説明

半導体装置

【課題】製造時以外にデータの書き込みが可能であり、書き換えによる偽造を防止可能な半導体装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、単純な構造の有機メモリから構成される安価な半導体装置の提供を課題とする。
【解決手段】有機化合物層を有する有機素子にトランジスタを並列または直列に接続したメモリセルを構成し、そのメモリセルを直列または並列に接続することによって、NAND型メモリまたはNOR型メモリを構成する。
前記有機素子は電流または電圧の印加、光の照射などで不可逆的にその電気特性を変化さ
せることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機素子を有する半導体装置に関する。特に、有機素子を用いたメモリ回路
を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ技術の発展や、画像認識技術の向上によって、バーコードなどの媒体を用
いた情報認識が広く普及し、商品データの認識などに用いられている。今後はさらに多量
の情報認識が実施されると予想される。その一方、バーコードによる情報読み取りなどで
はバーコードリーダーがバーコードとの接触を必要とする、またバーコードに記録される
情報量があまり多くできないという欠点があり、非接触の情報認識および媒体の記憶容量
増大が望まれている。
【0003】
このような要望から、近年ICを用いたIDチップが開発されている。IDチップとは
ICチップ内のメモリ回路に必要な情報を記憶し、非接触手段、一般的には無線手段を用
いて内部の情報を読み取るものである。このようなIDチップの実用化によって、商品流
通などの簡素化、低コスト化、高いセキュリティの確保が可能になるものと期待されてい
る。
【0004】
IDチップを用いた個体認証システムの概要について図4を用いて説明する。図4はバ
ッグの個体情報を非接触で得ることを目的とした固体認証システムの概要を示す図である
。特定の固体情報を記憶したIDチップ401はバッグ404に貼り付けられている、も
しくは埋め込まれている。このIDチップに対して質問器(リーダライタともいう)40
3のアンテナユニット402より電磁波が発信される。その電磁波を受けるとIDチップ
401はそのIDチップが持っている個体情報をアンテナユニット402に対して送り返
す。アンテナユニット402は送り返された個体情報を質問器に送り、質問器は個体情報
の判別をおこなう。このようにして、バッグ404の情報を質問器は得ることが可能にな
る。また、このシステムを用いることによって物流管理、集計、偽造品の除去などが可能
になる。
【0005】
このようなIDチップの技術としては例えば図2に示すようなものがある。IDチップ
に用いる半導体装置200はアンテナ回路201、整流回路202、安定化電源回路20
3、アンプ208、復調回路213、論理回路209、メモリコントロール回路212、
メモリ回路211、論理回路207、アンプ206、変調回路205によって構成される
。また、アンテナ回路201はアンテナコイル301、同調容量302によって構成され
る(図3(A))。また、整流回路202はダイオード303、304、平滑容量305
によって構成される(図3(B))。アンテナ回路201以外を信号処理回路214と称
する。
【0006】
このようなIDチップの動作を以下に説明する。アンテナ回路201で受信した交流信
号はダイオード303、304によって半波整流され、平滑容量305によって平滑され
る。この平滑された電圧は多数のリップルを含んでいるため、安定化電源回路203で安
定化され、安定化された後の電圧を復調回路213、アンプ206、論理回路207、ア
ンプ208、論理回路209、メモリ回路211、メモリコントロール回路212に供給
する。一方、アンテナ回路201で受信された信号はアンプ208を介して、クロック信
号として、論理回路209に入力される。また、アンテナから入力された信号は復調回路
213で復調され、データとして論理回路209に入力される。
【0007】
論理回路209において、入力されたデータはデコードされる。質問器がデータを変形
ミラー符号、NRZ−L符号などでエンコードして送信するため、それを論理回路209
はデコードする。デコードされたデータは、メモリコントロール回路212に送られ、そ
れに従いメモリ回路211に記憶された記憶データが読み出される。メモリ回路211は
電源が切れても保持できる不揮発性メモリ回路である必要があり、マスクROMやEEP
ROM、フラッシュメモリなどが使用される。記憶される内容は、例えば16バイトのデ
ータ(図12参照)であり、IDチップの系列を示すファミリーコード4バイト、アプリ
ケーションコード4バイト、使用者が設定するユーザーコード4バイトが2種類となって
いる。
【0008】
送受信される信号は、125kHz、13.56MHz、915MHz、2.45GH
zなどがあり、それぞれISO規格などが設定される。また、送受信の際の変調・復調方
式も規格化されている。このようなIDチップの例として例えば特許文献1などがある。
【0009】
また、EEPROMやフラッシュメモリはフローティングゲートというようなゲートを
重ねたトランジスタ構成をとっている。フローティングゲートを薄膜トランジスタ(以下
TFT)に用いると、図6に示す様に、フローティングゲートトランジスタは基板601
、下地膜602、活性層603、第1のゲート絶縁膜604、フローティングゲート60
5、第2のゲート絶縁膜606、コントロールゲート607、層間膜608、ソース電極
609、ドレイン電極610より構成されている。
【0010】
フラッシュメモリは図5に示す様にフローティングゲートトランジスタを直列に接続し
たような構成をとっている。図5において、フラッシュメモリはフローティングゲートト
ランジスタ501〜512、スイッチ513〜518、電流源519〜521、電圧源5
22、電源端子523〜527、信号線528〜531、センスアンプ532〜534に
よって構成される。データを書き込む時には電圧源522よりスイッチ513、515、
517を介して、フローティングゲートトランジスタに電圧を印加する。さらに信号線5
28〜531を制御して、トランジスタを選択することができる。
【0011】
読み出し時には、スイッチ514、516、518を介して電流源519〜521より
電流をフローティングゲートトランジスタに印加する。そのときの電位をセンスアンプ5
32〜534で増幅し、信号として取りだす。フラッシュメモリに関しては以下の文献に
記載されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−250393号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】躍進するフラッシュメモリ 舛岡富士雄著 工業調査会発行 91−154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上に述べた、従来のIDチップ用半導体装置は、以下のような課題があった。不揮発
性メモリとしてマスクROMを使用した場合には、チップの形成工程でデータを書き込む
ため、製造終了後にデータを書き込むことができないという課題がある。
【0015】
EEPROMやフラッシュメモリは書き換えが可能な不揮発性メモリとして有効である
。第二のゲート絶縁膜に電荷を保持して記憶をおこなうため、保持性能を維持するために
は、ゲート絶縁膜の膜質が良好であることが要求される。しかし、ガラスのような絶縁基
板上にトランジスタを形成する場合、600℃を超えるような高温処理をおこなうことは
できない。従って、ゲート絶縁膜の膜質をよくすることにおいて限界があり、良好な不揮
発性メモリを構成するのが困難であるという課題があった。
【0016】
そこで本発明は、IDチップに用いる半導体装置において、低温で製造が困難なフロー
ティングゲート構造を使用しない不揮発性メモリを有する半導体装置を提供することを課
題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため本発明では以下の手段を講じる。
【0018】
本発明の半導体装置は有機素子とトランジスタを並列に接続した構成を有する複数のメ
モリセルと、前記複数のメモリセルを直列に接続した複数のメモリセル列と、前記複数の
メモリセル列の一端に該メモリセル列の信号を検出する手段とを有することを特徴として
いる。
【0019】
本発明の半導体装置は有機素子とトランジスタを並列に接続した構成を有する複数のメ
モリセルと、前記複数のメモリセルを直列に接続した複数のメモリセル列と、前記複数の
メモリセル列の一端に該メモリセル列の信号を検出する手段とを有し、NAND型メモリ
装置を構成することを特徴としている。
【0020】
本発明の半導体装置は有機素子とトランジスタを直列に接続した構成を有する複数のメ
モリセルと、前記複数のメモリセルを並列に接続した複数のメモリセル列と、前記複数の
メモリセル列の一端に該メモリセル列の信号を検出する手段とを有することを特徴として
いる。
【0021】
本発明の半導体装置は有機素子とトランジスタを直列に接続した構成を有する複数のメ
モリセルと、前記複数のメモリセルを並列に接続した複数のメモリセル列と、前記複数の
メモリセル列の一端に該メモリセル列の信号を検出する手段とを有し、NOR型メモリ装
置を構成することを特徴としている。
【0022】
上記において、前記メモリセル列の信号を検出する手段は、センスアンプであることを
特徴としている。
【0023】
上記において、前記有機素子は有機化合物層を有し、前記有機化合物層は、電子輸送材
料またはホール輸送材料であることを特徴としている。
【0024】
上記において、前記有機素子は有機化合物層を有し、前記有機化合物を含む層は、光を
照射することによって電気抵抗が変化する材料を有することを特徴としている。
【0025】
上記において、前記有機化合物層は、レーザ光の照射により導電性が変化することを特
徴としている。
【0026】
上記において、前記有機素子は有機化合物層を有し、前記有機化合物を含む層は、電圧
または電流を印加することによって電気抵抗が変化する材料を有することを特徴としてい
る。
【0027】
上記において、前記有機素子は、書き込みにより不可逆的に電気抵抗が変化することを
特徴としている。
【0028】
上記において、前記有機素子は、書き込みにより電極間距離が変化することを特徴とし
ている。
【0029】
上記において、前記有機化合物層の導電率は10−15S/cm−1以上、10−3S/
cm−1以下であることを特徴としている。
【0030】
上記において、前記有機化合物層の膜厚は5〜60nm、好ましくは10〜20nmであ
ることを特徴としている。
【0031】
上記において、前記有機素子および前記トランジスタは、半導体基板上に設けられるこ
とを特徴としている。
【0032】
上記において、前記有機素子および前記トランジスタは、ガラス基板上に設けられるこ
とを特徴としている。
【0033】
上記において、前記有機素子および前記トランジスタは、可撓性基板上に設けられるこ
とを特徴としている。
【0034】
上記において、前記有機素子および前記トランジスタは、SOI基板上に設けられるこ
とを特徴としている。
【0035】
上記において、前記トランジスタは、薄膜トランジスタを含むことを特徴としている。
【0036】
本発明は上記に記載の半導体装置を有するICカード、ICタグ、RFIDタグ、トラ
ンスポンダ、紙幣、有価証券、パスポート、電子機器、バッグ、衣類である。
【0037】
本発明は上記に記載の半導体装置を有し、電源回路、クロック発生回路、データ復調回
路、データ変調回路、制御回路、及びインターフェイス回路のいずれか一を少なくとも有
するRFIDタグである。
【発明の効果】
【0038】
以上に述べたように、本発明を用いることによって、低温で高性能なゲート絶縁膜を用
いることなく、不揮発性メモリを有する半導体装置を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の有機素子を用いたメモリを示すブロック図。
【図2】従来の半導体装置の構成を示すブロック図。
【図3】従来の半導体装置の構成を示すブロック図。
【図4】RFタグシステムの概要を示す図。
【図5】従来のNAND型フラッシュメモリの構成を示す図。
【図6】フローティングゲート構造を示す図。
【図7】有機素子の等価回路を示す図。
【図8】本発明の有機素子のデータを示す図。
【図9】本発明の有機素子のデータを示す図。
【図10】本発明のアンテナの実施例を示す図。
【図11】本発明のアンテナの実施例を示す図。
【図12】メモリ回路に記憶されるデータの例を示す図。
【図13】本発明を用いたバッグを示す図。
【図14】本発明を用いた証明書を示す図。
【図15】本発明を用いた食料品管理を説明する図。
【図16】本発明を用いた物流管理を説明する図。
【図17】本発明を用いたICカード決済を説明する図。
【図18】本発明の応用例を示す図。
【図19】本発明におけるTFTの配置を示す図。
【図20】本発明の半導体装置と保護層を組み合わせた図。
【図21】本発明のNOR型有機メモリの構成を示す図。
【図22】本発明の断面図。
【図23】本発明に用いるレーザ装置を示す図。
【図24】本発明におけるTFTの配置を示す図。
【図25】本発明の有機素子のデータを示す図。
【図26】本発明の有機素子のデータを示す図。
【図27】本発明の有機素子のデータを示す図。
【図28】本発明の有機素子の積層構造。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し、本発明は多くの
異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することな
くその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って
、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面に
おいて、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説
明は省略する。
【0041】
図1に本発明の第1の実施形態を示す。図1の実施形態は有機素子101〜112、ト
ランジスタ113〜124、スイッチ125〜130、電流源131〜133、電源13
4、電源端子135〜139、信号線140〜143、センスアンプ144〜146から
構成される回路である。トランジスタ113〜124は薄膜トランジスタであることが望
ましいがそれには限定されない。また、有機素子101とトランジスタ113は並列に接
続されメモリセル100を構成する。他の有機素子とトランジスタ、例えば有機素子10
2とトランジスタ114も同様に並列に接続されメモリセルを構成する。図1から明らか
なように、複数のメモリセルが直列に接続され、メモリセル列を構成する。ここで使用す
る有機素子は2つのモードを有するものとする。例えば第1のモードとして図7(A)に
示すようなダイオードで等価回路を示せるモード有する。また、第1のモードの有機素子
に電圧、電流、光(レーザ光を含む)などを与えることによって不可逆的に図7(B)に
示すような抵抗で等価回路を示せる第2のモードに変化するものとする。
【0042】
次に図1に示す回路の動作を説明する。この回路を記憶回路として使用する場合につい
て説明を行う。まず、記憶すべきデータを有機素子101〜112に記憶させる方法につ
いて説明する。有機素子101にデータを記憶させる場合を考える。
【0043】
最初に信号線141〜143をアクティブにする。これによってトランジスタ114〜
116、118〜120、122〜124はオンし、トランジスタ114〜116、11
8〜120、122〜124のソースとドレインが短絡され、電源端子139とほぼ同じ
電位となる。一方信号線140はノンアクティブとすると、トランジスタ113、117
、121はオフとなる。
【0044】
次にスイッチ125をオンさせる、すると有機素子101の一方の端子には電源134
の電位が加わり、他方の端子には電源端子139の電位が加わる。
電源134の電圧として有機素子がモード変化するような電圧を加えれば、有機素子10
1は低抵抗でショート状態になる。
【0045】
次に、有機素子101に記憶されたデータを読み出す場合について説明をおこなう。最
初に信号線141〜143をアクティブにする。これによってトランジスタ114〜11
6、118〜120、122〜124はオンし、トランジスタ114〜116、118〜
120、122〜124のソースとドレインは短絡され、電源端子139とほぼ同じ電位
となる。一方信号線140はノンアクティブとすると、トランジスタ113、117、1
21はオフとなる。そして、スイッチ126をオンさせる。電源端子136に接続された
電流源131よりスイッチ126を介して有機素子101に電流が流れ、その電流は更に
トランジスタ114、115、116を介して、電源端子139に流れる。トランジスタ
114、115、116のオン抵抗が十分低く、且つ、モード変化後の有機素子の抵抗が
十分低ければ、電流源131の電源端子136に接続しない方の端子は電源端子139の
電位とほぼ同等となる。
【0046】
有機素子にデータが記憶されない場合、有機素子は図7(A)に示すダイオードの状態
であり有機素子101に電流が流れると、電流源131の電源端子136に接続されない
方の端子には電源端子139にダイオードの順方向電圧を加えた電圧が発生する。このよ
うにデータが記憶されたか否かで、電流源131の電源端子に接続しないほうの端子の電
位は異なり、これによって有機素子の記憶状態を読み出すことが可能となる。電流源13
1に接続されたセンスアンプ144の出力を見ることによって、明確に記憶状態を判断す
ることが可能になる。
【0047】
以上において、有機素子101について説明をおこなったが、同様に有機素子102に
書き込みをおこなう場合には信号線140、142、143をアクティブとし、スイッチ
125をオンさせ、有機素子102の両端に電圧を印加して、有機素子のモードを変える
ことによって記憶が可能となる。代表的には、2つの電極間距離が変化するとともに、有
機化合物層の厚さが部分的に変化する。また、有機素子102に記憶された情報を読み出
す場合においても、信号線140、142、143をアクティブとし、スイッチ126を
オンさせ電流源131の電位を読むことによって記憶状態を読み出すことができ、センス
アンプ144の出力をみれば更に明確に記憶状態を判断することが可能となる。同様に有
機素子103または104についても記憶が可能となる。
【0048】
以上においては有機素子101〜104の列について説明をおこなったが、有機素子1
05〜108の列、有機素子109〜112の列についても同じである。また、図1では
有機素子を4つ直列に接続しているが、その数は4つに限定されず他の数であっても良い
。上記は有機素子とトランジスタを並列に接続してメモリセルを構成し、さらにそのメモ
リセルを直列に接続してNAND型のメモリ構成をとっている。そしてその一端から信号
を検出する手段(ここではセンスアンプであるがセンスアンプには限定しない)を有して
いる。
【0049】
図21に本発明の第2の実施形態を示す。図21の実施形態は有機素子2101〜21
03、トランジスタ2104〜2106、スイッチ2107〜2112、電流源2119
〜2121、電源2113、電源端子2114〜2118、センスアンプ2122〜21
24、信号線2125〜2127から構成される回路である。トランジスタ2104〜2
106は薄膜トランジスタであることが望ましいがそれには限定されない。また、有機素
子2101とトランジスタ2104は直列に接続されメモリセル2100を構成する。他
の有機素子、トランジスタも同様である。ここで使用する有機素子は2つのモードを有す
るものとする。例えば第1のモードとして図7(A)に示すようなダイオードで等価回路
を示せるモード有する。また、第1のモードの有機素子に電圧、電流、光(レーザ光を含
む)などを与えることによって不可逆的に図7(B)に示すような抵抗で等価回路を示せ
る第2のモードに変化するものとする。
【0050】
次に図21に示す回路の動作を説明する。この回路を記憶回路として使用する場合につ
いて説明を行う。まず、記憶すべきデータを有機素子2101〜2103に記憶させる方
法について説明する。まず有機素子2101にデータを記憶させる場合を考える。
【0051】
最初に信号線2127をアクティブにする。これによってトランジスタ2104はオン
し、トランジスタ2104のソースとドレインが短絡され、有機素子2101はスイッチ
2107、2108と接続される。一方信号線2126、2127はノンアクティブとす
ると、トランジスタ2105、2106はオフとなる。
【0052】
次にスイッチ2107をオンさせる、すると有機素子2101の一方の端子には電源2
113の電位が加わり、他方の端子には電源端子2115の電位が加わる。電源2113
の電圧として有機素子がモード変化するような電圧を加えれば、有機素子2101は低抵
抗でショート状態になる。
【0053】
次に、有機素子2101に記憶されたデータを読み出す場合について説明をおこなう。
最初に信号線2127をアクティブにする。これによってトランジスタ2104はオンし
、トランジスタ2104のソースとドレインは短絡され、電源端子2115とほぼ同じ電
位となる。一方信号線2125、2126はノンアクティブとすると、トランジスタ21
05、2106はオフとなる。そして、スイッチ2108をオンさせる。電源端子211
6に接続された電流源2119よりスイッチ2108を介して有機素子2101に電流が
流れ、電源端子2115に流れる。トランジスタ2104のオン抵抗が十分低く、且つ、
モード変化後の有機素子の抵抗が十分低ければ、電流源2119の電源端子2116に接
続しない方の端子は電源端子2115の電位とほぼ同等となる。
【0054】
有機素子にデータが記憶されない場合、有機素子は図7(A)に示すダイオードの状態
であり有機素子2101に電流が流れると、電流源2119の電源端子2116に接続さ
れない方の端子には電源端子2115にダイオードの順方向電圧を加えた電圧が発生する
。このようにデータが記憶されたか否かで、電流源2119の電源端子に接続しないほう
の端子の電位は異なり、これによって有機素子の記憶状態を読み出すことが可能となる。
さらに電流源2119に接続されたセンスアンプ2122の出力を見ることによって、明
確に記憶状態を判断することが可能になる。
【0055】
以上において、有機素子2101について説明をおこなったが、同様に有機素子210
2に書き込みをおこなう場合には信号線2126をアクティブとし、スイッチ2109を
オンさせ、有機素子2102の両端に電圧を印加して、有機素子のモードを変えることに
よって記憶が可能となる。また、有機素子2102に記憶された情報を読み出す場合にお
いても、信号線2126をアクティブとし、スイッチ2110をオンさせ電流源2120
の電位を読むことによって記憶状態を読み出すことができ、センスアンプ2123の出力
をみれば更に明確に記憶状態を判断することが可能となる。同様に有機素子2103につ
いても記憶が可能となる。
【0056】
また、図21では有機素子3つを記載しているが、その数は3つに限定されず他の数で
あっても良い。上記は有機素子とトランジスタを直列に接続してメモリセルを構成し、さ
らにそのメモリセルを並列に接続してNOR型のメモリ構成をとっている。そしてその一
端から信号を検出する手段(ここではセンスアンプであるがセンスアンプに限定しない)
を有している。
【実施例1】
【0057】
本発明の半導体装置の断面構造について説明する(図22参照)。ここでは、メモリセ
ルアレイ222が含むトランジスタ240及び有機素子241と、スイッチ、センスアン
プなど(図22では225に相当)が含むCMOS回路248の断面構造を示す。 本発
明に用いる基板230は、ガラス基板や可撓性基板の他、石英基板、シリコン基板、金属
基板、ステンレス基板等を用いる。可撓性基板とは、フレキシブルな折り曲げることがで
きる基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスル
フォン等からなるプラスチック基板等が挙げられる。
【0058】
有機素子241は、第1の導電層243と、有機化合物層244と、第2の導電層24
5の積層体に相当し、隣接する有機素子241の間には、絶縁層249が設けられる。ま
た、図22はNOR型メモリ回路の例であり、有機素子241の第2の導電層は他の有機
素子と共通である。
【0059】
第1の導電層243と第2の導電層245は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀
(Ag)等の公知の導電性材料を用いて形成される。
【0060】
光学的作用によりデータの書き込みを行う場合、第1の導電層243と第2の導電層2
45の一方又は両方は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透光性がある材料により形成
するか、又は光を透過する厚さで形成する。電気的作用によりデータの書き込みを行う場
合、第1の導電層243と第2の導電層245に用いる材料に特に制約はない。
【0061】
有機化合物層244としては、単層または積層した構造を用いることができる。なお、
有機化合物層合計の膜厚は5〜60nm、好ましくは10〜20nmである。また、各有
機化合物層の導電率は10−15S/cm−1以上、10−3S/cm−1以下である。
【0062】
有機化合物層244として、有機化合物材料を用いた場合には、データの書き込みはレ
ーザ光等の光学的作用や電気的作用を加えることによって行う。また、光酸発生剤をドー
プした共役高分子材料を用いた場合、データの書き込みは光学的作用により行う。データ
の読み出しは、有機化合物層244の材料には依存せず、いずれの場合であっても、電気
的作用により行う。
【0063】
続いて、光学的作用によりデータの書き込みを行う場合について説明する。この場合、
レーザ照射装置232により、透光性を有する導電層側(ここでは第2の導電層245と
する)から、有機化合物層244に対して、レーザ光を照射することにより行う。
【0064】
有機化合物層244として、有機化合物材料を用いた場合、レーザ光の照射により、有
機化合物層244が酸化又は炭化して絶縁化する。そうすると、レーザ光が照射された有
機素子241の抵抗値は増加し、レーザ光が照射されない有機素子241の抵抗値は変化
しない。また、光酸発生剤をドープした共役高分子材料を用いた場合、レーザ光の照射に
より、有機化合物層244に導電性が与えられる。つまり、レーザ光が照射された有機素
子241には導電性が与えられ、レーザ光が照射されない有機素子241には導電性が与
えられない。
【実施例2】
【0065】
光によりデータの書き込みを行う場合、第1の導電層243と第2の導電層245のう
ち、一方又は両方は透光性を有している。透光性を有する導電層は、インジウム錫酸化物
(ITO)等の透明な導電性材料を用いて形成するか、又は、透明な導電性材料でなくて
も、光を透過する厚さで形成する。
【0066】
有機化合物層244は、導電性を有する有機化合物材料を用いることができ、例えば、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:
α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]
−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミ
ノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3
−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDAT
A)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−
フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼ
ン環−窒素の結合を有する)の化合物やフタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシ
アニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシア
ニン化合物等の正孔輸送性の高い物質を用いることができる。
【0067】
また、他にも有機化合物材料としては電子輸送性が高い材料を用いることができ、例え
ばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−
8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ
[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格ま
たはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料や、ビス[2−(2−ヒドロキ
シフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−
ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサ
ゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さら
に、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニ
ル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−te
rt−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:
OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフ
ェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチル
フェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−ト
リアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バ
ソキュプロイン(略称:BCP)等の化合物等を用いることができる。
【0068】
また、他にも有機化合物材料として、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(1,
1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(略称:DCJT
)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュ
ロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−
ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)ベン
ゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン54
5T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,9’−ビアン
トリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナ
フチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレ
ン(略称:TBP)等が挙げられる。また、上記発光材料を分散してなる層を形成する場
合に母体となる材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルア
ントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カ
ルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、ビス[2−(2−ヒ
ドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキ
シフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)などの金属錯体等を用いる
ことができる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9
,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−
キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等を用いる
ことができる。
【0069】
また、有機化合物層の材料として、他にも光または電気的作用を加えることによって電
気抵抗が変化する材料を用いることができる。例えば、光を吸収することによって酸を発
生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いることができる。ここで共役
高分子としては、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポ
リアニリン類、ポリフェニレンエチレン類等を用いることができる。また、光酸発生剤と
しては、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、o−ニトロベンジルトシレ
ート、アリールスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニルアセトフェノン類、
Fe−アレン錯体PF6塩等を用いることができる。
【0070】
上記のような有機素子241は、一対の導電層間に有機化合物層を設ける単純な構成を
有するため、作製工程が単純であり、安価な半導体装置の提供を可能とする。また、有機
素子241は、不揮発性メモリであるため、データを保持するための電池を内蔵する必要
がなく、小型、薄型、軽量の半導体装置の提供することができる。また、有機素子241
として不可逆的な材料を用いることによって、データの書き込み(追記)は可能であるが
、データの書き換えを行うことはできない。そうすると、偽造を防止し、セキュリティを
確保した半導体装置を提供することができる。
【実施例3】
【0071】
次に、光学的作用によりデータの書き込みを行う場合について説明する。この場合、透
光性を有する導電層側(ここでは第2の導電層245とする)から、有機化合物層244
にレーザ光を照射することにより行う。ここでは、所望の部分の有機化合物層244に選
択的にレーザ光を照射して有機化合物層244を破壊する。破壊された有機化合物層は、
絶縁化するため、他の部分と比較すると電気抵抗が大幅に大きくなる。このように、レー
ザ光の照射により、有機化合物層244を挟んで設けられた2つの導電膜間の電気抵抗が
変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を照射していない有
機化合物層を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、所望の部分の
有機化合物層に選択的にレーザ光を照射して破壊することによって電気抵抗を大きくする

【0072】
また、有機化合物層244として、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光
酸発生剤)をドープした共役高分子を用いた場合、レーザ光を照射すると、照射された部
分だけが導電性が増加し、未照射の部分は導電性を有しない。そのため、所望の部分の有
機化合物層に選択的にレーザ光を照射することにより、有機化合物層の導電性が変化する
ことを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を照射していない有機化合物
層を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、所望の部分の有機化合
物層に選択的にレーザ光を照射して導電性を増加させる。
【0073】
レーザ光を照射する場合、有機化合物層244の電気抵抗の変化は、メモリセルの大き
さによるが、μmオーダの径に絞ったレーザ光の照射により実現する。例えば、径が1μ
mのレーザビームが10m/secの線速度で通過するとき、1つのメモリセルが含む有
機化合物を含む層にレーザ光が照射される時間は100nsecとなる。100nsec
という短い時間内で相を変化させるためには、レーザパワーは10mW、パワー密度は1
0kW/mmとするとよい。また、レーザ光を選択的に照射する場合は、パルス発振の
レーザ照射装置を用いて行なうことが好ましい。
【0074】
ここで、レーザ照射装置の一例に関して、図23を用いて簡単に説明する。レーザ照射
装置2301は、レーザ光を照射する際の各種制御を実行するコンピュータ(以下、PC
と示す。)2302と、レーザ光を出力するレーザ発振器2303と、レーザ発振器23
03の電源2304と、レーザ光を減衰させるための光学系(NDフィルタ)2305と
、レーザ光の強度を変調するための音響光学変調器(Acousto−Optic Mo
dulator ; AOM)2306と、レーザ光の断面を縮小するためのレンズおよ
び光路を変更するためのミラー等で構成される光学系2307、X軸ステージ及びY軸ス
テージを有する移動機構2309と、PCから出力される制御データをデジタルーアナロ
グ変換するD/A変換部2310と、D/A変換部から出力されるアナログ電圧に応じて
音響光学変調器2306を制御するドライバ2311と、移動機構2309を駆動するた
めの駆動信号を出力するドライバ2312と、被照射物上にレーザ光の焦点を合わせるた
めのオートフォーカス機構2313を備えている。
【0075】
レーザ発振器2303としては、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能な
レーザ発振器を用いることができる。レーザ発振器としては、KrF、ArF、XeF、
XeCl等のエキシマレーザ発振器、He、He−Cd、Ar、He−Ne、HF等の気
体レーザ発振器、YAG、GdVO、YVO、YLF、YAlOなどの結晶にCr
、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmをドープした結晶を使った固体レーザ発
振器、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザ発振器を用い
ることができる。なお、固体レーザ発振器においては、基本波か第2高調波〜第5高調波
を適用するのが好ましい。
【0076】
次に、レーザ照射装置を用いた照射方法について述べる。有機化合物層(図示せず)が
設けられた基板30が移動機構2309に装着されると、PC2302は図外のカメラに
よって、レーザ光を照射する有機化合物層の位置を検出する。次いで、PC2302は、
検出した位置データに基づいて、移動機構2309を移動させるための移動データを生成
する。
【0077】
この後、PC2302が、ドライバ2311を介して音響光学変調器2306の出力光
量を制御することにより、レーザ発振器2303から出力されたレーザ光は、光学系23
05によって減衰された後、音響光学変調器2306によって所定の光量になるように光
量が制御される。一方、音響光学変調器2306から出力されたレーザ光は、光学系23
07で光路及びビームスポット形状を変化させ、レンズで集光した後、基板30上に該レ
ーザ光を照射する。
【0078】
このとき、PC2302が生成した移動データに従い、移動機構2309をX方向及び
Y方向に移動制御する。この結果、所定の場所にレーザ光が照射され、レーザ光の光エネ
ルギーが熱エネルギーに変換され、基板30上に設けられた有機化合物層に選択的にレー
ザ光を照射することができる。なお、ここでは移動機構2309を移動させてレーザ光の
照射を行う例を示しているが、光学系2307を調整することによってレーザ光をX方向
およびY方向に移動させてもよい。
【0079】
上記の通り、レーザ光の照射によりデータの書き込みを行う本発明の構成は、半導体装
置を簡単に大量に作製することができる。従って、安価な半導体装置を提供することがで
きる。
【実施例4】
【0080】
本実施例では、基板上に有機素子を作製し、その有機素子に電気的作用によりデータの
書き込みを行った結果について説明する。
【0081】
有機素子は、基板上に、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子であり、第1の導電層は酸化珪素とインジウム錫酸化物の
化合物(ITSOと略称されることがある)、第1の有機化合物層は4,4’−ビス[N
−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(TPDと略称される
ことがある)、第2の有機化合物層は、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フ
ェニル−アミノ]−ビフェニル(α−NPDと略称されることがある)、第2の導電層は
アルミニウム、により形成した。また、第1の有機化合物層は10nm、第2の有機化合
物層は50nmの膜厚で形成した。なお、有機化合物層合計の膜厚は5〜60nm、好ま
しくは10〜20nmである。また、各有機化合物層の導電率は10−15S/cm−1
以上、10−3S/cm−1以下である。
【0082】
まず、電気的作用によりデータの書き込みを行う前と、電気的作用によりデータを書き
込んだ後の、有機素子の電流電圧特性の測定結果について、図8を用いて説明する。
【0083】
図8は、横軸が電圧値、縦軸が電流値、プロット261は電気的作用によりデータを書
き込む前の有機素子の電流電圧特性、プロット262は電気的作用によりデータを書き込
んだ後の有機素子の電流電圧特性を示す。図8から、データの書き込み前と、データの書
き込み後とで、有機素子の電流電圧特性には大きな変化がみられる。例えば、印加電圧1
Vでは、データ書き込み前の電流値は4.8×10−5mAであるのに対し、データ書き
込み後の電流値は1.1×10mAであり、データの書き込み前と、データの書き込み
後では、電流値に7桁の変化が生じている。
【0084】
このように、データの書き込み前と、データの書き込み後では、有機素子の抵抗値に変
化が生じており、この有機素子の抵抗値の変化を、電圧値又は電流値により読み取れば、
記憶回路として機能させることができる。
【0085】
なお、上記のような有機素子を記憶回路として用いる場合、データの読み出し動作の度
に、有機素子には所定の電圧値(短絡しない程度の電圧値)が印加され、その抵抗値の読
み取りが行われる。従って、上記の有機素子の電流電圧特性には、読み出し動作を繰り返
し行っても、つまり、所定の電圧値を繰り返し印加しても、変化しないような特性が必要
となる。
【0086】
そこで、データの読み出し動作を行った後の有機素子の電流電圧特性の測定結果につい
て、図9を用いて説明する。
【0087】
なお、この実験では、データの読み出し動作を1回行う度に、有機素子の電流電圧特性
を測定した。データの読み出し動作を複数回行うことにより、有機素子の電流電圧特性の
測定を行った。また、この電流電圧特性の測定は、電気的作用によりデータの書き込みが
行われて抵抗値が変化した有機素子と、抵抗値が変化していない有機素子の、2つの有機
素子に対して行った。
【0088】
図9は、横軸が電圧値、縦軸が電流値、プロット272は電気的作用によりデータの書
き込みが行われて抵抗値が変化した有機素子の電流電圧特性、プロット271は抵抗値が
変化していない有機素子の電流電圧特性を示す。
【0089】
プロット271から分かるように、抵抗値が変化していない有機素子の電流電圧特性は
、電圧値が1V以上のときに特に良好な再現性を示す。同様に、プロット272から分か
るように、抵抗値が変化した有機素子の電流電圧特性は、特に良好な再現性を示す。
【0090】
上記の結果から、データの読み出し動作を複数回繰り返し行っても、その電流電圧特性
は変化しないことが分かる。従って、上記の有機素子を記憶回路として用いることができ
る。
【実施例5】
【0091】
次に、図28に示すような基板上に有機素子を作製した試料1〜試料6において、有機
素子に電気的にデータの書き込みを行ったときの電流電圧特性の測定結果を図25〜27
に示す。なお、ここでは、有機素子に電圧を印加して、有機素子を短絡させて書き込みを
行った。有機化合物層合計の膜厚は5〜60nm、好ましくは10〜20nmである。ま
た、各有機化合物層の導電率は10−15S/cm−1以上、10−3S/cm−1以下
である。
【0092】
図25〜27は、それぞれ、横軸が電圧、縦軸が電流密度値、丸印のプロットはデータ
を書き込む前の有機素子の電流電圧特性の測定結果、四角印のプロットはデータを書き込
んだ後の、有機素子の電流電圧特性の測定結果を示す。また、試料1〜試料6の水平面に
おける大きさは、2mm×2mmである。
【0093】
試料1としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の導電層の順に積層した素
子である。ここでは、図28(A)に示すように、第1の導電層を酸化珪素を含むインジ
ウム錫酸化物(ITO)で形成し、第1の有機化合物層をTPDで形成し、第2の導電層
をアルミニウムで形成した。また、第1の有機化合物層を厚さ50nmで形成した。試料
1の電流電圧特性の測定結果を図25(A)に示す。
【0094】
また、試料2としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の導電層の順に積層
した素子である。ここでは、図28(B)に示すように、第1の導電層を酸化珪素を含む
ITOで形成し、第1の有機化合物層を、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8
,8,−テトラシアノキノジメンタン(F4−TCNQと略称されることがある)を添加
したTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウムで形成した。また、第1の有機化合物
層を厚さ50nmで、F4−TCNQを0.01wt%添加して形成した。試料2の電流
電圧特性の測定結果を図25(B)に示す。
【0095】
また、試料3としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図28(C)に示すように、第1の導
電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層をTPDで形成し、第2の有
機化合物層をF4−TCNQで形成し、第2の導電層をアルミニウムで形成した。また、
第1の有機化合物層を厚さ50nmで形成し、第2の有機化合物層を厚さ1nmで形成し
た。試料3の電流電圧特性の測定結果を図26(A)に示す。
【0096】
また、試料4としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図28(D)に示すように、第1の導
電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層をF4−TCNQで形成し、
第2の有機化合物層をTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウムで形成した。また、
第1の有機化合物層を厚さ1nmで形成し、第2の有機化合物層を厚さ50nmで形成し
た。試料4の電流電圧特性の測定結果を図26(B)に示す。
【0097】
また、試料5としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図28(E)に示すように、第1の導
電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層を、F4−TCNQを添加し
たTPDで形成し、第2の有機化合物層をTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウム
で形成した。また、第1の有機化合物層を厚さ40nmで、F4−TCNQを0.01w
t%添加して形成した。また、第2の有機化合物層を厚さ40nmで形成した。試料5の
電流電圧特性の測定結果を図27(A)に示す。
【0098】
また、試料6としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図28(F)に示すように、第1の導
電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層をTPDで形成し、第2の有
機化合物層をF4−TCNQを添加したTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウムで
形成した。また、第1の有機化合物層を厚さ40nmで形成した。また、第2の有機化合
物層を厚さ40nmで、F4−TCNQを0.01wt%添加して形成した。試料6の電
流電圧特性の測定結果を図27(B)に示す。
【0099】
図25〜27に示す実験結果からも、試料1〜試料6において、データの書き込み前と
、有機素子の短絡前後で、有機素子の電流電圧特性に大きな変化がみられる。また、これ
らの試料の有機素子において、各有機素子が短絡する電圧にも再現性があり、誤差は0.
1V以内であった。
【0100】
次に、試料1〜試料6の書き込み電圧、及び書き込み前後の特性を表1に示す。
【表1】

【0101】
表1において、書き込み電圧(V)は、各有機素子が短絡するときの印加電圧を示す。
また、R(1V)は、書き込み後の有機素子に電圧を1V印加したときの電流密度を、書
き込み前の有機素子に電圧を1V印加したときの電流密度で除した値である。同様に、R
(3V)は、書き込み後の有機素子に電圧を3V印加した時の電流密度を、書き込み前の
有機素子に3V印加した時の電流密度で除した値である。即ち、有機素子の書き込み前後
における電流密度の変化を示す。印加電圧が3Vの場合と比較して1V印加した場合、有
機素子の書き込み前後における電流密度の変化は10の4乗以上と大きいことが分かる。
【実施例6】
【0102】
剥離プロセスを用いて、フレキシブルなIDタグを構成する場合の例について図20を
用いて説明する。IDタグはフレキシブルな保護層2001、2003、および剥離プロ
セスを用いて形成されたIDチップ2002より構成される。本実施例において、アンテ
ナ2004はIDチップ2002上ではなく、保護層2003上に形成され、IDチップ
2002に電気的に接続されている。図20(A)では保護層2003上にのみ形成され
ているが、保護層2001上にもアンテナを形成しても良い。アンテナは銀、銅、または
それらでメッキされた金属であることが望ましい。IDチップ2002とアンテナとの接
続は異方性導電膜を用い、UV処理をおこない接続をおこなうが、接続方法はこれに限定
されない。
【0103】
図20(B)は図20(A)の断面を示したものである。IDチップ2002の厚さは
5μm以下であり、望ましくは0.1μm〜3μmの厚さを有する。また保護層2001
、2003の厚さは、保護層2001、2003を重ねたときの厚さをdとしたとき、(
d/2)±30μmとなっていることが望ましく、とくに(d/2)±10μmであれば
最良である。保護層2001、2003の厚さは10μm〜200μmであることが望ま
しい。IDチップ2002の面積は5mm角以下であり、望ましくは0.3mm角〜4m
m角の面積を有する。
【0104】
保護層2001、2003は有機樹脂材料で形成され折り曲げに対して強い構造をもって
いる。剥離プロセスを用いたIDチップ2002自体も単結晶半導体に比べて、折り曲げ
に対して強いため、保護層2001、2003と密着させることが可能である。このよう
な保護層2001、2003で囲われたIDチップをさらに他の個体物の表面または内部
に配置しても良い。また、紙の中に埋め込んでも良い。
【実施例7】
【0105】
IDチップを曲面にはる場合、つまり、IDチップが弧を描いている方向と垂直にTF
Tを配置した例について図19を用いて説明する。図19のIDチップが含むTFTは、
電流が流れる方向、すなわち、ドレイン電極〜ゲート電極〜ソース電極の位置は直線状に
あり、応力の影響が少なくなるような配置となっている。このような配置をおこなうこと
によって、TFT特性の変動を抑えることができる。また、TFTを構成する結晶は電流
の流れる方向にそろっており、これらをCWLCなどで形成することによって、S値を0
.35V/dec以下、(好ましくは0.09〜0.25V/dec)、移動度を100
cm2/Vs以上にすることができる。
このようなTFTを用いて19段リングオシレータを構成した場合において、電源電圧
3〜5Vにおいて、その発振周波数は1MH以上、好ましくは100MHz以上の特性を
有する。電源電圧3〜5Vにおいて、インバータ1段あたりの遅延時間は26ns、好ま
しくは0.26ns以下を有する。
【0106】
また、応力に対して、TFTなどのアクティブ素子を破壊させないためには、TFTな
どのアクティブ素子の活性領域(シリコンアイランド部分)の面積が全体の面積に占める
割合は、5%〜50%であることが望ましい。
TFTなどのアクティブ素子の存在しない領域には下地絶縁材料、層間絶縁材料および
配線材料が主として設けられている。TFTの活性領域以外の面積は全体の面積の60%
以上であることが望ましい。
アクティブ素子の活性領域の厚さは20nm〜200nm、代表的には40〜170n
m、好ましくは45〜55nm、145〜155nmを有する。
【0107】
また、TFT2401が単体でまたは単体に近い状態で半導体装置内に配置されると(
図24(A))、静電気による破壊、または、剥離工程を有する場合のストレスによる破
壊などが起こりやすくなる。そこで、図24(B)〜(E)にあるようにTFTの周囲に
シリコン、メタル等のダミーパターンまたはダミーTFTを置くことによって、静電気ま
たはストレスによる破壊を防止することができる。図24(B)はTFT2402の左右
にダミーTFT2403を配置した例である。図24(C)はTFT2404の上下にダ
ミーTFT2405を配置した例である。図24(D)はTFT2406の周りにダミー
パターン2407を配置した例である。図24(E)はTFT2408の四方にダミーT
FT2409を配置した例である。
【0108】
また対象物の表面が曲面を有しており、それにより該曲面に貼り合わされたIDチップ
の支持体が、錐面、柱面など母線の移動によって描かれる曲面を有するように曲がってし
まう場合、該母線の方向とTFTのキャリアが移動する方向とを揃えておくことが望まし
い。上記構成により、支持体が曲がっても、それによってTFTの特性に影響が出るのを
抑えることができる。また、島状の半導体膜が集積回路内において占める面積の割合を、
1〜30%とすることで、支持体が曲がっても、それによってTFTの特性に影響が出る
のをより抑えることができる。本実施例は、上記の実施の形態や他の実施例と組み合わせ
て用いることが可能である。
【実施例8】
【0109】
本実施例では本発明を用いた回路に外付けのアンテナをつけた例について図10、図1
1を用いて説明する。
【0110】
図10(A)は回路の周りを一面のアンテナで覆ったものである。基板1000上にア
ンテナ1001を構成し、本発明を用いた回路1002を接続する。図面では回路100
2の周りをアンテナ1001で覆う構成になっているが、全面をアンテナで覆い、その上
に電極を構成した回路1002を貼り付けるような構造を取っても良い。
【0111】
図10(B)は細いアンテナを回路の周りを回るように配置したものである。基板10
03上にアンテナ1004を構成し、本発明を用いた回路1005を接続する。なお、ア
ンテナの配線は一例であってこれに限定するものではない。
【0112】
図10(C)は高周波数のアンテナである。基板1006上にアンテナ1007を構成
し、本発明を用いた回路1008を接続する。
【0113】
図10(D)は180度無指向性(どの方向からでも同じく受信可能)なアンテナであ
る。基板1009上にアンテナ1010を構成し、本発明を用いた回路1011を接続す
る。
【0114】
図10(E)は棒状に長く伸ばしたアンテナである。基板1012上にアンテナ101
3を構成し、本発明を用いた回路1014を接続する。
【0115】
本発明を用いた回路とこれらのアンテナへの接続は公知の方法で行うことができる。例
えばアンテナと回路をワイヤボンディング接続やバンプ接続を用いて接続する、あるいは
チップ化した回路の一面を電極にしてアンテナに貼り付けるという方法を取ってもよい。
この方式ではACF(anisotropic conductive film;異方
性導電性フィルム)を用いて貼り付けることができる。
【0116】
アンテナに必要な長さは受信に用いる周波数によって適正な長さが異なる。一般には波
長の整数分の1の長さにすると良いとされる。例えば周波数が2.45GHzの場合は約
60mm(1/2波長)、約30mm(1/4波長)とすれば良い。
【0117】
また、本発明の回路上に基板を取りつけ、さらにその上にアンテナを構成してもよい。
図11(A)〜(C)にその一例として回路上に基板を取りつけ、らせん状のアンテナを
配置したものの上面図および断面図を示す。1100は上部基板を、1101はアンテナ
配線を示しいている。
【0118】
なお、本実施例に示した例はごく一例であり、アンテナの形状を限定するものではない
。あらゆる形状のアンテナについて本発明は実施することが可能である。この実施例は実
施形態および上記の実施例1〜6のどのような組み合わせからなる構成を用いても実現す
ることができる。
【実施例9】
【0119】
本実施例では本発明の半導体装置は、ICカード、ICタグ、RFIDタグ、トランス
ポンダ、紙幣、有価証券、パスポート、電子機器、バッグ及び衣類に用いることができる
。ここでは、ICカード、IDタグおよびIDチップなどの例について図18を用いて説
明する。なお、ICカード、ICタグ、RFIDタグ等は、電源回路、クロック発生回路
、データ復調回路、データ変調回路、制御回路、インターフェイス回路等を有していても
よい。
【0120】
図18(A)はICカードであり、個人の識別用のほかに内蔵された回路のメモリが書
き換え可能であることを利用して現金を使わずに代金の決済が可能なクレジットカード、
あるいは電子マネーといったような使い方もできる。ICカード1800の中に本発明を
用いた回路部1801を組み込んでいる。
【0121】
図18(B)はIDタグであり、個人の識別用のほかに、小型化可能であることから特
定の場所での入場管理などに用いることができる。IDタグ1810の中に本発明を用い
た回路部1811を組み込んでいる。
【0122】
図18(C)はスーパーマーケットなどの小売店で商品を扱う際の商品管理を行うため
のIDチップ1822を商品1820に貼付した例である。本発明はIDチップ1822
内の回路に適用される。このようにIDチップを用いることにより、在庫管理が容易にな
るだけではなく、万引きなどの被害を防ぐことも可能である。図面ではIDチップ182
2が剥がれ落ちてしまうことを防ぐために接着を兼ねた保護膜1821を用いているが、
IDチップ1822を接着剤を用いて直接貼付するような構造を取っていてもよい。また
、商品に貼付する構造上、実施例2で挙げたフレキシブル基板を用いて作製すると好まし
い。
【0123】
図18(D)は商品製造時に識別用のIDチップを組み込んだ例である。図面では例と
してディスプレイの筐体1830にIDチップ1831が組み込まれている。本発明はI
Dチップ1831内の回路に適用される。このような構造を取ることにより製造メーカー
の識別、商品の流通管理などを容易に行うことができる。なお、図面ではディスプレイの
筐体を例として取り上げているが、本発明はこれに限定されることはなく、さまざまな電
子機器、物品に対して適用することが可能である。
【0124】
図18(E)は物品搬送用の荷札である。図面では荷札1840内にIDチップ184
1が組み込まれている。本発明はIDチップ1841内の回路に適用される。このような
構造を取ることにより搬送先の選別や商品の流通管理などを容易に行うことができる。な
お、図面では物品を縛るひも状のものにくくりつけるような構造を取っているが、本発明
はこれに限定されることはなく、シール材のようなものを用いて物品に直接貼付するよう
な構造を取ってもよい。
【0125】
図18(F)は本1850にIDチップ1852が組み込まれたものである。本発明は
IDチップ1852内の回路に適用される。このような構造を取ることにより書店におけ
る流通管理や図書館などでの貸し出し処理などを容易に行うことができる。図面ではID
チップ1852が剥がれ落ちてしまうことを防ぐために接着を兼ねた保護膜1851を用
いているが、IDチップ1852を接着剤を用いて直接貼付するような構造を取る、また
は本1850の表紙に埋め込む構造を取っていてもよい。
【0126】
図18(G)は紙幣1860にIDチップ1861が組み込まれたものである。本発明
はIDチップ1861内の回路に適用される。このような構造を取ることにより偽札の流
通を阻止することが容易に行える。なお、紙幣の性質上IDチップ1861が剥がれ落ち
るのを防ぐために紙幣1860に埋め込むような構造を取るとより好ましい。本発明は紙
幣に限らず、有価証券、パスポートなど紙を材質にしたものに適用可能である。
【0127】
図18(H)は靴1870にIDチップ1872が組み込まれたものである。本発明は
IDチップ1872内の回路に適用される。このような構造を取ることにより製造メーカ
ーの識別、商品の流通管理などを容易に行うことができる。図面ではIDチップ1872
が剥がれ落ちてしまうことを防ぐために接着を兼ねた保護膜1871を用いているが、I
Dチップ1872を接着剤を用いて直接貼付するような構造を取る、または靴1870に
埋め込む構造を取っていてもよい。本発明は靴に限らず、バッグ、衣類など身に付けるも
のに適用可能である。
【0128】
セキュリティ確保を目的として、多様な物品へIDチップを実装する場合を説明する。
セキュリティ確保とは、盗難防止又は偽造防止の面から捉えることができる。
【0129】
盗難防止の例として、バッグにIDチップを実装する場合を説明する。図13に示すよ
うに、バッグ1301にIDチップ1302を実装する。例えば、バッグ1301の底又
は側面の一部等にIDチップ1302を実装することができる。IDチップ1302は非
常に薄型で小さいため、バッグ1301のデザイン性を低下させずに実装することができ
る。加えてIDチップ1302は透光性を有し、盗難者はIDチップ1302が実装され
ているかを判断しにくい。そのため、盗難者によってIDチップ1302が取り外される
恐れがない。
【0130】
このようなIDチップ実装バッグが盗難された場合、例えばGPS(Global P
ositioning System)を用いてバッグの現在位置に関する情報を得るこ
とができる。なおGPSとは、GPS用の衛星から送られる信号をとらえてその時間差を
求め、これをもとに測位するシステムである。
【0131】
また盗難された物品以外にも忘れ物や落とし物を、GPSを用いて現在位置に関する情報
を得ることができる。
【0132】
またバッグ以外にも、自動車、自転車等の乗物、時計やアクセサリーにIDチップを実
装することができる。
【0133】
次に偽造防止の例として、パスポートや免許証等にIDチップを実装する場合を説明す
る。
【0134】
図14(A)に、IDチップを実装したパスポート1401を示す。図14(A)では
IDチップ1402がパスポート1401の表紙に実装されているが、その他のページに
実装してもよく、IDチップ1402は透光性を有するため表面に実装してもよい。また
IDチップ1402を表紙等の材料で挟み込むようにし、表紙の内部に実装することも可
能である。
【0135】
図14(B)には、IDチップを実装した免許証1403を示す。図14(B)では、
IDチップ1404が免許証1403の内部に実装されている。またIDチップ1404
は透光性を有するため、免許証1403の印刷面上に設けても構わない。例えば。IDチ
ップ1404は免許証1403の印字面上に実装し、フィルムで覆うことができる。また
IDチップ1404を免許証1403の材料で挟み込むようにし、内部に実装することも
可能である。
【0136】
以上のような物品にIDチップを実装することにより、偽造を防止することができる。
また上述したバッグにIDチップを実装し、偽造を防止することもできる。加えて非常に
薄型で小さいIDチップを用いるため、パスポートや免許証等のデザイン性を損ねること
がない。さらにIDチップは透光性を有するため、表面に実装しても構わない。
【0137】
またIDチップにより、パスポートや免許証等の管理を簡便に行うことができる。さら
にパスポートや免許証等に直接情報を記入することなく、IDチップに保存することがで
きるため、プライバシーを守ることができる。
【0138】
安全管理を行うため、食料品等の商品へIDチップを実装する場合を図15を用いて説
明する。
IDチップ1503を実装したラベル1502と、当該ラベル1502が貼られた肉の
パック1501を示す。IDチップ1503はラベル1502の表面に実装していてもよ
いし、ラベル1502内部に実装してもよい。また野菜等の生鮮食品の場合、生鮮食品を
覆うラップにIDチップを実装してもよい。
【0139】
IDチップ1503には、商品の生産地、生産者、加工年月日、賞味期限等の商品に関
する基本事項、更には商品を用いた調理例等の応用事項を記録することができる。このよ
うな基本事項は、書き換える必要がないためMROM(マスクROM:Mask Rea
d Only Memory)や前述した有機素子を用いたメモリ等の書き換え不能なメ
モリを用いて記録するとよい。
【0140】
また食料品の安全管理を行うためには、加工前の動植物の状態を知り得ることが重要で
ある。そのため、動植物内にIDチップを埋め込み、リーダ装置によって動植物に関する
情報を取得するとよい。動植物に関する情報とは、飼育地、飼料、飼育者、伝染病の感染
の有無等である。
【0141】
またIDチップに、商品の値段が記録されていれば、従来のバーコードを用いる方式よ
りも、簡便、短時間に商品の精算を行うことが可能となる。すなわち、IDチップが実装
された複数の商品を一挙に精算することができる。但し、このように複数のIDチップを
読み取る場合、アンチコリジョン機能をリーダ装置に搭載する必要がある。
【0142】
さらにIDチップの通信距離によっては、レジスターと商品との距離が遠くても、商品
の精算を可能とすることができる。またIDチップは万引き防止にも役立つ。
【0143】
さらにIDチップは、バーコード、磁気テープ等のその他の情報媒体と併用することも
できる。例えば、IDチップには書き換え不要な基本事項を記録し、バーコードには更新
すべき情報、例えば値引き価格や特価情報を記録するとよい。バーコードはIDチップと
異なり、情報の修正を簡便に行うことができるからである。
【0144】
このようにIDチップを実装することにより、消費者へ提供できる情報を増大させるこ
とができるため、消費者は安心して商品を購入することができる。
【0145】
物流管理を行うため、ビール瓶等の商品へIDチップを実装する場合を説明する。図1
6(A)に示すように、ビール瓶にIDチップ1602を実装する。例えば、ラベル16
01を用いてIDチップ1602を実装することができる。
【0146】
IDチップには、製造日、製造場所、使用材料等の基本事項を記録する。このような基
本事項は、書き換える必要がないためMROM(マスクROM:Mask Read O
nly Memory)や前述した有機素子を用いたメモリ等の書き換え不能なメモリを
用いて記録するとよい。加えてIDチップには、各ビール瓶の配送先、配送日時等の個別
事項を記録する。例えば、図16(B)に示すように、各ビール瓶1603がベルトコン
ベア1606により流れ、ライタ装置1605を通過するときに、ラベル1604に内蔵
されたIDチップ1607に各配送先、配送日時を記録することができる。このような個
別事項は、本発明の有機メモリを用いて記録するとよい。
【0147】
また配達先から購入された商品情報がネットワークを通じて物流管理センターへ送信さ
れると、この商品情報に基づき、ライタ装置又は当該ライタ装置を制御するパーソナルコ
ンピュータ等が配送先や配送日時を算出し、IDチップへ記録するようなシステムを構築
するとよい。
【0148】
また配達はケース毎に行われるため、ケース毎、又は複数のケース毎にIDチップを実
装し、個別事項を記録することもできる。
【0149】
このような複数の配達先が記録されうる飲料品は、IDチップを実装することにより、
手作業で行う入力にかかる時間を削減でき、それに起因した入力ミスを低減することがで
きる。加えて物流管理の分野において最もコストのかかる人件費用を削減することができ
る。従って、IDチップを実装したことにより、ミスの少ない、低コストな物流管理を行
うことができる。
【0150】
さらに配達先において、ビールに合う食料品や、ビールを使った料理法等の応用事項を
記録してもよい。その結果、食料品等の宣伝を兼ねることができ、消費者の購買意欲を高
めることができる。このような応用事項は、本発明の有機メモリを用いて記録するとよい
。このようにIDチップを実装することにより、消費者へ提供できる情報を増大させるこ
とができるため、消費者は安心して商品を購入することができる。
【0151】
製造管理を行うため、IDチップを実装した製造品と、当該IDチップの情報に基づき
制御される製造装置(製造ロボット)について説明する。
【0152】
現在、オリジナル商品を生産する場面が多くみられ、このような場合、生産ラインでは
当該商品のオリジナル情報に基づくように生産する。例えば、ドアの塗装色を自由に選択
することができる自動車の生産ラインにおいては、自動車の一部にIDチップを実装し、
当該IDチップからの情報に基づき、塗装装置を制御する。そしてオリジナルな自動車を
生産することができる。
IDチップを実装する結果、事前に生産ラインに投入される自動車の順序や同色を有する
数を調整する必要がない。強いては、自動車の順序や数それに合わせるように塗装装置を
制御するプログラムを設定しなくてすむ。すなわち製造装置は、自動車に実装されたID
チップの情報に基づき、個別に動作することができる。
【0153】
このようにIDチップは様々な場所で使用することができる。そしてIDチップに記録
された情報により、製造に関する固有情報を得ることができ、当該情報に基づき製造装置
を制御することができる。
【0154】
次に、本発明のIDチップを用いたICカードを、電子マネーとして利用する形態につ
いて説明する。図17に、ICカード1701を用いて、決済をおこなっている様子を示
す。ICカード1701は、本発明のIDチップ1702を有している。ICカード17
01の利用の際には、レジスター1703、リーダ/ライタ1704を用いる。IDチッ
プ1702には、ICカード1701に入金されている金額の情報が保持されており、リ
ーダ/ライタ1704は該金額の情報を非接触で読み取り、レジスター1703に送信す
ることができる。レジスター1703では、ICカード1701に入金されている金額が
、決済する金額以上であることを確認し、決済を行なう。そしてリーダ/ライタ1704
に決済後の残額の情報を送信する。リーダ/ライタ1704は該残額の情報を、ICカー
ド1701のIDチップ1702に書き込むことができる。
【0155】
なおリーダ/ライタ1704に、暗証番号などを入力することができるキー1705を
付加し、第三者によってICカード1701を用いた決済が無断で行なわれるのを制限で
きるようにしても良い。
なお、本実施例に示した例はごく一例であり、これらの用途に限定するものではないこ
とを付記する。
【0156】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる物品の固体認識用のチップとし
て適用することが可能である。また、本発明は実施形態、実施例1〜9のどのような組み
合わせからなる構成を用いても実現することができる。
【符号の説明】
【0157】
100 メモリセル
101〜112 有機素子
113〜124 トランジスタ
125〜130 スイッチ
131〜133 電流源
134 電源
135〜139 電源端子
140〜143 信号線
144〜146 センスアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機素子、及び前記有機素子と並列に接続するトランジスタを有するメモリセルを複数と、
前記メモリセルの信号を検出する手段と、を有し、
複数の前記メモリセルは、直列に接続されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
有機素子、及び前記有機素子と直列に接続するトランジスタを有するメモリセルを複数と、
前記メモリセルの信号を検出する手段と、を有し、
複数の前記メモリセルは、並列に接続されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記メモリセルの信号を検出する手段は、センスアンプを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
電圧を印加して前記有機素子を短絡させることにより、前記有機素子にデータの書き込みを行うことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記有機素子は、一対の導電層と、前記一対の導電層に挟まれた有機化合物層と、を有し、
電圧を印加して前記一対の導電層の間の距離を変化させることにより、前記有機素子にデータの書き込みを行うことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された半導体装置を有することを特徴とする、ICカード、ICタグ、RFIDタグ、トランスポンダ、紙幣、有価証券、パスポート、電子機器、バッグ、又は衣類。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された半導体装置と、
電源回路、クロック発生回路、データ復調回路、データ変調回路、制御回路、及びインターフェイス回路の少なくとも一つと、を有することを特徴とするRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−211215(P2011−211215A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115579(P2011−115579)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【分割の表示】特願2005−306607(P2005−306607)の分割
【原出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】