説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】絶縁膜に発生するクラックを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】実施の形態におけるパッド構造では、単に電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する(図8ではパッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成された開口部OP1の端部との間に位置する)ように電極層OPM1を形成するだけでなく、図8に示すように、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B≒D(図8ではB<D)を前提として、A<Bの関係を成立させることにより、B>Cの関係を成立させている。これにより、絶縁膜PASにクラックが発生することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、パッシベーション膜に形成された開口部から露出するボンディングパッドに電極層を介してワイヤを接続する半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−164623号公報(特許文献1)には、電極パッドの一部上に開口部を有する保護膜が形成されており、この開口部内を含む保護膜の一部上にNiP層が形成されている技術が記載されている。そして、この特許文献1では、NiP層にワイヤを電気的に接続するとしている。
【0003】
特開2003−7755号公報(特許文献2)には、接合パッドの一部上に開口部を有するパッシベーション層が形成されており、この開口部内を含むパッシベーション層の一部上にバス層を介して下部バンプ金属(UBM)が形成されている技術が記載されている。そして、この特許文献2では、下部バンプ金属上にバリアキャップを介して半田バンプを形成するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−164623号公報
【特許文献2】特開2003−7755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体チップの小型化(チップシュリンク)に伴い、半導体チップに形成されるパッドの大きさ(厚さ、外形寸法など)も小さくなる傾向にある。このような半導体チップのパッドに導電性部材として例えばワイヤを接続すると、パッドがボンディング荷重に耐え切れずに変形し、このパッドを覆うように形成された絶縁膜(パッシベーション膜)を破壊するおそれがある。
【0006】
そこで、本願発明者は、図1に示すように、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制するために、パッドPAD1上に電極層OPMを形成し、この電極層OPMを介してパッドPAD1にワイヤWを接続することを検討した。図1は、半導体チップの表層部に形成されたパッドPAD1近傍の構造(本願発明者の検討構造)を示す図である。図1に示すように、層間絶縁膜ILN上にパッドPAD1が形成されており、このパッドPAD1の一部を露出する開口部OPが形成された絶縁膜PASが、パッドPAD1を形成した層間絶縁膜ILN上に形成されている。そして、開口部OP内から絶縁膜PASの一部にわたって電極層OPMが形成され、この電極層OPMにワイヤWが接続されている。このような図1に示す構造によれば、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤWを形成する際、パッドPAD1上に形成されている電極層OPMが緩衝材となって、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制することができる。この結果、パッドの変形を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、この電極層OPMの形成方法として無電解めっき法を採用した場合、新たに以下に示す課題が発生することが明らかになった。すなわち、無電解めっき法の場合、電解めっき法のようにレジスト膜(マスク)を用いないため、図1に示すように、絶縁膜PAS上にも電極層OPMがはみ出して形成される。そして、絶縁膜PAS上に電極層OPMが形成されていると、電極層OPMから発生する応力が絶縁膜PASに伝わり、絶縁膜PASにクラックが形成されることがわかった。
【0008】
ここで、この電極層OPMを電解めっき法で形成すれば、絶縁膜PAS上に電極層OPMが形成されることを抑制できるが、電解めっき法の場合、シード層やレジスト膜(マスク)を形成しなければならず、無電解めっき法に比べて工程数が増加してしまう。
【0009】
また、電極層OPMの厚さを薄くすれば絶縁膜PAS上に電極層OPMが形成される(はみ出す)ことを抑制できるが、電極層OPMの厚さが薄すぎると、この電極層OPMでボンディング荷重を緩和しきれない。
【0010】
なお、特許文献1および特許文献2には、上述した絶縁膜のクラックについて記載がなく、本願発明者の検討によれば、特許文献1および特許文献2に記載された技術では、このクラックを抑制することが困難である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、絶縁膜に発生するクラックを抑制できる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
代表的な実施の形態における半導体装置は、(a)表面、前記表面に形成されたパッド、前記パッドの一部を露出するように前記表面上に形成された絶縁膜、および、平面視において、前記パッドと重なるように形成され、かつ、前記パッドの前記一部と接触する電極層を有する半導体チップと、(b)前記電極層と電気的に接続される導電性部材とを含む。このとき、前記電極層の周縁部は、平面視において、前記パッドの周縁部よりも内側に位置しており、前記絶縁膜の厚さは、前記パッドの厚さよりも大きい。さらに、前記絶縁膜は、前記パッドの前記一部を露出する開口部を有しており、前記絶縁膜の厚さは、平面視における前記絶縁膜の前記開口部の端部から前記電極層の周縁部までの距離よりも大きいことを特徴とするものである。
【0015】
また、代表的な実施の形態における半導体装置の製造方法は、以下の工程を含む。(a)リードを有する基材を準備する工程、(b)前記(a)工程の後、表面、前記表面に形成されたパッド、前記パッドの一部を露出するように前記表面上に形成された絶縁膜、平面視において前記パッドと重なるように形成され、かつ、前記パッドの前記一部と接触する電極層、および、前記表面とは反対側の裏面を有する半導体チップを、前記裏面が前記基材と対向するように、前記基材に搭載する工程。また、(c)前記(b)工程の後、導電性部材を介して前記電極層と前記リードとを電気的に接続する工程を含む。ここで、前記電極層の周縁部は、平面視において、前記パッドの周縁部よりも内側に位置しており、前記絶縁膜の厚さは、前記パッドの厚さよりも大きい。さらに、前記絶縁膜は、前記パッドの前記一部を露出する開口部を有しており、前記絶縁層の厚さは、平面視における前記絶縁膜の前記開口部の端部から前記電極層の周縁部までの距離よりも大きい。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
絶縁膜に発生するクラックを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体チップの表層部に形成された従来のパッド近傍の構造を示す図である。
【図2】実施の形態における半導体装置を上面から見た平面図である。
【図3】半導体装置を上面から見た図であり、樹脂を透視して示す図である。
【図4】実施の形態における半導体装置を裏面から見た図である。
【図5】図2のA−A線で切断した断面図である。
【図6】従来の半導体チップにおいて、パッド領域の断面に対応した図である。
【図7】実施の形態の半導体チップにおいて、図3のパッド領域を拡大して示す図である。
【図8】図7のA−A線で切断した断面図である。
【図9】従来のパッド構造におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図10】実施の形態のパッド構造におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図11】変形例におけるパッド構造を示す断面図である。
【図12】実施の形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図27】ワイヤボンディング工程を示す図である。
【図28】図27に続くワイヤボンディング工程を示す図である。
【図29】図28に続くワイヤボンディング工程を示す図である。
【図30】図29に続くワイヤボンディング工程を示す図である。
【図31】図30に続くワイヤボンディング工程を示す図である。
【図32】図31に続くワイヤボンディング工程を示す図である。
【図33】変形例における半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態)
<半導体装置の構成>
半導体装置は、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子と多層配線を形成した半導体チップと、この半導体チップを覆うように形成されたパッケージから形成されている。パッケージには、(1)半導体チップに形成されている半導体素子と外部回路とを電気的に接続するという機能や、(2)湿度や温度などの外部環境から半導体チップを保護し、振動や衝撃による破損や半導体チップの特性劣化を防止する機能がある。さらに、パッケージには、(3)半導体チップのハンドリングを容易にするといった機能や、(4)半導体チップの動作時における発熱を放散し、半導体素子の機能を最大限に発揮させる機能なども合わせもっている。このような機能を有するパッケージには様々な種類が存在する。以下に、パッケージの構成例について説明する。
【0025】
まず、本実施の形態における半導体装置の構成について図面を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態における半導体装置SAを上面から見た平面図である。図2に示すように、本実施の形態における半導体装置SAは矩形形状をしており、半導体装置SAの上面は樹脂(封止体)MRで覆われている。
【0026】
続いて、図3は、半導体装置SAを上面から見た図であり、樹脂MRを透視して示す図である。図3に示すように、半導体装置SAの樹脂MRを透視した内部には、矩形形状の配線基板WBが存在しており、この配線基板WB上に半導体チップCHPが配置されている。この半導体チップCHPも矩形形状をしている。半導体チップCHPの大きさは、配線基板WBの大きさよりも小さくなっており、半導体チップCHPは平面的に配線基板WBに内包されるように配置されている。特に、半導体チップCHPの四辺がそれぞれ配線基板WBの四辺と互いに並行するように配置されている。
【0027】
上述した半導体チップCHPには集積回路が形成されている。具体的に、半導体チップCHPを構成する半導体基板には、複数のMISFETなどの半導体素子が形成されている。そして、半導体基板の上層には層間絶縁膜を介して多層配線が形成されており、これらの多層配線が半導体基板に形成されている複数のMISFETと電気的に接続されて集積回路が構成されている。つまり、半導体チップCHPは、複数のMISFETが形成されている半導体基板と、この半導体基板の上方に形成された多層配線を有している。このように半導体チップCHPには、複数のMISFETと多層配線によって集積回路が形成されているが、この集積回路と外部回路とのインタフェースをとるために、半導体チップCHPにはパッド構造PADが形成されている。このパッド構造PADは、多層配線の最上層に形成されている最上層配線の一部を露出することにより形成されている。
【0028】
図3に示すように、半導体チップCHPの主面(表面、上面)には、複数のパッド構造PADが形成されている。具体的に、矩形形状をした半導体チップCHPの四辺のそれぞれに沿うように複数のパッド構造PADが形成されている。そして、半導体チップCHPに形成されている複数のパッド構造PADと相対するように配線基板WBの四辺のそれぞれに沿って複数のリード(ボンディングリード、電極)LD1が形成されている。そして、半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADは、配線基板WBに形成されているリードLD1と、導電性部材を介して電気的に接続されている。なお、本実施の形態における導電性部材は、例えば、金(Au)からなるワイヤWである。
【0029】
次に、図4は、本実施の形態における半導体装置SAを裏面から見た図である。図4に示すように、半導体装置SAの裏面には、複数の半田ボールSBがアレイ状(行列状)に配置されている。この半田ボールSBは半導体装置SAの外部接続端子として機能するものである。
【0030】
図5は、図2のA−A線で切断した断面図である。図5において、配線基板WBの上面にはリードLD1が形成されている一方、配線基板WBの下面にはリード(バンプランド、電極)LD2が形成されている。配線基板WBの内部には多層配線およびビアが形成されており、配線基板WBの上面に形成されているリードLD1と、配線基板WBの下面に形成されているリードLD2とは、配線基板WBの内部に形成されている多層配線と、ビアの内部に形成されたビア配線とによって電気的に接続されている。配線基板WBの下面に形成されているリードLD2はアレイ状に配置されており、このリードLD2上に半田ボールSBが搭載される。これにより、配線基板WBの裏面(下面)には、リードLD2と接続された半田ボールSBがアレイ状に配置される。
【0031】
配線基板WBの上面(表面、主面)には、半導体チップCHPが搭載されており、この半導体チップCHPは、配線基板WBと絶縁性の接着材ADで接着されている。そして、半導体チップCHPの主面に形成されているパッド構造PADと、配線基板WBの上面に形成されているリードLD1とはワイヤWで接続されている。さらに、配線基板WBの上面には半導体チップCHPおよびワイヤWを覆うように樹脂(封止体)MRが形成されている。
【0032】
このように構成されている半導体装置SAによれば、半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADがワイヤWを介して配線基板WBに形成されたリードLD1に接続され、このリードLD1は、配線基板WBの内部に形成されている配線およびビア配線によって、配線基板WBの裏面に形成されているリードLD2と電気的に接続される。したがって、半導体チップCHPに形成されている集積回路は、パッド構造PAD→ワイヤW→リードLD1→リードLD2→半田ボールSBの経路で最終的に半田ボールSBと接続されていることがわかる。このことから、半導体装置SAに形成されている半田ボールSBへ外部回路を電気的に接続することにより、半導体チップCHPに形成されている集積回路と外部回路とを接続することができることがわかる。
【0033】
上述した半導体装置SAは、パッケージ形態がBGA(Ball Grid Array)型である半導体装置であるが、本発明における半導体装置SAのパッケージ形態はこれに限らない。例えば、半導体チップCHPを搭載する基材として配線基板WBではなくリードフレームを使用するパッケージ形態にも適用することができる。
【0034】
このため、半導体チップCHPを搭載する部材を広い概念として基材と呼び、この基材には、配線基板WBやリードフレームが包含される。また、半導体チップCHPが搭載される基材の部分をチップ搭載部と呼び、このチップ搭載部の概念には、ダイパッドが含まれる。さらに、半導体チップCHPと接続する基材の電極をリードと呼ぶ。また、本発明では、半導体チップCHPのパッド構造PADと基材のリードとを接続するために、ワイヤWを使用する形態を含んでおり、ワイヤを含む広い概念を導電性部材と呼ぶ。
【0035】
<従来の半導体チップにおけるパッドの構造>
次に、従来の半導体チップCHPにおけるパッドPAD近傍の構造について説明する。図6は、図3の領域ARの断面に対応した図である。図6に示すように、従来の半導体チップにおいては、層間絶縁膜ILN上にパッドPAD1およびパッドPAD2が隣り合うように配置されており、このパッドPAD1およびパッドPAD2を覆う層間絶縁膜ILN上に絶縁膜(表面保護膜、パッシベーション膜)PASが形成されている。そして、この絶縁膜PASの一部が除去されてパッドPAD1の一部を開口する開口部OP1が形成されるとともに、絶縁膜PASの一部が除去されてパッドPAD2の一部を開口する開口部OP2が形成されている。そして、この開口部OP1内(言い換えると、パッドPAD1の露出部)から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出すように電極層(金属膜、めっき膜、)OPM1が形成されており、この電極層OPM1にワイヤ(図示せず)が接続される。同様に、開口部OP2内から絶縁膜PASの端部上にはみ出すように電極層OPM2が形成されており、この電極層OPM2にワイヤ(図示せず)が接続される。なお、層間絶縁膜ILNの下層には、多層配線が形成され、この多層配線の下層にある半導体基板にMISFETなどの半導体素子が形成されているが、図6での図示は省略している。
【0036】
ここで、従来技術の半導体チップCHPでは、パッドPAD1の厚さをAとし、パッドPAD1上の絶縁膜PASの厚さ、言い換えれば、パッドPAD1の表面から、絶縁膜PAS上に形成された電極層OPM1までの間隔をBとすると、A>Bの関係が成立している。さらに、従来技術の半導体チップCHPでは、平面視における絶縁膜PASの開口部OP1の端部から電極層OPM1の周縁部までの距離をCとすると、B<Cの関係が成立している。このように構成されている従来技術の半導体チップCHPでは、次に示すような問題点が発生することを、本発明者は見出した。
【0037】
<従来の半導体チップにおける問題点>
以下に、この従来の半導体チップCHPにおける問題点について説明する。例えば、半導体チップの小型化(チップシュリンク)に伴い、半導体チップCHPに形成されるパッドPAD1の大きさ(厚さ、外形寸法など)も小さくなる傾向にある。さらには、半導体チップCHPの小型化の要求に応えるため、パッドPAD1を覆うように形成される絶縁膜PASの薄膜化も進められている。このような半導体チップCHPのパッドPAD1にワイヤを接続すると、パッドPAD1がボンディング荷重に耐え切れずに変形し、このパッドPAD1を覆うように形成された絶縁膜PASを破壊するおそれがある。つまり、半導体チップCHPの小型化に伴い、パッドPAD1の厚さや絶縁膜PASの厚さが薄膜化されていることから、パッドPAD1にワイヤを接続する際に生じるボンディング荷重によって、パッドPAD1が変形し、このパッドPAD1の変形に伴う歪みによって絶縁膜PASが破壊されるポテンシャルが高まっている。
【0038】
さらに、パッドPAD1の下層(平面視においてパッドPAD1と重なる位置)には、多層配線や層間絶縁膜が形成されており、この多層配線の下層には、MISFETなどの半導体素子が形成されている。このため、ボンディング荷重によるパッドPAD1の変形は、パッドPAD1の下層に形成されている多層配線や層間絶縁膜に不所望な応力がかかる原因ともなり、この不所望な応力によって、パッドPAD1の下層に形成されている多層配線の断線、層間絶縁膜へのクラックの発生、あるいは、半導体基板に形成されているMISFETの破壊が顕在化するおそれが高まっている。
【0039】
そこで、従来の半導体チップCHPにおいては、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制するために、パッドPAD1上に電極層OPM1を形成し、この電極層OPM1を介してパッドPAD1にワイヤWを接続する構造が提案されている。つまり、この構造は、図6に示すように、パッドPAD1上に電極層OPM1が形成され、この電極層OPM1を介して、パッドPAD1とワイヤ(図示せず)とが接続される構造となっている。これにより、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤ(図示せず)を形成する際、パッドPAD1上に形成されている電極層OPM1が緩衝材となって、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制することができる。このため、図6に示す構造によれば、パッドの変形を抑制することができ、この結果、絶縁膜PASの破壊、パッドPAD1の下層に形成されている多層配線の断線、層間絶縁膜へのクラックの発生、あるいは、半導体基板に形成されているMISFETの破壊を抑制することができると考えられる。
【0040】
例えば、電極層OPM1を形成する方法としてめっき法が存在するが、めっき法には、電解めっき法と無電解めっき法がある。ここで、電解めっき法を使用して電極層OPM1を形成する場合、シード層やレジスト膜(マスク)を形成しなければならず、無電解めっき法に比べて工程数が増加してしまう。工程数が増加するということは、歩留まりの低下を招く要素が増加するとともに、製造コストが上昇してしまうことを意味する。したがって、歩留まり向上および製造コストの低減を充分に達成する観点から、電極層OPM1を形成するめっき法として、電解めっき法ではなく、無電解めっき法が使用される。ところが、電極層OPM1を形成する方法として、無電解めっき法を使用すると、絶縁膜PASにクラックが発生してしまうことを本発明者は見出した。
【0041】
<絶縁膜にクラックが発生する原因の解明>
そこで、本発明者は、絶縁膜PASにクラックが発生する原因について検討した結果、次に示すような結論に至ったので、この結論について説明する。
【0042】
まず、電極層OPM1を形成する方法として、歩留まり向上および製造コストの低減を充分に達成する観点から、電解めっき法ではなく、無電解めっき法が使用される。電極層OPM1の形成に無電解めっき法を使用する場合、電解めっき法のようにレジスト膜(マスク)を使用しないため、図6に示すように、パッドPAD1上だけでなく、パッドPAD1を覆う絶縁膜PAS上にもはみ出して電極層OPM1が形成される。そして、絶縁膜PAS上にはみ出して電極層OPM1が形成されると、電極層OPM1と絶縁膜PASとの界面に発生する応力によって絶縁膜PASにクラックが発生するもの考えられる。
【0043】
特に、電極層OPM1を形成する際の無電解めっき法では、めっき膜の形成中に80℃〜100℃の加熱処理が施されている。したがって、めっき膜の成長は、上述した80℃〜100℃の加熱下で行なわれることになる。このことから、形成されるめっき膜の温度は80℃〜100℃程度になっている。このように電極層OPM1の形成過程において、電極層OPM1に熱負荷が加わって電極層OPM1が膨張することにより、異種接合面である電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。さらには、電極層OPM1を形成した後、電極層OPM1が常温(室温)に戻る際にも、電極層OPM1に収縮作用が働いて、電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。
【0044】
ただし、本発明者がさらにクラックの発生原因を検討したところ、絶縁膜PAS上にはみ出して電極層OPM1が形成されていることだけが原因ではなく、絶縁膜PAS上にはみ出して電極層OPM1が形成されている領域に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域に働く応力との向きが逆方向になる場合に、特に、絶縁膜PASにクラックが発生することを見出した。つまり、例えば、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に圧縮応力が働き、かつ、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に引張応力が働く場合、絶縁膜PASにクラックが発生しやすいことを本発明者が初めて見出した。
【0045】
さらに、本発明者は、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが同じ向きになるのか、あるいは、逆向きになるのかは、絶縁膜PAS上に形成されている電極層OPM1のはみ出し量(絶縁膜PAS上にはみ出ている量)と相関があるという知見を獲得した。すなわち、本発明者は、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とは、絶縁膜PAS上にはみ出ている電極層OPM1の幅に依存して、同じ向きになったり、逆方向になったりすることを見出したのである。
【0046】
そこで、本発明者は、上述した知見に基づき、絶縁膜PASにクラックが発生することを抑制できる工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態におけるパッド構造について説明する。
【0047】
<本実施の形態におけるパッド構造>
図7は、図3の領域ARを拡大して示す図である。図7に示すように、層間絶縁膜ILN上にパッド(ボンディングパッド、パッド電極)PAD1とパッドPAD2が互いに隣り合うように配置されている。パッドPAD1上には、開口部OP1が形成されており、この開口部OP1内から外側にはみ出すように電極層OPM1が形成されている。この電極層OPM1は、例えば、ニッケル膜NIとパラジウム膜PDから形成されている。同様に、パッドPAD2上には、開口部OP2が形成されており、この開口部OP2内から外側にはみ出すように電極層OPM2が形成されている。この電極層OPM2は、例えば、ニッケル膜NIとパラジウム膜PDから形成されている。
【0048】
図8は、図7のA−A線で切断した断面図である。図8に示すように、本実施の形態における半導体チップでは、層間絶縁膜ILN上にパッドPAD1およびパッドPAD2が隣り合うように配置されており、このパッドPAD1およびパッドPAD2を覆う層間絶縁膜ILN上に絶縁膜(表面保護膜、パッシベーション膜)PASが形成されている。そして、この絶縁膜PASの一部が除去されてパッドPAD1の一部を開口する開口部OP1が形成されるとともに、絶縁膜PASの一部が除去されてパッドPAD2の一部を開口する開口部OP2が形成されている。そして、この開口部OP1内(言い換えると、パッドPAD1の露出部)から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出すように電極層(金属膜、めっき膜)OPM1が形成されており、この電極層OPM1にワイヤ(図示せず)が接続される。同様に、開口部OP2内から絶縁膜PASの端部上にはみ出すように電極層OPM2が形成されており、この電極層OPM2にワイヤ(図示せず)が接続される。なお、層間絶縁膜ILNの下層には、多層配線が形成され、この多層配線の下層にある半導体基板にMISFETなどの半導体素子が形成されているが、図8での図示は省略している。
【0049】
本実施の形態では、無電解めっき法を使用して電極層OPM1および電極層OPM2を形成している。したがって、無電解めっき法を使用したことが本実施の形態におけるパッド構造に現れるのでこの点について説明する。例えば、電解めっき法を使用して電極層OPM1を形成する場合を考える。この場合、パッドPAD1上にシート層が形成され、このシード層上に電極層OPM1が形成される構造となる。つまり、電解めっき法で電極層OPM1を形成する場合、パッドPAD1と電極層OPM1は直接接触するのではなく、電極層OPM1は、シード層を介してパッドPAD1と接続されることになる。さらに、電解めっき法では、レジスト膜(マスク)を使用して電極層OPM1を形成しているので、開口部OP1内(言い換えると、パッドPAD1の露出部)から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出すように電極層(金属膜、めっき膜)OPM1が形成されることはない。
【0050】
これに対し、無電解めっき法で電極層OPM1を形成する場合、電解めっき法のようにめっき膜を成長させる際の電極として機能するシード層を設ける必要がないので、パッドPAD1上に直接接触するように電極層OPM1が形成される。すなわち、無電解めっき膜を使用して電極層OPM1を形成する場合、パッドPAD1と電極層OPM1は直接接触する構成となるのである。そして、無電解めっき法では、レジスト膜(マスク)を使用しないため、開口部OP1から露出するパッドPAD1上だけでなく、開口部OP1が形成された絶縁膜PAS上にも電極層OPM1がはみ出して形成される。この結果、無電解めっき法で電極層OPM1を形成する場合、開口部OP1内(言い換えると、パッドPAD1の露出部)から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出すように電極層(金属膜、めっき膜)OPM1が形成される。つまり、無電解めっき法を使用した痕跡として、開口部OP1から露出するパッドPAD1の表面と電極層OPM1が直接接触する構成と、開口部OP1内(言い換えると、パッドPAD1の露出部)から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出すように電極層(金属膜、めっき膜)OPM1が形成される構成が実現される。
【0051】
次に、層間絶縁膜ILNは、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。また、パッドPAD1およびパッドPAD2は、例えば、窒化チタン膜TIN1と、この窒化チタン膜TIN1上に形成されたアルミニウム膜ALと、このアルミニウム膜AL上に形成された窒化チタン膜TIN2から構成される。つまり、このアルミニウム膜ALの上下を挟むように、窒化チタン膜TIN1および窒化チタン膜TIN2が形成されている。このとき、アルミニウム膜ALには、銅やシリコンが含有されている。
【0052】
窒化チタン膜TIN1および窒化チタン膜TIN2は、アルミニウム膜ALと層間絶縁膜ILNとの間の接着性やアルミニウム膜ALと絶縁膜PASとの接着性を向上させる機能と、アルミニウム膜ALのエレクトロマイグレーション耐性を向上させる機能を有している。すなわち、アルミニウム膜ALの上下を挟むように、窒化チタン膜TIN1および窒化チタン膜TIN2を形成することにより、パッドPAD1およびパッドPAD2の信頼性を向上させることができる。ここで、例えば、窒化チタン膜TIN1の膜厚は、50nm程度であり、アルミニウム膜ALの膜厚は、2000nm程度である。また、窒化チタン膜TIN2の膜厚は、22nm程度である。
【0053】
次に、絶縁膜PASは、例えば、窒化シリコン膜から形成されている。この絶縁膜PASは、表面保護膜、あるいは、パッシベーション膜と呼ばれる膜であり、この絶縁膜PASは、半導体チップを機械的応力や不純物の侵入から保護する機能を有している。
【0054】
続いて、パッドPAD1を覆うように形成されている絶縁膜PASには、開口部OP1が設けられており、この開口部OP1の底部にパッドPAD1が露出している。このとき、開口部OP1の底面から露出する窒化チタン膜TIN2は除去されており、開口部OP1の底面では、アルミニウム膜ALが露出していることになる。同様に、パッドPAD2を覆うように形成されている絶縁膜PASには、開口部OP2が設けられており、この開口部OP2の底部にパッドPAD2が露出している。このとき、開口部OP2の底面から露出する窒化チタン膜TIN2は除去されており、開口部OP2の底面では、アルミニウム膜ALが露出していることになる。
【0055】
そして、開口部OP1の底面に露出するパッドPAD1の表面上に電極層OPM1が形成されており、この電極層OPM1は、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出すよう形成されている。同様に、開口部OP2の底面に露出するパッドPAD2の表面上に電極層OPM2が形成されており、この電極層OPM2は、開口部OP2内から絶縁膜PASの端部(開口部OP2の周囲)上にはみ出すよう形成されている。
【0056】
このように構成されている電極層OPM1および電極層OPM2は、例えば、ニッケル膜NIと、このニッケル膜NI上に形成されたパラジウム膜PDから構成されている。電極層OPM1および電極層OPM2としてニッケル膜NIを使用している理由は、ニッケル膜NIがパッドPAD1やパッドPAD2を構成するアルミニウム膜ALよりも硬い膜であるからである。すなわち、電極層OPM1は、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤ(図示せず)を形成する際、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として機能することから、電極層OPM1をなるべく硬い膜から構成することにより、充分に緩衝材として機能を発揮させることができるのである。
【0057】
したがって、電極層OPM1をパッドPAD1よりも硬いニッケル膜NIだけから構成することも可能と考えられるが、本実施の形態では、ニッケル膜NIの表面にパラジウム膜PDを形成している。これは、以下に示す理由による。すなわち、電極層OPM1にはワイヤが接続されるが、電極層OPM1をニッケル膜NIだけから構成すると、電極層OPM1とワイヤとの接続信頼性が低下するのである。つまり、ニッケル膜NI自体はワイヤと良好に接続できるのであるが、ニッケル膜NIの表面に酸化ニッケル膜が形成されると、ワイヤとの接続信頼性が低下する。このため、ニッケル膜NIの表面が酸化されないように保護する観点から、ニッケル膜NIの表面にパラジウム膜PDを形成しているのである。以上のことから、パラジウム膜PDは、ニッケル膜NIの表面における酸化を抑制し、電極層OPM1とワイヤとの接続信頼性を向上させる機能を有していることがわかる。
【0058】
続いて、本実施の形態におけるパッド構造について、さらに説明する。まず、図8に示すように、本実施の形態におけるパッド構造では、パッドPAD1の厚さをAとし、電極層OPM1の厚さをDとする場合、A<Dの関係が成立している。すなわち、パッドPAD1の厚さよりも電極層OPM1の厚さのほうが大きくなっている。これにより、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤ(図示せず)を形成する際、電極層OPM1を、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として充分に機能させることができる。言い換えれば、電極層OPM1の厚さがパッドPAD1の厚さよりも薄くなる場合には、電極層OPM1におけるボンディング荷重の緩和効果が低くなってしまう。特に、電極層OPM1の厚さよりもパッドPAD1の厚さのほうが厚くなるように、パッドPAD1の厚さを厚くしても、例えば、パッドPAD1は、アルミニウム膜ALのような柔らかい金属からなるので、ボンディング荷重に対する変形を効果的に抑制することは困難である。つまり、ボンディング荷重に対する耐性を高める観点からは、パッド構造の膜厚を厚くすることが考えられるが、例えば、アルミニウム膜ALのような柔らかい金属からなるパッドPAD1自体の厚さを厚くする対策では、ボンディング荷重に対するパッドPAD1の変形を効果的に抑制することはできないのである。それよりも、パッドPAD1よりも硬い金属(例えば、ニッケル膜NI)から構成される電極層OPM1の厚さをパッドPAD1の厚さよりも厚くすることにより、電極層OPM1を、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として充分に機能させることができるのである。
【0059】
このことから、本実施の形態では、電極層OPM1の厚さをパッドPAD1の厚さよりも厚くなるように構成している。具体的に、例えば、パッドPAD1の厚さは、2μm程度であるのに対し、電極層OPM1の厚さは、3μm程度となっている。
【0060】
次に、本実施の形態におけるパッド構造の特徴について説明する。図8に示すように、本実施の形態におけるパッド構造の特徴は、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとした場合、A<Bの関係が成立している点にある。これにより、ボンディング荷重に対する耐性を高める観点から電極層OPM1の厚さ(D)を維持した状態でも(A<D)、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量(C)を小さくすることができるのである。すなわち、本実施の形態の特徴は、電極層OPM1の厚さ(D)を維持した状態でも、絶縁膜PASの厚さ(B)を厚くすることにより、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量(C)を小さくする点にある。
【0061】
例えば、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量(C)を小さくするには、パッドPAD1上に形成される電極層OPM1の厚さ(D)を薄くすることが考えられる。しかし、電極層OPM1の厚さ(D)を薄くすると、電極層OPM1をパッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として充分に機能させることができなくなってしまう。
【0062】
このことから、ボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として電極層OPM1を充分に機能させるとともに、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量(C)を小さくする工夫を施す必要性が生じる。この観点から、本実施の形態では、電極層OPM1の厚さ(D)を維持しつつ、絶縁膜PASの厚さ(B)を厚くする構成をとることにより、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量(C)を小さくする構成を実現しているのである。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとした場合、A<Bの関係が成立し、かつ、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとした場合、B>Cの関係が成立するのである。具体的に、本実施の形態では、例えば、絶縁膜PASの厚さ(B)は、2.5μm程度であり、電極層OPM1のはみ出し量(C)は0.5μm程度となっている。ここで、絶縁膜PASの厚さ(B)とは、図8に示すように、パッドPAD1の表面から、絶縁膜PAS上に形成された電極層OPM1までの間隔として定義される。また、本実施の形態では、B>Cの関係が成立するように開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量(C)が規定されており、この結果、例えば、図8に示すように、電極層OPM1の周縁部は、平面視において、パッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成されている開口部OP1の端部との間に位置していることになる。
【0063】
このような条件を満たす本実施の形態におけるパッド構造によれば、まず、パッドPAD1の厚さ(A)よりも電極層OPM1の厚さ(D)のほうが大きくなっている(A<D)。これにより、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤ(図示せず)を形成する際、電極層OPM1を、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として充分に機能させることができる。そして、本実施の形態におけるパッド構造では、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B<Dを前提として、A<Bの関係を成立させることにより、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとした場合、B>Cの関係を成立させている。これにより、絶縁膜PASにクラックが発生することを防止できる。
【0064】
なぜなら、B>Cの関係が成立するということは、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量(C)が小さくなることを意味している。ここで、例えば、上述した「絶縁膜にクラックが発生する原因の解明」の欄に記載した知見によれば、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが同じ向きになるのか、あるいは、逆向きになるのかは、絶縁膜PAS上にはみ出して形成されている電極層OPM1のはみ出し量(絶縁膜PAS上にはみ出ている量)(C)と相関があることになる。そして、この知見を詳細に検討した結果、本発明者は、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、絶縁膜PAS上にはみ出ている電極層OPM1のはみ出し量(せり出し量、絶縁膜PASと接触する面積)(C)が所定値以上になると、互いに逆方向の応力となり、所定値以下になると同じ方向の応力となることを見出したのである。
【0065】
例えば、図6に示す従来のパッド構造を検討した結果、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに逆方向の応力となり、絶縁膜PASにクラックが発生しやすい条件となっていることを見出した。一方、例えば、図8に示す本実施の形態のパッド構造を検討した結果、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となり、絶縁膜PASにクラックが発生しにくい条件となっていることを見出した。
【0066】
そこで、図6に示す従来のパッド構造と、図8に示す本実施の形態のパッド構造とを比較したところ、図6に示す従来のパッド構造では、B<Cの関係が成立して、電極層OPM1のはみ出し量(C)が大きくなっている。このため、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに逆方向の応力となるものと考えたのである。一方、図8に示す本実施の形態のパッド構造では、B>Cの関係が成立して、電極層OPM1のはみ出し量(C)が小さくなっている。このため、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となるものと考えたのである。
【0067】
このような考察から、本実施の形態におけるパッド構造によれば、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B<Dを前提として、A<Bの関係を成立させることにより、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとした場合、B>Cの関係を成立させているのである。そして、これらの条件が成立することにより、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、絶縁膜PASにクラックが発生することを抑制できるのである。
【0068】
以上のような本実施の形態におけるパッド構造の有用性を検証するために、シミュレーションを行なったので、このシミュレーション結果について説明する。なお、今回のシミュレーションは、電極層OPM1を95℃程度の加熱下で形成した後、常温(25℃)に戻した状態での応力を算出している。
【0069】
図9は、従来のパッド構造におけるシミュレーション結果を示す図である。図9に示すように、従来のパッド構造では、層間絶縁膜ILN上にパッドPAD1が形成されており、このパッドPAD1を覆うように絶縁膜PASが形成されている。そして、パッドPAD1の表面の一部を露出するように絶縁膜PASに開口部OP1が形成されており、この開口部OP1内から絶縁膜PASへはみ出すように電極層OPM1が形成されている。このとき、図9に示すように、従来のパッド構造を反映させるため、パッドPAD1の厚さが2μm、絶縁膜PASの厚さが0.75μm、電極層OPM1の厚さが3μmである条件でシミュレーションを実施した。この場合、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量は、2.25μmとなっている。すなわち、従来のパッド構造では、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B<Dを前提として、A>Bの関係が成立し、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとした場合、B<Cの関係が成立していることがわかる。
【0070】
このような条件で示される従来のパッド構造で、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とを算出した。その結果、図9に示すように、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されている領域(界面)に働く応力が圧縮応力(負)(−0.07)となり、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力が引張応力(正)(+0.01)となる結果が得られた。すなわち、従来のパッド構造では、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに逆方向の応力となり、絶縁膜PASにクラックが発生しやすくなっていることが検証されたことになる。
【0071】
一方、図10は、本実施の形態のパッド構造におけるシミュレーション結果を示す図である。図10に示すように、本実施の形態のパッド構造では、層間絶縁膜ILN上にパッドPAD1が形成されており、このパッドPAD1を覆うように絶縁膜PASが形成されている。そして、パッドPAD1の表面の一部を露出するように絶縁膜PASに開口部OP1が形成されており、この開口部OP1内から絶縁膜PASへはみ出すように電極層OPM1が形成されている。このとき、図10に示すように、本実施の形態のパッド構造を反映させるため、パッドPAD1の厚さが2μm、絶縁膜PASの厚さが2.5μm、電極層OPM1の厚さが3μmである条件でシミュレーションを実施した。この場合、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量は、0.5μmとなっている。すなわち、本実施の形態のパッド構造では、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B<Dを前提として、A<Bの関係が成立し、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとした場合、B>Cの関係が成立していることがわかる。
【0072】
このような条件で示される本実施の形態のパッド構造で、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とを算出した。その結果、図10に示すように、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力が引張応力(正)(+0.01)となり、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力が引張応力(正)(+0.02)となる結果が得られた。すなわち、本実施の形態のパッド構造では、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となり、絶縁膜PASにクラックが発生しにくくなっていることが検証されたことになる。
【0073】
さらに、図8に示す本実施の形態におけるパッド構造は、パッド間距離を縮小するという別の観点からも、図6に示す従来のパッド構造よりも優れていることを説明する。例えば、図6に示す従来のパッド構造と、図8に示す本実施の形態におけるパッド構造のいずれにおいても、平面視において、パッドPAD1に電極層OPM1が内包され、パッドPAD2に電極層OPM2が内包されている。このため、図6に示す従来のパッド構造と、図8に示す本実施の形態におけるパッド構造のいずれにおいても、パッドPAD1とパッドPAD2の間の距離を縮小することを考えた場合、パッドピッチの微細化は、パッドPAD1とパッドPAD2の間の距離に律速されると考えられる。
【0074】
しかし、実際には、パッドピッチの微細化を行なう場合には、パッドPAD1およびパッドPAD2自体の大きさも縮小される。これに対し、パッドPAD1上に形成される開口部OP1の開口径や、パッドPAD2上に形成される開口部OP2の開口径は、ワイヤボンディングの容易性を考慮して縮小せずに現状のサイズに維持することが望まれる。したがって、パッドピッチの微細化が進むということは、開口部OP1や開口部OP2の開口径が維持されたまま、パッドPAD1やパッドPAD2のサイズが小さくなることを意味する。この結果、パッドピッチの微細化が進むと、平面視において、電極層OPM1の絶縁膜PAS上へのはみ出し量がパッドPAD1の端部から外側に出てしまうことが生じる。同様に、パッドピッチの微細化が進むと、平面視において、電極層OPM2の絶縁膜PAS上へのはみ出し量がパッドPAD2の端部から外側に出てしまうことが生じる。
【0075】
この場合、パッドPAD1とパッドPAD2との間の距離は、絶縁膜PAS上にはみ出た電極層OPM1の周縁部と、絶縁膜PAS上にはみ出した電極層OPM2の周縁部との間の距離に律速されることになる。ここで、電極層OPM1の絶縁膜PAS上へのはみ出し量と、電極層OPM2の絶縁膜PAS上へのはみ出し量は、図8に示す本実施の形態におけるパッド構造よりも、図6に示す従来のパッド構造のほうが大きい。言い換えれば、図6に示す従来のパッド構造における距離E1は、図8に示す本実施の形態のパッド構造における距離E2よりも小さくなる(E1<E2)。このことは、パッド間ピッチおよびパッドサイズの微細化に伴って、パッド間ピッチが、絶縁膜PAS上にはみ出た電極層OPM1の周縁部と、絶縁膜PAS上にはみ出した電極層OPM2の周縁部との間の距離に律速されるようになると、図6に示す従来のパッド構造のほうが、図8に示す本実施の形態におけるパッド構造よりもパッドPAD1とパッドPAD2との間のショート不良が起こりやすくなることを意味する。言い換えれば、図8に示す本実施の形態におけるパッド構造のほうが、図6に示す従来のパッド構造よりも、パッド間ピッチおよびパッドサイズの微細化が容易になる利点があることがわかる。
【0076】
また、本実施の形態におけるパッド構造によれば、図8に示すように、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上に電極層OPM1がはみ出している。このため、例えば、ワイヤボンディング工程において、ワイヤ(ワイヤの先端に形成されたボール部)の形成位置が電極層OPM1の中央部から多少ずれたとしても、ワイヤ(ボール部)がはみ出た電極層OPM1上に接合されて、直接絶縁膜PASを踏むことがないので、絶縁膜PASのクラック耐性をより向上させることができる。
【0077】
<変形例におけるパッド構造>
次に、本実施の形態におけるパッド構造の変形例について説明する。図11は、本変形例におけるパッド構造を示す断面図である。図11に示すように、本変形例における半導体チップでは、層間絶縁膜ILN上にパッドPAD1およびパッドPAD2が隣り合うように配置されており、このパッドPAD1およびパッドPAD2を覆うように、層間絶縁膜ILN上に絶縁膜(表面保護膜、パッシベーション膜)PASが形成されている。そして、この絶縁膜PASの一部が除去されてパッドPAD1の一部を開口する開口部OP1が形成されるとともに、絶縁膜PASの他部(他の一部)が除去されてパッドPAD2の一部を開口する開口部OP2が形成されている。そして、この開口部OP1内(言い換えると、パッドPAD1の露出部)に電極層(金属膜、めっき膜)OPM1が形成されており、この電極層OPM1にワイヤ(図示せず)が接続される。同様に、開口部OP2内に電極層OPM2が形成されており、この電極層OPM2にワイヤ(図示せず)が接続される。なお、層間絶縁膜ILNの下層には、多層配線が形成され、この多層配線の下層にある半導体基板にMISFETなどの半導体素子が形成されているが、図11での図示は省略している。
【0078】
このように構成された本変形例におけるパッド構造の特徴は、パッドPAD1上に形成される絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1の底面に露出するパッドPAD1の表面上に形成された電極層OPM1の厚さをDとする場合、B≧Dの関係が成立していることにある。すなわち、パッドPAD1上に形成されている絶縁膜PASの厚さ(B)は、開口部OP1内に形成されている電極層OPM1の厚さ(D)以上となっている。これにより、本変形例によれば、電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する。言い換えると、開口部OP1から電極層OPM1がはみ出すことがないので、開口部OP1から電極層OPM1が絶縁膜PAS上にはみ出すことに起因した絶縁膜PASへのクラック発生を防止することができる。つまり、本変形例によれば、開口部OP1から電極層OPM1がはみ出すことがないので、そもそも、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力が存在しない。このため、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが逆方向になることに起因した絶縁膜PASへのクラック発生を抑制することができる。
【0079】
なお、本変形例においても、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、さらに、電極層OPM1の厚さをDとした場合、A<Bの関係が成立するとともに、A<Dの関係が成立している。
【0080】
ここで、本変形例におけるパッド構造によれば、電極層OPM1の絶縁膜PAS上へのはみ出し量と、電極層OPM2の絶縁膜PAS上へのはみ出し量が存在しない。つまり、図11に示す本変形例のパッド構造における電極層OPM1と電極層OPM2との間の距離E3は、図8に示す前記実施の形態のパッド構造における距離E2よりも大きくなる(E2<E3)。そして、本変形例では、電極層OPM1の絶縁膜PAS上へのはみ出し量と、電極層OPM2の絶縁膜PAS上へのはみ出し量が存在しないため、パッド間ピッチおよびパッドサイズの微細化が進んでも、電極層OPM1のサイズや電極層OPM2のサイズがパッドPAD1やパッドPAD2のサイズよりも大きくなることはない。すなわち、本変形例によれば、パッド間ピッチおよびパッドサイズの微細化が進んでも、パッド間ピッチが、電極層OPM1の周縁部と、電極層OPM2の周縁部との間の距離に律速されることはない。このことから、本変形例におけるパッド構造によれば、図8に示す前記実施の形態におけるパッド構造や図6に示す従来のパッド構造よりも、パッド間ピッチおよびパッドサイズの微細化が容易になる利点があることがわかる。
【0081】
<本実施の形態における半導体装置の製造方法>
続いて、本実施の形態における半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。まず、図12に示すように、通常の半導体製造技術を使用することにより、半導体基板上に、例えば、nチャネル型MISFETQnとpチャネル型MISFETQpを形成する。
【0082】
次に、配線工程について図13を参照しながら説明する。図13に示すように、半導体基板1Sの主面上にコンタクト層間絶縁膜CILを形成する。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、酸化シリコン膜から形成される。その後、コンタクト層間絶縁膜CILの表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用して平坦化する。
【0083】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、コンタクト層間絶縁膜CILにコンタクトホールCNTを形成する。例えば、図13では、nチャネル型MISFETQnのソース領域とドレイン領域、および、pチャネル型MISFETQpのソース領域とドレイン領域に接続するコンタクトホールCNTが図示されている。なお、図13では、図示されていないが、nチャネル型MISFETQnのゲート電極やpチャネル型MISFETQpのゲート電極にもコンタクトホールCNTが接続される。
【0084】
その後、コンタクトホールCNTの底面および内壁を含む層間絶縁膜上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0085】
そして、コンタクトホールCNTを埋め込むように、半導体基板1Sの主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を例えばCMP法を除去することにより、プラグPLGを形成することができる。
【0086】
次に、図13に示すように、プラグPLGを形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に層間絶縁膜IL1を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL1に溝を形成する。その後、溝内を含む層間絶縁膜IL1上にタンタル/窒化タンタル膜を形成する。このタンタル/窒化タンタル膜は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。続いて、タンタル/窒化タンタル膜上に薄い銅膜よりなるシード膜を、例えば、スパッタリング法で形成した後、このシード膜を電極とする電解めっき法により、溝を形成した層間絶縁膜IL1上に銅膜を形成する。その後、溝の内部以外の層間絶縁膜IL1上に露出している銅膜を、例えば、CMP法で研磨して除去することにより、層間絶縁膜IL1に形成された溝内にだけ銅膜を残す。これにより、配線L1を形成することができる。さらに、配線L1の上層に配線を形成するが、ここでの説明は省略する。
【0087】
その後、図14に示すように、最上層の層間絶縁膜ILN上に窒化チタン膜TIN1を形成し、この窒化チタン膜TIN1上に銅とシリコンを含有したアルミニウム膜ALを形成する。そして、このアルミニウム膜AL上に窒化チタン膜TIN2を形成する。窒化チタン膜TIN1の膜厚は、例えば、50nm程度であり、アルミニウム膜ALの膜厚は、例えば、2000nm程度である。また、窒化チタン膜TIN2の膜厚は、例えば、22nm程度である。これらの窒化チタン膜TIN1、アルミニウム膜ALおよび窒化チタン膜TIN2は、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。
【0088】
続いて、図15に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、窒化チタン膜TIN1、アルミニウム膜ALおよび窒化チタン膜TIN2をパターニングする。これより、窒化チタン膜TIN1、アルミニウム膜ALおよび窒化チタン膜TIN2の積層膜からなるパッドPAD1とパッドPAD2を形成することができる。
【0089】
次に、図16に示すように、パッドPAD1およびパッドPAD2を覆うように、層間絶縁膜ILN上に絶縁膜PASを形成する。絶縁膜PASは、例えば、窒化シリコン膜からなり、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を使用することにより形成することができる。この絶縁膜PASの膜厚は、例えば、2.5μmである。ここでいう絶縁膜PASの膜厚は、パッドPAD1の表面上に形成される絶縁膜PASの膜厚である。
【0090】
そして、図17に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、絶縁膜PASに開口部OP1および開口部OP2を形成する。具体的に、パッドPAD1の表面の一部を開口するように開口部OP1を形成し、パッドPAD2の表面の一部を開口するように開口部OP2を形成する。これにより、開口部OP1の底面にパッドPAD1の一部を構成する窒化チタン膜TIN2が露出し、開口部OP2の底面にパッドPAD2の一部を構成する窒化チタン膜TIN2が露出する。
【0091】
続いて、図18に示すように、エッチング技術を使用することにより、開口部OP1の底部から露出する窒化チタン膜TIN2を除去するとともに、開口部OP2の底部から露出する窒化チタン膜TIN2を除去する。
【0092】
その後、図19に示すように、無電解めっき法を使用することにより、開口部OP1から露出するパッドPAD1上に電極層OPM1を形成し、開口部OP2から露出するパッドPAD2上に電極層OPM2を形成する。本工程により、図8と同様の構成となる。具体的に、パッドPAD1上に形成する電極層OPM1に着目すると、まず、無電解めっき法により、処理温度を、例えば、80℃〜100℃程度にした状態で、パッドPAD1上にニッケル膜NIを形成する。このとき、パッドPAD1を構成するアルミニウム膜ALとめっき液との間の還元反応により、開口部OP1に露出するアルミニウム膜AL上にニッケル膜NIが形成される。一方、絶縁膜PASは、窒化シリコン膜から形成されており、この窒化シリコン膜は、めっき液との間で還元反応が生じないため、絶縁膜PAS上にはニッケル膜NIは成長しない。そして、開口部OP1から露出するパッドPAD1上にニッケル膜NIが堆積し続けると、ニッケル膜NIが開口部OP1の頂上まで達する。その後、ニッケル膜NIが開口部OP1の頂上を超えて成長する場合、無電解めっき法では、レジスト膜(マスク)を使用していないため、ニッケル膜NIは、水平方向と垂直方向にわたって等方的に成長する。したがって、開口部OP1上に形成されているニッケル膜NIは、絶縁膜PAS上にまではみ出して形成される。続いて、ニッケル膜NIの成長が終了すると、ニッケル膜NIの表面を覆うように、パラジウム膜PDを形成する。その後、無電解めっき法による成膜処理が完了して電極層OPM1の温度が常温(25℃)程度に戻る。
【0093】
ここで、本実施の形態では、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B<Dを前提として、A<Bの関係を成立させることにより、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとした場合、B>Cの関係を成立させている。これらの条件が成立することにより、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、絶縁膜PASにクラックが発生することを抑制できる。
【0094】
以上のようにして、半導体基板(半導体ウェハ)のそれぞれのチップ領域上に半導体素子(MISFET)、多層配線およびパッド構造を形成することができる。そして、半導体基板の裏面研削を実施して半導体基板の厚さを薄くした後、半導体基板に形成されているチップ領域をダイシングすることにより、複数の半導体チップを形成する。
【0095】
次に、図20に示すように、表面に複数のリードLD1が形成され、表面とは反対側の裏面に複数のリードLD2が形成された配線基板WBを用意する。そして、図21に示すように、配線基板WBの表面に存在するチップ搭載部(チップ搭載領域)に接着材ADを塗布する。その後、図22に示すように、配線基板WBのチップ搭載部上に塗布した接着材ADを介して半導体チップCHPを搭載する(ダイボンディング工程)。このダイボンディング工程で、配線基板WB上に半導体チップCHPを搭載する際、加熱処理が加えられる。
【0096】
したがって、この加熱処理によって、電極層OPM1に熱負荷が加わって電極層OPM1が膨張することにより、異種接合面である電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。さらには、ダイボンディング工程の終了後、電極層OPM1が常温(室温)に戻る際にも、電極層OPM1に収縮作用が働いて、電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。
【0097】
しかし、本実施の形態によれば、単に電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する(図11では開口部OP1の内側に位置し、図19ではパッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成された開口部OP1の端部との間に位置する)ように電極層OPM1を形成するだけでなく、図19に示すように、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B≒D(図11ではB≧D、図19ではB<D)を前提として、A<Bの関係を成立させることにより、B>Cの関係を成立させている。これらの条件が成立することにより、たとえ絶縁膜PAS上に電極層OPM1をはみ出して形成したとしても、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、電極層OPM1に熱負荷が加わったとしても、この絶縁膜PASにクラックが発生することを抑制できるのである。
【0098】
続いて、半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADと、配線基板WBに形成されているリードLD1とをワイヤで接続する(ワイヤボンディング工程)。具体的には、図23に示すように、まず、キャピラリCAPを半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADに押し付けてファーストボンディングする。その後、図24に示すように、キャピラリCAPを移動させて、配線基板WBに形成されているリードLD1にワイヤWをセカンドボンディングする。このようにして、半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADと、配線基板WBに形成されているリードLD1とをワイヤWで接続することができる。
【0099】
ここで、上述したワイヤボンディング工程では、キャピラリCAPによるボンディング荷重と熱負荷が加えられた状態で、ファーストボンディングおよびセカンドボンディングが行なわれる。このことから、例えば、半導体チップCHPのパッド構造PADにワイヤW(ボール部)を接続するファーストボンディングの際、半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADには、キャピラリCAPによるボンディング荷重と熱負荷が加えられる。したがって、キャピラリCAPによるボンディング荷重によって、パッドPAD1が変形して絶縁膜PASを破壊するおそれがあるとともに、電極層OPM1に熱負荷が加わって電極層OPM1が膨張することにより、異種接合面である電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。さらには、ワイヤボンディング工程の終了後、電極層OPM1が常温(室温)に戻る際にも、電極層OPM1に収縮作用が働いて、電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。
【0100】
しかし、本実施の形態によれば、図19に示すように、まず、パッドPAD1の厚さをAとし、電極層OPM1の厚さをDとする場合、A<Dの関係が成立している。すなわち、パッドPAD1の厚さよりも電極層OPM1の厚さのほうが大きくなっている。これにより、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤ(図示せず)を形成する際、電極層OPM1を、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として充分に機能させることができる。この結果、キャピラリCAPによるボンディング荷重のパッドPAD1への伝達をこの電極層OPM1で抑制することができるため、このボンディング荷重によって、パッドPAD1が変形して絶縁膜PASを破壊することを効果的に抑制することができる。
【0101】
さらに、本実施の形態によれば、単に電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する(図11では開口部OP1の内側に位置し、図19ではパッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成された開口部OP1の端部との間に位置する)ように電極層OPM1を形成するだけでなく、図19に示すように、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B≒D(図11ではB≧D、図19ではB<D)を前提として、A<Bの関係を成立させることにより、B>Cの関係を成立させている。これらの条件が成立することにより、たとえ絶縁膜PAS上に電極層OPM1をはみ出して形成したとしても、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、電極層OPM1に熱負荷が加わったとしても、この絶縁膜PASにクラックが発生することも抑制できる。
【0102】
次に、図25に示すように、半導体チップCHP、ワイヤW,配線基板WBの表面を覆うように、例えば、樹脂MRからなる封止体を形成する(モールド工程)。このモールド工程でも加熱処理が加えられる。
【0103】
したがって、この加熱処理によって、電極層OPM1に熱負荷が加わって電極層OPM1が膨張することにより、異種接合面である電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。さらには、モールド工程の終了後、電極層OPM1が常温(室温)に戻る際にも、電極層OPM1に収縮作用が働いて、電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。
【0104】
しかし、本実施の形態によれば、単に電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する(図11では開口部OP1の内側に位置し、図19ではパッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成された開口部OP1の端部との間に位置する)ように電極層OPM1を形成するだけでなく、図19に示すように、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B≒D(図11ではB≧D、図19ではB<D)を前提として、A<Bの関係を成立させることにより、B>Cの関係を成立させている。これらの条件が成立することにより、たとえ絶縁膜PAS上に電極層OPM1をはみ出して形成したとしても、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、電極層OPM1に熱負荷が加わったとしても、この絶縁膜PASにクラックが発生することを抑制できる。
【0105】
その後、図26に示すように、配線基板WBの裏面に形成されているリードLD2に、例えば、半田からなる半田ボール(外部接続端子)SBを取り付ける(半田ボール取り付け工程)。この半田ボール取り付け工程でも加熱処理が加えられる。
【0106】
したがって、この加熱処理によって、電極層OPM1に熱負荷が加わって電極層OPM1が膨張することにより、異種接合面である電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。さらには、半田ボール取り付け工程の終了後、電極層OPM1が常温(室温)に戻る際にも、電極層OPM1に収縮作用が働いて、電極層OPM1と絶縁膜PASの間の界面に応力が働くと考えられる。
【0107】
しかし、本実施の形態によれば、単に電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する(図11では開口部OP1の内側に位置し、図19ではパッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成された開口部OP1の端部との間に位置する)ように電極層OPM1を形成するだけでなく、図19に示すように、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B≒D(図11ではB≧D、図19ではB<D)を前提として、A<Bの関係を成立させることにより、B>Cの関係を成立させている。これらの条件が成立することにより、たとえ絶縁膜PAS上に電極層OPM1をはみ出して形成したとしても、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、電極層OPM1に熱負荷が加わったとしても、この絶縁膜PASにクラックが発生することを抑制できる。以上のようにして、本実施の形態における半導体装置を製造することができる。
【0108】
なお、完成した半導体装置は、実装基板(マザーボードなど)に実装されて使用される。この半導体装置の使用時においては、半導体チップCHPが動作することにより、半導体チップCHPが発熱する。このため、この半導体チップCHPの内部から生じた熱によって、半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADに応力が加わることが考えられる。しかし、本実施の形態によれば、上述したようにパッド構造PADに工夫を施しているため、半導体チップCHPに形成されている絶縁膜PASにクラックが発生することを抑制できる。つまり、本実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0109】
<ワイヤボンディング工程の詳細>
以下に、上述したワイヤボンディング工程の詳細について、図面を参照しながら説明する。まず、図27に示すように、放電トーチTCHによる放電により、キャピラリCAPから引き出されるワイヤWの先端にボール部BLを形成する。
【0110】
そして、図28に示すように、配線基板WBに搭載された半導体チップCHPのパッド構造PAD上に、キャピラリCAPの先端に形成されているボール部BLをボンディングする(ファーストボンディング)。
【0111】
このときの詳細な様子を図29に示す。図29に示すように、キャピラリCAPの先端に形成されているボール部BLが半導体チップCHPの電極層OPM2にボンディングされていることがわかる。このとき、半導体チップCHPに形成されている電極層OPM2には、キャピラリCAPによるボンディング荷重と熱負荷と超音波が加えられる。
【0112】
ここで、本実施の形態によれば、図19に示すように、まず、パッドPAD1の厚さをAとし、電極層OPM1の厚さをDとする場合、A<Dの関係が成立している。すなわち、パッドPAD1の厚さよりも電極層OPM1の厚さのほうが大きくなっている。これにより、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤWを形成する際、電極層OPM1を、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として充分に機能させることができる。この結果、キャピラリCAPによるボンディング荷重によって、パッドPAD1が変形して絶縁膜PASを破壊することを効果的に抑制することができる。
【0113】
特に、図29に示すように、パッドPAD2の下層には、複数の層間絶縁膜(層間絶縁膜IL1、層間絶縁膜IL2)および複数の配線(配線L1、配線L2)が形成されている。このため、例えば、パッドPAD2へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材としての電極層OPM2の厚さが充分でない場合や、電極層OPM2が形成されていない場合には、キャピラリCAPによるボンディング荷重によって、パッドPAD2が変形する。すると、このパッドPAD2の変形による応力が、パッドPAD2の下層に形成されている層間絶縁膜(層間絶縁膜IL1、層間絶縁膜IL2)や配線(配線L1、配線L2)に伝わって、層間絶縁膜(層間絶縁膜IL1、層間絶縁膜IL2)へのクラックの発生や、配線(配線L1、配線L2)の断線につながる可能性が高くなる。
【0114】
しかし、本実施の形態では、上述したように、パッドPAD1の厚さよりも電極層OPM1の厚さのほうが大きくなっている。これにより、パッドPAD1と電気的に接続するワイヤWを形成する際、電極層OPM1を、パッドPAD1へのボンディング荷重の伝達を抑制する緩衝材として充分に機能させることができる。この結果、キャピラリCAPによるボンディング荷重により、平面視において、パッドPAD2の重なる層間絶縁膜(層間絶縁膜IL1、層間絶縁膜IL2)へのクラックの発生や、配線(配線L1、配線L2)の断線を効果的に防止することができる。
【0115】
さらに、本実施の形態によれば、単に電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する(図11では開口部OP1の内側に位置し、図19ではパッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成された開口部OP1の端部との間に位置する)ように電極層OPM1を形成するだけでなく、図19に示すように、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B≒D(図11ではB≧D、図19ではB<D)を前提として、A<Bの関係を成立させることにより、B>Cの関係を成立させている。これらの条件が成立することにより、たとえ絶縁膜PAS上に電極層OPM1をはみ出して形成したとしても、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、電極層OPM1に熱負荷が加わったとしても、この絶縁膜PASにクラックが発生することも抑制できる。
【0116】
次に、図30に示すように、半導体チップCHP上のパッド構造PADが形成されている位置から、キャピラリCAPを移動させる。そして、図31に示すように、配線基板WBに形成されているリードLD1にワイヤWをセカンドボンディングする。このセカンドボンディングの際も超音波と熱負荷が加えられる。その後、図32に示すように、セカンドボンディングしたワイヤWをキャピラリCAPから切断する。このようにして、半導体チップCHPに形成されているパッド構造PADと、配線基板WBに形成されているリードLD1とをワイヤWで接続することができる。
【0117】
<本実施の形態における効果>
(1)本実施の形態における技術的思想によれば、図29に示すように、パッドPAD2上に電極層OPM2を形成し、この電極層OPM2にワイヤWを接続するように構成したので、ワイヤボンディング工程におけるパッドPAD2の変形を抑制できる。この結果、パッドPAD2の変形に起因する絶縁膜PASへのクラック発生を抑制できる効果が得られる。
【0118】
(2)本実施の形態における技術的思想によれば、図29に示すように、パッドPAD2上に電極層OPM2を形成し、この電極層OPM2にワイヤWを接続するように構成したので、ワイヤボンディング工程におけるパッドPAD2の変形を抑制できる。この結果、パッドPAD2の変形に起因する応力によって、パッドPAD2の下層に形成されている配線(配線L2、配線L1)に断線が生じることを抑制することができる効果が得られる。
【0119】
(3)本実施の形態における技術的思想によれば、図29に示すように、パッドPAD2上に電極層OPM2を形成し、この電極層OPM2にワイヤWを接続するように構成したので、ワイヤボンディング工程におけるパッドPAD2の変形を抑制できる。この結果、パッドPAD2の変形に起因する応力によって、パッドPAD2の下層に形成されている層間絶縁膜(層間絶縁膜IL1、層間絶縁膜IL2、層間絶縁膜ILN)へクラックが発生することを抑制できる効果が得られる。
【0120】
(4)本実施の形態における技術的思想によれば、単に電極層OPM1の周縁部が、平面視において、パッドPAD1の周縁部よりも内側に位置する(図11では開口部OP1の内側に位置し、図19ではパッドPAD1の周縁部と絶縁膜PASに形成された開口部OP1の端部との間に位置する)ように電極層OPM1を形成するだけでなく、図19に示すように、パッドPAD1の厚さをAとし、絶縁膜PASの厚さをBとし、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量をCとし、電極層OPM1の厚さをDとした場合に、B≒D(図11ではB≧D、図19ではB<D)を前提として、A<Bの関係を成立させることにより、B>Cの関係を成立させている。これらの条件が成立することにより、たとえ絶縁膜PAS上に電極層OPM1をはみ出して形成したとしても、絶縁膜PAS上に電極層OPM1がはみ出して形成されている領域(界面)に働く応力と、絶縁膜PAS上に電極層OPM1が形成されていない領域(界面)に働く応力とが、互いに同方向の応力となる。この結果、本実施の形態におけるパッド構造によれば、電極層OPM1に熱負荷が加わったとしても、この絶縁膜PASにクラックが発生することも抑制できる効果が得られる。
【0121】
(5)本実施の形態における技術的思想によれば、図19に示すように、開口部OP1内から絶縁膜PASの端部(開口部OP1の周囲)上にはみ出す電極層OPM1のはみ出し量を小さくすることができるので、隣りの電極層OPM2との接触を防止することができる。この結果、パッド間の距離(パッドピッチ)を低減できる効果が得られる。
【0122】
(6)例えば、図29において、アルミニウム膜ALからなるパッドPAD2に、金からなるワイヤWを直接接続する場合、パッドPAD2の表面にアルミニウムと金との間に脆い合金層(AlAu)が形成され、ボンディング強度の低下を招くおそれがある。しかし、本実施の形態における技術的思想によれば、図29に示すように、パッドPAD2とワイヤWとを直接接続せず、パッドPAD2上に形成したニッケル膜NIとパラジウム膜PDからなる電極層OPM2を形成し、この電極層OPM2とワイヤWとを接続している。このため、本実施の形態における技術的思想によれば、脆い合金層(AlAu)が生成されることはなく、ボンディング強度の向上を図ることができる。
【0123】
(7)本実施の形態における技術的思想は、ワイヤWとして金ワイヤを使用する場合に限らず、ワイヤWとして銅ワイヤを使用する場合にも有効である。なぜなら、例えば、銅ワイヤは、金ワイヤよりも硬いため、ワイヤボンディング時に加えるボンディング荷重が金ワイヤを使用した場合に比べて大きくなるからである。つまり、銅ワイヤを使用してワイヤボンディングを行なう場合、上記の脆い合金層(AlAu)の生成は抑制できるものの、金ワイヤを使用してワイヤボンディングを行なう場合に比べてボンディング荷重が大きくなるため、ボンディング荷重に起因する絶縁膜PASへのクラック発生、層間絶縁膜へのクラック発生、あるいは、配線の断線などの問題が顕在化しやすくなるからである。したがって、銅ワイヤを使用してワイヤボンディングを行なう場合に、本実施の形態における技術的思想を適用することにより、効果的に、絶縁膜PASへのクラック発生、層間絶縁膜へのクラック発生、あるいは、配線の断線などを抑制することができる。
【0124】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0125】
たとえば、前記実施の形態では、使用する半導体チップの半導体素子が、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)からなることについて説明したが、これに限定されるものではなく、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。また、前記実施の形態では、電極層に接続する導電性部材として、ワイヤを用いることについて説明したが、これに限定されるものではなく、突起状電極(バンプ電極)であっても良い。このとき、突起状電極は、図29に示すように、キャピラリCAPの先端に形成されているボール部BLを半導体チップの電極層OPM2にボンディングした後、ワイヤWを切断することで形成される。また、突起状電極は、例えば金(Au)からなる。そして、電極層に接続する導電性部材として突起状電極を用いる場合には、図33に示すように、半導体チップCHPの表面が配線基板WB(基材)と対向するように、配線基板WB(基材)に半導体チップCHPを搭載し、突起状電極BMPとリードLD1とを電気的に接続する。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1S 半導体基板
AD 接着材
AL アルミニウム膜
AR 領域
BL ボール部
BMP 突起状電極
CAP キャピラリ
CHP 半導体チップ
CIL コンタクト層間絶縁膜
CNT コンタクトホール
IL1 層間絶縁膜
IL2 層間絶縁膜
ILN 層間絶縁膜
LD1 リード
LD2 リード
L1 配線
L2 配線
MR 樹脂
NI ニッケル膜
OP 開口部
OP1 開口部
OP2 開口部
OPM 電極層
OPM1 電極層
OPM2 電極層
PAD パッド構造
PAD1 パッド
PAD2 パッド
PAS 絶縁膜
PD パラジウム膜
PLG プラグ
Qn nチャネル型MISFET
Qp pチャネル型MISFET
SA 半導体装置
SB 半田ボール
TCH 放電トーチ
TIN1 窒化チタン膜
TIN2 窒化チタン膜
W ワイヤ
WB 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面、前記表面に形成されたパッド、前記パッドの一部を露出するように前記表面上に形成された絶縁膜、および、平面視において、前記パッドと重なるように形成され、かつ、前記パッドの前記一部と接触する電極層を有する半導体チップと、
(b)前記電極層と電気的に接続される導電性部材とを含み、
前記電極層の周縁部は、平面視において、前記パッドの周縁部よりも内側に位置しており、
前記絶縁膜の厚さは、前記パッドの厚さよりも大きく、
前記絶縁膜は、前記パッドの前記一部を露出する開口部を有しており、
前記絶縁膜の厚さは、平面視における前記絶縁膜の前記開口部の端部から前記電極層の周縁部までの距離よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層の厚さは、前記絶縁膜の厚さよりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置であって、
前記電極層の周縁部は、平面視において、前記パッドの周縁部と前記絶縁膜に形成されている前記開口部の端部との間に位置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層の厚さは、前記絶縁膜の厚さ以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記絶縁膜において、前記パッドの表面から、前記絶縁膜上に形成された前記電極層までの間隔は、平面視における前記絶縁膜の前記開口部の端部から前記電極層の周縁部までの距離よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記パッドと平面的に重なる下層には、層間絶縁膜および配線層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層は、平面視において、前記パッドおよび前記絶縁膜の一部と重なるように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層は、前記パッドの前記一部と直接接触していることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層は、前記パッドよりも硬い材料から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置であって、
前記パッドは、アルミニウムを主成分とする膜を含むように形成されており、
前記電極層は、ニッケル膜を含むように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層の厚さは、前記パッドの厚さよりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記パッドは、複数の導体膜を積層した積層膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置であって、
前記パッドは、第1窒化チタン膜と、前記第1窒化チタン膜上に形成されたアルミニウムを主成分とする第1導体膜と、前記第1導体膜上に形成された第2窒化チタン膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層は、ニッケル膜と、前記ニッケル膜上に形成されたパラジウム膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記導電性部材は、金からなる金ワイヤ、銅からなる銅ワイヤ、あるいは、金からなる突起状電極から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記絶縁膜は、窒化シリコン膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
以下の工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法:
(a)リードを有する基材を準備する工程;
(b)前記(a)工程の後、表面、前記表面に形成されたパッド、前記パッドの一部を露出するように前記表面上に形成された絶縁膜、平面視において前記パッドと重なるように形成され、かつ、前記パッドの前記一部と接触する電極層、および、前記表面とは反対側の裏面を有する半導体チップを、前記裏面が前記基材と対向するように、前記基材に搭載する工程;
(c)前記(b)工程の後、導電性部材を介して前記電極層と前記リードとを電気的に接続する工程;
ここで、
前記電極層の周縁部は、平面視において、前記パッドの周縁部よりも内側に位置しており、
前記絶縁膜の厚さは、前記パッドの厚さよりも大きく、
前記絶縁膜は、前記パッドの前記一部を露出する開口部を有しており、
前記絶縁層の厚さは、平面視における前記絶縁膜の前記開口部の端部から前記電極層の周縁部までの距離よりも大きい。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(c)工程は、キャピラリを用いて行なわれ、
さらに、前記(c)工程では、前記電極層に、前記キャピラリによるボンディング荷重と、熱負荷が加えられることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法であって、
前記電極層の厚さは、前記絶縁膜の厚さよりも大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の半導体装置の製造方法であって、
前記電極層の前記周縁部は、平面視において、前記パッドの周縁部と前記絶縁膜に形成されている前記開口部の端部との間に位置していることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate


【公開番号】特開2012−146720(P2012−146720A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1770(P2011−1770)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】