説明

半導体素子及びその製造方法

【課題】回路基板に確実に実装可能で、且つ、加熱に起因して発生する応力が抑制可能な半導体素子を提供する。
【解決手段】半導体素子10において、複数の電極パッド13の上方に、中央部Aより中間部Bで、更に中間部Bより端部Cで膜厚が厚くなるように形成した絶縁部材15を設ける。各電極パッド13に接続するアンダーバンプメタル17は、それぞれ絶縁部材15から突出させ、その先端にそれぞれバンプ18を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を回路基板へ実装する形態の1つに、フリップチップ実装がある。フリップチップ実装では、例えば、半導体素子の一主面側の配線層上に設けた電極パッドにバンプを接続し、半導体素子をそのバンプ側を回路基板に対向させて配置した後、リフロー処理によりバンプを溶融固化し、半導体素子と回路基板を接続する。また、例えば、半導体素子と回路基板との間隙には、それらの接続を補強するアンダーフィルが充填される。
【0003】
ところで、リフロー処理の際には、半導体素子と回路基板との間の熱膨張係数差に起因して、半導体素子及び回路基板に応力が発生する場合がある。
図28はリフロー処理の説明図であって、(A)は半導体素子を回路基板上に配置した状態の一例を示す模式図、(B)はリフロー処理中の状態の一例を示す模式図、(C)はリフロー処理後の状態の一例を示す模式図である。
【0004】
図28(A)に示すように、半導体素子100を回路基板200上に配置した後、バンプ101の溶融温度以上まで加熱すると、図28(B)に示すように、半導体素子100及び回路基板200が、それぞれの熱膨張係数に応じて熱膨張する。
【0005】
半導体素子100と回路基板200との熱膨張係数差に起因した熱膨張のずれは、バンプ101が溶融している間は、特に問題とならず、溶融したバンプ101は、半導体素子100の熱膨張、及び回路基板200の熱膨張に追従して変形する。その後、冷却が行われると、変形したバンプ101が固化し、図28(C)に示すように、半導体素子100及び回路基板200の、先の加熱で膨張した分が収縮する(元に戻る)。
【0006】
しかしながら、半導体素子100と回路基板200とに熱膨張のずれが生じている状態で固化してしまったバンプ101は、このような冷却時の収縮に追従できず、半導体素子100及び回路基板200に応力が発生する。この応力は、結果的には、図28(C)に示すように、半導体素子100及び回路基板200の反りとして現れてくる。半導体素子100の内部に発生する応力は、反りに留まらず、回路基板200との接続部の破壊等を引き起こしてしまう場合もある。
【0007】
また、リフロー処理時の応力が残留している状態で、半導体素子100と回路基板200との間にアンダーフィルを充填した場合には、その残留応力によってアンダーフィルが半導体素子100又は回路基板200から剥離してしまう場合もある。
【0008】
従来は、このようなリフロー処理時に半導体素子と回路基板との間の熱膨張係数差に起因して発生する応力を緩和するための層を、バンプ付近に設ける技術が知られている。また、そのような層の形成に伴い、バンプの形状や体積を変更する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−016178号公報
【特許文献2】特開2006−237198号公報
【特許文献3】特開2007−096198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これまで提案されている技術では、上記のような半導体素子と回路基板との間の熱膨張係数差に起因して発生する応力を十分に抑えることができない場合があった。また、構造上、半導体素子の回路基板への実装工程、或いはその後続工程において、不具合が生じてしまう場合あった。そのため、半導体素子及び回路基板を含む半導体装置の品質及び信頼性を確保することができない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、半導体基板の主面に形成された複数の電極パッドと、前記電極パッドが形成された位置を開口して、前記主面上に形成されたカバー膜と、前記電極パッドが形成された位置を開口して、前記カバー膜上に形成された絶縁部材と、前記開口内及び開口より突出して形成されたアンダーバンプメタルと、前記アンダーバンプメタルの先端に形成されたバンプと、を含み、前記絶縁部材は、前記半導体基板の中心から外周にむけて厚く形成されている半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の半導体素子によれば、回路基板に実装して、高品質且つ高信頼性の半導体装置を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】半導体素子の一例の断面模式図である。
【図2】半導体素子の一例の平面模式図である。
【図3】半導体素子の内部構造の一例を示す図である。
【図4】半導体素子の回路基板への配置工程の一例の断面模式図である。
【図5】リフロー処理工程の一例の断面模式図である。
【図6】アンダーフィル充填工程の一例の断面模式図である。
【図7】回路基板の内部構造の一例を示す図である。
【図8】カバー膜形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図9】第1絶縁膜形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図10】第1絶縁膜の露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
【図11】第2絶縁膜形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図12】第2絶縁膜の露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
【図13】第3絶縁膜形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図14】第3絶縁膜の露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
【図15】シード層形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図16】レジスト形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図17】レジストの露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
【図18】アンダーバンプメタル形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図19】バンプ形成工程の一例の要部断面模式図である。
【図20】レジスト除去工程の一例の要部断面模式図である。
【図21】シード層除去工程の一例の要部断面模式図である。
【図22】半導体素子の別例の断面模式図(その1)である。
【図23】半導体素子の別例の断面模式図(その2)である。
【図24】絶縁部材の形成例を示す図である。
【図25】絶縁部材の第1変形例の平面模式図である。
【図26】絶縁部材の第2変形例の平面模式図である。
【図27】絶縁部材の第3変形例の平面模式図である。
【図28】リフロー処理の説明図であって、(A)は半導体素子を回路基板上に配置した状態の一例を示す模式図、(B)はリフロー処理中の状態の一例を示す模式図、(C)はリフロー処理後の状態の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明による半導体素子の一例の断面模式図、図2は半導体素子の一例の平面模式図である。
図1及び図2に示す半導体素子10は、シリコン(Si)基板等の半導体基板11上に形成された配線層12を有している。配線層12の上には、複数の電極パッド13が形成されている。
【0015】
配線層12は、例えば、表面が平坦になるように形成される。複数の電極パッド13は、配線層12の上に、例えば、当該配線層12の厚さ方向Tにおける上端位置P1が均一になるように設けられる。
【0016】
なお、複数の電極パッド13の上端位置P1が均一であることには、上端位置P1が同一である場合のほか、上端位置P1が略同一である場合(例えば、製造上の公差範囲内である場合)を含むものとする。
【0017】
ここで、半導体素子10の内部構造の一例を図3に示す。
半導体素子10の半導体基板11には、図3に示すように、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法を用いて素子分離領域11Aが形成されている。そして、その素子分離領域11Aによって画定された素子領域11Bに、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ11Cが形成されている。
【0018】
MOSトランジスタ11Cは、ゲート絶縁膜11aを介して形成されたゲート電極11b、及びゲート電極11bの両側の素子領域11B内に形成されたソース・ドレイン領域11cを有している。また、ゲート電極11bの側壁には、側壁絶縁膜11dが形成されている。
【0019】
なお、図3では、2つのMOSトランジスタ11Cを例示したが、半導体基板11には、これと同様の構造を有する1つ又は3つ以上のMOSトランジスタが形成されていてもよい。また、半導体基板11には、MOSトランジスタ11Cのほか、抵抗素子、容量素子等、他の素子が形成されていてもよい。
【0020】
MOSトランジスタ11C等が形成された半導体基板11上に形成する配線層12は、例えば、図3に示すような多層配線とすることができる。図3には、配線層12として、第1〜第6配線層12A〜12Fが積層された構造を例示している。
【0021】
第1配線層12Aには、半導体基板11上に、MOSトランジスタ11C等を覆う層間絶縁膜12aが形成されている。この層間絶縁膜12aには、MOSトランジスタ11Cのソース・ドレイン領域11cに達するプラグ12bが形成されている。
【0022】
層間絶縁膜12a上には、更に別の層間絶縁膜12cが形成され、この層間絶縁膜12cには、配線12d,12eが形成されている。配線12d,12eのうち、一方の配線12dは、下層のプラグ12bと接続され、MOSトランジスタ11Cのソース・ドレイン領域11cと電気的に接続されている。なお、ここでは、配線12d,12eを、シングルダマシン法を用いて形成した場合を例示している。
【0023】
そして、このように配線12d,12eが形成された層間絶縁膜12c上に絶縁層(キャップ層)12f、及び絶縁層(エッチングストッパ層)12gが積層されている。
第2配線層12Bには、上記第1配線層12Aの絶縁層12g上に、層間絶縁膜12hが形成され、この層間絶縁膜12hには、ビア12i及び配線12j,12kが形成されている。ビア12i及び配線12jは、MOSトランジスタ11Cのソース・ドレイン領域11cに電気的に接続された、上記第1配線層12Aの配線12dに電気的に接続されている。
【0024】
そして、このようにビア12i及び配線12j,12kが形成された層間絶縁膜12h上に絶縁層(キャップ層)12m、及び絶縁層(エッチングストッパ層)12nが積層されている。
【0025】
なお、ここでは第2配線層12Bの層間絶縁膜12hが単層の場合を例示したが、この層間絶縁膜12hは、複数層で形成されていてもよい。
ビア12i及び配線12jは、デュアルダマシン法を用いて一括で形成することができる。そのほか、まず層間絶縁膜(層間絶縁膜12hの下層部)を形成してそこにビア12iを形成し、次いでその上に更に層間絶縁膜(層間絶縁膜12hの上層部)を形成してシングルダマシン法により配線12j,12kを形成するようにしてもよい。
【0026】
図3に示す配線層12では、この第2配線層12Bと同様の構成を有する第3〜第6配線層12C〜12Fが、順に積層されている。第3〜第6配線層12C〜12Fでは、便宜上、第2配線層12Bにおけるのと同等の機能を有する要素について、同一の符号を付している。
【0027】
第6配線層12F上には、層間絶縁膜12pが形成され、この層間絶縁膜12pには、第6配線層12Fの、MOSトランジスタ11Cと電気的に接続された配線12jに達するビア12rが形成されている。そして、このビア12r上に、電極パッド13が形成されている。
【0028】
上記のような構造を有する配線層12における、層間絶縁膜の全部或いは一部には、酸化シリコン(SiO2)のほか、SiO2よりも比誘電率の低い、いわゆるLow−k材料を用いることができる。配線層12の層間絶縁膜として用いることのできるLow−k材料としては、例えば、酸化フッ化シリコン(SiOF(FSG))、酸化炭化シリコン(SiOC)、有機樹脂、ポーラス酸化シリコン等を挙げることができる。
【0029】
上記のような配線層12、及びその上に形成された複数の電極パッド13は、図1に示すように、各電極パッド13の表面領域内の一部を除き、カバー膜14により被覆されている。カバー膜14としては、例えば、SiO2膜、窒化シリコン(SiN)膜、SiO2膜とSiN膜の複合(積層)膜を形成することができる。
【0030】
更に、このカバー膜14の表面には、図1及び図2に示すように、半導体素子10を保護する絶縁部材15が形成されている。ここでは、絶縁部材15が、第1絶縁層15a、第2絶縁層15b及び第3絶縁層15cの3層の積層構造である場合を例示している。
【0031】
絶縁部材15の最下層の第1絶縁層15aは、各電極パッド13の表面領域内の一部を除き、カバー膜14の表面を被覆するように、形成されている。第2絶縁層15bは、第1絶縁層15a上であって、半導体素子10の中央部Aの領域を除く、その外側(外周部)の中間部B及び端部Cの領域上に形成されている。第3絶縁層15cは、第2絶縁層15b上であって、半導体素子10の中央部A及び中間部Bの領域を除く、端部Cの領域上に形成されている。
【0032】
このように絶縁部材15は、半導体素子10の中央部Aには第1絶縁層15aのみが設けられ、中間部Bには第1,第2絶縁層15a,15bの2層が積層して設けられ、端部Cには第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの3層が積層して設けられている。即ち、絶縁部材15は、中央部Aから中間部B、そして中間部Bから端部Cにいくに従って、次第に膜厚が厚くなるように形成されている。
【0033】
絶縁部材15の材料には、例えば、ポリイミドを用いることができる。その場合、第1絶縁層15a、第2絶縁層15b及び第3絶縁層15cには、全てに同一組成のポリイミドを用いてもよく、各々異なる組成のポリイミドを用いてもよい。また、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cのうちのいずれか1層に、他の2層と異なる組成のポリイミドを用いるようにすることもできる。
【0034】
また、絶縁部材15の第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cは、全て同一の膜厚で形成してもよく、各々異なる膜厚で形成してもよい。また、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cのうちのいずれか1層を、他の2層と異なる膜厚で形成することもできる。
【0035】
第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cは、例えば、それぞれ1.5μm〜5μmの範囲で膜厚を設定することができる。
一部の領域を残してカバー膜14及び絶縁部材15が形成された複数の電極パッド13にはそれぞれ、図1に示すように、シード層16を介してアンダーバンプメタル(UBM)17が接続されている。
【0036】
シード層16は、アンダーバンプメタル17を、後述のように電解メッキ法を用いて形成する際のシードとして用いられる。シード層16には、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等が用いられる。また、シード層16を用いて形成されるアンダーバンプメタル17には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等が用いられる。アンダーバンプメタル17は、例えば、電極パッド13上のシード層16表面からの膜厚(最も厚くなる部分の膜厚)が、5μm以上となるように形成することができる。
【0037】
シード層16及びアンダーバンプメタル17は、絶縁部材15及びカバー膜14を貫通して電極パッド13に達し、更にシード層16及びアンダーバンプメタル17の上部が、絶縁部材15の上面から突出し、当該上面上に延在するように形成されている。
【0038】
このように形成される複数のアンダーバンプメタル17は、例えば、厚さ方向Tにおける上端位置P2が均一になるように設けられる。
なお、複数のアンダーバンプメタル17の上端位置P2が均一であることには、上端位置P2が同一である場合のほか、上端位置P2が略同一である場合(例えば、製造上の公差範囲内である場合)を含むものとする。
【0039】
アンダーバンプメタル17の上端位置P2を均一にした場合、アンダーバンプメタル17の、絶縁部材15の上面から突出する部分(突出部)17aの厚さtは、アンダーバンプメタル17が形成されている領域の絶縁部材15の厚さによって異なってくる。即ち、アンダーバンプメタル17の突出部17aは、第1絶縁層15aのみが形成されている中央部Aで最も厚く、次いで第1,第2絶縁層15a,15bが積層されている中間部Bで厚くなる。アンダーバンプメタル17の突出部17aは、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cが積層されている端部Cで最も薄くなる。
【0040】
そして、このような複数のアンダーバンプメタル17上にそれぞれ、図1及び図2に示すように、バンプ18が接続されている。
これら複数のバンプ18は、例えば、いずれも略球状に形成され、サイズ(直径d、及びアンダーバンプメタル17からの高さh)が均一になるように形成される。即ち、複数のバンプ18は、体積が均一で、厚さ方向Tにおける上端位置P3が均一になるように形成される。
【0041】
なお、複数のバンプ18のサイズ(体積)が均一であることには、サイズが同一である場合のほか、サイズが略同一である場合(例えば、製造上の公差範囲内である場合)を含むものとする。また、複数のバンプ18の上端位置P3が均一であることには、上端位置P3が同一である場合のほか、上端位置P3が略同一である場合(例えば、製造上の公差範囲内である場合)を含むものとする。
【0042】
バンプ18には、例えば、半田を用いることができる。バンプ18の材料として半田を用いる場合、半田組成は特に限定されるものではないが、例えば、成分に鉛(Pb)を含有しない、いわゆるPbフリー半田を用いることができる。
【0043】
例えば、バンプ18には、スズ−銅(Sn−Cu)、スズ−銀(Sn−Ag)、スズ−銀−銅(Sn−Ag−Cu)、スズ−銀−銅−ビスマス(Sn−Ag−Cu−Bi)、スズ−銀−インジウム(Sn−Ag−In)、スズ−銀−インジウム−ビスマス(Sn−Ag−In−Bi)、スズ−亜鉛(Sn−Zn)、スズ−亜鉛−ビスマス(Sn−Zn−Bi)等を用いることができる。
【0044】
以上述べたような構成を有する半導体素子10において、絶縁部材15は、バンプ18及びアンダーバンプメタル17を介して半導体素子10の内部に加わる力を伝わり難くする役割を果たす(クッション効果)。
【0045】
上記の半導体素子10では、例えば、アンダーバンプメタル17の上端位置P2及びバンプ18の上端位置P3を均一にする。更に、半導体素子10では、絶縁部材15を中央部Aから端部Cに向かって厚膜化し、アンダーバンプメタル17の突出部17aの厚さtを中央部Aから端部Cに向かって薄膜化する。
【0046】
その場合、半導体素子10では、中央部Aから端部Cにいくに従って、バンプ18及びアンダーバンプメタル17の突出部17aから、電極パッド13、更にはより下層の配線層12までの距離が長くなる。その結果、中央部Aより中間部Bでより高いクッション効果が得られ、中間部Bより端部Cでより高いクッション効果が得られるようになる。
【0047】
また、この半導体素子10は、絶縁部材15の膜厚に上記のような面内分布を持たせる一方、その上方に配置するバンプ18のサイズ及び上端位置P3を均一にしている。そのため、バンプ18を介した半導体素子10の回路基板への実装を、回路基板との未接続、隣接バンプ間でのショート等の不具合の発生を抑えて、精度良く行うことができる。
【0048】
ここで、半導体素子10の実装工程の一例について、図4〜図7を参照して説明する。
図4は半導体素子の回路基板への配置工程の一例の断面模式図、図5はリフロー処理工程の一例の断面模式図、図6はアンダーフィル充填工程の一例の断面模式図である。
【0049】
半導体素子10の実装工程では、まず、半導体素子10のバンプ18にフラックスを転写する。半導体素子10では、バンプ18のサイズ及び上端位置P3を均一にしているため、通常のフラックス転写装置を用い、フラックス転写を精度良く実施することができる。
【0050】
フラックス転写後は、半導体素子10を、その半導体素子10を実装する回路基板20の上に配置する。回路基板20の内部構造の一例を図7に示す。
回路基板20は、スルーホール21aが形成されたコア基板21、及びコア基板21の両面に形成された配線層22を有している。
【0051】
コア基板21のスルーホール21aには、その側壁に導電層21bが形成され、この導電層21bにより両面間が導通されている。なお、導電層21bより内側の、スルーホール21aの中心部21cは、空洞とされるか、或いは樹脂等の絶縁材料又は金属等の導電材料が充填される。
【0052】
コア基板21には、例えば、ガラスエポキシ基板又はポリイミド基板を用いることができる。また、コア基板21として、ガラスエポキシテープ又はポリイミドテープを用いることもできる。
【0053】
配線層22は、ここでは多層配線であり、配線22aと絶縁層22bとを積層した構造を有している。異なる層に形成された配線22a間は、絶縁層22bを貫通するビア22cによって接続されている。配線層22における最外層の配線22aは、一部を外部接続用の電極部22dとして残し、絶縁層22bで被覆されている。
【0054】
配線22a及び絶縁層22bには、様々な材料を用いることができる。配線22aには、例えば、Cu、又はCuを主成分とする導電材料を用いることができる。絶縁層22bには、例えば、ポリイミド、ベンゾシクロブテン等の感光性絶縁材料を用いることができる。
【0055】
図7に示す回路基板20には、その両面に配線層22が形成されている。このような回路基板20を、半導体素子10の実装基板として用いる場合には、その一方の面側に半導体素子10が実装される。他方の面側には、例えば、半田ボールが搭載され、半導体素子10を実装した回路基板20が、その半田ボールを介して、更に別の回路基板に実装される。
【0056】
なお、図7には、コア基板21の両面に配線層22が形成されている場合を例示したが、コア基板21の片面にだけ配線層22が形成されているものも、半導体素子10を実装する基板として用いることができる。
【0057】
図4〜図6には、コア基板21、片面側の電極部22d、及び各電極部22dの表面領域内の一部を除いて形成された最外層の絶縁層22bを、簡略化して図示している。
このような構造を有する回路基板20に、フラックス転写後の半導体素子10が実装される。
【0058】
半導体素子10の実装に際し、回路基板20の各電極部22dには、図4に示すように、予備半田層30を形成しておく。予備半田層30には、例えば、半導体素子10のバンプ18として使用可能な半田材料と同じ半田材料を用いることができる。予備半田層30は、例えば、印刷法を用いて形成することができる。
【0059】
そして、図4に示すように、フラックス転写まで行った半導体素子10のバンプ18側を、回路基板20の予備半田層30側に対向させ、回路基板20上に、バンプ18を予備半田層30に接触させるようにして、半導体素子10を配置する。
【0060】
上記のように、半導体素子10は、絶縁部材15を中央部Aから端部Cに向かって厚膜化すると共に、バンプ18のサイズ及び上端位置P3を均一にしている。そのため、半導体素子10を回路基板20の上に配置したときの、絶縁部材15表面と絶縁層22bとの間隔は、図4に示すように、中央部Aの間隔D1に比べて端部Cの間隔D2の方が狭くなる。
【0061】
回路基板20の上への半導体素子10の配置後は、リフロー処理を行う。その際は、まずバンプ18及び予備半田層30の溶融温度以上まで加熱し、その後、冷却する。このリフロー処理で、バンプ18と予備半田層30とは、図5に示すように一体化される。
【0062】
この図4及び図5に示すような工程を経ることで、半導体素子10が回路基板20に実装された半導体装置1が得られる。そして、このようにして得られた半導体装置1の、半導体素子10と回路基板20との間隙には、例えば、図6に示すように、アンダーフィル40が充填される。
【0063】
ところで、一般に、リフロー処理時には、半導体素子及び回路基板が、それぞれの熱膨張係数に応じて熱膨張する。その場合、一般に、半導体素子及び回路基板の中央部は、熱膨張が小さいため、それらの熱膨張のずれも小さく、従って、発生する応力も小さい。一方、半導体素子及び回路基板の外周部は、熱膨張が大きいため、それらの熱膨張のずれも大きく、従って、発生する応力も大きくなる。特に、バンプにPbフリー半田を用いた場合、Pbフリー半田は、Pbを含有する半田に比べて硬い性質を有しているため、上記のような応力が、より発生し易くなる。
【0064】
半導体素子に発生する応力は、回路基板との接続部の破壊や、半導体素子の内部構造の破壊を引き起こす可能性がある。特に、半導体素子の配線層の層間絶縁膜に、Low−k材料を用いているような場合には、その材料の脆さのために、層間絶縁膜同士、或いは層間絶縁膜と導電部(配線、電極パッド等)とが剥離する、いわゆる層間剥離が発生してしまう場合がある。
【0065】
また、応力が残留している状態でアンダーフィルを充填した場合には、その残留応力によってアンダーフィルが半導体素子又は回路基板から剥離してしまう場合もある。このようなアンダーフィルの剥離は、アンダーフィルの充填後に行われる、熱サイクル試験等、完成品の試験時の加熱で発生し易い。
【0066】
これに対し、上記の半導体素子10では、図1に示したように、バンプ18及びアンダーバンプメタル17(突出部17a)と配線層12の間に設ける絶縁部材15を、半導体素子10の中央部Aから端部Cに向かって厚膜化するようにしている。
【0067】
そのため、図4及び図5に示したように、半導体素子10を回路基板20上に配置してリフロー処理を行ったときに、半導体素子10の中間部B及び端部Cに比較的大きな力が加わった場合でも、その力が半導体素子10の内部に伝わり難くなる。その結果、半導体素子10に発生する応力が抑えられ、回路基板20との接続部の破壊や、半導体素子10の内部破壊(配線層12の層間剥離)を効果的に抑えることが可能になる。
【0068】
また、半導体素子10では、絶縁部材15を中央部Aから端部Cに向かって厚膜化しているため、図4の状態からリフロー処理を行って、そのときの応力で回路基板20に反りが発生した場合でも、端部Cの間隔D2が広がるのを抑えることができる。
【0069】
即ち、絶縁部材15を端部Cに向かって厚膜化せず、中央部Aと端部Cの間隔D1,D2とを等しくしている(絶縁部材15として第1絶縁層15aのみ形成している)場合、回路基板20が反ることで、比較的反りが大きい端部Cで、間隔D2が広がってしまう。
【0070】
これに対し、図4に示したように絶縁部材15を端部Cに向かって厚膜化していると、元々端部Cの間隔D2が中央部Aの間隔D1よりも狭くなっているため、たとえ回路基板20が反っても、その間隔D2の広がりが抑えられるようになる。その結果、アンダーフィル40の充填後も、アンダーフィル40の半導体素子10又は回路基板20からの剥離を効果的に抑えることが可能になる。
【0071】
更に、図4に示したように、絶縁部材15を中央部Aから端部Cに向かって階段状に厚膜化している場合には、その段差部(第2,第3絶縁層15b,15cの中央部A側の端部)によって絶縁部材15とアンダーフィル40との接触面積を増加させることができる。そのため、絶縁部材15とアンダーフィル40とを強固に接続し、アンダーフィル40の剥離を一層効果的に抑えることが可能になっている。
【0072】
絶縁部材15の膜厚は、半導体素子10、回路基板20、及びバンプ18の材質等を基に、回路基板20が反ったときの半導体素子10の端部Cにおける間隔D2が、中央部Aの間隔D1と同等、若しくは間隔D1より狭くなるように、設定することが好ましい。絶縁部材15の膜厚をこのように設定することにより、アンダーフィル40の剥離を効果的に抑えることが可能になる。
【0073】
なお、上記のような構成を有する半導体素子10を、回路基板20に実装して半導体装置1を形成する場合には、アンダーフィル40は、必ずしも半導体素子10と回路基板20との間に充填することを要しない。前述のように、上記の半導体素子10は、リフロー処理の加熱及び冷却によって発生する応力による接続部破壊や内部破壊が起こり難い構造になっている。そのため、回路基板20との間にアンダーフィル40を充填しなかった場合にも、回路基板20との電気的な接続を、一定の信頼性で確保することが可能になる。
【0074】
なお、上記の半導体素子10では、図1に示したように、絶縁部材15の膜厚によらず、バンプ18のサイズ(体積)及び上端位置P3を均一にする。
仮に、複数のバンプ18のサイズを一定としたまま、絶縁部材15の薄い所のバンプ18の上端位置を、厚い所のものより低い位置(電極パッド13側)にすると、低いバンプ18と回路基板20との間で未接続(オープン不良)が発生し易くなる。
【0075】
一方、オープン不良を回避するため、絶縁部材15の薄い所のバンプ18のサイズを、厚い所のものより大きくして、複数のバンプ18の上端位置を均一にすることも考えられる。しかし、この場合には、サイズを大きくしたバンプ18とその周囲のバンプ18とのショートが発生し易くなってしまう。更に、このようなバンプ18の大型化は、バンプ18の狭ピッチ化に対応することが難しくなる。
【0076】
上記の半導体素子10によれば、このようなオープン不良及びショートを共に回避することができ、また、狭ピッチ化にも対応することができる。
続いて、半導体素子10の形成方法の一例について説明する。
【0077】
なお、ここでは、1枚のウェーハに形成される複数の半導体素子10のうち、1つの半導体素子10に着目して、その形成方法の一例を説明する。また、ここでは、ウェーハ(半導体基板11)上に、MOSトランジスタ11C等の素子、配線層12、及び複数の電極パッド13の形成まで行った後の工程について説明する。
【0078】
図8はカバー膜形成工程の一例の要部断面模式図である。
上記の図3に示したような配線層12及び複数の電極パッド13を形成したウェーハ(半導体基板11)上に、各電極パッド13の表面領域上の一部を除き、各電極パッド13に通じる開口部14aを有するカバー膜14を形成する。
【0079】
なお、ここでは、配線層12上に形成された複数の電極パッド13は、上端位置P1が均一になるように形成する。
図9は第1絶縁膜を形成する工程の一例の要部断面模式図である。
【0080】
カバー膜14の形成後は、カバー膜14の形成まで行ったウェーハの全面に、第1絶縁膜150aを形成する。
例えば、第1絶縁層15aにポリイミド膜を用いる場合には、まず全面に、第1絶縁膜150aとしてポリイミドをスピンコーティング法により塗布する。なお、第1絶縁膜150aとして塗布するポリイミドは、スピンコーティング法のほか、印刷法によって塗布することも可能である。
【0081】
図10は第1絶縁膜の露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
第1絶縁膜150aを形成した後は、第1絶縁膜150aの露光、比較的低温条件での熱処理(プリキュア)、及び現像を行い、各電極パッド13のカバー膜14が形成されていない領域に開口部151aを形成する。その後、比較的高温条件での熱処理(ポストキュア)を行い、第1絶縁膜150aを硬化する。これにより、カバー膜14を被覆し、各電極パッド13に通じる開口部151aを有する第1絶縁層15aが形成される。
【0082】
図11は第2絶縁膜を形成する工程の一例の要部断面模式図である。
第1絶縁層15aの形成後は、全面に第2絶縁膜150bを形成する。
例えば、第2絶縁層15bにポリイミド膜を用いる場合には、全面に第2絶縁膜150bとしてポリイミドをスピンコーティング法或いは印刷法により塗布する。
【0083】
図12は第2絶縁膜の露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
第2絶縁膜150bを形成した後は、第2絶縁膜150bの露光、プリキュア及び現像を行い、各電極パッド13のカバー膜14が形成されていない領域に開口部151bを形成すると共に、中央部Aの第2絶縁膜150bを除去する。
【0084】
なお、下層の第1絶縁層15aは、第1絶縁膜150aがポストキュアまで行われて形成されているため、この第2絶縁膜150bの現像の際には除去されず、この現像では、第2絶縁膜150bを選択的に除去することができる。
【0085】
第2絶縁膜150bの現像後は、ポストキュアを行い、第2絶縁膜150bを硬化する。これにより、図12に示すように、中央部Aを除く、中間部B及び端部Cの第1絶縁層15a上に形成された第2絶縁層15bが形成される。
【0086】
図13は第3絶縁膜を形成する工程の一例の要部断面模式図である。
第2絶縁層15bの形成後は、全面に第3絶縁膜150cを形成する。第3絶縁層15cにポリイミド膜を用いる場合には、全面に第3絶縁膜150cとしてポリイミドをスピンコーティング法或いは印刷法により塗布する。
【0087】
図14は第3絶縁膜の露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
第3絶縁膜150cを形成した後は、第3絶縁膜150cの露光、プリキュア及び現像を行い、各電極パッド13のカバー膜14が形成されていない領域に開口部151cを形成すると共に、中央部A及び中間部Bの第3絶縁膜150cを除去する。
【0088】
なお、この現像では、ポストキュアまで行われて形成された第1,第2絶縁層15a,15bを除去せずに、第3絶縁膜150cを選択的に除去することができる。
第3絶縁膜150cの現像後は、ポストキュアを行って第3絶縁膜150cを硬化し、中央部A及び中間部Bを除く、端部Cの第2絶縁層15b上に形成された第3絶縁層15cが形成される。
【0089】
これまでの工程により、第1絶縁層15aが中央部Aから端部Cに形成され、第2絶縁層15bが中間部Bから端部Cに形成され、第3絶縁層15cが端部Cに形成される。これにより、中央部Aから端部Cに向かって厚膜化された絶縁部材15が形成される。
【0090】
図15はシード層形成工程の一例の要部断面模式図である。
絶縁部材15の形成後は、全面にシード層16を形成する。シード層16は、Cu,Ni,Ti等を、例えば、スパッタ法により堆積することによって、形成することができる。絶縁部材15の表面、及び絶縁部材15の開口部151cから露出していた電極パッド13は、シード層16により被覆される。
【0091】
図16はレジスト形成工程の一例の要部断面模式図である。
シード層16の形成後は、シード層16上の全面に、レジスト50を形成する。レジスト50は、塗布法等を用いて形成することができる。
【0092】
図17はレジストの露光及び現像工程の一例の要部断面模式図である。
レジスト50の形成後は、その露光及び現像を行い、各電極パッド13の領域に対応する領域に、それぞれ開口部51を形成する。
【0093】
開口部51は、レジスト50を露光する際の露光精度等を考慮し、シード層16で被覆された、カバー膜14の開口部14a、及び絶縁部材15の開口部151cが、その開口部51内に含まれるようなサイズで形成する。
【0094】
図18はアンダーバンプメタル形成工程の一例の要部断面模式図である。
レジスト50に複数の開口部51を形成した後は、各開口部51内にそれぞれ、アンダーバンプメタル17を形成する。アンダーバンプメタル17は、Cu,Ni等を、例えば、シード層16を用いた電解メッキ法により堆積することによって、形成することができる。
【0095】
電解メッキ法によるアンダーバンプメタル17の形成では、メッキ条件(メッキ時の電流密度、メッキ時間、メッキ液等)を適切に調整する。それにより、領域によって異なる膜厚の絶縁部材15が形成されている複数の開口部51内に、上端位置P2の均一な、複数のアンダーバンプメタル17を、同時に形成する。
【0096】
図19はバンプ形成工程の一例の要部断面模式図である。
アンダーバンプメタル17の形成後は、アンダーバンプメタル17上にそれぞれ、バンプ18を形成する。バンプ18は、例えば、半田を、アンダーバンプメタル17同様、電解メッキ法により堆積することによって、形成することができる。
【0097】
電解メッキ法によるバンプ18の形成においても、メッキ条件(メッキ時の電流密度、メッキ時間、メッキ液等)を適切に調整することにより、複数のアンダーバンプメタル17上に、体積の均一な、複数のバンプ18を、同時に形成する。
【0098】
図20はレジスト除去工程の一例の要部断面模式図である。
バンプ18の形成後は、ウェット処理により、レジスト50を選択的に除去する。
図21はシード層除去工程の一例の要部断面模式図である。
【0099】
レジスト50を除去した後は、レジスト50の除去後に露出するシード層16を、ウェット処理により、選択的に除去する。
このようにしてシード層16の除去まで行った後、リフロー処理を行うと、各バンプ18が溶融し、それぞれ略球状で、且つ、上端位置P3の均一な複数のバンプ18が得られるようになる。その後は、ウェーハのダイシングを行い、上記の図1に示したような個々の半導体素子10に個片化する。
【0100】
以後は、個片化された半導体素子10を、上記の図4〜図6に例示したような流れに従って回路基板20に実装し、半導体装置1を完成させる。
以上、半導体素子10、回路基板20、及び半導体素子10を回路基板20に実装した半導体装置1について説明した。
【0101】
以上の説明では、一方の面側の中央部Aから端部Cの領域に複数のバンプ18がマトリクス状に配置された半導体素子10を例にして述べた。このほか、上記のような絶縁部材15は、一方の面側の中央部を除く外周部の領域に複数のバンプが配置されている半導体素子にも、同様に適用可能である。
【0102】
図22及び図23は半導体素子の別例の断面模式図である。
図22に示す半導体素子10aは、バンプ18が形成されていない中央部Xと、複数のバンプ18が形成されている外周部Yとを有している。
【0103】
このような半導体素子10aに絶縁部材15を形成する場合には、例えば、図22に示すように、バンプ18が形成されていない中央部X内に、1層の第1絶縁層15aが形成された領域を設ける。そして、その領域より外側に第2絶縁層15bを形成し、端部に第3絶縁層15cを形成する。第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの平面配置は、図1の半導体素子10について図2に示した平面配置と同様とすることができる。
【0104】
これにより、バンプ18と配線層12との間の絶縁部材15の膜厚が、中央部Xから外周部Yに向かって厚くなるため、外周部Yの半導体素子10a内部に発生する応力を抑えることができるようになる。
【0105】
また、図23に示す半導体素子10bは、上記図22の半導体素子10aと同様、バンプ18が形成されていない中央部Xと、複数のバンプ18が形成されている外周部Yとを有している。
【0106】
この半導体素子10bでは、バンプ18が形成されている外周部Y内に、第1絶縁層15aが形成された領域、第1,第2絶縁層15a,15bの2層が形成された領域、及び第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの3層が形成された領域を設けている。
【0107】
第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの平面配置は、図1の半導体素子10について図2に示した平面配置と同様、中央部Xを囲むように第2,第3絶縁層15b,15cが形成されるような配置とすることができる。
【0108】
このような半導体素子10bによっても、外周部Yの半導体素子10b内部に発生する応力を抑えることができるようになる。
なお、以上述べた絶縁部材15において、第2,第3絶縁層15b,15cの中央部A,X側の端部(段差部)を、隣接するバンプ18間に設ける場合には、次の図24に示すような例に従って設けることが可能である。
【0109】
図24は絶縁部材の形成例を示す図である。ここでは、半導体素子10,10a,10bにおける複数のバンプ18のうち、隣接するバンプ18a,18b間における第3絶縁層15cの端部の配置を例にして説明する。
【0110】
第3絶縁層15cを形成する際の露光精度等に起因した端部の位置ずれの可能性を考慮すると、製造上は、図24(A)に示すように、隣接するバンプ18a,18b間の中央に、第3絶縁層15cの端部を合わせることが好ましい。
【0111】
但し、図24(B),(C)に示すように、第3絶縁層15cの端部を、隣接するバンプ18a,18bのうちのいずれか一方の側に寄せて配置してもよい。
また、図24(D)に示すように、第3絶縁層15cの端部を、半導体素子10,10a,10bの中央部A,X側のバンプ18aが形成されているアンダーバンプメタル17及びシード層16の下側に潜らせて配置するようにすることもできる。
【0112】
図24(A)〜(D)のいずれの構成であっても、上記のようなクッション効果を得ることが可能であり、半導体素子10,10a,10bの内部に発生する応力を抑えることが可能である。
【0113】
なお、ここでは第3絶縁層15cの端部の配置を例に説明したが、第2絶縁層15bの端部の配置についても同様である。
ところで、以上の説明では、例えばバンプ18をマトリクス状に配置した半導体素子10を例にとると、図2に示したように、第1絶縁層15aが露出する中央部Aの周囲の中間部Bに、第2絶縁層15bを、一周、同じ幅で露出させるようにした。更に、その中間部Bの周囲の端部Cに、第3絶縁層15cを、一周、同じ幅で露出させるようにした。
【0114】
このほか、絶縁部材15は、次の図25〜図27に示すような構造で形成することも可能である。
図25は絶縁部材の第1変形例の平面模式図である。
【0115】
図25に示す絶縁部材15Aは、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cを有している。そして、この絶縁部材15Aは、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの3層が積層された、最も膜厚が厚くなる部分の面積が、半導体素子10平面のコーナー部C1で、図2に示した絶縁部材15に比べて増加するように形成されている。
【0116】
上記のように、半導体素子10のコーナー部C1では、中央部Aに比べて応力が大きくなる傾向があるため、この図25に示すような構造とすることにより、コーナー部C1に発生する応力を、より効果的に抑えることが可能になる。
【0117】
図26は絶縁部材の第2変形例の平面模式図である。
図26に示す絶縁部材15Bは、同様に第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cを有しており、コーナー部C1の最も膜厚が厚くなる部分の面積を、上記絶縁部材15Aよりも更に増加させた構造を有している。これにより、半導体素子10のコーナー部C1に発生する応力を、より一層効果的に抑えることが可能になる。
【0118】
図27は絶縁部材の第3変形例の平面模式図である。
図27に示す絶縁部材15Cは、同様に第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cを有しており、半導体素子10平面の辺部C2において、最も膜厚が厚くなる部分の面積を増加させた構造を有している。
【0119】
半導体素子10に発生する応力は、そのコーナー部C1だけでなく、辺部C2にも発生するため、この図27に示すような構造とすることにより、半導体素子10のコーナー部C1及び辺部C2に発生する応力を、効果的に抑えることが可能になる。
【0120】
なお、以上述べた絶縁部材15,15A,15B,15Cにおいて、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの3層が積層された、最も膜厚が厚くなる部分は、コーナー部C1及び辺部C2を含む外周縁部に、中央部Aを囲むように周設することが好ましい。
【0121】
例えば、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの3層が積層された、最も膜厚が厚くなる部分を、コーナー部C1のみに設け、辺部C2を第1,第2絶縁層15a,15bの2層の積層構造とした場合を想定する。この場合、半導体素子10及び回路基板20の構成、半導体装置1の形成条件(リフロー処理条件等)によっては、辺部C2に発生する応力を十分に抑えることができない場合が起こり得る。
【0122】
また、例えば、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの3層が積層された、最も膜厚が厚くなる部分を、辺部C2のみに設け、コーナー部C1を第1,第2絶縁層15a,15bの2層の積層構造とした場合を想定する。この場合も同様に、半導体素子10及び回路基板20の構成、半導体装置1の形成条件によっては、コーナー部C1に発生する応力を十分に抑えることができない場合が起こり得る。
【0123】
応力の発生を十分に抑えることができないことで、上記のような回路基板20との接続部破壊、半導体素子10の内部破壊、或いはアンダーフィル40の剥離が発生してしまう可能性が高くなる。そのため、最も膜厚が厚くなる部分を、コーナー部C1及び辺部C2を含む外周縁部に周設するようにすることで、半導体素子10及び回路基板20の構成、半導体装置1の形成条件によらず、半導体素子10に発生する応力を確実に抑えることが可能になる。
【0124】
但し、半導体素子10及び回路基板20の構成、半導体装置1の形成条件によっては、最も膜厚が厚くなる部分を、コーナー部C1のみ、或いは辺部C2のみに設け、応力の発生を抑えて半導体素子10の内部破壊等を抑えることも可能である。
【0125】
なお、半導体素子10に形成する絶縁部材15として、第1,第2変形例を組み合わせたもの、第2,第3変形例を組み合わせたもの、又は第1,第3変形例を組み合わせたものを用いることも可能である。
【0126】
即ち、1つの半導体素子10内に、図25に示した絶縁部材15Aのような1つのコーナー部と、図26に示した絶縁部材15Bのような別のコーナー部が存在していてもよい。同様に、1つの半導体素子10内に、図26に示した絶縁部材15Bのようなコーナー部と、図27に示した絶縁部材15Cのようなコーナー部及び辺部が存在していてもよい。また、同様に、1つの半導体素子10内に、図27に示した絶縁部材15Cのようなコーナー部及び辺部と、図25に示した絶縁部材15Aのようなコーナー部が存在していてもよい。
【0127】
勿論、絶縁部材15A,15B,15Cの少なくとも1つと、上記図2に示した絶縁部材15の一部とを組み合わせることも可能である。
なお、上記の絶縁部材15,15A,15B,15Cの構成、及びそれらの組み合わせは、図22及び図23に示したペリフェラル型の半導体素子10a,10bについても同様に適用可能である。
【0128】
また、以上の説明では、絶縁部材15,15A,15B,15Cとして、第1,第2,第3絶縁層15a,15b,15cの3層を積層した構造を例示したが、その層数は、これに限定されるものではない。2層或いは4層以上を積層した絶縁部材であっても、上記のように半導体素子10の中央部Aから端部Cに向かって厚膜化する手法を用いることで、半導体素子10に発生する応力を抑える上記同様の効果を得ることが可能である。層数は、半導体素子10,10a,10b、回路基板20、及びバンプ18の材質等に応じ、リフロー処理時に発生する応力の大きさに基づいて、設定することができる。
【0129】
また、以上の説明では、平面正方形の半導体素子10を例にして述べたが、上記手法は、平面長方形の半導体素子についても同様に適用可能であり、上記同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 半導体装置
10,10a,10b 半導体素子
11 半導体基板
11A 素子分離領域
11B 素子領域
11C MOSトランジスタ
11a ゲート絶縁膜
11b ゲート電極
11c ソース・ドレイン領域
11d 側壁絶縁膜
12,22 配線層
12A 第1配線層
12B 第2配線層
12C 第3配線層
12D 第4配線層
12E 第5配線層
12F 第6配線層
12a,12c,12h,12p 層間絶縁膜
12b プラグ
12d,12e,12j,12k,22a 配線
12f,12g,12m,12n,22b 絶縁層
12i,12r,22c ビア
13 電極パッド
14 カバー膜
14a,51,151a,151b,151c 開口部
15,15A,15B,15C 絶縁部材
15a 第1絶縁層
15b 第2絶縁層
15c 第3絶縁層
16 シード層
17 アンダーバンプメタル
17a 突出部
18,18a,18b バンプ
20 回路基板
21 コア基板
21a スルーホール
21b 導電層
21c 中心部
22d 電極部
30 予備半田層
40 アンダーフィル
50 レジスト
150a 第1絶縁膜
150b 第2絶縁膜
150c 第3絶縁膜
A,X 中央部
B 中間部
C 端部
Y 外周部
C1 コーナー部
C2 辺部
T 厚さ方向
P1,P2,P3 上端位置
t 厚さ
d 直径
h 高さ
D1,D2 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面に形成された複数の電極パッドと、
前記電極パッドが形成された位置を開口して、前記主面上に形成されたカバー膜と、
前記電極パッドが形成された位置を開口して、前記カバー膜上に形成された絶縁部材と、
前記開口内及び開口より突出して形成されたアンダーバンプメタルと、
前記アンダーバンプメタルの先端に形成されたバンプと、
を含み、
前記絶縁部材は、前記半導体基板の中心から外周にむけて厚く形成されていることを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記半導体基板の中心から外周にむけて環状に段階的に厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記絶縁部材は、複数の絶縁層の積層構造からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記アンダーバンプメタルの先端位置は、前記半導体基板主面より均一の高さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項5】
半導体基板の主面上に複数の電極パッドを形成する工程と、
前記電極パッドが形成された位置を開口して、前記主面上にカバー膜を形成する工程と、
前記電極パッドが形成された位置を開口して、前記カバー膜上に複数の絶縁層を積層して絶縁部材を形成する工程と、
前記開口内及び開口より突出してアンダーバンプメタルを形成する工程と、
前記アンダーバンプメタルの先端にバンプを形成する工程と、
を含み、
前記絶縁部材を形成する工程において、前記半導体基板の中心から外周にむけて前記絶縁層の積層部を厚く形成することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記複数の絶縁層を積層して絶縁部材を形成する工程において、
前記カバー膜全面に前記電極パッドが形成された位置を開口して、第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層上に、前記半導体基板の中心を開口した第1の開口部を有する第2の絶縁層を形成し、
前記第2の絶縁層上に、前記半導体基板の中心を開口し、前記第1の開口部より大きい第2の開口部を有する第3の絶縁層を形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−3586(P2011−3586A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143267(P2009−143267)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】