説明

半導体レーザ素子及びこれを用いた光ピックアップ装置

【課題】信頼性を向上させることが可能な半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】この半導体レーザ素子1000は、活性層25を有し、共振器端面2a及び2bが形成された半導体素子層2と、共振器端面2a及び2b上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜82及び92を有する端面コート膜8及び9とを備え、端面コート膜8及び9は、共振器端面2a及び2bと酸化膜82及び酸化膜92との間に、共振器端面2a及び2bに接触するように形成された窒化膜81及び窒化膜91をさらに有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子及びこれを用いた光ピックアップ装置に関し、特に、共振器端面に端面コート膜が形成された半導体レーザ素子及びこれを用いた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザ素子の共振器端面に形成される端面コート膜に関しては、種々の材料及び構造のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、AlGaInN系の化合物半導体からなり、活性層を含む半導体層の前端面に、SiO、Al、HfO等の少なくとも1種類以上を含んでいる光出射側反射膜を備えた半導体レーザ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−47692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の半導体レーザ素子では、レーザ光の短波長化及び高出力化に伴って、光吸収等による端面コート膜での発熱が顕著になってくる。ここで、短波長領域における吸収係数が小さいHfOを用いた場合には、その結晶化温度が数百℃程度と低いので、端面コート膜が結晶化しやすく、端面コート膜の光学特性が変化しやすいという不具合があった。また、特に、窒化物系半導体レーザ素子の共振器端面に酸化膜からなる端面コート膜を形成した場合、外部雰囲気からの酸素の拡散によって、共振器端面と端面コート膜との界面が劣化したりするという不具合があった。これらの結果、従来の半導体レーザ素子では、レーザ光の短波長化及び高出力化に伴って、信頼性が低下しやすいという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、信頼性を向上させることが可能な半導体レーザ素子を提供することである。
【0007】
また、この発明のもう1つの目的は、信頼性を向上させることが可能な半導体レーザ素子を用いた光ピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による半導体レーザ素子は、活性層を有し、共振器端面が形成された半導体素子層と、前記共振器端面上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜を有する端面コート膜とを備え、前記端面コート膜は、前記共振器端面と前記酸化膜との間に、前記共振器端面に接触するように形成された窒化膜をさらに有している。
【0009】
この発明の第1の局面による半導体レーザ素子では、上記のように、共振器端面上の端面コート膜中に、HfSiO又はHfAlOからなる酸化膜を有している。これらの材料からなる酸化膜の結晶化温度は1000℃以上であって、HfOと比べても熱的安定性に優れているので、端面コート膜における発熱が顕著になった場合でも光学特性が変化しにくい。また、共振器端面とこの酸化膜との間には、共振器端面に接触するように窒化膜が形成されているので、外部雰囲気からの酸素の拡散を抑制することができる。これにより、共振器端面と端面コート膜との界面が劣化しにくい。これらの結果、この発明の第1の局面による半導体レーザ素子では、信頼性を向上させることができる。
【0010】
この場合、酸化膜としては、Hf0.3Si0.150.55や、Hf0.15Al0.350.55等の組成であることが好ましい。このように構成することによって、結晶化温度が高い安定した酸化膜を構成することができる。
【0011】
上記第1の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、前記窒化膜は、前記酸化膜中に含まれているSi及びAlの少なくとも一方の元素を含む。このように構成すれば、端面コート膜中における酸化膜と窒化膜とは、共通の元素を含むので、酸化膜と窒化膜との密着性が向上する。これにより、端面コート膜の剥離を抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、前記活性層が発するレーザ光の波長がλ、前記酸化膜の屈折率がn1、前記窒化膜の屈折率がn2、前記酸化膜の厚みがt1、前記窒化膜の厚みがt2である場合に、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)、及び、t1<t2である。このように構成すれば、共振器端面を出射したレーザ光は、窒化膜の厚みに影響されることなく透過して酸化膜に達することができる。その結果、所望の反射率を有するように設定された酸化膜の反射率制御機能が窒化膜によって影響されるのを容易に抑制することができる。また、窒化膜の厚みが薄いので、端面コート膜の形成後の応力に起因した剥離等も抑制することができる。
【0013】
また、この発明の第2の局面による半導体レーザ素子は、活性層を有し、共振器端面が形成された半導体素子層と、前記共振器端面上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜を有する端面コート膜とを備え、前記酸化膜は、窒素を含むとともに、前記共振器端面に接触するように形成されている。
【0014】
この発明の第2の局面による半導体レーザ素子では、上記のように、共振器端面上の端面コート膜中に、HfSiO又はHfAlOからなる酸化膜を有している。これらの材料からなる酸化膜の結晶化温度は1000℃以上であって、HfOと比べても熱的安定性に優れているので、端面コート膜における発熱が顕著になった場合でも光学特性が変化しにくい。また、この酸化膜中には窒素が含まれているとともに、共振器端面に接触するように酸化膜が形成されているので、外部雰囲気からの酸素の拡散を抑制することができる。これにより、共振器端面と端面コート膜との界面が劣化しにくい。これらの結果、この発明の第2の局面による半導体レーザ素子では、信頼性を向上させることができる。
【0015】
この場合、窒素を含むHfSiO又はHfAlOからなる酸化膜としては、Hf0.3Si0.150.250.3や、Hf0.15Al0.350.30.25等の組成であることが好ましい。このように構成することによって、結晶化温度が高い安定した酸化膜を構成するとともに、外部雰囲気からの酸素の拡散も抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、前記酸化膜中におけるHf、Si、Al、酸素、窒素の原子数比が、それぞれ、w、x1、x2、y、z(w>0、x1≧0、x2≧0、y>0、z≧0。尚、x1及びx2の少なくとも一方は0ではない。)の場合に、w+x1≦y+z、又は、w+x2≦y+zである。このように構成すれば、酸化膜の抵抗率を大きくすることができるので、共振器端面に端面コート膜を形成した場合であっても、半導体素子層を構成する各層や表面側電極及び裏面側電極の間を容易に絶縁することができる。
【0017】
また、この発明の第3の局面による光ピックアップ装置は、半導体レーザ素子と、該半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を調整する光学系とを備えた光ピックアップ装置であって、前記半導体レーザ素子は、活性層を有し、共振器端面が形成された半導体素子層と、前記共振器端面上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜を有する端面コート膜とを備え、前記端面コート膜は、前記共振器端面と前記酸化膜との間に、前記共振器端面に接触するように形成された窒化膜をさらに有している、又は、前記酸化膜は、窒素を含むとともに、前記共振器端面に接触するように形成されている。
【0018】
この発明の第3の局面による光ピックアップ装置では、上記のように、半導体レーザ素子の共振器端面上にハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜を有する端面コート膜を備えている。これらの材料からなる酸化膜の結晶化温度は1000℃以上であって、HfOと比べても熱的安定性に優れているので、端面コート膜における発熱が顕著になった場合でも光学特性が変化しにくい。また、共振器端面とこの酸化膜との間には、共振器端面に接触するように窒化膜が形成されているか、この酸化膜中に窒素が含まれているとともに、共振器端面に接触するように酸化膜が形成されているので、外部雰囲気からの酸素の拡散を抑制することができる。これにより、共振器端面と端面コート膜との界面が劣化しにくい。これらの結果、半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができるので、レーザ光の出力が短波長化及び高出力化した場合にも、光ピックアップ装置の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、信頼性を向上させることが可能な半導体レーザ素子及び光ピックアップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体レーザ素子を共振器方向と平行に切断した際の縦断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態による半導体レーザ素子を共振器方向と平行に切断した際の縦断面図である。
【図3】本発明の実施例1による窒化物系半導体レーザ素子を共振器方向と垂直に切断した際の縦断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態によるレーザ装置の概略図である。
【図5】本発明の第4実施形態による光ピックアップ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による半導体レーザ素子を共振器方向と平行に切断した際の縦断面図である。まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による半導体レーザ素子1000の構造について説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態による半導体レーザ素子1000では、図1に示すように、半導体からなる基板1の上面上に活性層25を含む複数の半導体層からなる半導体素子層2が形成されている。また、半導体素子層2の上面上に表面電極4が形成されており、基板1の下面上に裏面電極5が形成されている。また、半導体素子層2には、共振器の延びる方向(L方向)に、共振器端面2a及び2bがそれぞれ形成されており、共振器端面2a及び2b上には、端面コート膜8及び9が形成されている。
【0024】
共振器端面2a側の端面コート膜8は、共振器端面2aに接触するように形成された窒化膜81と、窒化膜81上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜82とから構成されている。また、共振器端面2b側の端面コート膜9は、共振器端面2bに接触するように形成された窒化膜91と、窒化膜91上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜92と、複数の誘電体膜からなる多層反射膜93とから構成されている。
【0025】
半導体レーザ素子1000では、上記のように、共振器端面2a及び2b上の端面コート膜8及び9中に、それぞれ、HfSiO又はHfAlOからなる酸化膜82及び酸化膜92を有している。これらの材料からなる酸化膜の結晶化温度は1000℃以上であって、HfOと比べても熱的安定性に優れているので、端面コート膜8及び9における発熱が顕著になった場合でも光学特性が変化しにくい。また、共振器端面2a及び2bと酸化膜82及び酸化膜92との間には、それぞれ、共振器端面2a及び2bに接触するように窒化膜81及び窒化膜91が形成されているので、外部雰囲気からの酸素の拡散を抑制することができる。これにより、共振器端面2a及び2bと端面コート膜8及び9との界面が劣化しにくい。これらの結果、半導体レーザ素子1000では、信頼性を向上させることができる。
【0026】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態による半導体レーザ素子を共振器方向と平行に切断した際の縦断面図である。次に、図2を参照して、本発明の第2実施形態による半導体レーザ素子2000の構造について説明する。
【0027】
本発明の第2実施形態による半導体レーザ素子2000では、図2に示すように、共振器端面2a側の端面コート膜18は、共振器端面2aに接触するように形成された窒素を含むHfSiO又はHfAlOからなる酸化膜182と、酸化膜182上に形成された誘電体膜からなる反射率制御膜183とから構成されている。また、共振器端面2b側の端面コート膜19は、共振器端面2bに接触するように形成された窒素を含むHfSiO又はHfAlOからなる酸化膜192と、複数の誘電体膜からなる多層反射膜93とから構成されている。半導体レーザ素子2000は、これら以外の構成は、第1実施形態の半導体レーザ素子1000と同様である。
【0028】
半導体レーザ素子2000では、上記のように、共振器端面2a及び2b上の端面コート膜18及び19中に、それぞれ、HfSiO又はHfAlOからなる酸化膜182及び酸化膜192を有している。これらの材料からなる酸化膜の結晶化温度は1000℃以上であって、HfOと比べても熱的安定性に優れているので、端面コート膜18及び19における発熱が顕著になった場合でも光学特性が変化しにくい。また、この酸化膜182及び酸化膜192中には、窒素が含まれているので、外部雰囲気からの酸素の拡散を抑制することができる。これにより、共振器端面2a及び2bと端面コート膜18及び19との界面が劣化しにくい。これらの結果、半導体レーザ素子2000では、信頼性を向上させることができる。
【0029】
なお、半導体レーザ素子1000及び2000では、L方向に活性層から出射されるレーザ光に対して、主に多層反射膜93を形成することによって、共振器端面2b側の反射率を大きくすることができる。また、共振器端面2a側の反射率についても、半導体レーザ素子1000では、窒化膜81及び酸化膜82の、半導体レーザ素子2000では、酸化膜182及び反射率制御膜183の、各層の膜厚及び屈折率を制御することによって、反射率を小さくすることができる。これにより、半導体レーザ素子1000及び2000では、L方向に活性層から出射されるレーザ光に対する共振器端面2b側の反射率の方が共振器端面2a側の反射率よりも大きくされている。その結果、共振器端面2a側から出射されるレーザ光の強度は、共振器端面2b側から出射されるレーザ光の強度よりも大きくなるので、共振器端面2a側の側端面が光出射面(前端面)、共振器端面2b側の側端面が光反射面(後端面)として機能する。
【0030】
(実施例1)
以下、第1実施形態による半導体レーザ素子1000と同様の構成を備えた半導体レーザ素子の具体的な構成について説明する。
【0031】
図3は、本発明の実施例1による窒化物系半導体レーザ素子を共振器方向と垂直に切断した際の縦断面図である。なお、図3は、図1のAA線に沿った断面図であって、共振器の延びる方向(L方向:[1−100]方向)に直交する断面を示している。図1及び図3を参照して、本発明の実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100の構造について説明する。
【0032】
まず、図1を参照して、本発明の実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100の端面コート膜8及び9の構造について説明する。窒化物系半導体レーザ素子1100では、共振器端面2a側の端面コート膜8を構成する窒化膜81は、約10nmの厚みt2を有するAlN(屈折率n2:約2.10)からなり、酸化膜82は、約70nmの厚みt1を有するHfSiO(屈折率n1:約1.85)からなる。
【0033】
また、共振器端面2b側の端面コート膜9を構成する窒化膜91は、約10nmの厚みt2’を有するAlN(屈折率n2’:約2.10)からなり、窒化膜91は、約80nmの厚みt1’を有するHfSiO(屈折率n1’:約1.85)からなる。また、多層反射膜93は、酸化膜92に接触するように形成された約140nmの厚みを有するSiO層(屈折率:約1.46)上に、約70nmの厚みを有する6層のSiO層(屈折率:約1.46)及び約48nmの厚みを有する6層のZrO層(屈折率:約2.13)が、最表面側にZrO層が配置されるように、交互に積層された構造を有している。
【0034】
なお、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100では、共振器端面2a及び2bは、半導体素子層2を劈開して形成された劈開面を用いており、共振器端面2a及び2b上に、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法によって、端面コート膜8及び9を構成する各層を順次形成している。
【0035】
上記構成を有する端面コート膜8及び9を形成することによって、共振器端面2a及び2b側における約405nmのレーザ光の波長に対する反射率は、それぞれ、約8%及び約98%となり、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100では、共振器端面2a側の側端面が光出射面(前端面)に、共振器端面2b側の側端面が光反射面(後端面)として機能する。
【0036】
次に、図3を参照して、窒化物系半導体レーザ素子1100の積層方向の構造について説明する。窒化物系半導体レーザ素子1100では、酸素がドープされたn型GaNからなる基板1は、約100μmの厚みを有しており、その上面((0001)面)上には、活性層25を含む複数の窒化物系半導体層からなる半導体素子層2と、半導体素子層2上に形成された電流ブロック層3及び表面電極(p側電極)4が形成されている。また、基板1の下面((000−1)面)上には、裏面電極(n側電極)5が形成されている。なお、窒化物系半導体レーザ素子1100は、約800μmの長さ(共振器長)、約200μmの幅及び約120μmの厚みを有する外形を備えている。
【0037】
半導体素子層2は、基板1側から、約0.1μmの厚みを有するn型GaNからなる下地層21、約0.4μmの厚みを有するn型Al0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層22、約5nmの厚みを有するn型Al0.16Ga0.84Nからなるキャリアブロック層23、約0.1μmの厚みを有するアンドープのGaNからなるn側光ガイド層24、複数のInGaNからなる障壁層及び井戸層が積層された多重量子井戸構造を有する活性層25、約0.1μmの厚みを有するp型GaNからなるp側光ガイド層26、約20nmの厚みを有するp型Al0.16Ga0.84Nからなるキャップ層27、p型Al0.07Ga0.93Nからなるp型クラッド層28、及び、約10nmの厚みを有するp型In0.02Ga0.98Nからなるコンタクト層29がこの順に積層されて構成されている。
【0038】
なお、下地層21、n型クラッド層22及びn型キャリアブロック層23には、約5×1018cm−3のGeがドープされている。また、p側光ガイド層26、キャップ層27、p型クラッド層28及びコンタクト層29には、約4×1019cm−3のMgがドープされている。
【0039】
活性層25は、約20nmの厚みを有するIn0.02Ga0.98Nからなる4層の障壁層と、約3nmの厚みを有するIn0.1Ga0.9Nからなる3層の井戸層とが交互に積層されたMQW構造を有している。なお、活性層25を構成する障壁層及び井戸層は、いずれもアンドープである。
【0040】
p型クラッド層28は、L方向にストライプ状に延びる約1.5μmの幅を有する凸部28aと、凸部28aの両側の約80nmの厚みを有する平坦部28bとから構成されている。また、凸部28aにおけるp型クラッド層28の厚みは、約0.4μmである。コンタクト層29は、凸部28aの上面にのみ形成されており、p型クラッド層28の凸部28aとコンタクト層29とによって、半導体素子層2の上面には、L方向にストライプ状に延びるリッジ部2cが形成されている。ここで、リッジ部2cは、電流注入部を構成し、リッジ部2cの下方の活性層25を含む領域には、リッジ部2cに沿ってL方向にストライプ状に延びる導波路が形成される。
【0041】
電流ブロック層3は、約0.3μmの厚みを有するSiOからなり、リッジ部2cの上面(コンタクト層29の上面)を露出するように、p型クラッド層28の凸部28aの側面上及び平坦部28bの上面上に形成されている。
【0042】
表面電極(p側電極)4は、リッジ部2aの上面に接触するように形成されているオーミック電極層41と、オーミック電極層41及び電流ブロック層3上に形成されているp側パッド電極42とから構成されている。オーミック電極41では、コンタクト層24側から、約5nmの厚みを有するPt層、約100nmの厚みを有するPd層、約150nmの厚みを有するAu層がこの順に積層されている。また、p側パッド電極42では、オーミック電極層41及び電流ブロック層3側から、約0.1μmの厚みを有するTi層、約0.1μmの厚みを有するPd層、約3μmの厚みを有するAu層がこの順に積層されている。
【0043】
また、裏面電極(n側電極)5では、基板1側から、約10nmの厚みを有するAl層、約20nmの厚みを有するPt層、約300nmの厚みを有するAu層がこの順に積層されている。このようにして、約405nmの発振波長λを有する窒化物系半導体レーザ素子1100が構成されている。
【0044】
窒化物系半導体レーザ素子1100では、上記のように、共振器端面2a及び2b上の端面コート膜8及び9中に、それぞれ、HfSiOからなる酸化膜82及び酸化膜92を有している。これらの材料からなる酸化膜の結晶化温度は1000℃以上であって、HfOと比べても熱的安定性に優れているので、端面コート膜8及び9における発熱が顕著になった場合でも光学特性が変化しにくい。また、共振器端面2a及び2bと酸化膜82及び酸化膜92との間には、それぞれ、共振器端面2a及び2bに接触するようにAlNからなる窒化膜81及び窒化膜91が形成されているので、外部雰囲気からの酸素の拡散を抑制することができる。これにより、共振器端面2a及び2bと端面コート膜8及び9との界面が劣化しにくい。これらの結果、窒化物系半導体レーザ素子1100では、信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、窒化物系半導体レーザ素子1100では、上記のように、レーザ光の波長と、端面コート膜8及び9を構成する酸化膜82、酸化膜92、窒化膜81及び窒化膜91の屈折率及び厚みとの間には、端面コート膜8側においては、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)、及び、t1<t2の関係を有しており、端面コート膜9側においては、t1’<λ/(4×n1’)、t2’<λ/(4×n2’)、及び、t1’<t2’の関係を有している。これにより、端面コート膜8及び9のそれぞれにおいて、共振器端面2a及び2bを出射したレーザ光は、窒化膜81及び窒化膜91の厚みに影響されることなく透過して酸化膜82及び酸化膜92に達することができる。その結果、所望の反射率を有するように設定された酸化膜82及び酸化膜92の反射率制御機能が窒化膜81及び窒化膜91によって影響されるのを容易に抑制することができる。また、窒化膜81及び窒化膜91の厚みが薄いので、端面コート膜8及び9の形成後の応力に起因した剥離等も抑制することができる。
【0046】
また、窒化物系半導体レーザ素子1100では、窒化膜81及び窒化膜91の厚みは、約5nm〜約20nmの範囲が好ましい。このように構成することにより、応力に起因した端面コート膜8及び9の剥離等を抑制することができるとともに、外部雰囲気からの酸素の拡散も抑制することができる。また、酸化膜82及び酸化膜92の厚みは、約60nm〜約200nmの範囲が好ましい。このように構成することにより、共振器端面2a側の反射率を所望の値に容易に制御することができる。
【0047】
また、窒化物系半導体レーザ素子1100では、上記のように、窒化物系半導体からなる半導体素子層2上に同じ窒素を含有する窒化膜81及び窒化膜91が接触するように形成されているので、さらに、端面コート膜8及び9の密着性を向上させることができる。
【0048】
(実施例2)
本発明の実施例2による窒化物系半導体レーザ素子1200も、第1実施形態による半導体レーザ素子1000と同様の構成を備えている。
【0049】
図1を参照して、本発明の実施例2による窒化物系半導体レーザ素子1200では、共振器端面2b側の端面コート膜9を構成する酸化膜92は、約68nmの厚みt1’を有するHfSiO(屈折率n1’:約1.85)からなり、多層反射膜93は、酸化膜92に接触するように形成された約140nmの厚みを有するSiO層(屈折率:約1.46)上に、約80nmの厚みを有する7層のSiO層(屈折率:約1.46)及び約35nmの厚みを有する7層のHfO層(屈折率:約1.95)が、最表面側にHfO層が配置されるように、交互に積層された構造を有している。実施例2による窒化物系半導体レーザ素子1200の端面コート膜8及び9のその他の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100の端面コート膜8及び9のその他の構成と同様である。
【0050】
上記構成を有する端面コート膜8及び9を形成することによって、共振器端面2a及び2b側における約405nmのレーザ光の波長に対する反射率は、それぞれ、約8%及び約95%となり、実施例2による窒化物系半導体レーザ素子1200の共振器端面2a側の側端面が光出射面(前端面)に、共振器端面2b側の側端面が光反射面(後端面)として機能する。
【0051】
また、半導体素子層2の構成においては、n型クラッド層22は、約0.7μmの厚みを有するn型Al0.1Ga0.9Nからなり、キャリアブロック層23は、約10nmの厚みを有するアンドープのAl0.2Ga0.8Nからなり、n側光ガイド層24は、約0.15μmの厚みを有するn型Al0.03Ga0.97Nからなる。また、活性層25は、約10nmの厚みを有するAl0.06Ga0.94Nからなる2層の障壁層と、約18nmの厚みを有するGaNからなる1層の井戸層とが交互に積層された構造を有している。また、p側光ガイド層26は、約0.15μmの厚みを有するp型Al0.03Ga0.97Nからなり、キャップ層27は、約10nmの厚みを有するアンドープのAl0.2Ga0.8Nからなり、p型クラッド層28は、p型Al0.1Ga0.9Nからなる。また、n側光ガイド層24には、約5×1018cm−3のGeがドープされており、p側光ガイド層26、p型クラッド層28には、約3×1019cm−3のMgがドープされている。
【0052】
実施例2による窒化物系半導体レーザ素子1200の半導体素子層2のその他の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100半導体素子層2のその他の構成と同様である。このようにして、約365nmの発振波長λを有する窒化物系半導体レーザ素子1200が構成されている。
【0053】
窒化物系半導体レーザ素子1200では、上記のように、端面コート膜9の多層反射膜93において、窒化物系半導体レーザ素子1100で用いられていたZrO層に代えて紫外領域で光吸収がより少ないHfO層が用いられている。これにより、紫外領域のレーザ光に対して、効率よくレーザ光を取り出すことができる。この実施例2のその他の効果は、上記実施例1のその他の効果と同様である。
【0054】
(実施例3)
本発明の実施例3による窒化物系半導体レーザ素子1300も、第1実施形態による半導体レーザ素子1000と同様の構成を備えている。
【0055】
図1を参照して、本発明の実施例3による窒化物系半導体レーザ素子1300では、共振器端面2a側の端面コート膜8を構成する窒化膜81は、約10nmの厚みt2を有する窒素を含むHfSiO(HfSiON、屈折率n2:約2.00)からなり、酸化膜82は、約68nmの厚みt1を有するHfSiO(屈折率n1:約1.85)からなり、共振器端面2b側の端面コート膜9を構成する窒化膜91は、約10nmの厚みt2’を有する窒素を含むHfSiO(HfSiON、屈折率n2’:約2.10)からなる。実施例3による窒化物系半導体レーザ素子1300の端面コート膜8及び9のその他の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100の端面コート膜8及び9のその他の構成と同様である。
【0056】
上記構成を有する端面コート膜8及び9を形成することによって、共振器端面2a及び2b側における約405nmのレーザ光の波長に対する反射率は、それぞれ、約8%及び約98%となり、実施例3による窒化物系半導体レーザ素子1300の共振器端面2a側の側端面が光出射面(前端面)に、共振器端面2b側の側端面が光反射面(後端面)として機能する。
【0057】
また、実施例3による窒化物系半導体レーザ素子1300の半導体素子層2の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100半導体素子層2の構成と同様である。このようにして、約405nmの発振波長λを有する窒化物系半導体レーザ素子1300が構成されている。
【0058】
窒化物系半導体レーザ素子1300では、上記のように、窒化膜81は、酸化膜82中に含まれているSiを含み、窒化膜91は、酸化膜92中に含まれているSiを含んでいるので、端面コート膜8及び9中における酸化膜82と窒化膜81との密着性、及び、酸化膜92と窒化膜91との密着性がそれぞれ向上する。これにより、端面コート膜8及び9の剥離を抑制することができる。この実施例3のその他の効果は、上記実施例1のその他の効果と同様である。
【0059】
(実施例4)
本発明の実施例4による窒化物系半導体レーザ素子1400も、第1実施形態による半導体レーザ素子1000と同様の構成を備えている。
【0060】
図1を参照して、本発明の実施例4による窒化物系半導体レーザ素子1400では、共振器端面2a側の端面コート膜8を構成する窒化膜81は、共振器端面2aに接触するように形成されている約10nmの厚みを有するAlN膜(屈折率:約2.10)と、このAlN膜上に形成されている約69nmの厚みを有する窒素を含むHfSiO膜(HfSiON膜、屈折率:約2.00)との積層構造を有しており、窒化膜81の厚みt2は約10nm、平均屈折率n2は約2.00である。
【0061】
また、共振器端面2b側の端面コート膜9を構成する窒化膜91は、共振器端面2bに接触するように形成されている約10nmの厚みを有するAlN膜(屈折率:約2.10)と、このAlN膜上に形成されている約30nmの厚みを有する窒素を含むHfSiO膜(HfSiON膜、屈折率:約2.00)との積層構造を有しており、窒化膜91の厚みt2’は約40nm、平均屈折率n2’は約2.10である。実施例4による窒化物系半導体レーザ素子1400の端面コート膜8及び9のその他の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100の端面コート膜8及び9のその他の構成と同様である。
【0062】
上記構成を有する端面コート膜8及び9を形成することによって、共振器端面2a及び2b側における約405nmのレーザ光の波長に対する反射率は、それぞれ、約8%及び約98%となり、実施例4による窒化物系半導体レーザ素子1400の共振器端面2a側の側端面が光出射面(前端面)に、共振器端面2b側の側端面が光反射面(後端面)として機能する。
【0063】
また、実施例4による窒化物系半導体レーザ素子1400の半導体素子層2の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100半導体素子層2の構成と同様である。このようにして、約405nmの発振波長λを有する窒化物系半導体レーザ素子1400が構成されている。
【0064】
窒化物系半導体レーザ素子1400では、上記のように、窒化膜81及び窒化膜91の酸化膜82及び酸化膜92側の組成が、酸化膜82及び酸化膜92と共通のHf、Si、Oを含んでいるので、端面コート膜8及び9中における酸化膜82と窒化膜81との密着性、及び、酸化膜92と窒化膜91との密着性がそれぞれ向上する。また、窒化膜81及び窒化膜91では、AlN膜及びHfSiON膜が共通の窒素を含んでいるので、AlN膜及びHfSiON膜の界面においても密着性が向上する。これにより、端面コート膜8及び9の剥離を抑制することができる。この実施例4のその他の効果は、上記実施例1のその他の効果と同様である。
【0065】
(実施例5)
本発明の実施例5による窒化物系半導体レーザ素子2100は、第2実施形態による半導体レーザ素子2000と同様の構成を備えている。
【0066】
図2を参照して、本発明の実施例5による窒化物系半導体レーザ素子2100では、共振器端面2a側の端面コート膜18を構成する酸化膜182は、約10nmの厚みを有する窒素を含むHfAlO(HfAlON、屈折率:約2.05)からなる。また、反射率制御膜183は、約82nmの厚みを有するAl(屈折率:約1.65)からなる。
【0067】
また、共振器端面2b側の端面コート膜19を構成する酸化膜192は、約100nmの厚みを有する窒素を含むHfAlO(HfAlON、屈折率:約2.05)からなる。また、多層反射膜93の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100の多層反射膜93の構成と同様である。
【0068】
上記構成を有する端面コート膜8及び9を形成することによって、共振器端面2a及び2b側における約405nmのレーザ光の波長に対する反射率は、それぞれ、約8%及び約98%となり、実施例5による窒化物系半導体レーザ素子2100の共振器端面2a側の側端面が光出射面(前端面)に、共振器端面2b側の側端面が光反射面(後端面)として機能する。
【0069】
また、実施例5による窒化物系半導体レーザ素子2100の半導体素子層2の構成は、実施例1による窒化物系半導体レーザ素子1100半導体素子層2の構成と同様である。このようにして、約405nmの発振波長λを有する窒化物系半導体レーザ素子2100が構成されている。
【0070】
窒化物系半導体レーザ素子2100では、上記のように、共振器端面2a及び2b上の端面コート膜8及び9が、それぞれ、HfAlONからなる酸化膜182及び酸化膜192を有している。これらの材料からなる酸化膜の結晶化温度は1000℃以上であって、HfOと比べても熱的安定性に優れているので、端面コート膜8及び9における発熱が顕著になった場合でも光学特性が変化しにくい。また、この酸化膜182及び酸化膜192中には窒素が含まれているとともに、共振器端面2a及び2bに接触するように酸化膜182及び酸化膜192が形成されているので、外部雰囲気からの酸素の拡散を抑制することができる。これにより、共振器端面2a及び2bと端面コート膜8及び9との界面が劣化しにくい。これらの結果、窒化物系半導体レーザ素子2100では、信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、窒化物系半導体レーザ素子2100では、酸化膜182及び酸化膜192の厚みは、約20nm〜約200nmの範囲が好ましい。このように構成することにより、応力に起因した端面コート膜8及び9の剥離等を抑制することができるとともに、外部雰囲気からの酸素の拡散も抑制することができる。
【0072】
また、窒化物系半導体レーザ素子2100では、上記のように、反射率制御膜183は、酸化膜182中に含まれているAlを含んでいるので、端面コート膜18中における酸化膜182と反射率制御膜183との密着性がそれぞれ向上する。これにより、端面コート膜18の剥離を抑制することができる。この実施例5のその他の効果は、上記実施例1のその他の効果と同様である。
【0073】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態によるレーザ装置の概略図である。この第3実施形態によるレーザ装置3000には、第1実施形態による半導体レーザ素子1000が実装されており、図4(A)は外観斜視図を、図4(B)はキャンパッケージの蓋体1504を外した状態での上面図を示している。
【0074】
図4を参照して、第3実施形態によるレーザ装置3000では、導電性材料からなり、略丸型のキャンパッケージ本体1503、給電ピン1501a、1501b、1501c、1502及び蓋体1504を備えている。キャンパッケージ本体1503には、第1実施形態による半導体レーザ素子1000が設けられており、蓋体1504により封止されている。蓋体1504には、レーザ光を透過する材料からなる取り出し窓1504aが設けられている。また、給電ピン1502は、機械的及び電気的にキャンパッケージ本体1503と接続されている。給電ピン1502は接地端子として用いられる。キャンパッケージ本体1503の外部に延びる給電ピン1501a、1501b、1501c、1502の一端は、それぞれ図示しない駆動回路に接続される。
【0075】
キャンパッケージ本体1503と一体化された導電性の支持部材1505上には、導電性のサブマウント1505Hが設けられている。支持部材1505及びサブマウント1505Hは導電性及び熱伝導性に優れた材料からなる。半導体レーザ素子1000は、レーザ光の出射方向Lがレーザ装置3000の外側(取り出し窓1504a側)に向かうとともに、半導体レーザ素子1000の発光点(リッジ部2cの下方に形成される導波路)がレーザ装置3000の中心線に位置するように接合されている。
【0076】
給電ピン1501a、1501b、1501cは、それぞれ、絶縁リング1501zによりキャンパッケージ本体1503と電気的に絶縁されている。給電ピン1501aは、ワイヤーW1を介して、半導体レーザ素子1000の表面電極4の上面に接続されている。また、給電ピン1501cは、ワイヤーW2を介して、サブマウント1505Hの上面に接続されている。
【0077】
第3実施形態によるレーザ装置3000においては、第1実施形態による半導体レーザ素子1000を用いているので、レーザ光の出力が短波長化及び高出力化した場合にも、信頼性を向上させることができる。
【0078】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態による光ピックアップ装置の構成図である。この光ピックアップ装置4000は、第3実施形態によるレーザ装置3000が内蔵されている。次に、図5を参照して、本発明の第4実施形態による光ピックアップ装置4000について説明する。
【0079】
図13に示すように、第4実施形態による光ピックアップ装置4000は、第1実施形態による半導体レーザ素子1000が実装されたレーザ装置3000と、偏光ビームスプリッタ(以下、偏光BSと略記する。)1902、コリメータレンズ1903、ビームエキスパンダ1904、λ/4板1905、対物レンズ1906、シリンドリカルレンズ1907及び光検出部1908を有する光学系1900を備えている。
【0080】
光学系1900においては、以下のように、半導体レーザ素子1000から出射されたレーザ光を調整することができる。まず、偏光BS1902は、半導体レーザ素子1000から出射されるレーザ光を全透過するとともに、光ディスクDIから帰還するレーザ光を全反射する。コリメータレンズ1903は、偏光BS1902を透過した窒化物系半導体レーザ素子1200からのレーザ光を平行光に変換する。ビームエキスパンダ1904は、凹レンズ、凸レンズ及びアクチュエータ(図示せず)から構成されている。アクチュエータは図示しないサーボ回路からのサーボ信号に応じて凹レンズ及び凸レンズの距離を変化させる。これにより、半導体レーザ素子1000から出射されたレーザ光の波面状態が補正される。
【0081】
λ/4板1905は、コリメータレンズ1903によって略平行光に変換された直線偏光のレーザ光を円偏光に変換する。また、λ/4板1905は光ディスクDIから帰還する円偏光のレーザ光を直線偏光に変換する。この場合の直線偏光の偏光方向は、半導体レーザ素子1000から出射されるレーザ光の直線偏光の偏光方向に直交する。それにより、光ディスクDIから帰還するレーザ光は、偏光BS1902によってほぼ全反射される。対物レンズ1906は、λ/4板1905を透過したレーザ光を光ディスクDIの表面(記録層)上に収束させる。なお、対物レンズ1906は、サーボ回路からのサーボ信号(トラッキングサーボ信号、フォーカスサーボ信号及びチルトサーボ信号)に応じて図示しない対物レンズアクチュエータにより、フォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向に移動可能である。
【0082】
偏光BS1902により全反射されるレーザ光の光軸に沿うようにシリンドリカルレンズ1907及び光検出部1908が配置されている。シリンドリカルレンズ1907は、入射されるレーザ光に非点収差作用を付与する。光検出部1908は、受光したレーザ光の強度分布に基づいて再生信号を出力する。ここで、光検出部1908は再生信号とともに、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びチルトエラー信号が得られるように所定のパターンの検出領域を有する。フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びチルトエラー信号により、ビームエキスパンダ1904のアクチュエータ及び対物レンズアクチュエータがフィードバック制御される。このようにして、本発明の第4実施形態による光ピックアップ装置4000が構成される。
【0083】
第4実施形態による光ピックアップ装置4000においては、第1実施形態による半導体レーザ素子1000及び第3実施形態によるレーザ装置3000を用いているので、レーザ光の出力が短波長化及び高出力化した場合にも、信頼性の向上が可能である。
【0084】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0085】
たとえば、上記実施形態及び実施例では、共振器端面2a及び2bに形成されている端面コート膜8、9、18及び19は、いずれも、窒化膜とHfSiO又はHfAlOからなる酸化膜との積層構造、又は、窒素を含むHfSiO又はHfAlOからなる酸化膜を有していたが、本発明はこれに限らず、いずれか一方の端面コート膜だけが上記構成を備えていてもよい。この場合、光出射面(前端面)となる端面コート膜8及び18の方がより変質等が生じやすいことから、端面コート膜8及び18が上記構成を備えているのが好ましい。また、共振器端面2a及び2bの内の一方の端面コートが、窒化膜とHfSiO又はHfAlOからなる酸化膜との積層構造を有し、他方の端面コートが、窒素を含むHfSiO又はHfAlOからなる酸化膜を有していてもよい。
【0086】
また、上記実施形態及び実施例において、端面コート膜9及び19を構成する多層反射膜93を他の酸化物、窒化物及び酸窒化物を含む誘電体膜を積層して形成してもよく、同様に、第2実施形態及び実施例5において、反射率制御膜183を他の酸化物、窒化物及び酸窒化物を含む誘電体膜により形成してもよい。
【0087】
また、上記実施形態及び実施例において、端面コート2aの表面側(半導体素子層2に接している側とは反対側)、即ち、酸化膜82及び反射率制御膜183上にさらに他の誘電体膜を形成してもよく、同様に、端面コート2bの表面側(半導体素子層2に接している側とは反対側)、即ち、多層反射膜93上にさらに他の誘電体膜を形成してもよい。
【0088】
また、実施例4において、2層の積層膜からなる窒化膜81及び窒化膜91を用いたように、他の実施形態及び実施例においても端面コート膜8、18、9、19を構成する窒化膜及び酸化膜を2層以上の積層膜で構成してもよい。この場合、積層される各層には、共通の元素が含まれているのが好ましい。
【0089】
また、上記各実施例では、酸化膜82、182及び酸化膜92、192は、いずれも、Si及びAlのいずれか一方だけを含んでいたが、本発明はこれに限らず、Si及びAlの両方を含んでいてもよい。
【0090】
また、上記各実施例では、半導体素子層2は、窒化物系半導体により構成されていたが、本発明はこれに限らず、半導体素子層は、その他の半導体から構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 半導体素子層
25 活性層
2a、2b 共振器端面
2c リッジ部
3 電流ブロック層
4 表面電極(p側電極)
5 裏面電極(n側電極)
8、9 端面コート膜
81、91、181、191 窒化膜
82、92、182、192 酸化膜
93 多層反射膜
183 反射率制御膜
1000、2000 半導体レーザ素子
1100、1200、1300、1400、2100 窒化物系半導体レーザ素子
1900 光学系
3000 レーザ装置
4000 光ピックアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層を有し、共振器端面が形成された半導体素子層と、
前記共振器端面上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜を有する端面コート膜とを備え、
前記端面コート膜は、前記共振器端面と前記酸化膜との間に、前記共振器端面に接触するように形成された窒化膜をさらに有している、半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記窒化膜は、前記酸化膜中に含まれているSi及びAlの少なくとも一方の元素を含む、請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記活性層が発するレーザ光の波長がλ、前記酸化膜の屈折率がn1、前記窒化膜の屈折率がn2、前記酸化膜の厚みがt1、前記窒化膜の厚みがt2である場合に、t1<λ/(4×n1)、t2<λ/(4×n2)、及び、t1<t2である、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
活性層を有し、共振器端面が形成された半導体素子層と、
前記共振器端面上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜を有する端面コート膜とを備え、
前記酸化膜は、窒素を含むとともに、前記共振器端面に接触するように形成されている、半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記酸化膜中におけるHf、Si、Al、酸素、窒素の原子数比が、それぞれ、w、x1、x2、y、z(w>0、x1≧0、x2≧0、y>0、z≧0。尚、x1及びx2の少なくとも一方は0ではない。)の場合に、w+x1≦y+z、又は、w+x2≦y+zである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
半導体レーザ素子と、該半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を調整する光学系とを備えた光ピックアップ装置であって、
前記半導体レーザ素子は、活性層を有し、共振器端面が形成された半導体素子層と、前記共振器端面上に形成されたハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)からなる酸化膜を有する端面コート膜とを備え、
前記端面コート膜は、前記共振器端面と前記酸化膜との間に、前記共振器端面に接触するように形成された窒化膜をさらに有している、又は、
前記酸化膜は、窒素を含むとともに、前記共振器端面に接触するように形成されている、光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−278335(P2010−278335A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130947(P2009−130947)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】