説明

危険化学物質の漏出に対する救済装置

危険化学物質の漏出を処理する救済装置は、密閉された負圧室(102,202)、及び、外部の危険化学物質を内部に導入するための吸気口(103,203)を有する第1容器(101,201)と、第1容器(101,201)内に設置及び固定された第2容器(104,204)とを備える。第2容器(104,204)は、実質的に無害な液化ガス(106,206)を収容し、外部環境に通じる開閉可能な開口を有する。危険化学物質が漏れている場合、救済装置を、危険化学物質の損失を減らし、環境及び人への被害を緩和し、起こり得る悲惨な結果を避けるために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険化学物質に対する処理に関し、特に危険化学物質の漏れを処理する救済装置及び救済方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質は工業生産及び人々の生活に不可欠である。また、大部分の化学物質は危険化学物質であり、大部分の危険化学物質は気体及び液体を含む流体である。危険化学物質の生産、保管、輸送及び使用が行われている間に、容器の経年劣化、高温環境及び事故によって漏出問題が時折発生し、漏出問題の発生は環境被害につながり悲惨な結果をもたらす。迅速かつ効果的な救済は環境被害を減らし、悲惨な結果を避けるために重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許第1675110号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は危険化学物質の漏出に対する今までにない救済方法に関する。具体的には、危険化学物質が漏れた場合に、負圧がかかっている自動冷却装置を用いることで、漏れていない危険化学物質を自動冷却装置の中に安全に、素早く、効果的に導入することができる。これにより、人及び環境への損害が減少し、起こり得る悲惨な結果が避けられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る救済装置は、危険化学物質の漏出を処理する救済装置において、密閉された負圧室、及び、外部の危険化学物質を内部に導入するための吸気口を有する第1容器と、該第1容器内に設置及び固定され、実質的に無害な液化ガスを収容し、外部環境に通じる開閉可能な開口を有する第2容器とを備えることを特徴とする。
【0006】
危険化学物質が事故若しくは装置の経年劣化によって漏れた場合、又は保管されている危険化学物質が高温環境にさらされた場合、本発明に係る救済装置を用いることができる。まず初めに、第1容器を、第1容器に設けられた吸気口を介して、漏れている保管容器に接続する。負圧がかけられているので、漏れている保管容器内の漏れていない危険化学物質が第1容器の中へ流れ込む。また、第2容器の開口を適切な時期に開けることができる。このため、第2容器の液化ガスを放出することによって第1容器内の温度が低下し、これにより、第1容器内の圧力が下がる。その結果、漏れている保管容器からより多くの危険化学物質が吸い上げられ、危険化学物質の損失が減り、環境及び人への被害が緩和され、起こり得る悲惨な結果が避けられる。
【0007】
本発明に係る救済方法は、危険化学物質の漏出を処理する救済方法において、(1)密閉された負圧室、及び、外部の危険化学物質を内部に導入するための吸気口を有する第1容器と、前記第1容器内に設置及び固定され、実質的に無害なガスを収容し、外部環境に通じる開閉可能な開口を有する第2容器とを備える救済装置を設け、(2)前記外部の危険化学物質を前記第1容器に導入するための前記吸気口を、危険化学物質が漏れている保管容器に、漏れていない危険化学物質を前記救済装置に導入するように接続し、(3)前記第1容器内の温度及び圧力が下がり、漏れていない、より多くの危険化学物質が前記救済装置の中に導入されるように、前記第2容器の開口を開けて前記第2容器内の前記実質的に無害な液化ガスを放出することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る救済装置を分離させることができ、車両に搭載することができる。
可燃性、爆発性、有毒性、腐食性、放射能性又は化学汚染性を有する危険化学物質、特に沸点が低い、より危険な気体又は液体が漏れた場合において、救済が行われている間に本発明に係る救済装置を使用することができる。危険化学物質は、オキシ塩化リン、ガソリン、臭素、液体アンモニア、液体塩素、液体硫化水素、シアン化水素酸、イソシアン酸メチル、エチレンオキシド、天然ガス、液化石油ガス、アルコール、クロロホルム等を含むが、これらに限定されない。
【0009】
一の実施の形態では、外部の危険化学物質を第1容器に導入するための吸気口は、耐圧性及び耐食性を有する材料で作られており、危険化学物質が漏れている保管容器に密封接続又は実質的に密封接続するように配置される。密封接続又は実質的な密封接続を、パイプ接続及び磁気吸着等の技術を有する当業者によく知られた方法で実現することができる。
【0010】
第2容器は第1容器内に設置される。第2容器は実質的に無害な液化ガスを収容する。漏れていない危険化学物質を吸い上げながら救済が行われる場合、第2容器に設けられた通気弁を開くことによって、実質的に無害な液化ガスを第2容器から気体の状態で放出することができる。液化ガスの放出によって、周囲環境(即ち、第1容器)の熱が吸収される。このため、第1容器の温度が低下し、これにより、第1容器内の圧力が下がる。その結果、漏れている保管容器から、より多くの危険化学物質が吸い上げられる。
【0011】
第2容器を、当業者によく知られた方法で、第1容器内に固定することができる。第2容器は、外部の危険化学物質を第1容器に導入するための第1容器の吸気口の近くにあることが好ましい。これにより、危険化学物質の温度が急速に低下する。更に、第2容器は第1容器に直接接触しない。これにより、第2容器は、第1容器内の導入された危険化学物質と熱を素早く交換するが、第1容器の壁を介して外部環境と熱を交換しない。
【0012】
第2容器内の液化ガスを、臨界温度が常温よりも高くて環境及び人に実質的に無害な液化ガスから選択することができる。液化ガスは常温で常圧の場合には気体であり、常温で加圧した場合には液体である。救済装置を作動させていない場合、第2容器は加圧されており、液化ガスは液体に保たれる。しかしながら、救済装置を作動させている間、第2容器は外部に通じ、液化ガスは気化されて周囲の熱を吸収する。液化ガスは容易に入手することができ安価な液体二酸化炭素であることが好ましい。
【0013】
第1容器及び第2容器は、硬くて耐圧性がある容器であり、スチール製のタンク又はシリンダであることが好ましい。第2容器は円筒状、球状、蛇管状等の任意の形状で耐圧性を有する。
【0014】
本発明に係る第2容器は外部環境に通じる開閉可能な開口を有する。第2容器は、一又は複数の開口を有する。一の実施の形態では、開口は手動式通気弁である。他の実施の形態では、開口は自動式通気弁である。更に他の実施の形態では、第2容器は手動式通気弁だけではなく、自動式通気弁も有する。
【0015】
他の実施の形態において、第1容器は圧力センサを有する。救済が行われている間、第1容器内の圧力は徐々に平衡圧まで上昇する。この過程で、圧力の変化率は徐々に低くなる。圧力センサが所定値よりも低い第1容器内の圧力の変化率を検出した場合、信号が制御システムに配信される。制御システムは自動式通気弁を自動的に開くように制御する。
【0016】
本発明に係る液化ガスとして液体二酸化炭素が選択された場合、当業者は液体二酸化炭素の気化中に形成されるドライアイスが開口を塞がないように第2容器の開口をどのように配置すべきかを知っている。
【0017】
本発明に係る装置を、液状の危険化学物質の製品が生産され、保管され、そして使用される場所又は車両で緊急救済装置として使うことができる。本発明に係る装置を、危険化学物質の分野における専門の救助者用に常設された救済装置としても使うことができる。本発明に係る装置は、危険化学物質、特に沸点が低い、より危険な気体及び液体を生産、保管、輸送及び使用するための安全上の危険性を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る一の実施の形態の構成図である。
【図2】本発明に係る他の実施の形態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に示す本発明の好ましい実施の形態では、本発明の技術内容を、図面を参照しながら更に説明する。図面で示される内容は、本発明の特許請求の範囲を限定するのではなく、むしろ本発明を説明するために使用される内容であると理解されるべきである。
【0020】
各図では同じ構成要素は類似の番号を有する。例えば、図1における第1容器の番号は101であり、図2における第1容器の番号は201である。
【0021】
図1は本発明に係る一の実施の形態の構成図である。危険化学物質の漏出に対する救済装置は第1容器101と、支持柱105によって第1容器101内に固定された第2容器104とを備える。
【0022】
密閉された負圧室102は第1容器101の内部に形成されている。第1容器101は、外部の危険化学物質を第1容器101に導入するための吸気口103を有する。救済が行われている間、第1容器101は、吸気口103を介して、漏れている保管容器に通じている。負圧がかけられているので、漏れている保管容器から漏れていない化学物質が第1容器101の負圧室102の中へ流れ込む。
【0023】
第2容器104は円筒状又は球状である。第2容器104は液化ガス106を収容する。第2容器104内の液体の量を常時検出して必要な場合に液体を補完するために、第2容器104内に、液体レベルセンサ(図示せず)を設置することができる。
【0024】
第2容器104は外部環境に通じる開閉可能な通気弁107を有する。第2容器104は、一又は複数の通気弁107を有してもよい。
【0025】
通気弁107又は他の供給口(図示せず)を介して、第2容器104の中へ液化ガス106を注入又は補完することができる。
【0026】
救済が行われている間、一定量の危険化学物質が第1容器101の中へ流れ込んで第1容器101内の圧力が平衡圧に近くなった場合、通気弁107を開き、第2容器104内の液化ガス106を放出する。放出が行われている間、液化ガス106は周囲環境(即ち、第1容器101)の熱を吸収し、このため、第1容器101の温度が低下する。これによって、第1容器101内の圧力は下がり、漏れている保管容器から、より多くの危険化学物質が吸い上げられる。
【0027】
図2は本発明に係る他の実施の形態の構成図である。危険化学物質の漏出に対する救済装置は第1容器201と、第1容器201内に固定された蛇管状の第2容器204を備える。
【0028】
密閉された負圧室202は第1容器201の内部に形成されている。第1容器201は外部の危険化学物質を第1容器201に導入するための吸気口203を有する。救済が行われている間、第1容器201は、吸気口203を介して、漏れている保管容器に通じている。負圧がかけられているので、漏れている保管容器から漏れていない危険化学物質が第1容器201の負圧室202の中へ流れ込む。
【0029】
第2容器204は液化ガス206を収容する。第2容器204は外部環境に通じる開閉可能な通気弁207と、液化ガスが注入される供給口208を有する。第2容器204は、一又は複数の通気弁207と、一又は複数の供給口208とを有してもよい。
【0030】
第1容器201は圧力センサ209を有する。救済が行われている間、一定量の危険化学物質が第1容器201に流れ込んで、圧力センサ209が所定値よりも低い、第1容器201内の圧力の変化率を検出した場合、信号が制御システム210に配信される。制御システム210は通気弁207を全開する又は部分的に開くように制御し、第2容器204内の液化ガス206を放出する。放出している間、液化ガス206は周囲環境(即ち、第1容器201)の熱を吸収する。このため、第1容器201の温度が低下し、これにより第1容器201内の圧力が下がる。その結果、漏れている保管容器からより多くの危険化学物質が吸い上げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
危険化学物質の漏れを処理する救済装置において、
密閉された負圧室、及び、外部の危険化学物質を内部に導入するための吸気口を有する第1容器と、
該第1容器内に設置及び固定され、実質的に無害な液化ガスを収容し、外部環境に通じる開閉可能な開口を有する第2容器と
を備えることを特徴とする救済装置。
【請求項2】
前記外部の危険化学物質を前記第1容器に導入するための前記吸気口は、耐圧性及び耐食性を有する材料で作られており、危険化学物質が漏れている保管容器に密封接続又は実質的に密封接続するように配置されること
を特徴とする請求項1に記載の救済装置。
【請求項3】
前記第1容器及び第2容器は硬くて耐圧性がある容器であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の救済装置。
【請求項4】
前記第2容器は円筒状、球状又は蛇管状であること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の救済装置。
【請求項5】
前記第2容器は、前記第1容器に直接接触せず、前記外部の危険化学物質を前記第1容器に導入するための前記第1容器の前記吸気口の近くにあること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の救済装置。
【請求項6】
前記実質的に無害な液化ガスは液体二酸化炭素であること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の救済装置。
【請求項7】
前記開口は手動式通気弁であること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の救済装置。
【請求項8】
前記開口は自動式通気弁であること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の救済装置。
【請求項9】
前記第1容器は圧力センサを有し、
前記自動式通気弁は、前記圧力センサが所定値よりも低い前記第1容器における圧力の変化率を検出した場合に、自動的に開くように制御されること
を特徴とする請求項8に記載の救済装置。
【請求項10】
危険化学物質の漏れを処理する救済方法において、
(1)密閉された負圧室、及び、外部の危険化学物質を内部に導入するための吸気口を有する第1容器と、前記第1容器内に設置及び固定され、実質的に無害な液化ガスを収容し、外部環境に通じる開閉可能な開口を有する第2容器とを備える救済装置を設け、
(2)前記外部の危険化学物質を前記第1容器に導入するための前記吸気口を、危険化学物質が漏れている保管容器に、漏れていない危険化学物質を前記救済装置に導入するように接続し、
(3)前記第1容器内の温度及び圧力が下がり、漏れていない、より多くの危険化学物質が前記救済装置の中に導入されるように、前記第2容器の開口を開けて前記第2容器内の前記実質的に無害な液化ガスを放出すること
を特徴とする救済方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−526871(P2011−526871A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516955(P2011−516955)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072637
【国際公開番号】WO2010/003355
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510114815)北京天▲チン▼化工有限責任公司 (3)
【Fターム(参考)】