説明

半導体集積回路装置の製造方法

【課題】液晶ドライバ等の半導体集積回路装置においては、その形状が極端に細長いため、長手方向にプロセス特性がばらつくと、所望のデバイス特性が得られない。そこで、実製品ウエハにプロセスモニタ用の検査用素子を各種配置して、それらを測定することによって、プロセス特性のばらつきを監視している。しかし、ウエハ内におけるグローバルなプロセスばらつきは、比較的抽出しやすいものの、チップ内の局所的なプロセスばらつきの高精度の抽出は、大幅に検査用素子密度を上げない限り、困難であることが、本願発明者等により明らかにされた。
【解決手段】本願の一つの発明は、半導体集積回路装置の製造方法において、ウエハ上のチップ領域の近傍に複数のテスト素子領域を異なるピッチで配列し、プローブテストにおいて、それらを電気的に計測することにより、プロセスの局所的ばらつきをモニタするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置(または半導体装置)の製造方法におけるプロセス管理検査技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開2003−229464号公報(特許文献1)または、これに対応する米国特許公開2003−94609号公報(特許文献2)には、半導体集積回路装置の製造工程におけるプラズマプロセス等に伴うチャージダメージをモニタするために、寸法パラメータの異なる多数のセルを有するモニタ用素子領域を多数、実製品ウエハのスクライブ領域に配置する技術が開示されている。
【0003】
国際公開第2007/4289号パンフレット(特許文献3)または、これに対応する米国特許公開2008−224725号公報(特許文献4)には、半導体集積回路装置の製造工程におけるプロセス特性をモニタするために、各種のプロセスモニタ素子を多数集積したモニタ用素子領域を、実製品ウエハのスクライブ領域に配置し、それらのデータを効率的に集積することができるようにした技術が開示されている。
【0004】
日本特開2009−164452号公報(特許文献5)には、半導体集積回路装置の製造工程におけるプロセス特性の局所的ばらつきをモニタするために、評価用ウエハに多数の検査素子をマトリクス状に集積する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−229464号公報
【特許文献2】米国特許公開2003−94609号公報
【特許文献3】国際公開第2007/4289号パンフレット
【特許文献4】米国特許公開2008−224725号公報
【特許文献5】特開2009−164452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LCD(Liquid Crystal Display)等の2次元表示装置を駆動するドライバ用LSI(Large Scale Integration)、すなわち液晶ドライバ(より一般的には表示装置ドライバ)等の半導体集積回路装置においては、その形状が極端に細長いため、長手方向にプロセス特性がばらつくと、所望のデバイス特性が得られない。そこで、実製品ウエハにプロセスモニタ用の検査用素子を各種配置して、それらを測定することによって、プロセス特性のばらつき(プロセスばらつき)を監視している。しかし、ウエハ内におけるグローバルなプロセスばらつきは、比較的抽出しやすいものの、チップ内の局所的なプロセスばらつきの高精度の抽出は、大幅に検査用素子密度を上げない限り、困難であることが、本願発明者等により明らかにされた。すなわち、プロセスばらつきの固有の距離(または周期)が検査用素子間距離より短い場合には、プロセスばらつきが、プロセスパラメータの空間変動周期の中に埋もれてしまい、うまく検出できないという問題である。
【0007】
本願発明は、これらの課題を解決するためになされたものである。
【0008】
本発明の目的は、信頼性の高い半導体集積回路装置の製造プロセスを提供することにある。
【0009】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0011】
すなわち、本願の一つの発明は、半導体集積回路装置の製造方法において、ウエハ上のチップ領域の近傍に複数のテスト素子領域を異なるピッチで配列し、プローブテストにおいて、それらを電気的に計測することにより、プロセスの局所的ばらつきをモニタするものである。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0013】
すなわち、半導体集積回路装置の製造方法において、ウエハ上のチップ領域の近傍に複数のテスト素子領域を異なるピッチで配列し、プローブテストにおいて、それらを電気的に計測することにより、プロセスの局所的ばらつきをモニタすることにより、製品の特性ばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるウエハ上のショット領域(一度に露光する領域、すなわち単位露光領域)の配列を示すウエハ上面図である。
【図2】図1のショット領域(またはショット周辺領域R1)の拡大平面図である。
【図3】図2のチップ領域の拡大平面図である。
【図4】図3のソースドライバ回路8の拡大平面図である。
【図5】図4の階調電圧生成用ラダー抵抗回路9の拡大平面図である。
【図6】図2のチップ周辺領域R2の拡大平面図である。
【図7】図6の不均等検査素子領域群ARの一部を抜き出した模式回路図である。
【図8】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスのプロセスブロックフロー図である。
【図9】図8のウエル&チャネルイオン注入に使用するバッチ型イオン注入装置のウエハ保持ディスク周辺の部分正面図(ほぼ上半分)である。
【図10】図9のイオン注入領域R3におけるイオンビームの走査の様子を示す部分模式平面図である。
【図11】ビーム径と総ドーズ量のばらつきの関係を説明する濃度分布説明図である。
【図12】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスを説明するデバイス断面フロー図(ウエル及びチャネル注入完了時点)である。
【図13】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスを説明するデバイス断面フロー図(ゲート電極パターニング完了時点)である。
【図14】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスを説明するデバイス断面フロー図(メタル配線形成時点)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0016】
1.以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)ウエハの第1の主面上の複数のチップ領域の第1のチップ領域内の第1の製品領域および、前記第1のチップ領域の近傍のスクライブ領域内の複数のテスト素子領域に対して、第1のイオン注入をバッチ方式により実行する工程;
(b)前記工程(a)の後、前記第1の主面上に、前記複数のテスト素子領域に接続されたメタル配線を形成する工程;
(c)前記メタル配線の一端にプローブ針をコンタクトさせることにより、前記複数のテスト素子領域の内の第1、第2および第3のテスト素子領域に対して、電気的試験を実行する工程;
(d)前記工程(c)の結果に基づいて、前記第1の製品領域に対する前記第1のイオン注入が正常に行われたか否かをモニタする工程、
ここで、前記複数のテスト素子領域は、前記スクライブ領域内に、ほぼ直線状に異なるピッチで配置されている。
【0017】
2.前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のチップ領域と前記複数のテスト素子領域は、第1のショット領域に属する。
【0018】
3.前記1または2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記複数のチップ領域の各複数のチップ領域は、ほぼ矩形を呈しており、第1の辺は第2の辺より長く、前記第1の辺は、前記工程(a)における前記ウエハの公転軌道と直交する方向に延びている。
【0019】
4.前記3項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の辺は、前記第2の辺よりも10倍以上長い。
【0020】
5.前記2から4項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のショット領域は、複数のチップ領域を含む。
【0021】
6.前記1から5項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のチップ領域は、ラダー抵抗を有する。
【0022】
7.前記6項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記ラダー抵抗は、複数のディプレッション型MISFETの直列接続を含む。
【0023】
8.前記7項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のイオン注入は、前記複数のディプレッション型MISFETのウエルへのイオン注入又はチャネルへのイオン注入である。
【0024】
9.前記6から8項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記複数のテスト素子領域は、前記ラダー抵抗の局所的ばらつきを検出できるようにされている。
【0025】
10.前記1から9項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記複数のテスト素子領域の各テスト素子領域は、複数のディプレッション型MISFETを有する。
【0026】
11.前記1から10項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、LCDドライバ回路を有する。
【0027】
〔本願における記載形式・基本的用語・用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0028】
更に、本願において、「半導体装置」または「半導体集積回路装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)単体、および、それらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したものをいう。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を例示することができる。このとき、集積回路構成の代表的なものとしては、Nチャネル型MISFETとPチャネル型MISFETを組み合わせたCMOS(Complemetary Metal Oxide Semiconductor)型集積回路に代表されるCMIS(Complemetary Metal Insulator Semiconductor)型集積回路を例示することができる。
【0029】
今日の半導体集積回路装置、すなわち、LSI(Large Scale Integration)のウエハ工程は、通常、原材料としてのシリコンウエハの搬入からプリ・メタル(Premetal)工程(M1配線層下端とゲート電極構造の間の層間絶縁膜等の形成、コンタクト・ホール形成、タングステン・プラグ、埋め込み等からなる工程)あたりまでのFEOL(Front End of Line)工程と、M1配線層形成から始まり、アルミニウム系パッド電極上のファイナル・パッシベーション膜へのパッド開口の形成あたりまで(ウエハ・レベル・パッケージ・プロセスにおいては、当該プロセスも含む)のBEOL(Back End of Line)工程に大別できる。FEOL工程の内、ゲート電極パターニング工程、コンタクト・ホール形成工程等は、特に微細な加工が要求される微細加工工程である。一方、BEOL工程においては、ビアおよびトレンチ形成工程、特に、比較的下層のローカル配線等において、特に微細加工が要求される。なお、「MN(通常N=1から15程度)」で、下から第N層配線を表す。M1は第1層配線であり、M3は第3層配線である。
【0030】
なお、本願では、説明を簡潔にするために、パッド層を兼用する第1層配線のみを示す。従って、「メタル配線」は、相互接続配線およびパッド(外部端子および検査用端子)を含む。
【0031】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノ・クラスタリング・シリカ(Nano-Clustering Silica:NCS)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
【0032】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0033】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0034】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体集積回路装置(半導体装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0035】
6.本願において、「局所ばらつき」とは、ショット領域の寸法よりも小さい領域内でのばらつきを言う。
また、「バッチ方式イオン注入」というときは、通常、たとえば、円周上に複数の(たとえば13枚程度)を保持して、円の中心の周りに高速回転(公転)させながら、イオンビーム(通常円形ビーム)と公転軌道の位置関係を軌道面内において公転軌道と直交する方向に連続的にずらせる(線形移動)ことによって全ウエハの全領域をカバーするようにしたイオン注入方式を言う。通常、線形移動はウエハを保持した回転円板の回転中心を移動させることによって実行するが、ウエハ保持部の回転中心からの距離を変更したり、ビーム自体の位置を機械的、電磁的に変更してもよい。
【0036】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0037】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
【0038】
1.本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における対象デバイスの一例等の説明(主に図1から図5)
以下の実施形態では、LCDドライバ用チップを例にとり、具体的に説明するが、本願発明はそれに限定されず、2次元画像表示装置の制御チップ、センサチップ、SOC(System On Chip)、メモリチップ、マイクロコンピュータチップ、その他のロジックチップ、アナログチップ、アナログデジタル混載チップ、単体チップ等にも適用できる。
【0039】
図1は本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるウエハ上のショット領域(一度に露光する領域、すなわち単位露光領域)の配列を示すウエハ上面図である。図2は図1のショット領域(またはショット周辺領域R1)の拡大平面図である。図3は図2のチップ領域の拡大平面図である。図4は図3のソースドライバ回路8の拡大平面図である。図5は図4の階調電圧生成用ラダー抵抗回路9の拡大平面図である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における対象デバイスの一例等を説明する。
【0040】
まず、図1に基づいて、ウエハ1(ここでは、300φのP型シリコン単結晶ウエハを例にとり説明するが、200φでも450φでも、その他の直径のウエハでもよい)上での各領域等について説明する。図1に示すように、ウエハ1のデバイス面1a(第1の主面)に対して、露光処理を含むリソグラフィ処理が施されるが、通常、この露光処理は、ショット領域3(単位露光領域)を単位として行われる。ショット領域3には、通常、1から30程度のチップ領域2(図2)が含まれる。ウエハ1には、方位を示す目印として、たとえばノッチ部34が設けられており、このノッチ34の反対側をトップ部33(トップ側)という。
【0041】
次に、図1のショット周辺領域R1を拡大して図2に示す。図2に示すように、ショット領域3は縦ST(ノッチとトップ方向を結ぶ方向)と横SL(ノッチ&トップ方向と垂直方向)がほぼ同等の長さの矩形形状を呈している。縦STは、たとえば20ミリメートル程度であり、横SLは、たとえば25ミリメートル程度である。
【0042】
次に、図2のチップ領域2(LCDドライバ用チップ)を拡大して図3に示す。図3に示すように、LCDドライバ用チップ2(第1のチップ領域)は、主に、電源回路4、チップ全体を制御するコントローラ回路5、画像データを一時的に記憶するグラフィックRAM6、LCDのゲートを駆動するゲートドライバ回路7、およびLCDのソース電極を駆動するソースドライバ回路8から構成されている。LCDドライバ用チップ2の形状は、そのままLCDの周辺部に取り付けられることから、LSIとしては、特異な形状をしており、形状的には矩形であるが、チップ長さLまたは第1の辺(ノッチとトップ方向を結ぶ方向)は、チップ幅Wまたは第2の辺(ノッチ&トップ方向と垂直方向)と比較して、10倍以上長いことが多い。この例では、チップ幅Wは、1ミリメートル程度であり、チップ長さLは20ミリメートル程度である。
【0043】
次に、図3のソースドライバ回路8の中の階調電圧生成用ラダー抵抗回路9(第1の製品領域)を図4に示す。図4に示すように、階調電圧生成用ラダー抵抗回路9は、ほとんど全域にわたって長大な階調電圧生成用ラダー(Ladder)抵抗10またはレジスタストリング(Resistor String)で占められており、その結果、プロセスの局所ばらつき(特にチップの長手方向)に敏感になる傾向がある。
【0044】
次に、図4の階調電圧生成用ラダー抵抗回路9の具体的構成(簡潔性を確保するためにガンマ制御等は省略した)を図5に簡潔に説明する。図5に示すように、電源端子Vdd(または電源配線)と接地端子Vss(または接地配線)の間にレジスタストリング10が接続されており、ラダー抵抗10自体は多数のレジスタ要素部分10a,10b,10c,10nから構成されている。このレジスタ要素部分10a,10b,10c,10nの各々は、図12から図14に関して説明するように、たとえばNチャネル型ディプレッションモードMISFET等から構成されている。ソース駆動の出力電圧は、ラダー抵抗10の中間タップからバッファ回路11等を介して出力されている。
【0045】
2.本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスの説明(主に図8から図14)
このセクションでは、セクション1で説明したLCDドライバ用チップ2に関するウエハプロセスの要部をラダー抵抗10および、ラダー抵抗10のプロセスばらつきをモニタするための不均等検査アレイAR(セクション3の図6)に焦点を当てて説明する。
【0046】
図8は本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスのプロセスブロックフロー図である。図9は図8のウエル&チャネルイオン注入に使用するバッチ型イオン注入装置のウエハ保持ディスク周辺の部分正面図(ほぼ上半分)である。図10は図9のイオン注入領域R3におけるイオンビームの走査の様子を示す部分模式平面図である。図11はビーム径と総ドーズ量のばらつきの関係を説明する濃度分布説明図である。図12は本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスを説明するデバイス断面フロー図(ウエル及びチャネル注入完了時点)である。図13は本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスを説明するデバイス断面フロー図(ゲート電極パターニング完了時点)である。図14は本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセスを説明するデバイス断面フロー図(メタル配線形成時点)である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部プロセス等を説明する。
【0047】
なお、図14に示すNチャネル型ディプレッションモードMISFETQndは、ラダー抵抗10の各レジスタ要素部分10a,10b,10c,10nであると同時に、図6に説明する不均等検査アレイAR,AR1,AR2,AR3,AR4,AR5(不均等検査素子領域または領域群)および均等検査アレイARE(均等検査素子領域または領域群)の各検査用抵抗素子の各要素部分RT1,RT2,RT3でもある。
【0048】
以下要部プロセスを図8に従って、簡潔に説明する。図12に示すように、まず、STI(Shallow Trench Isolation)領域17を形成する(図8の素子分離形成工程51)。続いて、ボロン等をイオン注入(ウエルイオン注入工程;第1のイオン注入)することにより、基板1よりも高濃度のP型ウエル領域15を形成する。続いて、砒素等をイオン注入(チャネルイオン注入工程;第1のイオン注入)することにより、ソースドレイン領域と比較して低濃度のディプレッション型Nチャネル領域16(N型チャネル注入領域)を形成する。この二つが、図8のウエル-チャネル形成工程52である。ウエルイオン注入工程の諸条件としては、たとえば、イオン種B+、打ち込みエネルギ50から300KeV程度、濃度1x1012/cmから1x1013/cm程度を例示することができる。また、チャネルイオン注入工程の諸条件としては、たとえば、イオン種As+、打ち込みエネルギ50から150KeV程度、濃度3x1013/cmから5x1013/cm程度を例示することができる。
【0049】
ここで、ウエルイオン注入工程およびチャネルイオン注入工程に使用されるバッチ型イオン注入装置(特にそのエンドステーション)について、図9に基づいて、説明する。図9はほぼ円形のエンドステーションの上3分の一程度の部分を示す。図9に示すように、回転ディスク31の周辺にはウエハホールダ部35が設けられており、各ウエハホールダ部35には、被処理ウエハ1が保持されている。このとき、通常、被処理ウエハ1のトップ部33(トップ側)が外側に来て、ノッチ部34(ノッチ側)が内側に来て、回転中心とトップ部33およびノッチ部34を結ぶとほぼ直線になるようにセットされる。この状態で、回転ディスク31を高速回転すると、ウエハ1の各部は同心円36(同心円群)の円周に沿って高速移動する。この回転状態でほぼ円形(たとえば直径30ミリメートル程度)のイオンビーム32をウエハ1を縦断するように、動径方向に相対移動させることによって全ウエハ1の全体をスキャンする。
【0050】
図10に図9のイオン注入領域R3を拡大して模式的にイオンビーム32が通過する帯状領域37を図示する。このとき、図10のY−Y’断面の打ち込みイオン濃度は、図11のようになっている。すなわち、イオンビーム32の断面形状が正常な形状と寸法を維持しているときは、隣接する帯状領域37が十分に重なるため、総ドーズ分布は十分に平坦化され、図の太実線のようにほぼ平坦となる。一方、イオンビーム32が異常な形状と寸法となった場合、たとえば、イオンビーム32の断面形状が扁平化して、縦の差し渡しが5ミリメートル程度となり、横の差し渡しが45ミリメートル程度となったとする。この場合、全体のドーズ量は不変であるので、イオン注入装置のモニタでは検出できない。しかし、隣接する帯状領域37が十分に重ならないため、総ドーズ分布は十分に平坦化されず、図の点線のように局所的に大きく変動する。
【0051】
ウエルイオン注入工程およびチャネルイオン注入工程が終わると、図13に示すように、ゲート絶縁膜19が形成され、続いて、サイドウォールスペーサ22を有するゲート電極21(ポリシリコン膜)がパターニングされ(図8のゲート電極形成工程53)、これらとともに、N型ソースドレイン領域18がイオン注入等により形成される(図8のソースドレイン形成工程54)。
【0052】
次に、図14に示すように、ウエハ1のデバイス面1a上にCVD(Chemical Vapor Deposition)等により、酸化シリコン系膜を主要な要素とするプリメタル絶縁膜23を形成する。続いて、プリメタル絶縁膜23に異方性ドライエッチングによりコンタクトホールを形成し、これをCVD等によりタングステン等で埋め込み、タングステンプラグ24とする。更に、その上に、たとえば、アルミニウム系の配線層(検査用パッド等を含む)を形成する(図8のメタル配線形成工程55)。
【0053】
次に、図8に示すように、ウエハテスト工程56において、プローバを用いて、検査用パッド等にプローブ針をコンタクトさせた状態で電気的試験を実行する。このとき、たとえばDCパラメトリックテストの一貫として、セクション3に説明するように、図6または図7の検査素子領域AR、AREに対する抵抗値測定(通常、4端子測定)が実行される。
【0054】
3.本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるプロセスばらつきモニタ方法の説明(主に図6および図7)
このセクションでは、図2のチップ周辺領域R2の一例のレイアウトに関して、プロセスばらつきモニタ方法を説明する。
【0055】
図6は図2のチップ周辺領域R2の拡大平面図である。図7は図6の不均等検査素子領域群ARの一部を抜き出した模式回路図である。なお、図7の不均等検査素子領域AR1,AR2,AR3,AR4,AR5の詳細構造は、基本的に、不均等検査素子領域AR2と同一構造である。また、図6の均等検査アレイARE(均等検査素子領域または領域群)を構成する個々の検査素子領域の詳細構造も、基本的に、不均等検査素子領域AR2と同一構造である。これらに基づいて、本願の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるプロセスばらつきモニタ方法等を説明する。
【0056】
図6に示すように、ショット領域3(単位露光領域)内のチップ領域2間のスクライブ領域12(幅は通常100マイクロメートル程度である)には、均等なピッチPE(均等検査アレイピッチ)で配置された均等検査素子領域AREおよび不均等なピッチP1,P2,P3,P4(不均等検査アレイピッチ)で配置された不均等検査素子領域AR1,AR2,AR3,AR4,AR5が存在する。ここで、検査アレイの各寸法は、通常、たとえば15マイクロメートル角程度またはそれよりも小さな正方形又は矩形である。均等なピッチPEは、たとえば、200マイクロメートル程度であり、不均等なピッチP1、不均等なピッチP2,不均等なピッチP3、不均等なピッチP4は、たとえば、それぞれ100マイクロメートル程度、250マイクロメートル程度、450マイクロメートル程度、950マイクロメートル程度とする(必要があれば、n番目のピッチをPnとして、たとえばPn+2=2Pn+Pn+1等の規則で、チップの上端に来るまで並べてもよい)。
【0057】
次に、図7に実際のDCパラメトリックテストの際の手順を説明する。図7に示すように、プローバのプローブ針を検査用パッド14のパッド1から12にコンタクトさせた状態で、自動でテストを実行する。手順はすなわち、まず、パッド1とパッド4の間に一定の電流を流して、パッド2とパッド3間の電圧を測定することにより、テストアレイAR1(第1のテスト素子領域)の検査用抵抗素子RT全体の抵抗値を測定する。なお、このとき検査用抵抗素子RTを構成する各Nチャネル型ディプレッションモードMISFETQndの各ゲート電極は、フローティング状態である(適切な固定電位に接続してもよい)。この点は以下の各測定についても同じである。次に、同様のことをテストアレイAR2、AR3(第2および第3のテスト素子領域)に対して実行して、テストアレイAR2、AR3の検査用抵抗素子RT全体の抵抗値をそれぞれ測定する。続いて、得られたテストアレイAR1、AR2、AR3の各検査用抵抗素子RTの抵抗値を比較することで、図12において説明した二つのイオン注入工程におけるドーズ量の局所ばらつきを高精度で検出することができる。これは、ピッチが異なるように配置されたテストアレイを3個以上使用しているので、ばらつきの周期が測定した全てのテストアレイのピッチと一致する可能性は、等ピッチのテストアレイのみを用いてモニタする場合と比較して、相当に小さいと見ることができるからである。
【0058】
なお、不均等検査素子領域群ARは、通常、イオン注入に関していえば、行方向のばらつきは小さいので、1ショット領域に一列あればよいが、必要に応じて複数個配置してもよい。
【0059】
また、テストアレイAR2の検査用抵抗素子RTの全体の抵抗値を測定する際には、たとえば、パッド2とパッド12の間に一定の電流を流して、パッド4とパッド5で電圧を測定することになるが、同時に、検査用抵抗素子RTの各要素部分RT1,RT2,RT3の抵抗値も測定すれば、更に微細な領域内の局所プロセスばらつき(打ち込み濃度ばらつきなど)も検出することができる。
【0060】
更に、不均等検査素子領域AR1,AR2,AR3,AR4,AR5についても図7と同様の抵抗値測定をDCパラメトリックテストの際に同様に実行することにより、局所プロセスばらつき(打ち込み濃度ばらつきなど)の精度を更に向上させることができる。
【0061】
4.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0062】
例えば、前記実施の形態では、メタル配線については、アルミニウム系配線(非埋め込み配線)を例にとって具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、銅系および銀系のダマシン配線(埋め込み配線)を使用したものにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 ウエハ(P型シリコン単結晶基板)
1a ウエハのデバイス面(第1の主面)
2 チップ領域(半導体チップ)
3 ショット領域(単位露光領域)
4 電源回路
5 コントローラ回路
6 グラフィックRAM
7 ゲートドライバ回路
8 ソースドライバ回路
9 階調電圧生成用ラダー抵抗回路(第1の製品領域)
10 階調電圧生成用ラダー抵抗(レジスタストリング)
10a,10b,10c,10n ラダー抵抗の各レジスタ要素部分
11 バッファ回路
12 スクライブライン
14 テストパッド(検査用パッド)
15 P型ウエル領域
16 N型チャネル注入領域
17 STI領域(素子分離領域)
18 N型ソースドレイン領域
19 ゲート絶縁膜
21 ゲート電極(ポリシリコン膜)
22 サイドウォールスペーサ
23 プリメタル絶縁膜
24 タングステンプラグ
25 メタル配線
31 回転ディスク
32 イオンビーム
33 ウエハトップ部(トップ側)
34 ウエハノッチ部(ノッチ側)
35 ウエハホールダ部
36 ウエハの回転に対応する同心円
37 イオン注入経路に対応する帯状領域
51 素子分離工程
52 ウエル&チャネル注入工程
53 ゲート電極形成工程
54 ソースドレイン形成工程
55 メタル配線工程
56 ウエハテスト工程
ARE 均等検査アレイ(均等検査素子領域または領域群)
AR,AR1,AR2,AR3,AR4,AR5 不均等検査アレイ(不均等検査素子領域または領域群)
L チップ長さまたは第1の辺(ノッチとトップ方向を結ぶ方向)
PE 均等検査アレイピッチ
P1,P2,P3,P4 不均等検査アレイピッチ
Qnd Nチャネル型ディプレッションモードMISFET
RT 検査用抵抗素子(全体)
RT1,RT2,RT3 検査用抵抗素子の各要素部分
R1 ショット周辺領域
R2 チップ周辺領域
R3 イオン注入領域
S スクライブライン幅
SL ショット領域の横幅または同辺(ノッチ&トップ方向と垂直方向)
ST ショット領域の縦の長さまたは同辺(ノッチとトップ方向を結ぶ方向)
Vdd 電源端子(または電源配線)
Vss 接地端子(または接地配線)
W チップ幅または第2の辺(ノッチ&トップ方向と垂直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)ウエハの第1の主面上の複数のチップ領域の第1のチップ領域内の第1の製品領域および、前記第1のチップ領域の近傍のスクライブ領域内の複数のテスト素子領域に対して、第1のイオン注入をバッチ方式により実行する工程;
(b)前記工程(a)の後、前記第1の主面上に、前記複数のテスト素子領域に接続されたメタル配線を形成する工程;
(c)前記メタル配線の一端にプローブ針をコンタクトさせることにより、前記複数のテスト素子領域の内の第1、第2および第3のテスト素子領域に対して、電気的試験を実行する工程;
(d)前記工程(c)の結果に基づいて、前記第1の製品領域に対する前記第1のイオン注入が正常に行われたか否かをモニタする工程、
ここで、前記複数のテスト素子領域は、前記スクライブ領域内に、ほぼ直線状に異なるピッチで配置されている。
【請求項2】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のチップ領域と前記複数のテスト素子領域は、第1のショット領域に属する。
【請求項3】
前記2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記複数のチップ領域の各複数のチップ領域は、ほぼ矩形を呈しており、第1の辺は第2の辺より長く、前記第1の辺は、前記工程(a)における前記ウエハの公転軌道と直交する方向に延びている。
【請求項4】
前記3項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の辺は、前記第2の辺よりも10倍以上長い。
【請求項5】
前記4項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のショット領域は、複数のチップ領域を含む。
【請求項6】
前記5項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のチップ領域は、ラダー抵抗を有する。
【請求項7】
前記6項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記ラダー抵抗は、複数のディプレッション型MISFETの直列接続を含む。
【請求項8】
前記7項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のイオン注入は、前記複数のディプレッション型MISFETのウエルへのイオン注入又はチャネルへのイオン注入である。
【請求項9】
前記8項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記複数のテスト素子領域は、前記ラダー抵抗の局所的ばらつきを検出できるようにされている。
【請求項10】
前記9項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記複数のテスト素子領域の各テスト素子領域は、複数のディプレッション型MISFETを有する。
【請求項11】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、LCDドライバ回路を有する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−129549(P2011−129549A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283650(P2009−283650)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】