説明

半導体装置の製造方法

【課題】p型MOSトランジスタの半導体埋め込み領域形成に付随する不具合が抑制される技術を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、n型、p型MOSトランジスタの配置される第1、第2活性領域にまたがりシリコンでゲート電極を形成する工程と、第1活性領域とその近傍のゲート電極へのn型不純物注入工程と、第2活性領域及びその近傍のゲート電極を露出するマスクの形成工程と、マスク開口内の第2活性領域及びゲート電極をエッチングする凹部形成工程と、凹部表面の自然酸化膜を除去しこれに伴い開口が後退する工程と、凹部表面をハロゲンガスでクリーニングする工程と、凹部への半導体埋め込み領域形成工程とを有し、クリーニング工程時に後退した開口内にゲート電極上n型領域が露出していないように、ゲート電極上n型領域の第2活性領域側の端とマスク開口の第1活性領域側の縁とが離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSトランジスタの性能向上を図る技術として、歪み(応力印加)によってキャリアの移動度を向上させる歪みトランジスタが注目されている。p型MOSトランジスタの場合、ソース/ドレイン領域に、Si基板より格子定数の大きいシリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)混晶による半導体埋め込み領域を形成することにより、チャネルのSi結晶に圧縮応力が印加されて、ホールの移動度を高めることができる。歪みトランジスタの形成に係る種々の技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐108929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、p型MOSトランジスタへの半導体埋め込み領域形成工程に付随して生じ得る不具合の抑制に適した半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、シリコン基板に素子分離絶縁膜を形成して、n型MOSトランジスタの配置される第1活性領域とp型MOSトランジスタの配置される第2活性領域とを画定する工程と、前記第1活性領域と前記第2活性領域とにまたがって、シリコンを含むゲート電極を形成する工程と、前記第1活性領域と、前記ゲート電極の前記第1活性領域側部分に、n型不純物を注入する工程と、前記第2活性領域と、前記ゲート電極の前記第2活性領域側部分に、p型不純物を注入する工程と、前記第2活性領域及びその近傍の前記ゲート電極を露出する開口を持つマスクを、前記開口の前記第1活性領域側の縁が、前記第2活性領域の前記第1活性領域側の端から、前記ゲート電極上の前記n型不純物が注入された領域の前記第2活性領域側の端までの間に配置されるように形成するマスク形成工程と、前記開口内の前記第2活性領域及び前記ゲート電極をエッチングして、前記第2活性領域に第1凹部を、前記ゲート電極に第2凹部を、それぞれ形成する工程と、前記第1凹部及び前記第2凹部を形成する工程の後、前記第1凹部及び前記第2凹部の表面に形成された自然酸化膜を除去する自然酸化膜除去処理を行ない、前記自然酸化膜除去処理に伴って前記開口の縁が後退する工程と、前記自然酸化膜除去処理の後、前記第1凹部及び前記第2凹部の表面を、ハロゲンを含むガスでクリーニングするクリーニング工程と、前記クリーニングの後、前記第1凹部を埋め込む第1半導体埋め込み領域を形成するとともに、前記第2凹部に第2半導体埋め込み領域を形成する工程とを有し、前記クリーニング工程を行うとき、後退した前記開口内に、前記ゲート電極上の前記n型不純物の注入された領域が露出していないように、前記n型不純物を注入する工程で前記ゲート電極上に前記n型不純物が注入される領域の前記第2活性領域側の端と、前記マスク形成工程で形成される前記開口の前記第1活性領域側の縁とが離されている半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
p型MOSトランジスタへの半導体埋め込み領域形成に先立つ、ハロゲンを含むガスによるクリーニング時、マスク開口内に、ゲート電極上のn型不純物注入領域が露出しない。これにより、ハロゲンを含むガスによるクリーニングでゲート電極上のn型不純物注入領域がエッチングされることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1−1】図1Aは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−2】図1Bは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−3】図1Cは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−4】図1Dは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−5】図1Eは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−6】図1Fは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−7】図1Gは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−8】図1Hは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−9】図1Iは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−10】図1Jは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−11】図1Kは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−12】図1Lは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−13】図1Mは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−14】図1Nは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−15】図1Oは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−16】図1Pは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−17】図1Qは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図1−18】図1Rは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な断面図である。
【図1−19】図1Sは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な断面図である。
【図2】図2は、SiGe成長用マスクの(比較例の)レイアウトを示す概略平面図である。
【図3−1】図1Aは、第2実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図3−2】図1Bは、第2実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図3−3】図1Cは、第2実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。
【図4】図4A及び図4Bは、それぞれ、実施例及び比較例のサンプルの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1A〜図1Sを参照して、本発明の第1実施例による半導体装置の製造方法について説明する。図1A〜図1Sは、第1実施例の半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。図1A等で、平面図には「t」を付し、n型MOSトランジスタのゲート電極長さ方向に直交する方向の断面図には「n」を付し、p型MOSトランジスタのゲート電極長さ方向に直交する方向の断面図には「p」を付し、ゲート電極の長さ方向の断面図には「v」を付して区別する。n型MOSトランジスタ、p型MOSトランジスタ、及びゲート電極の断面図は、それぞれ、平面図のNN´線、PP´線、及びVV´線に沿ったものである。
【0009】
図1Aを参照する。シリコン基板1に、シャロートレンチアイソレーション(STI)で素子分離絶縁膜2を形成して、n型MOSトランジスタが形成される活性領域3nと、p型MOSトランジスタが形成される活性領域3pとを画定する。
【0010】
図1Bを参照する。活性領域3nにp型ウェルpwを形成し、活性領域3pにn型ウェルnwを形成した後、基板表面を熱酸化して酸化シリコン膜を形成し、この酸化シリコン膜に窒素を導入し酸窒化シリコン膜として、ゲート絶縁膜となる絶縁膜4を形成する。なお、絶縁膜4は、酸窒化シリコン膜上に、Hf、Zr等を含む高誘電体膜、及びTiN膜、TaN膜等を形成した構造としてもよい。
【0011】
なお、p型ウェルpwは、活性領域3nを露出し活性領域3pを覆うレジストパターンを用いp型不純物を注入して形成する。n型ウェルnwは、活性領域3pを露出し活性領域3nを覆うレジストパターンを用いn型不純物を注入して形成する。
【0012】
図1Cを参照する。絶縁膜4の上に、低温化学気相堆積(CVD)またはプラズマCVD(成膜温度450℃〜650℃程度)で、ポリシリコンまたはアモルファスシリコンを堆積して、ゲート電極となる導電膜5を形成する。
【0013】
図1Dを参照する。導電膜5及び絶縁膜4をフォトリソグラフィ及びエッチングでパターニングして、ゲート電極5及びゲート絶縁膜4を残す。共通のゲート電極5が、n型MOSトランジスタ形成側の活性領域3nと、p型MOSトランジスタ形成側の活性領域3pとにまたがって配置される。ゲート電極5の長さ方向の一方側が活性領域3n上に配置され、他方側が活性領域3p側に配置される。
【0014】
なお、導電膜5上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を形成し、これらでハードマスクを形成して、ゲート電極5及びゲート絶縁膜4を残すパターニングを行ってもよい。なお、導電膜5の、n型MOSトランジスタ形成側部分及びp型MOSトランジスタ形成側部分のそれぞれに、プレドープがされていてもよい。例えば、n型MOSトランジスタ形成側部分にはASやP、 p型MOSトランジスタ形成側部分にはBをプレドープすることができる。
【0015】
図1Eを参照する。ゲート電極5を覆ってシリコン基板1上に、低温CVDまたはプラズマCVD (成膜温度400℃〜800℃程度)で酸化シリコン膜を堆積する。この酸化シリコン膜を異方性エッチングして、ゲート電極5の側壁に、浅い接合形成用のオフセットスペーサ6を残す。オフセットスペーサ6は、5nm〜15nm程度の膜厚が望ましい。
【0016】
なお、オフセットスペーサ6として、酸化シリコン膜の他に、窒化シリコン膜を用いてもよい。なお、オフセットスペーサ6は、低温CVDによる膜とプラズマCVDによる膜の積層構造としてもよい。なお、オフセットスペーサ6に、ボロンまたはカーボンをドープしてもよい。なお、イオン注入技術の進歩により、オフセットスペーサ6が不要となるケースも考えられる。
【0017】
図1Fを参照する。活性領域3nを露出し活性領域3pを覆うレジストパターンRPnを形成する。平面図1Ftで、レジストパターンRPnが覆う領域を斜線で示す。レジストパターンRPnの開口50の、活性領域3p側の縁は、平面視上、活性領域3nと活性領域3pとのちょうど中間の素子分離絶縁膜2上に配置される。開口50内には、活性領域3nとともに、ゲート電極5のn型MOSトランジスタ形成側部分も露出する。
【0018】
レジストパターンRPn、ゲート電極5、及び浅い接合形成用のオフセットスペーサ6をマスクとし、活性領域3nに、n型不純物としてAsを注入して、n型MOSトランジスタの浅い接合領域7を形成する。注入条件は、注入エネルギーを0.5keV〜2keV程度とし、ドーズ量を1×1015cm−2〜3×1015cm−2程度とする。
【0019】
さらに、短チャネル抑制の注入としてp型不純物のInまたはBを注入する。Inは、注入エネルギー50keV〜80keV程度、ドーズ量1.5×1013cm−2〜3×1013cm−2程度で注入される。Bは、注入エネルギー5keV〜10keV程度、ドーズ量5×1012cm−2〜1×1015cm−2程度で注入される。
【0020】
なお、Bの代わりまたは同時に、BFを注入エネルギー20keV〜50keV程度、ドーズ量1×1013cm−2〜5×1015cm−2程度で注入してもよい。なお、Bのチャネリングテール抑制にGeを用いてもよい。Geの注入エネルギーは10keV〜20keV程度、ドーズ量は1×1014cm−2〜1×1015cm−2程度である。なお、これらのn型、p型不純物ともに、ドーズ量を分割し基板の方向を変えながら、かつ傾斜させた注入をしてもよい。注入の傾斜角度は、例えば3°〜30°程度である。
【0021】
浅い接合領域7の形成と同時に、開口50内に露出したゲート電極5のn型MOSトランジスタ形成側部分(つまり、活性領域3n側部分)にもn型不純物が注入されて、n型領域5nが形成される。その後、レジストパターンRPnを除去する。
【0022】
図1Gを参照する。活性領域3pを露出し活性領域3nを覆うレジストパターンRPpを形成する。平面図1Gtで、レジストパターンRPpが覆う領域を斜線で示す。レジストパターンRPpの開口51の、活性領域3n側の縁は、平面視上、活性領域3pと活性領域3nとのちょうど中間の素子分離絶縁膜2上に配置される。開口51内には、活性領域3pとともに、ゲート電極5のp型MOSトランジスタ形成側部分も露出する。
【0023】
レジストパターンRPp、ゲート電極5、及び浅い接合形成用のオフセットスペーサ6をマスクとし、活性領域3pに、p型不純物としてBを注入して、p型MOSトランジスタの浅い接合領域8を形成する。注入条件は、注入エネルギーを0.1keV〜1keV程度とし、ドーズ量を1×1014cm−2〜5×1015cm−2程度とする。なお、Bの代わりに、BFを注入エネルギー0.5keV〜5keV程度、ドーズ量5×1014cm−2〜5×1015cm−2程度で注入してもよい。
【0024】
さらに、短チャネル抑制の注入としてn型不純物のSb、As等を注入する。Sbは、注入エネルギー40keV〜70keV程度、ドーズ量2×1013cm−2〜4×1013cm−2程度で注入される。Asは、注入エネルギー40keV〜70keV程度、ドーズ量2×1013cm−2〜4×1013cm−2程度で注入される。なお、これらのn型、p型不純物ともに、ドーズ量を分割し基板の方向を変えながら、かつ傾斜させた注入をしてもよい。注入の傾斜角度は、例えば3°〜30°程度である。
【0025】
浅い接合領域8の形成と同時に、開口51内に露出したゲート電極5のp型MOSトランジスタ形成側部分(つまり、活性領域3p側部分)にもp型不純物が注入されて、p型領域5pが形成される。その後、レジストパターンRPpを除去する。
【0026】
なお、n型MOSトランジスタ及びp型MOSトランジスタの浅い接合領域7、8を形成するそれぞれの不純物注入時に、F、N、Ge、Cなどのイオン種を同時に注入していてもよい。なお、n型MOSトランジスタの浅い接合領域7の形成が先の例を説明したが、p型MOSトランジスタの浅い接合領域8の形成が先であってもよい。
【0027】
図1Hを参照する。活性領域3pを露出し活性領域3nを覆って、シリコンゲルマニウム(SiGe)成長領域を画定するマスク(SiGe成長用マスク)MSKを形成する。平面図1Htで、SiGe成長用マスクMSKが覆う領域を斜線で示す。
【0028】
n型MOSトランジスタ及びp型MOSトランジスタの浅い接合領域7、8を形成した不純物注入によって、ゲート電極5上部にも、n型MOSトランジスタ形成側にn型領域5nが形成され、p型MOSトランジスタ形成側にp型領域5pが形成された。活性領域3pと活性領域3nとのちょうど中間に、n型領域5nとp型領域5pとの境界Bnpが配置されている。
【0029】
SiGe成長用マスクMSKの開口52の、活性領域3n側の縁Emは、平面視上、活性領域3pの活性領域3n側の端Epから、n型領域5nの活性領域3p側の端、つまりn型領域5nとp型領域5pとの境界Bnpまでの間に配置される。
【0030】
本願発明者は、従来、SiGe成長用マスクMSKも、開口52の縁Emを、浅い接合形成時のn型不純物注入領域とp型不純物注入領域との境界Bnpと一致させて形成していた(このような態様を、比較例と呼ぶこととする)。しかし、比較例の縁Emの配置に起因して、後述のように、不具合が生じた。第1実施例では、この不具合を抑制するため、開口52の縁Emを、境界Bnpから活性領域3p側にシフトさせて配置している。シフト幅をWとする。
【0031】
SiGe成長用マスクMSKは、ゲート電極5及びオフセットスペーサ6を覆ってシリコン基板1上に、例えば、低温CVDまたはプラズマCVD (成膜温度400℃〜600℃程度)で酸化シリコン膜を厚さ10nm〜50nm程度堆積し、この酸化シリコン膜をフォトリソグラフィ及びエッチングでパターニングして形成される。
【0032】
なお、SiGe成長用マスクMSKは、酸化シリコン膜の他に、窒化シリコン膜で形成してもよく、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造としてもよい。積層構造とした場合も、膜厚は10nm〜50nm程度とすることが好ましい。
【0033】
なお、SiGe成長用マスクMSKは、低温CVDによる膜とプラズマCVDによる膜の積層構造としてもよい。なお、 SiGe作り分けマスクMSKに、ボロンまたはカーボンをドープしてもよい。
【0034】
図1Iを参照する。SiGe成長用マスクMSKを用い、等方性または異方性のドライエッチングにより、開口52内に露出したシリコンをエッチングする。活性領域3pに、後の工程でSiGe層を成長させる凹部9pが形成される。これと同時に、開口52内に露出したゲート電極5もエッチングされて、凹部9gが形成される。このエッチングの深さ方向のエッチング量は、20nm〜60nm程度(例えば40nm)が望ましい。
【0035】
図1Jを参照する。後に図1Kを参照して説明するウエットエッチング工程に先立って、凹部9p、9gの表面の自然酸化膜を除去するのが好ましい。例えば、0.07%の希フッ酸で熱酸化膜2nm相当のエッチングを行う。
【0036】
このエッチングに伴い、SiGe成長用マスクMSKの開口52の縁が、5nm程度後退する。よって、開口52の活性領域3n側の縁Emは、ゲート電極5上で、n型領域5nの端Bnpに近づくように移動する。平面図1Jtにおいて、SiGe成長用マスクMSKの形成時の開口52を破線で示し、後退した開口52を実線で示す。
【0037】
図1Kを参照する。NHOHやKOHまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液などによるウエットエッチングで、開口52内に露出したシリコンの等方エッチングを行ない、p型MOSトランジスタのチャネル部を挟む凹部9p間の距離を縮める。
【0038】
このウエットエッチングは、図1Iを参照して説明したドライエッチングと合わせて、深さ方向の総エッチング量が40nm〜80nmとなるように行うのが望ましい(例えば、ドライエッチング量が40nm、ウエットエッチング量が25nmで、総エッチング量を65nmとする)。このウエットエッチングに伴い、ゲート電極5上の凹部9gも深くなる。
【0039】
図1Lを参照する。後に図1Mを参照して説明するSiGe成長工程に先立って、再び、凹部9p、9gの表面の自然酸化膜を除去する。SiGe成長前の自然酸化膜除去は、結晶性のよいSiGeを形成するために必要である。例えば、2.5%の希フッ酸で熱酸化膜2nm相当のエッチングを行う。
【0040】
このエッチングに伴い、SiGe成長用マスクMSKの開口52が、さらに5nm程度後退する。つまり、開口52の縁Emが、n型領域5nの端Bnpにさらに近づくように移動する。平面図1Ltにおいて、図1Jに示した工程で後退した開口52を一点鎖線で示し、図1Lに示す工程でさらに後退した開口52を実線で示す。
【0041】
そして、ハロゲンを含むガス、例えば塩素ガスや塩化水素ガスで、活性領域3pの凹部9pに露出したシリコン表面をクリーニングする。ここでは塩素ガスを用いるとして説明を続ける。なお、以下、ハロゲンを含むガスを、ハロゲンガスと呼ぶこともある。処理条件は、例えば、温度が500℃〜650℃程度で、処理時間が1分〜15分程度である。この処理に伴い、ゲート電極5に形成された凹部9gの表面もクリーニングされる。
【0042】
なお、ハロゲンガスによるクリーニングの前に、SiGeの結晶性をより向上させるため、H雰囲気でのアニールを、900℃〜1050℃、1sec〜3secの条件で行ってもよい。
【0043】
図1Mを参照する。低温CVD (成膜温度500℃〜800℃)で、活性領域3pの凹部9pにSiGe層10pをエピタキシャル成長する。例えば凹部9pの深さが65nmであるとき、SiGe層10pの成長膜厚は、例えば80nm程度とする。SiGe層10pは、凹部9pを埋め込んで、p型MOSトランジスタのゲート電極下方のチャネルに圧縮性応力を印加する半導体埋め込み領域となる。活性領域3pの凹部9pでのSiGe層10pの成長と同時に、ゲート電極5の凹部9gにも、SiGe層(半導体埋め込み領域)10gが成長する。
【0044】
SiGe層10p、10gのGe濃度は、例えば全膜厚で均一とすることができる。Ge濃度は、15%〜40%の範囲とするのが望ましい。なお、Ge濃度は、下方から上方に向けて増加するように、厚さ方向で変化させてもよい。例えば、下から10nm〜30nmまでは15%〜25%の範囲、それ以上の膜厚部分では25%〜40%の範囲のGe濃度が望ましい。
【0045】
SiGe層10p、10gには、成長と同時に、p型不純物のBをドープする。B濃度は、SiGe層の厚さ方向で変化させる。例えば、SiGe層の全厚さを上述のように80nmとして、B濃度は、下方から、膜厚0nmから30nm程度までは1×1018cm−3〜1×1020cm−3程度とし、膜厚30nmから60nm程度までは1×1020cm−3〜8×1020cm−3程度とし、膜厚60nmから80nm程度までは1×1020cm−3〜2×1021cm−3程度とする。このようにして、SiGe成長用マスクMSKを用いたSiGe層10p、10gの形成が行われる。
【0046】
第1実施例では、SiGe層10p、10gの成長に先立つハロゲンガスによるクリーニングの時点(図1L参照)で、後退した開口52の活性領域3p側の縁Emが、ゲート電極5のn型領域5nまで到達しないように、つまり、開口52が後退してもn型領域5nが露出しないように、図1Hを参照して説明したシフト幅Wが設定されている。
【0047】
一方、比較例は、SiGe成長用マスクMSKを、開口52の縁Emがn型領域5nの端Bnpと一致するように形成する。従って、開口52が後退して、ハロゲンガスによるクリーニングの時点では、開口52内にn型領域5nが露出することとなる。
【0048】
ハロゲンガス、特に塩素ガスは、n型シリコンとの反応性が高い。開口52内にn型領域5nが露出していると、n型領域5nがエッチングされやすく、SiGe成長用マスクMSKの下で、n型MOSトランジスタ側に入り込んだエッチングが生じる。
【0049】
SiGe成長用マスクMSKの下に入り込んだエッチングにより、SiGe成長用マスクMSKによる庇状の部分ができ、この庇状部分が剥がれてパーティクル源になることが懸念される。また、n型MOSトランジスタのn型ポリシリコンのゲート電極上にp型SiGe層が成長することにより、空乏化(実効的なゲート幅の変化)が生じることも懸念される。
【0050】
第1実施例のSiGe成長用マスクMSKは、開口52が後退しても、ゲート電極5上のn型領域5nを露出させない。これにより、n型領域5nのハロゲンガスによるエッチングが防止されて、比較例で生じたような不具合が抑制できる。
【0051】
なお、酸化シリコン膜によるSiGe成長用マスクMSKが後退する例を説明しているが、SiGe成長用マスクMSKが窒化シリコン膜を含む場合にも、このような後退が生じるので、第1実施例の技術は有用である。
【0052】
なお、図1Kを参照して説明した、凹部9pをさらに深くするウエットエッチングは、省略することもできる。そのような場合、図1Iを参照して説明したようなドライエッチングで凹部9pを形成し、図1Lを参照して説明したような自然酸化膜の除去工程を行って、図1Mを参照して説明したようなSiGe層の成長を行う。凹部9pを深めるウエットエッチングを行なう場合に比べれば、ウエットエッチング前の自然酸化膜除去工程が減るので、SiGe成長用マスクMSKの後退量は少なくなる。なお、このウエットエッチングを省略する場合は、凹部9pを形成するドライエッチングの深さを、20nm〜100nm程度とする。
【0053】
図1Nを参照する。SiGe成長用マスクMSKを、例えばドライエッチングで除去する。
【0054】
図1Oを参照する。ゲート電極5及びオフセットスペーサ6を覆ってシリコン基板1上に、低温CVDまたはプラズマCVD (成膜温度400〜600℃程度)で酸化シリコン膜を堆積する。この酸化シリコン膜を異方性エッチングして、ゲート電極5の側壁上に、浅い接合形成用のオフセットスペーサ6に重なる深い接合形成用のオフセットスペーサ11を残す。オフセットスペーサ11は、20nm〜50nm程度の膜厚が望ましい。
【0055】
なお、オフセットスペーサ11として、酸化シリコン膜の他に、窒化シリコン膜を用いてもよい。なお、オフセットスペーサ6は、低温CVDによる膜とプラズマCVDによる膜の積層構造としてもよい。なお、オフセットスペーサ6に、ボロンまたはカーボンをドープしてもよい。
【0056】
図1Pを参照する。活性領域3nを露出し活性領域3pを覆うレジストパターンを形成し、このレジストパターンと、ゲート電極5、浅い接合形成用のオフセットスペーサ6、及び深い接合形成用のオフセットスペーサ11をマスクとして、n型不純物を注入し、n型MOSトランジスタの深い接合領域12nを形成する。同時に、ゲート電極5のn型MOSトランジスタ側部分に、n型領域12gが形成される。
【0057】
n型不純物として、AsとPがそれぞれ、注入エネルギー5keV〜15keV程度でドーズ量1×1014cm−2〜5×1015cm−2程度、注入エネルギー3keV〜12keV程度でドーズ量2×1015cm−2〜2×1016cm−2程度の条件で注入される。
【0058】
なお、このとき短チャネル抑制のため、p型不純物のInを、注入エネルギー40keV〜80keV程度、ドーズ量5×1012cm−2〜1×1014cm−2程度で注入してもよい。また、BまたはBFを、ドーズ量1×1012cm−2〜5×1014cm−2程度で注入してもよい。
【0059】
さらにPの拡散抑制のために、Cを注入エネルギー3keV〜10keV程度、ドーズ量5×1013cm−2〜5×1015cm−2程度で注入してもよい。
【0060】
その後、n型MOSトランジスタの深い接合領域12nの形成に用いたレジストパターンを除去する。
【0061】
活性領域3pを露出し活性領域3nを覆うレジストパターンを形成し、このレジストパターンと、ゲート電極5、浅い接合形成用のオフセットスペーサ6、及び深い接合形成用のオフセットスペーサ11をマスクとして、p型不純物を注入し、p型MOSトランジスタの深い接合領域13pを形成する。同時に、ゲート電極5のp型MOSトランジスタ側部分にp型領域13gが形成される。なお、ゲート電極の長さ方向断面図1Pvにおいて、図示を簡略化するため、ゲート電極5上のSiGe層10gの部分もまとめてp型領域13gとして示す。
【0062】
p型不純物として、Bが注入エネルギー1keV〜10keV程度、ドーズ量1×1013cm−2〜1×1014cm−2程度で注入される。なお、SiGe層中の寄生抵抗を低減するためにBやBFを注入してもよい。
【0063】
その後、p型MOSトランジスタの深い接合領域13pの形成に用いたレジストパターンを除去する。
【0064】
なお、深い接合領域12n、13pを形成するそれぞれの不純物注入時に、F、N、Ge、Cなどのイオン種を同時に注入していてもよい。なお、n型MOSトランジスタの深い接合領域12nの形成と、p型MOSトランジスタの深い接合領域13pの形成とは、どちらが先であってもよい。
【0065】
図1Qを参照する。基板全面に、Ni膜を、低温物理気相堆積(PVD)により厚さ10nm〜20nm程度成膜する。Ni膜に、Ptが1%〜5%程度含まれる。200℃〜250℃、60sec〜240secの条件でアニールを行い、(NiPt)2Siを形成する。そして、未反応のNi/Pt膜を、硫酸などで除去する。さらに、(NiPt)2Siを380℃〜420℃、20sec〜40secの条件でアニールすることで、低抵抗の(NiPt)Siを形成して、n型MOSトランジスタ及びp型MOSトランジスタの深い接合領域12n、13p上、及びゲート電極5上に、シリサイド層14を形成する。
【0066】
図1Rを参照する。なお、図1R以下は、n型MOSトランジスタの断面図及びp型MOSトランジスタの断面図のみ示す。基板全面に、低温CVDまたはプラズマCVD (成膜温度350℃〜450℃程度)で窒化シリコンを厚さ10nm〜100nm程度堆積して絶縁膜15を形成する。この後、n型MOSトランジスタ側の絶縁膜15は、膜の密度を下げるため紫外線の照射が行われて、2GPa程度の圧縮性の応力を持つ。
【0067】
絶縁膜15をフォトリソグラフィ及びエッチングでパターニングして、p型MOSトランジスタ上の部分を除去し、n型MOSトランジスタ上の部分を残す。絶縁膜15は、シリコン基板1に対して圧縮性の応力を持ち、n型MOSトランジスタのチャネルにのみ伸張性の応力が印加されて、電流駆動力が向上する。
【0068】
さらに、基板全面に、低温CVDまたはプラズマCVD (成膜温度350℃〜450℃程度)で、3GPa程度の伸張性応力を持つ窒化シリコンを厚さ10nm〜100nm程度堆積して、絶縁膜16を形成する。絶縁膜16をフォトリソグラフィ及びエッチングでパターニングして、n型MOSトランジスタ上の部分を除去し、p型MOSトランジスタ上の部分を残す。絶縁膜16は、シリコン基板1に対して伸張性の応力を持ち、p型MOSトランジスタのチャネルには圧縮性の応力が印加されて、電流駆動力が向上する。
【0069】
なお、p型MOSトランジスタ側の絶縁膜16は形成しなくてもよい。つまり、圧縮性窒化シリコン膜15のみ形成するようにしてもよい。なお、絶縁膜15、16は、塗布で形成することもできる。
【0070】
図1Sを参照する。絶縁膜15、16上に、層間絶縁膜17を形成する。層間絶縁膜17は、例えば、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜を、低温CVDや高密度プラズマ(HDP)CVDにより、成膜温度250℃〜450℃で、厚さ100nm〜600nm堆積して形成される。なお、層間絶縁膜17に、BまたはCをドープしてもよい。
【0071】
層間絶縁膜17に、フォトリソグラフィ及びエッチングでコンタクトホールを形成し、例えばTiN膜を介してWを埋め込んで、n型MOSトランジスタ、p型MOSトランジスタそれぞれのソース/ドレイン領域に接続するコンタクトプラグ18を形成する。その後、公知技術を適宜用いて、さらに上層の配線構造を形成することができる。このようにして、第1実施例による半導体装置が作製される。
【0072】
次に、図2を参照して、SiGe成長用マスクMSKの開口52のシフト幅W(図1H参照)の見積もり例を説明する。併せて、第1実施例のSiGe成長用マスクMSKの開口52のレイアウトデータを発生させる方法についても説明する。図2は、SiGe成長用マスクMSKの(比較例の)レイアウトを示す概略平面図である。
【0073】
SiGe成長用マスクMSKの形成前に行なわれた、n型MOSトランジスタ形成側(活性領域3n側)領域へのn型不純物注入と、p型MOSトランジスタ形成側(活性領域3p側)領域へのp型不純物注入の境界が、境界Bnpである。境界Bnpは、例えば、活性領域3nと活性領域3pとのちょうど中間に設定されている。
【0074】
比較例では(従来は)、SiGe成長用マスクMSKの開口52の形状を、特別には設定せずに、p型MOSトランジスタ形成側の不純物注入領域と一致させるレイアウトとしていた。これにより、不純物注入の境界Bnpと、SiGe成長用マスクMSKの開口52の、n型MOSトランジスタ形成側の縁Emとが一致する。図2は、比較例におけるSiGe成長用マスクMSKの開口52の形状を示す。
【0075】
まず、比較例のレイアウトデータから、第1実施例のレイアウトデータを得る方法について説明する。n型MOSトランジスタ形成側の、浅い接合領域を形成するためのn型不純物注入領域を、仮想的に、シフト幅W分だけp型MOSトランジスタ形成側に拡張する。そして、n型不純物注入領域が拡張されたシフト幅W分だけ、SiGe層の形成される領域、つまりSiGe成長用マスクMSKの開口52を狭くする。これにより、実際のn型不純物注入領域の端Bnpから、シフト幅W分だけ離れた位置に、開口52の縁Emの配置されるレイアウトが得られる。
【0076】
次に、シフト幅Wの見積もり例を説明する。図2に示すように、n型MOSトランジスタ形成側の活性領域3nから、p型MOSトランジスタ形成側の活性領域3pまでの距離が、2×L1であり、不純物注入領域の境界Bnpから各活性領域3n、3pまでの距離がそれぞれL1である。
【0077】
埋め込みSiGe技術を適用したMOSトランジスタのテクノロジにおいて、L1は最小40nm〜最大150nm程度(例えば110nm程度)である。また、SiGe成長用マスクMSKをパターニングする際の最大位置ずれ・幅ずれ量をL2とすると、L2は最小10nm〜最大70nm程度(例えば50nm程度)である。また、上述のような自然酸化膜除去のエッチング等に伴うSiGe成長用マスクMSKの後退量は、最小2nm〜最大15nm程度(例えば10nm程度)である。
【0078】
開口52の縁Emの、n型MOSトランジスタ側への最大のずれ量は、位置ずれ量L2と後退量L3との和L2+L3で見積もられる。この和L2+L3以上の値(例えばL2+L3)をシフト幅Wとして、開口52の縁Emをn型領域5nの端Bnpからp型MOSトランジスタ側にシフトして配置すれば、後退後の開口52が、n型領域5nを露出することが避けられる。
【0079】
ただし、SiGe成長用マスクMSKは、活性領域3pに掛かってはならないので、シフト幅WはL1よりも小さくする必要がある。例えば、L1=110nm、L2=50nm、L3=10nmとして、シフト幅Wは、L2+L3=60nmに設定することができる。
【0080】
なお、SiGe成長用マスクMSKの開口52の後退は、縁Emのp型MOSトランジスタ側への位置ずれを緩和する方向、つまり、活性領域3pに掛かる危険性を低下させる方向に働く。
【0081】
以上説明したように、ゲート電極上のn型領域のp型MOSトランジスタ側の端と、SiGe成長用マスク開口のn型MOSトランジスタ側の縁とを、SiGe成長用マスク開口が後退してもゲート電極上のn型領域が露出しない程度に、離して配置することができる。これにより、ゲート電極上のn型領域が、塩素ガス等の、ハロゲンを含むガスでエッチングされる不具合を抑制することができる。
【0082】
第1実施例では、SiGe成長用マスクの開口が後退してもゲート電極上のn型領域が露出しないように、SiGe成長用マスクの開口の縁をp型MOSトランジスタ側にシフトした配置とした。一方、以下の第2実施例で説明するように、ゲート電極上のn型領域の端を、n型MOSトランジスタ側に引き下がらせて配置しておくことにより、SiGe成長用マスクの開口が後退したときゲート電極上のn型領域を露出させないようにすることもできる。
【0083】
次に、図3A〜図3Cを参照して、第2実施例による半導体装置の製造方法について説明する。図3A〜図3Cは、第2実施例の半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略的な平面図及び断面図である。ただし、第1実施例と異なる工程について示す。
【0084】
まず、第1実施例の図1A〜図1Eに示した工程と同様にして、ゲート電極5の側壁上の、浅い接合形成用のオフセットスペーサ6までを形成する。次に、第1実施例の図1Fに示した工程に対応して、n型MOSトランジスタの浅い接合領域7を形成するn型不純物の注入を行なう。ただし、以下に説明するように、第1実施例と、不純物注入領域の端が異なる。
【0085】
図3Aを参照する。活性領域3nを露出し活性領域3pを覆うレジストパターンRPnaを形成する。第2実施例のレジストパターンRPnaの開口50aの、活性領域3p側の縁Enaは、活性領域3nと活性領域3pのちょうど中間CNTから、活性領域3nの活性領域3p側の端Enまでの間で、n型MOSトランジスタ側に引き下がって配置されている。これにより、浅い接合領域7と同時に形成されるゲート電極5上のn型領域5naの端が、第1実施例に比べて、n型MOSトランジスタ側に引き下がって形成される。
【0086】
図3Bを参照する。次に、第1実施例の図1Gに示した工程と同様にして、p型MOSトランジスタの浅い接合領域8を形成するp型不純物の注入を行なう。浅い接合領域8と同時に形成されるゲート電極5上のp型領域5pの端は、第1実施例と同様に、活性領域3nと活性領域3pのちょうど中間CNTに配置される。従って、第2実施例では、ゲート電極5上のp型領域5pとn型領域5naとが離れて形成される。
【0087】
さらに、第1実施例の図1Hに示した工程に対応して、SiGe成長用マスクを形成する。ただし、以下に説明するように、第1実施例と開口の縁の位置が異なる。活性領域3pを露出し活性領域3nを覆って、SiGe成長用マスクMSKaを形成する。第2実施例では、SiGe成長用マスクMSKaの開口52aが、比較例と同様に、p型MOSトランジスタの浅い接合領域8を形成するp型不純物注入領域と一致したレイアウトとなっている。従って、SiGe成長用マスクMSKaの開口52aの、活性領域3n側の縁Emaが、活性領域3nと活性領域3pのちょうど中間CNTに配置されている。
【0088】
次に、第1実施例の図1I〜図1Lに示した工程と同様にして、SiGe成長用マスクMSKaを用いたエッチングにより、SiGe層成長用の凹部を形成し、自然酸化膜の除去を行う。次に、第1実施例の図1Mに示した工程に対応して、以下のように、SiGe層を成長する。
【0089】
図3Cを参照する。SiGe成長用マスクMSKaの開口52aの縁Emaは、自然酸化膜の除去処理に起因して、n型MOSトランジスタ側に後退している。ただし、開口52aの縁Emaは、ゲート電極5上のn型領域5naの端Enaまでは到達していない。
【0090】
後退した開口52aの縁Emaが、n型領域5naの端Enaまでは到達しないように、図3Aを参照して説明したn型不純物注入工程で、n型領域5naの端Enaの引き下がり幅が設定されている。第2実施例のn型領域5naの引き下がり幅は、第1実施例のSiGe成長用マスクの開口のシフト幅Wに対応するので、シフト幅Wと同様な考え方で適切な幅を見積もることができる。
【0091】
SiGe成長用マスクMSKaを用いて、p型MOSトランジスタのSiGe層10pと、ゲート電極5上のSiGe層10gaとを成長する。
【0092】
なお、第1実施例では、SiGe成長用マスクMSKの開口52の縁Emが、ゲート電極5上のn型領域5nとp型領域5pとの境界Bnp、つまり、p型領域5pのn型MOSトランジスタ側の端Bnpに到達しなかった(図1M参照)。これに対応して、ゲート電極5上のSiGe層10gの、n型MOSトランジスタ側の端が、p型領域5pのn型MOSトランジスタ側の端Bnpよりも、p型MOSトランジスタ側に配置されることとなる。
【0093】
一方、第2実施例では、SiGe成長用マスクMSKaの開口52aの縁Emaが、p型領域5pのn型MOSトランジスタ側の端(CNT)よりも、n型MOSトランジスタ側に後退する。これに対応して、ゲート電極5上のSiGe層10gaの、n型MOSトランジスタ側の端が、p型領域5pのn型MOSトランジスタ側の端CNTよりも、n型MOSトランジスタ側に配置されることとなる。
【0094】
以上説明したように、第2実施例の方法でも、SiGe成長用マスクの開口が後退したときゲート電極上のn型領域が露出しないようにすることができる。
【0095】
なお、第1実施例と第2実施例の方法を組み合わせることもできる。すなわち、SiGe成長用マスク開口のn型MOSトランジスタ側の縁を、ゲート電極上のn型領域からp型MOSトランジスタ側にシフトして配置する方法と、ゲート電極上のn型領域の、p型MOSトランジスタ側の端を、n型MOSトランジスタ側に引き下がらせて配置する方法の両方を同時に採用することもできる。
【0096】
図4A及び図4Bは、塩素ガスでクリーニングし、SiGeの成長を行った直後のゲート電極近傍を示す電子顕微鏡写真である。図4Aが、第1実施例と第2実施例の方法を組み合わせ、同時に採用したものである。つまり、SiGe成長用マスク開口のn型MOSトランジスタ側の縁を、ゲート電極上のn型領域からp型MOSトランジスタ側にシフトして配置するとともに、ゲート電極上のn型領域の、p型MOSトランジスタ側の端を、n型MOSトランジスタ側に引き下がらせて配置したサンプルである。
【0097】
一方、図4Bが、比較例のように、SiGe成長用マスク開口のn型MOSトランジスタ側の縁を、ゲート電極上のn型領域の端と一致させて配置する方法を採用した比較例のサンプルである。
【0098】
図4Aに示すように、上下方向に延在してゲート電極が配置されている。なお、複数本のゲート電極が並行配置された構造のサンプルを示す。ゲート電極の、n型MOSトランジスタ形成側部分が、明るく写っており、SiGe成長用マスク開口内に配置され、SiGeが成長したp型MOSトランジスタ形成側部分が、暗く写っている。
【0099】
図4Bに示すように、比較例のサンプルは、ゲート電極のn型MOSトランジスタ形成側部分まで、SiGe成長用マスクの開口下に入り込んで、塩素ガスによりエッチングされて、SiGe層が成長している(エッチングされた部分が暗く写っている)。
【0100】
一方、図4Aに示す実施例のサンプルは、SiGe成長用マスクの開口下に入り込んだゲート電極のエッチングが生じていない。従って、このようなエッチングに起因する不具合が防止される。
【0101】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0102】
以上説明した第1及び第2実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
シリコン基板に素子分離絶縁膜を形成して、n型MOSトランジスタの配置される第1活性領域とp型MOSトランジスタの配置される第2活性領域とを画定する工程と、
前記第1活性領域と前記第2活性領域とにまたがって、シリコンを含むゲート電極を形成する工程と、
前記第1活性領域と、前記ゲート電極の前記第1活性領域側部分に、n型不純物を注入する工程と、
前記第2活性領域と、前記ゲート電極の前記第2活性領域側部分に、p型不純物を注入する工程と、
前記第2活性領域及びその近傍の前記ゲート電極を露出する開口を持つマスクを、前記開口の前記第1活性領域側の縁が、前記第2活性領域の前記第1活性領域側の端から、前記ゲート電極上の前記n型不純物が注入された領域の前記第2活性領域側の端までの間に配置されるように形成するマスク形成工程と、
前記開口内の前記第2活性領域及び前記ゲート電極をエッチングして、前記第2活性領域に第1凹部を、前記ゲート電極に第2凹部を、それぞれ形成する工程と、
前記第1凹部及び前記第2凹部を形成する工程の後、前記第1凹部及び前記第2凹部の表面に形成された自然酸化膜を除去する自然酸化膜除去処理を行ない、前記自然酸化膜除去処理に伴って前記開口の縁が後退する工程と、
前記自然酸化膜除去処理の後、前記第1凹部及び前記第2凹部の表面を、ハロゲンを含むガスでクリーニングするクリーニング工程と、
前記クリーニングの後、前記第1凹部を埋め込む第1半導体埋め込み領域を形成するとともに、前記第2凹部に第2半導体埋め込み領域を形成する工程と
を有し、
前記クリーニング工程を行うとき、後退した前記開口内に、前記ゲート電極上の前記n型不純物の注入された領域が露出していないように、前記n型不純物を注入する工程で前記ゲート電極上に前記n型不純物が注入される領域の前記第2活性領域側の端と、前記マスク形成工程で形成される前記開口の前記第1活性領域側の縁とが離されている半導体装置の製造方法。
(付記2)
前記n型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記n型不純物が注入される領域の前記第2活性領域側の第1の端と、前記p型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記p型不純物が注入される領域の前記第1活性領域側の第2の端とが一致し、前記マスク形成工程において、前記開口の前記第1活性領域側の縁が、前記第2の端よりも前記第2活性領域側に配置される付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3)
前記n型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記n型不純物が注入される領域の前記第2活性領域側の第1の端と、前記p型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記p型不純物が注入される領域の前記第1活性領域側の第2の端とが離れており、前記マスク形成工程において、前記開口の前記第1活性領域側の縁が、前記第2の端と一致する付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4)
前記p型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記p型不純物が注入される領域の前記第1活性領域側の第2の端は、前記第1活性領域と前記第2活性領域とのちょうど中間に配置される付記1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)
前記第1凹部及び前記第2凹部を形成する工程は、ドライエッチングで前記第2活性領域及び前記ゲート電極をエッチングした後、エッチングされた前記第2活性領域及び前記ゲート電極の表面に形成された自然酸化膜を除去するウエットエッチング前自然酸化膜除去処理を行ない、前記ウエットエッチング前自然酸化膜除去処理に伴って前記開口が後退し、ウエットエッチング前自然酸化膜除去処理の後に、ウエットエッチングで前記第2活性領域及び前記ゲート電極をさらにエッチングする工程を含む付記1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記6)
前記マスクは、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を含む付記1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)
前記ハロゲンを含むガスは、塩素ガスである付記1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記半導体埋め込み領域は、シリコンゲルマニウムで形成される付記1〜7のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0103】
1 シリコン基板
2 素子分離絶縁膜
3n (n型MOSトランジスタを形成する)活性領域
3p (p型MOSトランジスタを形成する)活性領域
4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極
5n (浅い接合形成時に形成される)ゲート電極上のn型領域
5p (浅い接合形成時に形成される)ゲート電極上のp型領域
6 (浅い接合形成用の)オフセットスペーサ
7 (n型MOSトランジスタの)浅い接合領域
8 (p型MOSトランジスタの)浅い接合領域
9p p型MOSトランジスタの活性領域の凹部
9g ゲート電極上の凹部
10p p型MOSトランジスタの活性領域のSiGe層
10g ゲート電極上のSiGe層
11 (深い接合形成用の)オフセットスペーサ
12n (n型MOSトランジスタの)深い接合領域
12g (深い接合形成時に形成される)ゲート電極上のn型領域
13p (p型MOSトランジスタの)深い接合領域
13g (深い接合形成時に形成される)ゲート電極上のp型領域
14 シリサイド層
15、16 絶縁膜
17 層間絶縁膜
18 コンタクトプラグ
RPn、PRp レジストパターン
50、51 レジストパターンの開口
MSK SiGe成長用マスク
52 SiGe成長用マスクの開口
Ep 活性領域3pの、活性領域3n側の端
Em SiGe成長用マスク開口の、活性領域3n側の縁
Bnp ゲート電極上のn型領域とp型領域との境界(ゲート電極上のn型領域の活性領域3p側の端、ゲート電極上のp型領域の活性領域3n側の端、活性領域3nと活性領域3pとのちょうど中間)
RPna レジストパターン
50a レジストパターンの開口
MSKa SiGe成長用マスク
52a SiGe成長用マスクの開口
Ema SiGe成長用マスク開口の、活性領域3n側の縁
Ena ゲート電極5上のn型領域の、活性領域3p側の端
En 活性領域3nの、活性領域3p側の端
CNT 活性領域3nと活性領域3pとのちょうど中間(ゲート電極上のp型領域の活性領域3n側の端)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板に素子分離絶縁膜を形成して、n型MOSトランジスタの配置される第1活性領域とp型MOSトランジスタの配置される第2活性領域とを画定する工程と、
前記第1活性領域と前記第2活性領域とにまたがって、シリコンを含むゲート電極を形成する工程と、
前記第1活性領域と、前記ゲート電極の前記第1活性領域側部分に、n型不純物を注入する工程と、
前記第2活性領域と、前記ゲート電極の前記第2活性領域側部分に、p型不純物を注入する工程と、
前記第2活性領域及びその近傍の前記ゲート電極を露出する開口を持つマスクを、前記開口の前記第1活性領域側の縁が、前記第2活性領域の前記第1活性領域側の端から、前記ゲート電極上の前記n型不純物が注入された領域の前記第2活性領域側の端までの間に配置されるように形成するマスク形成工程と、
前記開口内の前記第2活性領域及び前記ゲート電極をエッチングして、前記第2活性領域に第1凹部を、前記ゲート電極に第2凹部を、それぞれ形成する工程と、
前記第1凹部及び前記第2凹部を形成する工程の後、前記第1凹部及び前記第2凹部の表面に形成された自然酸化膜を除去する自然酸化膜除去処理を行ない、前記自然酸化膜除去処理に伴って前記開口の縁が後退する工程と、
前記自然酸化膜除去処理の後、前記第1凹部及び前記第2凹部の表面を、ハロゲンを含むガスでクリーニングするクリーニング工程と、
前記クリーニングの後、前記第1凹部を埋め込む第1半導体埋め込み領域を形成するとともに、前記第2凹部に第2半導体埋め込み領域を形成する工程と
を有し、
前記クリーニング工程を行うとき、後退した前記開口内に、前記ゲート電極上の前記n型不純物の注入された領域が露出していないように、前記n型不純物を注入する工程で前記ゲート電極上に前記n型不純物が注入される領域の前記第2活性領域側の端と、前記マスク形成工程で形成される前記開口の前記第1活性領域側の縁とが離されている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記n型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記n型不純物が注入される領域の前記第2活性領域側の第1の端と、前記p型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記p型不純物が注入される領域の前記第1活性領域側の第2の端とが一致し、前記マスク形成工程において、前記開口の前記第1活性領域側の縁が、前記第2の端よりも前記第2活性領域側に配置される請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記n型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記n型不純物が注入される領域の前記第2活性領域側の第1の端と、前記p型不純物を注入する工程において前記ゲート電極上の前記p型不純物が注入される領域の前記第1活性領域側の第2の端とが離れており、前記マスク形成工程において、前記開口の前記第1活性領域側の縁が、前記第2の端と一致する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1凹部及び前記第2凹部を形成する工程は、ドライエッチングで前記第2活性領域及び前記ゲート電極をエッチングした後、エッチングされた前記第2活性領域及び前記ゲート電極の表面に形成された自然酸化膜を除去するウエットエッチング前自然酸化膜除去処理を行ない、前記ウエットエッチング前自然酸化膜除去処理に伴って前記開口が後退し、ウエットエッチング前自然酸化膜除去処理の後に、ウエットエッチングで前記第2活性領域及び前記ゲート電極をさらにエッチングする工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記マスクは、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【図1−11】
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【図1−12】
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【図1−13】
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【図1−14】
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【図1−15】
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【図1−16】
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【図1−17】
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【図1−18】
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【図1−19】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−249388(P2011−249388A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118145(P2010−118145)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】