説明

印刷システムおよび印刷装置の制御方法

【課題】カラーマネジメントが行なわることなく印刷を実行する印刷装置の出力特性をよ
り容易に印刷結果に反映させる。
【解決手段】過去機種の色合いが再現されるよう予め設定された過去機種プロファイルの
1つを印刷設定用画面70の過去機種プロファイル選択欄76でユーザーの操作により選
択し、印刷が指示されたときに過去機種プロファイルが選択されているときには、所定の
入力画像のsRGBデータに係るソースプロファイルに代えて選択された過去機種プロフ
ァイルを用いると共にプリンターのデバイスプロファイルにより規定されたメディアプロ
ファイルやルックアップテーブルを用いてカラーマネジメントを行なってCMYKデータ
を生成する。したがって、ユーザーは、過去機種プロファイルの1つを選択して印刷を指
示するだけで、過去機種の出力特性を画像の印刷結果に反映させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよび印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の印刷システムに用いられる画像処理方法としては、入力デバイスのIC
Cプロファイルと、プリンターなどの出力デバイスのICCプロファイルとを用いて、入
力したRGBデータからCMYKデータに色空間を変換して出力するカラーマネジメント
を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、入出力デバ
イスのICCプロファイルには、デバイス非依存のPCS色空間への変換テーブルやPC
S色空間からの変換テーブル,色再現範囲の情報など、色変換に必要な情報がそれぞれ規
定されており、多様な入出力デバイス間での色変換に対応できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−197395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法では、カラーマネジメントに際してICCプロファイルを適
正に用いるために、ある程度の専門的な知識や経験を必要とすることから、一般のユーザ
ーにとって、予め設定されたICCプロファイルを目的に応じて使い分けるのが困難とな
り、カラーマネジメントによる画像の印刷結果を適正なものとすることができない場合が
ある。例えば、ユーザーが過去に所有していたプリンターの色合いを好み、こうした色合
いを画像の印刷結果に再現させたいときに、アプリケーションプログラムなどでICCプ
ロファイルの選択に関連して設定する項目が多いと、ユーザーは、いわゆる絵作りや色作
りを好みのものとして印刷結果を得ることができなくなってしまう。
【0005】
本発明の印刷システムおよび印刷装置の制御方法は、カラーマネジメントが行なわるこ
となく印刷を実行する印刷装置の出力特性をより容易に印刷結果に反映させることを主目
的とする。
【0006】
本発明の印刷システムおよび印刷装置の制御方法は、上述の主目的を達成するために以
下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷システムは、
印刷を実行する印刷装置と、
画像データに対してカラーマネジメントが行なわれることなく印刷を実行する第2の印
刷装置の前記画像データに対する出力特性が反映されるよう予め設定された所定のプロフ
ァイルを少なくとも1つ記憶するプロファイル記憶手段と、
前記記憶された所定のプロファイルの1つをユーザーの操作により指定プロファイルと
して選択するプロファイル選択手段と、
入力画像データの印刷が指示されたとき、前記指定プロファイルが選択されていないと
きには前記入力画像データに係る入力側プロファイルと前記印刷装置に係る出力側プロフ
ァイルとを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、前記指定プロ
ファイルが選択されているときには前記入力画像データに係る入力側プロファイルに代え
て前記選択された指定プロファイルを用いると共に前記印刷装置に係る出力側プロファイ
ルを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成する出力画像データ生成
手段と、
前記生成された出力画像データの印刷が実行されるよう前記印刷装置を制御する制御手
段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の印刷システムでは、画像データに対してカラーマネジメントが行なわれる
ことなく印刷を実行する第2の印刷装置の画像データに対する出力特性が反映されるよう
予め設定された所定のプロファイルを少なくとも1つ記憶し、記憶された所定のプロファ
イルの1つをユーザーの操作により指定プロファイルとして選択する。そして、入力画像
データの印刷が指示されたときに、指定プロファイルが選択されていないときには入力画
像データに係る入力側プロファイルと印刷装置に係る出力側プロファイルとを用いてカラ
ーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、指定プロファイルが選択されている
ときには入力画像データに係る入力側プロファイルに代えて選択された指定プロファイル
を用いると共に印刷装置に係る出力側プロファイルを用いてカラーマネジメントを行なっ
て出力画像データを生成し、生成された出力画像データの印刷が実行されるよう印刷装置
を制御する。したがって、ユーザーは、所定のプロファイルの1つを選択して印刷を指示
することによって、例えばそのユーザーが過去に使用していた印刷装置などの第2の印刷
装置の出力特性を画像の印刷結果に反映させることができる。この結果、カラーマネジメ
ントが行なわれずに印刷を実行する印刷装置の出力特性をより容易に印刷結果に反映させ
ることができる。ここで、「入力画像データ」としては、RGBデータを用いることがで
き、「出力画像データ」には、CMYKデータを用いることができる。また、各種「プロ
ファイル」としては、ICCプロファイルを用いることができる。
【0009】
こうした本発明の印刷システムにおいて、前記プロファイル記憶手段は、前記第2の印
刷装置で選択可能な範囲から印刷用紙と印刷品質とを選択して印刷したときの前記第2の
印刷装置の出力特性を反映する前記所定のプロファイルを前記第2の印刷装置と印刷用紙
と印刷品質との組み合わせ毎に記憶する手段である、ものとすることもできる。こうすれ
ば、第2の印刷装置と印刷用紙と印刷品質との組み合わせによる出力特性を画像の印刷結
果に反映させることができる。ここで、「印刷用紙」としては、普通紙や写真用紙,光沢
紙,マット紙などを用いることができ、「印刷品質」としては、標準の印刷品質や標準よ
り印刷は速いが低画質,標準より印刷は遅いが高画質などを用いることができる。
【0010】
この第2の印刷装置と印刷用紙と印刷品質との組み合わせ毎に所定のプロファイルを記
憶する態様の本発明の印刷システムにおいて、前記第2の印刷装置と印刷用紙と印刷品質
との組み合わせ毎に異なる複数の前記所定のプロファイルのうちユーザーの操作により一
部を選択して前記プロファイル記憶手段に記憶させる記憶処理手段を備え、前記記憶処理
手段は、印刷用紙と印刷品質とが選択されることなくユーザーの操作により前記第2の印
刷装置が選択されたときには、前記第2の印刷装置の出力特性を反映する前記所定のプロ
ファイルの全てを一括で前記プロファイル記憶手段に記憶させる手段である、ものとする
こともできる。こうすれば、ユーザーは、第2の印刷装置を選択するだけで第2の印刷装
置の種々の出力特性を画像の印刷結果に反映することができる状態とすることができる。
【0011】
本発明の印刷装置の制御方法は、
カラーマネジメントを伴って画像を印刷する印刷システムにおける印刷を実行する印刷
装置を制御する制御方法であって、
画像データに対してカラーマネジメントが行なわれることなく印刷を実行する第2の印
刷装置の前記画像データに対する出力特性が反映されるよう予め設定された所定のプロフ
ァイルを少なくとも1つ記憶し、
記憶された所定のプロファイルの1つをユーザーの操作により指定プロファイルとして
選択し、
入力画像データの印刷が指示されたとき、前記指定プロファイルが選択されていないと
きには前記入力画像データに係る入力側プロファイルと前記印刷装置に係る出力側プロフ
ァイルとを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、前記指定プロ
ファイルが選択されているときには前記入力画像データに係る入力側プロファイルに代え
て前記選択された指定プロファイルを用いると共に前記印刷装置に係る出力側プロファイ
ルを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、
前記生成された出力画像データの印刷が実行されるよう前記印刷装置を制御する、
ことを要旨とする。
【0012】
この本発明の印刷装置の制御方法では、画像データに対してカラーマネジメントが行な
われることなく印刷を実行する第2の印刷装置の画像データに対する出力特性が反映され
るよう予め設定された所定のプロファイルを少なくとも1つ記憶し、記憶された所定のプ
ロファイルの1つをユーザーの操作により指定プロファイルとして選択する。そして、入
力画像データの印刷が指示されたときに、指定プロファイルが選択されていないときには
入力画像データに係る入力側プロファイルと印刷装置に係る出力側プロファイルとを用い
てカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、指定プロファイルが選択され
ているときには入力画像データに係る入力側プロファイルに代えて選択された指定プロフ
ァイルを用いると共に印刷装置に係る出力側プロファイルを用いてカラーマネジメントを
行なって出力画像データを生成し、生成された出力画像データの印刷が実行されるよう印
刷装置を制御する。したがって、ユーザーは、所定のプロファイルの1つを選択して印刷
を指示することによって、例えばそのユーザーが過去に使用していた印刷装置などの第2
の印刷装置の出力特性を画像の印刷結果に反映させることができる。この結果、カラーマ
ネジメントが行なわれずに印刷を実行する印刷装置の出力特性をより容易に印刷結果に反
映させることができる。ここで、「入力画像データ」としては、RGBデータを用いるこ
とができ、「出力画像データ」には、CMYKデータを用いることができる。また、各種
「プロファイル」としては、ICCプロファイルを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】印刷システム10の構成の概略を示す構成図。
【図2】カラーマネジメントモジュール26のワークフローの一例を示す説明図。
【図3】プロファイル記憶処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】過去機種プロファイルライブラリ画面50の一例を示す説明図。
【図6】過去機種プロファイルの階層構造を説明する説明図。
【図7】印刷用画面60の一例を示す説明図。
【図8】印刷設定用画面70の一例を示す説明図。
【図9】カラーマネジメントモジュール26のワークフローの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であ
る印刷システム10の構成の概略を示す構成図である。本実施形態の印刷システム10は
、図1に示すように、汎用のコンピューターとして構成されたユーザーPC20と、US
BケーブルやLANなどを介してユーザーPC20に接続された少なくともプリンター3
0を含む1台以上のプリンターと、インターネットなどのネットワーク12を介してユー
ザーPC20に接続されたサーバー40と、を備える。
【0015】
ユーザーPC20は、CPUやROM,RAMなどを有するコントローラー21と、各
種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶するハードディスク(HDD
)22と、を備える汎用のパーソナルコンピュータとして構成されている。このユーザー
PC20は、コントローラー21がHDD22に記憶されたプリンター30のドライバー
を読み出してディスプレイに印刷設定用画面を表示することによって、印刷部数や用紙サ
イズ,用紙種類,印刷品質などの基本設定に加え、カラーマネジメントを用いた色補正設
定を受け付けることができるようになっている。コントローラー21の一機能を担うカラ
ーマネジメントモジュール26は、OSなどに組み込まれており、同じくコントローラ2
1の一機能を担う記憶処理部24による記憶処理や各種デバイスドライバーのインストー
ル処理によってHDD22のプロファイル記憶領域23に記憶されたICCプロファイル
を用いて、入出力デバイスに非依存の色彩値(例えば、Lab値)を介して入力デバイス
からの入力画像データ(例えば、sRGBデータ)を出力デバイスの出力量としての出力
画像データ(例えば、CMYKデータ)に変換する、即ち、カラーマネジメントを実行す
る。図2にカラーマネジメントモジュール26によるワークフローの一例を示す。図中、
ソースプロファイル28aは、プロファイル記憶領域23に記憶された入力デバイスのI
CCプロファイルであり、メディアプロファイル28bおよびルックアップテーブル28
cは、プロファイル記憶領域23に記憶された出力デバイスとしてのプリンター30のI
CCプロファイルであるデバイスプロファイルにより規定されたものである。カラーマネ
ジメントモジュール26は、図5の例では、ソースプロファイル28aを用いて入力画像
のsRGBデータをLab値に変換するRGB−Lab変換部26aと、メディアプロフ
ァイル28bを用いてLab値を第2RGB(図中、R’G’B’)データに変換するL
ab−第2RGB変換部26bと、ルックアップテーブル28cを用いて第2RGBデー
タをCMYKデータに変換する第2RGB−CMYK変換部26cと、により構成されて
いる。メディアプロファイル28bは、プリンター30に対して設定された印刷用紙や印
刷品質に対して適正な出力結果が得られるよう規定されたものであり、ルックアップテー
ブル28cは、色補正なしのルックアップテーブルが用いられる。カラーマネジメントや
ICCプロファイルは周知の技術であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0016】
プリンター30は、装置全体を制御するコントローラーや電源ボタン,各種設定ボタン
,ディスプレイなどを有するインクジェットプリンターとして構成されており、CMYK
(シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y),ブラック(K))の4色のインクを
用紙に吐出することにより文字や画像の印刷を実行する。
【0017】
サーバー40は、各種データファイルを記憶するハードディスク(HDD)42などを
有するWebサーバーとして構成されている。このHDD42のダウンロード用記憶領域
43には、カラーマネジメントが行なわれることなく入力画像データから変換されたイン
クの出力量に応じて印刷を実行する過去に製造されていたものを中心とする各種プリンタ
ー(以下、過去機種という)に関し、こうした過去機種の色合い(出力特性)が再現され
るよう予め過去機種の出力結果を測色するなどして設定された種々のICCプロファイル
(以下、過去機種プロファイルという)が記憶されている。本実施形態で用いる過去機種
プロファイルは、sRGBデータからLab値への変換テーブル(例えば、相対的な色域
を維持する変換方式に対応したA2B1など)を規定しており、ユーザーPC20のコン
トローラー21により起動されたアプリケーションプログラムの要求に応じ、記憶処理部
24によってHDD22のプロファイル記憶領域23にダウンロードされ記憶される。
【0018】
次に、こうして構成された本実施形態の印刷システム10の動作、特にカラーマネジメ
ントを伴って画像を印刷する際の動作について説明する。図3はユーザーPC20のコン
トローラー21のCPUにより実行されるプロファイル記憶処理ルーチンの一例を示すフ
ローチャートであり、図4はユーザーPC20のコントローラー21のCPUにより実行
される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。以下、説明の都合上、プロ
ファイル記憶処理について先に説明し、その後に印刷処理について説明する。図3のプロ
ファイル記憶処理ルーチンは、コントローラー21が起動したアプリケーションプログラ
ムによりサーバー40にアクセスし、図5に例示する過去機種プロファイルライブラリ画
面50が表示されたときに実行される。
【0019】
プロファイル記憶処理ルーチンが実行されると、コントローラ21のCPUは、まず、
過去機種プロファイルを選択する処理を実行する(ステップS100)。過去機種プロフ
ァイルの選択は、図5の過去機種プロファイルライブラリ画面50におけるユーザーの操
作により、過去機種選択欄52で過去機種名が選択されると共に、用紙種類について「全
部」ラジオボタン53aまたは「一部」ラジオボタン53bがチェックされ、更に印刷品
質について「全部」ラジオボタン55aまたは「一部」ラジオボタン55bがチェックさ
れることによって行なわれる。図6に過去機種プロファイルの階層構造の一例を示す。本
実施形態の過去機種プロファイルは、図示するように、過去機種名と、その過去機種で選
択可能な用紙種類(例えば「普通紙」や「写真用紙」,「光沢紙」,「マット紙」など)
と、その過去機種で設定可能な印刷品質(例えば「はやい」,「標準」,「きれい」など
)との組み合わせ毎に、その過去機種で用紙種類と印刷品質とを選択した印刷したときの
色合い(出力特性)が再現されるように予め設定され、サーバー40のHDD42に記憶
されている。したがって、過去機種プロファイルライブラリ画面50では、過去機種選択
欄52により過去機種の1つを選択可能であると共に、用紙種類について「一部」ラジオ
ボタン53bにチェックが入れられると、選択された過去機種で選択可能な範囲で用紙種
類選択欄54により印刷用紙の1つが選択可能となり、印刷品質について「一部」ラジオ
ボタン55bにチェックが入れられると、選択された過去機種で設定可能な範囲で印刷品
質選択欄56により印刷品質の1つが選択可能となる。また、用紙種類について「全部」
ラジオボタン53aにチェックが入れられると、選択された過去機種で選択可能な全ての
印刷用紙が選択されたものとなり、印刷品質について「全部」ラジオボタン55aにチェ
ックが入れられると、選択された過去機種で設定可能な全ての印刷品質が選択されたもの
となる。例えば、過去機種として「XX−100」が選択され、用紙種類について「全部
」ラジオボタン53aがチェックされると共に印刷品質についても「全部」ラジオボタン
53bがチェックされると、「XX−100_普通紙_標準」,「XX−100_普通紙
_きれい」,「XX−100_写真用紙_標準」,「XX−100_写真用紙_きれい」
の4つの過去機種プロファイル、即ち、過去機種「XX−100」についての全てのプロ
ファイルが一括で選択されたことになる。
【0020】
こうして過去機種プロファイルが選択されると、選択された過去機種プロファイルをダ
ウンロードするか否かを判定し(ステップS110)、ダウンロードしないと判定された
ときには、ステップS100の処理に戻ってダウンロードすると判定されるのを待つ。ダ
ウンロードの判定は、過去機種プロファイルライブラリ画面50の「OK」ボタン58が
操作されたか否かにより判定することができる。なお、過去機種プロファイルライブラリ
画面50の「キャンセル」ボタン59が操作されたときには、過去機種プロファイルライ
ブラリ画面50は閉じられ、過去機種プロファイルのダウンロードは行なわれずに、本ル
ーチンの実行を終了する。
【0021】
ダウンロードすると判定されたときには、選択された1つまたは複数の過去機種プロフ
ァイルをHDD22のプロファイル記憶領域23にダウンロードして記憶し(ステップS
120)、プロファイル記憶処理ルーチンを終了する。この記憶処理は、コントローラー
21の記憶処理部24によって行なわれる。以上、プロファイル記憶処理について説明し
た。次に、印刷処理について説明する。
【0022】
図4の印刷処理ルーチンは、コントローラー21が起動したアプリケーションプログラ
ムにより印刷設定が指示されたときに実行される。印刷設定の指示は、本実施形態では、
アプリケーションプログラムにより表示される図7の印刷用画面60において、印刷を実
行するプリンター名がプリンター選択欄62で選択され、「印刷設定」ボタン64が操作
されたときに行なわれる。以下、説明を分かりやすくするために、印刷対象の所定の入力
画像に係る入力画像データはsRGBデータであるものとする。また、印刷用画面60の
プリンター選択欄62ではプリンター30が選択されるものとし、その選択後に「印刷設
定」ボタン64が操作されると、プリンター30のドライバーの設定を行なうため、図8
に例示する印刷設定用画面70が表示され、図7の印刷用画面60は非アクティブとされ
るものとして、印刷処理の説明を行なう。
【0023】
印刷処理ルーチンが実行されると、コントローラ21のCPUは、まず、印刷部数や用
紙サイズ,用紙種類,印刷品質などの印刷設定の基本設定を行なうと共に(ステップS2
00)、過去機種プロファイルの選択などの印刷設定の色補正設定を行なう(ステップS
210)。ここで、基本設定は、ユーザーの操作により印刷設定用画面70の「基本設定
」タグ71が選択されて行なわれるものとした。用紙サイズとしては「L版」や「B5」
,「A4」などが設定され、用紙種類としては前述の「普通紙」や「写真用紙」,「光沢
紙」,「マット紙」などが設定され、印刷品質としては前述の「はやい」,「標準」,「
きれい」などを設定することができ、初期値としては予め設定されたこれらの組み合わせ
の1つを設定することができる。また、色補正設定は、図8に示すように、「色補正設定
」タグ72が選択され、初期値としてもチェックされている「標準(自動)」ラジオボタ
ン74aまたは「過去機種シミュレーション」ラジオボタン74bにユーザーがチェック
を入れたり、「過去機種シミュレーション」ラジオボタン74bにチェックが入れられた
状態で過去機種プロファイル選択欄76で過去機種プロファイルの1つ(初期値は例えば
所定のルールに従ってソートしたときに最前のものなど)をユーザーが選択することによ
って行なうことができる。
【0024】
続いて、印刷設定が完了したか否かを判定し(ステップS220)、印刷設定が完了し
ていないときには、ステップS200の処理に戻り、ステップS200〜S220の処理
を繰り返し実行している最中に印刷設定が完了したと判定されたときには、印刷実行が指
示されたか否かを判定する(ステップS230)。ここで、印刷設定については、本実施
形態では、印刷設定用画面70の「OK」ボタン78が操作されたときの基本設定や色補
正設定の状態で設定が完了すると共に設定完了と判定され、印刷設定用画面70の「キャ
ンセル」ボタン79が操作されたときには印刷設定用画面70が表示されたときの状態(
例えば、各初期値の状態)で設定が完了すると共に設定完了と判定される。印刷設定用画
面70で「OK」ボタン78や「キャンセル」ボタン79が操作されると、印刷設定用画
面70は閉じられ、印刷用画面60がアクティブになる。また、印刷実行については、印
刷用画面60の「OK」ボタン68が操作されたときに指示されたと判定される。なお、
印刷用画面60の「キャンセル」ボタン69が操作されると、印刷用画面60は閉じられ
、本ルーチンの実行を終了する。
【0025】
印刷実行が指示されていないときには、印刷実行が指示されるのを待ち、印刷実行が指
示されたときには、印刷設定の色補正設定として過去機種プロファイルが選択されている
か否か、即ち、印刷設定用画面70で「過去機種シミュレーション」ラジオボタン74b
がチェックされているか否か、を判定する(ステップS240)。過去機種プロファイル
が選択されていないとき、即ち、印刷設定用画面70で「標準(自動)」ラジオボタン7
4aがチェックされている状態であるときには、所定の入力画像のsRGBデータに係る
ソースプロファイル28aとプリンター30のデバイスプロファイルにより規定されたメ
ディアプロファイル28bおよびルックアップテーブル28cとを用いて、図2のワーク
フローに従ってsRGBデータからCMYKデータを生成し(ステップS250)、印刷
用画面60のプリンター選択欄62で選択されているプリンター30に生成したCMYK
データを印刷設定と共に送信して画像の印刷を指示して(ステップS270)、印刷処理
ルーチンを終了する。CMYKデータを受信したプリンター30は、受信したCMYKデ
ータによる画像の印刷を印刷設定に基づいて実行する。こうした処理により、通常のカラ
ーマネジメントが実行されるから、所定の入力画像の色再現性を十分に確保して印刷結果
としての出力画像を得ることができる。
【0026】
一方、過去機種プロファイルが選択されているときには、所定の入力画像のsRGBデ
ータに係るソースプロファイル28aに代えて選択された過去機種プロファイルを用いる
と共に、プリンター30のデバイスプロファイルにより規定されたメディアプロファイル
28bおよびルックアップテーブル28cについてはそのまま用いて、sRGBデータか
らCMYKデータを生成し(ステップS260)、生成したCMYKデータを印刷設定と
共にプリンター30に送信して画像の印刷を指示して(ステップS270)、印刷処理ル
ーチンを終了する。図9に、過去機種プロファイルが選択されて印刷実行が指示されたと
きのカラーマネジメントモジュール26によるワークフローの一例を示す。図示するよう
に、カラーマネジメントモジュール26のRGB−Lab変換部26aは、図2のワーク
フローで用いる入力デバイスのソースプロファイル28aに代えて、印刷設定用画面70
の過去機種プロファイル選択欄76で選択された過去機種プロファイル28dを用いて、
sRGBデータをLabデータに変換している。この変換後のLab−第2RGB変換部
26bや第2RGB−CMYK変換部26cによる変換は、図2のワークフローと同様に
行なわれる。したがって、所定の入力画像に係るsRGBデータは、過去機種の色合いが
再現されるよう予め設定された過去機種プロファイル28dにより規定された変換テーブ
ルを用いて、デバイスに非依存のLab値に変換されるから、過去機種の色合いを再現し
たLab値を得ることができる。さらに、プリンター30のデバイスプロファイルを用い
て、プリンター30に対して設定された印刷用紙や印刷品質に応じて適正な出力結果が得
られるようにCMYKデータを生成するから、印刷用紙や印刷品質に応じて過去機種の色
合いを再現したCMYKデータを得ることができる。こうした処理により、ユーザーは、
過去機種プロファイルの1つを選択して印刷を指示するだけで、例えばそのユーザーが過
去に使用していたプリンターの出力特性を画像の印刷結果に反映させることができる。こ
の結果、カラーマネジメントが行なわることなく印刷を実行するプリンターの出力特性を
、より容易に印刷結果に反映させることができる。
【0027】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実
施形態のプリンター30が「印刷装置」に相当し、ユーザーPC20のHDD22のプロ
ファイル記憶領域23が「プロファイル記憶手段」に相当し、印刷設定用画面70からユ
ーザーの操作により過去機種プロファイルを選択する図4の印刷処理ルーチンのステップ
S210の処理を実行するコントローラー21が「プロファイル選択手段」に相当し、印
刷設定用画面70で過去機種プロファイルが選択されずに印刷用画面60で印刷実行が指
示されたときには通常のカラーマネジメントを行なってCMYKデータを生成し、過去機
種プロファイルが選択されて印刷実行が指示されたときにはソースプロファイル28aに
代えて選択された過去機種プロファイル28dを用いてカラーマネジメントを行なってC
MYKデータを生成する図4の印刷処理ルーチンのステップS250,S260の処理を
実行するカラーマネジメントモジュール26を含むコントローラー21が「出力画像デー
タ生成手段」に相当し、生成した出力画像データの印刷を指示する図4の印刷処理ルーチ
ンのステップS270の処理を実行するコントローラー21が「制御手段」に相当する。
また、過去機種プロファイルダウンロード画面50からユーザーの操作により選択された
過去機種プロファイルをダウンロードしてHDD22のプロファイル記憶領域23に記憶
させる図3のプロファイル記憶処理ルーチンのステップS120の処理を実行するコント
ローラー21の記憶処理部24が「記憶処理手段」に相当する。なお、本実施形態では、
印刷システム10の動作を説明することにより本発明の印刷装置の制御方法の一例も明ら
かにしている。
【0028】
以上説明した本実施形態の印刷システム10によれば、カラーマネジメントが行なわれ
ることなく印刷を実行する過去機種の色合いが再現されるよう予め設定された過去機種プ
ロファイルの1つを印刷設定用画面70の過去機種プロファイル選択欄76でユーザーの
操作により選択し、所定の入力画像に係るsRGBデータの印刷が指示されたときに過去
機種プロファイルが選択されているときには、sRGBデータに係るソースプロファイル
28aに代えて選択された過去機種プロファイルを用いると共にプリンター30のデバイ
スプロファイルにより規定されたメディアプロファイル28bやルックアップテーブル2
8cを用いてカラーマネジメントを行なってCMYKデータを生成し、生成したCMYK
データによる画像の印刷が実行されるようプリンター30を制御するから、ユーザーは、
過去機種プロファイルの1つを選択して印刷を指示するだけで、過去機種の出力特性を画
像の印刷結果に反映させることができる。この結果、カラーマネジメントが行なわること
なく印刷を実行するプリンターの出力特性をより容易に印刷結果に反映させることができ
る。また、過去機種プロファイルライブラリ画面50から用紙種類と印刷品質については
一部を選択せずに過去機種名をユーザーが選択することにより、選択された過去機種の過
去機種プロファイルの全てを一括でHDD22のプロファイル記憶領域23に記憶させる
から、ユーザーは、過去機種を選択するだけでその機種の種々の出力特性を画像の印刷結
果に反映可能な状態とすることができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に
属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
上述した実施形態では、過去機種プロファイルライブラリ画面50から用紙種類と印刷
品質とについては過去機種の1つに対して「全部」または「一部」を選択可能としたが、
「一部」のみを選択可能としてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、過去機種プロファイルは、過去機種名と用紙種類と印刷品質と
の組み合わせ毎に予め設定されているものとしたが、用紙種類と印刷品質とにかかわらず
1つの過去機種に対して1つの過去機種プロファイルのみが予め設定されているものとし
てもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、印刷システムや印刷装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 印刷システム、12 ネットワーク、20 ユーザーPC、21 コントローラ
ー、 22 ハードディスク(HDD)、23 プロファイル記憶領域、24 記憶処理
部、26 カラーマネジメントモジュール、26a RGB−Lab変換部、26b L
ab−第2RGB変換部、26c 第2RGB−CMYK変換部、28a ソースプロフ
ァイル、28b メディアプロファイル、28c ルックアップテーブル、28d 過去
機種プロファイル、30 プリンター、40 サーバー、42 ハードディスク(HDD
)、43 ダウンロード用記憶領域、50 過去機種プロファイルライブラリ画面、52
過去機種選択欄、53a 「全部」ラジオボタン、53b 「一部」ラジオボタン、5
4 用紙種類選択欄、55a 「全部」ラジオボタン、55b 「一部」ラジオボタン、
56 印刷品質選択欄、58 「ダウンロード」ボタン、59 「キャンセル」ボタン、
60 印刷用画面、62 プリンター選択欄、64 「印刷設定」ボタン、68 「OK
」ボタン、69 「キャンセル」ボタン、70 印刷設定用画面、71 「基本設定」タ
グ、72 「色補正設定」タグ、74a 「標準(自動)」ラジオボタン、74b 「過
去機種シミュレーション」ボタン、76 過去機種プロファイル選択欄、78 「OK」
ボタン、79 「キャンセル」ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーマネジメントを伴って画像を印刷する印刷システムであって、
印刷を実行する印刷装置と、
画像データに対してカラーマネジメントが行なわれることなく印刷を実行する第2の印
刷装置の前記画像データに対する出力特性が反映されるよう予め設定された所定のプロフ
ァイルを少なくとも1つ記憶するプロファイル記憶手段と、
前記記憶された所定のプロファイルの1つをユーザーの操作により指定プロファイルと
して選択するプロファイル選択手段と、
入力画像データの印刷が指示されたとき、前記指定プロファイルが選択されていないと
きには前記入力画像データに係る入力側プロファイルと前記印刷装置に係る出力側プロフ
ァイルとを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、前記指定プロ
ファイルが選択されているときには前記入力画像データに係る入力側プロファイルに代え
て前記選択された指定プロファイルを用いると共に前記印刷装置に係る出力側プロファイ
ルを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成する出力画像データ生成
手段と、
前記生成された出力画像データの印刷が実行されるよう前記印刷装置を制御する制御手
段と、
を備える印刷システム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷システムであって、
前記プロファイル記憶手段は、前記第2の印刷装置で選択可能な範囲から印刷用紙と印
刷品質とを選択して印刷したときの前記第2の印刷装置の出力特性を反映する前記所定の
プロファイルを前記第2の印刷装置と印刷用紙と印刷品質との組み合わせ毎に記憶する手
段である、
印刷システム。
【請求項3】
請求項2記載の印刷システムであって、
前記第2の印刷装置と印刷用紙と印刷品質との組み合わせ毎に異なる複数の前記所定の
プロファイルのうちユーザーの操作により一部を選択して前記プロファイル記憶手段に記
憶させる記憶処理手段を備え、
前記記憶処理手段は、印刷用紙と印刷品質とが選択されることなくユーザーの操作によ
り前記第2の印刷装置が選択されたときには、前記第2の印刷装置の出力特性を反映する
前記所定のプロファイルの全てを一括で前記プロファイル記憶手段に記憶させる手段であ
る、
印刷システム。
【請求項4】
カラーマネジメントを伴って画像を印刷する印刷システムにおける印刷を実行する印刷
装置を制御する制御方法であって、
画像データに対してカラーマネジメントが行なわれることなく印刷を実行する第2の印
刷装置の前記画像データに対する出力特性が反映されるよう予め設定された所定のプロフ
ァイルを少なくとも1つ記憶し、
記憶された所定のプロファイルの1つをユーザーの操作により指定プロファイルとして
選択し、
入力画像データの印刷が指示されたとき、前記指定プロファイルが選択されていないと
きには前記入力画像データに係る入力側プロファイルと前記印刷装置に係る出力側プロフ
ァイルとを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、前記指定プロ
ファイルが選択されているときには前記入力画像データに係る入力側プロファイルに代え
て前記選択された指定プロファイルを用いると共に前記印刷装置に係る出力側プロファイ
ルを用いてカラーマネジメントを行なって出力画像データを生成し、
前記生成された出力画像データの印刷が実行されるよう前記印刷装置を制御する、
印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−211506(P2011−211506A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77508(P2010−77508)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】