説明

原子核スピン状態制御装置及び検出装置

【課題】原子核スピンをナノメートルの領域で制御する。
【解決手段】2つのノンドープ層5,6に挟まれた二次元電子ガス層8と、ノンドープ層5の表面に二次元電子ガス層8にナノ領域を形成可能な間隔で配置された一対のショットキースプリットゲート3,4とを半導体素子に備え、この半導体素子に磁場を印加し、ショットキースプリットゲート3,4に負バイアスを印加することで、二次元電子ガス層8に無偏極状態と偏極状態の電子スピンが共存するナノ領域を形成させ、無偏極状態と偏極状態の電子スピンに跨って電流を流すことで原子核のスピン状態を反転させ、原子核スピンの制御を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子核のスピン状態を制御する制御装置、および原子核のスピン状態を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における原子核スピンの状態を制御・検出する半導体装置としては、例えば非特許文献1に記載のものが知られている。図5の平面図は、非特許文献1のように典型的な二次元ホールバーを利用した装置の概略的な構成を示す平面図である。同図において、符号21〜26は例えばAuGeNiからなるオーミックコンタクト(端子)、符号27は二次元電子からなるホールバー、符号28はマイクロ波照射用の数巻きコイルである。ホールバー27の幅Wは例えば50μm、長さLは200μmである。
【0003】
このような半導体装置に、ランダウ占有率が2/3となり、かつ電子スピンの偏極状態と無偏極状態が縮退するように磁場を印加するとともに、端子23と端子26との間に電流を印加すると、端子21と端子22の間の抵抗(縦抵抗)が、数分から数十分の経過後に増大する。これは、電子スピンが無偏極状態から偏極状態へ移行し、あるいは偏極状態から無偏極状態に移行するときに電流が流れることにより、電子スピンが反転し、それに伴って原子核スピンが反転し、偏極状態になるためと考えられる。このように、原子核スピンの偏極状態を作り出すことが可能となり、原子核スピンの状態を制御可能になる
さらに、数巻きコイル28にマイクロ波を導入し、ホールバー27にマイクロ波を照射して核磁気共鳴を起すと、縦抵抗値が大きく変化する。この縦抵抗値の変化を測定することで原子核スピンの状態を検出可能になる。
【0004】
一方、原子核スピンをコヒーレントに制御する技術としては、例えば非特許文献2に記載のものが知られている。非特許文献2では、電子スピンが非平衡状態の端チャネル間に電流を流すことによって、端チャネル近傍に数十ミクロン長の原子核スピンが偏極状態になる領域を形成させ、半導体上に直接形成したマイクロストリップラインによりマイクロ波を半導体に照射することで、原子核スピンをコヒーレントに制御する。
【非特許文献1】フィジカル・レビュー・レター(Physical Review Letters)、第88巻、第17号、p.176601−1〜176601−4
【非特許文献2】アプライド・フィジックス・レター(Applied Physics Letters)、第82巻、第3号、2003年、p.409−411
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原子核スピンの制御・検出を量子コンピュータの量子ビットへ応用することを考慮した場合、スピン制御のコヒーレンス性を長時間に渡って保つ必要がある。
【0006】
しかしながら、引用文献1にあるような、二次元電子からなるホールバーを使った場合には、制御しようとする原子核スピンの数が膨大になる。またホールバー内の電子状態はホールバー全体で一様ではないため、原子核スピンの状態も一様ではない。さらに、数巻きコイルを用いた場合、マイクロ波をホールバーに有効かつ均一に照射することができない。これらの理由から、原子核スピンをコヒーレントに制御することができない。
【0007】
一方、引用文献2にあるような、電子スピンが非平衡状態の端チャネル近傍に原子核スピンが偏極状態になる領域を形成した場合には、端チャネルの長さは数十ミクロン程度であるため集積化が難しい。また数十ミクロン単位で情報を制御しているため、コヒーレント状態を長く保つことが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、従来数十ミクロン単位の領域でしか制御できなかった原子核スピンをナノメートルの領域で制御し得る原子核スピン状態制御装置を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、原子核スピンをナノメートルの領域でコヒーレントに制御し得る原子核スピン状態制御装置を提供することを課題とする。
【0010】
また、本発明は、ナノメートルの領域で制御された原子核スピンの状態を高感度に検出し得る原子核スピン状態検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明に係る原子核スピン状態制御装置は、二次元電子ガス層を形成可能な層構造、前記二次元電子ガス層にナノ領域を形成可能な間隔で前記層構造に配置された一対のショットキースプリットゲートをを備えた半導体素子と、前記半導体素子に磁場を印加し、前記一対のショットキースプリットゲートに負バイアスを印加することで前記二次元電子ガス層に無偏極状態と偏極状態の電子スピンが共存するナノ領域を形成させ、無偏極状態と偏極状態の電子スピンに跨って電流を流すことで原子核のスピン状態を偏極させる制御手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、二次元電子ガス層と一対のショットキースプリットゲートを備えた半導体素子に対して、磁場を印加するとともにショットキースプリットゲートに負バイアスを印加することで、無偏極状態と偏極状態の電子スピンが共存するナノ領域を二次元電子ガス層に形成させ、ここに電流を流すことにより原子核のスピン状態を制御する。
【0013】
上記原子核スピン状態制御装置は、前記二次元電子ガス層に対してマイクロ波を照射するために前記半導体素子に層状に形成されたアンテナを有することを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、層状のアンテナを用いることで、二次元電子ガス層に対して有効的かつ均一にマイクロ波が照射される。
【0015】
上記原子核スピン状態制御装置において、前記マイクロ波の周波数は、原子核スピンに共鳴する共鳴周波数であることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、原子核スピンに共鳴する共鳴周波数のマイクロ波を半導体素子に照射することで、核磁気共鳴が起こるので、原子核スピンをコヒーレントに制御することが可能になる。
【0017】
上記原子核スピン状態制御装置において、前記制御手段は、前記二次元電子ガス層にランダウ占有率が2/3の分数量子ホール状態を形成可能な磁場を印加することを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、ランダウ占有率が2/3の分数量子ホール状態を形成可能な磁場を印加することで、偏極状態の電子スピンと無偏極状態の電子スピンが共存し得るナノ領域を確実に形成する。
【0019】
第2の本発明に係る原子核スピン状態検出装置は、二次元電子ガス層を形成可能な層構造、前記二次元電子ガス層にナノ領域を形成可能な間隔で前記層構造に配置された一対のショットキースプリットゲートを備えた半導体素子と、前記半導体素子に磁場を印加し、前記一対のショットキースプリットゲートに負バイアスを印加することで前記二次元電子ガス層に無偏極状態と偏極状態の電子スピンが共存するナノ領域を形成させ、無偏極状態と偏極状態の電子スピンに跨って電流を流すことで原子核のスピン状態を偏極させる制御手段と、原子核スピンの状態を検出する検出手段と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、検出手段を設けることにより、ナノ領域で制御される原子核のスピン状態を検出可能にする。
【0021】
上記原子核スピン状態検出装置において、前記検出手段は、前記ナノ領域を挟む位置に対向して配置された一対の端子によって抵抗値を測定することを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、原子核スピンの偏極の度合いがナノ領域の抵抗値に大きく影響を与えることから、この抵抗値を測定することにより、原子核スピンの状態を検出可能にする。
【0023】
上記原子核スピン状態検出装置は、前記二次元電子ガス層に対してマイクロ波を照射するために前記半導体素子に層状に形成されたアンテナを有することを特徴とする。
【0024】
本発明にあっては、層状のアンテナを用いることで、二次元電子ガス層に対して有効的かつ均一にマイクロ波が照射される。
【0025】
上記原子核スピン状態検出装置において、前記マイクロ波の周波数は、原子核スピンに共鳴する共鳴周波数であることを特徴とする。
【0026】
本発明にあっては、原子核スピンに共鳴する共鳴周波数のマイクロ波を照射することで、核磁気共鳴が起り、原子核スピンとマイクロ波とが結合してラビ振動が生じるので、原子核スピンの状態を高感度で検出可能になる。
【0027】
上記原子核スピン状態検出装置において、前記制御手段は、ランダウ占有率が2/3の分数量子ホール状態を形成可能な磁場を印加することを特徴とする。
【0028】
本発明にあっては、ランダウ占有率が2/3の分数量子ホール状態を形成可能な磁場を印加することで、偏極状態の電子スピンと無偏極状態の電子スピンが共存し得るナノ領域を確実に形成する。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る原子核スピン状態制御装置によれば、原子核スピンをナノメートルの領域で制御でき、高集積化を図ることができる。また、原子核スピンをナノメートルの領域でコヒーレントに制御でき、量子コンピュータの量子ビットに応用することができる。
【0030】
また、本発明に係る原子核スピン状態検出装置によれば、ナノメートルの領域で制御される原子核スピンの状態を高感度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、一実施の形態における原子核スピン状態制御・検出装置の基本構成を示す断面斜視図である。同図の原子核スピン状態制御・検出装置に用いられる半導体素子は、二次元電子ガス層8を形成可能な層構造となっている。具体的には、本半導体素子は、Siドープn型GaAs基板であるバックゲート10の上に、ノンドープGaAs層(膜厚50nm)とAlAs層(膜厚2nm)、GaAs層(膜厚2nm)の200層から成る短周期超格子層とノンドープAlGaAs層(20nm)とから成るバリア層6を有し、バリア層6の上に膜厚20nmのGaAs層を有し、この上にバリア層5を有し、バリア層5上にTi/Auから成るショットキースプリットゲート3,4(膜厚20nmのTi上に膜厚160nmのAuを積層した構造)と絶縁層2(膜厚800nm)を有し、絶縁層2上にTi/Au(膜厚30nmのTiの上に膜厚970nmのAuを積層した構造)から成るマイクロストリップ線路のアンテナ1を有する構造である。なお、図1は、本原子核スピン状態制御・検出装置を鉛直方向に2分した状態の断面を示している。
【0032】
バリア層5は、AlGaAsを100nm堆積し、その表面に一原子層程度に、4×1012(個/平方センチメートル)程度のSiをドープし、AlGaAsを20nm堆積し、その表面に一原子層程度にSiをドープし、再度AlGaAsを40nm堆積し、GaAsを15nm堆積することにより形成される。バリア層5におけるこれらSiドープ層、膜厚20nmのAlGaAs層、Siドープ層からなる短周期超格子部分を図1ではSiドープ層7と示す。
【0033】
このSiドープ層7とバリア層6との間におけるGaAs層は、二次元電子ガスが形成されるため、二次元電子ガス層8となる。二次元電子ガス層8には、Siドープ層7を通じて電子が供給される。
【0034】
また、ショットキースプリットゲート3,4の間隔は、二次元電子ガス層8が狭窄され、ナノスケールの領域(以下「ナノ領域」という)を形成可能な間隔とし、ここでは例えば、当該間隔を600ナノメートルとする。
【0035】
なお、ショットキースプリットゲート3,4の下に位置する半導体積層構造は、上記の構造に限定されるものではなく、二次元電子ガス層を形成可能であれば他の構造としてもよい。例えば、ノンドープGaAs上にノンドープGaAlAsスペーサ層を設け、スペーサ層上にSiドープAlGaAsを設ける構造にすることで、スペーサ層とノンドープGaAsとの界面に二次元電子ガス層が形成されるようにしてもよい。
【0036】
本原子核スピン状態制御・検出装置は、このように形成された半導体素子のほか、さらに図示していない制御部、検出部を備える。
【0037】
同図の原子核スピン状態制御・検出装置は、制御部により、半導体素子に対して二次元電子ガス層8にランダウ占有率ν=2/3の分数量子ホール状態が形成可能な外部磁場を印加する。例えば、外部磁場は6.5テスラとし、半導体素子を温度47mKの環境下に置く。すると、二次元電子ガス層8には、偏極状態の電子スピンと無偏極状態の電子スピンとが共存可能なランダウ占有率ν=2/3の分数量子ホール状態が形成され、二次元電子ガス層8のショットキースプリットゲート3,4に対応する位置に、空乏化した領域に沿って端チャネルがそれぞれ形成される。
【0038】
なお、本実施の形態では、偏極状態とは、ある領域において、全てのスピンが一定の方向を向いている状態であり、当該領域のスピンの平均が1または−1(例えば、全てのスピンが上向きの状態は1、下向きの状態は−1)である状態のことをいう。無偏極状態とは、ある領域において、スピンが上向きと下向きの状態が共存し、当該領域のスピンの平均が0である状態のことをいう。そのような偏極及び無偏極状態の領域は、ある磁場における磁気長程度(数ナノメートル)を下限とするような大きさを持つと考えられる。
【0039】
続いて、制御部により、バックゲート10に−0.235Vの電圧を、ショットキースプリットゲート3,4に−0.3Vの負バイアスをそれぞれ印加する。すると、図2の平面図に示すように、二次元電子ガス層8では、空乏領域11に沿う端チャネル14と、空乏領域12に沿う端チャネル13との間隔が狭窄され、ナノ領域15が形成される。
【0040】
ナノスケールの範囲は、数〜数百ナノメートルの範囲が望ましい。本実施の形態の条件では、ナノ領域15は、200ナノメートル×200ナノメートル程度の面積に形成される。ただし、ナノスケールはこの値に限定されるものではなく、小さい程よく、例えば数ナノメートルとすることが望ましい。このようなナノ領域15においては、電流密度が局所的に増加することになる。
【0041】
この状態において、制御部により、無偏極状態と偏極状態の電子スピンに跨って電流を流すと、電子スピンが反転し、これに伴って原子核スピンが反転する。このように原子核スピンの方向が揃い、偏極状態となり、原子核スピンの制御が可能となる。
【0042】
すなわち、本原子核スピン状態制御・検出装置は、無偏極状態と偏極状態の電子スピンがナノ領域で共存することを利用して原子核スピンの状態を制御するものである。
【0043】
さらに、制御部により、アンテナ1に対して、半導体素子を構成する元素の原子核スピンに共鳴する周波数のパルス状のマイクロ波を導入する。マイクロ波の周波数と強度は、半導体素子を構成する元素に応じて設定する。ここでは、元素はヒ素とし、マイクロ波の周波数は45MHz、強度は7〜19dBmとする。
【0044】
マイクロ波を導入することで核磁気共鳴が起り、原子核スピンを高精度かつコヒーレントに制御することが可能となる。
【0045】
また、本原子核スピン状態制御・検出装置では、検出部は、図3の平面図に示すように、二次元電子ガス層8のナノ領域15を挟む位置に対向配置された一対の端子31,32を備え、これらの端子間の縦抵抗値を測定する。
【0046】
原子核スピンの方向が揃い、偏極の度合いが進んでいくと縦抵抗値は増大するので、検出部では縦抵抗値を測定することで、原子核スピンの状態を検出することが可能となる。特に核磁気共鳴が起きているときには、パルス1つでも縦抵抗値が大きく変化するので、高感度な検出が可能となる。
【0047】
図4は、縦抵抗値の変化量(Ω)とマイクロ波のパルス幅(μs)との関係を示すグラフである。同図のグラフでは、変化量を縦軸に、パルス幅を横軸にプロットした。縦抵抗値の測定条件は、前述したように磁場を6.5テスラ、温度を47mK、バックゲート電圧Vbを−0.235V、ショットキースプリットゲート電圧Vspを−0.3V、マイクロ波の周波数を45MHz、強度を7,13,16,19dBmとした。
【0048】
このグラフによると、パルス幅を変化させると縦抵抗値の変化量が周期的に変動していくことが分かる。また、パルスの強度を変化させると、振動の周期が変動することが分かる。これは、いわゆるラビ振動であり、原子核スピンとマイクロ波とが結合していることを示している。本原子核スピン状態制御・検出装置は、この原子核スピンとマイクロ波との結合を利用して原子核スピンの制御と検出を行うものである。
【0049】
したがって、本実施の形態によれば、二次元電子ガス層8と一対のショットキースプリットゲート3,4を備えた半導体素子に対して、磁場を印加するとともにショットキースプリットゲート3,4に負バイアスを印加することで、無偏極状態と偏極状態の電子スピンが共存するナノ領域15を二次元電子ガス層8に形成させ、ここに電流を流すことにより原子核のスピン状態を制御する。これにより、集積化を図ることができる。
【0050】
本実施の形態によれば、層状のアンテナ1を用いることで、二次元電子ガス層8に対して有効的かつ均一にマイクロ波を照射することができる。
【0051】
本実施の形態によれば、原子核スピンに共鳴する共鳴周波数のマイクロ波を二次元電子ガス層8に照射することで、核磁気共鳴が起こるので、原子核スピンの状態をコヒーレントに制御することができる。また、核磁気共鳴によって、原子核スピンとマイクロ波とが結合してラビ振動が生じるので、原子核スピンの状態を高感度で検出することができる。
【0052】
本実施の形態によれば、ランダウ占有率ν=2/3の分数量子ホール状態を形成可能な磁場を印加することで、偏極状態の電子スピンと無偏極状態の電子スピンが共存し得るナノ領域を確実に形成することができる。
【0053】
本実施の形態によれば、ナノ領域15を挟む位置に対向対置された一対の端子によってナノ領域15の縦抵抗値を測定することで、原子核スピンの偏極の度合いは縦抵抗値に大きく影響することから、原子核スピンの状態を検出することができる。
【0054】
本実施の形態によれば、核磁気共鳴を起した場合には、原子核スピンの状態を高感度で検出可能なので、一回の検出(シングルショット)で原子核スピンの状態を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】一実施の形態における原子核スピン状態制御・検出装置の構成を示す断面斜視図である。
【図2】上記原子核スピン状態制御・検出装置の二次電子ガス層において2つの端チャネルの間隔が狭窄される様子を示す平面図である。
【図3】縦抵抗を測定するための端子の位置を示す平面図である。
【図4】二次元電子ガス層に照射するマイクロ波のパルス幅と縦抵抗値の変化量との関係を示すグラフである。
【図5】従来の原子核スピンの状態を制御・検出する装置の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…アンテナ,2…絶縁層
3,4…ショットキースプリットゲート
5,6…ノンドープ層
7…Siドープ層,8…二次元電子ガス層
9…ポイントコンタクト領域
10…バックゲート,11,12…空乏領域
13,14…端チャネル,15…ナノ領域
21〜26…端子,27…ホールバー
28…数巻きコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元電子ガス層を形成可能な層構造、前記二次元電子ガス層にナノ領域を形成可能な間隔で前記層構造に配置された一対のショットキースプリットゲートを備えた半導体素子と、
前記半導体素子に磁場を印加し、前記一対のショットキースプリットゲートに負バイアスを印加することで前記二次元電子ガス層に無偏極状態と偏極状態の電子スピンが共存するナノ領域を形成させ、無偏極状態と偏極状態の電子スピンに跨って電流を流すことで原子核のスピン状態を偏極させる制御手段と、
を有することを特徴とする原子核スピン状態制御装置。
【請求項2】
前記二次元電子ガス層に対してマイクロ波を照射するために前記半導体素子に層状に形成されたアンテナを有することを特徴とする請求項1記載の原子核スピン状態制御装置。
【請求項3】
前記マイクロ波の周波数を原子核スピンに共鳴する共鳴周波数としたことを特徴とする請求項2記載の原子核スピン状態制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記二次元電子ガス層にランダウ占有率が2/3の分数量子ホール状態を形成可能な磁場を印加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の原子核スピン状態制御装置。
【請求項5】
二次元電子ガス層を形成可能な層構造、前記二次元電子ガス層にナノ領域を形成可能な間隔で前記層構造に配置された一対のショットキースプリットゲートを備えた半導体素子と、
前記半導体素子に磁場を印加し、前記一対のショットキースプリットゲートに負バイアスを印加することで前記二次元電子ガス層に無偏極状態と偏極状態の電子スピンが共存するナノ領域を形成させ、無偏極状態と偏極状態の電子スピンに跨って電流を流すことで原子核のスピン状態を偏極させる制御手段と、
原子核スピンの状態を検出する検出手段と、
を有することを特徴とする原子核スピン状態検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記ナノ領域を挟む位置に対向して配置された一対の端子によって抵抗値を測定することを特徴とする請求項5記載の原子核スピン状態検出装置。
【請求項7】
前記二次元電子ガス層に対してマイクロ波を照射するために前記半導体素子に層状に形成されたアンテナを有することを特徴とする請求項5又は6記載の原子核スピン状態検出装置。
【請求項8】
前記マイクロ波の周波数を原子核スピンに共鳴する共鳴周波数としたことを特徴とする請求項7記載の原子核スピン状態検出装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記二次元電子ガス層にランダウ占有率が2/3の分数量子ホール状態を形成可能な磁場を印加することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の原子核スピン状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−66603(P2006−66603A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246752(P2004−246752)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】