説明

半導体装置

【課題】ストレスインデックスが低いアンダーフィル材を用いた高信頼性のフリップチップ型半導体装置を提供する。
【解決手段】配線基板、配線基板2にフリップチップ接続された半導体素子、配線基板と半導体素子の間隙を充填するアンダーフィル材4から構成される半導体装置で、アンダーフィル材の硬化後の硬化物のガラス転移温度が90℃〜130℃であり、25℃での線膨張係数が15〜30ppm/℃であり、25℃での弾性率が3〜7GPaであり、かつ25℃での線膨張係数と25℃での弾性率の積であるストレスインデックスが100以上150以下である半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ方式の半導体装置では、半導体素子と基板とを半田バンプで電気的に接続している。このフリップチップ方式の半導体装置は、接続信頼性を向上するために半導体素子と基板との間にアンダーフィル材と呼ばれる樹脂組成物を充填して半田バンプの周辺を補強している(特許文献1参照)。近年、半導体素子には層間絶縁膜として低誘電率膜(Low−k層)を含んでおり、また半田バンプとしては鉛フリー材料が使用されている(特許文献2参照)。このため熱応力によるLow−k層の破壊や半田バンプのクラックを防ぐためにアンダーフィル材にはより一層の低熱膨張化が求められる。アンダーフィル材を低熱膨張化するにはフィラーの高充填が必須であり、フィラーを高充填したアンダーフィル材もこれまでに開発されている(特許文献3、4参照)。
しかし、フィラーの高充填に伴い、アンダーフィル材の線膨張係数は低下するものの、アンダーフィル材の室温弾性率が高くなってしまう。アンダーフィル材が高弾性率であると、Low−k層へのストレスを増加させてしまう。アンダーフィル材の低線膨張率化と低弾性率化を両立させることで、半導体装置の信頼性が増すため、これらの特性が両立したアンダーフィル材を用いたフリップチップ方式の半導体装置が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4492326号公報
【特許文献2】特許第4274280号公報
【特許文献3】特開2003−137529号公報
【特許文献4】国際公開第2010/073559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低線膨張係数かつ室温低弾性率のアンダーフィル材を用いて高い信頼性を有するフリップチップ方式の半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の通りである。
(1)配線基板、前記配線基板にフリップチップ接続された半導体素子、前記配線基板と前記半導体素子の間隙を充填するアンダーフィル材から構成される半導体装置で、前記アンダーフィル材の硬化後の硬化物のガラス転移温度が90℃〜130℃であり、25℃での線膨張係数が15〜30ppm/℃であり、25℃での弾性率が3〜7GPaであり、かつ25℃での線膨張係数と25℃での弾性率の積であるストレスインデックスが100以上150以下である半導体装置。
(2)前記半導体素子中に低誘電率膜を有し、前記半導体素子と前記配線基板をフリップチップ接続するのに鉛フリー半田バンプを用いた(1)記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低線膨張係数かつ室温低弾性率アンダーフィル材を用いることで高い信頼性を有するフリップチップ方式の半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の半導体装置の実施形態の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、配線基板、前記配線基板にフリップチップ接続された半導体素子、前記配線基板と前記半導体素子の間隙を充填するアンダーフィル材から構成される半導体装置で、前記アンダーフィル材の硬化後の硬化物のガラス転移温度が90℃〜130℃であり、25℃での線膨張係数が15〜30ppm/℃であり、25℃での弾性率が3〜7GPaであり、かつ25℃での線膨張係数と25℃での弾性率の積であるストレスインデックスが100以上150以下である半導体装置である。
【0009】
以下、本発明の半導体装置について説明する。
フリップチップ型半導体装置は、半田電極が具備された半導体素子を基板に接続し、該半導体素子と該基板の間隙をアンダーフィル材で封止する。この場合、基板側の半田電極が接合する部位以外の領域は半田が流れないようにソルダーレジストが形成されていることが好ましい。
【0010】
この半導体素子は、例えばシリコン基板の主面に銅配線を含む層間絶縁膜、保護膜が順次積層された構造を有している。保護膜の開口部には半田バンプが設けられ、これを介して半導体素子と基板との接続が取られている。層間絶縁膜は多層膜であり、本発明においては比誘電率3.3以下の低誘電率膜を含んでいることが好ましい。この低誘電率膜を一般にLow−k層という。本発明において半田バンプは鉛フリー半田からなっていることが好ましい。
【0011】
該半導体素子と該基板との間隙にアンダーフィル材を充填する。充填する方法としては、毛細管現象を利用する方法が挙げられる。具体的には、半導体素子の一辺にアンダーフィル材を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の2辺にアンダーフィル材を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の中央部にスルーホールを開けておき、半導体素子の周囲に本発明のアンダーフィル材を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法などが挙げられる。また、一度に全量を塗布するのではなく、2度以上に分けて塗布する方法でもよい。
【0012】
次に充填したアンダーフィル材を硬化させる。硬化条件は、特に限定されないが、例えば100〜170℃の温度範囲で1〜12時間加熱を行うことにより硬化できる。さらに、例えば100℃で1時間加熱した後、引き続き150℃で2時間加熱するような、段階的に温度を変化させながら加熱硬化を行ってもよい。
このようにして、半導体素子と基板との間が、アンダーフィル材の硬化物で封止されている半導体装置を得ることができる。
【0013】
本発明に使用するアンダーフィル材は、硬化後の硬化物のガラス転移温度が90〜130℃であり、25℃での線膨張係数が15〜30ppm/℃であり、25℃での弾性率が3〜7GPaであり、かつ25℃での線膨張係数と25℃での弾性率の積であるストレスインデックスが100以上150以下であることが必要である。ここでストレスインデックスは、25℃での線膨張係数をXppm/℃、25℃での弾性率をYGPaとした場合のXYの値である。
アンダーフィル材の硬化後の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは95〜125℃であり、25℃での線膨張係数は好ましくは20〜30ppm/℃であり、25℃での弾性率は好ましくは4〜6.5GPaであり、ストレスインデックスは好ましくは110〜145である。
上記特性を上記範囲内にすることにより、半導体装置において、特にLow−k層へのストレスを低減し、かつ鉛フリー半田バンプの破壊を低減することが可能となっている。
【0014】
次に上記半導体装置が備えるアンダーフィル材について説明する。本実施の形態におけるアンダーフィル材としては、熱硬化性樹脂から構成されていることが好ましい。例えば(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)低応力材、および(D)無機充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物を使用することが出来る。以下エポキシ樹脂組成物を使用する場合について説明する。
【0015】
アンダーフィル材に用いられる(A)エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。
例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0016】
さらに本発明の場合、芳香族環にグリシジル構造またはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むエポキシ樹脂が耐熱性、機械特性、耐湿性が高くなる点からより好ましく、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂は信頼性、特に接着性が低くなる点から使用する量を制限するほうがさらに好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
【0017】
本発明に使用するアンダーフィル材は、室温で液状であることが好ましい。そのため(A)エポキシ樹脂として、1種の(A)エポキシ樹脂のみを含む場合は、その1種の(A)エポキシ樹脂は、室温で液状であり、また、2種以上の(A)エポキシ樹脂を含む場合は、それら2種以上の(A)エポキシ樹脂全部の混合物が、室温で液状であることが好ましい。このため、(A)エポキシ樹脂が、2種以上の(A)エポキシ樹脂の組合せの場合、(A)エポキシ樹脂は、全てが室温で液状のエポキシ樹脂の組合せであってもよく、あるいは、一部が室温で固形のエポキシ樹脂あっても他の室温で液状のエポキシ樹脂と混合することにより、混合物が室温で液状となるのであれば、室温で液状のエポキシ樹脂と室温で固形のエポキシ樹脂との組合せであってもよい。なお、(A)エポキシ樹脂が、2種以上のエポキシ樹脂が組合せの場合、必ずしも、使用する全てのエポキシ樹脂を混合してから、他の成分と混合して、アンダーフィル材を製造する必要はなく、使用するエポキシ樹脂を別々に混合して、アンダーフィル材を製造してもよい。本発明で、(A)エポキシ樹脂が、室温で液状であるとは、エポキシ樹脂成分(A)として使用する全てのエポキシ樹脂を混合した場合に、その混合物が室温で液状になるということである。
本発明において、室温とは25℃を指し、また、液状とは樹脂組成物が流動性を有していることを指す。
【0018】
アンダーフィル材に用いられる(B)硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化し得るものであれば特に構造は限定されないが、アミン硬化剤を使用することが好ましい。
アミン硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−P−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類などが挙げられる。
【0019】
これらのアミン硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上の組合せでも良い。また、本発明の効果が達成される範囲であれば、芳香族アミン、脂肪族アミン、固形アミン、フェノール性硬化剤、酸無水物などの硬化剤を併用することもできる。
さらに半導体装置の封止用途では、耐熱性、電気的特性、機械的特性、密着性、耐湿性が高くなる点から芳香族ポリアミン型硬化剤が一層好ましい。さらに本発明の液状樹脂組成物がアンダーフィルとして用いられる場合には、室温(25℃)で液状を呈するものがより好ましい。
【0020】
アンダーフィル材に用いられる(C)低応力剤は、樹脂組成物を低弾性率化させることができ、エポキシ樹脂に少なくとも一部が溶解できることが好ましい。また室温で固形であることが好ましい。低応力材の成分は、限定されるものではないが、アクリル樹脂が好ましく、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルのモノマーを重合させて得られる重合体であることが好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャルブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
これらのモノマーの単独重合体又は共重合体などが選択できるが、共重合体が好ましい。
【0021】
共重合体とは、2種類以上のモノマーから重合されたポリマーの総称であり、2種類以上のモノマーがランダムに重合されたランダム共重合体、2種のモノマーが交互に重合された交互共重合体、一つの分子中に2種類以上のポリマーが共存していて、共に主鎖を形成しているタイプであるブロック共重合体、一つのポリマー成分が主鎖、別の異なるポリマー成分が枝のようにぶら下がっているタイプであるグラフト共重合体などが選択できる。
これらの中でより好ましいのは、ブロック共重合体である。
ブロック共重合体とは、単一組成の重合物Aと別の単一組成の重合物Bが同一の分子中にA−Bという形でつながれている構造の共重合体である。ブロック共重合体には、ジブロックタイプA−B、トリブロックタイプA−B−A、トリブロックタイプでも3種類の組成からなるA−B−Cなどのタイプが選択できる。
このアクリル樹脂は、A−B−Aタイプのトリブロック共重合体が好ましく、AおよびBについては、上記の例に挙げたモノマーから選択したモノマーから構成される重合体ブロックである。
【0022】
A−B−Aタイプのトリブロック共重合体の重合体ブロックAは、トリブロック共重合体をエポキシ樹脂に溶解させるためにエポキシ樹脂との親和性が高く、ハンドリング性を向上させるためにガラス転移温度が室温以上であることが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルなどから選択したモノマーから構成される重合体ブロックであり、好ましくは、メタクリル酸メチル重合体ブロックである。
重合体ブロックBは、低弾性率効果を発揮するためにガラス転移温度が0℃以下であることが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどから選択したモノマーから構成される重合体ブロックであり、好ましくは、アクリル酸n−ブチル重合体ブロックである。
【0023】
A−B−Aタイプのトリブロック共重合体において、重合体ブロックAと重合体ブロックBの比率については、どのような割合についても選択できるが、好ましくは、重合体ブロックBが50〜90重量%、より好ましくは、60〜80重量%である。重合体ブロックBは、低弾性率効果を示す成分であり、より多く含まれる方が、低弾性率化でき有利である。しかし重合体ブロックBのみになるとエポキシ樹脂への親和性が悪くなり、エポキシ樹脂へ溶解できなくなる。そのため、重合体ブロックAが10重量%以上含まれる事が好ましく、20重量%以上含まれることがより好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上150000以下、より好ましくは、10000以上100000以下である。
【0024】
(C)低応力剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記樹脂組成物に対して、好ましくは0.5〜5重量%であり、より好ましくは2〜4重量%である。(C)低応力剤の配合量が上記下限値未満の場合は低弾性率の効果が得られない恐れがあり、上記上限値を超える場合は線膨張係数が大きくなりすぎる恐れがある。
【0025】
アンダーフィル材に用いられる(D)無機充填剤は、破壊靭性などの機械的強度、熱時寸法安定性、耐湿性を向上することから、半導体装置の信頼性を特に向上することができる。
(D)無機充填剤としては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカなどのシリカ粉末の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物などを用いることができる。これらの(D)無機充填剤は、1種単独でも2種以上の組合せでも良い。これらの中でも樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度などを向上できることから溶融シリカ、結晶シリカ、又は合成シリカ粉末が好ましい。前記(D)無機充填剤の形状は、特に限定されないが、粘度・流動特性の観点から形状は球状であることが好ましい。
【0026】
上記(D)無機充填剤の最大粒子径および平均粒子径は特に限定されないが、最大粒子径が25μm以下、かつ平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。最大粒子径を上記上限値以下とすることにより液状封止樹脂組成物が半導体装置へ流動する際のフィラー詰まりによる部分的な未充填や充填不良を抑制する効果が高くなる。また平均粒子径を上記下限値以上にすることにより、液状封止樹脂組成物の粘度が適度に低下し、充填性が向上する。
【0027】
(D)無機充填剤の配合量は、特に制限されるものではないが、上記樹脂組成物に対して、好ましくは30〜75重量%であり、より好ましくは50〜65重量%である。(C)無機充填剤の配合量が上記下限値未満の場合は線膨張係数が大きくなりすぎる恐れがあり、上記上限値を超える場合は弾性率が大きくなりすぎる恐れがある。
【0028】
上記樹脂組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、液状低応力剤、希釈剤、顔料、難燃剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
1.アンダーフィル材の製造
(A)液状エポキシ樹脂1を12.3重量%と液状エポキシ樹脂2を12.3重量%、(B)アミン硬化剤1を9.1重量%、アミン硬化剤2を5.7重量%、(C)低応力剤1として、トリブロックアクリル樹脂を3.7重量%、(D)無機充填剤を55重量%、シランカップリング剤としてエポキシシランカップリング剤を1.2重量%、希釈剤を0.5重量%、着色剤を0.1重量%、配合し、プラネタリーミキサーと3本ロールを用いて混合し、真空脱泡処理することにより液状樹脂組成物であるアンダーフィル材を得た。
【0031】
2.半導体装置の製造
得られたアンダーフィル材を用いて半導体装置を作成した。
使用した半導体装置の構造を図1に示す。基板2と低誘電率材料(CVDで形成したポーラス化SiOC膜、比誘電率=2.2)を層間絶縁膜として用いた半導体チップ1が鉛フリー半田(組成:Sn−3.5Ag)バンプ3によって予めフリップチップ接続されている基板を用いた。半導体チップのサイズは15mm×15mm×0.75mmtで、基板のサイズは50mm×50mm×0.4mmtであった。半田バンプの高さは0.08mmであった。
上述の半導体チップが搭載された基板にアンダーフィル材を充填する前にプラズマ装置(March Plasma Systems社製AP−1000)でプラズマ処理を行った。プラズマ処理は、ガス種:Ar、ガス流量:50sccm、処理強さ:350W、処理時間:420s、ダイレクトプラズマモードの条件で処理を行った。
その後、上述の半導体チップが搭載された基板を110℃の熱板上で加熱し、アンダーフィル材をディスペンスし、ギャップ内を充填させ、150℃のオーブンで120分間アンダーフィル材4を加熱硬化し、半導体装置を得た。
【0032】
3.評価項目
得られたアンダーフィル材および半導体装置について、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(a)線膨張係数の測定
上記アンダーフィル材を150℃のオーブンで120分間硬化後、切削により5mm×5mm×10mmの試験片を得た。この試験片をTMA装置(セイコーインスツルメント社製TMA/SS6100)を用いて圧縮荷重5gで、−100℃から300℃の温度範囲を10℃/分の条件で測定した。この測定により、ガラス転移温度(Tg)及び25℃での線膨張係数を得た。
【0033】
(b)弾性率の測定
上記アンダーフィル材を150℃オーブンで120分間硬化し、10mm×20mm×1.5mmの試験片を得た。この試験片をDMA装置(セイコーインスツルメント社製DMS6100)を用いて、−30℃から300℃の温度範囲を5℃/分の条件で測定した。この測定より25℃での弾性率を得た。
【0034】
(c)ストレスインデックスの算出
上述で得られた25℃での線膨張係数Xppm/℃、25℃での弾性率YGPaの積であるXYの値をストレスインデックスとして算出した。
(d)リフロー試験
リフロー試験の試験方法としては、上記の半導体装置をJEDECレベル3の吸湿処理(30℃相対湿度60%で192時間処理)を行った後、IRリフロー処理(ピーク温度260℃)を3回行い、超音波探傷装置にて半導体装置内部での剥離・クラックの有無を確認した。剥離及びクラックのない場合を○とした。
【0035】
(e)温度サイクル試験(TCサイクル)
温度サイクル試験としては、上記のリフロー試験を行った半導体装置に(−55℃/30分)と(125℃/30分)の冷熱サイクル処理を施し、1000サイクル毎に超音波探傷装置にて半導体装置内部での剥離・クラックの有無を確認した。上記温度サイクル試験は最終的に3000サイクルまで実施した(TC1000サイクル〜TC3000サイクル)。剥離及びクラックのない場合を○とした。
アンダーフィル材の詳細な配合および評価結果を表1にまとめた。
【0036】
(実施例2〜5)
アンダーフィル材の配合を変えた以外は、実施例1と同様にした。アンダーフィル材の詳細な配合および評価結果を表1にまとめた。
【0037】
(比較例1〜8)
アンダーフィル材の配合を変えた以外は、実施例1と同様にした。アンダーフィル材の詳細な配合および評価結果を表1にまとめた。
【0038】
実施例および比較例では、以下の材料を使用した。
・液状エポキシ樹脂1:DIC(株)製、EXA−830LVP、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂の混合物、エポキシ当量165
・液状エポキシ樹脂2:多官能エポキシ樹脂、三菱化学(株)製、jER630、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン、エポキシ当量100
・アミン硬化剤1:芳香族1級アミン型硬化剤、日本化薬(株)製、カヤハード−AA、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、アミン当量63.5
・アミン硬化剤2:芳香族2級アミン型硬化剤、三洋化成工業(株)、T−12、4,4’−メチレンビス(N−メチルアニリン)、アミン当量116
・低応力剤1:トリブロックアクリル樹脂、クラレ(株)製、LA2140E(A−B−A型アクリルトリブロック共重合体、PMMA(ポリメタクリル酸メチル、ガラス転移温度:100〜120 ℃ )−PnBA(ポリアクリル酸n−ブチル、ガラス転移温度:−40〜−50 ℃ )−PMMA )、PMMA割合20重量%、Mw=80000)
・低応力剤2:ダイセル化学工業(株)製、PB−3600、液状ポリブタジエン
・低応力剤3:信越化学工業(株)製、KMP−605、オルガノポリシロキサン球状粒子
・無機充填剤:(株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、合成球状シリカ、平均粒径1.0μm
・カップリング剤: 信越化学工業(株)製、KBM−403E、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・希釈剤:東京化成工業(株)製、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート
・着色剤:三菱化学(株)製、MA−600、カーボンブラック
【0039】
表1において、アンダーフィル材のTgが高く、ストレスインデックスも150を超えている比較例1では、温度サイクル中の比較的早いサイクルにおいてLow−k層にクラックが発生した。
比較例2や比較例3、比較例7、比較例8のように、アンダーフィル材の線膨張係数は低いが、弾性率が高く、ストレスインデックスが150を超えている場合、TC2000サイクルでLow−kクラックが発生した。
比較例4のようにアンダーフィル材のTgが低い場合、Low−k層の不具合は見られないが、バンプにかかるストレスが大きくなり、温度サイクル中にバンプクラックが発生した。
比較例5のように、アンダーフィル材の線膨張係数が低いが弾性率が多少高く、ストレスインデックスが150を若干越えている場合、TC2000サイクルまでは不良は見られないが、TC3000サイクルでLow−kクラックが発生した。
アンダーフィル材の弾性率は低いが、線膨張係数が大きい比較例6の場合、TC1000サイクルでバンプクラックが発生した。
これに対し、実施例1〜5はアンダーフィル材の線膨張係数も弾性率も低いためにストレスインデックス150以下が達成され、温度サイクルにおいてLow−kクラックもバンプクラックも発生しなかった。
【0040】
【表1】

【符号の説明】
【0041】
1 基板
2 半導体チップ
3 半田バンプ
4 アンダーフィル材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板、前記配線基板にフリップチップ接続された半導体素子、前記配線基板と前記半導体素子の間隙を充填するアンダーフィル材から構成される半導体装置で、前記アンダーフィル材の硬化後の硬化物のガラス転移温度が90℃〜130℃であり、25℃での線膨張係数が15〜30ppm/℃であり、25℃での弾性率が3〜7GPaであり、かつ25℃での線膨張係数と25℃での弾性率の積であるストレスインデックスが100以上150以下である半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子中に低誘電率膜を有し、前記半導体素子と前記配線基板をフリップチップ接続するのに鉛フリー半田バンプを用いた請求項1記載の半導体装置。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−8896(P2013−8896A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141553(P2011−141553)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】