説明

半導体集積回路

【課題】外部寄生抵抗の抵抗値に応じて、プログラマブルに外部から終端抵抗の抵抗値を調整し、高精度のインピーダンス整合を実施することが可能な半導体集積回路を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体集積回路100は、電源Vccに接続された電流回路3、この電流回路3と接地との間に接続され電流回路3が出力する主電流Iが入力される可変抵抗4、この可変抵抗4の電位と第1の基準電位Vref1とを比較し信号を出力するコンパレータ回路5、および、コンパレータ回路5の出力信号に基づいて可変抵抗4の抵抗値を制御する制御回路6、を有する終端抵抗調整回路1と、電源Vccと可変抵抗4との間に接続され、終端抵抗と伝送線路との間の外部寄生抵抗の抵抗値に応じた外部信号Sに基づいて可変抵抗4に付加電流Iadを出力する付加電流調整回路2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、終端抵抗に用いられまたは終端抵抗の基準となる可変抵抗を、伝送線路の特性インピーダンスに整合するための半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、数百MHzを超える高速信号伝送において、終端抵抗の抵抗値を高精度に制御し伝送線路に対してインピーダンスを整合させることは信号の波形品質を保つ上で非常に重要がある。
【0003】
しかしながら、上記終端抵抗は、半導体製造プロセス、電源、温度の変動等により、変動する。したがって、例えば、±5%ないし±10%の高精度の終端抵抗制御のために、半導体集積回路は、上記変動等により生じた終端抵抗の抵抗値のずれを調整する終端抵抗調整回路を備える必要である。
【0004】
ここで、従来の半導体集積回路には、例えば、電源に接続された電流回路、この電流回路と接地との間に接続され前記電流回路が出力する主電流が入力される可変抵抗、この可変抵抗の電位と第1の基準電位とを比較し信号を出力するコンパレータ回路、および、コンパレータ回路の出力信号に基づいて可変抵抗の抵抗値を制御する制御回路、を有する終端抵抗調整回路を備えるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このように、上記従来の半導体集積回路は、この半導体集積回路が形成されるシリコン基板の内部の変動(プロセス変動、電源変動、温度変動等)に対し終端抵抗の制御を行う。
【0006】
ここで、該シリコン基板の内部で高精度の終端抵抗調整を実現した場合であっても、実際のTEG(Test Element Group)、製品毎に異なるパッケージ、PCB(Printed Circuit Board)等のシリコン基板の外部の寄生抵抗、すなわち、終端抵抗と伝送線路との間の外部寄生抵抗が該製品の完成後に調整された終端抵抗に加算される。
【0007】
しかし、この半導体集積回路は、上記外部寄生抵抗の変動に対応する機構を備えていない。
【0008】
したがって、上記従来の半導体集積回路においては、伝送線路の特性インピーダンスに対して、上記外部寄生抵抗分のオフセットにより、TEG、製品毎に終端抵抗調整回路の調整能力の調整を行う必要があるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−336699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、外部寄生抵抗の抵抗値に応じて、プログラマブルに外部から終端抵抗の抵抗値を調整し、高精度のインピーダンス整合を実施することが可能な半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体集積回路は、終端抵抗に用いられまたは前記終端抵抗の基準となる可変抵抗を、伝送線路の特性インピーダンスに整合させるための半導体集積回路であって、
電源に接続された電流回路、この電流回路と接地との間に接続され前記電流回路が出力する主電流が入力される前記可変抵抗、この可変抵抗の電位と第1の基準電位とを比較して信号を出力するコンパレータ回路、および、前記コンパレータ回路の出力信号に基づいて前記可変抵抗の抵抗値を制御する制御回路、を有する終端抵抗調整回路と、
前記電源と前記可変抵抗との間に接続され、前記終端抵抗と前記伝送線路との間の外部寄生抵抗の抵抗値に応じた外部信号に基づいて前記可変抵抗に付加電流を出力する付加電流調整回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る半導体集積回路によれば、外部寄生抵抗の抵抗値に応じて、プログラマブルに外部から終端抵抗の抵抗値のオフセットを調整し、高精度のインピーダンス整合を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
既述の様に、数百MHzを超える高速信号伝送において、終端抵抗の抵抗値を高精度に制御し伝送線路に対しインピーダンスの整合することは信号の波形品質を保つ上で非常に重要である。
【0013】
そこで、本発明の一態様に係る半導体集積回路は、この半導体集積回路が形成されるシリコン基板の内部の変動(プロセス変動、電源変動、温度変動等)より生じた終端抵抗の抵抗値のずれを調整する終端抵抗調整回路を備えることを前提とし、さらに、この半導体集積回路は、パッケージやPCB等の該シリコン基板の外部に寄生する外部寄生抵抗の変動に対応するものである。
【0014】
すなわち、本発明の一態様に係る半導体集積回路は、終端抵抗に加算される外部寄生抵抗による伝送線路の特性インピーダンスに対するずれ(オフセット)を、該外部寄生抵抗の抵抗値に応じた外部信号の入力に基づいてプログラマブルに終端抵抗を調整することにより、相殺するものである。
【0015】
以下、本発明に係る各実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例では、終端抵抗に用いられまたはこの終端抵抗の基準となる可変抵抗を、伝送線路の特性インピーダンスに整合させるための半導体集積回路について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一態様である実施例1に係る半導体集積回路が用いられる伝送システムを示す図である。
【0018】
図1に示すように、伝送システム300は、半導体集積回路100と、伝送線路301と、送信側デバイス302と、この送信側デバイス302でインピーダンス整合するための終端抵抗303と、受信側デバイス304と、この受信側デバイス304でインピーダンス整合するための終端抵抗305とを備える。
【0019】
ここで、既述のように、伝送線路301と終端抵抗303、305との間には、実際のTEG、製品毎に異なるパッケージ、PCB等によるシリコン基板外部の外部寄生抵抗306、307が存在する。
【0020】
そこで、既述のように、本実施例に係る半導体集積回路100は、送信側の終端抵抗303、受信側の終端抵抗305のそれぞれに対応して設定され調整動作を実施する。
【0021】
すなわち、それぞれの半導体集積回路100は、終端抵抗303、304それぞれに加算される外部寄生抵抗306、307による伝送線路301の特性インピーダンスに対するずれ(オフセット)を、該外部寄生抵抗306、307の抵抗値に応じた外部信号の入力に基づいてプログラマブルに終端抵抗303、305を調整することにより、相殺する。
【0022】
なお、図1において、終端抵抗303、305は、半導体集積回路100とは別の構成として示されているが、半導体集積回路100に含まれていてもよい。
【0023】
また、半導体集積回路100は、送信側デバイス302、受信側デバイス304とは別の構成として示されているが、これらの送信側デバイス302、受信側デバイス304に含まれていてもよい。
【0024】
図2は、本発明の一態様である実施例1に係る半導体集積回路の要部構成を示す回路図である。
【0025】
図2に示すように、半導体集積回路100は、終端抵抗を調整する(すなわち、任意のオフセットを加える)ための終端抵抗調整回路1と、外部信号Sの入力に基づいて終端抵抗調整回路1に該終端抵抗を調整するための付加電流を供給する付加電流調整回路2と、を備える。
【0026】
終端抵抗調整回路1は、電源Vccに接続され主電流Iを出力する電流回路3、この電流回路3と接地との間に接続され主電流が入力される可変抵抗4、この可変抵抗4の一端4aの電位と端子5aの第1の基準電位Vref1とを比較し信号を出力するコンパレータ回路5、および、このコンパレータ回路5の出力信号に基づいて可変抵抗4の抵抗値を制御する制御回路6、を有する。
【0027】
付加電流調整回路2は、電源Vccと可変抵抗4との間に接続されている。また、付加電流調整回路2は、外部信号に基づいて可変抵抗4に所望値に保持された付加電流Iadを出力する。
【0028】
電流回路3が出力する主電流Iおよび基準電位Vref1は、伝送システムに使用される伝送線路の特性インピーダンスの値に基づいて、調整される。
【0029】
可変抵抗4の抵抗値には、伝送線路の特性インピーダンスと整合させるため、例えば、50Ω、70Ω等の値が選択される。
【0030】
ここで、図3に付加電流調整回路2の要部構成の一例を示す。
【0031】
図3に示すように、付加電流調整回路2は、電源Vccにソースが接続され、可変抵抗4の端子4aにドレインが接続され、外部信号Sに基づいたバイアス電圧Vbias1がゲートに入力されるp型MOSトランジスタ21を有する。このp型MOSMOSトランジスタ21は、バイアス電圧Vbiasに応じて付加電流Iadが制御される。
【0032】
また、図4に付加電流調整回路2の要部構成の他の例を示す。
【0033】
図4に示すように、付加電流調整回路2は、ゲートに印加されるバイアス電圧Vbias2に応じて付加電流Iadを出力する複数のp型MOSトランジスタ22と、電源Vccと可変抵抗4の端子4aとの間で複数のMOSトランジスタ22と直列にそれぞれ接続されたスイッチ素子となる複数のp型MOSトランジスタ23と、外部信号Sの入力に基づいてp型MOSトランジスタ23のゲートに制御信号Scを出力し制御するレジスタ回路24と、を有する。
【0034】
p型MOSトランジスタ22は、ゲートにバイアス電圧Vbias2により電流をそれぞれ出力する。
レジスタ回路24は、既述のように、外部信号Sの入力に基づいて、制御信号Scをスイッチ素子であるそれぞれのp型MOSトランジスタ23のゲートに出力してオンオフを制御して、p型MOSトランジスタ22から出力される電流を選択する。この選択された電流の和が所望の付加電流Iadとして端子4aに出力される。
【0035】
このように、付加電流調整回路2は、簡単な回路構成で実現可能である。
【0036】
なお、上記図3および図4においてp型MOSトランジスタを用いて説明しているが、n型MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタを必要に応じて用いてもよい。
【0037】
ここで、外部信号Sは、終端抵抗と伝送線路との間の外部寄生抵抗の抵抗値に応じてプログラマブルに決定されている。
【0038】
また、この外部信号Sは、付加電流調整回路2に直接入力される必要はない。そして、例えば、外部信号Sが半導体集積回路100に含まれるメモリ回路(図示せず)に入力され、このメモリ回路に記憶された情報に基づいた制御信号(バイアス電圧)が付加電流調整回路2に入力されて付加電流Iadが制御されるようにしてもよい。
【0039】
また、外部寄生抵抗の抵抗値は、半導体集積回路100を含む製品(伝送システム)の設計の段階でシミュレーションにより求めてもよい。また、外部寄生抵抗の抵抗値は、該製品(伝送システム)が完成した状態で外部のテスト回路(図示せず)により測定して得るようにしてもよい。
【0040】
次に、上記構成を有する半導体集積回路100の動作について説明する。
【0041】
外部寄生抵抗の抵抗値に応じた外部信号Sを受けた付加電流調整回路2は、一定した所望の付加電流Iadを主電流Iに加える。
【0042】
これらの付加電流Iadと主電流Iとの和が可変抵抗4に流れるため、端子4aにける電位が高くなる。
【0043】
そして、コンパレータ回路5は、端子4aの電位と基準電位Vref1とを比較し、この比較結果の情報を含む信号を制御回路6に出力する。
【0044】
この信号に基づいて、制御回路6は、端子4aの電位が基準電位Vref1と等しくするため、可変抵抗4の抵抗値を低くなるように制御する。
【0045】
以上の動作により、所望の付加電流Iadを主電流Iに加えることにより、可変抵抗4の抵抗値を所望の値まで下げることが可能となる。したがって、終端抵抗制御を実施した終端抵抗調整回路1に対して、終端抵抗に用いられまたはこの終端抵抗の基準となる可変抵抗4の抵抗値を外部寄生抵抗分のオフセットだけ下げることが可能となる。
【0046】
結果として、この調整された可変抵抗4の抵抗値に外部寄生抵抗の抵抗値を加算したものが、特性インピーダンスと整合する値となる。
【0047】
以上のように、本実施例に係る半導体集積回路によれば、外部寄生抵抗の抵抗値に応じて、プログラマブルに外部から終端抵抗の抵抗値のオフセットを調整し、高精度のインピーダンス整合を実施することができる。
【0048】
また、終端抵抗の抵抗値をシリコン基板に終端抵抗調整回路を作成した後に外部より調整可能となるので、終端抵抗調整のための製品の試作回数、費用を削減することができる。
【実施例2】
【0049】
実施例1では、半導体集積回路のうち付加電流調整回路の構成について詳細に述べたが、本実施例では、特に半導体集積回路の電流回路の具体的構成について述べる。なお、本実施例の半導体集積回路についても図1に示された伝送システムに同様に適用できる。
【0050】
図5は、本発明の一態様である実施例2に係る半導体集積回路200の要部構成を示す回路図である。なお、図中、実施例1と同じ符号は、実施例1と同様の構成を示している。
【0051】
図5に示すように、電流回路3は、電源Vccにドレインが接続されるとともに可変抵抗4ソースが接続され、主電流Iを出力するn型MOSトランジスタ31と、このn型MOSトランジスタ31と可変抵抗4との間の電位(ここでは端子4aの電位)および端子3aの第2の基準電位Vref2の入力を受けて、n型MOSトランジスタ31のゲートに信号を出力するオペアンプ回路(演算増幅器)32と、を有する。
【0052】
この電源回路3は、端子3aに印加される第2の基準電位Vref2を調整することにより、所望の主電流Iを出力することができる。
【0053】
なお、実施例1と同様に、電流回路3が出力する主電流Iおよび基準電位Vref1は、伝送システムに使用される伝送線路の特性インピーダンスの値に基づいて、調整される。
【0054】
また、上記図5においてn型MOSトランジスタを用いて説明しているが、p型MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタを必要に応じて用いてもよい。
【0055】
上記構成を有する半導体集積回路200の動作は、実施例1と同様である。
【0056】
以上のように、本実施例に係る半導体集積回路によれば、実施例1と同様に、外部寄生抵抗の抵抗値に応じて、プログラマブルに外部から終端抵抗の抵抗値のオフセットを調整し、高精度のインピーダンス整合を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一態様である実施例1に係る半導体集積回路が用いられる伝送システムを示す図である。
【図2】本発明の一態様である実施例1に係る半導体集積回路の要部構成を示す回路図である。
【図3】半導体集積回路の付加電流調整回路の要部構成の一例を示す回路図である。
【図4】半導体集積回路の付加電流調整回路の要部構成の他の例を示す回路図である。
【図5】本発明の一態様である実施例2に係る半導体集積回路の要部構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0058】
1 終端抵抗調整回路
2 付加電流調整回路
3 電流回路
3a 端子
4 可変抵抗
4a 端子
5 コンパレータ回路
5a 端子
6 制御回路
21、22 p型MOSトランジスタ
23 スイッチ素子
24 レジスタ回路
31 n型MOSトランジスタ
32 オペアンプ回路
100、200 半導体集積回路
300 伝送システム
301 伝送線路
302 送信側デバイス
303 終端抵抗
304 受信側デバイス
305 終端抵抗
306、307 外部寄生抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
終端抵抗に用いられまたは前記終端抵抗の基準となる可変抵抗を、伝送線路の特性インピーダンスに整合させるための半導体集積回路であって、
電源に接続された電流回路、この電流回路と接地との間に接続され前記電流回路が出力する主電流が入力される前記可変抵抗、この可変抵抗の電位と第1の基準電位とを比較して信号を出力するコンパレータ回路、および、前記コンパレータ回路の出力信号に基づいて前記可変抵抗の抵抗値を制御する制御回路、を有する終端抵抗調整回路と、
前記電源と前記可変抵抗との間に接続され、前記終端抵抗と前記伝送線路との間の外部寄生抵抗の抵抗値に応じた外部信号に基づいて前記可変抵抗に付加電流を出力する付加電流調整回路と、を備える
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記付加電流調整回路は、前記電源と前記可変抵抗との間に接続され、前記外部信号に基づいたバイアス電圧がゲートに入力されるMOSトランジスタを有し、
前記MOSトランジスタは、前記バイアス電圧に応じて前記可変抵抗に前記付加電流を出力することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記付加電流調整回路は、ゲートに印加されるバイアス電圧に応じて前記付加電流を出力する複数のMOSトランジスタと、前記電源と前記可変抵抗との間で前記複数のMOSトランジスタと直列にそれぞれ接続された複数のスイッチ素子と、を有し、
前記スイッチ素子は、前記外部信号に基づいて制御されることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記付加電流調整回路は、前記外部信号の入力に基づいて前記スイッチ素子を制御するレジスタ回路をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記電流回路は、前記電源と前記可変抵抗との間に接続され前記主電流を出力するMOSトランジスタと、前記MOSトランジスタと前記可変抵抗との間の電位および第2の基準電位の入力を受けて、前記MOSトランジスタのゲートに信号を出力する演算増幅器と、を有することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−201882(P2007−201882A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18955(P2006−18955)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】