卵の気室位置検査方法および装置
【課題】卵の気室位置が鈍端中央からどの程度ずれているかといった、ワクチン製造に係る卵へのウイルス接種や卵の漿尿液採取に必要な、精度の高い気室位置の情報を得る。
【解決手段】検査ユニット8aの集光部2を卵5に密着させ、光源11,13から可視光を順次照射する。光源11,13から照射された光の一部は卵5の内部へ入射し、集光部2と卵5が接触する範囲の内側から放射されるので、集光部2と卵5が接触する範囲の内側から放射された光を光電変換部1で受光して受光電圧に変換する。判定演算部は、それぞれの受光電圧の値から気室6の位置の良否を判定する。
【解決手段】検査ユニット8aの集光部2を卵5に密着させ、光源11,13から可視光を順次照射する。光源11,13から照射された光の一部は卵5の内部へ入射し、集光部2と卵5が接触する範囲の内側から放射されるので、集光部2と卵5が接触する範囲の内側から放射された光を光電変換部1で受光して受光電圧に変換する。判定演算部は、それぞれの受光電圧の値から気室6の位置の良否を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵の気室位置検査方法および装置に関し、より詳しくは、卵の内部を経て外部に放射される光から卵の気室位置を検査する気室位置検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鶏卵等に代表される鳥類の卵は、曲率の比較的大きい鋭端と曲率の比較的小さい鈍端とを有する。そして卵の鈍端側には、2層の卵殻膜のうち卵殻に密着した外卵殻膜から内卵殻膜が分離してできた気室と呼ばれる空間が存在する。
【0003】
食用にされる卵において、卵容器に卵を収容する際には、卵の鮮度を保持するために、気室が存在する鈍端側を上に向けて収容する必要がある。また、ワクチン製造や雛を採取するために孵卵工程にある卵においては、孵化率を高めるためにトレイ上では、鈍端側が上を向くよう載置する必要がある。
【0004】
ワクチンの製造には、孵卵11日目の卵が用いられる。トレイ上に載置した卵の上方より漿尿膜内部にウイルスを接種し、2日程度の培養後に鈍端部卵殻を円く切除し、漿尿膜内部の漿尿液を上方より採取する工程が含まれている。一般に孵卵11日程度の卵の構造は、鈍端部より鋭端部に向かって気室、漿尿膜、羊膜(内部に胚を含む)、卵黄、の順に位置しており、ウイルスを接種の際には羊膜を傷つけないよう注意が必要とされている。また卵殻の切除の際には内卵殻膜を傷つけない範囲におさめなければならない(例えば特許文献1参照)。
【0005】
これらウイルス接種、漿尿液採取の工程は自動化されており、各装置の昇降位置等は気室が鈍端部中央に位置した標準的な卵を想定して決定されている。気室が鈍端部中央に位置していないと、ウイルス接種位置が漿尿膜から外れるためにウイルスが増殖しなかったり、漿尿液採取の際に卵黄等を破損させて不純物混入の要因となったりしてしまう。
【0006】
このような理由から、ワクチン製造に適した卵の条件のひとつとしては、気室が鈍端中央に位置していることが求められてきた。従来は暗室で卵の鈍端部に光を照射し、作業者が目視でその造影から気室位置の良否を判断していたが作業速度に限界があるほか、個人差が大きい、作業者の負担が大きい、といったことが問題視されていた。
【0007】
気室位置の良否判定を自動で行う装置はいまだ実用化されていないが、鶏卵の方向整列装置において、搬送コンベアによって搬送される鶏卵の両端部にレーザ光を照射し、鶏卵から戻ってくる光の強度を観測することにより非破壊で鶏卵の両端部のどちらに気室が位置しているかを自動で判定する装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000―262272号公報
【特許文献2】特開2003―231507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2の方向整列装置では、卵の内部を経て外部に放射される光だけでなく、卵殻に反射したレーザ光が光センサに入射するため、正確な値を測定することができず、誤判定されるといった問題があった。
【0010】
また、気室の位置を検出するために卵を別の測定台に移載し平行移動させたり回転させたりする工程が必要になるので、トレイに載置したまま気室検出を行うことができなかった。
【0011】
さらに、特許文献2の方向整列装置では、鶏卵の両端部のどちらに気室が存在するかということを判断することはできるが、気室の位置が鈍端中央からどの程度ずれているかといった、ワクチン製造に係る卵へのウイルス接種と、卵の漿尿液採取に必要な精度の高い気室位置の情報を知ることができないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の卵の気室位置検査装置および方法は、可視光領域の波長の光を照射する光源と、光電変換部が内側に取り付けられたカップ状の集光部と、カップ状の集光部を卵に密着させることによって卵の内部から放出される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部と、光電変換部が変換した受光電圧の値から集光部が密着する部分に気室があるかどうかを判定する判定演算部によって、気室の存在の有無や気室位置の良否を検査する。
【0013】
また、トレイ上の複数の卵に対して同時に検査を行う場合は、遮光部を設けることにより、隣接する他の検査ユニットからの光の影響を受けずに、光源の光のみを検査対象の卵の内部へ入射させることができる。
【0014】
さらに、可視光領域の波長の光を照射する光源をカップ状の集光部の内部に取り付け、カップ状の集光部を卵に密着させることによって卵へ照射される光以外が外へ漏れ出すことを防ぎ、カップ状の集光部の外側から複数の光電変換部によって変換した受光電圧の値から集光部が密着する部分に気室があるかどうかを判定する判定演算部を有することにより、気室の存在の有無や気室位置の良否を短時間で検査する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る卵の気室位置検査方法および装置によれば、卵の内部を経て外部に放出される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部を備えているので、受光電圧の大きさから正確に端部の気室の有無を判定することができる。
【0016】
また、卵を別の測定台に移載して平行移動させたり回転させたりする工程が不要になり、トレイに載置したまま検査を行えるので、特にワクチン製造や雛を採取するために孵卵工程にある卵においては、孵化率を低下させることなく気室位置の良否を判定することができ、気室が卵の鈍端側中央からどの程度ずれているのかといった気室位置を精度良く検査することができるので、気室位置のずれによってウイルス接種や漿尿液採取に適さない卵を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図である。
【図2】図1の卵の気室位置検査装置の要部をX方向から見た図である。
【図3】図2のYa−Ya線断面図である。
【図4】卵の気室位置を検査している状態を示す図である。
【図5】光源のON時とOFF時の光電変換部出力を示す図である。
【図6】受光電圧の取得タイミングを示す図である。
【図7】ワクチン製造に適さない気室位置である卵の一例を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図である。
【図9】卵の気室位置を検査している状態の図8のYb−Yb線断面図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図である。
【図11】卵の気室位置を検査している状態の図10のYc−Yc線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る卵の気室位置検査方法および装置の実施例について、図面を参照して具体的に説明する。なお、第2実施例および第3実施例において第1実施例と共通するものについては同一符号を付して、その説明を省略する。
【実施例1】
【0019】
<第1実施例に係る気室位置検査装置の構成>
図1は、本発明の第1実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部である検査ユニット8aを示す図であり、図2は、図1の検査ユニット8aをX方向から見た図である。また、図3は、図2のYa−Ya線断面図である。図4は、卵5の気室位置を検査している状態を示している。
【0020】
光電変換部1は、受光した光の強度に比例した受光電圧を発生させる光検出器であり、遮光性を有したカップ状の集光部2の内側に設けられているが、集光部2から離れた場所に光電変換部1を設け、光ファイバーを介して受光するようにしてもよい。
本実施例では、光電変換部1はフォトダイオードを使用している。また、集光部2は遮光性を有しており、卵5の端部に密着するような樹脂で構成されている。
【0021】
光源11,12,13,14は、カップ状の集光部2の外側に取り付けられており、気室6を検査するのに適した波長の光を照射することができる。
気室位置を検査するのに適した光とは、卵5の内部にある内卵殻膜7で反射されやすい波長の光であるが、実験では可視光領域の波長の光が適していることが確認され、本実施例では、可視光領域のなかでも特に気室位置を検査するのに適した520nm〜620nmの波長の光を照射することができるLEDを使用している。
【0022】
伸縮部4は、下端では検査ユニット8aに取り付けられており、上端ではヘッド(図示せず)に取り付けられている。
ヘッドは、上下できる機構を備えており、卵5を検査するときに検査ユニット8aを下降させて集光部2と卵5を接触させる。伸縮部4は、集光部2と卵5が接触する際の衝撃を緩衝し、さらに集光部2が卵5と密着するように作用する。
本実施例では、伸縮部4に伸縮可能な蛇腹形状の部材を使用しているが、バネなどの弾性体を使用しても良い。また、テレスコピックパイプなどを使用することもできる。
【0023】
<気室の有無を判定する場合の動作>
第1実施例に係る卵の気室位置検査装置において、気室6の有無を判定する場合の動作について述べる。
【0024】
気室6の有無の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8aの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8aの集光部2が卵5と接触して密着する。このとき、図4に示すように伸縮部4が縮むことで、接触時の衝撃を緩衝しながら集光部2と卵5の端部を密着させることができる。
【0025】
集光部2と卵5が密着すると、光源11,12,13,14は同時に光を照射する。
本実施例では、光電変換部1を取り囲むように四方にLEDの光源11,12,13,14を配置しているが、気室6の有無を判定する場合は、同時に卵5の複数箇所に光を照射することができればよいので、これらの数や配置に限らず、数を増減させてもよいし、EL(エレクトロルミネッセンス)のような面光源を使用してもよい。
【0026】
光源11,12,13,14が光を照射すると、光の一部が卵5の内部に入射して、内卵殻膜7によって反射される。内卵殻膜7で反射され、集光部2が接触する範囲の内側から放射される光は光電変換部1に受光される。
【0027】
光電変換部1が卵5の内部から放射される光を受光すると、光電変換部1は受光した光の強度に比例した受光電圧を発生させる。判定演算部(図示せず)は、発生した受光電圧の値から卵5の端部に気室6が存在するかどうかを判定する。
【0028】
このとき、光電変換部1が受光する光は、光源11,12,13,14から照射された光だけでなく、外乱光を含んでいる場合がある。この場合は、光源がONの時のだけでなく、OFFの時も受光電圧を取得することで、外乱光の成分を除いた光源光の成分のみを得ることができる。
具体的には、図5に示すように、光源がONの時に計測した受光電圧をαとし、光源がOFFの時に計測した受光電圧をβとすると、αの値からβの値を引くことにより、光源光成分のみを取得する。
【0029】
下記の表1は、無作為に選ばれた卵A〜卵C(白色卵)の気室が存在する端部と気室が存在しない端部を測定したときの光源光成分の受光電圧を示す表である。表1に示されるように、受光電圧の値は気室6の有無により4倍以上の差が認められる。
【0030】
【表1】
【0031】
本実施例で光源に使用されているLEDの電源電圧は15V、電流は12mAであり、照射する光の波長は520nmである。
判定演算部は、受光電圧が2.5V以上の時に卵5の端部に気室6が存在すると判定し、受光電圧が2.5V未満の時に卵5の端部に気室6が存在しないと判定するように閾値が設けられている。
【0032】
また、判定演算部の判定方法は、前述のように卵5の上方から受光電圧を測定して、測定した受光電圧の値が特定の値以上か未満かで判定するだけでなく、卵5の下方からも受光電圧を測定して、上方で測定した受光電圧と下方で測定した受光電圧の差から、どちらの端部に気室6が存在するかを判定してもよい。
さらに、卵5の下方から測定するときは、2つの検査ユニット8aで挟むようにして集光部2を卵5に接触させることにより、トレイ上の卵5を安定させた状態で上下両端部の受光電圧を測定することができる。
【0033】
<気室位置の良否を判定する場合の動作>
第1実施例に係る卵の気室位置検査装置において、気室位置の良否を判定する場合の動作について述べる。
【0034】
気室位置の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8aの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8aの集光部2が卵5と接触し、密着する。集光部2と卵5が密着すると、光源11,12,13,14は、図6に示すように光を順次照射する。
本実施例では、光電変換部1を取り囲むように四方にLEDの光源11,12,13,14を配置しているが、これに限られず、さらに複数の光源を配置しても良い。また、光源の数によらず、光電変換部1を取り囲むように等間隔で配置すればより精度良く気室位置の良否を判定することができる。
【0035】
光源11,12,13,14が、順次光を照射すると、それぞれの光の一部が卵5の内部へ入射して、内卵殻膜7によって反射される。内卵殻膜7で反射され、集光部2が接触する範囲の内側へ放射される光は光電変換部1に受光される。
【0036】
光電変換部1に受光された光は、受光電圧に変換されるが、このとき光電変換部1が受光する光は、光源11,12,13,14から照射された光だけでなく、外乱光を含んでいる場合があるので、図6に示すように光源がONの時のだけでなく、OFFの時も受光電圧を取得することで、外乱光の成分を除いた光源光の成分のみを得ることができる。
【0037】
具体的には、図5に示すように、光源がONの時に計測した受光電圧をαとし、光源がOFFの時に計測した受光電圧をβとして、αの値からβの値を引くことにより、光源光成分のみを取得する。
【0038】
光源11,12,13,14すべてについて光源光成分の受光電圧の取得が完了すると、判定演算部はその中から最大の受光電圧と最小の受光電圧を下記の数1にあてはめて、検査対象の卵5のアンバランス度を算出する。
【0039】
【数1】
【0040】
アンバランス度とは、光源11,12,13,14が照射した光によって発生する受光電圧の最大値が、最小値に対してどれだけ大きいかという割合を百分率で示すものである。アンバランス度が小さいほど気室6は端部の中央に位置しており、アンバランス度が大きいほど気室6は端部の中央から外れている事を示している。
【0041】
図4に示す卵5は、ワクチン製造に適した気室位置を有しており、この卵5のような気室位置を有する場合、アンバランス度は、0%〜10%となる。アンバランス度が30%〜50%の値を超えるとワクチン製造に適さない卵5が増えるので、本実施例では、閾値を50%としている。
【0042】
図7は、ワクチン製造に適さない卵5の一例を示す図である。気室位置が図7のような位置にある場合は、漿尿膜内部の漿尿液を上方より採取するために鈍端部の卵殻を円く切除するときに内卵殻膜7を傷つけてしまうため、ワクチン製造に適さない。
【0043】
光源11から照射された光の一部は、卵5の卵殻と外卵殻膜を透過して卵5の内部へ入射し、内卵殻膜7に反射される。内卵殻膜7に反射された光のうち、再び外卵殻膜と卵殻を透過して集光部2が接触する範囲の内側から放射される光を光電変換部1が受光して受光電圧へと変換する。
【0044】
一方、光源13から照射された光の一部は、卵5の卵殻と外卵殻膜、内卵殻膜7を透過して卵5の内部へ入射するが、卵5の内容物である胚などに拡散されてしまう。胚などに拡散され、再び内卵殻膜7と外卵殻膜、卵殻を透過して集光部2が接触する範囲の内側から放射される光は、光源11から照射された光に比べて弱いので、光電変換部1が受光して変換する受光電圧の値は顕著に小さくなる。
そうすると、図7のような気室位置を有する卵5の場合のアンバランス度は120%以上となり、判定演算部によって気室位置が不良と判定される。
【0045】
なお、検査ユニット8aの集光部2が接触する側の端部に気室6が存在せず、反対側の端部に気室6が存在する場合は、光源11,12,13,14から照射されるそれぞれの光は同程度の受光電圧発生させるため、数1にあてはめるとアンバランス度が閾値である50%より低く算出されて気室位置が良好と判定される問題があるが、光源11,12,13,14から照射される光がすべて2.5V以下の受光電圧しか発生させなかった場合は、集光部2が接触する側の端部には気室6が存在しないと判定することで、このような問題を回避できる。
【0046】
また、判定演算部の判定方法は、前述のように卵5の上方から受光電圧を測定してアンバランス度から気室位置の良否を判定するだけでなく、卵5の下方からも受光電圧を測定してアンバランス度を求めて気室位置の良否を判定してもよい。
さらに、卵5の下方から測定するときは、2つの検査ユニット8aで挟むようにして集光部2を卵5に接触させることにより、トレイ上の卵5を安定させた状態で両端部の受光電圧を測定することができる。
【実施例2】
【0047】
図8は、本発明の第2実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図であり、図9は、図8のYb−Yb線断面図であり、卵5の気室位置を検査している状態を示している。
【0048】
遮光部3は、卵5を検査するときに光源11,12,13,14から照射された光のみが卵5の内部へ入射するように、それ以外の光を遮断するパイプ状の部材で構成されている。
遮光部3は、検査ユニット8aに取り付けられた伸縮部4とは独立した別の伸縮部4に取り付けられており、遮光部3に取り付けられた伸縮部4は上端でヘッドに取り付けられている。
【0049】
気室位置の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8aの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8aの集光部2が卵5と接触し、密着する。さらにヘッドが下降すると伸縮部4が縮んで遮光部3が卵5と接触して密着する。
集光部2と遮光部3が卵5と密着した後、光源11,12,13,14は、図6に示すように光を順次照射し、本発明の第1実施例と同様に卵5の気室位置の良否が判定される。
【0050】
本実施例の発明によれば、光源11,12,13,14から卵5に照射された光のみが卵5の内部へ入射するように、遮光部3によってそれ以外の光を遮断するので、一方の検査ユニット8aの光源11,12,13,14から照射された光が、隣接する他方の検査ユニット8aの光電変換部1へ入射することがなくなり、トレイ上に複数個載せられた卵5を同時に検査することができる。
【実施例3】
【0051】
図10は、本発明の第3実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図であり、図11は、図10のYc−Yc線断面図であり、卵5の気室位置を検査している状態を示している。
【0052】
光電変換部21,22,23,24は、入射した光の強度に比例した受光電圧を発生させる光検出器であり、遮光性を有したカップ状の集光部2の外側に設けられているが、集光部2から離れた場所に光電変換部1を設け、光ファイバーを介して受光するようにしてもよい。
本実施例では、光電変換部21,22,23,24はフォトダイオードを使用している。また、集光部2は遮光性を有しており、卵5の端部に密着するような樹脂で構成されている。
【0053】
光源31は、カップ状の集光部2の内側に取り付けられており、気室6を検査するのに適した波長の光を照射することができる。
【0054】
伸縮部4は、下端では検査ユニット8bに取り付けられており、上端ではヘッド(図示せず)に取り付けられている。
ヘッドは、上下できる機構を備えており、卵5を検査するときに検査ユニット8bを下降させて集光部2と卵5を接触させる。伸縮部4は、集光部2と卵5が接触する際の衝撃を緩衝し、さらに集光部2が卵5と密着するように作用する。
【0055】
遮光部3は、検査ユニット8bに取り付けられた伸縮部4とは独立した別の伸縮部4に取り付けられており、遮光部3に取り付けられた伸縮部4は上端でヘッドに取り付けられている。
遮光部3は、卵5を検査するときに外乱光を遮断するように、遮光性を有したパイプ状の部材で構成されている。
【0056】
気室位置の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8bの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8bの集光部2が卵5と接触して密着する。さらにヘッドが下降すると伸縮部4が縮んで遮光部3が卵5と接触して密着し、集光部2と遮光部3が卵5と密着した後、光源31は光を照射する。
【0057】
本実施例では、光源31を取り囲むように四方にフォトダイオードである光電変換部21,22,23,24を配置しているが、これらの数や配置に限らず、さらに複数の光電変換部を配置しても良い。また、光源31を取り囲むように等間隔で配置すればより精度良く気室位置の良否を判定することができる。
【0058】
光源31が光を照射すると、光の一部が卵5の内部へ入射して、内卵殻膜7によって反射される。内卵殻膜7で反射され、集光部2が卵5と接触する範囲の外側で、かつ、遮光部3が卵5と接触する範囲の内側へ放射される光は光電変換部21,22,23,24に受光され、受光電圧に変換される。
【0059】
光が受光電圧に変換されると、判定演算部はその中から最大の受光電圧と最小の受光電圧を数1にあてはめて、検査対象の卵5のアンバランス度を算出し、アンバランス度から気室位置の良否を判定する。
【0060】
本実施例の発明によれば、光源31が照射した光を複数の光電変換部21,22,23,24によって複数箇所で同時に測定することができるので、短時間で気室位置の良否を検査することができる。
なお、本発明の実施例に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1,21,22,23,24 光電変換部
2 集光部
3 遮光部
4 伸縮部
5 卵
6 気室
7 内卵殻膜
8a,8b 検査ユニット
11,12,13,14,31 光源
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵の気室位置検査方法および装置に関し、より詳しくは、卵の内部を経て外部に放射される光から卵の気室位置を検査する気室位置検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鶏卵等に代表される鳥類の卵は、曲率の比較的大きい鋭端と曲率の比較的小さい鈍端とを有する。そして卵の鈍端側には、2層の卵殻膜のうち卵殻に密着した外卵殻膜から内卵殻膜が分離してできた気室と呼ばれる空間が存在する。
【0003】
食用にされる卵において、卵容器に卵を収容する際には、卵の鮮度を保持するために、気室が存在する鈍端側を上に向けて収容する必要がある。また、ワクチン製造や雛を採取するために孵卵工程にある卵においては、孵化率を高めるためにトレイ上では、鈍端側が上を向くよう載置する必要がある。
【0004】
ワクチンの製造には、孵卵11日目の卵が用いられる。トレイ上に載置した卵の上方より漿尿膜内部にウイルスを接種し、2日程度の培養後に鈍端部卵殻を円く切除し、漿尿膜内部の漿尿液を上方より採取する工程が含まれている。一般に孵卵11日程度の卵の構造は、鈍端部より鋭端部に向かって気室、漿尿膜、羊膜(内部に胚を含む)、卵黄、の順に位置しており、ウイルスを接種の際には羊膜を傷つけないよう注意が必要とされている。また卵殻の切除の際には内卵殻膜を傷つけない範囲におさめなければならない(例えば特許文献1参照)。
【0005】
これらウイルス接種、漿尿液採取の工程は自動化されており、各装置の昇降位置等は気室が鈍端部中央に位置した標準的な卵を想定して決定されている。気室が鈍端部中央に位置していないと、ウイルス接種位置が漿尿膜から外れるためにウイルスが増殖しなかったり、漿尿液採取の際に卵黄等を破損させて不純物混入の要因となったりしてしまう。
【0006】
このような理由から、ワクチン製造に適した卵の条件のひとつとしては、気室が鈍端中央に位置していることが求められてきた。従来は暗室で卵の鈍端部に光を照射し、作業者が目視でその造影から気室位置の良否を判断していたが作業速度に限界があるほか、個人差が大きい、作業者の負担が大きい、といったことが問題視されていた。
【0007】
気室位置の良否判定を自動で行う装置はいまだ実用化されていないが、鶏卵の方向整列装置において、搬送コンベアによって搬送される鶏卵の両端部にレーザ光を照射し、鶏卵から戻ってくる光の強度を観測することにより非破壊で鶏卵の両端部のどちらに気室が位置しているかを自動で判定する装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000―262272号公報
【特許文献2】特開2003―231507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2の方向整列装置では、卵の内部を経て外部に放射される光だけでなく、卵殻に反射したレーザ光が光センサに入射するため、正確な値を測定することができず、誤判定されるといった問題があった。
【0010】
また、気室の位置を検出するために卵を別の測定台に移載し平行移動させたり回転させたりする工程が必要になるので、トレイに載置したまま気室検出を行うことができなかった。
【0011】
さらに、特許文献2の方向整列装置では、鶏卵の両端部のどちらに気室が存在するかということを判断することはできるが、気室の位置が鈍端中央からどの程度ずれているかといった、ワクチン製造に係る卵へのウイルス接種と、卵の漿尿液採取に必要な精度の高い気室位置の情報を知ることができないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の卵の気室位置検査装置および方法は、可視光領域の波長の光を照射する光源と、光電変換部が内側に取り付けられたカップ状の集光部と、カップ状の集光部を卵に密着させることによって卵の内部から放出される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部と、光電変換部が変換した受光電圧の値から集光部が密着する部分に気室があるかどうかを判定する判定演算部によって、気室の存在の有無や気室位置の良否を検査する。
【0013】
また、トレイ上の複数の卵に対して同時に検査を行う場合は、遮光部を設けることにより、隣接する他の検査ユニットからの光の影響を受けずに、光源の光のみを検査対象の卵の内部へ入射させることができる。
【0014】
さらに、可視光領域の波長の光を照射する光源をカップ状の集光部の内部に取り付け、カップ状の集光部を卵に密着させることによって卵へ照射される光以外が外へ漏れ出すことを防ぎ、カップ状の集光部の外側から複数の光電変換部によって変換した受光電圧の値から集光部が密着する部分に気室があるかどうかを判定する判定演算部を有することにより、気室の存在の有無や気室位置の良否を短時間で検査する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る卵の気室位置検査方法および装置によれば、卵の内部を経て外部に放出される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部を備えているので、受光電圧の大きさから正確に端部の気室の有無を判定することができる。
【0016】
また、卵を別の測定台に移載して平行移動させたり回転させたりする工程が不要になり、トレイに載置したまま検査を行えるので、特にワクチン製造や雛を採取するために孵卵工程にある卵においては、孵化率を低下させることなく気室位置の良否を判定することができ、気室が卵の鈍端側中央からどの程度ずれているのかといった気室位置を精度良く検査することができるので、気室位置のずれによってウイルス接種や漿尿液採取に適さない卵を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図である。
【図2】図1の卵の気室位置検査装置の要部をX方向から見た図である。
【図3】図2のYa−Ya線断面図である。
【図4】卵の気室位置を検査している状態を示す図である。
【図5】光源のON時とOFF時の光電変換部出力を示す図である。
【図6】受光電圧の取得タイミングを示す図である。
【図7】ワクチン製造に適さない気室位置である卵の一例を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図である。
【図9】卵の気室位置を検査している状態の図8のYb−Yb線断面図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図である。
【図11】卵の気室位置を検査している状態の図10のYc−Yc線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る卵の気室位置検査方法および装置の実施例について、図面を参照して具体的に説明する。なお、第2実施例および第3実施例において第1実施例と共通するものについては同一符号を付して、その説明を省略する。
【実施例1】
【0019】
<第1実施例に係る気室位置検査装置の構成>
図1は、本発明の第1実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部である検査ユニット8aを示す図であり、図2は、図1の検査ユニット8aをX方向から見た図である。また、図3は、図2のYa−Ya線断面図である。図4は、卵5の気室位置を検査している状態を示している。
【0020】
光電変換部1は、受光した光の強度に比例した受光電圧を発生させる光検出器であり、遮光性を有したカップ状の集光部2の内側に設けられているが、集光部2から離れた場所に光電変換部1を設け、光ファイバーを介して受光するようにしてもよい。
本実施例では、光電変換部1はフォトダイオードを使用している。また、集光部2は遮光性を有しており、卵5の端部に密着するような樹脂で構成されている。
【0021】
光源11,12,13,14は、カップ状の集光部2の外側に取り付けられており、気室6を検査するのに適した波長の光を照射することができる。
気室位置を検査するのに適した光とは、卵5の内部にある内卵殻膜7で反射されやすい波長の光であるが、実験では可視光領域の波長の光が適していることが確認され、本実施例では、可視光領域のなかでも特に気室位置を検査するのに適した520nm〜620nmの波長の光を照射することができるLEDを使用している。
【0022】
伸縮部4は、下端では検査ユニット8aに取り付けられており、上端ではヘッド(図示せず)に取り付けられている。
ヘッドは、上下できる機構を備えており、卵5を検査するときに検査ユニット8aを下降させて集光部2と卵5を接触させる。伸縮部4は、集光部2と卵5が接触する際の衝撃を緩衝し、さらに集光部2が卵5と密着するように作用する。
本実施例では、伸縮部4に伸縮可能な蛇腹形状の部材を使用しているが、バネなどの弾性体を使用しても良い。また、テレスコピックパイプなどを使用することもできる。
【0023】
<気室の有無を判定する場合の動作>
第1実施例に係る卵の気室位置検査装置において、気室6の有無を判定する場合の動作について述べる。
【0024】
気室6の有無の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8aの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8aの集光部2が卵5と接触して密着する。このとき、図4に示すように伸縮部4が縮むことで、接触時の衝撃を緩衝しながら集光部2と卵5の端部を密着させることができる。
【0025】
集光部2と卵5が密着すると、光源11,12,13,14は同時に光を照射する。
本実施例では、光電変換部1を取り囲むように四方にLEDの光源11,12,13,14を配置しているが、気室6の有無を判定する場合は、同時に卵5の複数箇所に光を照射することができればよいので、これらの数や配置に限らず、数を増減させてもよいし、EL(エレクトロルミネッセンス)のような面光源を使用してもよい。
【0026】
光源11,12,13,14が光を照射すると、光の一部が卵5の内部に入射して、内卵殻膜7によって反射される。内卵殻膜7で反射され、集光部2が接触する範囲の内側から放射される光は光電変換部1に受光される。
【0027】
光電変換部1が卵5の内部から放射される光を受光すると、光電変換部1は受光した光の強度に比例した受光電圧を発生させる。判定演算部(図示せず)は、発生した受光電圧の値から卵5の端部に気室6が存在するかどうかを判定する。
【0028】
このとき、光電変換部1が受光する光は、光源11,12,13,14から照射された光だけでなく、外乱光を含んでいる場合がある。この場合は、光源がONの時のだけでなく、OFFの時も受光電圧を取得することで、外乱光の成分を除いた光源光の成分のみを得ることができる。
具体的には、図5に示すように、光源がONの時に計測した受光電圧をαとし、光源がOFFの時に計測した受光電圧をβとすると、αの値からβの値を引くことにより、光源光成分のみを取得する。
【0029】
下記の表1は、無作為に選ばれた卵A〜卵C(白色卵)の気室が存在する端部と気室が存在しない端部を測定したときの光源光成分の受光電圧を示す表である。表1に示されるように、受光電圧の値は気室6の有無により4倍以上の差が認められる。
【0030】
【表1】
【0031】
本実施例で光源に使用されているLEDの電源電圧は15V、電流は12mAであり、照射する光の波長は520nmである。
判定演算部は、受光電圧が2.5V以上の時に卵5の端部に気室6が存在すると判定し、受光電圧が2.5V未満の時に卵5の端部に気室6が存在しないと判定するように閾値が設けられている。
【0032】
また、判定演算部の判定方法は、前述のように卵5の上方から受光電圧を測定して、測定した受光電圧の値が特定の値以上か未満かで判定するだけでなく、卵5の下方からも受光電圧を測定して、上方で測定した受光電圧と下方で測定した受光電圧の差から、どちらの端部に気室6が存在するかを判定してもよい。
さらに、卵5の下方から測定するときは、2つの検査ユニット8aで挟むようにして集光部2を卵5に接触させることにより、トレイ上の卵5を安定させた状態で上下両端部の受光電圧を測定することができる。
【0033】
<気室位置の良否を判定する場合の動作>
第1実施例に係る卵の気室位置検査装置において、気室位置の良否を判定する場合の動作について述べる。
【0034】
気室位置の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8aの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8aの集光部2が卵5と接触し、密着する。集光部2と卵5が密着すると、光源11,12,13,14は、図6に示すように光を順次照射する。
本実施例では、光電変換部1を取り囲むように四方にLEDの光源11,12,13,14を配置しているが、これに限られず、さらに複数の光源を配置しても良い。また、光源の数によらず、光電変換部1を取り囲むように等間隔で配置すればより精度良く気室位置の良否を判定することができる。
【0035】
光源11,12,13,14が、順次光を照射すると、それぞれの光の一部が卵5の内部へ入射して、内卵殻膜7によって反射される。内卵殻膜7で反射され、集光部2が接触する範囲の内側へ放射される光は光電変換部1に受光される。
【0036】
光電変換部1に受光された光は、受光電圧に変換されるが、このとき光電変換部1が受光する光は、光源11,12,13,14から照射された光だけでなく、外乱光を含んでいる場合があるので、図6に示すように光源がONの時のだけでなく、OFFの時も受光電圧を取得することで、外乱光の成分を除いた光源光の成分のみを得ることができる。
【0037】
具体的には、図5に示すように、光源がONの時に計測した受光電圧をαとし、光源がOFFの時に計測した受光電圧をβとして、αの値からβの値を引くことにより、光源光成分のみを取得する。
【0038】
光源11,12,13,14すべてについて光源光成分の受光電圧の取得が完了すると、判定演算部はその中から最大の受光電圧と最小の受光電圧を下記の数1にあてはめて、検査対象の卵5のアンバランス度を算出する。
【0039】
【数1】
【0040】
アンバランス度とは、光源11,12,13,14が照射した光によって発生する受光電圧の最大値が、最小値に対してどれだけ大きいかという割合を百分率で示すものである。アンバランス度が小さいほど気室6は端部の中央に位置しており、アンバランス度が大きいほど気室6は端部の中央から外れている事を示している。
【0041】
図4に示す卵5は、ワクチン製造に適した気室位置を有しており、この卵5のような気室位置を有する場合、アンバランス度は、0%〜10%となる。アンバランス度が30%〜50%の値を超えるとワクチン製造に適さない卵5が増えるので、本実施例では、閾値を50%としている。
【0042】
図7は、ワクチン製造に適さない卵5の一例を示す図である。気室位置が図7のような位置にある場合は、漿尿膜内部の漿尿液を上方より採取するために鈍端部の卵殻を円く切除するときに内卵殻膜7を傷つけてしまうため、ワクチン製造に適さない。
【0043】
光源11から照射された光の一部は、卵5の卵殻と外卵殻膜を透過して卵5の内部へ入射し、内卵殻膜7に反射される。内卵殻膜7に反射された光のうち、再び外卵殻膜と卵殻を透過して集光部2が接触する範囲の内側から放射される光を光電変換部1が受光して受光電圧へと変換する。
【0044】
一方、光源13から照射された光の一部は、卵5の卵殻と外卵殻膜、内卵殻膜7を透過して卵5の内部へ入射するが、卵5の内容物である胚などに拡散されてしまう。胚などに拡散され、再び内卵殻膜7と外卵殻膜、卵殻を透過して集光部2が接触する範囲の内側から放射される光は、光源11から照射された光に比べて弱いので、光電変換部1が受光して変換する受光電圧の値は顕著に小さくなる。
そうすると、図7のような気室位置を有する卵5の場合のアンバランス度は120%以上となり、判定演算部によって気室位置が不良と判定される。
【0045】
なお、検査ユニット8aの集光部2が接触する側の端部に気室6が存在せず、反対側の端部に気室6が存在する場合は、光源11,12,13,14から照射されるそれぞれの光は同程度の受光電圧発生させるため、数1にあてはめるとアンバランス度が閾値である50%より低く算出されて気室位置が良好と判定される問題があるが、光源11,12,13,14から照射される光がすべて2.5V以下の受光電圧しか発生させなかった場合は、集光部2が接触する側の端部には気室6が存在しないと判定することで、このような問題を回避できる。
【0046】
また、判定演算部の判定方法は、前述のように卵5の上方から受光電圧を測定してアンバランス度から気室位置の良否を判定するだけでなく、卵5の下方からも受光電圧を測定してアンバランス度を求めて気室位置の良否を判定してもよい。
さらに、卵5の下方から測定するときは、2つの検査ユニット8aで挟むようにして集光部2を卵5に接触させることにより、トレイ上の卵5を安定させた状態で両端部の受光電圧を測定することができる。
【実施例2】
【0047】
図8は、本発明の第2実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図であり、図9は、図8のYb−Yb線断面図であり、卵5の気室位置を検査している状態を示している。
【0048】
遮光部3は、卵5を検査するときに光源11,12,13,14から照射された光のみが卵5の内部へ入射するように、それ以外の光を遮断するパイプ状の部材で構成されている。
遮光部3は、検査ユニット8aに取り付けられた伸縮部4とは独立した別の伸縮部4に取り付けられており、遮光部3に取り付けられた伸縮部4は上端でヘッドに取り付けられている。
【0049】
気室位置の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8aの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8aの集光部2が卵5と接触し、密着する。さらにヘッドが下降すると伸縮部4が縮んで遮光部3が卵5と接触して密着する。
集光部2と遮光部3が卵5と密着した後、光源11,12,13,14は、図6に示すように光を順次照射し、本発明の第1実施例と同様に卵5の気室位置の良否が判定される。
【0050】
本実施例の発明によれば、光源11,12,13,14から卵5に照射された光のみが卵5の内部へ入射するように、遮光部3によってそれ以外の光を遮断するので、一方の検査ユニット8aの光源11,12,13,14から照射された光が、隣接する他方の検査ユニット8aの光電変換部1へ入射することがなくなり、トレイ上に複数個載せられた卵5を同時に検査することができる。
【実施例3】
【0051】
図10は、本発明の第3実施例に係る卵の気室位置検査装置の要部を示す図であり、図11は、図10のYc−Yc線断面図であり、卵5の気室位置を検査している状態を示している。
【0052】
光電変換部21,22,23,24は、入射した光の強度に比例した受光電圧を発生させる光検出器であり、遮光性を有したカップ状の集光部2の外側に設けられているが、集光部2から離れた場所に光電変換部1を設け、光ファイバーを介して受光するようにしてもよい。
本実施例では、光電変換部21,22,23,24はフォトダイオードを使用している。また、集光部2は遮光性を有しており、卵5の端部に密着するような樹脂で構成されている。
【0053】
光源31は、カップ状の集光部2の内側に取り付けられており、気室6を検査するのに適した波長の光を照射することができる。
【0054】
伸縮部4は、下端では検査ユニット8bに取り付けられており、上端ではヘッド(図示せず)に取り付けられている。
ヘッドは、上下できる機構を備えており、卵5を検査するときに検査ユニット8bを下降させて集光部2と卵5を接触させる。伸縮部4は、集光部2と卵5が接触する際の衝撃を緩衝し、さらに集光部2が卵5と密着するように作用する。
【0055】
遮光部3は、検査ユニット8bに取り付けられた伸縮部4とは独立した別の伸縮部4に取り付けられており、遮光部3に取り付けられた伸縮部4は上端でヘッドに取り付けられている。
遮光部3は、卵5を検査するときに外乱光を遮断するように、遮光性を有したパイプ状の部材で構成されている。
【0056】
気室位置の検査対象である卵5は、長軸を鉛直にした状態で検査ユニット8bの直下に載置され、検査が開始されると、ヘッドが下降して検査ユニット8bの集光部2が卵5と接触して密着する。さらにヘッドが下降すると伸縮部4が縮んで遮光部3が卵5と接触して密着し、集光部2と遮光部3が卵5と密着した後、光源31は光を照射する。
【0057】
本実施例では、光源31を取り囲むように四方にフォトダイオードである光電変換部21,22,23,24を配置しているが、これらの数や配置に限らず、さらに複数の光電変換部を配置しても良い。また、光源31を取り囲むように等間隔で配置すればより精度良く気室位置の良否を判定することができる。
【0058】
光源31が光を照射すると、光の一部が卵5の内部へ入射して、内卵殻膜7によって反射される。内卵殻膜7で反射され、集光部2が卵5と接触する範囲の外側で、かつ、遮光部3が卵5と接触する範囲の内側へ放射される光は光電変換部21,22,23,24に受光され、受光電圧に変換される。
【0059】
光が受光電圧に変換されると、判定演算部はその中から最大の受光電圧と最小の受光電圧を数1にあてはめて、検査対象の卵5のアンバランス度を算出し、アンバランス度から気室位置の良否を判定する。
【0060】
本実施例の発明によれば、光源31が照射した光を複数の光電変換部21,22,23,24によって複数箇所で同時に測定することができるので、短時間で気室位置の良否を検査することができる。
なお、本発明の実施例に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0061】
1,21,22,23,24 光電変換部
2 集光部
3 遮光部
4 伸縮部
5 卵
6 気室
7 内卵殻膜
8a,8b 検査ユニット
11,12,13,14,31 光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵の気室位置検査装置であって、
卵に光を照射する光源と、
前記光源が照射した光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部と、
前記光電変換部が変換した受光電圧の大きさから前記卵の表面の限られた部分の内部に気室が存在するかどうかを判定する判定演算部と、
を備える卵の気室位置検査装置。
【請求項2】
卵の気室位置検査装置であって、
卵の複数箇所の照射点に光を順次照射する光源と、
前記光源が照射した光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部と、
前記光電変換部が変換した複数箇所の照射点の間の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定する判定演算部と、
を備える卵の気室位置検査装置。
【請求項3】
前記光源から照射された光のみが卵の内部へ入射するようにそれ以外の光を遮断する遮光部をさらに備える請求項2に記載の卵の気室位置検査装置。
【請求項4】
卵の気室位置検査装置であって、
卵の表面の限られた部分に光を照射する光源と、
前記光源が照射した光のうち卵の内部を経て外部に放射される光を複数箇所で受光して受光電圧に変換する光電変換部と、
前記光電変換部へ入射する外乱光を遮断する遮光部と、
前記光電変換部が変換した複数箇所の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定する判定演算部と、
を備える卵の気室位置検査装置。
【請求項5】
卵の気室位置検査方法であって、
卵に光を照射するステップと、
前記光を照射するステップで照射された光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射する光のみを受光して受光電圧に変換するステップと、
前記受光電圧に変換するステップで変換された受光電圧の大きさから前記卵の表面の限られた部分の内部に気室が存在するかどうかを判定するステップと、
を備える卵の気室位置検査方法。
【請求項6】
卵の気室位置検査方法であって、
卵の複数箇所の照射点に光を順次照射するステップと、
前記光を順次照射するステップで照射された光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射する光のみを受光して受光電圧に変換するステップと、
前記受光電圧に変換するステップで変換された複数箇所の照射点の間の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定するステップと、
を備える卵の気室位置検査方法。
【請求項7】
前記光を順次照射するステップで照射された光のみが卵の内部へ入射するようにそれ以外の光を遮断するステップをさらに備える請求項6に記載の卵の気室位置検査方法。
【請求項8】
卵の気室位置検査方法であって、
卵の表面の限られた部分に光を照射するステップと、
前記光を照射するステップで照射された光のうち卵の内部を経て外部に放射する光を複数箇所で受光して受光電圧に変換するステップと、
外乱光を遮断するステップと、
前記受光電圧に変換するステップで変換された複数箇所の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定するステップと、
を備える卵の気室位置検査方法。
【請求項1】
卵の気室位置検査装置であって、
卵に光を照射する光源と、
前記光源が照射した光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部と、
前記光電変換部が変換した受光電圧の大きさから前記卵の表面の限られた部分の内部に気室が存在するかどうかを判定する判定演算部と、
を備える卵の気室位置検査装置。
【請求項2】
卵の気室位置検査装置であって、
卵の複数箇所の照射点に光を順次照射する光源と、
前記光源が照射した光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射される光のみを受光して受光電圧に変換する光電変換部と、
前記光電変換部が変換した複数箇所の照射点の間の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定する判定演算部と、
を備える卵の気室位置検査装置。
【請求項3】
前記光源から照射された光のみが卵の内部へ入射するようにそれ以外の光を遮断する遮光部をさらに備える請求項2に記載の卵の気室位置検査装置。
【請求項4】
卵の気室位置検査装置であって、
卵の表面の限られた部分に光を照射する光源と、
前記光源が照射した光のうち卵の内部を経て外部に放射される光を複数箇所で受光して受光電圧に変換する光電変換部と、
前記光電変換部へ入射する外乱光を遮断する遮光部と、
前記光電変換部が変換した複数箇所の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定する判定演算部と、
を備える卵の気室位置検査装置。
【請求項5】
卵の気室位置検査方法であって、
卵に光を照射するステップと、
前記光を照射するステップで照射された光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射する光のみを受光して受光電圧に変換するステップと、
前記受光電圧に変換するステップで変換された受光電圧の大きさから前記卵の表面の限られた部分の内部に気室が存在するかどうかを判定するステップと、
を備える卵の気室位置検査方法。
【請求項6】
卵の気室位置検査方法であって、
卵の複数箇所の照射点に光を順次照射するステップと、
前記光を順次照射するステップで照射された光のうち卵の内部を経て卵の表面の限られた部分から外部に放射する光のみを受光して受光電圧に変換するステップと、
前記受光電圧に変換するステップで変換された複数箇所の照射点の間の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定するステップと、
を備える卵の気室位置検査方法。
【請求項7】
前記光を順次照射するステップで照射された光のみが卵の内部へ入射するようにそれ以外の光を遮断するステップをさらに備える請求項6に記載の卵の気室位置検査方法。
【請求項8】
卵の気室位置検査方法であって、
卵の表面の限られた部分に光を照射するステップと、
前記光を照射するステップで照射された光のうち卵の内部を経て外部に放射する光を複数箇所で受光して受光電圧に変換するステップと、
外乱光を遮断するステップと、
前記受光電圧に変換するステップで変換された複数箇所の受光電圧の差異から気室位置の良否を判定するステップと、
を備える卵の気室位置検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−215015(P2011−215015A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83857(P2010−83857)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(597017812)株式会社ナベル (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(597017812)株式会社ナベル (56)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]