説明

半導体装置の製造方法

【課題】成形金型のクリーニング作業のコスト低減化を図る。
【解決手段】成形金型2の上金型3と下金型4の間にクリーニング用シート17とマスク用シート1を配置して成形金型2にクリーニング用樹脂を充填し、樹脂硬化後、成形金型2からクリーニング用シート17とマスク用シート1を取り出し、さらにクリーニング用シート17とマスク用シート1を分離し、その後、マスク用シート1を成形金型2のクリーニング作業に再利用することにより、マスク用シート1を使い捨てするのに比較してクリーニング作業に費やす部材のコストを低減することができ、成形金型2のクリーニング作業のコスト低減化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造技術に関し、特に、樹脂封止用の成形金型のクリーニング作業のコスト低減化および作業効率並びに品質の向上化に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の成形金型クリーニング用シートを用いた半導体装置の製造方法では、成形金型の合わせ面を覆うクリーニング用シート本体と、これに接合されたマスクシートとを有するクリーニング用シートを準備し、第2金型の合わせ面に開口する吸引孔をマスクシートによって覆ってクリーニング用シートを合わせ面に配置した後、第1金型および第2金型によってクリーニング用シートをクランプし、クリーニング用樹脂をキャビティに供給してキャビティ内にクリーニング用樹脂を充填させ、クリーニング用樹脂硬化後、クリーニング用樹脂およびクリーニング用シートを離型する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来のモールド金型のクリーニング治具は、樹脂封止して装置を成形するためのモールド金型内のキャビティにクリーニング樹脂を充填して残存する樹脂カス等の汚れをクリーニングする際に、モールド金型内の所定位置に装填されるモールド金型のクリーニング治具であって、少なくとも表面がクリーニング樹脂との密着性が悪い材料で形成されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−225040号公報(図11)
【特許文献2】特開2004−90248号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂封止形の半導体装置の樹脂封止工程では、幾度も樹脂成形が繰り返されるため、封止用樹脂が充填される成形金型の内部、つまり一対の成形金型を形成する上金型および下金型のキャビティやランナおよびエアーベント、カルブロック周辺などに樹脂バリ、油分または塵埃などの汚れおよび酸化物が蓄積する。
【0006】
このような汚れは、成形品質に悪影響を与え、また、成形金型から製品を取り出す時の離型性の低下にもつながるので、一定のショット数おきに作業者が成形金型をクリーニングする必要がある。
【0007】
しかし、作業者による成形金型のクリーニングは、それが手作業であるためにかなりの時間を要することになり、したがって、短時間で成形金型をクリーニングできる技術が要請されている。
【0008】
そこで、成形金型の下金型と上金型の間にクリーニング用シートを挟み、この状態でクリーニング用樹脂を充填し、樹脂硬化後、クリーニング用シートとこれに密着したクリーニング用樹脂を成形金型から取り出して成形金型のクリーニングを行う方法が提案されている。
【0009】
なお、近年開発されている小形パッケージであるCSP(Chip Scale Package) やBGA(Ball Grid Array)用の成形金型は、BGA基板の片方の面側でのみ樹脂モールディングが行われるため、キャビティは成形金型の上金型もしくは下金型の何れか一方のみに形成されており、このようなモールディングは片面モールディングと呼ばれている。
【0010】
前記片面モールディングにおいて、成形金型のキャビティが形成されていない方の金型面にはBGA基板を真空吸引して吸着固定するための吸引孔が形成されており、したがって、この金型面の吸引孔にはクリーニング用樹脂を付着させたくない。
【0011】
その結果、クリーニング時には、前記金型面上にマスク用シートを配置して前記金型面をマスク用シートで覆い、この状態でキャビティにクリーニング用樹脂を供給する。
【0012】
これによって、クリーニング用樹脂が前記金型面の吸引孔に付着することをマスク用シートによって阻止しながら、クリーニングを行う。
【0013】
しかしながら、このようなクリーニング用シートとマスク用シートの2種類のシートを使ったクリーニングでは、クリーニング作業のコストが高くなることが問題となる。
【0014】
なお、前記特許文献1(特開2002−225040号公報)には、予め一体化されたクリーニング用シートとマスクシートとからなる2層式のシートを使用して成形金型のクリーニングを行う半導体装置の製造方法についての開示はあるが、2層式のシートのいずれかを再利用するという記載は全く見当たらない。さらに、予め接合されて一体化されたクリーニング用シートとマスクシートを、使用後に分離していずれかを再利用するのは非常に困難である。
【0015】
また、前記特許文献2(特開2004−90248号公報)には、1層式のクリーニング治具についての開示はあるが、1層式のクリーニング治具では、クリーニング用樹脂がキャビティが形成されていない側の金型面に残存し易く、前記金型面がクリーニング用樹脂で汚れることが懸念される。
【0016】
本発明の目的は、成形金型のクリーニング作業のコスト低減化を図ることができる技術を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、成形金型のクリーニング作業の作業効率、および品質の向上化を図ることができる技術を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0020】
すなわち、本発明は、以下の工程を含むものである。(a)第1金型、前記第1金型に形成されたキャビティ、前記キャビティと対向する金型面を有する第2金型、及び前記金型面に開口する吸引孔を備えた成形金型を準備する工程;(b)半導体チップが搭載された基板を前記第1金型と前記第2金型との間に配置し、前記キャビティ内に封止用樹脂を供給し、前記半導体チップを前記封止用樹脂で封止する工程;(c)マスク用シートとクリーニング用シートとを前記第1金型と前記第2金型との間に配置し、前記キャビティ内にクリーニング用樹脂を供給し、前記成形金型をクリーニングする工程;ここで、前記(b)工程では、以下の工程を有する、(b1)前記基板が前記吸引孔を塞ぐように、前記半導体チップが搭載された前記基板を前記第1金型と前記第2金型との間に配置する工程;(b2)前記(b1)工程の後、前記吸引孔を介して前記基板を吸着した状態で、前記キャビティ内に前記封止用樹脂を供給する工程;(b3)前記(b2)工程の後、封止部が形成された前記基板を前記成形金型から取り出す工程。
【発明の効果】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0022】
成形金型クリーニング用シートとマスク用シートとを配置して成形金型のクリーニングを行った後、成形金型クリーニング用シートとマスク用シートを分離し、その後、マスク用シートを成形金型のクリーニング作業に再利用することにより、マスク用シートを使い捨てするのに比較してクリーニング作業に費やす部材のコストを低減することができ、成形金型のクリーニング作業のコスト低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法で用いられる成形金型と成形金型クリーニング用シートとマスク用シートの構造の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す成形金型クリーニング用シートの要部の構造の一例を示す拡大部分斜視図である。
【図3】図1に示す成形金型クリーニング用シートの変形例の要部の構造を示す拡大部分斜視図である。
【図4】図1に示す成形金型クリーニング用シートの変形例の構造を示す拡大部分断面図である。
【図5】図1に示す成形金型クリーニング用シートの変形例の構造を示す拡大部分断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法における成形金型のクランプ状態の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示す成形金型のクランプ状態の構造の一例を示す断面図である。
【図8】図7に示すA部の構造を示す拡大部分断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法における樹脂充填状態の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法におけるシート取り出し状態の一例を示す斜視図である。
【図11】本発明の半導体装置の製造方法における組み立て手順の一例を示す製造プロセスフロー図である。
【図12】図11に示す半導体装置の製造方法におけるダイシング時の状態の一例を示す断面図である。
【図13】本発明の半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法で用いられる成形金型と変形例の成形金型クリーニング用シートとマスク用シートの構造を示す斜視図である。
【図15】図14に示す変形例の成形金型クリーニング用シートを用いた際の成形金型のクランプ状態を示す斜視図である。
【図16】図14に示す変形例の成形金型クリーニング用シートを用いた際のシート取り出し状態を示す斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態の変形例の成形金型クリーニング用シートの構造を示す斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態の変形例の成形金型クリーニング用シートの構造を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態の変形例の成形金型クリーニング用シートの構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0025】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0026】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法で用いられる成形金型と成形金型クリーニング用シートとマスク用シートの構造の一例を示す斜視図、図2は図1に示す成形金型クリーニング用シートの要部の構造の一例を示す拡大部分斜視図、図3〜図5はそれぞれ図1に示す成形金型クリーニング用シートの変形例の構造を示す拡大部分斜視図と拡大部分断面図、図6は本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法における成形金型のクランプ状態の一例を示す斜視図、図7は図6に示す成形金型のクランプ状態の構造の一例を示す断面図、図8は図7に示すA部の構造を示す拡大部分断面図、図9は本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法における樹脂充填状態の一例を示す断面図、図10は本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法におけるシート取り出し状態の一例を示す斜視図、図11は本発明の半導体装置の製造方法の組み立て手順の一例を示す製造プロセスフロー図、図12は図11に示す半導体装置の製造方法におけるダイシング時の状態の一例を示す断面図、図13は本発明の半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の構造の一例を示す断面図、図14は本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法で用いられる成形金型と変形例の成形金型クリーニング用シートとマスク用シートの構造を示す斜視図、図15は図14に示す変形例の成形金型クリーニング用シートを用いた際の成形金型のクランプ状態を示す斜視図、図16は図14に示す変形例の成形金型クリーニング用シートを用いた際のシート取り出し状態を示す斜視図、図17〜図19はそれぞれ本発明の実施の形態の変形例の成形金型クリーニング用シートの構造を示す斜視図である。
【0029】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、半導体装置の組み立て工程の樹脂封止工程で使用される片面モールディングタイプの成形金型のクリーニングに関するものである。本実施の形態のクリーニングでは、成形金型2のクリーニング時に、クリーニング用シート(成形金型クリーニング用シート)17とマスク用シート1の2種類の別体のシートを成形金型2の上金型(第1金型)3と下金型(第2金型)4の間に介在させて図9に示すクリーニング用樹脂5でクリーニングを行い、クリーニング後にクリーニング用シート17は破棄し、マスク用シート1は再利用するものである。すなわち、クリーニング後にクリーニング用シート17のみ破棄し、マスク用シート1は繰り返して再利用するものである。
【0030】
また、本実施の形態の成形金型2は、CSPやBGAなどの製品の半導体装置の樹脂モールディングを行う際に、下金型(第2金型)4上で基板を吸引固定するための吸引孔11が下金型4に形成されており、したがって、各吸引孔11は、下金型4の合わせ面である金型面4aに開口している。
【0031】
吸引孔11は、CSPやBGAの組み立てに用いられる基板が、樹脂などからなる比較的強度の低い基板の場合に、樹脂注入時に樹脂圧によって基板にシワが形成されることがあり、これを防止するために基板を吸引して引き延ばすためのものである。また、同時に基板で発生する反りを矯正することもできる。
【0032】
なお、本実施の形態で説明する成形金型2は、半導体装置の組み立てに用いられる前記基板が、図12に示すような多数個取り基板14の場合であり、したがって、前記組み立ての樹脂封止時に、多数個取り基板14における複数のパッケージ領域を図7に示す1つのキャビティ6で覆って樹脂封止を行う金型である。すなわち、一括モールディングを行う成形金型2である。
【0033】
成形金型2には、図7に示すように、その上金型(第1金型)3にキャビティ6、カル7、ランナ8およびゲート13、エアーベント24などが形成されており、一方、下金型4には、金型面4aに開口する吸引孔11の他、封止用樹脂やクリーニング用樹脂5を押し出すプランジャ10が配置されたポット9が形成されている。
【0034】
成形金型2のクリーニングを行う際には、まず、クリーニング用樹脂5を絡め取るクリーニング用シート17と、クリーニング用樹脂5に対して剥離容易なマスク用シート1を準備する。
【0035】
ここで、クリーニング用シート17は、クリーニング用樹脂5を絡め取るものであり、クリーニング用樹脂5と密着性が高い材料によって形成されていることが好ましく、例えば、クリーニング用シート17の材料は、不織布、紙または樹脂などである。
【0036】
また、構造的にもクリーニング用樹脂5が絡み易いように、あるいは、クリーニング用樹脂5に含まれるフィラー(ガラス等)の通過抵抗およびクリーニング用樹脂5の流動抵抗が低くなるように、繊維等が三次元的に粗い構造となっていることが好ましい。特に、クリーニング用樹脂5に含まれるフィラーの直径よりも大きな空隙を複数有する網目状の三次元構造である事が好ましい。
【0037】
なお、クリーニング用シート17は左右キャビティブロックを含む金型全体を被う大きさであることも特徴で作業効率上好ましい。
【0038】
また、クリーニング用シート17はエアーベント24の位置にも介在していることにより、エアーベント24に充填されるクリーニング用樹脂5が、三次元網目構造のクリーニング用シート17に絡みつき、エアーベント24に樹脂バリ(エアーベントバリ)が残存するのを防ぐ事ができる。
【0039】
従って、エアーベント24が樹脂バリによって詰まる事によるパッケージの樹脂未充填および内部、外部のボイドの不良が減り、品質向上ができる。
【0040】
さらに、クリーニング用シート17は、成形金型2の樹脂モールディング時の温度(170〜180℃)に耐えられる高い耐熱性を有していることが好ましい。
【0041】
以上のことから、クリーニング用シート17は、紙、コットン不織布などの植物由来の構造物を含む材料によって形成されていることが好ましい。また、前記植物由来の構造物を含むクリーニング用シート17の耐熱性を更に向上させるためには、前記構造物より耐熱性の高い物質が混合されているか、もしくはシートの表面にコーティングされていることが好ましい。前記耐熱性の高い物質は、例えば、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂などである。図2は本実施の形態のクリーニング用シート17の構造の一例であり、コットン繊維17bと、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂などの耐熱繊維17cとからなる三次元的に粗い構造が示されている。さらに、図3はクリーニング用シート17の構造の変形例であり、コットン繊維17bと、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂などの粒形耐熱バインダー17eとからなる三次元的に粗い構造が示されている。
【0042】
なお、クリーニング用シート17は、三次元的に粗い構造のものに限定されずに比較的密度が高い構造物であってもよい。図4および図5は、クリーニング用シート17の変形例として、比較的密度が高い場合の構造を示しており、図4は、ベース材の紙部17fにフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂などの耐熱バインダー17gが混合されている構造のシートである。さらに、図5は、ベース材の紙部17fの表面にフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂などの耐熱樹脂コーティング膜17hが形成されている構造のシートである。
【0043】
このように、本実施の形態のクリーニング用シート17では、耐熱性の高い物質を混合したり、もしくは表面にコーティングすることにより、クリーニング用シート17の耐熱性をより高めることができる。これにより、金型高温時にクリーニング用シート17の一部が成形金型2に付着することを阻止できる。したがって、クリーニング用シート17の離型性を向上させることができ、信頼性の高いクリーニング作業を行うことができる。
【0044】
すなわち、成形金型2に強固に付着した紙やコットン不織布のカスの除去を行わなくて済むため、クリーニング作業の効率の向上化を図ることができるとともに、クリーニング作業の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、耐熱性の高い物質を混合したり、もしくは表面にコーティングすることにより、クリーニング用シート17から塵埃が発生することも抑制することができる。
【0046】
一方、マスク用シート1は、成形金型2のクリーニングにおいて、繰り返して再利用するため、クリーニング用シート17に比較して、クリーニング用樹脂5と剥離性が良い材料によって形成されていることが好ましく、例えば、マスク用シート1の材料は、樹脂を通過させない素材であり、銅、銅合金または鉄−Ni合金などの金属、あるいは紙や樹脂などであってもよい。
【0047】
さらに、マスク用シート1は、製品の組み立てに用いられる樹脂基板と比較してもクリーニング用樹脂5との接着力が弱いことが好ましい。
【0048】
また、マスク用シート1は、成形金型2のクリーニングの際に下金型4の金型面4a上に配置するとともに、金型面4aに開口する吸引孔11を覆うことにより、クリーニング用樹脂5が下金型4の金型面4aに付着するのを阻止するためのものであり、これによって、クリーニング用樹脂5が吸引孔11に付着して樹脂詰まりを引き起こすことも阻止可能になる。
【0049】
したがって、マスク用シート1は比較的高密度な構造のものが好ましく、その材料が紙である場合、図4や図5に示す構造を採用してもよい。
【0050】
以上のようなクリーニング用シート17とマスク用シート1を準備した後、図1および図7に示すように、成形金型2の下金型4の金型面4aに開口する真空吸引用の吸引孔11がマスク用シート1によって覆われるようにマスク用シート1を下金型4上に配置する。
【0051】
その際、図1に示すように、マスク用シート1のセットピン孔1aに下金型4の金型面4aに突出するセットピン4cを挿入してマスク用シート1を位置決めして下金型4上に配置する。
【0052】
なお、マスク用シート1は、半導体装置の組み立てに用いられる基板と同じ大きさのものである。例えば、基板が図12に示すような多数個取り基板14である場合、マスク用シート1は、その長手方向の長さおよび幅方向の長さが多数個取り基板14と同じ長さになっている。
【0053】
これにより、クリーニング用樹脂充填時の樹脂バリの発生を防ぐとともに、マスク用シート1にかかる面圧のくずれを防止することができる。
【0054】
また、下金型4の金型面4a上にマスク用シート1を配置する際には、図8に示すように金型面4aの凹部4bに配置する。その際、マスク用シート1の表面は金型面4aより長さ(Q−P)突出する。すなわち、マスク用シート1の厚さ(Q)を金型面4aの凹部4bの深さ(P)より厚くしておく。例えば、Q=0.21mmで、P=0.195mmである。
【0055】
これにより、上金型3からマスク用シート1にかかる面圧を確保してクリーニング用樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる。
【0056】
なお、吸引孔11から真空排気すなわちバキュームを行うことにより、マスク用シート1を金型面4aの凹部4bに密着させる。
【0057】
その後、図7に示すように、上金型3のキャビティ6に対応させてマスク用シート1よりキャビティ6側つまりマスク用シート1上にクリーニング用シート17を配置する。
【0058】
続いて、下金型4の金型面4aの吸引孔11をマスク用シート1によって塞いだ状態で下金型4と上金型3によってクリーニング用シート17をクランプする(図6参照)。
【0059】
その後、図9に示すように、クリーニング用樹脂5をプランジャ10によって押し出してキャビティ6に供給し、これにより、キャビティ6内にクリーニング用樹脂5を充填させる。
【0060】
その際、クリーニング用樹脂5は、クリーニング用シート17に浸透しながら金型間に行き渡るが、下金型4の金型面4a上にはマスク用シート1が配置されているため、クリーニング用樹脂5は下金型4までは到達せず、下金型4の金型面4aにクリーニング用樹脂5が付着することを防止できる。
【0061】
充填後、クリーニング用樹脂5を硬化させることで金型表面の汚れをクリーニング用樹脂5に取り込む。
【0062】
その後、図10に示すように、成形金型2からクリーニング用シート17とマスク用シート1を取り出す。その際、クリーニング用樹脂5が樹脂部18として形成されたクリーニング用シート17と、マスク用シート1とを一緒に成形金型2から取り出す。
【0063】
その後、クリーニング用シート17とマスク用シート1とを分離する。
【0064】
その際、本実施の形態では、クリーニング用シート17がクリーニング用樹脂5と密着性の高い材料によって形成されており、さらにマスク用シート1がクリーニング用樹脂5と剥離容易な材料によって形成されているため、クリーニング用樹脂5(樹脂部18)をクリーニング用シート17側に残存させた状態でマスク用シート1のみを剥離することができる。
【0065】
したがって、クリーニング用シート17とマスク用シート1を分離した後、マスク用シート1を、クリーニング用シート17を用いた成形金型2のクリーニング時に再利用することができる。なお、クリーニング用シート17とマスク用シート1との接触面にあらかじめ離型剤を含浸、噴霧または塗布しておくことで、より確実にクリーニング用シート17とマスク用シート1とを分離する事ができる。
【0066】
このように、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、成形金型2のクリーニングに使用したマスク用シート1を繰り返して再利用することができるため、マスク用シート1を使い捨てするのに比較してクリーニング作業に費やす部材のコストを低減することができ、その結果、成形金型2のクリーニング作業のコスト低減化を図ることができる。
【0067】
なお、クリーニング用樹脂5からなる樹脂部18が形成されたクリーニング用シート17については使用後に破棄または資源として再利用する。
【0068】
また、本実施の形態の成形金型2のクリーニングでは、マスク用シート1を再利用するにあたり、毎回のクリーニングにおいてクリーニング用シート17を介在させているため、マスク用シート1の寿命を延ばすことができる。
【0069】
さらに、図1に示すクリーニング用シート17は、成形金型2の上金型3のカル(カルブロック)7に対応する箇所を覆う部分を有している形状のものである。すなわち、図1に示すクリーニング用シート17は、開口孔が全く形成されていないものである。したがって、このクリーニング用シート17の場合、色々な形状の成形金型2に対応させて使用することができ、その汎用性を高めることが可能である。さらに、開口孔が全く形成されていないため、クリーニング用シート17そのものの加工コストを抑えることができ、クリーニング作業のコスト低減化を図ることができる。
【0070】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法によって組み立てられる半導体装置の一例である図13に示すBGA19の構造について説明する。
【0071】
BGA19は、一括モールディングが行われ、かつモールディング後にダイシングによって個片化されて組み立てられたものであり、半導体チップ12が搭載されたBGA基板20と、半導体チップ12の電極とこれに対応するBGA基板20の端子とを接続する金線などのボンディング用のワイヤ21と、半導体チップ12およびワイヤ21を樹脂封止して形成された封止部22と、BGA基板20のチップ支持面20aと反対側の面に設けられた複数の外部端子であるバンプ電極23とによって構成されているものである。
【0072】
次に、図13に示すBGA19の組み立てを、図11に示す製造プロセスフロー図にしたがって説明する。
【0073】
まず、図11のステップS1に示すように、複数のBGA基板20(図13参照)を備えた図12に示す多数個取り基板14を準備する。
【0074】
一方、ステップS2に示すように主面に所望の半導体集積回路が形成された半導体チップ12を準備する。
【0075】
続いて、ステップS3に示すチップマウントを行う。
【0076】
すなわち、多数個取り基板14のそれぞれのBGA基板20に半導体チップ12を搭載する。
【0077】
その後、ステップS4に示すワイヤボンディングを行う。
【0078】
ここでは、半導体チップ12の電極とこれに対応するそれぞれのBGA基板20の端子とを金線などのボンディング用のワイヤ21によって接続する。
【0079】
その後、ステップS5に示す一括モールディングを行う。
【0080】
ここでは、図1に示す上金型3と下金型4からなる成形金型2を用いて、多数個取り基板14における複数のパッケージ領域を上金型3の1つのキャビティ6で覆って樹脂封止を行う。
【0081】
なお、封止用樹脂充填時には、下金型4の吸引孔11により多数個取り基板14を吸引して多数個取り基板14を下金型4の金型面4aの凹部4bに吸引(吸着)固定する。
【0082】
樹脂充填後、図12に示す一括封止部16が形成される。
【0083】
その後、上金型3と下金型4のクランプを開放し、型開きを行って一括封止部16が形成された多数個取り基板14の取り出しを行う。この一括モールディングは、一日に何百ショットと繰り返されるため、成形金型2の内部には樹脂バリおよび油分や塵埃などの汚れと酸化物(付着物)が蓄積することになる。
【0084】
したがって、前記汚れを除去するために成形金型2のクリーニング工程を施す必要がある。
【0085】
なお、BGA19の組み立てとしては、その後、ステップS6に示すバンプ形成を行う。
【0086】
すなわち、多数個取り基板14におけるそれぞれのBGA基板20のチップ支持面20aと反対側の面に外部端子として複数のバンプ電極23を設ける。
【0087】
その後、ステップS7に示すダイシングを行って個片化する。
【0088】
すなわち、図12に示す一括封止部16と多数個取り基板14とをそれぞれのデバイス領域単位にダイシング用ブレード15によって切断分割して個片化を行う。
【0089】
これにより、ステップS8に示すBGA完成となり、図13に示すBGA19の組み立てを終了する。
【0090】
一方、一括モールディングに前後して、ステップS9に示す金型クリーニングを行う。すなわち、図1に示すように、上金型3と下金型4の間にクリーニング用シート17とマスク用シート1を介在させて金型のクランプを行い、この状態で、成形金型2内にクリーニング用樹脂5を供給し、キャビティ6への樹脂充填後、クリーニング用シート17とマスク用シート1を取り出してクリーニングを完了する。
【0091】
その際、クリーニング用シート17は破棄し、マスク用シート1は再利用する。
【0092】
次に、本実施の形態の変形例のクリーニング用シート17について説明する。図14に示す変形例のクリーニング用シート17は、成形金型2のカル(カルブロック)7に対応する箇所に開口孔であるポット用開口孔17dを有しているものである。
【0093】
すなわち、カル7およびポット9に対応した箇所に長孔であるポット用開口孔17dが形成されており、これにより、図15に示すクリーニング用樹脂5の充填時に、クリーニング用樹脂5の流れに対して抵抗が少なくなり、その結果、クリーニング用樹脂5の流速抵抗が小さくなり、その結果、クリーニング性を向上させることができる。
【0094】
このクリーニング用シート17を用いた場合にも、図16に示すように、クリーニング終了後、クリーニング用シート17は破棄し、マスク用シート1は再利用する。
【0095】
また、図17に示す変形例のクリーニング用シート17は、中央にポット用開口孔17dが形成され、さらにその両側に、成形金型2のキャビティ6に対応する箇所に長孔の開口孔であるキャビティ用開口孔17aが形成されているものである。すなわち、一括モールディング用のクリーニング用シート17である。このようにキャビティ6に対応したキャビティ用開口孔17aが形成されていることにより、クリーニング用樹脂5がキャビティ6に流れ込む際に、クリーニング用樹脂5の流れによってクリーニング用シート17が上金型3に密着または近接し、クリーニング効果を著しく阻害する現象の発生を防止することができ、その結果、クリーニング性を向上させることができる。
【0096】
また、図18に示す変形例のクリーニング用シート17は、各ポット9に対応させたポットごとのポット用開口孔17dが形成されているものであり、図18に示すクリーニング用シート17の場合、ポット周辺に形成される樹脂バリをクリーニング用シート17に付着させてクリーニングすることが可能になる。
【0097】
また、図19に示す変形例のクリーニング用シート17は、多数個取り基板14における1つのパッケージ領域を1つのキャビティ6で覆って樹脂封止を行う個片モールディングタイプの成形金型2に対応したシートであり、それぞれキャビティ6に対応した複数のキャビティ用開口孔17aが並んで形成されているものである。
【0098】
図19に示すクリーニング用シート17の場合においても、個片モールディングタイプの成形金型2のクリーニングを行うとともに、マスク用シート1を再利用することにより、一括モールディング用の成形金型2の場合と同様の効果を得ることができる。
【0099】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0100】
例えば、前記実施の形態では、成形金型2の下金型4に吸引孔11が形成されている場合を説明したが、吸引孔11は必ずしも形成されていなくてもよく、片面モールディングタイプの成形金型2であればよい。
【0101】
また、本実施の形態のクリーニング用シート17とマスク用シート1を用いて成形金型2のクリーニングを行って、クリーニング後、クリーニング用シート17を破棄、または資源として再利用し、マスク用シート1を再利用する製造方法については、離型回復剤を含有する樹脂を成型金型2に注入する事によって、成形金型2の離型性を回復させる離型回復作業に適用することも可能である。
【0102】
すなわち、シリコーン系樹脂などの離型回復樹脂を用いて上金型3と下金型4の間にクリーニング用シート17とマスク用シート1を介在させて成形金型2内に離型回復樹脂を充填させ、シート取り出し後、クリーニング用シート17を破棄、または資源として再利用し、マスク用シート1を再利用するものである。
【0103】
この場合の離型回復作業は、成形金型2のクリーニング作業の後にこれと合わせて行ってもよいし、ショット間で離型回復作業のみを行ってもよい。
【0104】
また、前記実施の形態においては、半導体装置がBGA19の場合について説明したが、前記半導体装置は、BGA19に限らず、片面モールディングタイプの成形金型2を用いて組み立てられる半導体装置であれば、BGA19以外のCSPなどの他の半導体装置であってもよい。
【0105】
さらに、前記実施の形態では成形金型2において、第1金型を上金型3とし、第2金型を下金型4として説明したが、これと反対に第1金型を下金型4とし、第2金型を上金型3としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、半導体装置の製造方法および金型クリーニング用シートに好適である。
【符号の説明】
【0107】
1 マスク用シート
1a セットピン孔
2 成形金型
3 上金型(第1金型)
4 下金型(第2金型)
4a 金型面
4b 凹部
4c セットピン
5 クリーニング用樹脂
6 キャビティ
7 カル(カルブロック)
8 ランナ
9 ポット
10 プランジャ
11 吸引孔
12 半導体チップ
13 ゲート
14 多数個取り基板
15 ダイシング用ブレード
16 一括封止部
17 クリーニング用シート(成形金型クリーニング用シート)
17a キャビティ用開口孔
17b コットン繊維
17c 耐熱繊維
17d ポット用開口孔
17e 粒形耐熱バインダー
17f 紙部
17g 耐熱バインダー
17h 耐熱樹脂コーティング膜
18 樹脂部
19 BGA(半導体装置)
20 BGA基板
20a チップ支持面
21 ワイヤ
22 封止部
23 バンプ電極
24 エアーベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法:
(a)第1金型、前記第1金型に形成されたキャビティ、前記キャビティと対向する金型面を有する第2金型、及び前記金型面に開口する吸引孔を備えた成形金型を準備する工程;
(b)半導体チップが搭載された基板を前記第1金型と前記第2金型との間に配置し、前記キャビティ内に封止用樹脂を供給し、前記半導体チップを前記封止用樹脂で封止する工程;
(c)マスク用シートとクリーニング用シートとを前記第1金型と前記第2金型との間に配置し、前記キャビティ内にクリーニング用樹脂を供給し、前記成形金型をクリーニングする工程;
ここで、前記(b)工程では、以下の工程を有する、
(b1)前記基板が前記吸引孔を塞ぐように、前記半導体チップが搭載された前記基板を前記第1金型と前記第2金型との間に配置する工程;
(b2)前記(b1)工程の後、前記吸引孔を介して前記基板を吸着した状態で、前記キャビティ内に前記封止用樹脂を供給する工程;
(b3)前記(b2)工程の後、封止部が形成された前記基板を前記成形金型から取り出す工程。
【請求項2】
請求項1において、
前記(b2)工程では、前記封止用樹脂を供給する前に、前記半導体チップが前記キャビティで覆われるように、前記基板は前記第1金型と前記第2金型とによりクランプされることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記基板は、前記半導体チップが搭載されるチップ支持面と、前記チップ支持面とは反対側の裏面とを有し、
前記(b3)工程の後、前記基板の前記裏面に複数のバンプ電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記半導体チップは、ワイヤを介して前記基板と電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−283955(P2009−283955A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163477(P2009−163477)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【分割の表示】特願2004−185884(P2004−185884)の分割
【原出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】