説明

半導体装置

【課題】特性測定用のステージにゴミがある場合でも、ウェハ状態でのチップ形成箇所のピエゾ効果による漏れ電流の誤判定が起こり難い半導体装置を提供すること。
【解決手段】n半導体基板1の裏面側に形成したnフィールドストップ層9と、このnフィールドストップ層9の表面層に形成したpコレクタ層10とからなる裏面拡散層16の厚さが5μm以下と薄い場合に、Ti膜11,13、やNi膜14などの積層膜で形成される裏面電極19のその積層膜に0.3μm〜4μmの厚さのAl−Si膜12を挟み応力緩衝することで、ピエゾ効果によるウェハ状態でのチップの漏れ電流の誤判定率を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板の裏面側に薄い裏面拡散層と裏面電極を有するIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFETおよびダイオードなどの半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明において、nはn型、pはp型の導電型を示す。
IGBTは、電圧駆動型であり、オン電圧が低く、かつ高速スイッチング特性を有する素子であり、その応用範囲も、インバータなどの産業用分野から電子レンジなどの民生機器分野へ拡がっている。IGBTには、PT(パンチスルー)型、NPT(ノンパンチスルー)型、FS(フィールドストップ)型の構造がある。PT−IGBTは、p半導体基板上にnバッファ層とnドリフト層をエピタキシャル成長させたエピウエハを用いて形成される。そのため、たとえば600V耐圧素子では、ウエハ厚は200〜300μm程度になる。
【0003】
図5は、NPT−IGBTの要部断面図である。この図はNPT−IGBTチップ内の一つのセル部の断面図であり、チップ内には多数のセルが形成されている。
図5に示すように、たとえばFZウエハよりなるn半導体基板1で拡散しない層であるnドリフト層2の表面側に、pベース領域3が選択的に形成されている。pベース領域3の表面層には、nエミッタ領域4が選択的に形成されている。また、図5に示すpベース領域3内のnエミッタ領域4と、このpベース領域3とは異なるpベース領域内のnエミッタ領域との間の基板表面上には、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極6が形成されている。
【0004】
エミッタ電極8は、nエミッタ領域4およびpベース領域3に接触しているとともに、層間絶縁膜7によりゲート電極6から絶縁されている。基板裏面には、pコレクタ層10およびコレクタ電極となる裏面電極54が形成されている。このpコレクタ層10と裏面電極54を合わせて裏面構造55となる。尚、図中の18は表面構造、21ははんだ、22は支持導体および60はウエハを切断後のチップである。NPT型の場合には、nドリフト層2の厚さがPT型よりも厚くなるが、その一方で、pコレクタ層10が、裏面からのイオン注入などで形成することにより、このpコレクタ層に高濃度のp半導体基板を用いるPT型より大幅に薄くでき、PT型の素子に比べて、ウエハ厚が大幅に低減される。
【0005】
近年、さらに低オン電圧化と低スイッチング損失化を狙いに、n半導体基板の薄膜化と裏面拡散層(nフィールドストップ層とpコレクタ層)の薄膜化を図ったFS−IGBTの開発が進んでいる。
【0006】
図6は、FS−IGBTの要部断面図である。この図はFS−IGBTチップ内の一つのセル部の断面図であり、チップ内には多数のセルが形成されている。図6に示すように、基板表面側の素子構造(表面構造18)は、図5に示すNPT型の素子の表面構造18と同じである。基板裏面側には、nドリフト層2とpコレクタ層10との間に、バッファ層(FS−IGBTではフィールドストップ層9という)が設けられている。FS型の場合には、n半導体基板1が大幅に薄くできるため、PT型の素子に比べて、ウエハ厚が大幅に低減され、さらにNPT型の素子に比べてもフィールドストップ層9があるのでウエハ厚さを減らすことができる。
【0007】
このFS−IGBTでは、600V耐圧クラスでn半導体基板1の厚さは80μm〜100μm程度、1200Vクラスで100μm〜140μm程度であり、空乏層の伸びを停止させる裏面のフィールドストップ層9の層厚が1μm程度である。このフィールドストップ層9と接して1μm程度の厚さのコレクタ層10が形成され裏面拡散層16を構成する。このコレクタ層10の表面にはコレクタ電極となる裏面電極54が形成され、この裏面電極54は多層の金属膜が積層されて形成されている。
【0008】
裏面電極54は、pコレクタ層10と接する側からチタン(Ti)膜51およびニッケル(Ni)膜52で構成され、裏面電極54と支持導体22(金属ベースなど)とははんだ21で接合される。尚、図中の番号で、55は裏面構造、60は切断後のチップである。
【0009】
図5、図6の表面構造18はpベース領域3、nエミッタ領域4、ゲート絶縁膜5、ゲート電極6、層間絶縁膜7、エミッタ電極8および図示しない保護膜で構成され、裏面構造55は、裏面拡散層16と裏面電極54で構成されている。
【0010】
図7は、図6のFS−IGBTの製造方法を示す図であり、同図(a)〜同図(c)は工程順に示した要部製造工程断面図である。図中の18は表面構造であり、55は裏面構造であり細部の図示は省略する。
【0011】
同図(a)において、ウエハ30aの第1主面側に表面構造18を形成する。ウエハ30aの裏面20aを研削で除去しウエハ30aの厚さを140μmにする。同図(a)で符号30は研削によって薄くなったウエハである。
【0012】
同図(b)において、ウエハ30の裏面20の図示しないpコレクタ層10表面にチタン(Ti)膜51、ニッケル(Ni)膜52および金(Au)膜を積層して形成する。表面構造18および裏面構造55を形成したウエハ61のスクライブライン62で囲まれた箇所がチップ60となる箇所(チップ予定箇所60a)である。
【0013】
同図(c)において、ウエハ61をスクライブライン62に沿って切断してチップ60を形成した後、支持導体22(銅ベースなど)にチップ60の裏面の金膜をはんだ21で固着する。固着した後はこの金膜ははんだ21に吸収されて消滅する。
【0014】
このようにして形成された図6のFS−IGBTは、図7(b)のウエハ61の段階でゲート特性や耐圧特性が測定される。これは不良チップを早い段階で見出して、後工程に良品チップのみ流して製造コストを低減するためである。
【0015】
図8は、ウエハ段階で耐圧特性を測定する様子を示した図である。ステージ35に、ウエハ61をセットし固定金具63でウエハ61の周辺を押さえて固定し、ウエハ61の表面にプローブ64を押し当て、カーブトレーサ65にて、FS−IGBTが形成されているチップ予定箇所60aのコレクタ・エミッタ間に電圧を印加して漏れ電流を測定する。印加する電圧は空乏層がnフィールドストップ層9に到達する電圧とする。
【0016】
このとき、図8に示すように、ステージ35にゴミ36が付着していると、このゴミ36の上にウエハ61が乗り、プローブ64で押さえたときに、ゴミ36が大きいとウエハ61が大きく歪みクラックが入って、その箇所のチップ60aを不良チップにしてしまう。またゴミ36が小さい場合でも、ゴミ36に乗り上げた箇所のnフィールドストップ層9が固定金具63による圧力で歪みが導入され、空乏層がnフィールドストップ層9に達した段階でピエゾ効果により、漏れ電流が急増して不良チップと誤判定される。しかし、ゴミ36を除去して歪みを解消した後で測定すると、良品チップに戻る。このゴミ36の主なものは、製造工程中に発生したウエハの周辺の欠け(シリコン粒子)などである。nフィールドストップ層9の層厚が厚い場合はピエゾ効果による漏れ電流の増加は起こらない。
【0017】
図9は、漏れ電流誤判定率とチップサイズの関係を示した図である。ウエハ状態での各チップ60aを図8のようにしてもれ電流を測定する。チップサイズとはチップ予定箇所60aのサイズである。
【0018】
図9から分かるように、チップサイズが8mm□以上になると急激に増加し、11mm□になると誤測定率は60%以上になる。
尚、漏れ電流の誤判定率とは、ウエハ61での測定したときの漏れ電流の不良数をA、その不良となった箇所のチップをチップ化して測定したときの漏れ電流の不良数をBとした場合、((A−B)/A))×100で%表示したものである。初めに、ウエハ61の段階で各チップ予定箇所60aに番地を付け、ウエハ61状態で各チップ予定箇所60aの漏れ電流を測定して不良数Aを出し、その後チップ化して、不良と判定された番地の付いたチップ60の漏れ電流を測定して不良数Bを出す。チップ予定箇所60aに番地付けることで、ウエハ61の段階で不良となったチップ予定箇所60aがチップ化後に良品になるチップ数を出すことができる。尚、チップ化時にワレやカケによる漏れ電流不良となったチップは計数から除外する。また、チップ60の漏れ電流測定に当たっては、チップ60と接触するステージはゴミを完全に除去した状態とする。チップ60を乗せるステージの大きさはチップ60の大きさとほぼ同じであり、ウエハ61を乗せるステージ35の大きさに比べて数十分の一以下と小さいため、ゴミの完全除去が可能となる。
【0019】
また、特許文献1によると、半導体ウエハの第1の主面(表面)に半導体素子が形成され、前記半導体ウエハの第2の主面(裏面)に電極膜が形成された半導体ウエハにおいて、前記第2の主面側にチタン層を介して金層を形成することで、薄仕上げの反りの小さな半導体ウエハを得ることができることが開示されている。
【0020】
また、特許文献2によると、ウエハの一方の面の表層部に素子形成用不純物拡散領域を形成し、その反対の面から研削加工してウエハを所定の厚さにし、外周部を残して所定の深さまでエッチングして薄膜化し、このエッチング面に不純物ドープドポリシリコン膜を形成し、このポリシリコン膜から不純物を拡散させ、コンタクト用不純物拡散領域を形成し、ポリシリコン膜に接するように裏面電極を形成することで、薄いウエハにおける強度的な不具合を回避できるとともに、より低温で裏面電極のコンタクトをとることができることが開示されている。尚、この裏面電極はウエハ状態ではポリシリコン膜側からチタン膜、ニッケル膜、金膜で構成されている。
【0021】
また、特許文献3によると、裏面にショトキー接合を有する縦型MOSFETにおいて、ショットキー接合を1500Åの膜厚のSi含有量が0.5%以上のAl−Si合金で形成することにより低損失化とコスト低減が図れることが開示されている。
【0022】
また、特許文献4によると、半導体チップとなるウエハであってその主表面および主裏面が半導体チップの主表面および主裏面と一致している半導体ウエハを用意し、半導体ウエハの主裏面に裏面電極を形成した後、この裏面電極を支持導体に固定した状態で、半導体ウエハの主表面に表面電極を形成した後、支持導体を取り外し、半導体ウエハをカットすることにより、半導体チップを形成することで、半導体チップとなる半導体ウエハの反りを極力抑制できることが開示されている。裏面電極は半導体側からチタン膜、ニッケル膜、金膜の3層からなる膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2004−103919号公報
【特許文献2】特開2003−282589号公報
【特許文献3】特開2001−135814号公報
【特許文献4】特開2005−244165号公報
【特許文献5】特開2006−059929号公報
【特許文献6】国際公開第2002/061845号パンフレット
【特許文献7】特開2003−069019号公報
【特許文献8】特開2002−299623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
前記の図6から図9で説明したように、裏面拡散層16が薄い場合には、特性測定のステージ35にゴミ36があると、ウエハ61のチップ予定箇所60aに割れや漏れ電流の誤判定が起こり、チップ良品率を低下させてしまう。ゴミ36の大きさが10μm以下の場合にはチップ予定箇所60aでのピエゾ効果により漏れ電流の誤判定の割合が多くなる。
【0025】
また、前記の特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4では、薄い裏面拡散層の場合に問題となるウエハ状態でのチップ予定箇所での漏れ電流の誤判定に関しては記載されていない。
【0026】
この発明は、前記の課題を解決して、特性測定用のステージにゴミがある場合でも、ウエハ状態でのチップ予定箇所のピエゾ効果による漏れ電流の誤判定が起こり難い半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記の目的を達成するために、半導体基板の第1主面側に形成した絶縁ゲート構造と、前記半導体基板の第2主面側に形成した裏面半導体層と裏面電極とを具備する半導体装置において、前記裏面半導体層の厚さは5μm以下で、前記裏面電極は、前記裏面半導体層と最外層の金属膜との間、0.3μm以上4μm以下の厚さを有する応力緩衝膜を含む積層膜で形成される構成とする。
【0028】
また、裏面半導体層が裏面拡散層もしくは裏面エピタキシャル層であるとよい。
また、前記応力緩衝膜が延性効果の大きい導電膜であるとよい。
また、前記導電膜が2wt%以下のSi(シリコン)を含有するAl−Si(アルミシリコン)膜であるとよい。
【0029】
また、前記裏面電極は、前記裏面半導体層から最外層の金属膜に向かって順に形成された、Al−Si膜,金属バリア膜,Ni膜の積層膜、あるいは、Ti膜,Al−Si膜,金属バリア膜,Ni膜の積層膜 を含むとよい。前記金属バリア膜はTi膜、Mo膜、W膜のいずれかであればよい。Al−Si膜が接する裏面半導体層の導電型が、p型のときは、その不純物濃度は1015cm−3と低くてもよい。しかし、n型のときは、不純物濃度を1019cm−3以上と高くする必要がある。また、チタン膜が裏面半導体層と接する場合には、裏面半導体層の導電型によらず不純物濃度は1019cm−3とするとオーミックコンタクトさせることができる。
【0030】
また、前記金属バリア膜は、Ti膜,Mo膜,W膜のいずれかであるとよい。
また、前記裏面半導体層が、FS−IGBTではフィールドストップ層と該フィールドストップ層と接して形成されるコレクタ層であり、ダイオードではカソード層であり、MOSFETではドレイン層である。
【0031】
また、前記第1主面と前記第2主面の間に印加される定格電圧で前記半導体基板内に広がる空乏層が前記裏面半導体層に到達する状態で動作させる半導体装置において、前記の構成とすることで、裏面半導体層が薄い場合でもゴミによるピエゾ効果による漏れ電流の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、裏面半導体層と最外層の金属膜との間に応力緩衝膜を挿入することで、ゴミによる応力を吸収して、ピエゾ効果による漏れ電流の誤判定を起こり難くすることができる。
【0033】
また、裏面半導体層と最外層の金属膜との間に応力緩衝膜を挿入することで、ゴミによるウエハの割れやカケを防止できてチップ良品率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の第1実施例の半導体装置の要部断面図
【図2】ステージに付着しているゴミによる歪みを吸収している様子を示す図
【図3】図1の半導体装置の製造方法であり、(a)〜(c)は工程順に示した要部製造工程断面図
【図4】Al−Si膜の厚さと漏れ電流の誤判定率およびウエハの反りの関係を示す図
【図5】NPT−IGBTの要部断面図
【図6】FS−IGBTの要部断面図
【図7】図6のFS−IGBTの製造方法を示す図であり、(a)〜(c)は工程順に示した要部製造工程断面図
【図8】ウエハ段階で耐圧特性を測定する様子を示した図
【図9】漏れ電流誤判定率とチップサイズの関係を示した図
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の実施の形態を以下の実施例にて説明する。
<実施例1>
図1は、この発明の第1実施例の半導体装置の要部断面図である。これは図6に相当するセル部の断面図であり、図6と同一部位には同一の符号を付した。またこの図はプレーナゲート型のFS−IGBTのセル部を示しているが、トレンチゲート型であっても、勿論、本実施例は適用できる。
【0036】
このFS−IGBTは、nドリフト層2と表面構造18と裏面構造19および支持導体22で構成される。表面構造18はn半導体基板1の表面層に形成されたpベース領域3と、このpベース領域3の表面層に形成されたnエミッタ領域4と、このnエミッタ領域4とn半導体基板1に挟まれたpベース領域3上にゲート絶縁膜5を介して形成されるゲート電極6と、このゲート電極6上に形成される層間絶縁膜7と、前記nエミッタ領域4とpベース領域3に接して層間絶縁膜7上に形成されるエミッタ電極8と、図示しない表面を被覆するポリイミド膜などの保護膜とで構成される。
【0037】
裏面構造19は、n半導体基板1の裏面側に形成したnフィールドストップ層9と、このnフィールドストップ層9の表面層に形成したpコレクタ層10とからなる裏面拡散層16(裏面半導体層)と、pコレクタ層10に接して最外層の金属まくに向かって順次積層される第1のチタン(Ti)膜11、Al−Si膜12、第2のチタン(Ti)膜13およびニッケル(Ni)膜14からなる裏面電極17で構成される。これらの各膜の厚さはそれぞれことなるがここでは単純に同じ厚さで描いている。裏面電極17は支持導体22とはんだ21で固着する。尚、裏面拡散層16は裏面エピタキシャル層であってもよい。
【0038】
前記のnフィールドストップ層9の厚は1μm程度であり、pコレクタ層10の厚さも1μm程度である。従って、nフィールドストップ層9とpコレクタ層10を合わせた裏面拡散層16の厚さは2μm程度となる。この裏面拡散層16の厚さが5μm超えると、ゴミによるピエゾ効果は小さくなり、漏れ電流の増大は大幅に抑制される。それは、裏面拡散層16が厚くなると歪みが小さくなることと、空乏層がnフィールドストップ層9内に発生した歪み箇所に届かなくなるためである。従って、裏面拡散層16の厚さが5μmを超える場合にはAl−Si膜12を介在させなくても十分誤判定率が小さくなる。
【0039】
前記のAl−Si膜12がゴミで生ずる応力を緩和してくれる応力緩衝膜である。このAl−Si膜12の厚さを0.3μm〜4μmとし、Siの含有量を2wt%以下とする。Siの含有量を0wt%とすると純アルミニウム膜となる。勿論、純アルミニウム膜であっても構わない。
【0040】
前記の第2のチタン膜13(またはモリブデン膜もしくはタングステン膜)ははんだ接合のときの熱でニッケル膜14とAl−Si膜12が反応しないようにするバリア膜であり、最表面には金膜または銀膜がニッケル膜14とはんだを接合させるための仲介膜として形成されている。ただし、図の例でははんだ21が溶融して消滅しているので図示されていない。この例では最外の金膜となる。
【0041】
また、図示しないが、nチャネルMOSFETやダイオードでは空乏層と接する裏面拡散層であるnドレイン層やnカソード層の不純物濃度は1018cm−3以上あり、第1のチタン膜11とオーミックコンタクトする。また不純物濃度が1019cm−3以上の場合は第1のチタン膜11省略してAl−Si膜も適用できる。また、裏面拡散層がp型の場合(例えば、FS−IGBTやpチャネルMOSFETなどの場合)には、裏面電極と接する裏面拡散層の不純物濃度が1015cm−3以上では第1のチタン膜11を除いて応力緩衝膜であるAl−Si膜10を用いてもよい。
【0042】
前記のことから、裏面拡散層16の層厚が5μm以下と薄い場合に(これを超えるとAl−Si膜12を挟まなくても誤判定率は小さくなる)、応力緩衝膜であるAl−Si膜12を第1および第2のチタン膜11、13の間に挟むことで、図2に示すように、ステージ35に付着しているゴミ36による歪みをAl−Si膜12で吸収して、漏れ電流の誤判定率を小さくすることができる。この場合のAl−Si膜12の膜厚を0.3μm〜4μmの範囲にすると効果的である。これは、図4から分かるように、0.3μm未満になると急激に誤判定率が上昇し、4μmを超えるとウエハの反りが8mmを超える大きさになり後工程にウエハを流すことが困難になるためである。
【0043】
つまり、前記のAl−Si膜12の膜厚が0.3μm〜4μmの範囲で効果が出るのは、裏面拡散層10の厚さが5μm以下、ウエハの直径が8インチ以下、ウエハの厚さが約80μm〜140μmの範囲の場合である。また、Al−Si膜12を挿入することで、ゴミ35によるウエハ31の割れやカケを防止できてチップ良品率を向上できる。
【0044】
ここでは、FS−IGBTを例に挙げて説明したが、FZウエハを用いて、MOSFETを製作し、その裏面拡散層であるnドレイン層を5μm以下に薄くした場合に前記実施例の裏面電極を適用すると、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0045】
また、ダイオードの裏面拡散層であるnカソード層を5μm以下に形成した場合もカソード電極に前記実施例の裏面電極を適用し、カソード電極を特性測定のステージに接して漏れ電流を測定する場合には、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0046】
図3は、図1の半導体装置の製造方法であり、同図(a)〜同図(c)は工程順に示した要部製造工程断面図である。これは図6に相当する。
同図(a)において、表面構造18を形成した後、ウエハ30aの裏面23aを研削で除去しウエハ30の厚さを140μmにする。
【0047】
同図(b)において、ウエハ30の裏面23に図示しない裏面拡散層19を形成し、裏面拡散層19のpコレクタ層10表面に第1のチタン膜11、Al−Si膜12(またはモリブデン膜もしくはタングステン膜)およびニッケル膜13を積層して裏面構造19を形成する。この裏面構造19の最表面のニッケル膜13上に金膜(または銀膜)を形成する。この金膜はニッケル膜14とはんだ21を接合させるための仲介膜でありはんだ21で接合した後ははんだ21に吸収されて消滅する。Al−Si膜12は2wt%のSiを含有し、その膜厚を0.3μm〜4μmの範囲で薄い方に設定する。表面構造18、裏面構造19および金膜を形成したウエハ31のスクライブライン32で囲まれた箇所がチップ20となる箇所(チップ予定箇所20a)である。ここでは、金膜は裏面構造19の面上に形成した膜として裏面構造19から外した。
【0048】
同図(c)において、スクライブライン32に沿ってウエハ31を切断してチップ20を形成する。その後、支持導体22(絶縁基板の銅パターンなど)にチップ20の裏面の金膜をはんだ21で固着する。前記したように、固着した後は金膜ははんだ21に吸収されて消滅する。
【0049】
図4は、Al−Si膜の厚さと漏れ電流の誤判定率およびウエハの反りの関係である。ウエハ内のチップサイズ(チップ予定箇所20a)は11mm□であり、ウエハ31の直径は6インチである。また定格電圧を印加して空乏層がnフィールドストップ層9に達する状態にして漏れ電流を測定する。nフィールドストップ層9とpコレクタ層10を合わせた裏面拡散層16の厚みは2μmである。尚、図示しないが裏面拡散層16の厚みが0.1μm程度でも同様の結果が得られている。
【0050】
Al−Si膜12が厚くなると、漏れ電流の誤判定率は低下して、ウエハ31の反りが大きくなるため、次工程に流せるウエハ31の反りの限界である8mm以下にするために、Al−Si膜の厚さは4μm以下とする。
【0051】
一方、Al−Si膜12が薄くなると、漏れ電流の誤判定率は増大してくるため、誤判定率を10%以下とするためには、Al−Si膜12を0.3mm以上とする必要がある。この誤判定率はチップサイズが13mm□となっても殆ど同じである。
【0052】
従って、Al−Si膜12の層厚を0.3mm〜4mmの範囲とし、このAl−Si膜12のSiの含有量を2wt%以下とする。勿論、純Al膜としても構わない。
また、図4は、ウエハ31の直径が6インチで厚さが140μmの場合であるが、ウエハ31の直径が8インチで厚さ140μmの場合では,反りが8mm以下となるAl−Si膜12の厚みは4μm以下となる。さらに、6インチのウエハで、厚みが100μm程度の場合は,反りが8mm以下となるAl−Si膜の厚みは2.5μm〜3μm以下である。つまり、ウエハ31の直径と厚さによって、Al−Si膜12の厚みを0.3mm〜4mmの範囲に設定することによりウエハ31の反りを8mm以下とすることができる。また、漏れ電流の誤判定率を10%以下とすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 n半導体基板
2 nドリフト領域
3 pベース領域
4 nエミッタ領域
5 ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 層間絶縁膜
8 エミッタ電極
9 nフィールドストップ層
10 pコレクタ層
11 第1のチタン膜
12 Al−Si膜
13 第2のチタン膜
14 ニッケル膜
16 裏面拡散層
17 裏面電極
18 表面構造
19 裏面構造
20 チップ
20a チップ予定個所
21 はんだ
22 支持導体
31 ウエハ(表面構造・裏面構造形成後)
32 スクライブライン
35 ステージ
36 ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1主面側に形成した絶縁ゲート構造と、前記半導体基板の第2主面側に形成した裏面半導体層と裏面電極とを具備する半導体装置において、
前記裏面半導体層の厚さは5μm以下で、
前記裏面電極は、前記裏面半導体層と最外層の金属膜との間に、0.3μm以上4μm以下の厚さを有する応力緩衝膜を含む積層膜で形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
裏面半導体層が裏面拡散層もしくは裏面エピタキシャル層であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記応力緩衝膜が延性効果の大きい導電膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電膜が純Al膜もしくは2wt%以下のSiを含有するAl−Si膜であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記裏面電極は、前記裏面半導体層から最外層の金属膜に向かって順に形成された、前記導電膜,金属バリア膜,Ni膜の積層膜、あるいは、Ti膜,前記導電膜,金属バリア膜,Ni膜の積層膜 を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のいずれか一項に
記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属バリア膜は、Ti膜,Mo膜,W膜のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記裏面半導体層が、FS−IGBTではフィールドストップ層と該フィールドストップ層と接して形成されるコレクタ層であり、ダイオードではカソード層であり、MOSFETではドレイン層であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1主面と前記第2主面の間に印加される定格電圧で前記半導体基板内に広がる空乏層が前記裏面半導体層に到達することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−129537(P2012−129537A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21423(P2012−21423)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2006−172426(P2006−172426)の分割
【原出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】