説明

反転トーン像を形成するためのハードマスクプロセス

本発明は、デバイス上に反転トーン像を形成するための方法であって、a)基材上に吸光性下層を形成し; b)下層の上にポジ型フォトレジストの被膜を形成し; c)フォトレジストパターンを形成し; d)この第一のフォトレジストパターンを硬化化合物で処理し、それによって硬化したフォトレジストパターンを形成し; e)硬化したフォトレジストパターンの上に、ケイ素コーティング組成物からケイ素被膜を形成し; f)ケイ素被膜をドライエッチングし、ケイ素被膜がフォトレジストパターンと概ね同じ厚さとなるまで、ケイ素被膜を除去し、及びg)ドライエッチングを行ってフォトレジスト及び下層を除去し、それによってフォトレジストパターンが元々在った位置の下にトレンチを形成することを含む、前記方法に関する。更に本発明は、上記方法の製造物及び上記方法を用いて製造される微細電子デバイスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転トーンハードマスク像形成プロセスを用いてデバイス上に微細パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト組成物は、コンピュータチップ及び集積回路の製造などの微細化された電子部品の製造のためのマイクロリソグラフィプロセスに使用されている。これらのプロセスでは、一般的に、先ずフォトレジスト組成物のフィルムの薄い被膜が、集積回路の製造に使用されるケイ素ウェハなどの基材上に供される。次いで、この被覆された基材はベークしてフォトレジスト組成物中の溶剤を蒸発させて、被膜を基材上に定着させる。基材上にコーティングされたフォトレジストは次に放射線による像様露光に付される。
【0003】
放射線露光は、被覆された基材の露光された領域において化学的な変化を引き起こす。可視光線、紫外線(UV)、電子ビーム、極端紫外線(euv)及びX線放射エネルギーが、現在マイクロリソグラフィプロセスに常用されている放射線種である。この像様露光の後、被覆された基材は場合によりベークし、次いで現像剤溶液で処理して、フォトレジストの放射線露光された領域(ポジ型フォトレジスト)または未露光の領域(ネガ型フォトレジスト)のいずれかを溶解、除去する。
【0004】
ポジ型フォトレジストは、放射線に像様露光されると、放射線に曝された領域のフォトレジスト組成物が現像剤溶液中により溶けやすくなり、他方、未露光の領域は現像剤溶液に比較的不溶性のまま残る。それ故、露光されたポジ型フォトレジストを現像剤で処理すると、被膜の露光された領域が除去され、そしてフォトレジスト被膜にポジ像が形成される。この場合もまた、下にある表面の所望の部分が裸出される。
【0005】
半ミクロン未満の幾何形状が要求される場合には、約100nm〜約300nmの短波長に感度を示すフォトレジストがしばしば使用される。特に好ましいものは、非芳香族系ポリマー、光酸発生剤、場合により溶解防止剤、塩基クエンチャー及び溶剤を含む、200nm未満、例えば193nm及び157nmに感度を示す深紫外線(deep uv)フォトレジストである。四分の一ミクロン未満の幾何形状を持つ像をパターン化するためには、高解像度の化学増幅型深紫外線(100〜300nm)ポジ型フォトレジストを利用できる。
【0006】
フォトレジストは、基材上に狭いマスク化された空間を形成するのにも使用され、この場合、この基材は更にエッチングされて基材にトレンチを形成する。ポジ型フォトレジストを用いたハードマスクパターン化は、基材上に高解像度のパターンを与えることが判明している。しかし、ポジ型フォトレジストを用いて基材中に非常に狭くかつ深いトレンチを提供する必要がある。
【0007】
本発明は、反転トーンパターンを基材上に形成するデバイス上でのパターン形成方法であって、ハードマスクテクノロジーと共に、硬化化合物で“凍結”(frozen)されたポジ型フォトレジストパターンを使用する方法に関する。フォトレジストの凍結は、幅広い範囲のハードマスク材料を使用することを可能にする。なぜならば、ハードマスクコーティング組成物の溶剤は、凍結されたフォトレジストを溶解しない一方で、これは未凍結のフォトレジストを溶解し、それ故不相溶性であるからである。ハードマスクテクノロジーは、非常に深くかつ狭いトレンチを基材に形成することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0220431号明細書
【特許文献2】米国特許第6,114,085号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0137826号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0128410号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0156148号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0209200号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0028408号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0023156号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/0045125号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0067441号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0110089号明細書
【特許文献12】米国特許出願第11/872,962号明細書
【特許文献13】米国特許出願第12/060,307号明細書
【特許文献14】米国特許出願第12/115,776号明細書
【特許文献15】米国特許第6,686,124号明細書
【特許文献16】米国特許第6,737,492号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2003/0204035号明細書
【特許文献18】米国特許第4,491,628号明細書
【特許文献19】米国特許第5,350,660号明細書
【特許文献20】米国特許第5,843,624号明細書
【特許文献21】米国特許第6,866,984号明細書
【特許文献22】米国特許第6,447,980号明細書
【特許文献23】米国特許第6,723,488号明細書
【特許文献24】米国特許第6,790,587号明細書
【特許文献25】米国特許第6,849,377号明細書
【特許文献26】米国特許第6,818,258号明細書
【特許文献27】米国特許第6,916,590号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2009/0042148号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2007/0015084号明細書
【特許文献30】米国特許出願第12/061,061号明細書
【特許文献31】米国特許出願第12/061,111号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2007/0298349号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2008/0008954号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2005/0277058号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2008/0196626号明細書
【特許文献36】国際公開第2006/065321号パンフレット
【発明の概要】
【0009】
本発明は、デバイス上に反転トーン像を形成する方法であって、
a)基材上に吸光性下層を形成し;
b)下層上にポジ型フォトレジストの被膜を形成し;
c)ポジ型フォトレジストを像様露光及び現像し、それによってフォトレジストパターンを形成し;
d) フォトレジストパターンを硬化化合物で処理し、それによって硬化されたフォトレジストパターンを形成し;
e) 硬化されたフォトレジストパターン上に、ケイ素コーティング組成物からケイ素被膜を形成し、ここでこのケイ素被膜は、フォトレジストパターンよりも厚く、かつケイ素コーティング組成物は、ケイ素ポリマー及び有機コーティング溶剤を含み;
f) ケイ素被膜をドライエッチングして、ケイ素被膜がフォトレジストパターンと概ね同じ厚さを有するようになるまで、ケイ素被膜を除去し; そして
g) ドライエッチングを行いフォトレジスト及び下層を除去し、それによってフォトレジストパターンが元々在った位置の下にトレンチを形成する、
ことを含む、前記方法に関する。
【0010】
前記硬化化合物は、少なくとも二つのアミノ(NH)基を含むことができる。
【0011】
前記硬化化合物は、以下の構造(I)を有することができる。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、WはC〜Cアルキレンであり、そしてnは1〜3である。
【0014】
本発明は更に、上記方法の製造物、及び上記方法を用いて製造された微細電子デバイスにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、下層被膜(1)(層1)を有する基材(0)を示す。
【図2】図2は、下層(1)及びフォトレジスト(2)(層2)の被膜を有する基材(0)を示す。
【図3】図3は、下層(1)及び基材(0)上の像形成されたフォトレジスト(2)を示す。
【図4】図4は、下層(1)及び基材(0)上の凍結されたフォトレジストパターン(2A)を示す。
【図5】図5は、凍結されたフォトレジストパターン(2A)、下層(1)及び基材(0)上にコーティングされたケイ素層(3)(層3)を示す。
【図6】図6は、下層(1)及び基材(0)上で、凍結されたフォトレジストパターン(2A)とおおよそ同じ厚さを有するまでエッチバックされたケイ素層(3)を示す。
【図7】図7は、ケイ素層(3)、下層(1)及び基材(0)を有する、フォトレジストパターン除去後の反転トーンハードマスクを示す。
【図8】図8は、ケイ素層(3)の像を下層(1)に転写して、基材(0)をエッチングするための反転トーンハードマスクを形成した後の反転トーンハードマスクを示し、これは、使用されたポジ型フォトレジストパターンが在った所に、ケイ素層(3)及び下層(1)被膜に形成された深いトレンチ(4)を有する。
【図9】図9は、窒素ガス圧力調節器(5)、流量計(6)、窒素ガスマニホルド(7)、バブラー(8)、弁(9)、蓋(11)付きチャンバ(10)、ホットプレート(12)、及び排気管(13)を含む、フォトレジスト硬化チャンバの設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ポジ型フォトレジストを凍結(freezing)する方法を含む反転トーン三層像形成プロセスを用いて、電子デバイス、特に微細電子デバイス上に微細パターンを像形成するための発明的方法に関する。また本発明は、該発明的方法を用いて製造された製造物、並びに該発明的方法から製造された微細電子デバイスにも関する。
【0017】
具体的には、本発明は、図1〜8を参照すると、
a)基材(0)上に吸光性下層(1)を形成し;
b)下層(1)の上にポジ型フォトレジスト(2)の被膜を形成し;
c)ポジ型フォトレジスト(2)を像様露光及び現像し、それによってフォトレジストパターンを形成し;
d)前記第一のフォトレジストパターンを硬化化合物で処理し、それによって硬化されたフォトレジストパターン(2A)(2凍結)を形成し;
e)硬化されたフォトレジストパターン(2A)の上に、ケイ素コーティング組成物からケイ素被膜(3)を形成し、ここでこのケイ素被膜はフォトレジストパターンよりも厚く、かつ前記ケイ素コーティング組成物は、ケイ素ポリマー及び有機コーティング溶剤を含み;
f)ケイ素被膜(3)をドライエッチングして、ケイ素被膜が、フォトレジストパターン(2A)と概ね同じ厚さを有するまでケイ素被膜を除去し; 及び
g)ドライエッチングを行ってフォトレジスト及び下層(1)を除去し、それによってフォトレジストパターン(2A)が元々在った位置の下に深いトレンチ(4)を形成する、
ことを含む、デバイス上に反転トーン像を形成する方法に関する。
【0018】
図1〜8は、該反転トーンハードマスクを形成する本発明方法を簡略して説明するものである。図1に示すように、吸光性下層被膜(1)の比較的厚い層を基材(0)上に形成する。次いで、図2に示すように、この下層(1)にポジ型フォトレジスト層(2)をコーティングする。図3に示すように、像様露光及び現像する工程を含んでフォトレジスト(2)パターンを形成して、このフォトレジスト(2)をパターン化する。次いで、図4に示すように、流動を防ぐために硬化化合物を用いてフォトレジスト(2)パターンを凍結または架橋する(2A)(2凍結)。一つの態様では、硬化化合物は少なくとも二つのアミノ(NH)基を含んでもよい。図5に示すように、凍結プロセスの後、ケイ素組成物からケイ素層(3)を形成して、パターン化された領域にフォトレジストパターン(2A)のフィルム厚よりも厚いフィルム厚を得る。次いで、ケイ素層(3)を、ドライエッチングプロセスを用いてエッチバックして、ケイ素層(3)を、フォトレジスト(2A)パターンの厚さと概ね同じ厚さに減らす(図6)、すなわちフォトレジスト表面は今や目に見える状態である。他のドライエッチングプロセスを用いてフォトレジストパターン(2A)を除去してケイ素被膜(3)のパターンを形成することによって反転トーンパターンを形成し、これが、有機下層(1)の更なるエッチングのためのケイ素ハードマスクを形成する(図7)。次いで更に、下層(1)は、パターン化されたケイ素ハードマスクを使用してドライエッチングプロセスによってパターン化することができ(図8)、そうして基材上にポジ型フォトレジストパターンに対して深い反転トーンパターンが形成される。使用したポジ型フォトレジストパターンが在ったところの下に深いトレンチ(4)がケイ素(3)/下層(1)被膜に形成される、すなわち図8に示されるように反転トーンハードマスクが形成される。この基材は、このケイ素/下層パターンをハードマスクとして用いて更にエッチングして、基材中に所望の高解像度のトレンチを形成する。フォトレジスト及び下層は、別々のドライエッチング工程でまたは一つの連続的なドライエッチング工程でエッチングすることができる。なぜならば、フォトレジスト及び下層のどちらも、酸素及び/または水素を含むガスでエッチング可能な高炭素質の有機材料であるからである。
【0019】
下層が表面上に形成される基材は、半導体工業で典型的に使用されるもののうちの任意のものであることができる。適当な基材には、限定はされないが、ケイ素、金属表面で被覆されたケイ素基材、銅で被覆されたケイ素ウェハ、銅、アルミニウム、ポリマー性樹脂、二酸化ケイ素、金属、ドープした二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、石英、フューズドシリカ、サファイヤ、有機ポリマー、ホウケイ酸ガラス、タンタル、ポリシリコン、セラミック、アルミニウム/銅混合物; ヒ化ガリウム及び他のこのようなIII/V族化合物などが挙げられる。基材は、上記の材料から作製された任意数の層を含むことができる。被膜は、無機、有機またはこれらの混合物であることができる。この基材は、集積回路またはMEMSデバイスに有用なものであることができる。
【0020】
基材上に形成される下層被膜(図1〜8の層(1))は典型的には任意の底面反射防止コーティング組成物である。底面反射防止被膜または下層は、有機系のスピンコート可能なものであることができるか、またはこれは化学蒸着によって堆積することができる(例えば非晶質炭素)。典型的には、有機系のスピンコート可能な下層組成物は、吸光性または非吸光性であることができる下層ポリマーと、有機溶剤とを含む。該組成物は、熱酸発生剤、染料、架橋剤、光酸発生剤、界面活性剤、第二の有機ポリマー、及びこれらの混合物から選択される添加剤を更に含むことができる。適当な下層の例には、典型的な底面反射防止膜、例えば以下の米国特許出願及び特許、すなわちスチレンポリマー(米国特許出願公開第2003/0220431号明細書(特許文献1)、米国特許第6,114,085号明細書(特許文献2));アクリレートポリマー(米国特許出願公開第2002/0137826号明細書(特許文献3)、米国特許出願公開第2002/0128410号明細書(特許文献4)、米国特許出願公開第2002/0156148号明細書(特許文献5); ポリエステル(米国特許出願公開第2004/0209200号明細書(特許文献6)、米国特許出願公開第2002/0028408号明細書(特許文献7)); ポリウレタン(米国特許出願公開第2004/0023156号明細書(特許文献8)); 非芳香族系の色素を有するもの(米国特許出願公開第2002/0045125号明細書(特許文献9)、米国特許出願公開第2004/0067441号明細書(特許文献10)); 及び分子型コーティング(米国特許出願公開第2004/0110089号明細書(特許文献11))に記載のものなどが挙げられる。なおこれらの特許文献はその内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。下層の厚さは、下層の上にコーティングされるフォトレジストの厚さよりも厚い。該下層の一つの態様では、下層は80重量%を超える炭素含有率を有する。このような高炭素含有率コーティングは、2008年10月16日に出願されたシリアル番号第11/872,962号明細書(特許文献12)、2008年4月1日に出願されたシリアル番号第12/060,307号明細書(特許文献13)、2008年5月6日に出願されたシリアル番号第12/115,776号明細書(特許文献14); 並びに米国特許第6,686,124号明細書(特許文献15)、米国特許第6,737,492号明細書(特許文献16)、及び米国特許出願公開第2003/0204035号明細書(特許文献17)に記載されている。なおこれらの特許文献の内容は、その内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。
【0021】
下層ポリマーの一つの態様では、該ポリマーは、ポリマーの主鎖から懸垂した少なくとも二つの縮合環の発色団、例えばナフチル及び/またはアントラシル基を有するアクリレート系ポリマーであることができる。このモノマー性単位は、9−アントラセニルメチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アセトキシエチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及びこれらの等価物などのモノマーから誘導し得る。一例は、ポリ(9−アントラセニルメチルメタクリレート/2−ヒドロキシプロピルメタクリレート/アセトキシエチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート)である。
【0022】
下層ポリマーの他の態様の一つでは、ポリマーは、ポリマーの主鎖中に少なくとも三つの縮合環を含むことができる。縮合芳香族単位は、約3〜約8個の範囲で芳香族環を有することができる。下層ポリマーは、ポリマーの主鎖中に三つもしくはそれ以上の縮合芳香族環を有する少なくとも一つの単位、及びポリマーの主鎖中に脂肪族部分を有する少なくとも一つの単位を含む。他のコモノマー性単位、例えば置換されているかもしくは置換されていないフェニル、または置換されているかもしくは置換されていないナフチルが存在してもよい。一つの態様では、該ポリマーは、フェニルまたは単環の芳香族部分を含まなくともよい。縮合芳香族環は、被膜に吸光性を供するものであり、吸光性発色団である。該ポリマーの縮合芳香族環は、縮合環構造、例えば構造1〜6に例示される単位及びそれらの異性体を形成するのに共通の結合を有する、置換されているかもしくは置換されていない6員芳香族環を含むことができる。
【0023】
【化2】

【0024】
縮合環は、アントラセン(1)、フェナントレン、ピレン(3)、フルオランテン、コロネン(6)、トリフェニレン及びこれらの置換誘導体によって例示することができる。
【0025】
縮合環は、芳香族構造中の任意の部位において下層ポリマーの主鎖を形成してよく、そして結合部位はポリマー内で様々であることができる。縮合環構造は、二つを超える結合点を有して、分枝状オリゴマーまたは分枝状ポリマーを形成することができる。下層ポリマーの一つの態様では、縮合した芳香族環の数は3〜8の範囲であることができ、該ポリマーの他の態様では、これは4つもしくはそれ以上の縮合した芳香族環を含み、より具体的には該ポリマーは、構造3に示すようにピレンを含むことができる。縮合した芳香族環は、構造7に例示するように、一つまたはそれ以上のヘテロ芳香族環を含んでもよく、ここで、ヘテロ原子は窒素または硫黄であることができる。
【0026】
【化3】

【0027】
下層ポリマーの一つの態様では、ポリマーは、上述の縮合芳香族単位を含み、そして更に、発色団を孤立させるために、縮合芳香族単位は脂肪族炭素部分に接続される。該ポリマーの縮合芳香族環は、置換されていないか、または一つまたはそれ以上の有機置換基、例えばアルキル、アルキルアリール、エーテル、ハロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、アルキルカーボネート、アルキルアルデヒド、ケトンなどによって置換されていてもよい。置換基の更なる例は、−CH−OH、−CHCl、−CHBr、−CHOアルキル、−CH−O−C=O(アルキル)、−CH−O−C=O(O−アルキル)、−CH(アルキル)−OH、−CH(アルキル)−Cl、−CH(アルキル)−Br、−CH(アルキル)−O−アルキル、−CH(アルキル)−O−C=O−アルキル、−CH(アルキル)−O−C=O(O−アルキル)、−HC=O、−アルキル−COH、アルキル−C=O(O−アルキル)、−アルキル−OH、−アルキル−ハロ、−アルキル−O−C=O(アルキル)、−アルキル−O−C=O(O−アルキル)、アルキル−HC=Oである。該ポリマーの一つの態様では、縮合芳香族環は、窒素含有の側基部分を含まない。芳香族環上の置換基は、コーティング溶剤中へのポリマーの溶解性を助ける場合がある。縮合芳香族構造上の置換基の幾つかは、硬化の間に熱分解もされ、硬化した被膜中に残留しないことができ、更にまた、エッチングプロセスに有用な高い炭素含有フィルムをなおも与え得る。縮合芳香族基は、より一般的には、構造1’〜6’によって示され、ここでRは、有機置換基、例えば水素、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキルアリール、アルキル、アルキルアリール、カルボン酸、カルボン酸のエステルなどであり、そしてnは環上の置換基の数である。置換基数nは1〜12の範囲であることができる。典型的には、nは1〜5の範囲であることができ、ここでRは、水素を除き、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリール、アルキルアリール、エーテル、ハロアルキル、アルコキシ、カルボン酸、カルボン酸のエステル、アルキルカーボネート、アルキルアルデヒド、ケトンなどの基から独立して選択される置換基である。置換基の更に別の例は、−CH−OH、−CHCl、−CHBr、−CHOアルキル、−CH−O−C=O(アルキル)、−CH−O−C=O(O−アルキル)、−CH(アルキル)−OH、−CH(アルキル)−Cl、−CH(アルキル)−Br、−CH(アルキル)−O−アルキル、−CH(アルキル)−O−C=O−アルキル、−CH(アルキル)−O−C=O(O−アルキル)、−HC=O、−アルキル−COH、アルキル−C=O(O−アルキル)、−アルキル−OH、−アルキル−ハロ、−アルキル−O−C=O(アルキル)、−アルキル−O−C=O(O−アルキル)、アルキル−HC=Oである。
【0028】
【化4】

【0029】
該ポリマーは、本明細書に記載の二種以上の縮合芳香族構造を含んでいてもよい。
【0030】
上記の縮合芳香族単位に加えて、反射防止膜の下層ポリマーは、更に、その主鎖中に、本質的に脂肪族の部分を有する少なくとも一つの単位を含み、そしてこの部分は、主として炭素/水素非芳香族系部分であるアルキレンなどの、ポリマーの主鎖を形成する非芳香族構造を有する任意のものである。
【0031】
ポリマーは、それに脂肪族主鎖しか形成しない少なくとも一つの単位を含むことができ、このポリマーは、−(A)−及び−(B)−の単位を含むことによって表すことができ、この際、Aは上記の任意の縮合芳香族単位であり、これは線状もしくは分枝状であることができ、Bは脂肪族主鎖しか有さない。Bは、更に、側基として、置換されているかもしくは置換されていないアリールもしくはアラルキル基を有してもよいか、または連結して分枝状ポリマーを形成してもよい。ポリマー中のアルキレン脂肪族部分は、線状、分枝状、環状またはこれらの混合物である部分から選択してよい。複数種のアルキレン単位がポリマー中に存在してよい。アルキレン主鎖単位は、幾つかの側基を有してよく、例えばヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキル、アルケン、アルケンアルキル、アルキルアルキン、アルキン、アルコキシ、アリール、アルキルアリール、アラルキルエステル、エーテル、カーボネート、ハロゲン(例えばCl、Br)などである。側基はポリマーに有用な性質を与え得る。一部の側基は、硬化中に熱的に脱離され高い炭素含有率を有するポリマーを与える。これは、例えば、架橋または脱離を介して不飽和結合を形成することによって行われる。ヒドロキシアダマンチレン、ヒドロキシシクロヘキシレン、オレフィン性環状脂肪族部分などのアルキレン基がポリマーの主鎖中に存在してもよい。これらの基は、硬化工程中のポリマーの架橋のための架橋部位を与えることもできる。アルキレン部分上の側基、例えば上述のものは、有機溶剤、例えば該組成物のコーティング溶剤やエッジビード除去に有用な溶剤中へのポリマーの溶解性を増強することができる。脂肪族コモノマー性単位のより具体的な基は、アダマンチレン、ジシクロペンチレン、及びヒドロキシアダマンチレンによって例示される。異なるまたは同一のアルキレン基が一緒に連結してブロック単位を形成してもよく、このブロック単位は、次に、縮合芳香族環を含む単位に結合することができる。幾つかの場合には、ブロックコポリマーを形成することができ、幾つかの場合にはランダムコポリマーを形成することができ、他の場合には交互コポリマーを形成し得る。コポリマーは、少なくとも二つの異なる脂肪族コモノマー性単位を含んでもよい。コポリマーは、少なくとも二つの異なる縮合芳香族部分を含んでもよい。一つの態様では、該ポリマーは、少なくとも二つの異なる脂肪族コモノマー性単位及び少なくとも二つの異なる縮合芳香族部分を含んでもよい。本発明の他の態様では、該ポリマーは、少なくとも一つの縮合芳香族単位、及び芳香族類を含まない脂肪族単位(複数可)を含む。脂肪族基を有する単位の一つの態様では、シクロアルキレン基は、ビスシクロアルキレン基、トリスシクロアルキレン基、テトラシクロアルキレン基から選択され、ここでポリマー主鎖への結合は環状構造を通して行われ、そしてこれらの環状構造は単環式、二環式または三環式構造のいずれかを形成する。第二のポリマーの他の態様では、該ポリマーは、主鎖中に、縮合芳香族環を有する単位及び脂肪族部分を有する単位を含み、ここで脂肪族部分は、置換されていないアルキレンと置換されたアルキレンとの混合物であり、ここで置換基は、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、アルキルエーテル、アルコキシアルキル、アルキルアリール、エーテル、ハロアルキル、アルキルカーボネート、アルキルアルデヒド、ケトン及びこれらの混合物であることができる。
【0032】
下層ポリマーの他の態様では、これは、ポリマーの主鎖中の3つもしくはそれ以上の縮合芳香族環を有する少なくとも一つの単位、ポリマーの主鎖中の脂肪族部分を有する少なくとも一つの単位、及び置換されたフェニル、置換されていないフェニル、置換されていないビフェニル、置換されたビフェニル、置換されたナフチル及び置換されていないナフチルから選択される基を含む少なくとも一つの単位を含む。3つもしくはそれ以上の芳香族単位を有する縮合芳香族環及び脂肪族部分は本明細書に記載のものである。該ポリマーは、一つの態様では、窒素を含む側基部分は含まないでもよい。フェニル、ビフェニル及びナフチル上の置換基は、極性溶剤、例えば乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)など中へのポリマーの溶解性を高める少なくとも一つの極性基であることができる。置換基の例は、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ハライドなどである。フェニル、ビフェニルまたはナフチル基は主鎖の一部を形成するか、あるいは直接かまたは連結基、例えばアダマンチル基、エチレン基などを介してポリマー主鎖に結合することができ、ここでモノマー性単位の例は、ヒドロキシスチレン、フェノール、ナフトール、及びヒドロキシナフチレンなどのモノマーから誘導され得る。ポリマー主鎖中にフェノール及び/またはナフトール部分を組み入れることが、高い炭素含有率を有するフィルムにとって好ましい。置換されたフェニレン、置換されていないフェニレン、置換されていないビフェニレン、置換されたビフェニレン、置換されたナフチレンまたは置換されていないナフチレンの量は、ポリマー中、約5モル%〜約50モル%の範囲であるか、またはポリマー中、約20モル%〜約45モル%の範囲であることができる。フェノール及び/またはナフトール基を更に含む本発明のポリマーを含む組成物は、組成物のコーティング溶剤がPGMEAかまたはPGMEAとPGMEとの混合物である場合に有用である。フェノール及び/またはナフトール基を更に含む本発明のポリマーを含む組成物は、過剰の組成物をエッジビードリムーバで除去するべき場合、特にエッジビードリムーバがPGMEAかまたはPGMEAとPGMEとの混合物を含む場合にも、有用である。乳酸エチルを含む他のエッジビードリムーバも使用し得る。一つの態様では、該組成物は、ポリマーの主鎖中の3つもしくはそれ以上の縮合芳香族環を有する少なくとも一つの単位、ポリマーの主鎖中の脂肪族部分を有する少なくとも一つの単位、及びフェノール、ナフトール及びこれらの混合物から選択される基を含む少なくとも一つの単位を含むポリマーを含む。縮合芳香族部分としてピレンを使用してもよい。該組成物は、更に、PGMEAを含む溶剤を含み得る。本明細書に記載の他の添加剤も、該組成物中に使用してもよい。
【0033】
下層ポリマーの重量平均分子量は、約1,000〜約50,000または約1300〜約20,000の範囲であることができる。該ポリマーの炭素含有率は、元素分析により測定して80%を超え、好ましくは85%超であることができる。反射防止コーティング組成物の炭素含有率は、元素分析によって測定して、80重量%を超えるかまたは85重量%を超える。高炭素材料は、下層のより高速なドライエッチングを可能とし、それ故、基材上により厚いハードマスク層を残すことを可能にする。下層として機能し得る他の既知のタイプの吸光性反射防止コーティング材も使用できる。80重量%を超える炭素含有率を有する吸光性反射防止コーティング材が有用である。
【0034】
下層は、約150nm〜約800nmの範囲の被膜を有することができる。正確な厚さは、希望のエッチングプロセスのタイプ及び下層コーティングの組成によって決まる。下層の屈折率(n)は、典型的には、その上にコーティングされるフォトレジストの範囲内であり、ドライリソグラフィ及び液浸リソグラフィ用に、特に193nm及び248nm用には約1.6〜約1.85の範囲であることができる。吸光値(k)は、下層のフィルム厚に応じて約0.1〜約0.3の範囲であり、典型的には低吸光材料と称される。n及びk値は、エリプソメータ、例えばJ.A.Woollam WVASE VU−32TMエリプソメータを用いて計算することができる。k及びnの最適範囲の正確な値は、使用する露光波長及び用途のタイプに依存する。
【0035】
有機系のスピンコート可能な反射防止下層コーティング組成物は、当業者には周知の技術、例えばディップコート法、スピンコート法またはスプレーコート法を用いて基材にコーティングされる。被膜は、残留溶剤を除去し架橋を誘発して、そうして反射防止膜を不溶化することにより、反射防止膜と、その上にコーティングするべき層との間の相互混合を防ぐのに十分な長さの時間、ホットプレートまたは熱対流炉で加熱される。好ましい温度範囲は約90℃〜約280℃である。
【0036】
下層の上にはポジ型フォトレジスト層(図2〜6の層2)が形成され、そして使用される特定のフォトレジストは、フォトレジスト中の光活性化合物及び反射防止下層コーティングが像形成プロセスに使用される露光波長を吸収することを条件に、半導体工業で使用される任意のタイプのものであることができる。一般的に、ネガ型フォトレジストよりもポジ型フォトレジストの方が好まれる。というのも、ポジ型フォトレジストの方が、より高い解像パターンを供し、またより一般に入手可能であるからである。
【0037】
本発明は、深紫外線(deep ultraviolet)露光に特に適している。典型的には化学増幅型フォトレジストが使用される。これらはポジ型フォトレジストであることができる。現在まで、微細化に大きな進展をもたらした幾つかの主要な放射線露光技術があり、これらは248nm、193nm、157nm及び13.5nmの放射線である。248nm用のフォトレジストは、典型的には、置換されたポリヒドロキシスチレン及びそれのコポリマー/オニウム塩、例えば米国特許第4,491,628号明細書(特許文献18)及び米国特許第5,350,660号明細書(特許文献19)に記載のものなどに基づく。他方、200nm未満の露光用のフォトレジストは、芳香族類がこの波長で不透明なため非芳香族系のポリマーを必要とする。米国特許第5,843,624号明細書(特許文献20)及び米国特許6,866,984号明細書(特許文献21)は193nm露光用に有用なフォトレジストを開示している。一般的に、200nm未満の露光用のフォトレジストには、脂肪環式炭化水素を含むポリマーが使用される。脂肪環式炭化水素は、多くの理由からポリマーに組み入れられる。主には、これらは、耐エッチング性を高める比較的高い炭素:水素比を有し、またこれらは低波長で透明性も供し、更にこれらは比較的高いガラス転移温度を有するからである。米国特許第5,843,624号明細書(特許文献20)は、無水マレイン酸と不飽和環状モノマーとの遊離基重合によって得られるフォトレジスト用ポリマーを開示している。既知のタイプの193nmフォトレジストの任意のものを使用でき、例えば米国特許第6,447,980号明細書(特許文献22)及び米国特許第6,723,488号明細書(特許文献23)に記載のものなどがある。これらの特許文献の内容は本明細書に掲載されたものとする。
【0038】
157nmに感度を示しそしてフルオロアルコール側基を有するフッ素化されたポリマーに基づく二つの基本的な部類のフォトレジストが、この波長で実質的に透明であることが知られている。一方の部類の157nmフルオロアルコールフォトレジストは、フッ素化ノルボルネン類などの基を含むポリマーから誘導され、そして金属触媒重合またはラジカル重合のいずれかを用いて、単独重合されるかまたは他の透明モノマー、例えばテトラフルオロエチレン(米国特許第6,790,587号明細書(特許文献24)及び米国特許第6,849,377号明細書(特許文献25))と共重合される。一般的に、これらの材料はより高い吸光性を与えるが、それらの高い脂肪環式類含有量の故に良好な耐プラズマエッチング性を有する。より最近になって、別の部類の157nmフルオロアルコールポリマーが開示され、そのポリマー主鎖は、非対称ジエン、例えば1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン(米国特許第6,818,258号明細書((特許文献26))のシクロ重合またはフルオロジエンとオレフィンとの共重合(米国特許第6,916,590号明細書(特許文献27))から誘導される。これらの材料は157nmで許容可能な吸光度を与えるが、上記のフルオロ−ノルボルネンポリマーを比べてそれらの低い脂肪環式類含有量の故に、耐プラズマエッチング性に劣る。これらの二つの部類のポリマーは、最初のポリマー種の高い耐エッチング性と、後のポリマー種の157nmにおける高い透明性との間のバランスを図るためにしばしばブレンドすることができる。13.5nmの極端紫外線(EUV)を吸収するフォトレジストも有用であり、当技術分野において既知である。また、電子ビームフォトレジストも有用である。365nm及び436nmに感度のあるフォトレジストも使用できる。現時点では、193nm及びEUVフォトレジストが好ましい。
【0039】
フォトレジスト組成物の固形成分は、フォトレジストの固形成分を溶解する溶剤または複数種の溶剤の混合物と混合する。フォトレジスト用の適当な溶剤には、例えば、グリコールエーテル誘導体、例えばエチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、またはジエチレングリコールジメチルエーテル; グリコールエーテルエステル誘導体、例えばエチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート; カルボキシレート類、例えばエチルアセテート、n−ブチルアセテート及びアミルアセテート; 二塩基性酸のカルボキシレート類、例えばジエチルオキシレート及びジエチルマロネート; グリコール類のジカルボキシレート類、例えばエチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールジアセテート; 及びヒドロキシカルボキシレート類、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸エチル、及び3−ヒドロキシプロピオン酸エチル; ケトンエステル類、例えばピルビン酸メチルまたはピルビン酸エチル; アルコキシカルボン酸エステル類、例えばメチル3−メトキシプロピオネート、エチル3−エトキシプロピオネート、エチル2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオネート、またはメチルエトキシプロピオネート; ケトン誘導体、例えばメチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたは2−ヘプタノン; ケトンエーテル誘導体、例えばジアセトンアルコールメチルエーテル; ケトンアルコール誘導体、例えばアセトールまたはジアセトンアルコール; ケタール類またはアセタール類、例えば1,3ジオキソラン及びジエトキシプロパン; ラクトン類、例えばブチロラクトン; アミド誘導体、例えばジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド、アニソール、及びこれらの混合物などが挙げられる。混合物としてまたは単独で使用される、使用できるフォトレジスト用の典型的な溶剤は、限定はされないが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、及び乳酸エチル(EL)、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びガンマブチロラクトンであるが、PGME、PGMEA及びELまたはこれらの混合物が好ましい。毒性が低く、コーティング性及び溶解性が良好な溶剤が一般的に好ましい。
【0040】
該方法の一つの態様では、193nmに感度のあるフォトレジストが使用される。フォトレジストは、ポリマー、光酸発生剤、及び溶剤を含む。ポリマーは、水性アルカリ性現像剤中に不溶性の(メタ)アクリレートポリマーである。このようなポリマーは、中でも、脂肪環式(メタ)アクリレート、メバロノラクトンメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−アダマンチルメタクリレート(AdMA)、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート(MAdA)、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート(EAdMA)、3,5−ジメチル−7−ヒドロキシアダマンチルメタクリレート(DMHAdMA)、イソアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン(HAdMA; 例えば3位にヒドロキシ)、ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート(HADA; 例えば3位にヒドロキシ)、エチルシクロペンチルアクリレート(ECPA)、エチルシクロペンチルメタクリレート(ECPMA)、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート(TCDMA)、3,5−ジヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン(DHAdMA)、β−メタクリルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−またはβ−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート(α−またはβ−GBLMAのいずれか)、5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(MNBL)、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(ANBL)、イソブチルメタクリレート(IBMA)、α−ガンマ−ブチロラクトンアクリレート(α−GBLA)、スピロラクトン(メタ)アクリレート、オキシトリシクロデカン(メタ)アクリレート、アダマンタンラクトン(メタ)アクリレート、及びα−メタクリルオキシ−γ−ブチロラクトンなどのモノマーの重合から誘導される単位を含むことができる。これらのモノマーを用いて生成されるポリマーの例には、ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(t−ブチルノルボルネンカルボキシレート−co−無水マレイン酸−co−2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−メタクリロイルオキシノルボルネンメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3,5−ジヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3,5−ジメチル−7−ヒドロキシアダマンチルメタクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルアクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−エチルシクロペンチルアクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−メタクリロイルオキシノルボルネンメタクリレート−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(エチルシクロペンチルメタクリレート−co−2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンアクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−イソブチルメタクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンアクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンアクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−βガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−メタクリロイルオキシノルボルネンメタクリレート−co−β−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−メタクリロイルオキシノルボルネンメタクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンアクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−2−エチル−2−アダマンチル−co−メタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート); ポリ(2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンアクリレート); ポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンメタクリレート−co−2−アダマンチルメタクリレート); 及びポリ(2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート−co−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート−co−α−ガンマ−ブチロラクトンアクリレート−co−トリシクロ[5,2,1,02,6]デカ−8−イルメタクリレート)などが挙げられる。少なくとも一つのラクトン基を含むフォトレジストポリマーが好ましい。
【0041】
該フォトレジストは、更に、添加剤、例えば塩基クエンチャ、界面活性剤、染料、架橋剤などを含むことができる。有用なフォトレジストは、更に、米国特許出願公開第2009/0042148号明細書(特許文献28)及び米国特許出願公開第2007/0015084号明細書(特許文献29)に例示される。なお、これらの特許文献は、本明細書に掲載されたものとする。
【0042】
コーティングプロセスの後、フォトレジストは当業界において既知のようにパターン化される。パターン化は、放射線源を用いた像様露光及び現像を含む。露光は、特定の露光源に典型的な露光装置を用いて行うことができる。次いで、露光されたフォトレジストを水性現像剤中で現像して、処理されたフォトレジストを除去する。現像剤は、好ましくは、水性アルカリ性溶液、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を含む水性アルカリ性溶液である。現像剤は、更に界面活性剤(複数種可)を含んでよい。現像の前及び露光の後に任意選択の加熱段階を組み入れることができる。フォトレジストのコーティング及び像形成方法は、当業者には周知であり、そして使用する特定のタイプのフォトレジストに合わせて最適化される。典型的には、フォトレジストの厚さは、193nm露光では約50nm〜約400nmの範囲である。フォトレジストのパターニングは、使用するフォトレジストによって決定される。
【0043】
フォトレジストパターンを形成した後、次いでフォトレジストパターンを凍結または架橋して(図4〜6の凍結されたパターン2)、典型的な有機溶剤中への溶解を防ぐ。フォトレジストパターンは硬化化合物で処理してフォトレジストを硬化して、そのパターンを、フォトレジストパターンの上にコーティングするべきケイ素コーティング組成物の溶剤中に不溶性にする。フォトレジストパターンを凍結するための硬化化合物の使用は、より広い範囲のフォトレジスト、例えば高Tgまたは低Tgポリマーを含むフォトレジストの使用を可能にする。本発明の硬化処理にはアクリレートポリマーを含むフォトレジストが有用である。というのも、殆どのポリマーが200℃未満のTgを有するからである。ラクトン基を有するアクリレートポリマーを含むフォトレジストも有用である。本発明の一つの態様では、フォトレジストパターンの硬化は、少なくとも二つのアミノ(−NH)基を含む硬化アミノ化合物を用いて行われ、同時にフォトレジストパターンを加熱して、それによって硬化した第一のフォトレジストパターンを形成する。理論的に拘束されるものではないが、前記アミノ化合物はフォトレジストパターン中を拡散し、そして熱の存在下にフォトレジストを架橋して、それによって硬化もしくは凍結したパターンを形成するものと考えられる。パターンは、ケイ素コーティング組成物の溶剤中に不溶性になる。この硬化処理は、チャンバまたは閉鎖炉(enclosed oven)を備えるホットプレートで、硬化化合物の蒸気により行うことができる。フォトレジストパターンの硬化は、密閉されたチャンバ内のホットプレートで行うことができ、ここでアミノ化合物は、窒素などのキャリアガスと共に気化された形で導入され、そしてこのチャンバは、更に、密閉された雰囲気内でパターン化された基材を加熱するための熱源を含む。一つの事例では、このチャンバは、基材を支持するためのホットプレート、アミノ化合物を導入するための入口、パージ用入口及び排気出口を含む。パージは、窒素、アルゴンまたはヘリウムなどのガスを用いて行うことができる。
【0044】
図9は、窒素ガス圧調節器(5)、流量計(6)、窒素ガスマニホルド(7)、バブラー(8)、弁(9)、蓋(11)付きチャンバ(10)(チャンバはホットプレート(12)の上に置かれる)、及び排気管(13)を含む、パターン硬化用の典型的なチャンバを示す。
【0045】
アミノ化合物の種類、硬化のための温度及び時間、アミノ化合物の濃度、チャンバ内でのアミノ化合物の流速などの条件は、最適な程度の硬化を与えるために最適化される。硬化の程度は、処理されたフォトレジストのフィルム厚さの損失を測定するために試験溶剤中に硬化したフォトレジストを浸けることによって、決定できる。最小のフィルム厚の損失が望ましく、ここでケイ素組成物の溶剤中での処理されたフォトレジストのフィルム厚の損失は10nm未満、好ましくは8nm未満、より好ましくは5nm未満である。不十分な硬化は、フォトレジストを溶解する。具体的には、溶剤は、例として本明細書に記載のフォトレジストの溶剤(複数種可)から選択してよい。硬化プロセスは、更に、2008年4月2日に出願された米国特許出願第12/061,061号明細書(特許文献30)及び米国特許出願第12/061,111号明細書(特許文献31)に記載されている。これらの特許文献の内容の全部が本明細書中に掲載されたものとする。
【0046】
使用される硬化化合物は、フォトレジストを硬化させるものであれば任意のものでよい。硬化するフォトレジストは、ケイ素組成物の溶剤中に不溶性である。硬化したフォトレジストは熱的にも非流動性である。硬化化合物は、少なくとも二つのアミノ(NH)基を含むことができる。硬化化合物は構造(I)によって例示することができる。
【0047】
【化5】

【0048】
式中、WはC〜Cアルキレンであり、nは1〜3である。アミノ化合物の一つの態様ではnは1である。アルキレンとは線状または分枝状のものを言う。好ましくは、アルキレンはC〜Cである。アミノ化合物の例は、
エチレンジアミン HNCHCHNH
(1,2ジアミノエタン)
1,2−プロパンジアミン
【0049】
【化6】

【0050】
1,3−ジアミノプロパン
【化7】

【0051】
アミノ化合物がチャンバ中で使用される場合には、蒸気を形成することができる化合物が好ましい。アミノ化合物は、約25℃〜250℃の範囲の温度で約30秒〜約20分間硬化するために使用し得る。硬化温度の上限は、好ましくは、フォトレジストパターンの流動温度未満である。硬化温度が低いとより長い硬化時間が必要となる。化合物の流量は約1〜約10L/分の範囲であることができる。アミノ化合物の蒸気圧及び/またはその温度は、硬化反応を加速するために高めることができる。アミノ化合物の使用は、フォトレジストパターンを単に熱的に硬化するだけの場合よりも、より低い硬化温度及びより短い硬化時間を可能にする。
【0052】
上記処理段階の後に追加のベーク工程を含めることができ、これは、パターンの更なる架橋及び/または緻密化を誘発することができ、またフィルム中の残留ガスを揮発させる。このベーク工程は約190℃〜約250℃の温度範囲であることができる。緻密化は、向上したパターンプロフィルを導き得る。フォトレジストの適当な量の硬化の後に、フォトレジストパターンを、場合により、洗浄溶液で処理することができる。洗浄溶液の例は、フォトレジスト用のエッジビードリムーバ、例えば商業的に入手できるAZ(登録商標)ArFシンナーもしくはAZ(登録商標)ArF MPシンナー、またはフォトレジスト溶剤(複数種可)の任意のものであることができる。
【0053】
フォトレジストの硬化の後に、非共形(nonconformal)ケイ素層(層3)が、図5に示すように、フォトレジストパターン上に形成される。ケイ素層の厚さはフォトレジストパターンよりも厚く、そしてパターンを完全に覆って、ほぼ平坦な層を形成する。平坦化層を形成することができるケイ素組成物が好ましい。パターン領域中のケイ素層の厚さ(Xnm)は、フォトレジストパターンの高さ(Ynm)を覆うのに十分なものである必要がある、すなわちX>Yである。一例として、フォトレジストパターンの厚さ(Y)は約20nm〜約200nmの範囲であることができる。ケイ素層の厚さ(X)は、フォトレジスト層の厚さ及びエッチングプロセスに依存して、約25nm〜約300nmの範囲であることができる。XとYとの差異は、約5nm〜約50nmの範囲であることができる。任意のケイ素含有スピンオンガラスタイプの溶液、例えばHoneywell社から入手できる例えばDUO248TM及び
【0054】
【化8】

【0055】
(一連のメチルシロキサンポリマー)を使用できる。一つの態様では、該ケイ素コーティング組成物のケイ素ポリマーはシルセスキオキサンポリマーである。米国特許出願公開第2007/0298349号明細書(特許文献32)、米国特許出願公開第2008/0008954号明細書(特許文献33)、米国特許出願公開第2005/0277058号明細書(特許文献34)及び米国特許出願公開第2008/0196626号明細書(特許文献35)に記載のケイ素ポリマーの任意のものを使用できる。これらの特許文献は、その内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。他の例は、国際公開第2006/065321号パンフレット(特許文献36)に記載のものである。典型的なケイ素組成物は、非流動性のフィルムを形成することができるケイ素ポリマーを含む。一例として、シルセスキオキサンポリマーは、エポキシ、イソプロピルまたはフェニル側基を有してよい。該組成物は、追加的に、架橋触媒、例えばアンモニウム塩またはハライドを含んでよい。該層のケイ素含有率は18重量%を超える。該組成物はスピンコートされそして加熱される。使用されるケイ素材料の典型的なパラメータを、被膜の形成に使用し得る。
【0056】
三層を形成した後、基材をドライエッチングチャンバ内に置き、ここでフッ素化炭化水素、例えばCFを含むガス混合物を使用して、ケイ素被膜を、フォトレジストパターンの厚さ近くまでエッチバックし(図6)、そうしてフォトレジストパターンの表面が見えてくる。エッチング速度及びフォトレジストに対するエッチング速度選択性は、他のガス、例えば酸素を加えることによって制御することができる。センサーがエッチングの終点を供するか、またはエッチング速度及び除去すべきフィルムの厚さが既知の場合には時限のエッチングを使用することができる。フォトレジストパターンの一部の少量の表面トップ層をエッチバックプロセス中で除去し得る。フォトレジストの表面が可視になった後、フォトレジスト及び下層をドライエッチングでき、そうしてフォトレジストパターンのトーンが反転する(図7〜8)。酸素及び/または水素を含むガスが、フォトレジスト及び下層のエッチングに有用である。追加のガス、例えばアルゴン、ヘリウム、キセノン、クリプトン、ネオン及びこれらの組み合わせを使用し得る。このガス混合物は、性能を高めるために、更に他のガス、例えば窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、BCl、HBr、Cl及びフッ素含有ガス、例えばNF、SF、CF、またはこれらの組み合わせを含んでよい。フォトレジスト及び下層は、一つの連続的なプロセスでまたは二つの別個の工程で除去することができる。フォトレジスト及び下層のエッチングには異方性エッチングが好ましい。
【0057】
本発明方法の下層/ケイ素ハードマスクパターンは、基材をドライエッチングするためのマスクとして使用し、所望の深さのトレンチを形成することができる。本発明の新規方法は、基材に反転トーンの狭いトレンチを形成するのに、標準的な高解像度ポジ型フォトレジストを使用することを可能にする。ドライエッチングの方法は、当技術分野に知られているように適当な基材に合わせて最適化される。
【0058】
他に記載が無い場合には、明細書及び特許請求の範囲で使用する成分の量、性質、例えば分子量、反応条件などを表す全ての数値は、全ての場合において“約”という言葉で修飾されるものと理解されたい。上で言及した文献はそれぞれ、全ての目的のためにその内容の全てが本明細書に掲載されたものとする。以下の具体例は、本発明の組成物を製造及び使用する方法の詳細な例示を与えるものである。しかし、これらの例は本発明の範囲を如何様にも限定もしくは減縮することを意図したものではなく、本発明を実施するのに排他的に使用しなければならない条件、パラメータまたは値を教示するものと解釈するべきものではない。
【実施例】
【0059】
例1: 下層調合物
10gのMX−270(N,N',N'',N'''−(テトラメトキシメチル)グリコールウリル(日本国神奈川県平塚市田村在の株式会社三和ケミカルから入手可能)、90gの70/30ポリ(メチルメタクリレート−co−ヒドロキシスチレン)(DuPont,1007 Market St.Wilmington,DE,USAから入手可能)、及び40gの10%ドデシルベンジルスルホニウムトリエチルアンモニウム塩(ArFシンナー中)及び860gのArFシンナー(70:30PGME:PGMEA)を取ることによって下層原液を調製した。
【0060】
この原液をArFシンナーにより1:1重量比で希釈することによってコーティング組成物を調製した。次いで、このコーティング溶液を0.2μmPTFEフィルタに通して濾過した。
【0061】
例2: フォトレジスト調合物
フォトレジストとしてのAZ(登録商標)AX2110P(AZ(登録商標)Electronic Materials USA Corp,70 Meister Ave.,Somerville,NJ,USAから入手可能)を、AZ(登録商標)ArF MPシンナー(AZ(登録商標)Electronic Materials USA Corp,70 Meister Ave.,Somerville,NJ,USAから入手可能)により1:1重量比で希釈する。次いで、このコーティング溶液を0.2μmPTFEフィルタに通して濾過した。
【0062】
例3 スピンオンガラス(SOG)調合物
2.5gのポリ(フェニル−メチルシルセスキオキサン)(Gelest Inc.,11 E Steel Rd.,Morrisville,PA,USAから入手可能なSST−3PM1)を、97.5gのAZ(登録商標)ArFシンナーで溶解した。次いで、この溶液を0.2μmフィルタに通して濾過した。
【0063】
例4 反転トーンリソグラフィスタック調製
例1からの炭素下層コーティングを、1500rpmで8インチ(0.2032m)ケイ素ウェハ上にスピンコートし、そして200℃で60秒間ベークして、200nmのフィルム厚を得た。例2からのフォトレジスト調合物を1500rpmでコーティングし、そして100℃/60秒でソフトベークして90nmのフィルム厚を得た。このスタックを、TEL Act12”トラックにインターフェースで連結したArFスキャナ(Nikon NSR−306D: NA=0.85、ダイポールY照明、0.8s、a/R=0.63、レチクル:90nmのラインアンドスペース図形からなる格子を有する6%HTPSM(高透過性ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、そしてAZ300MIF(AZ(登録商標)Electronic Materials USA Corp,70 Meister Ave.,Somerville,NJ,USAから入手可能な、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに基づく剤)を用いて23℃で30秒間現像した。これらの層を110℃で60秒間ポスト露光ベークした。これらのウェハの走査電子顕微鏡(SEM)写真からの断面図は、135nmスペースを有する45nmラインの図形が簡単に解像されたことを示した。
【0064】
現像した像を、図9に示すようなべーバーリアクションチャンバ(VRC)で、ジアミノエタン(HNCHCHNH)を充填した250mLバブラーを通して流れる3L/分の窒素流速を用いて2分間、凍結した。このVRCのベーク温度は180℃に維持した。
【0065】
例3からのスピンオンガラス(SOG)調合物を、この凍結したフォトレジスト像の上に、1500rpmのスピン速度でコーティングし、次いで110℃で60秒間ベークして90nmのフィルム厚を得た。
【0066】
例5 パターン転写
過剰のSOGフィルム厚を除去するために、反転トーンリソグラフィスタックを有するウェハを先ず5秒間のSOGエッチバック工程に付した。これは、表1に記載の他のプラズマ条件と共に1:1CF/Oエッチングガスの組み合わせを用いて為した。次のエッチング工程は、フォトレジスト(PR)像の除去であり、これは、酸素富化エッチングを用いて為した。フォトレジストの除去の他に、酸素エッチングは、有機物の除去及びSiOの形成によりSOGを硬化した。フォトレジスト除去工程は異方性エッチングを要しないものの(構造自体が、元々、必要な異方性を組み入れているため)、異方性Oエッチングプロセスは、フォトレジストの除去及び下層へのSOGのパターン転写工程を統合することを可能とする。統合フォトレジスト除去及び下層(UL)パターン転写エッチング工程は、表1に記載した他のプラズマ条件と共に15秒間のOエッチングで為した。
【0067】
最終のエッチングパターンは、ポジ型フォトレジストパターンの反転像であり、そしてフォトレジストパターンよりもかなり厚く、かつより耐エッチング性の高いパターンであり、それゆえ、フォトレジストパターンよりもより良好な基材へのパターン転写を可能にした。
【0068】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス上に反転トーン像を形成する方法であって、
a) 基材上に吸光性下層を形成し;
b) 下層の上にポジ型フォトレジストの被膜を形成し;
c) ポジ型フォトレジストを像様露光及び現像し、それによってフォトレジストパターンを形成し;
d) フォトレジストパターンを硬化化合物で処理し、それによって硬化されたフォトレジストパターンを形成し;
e) 硬化したフォトレジストパターンの上に、ケイ素コーティング組成物からケイ素被膜を形成し、ここでこのケイ素被膜は、フォトレジストパターンよりも厚く、かつケイ素コーティング組成物はケイ素ポリマー及び有機系コーティング溶剤を含み;
f) ケイ素被膜をドライエッチングして、ケイ素被膜が概ねフォトレジストパターンと同じ厚さとなるまでケイ素被膜を除去し; 及び
g) ドライエッチングを行ってフォトレジスト及び下層を除去し、それによってフォトレジストパターンが元々在った位置の下にトレンチを形成する、
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
硬化化合物が、少なくとも二つのアミノ(NH)基を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
基材をドライエッチングする工程を更に含む、請求項1または2の方法。
【請求項4】
工程g)において、ドライエッチングが、フォトレジスト及び下層を一つの連続的な工程で除去するために同じガス組成物を使用することを含む、請求項1〜3のいずれか一つの方法。
【請求項5】
段階g)において、ドライエッチングが、先ずフォトレジストを除去し、次いで別個の工程で下層を除去することを含む、請求項1〜3のいずれか一つの方法。
【請求項6】
硬化化合物が次の構造(I)を有する、請求項1〜5のいずれか一つの方法。
【化1】

式中、Wは、C〜Cアルキレンであり、そしてnは1〜3である。
【請求項7】
nが1である、請求項6の方法。
【請求項8】
硬化化合物が、1,2−ジアミノエタン、1,3−プロパンジアミン、及び1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンから選択される、請求項6または7の方法。
【請求項9】
フォトレジストパターンの処理工程が、気化した硬化化合物を用いて行われる、請求項1〜8のいずれか一つの方法。
【請求項10】
処理工程が加熱工程を含む、請求項1〜9のいずれか一つの方法。
【請求項11】
処理工程が、気化した硬化化合物の存在下にフォトレジストパターンを加熱することを含む、請求項10の方法。
【請求項12】
加熱工程が約80℃〜約225℃の範囲である、請求項10または11の方法。
【請求項13】
下層が、80重量%を超える炭素含有率を有する、請求項1〜12のいずれか一つの方法。
【請求項14】
像様露光が、248nm、193nm、157nm、EUV及び電子ビームから選択される、請求項1〜13のいずれか一つの方法。
【請求項15】
ケイ素コーティング組成物のケイ素ポリマーが、シルセスキオキサンポリマーである、請求項1〜14のいずれか一つの方法。
【請求項16】
ケイ素コーティング組成物の有機溶剤も、未処理のフォトレジスト層用の溶剤である、請求項1〜15のいずれか一つの方法。
【請求項17】
ケイ素層を除去するための段階g)におけるドライエッチングガスがフルオロカーボンを含む、請求項1〜16のいずれか一つの方法。
【請求項18】
フルオロカーボンがCFである、請求項17の方法。
【請求項19】
段階f)におけるドライエッチングガスが酸素を含む、請求項1〜18のいずれか一つの方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一つの方法で得られた製造物。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか一つの方法に従いデバイス上に反転トーン像を形成するための方法を用いることによって得られた微細電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−500408(P2012−500408A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522557(P2011−522557)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005146
【国際公開番号】WO2010/018430
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(305010827)エイゼット・エレクトロニック・マテリアルズ・ユーエスエイ・コーポレイション (81)
【Fターム(参考)】