説明

半導体装置

【課題】空孔率の高い層間絶縁膜を用いた信頼性の高い多層配線構造を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】空孔率が50%以上の層間膜を有する下層配線層と、空孔率の低い上層配線層を備える多層配線構造において、配線層間を接続するビアを配線層を介して基板表面に垂直方向に連続して形成したスタックドビア70とチップ外周部に設けた外周リング80により、空孔率が低く厚い層間膜を有する上層配線層を支える構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信頼性の高い多層配線構造を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化を目的として素子の微細化が進むにしたがって、配線構造の微細化による配線間の寄生容量が無視できなくなっている。寄生容量が増大すると配線遅延が顕著になり、LSI高速動作への影響が無視できなくなるためである。
【0003】
配線遅延を改善するために配線間を絶縁する層間絶縁膜の低誘電率化が検討されている。層間絶縁膜の低誘電率化の方法として、シリコン酸化膜にカーボンを結合させたSiOC膜が用いられている。さらに比誘電率を低減する方法として、SiOC膜に空孔を導入する方法が検討されている。比誘電率を2以下にしようとした場合、空孔の占める割合である空孔率は50%程度になる。さらにこの空孔率を100%にしたものとして、中空配線とよばれるものがある。(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
空孔率を上げて比誘電率を下げる場合に、配線を支える機械的な強度が最も問題になる。とくに何層もの配線層を用いた多層配線構造の場合、下層配線は自重に加え上部配線層の荷重がかかり、重みによる変形あるいは断線という問題が起こりうる。
【特許文献1】特開平9−237831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、空孔率の高い層間絶縁膜を用いた信頼性の高い多層配線構造を有する半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、半導体チップと、半導体チップに形成された上層配線層と比誘電率3以上を有する第一の絶縁層が順次積層された複数層からなる上部配線層と、上層配線層の下部に形成され、下層配線層と比誘電率2以下を有する第二の絶縁層が順次積層された複数層からなる下部配線層と、前記上部配線層および前記下部配線層において前記複数層からなる上層および下層配線層間をそれぞれ電気的に接続するビアを備え、前記下部配線層内には、前記ビアが前記複数の配線層を介し基板表面に対して垂直方向に連続して積層されたスタックドビアを形成し、半導体チップの周辺部に形成された外周リングとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空孔率の高い層間絶縁膜を用いた信頼性の高い多層配線構造を有する半導体装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明による実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1から図3を用いて本発明による実施例1を説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施例1における半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みや比率は現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0011】
実施例1における半導体装置の多層配線の構成は、シリコンからなる基板10上に、たとえばトランジスタやキャパシタ、素子分離領域などからなる素子層20が備えられ、この素子層20の上部にはたとえば500nm程度の絶縁膜からなる第一の層間絶縁膜30で覆われ平坦化されている。この第一の層間絶縁膜30上部に多層配線構造が形成されている。
【0012】
多層配線構造は、下層配線として、素子の信号を伝達するための複数の層からなるローカルレベル層100があり、その上部に複数の層からなるインターミディエイト層200がある。これらのローカルレベル層100、インターミディエイト層200は、配線間遅延が最も問題になる領域であり、層間膜の比誘電率の低くする必要がある。このため、比誘電率が2あるいはそれ以下の比誘電率を有する絶縁膜として、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法やSOD(Spin on Dielectrics)法を用いたSiOC膜などが用いられる。また、比誘電率を下げるために、たとえば空孔率50%程度の膜や、あるいは空中配線構造が用いられる。そのため、配線の重量を低減するため、配線層の厚さは100nm程度に薄くすることが望ましい。
【0013】
インターミディエイト層200の上部には、上部配線層として、複数の層からなるセミグローバル層300およびさらにその上部には複数の層からなるグローバル層400が備えられている。上層のセミグローバル層300およびグローバル層400は、電源線として用いるため、配線間遅延よりも配線の抵抗成分を抑制することが必要となる。このためセミグローバル層およびグローバル層の層間膜には、従来の比誘電率が3程度あるいはそれ以上のシリコンベース酸化膜を用い、配線にはたとえば銅のように機械的強度であるヤング率が高い配線金属を用いることができる。このため配線そのものが変形しにくい特性がある。また配線層の厚さは1um程度に十分に厚くすることが望ましく、そのため下層配線への荷重が大きい構造になっている。
【0014】
すべての層および、それぞれ層内の複数の配線層間には、上下の配線層を電気的に接続するためのビア40が形成され、基板表面に水平方向に長く伸びる配線層および上部層間膜を支える柱の役割をしている。
【0015】
以上のように、上層に重い配線層が形成され、下層に空孔率の高い層間膜が形成される構造により、下層部の配線は自重に加え上層部の重さを支えなければならない。配線長が長くなると配線がこれらの重みにより、変形してしまう可能性がある。
【0016】
このような上部配線層のグローバル層400、セミグローバル層300を支える多層配線構造を実現するために、外周リング80およびスタックドビア70を用いた構造の概念図を図2(a)に示す。半導体チップの外周にリング状の支え材である外周リング80を基板から上部配線層に達する高さまで設置することにより、上層配線層の重みを支える効果がある。図2では外周リングを2重に構成した例を示したが、外周リングは1重でもあるいは3重以上でもかまわない。また、完全な環状でなくともかまわない。
【0017】
通常のチップは一辺の長さが10mmから20mm程度の長さがあり、最外周に設置した外周リング80だけで上層配線層を支えるには不十分である。それを補うために、チップ内部にスタックドビア70を配置して強度を補うことは非常に有効である。スタックドビア70の断面構造の概念図を図2(b)に示す。スタックドビア70は各配線層のビアが垂直方向に積み重なった構造をもち、上層の重みによる下層の変位を抑制すると同時に、上層を支えるのに十分な効果がある。また、スタックドビア70は、図1に示すようにローカルレベル層100とインターミディエイト層200の最上層まで垂直方向に一直線状に連続していることが好ましい。すべてのビアが垂直方向に完全に一直線状に連続していない場合でも、ほぼ一直線状に連続している形状に近いことが望ましい。さらに、ローカルレベル層100からセミグローバル層300内あるいはさらにグローバル層400内まで連続していてもかまわない。
【0018】
次に、チップの内部ではどの程度の間隔でスタックドビア70を配置すればよいかを調べたものが図3である。この図は隣り合うスタックドビア70間の中央における配線のたわみ量に対するスタックドビア70間の距離を計算した。計算において、機械的強度上もっとも厳しい条件を用い、配線間の空孔率が100%である中空配線構造の場合を用いた。計算の仮定において、配線材は全て銅とし、ローカルレベル層100とインターミディエイト層200は完全に中空配線とし、セミグローバル層300とグローバル層はシリコンベース酸化膜からなる層間絶縁膜で満たした場合を用いた。図3より、スタックドビア70が500um以下の間隔であればセミグローバル層300とグローバル層400配線のたわみ量はほとんど無視できる。また、スタックドビア70の間隔は500um以下であればセミグローバル層300とグローバル層400の配線の強度を補うのに十分な効果がある。チップ内にスタックドビアを形成する場合、スタックドビア70を等間隔で配置することが望ましいが、チップ内のパターンによっては必ずしも等間隔に配置できない場合でも500um以下の間隔で配置していれば強度を補充するのには十分な効果がある。
【実施例2】
【0019】
図4から図6を用いて本発明による実施例2を説明する。
【0020】
実施例1では外周リングおよびスタックドビアを用いて上層配線の重みを支える配線層を示したが、実施例2では、スタックドビアを用いることにより、さらに一部の下層配線を上部配線によって支える方法について説明する。実施例2は、インターミディエイト層200に注目し、インターミディエイト層200を形成する複数の配線層のうち、最も上層の配線層を、セミグローバル層300によって上部から支える方法を用いる。
【0021】
インターミディエイト層200が5つの配線層からなる場合について考える。インターミディエイト層200内の配線層を下からM層、M層、M層、M層、M層とする。M層の下部にはローカルレベル層100があり、M層の上部にはセミグローバル層300およびグローバル層400が備えられている。
【0022】
この場合、配線の変位が特に大きくなるのはM層とM層である。M層では、自重による変形と上層の配線の重みによる変位の合計が大きくなり、とくにM層の隣り合うビア間の配線が長い場合、M層の配線間の中央部にM層のビアが形成された場合に変位が最大となる。このM層の変位を軽減することが重要である。
【0023】
またM層は、直下のM4層から下層が変位しているため下方向への変位が大きい。さらに、直上のセミグローバル層300は実施例1で説明したスタックドビア70によって支えられており、また層間膜に比誘電率が3程度の変形しにくい構造からなることもあり、M層には上方向にも張力が働く。このため、M層の変位を軽減することが重要である。
【0024】
ここで、スタックドビアを用いた場合のM層とM層の変位を計算により求める方法について、図4および図5を用いて説明し、その計算結果を図6に示す。
【0025】
図4にはインターミディエイト層200のM層とM層の2層のみを独立にした配線の重なり方を示す。計算には図4の構造が合計5層に積層されたインターミディエイト層を仮定した。配線のたわみ量は、隣り合う二つのビアの中央に直上配線のビアが設置される場合を仮定し、水平に設置した基板に対して鉛直な方向のたわみ量を考える。(図5参照)なお、図5中ではインターミディエイト層のうち上部から1層、2層と定義していることに注意が必要である。インターミディエイト層200の最上層のたわみ量δは、自重によるたわみ量と上層の荷重によるたわみの和によって記載することができる。ここで、自重による配線荷重をw、配線の長さをl、配線材料のヤング率をE、配線のモーメントをI、上層の荷重をW、上層の配線長をLとした場合、たわみ量δはδ=5wl/384EI+WL/48EIと表すことができる。ここで、上層の荷重Wは、ビア一個にかかるセミグローバル層300およびグローバル層400の重さP、インターミディエイト層200の上部配線層の配線の重さP、インターミディエイト層200内の上層にあるビアの重さPを用いてδ=2x{P+0x(P+P)}と表せる。上部から2層目のたわみ量δはδ=2x{P+1x(P+P)}と表せる。同様にして上部からn層目のたわみ量δ=2x{P+(nー1)x(P+P)}と表せる。この結果、たわみが最大になるのは、δmax=δ+δ+・・・δの場合となる。今、許容される最大のたわみ量をビア高さHの10%という条件を仮定すると、δmax=δ+δ+・・・δ<H/10と表せる。この計算手法を用いてM層とM層のたわみ量を求めた結果を図6に示す。M層、M層とも許容される変位量をビア高さ10nmの20%程度以内(2nm)に抑えるためには、M層、M層とも配線長は70um以下となる。比較のために、外周リングおよびスタックドビアを用いない従来の構造では、M層は配線長が55um以下、M層が42um以下であり、外周リングおよびスタックドビアを用いることによってM層で約20%、M層では150%程度のスタックドビアの間隔を長くできる効果がある。
【0026】
以上のように、外周リングおよびスタックドビアを用いてグローバル層およびセミグローバル層の変位を無視できる程度に小さくしておくことにより、インターミディエイト層200の最上層を上層から支えることが可能となり、その結果、配線長を従来よりも長くすることが可能となる。これにより、インターミディエイト層200の配線にかかる応力を抑制し、配線の信頼性を向上させることが可能となる。
【0027】
なお、本実施例ではM層のみをセミグローバル層300により支える構造について説明したが、M層と同様にM層もセミグローバル層によって上部から支える構造とすることも可能である。この場合、下層への変位をさらに低減することが可能となる。
【実施例3】
【0028】
図7を用いて本発明における実施例3を説明する。
【0029】
実施例1では外周リングとスタックドビアを用いてグローバル層400およびセミグローバル層300の変位を無視できるほどに支える方法について説明した。実施例3では実施例1におけるスタックドビアの大きさを変えた場合について説明する。
【0030】
実施例3では、グローバル層400およびセミグローバル層300を支えるスタックドビアおよび配線材料に銅を用いた場合について説明する。銅の使用限界応力を4.6x10−5N/umとすると、グローバル層400およびセミグローバル層300を支えるのに必要なスタックドビアの大きさと間隔の関係は図7のようになる。たとえば500um間隔程度で正方形のスタックドビアを配置した場合には、おおよそ40umx40um程度の大きさのスタックドビアが必要である。また、円柱型のスタックドビアであれば、その断面の外径は43um程度の大きさが必要である。スタックドビアの断面積は小さなものを用いる場合には、合計面積が図7で示されている程度であればよい。たとえば断面積1umx1umの大きさのスタックドビアを1600個程度設置することで40umx40um程度のスタックドビアを配置した場合と同程度の強度を得る効果がある。
【0031】
本発明は以上の構成に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば本実施例では、スタックドビアおよび配線の構造について詳細に説明していないが、たとえば銅を用いる場合には周辺からの酸化を抑制するために銅の周囲をタンタルやチタンあるいはコバルトのような耐酸化性のある金属で表面の一部あるいは全部を覆うことが必要となる。また、実施例1ないし3の方法を適宜組み合わせて用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1に係る半導体装置の断面構造を示す概念図。
【図2】実施例1に係る半導体装置の平面構造を示す概念図。
【図3】実施例1に係る半導体装置のスタックドビア間隔に対する変位を表す図。
【図4】実施例2に係る半導体装置の計算仮定を表す概念図。
【図5】実施例2に係る半導体装置の計算仮定を表す概念図。
【図6】実施例2に係る半導体装置の配線長に対する変位を表す図。
【図7】実施例3に係る半導体装置のスタックドビアに必要な断面積を表す図。
【符号の説明】
【0033】
10 基板
20 素子層
30 第一の層間絶縁膜
40 ビア
50 配線
51 M層の配線
52 M層の配線
60 層間膜
70 スタックドビア
80 外周リング
90 チップ
100 ローカルレベル層
200 インターミディエイト層
300 セミグローバル層
400 グローバル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
半導体チップに形成された上層配線層と比誘電率3以上を有する第一の絶縁層が順次積層された複数層からなる上部配線層と、
上層配線層の下部に形成され、下層配線層と比誘電率2以下を有する第二の絶縁層が順次積層された複数層からなる下部配線層と、
前記上部配線層および前記下部配線層において前記複数層からなる上層および下層配線層間をそれぞれ電気的に接続するビアを備え、
前記下部配線層内には、前記ビアが前記複数の配線層を介し基板表面に対して垂直方向に連続して積層されたスタックドビアを形成し、
半導体チップの周辺部に形成された外周リングとを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記スタックドビアは500um以下の間隔で複数備えられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数のスタックドビアは、基板表面に平行な断面積の総面積が1600um以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ビア間の配線長が70um以下であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線層は銅を主成分として含み、前記第二の絶縁膜は空孔率が50%以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−67069(P2007−67069A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249440(P2005−249440)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】