説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】配線抵抗の増加を抑えつつ、配線のエレクトロマイグレーション寿命、およびストレスマイグレーション寿命を向上させる。
【解決手段】半導体装置100は、基板102上に形成された層間絶縁膜104に形成された凹部に、高融点金属を含むバリアメタル膜106と、配線金属膜114を構成する銅および銅とは異なる不純物金属を含むシード合金膜ならびに銅を主成分として含むめっき金属膜とを形成し、シード合金膜およびめっき金属膜を、200℃以上、10分以下で熱処理する第1の熱処理工程と、第1の熱処理工程の後、凹部外部に露出しためっき金属膜、シード合金膜、およびバリアメタル膜106を除去する工程と、シード合金膜およびめっき金属膜を熱処理する第2の熱処理工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における半導体装置の高集積化への要請から、配線、プラグ、パッド等の材料として、抵抗が低い銅が広く用いられるようになってきた。しかし、銅を用いた配線において、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションの発生が問題となっている。銅配線を構成する銅膜は、通常めっき法などにより形成されるが、この場合、銅膜は多数の多結晶構造の銅粒子が集合した形態となる。こうした構造の銅配線に電圧を印加すると、銅粒子の粒界を経由して物質移動がおこり、結果としてエレクトロマイグレーションが発生する。また、配線中に配線したボイドを起因としてストレスマイグレーションが発生する。
【0003】
特許文献1(特開2007−335578号公報)には、アルミニウムを含有する銅により構成されたシード膜を用いて配線を形成する構成が記載されている。また、シード膜中に含まれるアルミニウムが銅膜中に拡散することが記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2008−147252号公報)には、CuAl合金シード膜上にCu膜が形成され、100℃以上450℃以下の温度でアニール処理を行い、CuAl合金シード膜中のAlをCu膜中に拡散させる技術が記載されている。また、メッキ法によってCu膜を形成した後に、100℃以上450℃以下の温度でアニール処理を行うことによって、Cuの粒成長とメッキ法によって形成されたCu膜中へのAlの拡散が生じるため、アニール処理後は、CuAl合金シード膜とCu膜との界面は必ずしも明確ではなく、一つのグレインとして形成されることもある、と記載されている。
【0005】
特許文献3(特開2005−050859号公報)には、銅膜である配線上にアルミニウム膜を形成し、熱処理を施すことにより、銅膜とアルミニウム膜を反応させ、銅とアルミニウムの合金であるCuAlよりなる合金膜を形成することが記載されている。
【0006】
特許文献4(特開2007−96241号公報)には、高融点金属を用いたバリアメタル膜を形成するのにかえて、層間絶縁膜の凹部内にMnを含むCu合金からなる補助膜を形成し、熱処理することにより、銅配線と層間絶縁膜との間にMnと層間絶縁膜中のSi等の元素との反応物層を形成する構成が記載されている。この反応物層が銅と層間絶縁膜との密着層および拡散防止膜として機能する。また、熱処理前において、銅配線と層間絶縁膜との密着性を高めるために、層間絶縁膜と補助膜との間にAg等により構成された密着層を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−335578号公報
【特許文献2】特開2008−147252号公報
【特許文献3】特開2005−050859号公報
【特許文献4】特開2007−96241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、配線側面および底面、ならびに配線表面にAl等の銅以外の不純物金属の濃度の高い領域を形成してエレクトロマイグレーション寿命やストレスマイグレーション寿命を向上させる手法を検討した。この際、本発明者等は、特許文献1や特許文献2に記載されたように、シード金属膜としてたとえばAl等を含む銅との合金膜を用いる手法を検討した。しかし、従来の方法では、所望の箇所に不純物金属の濃度の高い領域を設けることができないことが明らかになった。
【0009】
従来、シード金属膜を形成してめっき膜を形成した後、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)で余剰な金属膜を除去する前に、長時間のアニールが行われていた。そのため、アニール中に不純物金属が銅膜中に拡散してしまっていた。また、不純物金属は、とくにめっき膜表面に偏析しやすい。そのため、CMPでめっき膜の表面を削ると、多くの不純物金属が除去されてしまい、CMP後の配線膜中には、充分な量の不純物金属が残っていないことが明らかになった。そのため、配線の所望の箇所に不純物金属の濃度の高い領域を設けることができなかった。一方、めっき膜成長後にアニールを行わないと、グレインが成長せず、配線抵抗が高くなるという問題もある。
【0010】
また、特許文献3に記載されたような方法だと、配線を形成した後に、さらにアルミニウム膜を形成、熱処理、エッチングという工程を行う必要があり、工程数が増大する。また、特許文献4に記載された方法では、銅膜の拡散防止機能が充分でないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
基板上に形成された絶縁膜に形成された凹部に、高融点金属を含むバリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上に、前記凹部の一部を埋め込むように、銅および銅とは異なる不純物金属を含むシード合金膜を形成する工程と、
前記シード合金膜上に前記凹部を埋め込むように銅を主成分として含むめっき金属膜を形成する工程と、
前記シード合金膜および前記めっき金属膜を、200℃以上、10分以下で熱処理する第1の熱処理工程と、
前記第1の熱処理工程の後、前記凹部外部に露出した前記めっき金属膜、前記シード合金膜、および前記バリアメタル膜を除去する工程と、
前記シード合金膜および前記めっき金属膜を熱処理する第2の熱処理工程と、
を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【0012】
本発明によれば、
基板と、
前記基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成された凹部の底面および側壁に形成され、高融点金属を含むバリアメタル膜と、
前記凹部内において、前記バリアメタル膜上に形成され、銅を主成分として含むとともに銅とは異なる不純物金属を含み、銅のグレインが形成された配線金属膜と、
を含み、
前記配線金属膜は、積層方向において、表面における前記不純物金属の平均濃度が中央部における前記不純物金属の濃度よりも高く、グレインバウンダリにおける前記不純物金属の濃度がグレイン内における前記不純物金属の濃度よりも高く、前記表面において、前記不純物金属の濃度が、幅方向の中央部から側壁にかけて高くなる濃度プロファイルを有する半導体装置が提供される。
【0013】
本発明の構成によれば、凹部外部に露出しためっき金属膜やシード合金膜を除去する前の第1のアニールを短時間とすることにより、不純物金属の過剰な拡散を防ぎ、除去する工程で除去されない部分に充分な量の不純物金属を残しておくことができる。そのため、除去する工程で余剰部分を除去した後の第2のアニール処理時に、不純物金属は、銅中をグレイン内およびグレインバウンダリに沿って拡散して、安定的に存在し得る配線上部の表面や、グレインバウンダリに偏在する。これにより、配線への電流印加時、Al等の不純物金属により、銅の拡散を防ぐことができ、配線のエレクトロマイグレーション寿命、およびストレスマイグレーション寿命を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の構成によれば、第1のアニールを高温で行うことにより、第1のアニールの処理時間を上記のように短時間としても、処理温度を高くすることにより、銅のグレイン成長を促進することができる。これにより、配線抵抗の増加を抑えることができる。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線抵抗の増加を抑えつつ、配線のエレクトロマイグレーション寿命、およびストレスマイグレーション寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態における配線の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態における配線の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
図1は、本実施の形態における半導体装置100の構成を示す断面図である。
半導体装置100は、半導体基板(基板)102と、半導体基板102上に形成された層間絶縁膜104(絶縁膜)と、層間絶縁膜104に形成された配線溝150および配線溝152にそれぞれ形成された細幅配線116および広幅配線118と、層間絶縁膜104上に形成されたキャップ膜122と、さらにその上に形成された層間絶縁膜124とを含む。ここで、半導体基板102は、たとえばシリコン基板とすることができる。図示していないが、半導体基板102上には、トランジスタ等が形成されている。半導体基板102と層間絶縁膜104との間には、他の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0020】
本実施の形態において、細幅配線116および広幅配線118は、それぞれ、バリアメタル膜106および配線金属膜114により構成される。バリアメタル膜106は、たとえばTi、W、Ta等の高融点金属を含む。好ましいバリアメタル膜106としては、たとえば、Ti、TiN、W、WN、Ta、TaN等が例示される。本実施の形態において、バリアメタル膜106は、Ta膜、TaN膜またはこれらの積層膜により構成することができる。配線金属膜114は、銅を主成分として含むとともに銅とは異なる不純物金属を含む。ここで、不純物金属としては、たとえば、Al、Be、Mg、Zn、Pd、Ag、Cd、Au、Hg、Pt、Si、Zr、またはTi等が例示され、これらを単独または二種以上含むことができる。本実施の形態において、不純物金属は、Alとすることができる。Alは、従来から半導体装置の配線材料として用いられており、半導体装置内での挙動も把握されており、取り扱いが容易であり、好ましく用いることができる。また、配線金属膜114には、グレインバウンダリ113で規定される銅のグレインが形成されている。
【0021】
本実施の形態において、後述するように、配線金属膜114は、積層方向において表面における不純物金属の平均濃度が中央部における不純物金属の濃度よりも高い構成となっている。また、配線金属膜114は、グレインバウンダリ113における不純物金属の濃度がグレイン内における不純物金属の濃度よりも高い構成となっている。さらに、配線金属膜114は、側壁および底面において、不純物金属の濃度が他の領域よりも高い構成となっている。また、配線金属膜114は、表面において、不純物金属の濃度が、幅方向の中央部から側壁にかけて高くなる濃度プロファイルを有する。図中破線で規定された不純物高濃度領域110a(破線の外側の領域)は、不純物濃度が高い領域である。
【0022】
層間絶縁膜104としては、たとえば、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)、MSQ(メチルシルセスキオキサン)、またはMHSQ(メチル化ハイドロジェンシルセスキオキサン)等のポリオルガノシロキサン、ポリアリールエーテル(PAE)、ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン、またはSilk(登録商標)等の芳香族含有有機材料、SOG(spin on glass)、FOX(flowable oxide)、パリレン、サイトップ、またはベンゾシクロブテン(Bensocyclobutene:BCB)等の低誘電率材料を用いることができる。層間絶縁膜124は、層間絶縁膜104と同様の材料により構成することができる。ここでは図示していないが、層間絶縁膜124内にも、細幅配線116や広幅配線118等と同様の配線が形成された構成とすることができる。キャップ膜122は、たとえばSiCN膜とすることができる。
【0023】
次に、本実施の形態における半導体装置100の製造手順を説明する。図2から図5は、半導体装置100の製造手順を示す工程断面図である。
【0024】
まず、層間絶縁膜104に配線溝150および配線溝152を形成する(図2(a))。つづいて、層間絶縁膜104上全面に、たとえばスパッタリング法により、バリアメタル膜106を形成する(図2(b))。ここで、配線溝150および配線溝152の底面および側壁、ならびに層間絶縁膜104表面にバリアメタル膜106が形成される。ここで、バリアメタル膜106は、Ta膜およびTaN膜の積層膜とすることができる。
【0025】
つづいて、バリアメタル膜106上全面に、銅と、上述した不純物金属とを含む合金をターゲットとしたスパッタリング法によりシード合金膜110を形成する(図3(a))。本実施の形態においては、CuAl合金ターゲットを用いることができる。また、不純物金属の濃度は、0.5重量%以上とすることができる。これにより、CMP後においてもシード合金膜110中に充分な量の不純物を残すことができ、配線の所望の箇所に不純物金属の濃度がある程度以上である領域を設けることができる。また、シード合金膜110中の不純物金属の濃度は、後にめっき膜を形成する際に、シード合金膜110がシードとして良好に機能し得る程度とすることができ、たとえば10重量%以下とすることができる。
【0026】
つづいて、めっき法によりめっき金属膜112を形成し、配線溝150および配線溝152内を埋め込む(図3(b))。めっき金属膜112は、銅を主成分として含む構成とすることができる。なお、めっき金属膜112も銅とは異なる何らかの不純物金属を含む構成としてもよいが、不純物濃度は、シード合金膜110よりも低い濃度とする。
【0027】
次いで、高温・短時間での第1のアニールを行う(図4(a))。本実施の形態において、第1のアニールは、N/H雰囲気下で行うことができる。これにより、めっき金属膜112中の銅が酸化して腐食されるのを防ぐことができる。
【0028】
また、第1のアニールの処理時間は、たとえば10分以下、好ましくは5分以下、より好ましくは1分以下とすることができる。アニール処理により、シード合金膜110中の不純物金属がめっき金属膜112中のグレイン内やグレインバウンダリ113に拡散する。しかし、本実施の形態において、第1のアニールをこのような短時間とすることにより、この段階で、シード合金膜110からめっき金属膜112中に不純物金属が過剰に拡散するのを防ぐことができる。また、本実施の形態において、配線溝150および配線溝152の底面および側壁には、銅やアルミニウムの拡散を防止するバリアメタル膜106が形成されている。そのため、シード合金膜110を構成する材料が層間絶縁膜104内に拡散することなく、配線溝150および配線溝152内に維持することができる。これにより、この段階では、シード合金膜110の大部分は、配線溝150および配線溝152のバリアメタル膜106表面にそのまま存在した状態で維持される。
【0029】
また、第1のアニールの処理温度は、たとえば200℃以上、より好ましくは300℃以上とすることができる。第1のアニールをこのような高温で行うことにより、銅のグレイン成長を促進することができる。本実施の形態において、第1のアニールの処理時間を上記のように短時間としても、処理温度を高くすることにより、銅のグレイン成長を促進することができる。また、第1のアニール処理を高温・短時間とすることにより、銅のグレイン成長が不純物金属の拡散よりも速く進むため、グレインバウンダリ113に不純物金属が偏析しやすくなる。本実施の形態においては、シード合金膜110に不純物金属が含まれ、不純物金属の抵抗が銅より高い場合は、銅単独の場合よりも配線抵抗が高くなるおそれがあるが、グレインサイズを大きくすることにより、配線抵抗の増加を抑えることができる。
【0030】
この後、CMPにより、配線溝150および配線溝152外部に露出しためっき金属膜112、シード合金膜110、およびバリアメタル膜106を除去する。これにより、細幅配線116および広幅配線118が形成される(図4(b))。
【0031】
次いで、第2のアニールを行う(図5(a))。ここで、第2のアニールの処理温度は、たとえば350℃程度とすることができる。また、第2のアニールの処理時間は、たとえば30分程度とすることができる。これにより、シード合金膜110中の不純物金属がめっき金属膜112内に拡散する。
【0032】
本実施の形態において、CMP前の第1のアニールを短時間とすることにより、CMPで削られない部分に充分な量の不純物金属を残しておくことができる。そのため、CMPにより、余剰部分を除去した後の第2のアニール処理時に、不純物金属は、銅中をグレイン内およびグレインバウンダリ113に沿って拡散して、安定的に存在し得る配線上部の表面や、グレインバウンダリ113に偏在する。このとき、配線金属膜114は、余剰部分が除去されているので、細幅配線116および広幅配線118の所望の箇所に不純物金属の濃度がある程度以上である不純物高濃度領域110aを設けることができる(図5(b))。
【0033】
以上の手順により、配線金属膜114の構成を以下のようにすることができる。
(1)不純物金属は、シード合金膜110から拡散して、エネルギー的に安定的に存在し得る配線上部の表面で濃度が高くなる。そのため、積層方向における表面における不純物金属の平均濃度が中央部における不純物金属の濃度よりも高い構成となる。このように、配線表面における不純物濃度を高くすることにより、ストレスマイグレーション耐性を高めることができる。ここで、配線金属膜114の表面における不純物金属の平均含有量(atom%)が中央部における不純物金属の平均含有量のたとえば1.2倍以上となるようにすることができる。この程度の差とすることにより、配線金属膜114のストレスマイグレーションを高めるとともに、配線金属膜114の抵抗を低く保つことができる。
(2)不純物金属は、シード合金膜110から拡散して、銅中をグレイン内およびグレインバウンダリ113に沿って拡散して、エネルギー的に安定的に存在し得るグレインバウンダリ113で濃度が高くなる。そのため、グレインバウンダリ113における不純物金属の濃度がグレイン内における不純物金属の濃度よりも高い構成となる。このように、グレインバウンダリ113における不純物濃度を高くすることにより、エレクトロマイグレーション耐性、およびストレスマイグレーション耐性を高めることができる。
(3)不純物金属は、シード合金膜110から拡散するため、側壁および底面において、不純物金属の濃度が他の領域よりも高くなる。これにより、Cu原子のドリフトが抑制されるため、エレクトロマイグレーション耐性、およびストレスマイグレーション耐性を高めることができる。
(4)同様に、不純物金属は、シード合金膜110から拡散するため、表面において、側壁に形成されていたシード合金膜110に近い位置の側壁方向にかけて不純物金属の濃度が高くなる。そのため、表面において、不純物金属の濃度が、幅方向の中央部から側壁にかけて高くなる濃度プロファイルを有する。つまり、配線表面において、不純物金属は側面に近いほど濃度が高くなり、とくに角部で濃度が高い不純物高濃度領域110aのオーバーハング部が形成される。これにより、配線間の短絡を防ぐことができ、TDDB寿命を向上することができる。また、配線は、表面中央部で、上層のビアと接続される。本実施の形態において、配線表面中央部の不純物金属の濃度を低くすることにより、配線とビアとのコンタクト抵抗を低減することもできる。ただし、本実施の形態において、配線は、表面中央部においても、積層方向における中央部よりも不純物濃度が高い構成とすることができ、ストレスマイグレーション耐性を充分保てるようになっている。
【0034】
この後、層間絶縁膜104上にキャップ膜122を形成する。さらに、その上に層間絶縁膜124を形成する。これにより、図1に示した構成の半導体装置100が得られる。この後、層間絶縁膜124にも同様の手順でビアまたは配線を形成し、多層配線構造の半導体装置100を得ることができる。
【0035】
図6は、本実施の形態における半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。
まず、層間絶縁膜104に配線溝150および配線溝152等の配線溝を形成する(S102)。つづいて、層間絶縁膜上全面にたとえばスパッタリング法により、バリアメタル膜106を形成する(S104)。次いで、バリアメタル膜106上全面に、シード合金膜110を形成する(S106)。
【0036】
つづいて、めっき法によりシード合金膜110上にめっき金属膜112を形成し、配線溝150および配線溝152内を埋め込む(S108)。次いで、高温、短時間で、第1のアニール処理を行う(S110)。
【0037】
その後、CMPにより、配線溝150および配線溝152外部に露出しためっき金属膜112、シード合金膜110およびバリアメタル膜106を除去して細幅配線116および広幅配線118を形成する(S112)。その後、第2のアニールを行う(S114)。
【0038】
なお、以上の実施の形態で説明した第2のアニールは、不純物金属の拡散を目的として各層の配線を形成する毎に行うものとすることもできるが、わざわざ特別なアニール処理工程を追加することなく、多層配線構造形成時の他の各種アニール処理とすることもできる。本実施の形態において、各配線形成時のCMP前の第1のアニールを高温、短時間とすることが重要で、CMP後の第2のアニール処理では、処理時間や処理温度を厳密に管理しなくても、不純物金属は、エネルギー的に安定な箇所に移動するので、上記のような所望の構成とすることができる。
【実施例】
【0039】
(例1)
図1から図5を参照して説明した半導体装置の製造手順で、半導体装置を製造した。図7は、細幅配線116の構成を示す断面図(BF−STEM像)である。ここでは、配線幅は50nmとした。バリアメタル膜106としては、Ta膜およびTaN膜の積層膜(合計膜厚7nm)を用いた。また、不純物金属としてAlを用いた。Alの含有量は、0.5重量%とした。シード合金膜110の膜厚は5nmとした。第1のアニール条件は、処理時間30秒、処理温度350℃とした。また、第2のアニール条件は、処理時間30分、処理温度350℃とした。
【0040】
エネルギー分散形X線分光器(EDX:energy dispersive X-ray spectrometer)で、図7の破線「1」で囲まれた配線表面、破線「2」で囲まれた中央部をそれぞれ分析領域として、元素分析を行った。各分析領域における全元素に対するAlの含有量は、それぞれ以下となった。
分析点1:0.97atom%
分析点2:0.48atom%
【0041】
このように、配線表面におけるAl(不純物金属)の平均濃度(含有量)が、中央部におけるAlの平均濃度(含有量)よりも高く、約2倍となった。
【0042】
(例2)
例1と同様、図1から図5を参照して説明した半導体装置の製造手順で、半導体装置を製造した。図8は、細幅配線116の構成を示す断面図(BF−STEM像)である。条件は、例1と同様とした。図8の配線金属膜114中の色の濃い部分がグレインバウンダリ113が分布した箇所である。図8の「3」および「4」は、グレインバウンダリ113中にある。「5」は、配線金属膜114のグレイン内にある。
【0043】
EDXで、細幅配線116の断面の元素分析を行った。図8の「3」で示すグレインバウンダリ、「4」で示すグレインバウンダリ、「5」で示すグレイン内をそれぞれ分析点として、元素分析を行った。各分析領域における全元素に対するAlの含有量は、それぞれ以下となった。
分析点3:0.21atom%
分析点4:0.23atom%
分析点5:0.03atom%
【0044】
このように、グレインバウンダリ113におけるAl(不純物金属)の平均濃度が、グレイン内におけるAlの濃度(含有量)よりも高く、約7倍となった。ここで、例2では点分析であるのに対し、例1では面分析を行っているため、含有量が高く検出されていると思われる。
【0045】
次に、本実施の形態における半導体装置100の効果を説明する。
以上のように、本実施の形態においては、CMP前の第1のアニールを短時間とすることにより、CMPで削られない部分に充分な量の不純物金属を残しておくことができる。そのため、CMPにより、余剰部分を除去した後の第2のアニール処理時に、不純物金属は、銅中をグレイン内およびグレインバウンダリ113に沿って拡散して、安定的に存在し得る配線上部の表面や、グレインバウンダリ113に偏在する。これにより、不純物金属が、配線上部の表面や、グレインバウンダリ113にある程度以上の高濃度で存在するようにすることができる。そのため、配線への電流印加時、Al等の不純物金属により、銅の拡散を防ぐことができ、配線のエレクトロマイグレーション寿命、およびストレスマイグレーション寿命を向上させることができる。
【0046】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0047】
細幅配線116および広幅配線118は、シングルダマシン法またはデュアルダマシン法のいずれに適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 半導体装置
102 半導体基板
104 層間絶縁膜
106 バリアメタル膜
110 シード合金膜
110a 不純物高濃度領域
112 めっき金属膜
113 グレインバウンダリ
114 配線金属膜
116 細幅配線
118 広幅配線
122 キャップ膜
124 層間絶縁膜
150 配線溝
152 配線溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された絶縁膜に形成された凹部に、高融点金属を含むバリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上に、前記凹部の一部を埋め込むように、銅および銅とは異なる不純物金属を含むシード合金膜を形成する工程と、
前記シード合金膜上に前記凹部を埋め込むように銅を主成分として含むめっき金属膜を形成する工程と、
前記シード合金膜および前記めっき金属膜を、200℃以上、10分以下で熱処理する第1の熱処理工程と、
前記第1の熱処理工程の後、前記凹部外部に露出した前記めっき金属膜、前記シード合金膜、および前記バリアメタル膜を除去する工程と、
前記シード合金膜および前記めっき金属膜を熱処理する第2の熱処理工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不純物金属が、Al、Be、Mg、Zn、Pd、Ag、Cd、Au、Hg、Pt、Si、Zr、またはTiである半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不純物金属が、Alである半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記バリアメタル膜を構成する高融点金属は、Taである半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記バリアメタル膜は、Ta膜、TaN膜またはこれらの積層膜により構成された半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の熱処理工程は、N/H雰囲気下で行われる半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記シード合金膜を形成する工程において、前記シード合金膜は、前記不純物金属を0.5重量%以上含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の熱処理工程において、前記シード合金膜および前記めっき金属膜を、1分以下で熱処理する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成された凹部の底面および側壁に形成され、高融点金属を含むバリアメタル膜と、
前記凹部内において、前記バリアメタル膜上に形成され、銅を主成分として含むとともに銅とは異なる不純物金属を含み、銅のグレインが形成された配線金属膜と、
を含み、
前記配線金属膜は、積層方向において、表面における前記不純物金属の平均濃度が中央部における前記不純物金属の濃度よりも高く、グレインバウンダリにおける前記不純物金属の濃度がグレイン内における前記不純物金属の濃度よりも高く、前記表面において、前記不純物金属の濃度が、幅方向の中央部から側壁にかけて高くなる濃度プロファイルを有する半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記配線金属膜は、側壁および底面において、前記不純物金属の濃度が他の領域よりも高い半導体装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の半導体装置において、
前記不純物金属は、Al、Be、Mg、Zn、Pd、Ag、Cd、Au、Hg、Pt、Si、Zr、またはTiである半導体装置。
【請求項12】
請求項9から11いずれかに記載の半導体装置において、
前記不純物金属は、Alである半導体装置。
【請求項13】
請求項9から12いずれかに記載の半導体装置において、
前記バリアメタル膜を構成する高融点金属は、Taである半導体装置。
【請求項14】
請求項9から13いずれかに記載の半導体装置において、
前記バリアメタル膜は、Ta膜、TaN膜またはこれらの積層膜により構成された半導体装置。
【請求項15】
請求項9から14いずれかに記載の半導体装置において、
前記配線金属膜は、積層方向において、表面における前記不純物金属の平均含有量(atom%)が中央部における前記不純物金属の平均含有量の1.2倍以上である半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−9439(P2011−9439A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151129(P2009−151129)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】