説明

半導体モジュールの製造方法

【課題】半導体チップと基板との間の隙間に充填されるアンダーフィルが不所望領域へ広がりにくい半導体モジュールの製造方法を提供すること。
【解決手段】フリップチップ実装された半導体チップ5と対向する基板1上の銅箔パターン2(電極20群やグラウンド電極21)がビア導体3を介して基板1の底面側の銅箔パターン2(電極22群やグラウンド電極23)と導通されており、この底面側の銅箔パターン2に熱源8を接触させた状態で、半導体チップ5と基板1との間の隙間に液状のアンダーフィル6を注入して充填させる。また、基板1上には予め所定領域に半田レジスト膜4を形成しておき、半導体チップ5と対向する方形状領域Aに形成された半田レジスト膜4の外周部で基板面露出部10に隣接する枠状部分4aが、銅箔パターン2と重なり合わずに半導体チップ5の実装領域を全周に亘って包囲するようにしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に半導体チップがフリップチップ実装されている半導体モジュールの製造方法に係り、特に、半導体チップと基板との間にアンダーフィルが充填されている半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半田バンプを有する半導体チップが基板上にフリップチップ実装されている半導体モジュールにおいては、半導体チップと基板との間の隙間にアンダーフィルを充填させるという技術が従来より広く採用されている。アンダーフィルは熱硬化性のエポキシ樹脂等からなり、充填後に所要の温度に加熱することによって硬化させることができる。このようにアンダーフィルが半導体チップと基板との間の隙間に充填されていると、半田バンプに加わる熱衝撃等のストレスがアンダーフィルによって緩和されるため、接続の信頼性が大幅に向上する。
【0003】
ところで、アンダーフィルの充填作業時には、ディスペンサ等によって液状のアンダーフィルを半導体チップと基板との間の隙間に注入するが、常温ではアンダーフィルの粘度が大きすぎるため、その硬化温度よりも低い適当な温度に加熱してアンダーフィルの粘度を低下させておく必要がある。そこで従来より、アンダーフィルの充填作業は、ホットプレート等の熱源を基板の底面に接触させた状態、あるいは高温雰囲気中で行われることが一般的である。また、アンダーフィルを加熱することに加えて、基板を傾斜させたりポンプで吸引するなどしてアンダーフィルを流れやすくし、もって作業効率の向上を図るという技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−241900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来技術では、アンダーフィルの充填作業時に、基板上における半導体チップの実装領域だけでなくその周辺も同様に加熱されるため、液状のアンダーフィルが半導体チップと基板との間の隙間から大きくはみ出して不所望領域へ広がりやすいという問題があった。例えば、基板上には半導体チップの半田バンプと対応する電極が設けられているが、一部の電極から半導体チップの実装領域の外方へ銅箔パターンが延びている場合、この銅箔パターンは加熱時に他部よりも高温になるためアンダーフィルの粘度を低下させやすく、それゆえ該銅箔パターンに沿ってアンダーフィルがはみ出すという現象が起こりやすくなる。また、基板を傾斜させたりポンプで吸引してアンダーフィルを流れやすくした場合には、アンダーフィルが下流側へ大きくはみ出しやすくなる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体チップと基板との間の隙間に充填されるアンダーフィルが不所望領域へ広がりにくい半導体モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体モジュールの製造方法は、電極を含む銅箔パターンおよびビア導体が設けられた基板の一面に対し、前記銅箔パターンの一部を覆う所定領域に絶縁性樹脂からなる半田レジスト膜を形成する第1の工程と、前記第1の工程の後に、半田バンプを有する半導体チップを前記基板の一面にフリップチップ実装する第2の工程と、前記第2の工程の後に、前記基板の一面と前記半導体チップとの間の隙間に熱硬化性樹脂からなるアンダーフィルを注入すると共に、前記基板の他面に存する前記銅箔パターンに熱源を接触させて前記アンダーフィルの硬化温度よりも低い温度で加熱することによって、前記隙間に前記アンダーフィルを充填する第3の工程と、前記第3の工程の後に、前記アンダーフィルを高温炉にて前記硬化温度で加熱することによって硬化させる第4の工程とを備え、前記第1の工程で、前記半田レジスト膜の一部が前記銅箔パターンと重なり合わずに前記半導体チップの実装領域を全周に亘って包囲するようになし、かつ第3の工程で、前記半導体チップに対向する一面側の前記銅箔パターンと前記熱源に接触する他面側の前記銅箔パターンとが前記ビア導体を介して導通されているという構成にした。
【0007】
このように半導体チップと対向する基板上の銅箔パターン(半田バンプが搭載される電極等)がビア導体を介して基板の底面側の銅箔パターンと導通されており、この底面側の銅箔パターンにホットプレート等の熱源を接触させた状態でアンダーフィルの充填作業を行えば、半導体チップと基板との間の隙間に注入された液状のアンダーフィルに熱源の熱が伝わりやすくなるため、アンダーフィルの流動性を高めて効率良く充填作業を行うことができる。また、基板上には銅箔パターンと重なり合わずに半導体チップの実装領域を全周に亘って包囲する半田レジスト膜が存するため、この半田レジスト膜上へ液状のアンダーフィルが広がると、アンダーフィルの温度が下がって粘度が大きくなり、よって液状のアンダーフィルがこの半田レジスト膜から外方へはみ出す可能性は低くなる。
【0008】
上記の製造方法において、半導体チップの略中央部と対向する位置に存する基板の一面側の銅箔パターンがグラウンド電極であると、比較的面積の大きなグラウンド電極を半導体チップの略中央部と対向させることによって、半導体チップと基板との間の隙間の略中央部で液状のアンダーフィルの流動性を特に高めることができるため、アンダーフィル充填時の作業効率が向上させやすくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体モジュールの製造方法では、半導体チップと対向する基板上の銅箔パターンがビア導体を介して基板の底面側の銅箔パターンと導通されており、この底面側の銅箔パターンに熱源を接触させた状態でアンダーフィルの充填作業を行うので、半導体チップと基板との間の隙間に注入された液状のアンダーフィルに熱源の熱が伝わりやすく、それゆえアンダーフィルの流動性を高めて効率良く充填作業を行うことができる。また、基板上には銅箔パターンと重なり合わずに半導体チップの実装領域を全周に亘って包囲する半田レジスト膜が存するため、この半田レジスト膜上へ液状のアンダーフィルが広がるとと、アンダーフィルの温度が下がって粘度が大きくなり、それゆえ液状のアンダーフィルがさらに外方へはみ出して不所望領域へ広がるという現象が起こりにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の第1実施形態例に係る半導体モジュールを模式的に示す断面図、図2は該基板の半田レジスト膜形成前の平面図、図3は該基板の半田レジスト膜形成後の平面図である。
【0011】
図1に示す半導体モジュールは、銅箔パターン2やビア導体3が設けられた基板1と、基板1上の所定領域に形成された半田レジスト膜4と、基板1上にフリップチップ実装された半導体チップ5と、基板1と半導体チップ5間に充填されたアンダーフィル6と、基板1上に実装された図示せぬ電子部品とを備えて概略構成されている。
【0012】
基板1は多層基板であり、その最上層の天面側には銅箔パターン2として多数の電極20群や比較的大きなグラウンド電極21が形成されている(図2参照)。また、基板1のの最下層の底面側には、銅箔パターン2として多数の電極22群や比較的大きなグラウンド電極23が形成されている。そして、基板1の内層や外層に設けられた対応する銅箔パターン2どうしがビア導体3を介して導通されている。例えば、天面側のグラウンド電極21と底面側のグラウンド電極23は、基板1を板厚方向に貫通する複数のビア導体3を介して導通されている。なお、基板1上には半導体チップ5の周囲に別の電子部品も実装されるが、これら電子部品は図面を簡略化するために省略してあり、同様の理由から、電極20や電極22も実際のものより総数を減らして図示してある。
【0013】
半田レジスト膜4はエポキシ系の絶縁性樹脂からなる。図3に示すように、この半田レジスト膜4は、基板1上において半導体チップ5と対向する方形状領域Aと、枠状の基板面露出部10を介して方形状領域Aの周囲に延在する周辺領域Bとに形成されており、方形状領域Aでは各電極20のランドとなる部分を除く全面を半田レジスト膜4が覆っている。そして、方形状領域Aに形成された半田レジスト膜4の外周部で基板面露出部10に隣接する枠状部分4aが、銅箔パターン2と重なり合わずに半導体チップ5の実装領域を全周に亘って包囲している。
【0014】
半導体チップ5の底面には多数の半田バンプ7が配設されており、これら半田バンプ7に対応させて基板1上の電極20群の配列が決定されている。この半導体チップ5は、各半田バンプ7を対応する電極20と接合することによって基板1上にフリップチップ実装されている。
【0015】
アンダーフィル6は熱硬化性のエポキシ樹脂等からなり、液状のアンダーフィル6を半導体チップ5と基板1との間の隙間に注入して充填させた後、所定の硬化温度で加熱することによってアンダーフィル6は硬化される。こうして半導体チップ5と基板1との間の隙間にアンダーフィル6が充填されている半導体モジュールは、半田バンプ7に加わる熱衝撃等のストレスをアンダーフィル6によって緩和することができるため、接続の信頼性が高い。
【0016】
次に、このように構成される半導体モジュールの製造方法について説明する。まず、銅箔パターン2やビア導体3が設けられた基板1を用意し、この基板1の上面の所定領域に半田レジスト膜4を形成する。前述したように、この半田レジスト膜4は基板1上の方形状領域Aと周辺領域Bとに形成され、両領域A,B間には半田レジスト膜4も銅箔パターン2も存しない基板面露出部10が枠状に介在している。次いで、半田バンプ7を電極20に位置合わせして半導体チップ5を基板1の上面に搭載した後、リフロー炉等で半田バンプ7を溶融させることによって、半導体チップ5を基板1上にフリップチップ実装する。
【0017】
しかる後、基板1の上面と半導体チップ5との間の隙間に、図示せぬディスペンサ等によって液状のアンダーフィル6を注入して充填させる。このとき、図1に示すように、基板1の底面(下面)側の銅箔パターン2(電極22群やグラウンド電極23等)にホットプレート等の熱源8を接触させて、アンダーフィル6の硬化温度よりも低い温度(約70℃)で加熱した状態でアンダーフィル6の充填作業を行う。こうすることによって、液状のアンダーフィル6に熱源8の熱が伝わりやすくなるため、アンダーフィル6の流動性を高めて効率良く充填作業を行うことができる。特に、基板1の底面側のグラウンド電極23からビア導体3を介して上面側のグラウンド電極21に多量の熱が伝導するため、半導体チップ5の中央部と基板1との間に流入したアンダーフィル6は粘度が低下して流動性が高まる。また、基板1の上面側において、半田レジスト膜4の枠状部分4aが銅箔パターン2と重なり合わずに半導体チップ5の実装領域を全周に亘って包囲しているため、この枠状部分4a上へ液状のアンダーフィル6が広がると、アンダーフィル6の溶融温度が下がって粘度が大きくなる。そのため、液状のアンダーフィル6が半田レジスト膜4の枠状部分4a上から外方へはみ出す可能性は低い。
【0018】
このようにしてアンダーフィル6の充填作業が完了した後、半導体チップ5が実装された基板1を高温炉でアンダーフィル6の硬化温度(約165℃)で加熱することによって、半導体チップ5と基板1との間の隙間に充填されたアンダーフィル6を硬化させる。本実施形態例に係る半導体モジュールはこのようにして製造されたものである。
【0019】
以上説明したように、本実施形態例に係る半導体モジュールの製造方法にあっては、半導体チップ5と対向する基板1上の銅箔パターン2(電極20群やグラウンド電極21)がビア導体3を介して基板1の底面側の銅箔パターン2(電極22群やグラウンド電極23)と導通されており、この底面側の銅箔パターン2に熱源8を接触させた状態でアンダーフィル6の充填作業を行うようにしたので、半導体チップ6と基板1との間の隙間に注入された液状のアンダーフィル6に熱源の熱が伝わりやすく、それゆえアンダーフィル6の流動性を高めて効率良く充填作業を行うことができる。また、基板1上では、方形状領域Aに形成された半田レジスト膜4の外周部で基板面露出部10に隣接する枠状部分4aが、銅箔パターン2と重なり合わずに半導体チップ5の実装領域を全周に亘って包囲しているため、この枠状部分4a上へ液状のアンダーフィル6が広がると、アンダーフィル6の溶融温度が下がって粘度が大きくなる。それゆえ、充填作業時に液状のアンダーフィル6が半田レジスト膜4の枠状部分4aから外方へはみ出して不所望領域へ広がるという現象が起こりにくくなっている。
【0020】
図4は本発明の第2実施形態例に係る半導体モジュールで用いた基板の半田レジスト膜形成前の平面図、図5は該基板の半田レジスト膜形成後の平面図であり、図1〜図3と対応する部分には同一符号が付してあるため、重複する説明は省略する。
【0021】
これらの図に示す第2実施形態例において、基板1上の電極20群はフルグリッドに対応する全ての格子点に形成されているが、このうち略中央部に位置する複数個(図では4個)の電極20は橋絡部24を介して2個ずつ導通されている。橋絡部24で導通された2個の電極20は電気的には半導体チップの1個の半田バンプに対応しているが、熱源の熱をアンダーフィルへ効率良く伝えるために、2個の電極20を橋絡部24で連結することにより、基板1上で半導体チップの略中央部と対向する銅箔パターンの面積を拡大している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る半導体モジュールを模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す基板の半田レジスト膜形成前の平面図である。
【図3】図1に示す基板の半田レジスト膜形成後の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態例に係る半導体モジュールで用いた基板の半田レジスト膜形成前の平面図である。
【図5】図4に示す基板の半田レジスト膜形成後の平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 基板
2 銅箔パターン
3 ビア導体
4 半田レジスト膜
4a 枠状部分
5 半導体チップ
6 アンダーフィル
7 半田バンプ
8 熱源
20,22 電極
21,23 グラウンド電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を含む銅箔パターンおよびビア導体が設けられた基板の一面に対し、前記銅箔パターンの一部を覆う所定領域に絶縁性樹脂からなる半田レジスト膜を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、半田バンプを有する半導体チップを前記基板の一面にフリップチップ実装する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記基板の一面と前記半導体チップとの間の隙間に熱硬化性樹脂からなるアンダーフィルを注入すると共に、前記基板の他面に存する前記銅箔パターンに熱源を接触させて前記アンダーフィルの硬化温度よりも低い温度で加熱することによって、前記隙間に前記アンダーフィルを充填する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記アンダーフィルを高温炉にて前記硬化温度で加熱することによって硬化させる第4の工程とを備え、
前記第1の工程で、前記半田レジスト膜の一部が前記銅箔パターンと重なり合わずに前記半導体チップの実装領域を全周に亘って包囲するようになし、
かつ第3の工程で、前記半導体チップに対向する一面側の前記銅箔パターンと前記熱源に接触する他面側の前記銅箔パターンとが前記ビア導体を介して導通されていることを特徴とする半導体モジュールの製造方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記半導体チップの略中央部と対向する位置に存する一面側の前記銅箔パターンがグラウンド電極であることを特徴とする半導体モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−141148(P2009−141148A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316248(P2007−316248)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】