説明

半導体用研磨スラリー中の異物検査方法及び異物検査装置

【課題】半導体用研磨スラリー中に含有される不純物粒子等の異物の検査を行い、その異物に関する情報をより精度よく取得することができるスラリー中の異物の検査方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】半導体用研磨スラリーを採取するサンプリング工程と、サンプリング工程で採取された半導体用研磨スラリーを、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液を用いて希釈する希釈工程と、希釈工程で希釈された半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜に、希釈された半導体用研磨スラリーを通液し、ろ過するろ過工程と、ろ過工程で得られた、希釈された半導体用研磨スラリーを通液したろ過膜の表面にろ別された異物を検査する異物検査工程とを有することを特徴とするスラリー中の異物検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用研磨スラリー中に含まれる異物の検査方法及び検査装置に関し、特に、半導体用研磨スラリーをろ過膜によりろ過して、ろ過膜上にろ別された異物を検査するスラリー中の異物の検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、使用する半導体基板の表面や、その上に形成された被膜の表面を平坦化することが求められている。例えば、配線層が立体的に配置された多層配線層を有する半導体集積回路を形成するには、多層配線間の層間絶縁膜(シリコン酸化膜やシリコン窒化膜など)の表面を平坦にする必要がある。
【0003】
これは、第1層目(最下層)のアルミニウム配線を形成した後、CVD法によりシリコン酸化膜を成膜すると、配線層の存在によりシリコン酸化膜表面に凹凸が生じてしまい、フォトリソグラフィー及びドライエッチング工程で、この凹凸の存在する酸化膜上に第2のアルミニウム配線層を形成しようとすると、凹凸部でレジストパターニングの露光焦点が合わない、あるいは段差部にドライエッチング残りが生じる等の不具合が生じてしまうためである。
【0004】
この被膜表面を平坦化する技術として、研磨剤を用いて被膜表面を研磨する方法が採用されている。この方法は、パッド等の研磨部材と半導体基板との間にスラリーを介在させ、研磨を行うものであり、このとき用いるスラリー中の砥粒としては、分散性がよく、平均粒子径が揃っている等の理由で、シリカやアルミナが一般的に使用されており、したがって、スラリーとしては、純水等の分散媒中にこれらの砥粒を分散させ、目的によって過酸化水素のような酸化剤、金属塩、有機酸、分散剤等の成分を溶解させた特殊な組成のものが用いられている。
【0005】
このようなスラリーを用いて研磨を行うと、半導体基板の研磨面を形成する材料が削り取られるとともに、砥粒自身も破砕されて、研磨屑が生成する。この研磨屑はそれ自身スラリーの研磨力を低下させるものである。また、スラリー原液を希釈してウェハ研磨用に濃度調整したスラリー等であっても、完全に不純物粒子等の異物が存在してないわけではなく、砥粒の凝集物やスラリーが乾燥してゲル化物が生成することもある。これらのうち大粒径の研磨屑及び凝集物は基板表面にスクラッチを発生させる原因となり、また研磨屑の蓄積により研磨力を低下させる原因となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このような異物は、スラリー中の粒子について粒度径分布を調べただけでは、その存在量が砥粒に比べて極めて少ないためか、明らかに粒子径は砥粒と区別できる大きさであるにもかかわらずピークの存在が確認できず、これまで見過ごされてきたものである。
【0007】
また、このような異物は、スラリー原液を希釈しウェハ研磨用に濃度調整する調整段階で既に含まれていることが確認されるため、スラリー中に含まれる異物は、必ずしも加工屑に限られるわけではなく、スラリーの原液にすでに含有している場合や、研磨装置の内部においてタンクや配管の内壁面からの脱落物質が混入する場合等のいくつかの原因が考えられるものの、その混入の原因は定かではない。
【0008】
このようなスラリー中に含有する不純物粒子等の異物の検査を行い、その異物について検査することができるスラリー中の異物の検査方法として、スラリーをろ過膜に通液、ろ過し、スラリー中の異物をろ過膜上に捕捉して、そのろ過膜をそのまま検査に供することにより異物の存否や性質を確認することができる異物検査方法が試みられている。
【特許文献1】特開2006−43781
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の方法では、異物を確認することができるが、異物の評価が難しく、さらなる検査精度の向上が求められている。
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明は、このような半導体用研磨スラリー中に含有される不純物粒子等の異物の検査を、より精度よく行うことができる半導体用研磨スラリー中の異物の検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【0011】
すなわち、本発明の一態様による異物検査方法は、半導体用研磨スラリーを採取するサンプリング工程と、サンプリング工程で採取された半導体用研磨スラリーを、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液を用いて希釈する希釈工程と、希釈工程で希釈された半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜に、希釈された半導体用研磨スラリーを通液し、ろ過するろ過工程と、ろ過工程で得られた、希釈された半導体用研磨スラリーを通液したろ過膜の表面にろ別された異物を検査する異物検査工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の態様による異物検査方法は、半導体用研磨スラリーを採取するサンプリング工程と、サンプリング工程で採取された半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜に、半導体用研磨スラリーを通液し、ろ過するろ過工程と、ろ過工程で得られた、半導体用研磨スラリーを通液したろ過膜の表面にろ別された異物を検査する前に、ろ過膜から残存する砥粒を除去するために、ろ過膜を、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液で洗浄する洗浄工程と、洗浄工程により洗浄された異物を検査する異物検査工程とを有することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の他の態様による異物検査装置は、半導体用研磨スラリー供給ラインから半導体用研磨スラリーを採取する試料採取部と、半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜を有するろ過装置と、試料採取部により採取された半導体用研磨スラリーを、ろ過装置へ移送する半導体用研磨スラリー移送ラインと、半導体用研磨スラリーが移送される半導体用研磨スラリー移送ライン中及び半導体用研磨スラリーがろ過されたろ過装置のうちの少なくとも一方に、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液を供給するスラリー分散液供給手段と、ろ過膜の表面にろ別された異物を検査する検査部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体用研磨スラリー中の異物の確認を、より精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のスラリー中の異物検査方法及び異物検査装置について説明する。まず、本発明のスラリー中の異物検査方法について説明するが、その前に、スラリーを用いたウェハの研磨方法について、簡単に説明する。
【0016】
ウェハ研磨は、まず、スラリーの原液を収容するタンクから必要量のスラリー原液が供給され、この原液に希釈液を混合しながら、研磨処理に用いるのに適したスラリー濃度に調整される。ここで使用するスラリーは、分散性がよく、平均粒子径が揃っている等の理由から、シリカ微粒子が砥粒として用いられることが多く、水等の分散媒中に、添加剤、例えば、酸化剤、金属塩や分散剤などを加え、このシリカ微粒子を分散させたシリカ懸濁液(コロイダルシリカ)として使用するのが一般的である。
【0017】
次いで、濃度調整がされたスラリーを研磨パッドに滴下しながら、ウェハキャリア(パッキング剤)に保持されているシリコン基板を回転させ、研磨パッドに押し当てる。すると、シリコン基板と研磨パッドの間にスラリーを介在させながら回転によりシリコン基板は研磨され、この研磨によりシリコン基板の表面に形成されている絶縁膜は、その凹凸が取り除かれ、平坦な表面となる。
【0018】
本発明のサンプリング工程は、上記のようなウェハ研磨方法のいずれの工程からサンプリングしてもよい。具体的には、半導体用研磨スラリー原液を希釈して濃度調整を行って得られた半導体用研磨スラリーや半導体用研磨スラリー原液を採取しても良い。さらに、半導体用研磨スラリー原液は、ウェハ研磨装置のタンクに収容する前のボトル等から採取しても良い。
【0019】
本発明の希釈工程は、サンプリングで得られた半導体用研磨スラリーを、この半導体用研磨スラリーから抽出した分散液(以下、「スラリー分散液」と称する。)で、希釈するものである。ここで、スラリー分散液は、固体である研磨成分の砥粒及び砥粒よりも大きな異物を膜等でろ別(除去)して得られた透過液である。スラリー分散液は、好ましくは半導体用研磨スラリー中から固形物全体を除去した溶液である。また、スラリーの成分が化学物質等安全データシート(MSDS)等で開示されている場合は、純水にその薬剤成分等を人工的添加しスラリー分散液模擬液を作製し膜等で砥粒よりも大きな異物を除去して用いてもよい。この希釈工程に用いるスラリー分散液を生成する、半導体用研磨スラリー中からの砥粒及び砥粒よりも大きな異物の除去は、ろ過膜、例えば限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、精密ろ過膜を用いたろ過により、又は遠心分離機を用いた遠心分離により行うことができる。
【0020】
この希釈工程に用いるスラリー分散液を生成するろ過膜としては、半導体用研磨スラリー中から砥粒及び砥粒よりも大きな異物を捕捉できる孔径を有するろ過膜であれば特に限定されることなく使用できるが、比較的粒径の小さい砥粒の除去も目的とするため孔径の小さいろ過膜が好ましい。このような孔径の小さいろ過膜としては、限界ろ過(UF)膜(孔径:2〜100nm)、ナノろ過(NF)膜(孔径:0.5〜2nm)、逆浸透(RO)膜(孔径:0.1〜1nm)、精密ろ過(MF)膜(孔径:0.1〜100μm)などが挙げられる。限外ろ過膜(UF)としては、マイクローザ(登録商標)SEP−0013(旭化成株式会社製)などが挙げられる。逆浸透(RO)膜としては、架橋ポリアミド系複合膜エレメントTMG20−430(東レ株式会社製)などが挙げられる。精密ろ過(MF)膜としては、ニュクリポアメンブレン(野村マイクロ・サイエンス株式会社製)などが挙げられる。
また、この希釈工程に用いるろ過膜は、有機高分子などで形成され、対象となる半導体用研磨スラリーの性質などに応じて孔形、形状、使用方法を選定することができる。
【0021】
この希釈工程に用いるスラリー分散液を生成する遠心分離機としては、半導体用研磨スラリー中から砥粒及び砥粒よりも大きな異物を遠心分離により分離できるものであれば特に限定されることなく使用できる。また、対象となる半導体用研磨スラリーの性質などに応じて遠心分離機の種類や使用条件を選定することができる。
【0022】
なお、希釈の程度は、後述する本発明のろ過工程において、希釈した半導体用研磨スラリーを適切にろ過できるような濃度とするように、調整することができる。なお、本発明の希釈工程は、採取した半導体用研磨スラリーが希釈(濃度調製)を必要とせずに後述のろ過工程を行なうことができる濃度などである場合には、省略することができる。
【0023】
このように、サンプリングで得られた半導体用研磨スラリーを、スラリー分散液で希釈するので、純水で希釈する場合のように、スラリーのpHの変動、スラリー中の添加剤、例えば、酸化剤や金属の濃度の変動、分散剤濃度の変動、砥粒のゼータ電位の変動などによる砥粒の凝集が起こらないため、砥粒の凝集物の発生を抑制でき、さらに異物の形態および性状を変化させる事なく、つまりスラリー中の異物についても、砥粒と同様にpHの変動、スラリー中の添加剤、例えば、酸化剤や金属の濃度の変動、分散剤濃度の変動により形状等が変化せず、そのままの状態で異物をより精度よく検出することができる。
【0024】
本発明のろ過工程は、半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させるが、砥粒よりも大きな異物を捕捉する孔径を有するろ過膜に、スラリー分散液で希釈された半導体用研磨スラリーを通液し、ろ過するものである。
【0025】
この工程に用いるろ過膜としては、半導体用研磨スラリー中の砥粒は透過させるが、砥粒よりも大きな異物はろ過膜上に捕捉する孔径を有するろ過膜であれば特に限定されずに用いることができる。
【0026】
ろ過膜は、無機質もしくは有機高分子などで形成され、対象とするスラリーの性質により、精密ろ過(MF)膜(孔径:0.1〜100μm)、限外ろ過(UF)膜(孔径:2nm〜100nm)、ナノろ過(NF)膜(孔径:0.5nm〜2nm)、逆浸透(RO)膜(孔径:0.1nm〜1nm)、平膜、管状膜、中空糸膜、など孔径、形状、使用方法を選定することができる。ろ過膜の形状としては、平膜状、ロール状、ターレット状などが挙げられる。ろ過膜の形状がロール状又はターレット状の場合には、ろ過の操作を連続的に(一定時間ごとに)行うことができる。
【0027】
ロール状のろ過膜(フィルターロール)について、図1及び図2を用いてさらに詳細に説明する。図1に示すように、ロール状のろ過膜(フィルターロール)1は、フィルターのろ過部分2以外は両面テープ3で覆われている。両面テープ3は、ろ過部分2に相当する円形部分がくり抜かれており、半導体用研磨スラリー(試料液)の漏洩を防ぐ働きをする。図2に示すように、フィルターロール1は、フィルターロール巻取り部4で巻き取ることにより自動的にフィルターを送るように設計され、常に新しいろ過部分2を供給できるので、連続的にろ過を行うことができる。ろ過は、例えばろ過器5(シリンダー6と排出用ろうと7を備える)を用いて、排出用ろうと7の下方から吸引することにより行われる。ろ過操作の後に送り出されたフィルターロール1上の異物を検出器8で検査する。
【0028】
次に、ターレット状のろ過膜について説明する。図3に示すように、ターレット状のろ過膜9は、ろ過を行うろ過部分10と保護フィルム11とから構成される。保護フィルム11は、ろ過部分10に相当する円形部分をくり抜いて作製されており、半導体用研磨スラリー(試料液)の漏洩を防ぐ。図4に示すように、ターレット状のろ過膜9は、中心部のみが固定部12により固定化されてレコードのように回転する構造となっている。
ろ過器13を構成するシリンダー14及び排出用ろうと15がターレット状のろ過膜9を挟み込んだ状態で、半導体用研磨スラリー(試料液)のろ過を行なう。ろ過が行なわれたろ過部分は回転し、次の新しいろ過部分が供給されるので連続的にろ過を行うことができる。ろ過は、例えば、排出用ろうと15の下方から吸引することにより行われる。回転されたターレット状のろ過膜9上の異物を検出器16で検査する。
【0029】
砥粒は、スラリーのpHの変動、スラリー中の添加剤、例えば酸化剤、金属の濃度の変動、分散剤濃度の変動、砥粒のゼータ電位の変動などによりその挙動が大きく影響されるものと考えられる。ここで、ゼータ電位とは、互いに接している固体と液体とが相対運動を行ったときの両者の界面に生じる電位差のことであり、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、固体間の反発が強くなる。
【0030】
したがって、固体として砥粒同士の場合を考えると、ゼータ電位の絶対値が増加するほど砥粒の安定性は高くなり、ゼータ電位の絶対値がゼロに近くなるほど、粒子は凝集しやすくなる。スラリー含有の組成成分を変化させず、ろ過工程を行うことが重要になる。
【0031】
ろ過工程の後、異物検査工程の前に、ろ過工程で使用したろ過膜の表面を、スラリー分散液で洗浄する洗浄工程を設けることができる。
【0032】
この洗浄工程は、ろ過膜の表面を、スラリー分散液で洗浄するので、純水で洗浄する場合のように、純水がろ過膜を通過するときに生ずる砥粒の周囲のpHの変動、砥粒の周囲のスラリー添加剤、例えば、酸化剤、金属の濃度の変動、分散剤濃度の変動、砥粒のゼータ電位の変動などによる砥粒の凝集が起こらないため、ろ過膜表面上に残っている砥粒を凝集させることなくろ過膜表面に残っていた砥粒を洗い流すことができる。
また、純水で洗浄する場合には、純水がフィルターの孔を通過するときに、純水のフィルターの孔への移動により砥粒がフィルターの孔の近傍へ移動する(引っ張られる)ので、砥粒同士がより接近し、砥粒の凝集がより起こりやすくなるが、スラリー分散液で洗浄を行なうことにより、このような状況下でも砥粒を凝集させることなく、つまり、砥粒の周囲のpHの変動、砥粒や異物の周囲のスラリー添加剤、例えば、酸化剤、金属の濃度の変動、分散剤濃度の変動、砥粒のゼータ電位の変動が無い状態で洗い流すことができる。
【0033】
すなわち、洗浄工程において、ろ過膜の表面をスラリー分散液で洗浄することにより、砥粒を凝集させることなく、ろ過膜表面に残っていた砥粒を洗い流すことができるため、砥粒の凝集物の発生を抑制でき、検査対象とする異物をろ過膜表面に捕捉した状態とすることができ、次の異物検査工程において、異物をより精度よく検出することができる。
【0034】
この洗浄工程において、スラリー分散液は、ろ過膜上に残留している砥粒をろ過膜の孔を通過させて異物をろ過膜上に残すことができる量を用いることができる。
【0035】
また、次の異物検査工程における検査の前処理として必要な場合には、ろ過膜表面を純水を用いてさらに洗浄し、ろ過膜表面上からスラリー中の溶解成分の残渣を洗い流すことができる。この場合、上記のスラリー分散液による洗浄により、ろ過膜表面にはすでに砥粒は残っていない状態であるので、この純水洗浄によりスラリー中の溶解成分の残渣を洗い流すことができる。
【0036】
次に、本発明の異物検査工程は、ろ過工程で得られた、スラリー分散液により希釈したスラリーを通液させたろ過膜の表面に捕捉した異物を検査するものである。
【0037】
この異物検査工程においては、ろ過膜表面の異物を検査することができる方法であれば特に限定されず、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた異物の有無、大きさ、個数等の観察、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)をSEMと組み合わせて用いた異物の有無、大きさ、個数等の観察及び成分分析、微生物を検出する方法等の異物の検査方法が挙げられる。また、画像取得装置と画像処理装置とを組み合わせて用いた異物の有無、大きさ、個数、面積等の計測及び解析等の異物の検査方法が挙げられる。
ここで検査とは、異物の存否、異物の形状、大きさ等の形態の確認、異物の組成成分の分析等、その他の異物についての情報を得ることができる様々な方法によるものが含まれる。
【0038】
走査型電子顕微鏡(SEM)による検査方法は、ろ過膜表面の孔、異物の形態を観察するのに十分な分解能をもっていればよく、特に限定されるものではないが、最小粒径0.1nmを測定する分解能を有していることが好ましい。
【0039】
走査型電子顕微鏡は、真空中で細く絞った電子線を試料の表面に走査しながら照射し、試料の表面から反射又は透過する電子線の電子光学的結像を陰極線管上で観察する装置であり、電子線を照射するため、試料が被導電性の場合には、照射された電子が蓄積し、正しい像が得られなくなるため、表面に導電性の薄膜を形成して電子の蓄積を防ぐ必要がある。導電性薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法とイオンスパッタリング法を用いることができる。
【0040】
このようにろ過膜上で導電性膜により被覆されたろ過膜を試料台に固定し、試料室に入れ、測定を行う。この測定時の倍率は100〜50000倍で行うようにすればよい。ろ過膜表面の孔や孔より大きい異物を観察する場合(最小粒径1μm程度)には、100〜10000倍の倍率で行うことが好ましく、スラリー粒の凝集状態を観察したり、異物の表面状態を観察したりする場合(最小粒径10nm程度)には、10000〜50000倍の倍率で行うことが好ましい。
【0041】
走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置を組み合わせて(SEM−EDX)行う検査方法は、走査型電子顕微鏡による検査方法に加え、X線による成分分析を行うことができる。これによれば、形態観察の他に、異物の組成成分を、その存在割合と共に分析できるため、異物の由来についての検査が可能となるものである。
【0042】
また、微生物を検出する方法としては、微生物に放射光源を照射したときに発する蛍光を検出する方法、ろ過膜をそのまま培地上に置き、ろ過膜表面に存在する微生物を培養して形成されるコロニーを観察する方法等が挙げられる。培養する場合には、微生物の種類により培養条件が異なり、適した培地、温度等があるため、対象として考えている微生物により適宜条件選択を行えばよい。
【0043】
さらに、画像取得装置と画像解析装置とを組み合わせて用いる異物の検査方法は、画像取得(撮像)装置、例えばCCDカメラやビデオカメラなどを用いて撮像した、ろ過膜表面の異物の画像に関する情報を、画像処理(解析)装置(例えば、NIRECO社製、商品名:LUZEX(登録商標)AP)を用いて、(CCDカメラなどの電気信号から)デジタル処理が可能なデジタルデータに変換して、デジタルデータの演算処理などにより、異物の有無、大きさ、個数、各異物の面積及び/又は異物の総面積などを(自動で)計測及び/又は解析する。なお、ろ過膜の表面を画像取得(撮像)装置、例えばCCDカメラを用いて撮像するときには、ろ過膜を透明な板(例えば、ガラス板)で挟んで平坦にしてから撮像するのが好ましい。
【0044】
また、例えば、希釈及び洗浄の前から形成している砥粒の凝集物が、その形状などにより予めわかっている場合には、このような砥粒の凝集物の情報(デジタルデータ)を、撮像装置により撮像された(画像)情報のデジタルデータ中から、差分処理などにより除去することにより、異物を容易に判断することができ、また、例えば異物のみを画像処理装置のモニターに表示することができる。また、異物の種類や形状が予めわかっているものがある場合には、その異物のデジタルデータと、撮像装置により撮像された(画像)情報のデジタルデータとを対比して、異物の種類などを特定することもできる。このような既知の砥粒の凝集物や既知の異物の情報(デジタルデータ)は、画像処理(解析)装置のデータメモリー部に蓄積しておき、これらのデジタルデータと撮像装置により撮像された(画像)情報のデジタルデータとを対比することにより異物の検査を行ってもよい。
なお、この異物の検査方法では、CCDカメラ等の撮像手段で異物の画像を撮像するので、走査型電子顕微鏡の蒸着処理に必要な前処理である、ろ過膜表面の純水による洗浄工程を省略することができる。
【0045】
次に、本発明の異物検査装置について説明する。なお、上記の異物の検査方法においてすでに説明した事項は省略する。
図5は、本発明の異物検査装置の要部構成の一例を示す図である。この異物検査装置は、半導体用研磨スラリーを採取する試料採取部21と、採取された半導体用研磨スラリーをろ過装置へ移送する半導体用研磨スラリー移送ライン22と、半導体用研磨スラリーが移送される半導体用研磨スラリー移送ライン中及び/又は半導体用研磨スラリーがろ過されたろ過装置に、スラリー分散液を供給するスラリー分散液供給手段23と、半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉可能なろ過装置24と、異物を検査する検査部25とを備える。図5では、異物検査装置は、採取した半導体用研磨スラリーを貯蔵する試料タンク26、採取した半導体用研磨スラリーを所定の濃度に希釈(調製)するためのろ過液調整タンク27、採取した半導体用研磨スラリーの所定の濃度への希釈及び/又は半導体用研磨スラリーをろ過した後のろ過装置(ろ過膜)の洗浄のための純水を供給する純水供給手段28を備える。
【0046】
試料採取部21は、半導体用研磨スラリー供給ラインから半導体用研磨スラリーを採取する。試料採取部21は、例えば、半導体用研磨スラリー供給ラインから半導体用研磨スラリーを採取(導入)する試料管及びポンプ(図示せず)から構成される。半導体用研磨スラリー供給ラインの圧力が、試料管に半導体用研磨スラリーを導入するのに十分な場合には、ポンプ(図示せず)は省略することができる。また、例えばバルブの開閉を制御(例えば、自動制御)することにより、半導体用研磨スラリーを、連続的に又は一定時間毎に採取(導入)することができる。試料採取部21で採取された半導体用研磨スラリーは、試料タンク26に移送される。
【0047】
半導体用研磨スラリー移送ライン22は、試料タンク26中の半導体用研磨スラリーを、例えばポンプなどを用いて、ろ過液調整タンク27を経由して、ろ過装置24へ移送する。半導体用研磨スラリーは、濃度の調整(希釈)が必要な場合には、ろ過液調整タンク27においてろ過に適する濃度への調整(希釈)が行なわれる。濃度の調整は、スラリー分散液又は(超)純水で行なうことができるが、上述のようにスラリー分散液で希釈するほうが砥粒の凝集が起こらないため好ましい。
【0048】
スラリー分散液供給装置23は、試料タンク26から供給される半導体用研磨スラリー中から砥粒及び砥粒よりも大きい異物を除去するろ過膜を備え、砥粒及び砥粒よりも大きい異物が除去されたスラリー分散液をろ過液調整タンク27に供給する。また、スラリー分散液供給装置23は、半導体用研磨スラリーがろ過された後のろ過装置24(のろ過膜上)にスラリー分散液を供給する。このスラリー分散液のろ過装置への供給により、ろ過膜上にろ別された異物の洗浄、すなわち、ろ過膜上に残存する砥粒の除去を行なうことができる。
スラリー分散液供給装置23によりスラリー分散液を抽出した後の、砥粒及び砥粒よりも大きい異物を含む溶液は、試料タンク26に戻されるか、又は系外に排出される。試料タンク26に戻す場合には、試料タンク26中の半導体研磨スラリーの濃度は上昇するが、採取された半導体用研磨スラリー中の異物などを系外に排出せずに検査することができる。なお、スラリー分散液供給装置23は、ろ過液調整タンク27及び/又は半導体用研磨スラリーをろ過した後のろ過装置24に、得られたスラリー分散液を直接供給せず、予めスラリー分散液タンク(図示せず)に貯蔵しておき、スラリー分散液タンクからスラリー分散液を供給することもできる。
【0049】
ろ過装置24は、半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜29を有し、ろ過液調整タンク27から移送された半導体用研磨スラリーをろ過する。また、ろ過装置24は、半導体用研磨スラリーを導入した後のエアーを抜くための孔(図示せず)を備える。ろ過装置24は、例えば、吸引部、例えば真空ポンプ(図示せず)により吸引して半導体用研磨スラリーをろ過する。
【0050】
検査部25は、ろ過膜の表面にろ別された異物を検査する。上述のように、異物は走査型電子顕微鏡や、撮像装置及び画像処理装置を組み合わせて用いて異物を検査(観察)する。
【0051】
試料タンク26は、採取された半導体用研磨スラリーを貯蔵する。ろ液調整タンク27は、半導体用研磨スラリー移送用ライン22から移送された半導体用研磨スラリーを、スラリー分散液又は(超)純水で希釈して、適切な濃度へ調整するために使用できる。
【0052】
純水供給手段28は、半導体用研磨スラリーを希釈して、ろ過に適切な濃度に調整するために、純水をろ過液調整タンク27に供給できる。また、純水供給手段28は、半導体用研磨スラリーをろ過した後の、ろ過装置24中のろ過膜29上の異物から、残存する砥粒を除去スるために、ろ過装置24のろ過膜29上に純水を供給できる。純水供給手段28は、純水の代わりに超純水を供給することもできる。
【0053】
なお、本発明の異物検査装置は、例えば、図5に示される各バルブの開閉を制御(例えば、自動制御)して、各バルブの開閉の時期を調整すること(例えば、同期させること)などにより、異物の検査のうち、ろ過までの工程を自動で(連続的に)行うことができる。また、試料採取部21における半導体用研磨スラリーの採取を一定時間毎に行うことにより、定期的に異物の検査を行うことができる。さらに、ろ過装置におけるろ過膜を、ロール状又はターレット状にすることにより、検査部における異物の検査を連続的に(定期的に)行うことができる。
【0054】
また、本発明の異物検査方法及び異物検査装置は、半導体用研磨スラリー中の異物の検査を目的とするいずれの用途にも使用することができる。例えば、半導体用研磨スラリーの保管状態でのスラリー中の異物の検査、ウェハ研磨装置の運転中における半導体用研磨スラリー中の異物の検査などに用いることができる。これらのうち、ウェハ研磨装置の運転中における半導体用研磨スラリー中の異物の検査に使用することが、半導体の研磨中の品質管理を行うことができ、基板表面のスクラッチなどを未然に防止できるため好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。
【0056】
(比較例1)新液1
まず、従来の方法を比較例1として説明する。ホルダーに孔径3.0μmのニュクリポアーメンブレンフィルター(商品名:ニュクリポアー・ポリカーボネート・トラックエッチ・メンブレン)をセットし、シリンジに5mLの純水を採取してホルダー上部より注入して空気を抜いた。空気抜きはろ過ムラを生じさせないために行うものである。
【0057】
次いで、ウェハ研磨に使用する前の、粒径141〜337nmのシリカ(キャボット マイクロエレクトロニクスコーポレーション製、商品名:Semi−Sperce W2000)を含有する、シリカ濃度3〜10%の半導体用研磨スラリー(新液)をシリンジに(1mL)と純水(9mL)をとりこれらをシリンジ内で10倍に混合希釈し、この希釈したスラリー10mLをホルダー上部にセットし、手押しでろ過を行った。
【0058】
希釈したスラリーのろ過後、メンブレンフィルターに純水50mLをシリンジにて供給、ろ過し、フィルター表面の洗浄を行った。これによりスラリー溶解成分(例えば、酸化剤、金属などの添加剤、分散剤)が洗浄され、フィルター表面から除去され、表面には3μm以上の異物が捕捉された。
【0059】
次に、異物が表面に捕捉されたフィルターをSEM用試料台に両面テープで固定し、イオンスパッター装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:日立マイルドスパッタ E−1030)によりフィルター表面にPt−Pdの蒸着処理を膜厚が30Åになるように行った。そして、このフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM;日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S−4100型)で、倍率1000倍で表面の観察を行った。その結果を示す写真を図6に示す。図6に示すように、フィルターには3.0μmの径を有する孔31が多数設けられている。フィルター上には、洗浄では除去されなかった砥粒32、希釈及び洗浄を行なう前から凝集により予め形成されている砥粒の凝集物33、純水による希釈及び/又は洗浄により凝集した砥粒の凝集物34(純水希釈による砥粒の凝集物34a,純水洗浄による砥粒の凝集物34b)及び異物35が存在することが確認された。
【0060】
このように、フィルターの表面にはこの孔31を通過することができない異物35が捕捉されているのが確認できたが、予め形成されている砥粒の凝集物33の他に、半導体用研磨スラリー中の砥粒成分が、純水による希釈及び/又はろ過後のフィルター表面の純水洗浄による純水との接触により、スラリーのpHの変動、スラリー中の添加剤(例えば、酸化剤、金属)濃度の変動、砥粒のゼータ電位の変動、砥粒の周りのpHの変動、砥粒の周りのスラリー添加剤、例えば、酸化剤、金属の濃度、分散剤の変動などにより、お互いに結びつきフィルター孔径よりも大きな粒子、すなわち砥粒の凝集物34となってフィルター上に存在していることも確認できた。したがって、この方法では、半導体用研磨スラリー中の異物5と砥粒の凝集物33,34との判別が難しい。また、エネルギー分散型X線分析装置(エダックスジャパン株式会社製)により異物35の成分分析を行ったところ、C、O、Siであり、スラリー成分に由来する異物であることは、確認できた。
【0061】
(実施例1)
本実施例では、まず半導体用研磨スラリーを希釈するスラリー分散液の調製について説明する。まず、上記比較例1で使用したものと同じ、ウェハ研磨に使用する前の半導体用研磨スラリーを、ペンシル型限外ろ過モジュール(旭化成株式会社製、商品名:マイクローザ(登録商標)、型式SEP−0013、孔径:2nm)を用いて、半導体用研磨スラリーから砥粒及び砥粒よりも大きな異物成分を除去した透過液(スラリー分散液)を得た。
【0062】
次に、ホルダーに、上記比較例1で使用したものと同じ孔径3.0μmのニュクリポアーメンブレンフィルターをセットし、シリンジに5mLのスラリー分散液を採取してホルダー上部より注入して空気を抜いた。空気抜きはろ過ムラを生じさせないために行うものである。また、この作業は、純水5mLを用いて空気抜きを行い、空気抜きの完了後スラリー分散液を最低10mL添加し、メンブレンフィルター上のpH及びホルダー内の液成分をスラリーと同等としてもよい。
【0063】
次いで、上記と同じウェハ研磨に使用する前の半導体用研磨スラリーを、シリンジに(1mL)とスラリー分散液(9mL)をとりこれらをシリンジ内で10倍に混合希釈し、この希釈したスラリー10mLをホルダー上部にセットし、手押しでろ過を行った。
【0064】
希釈した半導体用研磨スラリーのろ過後、メンブレンフィルターにスラリー分散液50mLをシリンジにて供給し、ろ過することによりメンブレンフィルター上の砥粒を凝集させることなくホルダー外へ排出した。その後、フィルター表面上に、走査型電子顕微鏡による観察のためのPt−Pdの蒸着処理時における腐食を防ぐために、純水50mLをシリンジにて供給、ろ過し、フィルター表面の洗浄を行った。この洗浄により、フィルター表面上に残ったスラリー溶解成分が除去され、表面には異物が捕捉された。
【0065】
次に、異物が表面に捕捉されたフィルターをSEM用試料台に両面テープで固定し、比較例1と同様の方法で、イオンスパッター装置によりフィルター表面にPt−Pdの蒸着処理を膜厚が30Åになるように行い、このフィルターの表面を走査型電子顕微鏡で倍率500倍で表面の観察を行った。その結果を示す写真を図7に示す。図7に示すように、3.0μmの径を有する孔31が多数設けられているフィルター上には、希釈及び洗浄を行なう前から予め凝集していた砥粒の凝集物33及び異物35は確認されたが、砥粒32及び純水による希釈及び/又は洗浄により凝集する砥粒の凝集物34は確認できなかった。したがって、異物35の判別を容易に行うことができることが確認された。
【0066】
(比較例2)新液2
この比較例では、比較例1および実施例1とは異なる半導体用研磨スラリー新液を、使用して実験を行なった。
【0067】
ウェハ研磨に使用する前の、粒径50〜400nmのシリカ(キャボットマイクロエレクトロニクスコーポレーション製、商品名:SS25)を含有する、シリカ濃度10〜30%の半導体用研磨スラリーを用いて、希釈操作、ろ過操作、洗浄操作、フィルター表面の観察及び撮影を比較例1と同様に行った。その結果を示す写真を図8に示す。図8に示すように、フィルター上には、フィルターの表面にはこの孔を通過することができない異物35が捕捉されているのが確認できたが、希釈及び洗浄を行なう前から予め凝集していた砥粒の凝集物33の他に、洗浄では除去されなかった砥粒32、純水による希釈及び/又は洗浄により凝集する砥粒の凝集物34(34a,34b)が存在することが確認された。したがって、この方法では、半導体用研磨スラリー中の異物35と砥粒の凝集物33,34との判別が難しい。
【0068】
(実施例2)
ウェハ研磨に使用する前の、粒径50〜400nmのシリカ(キャボットマイクロエレクトロニクスコーポレーション製、商品名:SS25)を含有する、シリカ濃度10〜30%の半導体用研磨スラリーを、逆浸透ろ過モジュール(東レ株式会社製、架橋ポリアミド系複合膜エレメント、型式TMG20−430、孔径:1nm)を用いて、半導体用研磨スラリーから砥粒及び砥粒よりも大きな異物成分を除去した透過液(スラリー分散液)を得た。
【0069】
次いで、実施例1と同様に、希釈操作、ろ過操作、洗浄操作、フィルター表面の観察及び撮影を実施例1と同様に行った。その結果を示す写真を図9に示す。図9に示すように、フィルター上には、希釈及び洗浄を行なう前から予め凝集していた砥粒の凝集物33及び異物35は確認されたが、砥粒32及び純水による希釈及び/又は洗浄により凝集する砥粒の凝集物34は確認できなかった。したがって、異物35の判別を容易に行うことができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ロール形状のろ過膜(フィルターロール)を模式的に示す図である。
【図2】ロール形状のろ過膜(フィルターロール)を用いたろ過部の要部構成の一例を模式的に示す図である。
【図3】ターレット形状のろ過膜を模式的に示す図である。
【図4】ターレット形状のろ過膜を用いたろ過部の要部構成の一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の異物検査装置の要部構成の一例を示す図である。
【図6】比較例1における、走査型電子顕微鏡により観察されたフィルター表面の状態を表した写真である。
【図7】実施例1における、走査型電子顕微鏡により観察されたフィルター表面の状態を表した写真である。
【図8】比較例2における、走査型電子顕微鏡により観察されたフィルター表面の状態を表した写真である。
【図9】実施例2における、走査型電子顕微鏡により観察されたフィルター表面の状態を表した写真である。
【符号の説明】
【0071】
1…ロール形状のろ過膜(フィルターロール)、2,10…ろ過部分、3…両面テープ、4…フィルターロール巻取り部、5,13…ろ過器、6,14…シリンダー、7,15…排出用ろうと、8,16…検出器、9…ターレット状のろ過膜、11…保護フィルム、12…固定部、21…試料採取部、22…半導体用研磨スラリー移送ライン、23…スラリー分散液供給手段、24…ろ過装置、25…検査部、26…試料タンク、27…ろ過液調整タンク、28…純水供給手段、29…ろ過膜、31…(フィルターの)孔、32…研粒、33…(希釈及び洗浄前から形成されている)研粒の凝集物、34…(純水による希釈及び/又は洗浄により形成される)研粒の凝集物、34a…純水希釈により形成される研粒の凝集物、34b…純水洗浄により形成される研粒の凝集物、35…異物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体用研磨スラリーを採取するサンプリング工程と、
前記サンプリング工程で採取された前記半導体用研磨スラリーを、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液を用いて希釈する希釈工程と、
前記希釈工程で希釈された半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜に、前記希釈された半導体用研磨スラリーを通液し、ろ過するろ過工程と、
前記ろ過工程で得られた、前記希釈された半導体用研磨スラリーを通液したろ過膜の表面にろ別された異物を検査する異物検査工程と
を有することを特徴とするスラリー中の異物検査方法。
【請求項2】
前記ろ過工程で得られた前記異物を検査する前に、前記ろ過膜から残存する砥粒を除去するために、前記ろ過膜を、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液で洗浄する工程を有することを特徴とする請求項1記載のスラリー中の異物検査方法。
【請求項3】
半導体用研磨スラリーを採取するサンプリング工程と、
前記サンプリング工程で採取された半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜に、前記半導体用研磨スラリーを通液し、ろ過するろ過工程と、
前記ろ過工程で得られた、前記半導体用研磨スラリーを通液したろ過膜の表面にろ別された異物を検査する前に、前記ろ過膜から残存する砥粒を除去するために、前記ろ過膜を、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液で洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程により洗浄された前記異物を検査する異物検査工程と
を有することを特徴とするスラリー中の異物検査方法。
【請求項4】
前記半導体用研磨スラリーから抽出した分散液が、半導体用研磨スラリーを、精密ろ過膜、限外ろ過膜及び逆浸透膜から選ばれるろ過膜を用いるろ過又は遠心分離機を用いる遠心分離することにより得られるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のスラリー中の異物検査方法。
【請求項5】
前記孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜の形状が、平膜状、ロール状及びターレット状のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のスラリー中の異物検査方法。
【請求項6】
前記異物検査工程における前記異物の検査が、走査型電子顕微鏡により行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のスラリー中の異物検査方法。
【請求項7】
前記異物検査工程における前記異物の検査が、撮像手段により撮像された異物の画像を画像処理する画像処理手段により行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のスラリー中の異物検査方法。
【請求項8】
半導体用研磨スラリー供給ラインから半導体用研磨スラリーを採取する試料採取部と、
半導体用研磨スラリー中に含まれる砥粒は通過させ、砥粒よりも大きな異物は捕捉することが可能である、孔径が0.1nm〜100μmのろ過膜を有するろ過装置と、
前記試料採取部により採取された前記半導体用研磨スラリーを、前記ろ過装置へ移送する半導体用研磨スラリー移送ラインと、
前記半導体用研磨スラリーが移送される前記半導体用研磨スラリー移送ライン中及び前記半導体用研磨スラリーがろ過されたろ過装置のうちの少なくとも一方に、半導体用研磨スラリーから抽出した分散液を供給するスラリー分散液供給手段と、
前記ろ過膜の表面にろ別された異物を検査する検査部と
を有することを特徴とするスラリー中の異物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−145102(P2008−145102A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328804(P2006−328804)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】