説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】本発明は、電極表面を平坦化した高い信頼性を有する半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】n形ベース層2と、n形ベース層2の表面に設けられたp形ベース領域3と、p形ベース領域3の表面に選択的に設けられたn形エミッタ領域4と、p形ベース領域3およびn形エミッタ領域4とゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極5と、p形ベース領域3およびn形エミッタ領域4に電気的に接続されたエミッタ電極21と、エミッタ電極21の表面に形成された凹部31を埋め込んだ絶縁部材25と、エミッタ電極21と絶縁部材25との上に設けられたエミッタ電極23と、を備えたことを特徴とする半導体装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程では、半導体基板上にゲート電極や配線、それらを絶縁するための層間絶縁膜などを含む微細構造が設けられる。さらに、それらの微細構造を有する半導体基板の表面に電極層が設けられる。例えば、特許文献1には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の分割されたエミッタ電極を、第2のエミッタ電極層により接続し、IGBTの全面を均一動作させる技術が記載されている。
【0003】
一方、半導体製造装置内で発生するパーティクルなど、所謂異物が半導体基板上に付着すると、その部分に穴状の欠陥が生じることがある。例えば、半導体基板上の微細構造の上に設けた電極層が薄くなった部分に穴状の欠陥が生じると、下地の電極や絶縁膜が露出し、動作不良の原因となる場合がある。そこで、半導体基板の表面に設けられた微細構造に起因する凹部や穴状の欠陥を埋め込んで電極表面を平坦化する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−221269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電極表面を平坦化した高い信頼性を有する半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、第1導電型の半導体層と、前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の表面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域とゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極と、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に電気的に接続された第1電極層と、前記第1電極層の表面に形成された凹部を埋め込んだ絶縁部材と、前記第1電極層と前記絶縁部材との上に設けられた第2電極層と、を備えたことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0007】
さらに、本発明の別の態様によれば、第1導電型の半導体層と、前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の表面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、前記第1半導体領域および前記第2半導体領域とゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極と、を有する半導体装置の製造方法であって、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域に電気的に接続した第1電極層を形成する工程と、前記第1電極層の表面に絶縁膜を形成する工程と、前記第1電極層の表面に生じた凹部に前記絶縁膜を残して前記第1電極層の表面を平坦化する工程と、前記第1電極層の表面に第2電極層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極表面を平坦化した高い信頼性を有する半導体装置およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。
【図2】一実施形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に続く製造工程を模式的に示す断面図である。
【図4】図3に続く製造工程を模式的に示す断面図である。
【図5】図4に続く製造工程を模式的に示す断面図である。
【図6】図5に続く製造工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、図面中の同一部分には同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について適宜説明する。なお、第1導電型をn形、第2導電型をp形として説明するが、第1導電型をp形、第2導電型をn形としても良い。
【0011】
図1は、一実施形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。本実施形態に係る半導体装置は、第1導電型の半導体層であるn形ベース層2と、n形ベース層2の表面に設けられた第2導電型の第1半導体領域であるp形ベース領域3と、p形ベース領域3の表面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域であるn形エミッタ領域4と、p形ベース領域3およびn形エミッタ領域4との間にゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極5と、を備えている。
【0012】
さらに、p形ベース領域3およびn形エミッタ領域4に電気的に接続された第1電極層であるエミッタ電極21と、エミッタ電極21とゲート電極5とを絶縁する層間絶縁膜7と、エミッタ電極21の表面に形成された凹部31を埋め込んだ絶縁部材25と、エミッタ電極21と絶縁部材25の上に設けられた第2電極層であるエミッタ電極23と、を備えている。
本実施形態に係る半導体装置では、絶縁部材25は、例えば、層間絶縁膜7の間のp形ベース領域3の上方に埋め込まれている。
【0013】
次に、図1に示された半導体装置について、具体的に説明する。本実施形態に係る半導体装置は、例えば、シリコン基板上に設けられたIGBTである。
n形ベース層2の表面には、p形ベース領域3が設けられている。さらに、p形ベース領域3の表面には、n形エミッタ領域4と、キャリア濃度の高いp形ベースコンタクト8とが、選択的に設けられている。なお、n形ベース層2の下方には、図示しないp形コレクタ層が設けられている。
【0014】
さらに、n形エミッタ領域4の表面から、n形エミッタ領域4とp形ベース領域3とを貫通してn形ベース層2に連通するトレンチ5aが形成され、トレンチ5aの中にゲート電極5が設けられている。ゲート電極5と、n形エミッタ領域4およびp形ベース領域3、n形ベース層2と、の間は、ゲート絶縁膜6によって絶縁されている。
【0015】
ゲート電極5およびエミッタ領域4の上方には、層間絶縁膜7が設けられ、ゲート電極5とエミッタ電極21との間を絶縁している。層間絶縁膜7、エミッタ領域4の側面およびp形ベースコンタクト8の表面に、バリア層9を介してエミッタ電極21が設けられている。バリア層9は、例えば、TiWを用いて形成することができ、エミッタ領域4およびp形ベースコンタクト8は、バリア層9を介してエミッタ電極21に電気的に接続する。さらに、エミッタ電極21の表面上には、エミッタ電極23が設けられている。
【0016】
図1中に示すように、ゲート電極5およびn形エミッタ領域4の上方に突出した層間絶縁膜7を覆って形成されるエミッタ電極21の表面において、層間絶縁膜7の間に挟まれたp形ベースコンタクト8の上方に凹部31が形成される。p形ベースコンタクト8の上方とは、p形ベース領域3の上方でもある。例えば、p形ベースコンタクト8が設けられない場合には、エミッタ電極21は、層間絶縁膜7の間に露出するp形ベース領域3の表面上に、バリア層9を介して設けられる。
【0017】
この凹部31を絶縁部材25で埋め込み、さらに、エミッタ電極21の表面にエミッタ電極23を設けることにより、エミッタ電極23の表面を凹部31に対応する窪みのない状態に形成することができる。絶縁部材25には、例えば、絶縁性樹脂であるポリイミドを用いることができる。
【0018】
凹部31は、層間絶縁膜7とp形ベースコンタクト8との間の段差に起因して生じる場合もあり、また、エミッタ電極21を形成する際に付着した異物によって生じる場合もある。さらに、層間絶縁膜7とP形ベースコンタクト8との間の段差およびエミッタ電極21に付着した異物の両方が重畳して生じる場合がある。
【0019】
エミッタ電極21とエミッタ電極23とは、同じ金属材料を含んでも良いし、異なる金属材料を用いることもできる。例えば、エミッタ電極21およびエミッタ電極23にアルミニウム(Al)を用いることができる。
【0020】
例えば、本実施形態に係る半導体装置の製造工程では、スパッタ法を用いて、層間絶縁膜7およびp形ベースコンタクト8の表面に、TiWからなるバリア層9とAlからなるエミッタ電極21を設けることができる。
【0021】
この際、スパッタ装置の内部において、TiW−Alのスパッタ中のダストによる異物が半導体基板の表面に付着し、エミッタ電極21の内部に含まれる場合がある。付着した異物は、エミッタ電極21の表面をエッチングすることにより除去されるが、エッチング後のエミッタ電極21の表面には、穴状の欠陥が出来る。
【0022】
例えば、上記の穴状の欠陥ができると、エミッタ電極21の下地のバリア層9やp形ベースコンタクト8が露出することがあり、ナトリウム(Na)などの可動性イオンがゲート絶縁膜6に侵入してチャネルリーク電流の増加を引き起こすこともある。その結果、半導体装置の信頼度が低下するという問題が生じる場合がある。
【0023】
さらに、上記の穴状の欠陥は、例えば、層間絶縁膜7に挟まれたp形ベースコンタクト8の上方に発生し易く、層間絶縁膜7とp形ベースコンタクト8との間の段差とエミッタ電極21に付着した異物の両方が重畳されて穴状欠陥が深くなり、可動イオンが侵入し易くなるとともに、外観検査時に不良と判断され歩留りが低下する問題も生じる。
【0024】
本実施形態に係る半導体装置では、層間絶縁膜7の間のp形ベースコンタクト8の上方に形成されるエミッタ電極21の凹部31を絶縁部材25で埋め込むことにより、エミッタ電極21の上に設けられるエミッタ電極23の表面を平坦化することができる。同時に、他の部分においても、エミッタ電極21の形成時に付着した異物に起因する穴状の欠陥を絶縁部材25によって埋め込むことができる。
【0025】
これにより、エミッタ電極23の表面が平坦化された信頼度の高い半導体装置を実現することができる。なお、ここで言う平坦とは、局部的な窪みや穴状の欠陥が埋め込まれた状態を意味する。
【0026】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明する。図2〜図6は、半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0027】
本実施形態に係る半導体装置の製造工程は、層間絶縁膜7の上に、p形ベースコンタクト8を介してp形ベース領域3に電気的に接続し、さらにn形エミッタ領域4に電気的に接続したエミッタ電極21を設ける工程と、エミッタ電極21の表面に絶縁膜25aを形成する工程と、エミッタ電極21の表面に生じた凹部31に絶縁膜25aを残してエミッタ電極21の表面を平坦化する工程と、エミッタ電極21の表面にエミッタ電極23を設ける工程と、を備える。
【0028】
図2は、トレンチ構造のゲート電極5の上に設けられた層間絶縁膜7と、層間絶縁膜7に挟まれたp形ベースコンタクト8の上にエミッタ電極21が設けられた状態を模式的に示す断面図である。
【0029】
具体的には、例えば、スパッタ法を用いて、バリア層9であるTiW層と、エミッタ電極21であるAl層を積層した後、エミッタ電極21の表面をエッチングして異物を除去した状態を示している。層間絶縁膜7に挟まれたp形ベースコンタクト8の上方には、凹部31aが形成される。
【0030】
例えば、図3に示す凹部31bのように、凹部31aに加えて異物による欠陥が重畳されてエミッタ電極21が大きく抉られ、下地のp形ベースコンタクト8が露出するような場合もある。
【0031】
図4は、エミッタ電極21の表面に絶縁膜25aを形成して、凹部31aおよび31bを埋め込んだ状態を示している。
例えば、絶縁膜25aとしてポリイミド膜を用いることができる。ポリイミド膜は、エミッタ電極21の表面に液状のポリイミドをスピンコートすることにより形成することができる。また、ポリイミド膜の他にも、例えば、SOG(spin on glass)等のSiOを含む膜を用いることができる。
【0032】
図5は、絶縁部材25となる部分を凹部31aおよび31bの内部に残して、エミッタ電極21の表面に形成された絶縁膜25aを除去した状態を示している。
エミッタ電極21の表面に形成された絶縁膜25aは、例えば、ドライエッチング法を用いて除去することができる。また、絶縁膜25aが形成されたエミッタ電極21の表面をCMP(Chemical Mechanical Polish)法を用いて平坦化しても良い。
【0033】
図6は、絶縁膜25aを除去したエミッタ電極21の表面に、エミッタ電極23を形成した状態を示している。エミッタ電極23は、例えば、スパッタ法を用いて、エミッタ電極21の上にAlを積層することにより設けることができる。
【0034】
上記のように、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法では、エミッタ電極21の穴あき部分、すなわち、凹部31および異物による穴状の欠陥に絶縁部材25を埋め込み、さらにエミッタ電極23を設けることにより、可動イオンの侵入を防止して半導体装置の信頼性を向上させることができる。さらに、外観検査において、穴あき不良を少なくすることができる。
【0035】
さらに、エミッタ電極23の上に、例えば、メッキ法を用いて厚い電極層を形成するような場合に、前処理のエッチング液による侵食やメッキ液の侵入を防止して、外観穴あき不良の低減や信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
以上、本発明に係る一実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、出願時の技術水準に基づいて、当業者がなし得る設計変更や、材料の変更等、本発明と技術的思想を同じとする実施態様も本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0037】
2・・・n形ベース層、
3・・・p形ベース領域、
4・・・n形エミッタ領域、
5・・・ゲート電極、
5a・・・トレンチ、
6・・・ゲート絶縁膜、
7・・・層間絶縁膜、
8・・・p形ベースコンタクト、
9・・・バリア層、
21・・・エミッタ電極、
23・・・エミッタ電極、
25・・・絶縁部材、
25a・・・絶縁膜、
31、31a、31b・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の表面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域とゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に電気的に接続された第1電極層と、
前記第1電極層の表面に形成された凹部を埋め込んだ絶縁部材と、
前記第1電極層と前記絶縁部材との上に設けられた第2電極層と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記ゲート電極と前記第1電極層とを絶縁する層間絶縁膜の間の前記第1半導体領域の上方に埋め込まれたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁部材は、絶縁性樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1電極層と前記第2電極層とは、同じ金属材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の表面に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域とゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極と、
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記第1半導体領域と前記第2半導体領域に電気的に接続した第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層の表面に絶縁膜を形成する工程と、
前記第1電極層の表面に生じた凹部に前記絶縁膜を残して前記第1電極層の表面を平坦化する工程と、
前記第1電極層の表面に第2電極層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−199060(P2011−199060A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65030(P2010−65030)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】