説明

半導体発光装置、照明装置、および画像表示装置

【課題】発光素子からの光を蛍光体で波長変換して外部へ取り出す発光装置において、蛍光体や封止材の劣化を抑制することによって、波長変換性能を長期間にわたって維持する。
【解決手段】半導体発光装置10は、紫外から近紫外領域の光を発する半導体発光素子13と、半導体発光素子13を封止する封止部15とを備える。半導体発光素子13は発光面の面積が0.5mm2以上であり、かつ相対発光強度の最大となるピークが発光面から70°以上110°以下に存在する指向特性を有する。封止部15は、半導体発光素子13を封止する導光層16と、導光層16を覆って形成された蛍光体含有層17とを有する。導光層16は、半導体発光素子13の上面からの厚さが0.15mm以上である。蛍光体含有層17は、紫外から近紫外領域の光で励起される蛍光体を含有し、蛍光体含有率が15〜40重量%の範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子からの光を蛍光体によって所定の波長の光に変換して外部へ取り出す半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードなどの発光素子を、この発光素子からの励起光によって励起する蛍光体を含有する封止層で封止し、励起光を蛍光体で波長変換して外部へ取り出す発光装置が知られている。この種の発光装置では、封止層中に含有する蛍光体を適宜組み合わせることで、蛍光体からの発光を混色させて白色の光を取り出すことができる。
【0003】
このような従来の発光装置として、特許文献1には、封止層が、励起光によって励起されて青色に発光する青色蛍光体を含有する青色発光層と、励起光によって励起されて緑色に発光する緑色蛍光体を含有する緑色発光層と、励起光によって励起されて赤色に発光する赤色蛍光体を含有する赤色発光層と、を有し、これら青色発光層、緑色発光層および赤色発光層が、発光素子側からこの順番で積層されている発光装置が開示されている。また、特許文献1には、封止層が、透光性樹脂からなるバッファ層をさらに有し、発光素子の実質的な封止はこのバッファ層で行ない、バッファ層の上に上記青色発光層、緑色発光層および赤色発光層が積層されることも開示されている。
【0004】
一方、近年の光出力アップの要求から、大型で高出力の半導体発光素子(パワーLEDチップ)を発光装置に搭載する技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−228464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、封止層に含有される蛍光体は、発光素子から光エネルギーや発光素子自身の発熱による熱エネルギーを受けることにより劣化する。熱による蛍光体の劣化は、蛍光体が発光する際の蛍光体自身の発熱によっても引き起こされる。蛍光体が劣化すると、蛍光体による波長変換性能を長期間にわたって維持できなくなり、所望の発光色を取り出すことができなくなってしまう。
【0007】
特に近紫外から紫外線領域の短波長の半導体発光素子を使用する半導体発光装置では、短波長光のエネルギーレベルが大きいため、封止層に含まれる封止材が着色などにより劣化したり、蛍光体の劣化が著しいという問題があった。また、さらに放熱が大きい半導体パワーLEDチップを用いる場合は、封止材や蛍光体の耐光性、封止材の成膜性、密着性を維持しつつ、耐熱安定性のレベルをさらに上げることが望ましかった。
【0008】
半導体発光装置のパッケージは電極を備えているが、通常、電極表面は半導体素子や蛍光体からの発光を反射によって効率よく取り出すために銀メッキ等の処理が施されている。しかし、銀や銅などの電極材料は、その電極間に生じる電場によってマイグレーションが発生しやすい。
【0009】
特に上述した大型で高出力の発光素子を用いた半導体発光装置は、輝度が高く照明や各種光源として有用であるため、雨など水分の影響を受けやすい屋外用照明や表示器、温度の変化が激しく結露しやすい環境で使用する車載用照明、高温多湿の地域で使用する各種照明やバックライト光源など、高温高湿環境下で半導体発光装置を点灯することが多くなる。従来のエポキシ樹脂を封止材として用いた場合には吸湿性あるため、またシリコーン樹脂を用いた場合には透湿性があるため、半導体発光装置の電極材料や発光素子を厳密に水分から遮断することは困難であった。このため、該環境下ではマイグレーションがより顕著に発生し、電極表面の反射率が低下するので、照明装置の光の取り出し効率が低下する傾向があった。さらには、マイグレーションの発生によって、電極と樹脂界面との接着性が低下し剥離等が発生する傾向があった。これらのマイグレーションは蛍光体の劣化により生成するアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンの存在によってさらに加速されるため、蛍光体の耐久性を向上させる塗布方法やデバイス構成を見出すことが望ましかった。
【0010】
本発明は、発光素子からの光を蛍光体で波長変換して外部へ取り出す発光装置およびそれを用いた機器において、蛍光体や封止材の劣化を抑制することによって、蛍光体による波長変換性能を長期間にわたって維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、大型かつ高出力の発光素子の指向特性に着目し、前記発光素子を搭載するにあたって最適となる封止材と蛍光体の組み合わせ構造を見出した。即ち、発光素子に接する部分に導光層を形成し、蛍光体と発光素子の間に特定の厚さの導光層を設け、蛍光体と発光素子を離す事、および蛍光体含有量を特定とする事により上記問題を解決することを見出した。また、導光層に光散乱剤を含有すること、導光層と蛍光体含有層の界面を概して水平とすること、特定の封止材を用いることにより、さらに効果が高まることを見出した。さらに、蛍光体を含有する蛍光体含有層を、特定の蛍光体を含有する2層構造とすることで、励起光による蛍光体の劣化をさらに抑制したり、さらには励起光の利用効率を向上させたりできることを見出し、本発明に至った。本発明は、下記〔1〕〜〔12〕の特徴を有する半導体発光装置、照明装置、および画像表示装置に存する。
【0012】
〔1〕 紫外から近紫外領域の光を発する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子からの光により励起される蛍光体を含有し、前記半導体発光素子を封止する封止部とを備え、
前記半導体発光素子は、発光面の面積が0.5mm以上であり、かつ相対発光強度の最大となるピークが発光面から70°以上110°以下に存在する指向特性を有するものであり、
前記封止部は、
前記半導体発光素子を封止し、前記蛍光体を実質的に含有しない導光層と、
前記導光層を覆って形成された、前記蛍光体を含有する蛍光体含有層と、
を有し、
前記導光層は半導体発光素子の上面からの厚さが0.15mm以上であり、
前記蛍光体含有層に対する前記蛍光体の含有率が15重量%以上40重量%以下であることを特徴とする半導体発光装置。
【0013】
〔2〕 前記蛍光体含有層の蛍光体含有率が、半導体発光素子側から蛍光体含有層の最外表面へ連続的に高濃度になるように変化している上記〔1〕記載の半導体発光装置。
【0014】
〔3〕 前記蛍光体含有層は2層の蛍光層を有し、
第1の蛍光層は、励起されることによって青色に発光する蛍光体を含有し、
第2の蛍光層は、励起されることによって黄色に発光する蛍光体、励起されることによって緑色に発光する蛍光体および励起されることによって赤色に発光する蛍光体の少なくとも1種を含有する上記〔1〕または〔2〕に記載の半導体発光装置。
【0015】
〔4〕 前記第1の蛍光層が含有する蛍光体は紫外から近紫外領域の光で励起され、前記第2の蛍光層が含有する蛍光体は青色光によって励起され、前記第1の蛍光層および前記第2の蛍光層が前記半導体発光素子側からこの順番で積層されている、上記〔3〕に記載の半導体発光装置。
【0016】
〔5〕 前記第1の蛍光層が含有する蛍光体および前記第2の蛍光層が含有する蛍光体は紫外から近紫外領域の光で励起され、前記第2の蛍光層および前記第1の蛍光層が前記半導体発光素子側からこの順番で積層されている、上記〔3〕に記載の半導体発光装置。
【0017】
〔6〕 紫外から近紫外領域の光を発する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子からの光により励起される蛍光体を含有し、前記半導体発光素子を封止する封止部とを備え、
前記半導体発光素子は、発光面の面積が0.5mm以上であり、かつ相対発光強度の最大となるピークが発光面から70°以上110°以下に存在する指向特性を有するものであり、
前記封止部は、発光波長ピークの異なる複数の蛍光体を含有し、該発光ピークの異なる複数の蛍光体の濃度が、それぞれ発光素子側から蛍光体含有層の最外表面へ連続的に高濃度になるように変化するものであり、前記半導体発光素子を封止し、前記蛍光体の少なくとも1種を実質的に含有しない導光層と、前記導光層を覆って形成された、前記複数の蛍光体を含有する蛍光体含有層と、を有し、
前記導光層は前記半導体発光素子の上面からの厚さが0.15mm以上であり、
前記封止部の平均蛍光体含有率が15重量%以上40重量%以下であることを特徴とする半導体発光装置。
【0018】
〔7〕 前記半導体発光素子を複数個備える上記〔1〕ないし〔6〕のいずれかに記載の半導体発光装置。
【0019】
〔8〕 前記導光層は、光散乱剤を含有する上記〔1〕ないし〔7〕のいずれかに記載の半導体発光装置。
【0020】
〔9〕 前記導光層および前記蛍光体含有層の界面は、前記半導体発光素子の上面に平行な平面または凹凸面である上記〔1〕ないし〔8〕のいずれかに記載の半導体発光装置。
【0021】
〔10〕 前記導光層および前記蛍光体含有層は、下記(1)〜(3)の特性を有する上記〔1〕ないし〔9〕のいずれかに記載の半導体発光装置。
(1)他の層との界面に、極性基を含有すること、
(2)硬度が、ショアAで5以上100以下、または、ショアDで0以上85以下であること、および
(3)シロキサン結合を有すること。
【0022】
〔11〕 上記〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の半導体発光装置を光源として用いた照明装置。
【0023】
〔12〕 上記〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の半導体発光装置を備えた光源と、
前記光源からの光の照射を受ける、光シャッタを備えた表示パネルと、
を有する画像表示装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、蛍光体を含む封止部全体の、紫外線から近紫外線による劣化、および熱劣化を抑制することができる。また、蛍光体の発光を効率よく利用できるため、半導体発光装置の輝度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による半導体発光装置の模式的断面図である。
【図2】図1に示す半導体発光装置において蛍光体含有層を2層構造とした模式的断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による半導体発光装置の模式的断面図である。
【図4】図3に示す半導体発光装置において蛍光体含有層を2層構造とした模式的断面図である。
【図5】図3に示す半導体発光装置において導光層および蛍光体含有層の表面を平面とした模式的断面図である。
【図6】図5に示す半導体発光装置において、導光層の表面を凹凸面とした模式的断面図である。
【図7】硬化性材料の表面張力により表面が凹面状となった導光層を有する半導体発光装置の一例を示す模式的断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明において任意に用いることのできるリフレクタの内面形状の種々の例を示す断面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態による半導体発光装置の模式的断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態による半導体発光装置の模式的断面図である。
【図11】(a)〜(f)は、本発明の導光層および蛍光体含有層を構成する任意の2層の関係の具体例について模式的に示す図である。
【図12】本発明の実施例による、緑色蛍光体の分布とチクソ剤濃度との関係を示す図である。
【図13】実施例1〜2および比較例1〜2により製造された半導体発光装置の連続点灯試験結果を示すグラフである。
【図14A】本発明に用いられる発光素子の指向特性の具体例を示す図である。
【図14B】本発明に用いられる発光素子の指向特性の具体例を示す図である。
【図14C】本発明に用いられる発光素子の指向特性の具体例を示す図である。
【図14D】本発明に用いられる発光素子の指向特性の具体例を示す図である。
【図14E】本発明に用いられる発光素子の指向特性の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0027】
本発明において、半導体発光素子の「発光面」とは、半導体発光素子を駆動可能なように実装基板に実装した状態において、半導体発光素子を基板面に垂直な方向から基板面に対して投影することによって得られる面である。また、半導体発光素子の「上面」とは、半導体発光素子を駆動可能なように実装基板に実装した状態において、半導体発光素子の基板面から最も離れた位置にある面を意味する。よって、半導体発光素子の形状によっては、「発光面」と「上面」が等しい場合もあるし、「上面」が「発光面」の一部である場合もある。
【0028】
[1]半導体発光装置
本発明による半導体発光装置は、少なくとも1個の半導体発光素子と、半導体発光素子を封止し、半導体発光素子からの光により励起される蛍光体を含有する封止部と、を有する。封止部は、半導体発光素子を封止した導光層と、導光層を覆って形成された蛍光体含有層とを有する。一実施形態では、導光層は、蛍光体を実質的に含有しておらず、蛍光体含有層は、上記蛍光体を含有している。また、他の実施形態では、蛍光体含有層は、発光波長ピークの異なる複数種の蛍光体を含有し、導光層は、これら複数種の蛍光体のうち少なくとも1種を含有しない。導光層および蛍光体含有層は共通の材料を含んでいてもよい。以下に、これら半導体発光素子、導光層および蛍光体含有層について詳細に説明する。
【0029】
[1−1]半導体発光素子
本発明の半導体発光装置における半導体発光素子は、蛍光体を励起する光を発光するものである。半導体発光素子の発光波長は、蛍光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の半導体発光素子を使用することができるが、本発明においては、紫外から近紫外領域までの発光波長を有する半導体発光素子が使用される。半導体発光素子が発する光のピーク発光波長の具体的数値としては、通常350nm以上、好ましくは355nm以上、また、通常430nm以下、好ましくは420nm以下である。この半導体発光素子としては、具体的には発光ダイオード(以下、適宜「LED」と略称する。)や半導体レーザーダイオード(以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。
【0030】
中でも、半導体発光素子としては、基板上にGaN系化合物半導体層が形成されたGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層、又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInGaN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。GaN系LDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0031】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0032】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0033】
また、発光層で発生した光をより多く外部に取り出すための種々の構造(電極構造、反射層構造、上下を逆に実装し得るフリップチップ構造など)などを適宜設けることができるが、実装の容易さ、パッケージデザインの柔軟性、放熱効果などの観点から、発光面を上にし、ワイヤーボンドにより電極と接続する構造であることが好ましい。
【0034】
なお、以下の説明では、「半導体発光素子」を単に「発光素子」ともいう。
【0035】
本発明は総じて大型の高出力発光素子に適した構造である。従って本発明に用いられる発光素子は、発光面の面積が0.5mm以上、好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは0.8mm以上であり、通常10mm以下、好ましくは4mm以下、更に好ましくは2.0mm以下である。発光面の面積が小さすぎると光出力が総じて少なくなる場合がある。また、大きすぎると放熱が困難になる場合がある。
【0036】
また、本発明に用いられる発光素子は、動作時の電力量が通常0.5W以上、好ましくは0.8W以上、更に好ましくは1W以上であり、通常5W以下、好ましくは4W以下、更に好ましくは3W以下である。動作時の電力量が小さすぎると光出力が総じて少なくなりコスト的にも不利であり、大きすぎると放熱が困難となり、蛍光体や封止剤・発光素子が熱劣化したり電極マイグレーションによる故障を誘起したりするため、得られる半導体発光装置の寿命が短くなる恐れがある。
【0037】
また、本発明に用いられる発光素子は、相対発光強度の最大となるピークが発光面から70°以上110°以下に存在する指向特性を有するものであり、好ましくは75°以上105°以下に存在する指向特性を有するものである。即ち、本発明に用いられる発光素子は発光面より前方(発光面に垂直な方向)に光が集中しやすいものとなっている。
【0038】
ここで、指向特性は以下のように測定することができる。
【0039】
[1−1A]指向特性の測定方法
本発明に用いられる発光素子の指向特性は、例えばOptronic Laboratries Inc.社製ゴニオメーター(OL700−30 LED GONIOMETER)と分光器(OL−700 MULTI−CHANNEL SPECTROMETER)を組み合わせた配光分布測定装置を用いることにより測定することが出来る。測定においては、発光素子自身の配光分布を正確に測定するため暗室にて測定することとし、発光素子の実装基板はリフレクタを有しない平面構造とし、発光素子を実装する実装基板の表面は無用の反射を防ぐため実質的に黒色とし、金線などの配線の長さや実装方式は使用目的とする半導体発光装置への実装時と同等となるようにする。
【0040】
[1−1B]指向特性を有する条件
本発明に用いられる発光素子が、前述のような指向特性を有するためには、発光素子が、以下の構造を有していることが好ましい。
【0041】
例えば、発光層を含む化合物半導体層が基板上に形成された発光素子をフリップチップマウントする場合、及び基板を導電性のものとし発光層を下面としてシングルワイヤボンディングする場合、発光層から上面へ向けての発光は基板を透過して取り出されることになる。このような場合は、発光素子の基板と発光層の屈折率差を小さくすることが挙げられる。即ち、発光素子の基板と発光層の屈折率差が、最も好ましくは0以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.4以下である。屈折率差が大きすぎると、発光層から基板へ透過する光が層間の全反射のため透過しにくくなり、発光素子上面からの光取出し効率が低くなる。発光層と基板の屈折率差は小さいほど光取り出し効率が高くなり、屈折率差0の時光取り出し効率最大となるので最も好ましい。屈折率を適宜範囲とするためには、通常、基板として比較的屈折率の高いGaN、SiCを用いることができる。
【0042】
また、例えば発光層や基板の光取り出し面を粗面化することが挙げられる。粗面化の具体的方法としては、例えばエッチング処理、ナノインプリント技術による光取り出し面へのフォトニック結晶形成処理などが挙げられる。このようなナノサイズの粗面化処理を発光素子上面に施すと、比較的低屈折率であり、本来上面より光出射しにくい基板材料(SiO,Al)を上面に使用し、下面に発光層がある発光素子であっても上面からの光取り出し効率が高くなる。粗面加工の度合いとしては、発光素子上面に1/4波長サイズ、深さ数百nmの凹凸を均一に設けることが、粗面において不要な光散乱を起こさず高い光取り出し効率を実現できるため好ましい。このような粗面は発光層と基板の界面に設けても良い。微小凸部の形状は円柱状、円錐状、角錐状、メサ(台状)構造など各種任意に選択することが出来る。
【0043】
本発明において基板をサファイアなどの絶縁性材料とする場合は、発光層を上面とし、上面に2個の電極を有する(ダブルワイヤボンディング)電極構成が、上面に出射される光の割合が多くなり好ましい。また基板がSiCやGaNなど導電性材料である場合には上面の電極を1個とする(シングルワイヤボンディング)電極構成が好ましい。中でも後者の構成が、上面からの発光が電極により遮られにくく、発光素子より上面に向けて出射される光の割合が多く特に好ましい。
【0044】
上面に向けて出射する光の割合は、チップ側面のカット形状により向上させても良い。発光素子側面を、発光層から出射する光の反射を抑制する形状にカッティングすることにより、上面へ向けて出射する光の割合が多くなり光取り出し効率が向上する。
【0045】
また、本発明では、発光素子の基板部分を取り除き、SiやGeなどの金属光沢を持つ担体基板に接着することによって、担体基板を反射層として利用したものは、全ての光が発光層上面から出射するため好ましい。この際、Al層やAg層など反射率の高いミラー層を発光層と担体基板との間に設けた構造ではSiやGeと比較しさらに反射率が高くなり、担体基板の種類も放熱に優れたCuWなど選択の幅が広くなるため特に好ましい。
【0046】
[1−1C]好ましい指向特性の具体例
【0047】
本発明に用いられる発光素子の指向特性の具体例を図14A〜14Eに示す。
【0048】
[1−2]導光層
本発明の半導体発光装置に用いられる導光層は、通常、封止部材を含有するものである。
【0049】
本発明の一実施形態では、導光層は実質的に蛍光体を含有せず、発光素子からの光の波長を変えることなく、発光素子より発せられた光を後述の蛍光体含有層へ導く層である。このように、発光素子と蛍光体含有層との間に導光層を介在させることにより、発光素子を直接蛍光体含有層で覆う単層構造の半導体発光装置に比べ、蛍光体を発光素子から離して配することができる。その結果、蛍光体の紫外線による劣化を低減することができ、長期間、安定した機能を有する半導体発光装置とすることができる。また、導光層は実質的に蛍光体を含有しないので、発光素子の発熱等により導光層の温度が上昇しても、蛍光体に与える影響は少ない。よって、温度による蛍光体の劣化も抑制することができる。
【0050】
一方、導光層および蛍光体含有層が発光色(発光波長ピーク)の異なる複数種の蛍光体を含有しており、特に、その蛍光体が、実装条件および点灯使用条件において電気、熱および光に対して安定な蛍光体を含む場合には、導光層は、その安定な蛍光体を、総量として通常5重量%未満、好ましくは3重量%未満含有することができる。導光層中に含まれる蛍光体の濃度が5重量%以上である場合は、複数の発光素子からの横向きへの発光に蛍光体がさらされ、発光素子間の蛍光体の発熱が大きくなり、封止材が劣化し易くなる場合がある。
【0051】
また、導光層が蛍光体を含有する場合は、導光層と蛍光体含有層とを一体不可分の連続した層とし、蛍光体の濃度が発光素子側から最外表面へ連続的に高濃度になるように変化させて形成することもできる。この場合、半導体発光装置の使用条件において最も劣化しやすい蛍光体の含有率が0%である層を導光層と考えることができる。そして、かかる導光層は、最も劣化しやすい蛍光体以外の蛍光体を含んでいる場合に、より好ましくはそれら比較的安定な蛍光体の含有率が5重量%未満であることが好ましい。導光層を形成する方法としては、それぞれの層を塗布してもよいが、蛍光体の比重、粒径、形状、硬化時間を適宜選択することにより、蛍光体の硬化前の封止材中での沈降速度を制御し、それにより層内での連続的な濃度の変化をさせることができ、好ましい。一例を上げれば、比較的熱や光による劣化に強い蛍光体aと、比較的水分に強い蛍光体bを使用する場合、例えば蛍光体bの粒径を大きくして、沈降速度を蛍光体aより早くしておき、蛍光体を含む液を硬化させる間、半導体発光素子が上になるよう、つまり通常のさかさまにおくことにより、沈降速度の速い蛍光体b(熱等に弱く水に強い)が、表面側に集まり、かつ半導体発光素子側からなくなることにより導光層を形成できる。このように導光層と蛍光体含有層とを一工程にて一体不可分に形成することが好ましい。
【0052】
さらに、発光素子を導光層で封止し、その導光層を覆って蛍光体含有層を設けることで、発光素子から発せられた光は、導光層全面で蛍光体含有層へ導かれ、蛍光体含有層に含有されている蛍光体を励起する。よって、蛍光体をより効率よく励起することができ、結果的に、半導体発光装置から取り出される光の輝度が向上する。また、温度消光の観点からも、発光素子から蛍光体が離れている分、有利になるのは明らかである。
【0053】
導光層に用いる封止部材は特に限定されず、通常、発光素子を覆ってモールディングすることのできる硬化性材料も用いることができる。硬化性材料とは、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。導光層は、発光素子から発せられた光を蛍光体含有層へ導くという導光層の前述した役割を担保するものであれば、具体的な種類に制限は無いが、導光層を構成する材料にかかわらず、下記に示す特性を有することが好ましい。
【0054】
1)他の層との界面に、極性基を含有すること、
2)硬度が、ショアAで5以上100以下、または、ショアDで0以上85以下であること、および
3)シロキサン結合を有すること。
【0055】
以下、これらの特性1)〜3)について説明する。なお、蛍光体含有層について詳細は後述するとおり、蛍光体含有層も導光層と同じ封止部材を含有することができ、その場合は、蛍光体含有層も導光層と同じ特性を有する。よって、以降の説明は蛍光体含有層にも当てはまり、本発明の趣旨に照らして矛盾がない限り、「導光層」を「蛍光体含有層」と置き換えて読むことができる。また、以降の説明において、導光層と蛍光体含有層を特に区別しない場合はこれらの層を「特定層」ともいう。
【0056】
[1−2A]特性1):極性基
本発明で用いる導光層は、隣接する他の層である後述する蛍光体含有層との界面に、極性基を含有することが好ましい。即ち、導光層は、蛍光体含有層との界面に極性基を有するよう、当該極性基を有する化合物を含有する。このような極性基の種類に制限は無いが、例えば、シラノール基、アミノ基及びその誘導基、アルコキシシリル基、カルボニル基、エポキシ基、カルボキシ基、カルビノール基(−COH)、メタクリル基、シアノ基、スルホン基などが挙げられる。なお、特定層は、いずれか1種の極性基のみを含有していてもよく、2種以上の極性基を任意の組み合わせ及び比率で含有していても良い。
【0057】
このように、導光層が蛍光体含有層との界面に極性基を有することにより、二層が強く密着し、重ね塗りによる積層積層面での剥離等が起こりにくく、有利である。
【0058】
本発明に係る導光層に含まれる極性基は、また、ポリフタルアミドなどの樹脂、セラミック又は金属の表面に存在する所定の官能基(例えば、水酸基、メタロキサン結合中の酸素など)と水素結合が可能であり、高い密着性を発現する。半導体発光装置に設置する際の実装基板(パッケージ)は、通常、樹脂、セラミック又は金属で形成されている。また、セラミックや金属の表面には、通常は水酸基が存在する。一方、導光層は、通常、当該水酸基と水素結合可能な官能基を有している。したがって、前記水素結合により、導光層を有する本発明の半導体発光装置は、実装基板に対する密着性に優れているのである。
【0059】
なお、導光層における実質的な極性基の有無は、IR(赤外分光)分析及びNMR(核磁気共鳴)により確認することができる。
【0060】
ところで、これらの極性基は、導光層の中にはじめから含まれていても良く、プライマーの塗布や表面処理などにより導光層の表面に後から付加されたものでもよい。したがって、この観点からいえば、本発明の半導体発光装置を構成する導光層および蛍光体含有層の関係について具体例を挙げると、図11(a)〜(f)のような構成が挙げられる。ただし、本発明の半導体発光装置を構成する導光層および蛍光体含有層の関係は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0061】
例えば図11(a)に模式的に示すように、積層された2層が共に、はじめから極性基を含有する層Sで形成されている構成が挙げられる。この場合、両層S、Sが含有する極性基により両層S、Sは良好に密着する。
【0062】
また、例えば図11(b)に模式的に示すように、積層された2層のうち一方がはじめから極性基を含有する層Sであり、他方が、極性基を含有しない層Oで形成されている構成が挙げられる。この場合でも、層Sが含有する極性基により密着性は従来よりも向上する。
【0063】
さらに、例えば図11(c)に模式的に示すように、積層された2層が共に、はじめは極性基を含有しない層Oで形成され、且つ、両層O,Oの間にプライマーPが塗布されている構成が挙げられる。この場合、プライマーPにより両層O,Oの表面には極性基が付与される。これにより、密着性が向上する。また、この場合、極性基を含む部分が2層の界面のみとなり、実質的に薄膜となるため、光や熱により着色しやすい極性基を導入しても、導光機能への影響が生じにくい。なお、層Oが特性2)及び特性3)を満たしている場合には、これらの層O、はプライマーPにより極性基を有することになるため、特性1)を有する層として機能することになる。
【0064】
また、例えば図11(d)に模式的に示すように、積層された2層が共に、はじめから極性基を含有する層Sで形成され、且つ、両層S,Sの間にプライマーPが塗布されている構成が挙げられる。この場合、プライマーPにより両層S,Sの間の密着性が特に優れる。
【0065】
さらに、例えば図11(e)に模式的に示すように、積層された2層のうち一方がはじめから極性基を含有する層Sであり、他方が、はじめは極性基を含有しない層Oで形成され、さらに、極性基を含有する層Sと含有しない層Oとの間にプライマーPが塗布されている構成が挙げられる。この場合、プライマーPにより層Sと層Oとの間の密着性は、図11(b)で説明した場合よりも向上する。なお、この場合においても、層Oが特性2)及び特性3)を満たしている場合には、その層Oは、プライマーPにより極性基を有することになるため、特性1)を有する層として機能することになる。
【0066】
また、例えば図11(f)に模式的に示すように、はじめは極性基を含有しない層Oの上に、はじめから極性基を含有する層Sを積層し、層Sの成分の一部が層Oにしみ込んで密着性を補助している構成が挙げられる。このような成分のしみ込みは、上層である層Sの形成液が下層である層Oにしみ込むことにより行なわれる。
【0067】
[1−2B]特性2):硬度測定値
硬度測定値は、本発明で用いる導光層の硬度を評価する指標であり、以下の硬度測定方法により測定される。
【0068】
本発明で用いられる導光層は、比較的硬度の低い部材、好ましくはエラストマー状を呈する部材であることが好ましい。即ち、本発明では、発光素子、発光素子を実装する実装基板、および複数の層で構成される封止部など、熱膨張係数の異なる複数種の部材を使用することになるが、特定層が比較的硬度が低く、好ましくはエラストマー状を呈することにより、特定層及び当該特性層を有する本発明の半導体発光装置が上記の各部材の伸縮による応力を緩和することができる。したがって、使用中に剥離、クラック、断線などを起こしにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れる半導体発光装置を提供することができる。
【0069】
具体的には、導光層は、デュロメータタイプAによる硬度測定値(ショアA)が、5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、また、通常100以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。または、デュロメータタイプDによる硬度測定値(ショアD)が、0以上、また、通常85以下、好ましくは80以下、より好ましくは75以下である。上記範囲の硬度測定値を有することにより、導光層及び当該導光層を有する本発明の半導体発光装置は、クラックが発生しにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れるという利点を得ることができる。また、特定層を塗布する実装基板が例えばフレキシブル基板等の薄手の基板である場合には、特定層の積層により硬化収縮応力がかかって実装基板及び特定層が反る可能性がある。このため、導光層は、ショアAが5以上80以下のゴム弾性を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0070】
〔硬度測定方法〕
硬度測定値(ショアA)は、JIS K6253に記載の方法により測定することができる。具体的には、古里精機製作所製のA型ゴム硬度計を用いて測定を行なうことができる。
【0071】
一方、硬度測定値(ショアD)は、JIS K6253に記載の方法により測定することができる。具体的には、古里精機製作所製のD型プラスチック硬度計を用いて測定を行なうことができる。
【0072】
[1−2C]特性3):シロキサン結合
本発明の半導体発光装置において、導光層は、シロキサン結合を含有する。即ち、導光層は、シロキサン結合を有する化合物を含んで形成されている。
【0073】
シロキサン結合を有する化合物としては、後述の珪素含有化合物などが挙げられる。
【0074】
[1−2D]その他特性
本発明の半導体発光装置において、導光層は、発光素子から発せられた光を蛍光体含有層へ導くという導光層本来の目的を達成しながら、発光素子から発せられた光のエネルギーを適宜抑制して蛍光体や封止材の劣化抑制という機能をもっていてもよい。
【0075】
そのため、膜厚0.5mmでの350nm以上500nm以下の発光波長における光透過率が、通常90%以下、好ましくは80%以下であり、通常70%以上である。なお、発光波長によりほとんど劣化しない蛍光体及び封止材を使用する場合にはかならずしも光透過率を低くする必要はなく、むしろ透過率は高いことが好ましい。この場合の透過率は通常80%以上、好ましくは85%以上であり、通常98%以下である。
【0076】
以上、導光層の望ましい特性について述べたが、これらの特性を得るうえで好適に用いられるのは上述の硬化性材料である。また、導光層を形成するにあたって、上述の硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
【0077】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0078】
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0079】
従来、半導体発光装置用の蛍光体分散材料としては、一般的にエポキシ樹脂が用いられてきたが、本発明において、大出力の大型発光素子を用いる場合、特に、発光素子からの発光に対して劣化が少なく、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。
【0080】
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さや、硬化物が応力緩和力を有する点から、シリコーン系材料が好ましい。半導体発光装置用シリコーン樹脂に関しては例えば特開平10−228249号公報や特許2927279号公報、特開2001−36147号公報などで封止剤への使用、特開2000−123981号公報において波長調整コーティングへの使用が試みられている。
【0081】
[1−2−1]シリコーン系材料
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、下記の一般組成式(1)で表わされる化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
(R123SiO1/2M(R45SiO2/2D(R6SiO3/2T(SiO4/2Q・・・式(1)
【0082】
一般組成式(1)において、R1からR6は、有機官能基、水酸基及び水素原子よりなる群から選択されるものを表わす。なお、R1からR6は、同じであってもよく、異なってもよい。
【0083】
また、一般組成式(1)において、M、D、T及びQは、0以上1未満の数を表わす。ただし、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0084】
なお、シリコーン系材料を硬化性材料として用いる場合、その塗設に際しては、液状のシリコーン系材料を用いて発光素子を封止した後、熱や光によって硬化させればよい。
【0085】
[1−2−2]シリコーン系材料の種類
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0086】
[1−2−2−1]付加型シリコーン系材料
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランとをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られる、Si−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0087】
上記付加型シリコーン系材料は、具体的には、例えば下記平均組成式(1a)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と下記平均組成式(2a)で表されるヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(B)を(A)の総アルケニル基に対して(B)の総ヒドロシリル基量が0.5〜2.0倍となる量比で混合し、触媒量の付加反応触媒(C)の存在下反応させて得ることが出来る。
【0088】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
nSiO〔(4-n)/2〕 (1a)
(但し、式中Rは同一又は異種の置換又は非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、又は水酸基で、nは1≦n<2を満たす正数である。)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
(B)ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン
R’abSiO〔(4-a-b)/2〕 (2a)
(但し式中R’は脂肪族不飽和炭化水素基を除く同一又は異種の置換又は非置換の1価炭化水素基、a、bは0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0かつ、0.8≦a+b≦2.6を満たす正数である。)で示される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
(C)付加反応触媒
【0089】
以下、付加型シリコーン樹脂につき更に詳しく説明する。
【0090】
上記式(1a)のRにおいて、アルケニル基とはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基である。Rが炭化水素基である場合はメチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、フェニル基等の炭素数1〜20の1価炭化水素基から選択される。好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。それぞれは異なっても良いが、耐UV性が要求される場合にはRの80%以上はメチル基であることが好ましい。Rが炭素数1〜8のアルコキシ基や水酸基であってもよいが、アルコキシ基や水酸基の含有率は(A)の重量の3%以下であることが好ましい。
【0091】
nは1≦n<2を満たす正数であるが、この値が2以上であると封止材としての十分な強度が得られなくなり、1未満であると合成上このオルガノポリシロキサンの合成が困難になる。
【0092】
次に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(2a)は、(A)成分のオルガノポリシロキサン(1a)とヒドロシリル化反応により組成物を硬化させる架橋剤として作用するものであり、下記平均組成式(2a)
R’abSiO(4-a-b)/2 (2a)
(但し、式中R’はアルケニル基を除く一価の炭化水素基であり、a、bは0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6、好ましくは0.8≦a≦2、0.01≦b≦1、1≦a+b≦2.4を満たす正数である。)で示される1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のSiH結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0093】
ここで、R’としては、式(1a)中のRと同様の基を挙げることができるが、好ましくはアルケニル基を有さないものがよい。また、耐UV性要求される用途に用いる場合には少なくとも80%以上はメチル基であることが好ましい。
【0094】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は3〜1000、特に3〜300程度のものを使用することができる。
【0095】
上記(B)成分のオルガノハイドロポリシロキサン(2a)の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン(1a)の総アルケニル基量に依存し、オルガノポリシロキサン(1a)の総アルケニル基に対して総SiH量が0.5〜2.0倍となる量好ましくは0.8〜1.5倍となる量とすればよい。
【0096】
(C)成分の付加反応触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A)及び(B)成分の合計重量に対して1〜500ppm、特に2〜100ppm程度配合することが好ましい。
【0097】
付加型シリコーン系材料には、上記(A)〜(C)成分に加え、任意成分として硬化性、ポットライフを与えるために付加反応制御剤、硬度・粘度を調節するために例えばアルケニル基を有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンの他にも直鎖状の非反応性オルガノポリシロキサン、ケイ素原子数が2〜10個程度の直鎖状又は環状の低分子オルガノポリシロキサンなどを本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0098】
なお、上記組成物の硬化条件は特に制限されないが、120〜180℃、30〜180分の条件とすることが好ましい。得られる硬化物が硬化後にも柔らかいゲル状である場合には、ゴム状や硬質プラスチック状のシリコーン樹脂と比較して線膨張係数大きいため、室温付近の低温にて10〜30時間硬化することにより内部応力の発生を抑制することができる。
【0099】
付加型シリコーン系材料は公知のものを使用することができ、さらには金属やセラミックスへの密着性を向上させる添加剤や有機基を導入しても良い。例えば、特許3909826号公報、特許3910080号公報、特開2003−128922号公報、特開2004−221308号公報、特開2004−186168号公報に記載のシリコーン材料が好適である。
【0100】
[1−2−2−2]縮合型シリコーン系材料
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(2)及び/又は(3)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0101】
m+n1m-n (2)
(式(2)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
(Ms+t1s-t-1u2 (3)
(式(3)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
【0102】
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させておいても良い。硬化触媒としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、例えば、金属キレート化合物などを好適に用いることができる。金属キレート化合物は、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、チタン、ハフニウム及びタンタルからなる群より選ばれるいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0103】
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
【0104】
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
【0105】
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や当該素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが多い。そこで、本発明に用いる硬化性材料としては密着性が高いシリコーン系材料を用いることが好ましく、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料を用いることがより好ましい。
【0106】
〈1〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
【0107】
〈2〉後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
【0108】
(a)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
【0109】
(b)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
【0110】
〈3〉シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0111】
本発明に係る硬化性材料としては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈1〉を有するシリコーン系材料が好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を全て有するシリコーン系材料が好ましい。以下、上記の特徴〈1〉〜〈3〉について説明する。
【0112】
〔特徴〈1〉(ケイ素含有率)〕
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であり、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【0113】
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
【0114】
ケイ素含有率の測定:
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
【0115】
〔特徴〈2〉(固体Si−NMRスペクトル)〕
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
【0116】
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料において、前記(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般に前記(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
【0117】
一方、前記(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
【0118】
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大きすぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなることがある。
【0119】
また、ピークの半値幅が小さすぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
【0120】
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
【0121】
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば、以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0122】
[固体Si−NMRスペクトル測定]
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。
【0123】
[装置条件]
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX-400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:ジメチルシリコーンゴム
【0124】
[データ処理例]
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
【0125】
[波形分離解析法]
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
【0126】
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
【0127】
〔特徴〈3〉(シラノール含有率)〕
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0128】
シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば、前記の[固体Si−NMRスペクトル測定]の項で説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0129】
また、本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、発光素子やパッケージの表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
【0130】
さらに、本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適切な触媒の存在下で加熱することにより、発光素子やパッケージの表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
【0131】
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
【0132】
[1−2−3]その他の成分
硬化性材料には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の無機系材料及び/又は有機系材料などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0133】
[1−2−4]無機粒子
硬化性材料には、光学的特性や作業性を向上させるため、また、以下の〔1〕〜〔5〕の何れかの効果を得ることを目的として、更に無機粒子を含有させても良い。なお、無機粒子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔1〕硬化性材料に無機粒子を光散乱剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層を散乱層とする。これにより、光源から伝送された光を散乱層において散乱させることができ、導光部材から外部に放射される光の指向角を広げることが可能となる。また、特に導光層に光散乱剤を含有させることで、蛍光体含有層において発光素子からの照射が緩和されるので、蛍光体の劣化を抑制することができる。
〔2〕硬化性材料に無機粒子を結合剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層においてクラックの発生を防止することができる。
〔3〕硬化性材料に無機粒子を粘度調整剤として含有させることにより、当該硬化性材料の粘度を高くすることができる。
〔4〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の収縮を低減することができる。
〔5〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の屈折率を調整して、光取り出し効率を向上させることができる。
【0134】
ただし、硬化性材料に無機粒子を含有させる場合、その無機粒子の種類及び量によって得られる効果が異なる。
【0135】
例えば、無機粒子が粒径約10nmの超微粒子状シリカ、ヒュームドシリカ(乾式シリカ。例えば、「日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL#200」、「トクヤマ社製、商品名:レオロシール」等)の場合、硬化性材料のチクソトロピック性が増大するため、上記〔3〕の効果が大きい。
【0136】
また、例えば、無機粒子が粒径約数μmの破砕シリカ若しくは真球状シリカの場合、チクソトロピック性の増加はほとんど無く、当該無機粒子を含む層の骨材としての働きが中心となるので、上記〔2〕及び〔4〕の効果が大きい。
【0137】
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物(前記の無機系材料及び/又は有機系材料など)とは屈折率が異なる粒径約1μmの無機粒子を用いると、前記化合物と無機粒子との界面における光散乱が大きくなるので、上記〔1〕の効果が大きい。
【0138】
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物より屈折率の大きな、中央粒径が通常1nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常10nm以下、好ましくは5nm以下、具体的には発光波長以下の粒径をもつ無機粒子を用いると、当該無機粒子を含む層の透明性を保ったまま屈折率を向上させることができるので、上記〔5〕の効果が大きい。
【0139】
従って、混合する無機粒子の種類は目的に応じて選択すれば良い。また、その種類は単一でも良く、複数種を組み合わせてもよい。また、分散性を改善するためにシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていても良い。
【0140】
[1−2−4−1]無機粒子の種類
使用する無機粒子の種類としては、例えば、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムなどの無機酸化物粒子やダイヤモンド粒子が挙げられるが、目的に応じて他の物質を選択することもでき、これらに限定されるものではない。
【0141】
無機粒子の形態は粉体状、スラリー状等、目的に応じいかなる形態でもよいが、透明性を保つ必要がある場合は、当該無機粒子を含有させる層に含有されるその他の材料と屈折率を同等としたり、水系・溶媒系の透明ゾルとして硬化性材料に加えたりすることが好ましい。
【0142】
[1−2−4−2]無機粒子の中央粒径
これらの無機粒子(一次粒子)の中央粒径は特に限定されないが、通常、蛍光体粒子の1/10以下程度である。具体的には、目的に応じて以下の中央粒径のものが用いられる。例えば、無機粒子を光散乱材として用いるのであれば、その中央粒径は通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは20μm以下である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いるのであれば、その中央粒径は1μm〜10μmが好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チクソ剤)として用いるのであれば、その中央粒径は10〜100nmが好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いるのであれば、その中央粒径は1〜10nmが好適である。
【0143】
[1−2−4−3]無機粒子の混合方法
無機粒子を混合する方法は特に制限されない。通常は、蛍光体と同様に遊星攪拌ミキサー等を用いて脱泡しつつ混合することが推奨される。例えばアエロジルのような凝集しやすい小粒子を混合する場合には、粒子混合後必要に応じビーズミルや三本ロールなどを用いて凝集粒子の解砕を行なってから蛍光体等の混合容易な大粒子成分を混合しても良い。
【0144】
[1−2−4−4]無機粒子の含有率
硬化性材料中における無機粒子の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、当該無機粒子を含有する層における無機粒子の含有率は、その適用形態により選定することが好ましい。例えば、無機粒子を光散乱剤として用いる場合は、その層内における含有率は0.01〜10重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いる場合は、その層内における含有率は1〜50重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チクソ剤)として用いる場合は、その層内における含有率は0.1〜20重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いる場合は、その層内における含有率は10〜80重量%が好適である。無機粒子の量が少なすぎると所望の効果が得られなくなる可能性があり、多すぎると硬化物の密着性、透明性、硬度等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、流体状の硬化性材料における無機粒子の含有率は、各層における無機粒子の含有率が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が乾燥工程において重量変化しない場合は硬化性材料における無機粒子の含有率は形成される各層における無機粒子の含有率と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、当該硬化性材料が乾燥工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料における無機粒子の含有率が、形成される各層における無機粒子の含有率と同様になるようにすればよい。
【0145】
なお、無機粒子の含有率は、後述の蛍光体の含有率と同様に測定することが出来る。
【0146】
さらに、硬化性材料として前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を用いる場合には、当該加水分解・重縮合物はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの他の硬化性材料と比較して低粘度であり、かつ蛍光体や無機粒子とのなじみが良く、高濃度の無機粒子を分散しても十分に塗布性能を維持することが出来る利点を有する。また、必要に応じて重合度の調整やアエロジル等のチクソ材を含有させることにより高粘度にすることも可能であり、目的の無機粒子含有量に応じた粘度の調整幅が大きく、塗布対象物の種類や形状さらにはポッティング、スピンコート、印刷などの各種塗布方法に柔軟に対応できる塗布液を提供することが出来る。
【0147】
[1−3]蛍光体含有層
蛍光体含有層は、通常、封止部材と蛍光体を含有するものである。
【0148】
封止部材は、上述の導光層で用いる封止部材と同様のものを用いることが出来る。また、蛍光体含有層に含有される封止部材が導光層で用いる封止部材と同じであるかどうかにかかわらず、蛍光体含有層は、導光層とともに前述の特性1)〜3)を有することが好ましい。
【0149】
ここで、導光層および蛍光体含有層は、通常隣接するため、両者の密着性を良好にするため、両層は同一または類似の封止部材を用いるのが好ましい。また、密着性担保の観点から、プライマーの塗布や適切な表面処理などを行っても良い。また、導光層および蛍光体含有層を一体不可分的に構成させるために、(i)蛍光体を含有した封止部材の硬化前の形成液を発光素子に塗布した後、(ii)塗布面を下にして蛍光体を沈降させた状態で封止部材の形成液を硬化させることによって、両層を同時に形成させる方法も採用することができる。
【0150】
導光層および蛍光体含有層を順次形成して本発明の半導体発光装置を製造する場合は、両層に縮合型シリコーン系材料を用いるのが、両層間の密着性の観点から特に好ましい。
【0151】
本発明の半導体発光装置に用いられる蛍光体は、紫外線〜青色光により励起される下記の赤色、黄色、緑色、および青色蛍光体等が挙げられ、これらより選択される1種以上を単独で、または2種以上を任意の組み合わせおよび任意の比率で使用することができる。
【0152】
蛍光体の組成には特に制限はないが、母体結晶となる、Y、YVO、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、(Ca,Sr)AlSiN等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。表1に、好ましい結晶母体の具体例を示す。
【0153】
【表1】

但し、上記の母体結晶及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0154】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0155】
[1−3−1]橙色ないし赤色蛍光体
橙色ないし赤色蛍光体として使用できる蛍光体を表2に示す。
【0156】
【表2】

以上の中でも、赤色蛍光体としては、SrCaAlSiN:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mnがより好ましい。
【0157】
また、橙色蛍光体としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceが好ましい。
【0158】
[1−3−2]青色蛍光体
青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常500nm未満、好ましくは490nm以下、より好ましくは480nm以下、さらに好ましくは470nm以下、特に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。使用する青色蛍光体の発光ピーク波長がこの範囲にあると、本発明に好適な蛍光体の励起帯と重なり、当該青色蛍光体からの青色光により、他色の蛍光体を効率良く励起することができるからである。
【0159】
このような青色蛍光体として使用できる蛍光体を表3に示す。
【0160】
【表3】

以上の中でも、青色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましく、Sr10(POCl:Eu、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
【0161】
[1−3−3]緑色蛍光体
緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常550nm未満、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。
【0162】
このような緑色蛍光体として利用できる蛍光体を表4に示す。
【0163】
【表4】

以上の中でも、緑色蛍光体としては、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0164】
得られる発光装置を照明装置に用いる場合には、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:CeCa(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Euが好ましい。
【0165】
また、得られる発光装置を画像表示装置に用いる場合には、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0166】
[1−3−4]黄色蛍光体
黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0167】
このような黄色蛍光体として利用できる蛍光体を下表に示す。
【0168】
【表5】

以上の中でも、黄色蛍光体としては、YAl12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr)Si:Euが好ましい。
【0169】
[1−3−5]その他の蛍光体
蛍光体としては、上述したもの以外の蛍光体を含有させることも可能である。例えば、導光層自体をイオン状の蛍光物質や有機・無機の蛍光成分を均一・透明に溶解・分散させた蛍光性樹脂で形成することもできる。
【0170】
[1−3−6]蛍光体の粒径
蛍光体の粒径は特に制限はないが、中央粒径(D50)で、通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲にある場合は、蛍光体含有層において、光源から伝送された光が充分に散乱される。また、光源から伝達された光が充分に蛍光体粒子に吸収されるため、波長変換が高効率に行なわれると共に、蛍光体から発せられる光が全方向に照射される。これにより、複数種類の蛍光体からの一次光を混色して所望の色(例えば、白色)にすることができると共に、均一な色と照度が得られる。一方、蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲より大きい場合は、蛍光体が蛍光体含有層の空間を充分に埋めることができないため、光源から伝達された光が充分に蛍光体に吸収されない可能性がある。また、蛍光体の中央粒径(D50)が、上記範囲より小さい場合は、蛍光体の発光効率が低下するため、照度が低下する可能性がある。
【0171】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有層での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0172】
なお、中央粒径(D50)および粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から求めることが出来る。重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
【0173】
〔重量基準粒度分布曲線の測定方法〕
(1)温度25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールなどの溶媒に蛍光体を分散させる。
(2)レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−300)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて粒度分布を測定する。
(3)測定された重量基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を中央粒径D50と表記する。また、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDが小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0174】
また、蛍光体粒子の形状も、例えば、硬化性材料の流動性等、蛍光体含有層の形成に影響を与えない限り、任意である。
【0175】
[1−3−6]蛍光体の表面処理
蛍光体は、耐水性を高める目的で、または蛍光体含有層中で蛍光体の不要な凝集を防ぐ目的で、表面処理が行なわれていてもよい。かかる表面処理の例としては、特開2002−223008号公報に記載の有機材料、無機材料、ガラス材料などを用いた表面処理、特開2000−96045号公報等に記載の金属リン酸塩による被覆処理、金属酸化物による被覆処理、シリカコート等の公知の表面処理などが挙げられる。
【0176】
表面処理の具体例を挙げると、例えば蛍光体の表面に上記金属リン酸塩を被覆させるには、以下の(i)〜(iii)の表面処理を行なう。
(i)所定量のリン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどの水溶性のリン酸塩と、塩化カルシウム、硫酸ストロンチウム、塩化マンガン、硝酸亜鉛等のアルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の水溶性の金属塩化合物とを蛍光体懸濁液中に混合し、攪拌する。
(ii)アルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の金属のリン酸塩を懸濁液中で生成させると共に、生成したこれらの金属リン酸塩を蛍光体表面に沈積させる。
(iii)水分を除去する。
【0177】
また、表面処理の他の例のうち好適な例としてシリカコートが挙げられる。シリカコートには、水ガラスを中和してSiO2を析出させる方法、アルコキシシランを加水分解したものを表面処理する方法(例えば、特開平3−231987号公報)等があり、分散性を高める点においてはアルコキシシランを加水分解したものを表面処理する方法が好ましい。
【0178】
[1−3−7]蛍光体の混合方法
蛍光体粒子を硬化性材料に含有させる際の混合方法は特に制限されない。例えば、蛍光体粒子の分散状態が良好な場合であれば、上述の硬化性材料に後混合するだけでよい。即ち、硬化性材料と蛍光体とを混合し、この蛍光体を含有する硬化性材料を用意して、この蛍光体を含有する硬化性材料を塗設して層を作製すればよい。また、例えばアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合を硬化性材料として用いる場合、その硬化性材料中で蛍光体粒子の凝集が起こりやすいのであれば、加水分解前の原料化合物を含む反応用溶液(以下適宜「加水分解前溶液」という。)に蛍光体粒子を前もって混合し、蛍光体粒子の存在下で加水分解・重縮合を行なうと、蛍光体粒子の表面が一部シランカップリング処理され、蛍光体粒子の分散状態が改善される。
【0179】
なお、蛍光体の中には加水分解性のものもあるが、上記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用いた場合には、塗布前の流体状態において、水分はシラノール体として潜在的に存在し、遊離の水分はほとんど存在しないので、そのような蛍光体でも加水分解してしまうことなく使用することが可能である。また、加水分解・重縮合後の硬化性材料を脱水・脱アルコール処理を行なってから使用すれば、そのような蛍光体との併用が容易となる利点もある。
【0180】
また、上記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用い、さらに、蛍光体粒子や無機粒子(後述する)を硬化性材料に含有させる場合には、粒子表面に分散性改善のため有機配位子による修飾を行なうことも可能である。他の付加型シリコーン樹脂は、このような有機配位子により硬化阻害を受けやすく、このような表面処理を行なった粒子を混合・硬化することができない場合がある。これは、付加反応型シリコーン樹脂に使用されている白金系の硬化触媒が、これらの有機配位子と強い相互作用を持ち、ヒドロシリル化の能力を失い、硬化不良を起こすためである。このような被毒物質としてはN、P、S等を含む有機化合物の他、Sn、Pb、Hg、Bi、As等の重金属のイオン性化合物、アセチレン基等、多重結合を含む有機化合物(フラックス、アミン類、塩ビ、硫黄加硫ゴム)などが挙げられる。これに対し、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物は、これらの被毒物質による硬化阻害を起こしにくい縮合型の硬化機構によるものである。このため、上記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物は、有機配位子により表面改質した蛍光体粒子や無機粒子、さらには錯体蛍光体などの蛍光成分との混合使用の自由度が大きく、蛍光体バインダや高屈折率ナノ粒子導入透明材料として優れた特徴を備えるものである。
【0181】
[1−3−8]蛍光体の含有率
硬化性材料中における蛍光体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、蛍光体含有層中の蛍光体総量として、通常15重量%以上、好ましくは18重量%以上、より好ましくは20重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは28重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。また、流体状の硬化性材料における蛍光体の含有率は、蛍光体含有層における蛍光体の含有率が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化しない場合は硬化性材料における蛍光体の含有率は蛍光体含有層における蛍光体の含有率と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料における蛍光体の含有率が蛍光体含有層における蛍光体の含有率と同様になるようにすればよい。なお、蛍光体含有層だけでなく導光層も蛍光体を含有する場合は、上述の蛍光体含有率は、封止部全体における平均蛍光体含有率の値である。
【0182】
蛍光体含有層の中の蛍光体含有率や濃度分布は、仕込みより計算できるほか、蛍光体層硬化物を化学溶解して蛍光体に特有な元素をICP分析したり、硬化物の断面を作製し、写真撮影後画像処理をおこなったりして求めることができる。以下に、画像処理による濃度分布を求める例を示す。
(1)LEDより蛍光体層を剥がし取り、カッターナイフなどで切断して深さ方向の観察が出来る断面を作製する。
(2)蛍光体層断面にブラックライトを照射し、蛍光体を各色に発光させた状態で写真を撮影する。
(3)断面写真を画像処理ソフトで処理し、RGB成分ごとに画像を分解して各蛍光体を強調した画像を取得し、蛍光体粒子の個数をカウントする。
(4)深さ方向の濃度分布を求める。
【0183】
本発明では、光源から伝送される光を全て蛍光体発光色に変換して所望の発光色を得るため、光源から伝送される光の発光色と蛍光体の発光色とを混色して所望の発光色を得る場合より高濃度の蛍光体含有率が好ましい。また、本発明では上向き配光割合が高く高出力の発光素子を用いるので、横向き配光割合の多い小型発光素子を多連装して高出力とした場合より発光素子直上部の蛍光体層には導光層を通して高密度の励起光が照射される。この際の励起光抜けを抑制するため本発明の蛍光体層の蛍光体含有率は横向き配光割合の多い小型発光素子多連装の場合より高いことが好ましい。蛍光体含有率が上記の範囲より多いと塗布性能が悪化したり、光学的な干渉作用により蛍光体の利用効率が低くなり、輝度が低くなったりする可能性がある。また、蛍光体含有率が上記の範囲より少ないと、蛍光体による波長変換が不十分となり、目的とする発光色を得られなくなる可能性がある。
【0184】
ただし、前記の蛍光体の含有率は、特に白色の光を得る場合に好適なものである。したがって、具体的な蛍光体含有率は目的色、蛍光体の発光効率、混色形式、蛍光体比重、塗布膜厚、光学部材の形状により多様であり、この限りではない。
【0185】
[1−3A]蛍光体含有層の層構造
蛍光体含有層は、さらに、青色蛍光体を含有することによって青色に発光する蛍光層(第1の蛍光層)と、青色蛍光体以外の蛍光体(すなわち、黄色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体の少なくとも1種)を含有することによって青色以外の色に発光する蛍光層(第2の蛍光層)と、の2層構造とすることもできる。青色蛍光体には、紫外から近紫外領域の光によって励起される蛍光体が用いられる。青色蛍光体以外の蛍光体には、青色光によって励起される蛍光体、または紫外から近紫外の領域の光によって励起される蛍光体が用いられる。
【0186】
このように、蛍光体含有層を第1の蛍光層および第2の蛍光層の2層構造とすることで、半導体発光素子側からより離れた蛍光層に含有される蛍光体の劣化をより抑制することができる。
【0187】
半導体発光素子側からの第1の蛍光層および第2の蛍光層の積層順は、第2の蛍光層が含有する蛍光体がどの波長領域で励起されるかに応じて適宜定めることができる。
【0188】
第2の蛍光層に含有される蛍光体が青色光によって励起される場合は、第1の蛍光層および第2の蛍光層をこの順番に積層することが好ましい。これにより、第2の蛍光層に含有される蛍光体として、従来の青色光によって励起されて発光し青色光と混色することによって白色光を取り出す発光装置に用いられていた蛍光体を用いることができる。このような発光装置は、従来公知の青色発光素子の発光色と青励起の黄色蛍光体、もしくは青励起の赤・緑蛍光体の発光色を組み合わせて白色とする発光装置と比較して、発光装置の温度環境による色ずれが少なく安定した色度の白色光を提供することができる。これは青色発光素子の温度による発光波長や輝度の変化が大きく、発光素子からの透過光を直接利用し白色を得る発光装置にもこの影響が出るためである。本発明の発光装置、特に実施例に記載の発光装置は赤・緑・青の光は全て温度により発光波長変化しにくい蛍光体由来であり、温度変化により励起光の波長や輝度が多少変化しても色ずれが起きにくい。
【0189】
一方、第2の蛍光層に含有される蛍光体が紫外から近紫外光によって励起される場合は、第2の蛍光層および第1の蛍光層をこの順番に積層することが好ましい。このように、第1および第2の蛍光層に含有される蛍光体は紫外から近紫外領域の光で励起されるものとし、かつ上記の順番で第1の蛍光層および第2の蛍光層を積層することで、発光素子から発せられる励起光の利用効率を向上させることができる。
【0190】
紫外から近紫外光により励起されて緑色や赤色光を発する蛍光体は、通常青色領域にも吸収端を有し、紫外〜近紫外光により励起された青色光蛍光体の発する青色光を吸収してしまう。このため、青色蛍光体を発光素子の直近に配置して、白色光を発する半導体発光装置を構成すると、青色光を緑色や赤色蛍光体が吸収し青色光成分が減少し、青色の蛍光体を余分に配合する必要が生じ、蛍光体の利用効率が低下する。そこで、青色蛍光体を発光素子から最も離れた位置に配置することにより、青色光の吸収が起きにくく、さらに青色蛍光体使用量も減るため、得られる白色光の輝度が高くなる。
【0191】
蛍光体含有層を2層構造とする場合、半導体発光素子に近い側の蛍光層に含有される蛍光体の粒径を、半導体発光素子から離れた側の蛍光層に含有される蛍光体の粒径よりも小さくすることが好ましい。このように蛍光体の粒径を調整することで、半導体発光素子から発せられた光を効率よく各蛍光層へ伝達することができる。その結果、各蛍光層に含有される蛍光体を効率よく励起させることができ、半導体発光装置から取り出される光の輝度をより向上させることができる。なお、蛍光体の粒径は、中央粒径(D50)で規定することができる。
【0192】
以下、各蛍光層に含有される蛍光体についてより詳しく説明する。
【0193】
[1−3A−1]第1の蛍光層
第1の蛍光層に含有される青色蛍光体を励起可能な具体的な波長範囲は、通常350nm以上、好ましくは380nm以上、また、通常430nm以下、好ましくは420nm以下の波長範囲である。励起可能な波長が、上記範囲より長い場合は発光装置や照明装置が暗くなる虞があり、また、短い場合は蛍光体が励起し難くなる虞がある。
【0194】
かかる蛍光体としては、前述の[1−3−2]項に記載の青色蛍光体を挙げることができる。好ましくは、酸化物系蛍光体、塩化物系蛍光体等の青色系蛍光体を用いることができる。さらに好ましくは、Eu付活アルミン酸塩蛍光体、Eu付活シリケート系蛍光体、Eu付活アパタイト系蛍光体等が好適に用いられる。また、六方晶系の結晶構造を持つものが好適に用いられる。
【0195】
特に好ましい蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、M(Si,Al)12(N,O)16等が挙げられるが、特に(Ba,Sr)MgAl1017:Euが好ましい。
【0196】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0197】
[1−3A−2]第2の蛍光層(青色光励起)
第2の蛍光層が青色光で励起される蛍光体を含有する場合、その蛍光体を励起可能な具体的な波長範囲は、通常430nm以上、好ましくは440nm以上であり、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、特に好ましくは460nm以下の波長範囲である。励起可能な波長が、上記範囲より長い場合は発光装置や照明装置が暗くなる虞があり、また、短い場合は蛍光体が励起し難くなる虞がある。
【0198】
かかる蛍光体としては、前述の[1−3−1]項、[1−3−3]項および[1−3−4]項に記載の各色蛍光体を挙げることができる。
【0199】
[1−3A−3]第2の蛍光層(紫外光励起)
第2の蛍光層が、紫外から近紫外領域の光で励起される蛍光体を含む場合、その蛍光体を励起可能な具体的な波長範囲は、通常350nm以上、好ましくは380nm以上、また、通常430nm以下、好ましくは420nm以下の波長範囲である。励起可能な波長が、上記範囲より長い場合は発光装置や照明装置が暗くなる虞があり、また、短い場合は蛍光体が励起し難くなる虞がある。
【0200】
かかる蛍光体としては、前述の[1−3−1]項、[1−3−3]項および[1−3−4]項に記載の各色蛍光体を挙げることができる。
【0201】
上記の中で好ましい緑色蛍光体としては、例えば、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体等の緑色系蛍光体を挙げることができる。さらに好ましくは、Eu付活シリケート系蛍光体、Ce付活ガーネット系蛍光体、Eu,Mn共付活アルミン酸塩蛍光体、Eu付活βサイアロン系蛍光体、Ce付活酸化スカンジウム系蛍光体、Eu付活オキシナイトライド系蛍光体等が好適に用いられる。また、立方晶系、斜方晶系または六方晶系の結晶構造を持つものが好適に用いられる。
【0202】
特に好ましい緑色蛍光体としては、例えば、Y(Al,Ga)12:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、Mgを添加したCaScSi12:Ce、(Ca,Sr)Sc:Ce、(Ca,Mg,Zn,Sr,Ba)Si:Eu、Si6−zAl8−z:Eu等を挙げることができる。
【0203】
特に、本発明の半導体発光装置に構造に適合し、蛍光体の劣化抑制の効果が高いという点で、以下の蛍光体を好ましいものとして挙げることができる。
【0204】
(i)(M1−γ)MIIγαSiOβ:Euで表されるEu付活シリケート系蛍光体
(ここで、Mは、Ba、Ca、Sr、Zn及びMgからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、MIIは、2価及び3価の原子価を取りうる1種以上の金属元素を表わす。但し、MII全体に対する2価の元素のモル比が0.5以上、1以下である。γ、α及びβは各々、0.01≦γ<0.3、1.5≦α≦2.5、及び、3.5≦β≦4.5を満たす数を表わす。)その中でも、(Ba,Sr)SiO:Euが特に好ましい。
【0205】
(ii)M1xBayM2zuvwで表される蛍光体
(ここで、M1はCr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の付活元素を示し、M2はSr、Ca、Mg及びZnから選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、Lは周期律表第4族又は14族に属する金属元素から選ばれる金属元素を示し、x、y、z、u、v及びwは、それぞれ以下の範囲の数値である。
0.00001≦x≦3
0≦y≦2.99999
2.6≦x+y+z≦3
0<u≦11
6<v≦25
0<w≦17)
【0206】
上記緑色蛍光体は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0207】
また、上記の中で好ましい赤色蛍光体としては、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体等の赤色系蛍光体を挙げることができる。さらに好ましくは、Eu付活シリコンナイトライド系蛍光体、Eu付活アルカリ土類金属硫化物系蛍光体、Eu付活αサイアロン系蛍光体、Eu付活希土類酸硫化物系蛍光体等が好適に用いられる。また、斜方晶系または六方晶系の結晶構造を持つものが好適に用いられる。
【0208】
特に好ましい蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca,Ba)Si:Eu、(Sr,Ca)S:Eu、LaS、MSi12−(m+n)Al(m+n)OnN16−n:Eu(ただし、MはCa、Sr及び/又はYを表し、0<p≦2、0<m≦6、0≦n≦3である。)等を挙げることができるが、特にMで表される蛍光体が好ましい。ここで、0.00001≦a≦0.15、a+b=1、0.5≦c≦1.5、0.5≦d≦1.5、2.5≦e≦3.5、0≦f≦0.5である。また、Mは付活元素であり、Cr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。Mは2価の金属元素であり、Mの50モル%以上がCa及び/又はSrであることが好ましい。Mは3価の金属元素であり、Mの50モル%以上がAlであることが発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましいが、Mの80モル%以上をAlとするのが好ましく、90モル%以上をAlとするのがより好ましく、Mの全てをAlとするのが最も好ましい。Mは、少なくともSiを含む4価の金属元素であり、Mの50モル%以上がSiであることが好ましい。その中でも(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Euが特に好ましい。
【0209】
上記赤色蛍光体は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0210】
[1−3B]各色蛍光体の好ましい組み合わせ
以上のように、蛍光体含有層は、単層構造の場合と2層構造の場合があり、さらに2層構造の場合には各層に異なる蛍光体を含有する。それぞれの場合に、各色蛍光体の好ましい組み合わせがある。以下に、各色蛍光体の好ましい組み合わせを例示する。
【0211】
[1−3B−1]単層構造の場合
蛍光体含有層が単層構造の場合は、紫外から近紫外領域の光で励起される、蛍光体含有層は青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体を含有することが好ましい。表6に、具体的な各色蛍光体の好ましい組み合わせを示す。
【0212】
【表6】

表6では3色の蛍光体のみを含有する例を示したが、組み合わせ例1−1から1−6のそれぞれに、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mnで表される深赤色蛍光体を加えて4色の蛍光体の組み合わせとすることも好ましい。
【0213】
導光層と蛍光体含有層とを一工程にて一体不可分に形成した場合にも、両層に含まれる蛍光体としては単層構造と同様に、紫外から近紫外領域の光で励起される青色蛍光体、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を含有することが好ましい。
【0214】
このとき蛍光体の含有率は発光素子側から蛍光体含有層の最外表面へ連続的に変化することが好ましく、導光層および蛍光体含有層は発光色の異なる複数種の蛍光体を含有し、これら複数種の蛍光体のうち少なくとも1種(第一の蛍光体)は、発光素子の上面から0.15mm以下の厚さの範囲に実質的に含有されず0.15mmよりも離れた領域に発光素子から離れるほど含有率が高くなっており、その他の蛍光体(第二の蛍光体)は、導光層、蛍光体層の各部において略同じ濃度で含有されることが好ましい。
【0215】
通常、第一の蛍光体としては、含有される複数種の蛍光体のうち発光素子からの熱、光及び電界などの影響を受けて最も分解するなどダメージを受けやすく、輝度低下しやすい蛍光体を選定することが好ましい。また、第二の蛍光体としては熱、光、電界などに対して比較的安定な蛍光体、あるいは外界の湿度に影響を受けやすい蛍光体を選定することが好ましい。このような蛍光体分布および層構成とすることにより、熱、光、電界により劣化しやすい蛍光体のみを発光素子より遠ざけ、劣化しにくい蛍光体は均一に分散させることにより、長期連続点灯における輝度の維持率が高く、2層を各層ずつ積層形成する場合に生じやすい色むらの発生を軽減することが出来る。
【0216】
このような蛍光体分布は、例えば、(i)蛍光体を含有した封止部材の硬化前の形成液を発光素子に塗布した後、(ii)塗布面を下にして第一の蛍光体を沈降させた状態で封止部材の形成液を硬化させることによって形成することができる。この場合、封止部材の形成液の硬化中に第一の蛍光体は沈降し、第二の蛍光体は沈降しない程度に、封止部材の形成液のチキソ性や粘度を制御することにより、蛍光体の分布状況に差をつけることが出来る。また、第一の蛍光体の平均粒径や比重を第二の蛍光体より大きくしても同様の効果を得ることが出来る。
【0217】
全ての種類の蛍光体が熱・光・電界などによりダメージを受け、輝度低下しやすい場合には、全ての種類の蛍光体が第一の蛍光体としてチップ上面から0.15mm以上離れた領域に含有されることが好ましい。
【0218】
[1−3B−2]2層構造(第2の蛍光層が青色光励起)の場合
この層構造において白色光を取り出す場合、第2の蛍光層が含有する蛍光体の組み合わせとして好ましいのは、黄色蛍光体および赤色蛍光体の組み合わせ、または緑色蛍光体および赤色蛍光体の組み合わせである。
【0219】
表7に、第2の蛍光層が黄色蛍光体および赤色蛍光体を含有する場合の、蛍光体含有層における具体的な各色蛍光体の好ましい組み合わせ例を示す。また、表8に、第2の蛍光層が緑色蛍光体および赤色蛍光体を含有する場合の、蛍光体含有層における具体的な各色蛍光体の好ましい組み合わせ例を示す。なお、表7および表8に示すのは、第1の蛍光層および第2の蛍光層をこの順番で積層した場合の好ましい組み合わせ例である。
【0220】
【表7】

【0221】
【表8】

表7では3色の蛍光体のみを含有する例を示したが、組み合わせ例2B−1から2B−5のそれぞれに、(Ca,Mg)AlSiNi:Eu、またはCaAlSiNi:Euで表される深赤色蛍光体を加えて4色の蛍光体の組み合わせとすることも好ましい。
【0222】
[1−3B−3]2層構造(第2の蛍光層が紫外から近紫外光励起)の場合
この層構造において白色光を取り出す場合、第2の蛍光層が含有する蛍光体の組み合わせとして好ましいのは、緑色蛍光体および赤色蛍光体の組み合わせである。表9に、その場合の蛍光体含有層における具体的な各色蛍光体の好ましい組み合わせ例を示す。なお、表9に示すのは、第2の蛍光層および第1の蛍光層をこの順番で積層した場合の好ましい組み合わせ例である。
【0223】
【表9】

表9では3色の蛍光体のみを含有する例を示したが、組み合わせ例3−1から3−6のそれぞれに、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mnで表される深赤色蛍光体を加えて4色の蛍光体の組み合わせとすることも好ましい。
【0224】
以上の好ましい組み合わせ例で述べた、「深赤色蛍光体」とは、波長630nm以上700nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する蛍光体である。
【0225】
また、本実施形態において、導光層の上に蛍光層を3層以上重ねた積層構造を有する蛍光体含有層を形成しても良い。
【0226】
積層構造における各々の蛍光層はそれぞれ赤色、緑色、青色蛍光体を含有する蛍光層から形成されている。しかして、各々蛍光層の各色蛍光体が励起されてそれぞれが固有の発光を呈し、その合成光として、例えば白色光が得られることになる。
【0227】
ここで、蛍光層の積層の順序は、特に限定されず、蛍光体の特性、その他の要因を検討して、適宜配置される。例えば、発光素子に近い程、短波長の蛍光色を有するように配置すれば、励起光、蛍光体の発光の利用効率の観点からは好ましい。積層の順序を、発光素子に近い程、含有する蛍光体の平均粒子径が小さくなるように配置すれば、励起光を効率的に散乱させる効果を期待する観点からは好ましい。蛍光体の劣化防止の観点からは、以下の配置とすることが好ましい。
(i)光劣化しやすい蛍光体を発光素子に最も遠くなるように上面の層に配置する、
(ii)水分により劣化しやすい蛍光体を発光素子に最も近くなるように下面の層に配置する。これにより蛍光体を外気から遠ざけ、水分劣化を抑制する。
(iii)硫黄成分を含有する蛍光体を積層の中間に配置する。これにより外気の水分劣化を抑制し、発光素子の硫黄成分による黒変などを抑制する。
【0228】
[1−3C]特定層(導光層および蛍光体含有層)の作製方法
特定層を製造する方法は特に制限されない。したがって、本発明の半導体発光装置を構成する各層は、それぞれ、任意の方法により製造できる。通常は、液状の各層の材料(以下適宜、「形成液」という)を所望の部位に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を熱や光などによって硬化させて作製することができる。したがって、特定層は、例えば、液状の特定層の材料(以下適宜、「特定層形成液」という)を所望の部位に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を熱や光などによって硬化させて作製することができる。
【0229】
さらに、特定層を作製する際には、上述した好ましい特性を特定層により確実に備えさせるため、適宜、プライマー処理を行なうことが好ましい。一般に、下地層の上に上層を積層する際に、下地層に直接上層を積層する場合には、上層の自己接着性が不十分で剥離等が生じることがある。これを防止するため、必要に応じ、下地層と上層との両方に対して接着性を有する接着層を、下地層と上層との間に中間層として塗布することがある。このように接着性を有する中間層を下地層の上に塗布することをプライマー処理と呼び、その塗布液をプライマーという。このプライマー処理により、本来接着性が不十分な二層を簡便に密着性が高い状態で積層することができる。なお、極性基を含まない下地層にプライマーを塗布して極性基を含まない上層との密着性を向上させることも可能である。この場合、プライマー自身が界面の極性基と同様に働く。なお、プライマー処理により形成されるプライマー層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10μm以下、中でも5μm以下が好ましい。
【0230】
また、特定層又は当該特定層に接触する他の部材(例えばパッケージ表面や発光素子表面、電極表面など)に、表面処理を行なうようにしてもよい。そのような表面処理の例としては、例えばプライマーやシランカップリング剤を用いた密着改善層の形成、酸やアルカリなどの薬品を用いた化学的表面処理、プラズマ照射やイオン照射・電子線照射を用いた物理的表面処理、サンドブラストやエッチング・微粒子塗布などによる粗面化処理等が挙げられる。また、密着性改善のための表面処理としては、その他に例えば、特開平5−25300号公報、稲垣訓宏著「表面化学」Vol.18 No.9、pp21−26、黒崎和夫著「表面化学」Vol.19 No.2、pp44−51(1998)等に開示される公知の表面処理方法が挙げられる。さらに、オゾン処理を行なうことも可能である。
【0231】
[1−4]半導体発光装置の構造
以下に、本発明による半導体発光装置の好ましい構造例について説明する。
【0232】
図1に示す半導体発光装置10は、配線12が形成された実装基板11上に実装された半導体発光素子13と、半導体発光素子13を封止する封止部15とを有している。
【0233】
半導体発光素子13は、前述したとおり紫外から近紫外領域までの発光波長を有している発光ダイオードや半導体レーザダイオード等を使用することができる。封止部15は、半導体発光素子13を覆って実装基板11の上面から盛り上がった部分として形成されており、前述した導光層16および蛍光体含有層17を有する。導光層16は、半導体発光素子13を完全に覆って形成されており、封止部15による半導体発光素子13の実質的な封止機能は、導光層16が担っている。蛍光体含有層17は、導光層16を覆って形成されており、半導体発光素子13から発せられる光によって励起される、前述した青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体を含有している。
【0234】
導光層16の、半導体発光素子13の上面からの厚さ(高さ)は、蛍光体含有層17に含まれる蛍光体が半導体発光素子13から受ける影響を考慮して定めることができる。蛍光体と半導体発光素子13との距離が大きいほど蛍光体の劣化を抑制する効果は大きくなり、その観点から、半導体発光素子13の上面からの導光層16の厚さは、通常0.15mm以上、好ましくは0.18mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。一方、蛍光体と半導体発光素子13との距離が小さいほど、発光装置を小型化することが可能であり、その観点からは、半導体発光素子13の上面からの導光層16の厚さは、通常1cm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下である。
【0235】
蛍光体含有層17の厚さは、厚すぎると蛍光体の利用効率の低下を招き、逆に薄すぎると本発明による効果が得られるのに十分な蛍光体を含有することができないおそれがある。よって蛍光体含有層17の厚さは、上限が、通常1mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下であり、下限が、通常0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上である。本発明では、励起光抜けを抑制するため、蛍光体層が厚い場合には蛍光体含有率を前記蛍光体含有率の好ましい範囲の下限近くとし、蛍光体層が薄い場合には同好ましい範囲の上限近くとする。
【0236】
実装基板11は、絶縁層11aと、絶縁層11aの上面および下面を電気的に接続する配線11bとを有する。実装基板11は、絶縁性の基板であれば、例えばガラスエポキシ基板などの基板を利用できる。ただし、半導体発光素子13での発熱を効率よく放熱するためには高放熱基板が好ましく、例えばアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミック基板などを好適に用いることができる。
【0237】
半導体発光素子13の実装基板11への実装および電気的接続は、半導体発光素子13の電極位置に応じて様々な方法を採用することができる。例えば、電極が半導体発光素子13の上面に有る場合は、図1に示すように、半導体発光素子13を実装基板11に樹脂ペーストなどで実装接着し、配線11bと電極間を金線などのワイヤ14で接続することができる。また、半導体発光素子13の電極が上面及び下面に存在する場合は、配線11bの片側に導電性のペーストで実装接着した後、上側の電極と他の配線間とを金線などのワイヤで接続することができる。さらにまた、電極が下面にある場合は、サブマウントを用いて実装することもできるし、配線上に直接、半導体発光素子13の電極と配線11bとを電気的に接続することも可能である。
【0238】
図1に示す半導体発光装置1は、実装基板11上に半導体発光素子13を実装した後、半導体発光素子13を覆って実装基板11上に封止部15を形成することによって作製することができる。
【0239】
封止部15は、例えば、以下のようにして形成することができる。
【0240】
予め、導光層16および蛍光体含有層17用の型枠として、導光層16の外周形状と等しい形状の第1の包囲部材(不図示)および蛍光体含有層17の外周形状と等しい形状の第2の包囲部材(不図示)を用意する。
【0241】
これら包囲部材を用意したら、まず、第1の包囲部材を実装基板11の上面の半導体発光素子13を取り囲む位置に設置する。次いで、第1の包囲部材の内側に、導光層16を構成する硬化性材料を流し込み、流し込んだ硬化性材料を硬化させ、導光層16を形成する。導光層16の形成後、第1の包囲部材を実装基板11上から取り外し、第2の包囲部材を実装基板11の上面の導光層16を取り囲む位置に設置する。次いで、第2の包囲部材の内側に、蛍光体を混合分散させた硬化性材料を流し込み、これを硬化させることによって、蛍光体含有層17を形成する。最後に、第2の包囲部材を実装基板11上から取り外し、これによって封止部15が形成される。
【0242】
図1では、蛍光体含有層17が単層構造の例を示したが、図2に示す半導体発光装置10’のように、2つの蛍光層17a、17bを有する2層構造とすることもできる。この場合、各蛍光層17a、17bには、例えば前述した組み合わせで蛍光体が含有される。それ以外の構成は、図1に示した半導体発光装置10と同様である。図2に示す半導体発光装置10’は、図1に示した半導体発光装置10の製法を利用して作製することができる。
【0243】
図3に示す半導体発光装置20は、実装基板11の上面にリフレクタ24が配置され、さらに、封止部15がリフレクタ24の内側においてドーム状に形成されている点が、図1に示す半導体発光装置10と異なっている。その他の構成は図1に示したものと同様であるので、図1と同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0244】
リフレクタ24は、実装基板11の上面からの距離が遠ざかるに従って内径が大きくなるリング状に形成されており、半導体発光素子13および蛍光体含有層17から発せられた光の取り出し効率を向上させる。かかる効果を達成するため、リフレクタ24の内面の、実装基板11の上面との傾斜角は、通常35°以上、好ましくは40°以上であり、通常60°以下、好ましくは50°以下である。リフレクタ24の表面は、高反射部材で形成されるのが好ましく、例えば、樹脂を銀でメタライズしたものや金属など任意の材料で形成することができる。
【0245】
封止部15は、図1に示した例と同様、導光層16および蛍光体含有層17を有している。導光層16の表面形状はドーム状となっており、そのドーム状の導光層16の上に、一様な厚さで蛍光体含有層17が形成されることによって、蛍光体含有層17の表面もドーム状に形成されている。このように封止部15をドーム状に形成することで、半導体発光素子13から蛍光体含有層17の表面までの距離をほぼ一様にすることができる。そのことにより、半導体発光素子13から発せられた光は、蛍光体含有層17の全域にわたってほぼ均一に作用し、半導体発光装置20から出射する光の色ムラをより効果的に抑制することができる。
【0246】
また、図3に示した半導体発光装置20では、リフレクタ24が半導体発光素子13を取り囲んで実装基板11上に配置されており、リフレクタ24は、光の取り出し効率を向上させる役割の他に、封止部15のハウジングも兼ねている。よって、封止部15を形成する際、図1に示した例の場合のように包囲部材を用意する必要はない。
【0247】
なお、図3に示した形態においても、図2と同様、図4に示す半導体発光装置20’のように、蛍光体含有層17を2つの蛍光層17a、17bを有する2層構造とすることもできる。
【0248】
図5に示す半導体発光装置28は、導光層16の表面形状、即ち導光層16と蛍光体含有層17との界面が、半導体発光素子13の上面と平行な平面である点、および蛍光体含有層17の表面形状も、半導体発光素子13の上面と平行な平面である点が図3に示す半導体発光装置20と異なっている。また、図6に示す半導体発光装置28’は、導光層16の表面形状が、半導体発光素子13の上面と平行な凹凸面である点が図5に示す半導体発光装置28と異なっている。その他の構成は図3に示したものと同様であるので、図3と同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0249】
通常、導光層16を形成し、その上に蛍光体含有層17を形成する場合は、図7に示すように、導光層16を形成する硬化性材料の表面張力により、導光層16の表面が発光観測面から見て窪んだ凹面状となる。本発明の半導体発光装置はかかる形状でも目的の効果が得られるが、導光層16と蛍光体含有層17との界面が図5または図6の形状を有することにより、発光素子から放出される光束の強い部分に蛍光体を集め、より蛍光体の利用効率を高めることが出来る利点がある。チップが上面発光型の場合には上層の中央付近に励起光が集まるため曲率が大きいほうが好ましい。上面発光型の複数のチップを有する場合には各々のチップの直上にそれぞれ凹球面を設けても良い。また、本発明において、かかる形状とするためには、導光層形成液の粘度やチクソ性、極性、硬化速度、硬化温度・時間を制御するなどの方法を用いることが出来る。粘度やチクソ性を高くすれば凹球面の曲率が小さくなり平面に近くなる。また、粘度やチクソ性を低くしたり、硬化触媒の種類・量、硬化機構を制御し硬化反応が遅くなるようにしたりすれば、硬化時の高温下で硬化前に形成液の粘度が一時的に下がり、表面張力の働きが大きくなるため凹部の曲率が大きくなる。本発明において、かかる形状とするためには、以下の方法を採用することができる。
【0250】
i)導光層16を形成する硬化性材料の粘度を低くする。具体的には、塗布時の粘度が通常200mPa・s以上、好ましくは300mPa・s以上であり、通常3000mPa・s以下、好ましくは2000mPa・s以下である。
【0251】
ii)導光層16の蛍光体含有層17との界面の高さにおいて、図8(a)〜(c)に示すように、リフレクタ24の内面に、導光層16を形成する硬化性材料の表面張力の効果を抑制する凹部24bおよび/または凸部24aを設ける。
【0252】
また、図1〜図7に示した半導体発光装置において、封止部15をさらに可視光透光性樹脂(不図示)でドーム状に覆って、レンズ機能を持たせてもよい。可視光透光性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができ、それらの中でも特に硬質シリコーン樹脂が好ましい。可視光透光性樹脂には、必要に応じて粘度調整剤、拡散剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0253】
本発明による半導体発光装置はリード型であってもよい。図9に、本発明によるリード型の半導体発光装置30の模式的断面図を示す。
【0254】
図9に示す半導体発光装置30は、一対のリード31、32と、リード31、32に電気的に接続された半導体発光素子13と、半導体発光素子13を封止する封止部15と、リード31、32の末端部を突出させてリード31、32および封止部15を覆って形成された可視光透光性樹脂33とを有する。
【0255】
一方のリード31は、先端部に凹部を有し、この凹部内に半導体発光素子13が配置されている。半導体発光素子13と他方のリード32との電気的接続は、図9に示す例ではワイヤ14によって行なわれているが、半導体発光素子13での電極配置等に応じて種々の接続構造を採用できることは上述したとおりである。また、可視光透光性樹脂33には上述したものと同様のものを用いることができる。
【0256】
図9では、封止部15が導光層16および単層の蛍光体含有層17を有する例を示したが、図4に示した構成と同様、蛍光体含有層を、2つの蛍光層を有する2層構造としてもよい。
【0257】
図10に示す半導体発光装置40は、封止部15が見かけ上は単層構造で形成されている。封止部15は、発光波長ピークの異なる複数種の蛍光体(図では蛍光体の粒子を模式的に黒丸で示している)を含有しており、その蛍光体の分布によって、機能上は、導光層と蛍光体含有層とに区分される。導光層は、半導体発光素子13に近い側で実質的に半導体発光素子13を封止している領域であり、複数種の蛍光体のうち少なくとも1種を実質的に含有していない。蛍光体含有層は、導光層を覆っている残りの領域であり、複数種の蛍光体を含有している。このような構造は、前述したように、封止部15を硬化させる過程において半導体発光装置40を上下逆向きとし、その姿勢で蛍光体を沈降させることで形成することができる。
【0258】
[2]照明装置、および画像表示装置
本発明の半導体発光装置は、使用する蛍光体の種類、量を適宜定めることにより任意の色に発光させることが可能である。半導体発光装置を照明装置に用いる場合などは、白色光を発する半導体発光装置が有用である。本発明の半導体発光装置は、発光効率が通常20lm/W以上、好ましくは22lm/W以上、より好ましくは25lm/W以上であり、特に好ましくは28lm/W以上である。また、平均演色評価指数Raが80以上、好ましくは85以上、より好ましくは88以上である。
【0259】
平均演色評価数Raは、JISで定められている基準光で見たときに、どれだけ色ずれがあるかを数量的にとらえたものであり、演色評価用カラーチャートの演色評価数の平均値で表される。色ずれが小さいほどRaの値は大きく、100に近いほど演色性がよい。平均演色評価指数Raは、JIS Z 8726に準拠して算出される。
【0260】
また、発光効率は、半導体発光装置の全光束(lm)を同装置の消費電力(W)で除することにより算出する。
【0261】
まず、測定対象となる半導体発光装置を、測定精度が保たれるように、積分球内部に面した半導体発光装置以外の部分(配線基板やヒートシンクなど)は白色など反射効率の高い色とし、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えばオーシャンオプティクス株式会社製「USB2000」等が挙げられる。積分球を用いるのは、半導体発光装置から出射した全方向の光を計測し積分する、すなわち、計測されずに測定系外に漏れる光をなくすためである。
【0262】
次に、この半導体発光装置を点灯し、その発光スペクトル及び全光束(lm)を測定する。測定されたスペクトルは、通常蛍光体層から漏れ出た励起用の半導体発光素子からの光(以下、単に「励起光」と記す。)と、蛍光体により波長変換された光が重なって観測される。
【0263】
全光束(lm)は発光スペクトルの観測された全波長領域において各波長ごとの光束を積分することにより求めることが出来る。また、消費電力(W)は、半導体発光装置に流れる電流(A)と電圧(V)の積をとることにより求めることが出来る。
【0264】
そして、上記のようにして求めた全光束(lm)を消費電力(W)で除することにより、本発明で定義される発光効率を求めることが出来る。
【0265】
本発明の半導体発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。本発明の半導体発光装置の用途の具体例として、例えば、照明ランプや薄型照明などといった種々の照明装置用の光源、および液晶ディスプレイなどの画像表示装置用の光源(バックライトおよびフロントライトなど)が挙げられる。画像表示装置は、光源からの光の照射を受ける、液晶パネルなどの光シャッタを備えた表示パネルを有する。画像表示装置がカラー画像を表示するものである場合、本発明の半導体発光装置をカラーフィルタと併用してもよい。また、本発明の半導体発光装置を照明装置や画像表示装置の光源として用いる場合、半導体発光装置を単独で用いてもよいし複数の半導体発光装置を組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0266】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に詳説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0267】
[実施例及び比較例]
半導体発光素子、封止部材、蛍光体として以下のものを用いて、以下の発光装置を作製し、その評価を行った。
【0268】
[1]合成例1(封止材の製造)
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を385g、メチルトリメトキシシランを10.28g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末0.791gを、攪拌翼と、分留管、ジムロートコンデンサ及びリービッヒコンデンサとを取り付けた500ml三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒の粗大粒子が溶解するまで攪拌した。この後、反応液を100℃まで昇温して触媒を完全溶解し、100℃全還流下で30分間500rpmで攪拌しつつ初期加水分解を行った。
【0269】
続いて留出をリービッヒコンデンサ側に接続し、窒素をSV20で液中に吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を窒素に随伴させて留去しつつ100℃、500rpmにて1時間攪拌した。窒素をSV20で液中に吹き込みながらさらに130℃に昇温、保持しつつ5.5時間重合反応を継続し、粘度389mPa・sの反応液を得た。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをいう。
【0270】
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、粘度584mPa・sの無溶剤の封止剤液(半導体デバイス用部材形成液)を得た(これを適宜「封止部材形成液A」という)。
【0271】
[2]半導体発光装置の作製
発光素子としてクリー社製の900μm角チップ「C405−XB900」を用い、それをAu−Sn共晶半田でサブマウント上に固着後、Au−Sn共晶半田にてサブマウントを、エムシーオー社製9mmφメタルパッケージ「Metal LED 3PIN No Cup」の中央に固着させた。このパッケージは銅素材表面に下地層としてニッケルメッキ、最外表面層に銀メッキが施してある。ピン素材はコバールであり、3本のピンのうち1本は直接パッケージに接続され残りの2本は低融点ガラスによりハーメチックシールされパッケージから絶縁された状態になっている。チップ上の電極から金線にてメタルパッケージ上のハーメチックシールされたピンのうち1本にワイヤボンディングした。ハーメチックシールされた残り1本のピンは未使用とした。
【0272】
[2−1]蛍光体含有層形成液の製造
前述の合成例1で合成した封止剤液を使用し下記表10の配合比にて封止剤液及び蛍光体を計量した後、シンキー社製攪拌脱泡装置「泡取り練太郎AR−100」にて混合し、蛍光体含有層形成液Aを得た。また、封止剤液として信越化学工業株式会社製シリコーン樹脂LPS2410を使用し、アエロジルRX200の使用量を0.05gとした他は同様にして蛍光体含有層形成液Bを得た。
【0273】
【表10】

【0274】
[2−2]実施例1の半導体発光装置の作製
手動ピペットを用いて合成例1で得られた封止剤液20μlを前出の半導体発光装置に注液し、減圧できるデシケーターボックス中で25℃、1kPaの条件下5分保持して注液時に生じた巻き込み気泡や溶存空気・水分を除去した。この後90℃で2時間次いで110℃で1時間、150℃で3時間保持して形成液を硬化させ、第一層目の封止を行なった。
【0275】
次いで手動ピペットを用いて合成例1で得られた封止剤液より調液した蛍光体含有層形成液A 30μlを前出の半導体発光装置に注液し、90℃で2時間、次いで110℃で1時間、150℃で3時間保持して蛍光体層を硬化させ、連続点灯試験用の半導体発光装置(白色LED)を得た。
【0276】
[2−3]実施例2の半導体発光装置の作製
手動ピペットを用いて封止剤液として信越化学工業株式会社製2液型シリコーン樹脂KE1051Jの主剤と硬化剤をシンキー社製攪拌脱泡装置「泡とり練太郎AR−100」にて混合・脱泡した後、その20μlを前出の半導体発光装置に注液し、減圧できるデシケーターボックス中で25℃、1kPaの条件下5分保持して注液時に生じた巻き込み気泡や溶存空気、水分を除去した。この後大気圧下25℃、湿度50%にて24時間保持して形成液を硬化させ、第一層目の封止を行なった。なお、この硬化物は透明ゲル状であった。
【0277】
次いで手動ピペットを用いて信越化学工業株式会社製2液型シリコーン樹脂LPS2410より調液した蛍光体含有層形成液B 30μlを前出の半導体発光装置に注液し、150℃で1時間保持して蛍光体層を硬化させ、連続点灯試験用の半導体発光装置(白色LED)を得た。
【0278】
[2−4]実施例3の蛍光体含有層形成液の製造
赤色蛍光体として粒径約10μmのCASON(CaAlSi(ON)3:Eu)、及び上記表10に示す緑色、青色蛍光体を以下の組成比で均一に混合し、混合粉末を得た。次いで蛍光体混合粉末と上記表10に示すチクソ剤を前述の合成例1で合成した封止部材形成液に以下の組成で添加した後、シンキー社製攪拌脱泡装置「泡取り練太郎AR−100」にて混合し、蛍光体含有層形成液を得た。各成分の組成は下記のとおりである。
<蛍光体の混合組成比>
赤色蛍光体:37.9重量%
緑色蛍光体:8.6重量%
青色蛍光体:53.3重量%
<実施例2の蛍光体含有層形成液の原料組成比>
合成例1の封止部材形成液 :1−X重量%
日本アエロジル社製
疎水性ヒュームドシリカ アエロジルRX200 : X重量%
蛍光体混合粉末 : 12重量%
【0279】
[2−5]実施例3の半導体発光装置の作製
ガラス板に両面テープを貼り、この両面テープによって前出の半導体発光装置を貼り付けた。次いでディスペンサを用いて、[2−4]で得られた蛍光体含有層形成40μL(カップ部分体積40μLに対して全量)を半導体発光装置に注液し、減圧できるデシケーターボックス中で25℃、1kPaの条件下で5分保持して、注液時に生じた巻き込み気泡や溶存空気・水分を除去した。ガラス板をひっくり返し発光装置の開口部を下に向けた状態で室温にて4時間静置し、緑色蛍光体を沈降させた。その後150℃で3時間保持してこの蛍光体含有層形成液を硬化させ、実施例2の半導体発光装置を得た。
【0280】
この方法にて作製した蛍光体含有層の蛍光体濃度分布を観察したところ、いずれの蛍光体もチップ側から開口部に向けて高濃度になるような分布をもっており、特に、緑色蛍光体が封止部の厚み方向において上部2/3の間に集まり、他の蛍光体は厚み方向全体に分布するものであった。
【0281】
蛍光体含有層の蛍光体濃度分布は、以下に示す方法で観察した。
(1)得られた半導体発光装置より蛍光体含有層を剥がし取り、カッターナイフで切断して深さ方向の観察が出来る断面を作製する。
(2)蛍光体層断面にブラックライトを照射し、蛍光体を各色に発光させた状態で写真を撮影する。
(3)断面写真を画像処理ソフトで処理し、RGB成分ごとに画像を分解して各蛍光体を強調した画像を取得し、発光色別の蛍光体粒子分布状況を観察する。
【0282】
図12に、緑色蛍光体の分布とチクソ剤濃度の相関を示す。なお、チクソ剤濃度15%では全色の蛍光体が均一に分布、11%では緑色のみが上層に寄り下層には検出されなかった。赤、青の蛍光体は濃度分布あるものの全領域に分布していた。0%では全ての蛍光体が表層に寄って分布していた。なお、これらの発光装置を後述の輝度の測定と同様の方法にて点灯させたところ、いずれも白色に点灯した。
【0283】
[2−6]比較例1の半導体発光装置の作製
手動ピペットを用いて合成例1で得られた封止剤液より調液した蛍光体含有層形成液A 40μlを前出の半導体発光装置に注液し、減圧できるデシケーターボックス中で25℃、1kPaの条件下5分保持して注液時に生じた巻き込み気泡や溶存空気、水分を除去した。この後90℃で2時間、次いで110℃で1時間、150℃で3時間保持して蛍光体層を硬化させ、連続点灯試験用の半導体発光装置(白色LED)を得た。
【0284】
[2−7]比較例2の半導体発光装置の作製
手動ピペットを用いて信越化学工業株式会社製シリコーン樹脂LPS2410より調液した蛍光体ペーストB 40μlを前出の半導体発光装置に注液し、減圧できるデシケーターボックス中で25℃、1kPaの条件下5分保持して注液時に生じた巻き込み気泡や溶存空気、水分を除去した。この後150℃で1時間保持して蛍光体層を硬化させ、連続点灯試験用の半導体発光装置(白色LED)を得た。
【0285】
<連続点灯試験>
波板リング状のアルミ製放熱フィンを半導体発光装置外周に取り付け、チップ(半導体素子)発光面の温度が100±10℃となる様に維持しながら350mAの駆動電流を通電して、温度85℃相対湿度85%、及び温度85℃加湿無しの2条件にて連続点灯を行った。一定時間毎に取り出して後述の輝度測定方法にて初期輝度(Lumen)に対する経時の輝度の百分率(輝度維持率)を測定した。前述の波板リング状のアルミ製放熱フィンは輝度測定の際には取り外した。
【0286】
なお、輝度の測定には、オーシャンオプティクス社製分光器「USB2000」(積算波長範囲:380−800nm、受光方式:100mmφの積分球)を用い、分光器本体の温度変化によるデータ外乱を防ぐため分光器を25℃恒温槽内に保持して測定した。測定中は半導体発光装置の温度上昇を防ぐために、熱伝導性絶縁シートを介し3mm厚のアルミ板にて放熱を行なった。結果を表11、12、及び図13に示す。また、実施例および比較例における、発光素子の発光面の面積、発光光の指向特性、発光素子の上面からの導光層の厚さ、および蛍光体含有層の蛍光体含有率を表13に示す。
【0287】
【表11】

【0288】
【表12】

【0289】
【表13】

【0290】
<連続点灯試験結果よりわかること>
実施例1〜2および例1〜2を比べると、2層塗りを行なった方が1層塗りよりも輝度が高く、かつ高温加湿連続点灯による劣化加速試験においても2層塗りの方が輝度の低下及び色ずれが少なかった。加湿無し高温点灯試験では加湿有りより輝度低下の度合いは少なかったが、やはり2層塗りの方が1層塗りより輝度の低下及び色ずれが少なかった。
【0291】
近紫外発光素子と赤・緑・青三色の蛍光体の組み合わせによる白色LEDでは、青色発光素子と黄色蛍光体の組み合わせによる白色LEDと比較して励起光を透過させないため蛍光体濃度が高く、1層塗りの場合チップから遠方にある蛍光体にはチップ近傍の蛍光体の干渉により励起光が届きにくくなると考えられる。またチップの主配光範囲外にある蛍光体も有効に利用されにくい。この結果波長変換に寄与出来ない余分な蛍光体が存在し白色光を閉じ込めてしまう。これに対し出光面に蛍光体層を有する2層塗りの白色LEDは蛍光体が有効利用されるため少量の蛍光体でも波長変換効率が高く、白色光を遮蔽しないため高輝度の白色LEDとすることができると考えられる。
【0292】
さらに、近紫外発光素子を光源とする白色LEDは高濃度に蛍光体が配置されているため高密度の光束に曝露されるチップ近傍では蛍光体の発熱蓄積や励起光による光分解によって蛍光体劣化が起きやすく、また蛍光体種によっては電極近くに配置すると電気的な分解により輝度が低下するものもある。実施例1、2の構成では2層塗りによって劣化しやすい蛍光体を光密度の高いチップの近傍や電気分解を誘起しやすい電極の近傍から離すことにより、蛍光体の劣化による経時的な輝度低下や色ずれを抑えることが出来る。
【0293】
実施例3の処方により、蛍光体含有層と導光層とを、見かけ上は単層の一体不可分な層構造として作製することができた。チキソ剤の量の調整や硬化前静置時間により各色蛍光体の沈降状態を自在に制御することができるため、実施例1の層塗りと同様な効果を簡便に得ることが出来ると考えられる。また、一体不可分な構造の場合は、蛍光体の平均粒子径や形状、比重などを制御することにより、最も耐久性低い蛍光体のみ発光素子から離し、他の耐久性高い蛍光体は緩い濃度傾斜を持ちながらパッケージ全体に分布させることも可能であり、簡便な操作で各層の厚み制御不良による色むらの発生を抑え、2層塗り同様耐久性の高い半導体発光装置を得ることができると考えられる。
【0294】
なお、蛍光体の劣化の度合いは、蛍光体の粒径分布の制御、結晶化度の向上、構成成分組成の制御、水分進入の遮断などにより抑制することが出来、本発明のデバイス構成と組み合わせることによりさらに長期にわたり輝度、色度の変化しない高演色性白色LEDを提供することが出来ると考えられる。
【0295】
ここで、近紫外〜紫外発光素子を励起光源とする場合、用いる樹脂は、発光波長に対して十分な耐紫外線性を有するものが好ましい。実施例1と実施例2は連続点灯時の輝度維持率に差があるが、これは用いた樹脂の耐紫外線性(着色)の差によるものと考えられる。
【0296】
<参考>実施例及び比較例に用いた樹脂の耐UV性
【0297】
試験方法:
実施例及び比較例に用いた形成液2gを5cmφのテフロン(登録商標)製のシャーレに流し込み、半導体発光デバイス作製時と同様の温度条件にて硬化させ、厚さ1mmの円板状の透明硬化物とした。松下電工マシンアンドビジョン株式会社製スポット照射型紫外線硬化装置 アイキュアANUP5204(200W Hg−Xeランプ)に4分岐ライトガイドファイバーユニットを取り付け、熱線カットフィルター及びUVカットフィルター(250nm以下カット)を通して当該硬化物に対し照度1900mW/cm2(365nm受光素子による測定値)にて24時間UVスポット光照射を実施し、光照射部分を目視観察した。
【0298】
試験結果:
合成例1の樹脂・・・変化無し
LPS2410・・・6時間で茶変
KE1051J・・・変化無し
【0299】
合成例1の樹脂は市販のLED用樹脂と比較し上記のごとく耐UV性に優れ、本発明の半導体発光装置の導光層及び蛍光体含有層用の樹脂として好適に使用出来ると考えられる。LPS2410は紫外光により着色を生じるので長期の使用により輝度低下が起きると考えられる。また、KE1051Jはゲル状のため導光層樹脂として密着性及び応力緩和に優れるが、合成例1の樹脂と比較して機械的強度に乏しく、点灯中に流動を生じ色ずれの原因となる場合があり、本発明における蛍光体含有層用樹脂として使用するのは難しい。付加型樹脂でもLPS2410のように流動性なく十分な機械的強度を有し、かつKE1051Jのように耐UV性に優れるものは本発明の半導体発光装置の導光層及び蛍光体層用の樹脂として好適に使用出来ると考えられる。
【符号の説明】
【0300】
10、10’、20、20’、28、28’、30、40 半導体発光装置
11 基板
13 半導体発光素子
15 封止部
16 導光層
17 蛍光体含有層
17a、17b 蛍光層
31、32 リード
33 可視光透光性樹脂
O 層
P プライマー
S 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外から近紫外領域の光を発する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子からの光により励起される蛍光体を含有し、前記半導体発光素子を封止する封止部とを備え、
前記半導体発光素子は、発光面の面積が0.5mm以上であり、かつ相対発光強度の最大となるピークが発光面から70°以上110°以下に存在する指向特性を有するものであり、
前記封止部は、
前記半導体発光素子を封止し、前記蛍光体を実質的に含有しない導光層と、
前記導光層を覆って形成された、前記蛍光体を含有する蛍光体含有層と、
を有し、
前記導光層は半導体発光素子の上面からの厚さが0.15mm以上であり、
前記蛍光体含有層に対する前記蛍光体の含有率が15重量%以上40重量%以下であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体含有層の蛍光体含有率が、前記半導体発光素子側から前記蛍光体含有層の最外表面へ連続的に高濃度になるように変化している請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体含有層は2層の蛍光層を有し、
第1の蛍光層は、励起されることによって青色に発光する蛍光体を含有し、
第2の蛍光層は、励起されることによって黄色に発光する蛍光体、励起されることによって緑色に発光する蛍光体および励起されることによって赤色に発光する蛍光体の少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光層が含有する蛍光体は紫外から近紫外領域の光で励起され、前記第2の蛍光層が含有する蛍光体は青色光によって励起され、前記第1の蛍光層および前記第2の蛍光層が前記半導体発光素子側からこの順番で積層されている、請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記第1の蛍光層が含有する蛍光体および前記第2の蛍光層が含有する蛍光体は紫外から近紫外領域の光で励起され、前記第2の蛍光層および前記第1の蛍光層が前記半導体発光素子側からこの順番で積層されている、請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
紫外から近紫外領域の光を発する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子からの光により励起される蛍光体を含有し、前記半導体発光素子を封止する封止部とを備え、
前記半導体発光素子は、発光面の面積が0.5mm以上であり、かつ相対発光強度の最大となるピークが発光面から70°以上110°以下に存在する指向特性を有するものであり、
前記封止部は、 発光波長ピークの異なる複数の蛍光体を含有し、該発光ピークの異なる複数の蛍光体の濃度が、それぞれ前記発光素子側から前記蛍光体含有層の最外表面へ連続的に高濃度になるように変化するものであり、前記半導体発光素子を封止し、前記蛍光体の少なくとも1種を実質的に含有しない導光層と、前記導光層を覆って形成された、前記複数の蛍光体を含有する蛍光体含有層と、を有し、
前記導光層は前記半導体発光素子の上面からの厚さが0.15mm以上であり、
前記封止部の平均蛍光体含有率が15重量%以上40重量%以下であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項7】
前記半導体発光素子を複数個備える請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記導光層は、光散乱剤を含有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記導光層および前記蛍光体含有層の界面は、前記半導体発光素子の上面に平行な平面または凹凸面である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記導光層および前記蛍光体含有層は、下記(1)〜(3)の特性を有する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
(1)他の層との界面に、極性基を含有すること、
(2)硬度が、ショアAで5以上100以下、または、ショアDで0以上85以下であること、および
(3)シロキサン結合を有すること。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体発光装置を光源として用いた照明装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体発光装置を備えた光源と、
前記光源からの光の照射を受ける、光シャッタを備えた表示パネルと、
を有する画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【公開番号】特開2010−4035(P2010−4035A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124772(P2009−124772)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】