半導体製造装置および半導体の製造方法
【課題】熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体製造装置を提供する。
【解決手段】圧電素子2によって噴出口18と基板60との距離が1mmに設定されると、プラズマ源10は、熱プラズマジェットを発生し、直径が300μmφである噴出口18から熱プラズマジェットTPJをa−Si:H膜61に照射する。これによって、a−Si:H膜61の一部が溶融結晶化する。その後、圧電素子2によって噴出口18と基板60との距離が5mmに設定されると、プラズマ源10は、熱プラズマジェットを発生し、噴出口18から熱プラズマジェットTPJをa−Si:H膜61に照射する。これによって、a−Si:H膜61の一部が固相結晶化する。
【解決手段】圧電素子2によって噴出口18と基板60との距離が1mmに設定されると、プラズマ源10は、熱プラズマジェットを発生し、直径が300μmφである噴出口18から熱プラズマジェットTPJをa−Si:H膜61に照射する。これによって、a−Si:H膜61の一部が溶融結晶化する。その後、圧電素子2によって噴出口18と基板60との距離が5mmに設定されると、プラズマ源10は、熱プラズマジェットを発生し、噴出口18から熱プラズマジェットTPJをa−Si:H膜61に照射する。これによって、a−Si:H膜61の一部が固相結晶化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱プラズマジェットを用いて結晶半導体を製造する半導体製造装置および半導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧下における直流アーク放電によって生成された熱プラズマジェットを石英基板上のアモルファスシリコンに照射してアモルファスシリコンを固相結晶化する方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
この方法においては、熱プラズマジェットを噴出するためのノズルは、1mmφよりも大きい直径を有する。そして、この方法によって製造された結晶シリコンは、約20nmの粒径を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】東他,「応用物理」75(7)(2006)882.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置の複数の画素に対応して設けられる複数のトランジスタは、均一性が重要であるので、結晶シリコンの粒径が小さくてもよいが、複数の画素の周辺に設けられる周辺回路用のトランジスタは、高速動作が必要であるので、粒径の大きい結晶シリコンが必要である。
【0006】
しかし、従来の方法では、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造することが困難であった。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体製造装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、半導体製造装置は、プラズマ源と、距離設定装置とを備える。プラズマ源は、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを1mmφ以下の直径を有する噴出口から放射する。距離設定装置は、基板上に形成された非晶質シリコンを溶融結晶化するとき、基板と噴出口との距離を2mmよりも短い第1の距離に設定し、非晶質シリコンを固相結晶化するとき、距離を2mm以上の第2の距離に設定する。
【0010】
また、この発明によれば、半導体製造装置は、第1のプラズマ源と、第2のプラズマ源とを備える。第1のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第1の噴出口から放射する。第2のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第2の噴出口から放射する。
【0011】
さらに、この発明によれば、半導体製造装置は、第1のプラズマ源と、第2のプラズマ源と、第3のプラズマ源と、駆動装置とを備える。第1のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第1の噴出口から放射する。第2のプラズマ源は、第1のプラズマ源に隣接して設けられるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第2の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第2の噴出口から放射する。第3のプラズマ源は、第1のプラズマ源を中心にして第2のプラズマ源の配置位置と略対称な位置に配置されるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第3の噴出口から放射する。駆動装置は、第1および第2のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第2のプラズマ源を駆動し、または第1および第3のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第3のプラズマ源を駆動する。そして、第1から第3の噴出口と基板との距離は、2mmよりも短い第1の距離、または2mm以上の第2の距離に設定される。
【0012】
好ましくは、駆動装置は、基板上に形成され、かつ、水素を含む非晶質シリコンを第1のプラズマ源から第2のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、第1および第2のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第2のプラズマ源を駆動し、非晶質シリコンを第1のプラズマ源から第3のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、第1および第3のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第3のプラズマ源を駆動する。
【0013】
さらに、この発明によれば、半導体製造装置は、第1のプラズマ源と、複数の第2のプラズマ源と、駆動装置とを備える。第1のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第1の噴出口から放射する。複数の第2のプラズマ源は、隣接する2つの熱プラズマジェットの間隔が第1の間隔になるように直流アーク放電によって発生された複数の熱プラズマジェットを略平行に放射する。駆動装置は、第1のプラズマ源、または複数の第2のプラズマ源を駆動する。複数の第2のプラズマ源の各々は、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、第2の噴出口から熱プラズマジェットを放射する。駆動装置は、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のトランジスタを形成するとき、複数の第2の噴出口から複数の熱プラズマジェットを基板上に形成された非晶質シリコンに略平行に放射するように複数の第2のプラズマ源を駆動し、複数の画素の周辺に配置される周辺回路用のトランジスタを形成するとき、第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに放射するように第1のプラズマ源を駆動する。第1の間隔は、複数のトランジスタの間隔と略同じである。
【0014】
さらに、この発明によれば、半導体の製造方法は、基板上に非晶質シリコンを堆積する第1のステップと、基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第2のステップと、基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第3のステップとを備える。
【0015】
好ましくは、半導体の製造方法は、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備える。そして、第4のステップは、第1のステップの後であり、かつ、第2のステップの前に実行されるとともに、第1のステップの後であり、かつ、第3のステップの前に実行される。
【0016】
好ましくは、半導体の製造方法は、1mmφ以下の直径を有する第3の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備える。そして、第3の噴出口から非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度は、第1の噴出口から非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度および第2の噴出口から非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度よりも低い。また、第4のステップは、第1のステップの後であり、かつ、第2のステップの前に実行されるとともに、第1のステップの後であり、かつ、第3のステップの前に実行される。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口と基板との距離を第1の距離に設定して第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射し、第1の噴出口と基板との距離を第2の距離に設定して第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する。その結果、第1の噴出口と基板との距離を第1の距離に設定して熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、非晶質シリコンが溶融結晶化され、第1の噴出口と基板との距離を第2の距離に設定して熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、非晶質シリコンが固相結晶化される。そして、溶融結晶化された結晶シリコンは、固相結晶化された結晶シリコンよりも大きい粒径を有する。
【0018】
したがって、この発明によれば、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造できる。
【0019】
また、この発明によれば、非晶質シリコンを溶融結晶化または固相結晶化するとき、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第2の噴出口または第3の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射し、その後、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する。その結果、第2の噴出口または第3の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、水素が非晶質シリコンから脱離し、第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、水素が脱離した非晶質シリコンから溶融結晶化または固相結晶化が起る。
【0020】
したがって、この発明によれば、非晶質シリコンを溶融結晶化または固相結晶化するときに、膜への損傷を抑制して非晶質シリコンを溶融結晶化または固相結晶化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態による半導体製造装置の構成図である。
【図2】図1に示す半導体製造装置の動作を説明するための第1の概念図である。
【図3】図1に示す半導体製造装置の動作を説明するための第2の概念図である。
【図4】熱プラズマジェットをa−Si膜に照射したときのSi膜の反射率の時間変化を示す図である。
【図5】溶融結晶化後の光学顕微鏡像を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態による他の半導体製造装置の構成図である。
【図7】この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。
【図8】図7に示すプラズマジェット発生装置の構成図である。
【図9】図7に示すプラズマジェット発生装置の構成図である。
【図10】半導体製造装置を用いた結晶シリコンの製造方法を示す第1の概念図である。
【図11】半導体製造装置を用いた結晶シリコンの製造方法を示す第2の概念図である。
【図12】この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。
【図13】図12に示すプラズマジェット発生装置の構成図である。
【図14】表示装置の平面図である。
【図15】表示装置に用いられるTFT用の結晶シリコンを製造するときの概念図である。
【図16】図1に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【図17】図6に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【図18】図7に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【図19】図12に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態による半導体製造装置の構成図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による半導体製造装置100は、架台1と、圧電素子2と、プラズマ源10と、測定装置30と、制御装置40と、XYステージ50とを備える。
【0024】
圧電素子2は、一方端が架台1に固定され、他方端がプラズマ源10に連結される。
【0025】
プラズマ源10は、陽極11と、絶縁体12,13と、陰極14と、ガス導入管15と、給水管16と、排出管17と、電源回路20とを含む。
【0026】
陽極11は、概略、中空の円筒形状からなり、XYステージ50側に噴出口18を有する。また、陽極11は、その内部に中空部分19を有する。そして、陽極11は、例えば、熱伝導率が高い銅(Cu)からなる。
【0027】
絶縁体12は、陽極11と導体13との間に陽極11および導体13に接して配置される。そして、絶縁体12は、例えば、アルミナおよびセラミックス等からなる。
【0028】
導体13は、略十字形状を有する。そして、導体13のうち、水平方向DR1に配置された部分は、絶縁体12に接して配置される。また、導体13のうち、上下方向DR2に配置された部分は、陽極11の噴出口18の方向へ突出するとともに、一方端が尖っており、他方端が圧電素子2に連結されている。さらに、導体13は、陰極14を挿入するための孔を有する。そして、導体13は、例えば、Cuからなる。
【0029】
絶縁体12が陽極11および導体13に接するように配置されることによって、内部空間21が形成される。
【0030】
陰極14は、導体13に挿入されるとともに、一方端側が導体13から露出する。また、陰極14は、その一方端が噴出口18に向かって尖っている。そして、陰極14は、例えば、タングステン、タンタル、ルテニウム、およびジルコニウム等の熱陰極金属材料からなる。
【0031】
ガス導入管15は、その一方端側が陽極11を貫通して内部空間21に達するように陽極11に固定される。そして、ガス導入管15は、アルゴン(Ar)ガスを保持するガスボンベ(図示せず)に連結されている。給水管16は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。排出管17は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。
【0032】
噴出口18は、例えば、300μmφの直径を有する。電源回路20は、陽極11と陰極14との間に電気的に接続される。測定装置30は、その底面30Aが陽極11の底面11Aに一致するように陽極11の外周面に設置される。XYステージ50は、支持部材(図示せず)によって架台1に固定される。
【0033】
圧電素子2は、制御装置40から電圧が印加されると、上下方向DR2に伸縮し、プラズマ源10を上下方向DR2へ移動させる。
【0034】
プラズマ源10は、電源回路20から直流電圧が印加され、ガス導入口15からArガスが内部空間21へ供給されると、直流アーク放電によって熱プラズマジェットを発生する。そして、プラズマ源10は、その発生した熱プラズマジェットを噴出口18から放射する。
【0035】
ガス導入管15は、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、内部空間21は、大気圧に設定される。
【0036】
給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19へ供給する。排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。
【0037】
電源回路20は、陽極11がプラスになり、陰極14がマイナスになるように、直流電圧を陽極11−陰極14間に印加する。
【0038】
測定装置30は、制御装置40からの制御に従って、XYステージ50に設置された基板60と噴出口18との距離を測定する。より具体的には、測定装置30は、距離の測定を指示するための信号DSを制御装置40から受けると、レーザ光を基板60に照射した時刻t1と、基板60からの反射光を受光した時刻t2とを検出する。そして、測定装置30は、時刻t1,t2および光速度cに基づいて、c×(t2−t1)/2を演算することによって、噴出口18と基板60との距離Lを測定する。そうすると、測定装置30は、その測定した距離Lを制御装置40へ出力する。
【0039】
制御装置40は、信号DSを測定装置30へ出力する。また、制御装置40は、距離Lを測定装置30から受け、その受けた距離Lに基づいて、噴出口18と基板60との距離が所望の距離に設定されるように、圧電素子2に電圧を印加する。
【0040】
半導体製造装置100においては、噴出口18と基板60との距離は、例えば、1mmまたは5mmに設定される。制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmまたは5mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。
【0041】
半導体製造装置100は、プラズマ源10によって熱プラズマジェットを発生し、その発生した熱プラズマジェットを基板60上に形成された水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜に照射することによって、a−Si:H膜を結晶化する。
【0042】
この場合、半導体製造装置100は、噴出口18と基板60との距離Lを1mmに設定することによってa−Si膜を溶融結晶化し、距離Lを5mmに設定することによってa−Si:H膜を固相結晶化する。
【0043】
なお、図1においては、図示されていないが、陰極14も、陽極11と同じ方法によって冷却されている。
【0044】
半導体製造装置100における動作について説明する。図2および図3は、それぞれ、図1に示す半導体製造装置100の動作を説明するための第1および第2の概念図である。
【0045】
図2を参照して、例えば、シラン(SiH4)ガスを用いたプラズマCVD(Chemical Vapour Deposition)法によってa−Si:H膜61が形成された基板60をXYステージ50に設置する。なお、a−Si:H膜61の膜厚は、例えば、50nmである。
【0046】
そして、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。これによって、噴出口18と基板60との距離が1mmに設定される。
【0047】
その後、ガス導入管15は、内部空間21の圧力が大気圧になるように、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、Arガスの流量は、例えば、7.0リットル/分である。また、給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19に供給するとともに、排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。これによって、陽極11は、冷却される。
【0048】
引き続いて、電源回路20は、例えば、1.4kWの直流電力を陽極11−陰極14間に印加する。そうすると、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si:H膜61に照射する。この場合、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を4000mm/sの速度で移動させる。
【0049】
その結果、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットTPJが照射された部分が溶融結晶化され、結晶シリコン611が形成される。この結晶シリコン611は、数十μm以上の粒径を有する。
【0050】
図3を参照して、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが5mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。これによって、噴出口18と基板60との距離が5mmに設定される。
【0051】
そして、a−Si:H膜61が形成された基板60がXYステージ50に設置される。その後、上述した方法によって、Arガスがプラズマ源10の内部空間21に供給されるとともに、プラズマ源10の陽極11が冷却される。
【0052】
そうすると、電源回路20は、1.4kWの直流電力を陽極11―陰極14間に印加する。これによって、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si:H膜61に照射する。この場合も、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を4000mm/sの速度で移動させる。
【0053】
その結果、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットTPJが照射された部分が固相融結晶化され、結晶シリコン612が形成される。この結晶シリコン612は、約20nmの粒径を有する。
【0054】
このように、半導体製造装置100は、噴出口18と基板60との距離を変えることによって、a−Si:H膜61を溶融結晶化または固相結晶化することを特徴とする。
【0055】
そして、a−Si:H膜61の溶融結晶化は、噴出口18の直径を2mmφ〜4mmφから300μmφに小さくし、かつ、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定することによって実現された。
【0056】
図4は、熱プラズマジェットをa−Si:H膜に照射したときのSi膜の反射率の時間変化を示す図である。また、図5は、溶融結晶化後の光学顕微鏡像を示す図である。
【0057】
噴出口18の直径を300μmφに設定し、かつ、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定した状態で、基板61(=石英)の裏側からプローブレーザ(波長:532nm、パワー:50mW)をSi膜に照射し、Si膜からの反射率を測定した結果を図4に示す。
【0058】
図4において、縦軸は、反射率を表し、横軸は、時間を表す。図4を参照して、反射率が45%に瞬間的に増大する波形が得られた。この反射率の変化は、a−Si:H膜の溶融を示すものである。
【0059】
そして、a−Si:H膜が溶融している溶融時間は、136μsであることから、溶融ゾーンは、幅120μm、長さ540μmの細長い形状である。
【0060】
また、図5に示すように、溶融ゾーンの横方向移動に伴う結晶成長に特有の樹状模様が観測され、熱プラズマジェットによるマイクロ秒オーダーのゾーンメルティングによる結晶化が起っていることが分かった。
【0061】
このように、噴出口18の直径を300μmφに設定し、かつ、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定することによって、a−Si:H膜の溶融結晶化が可能である。
【0062】
また、噴出口18の直径を300μmφに設定し、かつ、噴出口18と基板60との距離を5mmに設定した場合についても、同様に、Si膜からの反射率の変化を測定した。その結果、固相結晶化が起っていると考えられるミリ秒オーダーの反射率の変化が観測された。
【0063】
上述したように、半導体製造装置100は、噴出口18と基板60との距離を1mmまたは5mmに設定することによって、それぞれ、a−Si:H膜61を溶融結晶化または固相結晶化する。
【0064】
そして、a−Si:H膜を溶融結晶化した場合、数十μmの粒径を有する結晶シリコンが製造され、a−Si:H膜を固相結晶化した場合、約20nmの粒径を有する結晶シリコンが製造される。
【0065】
したがって、この発明によれば、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造できる。
【0066】
半導体製造装置100は、プラズマ源10を用いてa−Si:H膜61を溶融結晶化または固相結晶化するので、次の特徴を有する。すなわち、プラズマは、透明なガラス基板も加熱するので、シリコン膜を島状にパターンニングした後であってもa−Si:H膜61を結晶化できる。一方、CWレーザーを用いた結晶化の場合、シリコン膜を島状にパターンニングした後では、a−Si:H膜61を結晶化できない。
【0067】
なお、半導体製造装置100においては、噴出口18と基板60との距離が1mmまたは5mmになるようにプラズマ源10を移動させると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、噴出口18と基板60との距離が1mmまたは5mmになるようにXYステージ50を上下方向DR2に移動させてもよい。
【0068】
この場合、架台1は、底面を有する架台からなり、圧電素子2は、架台の底面に固定され、XYステージ50は、圧電素子2に固定されている。そして、制御装置40は、上述した方法によって、噴出口18と基板60との距離が1mmまたは5mmになるように圧電素子2に電圧を印加してXYステージ50を上下方向DR2へ移動させる。
【0069】
したがって、圧電素子2および制御装置40は、噴出口18と基板60との距離を1mmまたは5mmに設定する「距離設定装置」を構成する。
【0070】
また、半導体製造装置100においては、圧電素子2に代えて、ステッピングモータを用いたアクチュエータによってプラズマ源10の噴出口18と基板60との距離を1mmまたは5mmに設定するようにしてもよい。
【0071】
図6は、この発明の実施の形態による他の半導体製造装置の構成図である。この発明の実施の形態による半導体製造装置は、図6に示す半導体製造装置100Aであってもよい。図6を参照して、半導体製造装置100Aは、図1に示す半導体製造装置100の測定装置30および制御装置40を削除し、圧電素子2を固定部材70,71に代え、プラズマ源10をプラズマ源10A,10Bに代えたものであり、その他は、半導体製造装置100と同じである。
【0072】
プラズマ源10A,10Bの各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。固定部材70は、プラズマ源10Aの噴出口18と基板60との距離が5mmに設定されるようにプラズマ源10Aを架台1に固定する。固定部材71は、プラズマ源10Bの噴出口18と基板60との距離が1mmに設定されるようにプラズマ源10Bを架台1に固定する。
【0073】
半導体製造装置100Aにおいては、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源10Aによって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射し、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源10Bによって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する。
【0074】
従って、a−Si:H膜61の一部を固相結晶化する場合、そのa−Si:H膜61の一部がプラズマ源10Aの噴出口18の真下に位置するようにXYステージ50によって基板60を移動させる。また、a−Si:H膜61の一部を溶融結晶化する場合、そのa−Si:H膜61の一部がプラズマ源10Bの噴出口18の真下に位置するようにXYステージ50によって基板60を移動させる。
【0075】
プラズマ源10Aを用いてa−Si:H膜61の一部を固相結晶化するときの動作は、半導体製造装置100を用いてa−Si:H膜61の一部を固相結晶化するときの動作と同じであり、プラズマ源10Bを用いてa−Si:H膜61の一部を溶融結晶化するときの動作は、半導体製造装置100を用いてa−Si:H膜61の一部を溶融結晶化するときの動作と同じである。
【0076】
このように、半導体製造装置100Aは、プラズマ源10Aによってa−Si:H膜61の一部を固相結晶化し、プラズマ源10Bによってa−Si:H膜61の一部を溶融結晶化する。
【0077】
そして、a−Si:H膜を溶融結晶化した場合、数十μmの粒径を有する結晶シリコンが製造され、a−Si:H膜を固相結晶化した場合、約20nmの粒径を有する結晶シリコンが製造される。
【0078】
したがって、この発明によれば、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造できる。
【0079】
図7は、この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。この発明の実施の形態による半導体製造装置は、図7に示す半導体製造装置100Bであってもよい。
【0080】
図7を参照して、半導体製造装置100Bは、図6に示す半導体製造装置100Aのプラズマ源10A,10Bをそれぞれプラズマジェット発生装置80,90に代え、駆動装置110を追加したものであり、その他は、半導体製造装置100Aと同じである。
【0081】
半導体製造装置100Bにおいては、固定部材70は、プラズマジェット発生装置80の底面80Aと基板60との距離が5mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置80を架台1に固定する。
【0082】
また、固定部材71は、プラズマジェット発生装置90の底面90Aと基板60との距離が1mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置90を架台1に固定する。
【0083】
プラズマジェット発生装置80は、後述する方法によって、熱プラズマジェットTPJ1〜TPJ3を基板60に選択的に照射する。
【0084】
プラズマジェット発生装置90は、後述する方法によって、熱プラズマジェットTPJ4〜TPJ6を基板60に選択的に照射する。
【0085】
図8は、図7に示すプラズマジェット発生装置80の構成図である。図8を参照して、プラズマジェット発生装置80は、プラズマ源81〜83を含む。プラズマ源81〜83の各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。
【0086】
この場合、プラズマ源81,83の各々は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182を有する。また、プラズマ源82は、直径が300μmφである噴出口181を有する。
【0087】
プラズマ源81〜83は、直線状に配置される。すなわち、プラズマ源83は、プラズマ源82を中心としてプラズマ源81と対称な位置に配置される。そして、プラズマ源81〜83の絶縁体14は、固定部材70に固定される。
【0088】
プラズマ源81,83は、それぞれ、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ2,TPJ3を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ2,TPJ3を噴出口182から放射する。また、プラズマ源82は、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ1を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ1を噴出口181から放射する。
【0089】
このように、プラズマジェット発生装置80は、直径が異なる噴出口181,182を有する3個のプラズマ源81〜83からなる。
【0090】
図9は、図7に示すプラズマジェット発生装置90の構成図である。図9を参照して、プラズマジェット発生装置90は、プラズマ源91〜93を含む。プラズマ源91〜93の各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。
【0091】
この場合、プラズマ源91,93の各々は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192を有する。また、プラズマ源92は、直径が300μmφである噴出口191を有する。
【0092】
プラズマ源91〜93は、直線状に配置される。すなわち、プラズマ源93は、プラズマ源92を中心としてプラズマ源91と対称な位置に配置される。そして、プラズマ源91〜93の絶縁体14は、固定部材71に固定される。
【0093】
プラズマ源91,93は、それぞれ、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ5,TPJ6を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ5,TPJ6を噴出口192から放射する。また、プラズマ源92は、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ4を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ4を噴出口191から放射する。
【0094】
このように、プラズマジェット発生装置90は、直径が異なる噴出口191,192を有する3個のプラズマ源91〜93からなる。
【0095】
駆動装置110は、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマジェット発生装置80を駆動し、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマジェット発生装置90を駆動する。
【0096】
そして、駆動装置110は、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源81,82を同時に駆動し、またはプラズマ源82,83を同時に駆動する。より具体的には、駆動装置110は、プラズマ源82からプラズマ源81へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源81,82を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源82からプラズマ源83へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源82,83を同時に駆動する。
【0097】
なお、駆動装置110は、プラズマ源81,82の電源回路20をオンすることによってプラズマ源81,82を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源82,83の電源回路20をオンすることによってプラズマ源82,83を同時に駆動する。
【0098】
プラズマ源81,82が同時に駆動された場合、プラズマ源81は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182から熱プラズマジェットTPJ2を放射し、プラズマ源82は、直径が300μmφである噴出口181から熱プラズマジェットTPJ1を放射する。
【0099】
その結果、熱プラズマジェットTPJ2が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ1によって固相結晶化される。
【0100】
また、プラズマ源82,83が同時に駆動された場合、プラズマ源83は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182から熱プラズマジェットTPJ3を放射し、プラズマ源82は、直径が300μmφである噴出口181から熱プラズマジェットTPJ1を放射する。
【0101】
その結果、熱プラズマジェットTPJ3が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ1によって固相結晶化される。
【0102】
このように、プラズマ源81,83は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182を有するので、熱プラズマジェットTPJ2,TPJ3をa−Si:H膜61に照射した場合、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0103】
結晶化時間がミリ秒以下である場合、結晶化の前にa−Si:H膜61中から水素を脱離しないと、結晶化中の水素脱離によって膜の損傷が生じる場合がある。
【0104】
そこで、プラズマ源82によるa−Si:H膜61の固相結晶化の前に、プラズマ源81,83を用いてa−Si:H膜61から水素を脱離することにしたものである。
【0105】
これによって、膜の損傷が殆ど生じない結晶シリコンを製造できる。
【0106】
一方、駆動装置110は、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源91,92を同時に駆動し、またはプラズマ源92,93を同時に駆動する。より具体的には、駆動装置110は、プラズマ源92からプラズマ源91へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源91,92を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源92からプラズマ源93へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源92,93を同時に駆動する。
【0107】
なお、駆動装置110は、プラズマ源91,92の電源回路20をオンすることによってプラズマ源91,92を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源92,93の電源回路20をオンすることによってプラズマ源92,93を同時に駆動する。
【0108】
プラズマ源91,92が同時に駆動された場合、プラズマ源91は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192から熱プラズマジェットTPJ5を放射し、プラズマ源92は、直径が300μmφである噴出口191から熱プラズマジェットTPJ4を放射する。
【0109】
その結果、熱プラズマジェットTPJ5が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ4によって溶融結晶化される。
【0110】
また、プラズマ源92,93が同時に駆動された場合、プラズマ源93は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192から熱プラズマジェットTPJ6を放射し、プラズマ源92は、直径が300μmφである噴出口191から熱プラズマジェットTPJ4を放射する。
【0111】
その結果、熱プラズマジェットTPJ6が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ4によって溶融結晶化される。
【0112】
このように、プラズマ源91,93は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192を有するので、熱プラズマジェットTPJ5,TPJ6をa−Si:H膜61に照射した場合、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0113】
上述したように、結晶化の前にa−Si:H膜61中から水素を脱離しないと、結晶化中の水素脱離によって膜の損傷が生じる場合がある。
【0114】
そこで、プラズマ源92によるa−Si:H膜61の溶融結晶化の前に、プラズマ源91,93を用いてa−Si:H膜61から水素を脱離することにしたものである。
【0115】
これによって、膜の損傷が殆ど生じない結晶シリコンを製造できる。
【0116】
図10および図11は、それぞれ、半導体製造装置100Bを用いた結晶シリコンの製造方法を示す第1および第2の概念図である。
【0117】
なお、図10および図11においては、プラズマジェット発生装置80を用いた結晶シリコンの製造方法について説明する。この場合、プラズマジェット発生装置80は、プラズマ源82からプラズマ源81への方向へ移動されるものとする(図10および図11の矢印ARW1参照)。
【0118】
図10を参照して、プラズマ源81の内部空間21内の圧力が大気圧になるようにArガスがプラズマ源81の内部空間21内に供給され、冷却水がプラズマ源81の陽極11の中空部分19に供給されると、プラズマ源81の電源回路20は、駆動装置110によってオンされ、陽極11−陰極14間に1.4kWの直流電力を印加する。
【0119】
そして、プラズマ源81は、熱プラズマジェットTPJ2をa−Si:H膜61の領域REG1に照射する。
【0120】
これによって、水素がa−Si:H膜61の領域REG1から脱離する。
【0121】
その後、プラズマジェット発生装置80の移動によって、領域REG1がプラズマ源82の噴出口181の真下に到達すると、プラズマ源82は、プラズマ源81と同様にして駆動され、熱プラズマジェットTPJ1をa−Si:H膜61の領域REG1に照射する。この場合、プラズマ源81は、熱プラズマジェットTPJ2をa−Si:H膜61の領域REG2に照射している(図11参照)。
【0122】
これによって、領域REG1において、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化が起り、領域REG2において、a−Si:Hからの水素の脱離が生じる。
【0123】
それ以降、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1の方向へ移動させることによって、a−Si:Hからの水素の脱離と、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化とが繰返し行なわれる。
【0124】
なお、図10および図11においては、熱プラズマジェットTPJ1,TPJ2が照射される領域は、飛び飛びであるように示されているが、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1の方向へ一定の速度(例えば、4000mm/s)で移動させることによって、a−Si:H膜61の連続した領域において、a−Si:Hからの水素の脱離と、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化とが生じ、結晶シリコンが連続して製造される。
【0125】
また、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1の方向へステップ状に移動させることによって、a−Si:H膜61の飛び飛びの領域において、a−Si:Hからの水素の脱離と、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化とが生じ、結晶シリコンが飛び飛びに製造される。
【0126】
さらに、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1と反対の方向(すなわち、プラズマ源82からプラズマ源83へ向かう方向)に移動させた場合も、上述した方法によって、プラズマ源83は、a−Si:Hから水素を脱離し、プラズマ源82は、水素が脱離したa−Siを固相結晶化する。
【0127】
さらに、プラズマジェット発生装置90を用いてa−Si:Hを溶融結晶化する場合も、上述した方法と同じ方法が用いられる。
【0128】
このように、半導体製造装置100Bを用いれば、a−Si:H膜61から水素を脱離した後に、a−Si:H膜61を固相結晶化または溶融結晶化できる。
【0129】
なお、半導体製造装置100Bにおいては、直径が300μmφの噴出口181を有するプラズマ源82をプラズマ源81,83に代えて用い、直径が300μmφの噴出口191を有するプラズマ源92をプラズマ源91,93に代えて用いてもよい。
【0130】
つまり、半導体製造装置100Bにおいては、プラズマジェット発生装置80は、3個のプラズマ源82からなり、プラズマジェット発生装置90は、3個のプラズマ源92からなっていてもよい。
【0131】
この場合、プラズマ源81の代わりに用いるプラズマ源82をプラズマ源82(81)とし、プラズマ源83の代わりに用いるプラズマ源82をプラズマ源82(83)とし、プラズマ源91の代わりに用いるプラズマ源92をプラズマ源92(91)とし、プラズマ源93の代わりに用いるプラズマ源92をプラズマ源92(93)とすると、プラズマ源82(81)およびプラズマ源82(83)が放射する熱プラズマジェットのパワー密度は、プラズマ源82が放射する熱プラズマジェットのパワー密度よりも低く、プラズマ源92(91)およびプラズマ源92(93)が放射する熱プラズマジェットのパワー密度は、プラズマ源92が放射する熱プラズマジェットのパワー密度よりも低い。
【0132】
このように、熱プラズマジェットのパワー密度を制御することによっても、水素をa−Si:H膜61から脱離するために用いる熱プラズマジェットと、a−Si:H膜61を固相結晶化または溶融結晶化するために用いる熱プラズマジェットとをa−Si:H膜61に照射できる。
【0133】
図12は、この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。この発明の実施の形態による半導体製造装置は、図12に示す半導体製造装置100Cであってもよい。
【0134】
図12を参照して、半導体製造装置100Cは、図7に示す半導体製造装置100Bのプラズマジェット発生装置80,90をそれぞれプラズマジェット発生装置120,130に代えたものであり、その他は、半導体製造装置100Bと同じである。
【0135】
半導体製造装置100Cにおいては、固定部材70は、プラズマジェット発生装置120の底面120Aと基板60との距離が5mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置120を架台1に固定する。また、固定部材71は、プラズマジェット発生装置130の底面130Aと基板60との距離が1mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置130を架台1に固定する。
【0136】
更に、半導体製造装置100Cにおいては、駆動装置110は、プラズマジェット発生装置120,130を選択的に駆動する。
【0137】
プラズマジェット発生装置120は、n(nは2以上の整数)個の熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nを同時に放射する。プラズマジェット発生装置130は、熱プラズマジェットTPJ11を放射する。
【0138】
図13は、図12に示すプラズマジェット発生装置120の構成図である。図13を参照して、プラズマジェット発生装置120は、プラズマ源121〜12nを含む。
【0139】
プラズマ源121〜12nの各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。そして、プラズマ源121〜12nの導体13は、固定部材70に連結される。
【0140】
n個のプラズマ源121〜12nは、n個の噴出口18が直線状に配列されるように配置される。この場合、隣接する2つのプラズマ源の2つの噴出口18間の間隔LGは、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のTFT(Thin Film Transistor)の間隔と同程度に設定される。より具体的には、間隔LGは、表示装置のデータ線の長さ方向における隣接する2つのTFT間の間隔と同程度に設定される。その結果、熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nの隣接する2つの熱プラズマジェット間の間隔も、表示装置のデータ線の長さ方向における隣接する2つのTFT間の間隔と同程度に設定される。また、プラズマ源121〜12nから放射される熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nの各々の大きさは、画素ピッチ以下である。
【0141】
したがって、プラズマジェット発生装置120を表示装置の走査線の方向に移動させながら、n個のプラズマ源121〜12nを同時に駆動することによって、複数の画素に対応して設けられた複数のTFTを形成する領域を一度に結晶化できる。
【0142】
なお、駆動装置110は、プラズマ源121〜12nの電源回路20をオンすることによって、n個のプラズマ源121〜12nを同時に駆動する。
【0143】
再び、図12を参照して、プラズマジェット発生装置130は、図1に示すプラズマ源10からなる。
【0144】
プラズマジェット発生装置120は、基板60から5mmの位置に設置されているので、プラズマジェット発生装置120を図12の紙面に垂直な方向に移動させることによって、a−Si:H膜61のn個の列を同時に固相結晶化できる。
【0145】
また、プラズマジェット発生装置130は、基板60から1mmの位置に設置されているので、プラズマジェット発生装置130を図12の紙面に垂直な方向に移動させることによって、a−Si:H膜61の1個の列を溶融結晶化できる。
【0146】
半導体製造装置100Cにおいては、n個のプラズマ源121〜12nは、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のTFT用の結晶シリコンを製造するために使用され、プラズマジェット発生装置130(=プラズマ源10)は、複数の画素の周辺に設けられた周辺回路に含まれるTFT用の結晶シリコンを製造するために使用される。
【0147】
複数の画素に対応して設けられる複数のTFTは、均一性が重要であるので、結晶シリコンの粒径が小さくてもよいが、複数の画素の周辺に設けられる周辺回路用のトランジスタは、高速動作が必要であるので、粒径の大きい結晶シリコンが必要である。
【0148】
そこで、n個のプラズマ源121〜12nによって、複数の画素に対応して設けられた複数のTFT用の結晶シリコンを製造し、プラズマジェット発生装置130(=プラズマ源10)によって、複数の画素の周辺に設けられた周辺回路に含まれるTFT用の結晶シリコンを製造することにしたものである。
【0149】
なお、半導体製造装置100Cにおいては、プラズマジェット発生装置120は、プラズマ源121〜12nの各々の前後(図13の紙面手前と図13の紙面奥側)に2つのプラズマ源(=プラズマ源81,83)をさらに含み、プラズマジェット発生装置130は、プラズマジェット発生装置130を構成するプラズマ源10の前後(図12の紙面手前と図12の紙面奥側)に2つのプラズマ源(=プラズマ源81,83)をさらに含むようにしてもよい。これによって、半導体製造装置100Cは、a−Si:H膜61から水素を脱離した後に、a−Siを固相結晶化または溶融結晶化する。したがって、膜への損傷を抑制してa−Si:H膜61を結晶化できる。
【0150】
図14は、表示装置の平面図である。図14を参照して、複数の画素GEがマトリックス状に配置されている。また、複数の走査線が方向DR3に沿って平行に配置され、複数のデータ線が方向DR4に沿って平行に配置されている。
【0151】
さらに、周辺回路が複数の画素GEの周辺に配置されている。さらに、複数のTFT(Tr)は、複数の画素GEに対応して配置されている。そして、複数のTFT(Tr)の各々は、走査線とデータ線との交差点で走査線およびデータ線に接続される。
【0152】
図15は、表示装置に用いられるTFT用の結晶シリコンを製造するときの概念図である。
【0153】
図15を参照して、周辺回路が形成される領域REG11においては、半導体製造装置100Cのプラズマジェット発生装置130(=プラズマ源10)は、熱プラズマジェットTPJ11をa−Si:H膜61に照射し、a−Si:H膜61を溶融結晶化して粒径が数十μm程度の結晶シリコンを製造する。
【0154】
また、プラズマジェット発生装置120のn個のプラズマ源121〜12nは、方向DR4に沿って配置され、n個のプラズマ源121〜12nを方向DR3に沿って移動させることによって、n個のプラズマ源121〜12nは、それぞれ、領域REG21〜REG2nに熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nを照射し、a−Si:H膜61を固相結晶化して粒径が約20nmの結晶シリコンを製造する。
【0155】
この場合、n個のプラズマ源121〜12nは、それぞれ、領域REG21〜REG2nにおいて、チャネルが形成されるチャネル領域ChREGにのみ熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nを照射する。
【0156】
したがって、n個のプラズマ源121〜12nを方向DR3に沿って1回走査することによって、マトリックス状に配置された複数のTFT(Tr)用の複数のチャネル領域ChREGを形成できる。その結果、表示装置用のTFTを製造するときのスループットを向上できる。
【0157】
図16は、図1に示す半導体製造装置100を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0158】
図16を参照して、一連の動作が開始されると、プラズマCVD法を用いてa−Si:H膜61が基板60上に形成される(ステップS1)。
【0159】
そして、a−Si:H膜61/基板60を半導体製造装置100のXYステージ50上に設置する(ステップS2)。
【0160】
その後、プラズマ源10の噴出口18と基板60との距離が上述した方法によって1mmに設定される(ステップS3)。
【0161】
引き続き、プラズマ源10の内部空間21内の圧力が大気圧になるようにArガスを内部空間21内に導入し、冷却水を陽極11の中空部分19に流す。そして、陽極11−陰極14間に直流電力を供給してプラズマ源10を駆動する。
【0162】
そうすると、プラズマ源10は、熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS4)。これによって、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットが照射された部分が溶融結晶化される。
【0163】
その後、プラズマ源10の噴出口18と基板60との距離が上述した方法によって5mmに設定される(ステップS5)。
【0164】
そして、プラズマ源10によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS6)。これによって、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットが照射された部分が固相結晶化される。
【0165】
そして、一連の動作が終了する。
【0166】
なお、図16に示すフローチャートにおいては、ステップS5,S6は、ステップS3,S4の前に実行されてもよい。
【0167】
図17は、図6に示す半導体製造装置100Aを用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0168】
図17に示すフローチャートは、図16に示すフローチャートのステップS3,S5をそれぞれ、ステップS3A,S5Aに代えたものであり、その他は、図16に示すフローチャートと同じである。
【0169】
図17を参照して、一連の動作が開始されると、上述したステップS1,S2が順次実行される。
【0170】
そして、ステップS2の後、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマ源10Bの噴出口18の真下へ移動する(ステップS3A)。
【0171】
その後、上述したステップS4が実行される。引き続いて、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマ源10Aの噴出口18の真下へ移動する(ステップS5A)。
【0172】
そして、上述したステップS6が実行され、一連の動作が終了する。
【0173】
なお、図17に示すフローチャートにおいては、ステップS5A,S6は、ステップS3A,S4の前に実行されてもよい。
【0174】
図18は、図7に示す半導体製造装置100Bを用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0175】
図18を参照して、一連の動作が開始されると、プラズマCVD法を用いてa−Si:H膜61が基板60上に形成される(ステップS11)。
【0176】
そして、a−Si:H膜61/基板60を半導体製造装置100BのXYステージ50上に設置する(ステップS12)。
【0177】
その後、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置80のプラズマ源81の噴出口182の真下へ移動する(ステップS13)。
【0178】
そうすると、プラズマジェット発生装置80のプラズマ源81を上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置80を移動させながらプラズマ源81によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS14)。これによって、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0179】
その後、プラズマジェット発生装置80を移動させながらプラズマ源82によって熱プラズマジェットをa−Siに照射する(ステップS15)。これによって、水素が脱離したa−Siが固相結晶化される。
【0180】
引き続いて、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置90のプラズマ源91の噴出口192の真下へ移動する(ステップS16)。
【0181】
そうすると、プラズマジェット発生装置90のプラズマ源91を上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置90を移動させながらプラズマ源91によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS17)。これによって、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0182】
その後、プラズマジェット発生装置90を移動させながらプラズマ源92によって熱プラズマジェットをa−Siに照射する(ステップS18)。これによって、水素が脱離したa−Siが溶融結晶化される。
【0183】
そして、一連の動作が終了する。
【0184】
なお、上記においては、プラズマ源82からプラズマ源81へ向かう方向に沿って、またはプラズマ源92からプラズマ源91へ向かう方向に沿って、a−Si:H膜61を結晶化する場合について説明したが、プラズマ源82からプラズマ源83へ向かう方向に沿って、またはプラズマ源92からプラズマ源93へ向かう方向に沿って、a−Si:H膜61を結晶化する場合、ステップS13において、結晶化する領域がプラズマ源83の噴出口182の真下へ移動され、ステップS14において、プラズマ源83によって熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射され、ステップS16において、結晶化する領域がプラズマ源93の噴出口192の真下へ移動され、ステップS17において、プラズマ源93によって熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射される。
【0185】
また、図18に示すフローチャートにおいては、ステップS16〜S18は、ステップS13〜S15の前に実行されてもよい。
【0186】
さらに、熱プラズマジェットのパワー密度を制御して水素をa−Si:H膜61から脱離する場合、ステップS14において、プラズマ源81(82)によって、パワー密度の低い熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射され、ステップS17において、プラズマ源91(92)によって、パワー密度の低い熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射される。
【0187】
図19は、図12に示す半導体製造装置100Cを用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0188】
図19を参照して、一連の動作が開始されると、プラズマCVD法を用いてa−Si:H膜61が基板60上に形成される(ステップS21)。
【0189】
そして、a−Si:H膜61/基板60を半導体製造装置100CのXYステージ50上に設置する(ステップS22)。
【0190】
その後、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置120のプラズマ源121〜12nの噴出口18の真下へ移動する(ステップS23)。
【0191】
そうすると、n個のプラズマ源121〜12nを上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置120を移動させながらn個のプラズマ源121〜12nによって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS24)。これによって、a−Si:H膜61の複数の領域が固相結晶化される。
【0192】
引き続いて、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置130のプラズマ源10の噴出口18の真下へ移動する(ステップS25)。
【0193】
そうすると、プラズマ源10を上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置130を移動させながらプラズマ源10によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS26)。これによって、a−Si:H膜61の一部分が溶融結晶化される。
【0194】
なお、図19に示すフローチャートにおいては、ステップS25,S26は、ステップS23,S24の前に実行されてもよい。
【0195】
上記においては、結晶シリコンの各種の製造方法を説明したが、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法は、基板上にa−Siを堆積するステップAと、基板との距離が1mmに設定され、かつ、300μmφの直径を有する噴出口から熱プラズマジェットをa−Siに照射するステップBと、基板との距離が5mmに設定され、かつ、300μmφの直径を有する噴出口から熱プラズマジェットをa−Siに照射するステップCとを備えていればよい。
【0196】
ステップBを実行することにより、a−Siが溶融結晶化され、ステップCを実行することによって、a−Siが固相結晶化されるからである。
【0197】
また、上記においては、プラズマ源10,10A,10B,82,92,121〜12nの噴出口18,181,191の直径は、300μmφであると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、噴出口18,181,191の直径は、1mmφ以下の範囲であればよい。
【0198】
さらに、a−Si膜61を溶融結晶化するときの基板60と噴出口18,191との距離は、1mmに限らず、2mmよりも短ければよく、a−Si膜61を固相結晶化するときの基板60と噴出口18,181との距離は、5mmに限らず、2mm以上であればよい。
【0199】
さらに、内部空間21の圧力は、大気圧に限らず、0.1気圧〜10気圧程度の範囲であればよい。
【0200】
さらに、a−Si:H膜61は、プラズマCVD法によって形成されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、a−Si:H膜61は、熱CVD法によって形成されてもよい。
【0201】
但し、TFTおよびMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等のトランジスタを200℃〜300℃以下の低温プロセスによって作製する場合、a−Si:H膜61は、プラズマCVD法によって形成される。
【0202】
さらに、基板60は、石英に限らず、通常のガラスおよび樹脂性のフィルム等であってもよい。
【0203】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0204】
この発明は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体製造装置に適用される。また、この発明は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体の製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0205】
1 架台、2 圧電素子、10 プラズマ源、11 陽極、12 絶縁体、13 導体、14陰極、15 ガス導入管、16 給水管、17 排出管、18 噴出口、19 中空部分、20 電源回路、21 内部空間、30 測定装置、40 制御装置、50 XYステージ、60 基板、61 a−Si膜、100 半導体製造装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱プラズマジェットを用いて結晶半導体を製造する半導体製造装置および半導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧下における直流アーク放電によって生成された熱プラズマジェットを石英基板上のアモルファスシリコンに照射してアモルファスシリコンを固相結晶化する方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
この方法においては、熱プラズマジェットを噴出するためのノズルは、1mmφよりも大きい直径を有する。そして、この方法によって製造された結晶シリコンは、約20nmの粒径を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】東他,「応用物理」75(7)(2006)882.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置の複数の画素に対応して設けられる複数のトランジスタは、均一性が重要であるので、結晶シリコンの粒径が小さくてもよいが、複数の画素の周辺に設けられる周辺回路用のトランジスタは、高速動作が必要であるので、粒径の大きい結晶シリコンが必要である。
【0006】
しかし、従来の方法では、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造することが困難であった。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体製造装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、半導体製造装置は、プラズマ源と、距離設定装置とを備える。プラズマ源は、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを1mmφ以下の直径を有する噴出口から放射する。距離設定装置は、基板上に形成された非晶質シリコンを溶融結晶化するとき、基板と噴出口との距離を2mmよりも短い第1の距離に設定し、非晶質シリコンを固相結晶化するとき、距離を2mm以上の第2の距離に設定する。
【0010】
また、この発明によれば、半導体製造装置は、第1のプラズマ源と、第2のプラズマ源とを備える。第1のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第1の噴出口から放射する。第2のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第2の噴出口から放射する。
【0011】
さらに、この発明によれば、半導体製造装置は、第1のプラズマ源と、第2のプラズマ源と、第3のプラズマ源と、駆動装置とを備える。第1のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第1の噴出口から放射する。第2のプラズマ源は、第1のプラズマ源に隣接して設けられるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第2の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第2の噴出口から放射する。第3のプラズマ源は、第1のプラズマ源を中心にして第2のプラズマ源の配置位置と略対称な位置に配置されるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第3の噴出口から放射する。駆動装置は、第1および第2のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第2のプラズマ源を駆動し、または第1および第3のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第3のプラズマ源を駆動する。そして、第1から第3の噴出口と基板との距離は、2mmよりも短い第1の距離、または2mm以上の第2の距離に設定される。
【0012】
好ましくは、駆動装置は、基板上に形成され、かつ、水素を含む非晶質シリコンを第1のプラズマ源から第2のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、第1および第2のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第2のプラズマ源を駆動し、非晶質シリコンを第1のプラズマ源から第3のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、第1および第3のプラズマ源が熱プラズマジェットを放射するように第1および第3のプラズマ源を駆動する。
【0013】
さらに、この発明によれば、半導体製造装置は、第1のプラズマ源と、複数の第2のプラズマ源と、駆動装置とを備える。第1のプラズマ源は、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを第1の噴出口から放射する。複数の第2のプラズマ源は、隣接する2つの熱プラズマジェットの間隔が第1の間隔になるように直流アーク放電によって発生された複数の熱プラズマジェットを略平行に放射する。駆動装置は、第1のプラズマ源、または複数の第2のプラズマ源を駆動する。複数の第2のプラズマ源の各々は、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、第2の噴出口から熱プラズマジェットを放射する。駆動装置は、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のトランジスタを形成するとき、複数の第2の噴出口から複数の熱プラズマジェットを基板上に形成された非晶質シリコンに略平行に放射するように複数の第2のプラズマ源を駆動し、複数の画素の周辺に配置される周辺回路用のトランジスタを形成するとき、第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに放射するように第1のプラズマ源を駆動する。第1の間隔は、複数のトランジスタの間隔と略同じである。
【0014】
さらに、この発明によれば、半導体の製造方法は、基板上に非晶質シリコンを堆積する第1のステップと、基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第2のステップと、基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第3のステップとを備える。
【0015】
好ましくは、半導体の製造方法は、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備える。そして、第4のステップは、第1のステップの後であり、かつ、第2のステップの前に実行されるとともに、第1のステップの後であり、かつ、第3のステップの前に実行される。
【0016】
好ましくは、半導体の製造方法は、1mmφ以下の直径を有する第3の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備える。そして、第3の噴出口から非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度は、第1の噴出口から非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度および第2の噴出口から非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度よりも低い。また、第4のステップは、第1のステップの後であり、かつ、第2のステップの前に実行されるとともに、第1のステップの後であり、かつ、第3のステップの前に実行される。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口と基板との距離を第1の距離に設定して第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射し、第1の噴出口と基板との距離を第2の距離に設定して第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する。その結果、第1の噴出口と基板との距離を第1の距離に設定して熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、非晶質シリコンが溶融結晶化され、第1の噴出口と基板との距離を第2の距離に設定して熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、非晶質シリコンが固相結晶化される。そして、溶融結晶化された結晶シリコンは、固相結晶化された結晶シリコンよりも大きい粒径を有する。
【0018】
したがって、この発明によれば、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造できる。
【0019】
また、この発明によれば、非晶質シリコンを溶融結晶化または固相結晶化するとき、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第2の噴出口または第3の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射し、その後、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射する。その結果、第2の噴出口または第3の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、水素が非晶質シリコンから脱離し、第1の噴出口から熱プラズマジェットを非晶質シリコンに照射することにより、水素が脱離した非晶質シリコンから溶融結晶化または固相結晶化が起る。
【0020】
したがって、この発明によれば、非晶質シリコンを溶融結晶化または固相結晶化するときに、膜への損傷を抑制して非晶質シリコンを溶融結晶化または固相結晶化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態による半導体製造装置の構成図である。
【図2】図1に示す半導体製造装置の動作を説明するための第1の概念図である。
【図3】図1に示す半導体製造装置の動作を説明するための第2の概念図である。
【図4】熱プラズマジェットをa−Si膜に照射したときのSi膜の反射率の時間変化を示す図である。
【図5】溶融結晶化後の光学顕微鏡像を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態による他の半導体製造装置の構成図である。
【図7】この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。
【図8】図7に示すプラズマジェット発生装置の構成図である。
【図9】図7に示すプラズマジェット発生装置の構成図である。
【図10】半導体製造装置を用いた結晶シリコンの製造方法を示す第1の概念図である。
【図11】半導体製造装置を用いた結晶シリコンの製造方法を示す第2の概念図である。
【図12】この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。
【図13】図12に示すプラズマジェット発生装置の構成図である。
【図14】表示装置の平面図である。
【図15】表示装置に用いられるTFT用の結晶シリコンを製造するときの概念図である。
【図16】図1に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【図17】図6に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【図18】図7に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【図19】図12に示す半導体製造装置を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態による半導体製造装置の構成図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による半導体製造装置100は、架台1と、圧電素子2と、プラズマ源10と、測定装置30と、制御装置40と、XYステージ50とを備える。
【0024】
圧電素子2は、一方端が架台1に固定され、他方端がプラズマ源10に連結される。
【0025】
プラズマ源10は、陽極11と、絶縁体12,13と、陰極14と、ガス導入管15と、給水管16と、排出管17と、電源回路20とを含む。
【0026】
陽極11は、概略、中空の円筒形状からなり、XYステージ50側に噴出口18を有する。また、陽極11は、その内部に中空部分19を有する。そして、陽極11は、例えば、熱伝導率が高い銅(Cu)からなる。
【0027】
絶縁体12は、陽極11と導体13との間に陽極11および導体13に接して配置される。そして、絶縁体12は、例えば、アルミナおよびセラミックス等からなる。
【0028】
導体13は、略十字形状を有する。そして、導体13のうち、水平方向DR1に配置された部分は、絶縁体12に接して配置される。また、導体13のうち、上下方向DR2に配置された部分は、陽極11の噴出口18の方向へ突出するとともに、一方端が尖っており、他方端が圧電素子2に連結されている。さらに、導体13は、陰極14を挿入するための孔を有する。そして、導体13は、例えば、Cuからなる。
【0029】
絶縁体12が陽極11および導体13に接するように配置されることによって、内部空間21が形成される。
【0030】
陰極14は、導体13に挿入されるとともに、一方端側が導体13から露出する。また、陰極14は、その一方端が噴出口18に向かって尖っている。そして、陰極14は、例えば、タングステン、タンタル、ルテニウム、およびジルコニウム等の熱陰極金属材料からなる。
【0031】
ガス導入管15は、その一方端側が陽極11を貫通して内部空間21に達するように陽極11に固定される。そして、ガス導入管15は、アルゴン(Ar)ガスを保持するガスボンベ(図示せず)に連結されている。給水管16は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。排出管17は、その一方端側が陽極11を貫通して中空部分19に達するように陽極11に固定される。
【0032】
噴出口18は、例えば、300μmφの直径を有する。電源回路20は、陽極11と陰極14との間に電気的に接続される。測定装置30は、その底面30Aが陽極11の底面11Aに一致するように陽極11の外周面に設置される。XYステージ50は、支持部材(図示せず)によって架台1に固定される。
【0033】
圧電素子2は、制御装置40から電圧が印加されると、上下方向DR2に伸縮し、プラズマ源10を上下方向DR2へ移動させる。
【0034】
プラズマ源10は、電源回路20から直流電圧が印加され、ガス導入口15からArガスが内部空間21へ供給されると、直流アーク放電によって熱プラズマジェットを発生する。そして、プラズマ源10は、その発生した熱プラズマジェットを噴出口18から放射する。
【0035】
ガス導入管15は、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、内部空間21は、大気圧に設定される。
【0036】
給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19へ供給する。排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。
【0037】
電源回路20は、陽極11がプラスになり、陰極14がマイナスになるように、直流電圧を陽極11−陰極14間に印加する。
【0038】
測定装置30は、制御装置40からの制御に従って、XYステージ50に設置された基板60と噴出口18との距離を測定する。より具体的には、測定装置30は、距離の測定を指示するための信号DSを制御装置40から受けると、レーザ光を基板60に照射した時刻t1と、基板60からの反射光を受光した時刻t2とを検出する。そして、測定装置30は、時刻t1,t2および光速度cに基づいて、c×(t2−t1)/2を演算することによって、噴出口18と基板60との距離Lを測定する。そうすると、測定装置30は、その測定した距離Lを制御装置40へ出力する。
【0039】
制御装置40は、信号DSを測定装置30へ出力する。また、制御装置40は、距離Lを測定装置30から受け、その受けた距離Lに基づいて、噴出口18と基板60との距離が所望の距離に設定されるように、圧電素子2に電圧を印加する。
【0040】
半導体製造装置100においては、噴出口18と基板60との距離は、例えば、1mmまたは5mmに設定される。制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmまたは5mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。
【0041】
半導体製造装置100は、プラズマ源10によって熱プラズマジェットを発生し、その発生した熱プラズマジェットを基板60上に形成された水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜に照射することによって、a−Si:H膜を結晶化する。
【0042】
この場合、半導体製造装置100は、噴出口18と基板60との距離Lを1mmに設定することによってa−Si膜を溶融結晶化し、距離Lを5mmに設定することによってa−Si:H膜を固相結晶化する。
【0043】
なお、図1においては、図示されていないが、陰極14も、陽極11と同じ方法によって冷却されている。
【0044】
半導体製造装置100における動作について説明する。図2および図3は、それぞれ、図1に示す半導体製造装置100の動作を説明するための第1および第2の概念図である。
【0045】
図2を参照して、例えば、シラン(SiH4)ガスを用いたプラズマCVD(Chemical Vapour Deposition)法によってa−Si:H膜61が形成された基板60をXYステージ50に設置する。なお、a−Si:H膜61の膜厚は、例えば、50nmである。
【0046】
そして、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが1mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。これによって、噴出口18と基板60との距離が1mmに設定される。
【0047】
その後、ガス導入管15は、内部空間21の圧力が大気圧になるように、Arガスをガスボンベ(図示せず)からプラズマ源10の内部空間21へ供給する。この場合、Arガスの流量は、例えば、7.0リットル/分である。また、給水管16は、冷却水を陽極11の中空部分19に供給するとともに、排出管17は、陽極11の中空部分19から冷却水を排出する。これによって、陽極11は、冷却される。
【0048】
引き続いて、電源回路20は、例えば、1.4kWの直流電力を陽極11−陰極14間に印加する。そうすると、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si:H膜61に照射する。この場合、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を4000mm/sの速度で移動させる。
【0049】
その結果、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットTPJが照射された部分が溶融結晶化され、結晶シリコン611が形成される。この結晶シリコン611は、数十μm以上の粒径を有する。
【0050】
図3を参照して、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、制御装置40は、測定装置30によって測定された距離Lが5mmになるように電圧を圧電素子2に印加する。これによって、噴出口18と基板60との距離が5mmに設定される。
【0051】
そして、a−Si:H膜61が形成された基板60がXYステージ50に設置される。その後、上述した方法によって、Arガスがプラズマ源10の内部空間21に供給されるとともに、プラズマ源10の陽極11が冷却される。
【0052】
そうすると、電源回路20は、1.4kWの直流電力を陽極11―陰極14間に印加する。これによって、陰極14は、先端部から熱プラズマジェットTPJを発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJを噴出口18を介してa−Si:H膜61に照射する。この場合も、移動機構(図示せず)によってプラズマ源10を4000mm/sの速度で移動させる。
【0053】
その結果、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットTPJが照射された部分が固相融結晶化され、結晶シリコン612が形成される。この結晶シリコン612は、約20nmの粒径を有する。
【0054】
このように、半導体製造装置100は、噴出口18と基板60との距離を変えることによって、a−Si:H膜61を溶融結晶化または固相結晶化することを特徴とする。
【0055】
そして、a−Si:H膜61の溶融結晶化は、噴出口18の直径を2mmφ〜4mmφから300μmφに小さくし、かつ、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定することによって実現された。
【0056】
図4は、熱プラズマジェットをa−Si:H膜に照射したときのSi膜の反射率の時間変化を示す図である。また、図5は、溶融結晶化後の光学顕微鏡像を示す図である。
【0057】
噴出口18の直径を300μmφに設定し、かつ、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定した状態で、基板61(=石英)の裏側からプローブレーザ(波長:532nm、パワー:50mW)をSi膜に照射し、Si膜からの反射率を測定した結果を図4に示す。
【0058】
図4において、縦軸は、反射率を表し、横軸は、時間を表す。図4を参照して、反射率が45%に瞬間的に増大する波形が得られた。この反射率の変化は、a−Si:H膜の溶融を示すものである。
【0059】
そして、a−Si:H膜が溶融している溶融時間は、136μsであることから、溶融ゾーンは、幅120μm、長さ540μmの細長い形状である。
【0060】
また、図5に示すように、溶融ゾーンの横方向移動に伴う結晶成長に特有の樹状模様が観測され、熱プラズマジェットによるマイクロ秒オーダーのゾーンメルティングによる結晶化が起っていることが分かった。
【0061】
このように、噴出口18の直径を300μmφに設定し、かつ、噴出口18と基板60との距離を1mmに設定することによって、a−Si:H膜の溶融結晶化が可能である。
【0062】
また、噴出口18の直径を300μmφに設定し、かつ、噴出口18と基板60との距離を5mmに設定した場合についても、同様に、Si膜からの反射率の変化を測定した。その結果、固相結晶化が起っていると考えられるミリ秒オーダーの反射率の変化が観測された。
【0063】
上述したように、半導体製造装置100は、噴出口18と基板60との距離を1mmまたは5mmに設定することによって、それぞれ、a−Si:H膜61を溶融結晶化または固相結晶化する。
【0064】
そして、a−Si:H膜を溶融結晶化した場合、数十μmの粒径を有する結晶シリコンが製造され、a−Si:H膜を固相結晶化した場合、約20nmの粒径を有する結晶シリコンが製造される。
【0065】
したがって、この発明によれば、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造できる。
【0066】
半導体製造装置100は、プラズマ源10を用いてa−Si:H膜61を溶融結晶化または固相結晶化するので、次の特徴を有する。すなわち、プラズマは、透明なガラス基板も加熱するので、シリコン膜を島状にパターンニングした後であってもa−Si:H膜61を結晶化できる。一方、CWレーザーを用いた結晶化の場合、シリコン膜を島状にパターンニングした後では、a−Si:H膜61を結晶化できない。
【0067】
なお、半導体製造装置100においては、噴出口18と基板60との距離が1mmまたは5mmになるようにプラズマ源10を移動させると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、噴出口18と基板60との距離が1mmまたは5mmになるようにXYステージ50を上下方向DR2に移動させてもよい。
【0068】
この場合、架台1は、底面を有する架台からなり、圧電素子2は、架台の底面に固定され、XYステージ50は、圧電素子2に固定されている。そして、制御装置40は、上述した方法によって、噴出口18と基板60との距離が1mmまたは5mmになるように圧電素子2に電圧を印加してXYステージ50を上下方向DR2へ移動させる。
【0069】
したがって、圧電素子2および制御装置40は、噴出口18と基板60との距離を1mmまたは5mmに設定する「距離設定装置」を構成する。
【0070】
また、半導体製造装置100においては、圧電素子2に代えて、ステッピングモータを用いたアクチュエータによってプラズマ源10の噴出口18と基板60との距離を1mmまたは5mmに設定するようにしてもよい。
【0071】
図6は、この発明の実施の形態による他の半導体製造装置の構成図である。この発明の実施の形態による半導体製造装置は、図6に示す半導体製造装置100Aであってもよい。図6を参照して、半導体製造装置100Aは、図1に示す半導体製造装置100の測定装置30および制御装置40を削除し、圧電素子2を固定部材70,71に代え、プラズマ源10をプラズマ源10A,10Bに代えたものであり、その他は、半導体製造装置100と同じである。
【0072】
プラズマ源10A,10Bの各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。固定部材70は、プラズマ源10Aの噴出口18と基板60との距離が5mmに設定されるようにプラズマ源10Aを架台1に固定する。固定部材71は、プラズマ源10Bの噴出口18と基板60との距離が1mmに設定されるようにプラズマ源10Bを架台1に固定する。
【0073】
半導体製造装置100Aにおいては、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源10Aによって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射し、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源10Bによって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する。
【0074】
従って、a−Si:H膜61の一部を固相結晶化する場合、そのa−Si:H膜61の一部がプラズマ源10Aの噴出口18の真下に位置するようにXYステージ50によって基板60を移動させる。また、a−Si:H膜61の一部を溶融結晶化する場合、そのa−Si:H膜61の一部がプラズマ源10Bの噴出口18の真下に位置するようにXYステージ50によって基板60を移動させる。
【0075】
プラズマ源10Aを用いてa−Si:H膜61の一部を固相結晶化するときの動作は、半導体製造装置100を用いてa−Si:H膜61の一部を固相結晶化するときの動作と同じであり、プラズマ源10Bを用いてa−Si:H膜61の一部を溶融結晶化するときの動作は、半導体製造装置100を用いてa−Si:H膜61の一部を溶融結晶化するときの動作と同じである。
【0076】
このように、半導体製造装置100Aは、プラズマ源10Aによってa−Si:H膜61の一部を固相結晶化し、プラズマ源10Bによってa−Si:H膜61の一部を溶融結晶化する。
【0077】
そして、a−Si:H膜を溶融結晶化した場合、数十μmの粒径を有する結晶シリコンが製造され、a−Si:H膜を固相結晶化した場合、約20nmの粒径を有する結晶シリコンが製造される。
【0078】
したがって、この発明によれば、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造できる。
【0079】
図7は、この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。この発明の実施の形態による半導体製造装置は、図7に示す半導体製造装置100Bであってもよい。
【0080】
図7を参照して、半導体製造装置100Bは、図6に示す半導体製造装置100Aのプラズマ源10A,10Bをそれぞれプラズマジェット発生装置80,90に代え、駆動装置110を追加したものであり、その他は、半導体製造装置100Aと同じである。
【0081】
半導体製造装置100Bにおいては、固定部材70は、プラズマジェット発生装置80の底面80Aと基板60との距離が5mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置80を架台1に固定する。
【0082】
また、固定部材71は、プラズマジェット発生装置90の底面90Aと基板60との距離が1mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置90を架台1に固定する。
【0083】
プラズマジェット発生装置80は、後述する方法によって、熱プラズマジェットTPJ1〜TPJ3を基板60に選択的に照射する。
【0084】
プラズマジェット発生装置90は、後述する方法によって、熱プラズマジェットTPJ4〜TPJ6を基板60に選択的に照射する。
【0085】
図8は、図7に示すプラズマジェット発生装置80の構成図である。図8を参照して、プラズマジェット発生装置80は、プラズマ源81〜83を含む。プラズマ源81〜83の各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。
【0086】
この場合、プラズマ源81,83の各々は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182を有する。また、プラズマ源82は、直径が300μmφである噴出口181を有する。
【0087】
プラズマ源81〜83は、直線状に配置される。すなわち、プラズマ源83は、プラズマ源82を中心としてプラズマ源81と対称な位置に配置される。そして、プラズマ源81〜83の絶縁体14は、固定部材70に固定される。
【0088】
プラズマ源81,83は、それぞれ、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ2,TPJ3を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ2,TPJ3を噴出口182から放射する。また、プラズマ源82は、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ1を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ1を噴出口181から放射する。
【0089】
このように、プラズマジェット発生装置80は、直径が異なる噴出口181,182を有する3個のプラズマ源81〜83からなる。
【0090】
図9は、図7に示すプラズマジェット発生装置90の構成図である。図9を参照して、プラズマジェット発生装置90は、プラズマ源91〜93を含む。プラズマ源91〜93の各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。
【0091】
この場合、プラズマ源91,93の各々は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192を有する。また、プラズマ源92は、直径が300μmφである噴出口191を有する。
【0092】
プラズマ源91〜93は、直線状に配置される。すなわち、プラズマ源93は、プラズマ源92を中心としてプラズマ源91と対称な位置に配置される。そして、プラズマ源91〜93の絶縁体14は、固定部材71に固定される。
【0093】
プラズマ源91,93は、それぞれ、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ5,TPJ6を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ5,TPJ6を噴出口192から放射する。また、プラズマ源92は、直流アーク放電によって熱プラズマジェットTPJ4を発生し、その発生した熱プラズマジェットTPJ4を噴出口191から放射する。
【0094】
このように、プラズマジェット発生装置90は、直径が異なる噴出口191,192を有する3個のプラズマ源91〜93からなる。
【0095】
駆動装置110は、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマジェット発生装置80を駆動し、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマジェット発生装置90を駆動する。
【0096】
そして、駆動装置110は、a−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源81,82を同時に駆動し、またはプラズマ源82,83を同時に駆動する。より具体的には、駆動装置110は、プラズマ源82からプラズマ源81へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源81,82を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源82からプラズマ源83へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を固相結晶化する場合、プラズマ源82,83を同時に駆動する。
【0097】
なお、駆動装置110は、プラズマ源81,82の電源回路20をオンすることによってプラズマ源81,82を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源82,83の電源回路20をオンすることによってプラズマ源82,83を同時に駆動する。
【0098】
プラズマ源81,82が同時に駆動された場合、プラズマ源81は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182から熱プラズマジェットTPJ2を放射し、プラズマ源82は、直径が300μmφである噴出口181から熱プラズマジェットTPJ1を放射する。
【0099】
その結果、熱プラズマジェットTPJ2が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ1によって固相結晶化される。
【0100】
また、プラズマ源82,83が同時に駆動された場合、プラズマ源83は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182から熱プラズマジェットTPJ3を放射し、プラズマ源82は、直径が300μmφである噴出口181から熱プラズマジェットTPJ1を放射する。
【0101】
その結果、熱プラズマジェットTPJ3が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ1によって固相結晶化される。
【0102】
このように、プラズマ源81,83は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口182を有するので、熱プラズマジェットTPJ2,TPJ3をa−Si:H膜61に照射した場合、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0103】
結晶化時間がミリ秒以下である場合、結晶化の前にa−Si:H膜61中から水素を脱離しないと、結晶化中の水素脱離によって膜の損傷が生じる場合がある。
【0104】
そこで、プラズマ源82によるa−Si:H膜61の固相結晶化の前に、プラズマ源81,83を用いてa−Si:H膜61から水素を脱離することにしたものである。
【0105】
これによって、膜の損傷が殆ど生じない結晶シリコンを製造できる。
【0106】
一方、駆動装置110は、a−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源91,92を同時に駆動し、またはプラズマ源92,93を同時に駆動する。より具体的には、駆動装置110は、プラズマ源92からプラズマ源91へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源91,92を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源92からプラズマ源93へ向かう方向に沿ってa−Si:H膜61を溶融結晶化する場合、プラズマ源92,93を同時に駆動する。
【0107】
なお、駆動装置110は、プラズマ源91,92の電源回路20をオンすることによってプラズマ源91,92を同時に駆動する。また、駆動装置110は、プラズマ源92,93の電源回路20をオンすることによってプラズマ源92,93を同時に駆動する。
【0108】
プラズマ源91,92が同時に駆動された場合、プラズマ源91は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192から熱プラズマジェットTPJ5を放射し、プラズマ源92は、直径が300μmφである噴出口191から熱プラズマジェットTPJ4を放射する。
【0109】
その結果、熱プラズマジェットTPJ5が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ4によって溶融結晶化される。
【0110】
また、プラズマ源92,93が同時に駆動された場合、プラズマ源93は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192から熱プラズマジェットTPJ6を放射し、プラズマ源92は、直径が300μmφである噴出口191から熱プラズマジェットTPJ4を放射する。
【0111】
その結果、熱プラズマジェットTPJ6が照射されたa−Si:H膜61の一部から膜中の水素が脱離し、水素が脱離したa−Si膜の一部が熱プラズマジェットTPJ4によって溶融結晶化される。
【0112】
このように、プラズマ源91,93は、直径が2mmφ〜5mmφである噴出口192を有するので、熱プラズマジェットTPJ5,TPJ6をa−Si:H膜61に照射した場合、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0113】
上述したように、結晶化の前にa−Si:H膜61中から水素を脱離しないと、結晶化中の水素脱離によって膜の損傷が生じる場合がある。
【0114】
そこで、プラズマ源92によるa−Si:H膜61の溶融結晶化の前に、プラズマ源91,93を用いてa−Si:H膜61から水素を脱離することにしたものである。
【0115】
これによって、膜の損傷が殆ど生じない結晶シリコンを製造できる。
【0116】
図10および図11は、それぞれ、半導体製造装置100Bを用いた結晶シリコンの製造方法を示す第1および第2の概念図である。
【0117】
なお、図10および図11においては、プラズマジェット発生装置80を用いた結晶シリコンの製造方法について説明する。この場合、プラズマジェット発生装置80は、プラズマ源82からプラズマ源81への方向へ移動されるものとする(図10および図11の矢印ARW1参照)。
【0118】
図10を参照して、プラズマ源81の内部空間21内の圧力が大気圧になるようにArガスがプラズマ源81の内部空間21内に供給され、冷却水がプラズマ源81の陽極11の中空部分19に供給されると、プラズマ源81の電源回路20は、駆動装置110によってオンされ、陽極11−陰極14間に1.4kWの直流電力を印加する。
【0119】
そして、プラズマ源81は、熱プラズマジェットTPJ2をa−Si:H膜61の領域REG1に照射する。
【0120】
これによって、水素がa−Si:H膜61の領域REG1から脱離する。
【0121】
その後、プラズマジェット発生装置80の移動によって、領域REG1がプラズマ源82の噴出口181の真下に到達すると、プラズマ源82は、プラズマ源81と同様にして駆動され、熱プラズマジェットTPJ1をa−Si:H膜61の領域REG1に照射する。この場合、プラズマ源81は、熱プラズマジェットTPJ2をa−Si:H膜61の領域REG2に照射している(図11参照)。
【0122】
これによって、領域REG1において、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化が起り、領域REG2において、a−Si:Hからの水素の脱離が生じる。
【0123】
それ以降、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1の方向へ移動させることによって、a−Si:Hからの水素の脱離と、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化とが繰返し行なわれる。
【0124】
なお、図10および図11においては、熱プラズマジェットTPJ1,TPJ2が照射される領域は、飛び飛びであるように示されているが、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1の方向へ一定の速度(例えば、4000mm/s)で移動させることによって、a−Si:H膜61の連続した領域において、a−Si:Hからの水素の脱離と、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化とが生じ、結晶シリコンが連続して製造される。
【0125】
また、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1の方向へステップ状に移動させることによって、a−Si:H膜61の飛び飛びの領域において、a−Si:Hからの水素の脱離と、水素が脱離したa−Siからの固相結晶化とが生じ、結晶シリコンが飛び飛びに製造される。
【0126】
さらに、プラズマジェット発生装置80を矢印ARW1と反対の方向(すなわち、プラズマ源82からプラズマ源83へ向かう方向)に移動させた場合も、上述した方法によって、プラズマ源83は、a−Si:Hから水素を脱離し、プラズマ源82は、水素が脱離したa−Siを固相結晶化する。
【0127】
さらに、プラズマジェット発生装置90を用いてa−Si:Hを溶融結晶化する場合も、上述した方法と同じ方法が用いられる。
【0128】
このように、半導体製造装置100Bを用いれば、a−Si:H膜61から水素を脱離した後に、a−Si:H膜61を固相結晶化または溶融結晶化できる。
【0129】
なお、半導体製造装置100Bにおいては、直径が300μmφの噴出口181を有するプラズマ源82をプラズマ源81,83に代えて用い、直径が300μmφの噴出口191を有するプラズマ源92をプラズマ源91,93に代えて用いてもよい。
【0130】
つまり、半導体製造装置100Bにおいては、プラズマジェット発生装置80は、3個のプラズマ源82からなり、プラズマジェット発生装置90は、3個のプラズマ源92からなっていてもよい。
【0131】
この場合、プラズマ源81の代わりに用いるプラズマ源82をプラズマ源82(81)とし、プラズマ源83の代わりに用いるプラズマ源82をプラズマ源82(83)とし、プラズマ源91の代わりに用いるプラズマ源92をプラズマ源92(91)とし、プラズマ源93の代わりに用いるプラズマ源92をプラズマ源92(93)とすると、プラズマ源82(81)およびプラズマ源82(83)が放射する熱プラズマジェットのパワー密度は、プラズマ源82が放射する熱プラズマジェットのパワー密度よりも低く、プラズマ源92(91)およびプラズマ源92(93)が放射する熱プラズマジェットのパワー密度は、プラズマ源92が放射する熱プラズマジェットのパワー密度よりも低い。
【0132】
このように、熱プラズマジェットのパワー密度を制御することによっても、水素をa−Si:H膜61から脱離するために用いる熱プラズマジェットと、a−Si:H膜61を固相結晶化または溶融結晶化するために用いる熱プラズマジェットとをa−Si:H膜61に照射できる。
【0133】
図12は、この発明の実施の形態によるさらに他の半導体製造装置の構成図である。この発明の実施の形態による半導体製造装置は、図12に示す半導体製造装置100Cであってもよい。
【0134】
図12を参照して、半導体製造装置100Cは、図7に示す半導体製造装置100Bのプラズマジェット発生装置80,90をそれぞれプラズマジェット発生装置120,130に代えたものであり、その他は、半導体製造装置100Bと同じである。
【0135】
半導体製造装置100Cにおいては、固定部材70は、プラズマジェット発生装置120の底面120Aと基板60との距離が5mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置120を架台1に固定する。また、固定部材71は、プラズマジェット発生装置130の底面130Aと基板60との距離が1mmに設定されるようにプラズマジェット発生装置130を架台1に固定する。
【0136】
更に、半導体製造装置100Cにおいては、駆動装置110は、プラズマジェット発生装置120,130を選択的に駆動する。
【0137】
プラズマジェット発生装置120は、n(nは2以上の整数)個の熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nを同時に放射する。プラズマジェット発生装置130は、熱プラズマジェットTPJ11を放射する。
【0138】
図13は、図12に示すプラズマジェット発生装置120の構成図である。図13を参照して、プラズマジェット発生装置120は、プラズマ源121〜12nを含む。
【0139】
プラズマ源121〜12nの各々は、図1に示すプラズマ源10と同じ構成からなる。そして、プラズマ源121〜12nの導体13は、固定部材70に連結される。
【0140】
n個のプラズマ源121〜12nは、n個の噴出口18が直線状に配列されるように配置される。この場合、隣接する2つのプラズマ源の2つの噴出口18間の間隔LGは、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のTFT(Thin Film Transistor)の間隔と同程度に設定される。より具体的には、間隔LGは、表示装置のデータ線の長さ方向における隣接する2つのTFT間の間隔と同程度に設定される。その結果、熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nの隣接する2つの熱プラズマジェット間の間隔も、表示装置のデータ線の長さ方向における隣接する2つのTFT間の間隔と同程度に設定される。また、プラズマ源121〜12nから放射される熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nの各々の大きさは、画素ピッチ以下である。
【0141】
したがって、プラズマジェット発生装置120を表示装置の走査線の方向に移動させながら、n個のプラズマ源121〜12nを同時に駆動することによって、複数の画素に対応して設けられた複数のTFTを形成する領域を一度に結晶化できる。
【0142】
なお、駆動装置110は、プラズマ源121〜12nの電源回路20をオンすることによって、n個のプラズマ源121〜12nを同時に駆動する。
【0143】
再び、図12を参照して、プラズマジェット発生装置130は、図1に示すプラズマ源10からなる。
【0144】
プラズマジェット発生装置120は、基板60から5mmの位置に設置されているので、プラズマジェット発生装置120を図12の紙面に垂直な方向に移動させることによって、a−Si:H膜61のn個の列を同時に固相結晶化できる。
【0145】
また、プラズマジェット発生装置130は、基板60から1mmの位置に設置されているので、プラズマジェット発生装置130を図12の紙面に垂直な方向に移動させることによって、a−Si:H膜61の1個の列を溶融結晶化できる。
【0146】
半導体製造装置100Cにおいては、n個のプラズマ源121〜12nは、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のTFT用の結晶シリコンを製造するために使用され、プラズマジェット発生装置130(=プラズマ源10)は、複数の画素の周辺に設けられた周辺回路に含まれるTFT用の結晶シリコンを製造するために使用される。
【0147】
複数の画素に対応して設けられる複数のTFTは、均一性が重要であるので、結晶シリコンの粒径が小さくてもよいが、複数の画素の周辺に設けられる周辺回路用のトランジスタは、高速動作が必要であるので、粒径の大きい結晶シリコンが必要である。
【0148】
そこで、n個のプラズマ源121〜12nによって、複数の画素に対応して設けられた複数のTFT用の結晶シリコンを製造し、プラズマジェット発生装置130(=プラズマ源10)によって、複数の画素の周辺に設けられた周辺回路に含まれるTFT用の結晶シリコンを製造することにしたものである。
【0149】
なお、半導体製造装置100Cにおいては、プラズマジェット発生装置120は、プラズマ源121〜12nの各々の前後(図13の紙面手前と図13の紙面奥側)に2つのプラズマ源(=プラズマ源81,83)をさらに含み、プラズマジェット発生装置130は、プラズマジェット発生装置130を構成するプラズマ源10の前後(図12の紙面手前と図12の紙面奥側)に2つのプラズマ源(=プラズマ源81,83)をさらに含むようにしてもよい。これによって、半導体製造装置100Cは、a−Si:H膜61から水素を脱離した後に、a−Siを固相結晶化または溶融結晶化する。したがって、膜への損傷を抑制してa−Si:H膜61を結晶化できる。
【0150】
図14は、表示装置の平面図である。図14を参照して、複数の画素GEがマトリックス状に配置されている。また、複数の走査線が方向DR3に沿って平行に配置され、複数のデータ線が方向DR4に沿って平行に配置されている。
【0151】
さらに、周辺回路が複数の画素GEの周辺に配置されている。さらに、複数のTFT(Tr)は、複数の画素GEに対応して配置されている。そして、複数のTFT(Tr)の各々は、走査線とデータ線との交差点で走査線およびデータ線に接続される。
【0152】
図15は、表示装置に用いられるTFT用の結晶シリコンを製造するときの概念図である。
【0153】
図15を参照して、周辺回路が形成される領域REG11においては、半導体製造装置100Cのプラズマジェット発生装置130(=プラズマ源10)は、熱プラズマジェットTPJ11をa−Si:H膜61に照射し、a−Si:H膜61を溶融結晶化して粒径が数十μm程度の結晶シリコンを製造する。
【0154】
また、プラズマジェット発生装置120のn個のプラズマ源121〜12nは、方向DR4に沿って配置され、n個のプラズマ源121〜12nを方向DR3に沿って移動させることによって、n個のプラズマ源121〜12nは、それぞれ、領域REG21〜REG2nに熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nを照射し、a−Si:H膜61を固相結晶化して粒径が約20nmの結晶シリコンを製造する。
【0155】
この場合、n個のプラズマ源121〜12nは、それぞれ、領域REG21〜REG2nにおいて、チャネルが形成されるチャネル領域ChREGにのみ熱プラズマジェットTPJ21〜TPJ2nを照射する。
【0156】
したがって、n個のプラズマ源121〜12nを方向DR3に沿って1回走査することによって、マトリックス状に配置された複数のTFT(Tr)用の複数のチャネル領域ChREGを形成できる。その結果、表示装置用のTFTを製造するときのスループットを向上できる。
【0157】
図16は、図1に示す半導体製造装置100を用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0158】
図16を参照して、一連の動作が開始されると、プラズマCVD法を用いてa−Si:H膜61が基板60上に形成される(ステップS1)。
【0159】
そして、a−Si:H膜61/基板60を半導体製造装置100のXYステージ50上に設置する(ステップS2)。
【0160】
その後、プラズマ源10の噴出口18と基板60との距離が上述した方法によって1mmに設定される(ステップS3)。
【0161】
引き続き、プラズマ源10の内部空間21内の圧力が大気圧になるようにArガスを内部空間21内に導入し、冷却水を陽極11の中空部分19に流す。そして、陽極11−陰極14間に直流電力を供給してプラズマ源10を駆動する。
【0162】
そうすると、プラズマ源10は、熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS4)。これによって、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットが照射された部分が溶融結晶化される。
【0163】
その後、プラズマ源10の噴出口18と基板60との距離が上述した方法によって5mmに設定される(ステップS5)。
【0164】
そして、プラズマ源10によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS6)。これによって、a−Si:H膜61のうち、熱プラズマジェットが照射された部分が固相結晶化される。
【0165】
そして、一連の動作が終了する。
【0166】
なお、図16に示すフローチャートにおいては、ステップS5,S6は、ステップS3,S4の前に実行されてもよい。
【0167】
図17は、図6に示す半導体製造装置100Aを用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0168】
図17に示すフローチャートは、図16に示すフローチャートのステップS3,S5をそれぞれ、ステップS3A,S5Aに代えたものであり、その他は、図16に示すフローチャートと同じである。
【0169】
図17を参照して、一連の動作が開始されると、上述したステップS1,S2が順次実行される。
【0170】
そして、ステップS2の後、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマ源10Bの噴出口18の真下へ移動する(ステップS3A)。
【0171】
その後、上述したステップS4が実行される。引き続いて、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマ源10Aの噴出口18の真下へ移動する(ステップS5A)。
【0172】
そして、上述したステップS6が実行され、一連の動作が終了する。
【0173】
なお、図17に示すフローチャートにおいては、ステップS5A,S6は、ステップS3A,S4の前に実行されてもよい。
【0174】
図18は、図7に示す半導体製造装置100Bを用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0175】
図18を参照して、一連の動作が開始されると、プラズマCVD法を用いてa−Si:H膜61が基板60上に形成される(ステップS11)。
【0176】
そして、a−Si:H膜61/基板60を半導体製造装置100BのXYステージ50上に設置する(ステップS12)。
【0177】
その後、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置80のプラズマ源81の噴出口182の真下へ移動する(ステップS13)。
【0178】
そうすると、プラズマジェット発生装置80のプラズマ源81を上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置80を移動させながらプラズマ源81によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS14)。これによって、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0179】
その後、プラズマジェット発生装置80を移動させながらプラズマ源82によって熱プラズマジェットをa−Siに照射する(ステップS15)。これによって、水素が脱離したa−Siが固相結晶化される。
【0180】
引き続いて、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置90のプラズマ源91の噴出口192の真下へ移動する(ステップS16)。
【0181】
そうすると、プラズマジェット発生装置90のプラズマ源91を上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置90を移動させながらプラズマ源91によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS17)。これによって、水素がa−Si:H膜61から脱離する。
【0182】
その後、プラズマジェット発生装置90を移動させながらプラズマ源92によって熱プラズマジェットをa−Siに照射する(ステップS18)。これによって、水素が脱離したa−Siが溶融結晶化される。
【0183】
そして、一連の動作が終了する。
【0184】
なお、上記においては、プラズマ源82からプラズマ源81へ向かう方向に沿って、またはプラズマ源92からプラズマ源91へ向かう方向に沿って、a−Si:H膜61を結晶化する場合について説明したが、プラズマ源82からプラズマ源83へ向かう方向に沿って、またはプラズマ源92からプラズマ源93へ向かう方向に沿って、a−Si:H膜61を結晶化する場合、ステップS13において、結晶化する領域がプラズマ源83の噴出口182の真下へ移動され、ステップS14において、プラズマ源83によって熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射され、ステップS16において、結晶化する領域がプラズマ源93の噴出口192の真下へ移動され、ステップS17において、プラズマ源93によって熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射される。
【0185】
また、図18に示すフローチャートにおいては、ステップS16〜S18は、ステップS13〜S15の前に実行されてもよい。
【0186】
さらに、熱プラズマジェットのパワー密度を制御して水素をa−Si:H膜61から脱離する場合、ステップS14において、プラズマ源81(82)によって、パワー密度の低い熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射され、ステップS17において、プラズマ源91(92)によって、パワー密度の低い熱プラズマジェットがa−Si:H膜61に照射される。
【0187】
図19は、図12に示す半導体製造装置100Cを用いて結晶シリコンを製造するときのフローチャートである。
【0188】
図19を参照して、一連の動作が開始されると、プラズマCVD法を用いてa−Si:H膜61が基板60上に形成される(ステップS21)。
【0189】
そして、a−Si:H膜61/基板60を半導体製造装置100CのXYステージ50上に設置する(ステップS22)。
【0190】
その後、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置120のプラズマ源121〜12nの噴出口18の真下へ移動する(ステップS23)。
【0191】
そうすると、n個のプラズマ源121〜12nを上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置120を移動させながらn個のプラズマ源121〜12nによって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS24)。これによって、a−Si:H膜61の複数の領域が固相結晶化される。
【0192】
引き続いて、XYステージ50を用いて、a−Si:H膜61のうち、結晶化する領域をプラズマジェット発生装置130のプラズマ源10の噴出口18の真下へ移動する(ステップS25)。
【0193】
そうすると、プラズマ源10を上述した方法によって駆動し、プラズマジェット発生装置130を移動させながらプラズマ源10によって熱プラズマジェットをa−Si:H膜61に照射する(ステップS26)。これによって、a−Si:H膜61の一部分が溶融結晶化される。
【0194】
なお、図19に示すフローチャートにおいては、ステップS25,S26は、ステップS23,S24の前に実行されてもよい。
【0195】
上記においては、結晶シリコンの各種の製造方法を説明したが、この発明の実施の形態による結晶シリコンの製造方法は、基板上にa−Siを堆積するステップAと、基板との距離が1mmに設定され、かつ、300μmφの直径を有する噴出口から熱プラズマジェットをa−Siに照射するステップBと、基板との距離が5mmに設定され、かつ、300μmφの直径を有する噴出口から熱プラズマジェットをa−Siに照射するステップCとを備えていればよい。
【0196】
ステップBを実行することにより、a−Siが溶融結晶化され、ステップCを実行することによって、a−Siが固相結晶化されるからである。
【0197】
また、上記においては、プラズマ源10,10A,10B,82,92,121〜12nの噴出口18,181,191の直径は、300μmφであると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、噴出口18,181,191の直径は、1mmφ以下の範囲であればよい。
【0198】
さらに、a−Si膜61を溶融結晶化するときの基板60と噴出口18,191との距離は、1mmに限らず、2mmよりも短ければよく、a−Si膜61を固相結晶化するときの基板60と噴出口18,181との距離は、5mmに限らず、2mm以上であればよい。
【0199】
さらに、内部空間21の圧力は、大気圧に限らず、0.1気圧〜10気圧程度の範囲であればよい。
【0200】
さらに、a−Si:H膜61は、プラズマCVD法によって形成されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、a−Si:H膜61は、熱CVD法によって形成されてもよい。
【0201】
但し、TFTおよびMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等のトランジスタを200℃〜300℃以下の低温プロセスによって作製する場合、a−Si:H膜61は、プラズマCVD法によって形成される。
【0202】
さらに、基板60は、石英に限らず、通常のガラスおよび樹脂性のフィルム等であってもよい。
【0203】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0204】
この発明は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体製造装置に適用される。また、この発明は、熱プラズマジェットを用いて粒径の異なる結晶シリコンを製造する半導体の製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0205】
1 架台、2 圧電素子、10 プラズマ源、11 陽極、12 絶縁体、13 導体、14陰極、15 ガス導入管、16 給水管、17 排出管、18 噴出口、19 中空部分、20 電源回路、21 内部空間、30 測定装置、40 制御装置、50 XYステージ、60 基板、61 a−Si膜、100 半導体製造装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを1mmφ以下の直径を有する噴出口から放射するプラズマ源と、
基板上に形成された非晶質シリコンを溶融結晶化するとき、前記基板と前記噴出口との距離を2mmよりも短い第1の距離に設定し、前記非晶質シリコンを固相結晶化するとき、前記距離を2mm以上の第2の距離に設定する距離設定装置とを備える半導体製造装置。
【請求項2】
1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、前記第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第1の噴出口から放射する第1のプラズマ源と、
1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、前記第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第2の噴出口から放射する第2のプラズマ源とを備える半導体製造装置。
【請求項3】
1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第1の噴出口から放射する第1のプラズマ源と、
前記第1のプラズマ源に隣接して設けられるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第2の噴出口を含み、前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第2の噴出口から放射する第2のプラズマ源と、
前記第1のプラズマ源を中心にして前記第2のプラズマ源の配置位置と略対称な位置に配置されるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口を含み、前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第3の噴出口から放射する第3のプラズマ源と、
前記第1および第2のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第2のプラズマ源を駆動し、または前記第1および第3のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第3のプラズマ源を駆動する駆動装置とを備え、
前記第1から第3の噴出口と基板との距離は、2mmよりも短い第1の距離、または2mm以上の第2の距離に設定される、半導体製造装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、基板上に形成され、かつ、水素を含む非晶質シリコンを前記第1のプラズマ源から前記第2のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、前記第1および第2のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第2のプラズマ源を駆動し、前記非晶質シリコンを前記第1のプラズマ源から前記第3のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、前記第1および第3のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第3のプラズマ源を駆動する、請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、前記第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第1の噴出口から放射する第1のプラズマ源と、
隣接する2つの熱プラズマジェットの間隔が第1の間隔になるように前記直流アーク放電によって発生された複数の熱プラズマジェットを略平行に放射する複数の第2のプラズマ源と、
前記第1のプラズマ源、または前記複数の第2のプラズマ源を駆動する駆動装置とを備え、
前記複数の第2のプラズマ源の各々は、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、前記第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、前記第2の噴出口から前記熱プラズマジェットを放射し、
前記駆動装置は、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のトランジスタを形成するとき、前記複数の第2の噴出口から前記複数の熱プラズマジェットを前記基板上に形成された非晶質シリコンに略平行に放射するように前記複数の第2のプラズマ源を駆動し、前記複数の画素の周辺に配置される周辺回路用のトランジスタを形成するとき、前記第1の噴出口から前記熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに放射するように前記第1のプラズマ源を駆動し、
前記第1の間隔は、前記複数のトランジスタの間隔と略同じである、半導体製造装置。
【請求項6】
基板上に非晶質シリコンを堆積する第1のステップと、
前記基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第2のステップと、
前記基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口から前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第3のステップとを備える半導体の製造方法。
【請求項7】
2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口から前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備え、
前記第4のステップは、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第2のステップの前に実行されるとともに、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第3のステップの前に実行される、請求項6に記載の半導体の製造方法。
【請求項8】
1mmφ以下の直径を有する第3の噴出口から前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備え、
前記第3の噴出口から前記非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度は、前記第1の噴出口から前記非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度および前記第2の噴出口から前記非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度よりも低く、
前記第4のステップは、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第2のステップの前に実行されるとともに、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第3のステップの前に実行される、請求項6に記載の半導体の製造方法。
【請求項1】
直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを1mmφ以下の直径を有する噴出口から放射するプラズマ源と、
基板上に形成された非晶質シリコンを溶融結晶化するとき、前記基板と前記噴出口との距離を2mmよりも短い第1の距離に設定し、前記非晶質シリコンを固相結晶化するとき、前記距離を2mm以上の第2の距離に設定する距離設定装置とを備える半導体製造装置。
【請求項2】
1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、前記第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第1の噴出口から放射する第1のプラズマ源と、
1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、前記第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第2の噴出口から放射する第2のプラズマ源とを備える半導体製造装置。
【請求項3】
1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含み、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第1の噴出口から放射する第1のプラズマ源と、
前記第1のプラズマ源に隣接して設けられるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第2の噴出口を含み、前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第2の噴出口から放射する第2のプラズマ源と、
前記第1のプラズマ源を中心にして前記第2のプラズマ源の配置位置と略対称な位置に配置されるとともに、2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口を含み、前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第3の噴出口から放射する第3のプラズマ源と、
前記第1および第2のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第2のプラズマ源を駆動し、または前記第1および第3のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第3のプラズマ源を駆動する駆動装置とを備え、
前記第1から第3の噴出口と基板との距離は、2mmよりも短い第1の距離、または2mm以上の第2の距離に設定される、半導体製造装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、基板上に形成され、かつ、水素を含む非晶質シリコンを前記第1のプラズマ源から前記第2のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、前記第1および第2のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第2のプラズマ源を駆動し、前記非晶質シリコンを前記第1のプラズマ源から前記第3のプラズマ源へ向かう方向に沿って結晶化するとき、前記第1および第3のプラズマ源が前記熱プラズマジェットを放射するように前記第1および第3のプラズマ源を駆動する、請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口を含むとともに、前記第1の噴出口と基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記第1の噴出口から放射する第1のプラズマ源と、
隣接する2つの熱プラズマジェットの間隔が第1の間隔になるように前記直流アーク放電によって発生された複数の熱プラズマジェットを略平行に放射する複数の第2のプラズマ源と、
前記第1のプラズマ源、または前記複数の第2のプラズマ源を駆動する駆動装置とを備え、
前記複数の第2のプラズマ源の各々は、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口を含むとともに、前記第2の噴出口と基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、前記第2の噴出口から前記熱プラズマジェットを放射し、
前記駆動装置は、表示装置の複数の画素に対応して設けられた複数のトランジスタを形成するとき、前記複数の第2の噴出口から前記複数の熱プラズマジェットを前記基板上に形成された非晶質シリコンに略平行に放射するように前記複数の第2のプラズマ源を駆動し、前記複数の画素の周辺に配置される周辺回路用のトランジスタを形成するとき、前記第1の噴出口から前記熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに放射するように前記第1のプラズマ源を駆動し、
前記第1の間隔は、前記複数のトランジスタの間隔と略同じである、半導体製造装置。
【請求項6】
基板上に非晶質シリコンを堆積する第1のステップと、
前記基板との距離が2mmよりも短い第1の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第1の噴出口から直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第2のステップと、
前記基板との距離が2mm以上の第2の距離に設定され、かつ、1mmφ以下の直径を有する第2の噴出口から前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第3のステップとを備える半導体の製造方法。
【請求項7】
2mmφ〜5mmφの範囲の直径を有する第3の噴出口から前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備え、
前記第4のステップは、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第2のステップの前に実行されるとともに、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第3のステップの前に実行される、請求項6に記載の半導体の製造方法。
【請求項8】
1mmφ以下の直径を有する第3の噴出口から前記直流アーク放電によって発生された熱プラズマジェットを前記非晶質シリコンに照射する第4のステップをさらに備え、
前記第3の噴出口から前記非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度は、前記第1の噴出口から前記非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度および前記第2の噴出口から前記非晶質シリコンに照射される熱プラズマジェットのパワー密度よりも低く、
前記第4のステップは、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第2のステップの前に実行されるとともに、前記第1のステップの後であり、かつ、前記第3のステップの前に実行される、請求項6に記載の半導体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−60810(P2011−60810A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205612(P2009−205612)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(596063056)公益財団法人ひろしま産業振興機構 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(596063056)公益財団法人ひろしま産業振興機構 (24)
【Fターム(参考)】
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