1ステップ内で1回の吐出制御をする場合について説明した(第1実施例)。この場合、例えば、液体原料が気化しているときに、液体原料が触れる気化器3の内壁、特に気化容器40の内壁からは、気化熱が奪われ温度が下がり、気化効率が下がることがある。これを防止するために、例えば、第7図に示すように、液体原料供給のシーケンスを変更し、液体原料の気化部31への1回の吐出動作における流量を、気化ガスのウェハへの1回の供給動作に対応する流量よりも少なくし、吐出回数により流量を制御するとよい(第2実施例)。このように液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、反応物の基板への1回の供給動作に対応する流量よりも少なくし、1ステップ内で複数に分けて吐出して、その吐出回数により流量を制御すると、1回の供給動作期間中に液体原料が気化部へ吐出されない非吐出期間が形成されて、その期間中、低下した気化部の温度を回復させることができる。したがって、気化部の温度低下に起因して気化効率が下がることを防止できる。
なお、実施の形態と特許文献1〜3(従来例1〜3)との吐出方法の違いを示せば第8図の通りである。実施の形態では、複数の反応物が間に非反応物の供給を挟んで交互に供給されるALDであるため、他の反応物や、非反応物が供給される時は、一の反応物の間欠的な供給が断たれるのに対して、従来例のものは、複数の反応物が混合されて連続的に供給されるCVDないしMOCVDであるため、反応物の間欠的な供給は断たれることはない。
なお、上述した実施の形態では、ALD成膜のための反応ガスの高速導入のための反応ガス供給システムとして、反応ガスがリモートプラズマユニットを必要とする酸素Oを扱う場合について説明したが、反応ガスの種類によっては、これとは異なる反応ガス供給システムを採用する必要がある。これを、オゾンOと水HOの例をとって説明する。
オゾンの場合は、反応ガス供給システムとして、第15図のような構成を用いる。オゾン発生器82からは、配管84を介して常に一定の流量でオゾンが流れている。配管84は、その下流で配管85とバイパスライン86とに分岐される。分岐した一方の配管85は処理室1を介してポンプ90に接続される。分岐した他方のバイパスライン86はオゾンキラー83を介してポンプ90に接続される。配管85には、上流がら下流にかけて流量絞り87、第2バルブ89、保管容器91、及び第1バルブ88が設けられる。配管85、バイパスライン86は処理室1側の方からポンプ90で真空に引かれており、配管85に設けた第1バルブ88、および第2バルブ89が開であれば、配管85に設けた流量絞り87により調整された流量で、オゾンOは主に処理室1側に流れるようになっている。オゾンOを処理室1に導入しない場合は、第1バルブ88を閉じる。保管容器91に、或る一定圧のオゾンが導入されると、オゾンOはバイパスライン86側へ流れ、オゾンキラー83を通って排気される。処理室1へのオゾンOの導入は、第1バルブ88を開き、第2バルブ89を閉じることにより行う。より高速な動作が必要な場合は、流量絞り87とオゾン発生器82からの流量とを調整し、第2バルブ89を不要とすることも可能である。また、保管容器91は配管で構成してもよい。
反応ガスが水HOの場合は、反応ガス供給システムとして、第16図に示すような水容器92へ純水(脱イオン水)を充てんする。この水容器92に、水分を導出する第1配管94を挿入する。第15図に示すシステムの配管84からオゾン発生器82を取り外し、配管84に第1配管94を接続することによって、水容器92をオゾン発生器82の代わりにシステムに接続する。第1配管94から蒸気圧に従い気化される水分をシステムに導入する。この際、第16図(a)の第2配管93からキャリアガスとしてHeのような不活性ガスを流しても良い。また、第16図(b)に示すように、第2配管93を容器92内の水中に挿入して、バブリングを行っても良い。
次に、本発明を適用したALD法による成膜の実施例を示す。液体原料には、金属―配位子錯体前駆物質の、当該配位子がアルキル、アルコキシド、ハロゲン、水素、アミド、イミド、アジ化物イオン、硝酸根、シクロペンタジニエル、カルボニル、並びにそれらのフッ素、酸素および窒素置換類似物からなる群より選ばれる組成物が選ばれる。反応ガスとしては、通常、水、酸素、アンモニアでよいが、時には何らかの方法で活性化されたラジカルやイオンの場合もある。また、反応ガスは、「反応」という言葉を使用するが、実際には「原料」と反応を起こさないが、「原料」の自己分解反応にエネルギーを与えるものでも良い。例えば、プラズマなどで活性化された希ガスや不活性ガスの場合もある。
ここでは、具体的な例として、「原料」には、TMA(Al(CH:トリメチルアルミニウム)や、TDEAHf(Hf(N(C:テトラキスジエチルアミドハフニウム)を、「反応ガス」には、O(オゾン)を用い、それぞれ、Al(アルミナ)やHfO(ハフニア:酸化ハフニウム)を成膜する。ここで、処理室の圧力は、100〜1Paを用いる。また、Siウェハの温度は、原料ガスの自己分解温度の違いにより150〜500℃の範囲内を用いる。たとえば、TMAおよびTDEAHfでは、200〜400℃を用いる。
ここで、第6図に示すように、この原料導入、パージ、反応ガス導入とパージの4ステップからなるサイクルを繰り返し成膜する。この場合、各々の1ステップの時間は、0.1秒から数秒とする。このとき、1サイクルあたりの成膜膜厚はウェハ温度により0.7〜2Å程度になる。このサイクルを繰り返して所定膜厚の薄膜を形成する。例えば、AlやHfOをゲート絶縁膜やキャパシタ絶縁膜として用いる場合、数〜数十サイクル繰り返して15〜50Å成膜する。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、複数の反応物の供給工程を複数回繰り返すことにより基板を処理する際に、反応物である原料を無駄に捨てることなく、反応物の高速切換えが行え、基板処理のスループットを向上させることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの反応物を基板上に供給する工程と、他の反応物を基板上に供給する工程と、これらの工程を複数回繰り返すことにより基板を処理する工程とを有する半導体デバイスの製造方法であって、
前記反応物の両方又は何れか一つは液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を固定化し、液体原料を気化部に間欠的に吐出させるように制御することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、前記気化部で気化させた原料ガスの基板上への1回の供給動作に対応する流量と同等にしたことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、前記気化部で気化させた原料ガスの基板への1回の供給動作に対応する流量よりも少なくし、吐出回数により流量を制御することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記処理とは、一つの反応物を基板上に供給して吸着させる工程と、基板上に吸着させた反応物に対して他の反応物を供給して反応を起こさせ膜を形成する工程と、を複数回繰り返す制御を行うことにより所望の膜厚の膜を形成するALD処理であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
基板を処理する処理室と、
液体原料を収容する容器と、
前記液体原料を気化させる気化部を有する気化器と、
前記容器内に収容された液体原料を気化器へ供給する液体原料供給管と、
前記気化器で気化した原料ガスを処理室内に供給する原料ガス供給管と、
前記液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を固定化し、液体原料を気化部に間欠的に吐出させるよう制御する吐出駆動制御機構と、
前記原料ガスとは異なる反応物を処理室内に供給する供給管と、
前記原料ガスの処理室内への供給と、その後に行う原料ガスとは異なる反応物の処理室内への供給を複数回繰り返すよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、更に液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、気化部で気化させた原料ガスの基板への1回の供給動作に対応する量と同等にするよう制御する機能を有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、更に液体原料の気化部への1回の吐出動作における流量を、前記気化部で気化させた原料ガスの基板への1回の供給動作に対応する流量よりも少なくし、吐出回数により流量を制御する機能を有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、更に一つの反応物を基板上に供給して吸着させる工程と、基板上に吸着させた反応物に対して他の反応物を供給して反応を起こさせ膜を形成する工程と、を複数回繰り返すことにより、基板に対してALDによる成膜を行うよう制御する機能を有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御手段は、更に液体原料を気化部へ圧送する圧力と気化部への1回の吐出動作における流量との相関関係を予め測定しておき、その相関関係に基づいて1回の吐出動作における流量を校正する機能を有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記気化部と容器との間に液体流量計を設け、液体流量計に電気的に接続された流量調節機構を有する吐出駆動制御機構を設置し、
前記流量調節機構は液体流量計からの電気信号に基づいて、ある一定時間或いはある一定吐出回数の積分流量を計算し、経時的にその積分流量を監視し、気化部への1回の吐出動作における流量の経時的な変化を調節する制御手段を有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記気化器を、液体原料を気化する気化部と、該気化部へ液体原料を送る流路と、前記気化部への液体原料の吐出/非吐出を弁の開閉により制御するとともに、開制御時に前記流路に送られる液体原料の流量を弁の開度調節により制御する弁体とを一体的に有するインジェクション方式の気化器で構成し、前記弁体の開度調節、開閉を前記吐出駆動制御機構により行うことを特徴とする請求の範囲第5項に記載の基板処理装置。

【国際公開番号】WO2004/040630
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548036(P2004−548036)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013606
【国際出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】