説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】製造工程を複雑化することなく印刷法を適用した高精度な微細パターンの形成が可能で、これにより素子構成の高集積化を図ることが可能な塗布系の半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】凹凸形状を有するスタンパ3を押し圧するエンボス加工によって基板1の表面に凹状パターン1aを形成する。次に凹状パターン1aの両側にソース/ドレイン電極5をパターン形成する。また、凹状パターン1a内に、半導体材料からなる塗布系材料を印刷供給し、これを固化させることにより活性層7aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関し、特には印刷法を適用したパターン形成が成される半導体装置の製造方法、およびこれによって得られる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性層として有機半導体を利用した半導体装置が注目されている。有機半導体を用いた半導体装置は、有機半導体からなる活性層を低温で塗布成膜することが可能であるため、低コスト化に有利であると共に、プラスチック等の耐熱性のないフレキシブルな基板上への形成も可能である。また、活性層だけではなく、ゲート絶縁膜、ソース/ドレイン電極、さらにはゲート電極も、塗布系材料を用いることにより、印刷法によるパターン形成が可能となるため、さらなる低コスト化が図られる。
【0003】
ここで、塗布系材料を用いたパターン形成方法(印刷法)としては、インクジェット法が検討されている。インクジェット法は、粘度が数CP程度の材料であれば、様々な材料の印刷が可能であるが、その着弾精度,塗出量制御の困難のために現在のところ20μm程度が印刷精度の実力値である。このため、さらに精度を上げることを目的として、印刷する領域の周辺にポリイミド膜等の土手構造(バンク)を形成する方法が提案されている。
【0004】
一方、以上のようなインクジェット法の他にも、スクリーンプリント法のような型を用いた印刷法による微細パターンの形成も検討されている。型を用いた印刷法の中には、凹凸の型を未硬化の塗布膜に押し込むことで微細な構造を成形により作製するナノインプリント法がある(下記非特許文献1参照)。また、上記凹凸の型としてエラストマー型を用いる方法も提案されている(下記特許文献1参照)。さらに、リソグラフィーによって作製した微細なパターンをゴム状プラスチックスに写し取った型を用いるマイクロコンタクトプリント法も提案されている(下記比特許文献2参照)。
【0005】
【非特許文献1】Michael D. Austin and Stephen Y. Chou,「Appl. Phys. Lett.」2002年、81巻、p4431
【特許文献1】特表2003−509228号公報
【非特許文献2】A. Kumar, G.M. Whiteside et al. 「Langmuir」、1994年、第10巻、p1498
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した印刷法を半導体装置の製造工程に適用するには、それぞれ以下のような問題があった。
【0007】
すなわち、インクジェットにより微細パターンを形成するためには、上述したように印刷する領域の周辺にバンクを形成することが必須となる。このため、バンクを形成する材料(例えば,ポリイミド膜)の塗布工程、さらにはフォトリソグラフィーによる塗布膜のパターニング工程等、多くの工程が付加されて製造工程が複雑化すると言う問題があった。
【0008】
また、スクリーンプリントの場合、印刷膜厚を1μm以下にすることは困難である。このため、例えばスクリーンプリントによって有機半導体からなる活性層をパターン形成した場合、1μm以上もの大きさの表面段差が発生する。したがって、この上部に多層配線を形成した場合、段差の側壁で層間絶縁膜の段切れが生じ易く、上下の配線同士がショートしてしまう危険性がある。
【0009】
一方において、ナノインプリント法、およびマイクロコンタクトプリント法は、1μm以下の微細パターンの加工も可能である。しかしながら、これらの方法では、印刷できる材料と型、さらには材料と微細パターンを印刷形成する側の基板との相性(密着性)で制約があり、任意の材料でのパターン形成にこれらの方法を適用できる訳ではない。
【0010】
そこで本発明は、製造工程を複雑化することなく印刷法を適用した高精度な微細パターンの形成が可能で、これにより素子構成の高集積化を図ることが可能な塗布系の半導体装置の製造方法を提供すること、およびこのような製造方法によって得られる半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するための本発明の半導体装置の製造方法は、次の第1工程〜第3工程を行うことを特徴としている。先ず、第1工程では、凹凸形状を有するスタンパを押し圧するエンボス加工によって、基板の表面に凹状パターンを形成する。次の第2工程では、凹状パターン内に、半導体材料または導電性材料からなる塗布系材料を印刷供給する。その後第3工程では、印刷供給された塗布系材料を硬化させる。また本発明は、このような製造方法によって得られる半導体装置でもある。
【0012】
このような製造方法によれば、第1工程では、エンボス加工によって凹状パターンを形成しているため、スタンパを用意することにより1工程のみで凹状パターンが形成されることになる。つまり、基板上にバンクを設ける場合と比較して、より少ない工程数で凹状パターンが形成される。そして、第2工程では、この凹状パターン内に塗布系材料を印刷供給することにより、基板上における塗布系材料の広がりが制限される。したがって、凹状パターンの形成位置に、位置精度および形状精度良好に塗布系材料を印刷供給し、これを硬化させることにより半導体材料または導電性材料からなる層が形成される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、より少ない工程数で位置精度および形状精度良好に塗布系材料を印刷供給することが可能であるため、製造工程を複雑化することなく印刷法を適用した高精度な微細パターンの形成が可能となる。またこの結果、素子構成の高集積化を図ることが可能な塗布系の半導体装置を、工程を複雑させることなく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した各実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下においては、本発明の半導体装置の製造方法を、薄膜トランジスタの作製に適用した各実施形態を説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の製造方法を説明するための断面工程図である。また、図2はここで作製する薄膜トランジスタの平面図である。以下、図1の断面工程図に基づき、図2を参照しつつ、本発明をトップゲート型の薄膜トランジスタの作製に適用した第1実施形態を説明する。
【0016】
先ず図1(1)に示すように、基板1に対して、表面が凹没形状に成形されたスタンパ3を押し圧することにより、基板1の表面にエンボス加工による凹状パターン1aを形成する。この凹状パターン1aは、ここで作製する薄膜トランジスタにおける活性層の形状であり、矩形形状であることとする。
【0017】
ここで、基板1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチック基板等からなるか、またはプラスチック基板やガラス基板上にエンボス加工が容易な樹脂材料からなるバッファ層を設けた基板であっても良い。基板1の表面がバッファ層で構成されている場合、このバッファ層に対してエンボス加工を行うことにより、凹状パターン1aを形成する。
【0018】
一方、スタンパ3は、一主面側に凹状パターン1aに対応する凸形状が形成されたものであり、基板1または表面層を構成するバッファ層よりも、軟化温度またはガラス転移温度の高い材料で構成されていることとする。
【0019】
そして、基板1のエンボス加工による凹状パターン1aの形成においては、基板1の表面にスタンパ3を押し圧した状態で、基板1の温度を、当該基板1の表面層の軟化温度またはガラス転移温度以上に上昇させる。これにより、基板1の表面層にスタンパ3の凸部分をめり込ませる。この状態で、基板1を冷却して硬化させた後、スタンパ3を基板1側から脱離させる。
【0020】
次に、図1(2)に示すように、凹状パターン1aの両端縁に重なる状態で、ソース/ドレイン電極5をパターン形成する。ここでは、インクジェット法、マイクロコンタクト法、またはスクリーン印刷法等の印刷法や、フォトリソグラィー法などにより、ソース/ドレイン電極5をパターン形成する。
【0021】
ここで、工程の簡略化を図るには、印刷法によってソース/ドレイン電極5を形成することが好ましい。この場合、例えば導電性材料を含有するペースト状または液状の塗布系材料を用いた印刷法により、塗布系材料をパターン印刷した後、これを固化させることにより、ソース/ドレイン電極5を形成する。
【0022】
一方、より微細なソース/ドレイン電極5を高精度に形成するためには、リソグラフィー法を適用したパターン形成を行うことが好ましい。この場合、成膜した電極材料層をリソグラフィー法によって形成したレジストパターンをマスクに用いてパターンエッチングするか、またはリソグラフィー法によって形成したレジストパターンを覆う状態で電極材料層を形成した後、レジストパターンを除去することにより上部の電極材料層部分をリフトオフ除去する。尚、この場合であっても、工程の簡略化を図るには、電極材料層の成膜を塗布によって行うことが好ましい。
【0023】
その後、図1(3)に示すように、凹状パターン1a内に、塗布ノズルの先端から有機半導体材料を含有する塗布系材料7を印刷供給する。ここでは、例えばインクジェット法やディスペンス法などにより、凹状パターン1a内に塗布ノズルの先端から塗布系材料7を滴下供給する。この際、溶媒に有機半導体材料を溶解させた液状の塗布系材料7を、凹状パターン1aの容積とほぼ等しい量だけ滴下する。
【0024】
この状態で、印刷供給された塗布系材料7を固化させ、有機半導体からなる活性層7aを形成する。ここでは、液状の塗布系材料7に含有されている溶媒を揮発除去するとにより、塗布系材料7を固化させて活性層7aを形成する。またここでは、凹状パターン1aの容積とほぼ同等の量で印刷供給された塗布系材料7を固化させるため、基板1の表面とほぼ同一高さの活性層7aが形成される。この活性層7aは、凹状パターン1aの側壁部分において、ソース/ドレイン電極5上に重ねて設けられる。
【0025】
尚、上述の図1(2)を用いて説明したソース/ドレイン電極5の形成と、図1(3)を用いて説明した活性層7aの形成とは、活性層7aの損傷を防止できるのであれば、逆の順序で行っても良い。そして、逆の順序で行った場合であって、かつ活性層7aの高さが基板1の表面よりも高く印刷形成された場合には、基板1と活性層7aの高さが同程度になるように、必要に応じて活性層7aの研磨による平坦化処理を行い、その後ソース/ドレイン電極5の形成を行っても良い。
【0026】
以上の後、図1(4)に示すように、スピンコート法またはスリットコート法などの塗布法により、活性層7aおよびソース/ドレイン電極5を覆う状態で、基板1上にゲート絶縁膜9を形成する。この場合、活性層7aの高さは、基板1の表面と略同一であるため、ゲート絶縁膜9の塗布形成に対して活性層7aが影響を及ぼすことはない。
【0027】
次に、図1(5)に示すように、ゲート絶縁膜9の上部に、ソース/ドレイン電極5間において活性層7a上を横切るようにゲート電極11を形成する。このようなゲート電極11の形成は、図1(2)を用いて説明したソース/ドレイン電極5の形成と同様に、インクジェット法、マイクロコンタクト法、またはスクリーン印刷法等の印刷法や、フォトリソグラィー法を適用して行われる。
【0028】
以上のようにして、トップゲート型の薄膜トランジスタを半導体装置13として得る。この半導体装置13は、基板1の表面に形成された凹状パターン1a内に、塗布系材料を固化させた有機半導体材料からなる活性層7aが選択的に埋め込まれたものとなる。
【0029】
そして以上説明した第1実施形態の製造方法によれば、図1(1)を用いて説明したように、凹状パターン1aの形成をエンボス加工によって行っているため、1枚のスタンパ3を用意することにより、1工程のみで凹状パターン1aが形成されることになる。つまり、凹状パターンを形成するために基板上にバンクを設ける場合と比較して、より少ない工程数で凹状パターン1aを形成することができるのである。そして、図1(3)を用いて説明したように、エンボス加工によって形成した凹状パターン1a内に、塗布系材料を印刷供給することにより、基板1上における塗布系材料の広がりが制限される。したがって、凹状パターン1aの形成位置に、位置精度および形状精度良好に塗布系材料7をパターン印刷することができる。
【0030】
この結果、より少ない工程数で、位置精度および形状精度良好に塗布系材料を印刷供給することが可能であるため、製造工程を複雑化することなく印刷法を適用した高精度な活性層7aの形成が可能となる。この結果、この活性層7aを備えた半導体装置(薄膜トランジスタ)13の高集積化を図ることが可能となる。
【0031】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の製造方法を説明するための断面工程図である。この図に示す第2実施形態の製造方法が第1実施形態と異なるところは、基板1’の構成と凹状パターン1a’の形成手順にあり、その後の工程は、第1実施形態と同様であることとする。
【0032】
すなわち、第本第2実施形態においては、先ず図3(1)に示すように、材料基板15上に樹脂材料層17を形成してなる基板1’を用意する。材料基板15は、プラスチック基板やガラス基板からなる。また樹脂材料層17は、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂からなり、未硬化の状態で塗布形成されていることとする。
【0033】
次に、図3(2)に示すように、この基板1’の表面に対して、スタンパ3を押し圧させる。スタンパ3は、第1実施形態と同様のものであって良い。この状態で、未硬化の樹脂材料層17を硬化させる。ここでは、樹脂材料層17が紫外線硬化樹脂からなる場合には、スタンパ3または材料基板15のうち、透明材料で構成された部材側からの紫外線照射によって樹脂材料層17を硬化させる。一方、樹脂材料層17が熱硬化樹脂からなる場合には、加熱によって樹脂材料層17を硬化させる。
【0034】
そして樹脂材料層17が硬化したところで、図3(3)に示すように、基板1’側からスタンパ3を脱離させる。これにより、基板1’の表面にスタンパ3の凸型形状に追従した凹状パターン1a’を形成する。
【0035】
以上の後には、第1実施形態で図1(2)以降で説明した工程を同様に行うことにより、第1実施形態と同様のトップゲート型の薄膜トランジスタを得る。
【0036】
またこのような第2実施形態の製造方法であっても、凹状パターン1a’の形成がエンボス加工によって行われ、またこの凹状パターン1a’内に、塗布系材料を印刷供給して活性層を形成するため、第1実施形態と同様に、製造工程を複雑化することなく印刷法を適用した高精度な活性層の形成が可能となる。
【0037】
また、特に図3(1)で説明した樹脂材料層17を紫外線硬化樹脂で構成した場合には、エンボス加工においての樹脂材料層17の硬化において加熱の必要がない。このため、例えば基板1’を構成する材料基板15に対して加熱によるストレスが加わることを防止出来ると共に、材料基板15として耐熱性が低い材料を用いることができる。
【0038】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の製造方法を説明するための断面工程図である。以下、図4の断面工程図に基づき、本発明をトップゲート型の薄膜トランジスタの作製に適用した他の実施形態として第3実施形態を説明する。尚、ここで作製する薄膜トランジスタの平面図は、第1実施形態で用いた図2と同様である。
【0039】
先ず図4(1)に示すように、基板21に対して、表面が凹没形状に成形されたスタンパ23を押し圧することにより、基板21の表面にエンボス加工による凹状パターン21aを形成する。この凹状パターン21aは、ここで作製する薄膜トランジスタにおけるソース/ドレイン電極の形状であり、配線溝として形成されることとする。
【0040】
次に、図4(2)に示すように、凹状パターン21a内に、塗布ノズルの先端から導電性材料を含有する塗布系材料25を印刷供給する。ここでは、例えばインクジェット法やディスペンス法などにより、凹状パターン21a内に塗布ノズルの先端から塗布系材料25を滴下供給する。この際、例えば溶媒中に導電性材料を分散させた液状の塗布系材料25を、凹状パターン21aの容積とほぼ等しい量だけ滴下する。
【0041】
この状態で、印刷供給された塗布系材料25を固化させ、導電性材料からなるソース/ドレイン電極25aを形成する。ここでは、液状の塗布系材料25に含有されている溶媒を揮発除去するとにより、塗布系材料25を固化させてソース/ドレイン電極25aを形成する。またここでは、凹状パターン21aの容積とほぼ同等の量で印刷供給された塗布系材料25を固化させるため、基板21の表面とほぼ同一高さのソース/ドレイン電極25aが形成される。
【0042】
尚、ソース/ドレイン電極25aの高さが、基板1の表面よりも高く印刷形成された場合には、基板1とソース/ドレイン電極25aの高さが同程度になるように、必要に応じてソース/ドレイン電極25aの研磨による平坦化処理を行っても良い。
【0043】
その後、図4(3)に示すように、ソース/ドレイン電極25aに両端縁を重ねる状態で、活性層27を形成する。ここでは、インクジェット法、マイクロコンタクト法、またはスクリーン印刷法等の印刷法により、有機半導体材料からなる活性層27を形成することとする。
【0044】
尚、上述の図4(2)を用いて説明したソース/ドレイン電極25aの形成と、図4(3)を用いて説明した活性層27の形成とは、活性層27の損傷を防止できるのであれば、逆の順序で行っても良い。
【0045】
以降の図4(4)および図4(5)に示す工程は、第1実施形態において図1(4)および図1(5)を用いて説明したと同様に行う。
【0046】
すなわち先ず、図4(4)に示すように、スピンコート法またはスリットコート法などの塗布法により、活性層27およびソース/ドレイン電極25aを覆う状態で、基板21上にゲート絶縁膜29を形成する。この場合、ソース/ドレイン電極25aの高さは、基板21の表面と略同一であるため、ゲート絶縁膜29の塗布形成にソース/ドレイン電極25aが影響を及ぼすことはない。
【0047】
次に、図5(5)に示すように、ゲート絶縁膜29の上部に、ソース/ドレイン電極25a間において活性層27上を横切るようにゲート電極31を形成する。このようなゲート電極31の形成は、図1(2)を用いて説明したソース/ドレイン電極5の形成と同様に、インクジェット法、マイクロコンタクト法、またはスクリーン印刷法等の印刷法や、フォトリソグラィー法を適用して行われる。
【0048】
以上のようにして、トップゲート型の薄膜トランジスタを半導体装置33として得る。この半導体装置33は、基板21の表面に形成された凹状パターン21a内に、塗布系材料を固化させた導電性材料からなるソース/ドレイン電極25aが選択的に埋め込まれたものとなる。
【0049】
そして以上説明した第3実施形態の製造方法によれば、図4(1)および図4(2)を用いて説明したように、エンボス加工によって行って形成した凹状パターン21a内に塗布系材料を印刷供給して固化させることによりソース/ドレイン電極25aを形成している。このため、凹状パターンを形成するために基板上にバンクを設ける場合と比較して、より少ない工程数で凹状パターン21aを形成することができる。したがって、より少ない工程数で、位置精度および形状精度良好に塗布系材料を印刷供給してソース/ドレイン電極25aを形成することが可能である。この結果、このソース/ドレイン電極25aを備えた半導体装置(薄膜トランジスタ)33の高集積化を図ることが可能となる。
【0050】
また、本第3実施形態においては、線幅を狭く保ちつつも低抵抗化を確保することが要求されるソース/ドレイン電極25aを凹状パターン21a内に形成する構成である。このため、低抵抗化のために、ソース/ドレイン電極25aを厚膜化した場合であっても、基板21の表面からソース/ドレイン電極25aが突出する高さを抑えることが可能になる。したがって、ソース/ドレイン電極25aを形成した後の、図4(3)以降を用いて説明した各工程を、より平坦性を確保した面上にて行うことが可能となり、プロセスの容易性を確保することが可能である。
【0051】
尚、上述した第3実施形態の製造方法は、第2実施形態と組み合わせることができる。この場合、図4(1)を用いて説明した凹部21aの形成工程に、第2実施形態において図3(1)〜図3(3)を用いて説明した工程を適用することとする。
【0052】
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態の製造方法を説明するための断面工程図である。また、図6はここで作製する薄膜トランジスタの平面図である。以下、図5の断面工程図に基づき、図6を参照しつつ、本発明をボトムゲート型の薄膜トランジスタの作製に適用した第4実施形態を説明する。
【0053】
先ず、図5(1)に示すように、基板41を用意する。この基板41は、第1実施形態で説明した基板1と同様のものであって良い。そして、この基板41上に、ゲート電極43を形成する。このゲート電極43の形成は、図1(2)を用いて説明したソース/ドレイン電極5の形成と同様に、インクジェット法、マイクロコンタクト法、またはスクリーン印刷法等の印刷法や、フォトリソグラィー法を適用して行われる。
【0054】
次に、図5(2)に示すように、基板41に対して、表面が凹没形状に成形されたスタンパ45を押し圧することにより、基板41の表面のゲート電極43の一部に重なる位置に、エンボス加工による凹状パターン41aを形成する。この凹状パターン41aは、ここで作製する薄膜トランジスタにおける活性層の形状であり、ゲート電極43の矩形形状であることとする。これにより、矩形形状の凹状パターン41aに沿ってこれを横切るように、ゲート電極43の一部が凹状パターン41a内に配線された状態となる。尚ここで用いるスタンパ45は、第1実施形態で用いたものと同様であって良い。
【0055】
次いで、図5(3)に示すように、ゲート電極43の一部が配線された凹状パターン41aの内壁を覆う状態で、基板41上にゲート絶縁膜47を形成する。ここでは、スピンコート法、スリットコート法などにより、ゲート絶縁膜47の形成を行う。この際、ゲート絶縁膜47の表面側に、下地の凹状パターン41aに追従した平面矩形形状の凹状パターン47aが残るように成膜条件を調整することが重要である。
【0056】
次に、図5(4)に示すように、ゲート電極43を挟んで凹状パターン47aの両端縁に重なる状態で、ソース/ドレイン電極49をパターン形成する。ここでは、第1実施形態において図1(2)を用いて説明したと同様に、インクジェット法、マイクロコンタクト法、またはスクリーン印刷法等の印刷法や、フォトリソグラィー法などにより、ソース/ドレイン電極49をパターン形成する。
【0057】
その後、図5(5)に示すように、凹状パターン47a内に、塗布ノズルの先端から有機半導体材料を含有する塗布系材料51を印刷供給する。ここでは、例えばインクジェット法やディスペンス法などにより、凹状パターン47a内に塗布ノズルの先端から塗布系材料51を滴下供給する。この際、溶媒に有機半導体材料を溶解させた液状の塗布系材料51を、凹状パターン47aの容積とほぼ等しい量だけ滴下する。
【0058】
この状態で、印刷供給された塗布系材料51を固化させ、有機半導体からなる活性層51aを形成する。ここでは、液状の塗布系材料51に含有されている溶媒を揮発除去するとにより、塗布系材料51を固化させて活性層51aを形成する。またここでは、凹状パターン47aの容積とほぼ同等の量で印刷供給された塗布系材料51を固化させるため、ゲート絶縁膜47の表面とほぼ同一高さの活性層51aが形成される。この活性層51aは、凹状パターン47aの側壁部分において、ソース/ドレイン電極49上に重ねて設けられる。
【0059】
尚、上述の図5(4)を用いて説明したソース/ドレイン電極49の形成と、図5(5)を用いて説明した活性層51aの形成とは、活性層51aの損傷を防止できるのであれば、逆の順序で行っても良い。そして、逆の順序で行った場合であって、かつ活性層51aの高さが基板1の表面よりも高く印刷形成された場合には、基板1と活性層51aの高さが同程度になるように、必要に応じて活性層51aの研磨による平坦化処理を行い、その後ソース/ドレイン電極49の形成を行っても良い。
【0060】
以上のようにして、ボトムゲート型の薄膜トランジスタを半導体装置53としてを得る。この半導体装置53は、基板41の表面を覆うゲート絶縁膜47の凹状パターン47a内に、塗布系材料を固化させた有機半導体材料からなる活性層51aが選択的に埋め込まれたものとなる。
【0061】
そして以上説明した第4実施形態の製造方法によれば、図5(2)を用いて説明したように、エンボス加工によって基板41に凹状パター41aを形成し、この内壁を覆う状態でゲート絶縁膜47を形成し、このゲート絶縁膜47で覆われた凹状パターン47a内に、塗布系材料を印刷供給することによって活性層51aを形成している。したがって、第1実施形態と同様に、製造工程を複雑化することなく印刷法を適用した高精度な活性層51aの形成が可能となる。この結果、この活性層51aを備えたボトムゲート型の薄膜トランジスタ(半導体装置)53の高集積化を図ることが可能となる。
【0062】
尚、以上説明した第1実施形態〜第4実施形態においては、凹状パターン内に塗布系材料を印刷供給する前に、塗布系材料に対して撥液性を付与する処理を行っても良い。ただしこの処理は、凹状パターンの内壁を除いた外側表面部分に対して選択的に撥液性を付与するように行われることとする。これにより、凹状パターン内に塗布系材料を印刷供給する工程において、凹状パターンの外側において塗布系材料の広がりが抑えら、より形状精度良好に塗布系材料の印刷形成を行うことが可能になる。
【0063】
尚、上述した撥液性を付与する方法としては、印刷目的とする塗布系材料に対するヌレ性が小さく大きな接触角を与える材料層(撥液性材料層)を、凹状パターン外の表面部分に形成する。この場合、別の基板に撥液性材層を形成し、この撥液性材料層上に凹状パターンが形成された面を載置し、撥液性材料層を凹状パターンが形成された面側に転写する。
【0064】
また、本発明は、上述した第1実施形態〜第4実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0065】
例えば、上述した第1実施形態〜第4実施形態においては、活性層またはソース/ドレイン電極の何れかを、エンボス加工によって形成した凹状パターン内に印刷形成して薄膜トランジスタを作製する手順を説明した。
【0066】
しかしながら、本発明は、活性層またはソース/ドレイン電極の両方を、エンボス加工によって形成した凹状パターン内に印刷形成する方法にも適用可能である。この場合、例えば図4を用いて説明した第3実施形態の手順にを例にとると、図4(2)で説明した様にソース/ドレイン電極25aを形成した後に、ソース/ドレイン電極25a間の基板21位置にエンボス加工によって矩形形状の凹状パターンを形成し、この内部に印刷形成によって活性層を形成する手順が例示される。
【0067】
また、半導体装置として薄膜トランジスタを形成する場合への適用に限定されることはい。例えば、半導体装置として有機電界発光素子(すなわち有機LED)を形成する場合には、有機電界発光素子が設けられる各画素に対応して有機半導体材料(有機EL材料)を印刷形成する前に、有機半導体材料のパターン印刷部分に、エンボス加工によって凹状パターンを形成する。これにより、有機半導体材料の印刷形成においては、凹状パターン内のみに、有機半導体材料の供給部を制限することができる。また、凹状パターンの形成がエンボス加工によるため、上述した実施形態で説明したように、構成数の増加を最小限に抑えることが可能である。これにより、画素の集積度を向上させた表示装置をより少ない工程数で作製することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1実施形態の製造方法を説明するための断面工程図である。
【図2】第1および第2実施形態で作製するトップゲート型の薄膜トランジスタの平面図である。
【図3】第2実施形態の製造方法の要部を説明するための断面工程図である。
【図4】第3実施形態の製造方法を説明するための断面工程図である。
【図5】第4実施形態の製造方法を説明するための断面工程図である。
【図6】第4実施形態で作製するボトムゲート型の薄膜トランジスタの平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1’,21,41…基板、1a,1a’,21a,41a,47a…凹状パターン、3,45…スタンパ、5,25a,49…ソース/ドレイン電極(導電性材料層)、7,25,51…塗布系材料、7a,27,51a…活性層(半導体材料層)、9,29,47…ゲート絶縁膜、11,31,43…ゲート電極、13,33,53…半導体装置、17…樹脂材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状を有するスタンパを押し圧するエンボス加工によって基板の表面に凹状パターンを形成する第1工程と、
前記凹状パターン内に、半導体材料または導電性材料からなる塗布系材料を印刷供給する第2工程と、
前記印刷供給された塗布系材料を固化させる第3工程を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板は、その表面が樹脂材料層で覆われてなり、
前記第1工程では、未硬化の前記樹脂材料層に対して凹凸形状を有するスタンパを押し圧した状態で当該樹脂材料層を硬化させ、次いで当該スタンパを前記基板側から脱離させることにより前記凹状パターンを形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記樹脂材料層は、紫外線硬化樹脂からなる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法にいて、
前記第2工程では、前記凹状パターンの容積と同程度の塗布系材料を印刷供給する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2工程では、前記凹状パターン内に塗布ノズルから前記塗布系材料を滴下供給する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1工程と第2工程との間に、前記凹状パターンの外側における前記基板の表面部分に、前記塗布系材料に対する撥液性を選択的に付与する処理を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1工程の後、前記凹状パターンの内壁を覆う状態で前記基板上に絶縁膜を形成し、
前記第2工程では、前記絶縁膜で覆われた前記凹状パターン内に前記塗布系材料の印刷供給を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1工程の前に、前記基板上にゲート電極を形成する工程を行い、
前記第1工程では、前記ゲート電極の一部に重なるように前記凹状パターンを形成し、
前記第1工程と第2工程との間に、前記凹状パターンの内壁を覆う状態で前記基板上に絶縁膜を形成し、
前記第2工程では、前記絶縁膜で覆われた前記凹状パターン内に前記塗布系材料として活性層を構成する半導体材料を塗布供給する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記塗布系材料として有機半導体材料を用いる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記塗布系材料として発光材料を含む有機材料を用いることにより、有機発光素子における有機層を形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板の表面に形成された凹状パターン内に、塗布系材料を固化させてなる半導体材料層または導電性材料層が選択的に埋め込まれてなる
ことを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−35981(P2007−35981A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218224(P2005−218224)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】