説明

半導体装置

【課題】ラッチ回路を有する半導体装置におけるデータの破壊を抑制する。
【解決手段】ラッチ回路に含まれる第1トランジスタP4と、ラッチ回路に含まれ、第1トランジスタP4と共通のウェル40内に形成された、第1トランジスタP4と同じ導電型の第2トランジスタP1と、第1トランジスタP4と第2トランジスタP1との間に設けられ、ウェル40を電源に接続するウェルコンタクトWCと、を備える。第1トランジスタP4側のウェル40内で発生した電荷は、ウェルコンタクトWCに流れるため、第1トランジスタP4におけるソフトエラーの影響が、第2トランジスタP1に伝搬することを抑制することができる。これにより、ラッチ回路内における2箇所のノードにおいて、同時に論理の反転が生じることを抑制することができるため、データの破壊を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ回路を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の微細化に伴い、ラッチ回路におけるソフトエラーへの対策が課題となっている。ソフトエラーとは、半導体装置中の放射性物質から放出されるα線や、宇宙線由来の中性子等の影響により、ラッチ回路に保持されたデータの論理が反転してしまう現象である。近年、ソフトエラーへの対策として、ラッチ回路の構成を2重化した半導体装置が知られている。本構成によれば、ラッチ回路内の1箇所のノードにおいてソフトエラーによる論理の反転が生じた場合でも、ラッチ回路の保持データを正しく保つことができる。
【0003】
また、同一のウェル内に形成された複数のトランジスタにおいて、一のトランジスタにおいてノイズが発生した場合に、他のトランジスタにおいてもノイズが発生してしまう現象が知られている。これは、荷電粒子等の作用により一のトランジスタのウェル電位が低下した影響で、近くにある他のトランジスタのウェル電位が低下するためであり、寄生バイポーラ効果とも呼ばれる現象である。寄生バイポーラ効果によるソフトエラーは、ウェルに所定の電圧を印加するためのウェルコンタクトと、同ウェル内に形成されるトランジスタとの距離が大きいほど発生しやすいことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−312104号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Oluwole A Amusan, et al. “Design Techniques to Reduce SET Pulse Widths in Deep-Submicron Combinational Logic” IEEE TRANSACTIONS ON NUCLEAR SCIENCE, VOL. 54, NO. 6 DECEMBER 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の2重化したラッチ回路では、1箇所のノードにおいて論理の反転が生じた場合でも、ラッチ回路の保持データは正常に保たれる。しかし、例えば上記の寄生バイポーラ効果により、2箇所のノードで同時に論理の反転が生じた場合、ラッチ回路の保持データが反転し、データが破壊されてしまう場合がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ラッチ回路を有する半導体装置におけるデータの破壊を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本半導体装置は、ラッチ回路に含まれる第1トランジスタと、前記ラッチ回路に含まれ、前記第1トランジスタと共通のウェル内に形成された、前記第1トランジスタと同じ導電型の第2トランジスタと、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとの間に設けられ、前記ウェルを電源に接続するウェルコンタクトと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本半導体装置によれば、ラッチ回路内における2箇所のノードで、ソフトエラーによる論理反転が同時に生じることを抑制し、データの破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、比較例及び実施例に係る半導体装置の回路構成を示す図である。
【図2】図2は、比較例に係る半導体装置のラッチ回路部分のレイアウトを示す上面図である。
【図3】図3は、比較例に係る半導体装置の詳細な構成を示す断面図である。
【図4】図4は、各ノードにおけるデータの反転と回路全体のエラーとの関係を示す表である。
【図5】図5は、実施例1に係る半導体装置のラッチ回路部分のレイアウトを示す上面図である。
【図6】図6は、実施例1に係る半導体装置の詳細な構成を示す断面図である。
【図7】図7は、ウェルコンタクトからのトランジスタの距離と、ソフトエラーの発生率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、比較例に係る半導体装置について説明する。
(比較例)
【0012】
図1は、比較例及び実施例に係る半導体装置の回路構成を示す図である。入力信号Dinは、2つに分割され、クロック信号CKにより駆動されるパスゲート10及び11を介して、ラッチ回路20へと入力される。ラッチ回路20からは、インバータ18を介して出力信号Doutが出力される。
【0013】
クロック信号CKは、2つに分割され、パスゲート10及び11に入力される。パスゲート10のpMOSトランジスタ側には、インバータ12及び13を通過したクロック信号CKが入力される。パスゲート10のnMOSトランジスタ側には、インバータ12を通過したクロック信号CKが入力される。パスゲート11のpMOSトランジスタ側には、インバータ14及び15を通過したクロック信号CKが入力される。パスゲート11のnMOSトランジスタ側には、インバータ14を通過したクロック信号CKが入力される。
【0014】
ラッチ回路20は、4つのCMOSインバータIn1〜In4を含む。各CMOSインバータは、第1電源Vdd及び第2電源Vssの間に直列に接続された1つのpMOSトランジスタ(P1〜P4)及び1つのnMOSトランジスタ(N1〜N4)を含む。pMOSトランジスタ(P1〜P4)及びnMOSトランジスタ(N1〜N4)の中間ノードから、CMOSインバータIn1〜IN4の出力信号が出力される。
【0015】
パスゲート10を通過した信号は、CMOSインバータIn1のpMOSトランジスタP1のゲート端子と、CMOSインバータIn2のnMOSトランジスタN2のゲート端子にそれぞれ入力される。以下、この信号ノードをノードn21と称する。同様に、パスゲート11を通過した信号は、CMOSインバータIn1のnMOSトランジスタN1のゲート端子と、CMOSインバータIn2のpMOSトランジスタP2のゲート端子にそれぞれ入力される。以下、この信号ノードをノードn22と称する。
【0016】
CMOSインバータIn1の出力信号は、CMOSインバータIn3のnMOSトランジスタN3のゲート端子と、CMOSインバータIn4のpMOSトランジスタP4のゲート端子にそれぞれ入力される。以下、この信号ノードをノードn11と称する。同様に、CMOSインバータIn2の出力信号は、CMOSインバータIn3のpMOSトランジスタP3のゲート端子と、CMOSインバータIn4のnMOSトランジスタN4のゲート端子にそれぞれ入力される。以下、この信号ノードをノードn12と称する。
【0017】
CMOSインバータIn3の出力信号は、ノードn21へとフィードバックされ、CMOSインバータIn4の出力信号は、ノードn22へとフィードバックされる。ノードn11には、ラッチ回路20の出力端子が接続されており、ノードn11の信号レベルがラッチ回路20の出力となる。
【0018】
例えば、ノードn21及びn22がローレベルにあるとき、ノードn11及びn12はハイレベルとなり、ラッチ回路20はハイレベルの信号を出力する。ここで、例えばノードn21の論理がソフトエラーによりハイレベルに反転すると、CMOSインバータIn1のpMOSトランジスタP1はオンからオフに、CMOSインバータIn2のnMOSトランジスタN2はオフからオンにそれぞれ切り替わる。しかし、ノードn21の相補的なノードであるノードn22の論理レベルはローレベルのままであるため、CMOSインバータIn1のnMOSトランジスタN1はオフ、CMOSインバータIn2のpMOSトランジスタP2はオンに設定されたままである。従って、CMOSインバータIn1及びIn2の出力(ノードn11及びn12の論理)はハイレベルのまま維持され、ラッチ回路20の出力は変わらない。そして、CMOSインバータIn3からノードn21にローレベルの信号がフィードバックされることにより、上記のソフトエラーが訂正される。
【0019】
以上のように、比較例に係る半導体装置によれば、ラッチ回路20を2重化することにより、1箇所のノードにおいて論理の反転が生じた場合でも、ラッチ回路20の保持データを正常に保つことができる。しかし、以下に述べるように、2箇所以上のノードで同時に論理の反転が生じると、ラッチ回路20の保持データが反転してしまう場合がある。以下、この点について説明する。
【0020】
図2は、比較例に係る半導体装置のラッチ回路部分のレイアウトを示す上面図である。半導体基板30(図3にて図示)上に、nウェル40及びpウェル50が形成されている。nウェル40には、p型拡散層41〜46が形成され、pウェル50には、n型拡散層51〜56が形成されている。p型拡散層41と42の間、及びn型拡散層51と52の間は、それぞれゲート電極70により隔てられている。同様に、p型拡散層42と43(n型拡散層52と53)はゲート電極72、p型拡散層44と45(n型拡散層54と55)はゲート電極74、p型拡散層45と46(n型拡散層55と56)はゲート電極76によりそれぞれ隔てられている。p型拡散層43と44の間、及びn型拡散層53と54の間は、層間絶縁膜60により隔てられている。
【0021】
第1電源Vddの電源線は、p型拡散層42にコンタクト80が、p型拡散層45にコンタクト81がそれぞれ設けられている。第2電源Vssの電源線は、p型拡散層52にコンタクト82が、n型拡散層55にコンタクト83がそれぞれ設けられている。ノードn11の配線n11は、p型拡散層46にコンタクト84が、n型拡散層54にコンタクト85が、ゲート電極72にコンタクト86がそれぞれ設けられている。ノードn12の配線n12は、p型拡散層44にコンタクト87が、n型拡散層56にコンタクト88が、ゲート電極70にコンタクト89がそれぞれ設けられている。ノードn21の配線n21は、p型拡散層41にコンタクト90が、n型拡散層53にコンタクト91が、ゲート電極76にコンタクト92がそれぞれ設けられている。ノードn22の配線n22は、p型拡散層43にコンタクト93が、n型拡散層51にコンタクト94が、ゲート電極74にコンタクト95がそれぞれ設けられている。
【0022】
図1のpMOSトランジスタP1は、p型拡散層45、p型拡散層46及びゲート電極76により構成されている。同様に、pMOSトランジスタP2は、p型拡散層44、p型拡散層45及びゲート電極74により構成され、pMOSトランジスタP3は、p型拡散層42、p型拡散層43及びゲート電極72により構成されている。pMOSトランジスタP4は、p型拡散層41、p型拡散層42及びゲート電極70により構成されている。
【0023】
図1のnMOSトランジスタN1は、n型拡散層55、n型拡散層56及びゲート電極76により構成されている。同様に、nMOSトランジスタN2は、n型拡散層54、n型拡散層55及びゲート電極74により構成され、nMOSトランジスタN3は、n型拡散層52、n型拡散層53及びゲート電極72により構成されている。nMOSトランジスタN4は、n型拡散層51、n型拡散層52及びゲート電極70により構成されている。
【0024】
図3(a)は、比較例に係る半導体装置の詳細な構成を示す断面図であり、層間絶縁膜60で隔てられた2つのpMOSトランジスタP2及びP3(以下、第1トランジスタP2及び第2トランジスタP3と称する)の構成を示す。第1トランジスタP2及び第2トランジスタP3は、共通のnウェル40に形成されており、nウェル40は層間絶縁膜60の下部を介して繋がっている。第1トランジスタP2は、ドレイン拡散層44、ソース拡散層45、及びゲート電極74を含む。ソース拡散層45は第1電源のVddに、ドレイン拡散層44はnMOSトランジスタ(図中では省略)を介して第2電源のVssにそれぞれ接続されている。同様に、第2トランジスタP3は、ドレイン拡散層43、ソース拡散層42、及びゲート電極72を含む。ソース拡散層42は第1電源のVddに、ドレイン拡散層43はnMOSトランジスタ(図中では省略)を介して第2電源のVssにそれぞれ接続されている。
【0025】
図3(b)は、寄生バイポーラ効果について説明するための図である。第1トランジスタP2のドレイン拡散層44、ソース拡散層45、及びnウェル40により、pnp型の寄生パイポーラトランジスタBP1が形成されている。第1トランジスタP2に荷電粒子eが入射されると、nウェル40中に発生した負電荷により、ソース拡散層45及びドレイン拡散層44付近のnウェル40の電位が低下する。このとき、ソース拡散層45からnウェル40へとホールが供給され、さらにnウェル40からドレイン拡散層44へとホールが供給される。すなわち、第1トランジスタP2側の寄生パイポーラトランジスタBP1がオンになり、電流I1が流れる。これにより、回路の論理が反転するソフトエラーが生じる。
【0026】
ここで、第1トランジスタP2側のnウェル40における電位の低下の影響が、第2トランジスタP3側に及んだ場合、第2トランジスタP3側のnウェル40の電位も同様に低下する。これにより、第2トランジスタP3側のソース拡散層42からnウェル40へとホールが供給され、さらにnウェル40からドレイン拡散層43へとホールが供給される。すなわち、第2トランジスタP3側の寄生パイポーラトランジスタBP2がオンになり、電流が流れる。これにより、回路の論理が反転するソフトエラーが生じる。
【0027】
以上のように、共通のウェル内に形成された2つのnMOSトランジスタでは、一方のトランジスタで生じたソフトエラーの影響が他方のトランジスタにも及び、2箇所のノードの論理が同時に反転してしまう場合がある。これは、nMOSトランジスタの場合でも同様である。
【0028】
図4は、図1のラッチ回路20の各ノードにおけるデータの反転と、ラッチ回路出力のエラーの有無との関係を示す表である。2つのノードのうち、同時に論理が反転した場合にエラーが生じる組み合わせをERRで、エラーが生じない組み合わせをNOでそれぞれ示す。各ノード(図中では「Node」で表記)に附された添字は、トランジスタの導電型(p型またはn型)を表す。
【0029】
ここで、図2で示したように、pMOSトランジスタP1〜P4及びnMOSトランジスタN1〜N4は、それぞれ同じウェル内に形成されており、2つ以上のノードにおいて同時に論理の反転が起こりうる。すなわち、図4で示す組み合わせのうち、Node11_n及びNode12_n、Node21_n及びNode22_n、Node11_p及びNode12_p、Node21_p及びNode22_pの4つは、上記の寄生バイポーラ効果による同時エラーが起こりうる。これらのノード組み合わせで同時に論理の反転が起こった場合、ラッチ回路20全体の出力もエラーとなり、データが破壊されてしまう。
【0030】
以上のように、比較例に係る半導体装置では、寄生バイポーラ効果の影響により、2箇所のノードで同時に論理が反転し、2重化されたラッチ回路の出力が反転してしまう場合がある。以下の説明では、このようなラッチ回路において、データの破壊を抑制するための構成について説明する。
【実施例1】
【0031】
実施例1に係る半導体装置の回路構成は、比較例(図1)と同様であり、説明を省略する。以下の説明では、ラッチ回路20部分のレイアウトについて説明する。比較例(図2)と共通の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0032】
図5は、実施例1に係る半導体装置のラッチ回路部分のレイアウトを示す上面図である。半導体基板30(図6にて図示)上に、nウェル40及びpウェル50が形成されている。nウェル40には、p型拡散層41〜47が形成され、pウェル50には、n型拡散層51〜57が形成されている。p型拡散層41と42の間、及びn型拡散層51と52の間は、それぞれゲート電極70により隔てられている。同様に、p型拡散層42と43(n型拡散層52と53)はゲート電極72、p型拡散層44と45(n型拡散層54と55)はゲート電極74、p型拡散層45と46(n型拡散層55と56)はゲート電極76によりそれぞれ隔てられている。
【0033】
比較例と異なり、p型拡散層43とp型拡散層44との間には、p型拡散層47が形成されており、n型拡散層53とn型拡散層54との間には、n型拡散層57が形成されている。p型拡散層43と47の間、及びn型拡散層53と57の間は、層間絶縁膜62により隔てられており、p型拡散層44と47の間、及びn型拡散層54と57の間は、層間絶縁膜64により隔てられている。以下、上記の領域をウェルコンタクトWCと称する。
【0034】
第1電源Vddの電源線は、p型拡散層42にコンタクト80が、p型拡散層45にコンタクト81がそれぞれ設けられている。第2電源Vssの電源線は、p型拡散層52にコンタクト82が、n型拡散層55にコンタクト83がそれぞれ設けられている。比較例と異なり、第1電源Vddの電源線は、ウェルコンタクトWCのp型拡散層47にコンタクト98を有し、第2電源Vssの電源線は、ウェルコンタクトWCのn型拡散層57にコンタクト99を有する。
【0035】
ノードn11の配線n11は、p型拡散層43にコンタクト84が、n型拡散層56にコンタクト85が、ゲート電極70にコンタクト86がそれぞれ設けられている。ノードn12の配線n12は、p型拡散層46にコンタクト87が、n型拡散層53にコンタクト88が、ゲート電極74にコンタクト89及び90がそれぞれ設けられている。ノードn21の配線n21は、p型拡散層44にコンタクト91が、n型拡散層51にコンタクト92が、ゲート電極72にコンタクト93及び94がそれぞれ設けられている。ノードn22の配線n22は、p型拡散層41にコンタクト95が、n型拡散層54にコンタクト96が、ゲート電極76にコンタクト97がそれぞれ設けられている。
【0036】
図1のpMOSトランジスタP1は、p型拡散層42、p型拡散層43及びゲート電極72により構成されている。同様に、pMOSトランジスタP2は、p型拡散層45、p型拡散層46及びゲート電極76により構成され、pMOSトランジスタP3は、p型拡散層41、p型拡散層42及びゲート電極70により構成されている。pMOSトランジスタP4は、p型拡散層44、p型拡散層45及びゲート電極74により構成されている。
【0037】
図1のnMOSトランジスタN1は、n型拡散層52、n型拡散層53及びゲート電極72により構成されている。同様に、nMOSトランジスタN2は、n型拡散層55、n型拡散層56及びゲート電極76により構成され、nMOSトランジスタN3は、n型拡散層51、n型拡散層52及びゲート電極70により構成されている。nMOSトランジスタN4は、n型拡散層54、n型拡散層55及びゲート電極74により構成されている。
【0038】
図6(a)は、実施例1に係る半導体装置の詳細な構成を示す断面図であり、層間絶縁膜*で隔てられた2つのpMOSトランジスタP4及びP1(以下、第1トランジスタP4及び第2トランジスタP1と称する)の構成を示す。第1トランジスタP4及び第2トランジスタP1は、それぞれ共通のnウェル40上に形成されており、nウェル40は層間絶縁膜62及び64の下部を介して繋がっている。比較例と異なり、第1トランジスタP4及び第2トランジスタP1の間には、ウェルコンタクトWCが形成されている。
【0039】
ウェルコンタクトWCは、nウェル40を所定の電源(本実施例では第1電源Vdd)に接続することでnウェル40に所定の電圧を印加し、nウェルの電位を一定に維持する役割を果たす。ウェルコンタクトWCの表面はp型拡散層47となっている。
【0040】
図6(b)は、寄生バイポーラ効果について説明するための図である。第1トランジスタP4のドレイン拡散層44、ソース拡散層45、及びnウェル40により、pnp型の寄生パイポーラトランジスタBP1が形成されている。第1トランジスタP4に荷電粒子eが入射されると、nウェル40中に発生した負電荷により、ソース拡散層45及びドレイン拡散層44付近のnウェル40の電位が低下する。このとき、ソース拡散層45からnウェル40へとホールが供給され、さらにnウェル40からドレイン拡散層44へとホールが供給される。すなわち、第1トランジスタP4側の寄生パイポーラトランジスタBP1がオンになり、電流I1が流れる。これにより、回路の論理が反転するソフトエラーが生じる。
【0041】
ここで、実施例1では、第1トランジスタP4と第2トランジスタP1との間にウェルコンタクトWCが設けられている。このため、第1トランジスタP4において発生した負電荷(電子)は、第2トランジスタP1よりも近いウェルコンタクトWCへと流れる(図中の矢印I2)。これにより、第2トランジスタP1側におけるnウェル40の電位の低下が抑制され、第2トランジスタP1側の寄生バイポーラトランジスタBP2が駆動しにくくなっている。このように、ウェルを共有する2つのトランジスタの間にウェルコンタクトを設けることにより、一方のトランジスタで生じたソフトエラーの影響が他方のトランジスタにも及ぶことを抑制することができる。すなわち、ラッチ回路内における2ヶ所以上のノードで同時に論理が反転してしまうことを抑制することができるため、ソフトエラーによるデータの破壊を抑制することができる。
【0042】
図7は、ウェルコンタクトからのトランジスタの距離と、ソフトエラーの発生率との関係を示すグラフである。図示するように、ウェルコンタクト及びトランジスタの距離が大きくなるに従い、ソフトエラーの発生率が上昇している。これは、トランジスタとウェルコンタクトとの距離が大きい方が、両者の間の抵抗成分が大きくなることに起因すると考えられる。従って、ソフトエラーの発生を抑制するためには、図6の構成において、ウェルコンタクトWCとトランジスタ(第1トランジスタP4及び第2トランジスタP1)との距離を小さくすることが好ましい。
【0043】
実施例1に係る半導体装置によれば、ラッチ回路内における2箇所のノードで、ソフトエラーによる論理反転が同時に生じることを抑制し、データの破壊を抑制することができる。本構成は、いわゆる2重のラッチ回路(回路内の複数のノードのうち1つのノードの論理が反転した場合でも、保持データの論理が反転しないように構成されたラッチ回路)に対し特に好適である。なお、ウェルコンタクトは、数が多くなりすぎると装置が大型化してしまうため、最低限の数だけ形成することが好ましい。この場合、ウェルコンタクトを形成する位置は、同時にソフトエラーが生じた場合にデータが破壊される(論理が同時に反転した場合に、ラッチ回路の保持データの論理が反転する)2つのノードの間であることが好ましい。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
20 ラッチ回路
30 基板
40 nウェル
41〜47 p型拡散層
50 pウェル
51〜57 n型拡散層
60〜64 層間絶縁膜
70〜76 ゲート
P1〜P4 pMOSトランジスタ
N1〜N4 nMOSトランジスタ
WC ウェルコンタクト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッチ回路に含まれる第1トランジスタと、
前記ラッチ回路に含まれ、前記第1トランジスタと共通のウェル内に形成された、前記第1トランジスタと同じ導電型の第2トランジスタと、
前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとの間に設けられ、前記ウェルを電源に接続するウェルコンタクトと、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ラッチ回路は、回路内の複数のノードのうち1つのノードの論理が反転した場合でも、保持データの論理が反転しないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ラッチ回路は、第1ノード及び第2ノードを有し、
前記第1ノード及び前記第2ノードは、論理が同時に反転した場合に、前記ラッチ回路の保持データの論理が反転する関係にあり、
前記第1トランジスタは前記第1ノードに接続され、前記第2トランジスタは前記第2ノードに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ラッチ回路は、
複数のCMOS反転回路と、
入力を前記複数のCMOS反転回路を介して前記入力にフィードバックするフィードバック経路と
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数のCMOS反転回路は、
入力を反転したデータを出力する2以上のCMOS反転回路を含む第1グループと、
前記入力と同じデータを出力する2以上のCMOS反転回路を含む第2グループと
を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−9515(P2012−9515A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141987(P2010−141987)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】