説明

印刷システム

【課題】画質の劣化を抑制しつつ、ホストコンピューターからプリンターへの印刷用画像データの転送時間を短縮すること。
【解決手段】ホストコンピューターは画素をグループ化して疑似画素を生成する。疑似画素にRGB形式の代表値を割り当て、プリンターに転送する。一方、転送データ量が所定値以下となるように選択されたエッジ強度を有する疑似画素を構成する画素については、ホストコンピューターがハーフトーン処理を行うと共に、生成されたドットデータをプリンターに転送する。プリンターは、転送されたドットデータと代表値とによって印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置は、通常、各画素についてドット形成の有無を示すデータ(ドットデータ)を基に印刷を行う。ドットデータは、通常、RGB形式による画像データを変換することによって生成される。画像の解像度が高くなればなるほど、この変換に時間を要する。
【0003】
そこで、複数の画素をグループ化し、グループ内のエッジの有無に応じた処理を行うことによって、変換に要する時間を短縮する技術が知られている。ここで言うエッジとは、色や明度が急激に変化することによって生じる境界線のことである。この技術では、エッジを有するグループは従来通りに変換する一方、エッジを有しないグループは情報を圧縮して変換を行う。この変換は、通常、プリンターと通信するホスト装置(コンピューター)が実行する。変換によって生成されたドットデータは、印刷のためのデータとして、ホスト装置からプリンターに転送される。プリンターは、転送されたドットデータを基に印刷を行う(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−289274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術は、印刷のためのデータをプリンターに転送する時間の短縮と、印刷画質の劣化の抑制とを両立させることが課題であった。特に近年は、ホスト装置によるドットデータへの変換速度の向上や、ラインプリンターによる用紙送り速度の向上によって、ホスト装置からプリンターへのデータの転送に要する時間が、印刷処理にとっての律速となる状況が生じていた。よって、データの転送時間の短縮が課題となっていた。もちろん、解像度を低くすれば、データの転送時間の短縮を容易に実現できるが、その分、画質が劣化する。このように、印刷のためのデータをプリンターに転送する時間の短縮と、印刷画質の劣化の抑制とを両立させることが課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、以下の形態または適用例として実現できる。
【0007】
適用例1:ホスト装置と、各画素についてドット形成の有無を示すドットデータを用いて印刷を行うプリンターとを備える印刷システムであって、
前記ホスト装置は、
複数の画素をグループ化することによって、疑似画素を生成する疑似画素生成部と、
前記疑似画素を、エッジ強度について複数の区分に分類するエッジ強度分類部と、
前記エッジ強度分類部の分類結果によって、下限エッジ強度を選択する下限強度選択部と、
前記下限強度選択部によって選択された下限エッジ強度以上の疑似画素に含まれる画素を対象にした前記ドットデータを生成するホストハーフトーン処理部と、
前記ホストハーフトーン処理部による処理対象にならない疑似画素について、該疑似画素に含まれる各画素の表色値を反映した代表値を割り当てる割り当て部と、
前記割り当て部によって割り当てられた代表値と、前記ホストハーフトーン処理部によって生成されたドットデータとを前記プリンターに転送する転送部とを備え、
前記プリンターは、
前記ホスト装置から転送された代表値を対象にしたハーフトーン処理を実行することによって、前記ドットデータを生成するプリンターハーフトーン処理部と、
前記プリンターハーフトーン処理部によって生成されたドットデータと、前記ホスト装置から転送されたドットデータとによって印刷を行う印刷部とを備えることを要旨とする。
【0008】
この印刷システムによれば、印刷のためのデータの転送時間の短縮と、印刷画質の劣化の抑制とを両立できる。この印刷システムにおいて、ホスト装置によるハーフトーン処理の対象とならない疑似画素は、ドットデータではなく、代表値が転送される。代表値は、複数の画素から構成されることによって低解像度化された疑似画素についてのデータなので、ドットデータよりもデータ量を小さくできる。よって、データの転送時間を短縮できる。しかも、ホスト装置によるハーフトーン処理の対象とならない疑似画素は、エッジ強度が弱いものから順に選択されることになる。エッジ強度が弱い疑似画素は、代表値によって印刷しても、各画素の表色値によって印刷しても画質に大差はない。よって、この印刷システムによれば、印刷のためのデータの転送時間の短縮と、画質の劣化の抑制とを両立できる。
なお「エッジ強度が弱い疑似画素」とは「エッジを含まない疑似画素」を含む。ホストハーフトーン処理部による処理対象になる疑似画素については、代表値が割り当てられても良いし、割り当てられなくても良い。
【0009】
適用例2:適用例1に記載の印刷システムであって、
前記下限強度選択部は、
前記複数の区分それぞれについて、区分の下限以上のエッジ強度を有する疑似画素に含まれる画素を元にして生成されるドットデータのデータ量の推定をする推定部と、
前記推定されたデータ量が所定量以下である前記複数の区分の中で最もデータ量が多い区分の下限強度を、前記下限エッジ強度として選択する事前選択部とを備えることを要旨とする。
【0010】
この印刷システムによれば、転送部によって転送されるデータ量を所定量以下に抑制できる。しかも、不要なハーフトーン処理を省くことができる。この不要なハーフトーン処理とは、例えば、下限強度未満のエッジ強度についてのハーフトーン処理である。
【0011】
適用例3:適用例2に記載の印刷システムであって、
前記推定部は、前記複数の区分それぞれの疑似画素の数が、全体の疑似画素の数に占める割合によって前記推定をすることを要旨とする。
この印刷システムによれば、データ量の推定を簡単に実行できる。
【0012】
適用例4:適用例2又は適用例3に記載の印刷システムであって、
前記事前選択部は、前記複数の区分の中で最も強い下限強度を持つものを選択しても、前記ドットデータのデータ量が前記所定量以下にならない場合、前記最も強い下限強度を持つ区分の疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータを選択することを要旨とする。
【0013】
この印刷システムによれば、強いエッジを多く含む画像を印刷する場合、画質が大きく劣化することを防止できる。
【0014】
適用例5:適用例1に記載の印刷システムであって、
前記ホストハーフトーン処理部は、
エッジを含む疑似画素に含まれる画素を対象にハーフトーン処理を実行して前記ドットデータを生成する選択前ハーフトーン処理部と、
前記複数の区分それぞれについて、区分の下限以上のエッジ強度を有する疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータのデータ量を計量する計量部と、
前記下限エッジ強度以上の疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータを、前記転送部によって転送されるドットデータとして選択する事後選択部とを備え、
前記下限強度選択部は、前記計量された疑似画素の数が所定量以下である前記複数の区分の中で最もデータ量が多い区分の下限強度を、前記下限エッジ強度として選択することを要旨とする。
【0015】
この印刷システムによれば、データ量を正確に把握した上で、転送部によって転送されるデータ量を所定量以下に抑制できる。なお「エッジを含む疑似画素」とは、「エッジを含まない疑似画素」以外の全ての疑似画素でも良いし、一部の疑似画素でも良い。「エッジを含まない疑似画素」とは、疑似画素に含まれる複数の画素が完全同一の表色値を持っているものでも良いし、完全同一ではないものの近似した表色値を持つもので良い。表色値が近似しているか否かの判定には、エッジ強度の判定と同じ手法を用いても良いし、その他の手法でも良い。
【0016】
適用例6:適用例5に記載の印刷システムであって、
前記事後選択部は、前記複数の区分の中で最も強い下限強度を持つものを選択しても、前記ドットデータのデータ量が前記所定量以下にならない場合、前記最も強い下限強度を持つ区分の疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータを選択することを要旨とする。
【0017】
この印刷システムによれば、強いエッジを多く含む画像を印刷する場合、画質が大きく劣化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】印刷システム10の構成。
【図2】ホストコンピューター200とプリンター300との構成。
【図3】ホスト側処理を示すフローチャート。
【図4】データが変換される様子。
【図5】ホストハーフトーン処理を示すフローチャート。
【図6】プリンター側処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施例1:
1.印刷システム(図1、図2):
図1は、印刷システム10の構成を説明する図である。印刷システム10は、ホストコンピューター200とプリンター300とを備える。ホストコンピューター200とプリンター300とはUSBケーブル120によって接続されている。ホストコンピューター200は、印刷のためのデータ(以下「印刷用画像データ」と言う。)をプリンター300に転送する。プリンター300は、ホストコンピューター200から転送された印刷用画像データに基づいて、解像度1440×720dpiによって印刷媒体に画像を印刷する。この印刷用画像データは、表示用画像データが、プリンタードライバーによって変換されたデータである。表示用画像データは、ホストコンピューター200に備えられたディスプレイ装置215(図2と共に後述)に画像を表示させるためのものである。表示用画像データは、1画素当たり8bit×3原色のRGB形式データであり、解像度が720×720dpiである。
【0020】
図2は、ホストコンピューター200とプリンター300の構成を概略的に示す図である。ホストコンピューター200は、CPU201、RAM203、ROM205、ディスプレイ装置コントローラー207、キーボードコントローラー209、メモリーコントローラー211、ハードディスクドライブ(HDD)213、通信インターフェイス(I/F)220を備える。これらの構成要素はバス230を介して互いに接続されている。ディスプレイ装置コントローラー207には、ディスプレイ装置215が接続される。キーボードコントローラー209にはキーボード217が接続され、メモリーコントローラー211には外部メモリー219が接続されている。通信I/F220にはUSBケーブル120が接続されている。本実施形態においては、通信I/F220と後述する通信I/F320との規格はUSB2.0である。USBケーブル120はUSB2.0に対応したケーブルである。CPU201は、ホストコンピューター200全体の動作を制御するために、HDD213に記憶されているプログラムをRAM203に読み出して実行する。
【0021】
一方、プリンター300は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いて印刷を行うラインプリンターである。プリンター300はCPU301、RAM303、ROM305、印刷部インターフェイス(I/F)307、メモリーコントローラー309、操作パネル313、通信インターフェイス(I/F)320を備える。これらの構成要素はバス330によって互いに接続されている。印刷部I/F307には印刷部311が接続され、メモリーコントローラー309には外部メモリー315が接続されている。
【0022】
CPU301は、プリンター300全体の動作を制御するために、ROM305に記憶されているプログラムをRAM303に読み出して実行する。印刷部311は、インクを蓄えるインクカートリッジ、印刷ヘッド、プラテンなど、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行うためのハードウェアである。
【0023】
操作パネル313は、ユーザーが、印刷に関わる設定や指示を行うためのユーザーインターフェイスである。この設定とは、印刷媒体の種類や大きさなどの設定である。この指示とは、印刷の開始や中止などの指示である。
【0024】
プリンター300は、印刷媒体にドットを形成する際に、大ドット、中ドット、小ドットの3種類の大きさのドットを使い分ける。よって、ドットデータは、1画素当たり、2bit×4色の8bitが必要である。
【0025】
2.ホスト側処理(図3):
図3は、ホスト側処理を示すフローチャートである。ホスト側処理の実行主体は、ホストコンピューター200に備えられたCPU201である。処理の開始の契機は、操作パネル313を介して印刷の指示が入力されることである。
【0026】
図4は、ホスト側処理およびプリンター側処理(図5と共に後述)によって、データが変換される様子を示した図である。図4の(A)(B)は、表示用画像データを構成する多数の画素の一部として、4画素×4画素の16画素分を示す。16画素分のデータ量は、8bit×3原色×16画素の384bitとなる。
【0027】
CPU201は、ホスト側処理を開始すると、表示用画像データの画素を4つずつグループ化することによって、疑似画素を生成する(ステップS410)。疑似画素は、縦2画素×横2画素によって構成される。図4の(C)は、16の画素を基にした4つの疑似画素を示す。疑似画素の解像度は、360×360dpiということになる。
【0028】
次に、各疑似画素に代表値を割り当てる(ステップS420)。代表値とは、疑似画素に属する画素のRGB値の平均値のことである。つまり、1つの疑似画素に1色分の情報を割り当てる。疑似画素のデータ量は、8bit×3原色×4画素の96bitとなり、元の384bitに比べて小さい。
【0029】
続いて、各疑似画素を非エッジ、弱エッジ、中エッジ及び強エッジの何れかに分類する(ステップS430)。非エッジ、弱エッジ、中エッジ及び強エッジとは、疑似画素を構成する4つの画素のRGB値が、それぞれの所定範囲に収まっていることを示す区分である。所定範囲に収まっているか否かの判定対象になるのは、RGBの3つの原色の中で、最大値と最小値との差が最大のものである。その最大の差が、256階調値中で、0〜16であれば非エッジに、17〜32であれば弱エッジに、33〜64であれば中エッジに、65以上であれば強エッジに区分する。
【0030】
次に、各エッジ強度の疑似画素の割合を算出する(ステップS440)。続いて、各エッジ強度の中で、積算値が基準割合以下になるエッジ強度の中で、最も弱いエッジ強度を選択する(ステップS450)。この基準割合とは、本実施例では10%である。この積算値とは、自身のエッジ強度と、自身よりも強いエッジ強度との割合を足し合わせた値である。弱エッジの場合であれば、弱エッジの割合と、中エッジの割合と、強エッジの割合とを足し合わせた値である。強エッジの場合であれば、強エッジの割合そのものの値となる。例えば、強エッジの積算値のみが10%以下の場合は強エッジを選択することになる。弱エッジ、中エッジ及び強エッジが積算値10%以下の場合は弱エッジを選択することになる。なお、強エッジの積算値が10%を超える場合は、強エッジを選択する。
【0031】
なお、上記10%という値は、印刷画像用データの転送が、プリンター300による印刷よりも遅くならないように決定されたものである。「積算値が何%であれば、印刷画像用データがどの程度のデータ量になるか」は推定できるので、10%という積算値の上限によって、印刷画像用データのデータ量の上限を定めることができる。
また、出力画像サイズに応じて、積算値の上限を変更してもよい。一般に出力画像サイズが小さい時は、処理速度や転送速度に余裕が生まれるため、上限値を大きくできる。
【0032】
次に、選択したエッジ強度以上の疑似画素を対象にして、エッジフラグをONに設定する(ステップS460)。エッジフラグの初期値はOFFである。続いて、エッジフラグがONの疑似画素(以下「エッジON疑似画素」と言う。)に含まれる画素を対象にして、CMYK変換を実行する(ステップS470)。CMYK変換は、ROM205に記憶された変換用LUTを参照し、必要に応じて補間演算することによって実行する。
【0033】
続いて、CMYK変換された画素を対象にして、ハーフトーン処理を実行する(ステップS480)。このハーフトーン処理によって、プリンターの解像度である1440×720dpiによるドットデータを生成する。なお、ハーフトーン処理には、誤差拡散法を用いても、ディザ法を用いても良い。
【0034】
図4の(D)は、ステップS480におけるハーフトーン処理によって生成されたドットデータを構成する多数の画素の一部として、32画素分を示す。32画素分のドットデータのデータ量は、2bit×4色×32画素の256bitである。
【0035】
続いて、全疑似画素の代表値とエッジフラグとをハフマン符号化法によって圧縮してプリンター300に転送すると共に、ハーフトーン処理によって生成されたドットデータをプリンター300に転送し(ステップS490)、ホスト側処理を終える。この3種類のデータが、先述した印刷用画像データを構成する。
【0036】
3.プリンター側処理(図5):
図5は、プリンター側処理を示すフローチャートである。プリンター側処理の実行主体は、プリンター300に備えられたCPU301である。処理の開始の契機は、ホストコンピューター200から印刷用画像データの転送を受けたことである。
【0037】
まず、転送された圧縮データの解凍によって、代表値とエッジフラグとを取得する(ステップS510)。次に、代表値をCMYK変換する(ステップS520)。このCMYK変換は、ROM305に記憶された変換用LUTを参照することによって実行する。この変換用LUTは、ホストコンピューター200のROM205に記憶されたものと同じである。
【0038】
次に、CMYK変換された代表値によってハーフトーン処理を実行する(ステップS530)。ここでのハーフトーン処理も、ディザ法と誤差拡散法との何れでも良い。ホストコンピューター200とプリンター300とがディザ法を用いる場合は、両者で同じディザマスクを用いるのが好ましい。同じディザマスクを用いることによって、エッジON疑似画素と、エッジフラグがOFFの疑似画素とのつながりを滑らかにでき、疑似輪郭の発生を抑制しやすくなる。ディザマスクは、ブルーノイズ特性を有する巨大サイズのマスクを用いる、ブルーノイズマスク法が好ましい。
【0039】
このハーフトーン処理においても、1400×720dpiのドットデータを生成する。図4の(E)は、ステップS530におけるハーフトーン処理によって生成されたドットデータを構成する多数の画素の一部として、32画素分を示す。
【0040】
続いて、代表値に基づき生成されたドットデータを、ホストコンピューター200から転送されたドットデータによって上書きを行う(ステップS540)。この上書きは、エッジON疑似画素を構成する画素が対象になる。図4の(F)は、ステップS540によって生成されたドットデータを構成する多数の画素の一部として、32画素分を示す。
【0041】
最後に、上書きの結果として生成されたドットデータを基に印刷をし(ステップS550)、プリンター側処理を終える。
【0042】
4.効果:
印刷システム10によれば、ホストコンピューター200からプリンター300へ印刷用画像データを転送する時間を短縮できる。なぜなら、本実施形態の印刷用画像データは、全画素を対象にしたドットデータやRGB形式のデータよりもデータ量が小さいからである。
【0043】
先述したように、印刷用画像データは、全疑似画素の代表値およびエッジフラグが圧縮されたデータ、並びにエッジON疑似画素を構成する画素のドットデータである。印刷用画像データのデータ量は、エッジON疑似画素数が全疑似画素数に占める割合に依存する。つまり、その割合が小さいほど、印刷用画像データのデータ量は小さくなる。なぜなら、エッジフラグについては圧縮率が高くなり、ドットデータについては、対象となる画素が減少するので当然、データ量が小さくなる。よって、本実施例の印刷用画像データのデータ量がどの程度小さいかを一概に言うことはできない。
【0044】
そこで、印刷システム10は、疑似画素をエッジ強度について4段階に区分することによって、転送されるデータ量が所定値に収まる範囲内で、エッジの再現性を良好なものにしている。しかも、このような条件を満たすデータの生成を、各疑似画素を一度だけ参照することによって実行できるので、ホストコンピューター200の処理負荷は小さいものとなっている。
【0045】
実施例2:
5.ホスト側処理(図6):
実施例2の説明は、実施例1と異なる点のみを対象にする。実施例2は、ホスト側処理のみが実施例1と異なる。図6は、実施例2におけるホスト側処理のフローチャートを示す。実施例1と実施例2とでホスト側処理の一部は同じである。具体的には、実施例2におけるステップS610〜ステップS630及びステップS690は、実施例1におけるステップS410〜ステップS430及びステップS490と同じである。そこで、実施例2におけるステップS640から説明する。
【0046】
ステップS630においてエッジ強度について分類された疑似画素の中で、弱以上のエッジ強度を有する疑似画素に含まれる画素を対象にして、CMYK変換を実行する(ステップS640)。次に、CMYK変換された画素を対象にして、ハーフトーン処理を実行する(ステップS650)。
【0047】
続いて、各エッジ強度の疑似画素に含まれる画素を対象にしたドットデータのデータ量を計量する(ステップS655)。次に、各エッジ強度の中で、積算値が5Mbyte以下になるエッジ強度の中で、最も弱いエッジ強度を選択する(ステップS660)。この積算値とは、自身のエッジ強度の疑似画素に含まれる画素と、自身よりも強いエッジ強度の疑似画素に含まれる画素とを対象にしたドットデータのデータ量を足し合わせた値である。弱エッジの場合であれば、弱エッジと、中エッジと、強エッジとの疑似画素に含まれ画素を対象にしたドットデータのデータ量を足し合わせた値である。強エッジの場合であれば、強エッジに含まれる疑似画素に含まれる画素を対象にしたドットデータのデータ量そのものの値となる。例えば、強エッジの積算値のみが5Mbyte以下の場合は強エッジを選択することになる。弱エッジ、中エッジ及び強エッジが積算値5Mbyte以下の場合は弱エッジを選択することになる。なお、強エッジの積算値が5Mbyteを超える場合は、強エッジを選択する。
【0048】
次に、選択したエッジ強度以上のエッジ強度を有する疑似画素に含まれる画素のエッジフラグをONに設定する(ステップS670)。続いて、エッジフラグがOFFの画素を対象にしたドットデータを削除する(ステップS680)。ステップS680において削除されなかったドットデータは、ステップS690における転送対象のドットデータとなる。
【0049】
6.効果:
実施例2に特有の効果は、ドットデータのデータ量を基準にしてエッジ強度を選択するので、転送対象となるドットデータのデータ量を正確に把握した上で、エッジ強度の選択を実行できる点である。
【0050】
7.実施形態と適用例との対応関係:
ステップS410及びステップS610が疑似画素生成部を、ステップS420及びステップS620が割り当て部を、ステップS430及びステップS630がエッジ強度分類部を、ステップS440及びS450並びにステップS660が下限強度選択部を、ステップS440が推定部を、ステップS450が事前選択部を、ステップS460からステップS480並びにステップS640からステップS655、ステップS670及びステップS680がホストハーフトーン処理部を、ステップS490及びステップS690が転送部を、ステップS520及びステップS530がプリンターハーフトーン処理部を、ステップS540及びステップS550が印刷部を、ステップS640及びステップS650が選択前ハーフトーン処理部を、ステップS655が計量部を、ステップS670及びステップS680が事後選択部を、それぞれ実現するためのソフトウェアに相当する。
【0051】
8.他の実施形態:
本発明は、先述した実施形態になんら限定されるものではなく、発明の技術的範囲内における種々の形態により実施できる。例えば、実施形態の構成要素の中で付加的なものは、実施形態から省略できる。ここで言う付加的な構成要素とは、実質的に独立している適用例においては特定されていない事項に対応する要素のことである。また、例えば、以下のような実施形態でも良い。
【0052】
印刷用画像データは、モノクロ印刷用でも良い。この場合、印刷用画像データは、無彩色を示すためのものになるので、印刷用画像データのデータ量がより小さくなる。
【0053】
疑似画素の大きさ(疑似画素が何個の画素を含むか)は、実施形態と異なっていても良い。ただし、疑似画素の解像度は、印刷用画像データのデータ量を小さくするために、ドットデータの解像度よりも低いことが好ましい。一方、疑似画素の解像度が著しく低い場合、エッジON疑似画素の割合が大きくなってしまい、データ量が小さくならないことが考えられる。このような事情を踏まえ、疑似画素の大きさを決定するのが好ましい。
【0054】
エッジの定義は、実施形態と異なっていても良い。例えば、RGB値を3次元座標値に見立てて、比較する色同士の距離を求め、その距離が所定値以上か否かによって判定しても良い。
【0055】
エッジON疑似画素に含まれる画素については、プリンター300によるハーフトーン処理の対象外としても良い。ハーフトーン処理を実行しても、印刷には用いられないからである。
【0056】
ホストコンピューター200によるハーフトーン処理をディザ結果参照誤差拡散、プリンター300によるハーフトーン処理をディザ準拠ハーフトーンで実行しても良い。このようにすると、2つのドットデータを合成しても、不連続がほとんど生じない上に、中間調の線画などの再現性が向上する。
【0057】
代表値は、平均値でなくても良く、他の統計値、例えば、最大値や最小値などでも良い。或いは、統計値でなくても良く、例えば、常に左上の画素の値を代表値として採用しても良い。
【0058】
転送される代表値は、CMYK値でも良い。例えば、ホストコンピューター200が、RGB形式による代表値を決定した後に、その代表値をCMYK変換しても良いし、各画素のRGB値をCMYK変換してから代表値を決定しても良い。このように、ホストコンピューター200が、各画素のRGB値をCMYK変換する場合、エッジ判定をCMYK値に基づいて行っても良い。
【0059】
実施例中の数値、例えば、疑似画素に含まれる画素数、エッジ強度を区分する値、エッジ強度を選択するための基準値となる割合及びデータ量は、適宜、変更しても良い。
【0060】
ホストコンピューター200は、代表値を割り当てるための処理と、ドットデータを生成するための処理とを並列に実行しても良い。
エッジON疑似画素については、代表値の転送を省いても良い。
圧縮の手法は、ハフマン符号化法でなくても、例えば、ランレングス法でも良い。
プリンター300は、シリアルプリンターでも良い。
【符号の説明】
【0061】
10…印刷システム
120…USBケーブル
200…ホストコンピューター
201…CPU
203…RAM
205…ROM
207…ディスプレイ装置コントローラー
209…キーボードコントローラー
211…メモリーコントローラー
213…ハードディスクドライブ
215…ディスプレイ装置
217…キーボード
219…外部メモリー
220…通信インターフェイス
230…バス
300…プリンター
301…CPU
303…RAM
305…ROM
307…印刷部インターフェイス
309…メモリーコントローラー
311…印刷部
313…操作パネル
315…外部メモリー
320…通信インターフェイス
330…バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置と、各画素についてドット形成の有無を示すドットデータを用いて印刷を行うプリンターとを備える印刷システムであって、
前記ホスト装置は、
複数の画素をグループ化することによって、疑似画素を生成する疑似画素生成部と、
前記疑似画素を、エッジ強度について複数の区分に分類するエッジ強度分類部と、
前記エッジ強度分類部の分類結果によって、下限エッジ強度を選択する下限強度選択部と、
前記下限強度選択部によって選択された下限エッジ強度以上の疑似画素に含まれる画素を対象にした前記ドットデータを生成するホストハーフトーン処理部と、
前記ホストハーフトーン処理部による処理対象にならない疑似画素について、該疑似画素に含まれる各画素の表色値を反映した代表値を割り当てる割り当て部と、
前記割り当て部によって割り当てられた代表値と、前記ホストハーフトーン処理部によって生成されたドットデータとを前記プリンターに転送する転送部とを備え、
前記プリンターは、
前記ホスト装置から転送された代表値を対象にしたハーフトーン処理を実行することによって、前記ドットデータを生成するプリンターハーフトーン処理部と、
前記プリンターハーフトーン処理部によって生成されたドットデータと、前記ホスト装置から転送されたドットデータとによって印刷を行う印刷部とを備える
印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷システムであって、
前記下限強度選択部は、
前記複数の区分それぞれについて、区分の下限以上のエッジ強度を有する疑似画素に含まれる画素を元にして生成されるドットデータのデータ量の推定をする推定部と、
前記推定されたデータ量が所定量以下である前記複数の区分の中で最もデータ量が多い区分の下限強度を、前記下限エッジ強度として選択する事前選択部とを備える
印刷システム。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷システムであって、
前記推定部は、前記複数の区分それぞれの疑似画素の数が、全体の疑似画素の数に占める割合によって前記推定をする
印刷システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の印刷システムであって、
前記事前選択部は、前記複数の区分の中で最も強い下限強度を持つものを選択しても、前記ドットデータのデータ量が前記所定量以下にならない場合、前記最も強い下限強度を持つ区分の疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータを選択する
印刷システム。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷システムであって、
前記ホストハーフトーン処理部は、
エッジを含む疑似画素に含まれる画素を対象にハーフトーン処理を実行して前記ドットデータを生成する選択前ハーフトーン処理部と、
前記複数の区分それぞれについて、区分の下限以上のエッジ強度を有する疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータのデータ量を計量する計量部と、
前記下限エッジ強度以上の疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータを、前記転送部によって転送されるドットデータとして選択する事後選択部とを備え、
前記下限強度選択部は、前記計量された疑似画素の数が所定量以下である前記複数の区分の中で最もデータ量が多い区分の下限強度を、前記下限エッジ強度として選択する
印刷システム。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷システムであって、
前記事後選択部は、前記複数の区分の中で最も強い下限強度を持つものを選択しても、前記ドットデータのデータ量が前記所定量以下にならない場合、前記最も強い下限強度を持つ区分の疑似画素に含まれる画素を元にしたドットデータを選択する
印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115752(P2013−115752A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262661(P2011−262661)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】