説明

半導体電熱膜の製造方法

【課題】
発熱効果が高く、高温で安全に使用でき、製作コストの低い半導体電熱膜の製造方法の提供。
【解決手段】
上記の半導体電熱膜の製造の下記のステップで完成した。(1)塩化物及び硅化物を主体材料とし、金属化合物を混合し、溶剤を加えて原料とする。(2)調合剤として少量の無機酸を加え、主体材料を酸化、または還元させる。(3)基板を超音波と純水で洗浄し、高温炉に入れて徐々に加熱し、双態点温度に達したとき、ノズルから高温の調合された燒着原料の荷電粒子を基板に噴射燒着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体電熱膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電熱装置は主に抵抗式電熱線を使っており、その通電の際抵抗から生ずる熱エネルギ−を利用している。この電熱用の抵抗線は取扱いが困難で、巻線工程を必要とし、製造コストが高い。
【0003】
抵抗線は通電の際、赤色の灼熱を発し、電力の消費が大きい上、高温のため多量の酸素を消耗し、このため周囲の空気の質が悪化する。なお、前述の灼熱現象が発生するので、例えば寒冷地の油田設備の加熱材として利用しにくくなる。
【0004】
近来半導帶工学技術の進歩に伴い、半導体で製作された電熱器材が従来の抵抗式電熱器材に取って代るようになった。前者は後者に比べて、より高温で使用でき、効率が高く、電力が節約されて火焔も発生しないから、安全であり、製作コストも安い長所がある。
【0005】
現在までの半導体電熱膜に関する特許案の中、2002年3月6日の中國におけるCN1380443A号の「模糊控制電熱膜敷膜工藝」では従来実施されていた基材を加熱炉内に置き、電熱膜の膜液を高温で気化し、炉内に噴入して電熱酸化膜を形成する製造工程において、基材の温度及び膜形成の効率を適当に制御し得ない結果、成品の一致した品質を保てなくなる欠点が存在している事実に鑑み、これを解決する技術を提供したのである。
【0006】
前記特許案によれば、炉内に安置された基材の温度情報を即時に制御台に伝達し、制御台から即時成膜効率の制御信号を発信するのである。
【0007】
上述の製造方法では
(1)炉内の基材に形成された膜の厚さに関する情報を制御台に伝達するステップと、
(2)塗膜圧力の情報を制御台に伝達するステップと、
(3)制御台から、塗膜内ノズルと基材間の距離を制御する信号を出力するステップと、
(4)制御台から、基材を移動する速度を制御する信号を出力するステップと、
(5)制御台から、塗膜液の噴出量の制御信号を出力するステップと、
(6)制御台から同時に、上述の各種制御信号を出力するステップとを含んでいる。
【0008】
和立科技K.K.の2001年10月23日に提出した台湾発明特許第90126142号「電熱膜加熱裝置及其電極結構」によれば、従来からある技術、即ち相等しい幅の矩形構造の上、下電極を膜の両端に使用し、これにバイアス電圧をかけて熱を発生させる。このバイアス電圧による電流は電熱膜の中央部で大きく、両側では小さい。このような電熱膜内の電流密度の不均一は中央部の過熱を招き両側では加熱効率の低下を致す欠点が存在した。
【0009】
この例証案ではこのような欠点を改善せんがため、電極の幅を調整し、その配置方式も変更して、電熱膜の加熱効率を改善したという。
【0010】
その具体的な手段としてこの引証案では「1組以上の電極組の間に1個以上の電熱膜を敷設し、電極組の両端の幅は中央部の幅より大きくする」。これにより電熱膜の電極組両側の抵抗値を小さくし、電熱膜全体の電流分布をなるたけ均一に保って、従来の欠点である、電熱膜の中央部が過熱し、両側部は加熱不足の欠点を改善したと説明している。
【0011】
なお、この引証案では、電極組と電熱膜の連結した稜線の輪廓は円弧形、または波形となっている。
【0012】
また1993年4月26日の台湾発明特許第82103268号の「半導体電熱膜之製法」では、下記の技術内容を開示している。
【0013】
従来の抵抗線発熱素子は、電力消費が大きく、酸化しやすく故障し、全体的にコストが高く付くという欠点があった。またセラミック発熱素子(PCT)では突入(inrush)電流が大きく、原料が高価で、製作に時間を要し、成品のイ−ルドが低く、全体的にコストが高いという抵抗線発熱素子と同様な欠点がある。
【0014】
上記の欠点を改善するための手段として、この引証案は、下記のステップを含む半導体電熱膜の製造方法を提供した。即ち
(1)原料の調製:主体材料として金属(例えば金、銀、すず、Sbなど)の化合物、或いは有機化合物の中にSb、Fe、Fなどの化合物を製造工程中1〜10%(重量比)添加する。
(2)溶媒の混合:前記の原料中に20〜60%の媒質材料(例えば、水、メチ−ルアルコ−ル、エチ−ルアルコ−ル、塩酸、エチ−ルアミンなどを添加して均一にかきまぜる。
(3)基材清理:石英、ガラス、セラミック、雲母などの高圧に耐え、膨脹係数の小さい材質で成形された基材の表面を清浄な軟水で洗浄した後、これを火で乾燥させる。
(4)高温噴霧燒着:以上のプロセスを経過した基材を炉室内に安置し、高温で加熱してその表面を活性化し、前記のプロセスで調合した流体材料を霧化し、高温の炉室内に噴入して、イオン化した粒子を基材の表面に燒着する。これで半導体発熱用薄膜が完成される。
【0015】
要するにこの引証案の半導体発熱用薄膜の形成は下記の過程を経過する。金属化合物の主体材料の中に混合剤を添加→媒質材料を加えて調合→基材表面清理→霧化した塗料を基材に燒着。
【0016】
以上各例証案の電熱膜製造技術には、それぞれ長所があるが、概してその使用する原料と製造工程において、必ずしも精密で優異であるとは云えない故、高温で発熱効率が高く、電力消費が小さく、安全で製作コストの低い半導体電熱膜の製造方法としては、まだまだ改良の餘地がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、以上述べた例証案や、その他従来の技術で製作された半導体、或いはそれ以外の材料で製作された電熱膜よりも一層、発熱効率が高く、高温で作動し、製作コストの低い、半導体電熱膜の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため本発明は、錫(Sn)、またはバナジウム(V)の塩化物及び硅化物を主体材料とし、調製の過程において、さらに1つの鉄(Fe)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)などの化合物を混合剤として主体材料の0.01〜1%(重量比)を混合し、前記の混合物を均一にかきまぜた後、一定比例の媒質としての溶剤を加えて原料とするステップと、原料を均一にかきまぜた後、調合剤として少量の無機酸を加入して主体材料を酸化、または還元させるステップと、基板を超音波で洗滌し、さらに純水で清めた後、基板を高温炉の中に入れてインライン(in line)加熱方式で徐々に加熱し、その表面が双態点温度に達したとき、原料を非鉄質の耐酸性、且つ耐アルカリ性材料にて製作されたノズルから、高温霧状の荷電した微粒子として噴射し、基板上に燒着させるステップとを含む半導体電熱膜の製造方法を提供した。
【0019】
また、媒質としての溶剤は水、メチ−ルアルコ−ル、エチ−ルアルコ−ル及び塩酸などを用いた。
【0020】
また、基板としては高温に耐え、電気的に絶縁性で膨脹係数の低い材料、例えばエナメル、石英、ガラス及びセラミックなどから構成した。
【0021】
また、加熱温度は500〜1000℃、加熱時間は1〜10分間とした。
【0022】
また、基板上の荷電微粒子の厚さは0.5〜5μmとした。
【発明の効果】
【0023】
以上述べた本発明に係る、半導体電熱膜の製造方法とその応用例によって、本発明の半導体電熱膜が、如何に従来品に比べて、より発熱効率が高く、高温、且つ安全で使用できることが分る。なお、成品の構造が簡単であるので製作コストが安い利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の新奇性及びその他の特徴や優点は、明細書に添付した図面を参照して、以下説明する実施例の内容を詳読していただきたい。
【0025】
Sn、Vの塩化物及び硅化物を主体材料とし、調製の過程において、さらに粉末状のFe、Sb、Inなどの化合物を混合剤として主体材料の0.01〜1%(重量比)を混合し、均一にかきまぜた後、一定比例(以上の原料の10〜30%が好適)の媒質としての溶剤を加える。主体材料は粉末状の微粒子を好適に使用する。
【0026】
前記の原料を十分にかきまぜて均一状にした後、調合剤として少量の硝酸、塩酸、或いは硫酸などを加えて、主体材料の親和性を高め、またこれを酸化、或いは還元せしめる。
【0027】
それから基板を超音波で洗滌し、さらに純水できよめてから、基板を高温の熱炉の中に入れて、インライン加熱方式で徐々に加熱し、その表面が原料の双態点温度(固体層から液体層への遷移温度であり、固体層と液体層の二つの層が同時に存在する温度)に達したとき、原料を非鉄質の耐酸性、且つ耐アルカリ性材料にて製作されたノズルから、高温霧状の荷電した微粒子として噴射し、基板上に燒着させる。
【0028】
上述の製造過程中、媒質として使用される溶剤は水、メチ−ルアルコ−ル、エチ−ルアルコ−ル、塩酸及び硫酸などである。
【0029】
上述の製造過程中、基板には、高温に耐え、電気的に絶縁性で、膨脹係数の低い材料であるエナメル、石英、ガラス及びセラミックを用いた。基板の厚さは必要に応じて定めた。
【0030】
上述の製造過程中、高温熱炉中の霧化微粒子の燒着における加熱温度は500〜1000℃とし、加熱時間は1〜10分間とした。そして微粒子の燒着厚さは0.5〜5μmとした。
【0031】
以上述べた製造方法で、従来の技術で製作された半導体、或いはそれ以外の材料で製作された電熱膜よりも一層、発熱効率が高く、高温で使用でき、製作コストも低い、優秀な半導体電熱膜ができ上るのである。
【0032】
図1と図2に本発明の半導体電熱膜を電熱装置に応用した実施例を示す。加熱装置の基材1はその一面に電熱膜層2を含み、この層2の両側には電極3が電気的に接続されている。この電極3の通電によって、電熱膜層2と基材1とが作用し、遠赤外線を生成して被加熱体の内部を均一に加熱するのである。
【0033】
その外、応用上本発明の電熱膜層2の上に無機材料の耐熱絶縁層4を一層被覆する。加熱面が電熱膜層2の背面に位置するので、電熱膜層2を被覆した絶縁層4はよく断熱の役目を果すのである。
【0034】
以上の詳細な説明は、本発明の実行可能な実施例についての具体的説明である。但し、この実施例は本発明の特許請求範囲を制限するものではなく、凡そ本発明の技術精神を逸脱せずなされた同等効果の実施、又は変更は、全て本発明の特許請求範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を電熱装置に応用した実施例の正面図である。
【図2】本発明を電熱装置に応用した実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1:基材
2:電熱膜層
3:電極
4:耐熱絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体電熱膜の製造方法において、錫(Sn)、またはバナジウム(V)の塩化物及び硅化物を主体材料とし、調製の過程中において、さらに1つの鉄(Fe)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)などの化合物を混合剤として主体材料の0.01〜1%(重量比)を混合し、前記の混合物を均一にかきまぜた後、一定比例の媒質としての溶剤を加えて原料とするステップと、
前記原料を均一にかきまぜた後、調合剤として少量の無機酸を加入して前記主体材料を酸化、または還元させるステップと、
基板を超音波で洗滌し、さらに純水で洗淨した後、前記基板を高温炉の中に入れてインライン(in line)加熱方式で徐々に加熱し、その表面が双態点温度に達したとき、前記原料を非鉄質の耐酸性、且つ耐アルカリ性材料にて製作されたノズルから、高温霧状の荷電した微粒子として噴射し、前記基板上に燒着させるステップとを含むことを特徴とする、半導体電熱膜の製造方法。
【請求項2】
前記媒質としての溶剤は水、メチ−ルアルコ−ル、エチ−ルアルコ−ル、塩酸及び硫酸であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体電熱膜の製造方法。
【請求項3】
前記基板は高温に耐え、電気的に絶縁性で膨脹係数の低い材料であるエナメル、石英、ガラス及びセラミックの1つよりなることを特徴とする、請求項1に記載の半導体電熱膜の製造方法。
【請求項4】
前記インライン加熱方式による加熱温度は500〜1000℃、加熱時間は1〜10分間であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体電熱膜の製造方法。
【請求項5】
前記荷電した微粒子基板上の燒着厚さは0.5〜5μmであることを特徴とする、半導体電熱膜の製造方法。
【請求項6】
前記媒質としての溶剤の比重は、調合が完了した原料の比重の10〜30%であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体電熱膜の製造方法。
【請求項7】
前記主体材料は、粉末状の微細な顆粒よりなることを特徴とする、請求項1に記載の半導体電熱膜の製造方法。
【請求項8】
前記調合剤としての無機酸は、硝酸、塩酸、或いは硫酸であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体電熱膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−244791(P2006−244791A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56752(P2005−56752)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(504392304)
【Fターム(参考)】