説明

半導体デバイスウェハーからイオン注入フォトレジストを洗浄するためのストリッピング組成物

本発明は、ストリッピング組成物と、注入フォトレジストを洗浄する方法でのそのようなストリッピング/洗浄組成物の使用とに関し、この組成物は、シリコン、チタン、窒化チタン、タンタル、およびタングステンに適合可能なものである。半導体デバイスの表面から高ドーズ量イオン注入フォトレジストを除去するための組成物であって、65℃を超える引火点を有する少なくとも1種の溶媒、ニトロニウムイオンを提供する少なくとも1種の成分、および少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物を有する組成物と、半導体デバイスの表面から高ドーズ量イオン注入フォトレジストを除去するための、そのような組成物の使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリッピング組成物と、注入フォトレジストを洗浄する方法でのそのようなストリッピング/洗浄組成物の使用とに関し、この組成物は、シリコン、チタン、窒化チタン、タンタル、およびタングステンに適合可能なものである。本発明のストリッピング組成物は、イオン注入ステップの後に、高エネルギー/高ドーズ量イオンで注入されたバルクフォトレジストを半導体デバイスの表面から除去し、ストリッピングプロセス中のSi、Ti、TiN、W、またはTaのエッチングを予防するためのものである。
【背景技術】
【0002】
多くのイオン注入ステップは、半導体デバイスの製作全体を通して、特にフロントエンド処理中に行われる。このプロセス中、フォトレジストは、注入される領域をマスクオフするのに使用され、イオンは所望の注入領域内に注入される。注入物は、例えば、ヒ素、ホウ素、またはリンの注入物とすることができる。これらのステップで使用される高エネルギーイオンは、フォトレジストクラストを炭化し、脱水し、フォトレジストを架橋し、フォトレジスト環構造の破壊を引き起こし、無機材料をフォトレジストの外面の中に残す。このクラストは、特にソース/ドレイン注入中に使用されるような高エネルギー/高ドーズ量注入の場合、フォトレジストの除去を極めて難しくする。注入フォトレジストは、通常、灰化後にHSOおよびHで処理する組合せを使用して、表面から除去される。HSOおよびHの混合物(SPM)は、灰化なしでも使用されている。これらのプロセスは、材料損失の要件を満足させず、より高いドーズ量で注入されたフォトレジストを完全には除去せず、時間のかかるプロセスであり、かつ多数のステップを必要とするので、より新しいテクノロジーノードでは望ましくない。メモリデバイスの場合、HSO/Hの化学的性質も、タングステンに適合しないので望ましくない。高金属ゲートデバイスの場合、TiN、Ti、およびTaの適合性が非常に重要であるが、それは特に、前述のSPMプロセスなどの現行プロセスがこれらの材料に適合しないからである。したがって、ストリッピングプロセス中にシリコンおよびTi、TiN、W、またはTaとも適合可能な高エネルギー/高ドーズ量イオン注入フォトレジストを除去するための、改善されたストリッピング組成物が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の組成物は、そのような高エネルギーおよび高ドーズ量(>15原子/cm)イオン注入フォトレジストを、シリコン、タングステン、チタン、窒化チタン、またはタンタルをエッチングすることなく、イオン注入ステップ後にマイクロエレクトロニクスデバイスの表面からストリッピングするためのものである。本発明の組成物は、(1)65℃を超える引火点、好ましくは110℃を超える引火点、より好ましくは145℃よりも高い引火点、さらにより好ましくは約165℃の引火点を有する1種または複数の溶媒、最も好ましくはスルホラン、(2)ニトロニウムイオンを提供する少なくとも1種の成分、および(3)少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。より好ましくは、本発明の組成物は、(1)約10重量%から約94.99重量%の溶媒、(2)約5重量%から約90重量%のニトロニウム(NO)イオンを提供することが可能な少なくとも1種の成分、および(3)約0.01重量%から約5.0重量%のホスホン酸化合物である少なくとも1種の腐食防止剤を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。ニトロニウムイオンを提供する成分は、(1)ニトロニウム化合物を含有する溶液であってもよく、または(2)硝酸もしくは硝酸塩からニトロニウムイオンが発生するように、硝酸よりも強い酸(即ち、硝酸よりも低いpKaまたはより高いKaを有する酸)と混合される硝酸もしくは硝酸塩によって提供してもよい。任意選択で、組成物は、当技術分野で一般に公知の界面活性剤および金属キレート剤を含有していてもよい。パーセンテージは、(1)溶媒成分、(2)ニトロニウム化合物または強酸/硝酸もしくは硝酸化合物、および(3)ホスホン酸腐食防止剤成分の合計重量に対する重量パーセントである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明の組成物に有用なニトロニウム化合物を含有する溶液は、任意の適切なニトロニウム化合物の溶液であってもよい。適切なニトロニウム化合物としては、テトラフルオロホウ酸ニトロニウム(NOBF)、過塩素酸ニトロニウム(NOClO)、フルオロ硫酸ニトロニウム(NOSOF)、およびトリフルオロメタンスルホン酸ニトロニウム(NOSOCF)などを挙げることができる。テトラフルオロホウ酸ニトロニウムの溶液が、ニトロニウムイオンを提供するニトロニウム化合物として好ましい。
【0005】
硝酸よりも強い酸と混合したときにニトロニウムイオンを提供する任意の適切な化合物を本明細書の組成物で用いてもよい。そのようなニトロニウムイオンを提供するのに適したそのような化合物には、硝酸および硝酸塩がある。例えば、硝酸テトラアルキルアンモニウム、硝酸カリウム、および硝酸ナトリウムなど、任意の適切な硝酸塩を用いてもよい。硝酸が、一般に好ましい。ニトロニウムイオンは、例えば、この目的のためその場で、平衡式
2HSO+HNO⇔2HSO+NO+H
に従って、強酸(即ち、硝酸よりも低いpKaまたはより高いKaを有する酸)、例えば硫酸と硝酸とを混合するなどにより、発生する。
【0006】
硝酸または硝酸化合物と共に硝酸よりも強い任意の適切な酸を酸として用いて、本発明の組成物にニトロニウムイオンを提供してもよい。硝酸よりも強いそのような酸の例として、例えば、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびテトラフルオロホウ酸などが挙げられる。そのような強酸と、組成物の残りの成分、即ち溶媒、硝酸または硝酸塩、およびホスホン酸腐食防止剤との重量比は、強酸/残りの成分の比が約20:1から約1:10であり、好ましくは強酸/調合物の比が約10:1から約1:10であり、より好ましくは強酸/残りの成分の比が約9:2から1:5であり、さらにより好ましくは9:2の比である。
【0007】
任意の適切なホスホン酸腐食防止剤を、本発明の組成物に用いることができる。適切なホスホン酸腐食防止剤としては、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETPA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸(methylenephosphonic))1,5,9−トリアザシクロドデカン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチレン−1,1−ジホスホン酸、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、および1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(NOTP)などを挙げることができる。好ましくは、ホスホン酸腐食防止剤は、アミノトリメチレンホスホン酸である。必要に応じて、最小限の量の水、一般には組成物の全重量に対して約5重量%未満の水を、ホスホン酸腐食防止剤と共に用いて、その溶解度を高めることができる。しかし、水は用いないことが好ましい。
【0008】
組成物は、65℃よりも高い、好ましくは110℃よりも高い、より好ましくは145℃よりも高い、最も好ましくは約165℃以上の引火点を有し、かつ強酸に適合性のある、任意の適切な溶媒の少なくとも1種または複数を用いてもよい。本発明の組成物で使用するのに適した溶媒の例には、下記の例示的な溶媒、3−アミノ−1−プロパノール、安息香酸ブチル、ジメチルスルホキシド、エチルヘキシルアセテート、ヘキサン酸、イソホロン、メチルアニリン、ニトロベンゼン、オキセタノン、フェニルヒドラジン、プロパンジオール、サリチルアルデヒド、テトラヒドロナフタレン、テトラメチル尿素、トリクロロプロパン、トリメチルホスフェート、およびウンデカンであって65℃から109℃の間の引火点を有するもの、クロロナフタレン、ジベンジルエーテル、ジエチルマレエート、ペンタンジオール、フェノキシエタノール、プロピレンカーボネート、テトラデカン、およびトリエチルホスフェートであって110℃から144℃の間の引火点を有するもの、セバシン酸ジブチル、ジメチルフタレート、グリセロール、スルホラン、およびトリエチレングリコールであって145℃を超える引火点を有するものが含まれるが、これらに限定するものではない。少なくとも1種の溶媒は、好ましくはスルホランである。
【0009】
本発明の実施形態において、イオン注入フォトレジストのストリッピング組成物による有効な洗浄は、イオン注入フォトレジストを除去するのに適した任意の時間および温度でフォトレジストと本発明の組成物とを接触させることによって行う。一般に、そのような洗浄は、約65℃から約160℃の温度で、最長約40分に及ぶ時間にわたって行われることになるが、一般には、利用される特定の組成物と、除去される特定のイオン注入フォトレジストとに応じて、約2分未満である。当業者なら、用いられる特定の組成物およびこの組成物が用いられる手法、ならびに注入プロセスで用いられるイオンドーズ量および注入エネルギーを基にして、時間および温度を容易に決定するであろう。
【0010】
本発明の特定の好ましい調合物は、約49.75重量%のスルホラン、約49.75重量%の硝酸(70%)、および約0.50重量%のアミノトリメチレンホスホン酸を含有するものである。この調合物と、硝酸よりも強い酸、好ましくは硫酸とを、この硫酸と組成物の残りの成分との重量比が約9:2となるように混合する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、溶媒、用いる場合には強酸、および任意選択でホスホン酸腐食防止剤が、本発明の所望のストリッピング温度よりも高い温度に加熱される場合であり、本発明のニトロニウム化合物または硝酸もしくは硝酸化合物が、加熱された成分に添加され、その直後にストリッピング操作が行われる。加熱された成分に添加されるニトロニウム化合物または硝酸もしくは硝酸化合物は、加熱した成分に添加される前に、一般にほぼ室温の温度で維持されることになる。任意選択で、ホスホン酸腐食防止剤および/または溶媒は、強酸と共に加熱する代わりに、ニトロニウム化合物または硝酸もしくは硝酸化合物と共に用いてもよい。ニトロニウム化合物または硝酸もしくは硝酸化合物を、溶媒または溶媒および強酸と混合する前に100℃を超える温度に加熱することにより、本発明の、得られた組成物のストリッピング性能に、著しく望ましくない損失が引き起こされる可能性がある。さらに、洗浄プロセスを行うのに必要とされる温度で、1種の溶液中で必要とされる成分全ての混合物は非常に不安定であり、したがって、使用前に、完全な組成物のかなりの貯蔵時間を生じるべきではない。
【0012】
完全な組成物に関するその使用前のかなりの貯蔵時間を全く必要とせずに、本発明の組成物を得る1つの方法は、組成物の成分の一部を有する2つ以上の容器を維持することであり、これらの容器は、組成物をマイクロエレクトロニクスデバイスのストリッピング剤/クリーナーとして使用する直前に容器の成分が組み合わされるように、即ち一緒に混合されるように、接続されているものである。より具体的には、本発明の組成物は、溶媒、硝酸よりも強い酸、およびホスホン酸腐食防止剤成分の少なくとも1種または複数が、イオン注入フォトレジストを洗浄するのに使用される温度よりも高い温度に加熱される状態で形成されてもよく、この組成物は、加熱された(1種または複数の)成分と、ほぼ室温の温度で維持されておりまたは100℃より低い温度に加熱され、好ましくは約25℃である硝酸ニトレート成分とを混合することによって形成され得る。組成物は、半導体デバイスの表面からの高ドーズ量イオン注入フォトレジストのクリーナーとしての使用前約5分以内の時間に、組成物の全ての成分を一緒に混合することにより形成することが、特に好ましい。この形成を行うための、そのような1つの装置は、ラインを介してスプレー装置に接続されたいくつかの容器を備え、これら容器の成分は、スプレー装置のスプレーヘッドの直前で組み合わされる。様々な容器は、組成物の1種または複数の成分を、必要に応じて加熱されたまたは加熱されない形で有していてもよい。例えば、第1の容器は、約165℃の温度に維持された強酸を含有していてもよく、第2の容器は約110℃の溶媒および腐食防止剤を、第3の容器は約25℃の硝酸を含有していてもよい。別の実施形態では、第1の容器は、約165℃の温度の強酸のほとんどを含有していてもよく、第2の容器は、約110℃の温度の溶媒および少量の強酸、腐食防止剤、および水を、第3の容器は、約25℃の温度の硝酸を含有していてもよい。別の実施形態は、約165℃の温度に加熱された溶媒および強酸を含有する第1の容器と、室温の硝酸およびホスホン酸腐食防止剤を含有する第2の容器とを備える。一般に、全ての成分は、混合によって所望の使用(ストリッピング)温度が得られるように、適切な温度に加熱される。一般に、様々な可能性ある実施形態での容器の成分は、洗浄プロセスにおける使用前約5分以内に混合され、混合された成分の温度は、約145℃から約165℃の範囲にある。用いられる温度は、組成物の成分と、注入バルクフォトレジストを得るのに用いられるイオンドーズ量およびイオン注入エネルギーに依存することになる。
【0013】
一般に、容器の成分の、任意の可能性ある組合せは、強酸(例えば、硫酸)および硝酸または硝酸塩が同じ容器になく、硝酸またはニトレート酸(nitrate acid)が一般に約100℃よりも高い温度に、好ましくは約25℃よりも高い温度に加熱されないことを前提に、可能である。本発明の一態様は、必ずしも全ての成分が洗浄温度に加熱されるわけではない。様々な成分は、混合により、得られる混合物の温度が所望の洗浄温度に達する点まで、加熱される必要があるだけである。その例は、本発明の洗浄プロセスで使用されるスプレー装置に接続させることによって用いてもよい成分の容器の下記の実施例であるが、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
好ましい実施例は、下記の3種の溶液の混合物である。
容器1−25%硫酸、165℃;
容器2−44%溶媒(スルホラン)、4%硫酸、2%腐食防止剤(アミノトリメチレンホスホン酸)、110℃;および
容器3−25%硝酸、25℃。
【0015】
3つの容器の成分を、対象のウェハーの洗浄から5分以内に混合する。混合温度は約145°〜165℃である。ウェハーを、イオンドーズ量およびイオン注入エネルギーに応じて0.5から5分間洗浄する。W(<0.1Å/分)、TiN(1.4Å/分)、およびTa(<0.1Å/分)に適合性がある。
【0016】
(実施例2)
別の好ましい3種の溶液混合物は、下記の通りである。長時間の保存中、腐食防止剤を溶解してに保持するために、水を添加する。
容器1−25%硫酸、165℃;
容器2−40%溶媒(スルホラン)、3.64%硫酸、1.82%腐食防止剤(アミノトリメチレンホスホン酸)、および4.54%水、110℃、ならびに
容器3−25%硝酸、25℃。
【0017】
3種の溶液を、対象のウェハーの洗浄から5分以内に混合する。混合温度は約145°〜165℃である。ウェハーを、イオンドーズ量およびイオン注入エネルギーに応じて0.5から5分間洗浄する。
【0018】
(実施例3)
別の好ましい3種の溶液の実施形態は、下記の通りである。
容器1−20%硫酸、165℃、
容器2−64%溶媒(スルホラン)、4.0%硫酸、2.0%腐食防止剤(アミノトリメチレンホスホン酸)、110℃、および
容器3−10%硝酸、25℃。
【0019】
3種の溶液を、対象のウェハーの洗浄から5分以内に混合する。混合温度は約145°〜165℃である。ウェハーを、イオンドーズ量およびイオン注入エネルギーに応じて0.5から5分間洗浄する。TiN(0.21Å/分)に適合性がある。
【0020】
(実施例4)
別の好ましい3種の溶液の実施形態は、下記の通りである。
容器1−10%硫酸、165℃、
容器2−64%溶媒(スルホラン)、4.0%硫酸、2.0%腐食防止剤(アミノトリメチレンホスホン酸)、および4.54%水、110℃、ならびに
容器3−20%硝酸、25℃。
【0021】
3種の溶液を、対象のウェハーの洗浄から5分以内に混合する。混合温度は約145°〜165℃である。ウェハーを、イオンドーズ量およびイオン注入エネルギーに応じて0.5から5分間洗浄する。TiN(<0.10Å/分)に適合性がある。
【0022】
(実施例5)
別の好ましい2種の溶液の実施形態は、下記の通りである。
容器1−26%硫酸、44%スルホラン(165℃)、および
容器2−26%HNO3、4%腐食防止剤(アミノトリメチレンホスホン酸)、室温。
【0023】
3種の溶液を、対象のウェハーの洗浄から5分以内に混合する。混合温度は約145°〜165℃である。ウェハーを、イオンドーズ量およびイオン注入エネルギーに応じて0.5から5分間洗浄する。TiN(1.38Å/分)に適合性がある。
【0024】
本発明の組成物のストリッピングおよび非腐食性能を、本発明の下記の組成物を利用した下記の試験結果により例示するが、これらに限定するものではない。試験で用いられる本発明の組成物は、(1)約49.75重量%のスルホラン、約49.85重量%の硝酸(70%)、および約0.50重量%のアミノトリメチレンホスホン酸を含有する室温の調合物と、(2)ストリッピング温度に加熱された硫酸とを、硫酸と組成物の残りの成分との重量比が約9:2になるように混合することによって形成された組成物であった。ヒ素、リン、およびホウ素イオン注入がなされたウェハーを、組成物溶液で約2から3分間、即座に処理した。洗浄は、光学顕微鏡法およびSEMにより決定した。結果は、表1に示す通りであった。
【0025】
【表1】

本発明の組成物で得られた洗浄は、SPMで得られた場合に匹敵するが、SPMの洗浄で遭遇する腐食はなかった。
【0026】
表2は、性能に合わせて最適化された、HSOとスルホラン/硝酸の混合物を示す。イオン注入フォトレジストの洗浄は、高ドーズ量注入がなされたウェハーに行った(5×1015〜1×1016原子 As/cm、10keV)。成分を全て一緒に混合し、次いで加熱した。イオン注入フォトレジストのウェハーを、これら調合物で、85℃で40分間洗浄し、その洗浄性能は、0または1のスコアを与えた(1は清浄、および0は全く清浄でない。)。この表2のデータは、最良の洗浄性能のためには50%を超えるHSOが混合物に必要であることを示す。これに加え、硝酸が洗浄に必要である。
【0027】
【表2】

W、Ti、TiN、およびTaの、可能性あるエッチングに関するエッチング速度データは、(1)約49.75重量%のスルホラン、約49.75重量%の硝酸(70%)、および約0.50重量%のアミノトリメチレンホスホン酸を含有する室温の調合物と、(2)65℃、90℃、および140℃のストリッピング温度に加熱された硫酸とを、硫酸と組成物中の残りの成分との重量比が約9:2になるように混合することによって形成された本発明の組成物に関して得られた。本発明のこの組成物に関するエッチング速度の結果を、SPM(5重量部の加熱されたHSO/加熱されたHSOに添加された1重量部の室温のH)に関するエッチング速度と、同じ洗浄温度で比較した。試験金属の金属種を、形成された試験組成物に即座に浸漬して、エッチング速度で処理した。エッチング速度(オングストローム/分を単位とする。)は、厚さを測定するのに4点プローブを使用して決定した。表3のこれらの結果は、低温での洗浄の場合、本発明のストリッピング組成物が、SPMにより得られた金属適合性よりも試験をした全てのそれらの金属に対して良好な金属適合性を示したことを示す。高温では、本発明の組成物は、WおよびTaに関して改善された金属適合性を示した。
【0028】
【表3】

スルホランおよびホスホン酸腐食防止剤は、低いTiNエッチング速度を得るために、調合物に必要とされる。全てのエッチング速度は、HSOが85℃に加熱され、次いで調合物のその他の成分が室温で添加される、組成物に関して決定した。エッチング速度は2分間にわたり測定した。表4は、本発明の硝酸含有調合物/HSO混合物の、様々な種類に関するTiNエッチング速度を示す。スルホランおよびホスホン酸腐食防止剤の両方は、低いTiNエッチング速度を維持するのに必要であることが明らかである。比較では、SPMは、85℃で混合したときに、TiNに関して150Å/分超という許容できないエッチング速度を示す。
【0029】
【表4】

Siエッチングの適合性は、(1)約49.75重量%のスルホラン、約49.75重量%の硝酸(70%)、および約0.50重量%のアミノトリメチレンホスホン酸を含有する室温の調合物と、(2)140℃のストリッピング温度に加熱された硫酸とを、硫酸と組成物中の残りの成分との重量比が約9:2になるように混合することによって形成された組成物で、シリコン被膜を5分間処理することによって決定した。このプロセスを、同じウェハーの小片に対して20回繰り返した。これらの処理の後、断面SEMにより測定したときに、シリコンの測定可能なエッチングはなかった。
【0030】
本発明について、その特定の実施形態を参照しながら記述してきたが、本明細書に開示される本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく、変更、修正、および変形がなされ得ることが理解されよう。したがって、添付される特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる、全てのそのような変更、修正、および変形例を包含することが企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
65℃を超える引火点を有する少なくとも1種の溶媒、
ニトロニウムイオンを提供する少なくとも1種の成分、および
少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物
を含む、半導体デバイスの表面から高ドーズ量イオン注入フォトレジストを除去するための組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の溶媒がスルホランである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ニトロニウムイオンを提供する前記少なくとも1種の成分が、テトラフルオロホウ酸ニトロニウム(NOBF)、過塩素酸ニトロニウム(NOClO)、フルオロ硫酸ニトロニウム(NOSOF)、およびトリフルオロメタンスルホン酸ニトロニウム(NOSOCF)からなる群から選択されたニトロニウム化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ホスホン酸腐食防止剤化合物が、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETPA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸(methylenephosphonic))1,5,9−トリアザシクロドデカン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチレン−1,1−ジホスホン酸、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、および1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(NOTP)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の溶媒がスルホランであり、前記ニトロニウム化合物がテトラフルオロホウ酸ニトロニウムであり、前記ホスホン酸腐食防止剤化合物がアミノトリメチレンホスホン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒が、スルホランであり、約10重量%から約94.99重量%の量で存在し、ニトロニウムイオンを提供する前記少なくとも1種の成分が、約5重量%から約90重量%の量で存在し、前記少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤が、約0.01重量%から約5.0重量%の量で存在し、該重量パーセントは、スルホラン、ニトロニウムイオンを提供する成分、およびホスホン酸腐食防止剤化合物を組み合わせた合計重量に基づくものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
65℃を超える引火点を有する少なくとも1種の溶媒、
ニトロニウムイオンを提供し、硝酸および硝酸塩からなる群から選択された、少なくとも1種の成分、
少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤、および
硝酸よりも強い酸
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶媒がスルホランである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
硝酸よりも強い前記酸が、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびテトラフルオロホウ酸からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
ニトロニウムイオンを提供する前記少なくとも1種の成分が硝酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記ホスホン酸腐食防止剤化合物が、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETPA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸(methylenephosphonic))1,5,9−トリアザシクロドデカン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチレン−1,1−ジホスホン酸、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、および1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(NOTP)からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の溶媒がスルホランであり、硝酸よりも強い前記酸が硫酸であり、前記ホスホン酸腐食防止剤化合物がアミノトリメチレンホスホン酸であり、ニトロニウムイオンを提供する前記少なくとも1種の成分が硝酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
硝酸よりも強い前記酸と、前記組成物の残りの成分との重量比が、約20:1から1:10である、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
硝酸よりも強い前記酸が硫酸であり、前記硫酸/組成物の残りの成分の重量比が約9:2からである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
約49.75重量%のスルホラン、約49.75重量%の硝酸(70%)、および約0.50重量%のアミノトリメチレンホスホン酸を含み、
該成分が、硫酸と該成分との重量比約9:2で、硫酸と混合される、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
前記溶媒、硝酸よりも強い前記酸、および前記ホスホン酸腐食防止剤成分の少なくとも1種または複数が、イオン注入フォトレジストの洗浄に使用される温度よりも高い温度まで加熱されており、前記組成物は、該加熱された(1種または複数の)成分と、ほぼ室温の温度で維持されているニトロニウムイオンを提供する前記成分とを混合することによって形成される、請求項7に記載の組成物。
【請求項17】
半導体デバイスの表面からの高ドーズ量イオン注入フォトレジストのクリーナーとしての使用前約5分以内の時間に、組成物の全ての成分を一緒に混合することによって形成される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
高ドーズ量イオン注入フォトレジストと、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物とを、該フォトレジストを除去するのに十分な時間および温度で接触させるステップを含む、半導体デバイスの表面から高ドーズ量イオン注入フォトレジストを除去するための方法。
【請求項19】
ニトロニウムイオンを含有するさらなる組成物を形成するために、硝酸または硝酸塩に添加するための組成物であって、
65℃を超える引火点を有する少なくとも1種の溶媒、
少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤、
硝酸よりも強い酸、および
任意選択で、該組成物の全重量に対して5重量%未満の量の水
を含む組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の溶媒がスルホランであり、前記少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤がアミノトリメチレンホスホン酸であり、硝酸よりも強い前記酸が硫酸である、請求項19に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−518716(P2012−518716A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552069(P2011−552069)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/024529
【国際公開番号】WO2010/099017
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(592162807)アバントール パフォーマンス マテリアルズ, インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】J T BAKER INCORPORATED
【Fターム(参考)】