説明

半導体加工用接着フィルム及び半導体チップ実装体の製造方法

【課題】突起電極付ウエハのバックグラインド時には、剥離を生じることなく突起電極の損傷及び変形を抑制することができ、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際には、糊残りなく低負荷で剥離を行うことのできる半導体加工用接着フィルムを提供する。また、該半導体加工用接着フィルムを用いた接合信頼性に優れた半導体チップ実装体の製造方法を提供する。
【解決手段】突起電極付ウエハのバックグラインド時には突起電極付ウエハを保持し、かつ、突起電極付半導体チップの実装時には接着剤として機能する半導体加工用接着フィルムであって、ポリエステル系基材フィルムと、電極保護層と、接着剤層とがこの順で積層されており、突起電極付ウエハに貼り合わせた後、25℃、引張り角度180°、引張り速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったとき、前記電極保護層と前記接着剤層との間で界面剥離が生じ、前記電極保護層と前記接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されず、かつ、剥離強度が5〜400gf/25mmである半導体加工用接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起電極付ウエハのバックグラインド時には、剥離を生じることなく突起電極の損傷及び変形を抑制することができ、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際には、糊残りなく低負荷で剥離を行うことのできる半導体加工用接着フィルムに関する。また、本発明は、該半導体加工用接着フィルムを用いた接合信頼性に優れた半導体チップ実装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化、高集積化が進展し、表面に電極として複数の突起(バンプ)を有するフリップチップ型の半導体チップ実装体が生産されるようになった。このような半導体チップ実装体は、例えば、以下のような方法により製造される。
まず、表面に電極として複数の突起(バンプ)を有するウエハの突起電極を有する面に、バックグラインドテープと呼ばれる粘着シート又はテープを貼り合わせ、この状態でウエハを所定の厚さにまで研削する。研削終了後、バックグラインドテープを剥離する。次いで、ウエハをダイシングして個々の半導体チップとし、得られた半導体チップを、他の半導体チップ又は基板上にフリップチップ実装によりボンディングする。その後、アンダーフィル剤を充填して硬化する。
しかしながら、このような工程は極めて煩雑であるという問題がある。
【0003】
そこで、より簡便な方法として、バックグラインドテープを剥離する代わりに、バックグラインドテープの接着剤層をウエハに残したまま基材部分を剥離し、次いで、ウエハをダイシングして得られた半導体チップを、接着剤層を介して他の半導体チップ又は基板上にボンディングする方法が提案されている。例えば、特許文献1には、それぞれ所定の物性を有する、回路面と接する層(A層)、A層の上に直接積層された層(B層)及び最外層(C層)を有する積層シートが貼られた突起電極付ウエハの裏面を研削する工程、A層のみをウエハに残して他の層を除去する工程、および個別チップに切断する工程を含む半導体装置の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献1においては、バンプ充填性、ウエハ加工性、チップ搭載後導通性等が評価されているが、接着剤層をウエハに残したまま基材部分を剥離する特許文献1に記載のような方法においては、基材部分の剥離を低負荷で容易に行うことも重要である。例えば、特許文献2には、接着樹脂層が基材フィルムから容易に引き剥がせると共に、接着剤層の性能低下が発生しない半導体ウェハ加工用接着フィルムとして、基材フィルム、分離層、および接着剤層がこの順に積層された半導体ウェハ加工用接着フィルムであって、分離層と接着剤層の凝集力が分離層<接着剤層の関係である半導体ウェハ加工用接着フィルムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、同文献に記載された半導体ウェハ加工用接着フィルムは、基材フィルムを引き剥がす際に分離層が凝集破壊し、一部は接着層表面に残り、一部は基材フィルム上に付いて剥がれること、また、接着剤層表面に一部が残った分離層も接着剤層と同様の反応率で硬化するため、接着剤層の接着特性を阻害することがないことが記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載された半導体ウェハ加工用接着フィルムでは、分離層を凝集破壊させるため、分離層の組成によっては接着剤層の接着力が低下することもあり、また、接着剤層の厚みが不均一になることから、ボンディング時にボイドを噛み込んだりボンディング後に形成されるフィレットの形状にばらつきが生じたりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4170839号公報
【特許文献2】特開2010−56409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、突起電極付ウエハのバックグラインド時には、剥離を生じることなく突起電極の損傷及び変形を抑制することができ、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際には、糊残りなく低負荷で剥離を行うことのできる半導体加工用接着フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体加工用接着フィルムを用いた接合信頼性に優れた半導体チップ実装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、突起電極付ウエハのバックグラインド時には突起電極付ウエハを保持し、かつ、突起電極付半導体チップの実装時には接着剤として機能する半導体加工用接着フィルムであって、ポリエステル系基材フィルムと、電極保護層と、接着剤層とがこの順で積層されており、突起電極付ウエハに貼り合わせた後、25℃、引張り角度180°、引張り速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったとき、前記電極保護層と前記接着剤層との間で界面剥離が生じ、前記電極保護層と前記接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されず、かつ、剥離強度が5〜400gf/25mmである半導体加工用接着フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、突起電極付ウエハのバックグラインド時には突起電極付ウエハを保持し、かつ、突起電極付半導体チップの実装時には接着剤として機能する半導体加工用接着フィルムにおいて、ポリエステル系基材フィルムと、電極保護層と、接着剤層とをこの順で積層し、更に、所定の条件で剥離試験を行ったとき、前記電極保護層と前記接着剤層との間で界面剥離が生じ、前記電極保護層と前記接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されず、かつ、剥離強度が所定範囲を満たすように前記電極保護層と前記接着剤層とを形成することにより、バックグラインド時には剥離を生じることなく突起電極の損傷及び変形を抑制することができ、一方、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際には糊残りなく低負荷で剥離を行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハのバックグラインド時には突起電極付ウエハを保持し、かつ、突起電極付半導体チップの実装時には接着剤として機能する半導体加工用接着フィルムであって、ポリエステル系基材フィルムと、電極保護層と、接着剤層とがこの順で積層されている。
なお、本発明の半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハの突起電極が形成された面に上記接着剤層が貼り合わされて用いられる。
【0011】
本発明の半導体加工用接着フィルムは、例えば、突起電極付ウエハの突起電極が形成された面に上記接着剤層が貼り合わされる際、突起電極付ウエハのバックグラインドを行う際、また、上記電極保護層及び上記接着剤層を形成する際の塗工及び乾燥工程等において、最大で100℃程度まで加熱されることがある。また、本発明の半導体加工用接着フィルムは、例えば、冷蔵又は冷凍で保管される場合には、−20℃程度まで冷却されることがある。
上記ポリエステル系基材フィルムは上記温度範囲において安定であり、変質、変形等を起こしにくいことから、上記ポリエステル系基材フィルムを有することにより、本発明の半導体加工用接着フィルムは熱安定性及び強度に優れ、半導体加工用接着フィルムとして好適に用いられる。
【0012】
上記ポリエステル系基材フィルムを構成する樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。なかでも、汎用性の点で、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0013】
上記ポリエステル系基材フィルムの厚みは特に限定されないが、好ましい下限は4μm、好ましい上限は200μmである。上記ポリエステル系基材フィルムの厚みが4μm未満であると、得られる半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハのバックグラインド時に突起電極付ウエハを保持できないことがある。上記ポリエステル系基材フィルムの厚みが200μmを超えると、得られる半導体加工用接着フィルムは、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際に、突起電極付ウエハに過剰の応力を発生させることがある。
上記ポリエステル系基材フィルムの厚みのより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は100μmである。
【0014】
本発明の半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハに貼り合わせた後、25℃、引張り角度180°、引張り速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったとき、上記電極保護層と上記接着剤層との間で界面剥離が生じ、上記電極保護層と上記接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されず、かつ、剥離強度が5〜400gf/25mmである。
【0015】
上記条件で剥離試験を行ったとき、上記電極保護層と上記接着剤層との間で界面剥離が生じ、上記電極保護層と上記接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されないことは、上記電極保護層及び上記接着剤層の自己凝集力が、上記電極保護層と上記接着剤層との間の界面接着力よりも大きいことを意味しており、これにより、本発明の半導体加工用接着剤は、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際には、糊残りなく低負荷で剥離を行うことができる。
なお、本明細書中、電極保護層と接着剤層との間で界面剥離が生じ、電極保護層と接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されないことは、目視又は光学顕微鏡等により観察することができる。
【0016】
上記条件で剥離試験を行ったときの剥離強度が5gf/25mm未満であると、得られる半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハのバックグラインド時に、上記電極保護層と上記接着剤層との間の剥離等の不良が生じる。上記条件で剥離試験を行ったときの剥離強度が400gf/25mmを超えると、得られる半導体加工用接着フィルムは、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際に、突起電極付ウエハに過剰の応力を発生させ、亀裂等を発生させてしまう。
上記条件で剥離試験を行ったときの剥離強度の好ましい下限は7gf/25mm、好ましい上限は350gf/25mmであり、より好ましい下限は10gf/25mm、より好ましい上限は300gf/25mmである。
【0017】
なお、上記条件で剥離試験を行う際、本発明の半導体加工用接着フィルムを突起電極付ウエハに貼り合わせる方法として、例えば、50〜100℃、1torr程度の真空下で、例えばATM−812M(タカトリ社製)等の真空ラミネーターを用いて貼り合わせる方法等が挙げられる。
また、上記条件で剥離試験を行う際には、テンシロン(AG−IS、島津製作所社製)等を用いることができる。
【0018】
本発明の半導体加工用接着フィルムにおいて、上記条件で剥離試験を行ったとき、上記電極保護層と上記接着剤層との間で界面剥離が生じ、上記電極保護層と上記接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されず、かつ、剥離強度が上記範囲を満たすように上記電極保護層と上記接着剤層とを形成するためには、以下のように上記電極保護層及び上記接着剤層の組成を調整して、上記電極保護層及び上記接着剤層の自己凝集力、並びに、上記電極保護層と上記接着剤層との間の界面接着力を調整することが好ましい。
【0019】
上記電極保護層は、粘着性であってもよく、非粘着性であってもよい。
上記電極保護層を有することにより、本発明の半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハのバックグラインド時に、硬い基材である上記ポリエステル系基材フィルムが接触することによる突起電極の損傷及び変形を抑制することができる。
【0020】
上記電極保護層として、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びこれらの共重合体等を含有する透明な層、網目状構造を有する層、孔が開けられた層等が挙げられる。なかでも、上記電極保護層は、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)又はポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する層であることが好ましい。
なお、本明細書中、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとの両方を意味し、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸とアクリル酸との両方を意味する。
【0021】
上記ポリアルキル(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを重合又は共重合してなる一般的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとこれと共重合することのできる他のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとこれと共重合することのできる他のビニルモノマーとの共重合体が好ましい。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜12の1級又は2級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましく、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを、必要に応じて上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合することのできる他のビニルモノマーと共に、重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。
上記ラジカル重合させる方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の方法が挙げられる。
【0024】
また、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートとして、官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂を用いることも好ましい。
上記官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂は、一般的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂の場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にある(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主モノマーとし、このような主モノマーと、官能基含有モノマーと、必要に応じてこれらと共重合することのできる他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られる、常温で粘着性を有するポリマーであることが好ましい。
このような官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、通常、20万〜200万程度である。
【0025】
上記官能基含有モノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記他の改質用モノマーは特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂に用いられる各種モノマーが挙げられる。
【0026】
更に、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートとして、ラジカル重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合性ポリマーも用いることができる。
上記ラジカル重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合性ポリマーは、分子内に官能基を有する上記官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂を予め合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性不飽和結合とを有する化合物を反応させることにより得られることが好ましい。
なお、上記電極保護層が上記ラジカル重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合性ポリマーを含有する場合、上記電極保護層は、光重合開始剤又は熱重合開始剤を含有することが好ましい。
【0027】
上記電極保護層が上記ポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、上記電極保護層は、架橋剤を含有することが好ましい。
上記電極保護層が上記架橋剤を含有することで、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートの主鎖間に架橋構造を形成することができ、このように架橋構造の度合いを高めることにより、上記電極保護層の自己凝集力を向上させることができる。
【0028】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルコール性水酸基とが反応して部分的な3次元構造を形成することにより、上記電極保護層の自己凝集力を容易に向上させることができることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0029】
上記電極保護層が上記ポリアルキル(メタ)アクリレートと上記架橋剤とを含有する場合、上記架橋剤の配合量は特に限定されないが、上記電極保護層の自己凝集力、及び、上記電極保護層と上記接着剤層との間の界面接着力を上述のように調整する観点から、上記ポリアルキル(メタ)アクリレート100重量部に対する好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が8重量部であり、より好ましい下限が1重量部、より好ましい上限が7重量部である。
また、上記電極保護層が上記ポリアルキル(メタ)アクリレートと上記架橋剤とを含有する場合には、架橋を充分に行うため、使用前に上記電極保護層を室温又は加熱条件下で数時間〜数十時間程度養生してもよい。
【0030】
上記電極保護層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は2μm、好ましい上限は100μmである。上記電極保護層の厚みが2μm未満であると、得られる半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハのバックグラインド時に、硬い基材である上記ポリエステル系基材フィルムが接触することによる突起電極の損傷及び変形を抑制できないことがある。上記電極保護層の厚みが100μmを超えると、得られる半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハのバックグラインド時に、突起電極付ウエハを充分に保持することができず、突起電極付ウエハの厚みのバラツキ、亀裂等を発生させることがある。上記電極保護層の厚みのより好ましい下限は4μm、更に好ましい下限は5μm、より好ましい上限は70μm、更に好ましい上限は50μmである。
【0031】
上記接着剤層は、エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物、及び、硬化剤を含有することが好ましい。
上記エポキシ樹脂は特に限定されないが、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を含有することが好ましい。上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を含有することで、得られる接着剤層の硬化物は、剛直で分子の運動が阻害されるため優れた機械的強度及び耐熱性を発現し、また、吸水性が低くなるため優れた耐湿性を発現する。
【0032】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂ともいう)、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリジジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ナフタレン型エポキシ樹脂ともいう)、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよく、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の汎用されるエポキシ樹脂と併用されてもよい。
【0033】
上記ナフタレン型エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することで、得られる接着剤層の硬化物の線膨張率を下げることができ、硬化物の耐熱性及び接着性が向上して、より高い接合信頼性を実現することができる。
【0034】
【化1】

【0035】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又はフェニル基を表し、n及びmは、それぞれ、0又は1である。
【0036】
上記エポキシ樹脂が上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する場合、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂中の好ましい下限が3重量%、好ましい上限が90重量%である。上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量が3重量%未満であると、上記接着剤層の硬化物の線膨張率を下げる効果が充分に得られなかったり、接着力が低下したりすることがある。上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量が90重量%を超えると、該一般式(1)で表される構造を有する化合物と他の配合成分とが相分離し、上記接着剤層を形成するための組成物の塗工性が低下したり、吸水率が高くなったりすることがある。上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量は、上記エポキシ樹脂中のより好ましい下限が5重量%、より好ましい上限が80重量%である。
【0037】
上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物を含有することで、得られる接着剤層の自己凝集力を向上させることができる。また、上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物を含有することで、得られる接着剤層に可撓性を付与することができ、接合信頼性に優れた接着剤層を形成することができる。
【0038】
上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。
【0039】
上記接着剤層が、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂と上記エポキシ基を有する高分子化合物とを含有する場合、接着剤層の硬化物は、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを有し、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性、寸法安定性等に優れ、高い接合信頼性及び導通信頼性を実現することができる。
【0040】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる接着剤層の硬化物の機械的強度、耐熱性をより高められることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0041】
上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物は、上記エポキシ樹脂と反応する官能基に加えて、光硬化性官能基を有していてもよい。上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物が上記光硬化性官能基を有することで、得られる接着剤層に光硬化性を付与し、光照射によって半硬化することが可能となり、上記電極保護層と上記接着剤層との間の界面接着力を光照射によって制御することが可能となる。
上記光硬化性官能基は特に限定されず、例えば、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。
【0042】
上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は1万、好ましい上限は100万である。上記重量平均分子量が1万未満であると、得られる接着剤層の硬化物の接着力が不足したり、可撓性が充分に向上しなかったりすることがある。上記重量平均分子量が100万を超えると、得られる接着剤層は、ボンディング時の表面濡れ性が劣り、接着強度に劣ることがある。
【0043】
上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が20重量部、好ましい上限が100重量部である。上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物の配合量が20重量部未満であると、得られる接着剤層は、自己凝集力が低下したり、硬化物の可撓性が低下し、高い接合信頼性及び導通信頼性が得られなかったりすることがある。上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物の配合量が100重量部を超えると、得られる接着剤層の硬化物は、機械的強度、耐熱性及び耐湿性が低下し、高い接合信頼性及び導通信頼性が得られないことがある。
【0044】
上記硬化剤は特に限定されず、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0045】
上記酸無水物系硬化剤を用いることで、得られる接着剤層の硬化物の酸性度を中和することができ、電極の信頼性を高めることができる。また、上記酸無水物系硬化剤は硬化速度が速いため、得られる接着剤層の硬化物におけるボイドの発生を効果的に低減することができ、高い接合信頼性を実現することができる。
【0046】
また、後述するように、硬化促進剤として常温で液状のイミダゾール化合物を用いる場合には、硬化剤としてビシクロ骨格を有する酸無水物を併用することにより、高い硬化性と優れた貯蔵安定性及び熱安定性とを両立することができる。これは、一般的には常温で液状のイミダゾール化合物を含有すると接着剤層の貯蔵安定性及び熱安定性が低下してしまうのに対し、立体的に嵩高いビシクロ骨格を有する酸無水物を含有することにより、硬化反応の反応性が抑えられるためと考えられる。
また、上記ビシクロ骨格を有する酸無水物は上記エポキシ樹脂に対する溶解性が高いことから、得られる接着剤層の透明性をより向上させることができる。
更に、上記ビシクロ骨格を有する酸無水物を用いることにより、得られる接着剤層の硬化物が優れた機械的強度、耐熱性、電気特性等を発現することができる。
【0047】
上記ビシクロ骨格を有する酸無水物は特に限定されないが、下記一般式(a)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0048】
【化2】

【0049】
一般式(a)中、Xは単結合又は二重結合の連結基を表し、Rはメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、ハロゲン基、アルコキシ基又は炭化水素基を表す。
【0050】
上記一般式(a)で表される構造を有する化合物として、具体的には、例えば、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記ビシクロ骨格を有する酸無水物の市販品は特に限定されず、例えば、YH−307及びYH−309(ジャパンエポキシレジン社製)、リカシッドHNA−100(新日本理化社製)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合には、上記接着剤層中に含まれるエポキシ基の総量に対する好ましい下限が60当量、好ましい上限が110当量である。上記硬化剤の配合量が60当量未満であると、得られる接着剤層は、充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の配合量が110当量を超えても特に接着剤層の硬化性に寄与しない。上記硬化剤の配合量のより好ましい下限は70当量、より好ましい上限は100当量である。
【0053】
上記接着剤層は、硬化速度、硬化物の物性等を調整する目的で、更に、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、硬化速度、硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
【0054】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
また、上記イミダゾール系硬化促進剤は、常温で液状のイミダゾール化合物を含有してもよい。本明細書中、常温で液状であるとは、温度10〜30℃において、液体状態であることを意味する。
【0056】
一般に、上記イミダゾール系硬化促進剤を配合することで、得られる接着剤層を比較的低温で短時間に硬化させることができるが、上記イミダゾール系硬化促進剤の多くは常温で固体であり、微小に粉砕されて配合されることから、透明性低下の原因ともなっている。これに対し、上記常温で液状のイミダゾール化合物を含有することで、得られる接着剤層の透明性を更に高めることができ、例えば、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が容易となる。
また、上述のように上記常温で液状のイミダゾール化合物は、立体的に嵩高いビシクロ骨格を有する酸無水物と併用して使用されることが好ましい。これにより、得られる接着剤層の貯蔵安定性及び熱安定性を高めることができる。
更に、上記常温で液状のイミダゾール化合物を用いることで、イミダゾール化合物を微小に粉砕する必要がなく、より容易に接着剤層を製造することができる。
【0057】
上記常温で液状のイミダゾール化合物は、常温で液状であれば特に限定されず、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1―メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−エチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ−(シアノエトキシメチル)イミダゾ−ル、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、及び、これらの誘導体等が挙げられる。
上記誘導体は特に限定されず、例えば、カルボン酸塩、イソシアヌル酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩等の塩、エポキシ化合物との付加物等が挙げられる。
これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、2−エチル−4−メチルイミダゾール及びその誘導体が好ましい。
【0058】
上記常温で液状のイミダゾール化合物の市販品は特に限定されず、例えば、2E4MZ、1B2MZ、1B2PZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、2PHZ−CN、1M2EZ、1B2EZ(以上、四国化成工業社製)、EMI24(ジャパンエポキシレジン社製)、フジキュア7000(富士化成工業社製)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記接着剤層が上記常温で液状のイミダゾール化合物を含有する場合、上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量は特に限定されないが、上記硬化剤100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量が5重量部未満であると、得られる接着剤層は、硬化するために高温で長時間の加熱を必要とすることがある。上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量が50重量部を超えると、得られる接着剤層は、貯蔵安定性及び熱安定性が低下することがある。上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量は、上記硬化剤100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が30重量部である。
【0060】
上記接着剤層は、更に、無機フィラーを含有することが好ましい。
上記無機フィラーを含有することで、得られる接着剤層の自己凝集力を向上させることができる。また、上記無機フィラーを含有することで、得られる接着剤層の硬化物の線膨張率を下げることができ、より高い接合信頼性を実現することができる。
【0061】
上記接着剤層は、上記無機フィラーとして、平均粒子径が0.1μm未満のフィラーAと、平均粒子径が0.1μm以上1μm未満のフィラーBとを含有することが好ましい。
上記フィラーAと上記フィラーBとを含有することで、上記接着剤層の自己凝集力及び接合信頼性を高める効果を維持しながら、上記接着剤層を形成する組成物の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を抑制し、塗工性を向上させることができ、同時に、透明性を高め、例えば、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が容易となる。
また、接着剤層を形成する組成物の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を抑制することで、突起電極付ウエハに対する接着剤層の追従性を向上させることもできる。
【0062】
上記フィラーAの平均粒子径が0.1μm以上であると、得られる接着剤層の透明性が低下して、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記フィラーAの平均粒子径は、0.08μm未満であることが好ましい。
【0063】
上記フィラーBの平均粒子径が0.1μm未満であると、得られる接着剤層の自己凝集力又は接合信頼性が低下することがあり、また、接着剤層を形成する組成物の粘度が増大して流動性が低下し、塗工性が低下したり、突起電極付ウエハに対して接着剤層の追従性が低下したりすることがある。上記フィラーBの平均粒子径が1μm以上であると、得られる接着剤層の透明性が低下して、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記フィラーBの平均粒子径は、0.15μm以上であることが好ましい。また、上記フィラーBの平均粒子径は、0.8μm未満であることが好ましい。
【0064】
なお、本明細書中、無機フィラーの平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径を意味する。
【0065】
上記フィラーAは、上記フィラーBに対する重量比の下限が1/9、上限が6/4であることが好ましい。上記フィラーAの上記フィラーBに対する重量比が1/9未満であると、得られる接着剤層の透明性が低下して、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記フィラーAの上記フィラーBに対する重量比が6/4を超えると、得られる接着剤層の自己凝集力又は接合信頼性が低下することがあり、また、接着剤層を形成する組成物の粘度が増大して流動性が低下し、塗工性が低下したり、突起電極付ウエハに対して接着剤層の追従性が低下したりすることがある。上記フィラーAは、上記フィラーBに対する重量比のより好ましい下限が2/8、より好ましい上限が5/5である。
【0066】
上記フィラーA及び上記フィラーBは、平均粒子径が上記範囲内であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、上記フィラーA及び上記フィラーBとして、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物等も挙げられ、このような複合物として、具体的には、例えば、ケイ素−アルミニウム−ホウ素複合酸化物、ケイ素−チタン複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物等が挙げられる。なかでも、滑り性に優れることから、球状シリカが好ましい。
上記球状シリカを用いることで、得られる接着剤層の接合信頼性を更に高めることができ、また、接着剤層を形成する組成物の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を更に抑制し、塗工性、及び、突起電極付ウエハに対する接着剤層の追従性を更に向上させることができる。
【0067】
また、上記接着剤層は、上記無機フィラーとして、上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.1以下である無機フィラーを含有することも好ましい。
このような無機フィラーを含有することで、得られる接着剤層の透明性を低下させることなく、自己凝集力を向上させ、また、硬化物の機械的強度を確保し、線膨張率を低下させて高い接合信頼性を実現することができる。
上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.1を超える無機フィラーを用いると、得られる接着剤層を透過する光の散乱が増し、接着剤層の透明性が低下して、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記接着剤層は、上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.05以下である無機フィラーを含有することがより好ましい。
【0068】
上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.1以下である無機フィラーは特に限定されないが、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。なかでも、一般的に無機フィラーとして用いられるシリカに類似した物性を有することから、ケイ素−アルミニウム−ホウ素複合酸化物、ケイ素−チタン複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物がより好ましい。
【0069】
上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.1以下である無機フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が30μmである。上記平均粒子径が0.1μm未満であると、接着剤層に無機フィラーを充填することが困難となったり、得られる接着剤層の流動性が低下して、接着性能が低下したりすることがある。上記平均粒子径が30μmを超えると、得られる接着剤層の透明性が低下し、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。また、上記平均粒子径が30μmを超えると、無機フィラーの平均粒子径が大きいために電極接合不良が生じることがある。
【0070】
特に、平均粒子径が0.5μm〜5μmの上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.1以下である無機フィラーを用いることで、接着剤層の透明性を更に高めることができる。また、必要に応じて、上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.1以下である無機フィラーとして、平均粒子径がナノメートルサイズの無機フィラーを用いてもよい。
【0071】
上記無機フィラーは、カップリング剤により表面処理されていることが好ましい。
表面処理することで、上記無機フィラーの凝集を抑制し、上記エポキシ樹脂及び上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物との親和性を高めることができる。これにより、得られる接着剤層の接合信頼性を更に高めることができ、また、接着剤層を形成する組成物の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を更に抑制し、塗工性、及び、突起電極付ウエハに対する接着剤層の追従性を更に向上させることができる。
【0072】
上記カップリング剤は特に限定されず、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。なかでも、上記エポキシ樹脂との親和性及び分散性の観点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0073】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルシラン、エポキシシラン、スチリルシラン、(メタ)アクリロキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、イミダゾールシラン、イソシアネートシラン、アルコキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。なかでも、アルコキシシランが好ましい。
上記アルコキシシランは特に限定されないが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが特に好ましい。
これらのカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0074】
上記接着剤層が上記無機フィラーを含有する場合、上記接着剤層中の上記無機フィラーの含有量は特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が70重量%である。上記無機フィラーの含有量が10重量%未満であると、得られる接着剤層の自己凝集力を向上させることが困難となったり、得られる接着剤層の硬化物の線膨張率が上昇し、高い接合信頼性を実現することが困難となったりすることがある。上記無機フィラーの含有量が70重量%を超えると、得られる接着剤層の硬化物は、弾性率が上昇するため熱応力を緩和することができず、高い接合信頼性を実現することが困難となり、また、接着剤層を形成する組成物の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を充分に抑制することができないことがある。上記接着剤層中の上記無機フィラーの含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は60重量%であり、更に好ましい下限は30重量%、更に好ましい上限は55重量%であり、特に好ましい下限は40重量%である。
【0075】
上記接着剤層は、光重合開始剤を含有してもよい。
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤として、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物や、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記接着剤層は、更に、必要に応じて、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂等の一般的な樹脂を含有してもよく、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、増粘剤、消泡剤等の添加剤を含有してもよい。
【0077】
上記接着剤層は、ヘイズ値が70%以下であることが好ましい。
上記ヘイズ値が70%を超えると、接着剤層の透明性が低下して、突起電極付半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記接着剤層は、ヘイズ値が60%以下であることがより好ましい。
【0078】
なお、本明細書中、接着剤層のヘイズ値とは、厚み40μmの接着剤層の両面を、2枚の厚み25μmのPETフィルム間に挟み込んで得られた接着フィルムを、村上色彩技術研究所社製「HM−150」等のヘイズメータを用いて測定したときのヘイズ値(%)を意味する。
【0079】
本発明の半導体加工用接着フィルムにおいては、上記接着剤層の厚みが、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さより薄く、かつ、上記接着剤層及び上記電極保護層の厚みの和が、突起電極の平均高さより厚いことが好ましい。
これにより、得られる半導体加工用接着フィルムは、突起電極付ウエハのバックグラインド時には、上記電極保護層によって硬い基材である上記ポリエステル系基材フィルムが接触することによる突起電極の損傷及び変形を抑制することができるとともに、接着剤層のみを残して基材部分を剥離した後、突起電極付半導体チップをボンディングする際には、高い接合信頼性及び導通信頼性を実現することができる。
【0080】
上記接着剤層の厚みは、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さを1としたとき、0.6以上1未満であることがより好ましい。上記接着剤層の厚みが突起電極の平均高さの0.6未満であると、突起電極付半導体チップをボンディングする際、突起電極付半導体チップと基板又は他の半導体チップとの間を接着剤により充分に充填することができず、ボイドを噛み込むことがある。上記接着剤層の厚みが突起電極の平均高さの1以上であると、突起電極付半導体チップをボンディングする際、突起電極と対抗電極の間に接着剤が噛み込み、導通不良を生じたり、フィレットが過剰に形成されてボンディングツールを汚染したりすることがある。
【0081】
本発明の半導体加工用接着フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記ポリエステル系基材フィルム上に上記電極保護層を形成し、次いで、上記電極保護層上に上記接着剤層を形成する方法が挙げられる。
上記ポリエステル系基材フィルム上に上記電極保護層を形成する方法として、例えば、上記ポリエステル系基材フィルムの少なくとも一方の面にラミネーターを用いて上記電極保護層を積層する方法、共押出装置を利用した成形方法、上記ポリエステル系基材フィルム上に上記電極保護層を形成する組成物を塗工した後、乾燥する方法等が挙げられる。
【0082】
上記電極保護層上に上記接着剤層を形成する方法として、例えば、上記電極保護層上に上記接着剤層を形成する組成物を塗工した後、乾燥する方法、他の離型基材等に上記接着剤層を形成した後、上記接着剤層から離型基材等を剥離し、ラミネーターを用いて上記電極保護層と上記接着剤層とを貼り合わせる方法等が挙げられる。
上記電極保護層又は上記接着剤層を形成する組成物を塗工する方法は特に限定されず、例えば、コンマコート、グラビアコート、ダイコート、キャスティング等を用いる方法が挙げられる。
【0083】
本発明の半導体加工用接着フィルムを用いて半導体チップ実装体を製造する方法であって、前記半導体加工用接着フィルムの接着剤層を、突起電極付ウエハの突起電極が形成された面に貼り合わせて、一体化する工程と、前記半導体加工用接着フィルムと一体化された前記突起電極付ウエハを、裏面から研磨して薄化する工程と、前記半導体加工用接着フィルムのポリエステル系基材フィルムと電極保護層とを剥離して、接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを得る工程と、前記接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを個片化して、接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを作製する工程と、前記接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを、フェイスダウンボンディング方式で基板又は他の半導体チップに実装する工程とを有する半導体チップ実装体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0084】
なお、このような半導体チップ実装体の製造方法によって、例えば、フリップチップ実装、TSV等による実装体を製造することができる。
【0085】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法においては、まず、本発明の半導体加工用接着フィルムの接着剤層を、突起電極付ウエハの突起電極が形成された面に貼り合わせて、一体化する工程を行う。
上記一体化する工程は、常圧下で行ってもよいが、より高い密着性で貼り合わせを行うためには、1torr程度の真空下で行うことが好ましい。上記貼り合わせる方法は特に限定されないが、真空ラミネーターを用いる方法が好ましい。
【0086】
上記突起電極付ウエハは特に限定されず、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなり、金、銅、銀−錫ハンダ、アルミニウム、ニッケル等からなる突起電極を表面に有するウエハが挙げられる。
【0087】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法においては、次いで、本発明の半導体加工用接着フィルムと一体化された前記突起電極付ウエハを、裏面から研磨して薄化する工程を行う。これにより、上記突起電極付ウエハを所望の厚みとなるように薄化する。
上記薄化する工程では、本発明の半導体加工用接着フィルムが上記電極保護層を有することにより、硬い基材である上記ポリエステル系基材フィルムが接触することによる突起電極の損傷及び変形を抑制することができる。
【0088】
上記研磨する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、市販の研削装置(例えば、Disco社製の「DFG8540」等)を用いて、2400rpmの回転で10〜0.1μm/sの研削量の条件にて研削を行い、最終的にはCMPで仕上げる方法等が挙げられる。
【0089】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法の実装方法においては、次いで、上記薄化後の突起電極付ウエハに貼り合わせられた本発明の半導体加工用接着フィルムにエネルギー線を照射して、上記電極保護層及び/又は上記接着剤層を半硬化させる工程を行ってもよい。これにより、上記電極保護層及び/又は上記接着剤層の自己凝集力が高まるとともに上記接着剤層の接着力が低下し、上記電極保護層と上記接着剤層との剥離が容易になる。
また、このとき、上記接着剤層は完全な硬化ではなく「半硬化」することから、上記接着剤層は、後の工程における基板又は他の半導体チップとの実装時には、なお充分な接着力を発揮することができる。
【0090】
本明細書において半硬化とは、ゲル分率が10〜60重量%であることを意味する。例えば、ゲル分率が10重量%未満である接着剤層は、流動性が高くなり、形状保持力が不足したり、突起電極付ウエハを個片化する際に綺麗に切断することが困難となったりすることがある。また、ゲル分率が60重量%を超える接着剤層は、接着力が不充分となり、このような接着剤層が付着した半導体チップは、ボンディングすることが困難となることがある。
【0091】
なお、本明細書中、ゲル分率は、酢酸メチル又はメチルエチルケトン等の、上記電極保護層及び上記接着剤層を形成する組成物を充分に溶解できる溶解度を有する溶剤に半硬化させた半導体加工用接着フィルムを浸透させ、充分な時間撹拌し、メッシュを用いてろ過した後、乾燥して得られる未溶解物の量から下記式(1)により算出することができる。
ゲル分率(重量%)=100×(W−W)/(W−W) (1)
式(1)中、Wは基材の重量を表し、Wは溶剤に浸漬する前の半導体加工用接着フィルムの重量を表し、Wは溶剤に浸漬し乾燥した後の半導体加工用接着フィルムの重量を表す。
【0092】
上記半硬化した状態は、上記電極保護層及び上記接着剤層の組成を調整したり、上記電極保護層及び上記接着剤層が光硬化性官能基を有する化合物を含有する場合には、エネルギー線の照射量を調整したりすることによって、容易に達成することができる。
例えば、上記接着剤層が光硬化性官能基を有する化合物としてラジカルにより架橋可能な二重結合を有するアクリル樹脂を含有する場合、エネルギー線の照射により発生したラジカルが、アクリレート基の二重結合と反応する官能基と連鎖反応し、三次元ネットワーク構造を形成して、上記半硬化した状態を形成する。
【0093】
上記エネルギー線を照射する方法は特に限定されないが、例えば、上記ポリエステル系基材フィルム側から、超高圧水銀灯を用いて、365nm付近の紫外線を上記ウエハ面への照度が60mW/cmとなるよう照度を調節して20秒間照射する(積算光量1200mJ/cm)方法等が挙げられる。
【0094】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法においては、次いで、本発明の半導体加工用接着フィルムのポリエステル系基材フィルムと電極保護層とを剥離して、接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを得る工程を行う。
上記接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを得る工程では、本発明の半導体加工用接着フィルムにおいて、上記電極保護層及び上記接着剤層の自己凝集力が上記電極保護層と上記接着剤層との間の界面接着力よりも大きいことにより、糊残りなく低負荷で剥離を行うことができる。
【0095】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法においては、次いで、前記接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを個片化して、接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを作製する工程を行う。
上記接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを個片化する方法は特に限定されず、例えば、従来公知の砥石、レーザー等を用いて切断分離する方法等が挙げられる。
【0096】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法においては、次いで、前記接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを、フェイスダウンボンディング方式で基板又は他の半導体チップに実装する工程を行う。
なお、本明細書において半導体チップの実装とは、基板上に半導体チップを実装する場合と、基板上に実装されている1以上の半導体チップ上に、更に半導体チップを実装する場合との両方を含む。
【0097】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法においては、更に、加熱することによって上記接着剤層を完全に硬化させる工程を行うことにより、より安定した実装を実現することができる。
【0098】
本発明の半導体チップ実装体の製造方法においては、本発明の半導体加工用接着フィルムの接着剤層の厚みが、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さより薄く、かつ、本発明の半導体加工用接着フィルムの接着剤層及び電極保護層の厚みの和が、突起電極の平均高さより厚いことが好ましい。なかでも、本発明の半導体加工用接着フィルムの接着剤層の厚みは、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さを1としたとき、0.6以上1未満であることがより好ましい。
これにより、上記薄化する工程では、本発明の半導体加工用接着フィルムが上記電極保護層を有することにより、硬い基材である上記ポリエステル系基材フィルムが接触することによる突起電極の損傷及び変形を抑制することができるとともに、上記接着剤層の付着した突起電極付半導体チップをフェイスダウンボンディング方式で実装する工程では、高い接合信頼性及び導通信頼性を実現することができる。
【0099】
上記の説明においては、接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを得る工程を行った後、該ウエハを個片化して、接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを作製する工程を行った。この他の態様として、接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハ上に、接着剤層を介して他のウエハを積層してウエハ積層体を製造し、得られたウエハ積層体を一括的に個片化して、接着剤層の付着した半導体チップの積層体を得てもよい。
【発明の効果】
【0100】
本発明によれば、突起電極付ウエハのバックグラインド時には、剥離を生じることなく突起電極の損傷及び変形を抑制することができ、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際には、糊残りなく低負荷で剥離を行うことのできる半導体加工用接着フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該半導体加工用接着フィルムを用いた接合信頼性に優れた半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0102】
(実施例1)
(1)半導体加工用接着フィルムの製造
基材フィルムとしての厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム(商品名「テトロン」、帝人デュポン社製)の片側に、アクリル樹脂(モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを含むポリアルキルアクリレート)と、このアクリル樹脂100重量部に対して1.5重量部のコロネートL−45(日本ポリウレタン工業社製)とを酢酸エチルで希釈した塗液を、コンマコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥した後、40℃で3日間養生し、厚さ15μmの電極保護層を形成した。また、表1の組成に従って、下記に示す各材料を、ホモディスパーを用いて攪拌混合して接着剤組成物を調製した。離型PETフィルム上に、コンマコート法により、得られた接着剤組成物を乾燥後の厚さが40μmとなるように塗工し、100℃で5分間乾燥させて接着剤層を形成した。
次いで、得られた電極保護層と接着剤層をラミネーターによって貼り合わせることにより、半導体加工用接着フィルムを得た。
【0103】
(エポキシ樹脂)
・HP−7200L(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC社製)
・EXA−4710(ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製)
【0104】
(エポキシ基含有アクリル樹脂)
・G−2050M(グリシジル基含有アクリル樹脂、重量平均分子量20万、日油社製)
・G−017581(グリシジル基含有アクリル樹脂、重量平均分子量1万、日油社製)
【0105】
(硬化剤)
・YH−309(酸無水物系硬化剤、JER社製)
【0106】
(硬化促進剤)
・フジキュア7000(常温で液状のイミダゾール化合物、富士化成工業社製)
【0107】
(無機フィラー)
(1.フィラーA)
・SX009−MJF(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.05μm、アドマテックス社製)
(2.フィラーB)
・SE−1050−SPT(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.3μm、アドマテックス社製)
【0108】
(その他)
・AC−4030(応力緩和ゴム系高分子、ガンツ化成社製)
【0109】
(2)剥離試験及び界面剥離性
得られた半導体加工用接着フィルムの接着剤層を保護する離型PETフィルムを剥がし、真空ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、70℃、1torrの条件で突起電極付ウエハ(突起電極の平均高さ45μm、突起電極の直径30μm、50μmピッチのCu−半田ピラー)の突起電極が形成された面に貼り合わせた後、テンシロン(AG−IS、島津製作所社製)を用いて、25℃、引張り角度180°、引張り速度300mm/分の条件で剥離強度を測定した。また、電極保護層と接着剤層との間で界面剥離が生じ、電極保護層と接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されなかった場合を○、電極保護層と接着剤層とのいずれか一方が凝集破壊し、糊残りが生じた場合を×として、界面剥離性を観察した。
【0110】
(3)半導体チップの実装
得られた半導体加工用接着フィルムの接着剤層を保護する離型PETフィルムを剥がし、真空ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、70℃、1torrの条件で突起電極付ウエハ(直径300mm、厚み750μm、突起電極の平均高さ45μm、突起電極の直径30μm、50μmピッチのCu−半田ピラー)の突起電極が形成された面に貼り合わせた。
次いで、これを研削装置に取りつけ、突起電極付ウエハの厚さが約100μmになるまで研削した。このとき、研削の摩擦熱により突起電極付ウエハの温度が上昇しないように、突起電極付ウエハに水を散布しながら作業を行った。研削後は、研磨装置を用いて、CMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセスによりアルカリのシリカ分散水溶液による研磨を行うことにより、鏡面化加工を行った。
【0111】
研磨装置から半導体ウエハを取り外し、突起電極付ウエハの半導体加工用接着フィルムが貼付されていない側の面にダイシングテープ(PEテープ♯6318−B、積水化学社製、厚み70μm、ポリエチレン基材、粘着材ゴム系粘着材10μm)を貼り付け、ダイシングフレームにマウントした。次いで、半導体加工用接着フィルムの基材フィルム及び電極保護層を剥離し、接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを得た。
【0112】
ダイシング装置DFD651(ディスコ社製)を用いて、送り速度50mm/秒で、接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを10mm×10mmのチップサイズに分割して個片化し、接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを得た。
得られた接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを熱風乾燥炉内にて80℃で10分間乾燥後、ボンディング装置(東レエンジニアリング社製、FC−3000)を用いて荷重0.50MPa、温度280℃で10秒間圧着して実装した後、190℃で30分間かけて硬化し、半導体チップ実装体を得た。
【0113】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
基材フィルムの種類及び厚み、電極保護層の有無及び厚みを表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ実装体を得た。
【0114】
(評価)
実施例及び比較例で得られた半導体チップ実装体等について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
(1)バックグラインド(BG)耐性
半導体チップ実装体を製造する際、突起電極付ウエハのバックグラインド時に電極保護層と接着剤層との間に界面剥離が生じず、突起電極付ウエハの割れも生じなかった場合を○、突起電極付ウエハの端部において部分的に電極保護層と接着剤層との間の界面剥離が生じた場合を△、突起電極付ウエハの割れが生じた場合を×として、バックグラインド(BG)耐性を評価した。
【0116】
(2)突起電極損傷の有無
半導体チップ実装体を製造する際、バックグラインド後の突起電極の状態を基材フィルムの上から光学顕微鏡で観察し、突起電極の潰れ及び変形を以下の基準で評価した。
突起電極の頭頂部の変形が直径5μm未満であった場合を○、突起電極の頭頂部の変形が直径5μm以上10μm未満であった場合を△、突起電極の頭頂部の変形が直径10μm以上であった場合を×とした。
【0117】
(3)基材剥離性
半導体チップ実装体を製造する際、接着剤層を残して基材フィルム及び電極保護層を剥離する際に突起電極付ウエハの割れが生じなかった場合を○、突起電極付ウエハの割れが生じた場合を×として、基材剥離性を評価した。
【0118】
(4)導通性
得られた半導体チップ実装体に外部電極をつなぎ、電極での抵抗の変化をテスター(CDM−06、CUSTOM社製)で追跡し、導通性評価を行った。導通が確認でき、一定抵抗を保っていた場合を○と、導通は確認できたが、抵抗値にブレがあった場合を△と、導通ができなかった場合を×とした。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、突起電極付ウエハのバックグラインド時には、剥離を生じることなく突起電極の損傷及び変形を抑制することができ、バックグラインド後、接着剤層のみを残して基材部分を剥離する際には、糊残りなく低負荷で剥離を行うことのできる半導体加工用接着フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該半導体加工用接着フィルムを用いた接合信頼性に優れた半導体チップ実装体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起電極付ウエハのバックグラインド時には突起電極付ウエハを保持し、かつ、突起電極付半導体チップの実装時には接着剤として機能する半導体加工用接着フィルムであって、
ポリエステル系基材フィルムと、電極保護層と、接着剤層とがこの順で積層されており、
突起電極付ウエハに貼り合わせた後、25℃、引張り角度180°、引張り速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったとき、前記電極保護層と前記接着剤層との間で界面剥離が生じ、前記電極保護層と前記接着剤層とのいずれにも糊残りが観察されず、かつ、剥離強度が5〜400gf/25mmである
ことを特徴とする半導体加工用接着フィルム。
【請求項2】
接着剤層の厚みが、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さより薄く、かつ、接着剤層及び電極保護層の厚みの和が、前記突起電極の平均高さより厚いことを特徴とする請求項1記載の半導体加工用接着フィルム。
【請求項3】
接着剤層の厚みは、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さを1としたとき、0.6以上1未満であることを特徴とする請求項2記載の半導体加工用接着フィルム。
【請求項4】
請求項1記載の半導体加工用接着フィルムを用いて半導体チップ実装体を製造する方法であって、
前記半導体加工用接着フィルムの接着剤層を、突起電極付ウエハの突起電極が形成された面に貼り合わせて、一体化する工程と、
前記半導体加工用接着フィルムと一体化された前記突起電極付ウエハを、裏面から研磨して薄化する工程と、
前記半導体加工用接着フィルムのポリエステル系基材フィルムと電極保護層とを剥離して、接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを得る工程と、
前記接着剤層の付着した薄化後の突起電極付ウエハを個片化して、接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを作製する工程と、
前記接着剤層の付着した突起電極付半導体チップを、フェイスダウンボンディング方式で基板又は他の半導体チップに実装する工程とを有する
ことを特徴とする半導体チップ実装体の製造方法。
【請求項5】
半導体加工用接着フィルムの接着剤層の厚みが、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さより薄く、かつ、半導体加工用接着フィルムの接着剤層及び電極保護層の厚みの和が、前記突起電極の平均高さより厚いことを特徴とする請求項4記載の半導体チップ実装体の製造方法。
【請求項6】
半導体加工用接着フィルムの接着剤層の厚みは、突起電極付半導体チップの突起電極の平均高さを1としたとき、0.6以上1未満であることを特徴とする請求項5記載の半導体チップ実装体の製造方法。

【公開番号】特開2012−74623(P2012−74623A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219842(P2010−219842)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】