半導体装置
【課題】本発明は、SiC半導体からなるSBDを有し、歩留まりの高い半導体装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2のダイパットが互いに離間して配置されたパッケージと、第1のダイパット上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有し、ショットキー接合とpn接合が併設されたショットキーバリアダイオードと、ショットキーバリアダイオードと並列接続されて第2のダイパット上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオードとを備え、ショットキーバリアダイオードにおいてpn接合を構成する高濃度不純物領域とショットキー接合を構成するショットキー電極とが直接に接している。
【解決手段】第1及び第2のダイパットが互いに離間して配置されたパッケージと、第1のダイパット上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有し、ショットキー接合とpn接合が併設されたショットキーバリアダイオードと、ショットキーバリアダイオードと並列接続されて第2のダイパット上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオードとを備え、ショットキーバリアダイオードにおいてpn接合を構成する高濃度不純物領域とショットキー接合を構成するショットキー電極とが直接に接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアダイオードを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ショットキーバリアダイオード(SBD)は順方向電圧を下げやすく、スイッチング時のリカバリー電流が小さい。しかし、SBDの逆方向耐圧は低く、逆方向耐圧を高めると順方向電圧が上がるというトレードオフの特性を有する。一方、pn接合ダイオードはSBDに比べて逆方向耐圧が高いが、順方向電圧が高く、スイッチング時のリカバリー電流が大きい。
【0003】
これらの問題を改善するダイオードとして、ファーストリカバリーダイオード(FRD)がある。FRDでは、pn接合部分にバイポーラ電流の再結合中心が形成され、スイッチング時のリカバリー電流が抑制される。再結合中心を多く注入するとリカバリー電流は抑制されるが、逆方向電圧印加時のリーク電流が増加し、順方向電圧が上昇する。
【0004】
また、SBDにpn接合領域を付加し、ショットキー接合とpn接合を併設したMPS(Merged PiN Schottoky)構造のダイオードは、SBDにおいて順方向特性を改善した素子である。SBDはモノポーラ伝導素子であるため、順方向特性は線形であり、順方向サージ電流に対する破壊耐量(順方向サージ耐量)が小さい。一方、pn接合領域に形成されるpn接合ダイオードはバイポーラ伝導素子であり、電圧上昇に伴って順方向電流が非線形で急激に増大するため、SBDに比べて順方向サージ耐量が高い。つまり、MPS構造のダイオードでは、ショットキー接合とpn接合を併設することにより、順方向サージ耐量が改善される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
シリコン(Si)からなる半導体装置についてのみでなく、シリコンカーバイト(SiC)からなる半導体装置についても、上記と同様の特徴がある。SiCはSiに比べてバンドギャップが3倍程度大きく、絶縁破壊強度が10倍程度大きい。このため、Siからなる半導体装置に比べて、SiCからなる半導体装置では耐圧用の層の膜厚を大幅に薄く、高不純物濃度にすることができる。その結果、高耐圧、低抵抗の素子を形成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−53267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SiC半導体のSBDでは、Si半導体のFRDと同等以上の順方向電圧及び逆方向耐圧を得られ、リカバリー電流を大幅に低減できる。しかし、SiC半導体のSBDは、Si半導体のFRDに比べて、順方向電流が同一の場合の素子面積は1/10程度である。このため、SiC半導体のSBDの定格電流密度はSi半導体のFRDの10倍程度であり、更に大きな電流駆動が要求される順方向サージ耐量が定格電流の10倍程度と低い。
【0008】
SiC半導体のSBDについて順方向サージ耐量を高める方法として、MPS構造を採用することが有効である。ただし、MPS構造では、pn接合を構成する高濃度不純物領域と金属電極とのコンタクト抵抗を低減する必要がある。コンタクト抵抗が十分に小さくない場合、pn接合に加わる電圧が低下して、pn接合ダイオードがバイポーラ動作した際に大きなバイポーラ電流が流れにくいためである。このため、高濃度不純物領域と金属電極との間にコンタクト電極が形成される。
【0009】
しかし、ショットキー接合を形成する領域上にコンタクト電極を形成し、更にこのコンタクト電極を除去する工程により、ショットキー接合面の清浄度が低下する。その結果、SiC半導体のSBDを有する半導体装置の歩留まりが低下するという問題があった。
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明は、SiC半導体からなるSBDを有し、歩留まりの高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、(イ)第1のダイパットと第2のダイパットが互いに離間して配置されたパッケージと、(ロ)第1のダイパット上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有し、ショットキー接合とpn接合が併設されたショットキーバリアダイオードと、(ハ)ショットキーバリアダイオードと並列接続されて第2のダイパット上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオードとを備え、ショットキーバリアダイオードにおいてpn接合を構成する高濃度不純物領域とショットキー接合を構成するショットキー電極とが直接に接している半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SiC半導体からなるSBDを有し、歩留まりの高い半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る半導体装置のSBDの構造を示す模式的な断面図である。
【図3】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図4】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図5】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図6】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図7】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図8】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図9】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【図10】比較例のSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図11】比較例のSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図12】図2に示したSBDの特性を説明するためのグラフであり、図12(a)は比較例のリーク電流のばらつきを示し、図12(b)は図2に示したSBDのリーク電流のばらつきを示す。
【図13】比較例及び図2に示したSBDのリーク電流の分布を示すグラフである。
【図14】各種の半導体装置の順方向特性を示すグラフである。
【図15】本発明の実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。
【図16】図16(a)は図1のA−A方向に沿った断面図であり、図16(b)は図1のB−B方向に沿った断面図である。
【図17】各種の半導体装置のサージ耐量を示す表である。
【図18】本発明の実施形態に係る半導体装置の他の構成を示す模式図である。
【図19】図19(a)は図18のA−A方向に沿った断面図であり、図19(b)は図18のB−B方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
本発明の実施形態に係る半導体装置1は、図1に示すように、第1のダイパット101と第2のダイパット102が互いに離間して配置されたパッケージ100と、第1のダイパット101上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有するショットキーバリアダイオード10と、ショットキーバリアダイオード10と並列接続されて第2のダイパット102上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオード20とを備える。後述するように、ショットキーバリアダイオード10においてpn接合を構成する高濃度不純物領域とショットキー接合を構成するショットキー電極とは、直接に接している。
【0017】
まず、ショットキーバリアダイオード10について説明する。図2に示すように、SiCからなる第1導電型の高濃度不純物基板111上にSiCからなる第1導電型の半導体層112が積層されて、第1導電型の半導体積層体11が形成されている。半導体層112の周辺領域の上面の一部に、複数の第2導電型の不純物領域12が互いに離間して埋め込まれている。不純物領域12のうち、半導体層112の中央部に近い領域に形成された不純物領域12aの上面の一部に、第2導電型の高濃度不純物領域13が埋め込まれている。
【0018】
更に、半導体層112の上面の外縁部に表面保護膜14が配置され、表面保護膜14の開口部で半導体層112に接してショットキー電極15が表面保護膜14上に配置されている。表面保護膜14の開口部の周辺部において、高濃度不純物領域13とショットキー電極15とが接している。ショットキー電極15上に、表面電極16が配置されている。表面電極16の中央領域が露出するように、表面電極16の上面の周辺、及びショットキー電極15と表面電極16の側面を覆って素子保護膜17が配置されている。また、高濃度不純物基板111の半導体層112が形成された面と対向する面に、裏面電極18が形成されている。
【0019】
第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。すなわち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。ここでは、第1導電型がn型、第2導電型がp型であるとする。したがって、ショットキーバリアダイオード10において、表面電極16がアノード端子、裏面電極18がカソード端子である。
【0020】
ショットキーバリアダイオード10では、不純物領域12の形成された領域の残余の領域において半導体層112とショットキー電極15とが接触する領域にショットキーバリアダイオードが形成されている。ショットキーバリアダイオードが形成される領域を、「ショットキー接合部分」という。また、高濃度不純物領域13が埋め込まれた不純物領域12aと半導体層112とが接触する領域に、pn接合ダイオードが形成されている。pn接合ダイオードが形成される領域を、「pn接合部分」という。なお、不純物領域12のうち、半導体層112の上面の周辺で表面保護膜14と接する不純物領域12bは、ガードリングとして機能する。
【0021】
一般的に、MPS構造を有する半導体装置では、pn接合ダイオードがバイポーラ動作することによって、SBD単体に比べて順方向サージ耐量が改善される。即ち、n型半導体層にp型半導体層から正孔が注入されることにより、n型半導体層中の電子が本来の不純物濃度以上の高濃度になる。これにより半導体装置に大電流が流れて、順方向サージ耐量が改善される。
【0022】
ショットキーバリアダイオード10においては、pn接合部分の半導体積層体11の上面にショットキー電極15が直接に配置されている。即ち、pn接合部分とショットキー接合部分に渡って、半導体積層体11の上面にショットキー電極15が連続的に形成されている。したがって、pn接合部分を形成する高濃度不純物領域13とショットキー接合部分を形成するショットキー電極15とは直接に接しており、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極は形成されていない。
【0023】
図2に示したショットキーバリアダイオード10の製造方法の例を、図3から図9を参照して説明する。
【0024】
図3に示すように、SiCからなるn型の高濃度不純物基板111上に、所望の耐圧に適した濃度のn型の半導体層112を形成して、半導体積層体11を構成する。例えば、高濃度不純物基板111は不純物濃度が5×1017〜5×1018cm-3程度のSiC基板であり、半導体層112はSiC基板上にエピタキシャル成長された膜厚4μm〜50μm、不純物濃度1×1015〜5×1016cm-3程度のSiC半導体層である。
【0025】
図4に示すように、例えばアルミニウム(Al)などのp型の不純物をイオン注入して、p型の不純物領域12を半導体層112に形成する。不純物領域12を形成するイオン注入条件は、例えば加速エネルギー500keV、ドーズ量2×1013cm-2でAlイオンを注入する。
【0026】
次いで、図5に示すように、pn接合部分の不純物領域12aの表面にイオン注入などによって高濃度不純物領域13を形成する。高濃度不純物領域13を形成するためのAlイオンのイオン注入条件は、例えば加速エネルギー50keV、100keV、150keVで各ドーズ量5×1014cm-2、1×1015cm-2、1×1015cm-2である。イオン注入された層の活性化のために、1800℃、10分間程度の熱処理を行う。
【0027】
活性化後の表面ダメージと以降の工程での表面保護を目的として、図6に示すように、半導体積層体11の表面に表面保護膜14を形成し、高濃度不純物基板111の裏面に裏面保護膜141を形成する。表面保護膜14及び裏面保護膜141は、例えば膜厚50nmの熱酸化膜である。そして、図7に示すように、裏面保護膜141を除去した後、高濃度不純物基板111の裏面に裏面電極18を形成する。裏面電極18には、高濃度不純物基板111とオーミック接合を形成する金属材料などを採用可能である。例えば膜厚100nmのNi膜を形成し、窒素(N2)雰囲気中で1000℃、5分間のアニールを行って、裏面電極18を形成する。
【0028】
その後、図8に示すようにショットキー接合部分及びpn接合部分の表面保護膜14を除去して開口部140を形成する。そして、図9に示すように、開口部140で半導体積層体11と接するように、ショットキー電極15を形成する。ショットキー電極15には、半導体層112との界面にショットキーバリア接合を形成する金属材料などを採用可能である。例えば、チタン(Ti)膜、ニッケル(Ni)膜、モリブデン(Mo)膜、白金(Pt)膜などをショットキー電極15に採用可能である。ショットキー電極15の膜厚は、100nm程度である。
【0029】
更に、ショットキー電極15上に表面電極16を形成する。表面電極16には、例えば膜厚5μm程度のAl膜などを採用可能である。
【0030】
次いで、窒化シリコン(SiN)膜などを素子保護膜17として形成する。例えば、SiH4とNH3を用いたプラズマCVD法により、膜厚500nm程度のSiN膜を形成する。そして、表面電極16上の素子保護膜17を除去して表面電極16の上面を露出させて、図2に示したショットキーバリアダイオード10が完成する。
【0031】
上記に説明したショットキーバリアダイオード10の製造方法とは異なり、一般的には、MPS構造の半導体装置では、pn接合部分の高濃度不純物領域13とショットキー電極15とのコンタクト抵抗を低減するために、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極が形成される。
【0032】
具体的には、図6に示したように高濃度不純物領域13が形成された半導体積層体11の上面全体に表面保護膜14を形成した後、図10に示すように、高濃度不純物領域13上で表面保護膜14に開口部を形成し、この開口部を埋め込むようにして高濃度不純物領域13上にコンタクト電極150を形成する。例えば、Ti膜、Al膜、Ni膜などの金属膜を形成した後、この金属膜をシリサイド化してコンタクト電極150を形成する。
【0033】
コンタクト電極150の抵抗値を低減するために例えば1000℃程度でのアニールを行った後、図11に示すように、ショットキー接合部分上の表面保護膜14を除去して開口部140を形成する。その後、図9と同様にショットキー電極15と表面電極16を形成する。その結果、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極150が配置される。
【0034】
これに対して、図2に示したショットキーバリアダイオード10では、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極は配置されない。つまり、ショットキー接合部分にコンタクト電極を形成し、更に除去する工程がないため、例えばコンタクト電極用の材料がショットキー接合部分に残ることなどによって、ショットキー障壁が低くなるなどの問題が生じない。このため、ショットキー電極15形成前の無機洗浄などにより、ショットキー接合部分の清浄度を十分に高くすることができる。その結果、ショットキーバリアダイオード10の製造歩留まりが向上する。
【0035】
図12(a)に、SiCからなり、コンタクト電極150を有するMPS構造の半導体装置(以下において、「MPS素子」という。)の逆方向リーク電流の例を示す。図12(b)に、ショットキーバリアダイオード10の逆方向リーク電流の例を示す。図12(a)と図12(b)とを比較して明らかなように、ショットキーバリアダイオード10によれば、逆方向リーク電流のバラツキが小さく抑えられている。
【0036】
図13に、逆方向電圧が600Vでの逆方向リーク電流分布の例を示す。図13において、黒丸がショットキーバリアダイオード10の特性A、白丸がMPS素子の特性Bである。例えば1×10-6Aを逆方向リーク電流の上限とした場合、MPS素子の歩留まりが25%程度であるのに対し、図2に示したショットキーバリアダイオード10の歩留まりは80%程度であり、3倍以上である。
【0037】
更に、ショットキーバリアダイオード10では、pn接合部分はショットキー接合部分の周囲にのみ形成され、更に、コンタクト電極150は形成されない。これに対し、一般的なMPS構造では、pn接合部分とショットキー接合部分が混在し、pn接合部分にコンタクト電極150を形成する。このため、ショットキーバリアダイオード10では、一般的なMPS構造の半導体装置と比較してラフな加工精度での加工が可能であり、製造工程を簡略化することもできる。
【0038】
図14に、ショットキーバリアダイオード、pn接合ダイオード、MPS素子、及び図1に示した半導体装置1の、順方向特性の例を示す。図14において、特性Aがショットキーバリアダイオード、特性BがMPS素子、特性Cがpn接合ダイオード、特性Dが半導体装置1の順方向特性である。
【0039】
MPS素子は、低電圧ではショットキー接合部分を流れる電流(以下において、「SBD電流」という。)が支配的で、高電圧ではpn接合部分を流れる電流(以下において、「pn接合電流」という。)が支配的である。これは、n型基板及びn型半導体層を共通カソードとして使用しているためである。低電圧ではショットキー接合がオンし、SBD電流が流れて基板抵抗による電圧降下が起こる。この電圧降下により、pn接合に印加される電圧が、pn接合ダイオードが単独で動作する場合と比べて低下する。その結果、pn接合電流が流れにくく、SBD電流が支配的となる。pn接合に加わる電圧が上昇してpn接合部分に電流が流れ始めると、n型の半導体層112にp型の高濃度不純物領域13からホール(正孔)注入が起こり、半導体層112の抵抗が減少する。これにより、高電圧では、pn接合電流が支配的になる。
【0040】
一方、ショットキーバリアダイオード10においては、ショットキー電極15と高濃度不純物領域13とのコンタクト抵抗が高い。このため、pn接合に加わる電圧が低下し、pn接合ダイオードがバイポーラ動作した後に流れるバイポーラ電流が流れにくい。その結果、ショットキーバリアダイオード10単体では順方向サージ耐量が低下する。
【0041】
しかし、半導体装置1は、pn接合部分にコンタクト電極を形成しないショットキーバリアダイオード10と、順方向サージ耐量が十分に大きなシリコン基板のpn接合ダイオード20とが、並列接続された構造を有する。したがって、半導体装置1では、並列接続されたショットキーバリアダイオード10とpn接合ダイオード20にそれぞれの面積に応じた順方向電流が流れ、その和が半導体装置1に流れる総電流である。このため、半導体装置1では、MPS素子よりも順方向サージ耐量が向上する。
【0042】
なお、ショットキーバリアダイオード10においては、pn接合部分が形成されることによって逆方向耐圧が向上する。特に、電界が集中するショットキー接合部分の周囲に、pn接合部分が形成されている。このとき、pn接合部分の不純物領域12aの電位がフローティングであると外周部での電界集中を緩和しづらいため、高濃度不純物領域13はショットキー電極15と電気的に接続されている。
【0043】
半導体装置1のpn接合ダイオード20には、順方向サージ耐量が十分に大きなpn接合ダイオードが使用される。更に、ショットキーバリアダイオード10の特性に合わせて、最適な特性のpn接合ダイオード20が選択される。例えば、MPS素子と同等の順・逆方向特性やスイッチング特性を有するpn接合ダイオード20が使用される。
【0044】
図15に、図14に示した特性Dを有する半導体装置1の等価回路図を示す。図15に示したpn接合ダイオード20は、ショットキーバリアダイオード10と並列に、複数のpn接合ダイオード素子を直列接続した構成である。具体的には、pn接合ダイオード素子201〜203が直列接続されて、pn接合ダイオード20が構成されている。3つのpn接合ダイオード素子を用いてpn接合ダイオード20を構成したのは、例えば600V以上の逆方向耐圧を有するショットキーバリアダイオード10の順方向電圧が約1.5V以上であるのに対し、pn接合ダイオード素子201〜203それぞれの順方向電圧が0.7V程度であるためである。pn接合ダイオード20はサージ電流が流れる場合にのみ導通状態になればよいため、pn接合ダイオード20の順方向電圧をショットキーバリアダイオード10の順方向電圧よりも大きくすることが好ましい。このため、pn接合ダイオード20においては2V以上で順方向電流が流れるように、pn接合ダイオード素子を3個直列に接続する必要がある。
【0045】
したがって、ショットキーバリアダイオード10の特性に応じてpn接合ダイオード20を構成するpn接合ダイオード素子の数は選択され、その数が3個に限られないことはもちろんである。なお、各pn接合ダイオード素子の逆方向耐圧は200V以上とする。これにより、pn接合ダイオード20の逆方向耐圧をショットキーバリアダイオード10の逆方向耐圧と同等にできる。
【0046】
更に、半導体装置1の逆方向サージ耐量も向上させるためには、ショットキーバリアダイオード10よりも低い電圧でpn接合ダイオード20がアバランシェ降伏する必要がある。例えば、ショットキーバリアダイオード10のアバランシェ耐圧が800Vである場合、pn接合ダイオード20が700V程度でアバランシェ降伏するように耐圧設計を行う。
【0047】
なお、Si半導体を用いてpn接合ダイオード20を形成した場合、チップ面積を大きくすることにより、SiC半導体を用いたSBDと比較して順方向サージ電流の電流密度を一桁程度低減することができる。また、pn接合ダイオード20を複数のpn接合ダイオード素子を直列接続した構成にすることにより、順方向サージ電流が流れた場合の放熱面積を大きくすることができる。このため、順方向サージ耐量を大幅に向上することができる。
【0048】
図16(a)に、図1のA−A方向に沿った断面図を示す。また、図16(b)に、図1のB−B方向に沿った断面図を示す。ショットキーバリアダイオード10のカソード端子10kである裏面電極18が、半田31を介して第1のダイパット101に電気的に接続されている。また、ショットキーバリアダイオード10のアノード端子10aである表面電極16と半導体装置1のアノード端子103とが、ワイヤ41により電気的に接続されている。第1のダイパット101は、半導体装置1のカソード端子を兼ねている。
【0049】
また、図16(a)及び図16(b)に示すように、pn接合ダイオード素子201、202が絶縁シート50を介して第2のダイパット102に搭載されている。pn接合ダイオード素子201のカソード端子201kとpn接合ダイオード素子202のアノード端子202aとは、絶縁シート50上の半田321によって電気的に接続されている。pn接合ダイオード素子201のアノード端子201aは、ワイヤ421によって半導体装置1のアノード端子103に接続されている。また、pn接合ダイオード素子202のカソード端子202kは、ワイヤ422によってpn接合ダイオード素子203のアノード端子203aに接続されている。pn接合ダイオード素子203のカソード端子203kは、半田322を介して第2のダイパット102と電気的に接続されている。第2のダイパット102は、ワイヤ423によって第1のダイパット101と電気的に接続されている。
【0050】
上記のように、半導体装置1では、第2のダイパット102上で直列接続されたpn接合ダイオード素子201〜203と、ショットキーバリアダイオード10とが、並列接続されている。
【0051】
ショットキーバリアダイオード10が搭載される第1のダイパット101と、pn接合ダイオード20が搭載される第2のダイパット102とは、物理的に分離されている。これにより、ショットキーバリアダイオード10から発生する熱がpn接合ダイオード20に伝導するのが抑制され、pn接合ダイオード20の動作が安定する。
【0052】
例えば、定常動作中にデューティ50%の100Aのパルス電流が半導体装置1に流れた場合、順方向電圧が1.5Vのショットキーバリアダイオード10では平均75W程度の電力消費がある。パッケージ100の放熱が2℃/Wであると、室温25℃でのショットキーバリアダイオード10のチップ温度は175℃である。第1のダイパット101と第2のダイパット102とが接触した状態では、第1のダイパット101と第2のダイパット102とはほぼ同温である。このため、pn接合ダイオード20のチップ温度が175℃近くまで上昇する。Si半導体素子の場合、150℃以上の高温では半導体特性が失われ、動作不良を起こす。したがって、第1のダイパット101と第2のダイパット102とが分離されていることは、半導体装置1を正常動作させる上で有効である。
【0053】
図17に、逆方向耐圧が600V、順方向定格電流が10Aである半導体装置の順方向サージ電流及び逆方向サージ耐量の比較を示す。図17で、素子「SiC−SBD」はSiC半導体からなるSBDであり、ショットキーバリアダイオード10に相当する。素子「SiC−MPS」はSiC半導体からなるMPS素子である。素子「Si−PN」はSi半導体からなるpn接合ダイオードであり、pn接合ダイオード20に相当する。
【0054】
図17においては、順方向の最大サージ電流を、順方向定格電流に対する倍数で示している。SiC−SBDの逆方向サージ耐量が100mJ/cm2であるのに対し、SiC−MPSの逆方向サージ耐量は2J/cm2であり、SiC−SBDの20倍程度である。更に、Si−PNの逆方向サージ耐量は20J/cm2であり、SiC−MPSの10倍である。同一電流ではSi半導体素子の素子面積がSiC半導体素子よりも約10倍大きいため、電流密度が1/10以下になり、サージ耐量が向上する。
【0055】
図18に、本発明の実施形態の変形例に係る半導体装置1を示す。図18に示した例では、pn接合ダイオード20を構成するpn接合ダイオード素子201〜203が、第2のダイパット102を分割したダイパット102a〜102cにそれぞれ搭載されている。図19(a)に図18のA−A方向に沿った断面図を示し、図19(b)に図18のB−B方向に沿った断面図を示す。
【0056】
図19(a)及び図19(b)に示すように、pn接合ダイオード素子201のカソード端子201kが半田331を介してダイパット102aに接続され、pn接合ダイオード素子202のカソード端子202kが半田332を介してダイパット102bに接続され、pn接合ダイオード素子203のカソード端子203kが半田333を介してダイパット102cに接続されている。pn接合ダイオード素子201のアノード端子201aはワイヤ431によってアノード端子103に接続され、pn接合ダイオード素子202のアノード端子202aはワイヤ432によってダイパット102aに接続され、pn接合ダイオード素子203のアノード端子203aはワイヤ433によってダイパット102bに接続されている。更に、ワイヤ434によってダイパット102cと第1のダイパット101が接続されている。これにより、直列接続されたpn接合ダイオード素子201〜203と、ショットキーバリアダイオード10とが、並列接続される。
【0057】
図18に示した半導体装置1では、pn接合ダイオード素子201〜203は絶縁シートを介さずにダイパット102a〜102cにそれぞれ搭載されている。このため、放熱効率が高い。したがって、図18に示した半導体装置1は高温時の安定性が高い。
【0058】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る半導体装置1では、SiCからなる半導体層を有するショットキーバリアダイオード10と、Siからなる半導体層を有するpn接合ダイオード20とが並列接続されて、整流機能を実現している。半導体装置1にサージ電流が流れた場合のバイポーラ動作は、pn接合ダイオード20で行われる。このため、ショットキーバリアダイオード10におけるコンタクト電極は不要である。したがって、ショットキーバリアダイオード10の製造において、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極を形成する工程及びこのコンタクト電極を削除する工程は行われない。その結果、ショットキーバリアダイオード10の歩留まりを向上させることができる。
【0059】
したがって、半導体装置1によれば、SiC半導体からなるショットキーバリアダイオード10を有し、且つ歩留まりの高い半導体装置を提供することができる。
【0060】
また、ショットキーバリアダイオード10を第1のダイパット101に搭載し、pn接合ダイオード20を第2のダイパット102に搭載することにより、ショットキーバリアダイオード10の発熱によってpn接合ダイオード20が動作不良を起こすことを防止できる。つまり、第1のダイパット101と第2のダイパット102とを分離することにより、半導体装置1の動作をより安定させることができる。
【0061】
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…半導体装置
10…ショットキーバリアダイオード
11…半導体積層体
12…不純物領域
13…高濃度不純物領域
14…表面保護膜
15…ショットキー電極
16…表面電極
17…素子保護膜
18…裏面電極
20…pn接合ダイオード
50…絶縁シート
100…パッケージ
101…第1のダイパット
102…第2のダイパット
102a〜102c…ダイパット
111…高濃度不純物基板
112…半導体層
141…裏面保護膜
150…コンタクト電極
201〜203…pn接合ダイオード素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアダイオードを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ショットキーバリアダイオード(SBD)は順方向電圧を下げやすく、スイッチング時のリカバリー電流が小さい。しかし、SBDの逆方向耐圧は低く、逆方向耐圧を高めると順方向電圧が上がるというトレードオフの特性を有する。一方、pn接合ダイオードはSBDに比べて逆方向耐圧が高いが、順方向電圧が高く、スイッチング時のリカバリー電流が大きい。
【0003】
これらの問題を改善するダイオードとして、ファーストリカバリーダイオード(FRD)がある。FRDでは、pn接合部分にバイポーラ電流の再結合中心が形成され、スイッチング時のリカバリー電流が抑制される。再結合中心を多く注入するとリカバリー電流は抑制されるが、逆方向電圧印加時のリーク電流が増加し、順方向電圧が上昇する。
【0004】
また、SBDにpn接合領域を付加し、ショットキー接合とpn接合を併設したMPS(Merged PiN Schottoky)構造のダイオードは、SBDにおいて順方向特性を改善した素子である。SBDはモノポーラ伝導素子であるため、順方向特性は線形であり、順方向サージ電流に対する破壊耐量(順方向サージ耐量)が小さい。一方、pn接合領域に形成されるpn接合ダイオードはバイポーラ伝導素子であり、電圧上昇に伴って順方向電流が非線形で急激に増大するため、SBDに比べて順方向サージ耐量が高い。つまり、MPS構造のダイオードでは、ショットキー接合とpn接合を併設することにより、順方向サージ耐量が改善される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
シリコン(Si)からなる半導体装置についてのみでなく、シリコンカーバイト(SiC)からなる半導体装置についても、上記と同様の特徴がある。SiCはSiに比べてバンドギャップが3倍程度大きく、絶縁破壊強度が10倍程度大きい。このため、Siからなる半導体装置に比べて、SiCからなる半導体装置では耐圧用の層の膜厚を大幅に薄く、高不純物濃度にすることができる。その結果、高耐圧、低抵抗の素子を形成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−53267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SiC半導体のSBDでは、Si半導体のFRDと同等以上の順方向電圧及び逆方向耐圧を得られ、リカバリー電流を大幅に低減できる。しかし、SiC半導体のSBDは、Si半導体のFRDに比べて、順方向電流が同一の場合の素子面積は1/10程度である。このため、SiC半導体のSBDの定格電流密度はSi半導体のFRDの10倍程度であり、更に大きな電流駆動が要求される順方向サージ耐量が定格電流の10倍程度と低い。
【0008】
SiC半導体のSBDについて順方向サージ耐量を高める方法として、MPS構造を採用することが有効である。ただし、MPS構造では、pn接合を構成する高濃度不純物領域と金属電極とのコンタクト抵抗を低減する必要がある。コンタクト抵抗が十分に小さくない場合、pn接合に加わる電圧が低下して、pn接合ダイオードがバイポーラ動作した際に大きなバイポーラ電流が流れにくいためである。このため、高濃度不純物領域と金属電極との間にコンタクト電極が形成される。
【0009】
しかし、ショットキー接合を形成する領域上にコンタクト電極を形成し、更にこのコンタクト電極を除去する工程により、ショットキー接合面の清浄度が低下する。その結果、SiC半導体のSBDを有する半導体装置の歩留まりが低下するという問題があった。
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明は、SiC半導体からなるSBDを有し、歩留まりの高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、(イ)第1のダイパットと第2のダイパットが互いに離間して配置されたパッケージと、(ロ)第1のダイパット上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有し、ショットキー接合とpn接合が併設されたショットキーバリアダイオードと、(ハ)ショットキーバリアダイオードと並列接続されて第2のダイパット上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオードとを備え、ショットキーバリアダイオードにおいてpn接合を構成する高濃度不純物領域とショットキー接合を構成するショットキー電極とが直接に接している半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SiC半導体からなるSBDを有し、歩留まりの高い半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る半導体装置のSBDの構造を示す模式的な断面図である。
【図3】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図4】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図5】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図6】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図7】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図8】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図9】図2に示したSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【図10】比較例のSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図11】比較例のSBDの製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図12】図2に示したSBDの特性を説明するためのグラフであり、図12(a)は比較例のリーク電流のばらつきを示し、図12(b)は図2に示したSBDのリーク電流のばらつきを示す。
【図13】比較例及び図2に示したSBDのリーク電流の分布を示すグラフである。
【図14】各種の半導体装置の順方向特性を示すグラフである。
【図15】本発明の実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。
【図16】図16(a)は図1のA−A方向に沿った断面図であり、図16(b)は図1のB−B方向に沿った断面図である。
【図17】各種の半導体装置のサージ耐量を示す表である。
【図18】本発明の実施形態に係る半導体装置の他の構成を示す模式図である。
【図19】図19(a)は図18のA−A方向に沿った断面図であり、図19(b)は図18のB−B方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
本発明の実施形態に係る半導体装置1は、図1に示すように、第1のダイパット101と第2のダイパット102が互いに離間して配置されたパッケージ100と、第1のダイパット101上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有するショットキーバリアダイオード10と、ショットキーバリアダイオード10と並列接続されて第2のダイパット102上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオード20とを備える。後述するように、ショットキーバリアダイオード10においてpn接合を構成する高濃度不純物領域とショットキー接合を構成するショットキー電極とは、直接に接している。
【0017】
まず、ショットキーバリアダイオード10について説明する。図2に示すように、SiCからなる第1導電型の高濃度不純物基板111上にSiCからなる第1導電型の半導体層112が積層されて、第1導電型の半導体積層体11が形成されている。半導体層112の周辺領域の上面の一部に、複数の第2導電型の不純物領域12が互いに離間して埋め込まれている。不純物領域12のうち、半導体層112の中央部に近い領域に形成された不純物領域12aの上面の一部に、第2導電型の高濃度不純物領域13が埋め込まれている。
【0018】
更に、半導体層112の上面の外縁部に表面保護膜14が配置され、表面保護膜14の開口部で半導体層112に接してショットキー電極15が表面保護膜14上に配置されている。表面保護膜14の開口部の周辺部において、高濃度不純物領域13とショットキー電極15とが接している。ショットキー電極15上に、表面電極16が配置されている。表面電極16の中央領域が露出するように、表面電極16の上面の周辺、及びショットキー電極15と表面電極16の側面を覆って素子保護膜17が配置されている。また、高濃度不純物基板111の半導体層112が形成された面と対向する面に、裏面電極18が形成されている。
【0019】
第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。すなわち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。ここでは、第1導電型がn型、第2導電型がp型であるとする。したがって、ショットキーバリアダイオード10において、表面電極16がアノード端子、裏面電極18がカソード端子である。
【0020】
ショットキーバリアダイオード10では、不純物領域12の形成された領域の残余の領域において半導体層112とショットキー電極15とが接触する領域にショットキーバリアダイオードが形成されている。ショットキーバリアダイオードが形成される領域を、「ショットキー接合部分」という。また、高濃度不純物領域13が埋め込まれた不純物領域12aと半導体層112とが接触する領域に、pn接合ダイオードが形成されている。pn接合ダイオードが形成される領域を、「pn接合部分」という。なお、不純物領域12のうち、半導体層112の上面の周辺で表面保護膜14と接する不純物領域12bは、ガードリングとして機能する。
【0021】
一般的に、MPS構造を有する半導体装置では、pn接合ダイオードがバイポーラ動作することによって、SBD単体に比べて順方向サージ耐量が改善される。即ち、n型半導体層にp型半導体層から正孔が注入されることにより、n型半導体層中の電子が本来の不純物濃度以上の高濃度になる。これにより半導体装置に大電流が流れて、順方向サージ耐量が改善される。
【0022】
ショットキーバリアダイオード10においては、pn接合部分の半導体積層体11の上面にショットキー電極15が直接に配置されている。即ち、pn接合部分とショットキー接合部分に渡って、半導体積層体11の上面にショットキー電極15が連続的に形成されている。したがって、pn接合部分を形成する高濃度不純物領域13とショットキー接合部分を形成するショットキー電極15とは直接に接しており、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極は形成されていない。
【0023】
図2に示したショットキーバリアダイオード10の製造方法の例を、図3から図9を参照して説明する。
【0024】
図3に示すように、SiCからなるn型の高濃度不純物基板111上に、所望の耐圧に適した濃度のn型の半導体層112を形成して、半導体積層体11を構成する。例えば、高濃度不純物基板111は不純物濃度が5×1017〜5×1018cm-3程度のSiC基板であり、半導体層112はSiC基板上にエピタキシャル成長された膜厚4μm〜50μm、不純物濃度1×1015〜5×1016cm-3程度のSiC半導体層である。
【0025】
図4に示すように、例えばアルミニウム(Al)などのp型の不純物をイオン注入して、p型の不純物領域12を半導体層112に形成する。不純物領域12を形成するイオン注入条件は、例えば加速エネルギー500keV、ドーズ量2×1013cm-2でAlイオンを注入する。
【0026】
次いで、図5に示すように、pn接合部分の不純物領域12aの表面にイオン注入などによって高濃度不純物領域13を形成する。高濃度不純物領域13を形成するためのAlイオンのイオン注入条件は、例えば加速エネルギー50keV、100keV、150keVで各ドーズ量5×1014cm-2、1×1015cm-2、1×1015cm-2である。イオン注入された層の活性化のために、1800℃、10分間程度の熱処理を行う。
【0027】
活性化後の表面ダメージと以降の工程での表面保護を目的として、図6に示すように、半導体積層体11の表面に表面保護膜14を形成し、高濃度不純物基板111の裏面に裏面保護膜141を形成する。表面保護膜14及び裏面保護膜141は、例えば膜厚50nmの熱酸化膜である。そして、図7に示すように、裏面保護膜141を除去した後、高濃度不純物基板111の裏面に裏面電極18を形成する。裏面電極18には、高濃度不純物基板111とオーミック接合を形成する金属材料などを採用可能である。例えば膜厚100nmのNi膜を形成し、窒素(N2)雰囲気中で1000℃、5分間のアニールを行って、裏面電極18を形成する。
【0028】
その後、図8に示すようにショットキー接合部分及びpn接合部分の表面保護膜14を除去して開口部140を形成する。そして、図9に示すように、開口部140で半導体積層体11と接するように、ショットキー電極15を形成する。ショットキー電極15には、半導体層112との界面にショットキーバリア接合を形成する金属材料などを採用可能である。例えば、チタン(Ti)膜、ニッケル(Ni)膜、モリブデン(Mo)膜、白金(Pt)膜などをショットキー電極15に採用可能である。ショットキー電極15の膜厚は、100nm程度である。
【0029】
更に、ショットキー電極15上に表面電極16を形成する。表面電極16には、例えば膜厚5μm程度のAl膜などを採用可能である。
【0030】
次いで、窒化シリコン(SiN)膜などを素子保護膜17として形成する。例えば、SiH4とNH3を用いたプラズマCVD法により、膜厚500nm程度のSiN膜を形成する。そして、表面電極16上の素子保護膜17を除去して表面電極16の上面を露出させて、図2に示したショットキーバリアダイオード10が完成する。
【0031】
上記に説明したショットキーバリアダイオード10の製造方法とは異なり、一般的には、MPS構造の半導体装置では、pn接合部分の高濃度不純物領域13とショットキー電極15とのコンタクト抵抗を低減するために、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極が形成される。
【0032】
具体的には、図6に示したように高濃度不純物領域13が形成された半導体積層体11の上面全体に表面保護膜14を形成した後、図10に示すように、高濃度不純物領域13上で表面保護膜14に開口部を形成し、この開口部を埋め込むようにして高濃度不純物領域13上にコンタクト電極150を形成する。例えば、Ti膜、Al膜、Ni膜などの金属膜を形成した後、この金属膜をシリサイド化してコンタクト電極150を形成する。
【0033】
コンタクト電極150の抵抗値を低減するために例えば1000℃程度でのアニールを行った後、図11に示すように、ショットキー接合部分上の表面保護膜14を除去して開口部140を形成する。その後、図9と同様にショットキー電極15と表面電極16を形成する。その結果、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極150が配置される。
【0034】
これに対して、図2に示したショットキーバリアダイオード10では、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極は配置されない。つまり、ショットキー接合部分にコンタクト電極を形成し、更に除去する工程がないため、例えばコンタクト電極用の材料がショットキー接合部分に残ることなどによって、ショットキー障壁が低くなるなどの問題が生じない。このため、ショットキー電極15形成前の無機洗浄などにより、ショットキー接合部分の清浄度を十分に高くすることができる。その結果、ショットキーバリアダイオード10の製造歩留まりが向上する。
【0035】
図12(a)に、SiCからなり、コンタクト電極150を有するMPS構造の半導体装置(以下において、「MPS素子」という。)の逆方向リーク電流の例を示す。図12(b)に、ショットキーバリアダイオード10の逆方向リーク電流の例を示す。図12(a)と図12(b)とを比較して明らかなように、ショットキーバリアダイオード10によれば、逆方向リーク電流のバラツキが小さく抑えられている。
【0036】
図13に、逆方向電圧が600Vでの逆方向リーク電流分布の例を示す。図13において、黒丸がショットキーバリアダイオード10の特性A、白丸がMPS素子の特性Bである。例えば1×10-6Aを逆方向リーク電流の上限とした場合、MPS素子の歩留まりが25%程度であるのに対し、図2に示したショットキーバリアダイオード10の歩留まりは80%程度であり、3倍以上である。
【0037】
更に、ショットキーバリアダイオード10では、pn接合部分はショットキー接合部分の周囲にのみ形成され、更に、コンタクト電極150は形成されない。これに対し、一般的なMPS構造では、pn接合部分とショットキー接合部分が混在し、pn接合部分にコンタクト電極150を形成する。このため、ショットキーバリアダイオード10では、一般的なMPS構造の半導体装置と比較してラフな加工精度での加工が可能であり、製造工程を簡略化することもできる。
【0038】
図14に、ショットキーバリアダイオード、pn接合ダイオード、MPS素子、及び図1に示した半導体装置1の、順方向特性の例を示す。図14において、特性Aがショットキーバリアダイオード、特性BがMPS素子、特性Cがpn接合ダイオード、特性Dが半導体装置1の順方向特性である。
【0039】
MPS素子は、低電圧ではショットキー接合部分を流れる電流(以下において、「SBD電流」という。)が支配的で、高電圧ではpn接合部分を流れる電流(以下において、「pn接合電流」という。)が支配的である。これは、n型基板及びn型半導体層を共通カソードとして使用しているためである。低電圧ではショットキー接合がオンし、SBD電流が流れて基板抵抗による電圧降下が起こる。この電圧降下により、pn接合に印加される電圧が、pn接合ダイオードが単独で動作する場合と比べて低下する。その結果、pn接合電流が流れにくく、SBD電流が支配的となる。pn接合に加わる電圧が上昇してpn接合部分に電流が流れ始めると、n型の半導体層112にp型の高濃度不純物領域13からホール(正孔)注入が起こり、半導体層112の抵抗が減少する。これにより、高電圧では、pn接合電流が支配的になる。
【0040】
一方、ショットキーバリアダイオード10においては、ショットキー電極15と高濃度不純物領域13とのコンタクト抵抗が高い。このため、pn接合に加わる電圧が低下し、pn接合ダイオードがバイポーラ動作した後に流れるバイポーラ電流が流れにくい。その結果、ショットキーバリアダイオード10単体では順方向サージ耐量が低下する。
【0041】
しかし、半導体装置1は、pn接合部分にコンタクト電極を形成しないショットキーバリアダイオード10と、順方向サージ耐量が十分に大きなシリコン基板のpn接合ダイオード20とが、並列接続された構造を有する。したがって、半導体装置1では、並列接続されたショットキーバリアダイオード10とpn接合ダイオード20にそれぞれの面積に応じた順方向電流が流れ、その和が半導体装置1に流れる総電流である。このため、半導体装置1では、MPS素子よりも順方向サージ耐量が向上する。
【0042】
なお、ショットキーバリアダイオード10においては、pn接合部分が形成されることによって逆方向耐圧が向上する。特に、電界が集中するショットキー接合部分の周囲に、pn接合部分が形成されている。このとき、pn接合部分の不純物領域12aの電位がフローティングであると外周部での電界集中を緩和しづらいため、高濃度不純物領域13はショットキー電極15と電気的に接続されている。
【0043】
半導体装置1のpn接合ダイオード20には、順方向サージ耐量が十分に大きなpn接合ダイオードが使用される。更に、ショットキーバリアダイオード10の特性に合わせて、最適な特性のpn接合ダイオード20が選択される。例えば、MPS素子と同等の順・逆方向特性やスイッチング特性を有するpn接合ダイオード20が使用される。
【0044】
図15に、図14に示した特性Dを有する半導体装置1の等価回路図を示す。図15に示したpn接合ダイオード20は、ショットキーバリアダイオード10と並列に、複数のpn接合ダイオード素子を直列接続した構成である。具体的には、pn接合ダイオード素子201〜203が直列接続されて、pn接合ダイオード20が構成されている。3つのpn接合ダイオード素子を用いてpn接合ダイオード20を構成したのは、例えば600V以上の逆方向耐圧を有するショットキーバリアダイオード10の順方向電圧が約1.5V以上であるのに対し、pn接合ダイオード素子201〜203それぞれの順方向電圧が0.7V程度であるためである。pn接合ダイオード20はサージ電流が流れる場合にのみ導通状態になればよいため、pn接合ダイオード20の順方向電圧をショットキーバリアダイオード10の順方向電圧よりも大きくすることが好ましい。このため、pn接合ダイオード20においては2V以上で順方向電流が流れるように、pn接合ダイオード素子を3個直列に接続する必要がある。
【0045】
したがって、ショットキーバリアダイオード10の特性に応じてpn接合ダイオード20を構成するpn接合ダイオード素子の数は選択され、その数が3個に限られないことはもちろんである。なお、各pn接合ダイオード素子の逆方向耐圧は200V以上とする。これにより、pn接合ダイオード20の逆方向耐圧をショットキーバリアダイオード10の逆方向耐圧と同等にできる。
【0046】
更に、半導体装置1の逆方向サージ耐量も向上させるためには、ショットキーバリアダイオード10よりも低い電圧でpn接合ダイオード20がアバランシェ降伏する必要がある。例えば、ショットキーバリアダイオード10のアバランシェ耐圧が800Vである場合、pn接合ダイオード20が700V程度でアバランシェ降伏するように耐圧設計を行う。
【0047】
なお、Si半導体を用いてpn接合ダイオード20を形成した場合、チップ面積を大きくすることにより、SiC半導体を用いたSBDと比較して順方向サージ電流の電流密度を一桁程度低減することができる。また、pn接合ダイオード20を複数のpn接合ダイオード素子を直列接続した構成にすることにより、順方向サージ電流が流れた場合の放熱面積を大きくすることができる。このため、順方向サージ耐量を大幅に向上することができる。
【0048】
図16(a)に、図1のA−A方向に沿った断面図を示す。また、図16(b)に、図1のB−B方向に沿った断面図を示す。ショットキーバリアダイオード10のカソード端子10kである裏面電極18が、半田31を介して第1のダイパット101に電気的に接続されている。また、ショットキーバリアダイオード10のアノード端子10aである表面電極16と半導体装置1のアノード端子103とが、ワイヤ41により電気的に接続されている。第1のダイパット101は、半導体装置1のカソード端子を兼ねている。
【0049】
また、図16(a)及び図16(b)に示すように、pn接合ダイオード素子201、202が絶縁シート50を介して第2のダイパット102に搭載されている。pn接合ダイオード素子201のカソード端子201kとpn接合ダイオード素子202のアノード端子202aとは、絶縁シート50上の半田321によって電気的に接続されている。pn接合ダイオード素子201のアノード端子201aは、ワイヤ421によって半導体装置1のアノード端子103に接続されている。また、pn接合ダイオード素子202のカソード端子202kは、ワイヤ422によってpn接合ダイオード素子203のアノード端子203aに接続されている。pn接合ダイオード素子203のカソード端子203kは、半田322を介して第2のダイパット102と電気的に接続されている。第2のダイパット102は、ワイヤ423によって第1のダイパット101と電気的に接続されている。
【0050】
上記のように、半導体装置1では、第2のダイパット102上で直列接続されたpn接合ダイオード素子201〜203と、ショットキーバリアダイオード10とが、並列接続されている。
【0051】
ショットキーバリアダイオード10が搭載される第1のダイパット101と、pn接合ダイオード20が搭載される第2のダイパット102とは、物理的に分離されている。これにより、ショットキーバリアダイオード10から発生する熱がpn接合ダイオード20に伝導するのが抑制され、pn接合ダイオード20の動作が安定する。
【0052】
例えば、定常動作中にデューティ50%の100Aのパルス電流が半導体装置1に流れた場合、順方向電圧が1.5Vのショットキーバリアダイオード10では平均75W程度の電力消費がある。パッケージ100の放熱が2℃/Wであると、室温25℃でのショットキーバリアダイオード10のチップ温度は175℃である。第1のダイパット101と第2のダイパット102とが接触した状態では、第1のダイパット101と第2のダイパット102とはほぼ同温である。このため、pn接合ダイオード20のチップ温度が175℃近くまで上昇する。Si半導体素子の場合、150℃以上の高温では半導体特性が失われ、動作不良を起こす。したがって、第1のダイパット101と第2のダイパット102とが分離されていることは、半導体装置1を正常動作させる上で有効である。
【0053】
図17に、逆方向耐圧が600V、順方向定格電流が10Aである半導体装置の順方向サージ電流及び逆方向サージ耐量の比較を示す。図17で、素子「SiC−SBD」はSiC半導体からなるSBDであり、ショットキーバリアダイオード10に相当する。素子「SiC−MPS」はSiC半導体からなるMPS素子である。素子「Si−PN」はSi半導体からなるpn接合ダイオードであり、pn接合ダイオード20に相当する。
【0054】
図17においては、順方向の最大サージ電流を、順方向定格電流に対する倍数で示している。SiC−SBDの逆方向サージ耐量が100mJ/cm2であるのに対し、SiC−MPSの逆方向サージ耐量は2J/cm2であり、SiC−SBDの20倍程度である。更に、Si−PNの逆方向サージ耐量は20J/cm2であり、SiC−MPSの10倍である。同一電流ではSi半導体素子の素子面積がSiC半導体素子よりも約10倍大きいため、電流密度が1/10以下になり、サージ耐量が向上する。
【0055】
図18に、本発明の実施形態の変形例に係る半導体装置1を示す。図18に示した例では、pn接合ダイオード20を構成するpn接合ダイオード素子201〜203が、第2のダイパット102を分割したダイパット102a〜102cにそれぞれ搭載されている。図19(a)に図18のA−A方向に沿った断面図を示し、図19(b)に図18のB−B方向に沿った断面図を示す。
【0056】
図19(a)及び図19(b)に示すように、pn接合ダイオード素子201のカソード端子201kが半田331を介してダイパット102aに接続され、pn接合ダイオード素子202のカソード端子202kが半田332を介してダイパット102bに接続され、pn接合ダイオード素子203のカソード端子203kが半田333を介してダイパット102cに接続されている。pn接合ダイオード素子201のアノード端子201aはワイヤ431によってアノード端子103に接続され、pn接合ダイオード素子202のアノード端子202aはワイヤ432によってダイパット102aに接続され、pn接合ダイオード素子203のアノード端子203aはワイヤ433によってダイパット102bに接続されている。更に、ワイヤ434によってダイパット102cと第1のダイパット101が接続されている。これにより、直列接続されたpn接合ダイオード素子201〜203と、ショットキーバリアダイオード10とが、並列接続される。
【0057】
図18に示した半導体装置1では、pn接合ダイオード素子201〜203は絶縁シートを介さずにダイパット102a〜102cにそれぞれ搭載されている。このため、放熱効率が高い。したがって、図18に示した半導体装置1は高温時の安定性が高い。
【0058】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る半導体装置1では、SiCからなる半導体層を有するショットキーバリアダイオード10と、Siからなる半導体層を有するpn接合ダイオード20とが並列接続されて、整流機能を実現している。半導体装置1にサージ電流が流れた場合のバイポーラ動作は、pn接合ダイオード20で行われる。このため、ショットキーバリアダイオード10におけるコンタクト電極は不要である。したがって、ショットキーバリアダイオード10の製造において、高濃度不純物領域13とショットキー電極15との間にコンタクト電極を形成する工程及びこのコンタクト電極を削除する工程は行われない。その結果、ショットキーバリアダイオード10の歩留まりを向上させることができる。
【0059】
したがって、半導体装置1によれば、SiC半導体からなるショットキーバリアダイオード10を有し、且つ歩留まりの高い半導体装置を提供することができる。
【0060】
また、ショットキーバリアダイオード10を第1のダイパット101に搭載し、pn接合ダイオード20を第2のダイパット102に搭載することにより、ショットキーバリアダイオード10の発熱によってpn接合ダイオード20が動作不良を起こすことを防止できる。つまり、第1のダイパット101と第2のダイパット102とを分離することにより、半導体装置1の動作をより安定させることができる。
【0061】
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…半導体装置
10…ショットキーバリアダイオード
11…半導体積層体
12…不純物領域
13…高濃度不純物領域
14…表面保護膜
15…ショットキー電極
16…表面電極
17…素子保護膜
18…裏面電極
20…pn接合ダイオード
50…絶縁シート
100…パッケージ
101…第1のダイパット
102…第2のダイパット
102a〜102c…ダイパット
111…高濃度不純物基板
112…半導体層
141…裏面保護膜
150…コンタクト電極
201〜203…pn接合ダイオード素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のダイパットと第2のダイパットが互いに離間して配置されたパッケージと、
前記第1のダイパット上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有し、ショットキー接合とpn接合が併設されたショットキーバリアダイオードと、
前記ショットキーバリアダイオードと並列接続されて前記第2のダイパット上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオードと
を備え、前記ショットキーバリアダイオードにおいて前記pn接合を構成する高濃度不純物領域と前記ショットキー接合を構成するショットキー電極とが直接に接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ショットキーバリアダイオードの外縁部に前記pn接合が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記pn接合ダイオードの順方向電圧が、前記ショットキーバリアダイオードの順方向電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記pn接合ダイオードが、複数のpn接合ダイオード素子が直列接続された構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数のpn接合ダイオード素子それぞれの順方向電圧の和が、前記ショットキーバリアダイオードの順方向電圧よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数のpn接合ダイオード素子が、前記第2のダイパットを分割した複数のダイパットにそれぞれ搭載されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記pn接合ダイオードのアバランシェ耐圧が、前記ショットキーバリアダイオードのアバランシェ耐圧よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項1】
第1のダイパットと第2のダイパットが互いに離間して配置されたパッケージと、
前記第1のダイパット上に搭載された、シリコンカーバイトからなる半導体層を有し、ショットキー接合とpn接合が併設されたショットキーバリアダイオードと、
前記ショットキーバリアダイオードと並列接続されて前記第2のダイパット上に搭載された、シリコンからなる半導体層を有するpn接合ダイオードと
を備え、前記ショットキーバリアダイオードにおいて前記pn接合を構成する高濃度不純物領域と前記ショットキー接合を構成するショットキー電極とが直接に接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ショットキーバリアダイオードの外縁部に前記pn接合が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記pn接合ダイオードの順方向電圧が、前記ショットキーバリアダイオードの順方向電圧よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記pn接合ダイオードが、複数のpn接合ダイオード素子が直列接続された構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数のpn接合ダイオード素子それぞれの順方向電圧の和が、前記ショットキーバリアダイオードの順方向電圧よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数のpn接合ダイオード素子が、前記第2のダイパットを分割した複数のダイパットにそれぞれ搭載されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記pn接合ダイオードのアバランシェ耐圧が、前記ショットキーバリアダイオードのアバランシェ耐圧よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−248736(P2012−248736A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120244(P2011−120244)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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