説明

半導体配線用金属薄膜、該金属薄膜を用いて形成される半導体配線、並びに半導体配線の製法

【課題】 第1の目的:半導体の配線幅を狭く設計しても該配線幅に対応する凹部に確実に埋め込むことのできる半導体配線用金属薄膜を提供する。第2の目的:上記半導体配線用金属薄膜を半導体基板に設けられた凹部に埋め込むことにより形成される半導体配線を提供する。第3の目的:こうした半導体配線を製造する方法を提供する。
【解決手段】 上記第1の目的を解決できる半導体配線用金属薄膜とは、凹部を有する半導体基板の表面に積層される金属薄膜であって、前記金属薄膜は、Cu系金属で構成される薄膜が、Cu系以外の金属で構成される1つ以上の薄層で分断されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものであり、より具体的には、半導体に設けられている配線を形成する際に用いる金属薄膜、該金属薄膜を用いて形成される半導体配線、並びに半導体配線を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体は、益々高性能化が進んでおり、高速化や高集積化が求められている。半導体の高速化を実現するには、信号伝達遅延の原因となる配線膜の電気抵抗を極力低減することが有効である。そのため配線膜の素材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、「Al系金属」と称することがある)から銅または銅合金(以下、「Cu系金属」と称することがある)に代わってきている。また、高速動作を可能とするには回路の高集積化が望ましく、配線幅をできるだけ狭くする必要がある。そのため従来は配線幅が0.25μm前後の半導体が主流であったが、近年では配線幅は益々狭くなる傾向がある。
【0003】
一方、半導体の高集積化を実現するために、近年では配線を多層構造にすることが検討されている。多層構造の配線を形成する方法としてはダマシン法があり、この方法は、半導体基板上に形成した絶縁膜(例えば、Si酸化膜等)に、配線を埋め込むための溝や配線同士を接続するための孔(トレンチ・ビア)等の配線パターン(以下、溝や孔をまとめて「凹部」と呼ぶことがある)を予め形成した後、スパッタリングによって表面にバリア膜を形成し、次いで電気メッキによってCu系金属を前記凹部に埋没させた後、余分なCu系金属を化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理することによって配線を形成する。そして研磨後の表面に新たな絶縁膜を形成して上記プロセスを繰り返すことにより多層構造の配線を形成する方法である。上記凹部の幅(即ち、配線幅)が大きければ、電気メッキによってCu系金属を該凹部に容易に埋め込むことができる。
【0004】
しかし上述した如く近年の半導体の配線幅は益々狭くなる傾向があるが、配線幅を狭くしようとすると必然的に凹部の幅も狭くなる。そのため該凹部にCu系金属が浸入せず、半導体配線を形成できないという問題があった。
【0005】
Cu系金属を凹部に埋め込む方法としては、特許文献1の技術が先に提案されている。この技術はCu系配線膜の加圧押込方法であり、孔もしくは溝が形成された基板の絶縁膜表面を、物理蒸着法(具体的には、スパッタリング法)によりCu系の配線膜材料で被覆した後、該配線膜材料の融点以下の温度で、高圧のガス圧力を作用させて、該配線膜材料を塑性流動もしくは拡散させることによって孔もしくは溝に埋め込むものである。そしてこの文献には、物理蒸着法による成膜を、対象部材の温度を200〜400℃程度とした高温で行った後、高圧ガスによる押込み処理を行うことが記載されている。しかし本発明者らが検討したところ、孔もしくは溝の幅が一段と狭くなると、該孔もしくは溝に上記Cu系配線膜材料が埋め込まれないことがあることが分かり、改善の余地が残されていた。
【特許文献1】特開平11−260820号公報([特許請求の範囲]、[0011]、[0013]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術において、半導体基板の表面に設けた凹部内にCu系配線膜材料が埋め込まれないことがある理由について検討したところ、スパッタリング法で形成したCu系配線膜材料は、例えば電気メッキ法で形成したCu系配線膜材料よりも高温での流動性(以下、リフロー性と称することがある)が悪いことが原因であることが判明した。
【0007】
そこで本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体配線を製造する際に用いられる金属薄膜あって、半導体の配線幅を狭く設計しても該配線幅に対応する凹部に確実に埋め込むことのできる半導体配線用金属薄膜を提供することにある。本発明の他の目的は、上記半導体配線用金属薄膜を半導体基板に設けられた凹部に埋め込むことにより形成される半導体配線を提供することにある。更に他の目的は、こうした半導体配線を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
凹部を有する半導体基板の表面にスパッタリング法で積層される金属薄膜について、高温時のリフロー性を高める観点から鋭意検討を重ねたところ、半導体基板の表面に積層するCu系の金属薄膜を、Cu系以外の金属薄層で分断し、上記金属薄膜の厚み方向にCu系金属薄層とCu系以外の金属薄層が積層するように構成すれば、Cuの結晶粒径を著しく小さくできること、そして半導体基板の表面に成膜した段階でCuの結晶粒径を小さくしておけば、この金属薄膜を高温高圧処理したときにCuの結晶粒が充分に成長していくことによってリフロー性が高まることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明に係る半導体配線用金属薄膜とは、凹部を有する半導体基板の表面に積層される金属薄膜であって、前記金属薄膜は、Cu系金属で構成される薄膜が、Cu系以外の金属で構成される1つ以上の薄層で分断されたものである点に要旨を有する。
【0010】
前記Cu系以外の金属薄層の結晶構造は、(a)前記Cu系金属薄膜の格子定数よりも5%以上異なる格子定数を有する面心立方晶であるか、(b)前記Cu系以外の金属薄層の結晶構造が、体心立方晶または六方最密晶であると、金属薄膜に欠陥が導入されるため、リフロー性を一段と高めることができる。
【0011】
前記Cu系以外の金属としては、例えば、Au,Pd,W,Mo,AlまたはAgよりなる群から選ばれる金属の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0012】
成膜後のCu系金属の結晶粒はできるだけ小さいことが好ましく、前記Cu系以外の金属薄層で分断されることによって形成されるCu系金属薄層の厚さをa、該薄層中のCu系金属の結晶粒径をbとしたとき、b≦2a、の関係を満足する金属薄膜が推奨される。
【0013】
前記Cu系以外の金属薄層で分断されることによって形成されるCu系金属薄層の厚さは、1層当たり100〜2000Åであり、前記Cu系以外の金属薄層の厚さは、1層当たり10〜100Åとすることが好ましい。
【0014】
前記Cu系金属薄層は、2〜10層含むものとすることが好ましい。
【0015】
本発明に係る半導体配線とは、凹部を有する半導体基板の表面に、上記金属薄膜を積層した後、高温高圧処理して前記金属薄膜を前記凹部内に埋め込むことによって形成されたものである。
【0016】
本発明に係る半導体配線の製法とは、凹部を有する半導体基板の表面に、Cu系金属で構成される薄膜をスパッタリング法で形成した後、Cu系以外の金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程とCu系金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程を1回以上繰り返すことによって半導体配線用金属薄膜を形成し、次いで高温高圧処理して前記金属薄膜を前記凹部内に埋め込むことによって配線を形成する点に要旨を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、Cu系金属薄層中のCuの結晶粒が微細化されるため、こうしたCu系金属薄層を含む金属薄膜を高温高圧処理すれば微細化されたCuの結晶粒が充分に結晶粒成長するため、リフロー性が向上する。その結果、半導体の配線幅を狭く設計しても該配線幅に対応する凹部に確実に埋め込むことのできる半導体配線用金属薄膜を提供できる。また本発明によれば、配線幅を狭く設計しても上記半導体配線用金属薄膜は半導体基板に設けられた凹部に確実に埋め込まれるため、良好な特性を示す半導体配線を提供できる。更に本発明によれば、こうした半導体配線を確実に製造できる方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
凹部を有する半導体基板の表面にスパッタリング法で積層される金属薄膜について、高温に加熱したときのリフロー性を高めるには、成膜後の金属薄膜におけるCuの結晶粒径をできるだけ微細化することが重要である。
【0019】
即ち、スパッタリング法で成膜される金属薄膜に高温高圧処理を施した際に高温時におけるリフロー性が悪い原因は、成膜後に金属薄膜の多結晶組織が安定化するところにあるのではないかと本発明者らは考えた。つまりスパッタリング法で成膜されたCu系金属薄膜中のCuの平均結晶粒径は、膜厚と同程度にまで成長する。例えば、スパッタリング法で成膜されたCu系金属薄膜の膜厚が1μmであれば、Cu系金属薄膜中のCuの平均結晶粒径は1μm程度にまで成長する。そのため、一般に半導体表面に積層されるCu系金属薄膜の厚さは、上記凹部の幅(開口幅)や深さ(即ち、凹部の容積)によって異なるが、少なくとも1000Å程度であり、最大では20000Å程度である。よってCu系金属薄膜をスパッタリング法で単一層として設けると、Cuの結晶粒は膜厚程度にまで粗大化して1000〜20000Å程度となる。
【0020】
こうした粗大化の原因は、Cuは室温時効(セルファニール)を起こすという極めて特殊な金属だからという点にあると考えられる。そのためスパッタリング直後の状態(As−deposited状態)ではCu系金属薄膜中のCu結晶が微結晶であっても、室温に放置すると室温時効して一次再結晶を起こし、結晶粒が粗大化するのである。このときCu結晶の粗大化に伴い、結晶粒界は金属薄膜の厚さ方向に貫通するように形成される。そしてこうした金属薄膜に高温高圧処理を施しても、金属薄膜中の結晶粒界は安定に存在するため、Cu薄膜は移動・変形せず、リフロー性が悪くなると本発明者らは考えたのである。
【0021】
そこで高温時における金属薄膜のリフロー性を向上させるには、スパッタリングで成膜した金属薄膜の多結晶組織を不安定化すればよいのではないかと考え、検討を進めた。その結果、金属薄膜の多結晶組織を不安定化するには、金属薄膜中のCu結晶粒を微細化すればよいことに想到した。そしてCuの結晶粒を微細化するには、Cu系金属で構成される薄膜(以下、Cu系金属薄膜と略すことがある)が、Cu系以外の金属で構成される1つ以上の薄層で分断されていればよいことが明らかとなった。
【0022】
即ち、半導体基板の表面に積層される金属薄膜を、Cu系金属薄膜がCu系以外の金属で構成される1つ以上の薄層で分断される構成とし、Cu系金属薄層とCu系以外の金属薄層が積層した積層構造とする。Cu系以外の金属は、通常、室温時効を起こさないため、As−deposited状態を維持することになる。そのためCu系金属薄層とCu系以外の金属薄層を積層した金属薄膜にすれば、該金属薄膜を室温に放置してもCu系金属薄層中のCu結晶粒は室温時効して粗大化するが、Cu系以外の金属薄層中の金属は室温時効起こさないためAs−deposited状態を維持する。その結果、Cuの結晶粒が成長しようとしても、Cu系以外の金属で挟まれたCu系金属薄層の厚さは小さいため、該Cu系金属薄層中のCu結晶粒は粗大化せず、微細なままとなる。
【0023】
このときCu系金属薄膜をCu系以外の金属薄層で分断することにより、半導体基板の表面に積層すべきCu系金属量を変えることなく(つまり、Cu系金属層の合計厚さを維持しながら)、夫々のCu系金属薄層の厚さのみを小さくできる。そしてこうした積層構造の金属薄膜に高温高圧処理を施すと、Cu系以外の金属薄層はCu系金属薄層中に一旦固溶して消滅し、Cu系金属中にCu系以外の金属が固溶した金属薄膜となる。このときCu系以外の金属薄層は消滅するため、Cuの結晶粒は金属薄膜全体の厚さ程度にまで成長しつつ半導体表面に設けられた凹部に埋め込まれる。その結果、金属薄膜のリフロー性が高まる。なお、一旦固溶したCu系以外の金属は、冷却時には状態図の組織となるため、こうした金属は最終的に形成された配線中に固溶、析出、共晶等の状態で存在していると考えられる。
【0024】
半導体表面に設けられた凹部とは、半導体配線を形成するための空間であり、配線を埋め込むための溝や配線同士を接続するための孔(トレンチ・ビア)等の配線パターンを総称したものである。この凹部に金属薄膜を埋め込むことによって半導体配線が形成される。
【0025】
凹部の最小幅は0.2μm程度以下である。0.2μmを超える場合は、本発明の半導体配線用金属薄膜を用いなくとも、例えば電気メッキ法で通常のCu系金属を凹部に容易に埋め込むことができる。これに対し、本発明で形成しようとする配線の幅は狭く、その配線に対応する凹部の幅も電気メッキ法では直接Cu合金を埋め込むことのできないレベルのものである。本発明の半導体配線用金属薄膜を用いれば凹部の最小幅を0.1μm以下、更には0.07μm以下にまで狭めても良好に配線を形成できる。
【0026】
凹部の深さは0.3μm程度以上である。凹部の深さが浅ければ、本発明の半導体用金属薄膜を用いなくとも、例えば電気メッキ法でCu系金属を凹部に埋め込むことができる。これに対し、本発明の半導体配線用金属薄膜を用いれば凹部の深さが0.3μm程度以上、更には0.5μm以上であっても確実に配線を形成できる。
【0027】
ここで、凹部の最小幅とは、金属薄膜を埋め込む対象が溝の場合は、該溝の開口部のうち、最も狭い部分の距離を指す。一方、金属薄膜を埋め込む対象が孔の場合は、該孔の開口部の直径を指し、例えば、孔が楕円の場合は短径を指す。なお、絶縁膜に幅の異なる複数の溝や孔が形成されている場合は、溝の幅や孔の直径(もしくは短径)のうち、最も短いものが上記要件を満足していればよい。
【0028】
Cu系金属とは、Cuを主体とする金属を指し、純Cu(純度:99.99〜99.9999%)またはCu合金を用いることができる。Cu合金とは、SiやTiなどの合金元素を数質量%以下含むものであり、その結晶構造はAs−doposited状態で面心立方構造(fcc)である。好ましくは純Cuを用いる。Cu系金属で構成される薄膜とは、純CuまたはCu合金からなる薄膜を意味する。
【0029】
Cu系金属で構成される薄層は、互いに同一の成分組成の金属で構成してもよいし、異なる成分組成の金属で構成してもよい。
【0030】
Cu系以外の金属とは、上記Cu系金属を除いた金属であって、室温時効時にCu系金属中のCu結晶の粒成長を抑制可能である限りその種類は特に限定されない。但し、後述する高温高圧処理を施すことによってCu系金属に一旦固溶する金属でなければならない。高温高圧処理後にCu系以外の金属が固溶せずに残ると、Cu系以外の金属は半導体基板に設けられた凹部を覆うことになり、Cu系以外の金属薄層の上に設けたCu系金属薄層が凹部に埋め込まれないからである。また、Cu系以外の金属は、Cu系金属の電気抵抗を高めないものを選択する必要がある。Cu系金属の電気抵抗を高めてしまうと、配線の電気抵抗を高めることになり、半導体としての特性が劣化するからである。
【0031】
こうした観点から、Cu系以外の金属としては、Au,Pd,W,Mo,AlまたはAgよりなる群から選ばれる金属の少なくとも1種であることが好ましい。この金属は、純金属(純度:99.99%程度)であってもよいし、合金であってもよい。好ましくは純Agか、Ag合金である。なお、Cu系以外の金属としては、Cu系金属薄膜を分断することによる効果を損なわない範囲であれば微量のCuを含んでいてもよいが、好ましくは実質的にCuを含まない金属である。「実質的に」とは、Cuの含有量が0.1質量%以下であるか、不可避不純物レベルであることを意味する。Cu系以外の金属で構成される薄層とは、Cu系以外の純金属または合金からなる薄層を意味する。
【0032】
Cu系以外の金属で構成される薄層は、1層でもよいし、2層以上でもよい。即ち、上記Cu系金属薄膜を少なくとも2層に分断できればよく、もちろん3層以上に分断されていてもよい。Cu系以外の金属で構成される薄層を複数設ける場合は、該複数の薄層を、互いに同一の金属で構成してもよいし、異なる金属で構成してもよい。
【0033】
ところで半導体基板の表面に上記Cu系金属薄層とCu系以外の金属薄層を積層して形成される金属薄膜の高温高圧処理時におけるリフロー性を更に高めるには、金属薄膜中に欠陥を導入することが有効である。金属薄膜中に転位や原子空孔などの欠陥が多く存在すると、加熱(例えば、300〜500℃)したときに欠陥が回復し、このとき原子拡散が起こってCu結晶粒の軟化や変形が促進される。例えば、電解メッキ法で形成したCu系金属薄膜は多数の空孔を有しており、Bulk−Cuの融点付近で熱平衡となる程度の原子空孔量となる。これに対し、スパッタリング法で形成したCu系金属薄膜は、前記電気メッキ法で形成したCu系金属薄膜に比べて原子空孔量が少ない薄膜となる。そのためリフロー性が低下すると考えられる。
【0034】
そこで本発明者らはスパッタリングで形成した金属薄膜のリフロー性を向上させるために、薄膜中の欠陥量を増加させる方策について検討したところ、前記Cu系以外の金属薄層の結晶構造が、(a)前記Cu系金属薄膜の格子定数よりも5%以上異なる格子定数を有する面心立方晶であるか、(b)体心立方晶または六方最密晶であればよいことを見出した。
【0035】
即ち、Cu系金属薄層とCu系以外の金属薄層との結晶構造に違い(差)が生じれば、Cu系金属薄層とCu系以外の金属薄層との界面で、結晶格子定数の差による不整合転位が生じる。この不整合転位による欠陥が増加することによって、結晶の塑性変形が促進され、結晶粒が軟化し、金属薄膜のリフロー性が向上する。
【0036】
Cu系金属薄層の結晶構造は面心立方晶(fcc)のため、Cu系以外の金属薄層は面心立方晶以外の結晶構造、即ち、体心立方晶であるか、六方最密晶であることが好ましい。体心立方格晶(bcc)の金属としては、例えば、WやMo、Ta、Crなど、ちゅう密六方結晶(hcp)の金属としては、例えば、TiやZr,Coなどを好適に用いることができる。
【0037】
但し、Cu系以外の金属薄層の結晶構造は面心立方晶であってもかまわない。この場合は、上記Cu系金属薄膜の格子定数よりも5%以上異なる格子定数を有する面心立方晶であることが推奨される。結晶構造が面心立方晶でも、格子定数が5%以上異なると、こうした面心立方晶の金属を積層しても薄膜と薄層の界面に不整合転位が多く導入され、しかも一般的に知られているように格子定数が5%以上異なる界面ではエキタピシー成長しないためCu結晶粒が粗大化せず、金属薄膜のリフロー性が向上する。
【0038】
一般に格子定数とは、単位格子の三つの次元方向への長さと、相互の角度を意味するが、本発明において格子定数とはaの値(格子定数a)を指し、角度αは90°である。面心立方晶や体心立方晶の結晶格子の特性を左右する長は格子定数aだからである。従ってCu系以外の金属薄層の結晶構造が、前記Cu系金属薄膜の格子定数aよりも5%以上異なる格子定数aを有する面心立方晶であればよい。
【0039】
Cu以外の金属のなかでも面心立方晶の金属としては、例えば、AuやAg、Al、Pdなどが挙げられる。
【0040】
Cu系以外の金属薄層で分断されることによって形成されるCu系金属薄層の厚さをa、該Cu系金属薄層中のCu系金属の最大結晶粒径をbとしたとき、b≦2a、の関係を満足することが望ましい。Cu系金属の結晶粒は、膜厚程度にまで成長するが、まれに粗大化する場合がある。粗大なCuの結晶粒が多く存在すると、高温高圧処理時のリフロー性が悪くなり、半導体基板の表面に形成した金属薄膜を完全に凹部に埋め込むことができない。このような粗大化を防止することによってリフロー性を更に改善できる。好ましくは、b≦a、の関係を満足するのがよい。こうした関係は、Cu系以外金属薄層で分断されているCu系金属薄層の少なくとも一つ、好ましくは全てのCu系金属薄層において満足していることが推奨される。
【0041】
Cu系金属の最大結晶粒径が上記範囲を満足させるには、Cu系金属薄層の厚さをできるだけ小さくすればよい。また、スパッタリング時に不活性ガス圧を高めたり、基板温度を低くすればよい。
【0042】
Cu系金属薄層の厚さは高分解能透過型電子顕微鏡(例えば、日立製作所社製の「H900型」)で観察して測定できる。該薄層中のCuの結晶粒径は、20000〜30000倍で、SIM像を撮影して画像解析することで測定できる。観察視野数は3箇所とし、測定結果のうち最大の結晶粒径bが上記範囲を満足していればよい。
【0043】
Cu系金属薄層の厚さは、100〜2000Åとする。Cu系金属薄層の厚さは小さいほどCuの結晶粒が成長せず、微細化するのに有効である。しかし上述したように、半導体表面に積層されて形成される金属薄膜の厚さは、半導体表面に設けられた凹部の開口幅や深さにより変動するが、少なくとも1000Å程度は必要である。そのためCu系金属薄層の厚さを1層当たり100Å未満とすると、例えば1000Å分積層する場合にはCu系金属薄層を10層以上設ける必要がある。そのため生産性が著しく低下する。好ましくは500Å以上である。一方、Cu系金属薄層の厚さが1層当たり2000Åを超えると、膜厚の増加に伴ってCuの結晶粒が粗大化するため、高温高圧処理時におけるリフロー性が悪くなる。好ましくは1000Å以下である。
【0044】
Cu系金属薄層は2〜10層とする。本発明の半導体配線用金属薄膜は、Cu系金属で構成されている薄膜が、Cu系以外の金属で構成される1つ以上の薄層で分断されているため、Cu系金属薄膜は少なくとも2層に分断されている。ここで、半導体基板の表面に積層される金属薄膜の膜厚を一定とした場合、Cu系以外の金属で構成されている薄層の数を増やし、Cu系金属薄層の数を多くすると、金属薄膜中のCu系金属薄層の個々の厚さは小さくなる。そのためCu系金属薄層中のCuの結晶粒は一段と微細化される。よってCu系金属薄層は多いほど好ましい。好ましくは3層以上である。しかしCu系金属薄層の数が多くなると、Cu系金属薄層とCu系以外の金属薄層を繰り返し積層しなければならず、生産性を低下させ、生産コストを高める。そのためCu系金属薄層の上限値は10層とする。好ましくは6層以下である。
【0045】
なお、半導体基板の表面に積層する金属薄膜の厚さは、最大でも20000Å程度であるが、Cu系金属薄層中のCuの平均結晶粒径が2000Å以下であればCuの結晶粒が微細化され、高温高圧処理時のリフロー性が向上する。こうした観点からもCu系金属薄層の数は10層を上限とする。
【0046】
Cu系以外の金属薄層の厚さは10〜100Åとする。Cu系以外の金属薄層の厚さは、Cu系金属の結晶粒の粗大化を抑止できる範囲であれば特に限定されないが、Cu系以外の金属薄層の厚さが小さすぎると、Cu系金属の結晶粒が該薄層を貫通して成長する可能性がある。そのためCu系以外の金属薄膜の厚さは、少なくとも10Åは必要である。好ましくは20Å以上である。Cu系金属の結晶粒の成長を確実に抑止するには、Cu系以外の金属薄層の厚さをできるだけ大きくすることが好ましい。しかしCu系以外の金属薄層の厚さが大き過ぎると、半導体基板の表面に積層する金属薄膜の厚さ自体はある程度決まっているため、該金属薄膜中に占めるCu系以外の金属の含有量が増加する。そのため高温高圧処理して金属薄膜を凹部に埋め込んで得られる配線の成分組成が、Cu系金属とCu系以外の金属との合金になる。配線が合金になると、配線の電気抵抗が大きくなる場合があり、半導体としての特性を劣化させる原因となる。そこで半導体基板の表面に積層させる金属薄膜中に含まれるCu系以外の金属量はできるだけ少なくするのがよい。そのためCu系以外の金属薄層の厚さは100Å以下とする。好ましくは50Å以下である。
【0047】
次に、本発明の半導体配線を製造する方法について説明する。
【0048】
本発明の半導体配線は、凹部を有する半導体基板の表面に、Cu系金属で構成される薄膜をスパッタリング法で形成した後、Cu系以外の金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程とCu系金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程を1回以上繰り返すことによって半導体配線用金属薄膜を形成し、次いで高温高圧処理して前記金属薄膜を前記凹部内に埋め込むことによって配線が形成される。
【0049】
即ち、半導体基板の表面に、Cu系金属で構成される薄膜をスパッタリング法で形成した後、Cu系以外の金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程とCu系金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程をこの順で1回以上繰り返すことが重要である。Cu系金属とCu系以外の金属を積層し、Cu系金属で構成される薄膜が、Cu系以外の金属で構成される1つ以上の薄層で分断された構造とする。
【0050】
スパッタリング条件は特に限定されず、公知の条件を採用できる。例えば、成膜温度:−20〜300℃、成膜時の雰囲気ガス;不活性ガス(不活性ガスとしては、ArやN2など公知のものを使用できる)、成膜ガス圧力;0.133〜1.33Pa(1〜10ミリTorr)、放電電力;1〜5W/cm2、極間距離;40〜70mm、とすればよい。
【0051】
本発明の製法のポイントは、Cu系金属薄層とCu系以外の金属薄層をスパッタリング法で積層するとことにあり、他の条件は限定されず、公知の条件を採用できる。
【0052】
凹部を有する半導体基板は、公知の方法で形成されたものを用いることができる。即ち、半導体基板(例えば、シリコンウエハー)の表面に、絶縁膜を形成し、次いで配線を埋め込むための溝や配線同士を接続するための孔(トレンチ・ビア)等の配線パターン(凹部)を形成する。
【0053】
絶縁膜を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。絶縁膜としては、酸化シリコンや窒化シリコン、BSG(Boro-Silicate Glass)、PSG(Phospho-Silicate Glass)、BPSG(Boro-Phospho-SilicateGlass)等を形成すればよい。
【0054】
また、配線パターンを形成する方法も特に限定されず、公知の方法を採用できる。本発明では、配線パターンの最小幅が0.1μm程度以下(0μmを含まない)で、深さは0.3μm程度以上の凹部にも金属薄膜を埋め込むことができ、配線を形成できる。
【0055】
絶縁膜の表面には、スパッタリングによってバリア膜を形成する。絶縁膜に形成した凹部に直接Cu合金を埋め込むと、Cuが絶縁膜方向へ拡散して絶縁膜の特性を損なうことがある。そこでこうしたCuの拡散を防止するために、絶縁膜とCu合金の間にバリア膜を形成する。
【0056】
バリア膜としては種々の素材が検討されているが、バリア性(即ち、より高温でCuの拡散を抑える特性)が良好なためTiNやTaNを形成すればよい。
【0057】
バリア膜の厚さは、Cuが絶縁膜へ拡散するのを防止できる程度であればよく、数nm〜数十nm程度である。具体的には、5〜50nm程度である。但し、バリア膜の膜厚を過度に厚くすると、半導体装置の小型化にマイナスとなるので好ましくない。
【0058】
半導体基板の表面に金属薄膜を形成した後には、高温高圧処理する。高温高圧処理することによって前記凹部に前記金属薄膜を埋め込み、配線を形成することができる。このとき高温高圧処理することで、空隙以外の微小な気孔や気泡も消滅する。
【0059】
処理温度は400℃以上とする。400℃未満では温度が低すぎるため、Cuの高温流動性が充分得られず、圧力を加えても金属薄膜を凹部に埋め込むことができない。好ましくは450℃以上である。処理温度の上限は特に制限されないが、600℃を超えると半導体装置を構成する他の部分(例えば、半導体基板自体やバリア膜など)へダメージを与えてしまうため、実用的ではない。よって処理温度は600℃以下とする。好ましくは500℃以下である。
【0060】
処理圧力は150MPa以上とする。150MPa未満では圧力低すぎるため、金属薄膜の流動性が充分に得られても金属薄膜を凹部に埋め込むことができない。好ましくは170MPa以上である。処理圧力の上限は特に制限されないが、200MPaを超えると高圧になり過ぎるため実用的ではない。よって処理圧力は200MPa以下とする。好ましくは190MPa以下である。
【0061】
処理時間は特に限定されないが、最高温度での保持時間を120分程度以下とすれば充分にCu合金を凹部に埋め込むことができる。処理雰囲気は不活性雰囲気下であれば特に限定されず、ArやN2雰囲気下で処理すればよい。
【0062】
高温高圧処理後、不要なCu合金を化学機械的研磨(CMP)処理することによって配線を形成する。そして研磨後の表面に新たな絶縁膜を形成して上記プロセスを繰り返すことにより多層構造の配線を形成できる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
実験例1
高温高圧処理時における金属薄膜のリフロー性をスクリーニングするために、金属薄膜の応力−温度曲線を求めた。応力−温度曲線からは、金属薄膜を加熱または冷却したときの応力変化が分かり、この応力変化から金属薄膜の高温における弾塑性変形挙動を予測でき、高温高圧処理時における金属薄膜のリフロー性の良し悪しを判断できる。応力−温度曲線を求めるための金属薄膜(供試体)は、次の手順で形成した。
【0065】
供試体A
直径2インチのシリコンウエハー表面に、バリア層としてTaN膜(厚さ:500Å)を形成した後、DCマグネトロンスパッタリング法で金属薄膜を形成し、供試材Aを得た。金属薄膜は、純Cu薄層(厚さ:2000Å)4層と、純Ag薄層(厚さ:40Å)3層を、純Cu薄層と純Ag薄層が交互になるように繰り返して積層した。
【0066】
上記TaN膜はスパッタリング法で形成した。スパッタリングターゲットとしては純Ta(純度:99.99%)を用い、Ar+N2ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングを行った。スパッタリング条件は、温度:20℃、DCマグネトロンスパッタリングした。
【0067】
純Cu薄層と純Ag薄層はDCマグネトロンスパッタリング法で形成した。純Cu薄層は、スパッタリングターゲットとして純度:99.99%の純Cuを用い、純Ag薄層は、スパッタリングターゲットとして純度:99.99%の純Agを用い、Arガス雰囲気中でスパッタリングを行った。このときのスパッタリング条件は温度:20℃、DCマグネトロンスパッタリングした。
【0068】
TaN膜や純Cu薄層、純Ag薄層の膜厚は、スパッタリング条件のうち処理時間を調整すれば制御できる。膜厚は、金属薄膜の断面を、高分解能透過型電子顕微鏡(日立製作所社製「H9000型」:TEM)で、50万倍で観察して確認した。
【0069】
供試材B
直径2インチのシリコンウエハー表面に、バリア層としてTaN膜(厚さ:500Å)を形成した後、DCマグネトロンスパッタリング法で金属薄膜を形成し、供試材Bを得た。金属薄膜は、純Cu薄膜(厚さ:8000Å)を単層形成した。TaN膜および純Cu薄膜を形成する際の条件は、上記供試体Aの場合と同じとした。
【0070】
得られた供試体AとBを、室温から500℃まで加熱冷却速度を5℃/minとして昇温および降温させた。このとき金属薄膜の応力変化を、その場測定(in−situ)し、応力−温度曲線を求めた。なお、金属薄膜のin−situ応力の測定は、光てこ法にて行った。供試材Aに積層した金属薄膜の応力−温度曲線を図1に、供試材Bに積層した金属薄膜の応力−温度曲線を図2に夫々示す。
【0071】
図2から明らかなように、金属薄膜を純Cuの単層とした場合は、加熱過程(Heating)における応力緩和の程度が小さく、冷却過程(Cooling)では温度に対して応力が直線的に変化しており、弾性変形していることが分かる。
【0072】
一方、図1から明らかなように、金属薄膜を純Cu薄膜が純Ag薄層で分断されるように積層した場合は、加熱過程における応力は常に0よりも小さく、冷却過程では200℃までの応力は0よりも小さく、200℃より低温になると温度に対して応力が直線的に変化し、弾性変形することが分かる。即ち、金属薄膜を純Cu薄層と純Ag薄層の積層構造にすると、応力緩和(即ち、薄膜の軟化)が起こっていることがわかる。
【0073】
実験例2
上記実験例1で得られた供試材AおよびBを用い、これを熱処理して熱処理前後における金属薄膜の組織変化を観察した。
【0074】
熱処理は、真空中で、500℃で、5分間保持して行った。このとき加熱冷却速度は5℃/minとした。
【0075】
金属薄膜の組織は、金属薄膜に対して厚さ方向の断面をFIB装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI9200型」)で加工して露出させ、この断面をFIB装置のSIM像(イオンで励起された二次電子像)で観察した。供試材Aの断面写真を図面代用写真として図3に、供試材Bの断面写真を図面代用写真として図4に夫々示す。
【0076】
熱処理前後における金属薄膜中のCuの結晶粒径は、5万倍でSIM像を撮影し、これを画像解析して測定した。観察視野は5μm×5μmとし、断面の任意の1箇所とした。
【0077】
図4から明らかなように、純Cu薄膜を単層形成した場合は、熱処理前(As−deposited状態)のCuの結晶粒は大きく、金属薄膜の厚さ方向に貫通している結晶粒界が多数観察された。金属薄膜のCuの平均結晶粒径を算出すると8200Åであり、該平均結晶粒径は膜厚とほぼ同程度であった。しかし、結晶粒径が膜厚の4倍程度に相当する粗大なCu結晶粒がいくつも観察され、最大結晶粒径は37000Åであった。
【0078】
一方、熱処理後のCuの平均結晶粒径は、熱処理前とほとんど変わらず、熱処理しても粒成長(再結晶)はほとんど起きない。即ち、As−deposited状態と同様の多結晶構造を有していることが分かる。
【0079】
これに対し、図3から明らかなように、純Cu薄層と純Ag薄層を積層した場合は、熱処理前においては、金属薄膜(純Cu薄膜)が純Ag薄層で4層に分断されていることが分かる。各純Cu薄層におけるCuの平均結晶粒径を算出したところ、各純Cu薄層におけるCuの平均結晶粒径は1650Åであり、各薄層の厚さとほぼ同程度であった。しかし、結晶粒径が膜厚の2倍を超える粗大なCu結晶粒は認められず、最大結晶粒径は1900Åであり、微細な多結晶構造を有していることが分かる。
【0080】
一方、熱処理するとCuの結晶粒は粗大化し、大きな多結晶構造を有している。このとき純Ag薄層は消失し、著しいCuの粒成長が起こっている。
【0081】
以上の結果から、Cu系金属薄膜をCu系以外の金属薄層で分断すると、熱処理前のCuの結晶粒を微細化でき、しかも熱処理すればCuの結晶粒が著しく成長し、このとき原子拡散も起こすためリフロー性が向上する。
【0082】
実験例3
直径2インチのシリコンウエハー表面に、絶縁膜(TEOS膜:SiOF膜)を厚さ:8000Å形成し、この絶縁膜に、直径:0.18μm、深さ:0.55μm、ピッチ:450nmのビアを複数個設けて評価素子(TEG)を得た。
【0083】
得られたTEGの表面に、バリア層としてTaN膜を設けた。TaN膜は、スパッタリング法で形成し、スパッタリングターゲットとしては純Taを用い、Ar+N2ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。スパッタリング条件は公知の条件で行った。ビアの底面および側面に設けられたTaN膜の厚さは50nmであった。
【0084】
次に、バリア層を設けたTEGに、純Cu薄層をスパッタリング法で形成した後、純Ag薄層と純Cu薄層がこの順で交互になるようにスパッタリングし、ビアの開口部を金属薄膜でブリッジングした。このとき純Cu薄層と純Ag薄層の膜厚、純Cu薄層の数を下記表1に示すように変化させた。膜厚は断面を50万倍でTEM観察して測定した。
【0085】
純Cu薄層は純Cu、純Ag薄層は純Agを夫々スパッタリングターゲットとして用い、Ar雰囲気中でスパッタリングした。純Cu薄層と純Ag薄層を設ける際のスパッタリング条件は温度:20℃、DCマグネトロンスパッタリングとした。
【0086】
純Cu薄層と純Ag薄層の結晶構造をTEMの制限視野電子線回折で測定したところ、純Cu薄層は格子定数aが3.6150の面心立方晶、純Ag薄層は格子定数aが4.0861の面心立方晶であった。
【0087】
次に、ブリッジングしたTEGを高温高圧処理した。処理条件は、処理圧力:200MPa、処理温度(最高到達温度):600℃、最高到達温度での保持時間:15分間、昇降温速度:20℃/min、とした。
【0088】
高温高圧処理した各TEGについて、15個のビア部の断面をFIB装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI9200型」)で加工して露出させ、この断面をFIB装置のSIM像(イオンで励起された二次電子像)で観察し、金属薄膜がビア部に埋め込まれているかどうかを評価した(埋め込み特性)。埋め込み特性の評価基準は、任意に観察した15個のビアのうち、全てのビアに完全に金属薄膜が埋め込まれている場合を合格(○)、完全にCuが埋め込まれていないビアが1個の場合を合格(△)、完全にCuが埋め込まれていないビアが2個以上あれば不合格(×)とした。評価結果を下記表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から明らかなように、本発明で規定する要件を満足する例は、全てのビアに完全に金属薄膜を埋め込むことができた。No.2は、純Cu薄層の膜厚が大きい例であり、Cuの結晶粒が粗大化するため埋め込み結果は優れなかった。No.7は純Ag薄層の膜厚が大きい例であり、金属薄膜を完全に埋め込むことができない。No.11は純Ag薄層の膜厚が小さすぎる例であり、Cu系以外の金属薄層でCu系金属薄層を分断する効果がほとんど得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】供試材Aに積層した積層薄膜の応力−温度曲線を測定した結果を示すグラフである。
【図2】供試材Bに積層した単層薄膜の応力−温度曲線を測定した結果を示すグラフである。
【図3】供試材Aの断面写真(図面代用写真)である。
【図4】供試材Bの断面写真(図面代用写真)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する半導体基板の表面に積層される金属薄膜であって、
前記金属薄膜は、Cu系金属で構成される薄膜が、Cu系以外の金属で構成される1つ以上の薄層で分断されたものであることを特徴とする半導体配線用金属薄膜。
【請求項2】
前記Cu系以外の金属薄層の結晶構造が、前記Cu系金属薄膜の格子定数よりも5%以上異なる格子定数を有する面心立方晶である請求項1の記載の半導体配線用金属薄膜。
【請求項3】
前記Cu系以外の金属薄層の結晶構造が、体心立方晶または六方最密晶である請求項1に記載の半導体配線用金属薄膜。
【請求項4】
前記Cu系以外の金属が、Au,Pd,W,Mo,AlまたはAgよりなる群から選ばれる金属の少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体配線用金属薄膜。
【請求項5】
前記Cu系以外の金属薄層で分断されることによって形成されるCu系金属薄層の厚さをa、該薄層中のCu系金属の最大結晶粒径をbとしたとき、b≦2a、の関係を満足する請求項1〜4のいずれかに記載の半導体配線用金属薄膜。
【請求項6】
前記Cu系以外の金属薄層で分断されることによって形成されるCu系金属薄層の厚さが、1層当たり100〜2000Åである請求項1〜5のいずれかに記載の半導体配線用金属薄膜。
【請求項7】
前記Cu系金属薄層を2〜10層含むものである請求項1〜6のいずれかに記載の半導体配線用金属薄膜。
【請求項8】
前記Cu系以外の金属薄層の厚さが、1層当たり10〜100Åである請求項1〜7のいずれかに記載の半導体配線用金属薄膜。
【請求項9】
凹部を有する半導体基板の表面に、請求項1〜8のいずれかに記載された金属薄膜を積層した後、高温高圧処理して前記金属薄膜を前記凹部内に埋め込むことによって形成されたことを特徴とする半導体配線。
【請求項10】
凹部を有する半導体基板の表面に、Cu系金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成した後、Cu系以外の金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程とCu系金属で構成される薄層をスパッタリング法で形成する工程をこの順で1回以上繰り返すことによって半導体配線用金属薄膜を形成し、次いで高温高圧処理して前記金属薄膜を前記凹部内に埋め込むことによって配線を形成することを特徴とする半導体配線の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−93630(P2006−93630A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280445(P2004−280445)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、経済産業省、ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)からの委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】