説明

半透過型表示装置、半透過型表示装置の駆動方法、及び、電子機器

【課題】反射型表示装置と同等の反射表示性能を保ったまま、透過表示を実現可能な半透過型表示装置、半透過型表示装置の駆動方法、及び、当該半透過型表示装置を有する電子機器を提供する。
【解決手段】画素毎に設けられた反射電極を有する半透過型表示装置において、反射電極を用いて反射表示を行うとともに、反射電極の画素間の空間を用いて当該空間を透して透過表示を行うことで、反射型液晶表示装置と同等の反射表示性能を保ったまま、透過表示を実現できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半透過型表示装置、その(半透過型表示装置)の駆動方法、及び、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として、画面背面のバックライト光による透過光を利用して表示を行う透過型表示装置や、外光による反射光を利用して表示を行う反射型表示装置がある。透過型表示装置は、彩度が高く、暗い環境下でも画面が見易いという特長を持っている。反射型表示装置は、消費電力が少なく、明るい環境下でも画面が見易いという特長を持っている。
【0003】
また、透過型表示装置と反射型表示装置との特長を併せ持つ表示装置として、例えば、1つの画素内に透過表示領域(透過表示部)と反射表示領域(反射表示部)とを有する半透過型表示装置がある(例えば、特許文献1参照)。半透過型表示装置は、暗い環境下ではバックライト光による透過光を用いて表示を行い、明るい環境下では外光による反射光を用いて表示を行うことになる。
【0004】
半透過型表示装置は、明るい環境下でも、暗い環境下でも画面が見易く、しかも、消費電力が少ないために、電子機器、中でも、屋外で使用される頻度が高い携帯型の電子機器(携帯端末機器)、例えば、デジタルカメラ等の携帯情報機器や、携帯電話機等の携帯通信機器の表示部として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−93115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半透過型表示装置において、透過表示領域を確保することと、反射表示性能を保つこととはトレードオフの関係にある。すなわち、透過表示性能を上げるべく、透過表示領域を大きく確保しようとすると、その分だけ反射表示領域を小さくせざるを得ないため反射表示性能が低下する。逆に、反射型表示装置と同等の反射表示性能を保とうとすると、反射表示領域を大きく確保しなければならないため、その分だけ透過表示性能が低下する。
【0007】
そこで、本開示は、反射型表示装置と同等の反射表示性能を保った上で透過表示を実現可能な半透過型表示装置、半透過型表示装置の駆動方法、及び、当該半透過型表示装置を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本開示は、
画素毎に設けられた反射電極を有する半透過型表示装置において、
前記反射電極を用いて反射表示を行い、
前記反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う
構成を採っている。この半透過型表示装置は、各種の電子機器、中でも、屋外での使用頻度が高い携帯型の電子機器において、その表示部として用いて好適なものである。
【0009】
上記構成の半透過型表示装置または当該表示装置を用いた電子機器において、反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行うということは、当該画素間の空間の領域を透過表示領域として用いるということである。これにより、1つの画素内に透過表示のための専用の領域を確保する必要がなくなる。このことは、1つの画素内の反射電極の大きさ(面積)として、反射型表示装置の反射電極と同程度の大きさを確保できることを意味する。従って、反射型表示装置と同等の反射表示性能を保ったまま、反射電極の画素間の空間を透して透過表示を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行うことで、反射型表示装置と同等の反射表示性能を保った上で透過表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示が適用される半透過型液晶表示装置の構成の概略を、一部を切り欠いた状態で示す斜視図である。
【図2】基本的な画素回路を示す回路図である。
【図3】従来の画素部の電極構造の説明に供する図であり、(A)は従来の反射型液晶表示装置の画素部の平面図を、(B)は従来の半透過方液晶表示装置の画素部の平面図をそれぞれ示している。
【図4】実施形態に係る画素部の電極構造を示す平面図である。
【図5】フレーム反転の駆動方式を採用するのが好ましい理由についてのシミュレーション結果を示す図であり、(A)は電圧無印加時の場合を、(B)はライン反転またはドット反転の際の電圧印加時の場合を、(C)はフレーム反転の際の電圧印加時の場合をそれぞれ示している。
【図6】MIPの画素の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図7】MIPの画素の動作説明に供するタイミングチャートである。
【図8】面積階調法における画素分割についての説明図である。
【図9】反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う場合における画素間の液晶分子の動きを示す図である。
【図10】ノーマリーホワイトモードの場合の画素間における透過率のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】シングルギャップ構造の半透過型液晶表示装置の行方向において隣接する2つの画素の断面構造を示す断面図である。
【図12】シングルギャップ構造の場合に、ノーマリーブラックのECBモードの光学設計を行った一例を示す図である。
【図13】マルチギャップ構造の半透過型液晶表示装置の行方向において隣接する2つの画素の断面構造を示す断面図である。
【図14】反射表示領域のスペクトルの計算結果を示す図である。
【図15】透過表示領域のスペクトルの計算結果を示す図である。
【図16】変形例に係る画素部の電極構造を示す平面図である。
【図17】本開示が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図18】本開示が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。
【図19】本開示が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【図20】本開示が適用される携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の技術を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.本開示が適用される半透過型表示装置
1−1.カラー表示対応の半透過型液晶表示装置
1−2.基本的な画素回路
1−3.画素部の電極構造についての考察
2.実施形態の説明
2−1.液晶表示パネルの駆動方式
2−2.MIP方式
2−3.面積階調法
2−4.表示モード
2−5.具体的な実施例
3.電子機器
4.変形例
5.本開示の構成
【0013】
<1.本開示が適用される半透過型表示装置>
本開示の技術は、フラットパネル型(平面型)の表示装置に適用することができる。フラットパネル型の表示装置としては、液晶表示(LCD)パネルを用いた表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示パネルを用いた表示装置、プラズマ表示(PD)パネルを用いた表示装置などを例示することができる。
【0014】
これらフラットパネル型の表示装置は、表示の形態で分類すると、透過型、反射型、及び、半透過型に分類することができる。本開示の技術は、透過型表示装置と反射型表示装置との特長を併せ持つ半透過型表示装置、即ち、明るい環境下でも、暗い環境下でも画面が見易く、しかも、消費電力が少ない半透過型表示装置に適用することができる。これらの特長を持つ半透過型表示装置は、電子機器、中でも、屋外での使用頻度が高い携帯型の電子機器、即ち、携帯端末機器、例えば、デジタルカメラ等の携帯情報機器や、携帯電話機等の携帯通信機器の表示部として用いて好適なものである。
【0015】
本開示が適用される半透過型表示装置は、モノクロ表示対応の表示装置であってもよいし、カラー表示対応の表示装置であってもよい。カラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素(単位画素)は複数の副画素(サブピクセル)から構成されることになる。より具体的には、カラー表示対応の表示装置では、1つの画素は、例えば、赤色(Red;R)を表示する副画素、緑色(Green;G)を表示する副画素、青色(Blue;B)を表示する副画素の3つの副画素から構成される。
【0016】
但し、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、RGBの3原色の副画素に更に1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色(White;W)を表示する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色を表示する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0017】
[1−1.カラー表示対応の半透過型液晶表示装置]
以下に、本開示が適用される半透過型表示装置として、カラー表示対応の半透過型液晶表示装置を例に挙げて説明するものとする。
【0018】
図1は、本開示が適用されるカラー表示対応の半透過型液晶表示装置の構成の概略を、一部を切り欠いた状態で示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本開示が適用される半透過型表示装置1は、第1パネル部10、第2パネル部20、液晶層30、及び、バックライト部40を主な構成要素として有する構成となっており、第2パネル部20の表面側が表示面側となる。第1パネル部10と第2パネル部20とは、所定の空隙を持って対向配置されている。そして、第1パネル部10と第2パネル部20との空隙内に液晶材料が封止されることによって液晶層30が形成されている。
【0020】
第1パネル部10は、液晶層30と反対側、即ち、バックライト部40側から順に、偏光板11、1/2波長板12、1/4波長板13、透明なガラス等を基板材料とする第1基板14、及び、平坦化膜15が設けられた構成となっている。
【0021】
この第1パネル部10において、第1基板14上には、共に図示しない複数の信号線と複数の走査線とが交差するように形成されている。そして、複数の信号線と複数の走査線とが交差する部位には、副画素(以下、単に「画素」と記述する場合もある)50が行列状に2次元配置されている。
【0022】
第1基板14上には更に、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のスイッチング素子や容量素子等の回路素子が画素50毎に形成されている。これら回路素子や信号線、走査線の上に平坦化膜15が形成されることによって第1パネル部10の表面の平坦化が図られている。そして、平坦化膜15の上に、後述する反射電極が画素50毎に形成されることになる。第1基板14は、TFTを含む回路素子が形成されることからTFT基板と呼ばれる場合がある。
【0023】
複数の信号線は、画素50を駆動する信号(表示信号/映像信号)を伝送するための配線であり、画素50の行列状の配置に対して画素列毎に、当該画素列の画素の配列方向、即ち、列方向(図1のY方向)に沿って延在する配線構造となっている。複数の走査線は、画素50を行単位で選択する信号(走査信号)を伝送するための配線であり、画素50の行列状の配置に対して画素行毎に、当該画素行の画素の配列方向、即ち、行方向(図1のX方向)に沿って延在する配線構造となっている。
【0024】
第2パネル部20は、液晶層30側から順に、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等から成る透明電極21、カラーフィルタ22、透明なガラス等を基板材料とする第2基板23、1/4波長板24、1/2波長板25、及び、偏光板26が設けられた構成となっている。
【0025】
この第2パネル部20において、カラーフィルタ22は、例えば、列方向(Y方向)に伸びるストライプ状のR(赤色)G(緑色)B(青色)の各フィルタが、画素50の行方向(X方向)のピッチと同じピッチにて繰り返し配列された構成となっている。第2基板23は、カラーフィルタ(CF:Color Filter)22を含んでいることからCF基板と呼ばれる場合がある。
【0026】
上述した、第1パネル部10、当該第1パネル部10と対向配置された第2パネル部20、及び、第1,第2パネル部10,20間に配置された液晶層30によって半透過型の液晶表示パネルが構成されており、第2パネル部20の上面(表面)が表示面となっている。
【0027】
バックライト部40は、液晶表示パネルを当該パネルの背面側、即ち、第1パネル部10の液晶層30と反対側から照明する照明部である。このバックライト部40は、その構成を特に限定するものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)や蛍光管などの光源、プリズムシート、拡散シート、導光板等の周知の部材を用いて構成することができる。
【0028】
上記構成の半透過型表示装置1において、画素50は、当該画素50毎に反射表示領域(反射表示部)と透過表示領域(透過表示部)とを有している。反射表示領域は、先述したように、平坦化膜15上に画素50毎に形成される反射電極から成り、第2パネル部20を透して外部から入射した外光を当該反射電極によって反射し、その反射光によって表示を行う。透過表示領域は、バックライト部50からの光を透過し、その透過光によって表示を行う。この画素50毎に設けられる透過表示領域については本開示の特徴とする部分であり、その詳細については後述する。
【0029】
[1−2.基本的な画素回路]
ここで、画素50の基本的な画素回路について、図2を用いて説明する。
【0030】
図2に示すように、複数の信号線61(611,612,613,・・・)と、複数の走査線62(621,622,623,・・・)とが交差するように配線され、その交差部に画素50が配されている。先述したように、複数の信号線61と複数の走査線62とは、第1パネル部10の第1基板(TFT基板)14上に形成されている。そして、信号線61(611,612,613,・・・)の各一端は、信号出力回路70の各列に対応した出力端に接続され、複数の走査線62(621,622,623,・・・)の各一端は、走査回路80の各行に対応した出力端に接続されている。
【0031】
画素50は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)からなる画素トランジスタ51と液晶容量52と保持容量53とを有する構成となっている。画素トランジスタ51は、ゲート電極が走査線62(621,622,623,・・・)に接続され、ソース電極が信号線61(611,612,613,・・・)に接続されている。
【0032】
液晶容量52は、画素電極(画素毎に形成される反射電極に相当)とこれに対向して形成される対向電極(図1の透明電極21に相当)との間で発生する液晶材料の容量成分を意味し、画素電極が画素トランジスタ51のドレイン電極に接続されている。液晶容量52の対向電極には、直流電圧のコモン電位VCOMが全画素共通に印加される。保持容量53は、一方の電極が液晶容量52の画素電極に、他方の電極が液晶容量52の対向電極にそれぞれ接続されている。
【0033】
上記の画素回路から明らかなように、複数の信号線61(611,612,613,・・・)は、画素50を駆動する信号、即ち、信号出力回路70から出力される映像信号を画素列毎に画素50に伝送する配線である。また、複数の走査線62(621,622,623,・・・)は、画素50を行単位で選択する信号、即ち、走査回路80から出力される走査信号を画素行毎に伝送する配線である。
【0034】
[1−3.画素部の電極構造についての考察]
本開示の特徴とする透過表示領域について説明する前に、画素50の電極構造について考察する。
【0035】
図3は、従来の画素部の電極構造の説明に供する図であり、(A)は反射(全反射)型液晶表示装置の画素部の平面図を、(B)は従来の半透過型液晶表示装置の画素部の平面図をそれぞれ示している。図3(A),(B)において、反射電極63については、網掛けを付して示している。
【0036】
図3(A),(B)に示すように、液晶表示装置の画素部は、画素50が行列状に配置され、当該行列状の配置に対して信号線61が列方向に沿って延在する画素間の空間位置に配線され、走査線62が行方向に沿って延在する画素間の空間位置に配線された構成となっている。先述したように、信号線61と走査線62とは、図1において、第1パネル部10の第1基板14上に互いに交差するように配線されている。
【0037】
かかる構成の画素部(画素アレイ部)において、図3(A)に示す反射型液晶表示装置にあっては、アルミニウム等の金属から成る反射電極63を、画素50のサイズとほぼ同じ大きさで形成し、当該反射電極63の領域を反射表示領域としている。すなわち、反射型液晶表示装置では、画素50のサイズとほぼ同じ大きさの反射表示領域を確保することで、所望の反射表示性能を得るようにしている。
【0038】
これに対して、図3(B)に示す従来の半透過型液晶表示装置にあっては、1つの画素50内に反射電極63と共に開口部64を形成し、当該開口部64を透過表示領域として用いるようにしている。このように、透過表示領域を確保すべく、画素50内に開口部64を形成すると、当該開口部64の面積の分だけ反射電極63、即ち、反射表示領域を小さくせざるを得ないため反射表示性能が、反射型液晶表示装置のそれに比べて低下する。すなわち、透過表示領域を確保することと、反射表示性能を保つこととはトレードオフの関係にある。
【0039】
<2.実施形態の説明>
本開示の実施形態に係る半透過型液晶表示装置は、反射型表示装置と同等の反射表示性能を保ったまま、透過表示を実現するために、反射電極63の画素50間の空間を用いて透過表示を行うことを特徴としている。具体的には、図4に示すように、画素50が行列状に配置されて成る画素部において、信号線61や走査線62等の配線を、反射電極63の画素50間の空間を塞がないように形成することで、当該空間を透過表示領域として用いて透過表示を行うことができる。
【0040】
図4において、反射電極63については、網掛けを付して示している。また、反射電極63の画素50間の空間としては、画素列の画素の配列方向、即ち、列方向(図の上下方向)に沿って延在する空間65Aと、画素行の画素の配列方向、即ち、行方向(図の左右方向)に沿って延在する空間65Bとが存在する。尚、本例では、画素部に形成される配線として信号線61及び走査線62を例示しているが、これらに限られるものではない。すなわち、画素50を駆動(制御)するに当たって必要となる駆動線(制御線)全てが、ここで言う配線に含まれる。
【0041】
ここで、「空間を塞がない」とは、配線が反射電極63の画素50間の空間65A,65Bとオーバーラップしている領域の存在を排除するものではない。具体的には、列方向に配線される信号線61が行方向に延在する空間65Bとオーバーラップする状態や、行方向に配線される走査線62が列方向に延在する空間65Aとオーバーラップする状態は、「空間を塞がない」概念に含まれるものとする。
【0042】
また、信号線61が列方向に延在する空間65Aと一部があるいは部分的にオーバーラップする状態や、走査線62が行方向に延在する空間65Bと一部があるいは部分的にオーバーラップする状態も、「空間を塞がない」概念に含まれるものとする。いずれの場合にも、信号線61や走査線62が空間65A,65Bとオーバーラップしていない領域を透過表示領域として用いることになる。
【0043】
また、反射電極63の画素50間の空間65A,65Bを塞がないように配線を形成する際には、当該配線を反射電極63の画素50間の空間65A,65Bを避けて形成するのが好ましい。ここで、「空間を避けて」とは、反射電極63の画素50間の空間65A,65B中に配線が存在しない(即ち、当該空間65A,65B中に配線がオーバーラップする領域が存在しない)状態を言う。
【0044】
具体的には、図4に示すように、信号線61については、列方向に延在する空間65Aを避けて、即ち、空間65Aとの間にオーバーラップする領域(部分)を存在させずに配線するのが好ましい。また、走査線62については、行方向に延在する空間65Bを避けて、即ち、空間65Bとの間にオーバーラップする領域を存在させずに配線するのが好ましい。反射電極63の画素50間の空間65A,65B中に信号線61及び走査線62がオーバーラップする領域が存在しないことで、当該空間65A,65Bの領域の全体を透過表示領域として用いることができるため、より高い透過表示性能を得ることが可能となる。
【0045】
上述したように、反射電極63の画素50間の空間を用いて透過表示を行う、即ち、当該空間の領域を透過表示領域とすることにより、画素50内に透過表示領域を別途確保する必要がなくなる。これにより、図3(A)と図4との対比から明らかなように、画素50のサイズを同じとした場合、反射電極63の大きさを反射型液晶表示装置のそれと同等にできるため、反射型表示装置と同等の反射表示性能を保ったまま、透過表示を実現可能となる。
【0046】
[2−1.液晶表示パネルの駆動方式]
ところで、液晶表示パネル(液晶表示装置)においては、液晶に同極性の直流電圧が印加され続けることによって液晶の比抵抗(物質固有の抵抗値)等が劣化するのを防ぐために、コモン電位VCOMを基準として映像信号の極性を所定の周期で反転させる駆動方式が採られる。
【0047】
この液晶表示パネルの駆動方式として、ライン反転、ドット反転、フレーム反転などの駆動方式が知られている。ライン反転は、1ライン(1画素行)に相当する1H(Hは水平期間)の時間周期で映像信号の極性を反転させる駆動方式である。ドット駆動は、互いに隣接する上下左右の画素毎に映像信号の極性を交互に反転させる駆動方式である。フレーム反転は、1画面に相当する1フレーム毎に全画素に書き込む映像信号を一度に同じ極性で反転させる駆動方式である。
【0048】
本実施形態に係る半透過型液晶表示装置では、上記の各駆動方式のいずれを採用することも可能である。但し、以下に説明する理由により、ライン反転やドット反転の駆動法よりも、フレーム反転の駆動方式を採用するのが好ましい。
【0049】
フレーム反転の駆動方式を採用するのが好ましい理由について、図5のシミュレーション結果を用いて説明する。図5において、(A)は画素50に電圧を印加しない場合のシミュレーション結果を、(B)はライン反転またはドット反転の際に画素50に電圧を印加した場合のシミュレーション結果を、(C)はフレーム反転の際に画素50に電圧を印加した場合のシミュレーション結果をそれぞれ表わしている。また、図5(B),(C)には、等電位線を一点鎖線で示している。
【0050】
ライン反転またはドット反転の場合は、透明電極(対向電極)21と反射電極(画素電極)63との間の電位が隣接する2つの画素間で異なることにより、画素間における一方の画素近傍と他方の画素近傍での液晶分子の振る舞いが違ってくるため、画素間の液晶配向が安定しない。このことは、図5(B)に一点鎖線で示す等電位線の分布からも明らかである。
【0051】
このように、隣接する2つの画素間で電位が異なるライン反転またはドット反転の場合には、画素間の液晶配向を安定して制御することができない。これにより、液晶配向が安定しない画素間の空間を透過表示領域として用いて透過表示を行うと、残像が残ったりする懸念がある。
【0052】
これに対して、フレーム反転の場合は、透明電極21と反射電極63との間の電位が隣接する2つの画素間で同じであることにより、画素間における一方の画素近傍と他方の画素近傍とで液晶分子が同じような振る舞いをすることになるため、画素間の液晶配向がライン反転またはドット反転の場合に比べて安定する。このことは、図5(C)に一点鎖線で示す等電位線の分布からも明らかである。
【0053】
このように、隣接する2つの画素間で電位が同じフレーム反転の場合には、画素間の液晶配向を比較的安定して制御することができるため、当該画素間の空間を透過表示領域として用いて透過表示を行っても残像の問題は生じない。以上の理由から、反射電極63の画素50間の空間を用いて透過表示を行うに当たっては、ライン反転またはドット反転の駆動方式を用いるよりも、フレーム反転の駆動方式を用いる方が好ましい。但し、先述したように、ライン反転またはドット反転の駆動方式の採用を排除するものではない。
【0054】
[2−2.MIP方式]
ところで、フレーム反転の駆動方式を用いる場合、1フレーム期間に亘って同じ極性の信号電圧を信号線に書き込むことになるためにシェーディングが発生する懸念がある。そこで、本実施形態に係る半透過型液晶表示装置においては、フレーム反転の駆動方式を用いるに当たって、画素50としてメモリ機能を有する画素、例えば、画素毎にデータを記憶可能なメモリを持つ、所謂、MIP(Memory In Pixel)方式を採用することとする。MIP方式の場合、画素に常に一定電圧がかかることになるためにシェーディングの問題を解消することができる。
【0055】
また、MIP方式は、データを記憶するメモリを画素内に持つことにより、アナログ表示モードによる表示と、メモリ表示モードによる表示とを実現できる。ここで、アナログ表示モードとは、画素の階調をアナログ的に表示する表示モードである。また、メモリ表示モードとは、画素内のメモリに記憶されている2値情報(論理“1”/論理“0”)に基づいて、画素の階調をデジタル的に表示する表示モードである。
【0056】
メモリ表示モードの場合、メモリに保持されている情報を用いるため、階調を反映した信号電位の書き込み動作をフレーム周期で実行する必要がない。そのため、メモリ表示モードの場合は、階調を反映した信号電位の書き込み動作をフレーム周期で実行する必要があるアナログ表示モードの場合に比べて消費電力が少なくて済む、換言すれば、表示装置の低消費電力化を図ることができる。
【0057】
図6は、MIPの画素の回路構成の一例を示すブロック図であり、図中、図2と同等部位には同一符号を付して示している。また、図7に、MIPの画素の動作説明に供するタイミングチャートを示す。
【0058】
図6に示すように、画素50は、液晶容量(液晶セル)52に加えて、3つのスイッチ素子54〜56及びラッチ部57を有するSRAM機能付きの画素構成となっている。ここで、液晶セル45は、画素電極とこれに対向して配される対向電極との間で発生する液晶容量を意味している。
【0059】
スイッチ素子54は、信号線61(図2の信号線611〜613に相当)に一端が接続されており、図2の走査回路80から走査信号φVが与えられることによってオン(閉)状態となり、図2の信号出力回路70から信号線61を介して供給されるデータSIGを取り込む。ラッチ部57は、互いに逆向きに並列接続されたインバータ571,572によって構成されており、スイッチ素子54によって取り込まれたデータSIGに応じた電位を保持(ラッチ)する。
【0060】
スイッチ素子55,56の各一方の端子には、コモン電位VCOMと逆相の制御パルスXFRP及び同相の制御パルスFRPが与えられる。スイッチ素子55,56の各他方の端子は共通に接続され、その共通接続ノードが、本画素回路の出力ノードNoutとなる。スイッチ素子55,56は、ラッチ部57の保持電位の極性に応じていずれか一方がオン状態となる。これにより、対向電極(図1の透明電極21)にコモン電位VCOMが印加されている液晶容量52に対して、制御パルスFRPまたは制御パルスXFRPが画素電極(図4の反射電極63)に印加される。
【0061】
図7から明らかなように、本例の場合、ラッチ部57の保持電位が負側極性のときは、液晶容量52の画素電位がコモン電位VCOMと同相になるため黒表示となり、ラッチ部57の保持電位が正側極性のときは、液晶容量52の画素電位がコモン電位VCOMと逆相になるため白表示となる。
【0062】
上述したことから明らかなように、MIPの画素50では、ラッチ部57の保持電位の極性に応じてスイッチ素子55,56のいずれか一方がオン状態となることで、液晶容量52の画素電極(図4の反射電極63)に対して、制御パルスFRPまたは制御パルスXFRPが印加される。これにより、画素50には常に一定電圧が印加されることになるためにシェーディングが発生する懸念はない。
【0063】
尚、ここでは、画素50が内蔵するメモリとしてSRAMを用いる場合を例に挙げて説明したが、SRAMは一例に過ぎず、他の構成のメモリ、例えばDRAMを用いる構成を採るようにしてもよい。
【0064】
[2−3.面積階調法]
ところで、MIP方式の場合、画素50毎に1ビットで2階調しか表現を行うことができない。そこで、本実施形態に係る半透過型液晶表示装置において、MIP方式を採用するに当たっては、面積階調法を用いるのが好ましい。ここで、面積階調法とは、画素面積(画素電極の面積)に例えば2:1の重みを付けて2ビットで4階調を表現する階調表現方式である。面積階調法の詳細については後述する。
【0065】
具体的には、画素50の反射表示領域となる反射電極63を、面積的に重み付けした複数の画素(副画素)電極に分割する面積階調法を用いている。そして、ラッチ部57の保持電位によって選択された画素電位を面積的に重み付けした画素電極に通電し、重み付けした面積の組み合わせによって階調表示を行うようにする。
【0066】
以下に、面積階調法について具体的に説明する。面積階調法は、面積比を20 ,21 ,22 ,・・・,2N-1 、という具合に重み付けしたN個の副画素電極で2N 個の階調を表現する階調表現方式であり、例えば、TFT特性のばらつきによる画質の不均一性を改善する等の目的で採用される。本実施形態に係る半透過型液晶表示装置にあっては、画素電極である反射電極63の面積(画素面積)に2:1の重みを付けることによって2ビットで4階調を表現する面積階調法を採るものとする。
【0067】
画素面積に2:1の重みを付ける構造としては、図8(A)に示すように、画素50の画素電極を面積1の副画素電極501と、当該副画素電極501の2倍の面積(面積2)の副画素電極502とに分割する構造が一般的である。しかし、図8(A)の構造の場合には、1画素の重心に対する各階調の重心が揃わない(一致しない)ため、階調表現の点で好ましくない。
【0068】
1画素の重心に対する各階調の重心を揃える構造としては、図8(B)に示すように、面積2の副画素電極504の中心部を矩形形状にくり抜き、そのくり抜いた矩形領域の中心部に面積1の副画素電極503を配置する構造がある。しかし、図8(B)の構造の場合には、副画素電極503の両側に位置する、副画素電極504の連結部504A,504Bの幅が狭いため、副画素電極504全体の反射面積が小さくなるとともに、連結部504A,504Bの辺りの液晶配向が難しい。
【0069】
上述したように、面積階調で、無電界時に液晶分子が基板に対してほぼ垂直になるVA(Vertical Aligned:垂直配向)モードにしようとすると、液晶分子に対する電圧のかかり方が、電極形状や電極サイズ等によって変わるため、良好に液晶配向させることが難しい。また、反射電極の面積比が反射率比になるとは限らないので階調設計が難しい。反射率は、反射電極の面積や液晶配向などによって決まる。図8(A)の構造の場合、面積比が1:2であっても電極周辺の長さの比が1:2とはならない。従って、反射電極の面積比が反射率比になるとは限らない。
【0070】
このような観点からすると、面積階調法を採用するに当たっては、階調の表現性と反射面積の有効活用を考えると、図8(C)に示すように、画素電極を同じ面積(大きさ)の3つの副画素電極505,506A,506Bに分割する、所謂、3分割の電極構成にするのが望ましい。
【0071】
この3分割の電極構成の場合、真ん中の副画素電極505を挟む上下2つの副画素電極506A,506Bを組とし、当該組となる2つの副画素電極506A,506Bを同時に駆動することで、真ん中の副画素電極505との間で画素面積に2:1の重みを付けることができる。また、1画素の重心に対する各階調の重心を揃えることができる。
【0072】
2つの副画素電極506A,506Bを同時に駆動するに当たっては、図8(C)に破線で示すように、2つの副画素電極506A,506Bを互いに電気的に接続するのが好ましい。2つの副画素電極506A,506Bを電気的に接続することで、2つの副画素電極506A,506Bを1つの駆動回路によって駆動することができる。従って、2つの副画素電極506A,506Bを別々の駆動回路によって駆動する構成を採る場合よりも画素の回路構成を簡略化できる利点がある。
【0073】
尚、ここでは、MIP方式を採用するに当たって、面積階調法を用いる場合を例に挙げて説明したが、他の階調法、例えば時分割階調法を用いるようにしてもよい。但し、面積階調法の場合、静止画であっても時間によって画素電位が異なり、画素内及び画素間の液晶分子が動いてしまう。従って、時分割階調法を用いるよりも面積階調法を用いる方が好ましい。また、面積階調法の場合には、画素電極、即ち、反射電極63を分割することから、電極間の隙間が多くなるために、パネルの透過率としては分割しない場合よりも高くなる利点がある。
【0074】
また、上記の例では、メモリ機能を有する画素として、画素毎にデータを記憶可能なメモリを持つMIPの画素を用いるとしたが、これは一例に過ぎない。メモリ機能を有する画素としては、MIPの画素の他に、例えば、周知のメモリ性液晶を用いる画素を例示することができる。
【0075】
[2−4.表示モード]
ところで、液晶の表示モードには、電界(電圧)無印加時に白表示、電界印加時に黒表示になるノーマリーホワイトモードと、電界無印加時に黒表示、電界印加時に白表示になるノーマリーブラックモードとがある。この両モードは液晶セルの構造は同じであり、図1の偏光板11,26の配置が異なる。
【0076】
反射電極63の画素50間の空間を用いて透過表示を行う場合、画素間の液晶分子は全てスイッチングする訳ではなく、液晶分子が動かない領域も存在する。ノーマリーホワイトモードの場合、液晶分子が動かない領域の存在によって黒を締めることができないために、コントラストが低くなる懸念がある。
【0077】
図9に、反射電極63の画素間の空間を用いて透過表示を行う場合における画素間の液晶分子の動きを示す。図9において、反射電極63の中央部の箇所Aでは液晶分子が完全に動く。これに対して、画素間における反射電極63の近傍の箇所Bでは液晶分子がある程度動き、画素間の中央部の箇所Cでは液晶分子が全く動かない。
【0078】
これにより、液晶分子が全く動かない画素間の中央部の領域では、透過率が反射電極63の領域に比べて極端に高くなるため光漏れが生じる。従って、黒が締まらなくなるためコントラストが低下する。
【0079】
図10に、ノーマリーホワイトモードの場合の画素間における透過率のシミュレーション結果を示す。尚、図10において、位置A,B,Cでは、図9の箇所A,B,Cにそれぞれ対応している。図10のシミュレーション結果から、図9における画素間の中央部の箇所Cでは液晶分子が全く動いていないために透過率が高い(例えば、0.35程度)ことがわかる。
【0080】
このような理由から、本実施形態に係る半透過型液晶表示装置の表示モードとして、ノーマリーブラックモードを採用するのが好ましい。ノーマリーブラックモードにすれば、液晶に電圧が印加されていない状態、即ち、液晶配向が均一な状態で黒表示になり、黒を締めることができるため、コントラストを上げることができる。但し、ノーマリーホワイトモードの採用を排除するものではない。
【0081】
光学特性の実測結果の一例として、ノーマリーホワイトモードの場合、白透過率(%)が0.93程度、黒透過率(%)が0.29程度であるため、コントラストが3程度である。ノーマリーブラックモードの場合、白透過率(%)が0.71程度、黒透過率(%)が0.06程度であるため、コントラストが12程度である。すなわち、ノーマリーブラックモードを採用することで、コントラストをノーマリーホワイトモードの場合の4倍程度に上げることができる。
【0082】
[2−5.具体的な実施例]
本実施形態に係る半透過型液晶表示装置の具体的な実施例について以下に説明する。以下では、表示モードとしてノーマリーブラックモードを採用し、動作モードとしてECB(Electrically Controlled Birefringence:電界制御複屈折)モードを採用する場合を例に挙げて説明するものとする。但し、動作モードとしては、ECBモードに限られるものではなく、VA(Vertically Aligned)モードや、FFS(Fringe Field Switching)モードなどを採用するようにしてもよい。
【0083】
図11は、本実施形態の一実施例に係る半透過型液晶表示装置の行方向(X方向)において隣接する2つの画素の断面構造を示す断面図であり、図中、図1と同等部位には同一符号を付して示している。
【0084】
図11に示すように、第1パネル部10は、液晶層30と反対側から順に、偏光板11、1/2波長板12、1/4波長板13、TFT基板である第1基板14、及び、平坦化膜15が設けられ、平坦化膜15上に反射電極63が画素毎に形成された構成となっている。
【0085】
この第1パネル部10において、反射電極63は、画素サイズと同程度の大きさで形成されている。そして、反射電極63の領域が反射表示領域(反射表示部)となる。また、行方向(X方向)において隣接する2つの画素の反射電極63間には、列方向(Y方向)に沿って空間65Aが形成されている。尚、本断面には現れていないが、図4に示すように、列方向において隣接する2つの画素の反射電極63間には、行方向に沿って空間65Bが形成されている。
【0086】
第1基板14上には、画素列毎に各画素に対して映像信号を伝送する信号線61が配線されている。この信号線61は、列方向に沿って延在する空間65Aを塞がないように、好ましくは、当該空間65Aとオーバーラップしないように、反射表示領域内に形成されている。本断面には現れていないが、画素行毎に各画素に対して走査信号を伝送する走査線62(図4参照)にあっては、行方向に沿って延在する空間65Bを塞がないように、好ましくは、当該空間65Bとオーバーラップしないように、反射表示領域内に形成されている。
【0087】
そして、信号線61及び走査線62がオーバーラップしていない反射電極63の画素間の空間65A,65Bは、透過表示領域として用いられる。ここで、本実施例に係る画素構造にあっては、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層30の厚み、即ち、セルギャップが同じシングルギャップ構造となっている。
【0088】
第1パネル部10と液晶層30を挟んで対向する第2パネル部20は、液晶層30側から順に、透明電極21、カラーフィルタ22、第2基板23、1/4波長板24、1/2波長板25、及び、偏光板26が設けられた構成となっている。ここでは、行方向において隣接する2つの画素、例えば、R(赤色)を表示するRの副画素と、G(緑色)を表示するGの副画素についての画素構造を示している。
【0089】
上述したシングルギャップ構造の場合に、ノーマリーブラックのECBモードの光学設計を行った一例を図12に示す。図12には、第1パネル10の構成部材、液晶セル(液晶層30)、及び、第2パネル20の構成部材の各軸方向を表わしている。具体的には、第1パネル10側については、偏光板11の吸収軸方向、1/2波長板12の延伸軸方向、及び、1/4波長板13の延伸軸方向をそれぞれ表わしている。また、第2パネル20側については、液晶セルのTFT基板側・CF基板側のラビング方向、1/4波長板24の延伸軸方向、1/2波長板25の延伸軸方向、及び、偏光板26の吸収軸方向をそれぞれ表わしている。
【0090】
尚、図12において、各数値は軸方向の角度及び位相差(リタデーション)を表わしている。尚、位相差については、第1,第2パネル10,20の各構成部材に対して波長550[nm]の光を入射したときの波長に換算した数値である。
【0091】
ここでは、具体的な実施例として、シングルギャップ構造の場合を例に挙げて説明したが、反射表示領域と透過表示領域とでセルギャップが異なる、図13に示すようなマルチギャップ構造であっても構わない。
【0092】
但し、図13に示すように、マルチギャップ構造の場合は、反射表示領域と透過表示領域との間に段差を形成すべく、透明電極63の画素間の空間65A(65B)に溝を形成する必要があるために、シングルギャップ構造の場合に比べてプロセス数が増える。従って、プロセスの観点からすると、マルチギャップ構造よりもプロセス数が少なくて済むシングルギャップ構造の方が好ましい。
【0093】
図12に示した光学設計(シングルギャップ構造)で、対向電極(透明電極21)及び画素電極(反射電極63)の上下電極に対する電圧ON、電圧OFFした場合の、反射表示領域と透過表示領域のスペクトルの計算結果を図14及び図15に示す。ここで、「電圧ON」とは上下電極間に電圧を印加する状態を言い、「電圧OFF」とは上下電極間に電圧を印加しない状態を言う。
【0094】
図14は、反射表示領域のスペクトルの計算結果を示し、図15は、透過表示領域のスペクトルの計算結果を示している。このスペクトルの計算結果は、画素間における電界分布を再現したものではなく、上下電極による電界が完全に液晶分子にかかっている状態のものである。シングルギャップ構造であることから、通常のマルチギャップ構造の半透過型と異なり、透過表示領域の位相差が少ないため透過率は低い。
【0095】
<3.変形例>
上記実施形態では、信号線61及び走査線62を直線状のストライプ配線とし、信号線61については行方向に延在する空間65Bの画素の中間位置を、走査線62については列方向に延在する空間65Aの画素の中間位置をそれぞれ横切るような配線構造となっている(図4参照)。しかし、この信号線61及び走査線62の配線構造は一例であって、これに限られるものではない。
【0096】
例えば、図16に示すように、信号線61及び走査線62を屈曲した蛇行配線とし、以下のように配線する配線構造が考えられる。すなわち、信号線61については、行方向において隣接する画素間において、列方向に沿って形成される空間65Aと、行方向に沿って形成される空間65Bとの交差部65Cを通るように、具体的には、その屈曲部61Aが交差部65Cに位置するように配線する。また、走査線62については、列方向において隣接する画素間において、行方向に沿って形成される空間65Bと、列方向に沿って形成される空間65との交差部65Cを通るように、具体的には、その屈曲部62Aが交差部65Cに位置するように配線する。
【0097】
以前に図9及び図10を用いて述べたように、画素間の中央部の箇所Cでは液晶分子が全く動かないことから、列方向に沿って形成される空間65Aと、行方向に沿って形成される空間65Bとの交差部65Cの中心が一番透過表示に悪影響が及ぶと考えられる。従って、信号線61及び走査線62を、空間65A,65Bの画素の中間位置を通すのではなく、上述した配線構造のように交差部65Cを通すことで、前者の配線構造を採る場合に比べて良好な透過表示を実現できると考えられる。
【0098】
<4.電子機器>
以上説明した本開示に係る半透過型表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示部(表示装置)として用いることが可能である。
【0099】
本開示に係る半透過型表示装置は、あらゆる分野の電子機器の中でも、屋外での使用頻度が高い携帯端末機器の表示部(表示装置)として用いることが好ましい。携帯端末機器としては、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ノート型パーソナルコンピュータ、電子書籍等の携帯情報機器や、携帯電話機等の携帯通信機器などを例示することができる。
【0100】
先述した実施形態の説明から明らかなように、本開示に係る半透過型表示装置は、反射型表示装置と同等の反射表示性能を保った上で透過表示を実現できるために、反射型液晶表示装置の特長である、消費電力が少なく、明るい環境下でも画面が見易いという特長を十全に発揮できる。従って、あらゆる分野の電子機器、中でも、携帯端末機器において、その表示部として本開示に係る半透過型表示装置を用いることで、携帯端末機器の低消費電力化に大きく寄与できる。
【0101】
以下に、本開示に係る半透過型表示装置を表示部として用いる電子機器、即ち、本開示に係る電子機器の具体例について説明する。
【0102】
図17は、本開示が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本開示に係る半透過型表示装置を用いることにより作製される。
【0103】
図18は、本開示が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本開示に係る半透過型表示装置を用いることにより作製される。
【0104】
図19は、本開示が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本開示に係る半透過型表示装置を用いることにより作製される。
【0105】
図20は、本開示が適用される携帯通信機器、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【0106】
本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含んでいる。そして、ディスプレイ144やサブディスプレイ145として本開示に係る半透過型表示装置を用いることにより本適用例に係る携帯電話機が作製される。
【0107】
<5.本開示の構成>
尚、本開示は以下のような構成を採ることができる。
(1)画素毎に設けられた反射電極を有し、
前記反射電極を用いて反射表示を行い、
前記反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う
半透過型表示装置。
(2)前記反射電極の画素間の空間を塞がないように配線が形成されている
前記(1)に記載の半透過型表示装置。
(3)前記配線は、前記反射電極の画素間の空間を避けて形成されている
前記(2)に記載の半透過型表示装置。
(4)前記配線は、前記画素の行列状の配置に対して画素列毎に形成され、前記画素を駆動する信号を伝送する信号線であり、
前記信号線は、画素列の画素の配列方向に沿って画素間に形成される前記空間を避けて配線されている
前記(3)に記載の半透過型表示装置。
(5)前記信号線は、画素行の画素の配列方向において隣接する画素間では、画素列の画素の配列方向に沿って形成される前記空間と、画素行の画素の配列方向に沿って形成される前記空間との交差部を通して配線されている
前記(4)に記載の半透過型表示装置。
(6)前記配線は、前記画素の行列状の配置に対して画素行毎に形成され、前記画素を選択する信号を伝送する走査線であり、
前記走査線は、画素行の画素の配列方向に沿って画素間に形成される前記空間を避けて配線されている
前記(3)から前記(4)のいずれかに記載の半透過型表示装置。
(7)前記走査線は、画素列の画素の配列方向において隣接する画素間では、画素行の画素の配列方向に沿って形成される前記空間と、画素列の画素の配列方向に沿って形成される前記空間との交差部を通して配線されている
前記(6)に記載の半透過型表示装置。
(8)前記画素は、前記反射電極と当該反射電極に対向する対向電極との間に設けられた液晶層を有する
前記(1)から前記(7)のいずれかに記載の半透過型表示装置。
(9)前記画素を駆動する信号を、フレーム毎に前記画素の全てについて同じ極性で反転させるフレーム反転駆動を行う
前記(8)に記載の半透過型表示装置。
(10)表示モードがノーマリーブラックモードである
前記(8)または前記(9)に記載の半透過型表示装置。
(11)前記画素は、メモリ機能を有する
前記(8)に記載の半透過型表示装置。
(12)前記画素は、データを格納するメモリ部を有する
前記(8)から前記(11)のいずれかに記載の半透過型表示装置。
(13)前記画素は、メモリ性液晶を用いている
前記(11)に記載の半透過型表示装置。
(14)前記反射電極は、画素毎に複数の電極に分割されており、当該複数の電極の面積の組み合わせによって階調を表示する面積階調を行う
前記(10)に記載の半透過型表示装置。
(15)前記反射電極は、3つの電極に分割されており、これら3つの電極のうちの2つの電極と残りの1つの電極との面積の組み合わせによって2:1の面積階調を行う
前記(14)に記載の半透過型表示装置。
(16)前記2つの電極及び前記1つの電極の各大きさが等しい
前記(15)に記載の画素構造。
(17)前記2つの電極は、前記1つの電極を挟んで設けられている
前記(15)または前記(16)に記載の画素構造。
(18)前記2つの電極は、互いに電気的に接続されている
前記(15)から前記(17)のいずれかに記載の画素構造。
(19)画素毎に設けられた反射電極を有する半透過型表示装置の駆動に当たって、
前記反射電極を用いて反射表示を行い、
前記反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う
半透過型表示装置の駆動方法。
(20)画素毎に設けられた反射電極を有し、
前記反射電極を用いて反射表示を行い、
前記反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う
半透過型表示装置を有する電子機器。
【符号の説明】
【0108】
1・・・半透過型液晶表示装置、10・・・第1パネル部、11・・・偏光板、12・・・1/2波長板、13・・・1/4波長板、14・・・ガラス基板、15・・・平坦化膜、20・・・第2パネル部、21・・・透明電極、22・・・カラーフィルタ、23・・・第2基板、24・・・1/4波長板、25・・・1/2波長板、30・・・液晶層、40・・・バックライト部、50・・・画素、51・・・画素トランジスタ、52・・・液晶容量(液晶セル)、53・・・保持容量、54〜56・・・スイッチ素子、57・・・ラッチ部、61・・・信号線、62・・・走査線、63・・・反射電極(画素電極)、65A,65B・・・反射電極の画素間の空間、70・・・信号出力回路、80・・・走査回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素毎に設けられた反射電極を有し、
前記反射電極を用いて反射表示を行い、
前記反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う
半透過型表示装置。
【請求項2】
前記反射電極の画素間の空間を塞がないように配線が形成されている
請求項1に記載の半透過型表示装置。
【請求項3】
前記配線は、前記反射電極の画素間の空間を避けて形成されている
請求項2に記載の半透過型表示装置。
【請求項4】
前記配線は、前記画素の行列状の配置に対して画素列毎に形成され、前記画素を駆動する信号を伝送する信号線であり、
前記信号線は、画素列の画素の配列方向に沿って画素間に形成される前記空間を避けて配線されている
請求項3に記載の半透過型表示装置。
【請求項5】
前記信号線は、画素行の画素の配列方向において隣接する画素間では、画素列の画素の配列方向に沿って形成される前記空間と、画素行の画素の配列方向に沿って形成される前記空間との交差部を通して配線されている
請求項4に記載の半透過型表示装置。
【請求項6】
前記配線は、前記画素の行列状の配置に対して画素行毎に形成され、前記画素を選択する信号を伝送する走査線であり、
前記走査線は、画素行の画素の配列方向に沿って画素間に形成される前記空間を避けて配線されている
請求項3に記載の半透過型表示装置。
【請求項7】
前記走査線は、画素列の画素の配列方向において隣接する画素間では、画素行の画素の配列方向に沿って形成される前記空間と、画素列の画素の配列方向に沿って形成される前記空間との交差部を通して配線されている
請求項6に記載の半透過型表示装置。
【請求項8】
前記画素は、前記反射電極と当該反射電極に対向する対向電極との間に設けられた液晶層を有する
請求項1に記載の半透過型表示装置。
【請求項9】
前記画素を駆動する信号を、フレーム毎に前記画素の全てについて同じ極性で反転させるフレーム反転駆動を行う
請求項8に記載の半透過型表示装置。
【請求項10】
表示モードがノーマリーブラックモードである
請求項8に記載の半透過型表示装置。
【請求項11】
前記画素は、メモリ機能を有する
請求項8に記載の半透過型表示装置。
【請求項12】
前記画素は、データを格納するメモリ部を有する
請求項9に記載の半透過型表示装置。
【請求項13】
前記画素は、メモリ性液晶を用いている
請求項11に記載の半透過型表示装置。
【請求項14】
前記反射電極は、画素毎に複数の電極に分割されており、当該複数の電極の面積の組み合わせによって階調を表示する面積階調を行う
請求項10に記載の半透過型表示装置。
【請求項15】
前記反射電極は、3つの電極に分割されており、これら3つの電極のうちの2つの電極と残りの1つの電極との面積の組み合わせによって2:1の面積階調を行う
請求項14に記載の半透過型表示装置。
【請求項16】
前記2つの電極及び前記1つの電極の各大きさが等しい
請求項15に記載の画素構造。
【請求項17】
前記2つの電極は、前記1つの電極を挟んで設けられている
請求項15に記載の画素構造。
【請求項18】
前記2つの電極は、互いに電気的に接続されている
請求項15に記載の画素構造。
【請求項19】
画素毎に設けられた反射電極を有する半透過型表示装置の駆動に当たって、
前記反射電極を用いて反射表示を行い、
前記反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う
半透過型表示装置の駆動方法。
【請求項20】
画素毎に設けられた反射電極を有し、
前記反射電極を用いて反射表示を行い、
前記反射電極の画素間の空間を用いて透過表示を行う
半透過型表示装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−255908(P2012−255908A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128854(P2011−128854)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(598172398)株式会社ジャパンディスプレイウェスト (90)
【Fターム(参考)】