説明

半導体基板の分離処理装置および分離方法、半導体基板の分離機構および分離方法、半導体基板の搬送装置、ノズル

【課題】ウエット状態で密着した半導体基板同士を破損することなく自動的に、高速で分離することが可能な装置および方法を提供し、分離した半導体基板を破損することなく安全に搬送できる装置および方法を提供する。
【解決手段】ウエット状態で密着配列した複数の基板を液中に配置するローダー部10と、前記ローダー部10の最前列に配置されている基板2を液中で保持して液外のアンローダー部30に搬送する搬送部20と、基板2を液外で載置し取り出し部まで搬送するアンローダー部30とを有し、搬送部30は回転軸21に連結され所定半径の回転円運動を行う駆動部材22と、この駆動部材22に一端側が回動自在に固定されたリンクアーム210と、リンクアーム210の他端側が摺動しその軌道を規定する軌道路201と、リンクアーム210の他端側に固定されているチャック100とを有する構成の半導体基板の分離処理装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電などの光起電力発電装置などに用いられる半導体基板の分離装置および液体を用いる吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在太陽電池等の用途に用いられる光起電力用基板は使用材料の種類によって結晶系、アモルファス系、化合物系等に分類される。これらの中でも、従来高効率であることから、ほとんどの場合単結晶系シリコンが用いられていた。一方、高効率化が難しいという弱点はあるものの、低コストで製造できるというメリットから近年多結晶型シリコンも徐々に市場に受け入れられてきている。しかし、依然として現時点での主流は結晶系シリコンである。
【0003】
結晶系シリコン基板は、品質の優劣はあるものの一般的な半導体デバイスに使用されている半導体基板と同様なプロセスにより製造される。一般に半導体基板(ウエーハ)は、引上げ法(チョクラルスキー法、CZ法)で育成されたインゴットブロックを鏡面状の薄板に加工することで製造される。
【0004】
この、CZ法により製造されたシリコン単結晶インゴットは研削され、所定の寸法とされ、さらに所定の長さに切断される。柱状に加工されたインゴットは、例えばエポキシ系の接着剤でカーボン製のベースホルダに固定され、マルチワイヤーソーによってスライスされる。スライスされたインゴットはベースホルダに接着されたまま、ベースホルダを上向きにして吊り下げられ、洗浄タンクへと導入され、粗洗浄、若しくは前工程洗浄と称する洗浄処理が行われる。
【0005】
その後、仕上げ洗浄や後工程でのエッチング等の必要な処理が行われ半導体基板ができあがる。
【0006】
ところで、前記粗洗浄の後、次工程に移すためにスライスされた半導体基板を所定の規格のトレー・カセット内に納めたり、整列させる必要がある。しかし、洗浄タンクから取り出された粗洗浄後の半導体基板は、各基板が濡れた状態で密着しており、これを1枚ずつ分離したり整列させる作業は非常に困難である。従来、この行程は作業員の手作業により行われていたため、製造工程全体の自動化や、低コスト化を図る上で大きな障害になっていた。また、ウエット状態で密着した脆弱な半導体基板同士を無理矢理引き剥がそうとすると容易に破損してしまい、自動化を妨げる大きな要因となっていた。
【0007】
ところで、特開平9−129587号公報には、ベルヌーイ保持具にてシリコンウエハを保持する試料保持方法、試料回転方法及び試料表面の液体処理方法並びにそれらの装置が開示されている。また、ベルヌーイ保持具に用いられるのは流体と記載され、流体の一例として液体も記載されている。しかし、この文献に開示されているベルヌーイ保持具は、単にシリコンウエハの洗浄処理を行う際に非接触でウエハを保持するために用いられるものであり、ウエハを保持したまま移動する機構に用いられるものではない。このため、この文献のベルヌーイ保持具は、洗浄、エッチングのための装置、機構と一体となっていて、チャッキング装置に転用することは困難である。また、実施例でベルヌーイ保持具に用いられているのは気体だけであり、液中での使用に関する示唆もない。
【0008】
以上のように、従来の半導体製造工程で用いられる装置は、ウエット状態で密着した半導体基板をそのまま扱うことは困難であり、これを分離、搬送するためには人手に頼らざるをえないのが現状であった。また、液中で半導体基板を適切に保持したり移動するための装置も十分な検討がなされているとはいえず、多くの場合複雑かつ高価な装置でしか実現されていない。また、従来のベルヌーイチャックは、気体を用いるものが主流であり、液体を用いたものは殆ど検討されていない。しかも、従来のベルヌーイチャックは機構が複雑で高価であり、流体の使用量を低減する検討も不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−129587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は、ウエット状態で密着した半導体基板同士を破損することなく自動的に、高速で分離することが可能な装置および方法を提供することである。
また、分離した半導体基板を破損することなく安全に搬送できる装置および方法を提供することである。
また、液中または気中で密着した半導体基板同士を安全に分離できる機構や装置および方法を提供することである。
また、極めて簡単な構成で液中でも半導体基板を安全に保持でき、流体の使用量も少ないノズル、およびこれを用いた機構や装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成とした。
(1)ウエット状態で密着配列した複数の半導体基板を液中に収納・配置するローダー部と、
前記ローダー部の最前列に配置されている半導体基板を液中で保持して液外のアンローダー部に搬送する搬送部と、
半導体基板を液外で載置し取り出し部まで搬送するアンローダー部とを有し、
前記搬送部は、回転駆動する回転軸に連結され所定半径の回転円運動を行う駆動部材と、この駆動部材に一端側が回動自在に固定されたリンクアームと、このリンクアームの他端側が摺動しかつその軌道を規定する軌道路と、前記リンクアームの他端側に固定されているチャックとを有する半導体基板の分離処理装置。
(2)前記搬送部は、液中での進行方向における半導体基板の投影面積が最小になる姿勢を保持して搬送する上記(1)の半導体基板の分離処理装置。
(3)前記ローダー部の前列近傍には、半導体基板に基板面と水平方向から流体を吹き付けて基板同士を分離する分離機構が配置されている上記(1)または(2)の半導体基板の分離処理装置。
(4)前記搬送部は、ベルヌーイ原理を応用したチャックを有する上記(1)〜(3)のいずれかの半導体基板の分離処理装置。
(5)外縁部のみが相互に固定され密着配置された2つの板状部材からなり、一方の板状部材には流体吐出口が形成され、他方の板状部材には前記流体吐出口と異なる位置であってお互いの開口が重ならない位置に流体供給口が形成されているノズル。
(6)一部領域を除き外縁部のみが相互に固定され密着配置された2つの板状部材からなり、何れか一方の板状部材に流体供給口が形成され、
前記固定されていない領域を吐出口として流体を放出するノズル。
(7)前記ノズルは、2つの板状部材の一方、または双方が供給された流体の圧力により変形して生じた隙間を流路とする上記(5)または(6)のノズル。
(8)上記(1)〜(4)のいずれかの半導体基板の分離装置のチャックに用いられる上記(5)または(7)のノズル。
(9)上記(3)の分離装置に用いられる上記(6)または(7)のノズル。
(10)密着配置された半導体基板を液中に浸漬し、次いで基板面と平行な方向から流体を吹き付けて半導体基板同士を分離する半導体基板の分離方法。
(11)液中でベルヌーイ原理を応用したチャックにより半導体基板を保持し、進行方向における半導体基板の投影面積が最小になる姿勢を保持して搬送する半導体基板の搬送方法。
(12)密着配置された半導体基板の分離位置周囲に1つまたは2つ以上の流体吐出口を配置し、この流体吐出口から半導体基板に対し基板面と平行な方向に流体を吹き付け、半導体基板同士を分離する半導体基板の分離機構。
【発明の効果】
【0012】
本発明の装置および方法は、ウエット状態で密着した半導体基板同士を破損することなく自動的に、高速で分離することが可能である。また、分離した半導体基板を破損することなく安全に搬送できる。
また、本発明の機構、装置および方法は、液中または気中で密着した半導体基板同士をダメージを与えたり破損することなく分離することができる。
また、本発明のズルまたは機構およびこれを備えた装置は、安価に製造でき極めて簡単な構成で流体中でワークを安全に保持することができ、流体の使用量も少ないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明装置の一実施例を示す断面図である。(実施例1)
【図2】図2は、本発明装置の一実施例を示す平面図である。(実施例1)
【図3】図3は、ローダー部と搬送部の詳細構造を示す側面図である。(実施例1)
【図4】図4は、搬送部の詳細構造を示す側面図である。(実施例1)
【図5】図5は、搬送部の軌道路における動作を示す側面図である。(実施例1)
【図6】図6は、搬送部の軌道路における各部材の軌跡を示す模式図である。(実施例1)
【図7】図7は、本発明のノズルの一実施例を示す平面図である。(実施例1)
【図8】図8は、本発明のノズルの一実施例を示す側面図である。(実施例1)
【図9】図9は、本発明装置、方法の動作順序を示したフローチャートである。(実施例1)
【図10】図10は、本発明のノズルの動作状態を示した図面代用写真である。(実施例1)
【図11】図11は、図10の一部を拡大した図面代用写真である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明装置は、例えば図1に示すような構成によりなり、ウエット状態で密着配列した複数の半導体基板を液中に収納・配置するローダー部(10)と、前記ローダー部(10)の最前列に配置されている半導体基板(2)を液中で保持して液外のアンローダー部(30)に搬送する搬送部(20)と、半導体基板を液外で搬送部から受け取り、載置し取り出し部まで搬送するアンローダー部(30)とを有し、前記ローダー部の前列近傍には、半導体基板(2)に基板面と水平方向から流体を吹き付けて基板同士を剥離する剥離部が配置されている。
【0015】
上記構成により、ウエット状態で密着配列、または積層された半導体基板を自動的に安全かつ確実に分離し、個別に取り出すことができ、これまで人手によって行われていた行程を自動化でき、しかも高速に処理することができる。
【0016】
ローダー部は、ウエット状態で密着し、配列または積層された半導体基板を収納し、基板を1枚ずつチャック位置に搬送する。このように基板を搬送する方法としては、公知の種々の機構を用いることができるが、基板下部にベルトを配置してこのベルトにより搬送するとよい。ベルトにより搬送する場合、半導体基板の収納ケース底面よりベルト正面を僅かに高い位置に調整することで、半導体基板の下端部と収納ケース底面とのすれが防止でき、半導体基板のダメージを防止できる。また、ベルトだけで基板下部を搬送すると、基板上部が取り残され、基板列が倒壊してしまうので、配置された基板の後端部を別の機構で支持することが望ましい。具体的には、ベルトと連動して動作する支え等の支持機構を設けるとよい。
【0017】
ローダー部の基板列ないし基板積層体は、液中に浸漬することにより基板同士が剥離しやすくなり、分離が容易になる。このため、基板をチャックする手段によっては、液中でそのまま分離することも可能である。しかし、基板列の先頭部分に、密着した基板同士をある程度分離する分離機構を設けると、さらに分離が容易になり、その後の基板の保持、搬送が極めて容易になる。
【0018】
基板分離機構としては、種々の方式が考えられるが、本発明では以下のような機構ないし方法を用いることが好ましい。先ず、密着配置された半導体基板の分離位置周囲に流体吐出口を配置する。そして、この流体吐出口から半導体基板に対し基板面と平行な方向に流体を吹き付ける。吹き付けられた流体は、基板面と平行方向から半導体基板端部に当たるから、密着した基板同士の僅かな隙間に入り込み、隙間を拡大する。そして同様な作用により、さらに隙間が拡大し半導体基板同士が分離した状態になる。このように、単に流体を半導体基板に基板面と平行な方向から吹き付けるだけなので、基板に余計な力を加えることなく容易に分離でき、基板に物理的ダメージを与えることもない。設ける流体吐出口の数は特に限定されるものではなく、1つまたは2つ以上であり、分離に必要な数を設けるとよい。
【0019】
搬送部は、ローダー部の基板最前列から1枚毎に基板を保持し、液中から液上まで搬送した後、アンローダーの所定の位置に基板を載置する。このような動作を行う機構としては、半導体搬送装置として公知のベルト機構やロボットアーム等が挙げられる。しかし、ベルトでの搬送は、液中では抵抗要素が多く、不要な液流が生じたり基板の姿勢を保つことも困難なため不向きである。ロボットアームは、防水性さえ確保できれば使用することは可能であるが、装置や制御が複雑であり、迅速な動作も難しく、コストの大幅な上昇と装置の大型化を招く。
【0020】
そこで本発明では、回転動作を行う駆動装置と、これにより動作するリンクもしくはカム機構、あるいはこれから派生した機構を組み合わせて搬送動作を行わせるようにした。つまり、所定の大きさの円運動とを行う部材と、この円運動を搬送経路を辿るの動作に変換する部材とを組み合わせ搬送機構とした。このため、機構が比較的単純で、構成部品も少なく、極めて低コストで提供でき、耐久性もあり、メンテナンスも容易である。また、制御も回転装置を制御するだけでよく、制御装置に要するコストも安価で済む。
【0021】
具体的には、先ず、回転駆動装置の回転軸に連結され所定半径の回転円運動を行う駆動部材を設ける。この駆動部材は搬送軌跡に近い回転半径で回転する駆動支点を与えるものである。このため、駆動部材も、所定半径の円運動を与える支点を提供しうるものであれば、その形状は限定されるものではなく、円盤状でも、1または2本以上のアームでも、星形や波形の形状の板やブロックでもよい。そして、この駆動部材にリンクアームの一端側を回動自在に固定する。また、リンクアームの他端側は軌道路に摺動自在に固定する。前記リンクアームは駆動部材の回転円動作を、軌道路の軌跡をなぞる動作に変換するための部材であり、このような機能を有するものであれば棒状でも、板状でも、他の形状でもよい。このようにリンクアームは、駆動部材の円運動と、搬送軌道との間に介在して両者の軌跡のずれを吸収して連結する機能を有する。
【0022】
軌道路は、搬送路を規定するものであり、前記リンクアームの他端側が摺動してその軌道を規定する。従って、軌道路を搬送路に沿った形状にすれば、リンクアームの他端が、搬送を行えるようになる。そして、リンクアームの他端側に半導体基板を保持できるチャックを配置すれば、基板を保持して搬送が行える。軌道路は、その内部に摺動用のガイドローラー等を収容し、摺動可能な空間と軌跡を形成できるものであればよく、板状の部材に軌道路に相当する部分を切り欠いたり、板状、棒状の部材を摺動路を空けて配置し得たりして構成してもよい。また、棒状、パイプ状の部材を2本平行にレール状に配置して軌道路とし、これを挟持ないし把持しながチャック支持部材とこれに付属する部材が摺動するようにしてもよい。
【0023】
チャックは、ワークを保持して搬送することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、公知の半導体基板のチャッキング機構から最適なものを選択して用いることができる。具体的には、乾燥状態でのハンドリングでは真空式吸着機構、ベルヌーイ式吸着機構、空気圧・電磁力を用いた機械式チャック、ロボットハンド等がある。
【0024】
本発明では液中でのハンドリングが必要であるから、前記チャッキング機構をそのまま転用することは困難である。従来の真空式吸着機構、ベルヌーイ式吸着機構は何れも気体を流体として用いることが前提で、液体を流体として用いることは考慮されていないものが殆どである。また、真空得式吸着機構や機械式チャックは半導体基板に与えるダメージが大きく現実的ではない。ロボットハンドは、動作機構に防水性を与えればある程度転用することも可能であるが、装置や制御が複雑で、装置全体のコストを大きく引き上げてしまう。
【0025】
そこで本発明では以下の構成のノズルを、ベルヌーイ原理を応用したチャックとして用いることが好ましい。このノズルは、密着配置された2つの板状部材からなる。2つの板状部材には、流体供給口と流体吐出口とが板状部材の何れかにそれぞれ形成されている。また、流体供給口と流体吐出口とは、それぞれの開口部分が重ならないように板状部材の平面内の離間した位置に配置されている。例えば、一方の板状部材には、部材中央部付近に流体吐出口が形成され、他方の板状部材には前記流体吐出口と異なる位置であってお互いの開口部分が重ならない位置に流体供給口が形成されている。
【0026】
2つの板状部材は、その周縁部のみ互いに固定され、それ以外の部分、特に流体供給口と流体吐出口を結ぶ領域は密着配置されただけの状態になっている。固定の手段は、必要に応じて公知の如何なる方法を用いてもよく、例えば、溶着、溶接、接着、ネジなどによる機械的固定でもよい。また、必要により前記吐出口周囲にホーン状の開口部を設けてもよい。このノズルは以上の構成だけで完成する。
【0027】
そして、前記流体供給口に所定圧力の流体を供給すると、2つの板状部材の一方、または双方が供給された流体の圧力により変形して互いの板の間に隙間を生じる、この生じた隙間には流体が流入してさらに隙間を広げ流路となる。そして、流体吐出口から流体が勢いよく吹き出す。また、このような構造にすることで、噴出する流体の圧力を得るのに必要な流体の流量を少なくすることができる。このため、省エネ、省資源にも寄与できる。
【0028】
吐出した流体をワークの基板面に当てると、ノズルとの間が所定距離になる位置でベルヌーイ効果が生じ、ワークを保持できる。つまり、液中でも非接触でワークを保持し搬送することができる。
【0029】
また、前記ノズルは前記分離機構に用いることもできる。この場合、上記ノズルをそのまま用いてもよいが、以下のような分離機構用の構成にするとよい。この構成では、吐出口および開口部は設けない。その代わり、2枚の板状部材を互いに固定する部分に、一部固定しない領域を設ける。言い換えれば、2つの板状部材は、一部領域を除いた周縁部のみが互いに固定され、それ以外の部分、特に流体供給口と固定されていない周縁部を結ぶ領域は密着配置されただけの状態になっている。そして、この固定されていない一部領域の周縁部が吐出口として機能する。
【0030】
そして、上記同様前記流体供給口に所定圧力の流体を供給すると、2つの板状部材の一方、または双方が供給された流体の圧力により変形して互いの板の間に隙間を生じる、この生じた隙間には流体が流入してさらに隙間を広げ流路となる。しかしこの構成例では、吐出口が形成されていないので、流体は固定されていない周縁部から勢いよく吹き出すことになる。このため、固定されていない周縁部の大きさや領域を変えることで、任意の大きさの帯状、線状の領域から流体を流出させることができる。このように、流体を帯状に吹き付けることができるので、半導体基板に基板面と平行に、広い領域に渡って流体を当てることができ、より効果的に分離を行うことができる。
【0031】
搬送部により搬送される半導体基板は、液中を搬送する際、液の抵抗を少なくするため、進行方向に対する投影面積が最小になるような姿勢を保持して搬送される。言い換えると、基板を搬送するときに、基板面と平行な方向に向け移動する。また、基板面と平行な方向に対して多少斜め方向を向いていてもよいが、搬送開始位置での基板面に対して20度以内であることが望ましい。
【0032】
具体的には、基板面が垂直方向に向いたスタック状態で配列された基板は、チャッキングした後そのまま垂直方向に搬送移動される。これは、搬送部の回転動作の一部を直線状に矯正することで実現できる。液上まで搬送されると、今度はローダーに載置するため、姿勢を90°転換し基板面が水平方向になる。これは、搬送部の回転動作により容易に行わせることができる。そして、そのままの指定でアンローダー部にまで搬送することで、搬送動作は完了する。このとき、アンローダー上における基板の姿勢は、搬送方向に対して僅かに下方を向いた状態にすることが望ましい。具体的には、搬送方向に対して0.5〜10°、好ましくは1〜5°程度である。このような姿勢を取ることで、アンローダ上にソフトランディングして、基板を安全かつスムーズに載置できる。
【0033】
なお、リンクアームやチャックは、必要とされるタクトタイムや、搬送するワーク、その他要求される性能に応じて、1あるいは2個以上設けてもよく、通常、3,4個設けられる。複数設ける場合には、個数に応じた等角度に配置すると制御が容易になる。
【0034】
本発明の装置は、ローダー部と搬送部の一部が液中に存在した状態になる。このため、液密性のある水槽内にこれらの構成要素が収納される。また、扱う半導体基板の性質から、金属汚染を極力防止することが大事である。従って、好ましくは、液中に存在するか、液に接触する構成要素は、水槽も含めて好ましくはその90%以上、より好ましくは98%以上を樹脂材料により形成するとよい。具体的な樹脂材料としては特に限定されるものではなく、耐食性、耐温度性など、必要な特性を有し、装置として強度が維持できるものであればよい。具体的には、半導体装置で通常使用されれている樹脂、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン,polyetheretherketone)樹脂、PVC(塩化ビニール)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が挙げられる。
【0035】
本発明における流体とは、一般的に流体として認識されているものであり、気体でも液体でもよい。特に、半導体製造行程で使用される流体が好ましく、さらには液体が好ましい。気体としては、空気、酸素、窒素、不活性ガス、あるいはこれら同士、もしくは他の気体との混合ガスが挙げられ、液体としては水、純水、超純水、アルカリイオン水、アルコール系等の液体と、これらに洗浄剤や酸、アルカリ成分を加えた液体などが挙げられる。また、本発明におけるチャッキング、搬送対象、つまりワークは、半導体基板であり、好ましくは光起電力装置に用いられる半導体基板である。このような半導体基板は、安価に大量に製造する必要があり、本発明のように簡単な構成で製造することができる機構、装置が適している。
【0036】
本発明装置を制御する制御装置としては、特別な機構やタイミングでの動作を行わせるものではにので、通常自動機に用いられている制御装置を用いることができる。例えば、シーケンサーやマイコンなどで容易に制御することができる。また、処理枚数やエーラー情報など処理に必要な情報を他の装置や、PC等の主制御装置と有線または無線などの通信手段により送受信してもよい。
【0037】
また、本発明では、上記ノズル等を用いたチャッキング動作を行わせるとき、吸着/分離の流体の制御を、上記のような制御装置により電磁弁等を用いて電気的に行うことも可能であるが、機械的な処理、構造により制御を行わせることもできる。本発明の搬送部は、駆動装置の回転動作により作動する。このため、駆動軸などの回転機構において、所定の回転位置、回転角とチャックの位置は相対的に規定できる。そして、チャックの吸着開始の位置と終了の位置も決まっている。従って、特定の回転位置で流体を流出し、別の特定の回転位置で流出を止めればよく、これは機械的に規定できる。このため、上記回転駆動装置の回転軸に連動してロータリー式の制御弁を設け、特定の回転位置で流体を制御するようにすればよい。このように、特別な制御を行うことなく、機械的に吸着動作を行わせることができ、制御装置の負担を減らし、制御が簡単になり、コストを低減することができ、メンテナンスも容易になる。
【実施例1】
【0038】
次に、図を参照しつつ本発明の具体的な実施例について説明する。図1は、本発明装置の1実施例の断面図、図2は平面図、図3はローダー部と搬送部の詳細を示す側面図、図4は搬送部の詳細を示す側面図である。図に示すように、本発明装置1は、ローダー10と、搬送部20と、アンローダー30とを有する。前記ローダー10と、搬送部20は、筐体50に取り付けられた水槽40内に配置されている。水槽40には、通常水などの液体が満たされ、半導体基板同士の剥離を容易にしている。前記ローダー10は水槽40内の水面下に位置し、搬送部20はその一部が水面上に露出するように配置されている。
【0039】
ローダー部10は、図3にも示すように、水槽40内の所定の高さにトレー11を配置する台座41と、この台座41上にあって、トレー11内に収納されている半導体基板2を後述するチャッキング位置まで搬送するベルト13と、搬送される半導体基板2の後端を支持する支え12を備えている。
【0040】
トレー11には、粗洗浄後等の複数の半導体基板2がウエット状態で収納されている。このため、各半導体基板2は水等の液体成分により密着し、所定枚数が基板面に対して垂直方向に配列している。このトレー11が台座41上に配置されると、水槽40に満たされた液体中に水没する。
【0041】
台座41上には、その前後端部に配置されたプーリー15,14間に張り渡されたベルト13が配置されている。トレー11には長穴ないし切り欠き状のベルト13の逃げ穴、ないし開口が設けられていて、トレー11をセットしたときに丁度この部分にベルト13が入り込むようになっている。このとき、トレー11の下端部よりベルト13の上部が僅かに上方に位置するようになる。このため、ベルト13は半導体基板2の下端部と接触し、ベルト13の動作が半導体基板2の下端部に伝達される。つまり、ベルト13を動作させることで半導体基板2をベルト13の動作方向に移動させることができる。
【0042】
ベルト13は、ステッピングモータ等の駆動装置19により駆動される。このモータ19は、カバー192を有する支持部材191に固定され、さらにマスト193により液面上に配置されている。そして、図示しないシャフトを介してプーリー15を駆動している。あるいは、駆動専用のローラーを設けてもよい。そして、通常半導体基板2が、後述するチャッキング位置から一枚搬送される毎に、前記チャッキング位置方向に基板2一枚分移動するように制御される。このため、駆動装置は、ステッピングモータ(パルスモータ)、サーボモータのように、微細移動の制御が可能なものが好ましい。あるいは、DCモータや、インダクションモータやシンクロナスモータなどの一般的なACモータとトランスミッション等とを組み合わせて、微細な動作制御が行えるようにしてもよい。
【0043】
台座41には、トレー11の後部側に支え12が配置されている。この支え12は、半導体基板2がベルト13で搬送される際にその後部を支持し、転倒するのを防止する。つまり、半導体基板2の下端部は、ベルト13により前方に向けて移動するが、それだけでは、基板上部が取り残され、次第に基板全体が傾いて転倒してしまう。そこで、ベルト13の移動に伴い、ベルト13の移動分だけ基板の後部を支持しながら同期移動し、半導体基板2全体が移動できるようにしている。このため、トレー11後部には、支えが入り込むための穴、もしくは切り下記が形成されている。
【0044】
支えの駆動機構としては、前記ベルト13と同様のものでよいし、ベルト13の駆動機構を兼用したり、ベルト13自体により駆動するようにしてもよい。また、ベルト13および支え12の搬送位置は、チャッキング位置より半導体基板1枚分手前までにするとよい。最後の1枚はその前の1枚がチャックされて搬送された後、自重で搬送位置より僅かに低いチャッキング位置に落ち込むようにして移動し、自立して姿勢を保ちチャックされる。これにより、ベルト13や支え12とチャッキング機構などが干渉したり、接触するといった事故やこれらの機構に巻き込まれる半導体基板の破損が防止できる。
【0045】
前記チャッキング位置の近傍には、図3に示すように密着した半導体基板2を分離するための基板分離機構18が設けられている。図示例では、トレー11の両脇に液体を噴出するノズル18を備えた基板分離機構が設けられ、これにより密着していた基板同士が剥離し、1枚ずつ取り出すことが可能になる。
【0046】
基板分離機構18は、所定の流量の流体を所定の圧力で送出することができる吐出口やノズル状のものであれば、特に限定されるものではなく、市販品の中から好適なものを選択して用いることができる。また、上記の本発明のノズルを分離機構用に構成したものを用いると好ましい結果が得られる。基板分離機構から送出された流体は基板面の水平方向から半導体基板に当たり、基板間に流入しようとする。基板に当たる流体がある一定の圧力以上になると、基板間にも流体が進入し、密着した基板に隙間が生じ、さらに流体が進入して基板同士が完全に分離された状態になる。
【0047】
基板分離機構18の具体的な設置位置としては、分離する半導体基板2の基板面と略平行な方向から流体を吹き付けることができる位置にする必要である。具体的には、基板面の法線方向の位置としては、配列、積層されている半導体基板のチャッキング側最前列、あるいは最上位列から好ましくは1〜20枚、より好ましくは5〜10枚程度の中間位置に配置するとよい。また、基板面に平行な位置としては基板の長さの1/4〜3/4、好ましくは2/5〜3/5の間の中央部付近であり、特に本発明の装置のように、液中に立てた基板を配置して分離する場合には、長さ1/2の中央から上部の長さ1/4までの間に配置するとよい。また、基板端部からある程度離間させることが望ましい。具体的には、トレー等と干渉しない位置であって、2〜20mm程度の範囲内にあるとよい。
【0048】
搬送部20は、図1、図3,図4に示すように、図示しない回転駆動装置に回動自在に連結されている回転軸21と、この回転軸21の回転力をリンクアーム23に伝達する駆動部材22と、この駆動部材22により駆動され、チャックに保持した半導体基板を搬送するリンクアーム210を有する。回転軸21は、図4に示すように、その中心が液面Sより僅かに液中になるように配置されている。なお、駆動部材22は、図1に示すようなアーム状でもよいし、図3、4に示すようなディスク状でもよい。駆動部材22は、所定の半径の円軌道を描いてリンクアーム210の一端を回転駆動させることができればよい。
【0049】
リンクアーム210は、その一端側にある支持軸211により回動自在に駆動部材22に固定され、その他端側にある軌道軸212がチャック支持体220に回動自在に固定されている。また、チャック支持体220には、ガイドローラー111が前記軌道軸212と同心状に固定されている。このチャック支持体220には、他のガイドローラー112が固定されていて、2つのガイドローラー111,112により2点で固定されている。
【0050】
ガイドローラー111,112は、軌道路201内に配置されている。この軌道路201は、終端が無い連続して形成された環状の長穴であり、リンクアームの他端側の動きを規制し、所定の軌道を描くように矯正するものである。つまり、軌道路201により形成される軌道の形状や大きさは、リンクアーム210によって動作するガイドローラー111が摺動可能な範囲で、搬送路に求められる軌跡により決められる。軌道路201を形成するには、1枚の板の軌道路201に相当する部分を切り欠いてもよいし、2つの板状もしくは棒状の部材を一定の間隙を持って対向させ、軌道路201としてもよい。軌道路201を構成する部材の形状や大きさは、必要な強度を有し、ガイドローラー111,112と係合可能な形状、大きさにすればよい。
【0051】
図5,6は、このような軌道路201と、リンクアーム210の支持軸211a、軌道軸212a、およびチャック100、チャック支持体220の関係を示した図である。図示例のように移動する各支持軸211aの円回転動作に伴い軌道路201内の移動する各軌道軸212aが、軌道路201に沿って動いていることが解る。つまり、支持軸211aの円回転動作が、リンク-アーム210により、軌道路201に沿った軌跡の動作に変換される。このため、軌道路の大きさと支持軸211が描く円軌道の大きさとは、そのずれがリンクアームで吸収できる所定の範囲内ある必要がある。
【0052】
そして、図4に示すようにチャック開始位置(a)で、ワークをチャックし、半導体基板面と平行に移動して、液面上の位置(b)まで搬送し、さらにそこから方向を90°転換してアンローダー3の方向に搬送し、アンローダー部30上の位置(c)でチャックを解除し、緩やかに下方に移動しながら半導体基板2をアンローダー上に載置する。このように、軌道路201の軌道を最適なものに設定することで、複雑な機構や制御を必要としないで、半導体基板を搬送することができる。
【0053】
前記チャック支持体220には、チャック100が配置されている。チャック100は、ワーク2を保持して搬送することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、公知の半導体基板のチャッキング機構から最適なものを選択して用いてもよい。しかし、本実施例では以下に示すような液中で好適に動作するノズル100をチャック機構として用いる。図7はこのようなノズル100の具体的形状を示した側面図、図8は平面図である。
【0054】
この例のノズル100は、2枚の板状の部材を貼り合わせて構成されている。このとき、2枚の板状部材は、その外縁部でのみ接着、溶着、融着などの固定手段により相互に固定されている。それ以外の部分では、2枚の部材は単に対向して密着した状態になっている。前記2枚の部材は、表板であるワークに対向するノズル部材110と、背板である流体を供給する側の流体供給部材120とからなる。ノズル部材110には、その略中央に所定の直径dの吐出口112と、この吐出口112から開口角a1でホーンまたは円錐状に開口した開口部111を有する。
【0055】
流体供給部材120には、前記吐出口112から偏芯した位置に流体供給口121が形成されている。流体供給口121は、図示例では2つ設けられているが、必要とされる流体の流量や圧力により最適な数が設けられ、1つでもよいし2以上設けてもよい。流体供給口121の位置は、前記のように吐出口112と外れた位置に設けられ、直接吐出口112と流体供給口121の開口部分が重なることはない。また、吐出口112と流体供給口121とはある程度離れていることが望ましく、流体供給部材の中心と端部の間の2/10〜8/10の間に設けるとよい。
【0056】
ここで、本発明のノズル100の動作原理について説明する。上記のように、吐出口112と、流体供給口121とは異なった位置に形成され、その他の部分は2つの板が密着しているだけで両者を繋ぐ流路は形成されていない。しかし、流体供給口121から流体が供給され、所定の圧力がかかると、その圧力によりノズル部材110、流体供給部材120の何れか、もしくはその両方が変形して撓む。すると、ノズル部材110と流体供給部材120の間に隙間が生じる。そして、この隙間が流路となり、流体供給口121から吐出口112に向かって流体が流れ、吐出口112から流出する。
【0057】
図10,11は、図7,8に示すような構造のノズルに流体として水を供給したときの動作状態を示す図面代用写真であり、図11は図10のノズル付近の拡大写真である。この時の板状部材は、40mm角で、表板対裏板の比が2:1〜1.5:1程度になるように全体の板厚を15〜20mmとした。また、吐出口付近には図示するような開口部を設けた。供給した水は水圧0.5MPa(5kgf/cm2 )で水量は2.5L/minであった。これらの写真から明らかなように、少ない水量でも勢いよく流体が突出口から吹き出しているのが解る。
【0058】
このように、2つの板状部材、つまりノズル部材110と流体供給部材120が圧力弁のような働きをして所定圧力の流体を供給する。このような構造を用いることにより、通常の円環状の流路を用いたノズルに比較して、少ない流量で高速高圧の噴出流を得ることができ、液体の使用量を抑制することができる。しかも、形状や構造が簡単で使用部品も少なく、製造コストも低く、極めて安価に提供することができる。
【0059】
本発明のノズルを分離機構に用いる場合には、上記のように吐出口112や開口部11を形成しないで、周縁部の一部領域を固定しないで吐出口にするとよい。具体的には、板状部材が四角形の場合、周縁部の1辺だけを固定しないようにすればよい。このノズルには開口部を形成していないので、周縁部の固定していない部分から流体が流れ出し、吐出口として機能する。そして、この例の吐出口はスリット状になるので流体も線状ないし帯状に吹き出す。
【0060】
ノズル部材110は、上記例では液体を例示して説明したが、流体であれば、液体でも気体でも使用することが可能である。使用環境も液中でも気中であってもよい。また、その使用用途もチャッキングに限定されるものではなく、流体を吹き付ける用途に使用しても良好な結果を得ることができる。具体的には、上記半導体基板の分離機構に用いると良好な結果を得ることができる。
【0061】
ノズル部材110に形成されている吐出口112、開口部111の大きさや形状は、流体の流量や圧力、使用用途、ワークの形状等により最適な形状にすればよい。開口部の開口角a1は通常40〜160°程度である。流体供給口121の大きさや形状も供給する流体の量や圧力、継ぎ手の形状等に合わせて最適なものにすればよい。また、その数も図示例のように2個に限定されるものではなく、1個でもよいし、2個以上にしてもよい。
【0062】
流体供給部材120、ノズル部材110の大きさと厚さは、チャックするワークの大きさや、保持力、供給する流体の流量や圧力に応じて最適なものとすればよい。これら2つの板の大きさとしては通常、5〜100mm2程度である。特に、厚さは、後述する噴出気流を形成する上で重要であるから、慎重に吟味する必要がある。ノズル部材110の厚さは、開口部111の形状にも依存することから一義的に決めることは困難であるが、流体供給部材120の厚さは通常2〜20mm程度である。厚さが薄すぎると、流体の圧力に負けてしまい、厚すぎると必要な水流が確保し難くなってくる。
【0063】
ノズル100に供給する流体の圧力は、チャッキング用途に用いる場合、気体では空気圧として0.1〜1Mpa、液体では水圧として0.1〜1Mpa、好ましくは0.3〜0.7MPa程度である。また、分離機構に用いる場合、気体では空気圧として0.1〜0.8Mpa、液体では水圧として0.1〜0.8Mpa程度である。また、液体での流量は、チャッキング用途に用いる場合水流にして1.5〜4L/min、分離機構に用いる場合水流にして0.5〜3L/min程度である。
【0064】
アンローダー30には、両端部、つまり搬送部側プーリー34と、取り出し部側プーリー35の間に張り渡されたベルト33が配置されている。ベルト33は、前記プーリー34,35により駆動される。また、駆動専用のプーリーを設けてもよい。さらに、これらのプーリーは、図示しない駆動装置により駆動される。駆動装置としては、上記ローダー部で挙げたものと同様なものでよい。なお、アンローダー部ではベルトの駆動速度や動作/丁巳などの制御にそれ程の制度を要求されないため、ローダー側より簡易な駆動装置を用いることができる。
【0065】
アンローダー30では、図4の(c)位置が、図1における載置位置31に相当し、搬送部2からこの位置に供給されたワークは、2本のベルト33により取り出し部32にまで搬送される。搬送されたワークは、作業員により取り出されたり、その後の行程に用いられる装置により自動的に取り出されたりする。
【0066】
アンローダー30の下部には筐体から張り出したアンローダー支持部材54が設けられ、前記プーリー35等を支持している。このアンローダー支持部材54は、アンローダーから落下する液体を受ける機能も有している。また、このアンローダー30下部の水槽40と筐体50の後端部との間には、ドレン領域57が形成され、搬送されるワークから滴下した液体や、水槽からオーバーフローした液体、前記アンローダー支持部材54が受けた液体を収容できるようになっている。なお、収容した液体は、フィルターなどにより濾過され、再度液体循環システムに戻すこともできる。
【0067】
筐体50には、制御卓52がローダー側に設けられ、操作スイッチなどが配置されている。また、筐体側部57には、各部を駆動するためのモータ等の駆動装置、液体循環用のポンプ、これらの制御装置、電源装置などが収納、配置されている。なお、筐体50の下部には、固定脚55と、移動用のキャスター56とが取り付けられ、搬送時にはキャスター56により容易に移動でき、設置時には固定脚55により強固に固定できるようになっている。
【0068】
次に、本発明装置の動作について説明する。図9は本発明装置の動作を示すフローチャートである。先ず、水槽40内のローダー部10の台座41に半導体基板2が収納されたトレー11をセットする(S1)。次いで、制御卓52上のスタートスイッチをONにして、装置を起動させる(S2)。
【0069】
装置が起動すると、ローダー部10が動作し、ベルト13と支え12により、半導体基板を送り出し、基板をチャッキング開始位置まで搬送する。このとき、分離機構18も動作し、半導体基板2の側面から液体を吹き付けて、基板同士を分離する(S3)。そして、半導体基板の最前列が、チャッキング位置まで来たか否か監視し(S4)、チャッキング位置まで来たときには搬送装部20のチャック100が基板を吸着してチャッキング動作を行う(S5)。一方、それ以外の時には再度ローダー10を動作させ、半導体基板2をチャッキング位置まで搬送する(S3)。
【0070】
前記チャッキング位置にて半導体基板をチャックした場合には、搬送部20が動作し、先ず半導体基板2を液中で垂直方向に液面上まで搬送する。そして、液面上で回転し約90°向きを変えて気中で水平方向にやや下降しながらアンローダー部まで搬送する(S6)。次いで、アンローダーの載置部31まで半導体基板を搬送すると、チャッキング動作を解除する(S7)。そのまま、チャック100が僅かに下降しながら移動すると、半導体基板2はアンローダー30のベルト33上に乗り移り、搬送部20から脱荷する(S8)。
【0071】
アンローダーに乗り移った半導体基板2は、取り出し部において作業員により取り出され、次工程に移動するためのカセットなどの収納具に収納されるか、次工程の装置により自動的に収容されたりする(S9)。一方、ローダー部10ではトレー内の半導体基板の有無を検出し、基板がまだある場合には再び上記動作(S3)を繰り返す(S10)。そして、基板が無くなった場合には装置を停止し、処理を終了する(S11)。
【0072】
以上のように、簡単な構成、動作で密着状態の半導体基板を簡単かつ安全に分離することができる。しかも、搬送部の駆動装置は、回転駆動が行えるモータなどを1つ用いればよく、駆動系の構造や制御も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明装置および方法は、半導体製造工程において密着配置、積層された半導体基板同士の分離、特にウエット状態で密着配置された半導体基板の分離、および搬送に適している。また、必要に応じてドライ状態での分離、搬送も可能である。また、本発明の装置、機構、ノズルは、半導体基板のみならず、種々の部材のチャック機構として用いることが可能であり、流体を吹き付けるノズルとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0074】
1 半導体分離装置
2 半導体基板
10 ローダー部
12 支え
13 ベルト
14 プーリー
15 プーリー
18 基板分離機構(ノズル)
20 搬送部
30 アンローダー部
31 載置部
32 取り出し部
33 ベルト
40 水槽
41 台座
50 筐体
52 制御卓
100 チャック(ノズル)
201 軌道路
210 リンクアーム
220 チャック支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエット状態で密着配列した複数の半導体基板を液中に収納・配置するローダー部と、
前記ローダー部の最前列に配置されている半導体基板を液中で保持して液外のアンローダー部に搬送する搬送部と、
半導体基板を液外で載置し取り出し部まで搬送するアンローダー部とを有し、
前記搬送部は、回転駆動する回転軸に連結され所定半径の回転円運動を行う駆動部材と、この駆動部材に一端側が回動自在に固定されたリンクアームと、このリンクアームの他端側が摺動しかつその軌道を規定する軌道路と、前記リンクアームの他端側に固定されているチャックとを有する半導体基板の分離処理装置。
【請求項2】
前記搬送部は、液中での進行方向における半導体基板の投影面積が最小になる姿勢を保持して搬送する請求項1の半導体基板の分離処理装置。
【請求項3】
前記ローダー部の前列近傍には、半導体基板に基板面と水平方向から流体を吹き付けて基板同士を分離する分離機構が配置されている請求項1または2の半導体基板の分離処理装置。
【請求項4】
前記搬送部は、ベルヌーイ原理を応用したチャックを有する請求項1〜3のいずれかの半導体基板の分離処理装置。
【請求項5】
外縁部のみが相互に固定され密着配置された2つの板状部材からなり、一方の板状部材には流体吐出口が形成され、他方の板状部材には前記流体吐出口と異なる位置であってお互いの開口が重ならない位置に流体供給口が形成されているノズル。
【請求項6】
一部領域を除き外縁部のみが相互に固定され密着配置された2つの板状部材からなり、何れか一方の板状部材に流体供給口が形成され、
前記固定されていない領域を吐出口として流体を放出するノズル。
【請求項7】
前記ノズルは、2つの板状部材の一方、または双方が供給された流体の圧力により変形して生じた隙間を流路とする請求項5または6のノズル。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかの半導体基板の分離装置のチャックに用いられる請求項5または7のノズル。
【請求項9】
請求項3の分離装置に用いられる請求項6または7のノズル。
【請求項10】
密着配置された半導体基板を液中に浸漬し、次いで基板面と平行な方向から流体を吹き付けて半導体基板同士を分離する半導体基板の分離方法。
【請求項11】
液中でベルヌーイ原理を応用したチャックにより半導体基板を保持し、進行方向における半導体基板の投影面積が最小になる姿勢を保持して搬送する半導体基板の搬送方法。
【請求項12】
密着配置された半導体基板の分離位置周囲に1つまたは2つ以上の流体吐出口を配置し、この流体吐出口から半導体基板に対し基板面と平行な方向に流体を吹き付け、半導体基板同士を分離する半導体基板の分離機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−77204(P2011−77204A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225630(P2009−225630)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(510178220)
【Fターム(参考)】