説明

受容体関連タンパク質(RAP)ペプチド−フコシダーゼ阻害薬複合体による肝障害処置のための方法

本発明は、概して、フコシダーゼ阻害薬に複合化した受容体関連タンパク質(RAP)のペプチドによる、肝細胞癌等の肝障害および肝腫瘍の処置のための方法および組成物に関する。一実施形態において、フコシダーゼ阻害剤に結合した受容体関連タンパク質(RAP)ペプチドを含むペプチド複合体が提供され、このRAPペプチドは、SEQ ID NO:1のRAPのアミノ酸210〜319と少なくとも80%相同性のポリペプチド配列を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる、2010年1月28日出願の米国仮特許出願第61/299,177号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して、受容体関連タンパク質(RAP)分子のペプチドおよびフコシダーゼ阻害薬を含む複合体による、肝細胞癌等の肝障害および肝腫瘍の処置のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
正常細胞と腫瘍細胞との間にはタンパク質糖化の差異が認められており、腫瘍選択的抗体の開発の基礎となっている[1]。肝細胞癌(HCC)細胞は、正常肝細胞に比べてその糖タンパク質を著しくかつ不適切にフコシル化することが観察されている[2;3;4;5;6]。これらの糖タンパク質の大部分は腫瘍リソソームに至り、そこで分解される。ある報告では、リソソームα−L−フコシダーゼの血清レベルの増加がHCCの前兆であり、生合成経路における糖タンパク質フコシル化の増加レベルに対応するための前癌肝細胞によるこの酵素の上方調節の可能性を示していることが示唆されている[7]。
【0004】
例えば遺伝子における変異の遺伝によるリソソームα−L−フコシダーゼ(FUCA1)の不活性化は、フコシドーシスと呼ばれるリソソーム蓄積症(LSD)をもたらす[8;9]。フコシドーシスが見られる患者は、末端およびコアフコシル化オリゴ糖をリソソーム分解することができないため、非分解物質のリソソーム蓄積を示し、その後6年以上生存することは稀である[10]。
【0005】
特許文献1は、免疫賦活剤および抗転移薬として有用であると推測されるα−マンノシダーゼおよびフコシダーゼ阻害薬を開示している。他の知られているフコシダーゼ阻害薬は、昔からのノジリマイシンイミノ糖構造に基づき、リソソームフコシダーゼに対する10nMの阻害定数を有するL−デオキシフコノジリマイシン(DFJ)[11]を含む。また、デオキシフコノジリマイシン(DFJまたはDNJ)、例えばβ−L−ホモフコノノジリマイシンおよび1−β−C−置換デオキシマンノジリマイシンに基づくさらなる阻害薬を開示している特許文献2を参照されたい。別の有効なフコシダーゼ阻害薬は、7員アゼパンクラス(「Faz」としても知られる(3R,4R,5S,6S)−1−ブチル−4,5,6−トリヒドロキシアゼパン−3−カルボン酸)の1つである。イズロン酸糖のヒドロキシル構成およびカルボキシル官能基を有しているにもかかわらず、この新規な分子はまた、低ナノモル範囲の効力でフコシダーゼを阻害する[12]。ほとんどのイミノ糖阻害薬と同様、アミンのアルキル修飾は、阻害薬の効力に大きく作用して、ペプチド等の大型バイオポリマーへの阻害薬の容易かつ安定な複合化を可能とすることは期待されない[13;14]。フコシダーゼ阻害薬は、特許文献3、特許文献1、特許文献4、特許文献2、特許文献5および特許文献6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,240,707号明細書
【特許文献2】米国特許第5,100,797号明細書
【特許文献3】米国特許第5,382,709号明細書
【特許文献4】米国特許第5,153,325号明細書
【特許文献5】米国特許第5,096,909号明細書
【特許文献6】米国特許第5,017,704号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、概して、肝細胞癌等の肝障害を処置するための組成物および方法に関する。企図される組成物は、フコシダーゼ阻害薬に複合化したヒト受容体関連タンパク質(RAP)から得られるペプチドを含む。RAPペプチドは、肝臓の肝細胞上のLRP1受容体に結合し、それによりフコシダーゼ阻害剤を肝臓に標的化する。
【0008】
一態様において、本発明は、フコシダーゼ阻害剤に結合した受容体関連タンパク質(RAP)ペプチドを含むペプチド複合体であって、RAPペプチドは、SEQ ID NO:1のRAPポリペプチドと少なくとも80%相同性のポリペプチド配列を含む、ペプチド複合体を提供する。さらに別の態様において、本発明は、フコシダーゼ阻害剤に結合した受容体関連タンパク質(RAP)ペプチドを含むペプチド複合体であって、RAPペプチドは、SEQ ID NO:1のRAPのアミノ酸210〜319と少なくとも80%相同性のポリペプチド配列を含む、ペプチド複合体を提供する。一実施形態において、RAPペプチドは、SEQ ID NO:1のN末端から少なくとも200および最大245のアミノ酸を欠失している。関連した実施形態において、RAPペプチドは、SEQ ID NO:1のN末端から245のアミノ酸を欠失している。
【0009】
ある特定の実施形態において、RAPペプチドは、さらに、SEQ ID NO:1のC末端から少なくとも4および最大11のアミノ酸を欠失している。別の実施形態において、RAPペプチドは、さらに、SEQ ID NO:1のC末端から11のアミノ酸を欠失している。さらなる実施形態において、RAPペプチドは、SEQ ID NO:1の成熟RAPのアミノ酸1〜245および320〜323を欠失している。
【0010】
さらに他の実施形態において、本発明により企図されるRAPペプチドは、天然RAP配列で構成されてもよく、または、天然配列に対する変異を含んでもよい。例示的実施形態において、本発明のRAPペプチドは、本明細書に記載されるSEQ ID NO:1から得られるRAPペプチドのいずれかに、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、本発明のRAPペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるRAPのいずれかのアミノ酸210〜319、243〜313、246〜313、249〜303、または251〜303に、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0011】
追加的実施形態において、RAPペプチドは、SEQ ID NO:2に示される配列と少なくとも80%相同性のポリペプチド配列を含む。関連する実施形態において、RAPペプチドは、SEQ ID NO:2に示されるポリペプチド配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、フコシダーゼ阻害薬は、ノジリマイシンイミノ糖、7員アゼパン、置換(1−α,2−β,3−αまたはβ,4−α,5−αまたはβ)−2,3,4−トリヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロペンチルアミンおよび2,6−イミノ−2,6,7−トリデオキシ−D−グリセロ−D−グルコへプチトールからなる群から選択される。
【0013】
例示的フコシダーゼ阻害薬は、L−デオキシフコノジリマイシン(DFJまたはDNJ)、β−L−ホモフコノノジリマイシンおよび1−β−C−置換デオキシマンノジリマイシン(β−1−C−メチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−エチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−フェニルデオキシマンノジリマイシン)等のノジリマイシンイミノ糖、ならびに((3R,4R,5S,6S)−1−ブチル−4,5,6−トリヒドロキシアゼパン−3−カルボン酸(「Faz」)等の7員アゼパンを含むが、これらに限定されない。本発明における使用に企図される追加的なフコシダーゼ阻害薬は、置換(1−α,2−β,3−αまたはβ,4−α,5−αまたはβ)−2,3,4−トリヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロペンチルアミンおよび2,6−イミノ−2,6,7−トリデオキシ−D−グリセロ−D−グルコへプチトールを含むが、これに限定されない。
【0014】
さらなる実施形態において、フコシダーゼ阻害薬は、L−デオキシフコノジリマイシン(DFJまたはDNJ)、β−1−C−メチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−エチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−フェニルデオキシマンノジリマイシンおよび(3R,4R,5S,6S)−1−ブチル−4,5,6−トリヒドロキシアゼパン−3−カルボン酸(Faz)からなる群から選択される。
【0015】
ある特定の実施形態において、フコシダーゼ阻害薬は、α−L−フコシダーゼをin vitroで、1pM〜100nMの範囲、または1〜100nMの範囲で阻害する。
【0016】
別の実施形態において、フコシダーゼ阻害薬は、ペプチドリンカーを介して複合化されることが企図される。
【0017】
いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、ペンタペプチドリンカーまたはデンドリマーである。例示的なデンドリマーは、リジンデンドリマー、PAMAMデンドリマー、POPAMデンドリマー、トリアジンデンドリマー、およびジアミノブタン(DAB)デンドリマーを含むが、これらに限定されない。
【0018】
別の実施形態において、ペプチドリンカーは、リジンデンドリマーである。リジンデンドリマーは、第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、または第6世代リジンデンドリマー、例えばK4K2KリジンデンドリマーおよびKG6リジンデンドリマーを含むが、これらに限定されない。関連する実施形態において、ペプチドリンカーは、K4K2Kリジンデンドリマーである。
【0019】
ある特定の実施形態において、RAPペプチド分子当たり1つ以上のフコシダーゼ阻害薬が複合化している。関連する実施形態において、本発明は、RAPペプチド複合体が、同じまたは複数のRAPペプチドに結合した1つ以上の阻害剤を含むことを企図する。 一実施形態において、RAPペプチドは、RAPペプチドに対し、約1個から5個、約1個から10個、約5個から10個、約10個から20個、約20個から30個、または30個以上の阻害剤分子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、RAP複合体は、RAPペプチド分子当たり少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれ以上の阻害薬分子を含むことが企図される。関連する実施形態において、複合体は、RAPペプチドに対し、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1の化学量論比の阻害剤を含む。RAPペプチドに対するフコシダーゼ阻害薬の他の化学量論比は、1:2、1:3、3:2、5:2、7:2、9:2、11:2、4:3、5:3、7:3、8:3、10:3、11:3を含む。いくつかの実施形態において、RAPペプチド分子に対する阻害薬分子の比は、1:1から12:1の間、または1.5:1から10:1の間である。
【0020】
別の実施形態において、RAPペプチド複合体は、RAPペプチド分子当たり少なくとも4つのフコシダーゼ阻害薬を含む。さらなる実施形態において、RAPペプチド複合体は、RAPペプチド分子当たり少なくとも8つのフコシダーゼ阻害薬を含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象における肝腫瘍を処置するための方法であって、治療上効果的な量の本明細書に記載のRAPペプチド複合体を投与することを含む方法を提供する。
【0022】
一実施形態において、肝腫瘍は、肝細胞癌、肝炎ウイルス感染、肝硬変、中毒性肝障害、および遺伝性ヘモクロマトーシスの結果である。
【0023】
関連する実施形態において、肝腫瘍は、肝細胞癌の結果である。
【0024】
さらなる実施形態において、処置は、対象における肝腫瘍サイズの減少をもたらす。別の実施形態において、処置は、対象の血液中のα−フェトプロテインレベルの処置前のレベルと比較した低減をもたらす。
【0025】
ある特定の実施形態において、ペプチド複合体は、静脈内投与される。関連する実施形態において、ペプチド複合体は、肝臓動脈から投与される。
【0026】
さらに別の実施形態において、ペプチド複合体は、第2の薬剤と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態において、第2の薬剤は、化学療法薬、細胞毒性薬、放射性同位体、抗ウイルス薬、抗真菌薬および抗炎症薬からなる群から選択される。関連する実施形態において、化学療法薬は、ドキソルビシンおよび5−フルオロウラシルからなる群から選択される。
【0027】
さらなる実施形態において、第2の薬剤は、細胞毒性薬である。いくつかの実施形態において、細胞毒性薬は、塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、クロランブシル、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジンおよびストレプトゾシンからなる群から選択される。
【0028】
別の実施形態において、第2の薬剤は、放射性同位体である。いくつかの実施形態において、放射性同位体は、131I、125I、111In、90Y、67Cu、127Lu、212Bi、213Bi、255Fm、149Tb、223Rd, 213Pb、212Pb、211At、89Sr、153Sm、166Ho、225Ac、186Re、67Ga、68Gaおよび99mTcからなる群から選択される。
【0029】
一実施形態において、肝腫瘍は、肝炎ウイルス感染に関連し、第2の薬剤は、抗ウイルス薬である。
【0030】
本明細書において開示される上記複合体のいずれかの、本明細書に記載の肝障害のいずれかの処置のための薬物の調製における使用もまた企図される。また、肝障害の処置における使用のための、本明細書に記載のようなRAP−ペプチドフコシダーゼ複合体を含む組成物も企図される。また、上記複合体のいずれかを含み、任意選択で好適な取扱説明書を有する、シリンジ、例えば使い捨てまたは事前に充填されたシリンジ、滅菌密閉容器、例えばバイアル、ボトル、槽、および/またはキットもしくはパッケージもまた企図される。
【0031】
本明細書に記載の上記複合体のいずれも、補助療法として、当技術分野において知られた、または本明細書に記載の、肝障害を処置するのに有用な任意の薬剤とともに同時投与され得る。他の肝臓治療薬剤とともに上記複合体のいずれかを含む組成物もまた企図される。
【0032】
本明細書に記載のそれぞれの特徴もしくは実施形態、または組み合わせは、非制限的であり、本発明の態様のいずれかの実例であり、したがって、本明細書に記載される他の特徴もしくは実施形態、または組み合わせと組み合わせることができることを意図することが理解される。例えば、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「さらなる実施形態」、「具体的な例示的実施形態」、および/または「別の実施形態」等の言葉とともに特徴が説明される場合、これらの種類の実施形態のそれぞれは、すべての可能な組み合わせを列挙する必要なく、本明細書に記載の任意の他の特徴、または特徴の組み合わせと組み合わされることが意図される特徴の制限されない例である。そのような特徴または特徴の組み合わせは、本発明の態様のいずれにも適用される。範囲内に含まれる値の例が開示される場合、これらの例のいずれも、範囲の可能な端点として企図され、そのような端点の間のありとあらゆる数値が企図され、上の端点および下の端点のありとあらゆる組み合わせが想定される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】リンカー修飾N−カルボキシペンチル−(3R,4R,5S,6S)−1−ブチル−4,5,6−トリヒドロキシアゼパン−3−カルボン酸(Faz)を示す図である。
【図2】リンカー修飾N−5−カルボキシペンチル−デオキシフコノジリマイシン(DNJ)を示す図である。
【図3】K4K2Kリジンデンドリマーおよび複合化した阻害薬(=「X」)を含むRAPペプチド複合体を表す図である。
【図4】in vitroでのHepG2肝細胞癌細胞におけるフコシダーゼ活性に対するデオキシフコノジリマイシン(DNJ)の影響を示す図である。緩衝剤は、対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、フコシダーゼ阻害薬に結合した受容体関連タンパク質(RAP)もしくはその断片、またはRAPもしくはRAP断片の変異型を含む複合体に関する。本発明はまた、肝腫瘍、特に肝細胞癌を処置するためのそのような複合体の使用に関する。複合体のRAPタンパク質は、フコシダーゼを肝細胞に対し標的化し、リソソームへの取り込みを伴う肝細胞へのフコシダーゼ阻害薬の選択的伝達を可能とする。本発明の理論に束縛されることなく、フコシダーゼ阻害薬は、肝細胞におけるリソソーム蓄積症の影響と同様に、リソソームにおける糖タンパク質誘導オリゴ糖蓄積を誘発し、それにより細胞内の細胞毒性事象を誘発する。
定義
別段に定義されていない限り、本明細書で使用されている技術的および科学的用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、当業者に、本発明において使用される用語の多くの一般的定義を提供する: Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d ed. 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed., 1988);THE GLOSSARY OF GENETICS, 5TH ED., R. Rieger, et al.(eds.), Springer Verlag (1991);およびHale and Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
【0035】
本明細書において引用される各出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示と矛盾しない範囲でその全体が参照により組み入れられる。
【0036】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上異なる定義が明示されていない限り、単数形は複数形の呼称も含むことに留意されたい。
【0037】
本明細書において使用される場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、それらに帰属する意味を有する。
【0038】
「フコシダーゼ阻害薬」は、本明細書において使用される場合、糖タンパク質からフコース残基を開裂させるα−L−フコシダーゼの活性を阻害する薬剤、例えば小分子を指す。例示的なフコシダーゼ阻害薬は、ノジリマイシンイミノ糖、例えばデオキシフコノジリマイシン(DFJまたはDNJ))、デオキシマンノジリマイシン(DMJ)およびそれらの誘導体を含むが、それらに限定されない。具体的な誘導体は、β−L−ホモフコノノジリマイシンおよび1−β−C−置換デオキシマンノジリマイシン(β−1−C−メチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−エチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−フェニルデオキシマンノジリマイシン)を含む。例示的なフコシダーゼ阻害薬はまた、7員アゼパン分子、例えば(3R,4R,5S,6S)−1−ブチル−4,5,6−トリヒドロキシアゼパン−3−カルボン酸(「Faz」)を含む。本発明における使用に企図される追加的なフコシダーゼ阻害薬は、米国特許第5,382,709号、米国特許第5,240,707号、米国特許第5,153,325号、米国特許第5,100,797号、米国特許第5,096,909号、および米国特許第5,017,704号に開示されるものを含み、置換(1−α,2−β,3−αまたはβ,4−α,5−αまたはβ)−2,3,4−トリヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロペンチルアミンおよび2,6−イミノ−2,6,7−トリデオキシ−D−グリセロ−D−グルコへプチトールを含むがこれに限定されない。「フコシダーゼ阻害薬」という用語は、具体的には、以下の「α−L−フコシダーゼおよびフコシダーゼ阻害薬」という表題の項目に記載される、それらの阻害薬および誘導体のいずれかを含む。
【0039】
「肝腫瘍」は、本明細書において使用される場合、肝臓内もしくは肝臓上に発達する、または肝臓と物理的に関連する、原発腫瘍および/または新生物および/または転移の両方を含む。肝腫瘍はまた、身体の他の場所に移動するが、RAPペプチドとフコシダーゼ阻害薬との複合体に対する反応を維持する肝腫瘍の転移を含む。そのような腫瘍および新生物の多くの種類が知られている。原発肝腫瘍は、肝細胞癌および当技術分野において知られた他の腫瘍を含む。そのような腫瘍は、一般に、充実性腫瘍であり、または、それらは、肝臓に局在化された蓄積を伴う拡散性の腫瘍である。本発明による処置のための腫瘍または新生物は、悪性または良性であってもよく、化学療法、放射線療法および/または他の処置により以前に処置されていてもよい。
【0040】
「効果的な量」という用語は、対象の健康状態、病状、および疾患に対する所望の結果をもたらすために、または診断目的のために十分な用量を意味する。所望の結果は、投薬される受容者における主観的または客観的改善を含んでもよい。「治療上効果的な量」は、健康に対する意図される有益な効果をもたらすのに効果的な薬剤の量を指す。例えば、効果的な量は、充実性腫瘍の成長の抑制またはそのサイズの低減に効果的な量を含んでもよい。効果的な量は、腫瘍転移を低減してもよい。効果的な量は、癌細胞の増殖速度を抑制する、癌細胞の増殖を停止させる、または癌細胞を死滅させるのに効果的な量であってもよい。
「有機小分子」は、製薬において一般に使用される有機分子に匹敵するサイズの有機分子を指す。この用語は、有機バイオポリマー(例えば、タンパク質、核酸等)を除く。好ましい有機小分子のサイズは、約5,000Daまで、約2,000Daまで、または約1,000Daまでの範囲である。
【0041】
診断または処置の「対象」は、人間、または哺乳動物もしくは霊長類を含む人間以外の動物である。
【0042】
「処置」は、予防的処置または治療的処置または診断的処置を指す。
【0043】
「予防的」処置は、病状の発達のリスクを低下させることを目的として、疾患の徴候を示さない、または初期の徴候のみを示す対象に施される処置である。本発明の複合体化合物は、病状の発達の確率を低減するため、または、発達した場合は、病状の重症度を最小限化するための予防的処置として与えることができる。
【0044】
「治療的」処置は、病状の徴候または症状を減弱または除去することを目的として、それらの徴候または症状を示す対象に施される処置である。徴候または症状は、生化学的、細胞学的、組織学的、機能的、主観的または客観的なものであってもよい。本発明の複合体化合物は、治療的処置として、または診断のために与えることができる。
【0045】
「診断的」は、病態の存在または性質を識別することを意味する。診断法は、その特異性および選択性において異なる。特定の診断法は状態の断定的な診断を提供しない可能性があるが、その方法が診断に役立つ肯定的な目安を提供する限り十分である。
【0046】
「薬学的組成物」は、人間および哺乳動物を含む対象動物における薬学的使用に好適な組成物を指す。薬学的組成物は、活性薬剤に複合化した薬理学的に効果的な量のRAPペプチドを含み、また、薬学的に許容される担体も含む。薬学的組成物は、活性成分(複数を含む)、および担体を構成する不活性成分(複数を含む)、ならびに、成分の任意の2つ以上の組み合わせ、錯化もしくは凝集から、または成分の1つ以上の解離から、または成分の1つ以上の他の種類の反応もしくは相互作用から、直接的または間接的に生じる任意の生成物を含む組成物を包含する。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明の複合物化合物および薬学的に許容される担体を混合することにより調製される任意の組成物を包含する。非経口投与が意図される薬学的組成物は、無菌でなければならない。
【0047】
「薬学的に許容される担体」は、標準的な薬学的担体、緩衝剤、および賦形剤、例えばリン酸緩衝生理食塩水、デキストロースの5%水溶液、およびエマルジョン、例えば油/水または水/油エマルジョン、ならびに様々な種類の湿潤剤および/またはアジュバントのいずれかを指す。好適な薬学的担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Ed.(Mack Publishing Co., Easton, 1995)に記載されている。好ましい薬学的担体は、活性薬剤の意図される投与形態に依存する。典型的な投与形態は、経腸(例えば経口)または非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内もしくは腹腔内注射、または局所的、経皮的、もしくは経粘膜投与)を含む。「薬学的に許容される塩」は、薬学的使用のために化合物中に配合することができる塩であり、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)およびアンモニアまたは有機アミンの塩を含む。
【0048】
「単位剤形」という用語は、本明細書において使用される場合、人間および動物対象への単一用量として好適な、物理的に個別の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルに関連して所望の効果を生成するために十分な量で計算される所定量の本発明の化合物を含む。本発明の新規な単位剤形の明細は、使用される具体的な複合体および達成される効果、ならびにホストにおける各化合物に関連した薬力学に依存する。例えば、経口投与用の単位剤形は、錠剤、カプセル剤もしくは丸薬、またはそれらのグループであってもよい。非経口投与用の単位剤形は、バイアルまたは充填されたシリンジまたは規定のmg投薬量を含有する袋であってもよい。
【0049】
「調整する」は、本明細書において使用される場合、増加または減少により改変する(例えば、拮抗薬または作動薬として機能する)能力を指す。
【0050】
「増加する相対的送達」は、本明細書において使用される場合、それによって意図される送達部位(例えば肝臓)におけるRAPペプチドおよびフコシダーゼ阻害薬を含む複合体の蓄積が、複合化されていない阻害薬の蓄積と比べて増加する効果を指す。
「治療指数」は、最低治療量を超え許容されない毒性量を下回る用量範囲(量および/またはタイミング)を指す。
【0051】
「等価用量」は、同量の活性薬剤を含有する用量を指す。
【0052】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位で構成されるポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、自然発生的核酸、例えばデオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)ならびに核酸類似体を含む。核酸類似体は、非自然発生的塩基を含むもの、自然発生的ホスホジエステル結合以外の他のヌクレオチドとの結合に関与するヌクレオチド、またはホスホジエステル結合以外の結合を通して結合した塩基を含むものを含む。したがって、ヌクレオチド類似体は、例えば、限定されることなく、ホスホロチオエート、ホスホロトリエステル、ホスホロアミデート、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)等を含む。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成器を使用して合成することができる。「核酸」という用語は、典型的には、大型ポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、一般に約50ヌクレオチド以下の短いポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわちA、T、G、C)により表される場合、これはまた「T」が「U」に置き換えられたRNA配列(すなわちA、U、G、C)も含むことが理解される。タンパク質およびRNAをコード化するヌクレオチド配列は、イントロンを含んでもよい。
【0053】
「cDNA」は、mRNAと相補的または同一である、一本鎖または二本鎖型のいずれかのDNAを指す。
【0054】
「相補的」は、2つのポリヌクレオチドの相互作用表面のトポロジー的適合性または一致を指す。第1のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が第2のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合の相手の配列と同一である場合、第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドと相補的である。したがって、配列が5’−TATAC−3’であるポリヌクレオチドは、配列が5’−GTATA−3’であるポリヌクレオチドと相補的である。ポリヌクレオチド配列は、完全に相補的(すなわち100%一致)であってもよく、または部分的に相補的であってもよい。
【0055】
サザンブロットまたはノーザンブロットにおいてフィルタ上に100を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションのための厳格なハイブリダイゼーション条件の例は、42℃の50%ホルマリンおよび1mgのヘパリンであり、ハイブリダイゼーションは一晩行われる。極めて厳格な洗浄条件の例は、0.15M NaClを用い、72℃で約15分である。厳格な洗浄条件の例は、65℃で15分間の0.2X SSC洗浄である(SSC緩衝液についてはSambrook et al.を参照されたい)。
【0056】
「組み換えポリヌクレオチド」は、互いに自然に連結したものではない配列を有するポリヌクレオチドを指す。増幅または組み立てられた組み換えポリヌクレオチドは、好適なベクター中に含まれてもよく、ベクターは、好適な宿主細胞の形質転換に使用することができる。組み換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組み換え宿主細胞」と呼ばれる。遺伝子は、組み換え宿主細胞内で発現して、例えば「組み換えポリペプチド」を生成する。組み換えポリヌクレオチドは、非コード化機能(例えば、プロモーター、複製源、リボソームリンカー位等)の役割も果たすことができる。
【0057】
「発現制御配列」は、動作可能にそれに結合したヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を調節するポリヌクレオチド内のヌクレオチド配列を指す。「動作可能に結合した」は、2つの部分の間の機能的関係を指し、一方の部分の活性(例えば、転写を調節する能力)は、他方の部分に対するアクション(例えば、配列の転写)をもたらす。発現制御配列は、例えば、限定されることなく、プロモーター(例えば、誘導または構成的)、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(すなわちATG)、イントロンのスプライシングシグナル、および停止コドンの配列を含むことができる。
【0058】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に動作可能に結合した発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞またはin vitro発現系により供給され得る。発現ベクターは、コスミド、プラスミド(例えば、裸の、またはリポソーム内に含まれる)、および組み換えポリヌクレオチドを組み込むウイルス等の、当技術分野において知られたすべての発現ベクターを含む。
【0059】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合、関連する自然発生的構造変異型、およびその非自然発生的合成類似体を介して結合したアミノ酸残基、関連する自然発生的構造変異型、およびその非自然発生的合成類似体で構成されるポリマーを指す。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成器を使用して合成することができる。「タンパク質」という用語は、典型的には、大型ポリペプチドを指す。「ペプチド」という用語は、典型的には、短いポリペプチドを指す。
【0060】
「RAPペプチド」または「RAPポリペプチド」は、SEQ ID NO:1のα−2−マクログロブリン/低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質関連タンパク質1(RAP)またはその別の自然発生的多形相の断片または変異型、Uniprot寄託P30533、Pfam寄託番号PF06400およびPF06401を指す。ポリペプチド変異型は、他のアミノ酸に対する1つ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失に関与する1つ以上の変異体に基づき、親または参照ポリペプチドと比較して、そのアミノ酸配列の組成が異なる。置換は、置き換えられているアミノ酸およびそれを置き換えているアミノ酸の物理化学的または機能的関連性に基づき、同類または非同類であってもよい。本明細書において使用される場合、「RAPペプチド」は、SEQ ID NO:1のRAPの断片、および肝臓に対する相対的選択性を保持するそのような断片の実質的に相同性の変異型を指すように理解される。好ましいRAPペプチドは、約200アミノ酸未満の長さ、または約175、150、125または100アミノ酸未満の長さであり、RAPの少なくとも50、60、70、80、90または100アミノ酸に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%または95%同一である。好ましいRAPペプチドは、RAPのドメイン3に対して実質的に相同性である。そのようなペプチドは、例えば、10−5M以上(すなわち、10−6M、10−7M、10−8M、10−9M、またはそれ以下)の親和性でLRP1に結合することにより、肝臓に対する相対的選択性を保持する。「RAPペプチド」は、具体的には、以下の「RAPペプチド」という表題の項目に記載されるペプチドのいずれかを含む。
【0061】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する「同一」または「パーセント同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または目視検査により測定されるように、最大の対応性のために比較および配列された場合に、同じであるか、または特定のパーセンテージの同じヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0062】
2つの核酸またはポリペプチドに関する「実質的に相同性」または「実質的に同一」という語句は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または目視検査により測定されるように、最大の対応性のために比較および配列された場合に、一般に少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、実質的な同一性は、少なくとも約50、60、70、80または90残基の長さである配列の領域にわたり、または少なくとも約100残基の領域にわたり、または少なくとも約150残基の領域にわたり存在する。配列は、引用される参照バイオポリマーの全長にわたり実質的に同一である。いくつかの実施形態において、配列は、両方の比較バイオポリマーの全長にわたり実質的に同一である。
【0063】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は参照配列として機能し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列がコンピュータに入力され、続いて必要に応じて座標が設計され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列(複数を含む)のパーセント配列同一性を計算する。
【0064】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により、または目視検査により行うことができる。パーセント配列同一性および配列類似性の決定に好適なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403−410(1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。
【0065】
「実質的に純粋」または「単離された」は、対象種が存在する主要な種である(すなわち、モル基準で、組成物中の他のいかなる個々の巨大分子種よりも豊富である)ことを意味し、実質的に精製された分画は、対象種が、存在するすべての巨大分子種の少なくとも約50%(モル基準で)を占める組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する巨大分子種の約80%から90%以上が、対象となる精製された種であることを意味する。組成物が本質的に単一巨大分子種から構成される場合、対象種は、必要な均質性まで精製される(従来の検出法により組成物中に汚染種が検出され得ない)。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、安定剤(例えばBSA)、および元素イオン種は、この定義の目的において巨大分子種とはみなされない。いくつかの実施形態において、本発明の複合体は、実質的に純粋であるか、または単離されている。いくつかの実施形態において、本発明の方法において有用な複合体は、その合成において使用される巨大分子出発材料に対して、実質的に純粋であるか、または単離されている。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、実質的に精製または単離されたRAPペプチドの複合体、および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体と混合された活性薬剤を含む。
【0066】
物体に適用される「自然発生的」は、その物体を自然に見出すことができることを示す。例えば、自然において源から単離することができ、また実験室において人間により意図的に改質されていない、生物(ウイルスを含む)内に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、自然発生的である。
【0067】
「リンカー」は、共有結合により、またはイオン結合、ファンデルワールス結合または水素結合を通して2つの他の分子を連結する分子、例えば、5’末端において1つの相補的配列に、および3’末端において別の相補的配列にハイブリダイズして、2つの非相補的配列を連結する核酸分子を指す。ある特定の実施形態において、リンカーは、ペプチド結合を介して分子に連結するペプチドリンカーである。
【0068】
「腫瘍」または「新生物」または「癌」は、本明細書において使用される場合、原発腫瘍および/または転移の両方を含む。腫瘍は、例えば、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌または胃癌、およびそれらの肝臓への転移を含む。
RAPペプチド
RAP分子は、最初に、35アミノ酸シグナル配列を有する357アミノ酸タンパク質(Uniprot寄託P30533)として生成され、開裂して323アミノ酸ペプチドである成熟RAPを形成する。成熟RAPの323アミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示される。成熟RAPはまた、4アミノ酸C末端小胞体残留シグナルを保持する。
【0069】
RAPは、機能的に二座であり、第1および第3ドメイン(d1およびd3)の両方が、低ナノモル親和性で、LDLR内の相補型反復(CR)の特定のタンデム対に結合する(Andersen et al., Biochemistry 40, 15408−15417, 2001)。約110アミノ酸で構成されるドメイン3(d3)は、SEQ ID NO:1のアミノ酸210〜319に対応する。断片の使用は、免疫原性を最小化し、生成効率を最大化し、効力を改善する。しかしながら、単離されたd3は、全長RAPに関連したd3程強固に受容体に結合しない。d3のN末端領域およびd2のC末端領域内に見られる追加的配列は、安定な折り畳みおよび高い親和性の受容体結合を確実とするために必要である。(Lazic et al., Biochemistry 42, 14913−14920, 2003)。RAP d3およびLDLR CR34の間の錯体から得られた構造データ(Fisher et al., Mol Cell 22, 277−283, 2006)は、RAP d3の受容体結合配列が、柔軟なループにより連結された近似的に等しい長さの2つの逆平行アルファ螺旋内に見られることを示している。
【0070】
2つの逆平行螺旋の末端を接続してRAP d3の受容体結合単位を構成する非天然ジスルフィド結合を含む環化RAPが開発されている。[参照することによりそれらの開示の全体が本明細書に組み入れられる、共有特許出願第PCT/US2008/057863(WO2008/116171)およびPCT/US2007/78792(WO2008/036682)を参照されたい]。いくつかの実施形態において、環化ペプチドは、約75アミノ酸の長さであるが、環化されていないペプチドと比較して結合親和性が改善されており、110アミノ酸RAP d3に匹敵する親和性を有する。1つの例示的なペプチドは、ヒトRAPのアミノ酸246から313から得られ、アミノ酸置換は以下の通りである: E246C、L247G、G280A、L311A、およびS312C。このペプチドの配列は、SEQ ID NO:2に示される。他の例示的なペプチドは、例えば、SEQ ID NO:1のアミノ酸247〜311に少なくとも約80%同一であるか、または、SEQ ID NO:1のアミノ酸251〜303に少なくとも約80%同一であり、NおよびC末端またはその近く(例えば、末端から約5アミノ酸以内)でCys−Cys結合により結合している。
【0071】
SEQ ID NO:2の特性決定は、この環式ペプチドが約3.5nMの親和性でLRP1に結合したことを示している(WO2008/116171を参照されたい)。WO2008/116171は、LRP1に結合する他の環式RAPペプチドを開示している。例えば、mRAP−8cペプチド(以下のようなアミノ酸置換:E246C、L247GおよびL311GならびにS312Cを有するRAPのアミノ酸246から312)(SEQ ID NO:3)は、約4nMから6nMの親和性でLRP1(クラスタII)受容体に結合した。mRAPcペプチド(以下の修飾:A242G、R314G、E241CおよびI315Cを有するRAP d3)(SEQ ID NO:4)は、約10nMの親和性でLRP1に結合し、一方mRAP14cペプチド(以下のアミノ酸置換:F250C、L308GおよびQ309Cを有するRAP残基250〜309を含む)は、約21nMのLRP1に対する親和性を示した。これらのRAPペプチドのいずれも、本発明における使用に企図される。
【0072】
そのようなペプチドの複合化は、WO2008/116171においても開示されている。そのような複合体は、ペンタペプチドリンカー、GGSGG(SEQ ID NO:5)を含んでもよい。例示的実施形態において、複合体は、RAPペプチド自体またはペンタペプチドリンカーのN末端グリシンに部分を複合化することにより生成される。あるいは、1つ以上のリジンをペプチドまたはリンカーのN末端に付加してもよく、化学的(例えば治療的)部分がこれらのリジンに複合化される。例えば、1つのペプチド複合体は、リジン(K)の付加により修飾され、さらに、それぞれ2つの化学的部分に複合化した2つのリジン(K、K)に接続されたN末端リジンを含む。第1のリジン(K)はまた、2つの化学的部分を有するオルニチン残基に接続され、さらに、2つの化学的部分に複合化した最終リジン前記(K)に接続されている。
【0073】
これらのペプチドは、フコシダーゼ阻害薬DFJおよびFazを含む複数のフコシダーゼ阻害薬と容易に複合化することができる。ペプチドへの複数の阻害薬分子の複合化は、DFJおよびFazの酵素に対する既に高い親和性に結合力効果を付加することにより、複数の活性部位を有するホモテトラマー[17]であるリソソームフコシダーゼの非常に有効な阻害をもたらすべきである。モノマーペプチドまたはマルチマー化ペプチドの分子当たり少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、15個、20個、25個、30個またはそれ以上の阻害剤分子が複合化されることが企図される。いくつかの実施形態において、RAPペプチド分子に対する阻害薬分子の比は、1:1から12:1の間、または1.5:1から10:1の間である。
【0074】
RAPペプチド複合体は、肝細胞リソソームに急速に取り込まれ移動することが予測され、複合体のさらなるリソソーム分解を伴い、または伴わずに完全に活性となるはずである。理論に束縛されないが、このメカニズムを通して、LSD様フコシドーシスが肝細胞において誘発され、これらの細胞における糖タンパク質の過剰フコシル化の結果、腫瘍肝細胞におけるLSD効果の著しい向上が予測されることが示唆される。この手法は、肝細胞癌を処置しながら、他の肝臓以外の組織を保存し、正常肝組織を保存する新規な手段である。
【0075】
本発明による使用のためのRAPペプチドは、米国特許第5,474,766号および国際特許出願第PCT/US2006/36453号に記載のRAP断片および変異型ポリペプチドを含み、これらの文献のそれぞれは、そのようなペプチドならびに本発明の化合物および組成物における使用のためのその生成を開示する目的において、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる。RAPペプチドは、当業者に知られた任意のタンパク質調製および精製方法を使用して生成される。
【0076】
一実施形態において、本発明において有用なRAPペプチド(環式RAPペプチドを含む)のアミノ酸配列は、成熟RAPのN末端から少なくとも200および最大248のアミノ酸を欠失している。したがって、RAPペプチドは、成熟RAPのアミノ酸1〜209、1〜220、1〜225、1〜230、1〜235、1〜240、1〜241、1〜242、1〜243、または代替として1〜244、1〜245、1〜246、1〜247、もしくは1〜248を欠失していてもよい。関連する実施形態において、RAPペプチドアミノ酸配列は、さらに、成熟RAPのC末端から少なくとも4および最大11のアミノ酸を欠失している。したがって、RAPペプチドは、成熟RAPのアミノ酸314〜323もしくは313〜323、または代替として304〜323、305〜323、306〜323、307〜323、308〜323、309〜323、310〜323、311〜323、または312〜323を欠失していてもよい。関連する実施形態において、RAPペプチドアミノ酸配列は、(a)少なくとも50、55、60、65、70、75、80または85アミノ酸の長さであり、(b)アミノ酸256〜270を含む成熟RAPドメイン3の連続部分を含む。RAPペプチド(環式RAPペプチドを含む)の基礎を形成し得るRAPの例示的部分は、成熟RAP(SEQ ID NO:1)のアミノ酸210〜323、221〜323、210〜319、221〜319、243〜319、244〜319、245〜319、246〜319、247〜319、248〜319、249〜319、210〜313、221〜313、243〜313、244〜313、245〜313、246〜313、247〜313、248〜313,249〜313、210〜303、221〜303、243〜303、244〜303、245〜303、246〜303、247〜303、248〜303、または249〜303を含む。
企図される他のRAPペプチドの実施形態は、ヒトまたは哺乳動物RAPポリペプチドを含み、ポリペプチドは、282〜289、201〜210、および311〜319の位置にわたり、RAPの天然アミノ酸配列を含む。LRP受容体に結合するRAPの変異およびN末端またはC末端切断変異型が、Melman et al. (J. Biol. Chem. 276(31): 29338−46, 2001)に開示されており、参照することによりその全体が、および特にこれらのRAP変異および切断変異型に関して本明細書に組み入れられる。他の企図されるRAPポリペプチドは、アミノ酸85〜148および178〜248の間のRAPの天然配列を含む。(Farquhar et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:3161−3162 (1994)を参照されたい。)
さらなる実施形態において、本発明は、約103、約99、約95、約90、約85、約82、約80、約78、約76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、または56アミノ酸以下の長さを含む、様々なサイズのRAPペプチドまたは環式RAPペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、ペプチドが環式RAPペプチドである場合、共有結合は、約76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、または56アミノ酸だけ離間したアミノ酸の間に形成される。RAPペプチドの基礎を形成するこれらの断片は、それらがそれに実質的に相同性である限り、さらなる挿入または置換を含んでもよいことが理解される。
【0077】
WO2008/116171に記載のように、天然RAPのものと類似したLRP1に対する親和性および選択性(例えば、天然RAPと比較して約5倍以下の差異)を示す環式RAPペプチドを調製することができる。また、天然RAPと比較して改善されたLRP1に対する親和性を示す環式RAPペプチドもまた調製することができる。一実施形態において、環式RAPペプチドは、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、7倍、10倍、または20倍改善されたLRP1(P98157)に対する親和性(天然RAPと比べて)を示す。
【0078】
本発明により企図されるRAPペプチドは、天然RAP配列で構成されてもよく、または、天然配列に対する変異を含んでもよい。例示的実施形態において、本発明のRAPペプチドは、本明細書に記載されるSEQ ID NO:1から得られるRAPペプチドのいずれかに、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、本発明のRAPペプチドは、SEQ ID NO:1に示されるRAPのいずれかのアミノ酸210〜319、243〜313、246〜313、249〜303、または251〜303に、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0079】
LRP1に対する結合親和性をまだ保持する天然RAP配列に対して保存的置換(例えば、最大5、最大10、最大15、最大20または最大25)を含有する環式RAPペプチドが調製されてもよい。非保存的置換を含有するRAPペプチドもまた、LRP1に対する結合親和性を保持し得る。例えば、成熟RAPの位置217、249、または251のいずれか1つにおける非保存的変異は、結合親和性に影響しないことが示されている。位置241、242、247、250、308、309、311、314における非保存的および保存的変異もまた調製されている。
【0080】
上記実施形態のいずれにおいても、RAPペプチドは、ペプチドのN末端またはその近くのシステイン、およびペプチドのC末端またはその近くのシステイン(例えば、末端から3、4または5アミノ酸未満)を含有し、2つのシステイン間のジスルフィド結合形成によるペプチドの環化およびアルファ螺旋の安定化を可能とし得る。任意選択で、システムおよびアルファ螺旋の間にグリシンまたはプロリンが介在してもよい(例えば、N末端におけるCys−GlyおよびC末端におけるGly−Cys)。グリシンの導入により、隣接する非天然の螺旋間ジスルフィド結合のためのアルファ螺旋における断裂が可能となる。
【0081】
本明細書に記載のRAPペプチドのいずれも、本明細書に記載のようなオリゴマーの組み合わせにマルチマー化されることがさらに企図される。「マルチマー化RAPペプチド」は、本明細書において使用される場合、2つ以上のRAPペプチドを含むポリペプチドを指す。「マルチマー」および「オリゴマー」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。一実施形態において、オリゴマーまたはマルチマーは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つまたは少なくとも8つの環式RAPペプチドを含む。例示的一実施形態において、環式RAPペプチドは、マルチマー化またはオリゴマー化を促進するためにビオチン分子に複合化される。次いで、ビオチン複合化環式ペプチドは、ストレプトアビジンへの結合により、または抗ビオチン抗体への結合によりマルチマー化され得る。環式RAPペプチドオリゴマーまたはマルチマーはまた、当技術分野において周知の、および以下に記載の他の技術により調製され得る。
【0082】
ペプチドのマルチマーまたはオリゴマーを形成するためのいくつかの技術が知られている。例えば、ペプチドは、本明細書に記載のようなリンカーにより、またはポリエチレングリコールを介して結合され得る。参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる、Zhang et al., Bioconjug Chem. 14:86−92, 2003(ポリ(エチレングリコール)(PEG)スペーサまたはちょうど2つのアミノ酸のいずれかいにより接続されたアミロイド線維結合ペプチドは、約100倍大きい線維に対する親和性を示し、分岐PEG上のペプチドの6つの複写は、10000倍大きい親和性をもたらした)を参照されたい。ペプチドは、ビオチン化後にストレプトアビジンへの結合により容易にマルチマー化され得る。例えば、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる、Guillaume et al., J. Biol. Chem., 278: 4500−4509, 2003(ペプチドマルチマーは、アビジンまたはアビジン誘導体を介した結合により調製することができ、テトラマーおよびオクタマーの均質調製が可能である)を参照されたい。受容体結合能力を有するペプチドは、抗体または免疫グロブリン骨格の異なるCDR領域にグラフトされ得る。2つのグラフト化mpl受容体結合ペプチドを含有する抗体および断片が、天然リガンドと等しい効力を有することが予測される様式で、mpl受容体を刺激したことを説明している、Proc Natl Acad Sci U S A. 103:14307−12, 2006(参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい。ペプチドは、リンカーあり、またはなしで、一列に、または分岐状態で抗体Fcドメインに結合され得る。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2000年5月4日公開の国際公開第WO00/24782号を参照されたい。ペプチドおよび他のタンパク質は、多酵素複合体から得られる巨大分子骨格上に現れ得る。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Domingo et al., J Mol Biol. 305:259−67, 2001を参照されたい。ペプチドを示すのに好適なタンパク質骨格に関する考察に関しては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Hosse et al., Protein Science 15:14−27, 2006(フィブロネクチンIII型ドメイン、リポカリン、ノッティン、シトクロムb562、クニッツ型プロテアーゼ阻害薬、Zドメイン、および炭水化物結合モジュールCBM4−2等の骨格を考察している)を参照されたい。
【0083】
いくつかの例示的実施形態において、二価オリゴマーの組み合わせが、環式RAPペプチドおよび抗体Fc領域を含むポリペプチドのホモ二量体化により調製される。四価オリゴマーの組み合わせは、テトラマー免疫グロブリン(2つの重鎖および2つの軽鎖を含有する)における抗体可変領域を、RAPペプチドで置き換えることにより調製される。さらに他の例示的実施形態において、二価、三価、四価、または他のオリゴマーの組み合わせが、環式RAPペプチドのPEG分子への複合化により作製される。他のオリゴマーの組み合わせは、当業者により想定され得る。
【0084】
デンドリマーもまた、RAPペプチドのマルチマー化に好適である。デンドリマーは、高度に分岐しており、多くの場合球形の巨大分子ポリマーである。デンドリマーの三次元オリゴマー構造は、複数の反応基を有するコア分子から開始する反復反応シーケンスにより調製される。同じく複数の反応基を有するモノマー単位がコアと反応すると、デンドリマーの外側の結合を含む反応基の数が増加する。モノマー分子の連続層がデンドリマーの表面に添加されてもよく、分岐および表面上の反応基の数は、層が追加されるたびに幾何学的に増加する。デンドリマー中のモノマー分子の層の数は、デンドリマーの「世代」と呼ぶことができる。デンドリマーの外側表面上の反応性官能基の総数は、コアが保有する反応基の数、デンドリマーを成長させるために使用されるモノマーが保有する反応基の数、およびデンドリマーの世代に依存する。米国特許第6,852,842号を参照されたい。
【0085】
第1、第2、第3、第4、第5または第6世代リジンデンドリマー、例えばK4K2KリジンデンドリマーおよびKG6リジンデンドリマーを含むがこれらに限定されないリジンデンドリマー等の、様々な種類のデンドリマーが当技術分野において説明されている(Okuda et al., J Controlled Release 116, 330−336, 2006)。他のデンドリマーは、PAMAMデンドリマー、POPAMデンドリマー、トリアジンデンドリマー、およびジアミノブタン(DAB)デンドリマーを含む。例えば、Grayson and Frechet, Chem Rev. 2001, 101, 3819;Mintzer et al., New J Chem. 2009;33:1918−1925;米国特許第6,852,842号;米国特許出願公開第20090287005号、米国特許出願公開第20090240028号および米国特許出願公開第20090182151号を参照されたい。
【0086】
RAP複合体
「RAP複合体」または「RAPペプチド複合体」は、それぞれ、フコシダーゼ阻害薬等の活性薬剤に結合したRAPペプチドを含む化合物を指す。本明細書において使用される場合、「複合化された」は、阻害剤(複数を含む)およびRAPペプチドが、例えば、共有化学結合、ファンデルワールス力もしくは疎水性相互作用等の物理的力、カプセル化、埋め込み、またはそれらの組み合わせにより物理的に結合していることを意味する。好ましい実施形態において、阻害剤(複数を含む)およびRAPペプチドは、共有化学結合により物理的に結合している。複数の治療薬剤の場合、様々な複合体の組み合わせを使用することができる。いくつかの薬剤は、RAPペプチドへの複合化に使用されるアルコール、酸、カルボニル、チオールまたはアミン基等の官能基を含有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、直接的(介在する原子がない)または間接的(リンカー、例えば共有結合した原子の鎖を介する)に結合し得る共有化学結合は、RAPペプチドおよび阻害剤を連結する。好ましい実施形態において、複合体のRAPペプチドおよび阻害剤部分は、RAPペプチドの原子と阻害剤の原子との間の共有結合により直接的に結合する。いくつかの好ましい実施形態において、受容体リンカー分は、共有結合、または事実上任意のアミノ酸配列のペプチド、またはRAPペプチドを阻害剤に接続することができる任意の分子もしくは原子を含むリンカーにより、本発明による化合物の複合剤部分に接続される。
【0088】
いくつかの実施形態において、リンカーは、1原子から約60原子、または1原子から30原子以上、2原子から5原子、2原子から10原子、5原子から10原子、または10原子から20原子の長さの原子鎖を含む。いくつかの実施形態において、鎖原子は、すべて炭素原子である。いくつかの実施形態において、鎖原子は、C、O、NおよびSからなる群から選択される。鎖原子およびリンカーは、その予期される溶解度(親水性)に従い、より可溶性の複合体を生成するように選択され得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、リソソーム内で酵素攻撃を受ける官能基を提供する。いくつかの実施形態において、リンカーは、標的組織または器官に見られる酵素による攻撃を受け、攻撃または加水分解後に阻害剤とRAPペプチドとの間の結合として機能する官能基を提供する。いくつかの実施形態において、リンカーは、標的部位に見られる条件下(例えば、リソソームの低pH)で加水分解を受ける官能基を提供する。リンカーは、1つ以上のそのような官能基を含有してもよい。いくつかの実施形態において、リンカーの長さは、RAPペプチドリンカー位および活性薬剤活性リンカー位の1つまたは両方の間の立体障害(活性薬剤が大きい場合)の可能性を低減するのに十分長い。
【0089】
リンカーが共有結合またはペプチドであり、活性薬剤がポリペプチドである場合、複合物全体は、融合タンパク質となり得る。そのようなペプチジルリンカーは任意の長さであってもよい。例示的なリンカーは、約1から50アミノ酸の長さ、5から50、または10から30アミノ酸の長さである。そのような融合タンパク質は、当業者に知られた組み換え遺伝子操作方法により生成され得る。いくつかの実施形態において、複合体のRAPペプチド部分は、迅速に分解して活性化合物を放出するように製剤化される。他の実施形態において、リンカーは、細胞間、またはより好ましくはリソソーム環境条件下で開裂し、RAPペプチドポリペプチド部分から活性薬剤部分を放出または分離する。
【0090】
例示的なペプチドリンカーは、第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代または第6世代リジンデンドリマー、例えばK4K2KリジンデンドリマーまたはKG6リジンデンドリマーを含むがこれらの限定されないリジンデンドリマー等の、当技術分野において知られた任意のデンドリマーを含む(Okuda et al., J Controlled Release 116, 330−336, 2006)。他のデンドリマーは、PAMAM(ポリ(アミドアミン))デンドリマー、POPAM(ポリアミノプロピレンアミン)デンドリマー、POPAM−PAMAMハイブリッドデンドリマー、トリアジンデンドリマーを含む。例えば、Grayson and Frechet, Chem Rev. 101: 3819, 2001;Mintzer et al., New J Chem. 33:1918−1925, 2009;Majoros et al., Macromolecules, 41:8372−8379, 2008;ならびに米国特許出願公開第20090287005号、米国特許出願公開第20090240028号および米国特許出願公開第20090182151号を参照されたい。
【0091】
複合体は、同じまたは複数のRAPペプチドに結合した1つ以上の阻害剤を含むことができる。例えば、複合化反応は、RAPペプチド(複数を含む)に対し、約1個から5個、約1個から10個、約5個から10個、約10個から20個、約20個から30個、または30個以上の阻害剤分子を複合化し得る。ある特定の実施形態において、RAP複合体は、主に(例えば50%超、70%超、80%超または90%超)、RAPペプチド分子当たり1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれ以上の阻害薬分子を、例えば、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1の化学量論比で含む。RAPペプチドに対するフコシダーゼ阻害薬の他の化学量論比は、1:2、1:3、3:2、5:2、7:2、9:2、11:2、4:3、5:3、7:3、8:3、10:3、11:3を含む。いくつかの実施形態において、RAPペプチド分子に対する阻害薬分子の比は、1:1から12:1の間、または1.5:1から10:1の間である。これらの製剤は、混合物として使用されてもよく、または、特定の化学量論的製剤に精製されてもよい。
【0092】
当業者は、どの形態およびどの化学量論比が好ましいかを決定することができる。さらに、標的部位または区画への2種以上の薬剤の送達が望ましい場合、2種以上の阻害剤をRAPペプチドに結合してもよい。複数の阻害剤種が同じRAPペプチド、例えばDFJ−Faz RAP、または他の複合体に結合してもよい。したがって、複合体は、一連の化学量論比からなってもよく、2種以上の阻害剤を組み込んでもよい。これらもまた、精製された混合物に分離されてもよく、または凝集体として使用されてもよい。
【0093】
本明細書に記載のRAPペプチド複合体は、当技術分野において知られているように、その安定性または薬物動態特性(例えば、PEG化または他の水溶性ポリマーの結合)を高めるように改質されてもよい。例示的な水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー等、モノメトキシ−PEG、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、デキストラン、ポリ−(N−ビニルピロリドン)、脂肪酸、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、HPMA、FLEXIMAR(商標)、およびポリビニルアルコール、モノ−(C1−C10)アルコキシ−PEG、アリールオキシ−PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス−スクシンイミジルカーボネートPEG、セルロース、他の炭水化物形ポリマー、ならびにこれらのいずれかの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0094】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、直鎖(例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)、分岐鎖もしくは複数腕(例えば、フォーク型PEGまたはポリオールコアに結合したPEG)、樹枝状、または分解性リンカー含有ポリマーである。さらに、ポリマー分子の内部構造は、任意の数の異なるパターンで組織化されていてもよく、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー、およびブロックトリポリマーからなる群から選択され得る。
【0095】
「PEG化された」という用語は、本明細書において使用される場合、1つ以上のPEG部分に結合したタンパク質、タンパク質複合体またはポリペプチドを指す。「PEG化」という用語は、本明細書において使用される場合、1つ以上のPEGをタンパク質に結合させるプロセスを指す。一実施形態において、前記PEGの分子量は、3kDaから100kDa、5kDaから60kDa、5kDaから40kDa、5kDaから25kDa、5kDaから15kDa、または5kDaから10kDaの範囲である。
【0096】
好適なリンカーおよびその官能基、ならびにそれらを調製するための容易に適合可能な合成化学方法は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2003253890号に記載されている。
RAP複合体の特性決定
i.標識
いくつかの実施形態において、RAPペプチド系複合体は、その検出を促進するために標識化される。「標識」または「検出可能部分」は、分光学的、物理化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段により検出可能な組成物である。
【0097】
上述のように、使用されるスクリーニングアッセイに依存して、複合体の活性薬剤、リンカーまたはRAPペプチド部分は標識化されてもよい。使用される特定の標識または検出可能な基は、複合体の生物活性に著しく干渉しない限り、本発明の重要な態様ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的性質を有する任意の物質であってもよい。したがって、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能な任意の組成物である。
【0098】
本発明における使用に好適な標識の例は、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン等)、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、高電子密度試薬、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいて一般的に使用される他の酵素)、ならびに比色標識、例えばコロイド金またはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)を含むがこれらに限定されない。例えば、標識をハプテンまたはペプチド内に組み込むことにより、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよび他のタンパク質を検出可能とすることができる。
【0099】
標識は、当技術分野において周知の方法に従い、アッセイの所望の成分に直接的または間接的に結合させることができる。一実施形態において、標識は、本発明による活性薬剤を複合化するためのイソシアネート試薬を使用して、バイオポリマーに共有結合させることができる。本発明の一態様において、本発明の二官能性イソシアネート試薬を使用して、標識をバイオポリマーに複合化し、活性薬剤が結合していない標識バイオポリマー複合体を形成することができる。標識バイオポリマー複合体は、本発明による標識化複合体の合成のための中間体として使用されてもよく、または、バイオポリマー複合体を検出するために使用されてもよい。上述のように、広範な標識を使用することができるが、標識の選択は、必要とされる感度、アッセイの所望の成分との複合化の容易性、安定性要件、利用可能な機器、および廃棄条件に依存する。非放射性標識は、間接的手段により結合させることが多い。一般に、リガンド分子(例えばビオチン)は、分子に共有結合する。リガンドは、本質的に検出可能であるか、または検出可能な酵素、蛍光化合物、もしくは化学発光化合物等のシグナル系に共有結合している別の分子(例えばストレプトアビジン)に結合する。
【0100】
複合体はまた、例えば、酵素またはフルオロフォアとの複合化により、シグナル生成化合物に直接的に複合化され得る。標識としての使用に好適な酵素は、加水分解酵素、特にホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ、特にペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されない。標識としての使用に好適な蛍光化合物、すなわちフルオロフォアは、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン等を含むが、これらに限定されない。好適なフルオロフォアのさらなる例は、エオシン、TRITC−アミン、キニン、フルオレセインW、アクリジンイエロー、リサミンローダミン、Bスルホニルクロリドエリスロセイン、ルテニウム(トリス、ビピリジニウム)、テキサスレッド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド等を含むが、これらに限定されない。標識としての使用に好適な化学発光化合物は、ルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えばルミノールを含むが、これらに限定されない。本発明の方法において使用することができる様々な標識化またはシグナル生成系の考察に関しては、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
【0101】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、標識が放射性標識である場合、検出手段は、シンチレーションカウンタまたはオートラジオグラフィにおける写真用フィルムを含む。標識が蛍光標識である場合、標識は、適切な波長の光で蛍光色素を励起し、得られる蛍光発光を検出することにより検出することができる。蛍光発光は、例えば電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管等の電子検出器の使用により視覚的に検出することができる。同様に、酵素標識は、酵素用の適切な基質を提供し、得られる反応生成物を検出することにより検出され得る。比色または化学発光標識は、単に標識に関連する色を観察することにより検出することができる。本発明の方法における使用に好適な他の標識化および検出システムは、当業者に容易に明らかとなる。そのような標識化されたモジュレータおよびリガンドは、疾患または健康状態の診断に使用することができる。
【0102】
RAP受容体LRP1
LRP1(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1)は、低密度リポタンパク質受容体「LDLR」ファミリーの1つである。LRP1は、4525アミノ酸(600kDa)の巨大タンパク質であり、フューリンにより開裂して、非共有結合を維持する2つの515(α)kDおよび85(β)kDaの部分単位を生成する。LRPは、ほとんどの組織型において発現するが、主に肝臓に見出される。低密度リポタンパク質(LDL)受容体ファミリーの他のメンバーは、LDL−R(132kDa);LRP2(メガリン、gp330);LRP/LRP1およびLRP1B(600kDa);VLDL−R(130kDa);LRP5;LRP6;apoER−2(LRP−8、130kDa);Mosaic LDL−R(LR11、250KDa);ならびにLRP3、LRP6、およびLRP−7等の他のメンバーを含む。ファミリーの特徴的な側面は、細胞表面発現;細胞外リガンド結合ドメイン反復(DxSDE);リガンド結合のためのCa++の必要性;RAPおよびEの結合;EGF前駆体ホモロジードメイン反復(YWTD);単一膜貫通領域;細胞質ドメインにおける内在性シグナル(FDNPXY);ならびに様々なリガンドの受容体介在エンドサイトーシスを含む。LRP1を含むファミリーのいくつかのメンバーは、シグナル伝達経路に関与する。いくつかの実施形態において、本発明のRAPペプチド複合体は、LDL−Rファミリーの他のメンバーと比較して、例えば、1.5倍 、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍またはそれ以上のLRP1に対する親和性で、LRP1に優先的に結合する。
【0103】
LRP1は、GenBank Accession No.:X13916およびSwissProt Primary Accession No.:Q07954.を有するLRP1遺伝子/タンパク質の代替名は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1[前駆体]、LRP、α−2−マクログロブリン受容体、A2MR、アポリポタンパク質E受容体、ApoER、CD91、LRP1またはA2MRを含む。肝臓および血管平滑筋組織上に発現したLRP1は、これらの組織内にリガンドを取り込ませることができる。
【0104】
α−L−フコシダーゼおよびフコシダーゼ阻害薬
α−L−フコシダーゼ酵素(Genbank Accession No. NP_000138)(参照により本明細書に組み入れられる)は、通常、リソソーム内の長い糖鎖(オリゴ糖)の開裂に関与する。酵素がない場合、糖鎖が蓄積し、最終的にはフコシドーシスの臨床的特徴をもたらす。フコシドーシスは、組織内の糖フコースの蓄積を伴う欠陥性α−L−フコシダーゼにより引き起こされる常染色体劣性リソソーム蓄積症である。例えば、Johnson et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 133:90−7, 1986を参照されたい。異なる表現型は、神経機能低下、発育遅延、内臓巨大症、および重症初期形態における発作、粗い顔面特徴、びまん性体部被角血管腫、痙縮およびより長期的な生存形態における遅延精神運動発達等の臨床的特徴を含む。
【0105】
フコシドーシスは、フコシダーゼ遺伝子における変異を識別sるための遺伝子検査を用いて検出することができる。フコシダーゼはまた、フコシドーシス患者の尿中のフコシル化タンパク質レベルの増加の存在により診断される(Michalski et al., Eur J Biochem. 201: 439−58, 1991)。
【0106】
α−L−フコシダーゼは、増加したレベルの肝細胞癌において検出されており、HCCのマーカーとして提案されている(Giardina et al., Cancer 70:1044−48, 1992)。
【0107】
多くのフコシダーゼ阻害薬は、炭水化物結合のフコシダーゼ加水分解の酵素活性に干渉する小分子である。いくつかのフコシダーゼ阻害薬は、天然基質の糖部分との構造的類似性によりグリコシダーゼを阻害する糖模倣アルカロイドであるノジリマイシンイミノ糖の構造に基づいている(米国特許第5,100,797号)。イミノ糖は、細菌グリコシダーゼ阻害薬に類似している。イミノ糖化合物を調製するには、単糖類の酸素含有環を、窒素含有環(ピロリジン、ピペリジン)で置き換え、糖模倣体として機能するイミノ糖をもたらす。
【0108】
L−デオキシフコノジリマイシン(DFJ)は、ヒト肝臓α−L−フコシダーゼの有効な特異的および競合的阻害薬(10nMの範囲)である。ピペリジン環炭素原子2、3および4におけるヒドロキシル基の構成を保持するデオキシフコノジリマイシンの構造的類似体は、フコシダーゼ阻害薬活性を保持することが示されている。例えば、炭素原子1(すなわち1−αおよび1−β−ホモフコノジリマイシン)および炭素原子5における構成の両方における異なる置換基は、効力を改変し得るが、活性を破壊することはない。Winchester et al., Biochem. J. 265:277−282, 1990を参照されたい。
【0109】
他のフコシダーゼ阻害薬は、炭水化物を模倣する窒素環含有化合物であるとともにグリコシル加水分解酵素機能の有効な阻害薬である7員アゼパン等のアザ糖である[12]。イズロン酸糖のヒドロキシル構成およびカルボキシル官能基を有しているにもかかわらず、これらの新規な分子はまた、低ナノモル範囲の効力でフコシダーゼを阻害する[12]。ほとんどのイミノ糖阻害薬と同様、アミンのアルキル修飾は、阻害薬の効力に大きく作用して、ペプチド等の大型バイオポリマーへの阻害薬の容易かつ安定な複合化を可能とすることは期待されない[13;14]。さらに他のフコシダーゼ阻害薬は、置換シクロペンチルアミンである(米国特許第5,382,709号)。
【0110】
例示的フコシダーゼ阻害薬は、L−デオキシフコノジリマイシン(DFJ)、β−L−ホモフコノノジリマイシンおよび1−β−C−置換デオキシマンノジリマイシン(β−1−C−メチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−エチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−フェニルデオキシマンノジリマイシン)等のノジリマイシンイミノ糖、ならびに((3R,4R,5S,6S)−1−ブチル−4,5,6−トリヒドロキシアゼパン−3−カルボン酸(「Faz」)等の7員アゼパンを含むが、これらに限定されない。本発明における使用に企図される追加的なフコシダーゼ阻害薬は、置換(1−α,2−β,3−αまたはβ,4−α,5−αまたはβ)−2,3,4−トリヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)シクロペンチルアミンおよび2,6−イミノ−2,6,7−トリデオキシ−D−グリセロ−D−グルコへプチトールを含むが、これに限定されない。追加的フコシダーゼ阻害薬は、米国特許第5,382,709号、米国特許第5,240,707号、米国特許第5,153,325号、米国特許第5,100,797号、米国特許第5,096,909および米国特許第5,017,704号に開示されている。
【0111】
1pM〜100nM範囲、または1〜100nM範囲で活性すなわちα−L−フコシダーゼをin vitroで阻害する能力を保持するフコシダーゼ阻害薬が、本明細書に記載のような複合体における使用に企図される。
薬学的組成物を使用する方法、およびそれらの投与
複合体は、水性または非水性溶媒、例えば植物油または他の同様の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコール等に溶解、懸濁または乳化させることにより、あるいは所望により、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および保存剤等の従来の添加剤により、注射用調製物として製剤化することができる。
【0112】
複合体は、吸入により投与されるエアロゾル製剤として利用することができる。本発明の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の圧縮された許容される噴射剤中に配合することができる。
【0113】
注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、滅菌生理食塩水または別の滅菌された薬学的に許容される担体中の溶液として、組成物中に複合体を含んでもよい。
【0114】
実際の使用においては、本明細書に記載のRAPペプチド複合体は、従来の薬学的配合技術に従い、薬学的担体と密に混合された活性成分として組み合わせることができる。キャリアは、例えば経口または非経口(静脈内を含む)等、投与するのに望ましい形態に依存して、様々な形態をとることができる。
【0115】
経皮投与経路に関して、薬物の経皮投与の方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, (Gennaro et al. Eds. Mack Publishing Co., 1985)に開示されている。真皮または皮膚パッチは、本発明の方法において有用な複合体の経皮送達の1つの手段である。パッチは、好ましくは、化合物の吸収を増加させるためにDMSO等の吸収促進薬を提供する。経皮薬物送達のための他の方法は、米国特許第5,962,012号、米国特許第6,261,595号、および米国特許第6,261,595号に開示されている。これらのそれぞれは、参照によりその全体が組み入れられる。
【0116】
ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤等の薬学的に許容される賦形剤が市販されている。さらに、pH調整剤および緩衝剤、張力調整剤、安定剤、湿潤剤等の薬学的に許容される補助剤が市販されている。
【0117】
用量レベルは、特定の化合物、症状の重症度および対象における副作用の生じ易さの関数として変動し得ることが、当業者に理解される。所与の化合物に対する好ましい用量は、患者、実験動物、およびin vitroで行われる用量反応および薬物動態学的評価を含むがこれに限定されない様々な手段により、当業者により容易に決定され得る。
【0118】
これらの態様のそれぞれにおいて、組成物は、限定されることなく、経口、直腸内、局所、非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含む)、経肺(経鼻もしくは経口吸引)、または経鼻投与に好適な組成物を含むが、任意の所与の場合における最も好適な経路は、処置されている状態の性質および重症度、ならびに活性成分の性質に一部依存する。例示的な投与経路は、経口および静脈内投与である。組成物は、単位投与形態で好都合に与えられてもよく、また、調剤技術分野において周知のあらゆる方法により調製することができる。
【0119】
本発明の組成物は、ウイルスエンベロープまたはベシクル内にカプセル化または結合した、あるいは細胞内に組み込まれた形態で投与されてもよい。ベシクルは、通常球形であり多くの場合脂質であるミセル粒子である。リポソームは、二分子膜から形成されるベシクルである。好適なベシクルは、単層ベシクルおよび多重膜脂質ベシクルまたはリポソームを含むが、これらに限定されない。そのようなベシクルおよびリポソームは、標準的技術、例えば米国特許第4,394,448号に記載のもの等を使用して、広範な脂質またはリン脂質化合物、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、糖脂質、ガングリオシド等から調製することができる。そのようなベシクルまたはリポソームは、化合物を細胞内に投与する、および化合物を標的器官に送達するために使用することができる。対象となる組成物の制御放出はまた、カプセル化を使用して達成することができる(例えば、米国特許第5,186,941号を参照されたい)。
【0120】
RAPペプチド複合体を血流内に送達する任意の投与経路を使用することができる。好ましくは、組成物は、非経口投与され、最も好ましくは静脈内投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、門脈から投与される。頸静脈内および頸動脈内注射もまた有用である。組成物は、腹腔内または皮下または筋肉内等、局所的または領域的に投与されてもよい。一形態において、組成物は、好適な薬学的希釈剤または担体とともに投与される。
【0121】
投与される用量は、個人の必要性、所望の効果、使用される活性薬剤、バイオポリマー、および選択される投与経路に依存する。複合体の好ましい用量は、約0.2pmol/kgから約25nmol/kgの範囲であり、特に好ましい用量は、2〜250pmol/kgの範囲であり、代替として、複合体の好ましい用量は、0.02mg/kgから2000mg/kgまたは0.1mg/kgから100mg/kgの範囲であってもよい。これらの用量は、RAP複合体と関連する阻害薬部分の数に影響される。代替として、用量は、投与される阻害剤のモルに基づき計算されてもよい。
【0122】
当業者は、複合化した活性薬剤の遊離した形態に対して使用される推奨用量に一部基づいて、RAPペプチドに結合する化合物の好適な用量を決定することができる。
【0123】
本発明の複合体およびモジュレータは、動物における、例えば哺乳動物、特に人間における治療的、予防的および診断的介入に有用である。
【0124】
主題の方法は、様々な異なる疾患状態の処置における使用が見出される。ある特定の実施形態において、特に興味深いのは、フコシダーゼ阻害薬の利益が認められているが、阻害薬が標的部位、領域または区画に適切に送達されずに完全に満足のいく治療結果が得られない疾患状態における主題の方法の使用である。阻害剤をRAPペプチドに複合化する主題の方法は、フコシダーゼ阻害薬の治療有効性および治療指数を向上させるために使用される。
【0125】
主題の複合体により処置可能な具体的な疾患状態は変動する。したがって、肝臓に影響し、本発明の方法により処置可能な疾患状態は、肝臓腫瘍の成長を引き起こす可能性のある、細胞増殖疾患、例えば腫瘍性疾患、自己免疫疾患、ホルモン異常疾患、変性疾患、加齢による疾患等を含む。
【0126】
処置とは、疾患の罹患の可能性の低減、疾患の予防、疾患の進行の抑制、停止または逆転、ホストを苦しめている疾患状態に関連した症状の改善を含む、複合体の投与に関連した対象に対する任意の有益な結果を包含することを意図し、改善または利益は、少なくとも、関連した炎症および疼痛等の処置されている病態に関連したパラメータ、例えば症状の大きさの低減を指すように、広い意味で使用される。したがって、処置はまた、ホストがもはや病態に、または少なくとも病態を特徴付ける症状に苦しめられることがないように、病態、または少なくともそれに関連した症状が完全に阻害される、例えば発生が予防される、または停止される、例えば終結される状況を含む。
RAPペプチド複合体の肝臓への送達
肝臓の大部分は、主に門脈によりかん流される。腫瘍の動脈血への依存は、初回通過捕捉の効率と併せて、RAP複合体の静脈内投与後の、非癌性肝臓組織のかなりの部分の保存が可能となるはずである。
【0127】
肝臓の脈環構造によってもたらされる潜在的利点に加えて、HCC腫瘍細胞および周囲の組織上でのLRP1の相対的発現レベルは、RAP複合体の有効性にさらに有利となる。研究により、悪性形質転換後、肝細胞上のLRP1発現が少なくとも10倍向上したことが実証されている(Laithwaite et al., Toxicon 39, 1283−1290, 2001)。好対照として、他では、LRP1が肝硬変組織以外の非腫瘍肝臓組織において著しく低発現であることが示されている (Hollestelle et al., Thromb Haemost 91, 267−275, 2004)。損傷肝臓の他の部分での減弱した発現とともに、腫瘍細胞上で向上したLRP1発現は、初回通過捕捉による動脈送達のように、腫瘍組織に対する優先性を有するRAP複合体の不均一送達をもたらすはずである。化学療法薬に対して全体的に向上した急速に増殖する腫瘍細胞の感受性とともに、不均一送達により、減弱した肝臓保存が提示する処置に対する障壁を、HCC患者の大多数において回避することが可能となる。
【0128】
RAPは、投与後、肝臓への急速な拡散を示す。30ピコモルのタンパク質の静脈内ボーラス注射後、外因性RAPの70%超が10分以内に肝臓に蓄積する(Warshawsky et al., J Clin Invest 92:937−944, 1993)。注射されたRAPの循環半減期は、分未満である。これらの薬物動態は、ラットにおける2.5mg/kg(60nmol/kg)までの静脈内注射でも観察される(Warshawsky et al., 上記参照)。同様の薬物動態が、別の高親和性LRP1リガンド、プロテアーゼ活性化α−2−マクログロブリン(725kDテトラマー血清糖タンパク質)においても報告されている(Davidsen et al., Biochim Biophys Acta 846:85−92, 1985)。少量のRAP(<注入量の1%)のみが、心臓、脳、筋肉または腎臓に蓄積し、これらの組織においてRAP結合LDLRの組織および血管の両方の発現がこの適用において無視できることを示している。静脈内投与されたRAPは、げっ歯類およびネコの種において測定可能な毒性を示していない。肝臓によるRAPの捕捉効率は、最初、肝細胞上の豊富な細胞表面ヘパリン硫酸プロテオグリカンへの低親和性結合ステップにより、続いてLRP1による高親和性結合およびエンドサイトーシスにより向上する(Herz et al., Proc Natl Acad Sci U S A 92:4611−4615, 1995; Mahley et al., J Lipid Res 40:1−16, 1999)。
【0129】
いくつかの因子は、RAP複合体による選択的肝腫瘍標的化に有利であるが、また、そのような薬剤は転移したHCCにも有効であることが示唆されている。転移した腫瘍細胞は、異所部位への移行後にそれらの特徴を保持する傾向があり、肝外転移したヒトHCCにおいてLRP1の減弱していない発現を示している(Gao et al., World J Gastroenterol 10:3107−3111, 2004)。この因子は、転移したHCCを同様に、静脈内投与されたフコシダーゼ阻害薬を含むRAPペプチド複合体の影響を受けやすい状態にすることができる。
肝障害
本発明の一態様は、フコシダーゼ阻害薬のRAPペプチドへの複合化、およびそのような複合体の投与を企図する。
【0130】
本発明により企図される肝疾患または肝障害は、以下に述べる傷害を含むが、これらに限定されない。肝細胞癌、すなわち肝癌は、世界で5番目に多い癌であり、発症率は着実に上昇している。腫瘍原性肝細胞は、高レベルのLRP1発現を保持する。肝細胞癌は、化学療法に対する応答が十分ではないが、これは、腫瘍細胞が高い比率で薬物耐性を示すため、および使用される化学療法が、全身性(静脈内)投与に起因して、特に心臓および腎臓において深刻な毒性を有するためである。
【0131】
肝炎は、肝臓の炎症の総称である。肝炎は急性または慢性であり得、例えばウイルス(例えば、A型、B型、C型、D型、もしくはE型肝炎または非ABCDE型、CMV、Epstein−Barr肝炎)、真菌感染症、リケッチア感染症もしくは寄生虫感染症、アルコール、化学的毒素、薬物(例えば、アセトアミノフェン、アミオダロン、イソニアジド、ハロタン、クロルプロマジン、エリスロマイシン)、代謝性肝疾患(例えば、ウィルソン病、α1−アンチトリプシン欠乏症)、癌、突発性自己免疫性肝疾患、肝硬変(例えば、原発性胆汁性肝硬変)、胆管閉塞に起因する急性もしくは慢性肝不全を含む。A型、B型および/またはC型ウイルス肝炎による肝臓の感染は、徐々に肝疾患へと進行し、肝不全に至る可能性がある。急性肝炎感染は、最も一般的にはA型肝炎により引き起こされる。B型肝炎およびC型肝炎の両方の感染症は、体内に残留し、長期にわたる感染症(慢性)となり得る。C型肝炎は、肝硬変および癌を含む危険状態を引き起こす可能性がある。
【0132】
RAPペプチドに複合化したフコシダーゼ阻害薬を使用して処置可能な、企図されるさらなる肝障害または状態は、脂肪肝、胆汁うっ滞、肝硬変、中毒性肝障害、(例えば、アフラトキシンB1関連癌等の薬物毒性または環境毒性に起因するもの)、および遺伝性ヘモクロマトーシスである。
【0133】
肝腫瘍を有する対象に対するRAP−ペプチド−フコシダーゼ阻害薬の投与は、化学療法薬、細胞毒性薬、放射性同位体、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗炎症薬、抗体、および肝腫瘍または肝腫瘍の発達に関連した他の肝疾患の処置に有用な他の治療薬を含むがこれらに限定されない、第2の薬剤とともに行われることが企図される。
【0134】
肝臓癌の処置のためのRAPペプチド複合体と組み合わせたHCC患者に対する投与用の候補薬物は、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、マイトマイシンC、シスプラチン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、および表1に示す他の化学療法薬、アデホビル、ラミブジン、エンテカビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグ化インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、および他の抗ウイルス薬、ビタミンE、ウルソデオキシコール酸、ならびに肝障害を処置するために使用される他の薬剤を含むが、これらに限定されない。さらなる薬剤を表1に示す。
【0135】
【表1−1】

【0136】
【表1−2】

【0137】
【表1−3】

【0138】
【表1−4】

腫瘍の処置に有用な細胞毒性薬は、塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、クロランブシル、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジンおよびストレプトゾシンを含むが、これらに限定されない。
【0139】
腫瘍の処置に有用な放射性同位体は、131I、125I、111In、90Y、67Cu、127Lu、212Bi、213Bi、255Fm、149Tb、223Rd,213Pb、212Pb、211At、89Sr、153Sm、166Ho、225Ac、186Re、67Ga、68Gaおよび99mTcを含むが、これらに限定されない。
【0140】
本方法における使用に企図される抗体は、肝臓癌および他の肝臓障害の処置に使用されるものを含む。抗上皮増殖因子受容体(EGFR)(セツキシマブ、パニツムマブ)、抗血小板誘導成長因子受容体α(PDGFRα)、抗グリピカン3(GPC3)、および肝臓癌または肝臓に転移した癌の処置に有用な他の抗体を含むが、これらに限定されない。
キット
追加的態様として、本発明は、本発明の方法の実践における使用を促進する様式でパッケージされた、本明細書に記載の1つ以上の複合体または組成物を備えるキットを含む。一実施形態において、そのようなキットは、密閉された瓶または槽等の容器内にパッケージされた、本明細書に記載の複合体または組成物(例えば、RAPペプチド−フコシダーゼ阻害薬複合体を単独で、または第2の薬剤と組み合わせて含む組成物)を含み、本方法の実践における複合体または組成物の使用を説明するラベルが、容器に貼付されているかまたはパッケージ内に含まれている。好ましくは、複合体または組成物は、単位剤形内にパッケージされている。キットは、特定の投与経路による組成物の投与に好適なデバイスをさらに含んでもよい。好ましくは、キットは、RAPペプチド複合体組成物の使用を説明するラベルを含む。
【0141】
本発明の追加的態様および詳細は、限定ではなく例示を意図する以下の実施例から明らかとなる。
【実施例】
【0142】
実施例1
RAPペプチド−フコシダーゼ阻害薬複合体の生成および特性決定
方法
ペプチド複合体の製造: 両方のフコシダーゼ阻害薬を創製するための合成経路は、以前に公開されている[11;12]。RAPペプチドの同定および製造は、以前に説明されている[15;16]。8つのフコシダーゼ阻害薬分子をRAPペプチド分子に結合させるには、ペプチドのN末端をK4K2Kリジンデンドリマーで改質する。複合体調製の最終ステップは、8つのデンドリマー1級アミンおよびカルボキシレートリンカー含有フコシダーゼ阻害薬(N−5−カルボキシペンチル−デオキシフコノジリマイシンまたはN−5−カルボキシペンチル−Faz)の8つの分子のそれぞれの間にペプチド結合を形成することである。
【0143】
HepG2細胞における生化学的有効性:本来HCC腫瘍から得られるHepG2細胞は、超フコシル化糖タンパク質を産生し、LRP1を通してリソソーム内にRAPを取り込む。肝細胞におけるRAPペプチド阻害薬複合体の生化学的有効性を評価するために、標準条件を使用してHepG2細胞を培養し、緩衝剤のみ、フコシダーゼ阻害薬、SEQ ID NO:2のみ、またはSEQ ID NO:2およびフコシダーゼ阻害薬を含む複合体とともに、マルチウェルプレート内でインキュベートする。全長RAPを1μMでいくつかのウェルに添加し、SEQ ID NO:2またはRAPペプチド複合体の取り込みをブロックする。一晩のインキュベーション後、細胞を低温PBSで濯ぎ、凍結融解により50mMのクエン酸ナトリウムpH4.8に溶解する。細胞溶解物を遠心分離により清澄化し、4−メチルウンベリフェリル−α−L−フコースアッセイ(Sigma−Aldrich社から入手可能、参照PMID2137330)を使用して、製造者のプロトコルに従いフコシダーゼ活性を評価する。細胞数およびリソソーム機能について正規化するために、β−グルクロニダーゼレベルもまた標準的手順を用いて分析する。
【0144】
HepG2細胞における機能的有効性研究:HepG2細胞を12ウェルプレートでウェル当たり1×10細胞で播種し、24時間回復させる。次いで細胞を、フコシダーゼ阻害薬、RAPペプチド複合体またはRAPペプチド単独とともに、72時間インキュベートする。次いで細胞の状態をMTT増殖アッセイにより評価する。
【0145】
HepG2細胞におけるフコシダーゼ活性の阻害は、細胞内のフコシル化タンパク質の増加を引き起こし、細胞死、または少なくとも細胞増殖の抑制もしくは停止をもたらすことが予測される。
【0146】
正常およびHCC系siRNAにおけるフコシダーゼFUCA1枯渇の重要性:様々な初代ヒト肝細胞(Lonza社製、Basel、Switzerland)およびヒト肝細胞癌系(市販されている、MDS Pharma、Hep3B、HepG2、HLE、HLF、HuCCT1、HUH−6 Clone 5、PLC/PRF/5、SNU−423)を適切な培地内に播種し、FUCA1を標的化するsiRNA(Invitrogen社製、Calsbad、CA)のプールを導入する。次いで細胞を72時間インキュベートし、多重化作用機序高コンテンツアッセイ(MOA−HCA)に供する。増殖に関しては細胞核における全DAPI蛍光発光を評価することにより、またアポトーシスに関しては抗活性化カスパーゼ3アッセイを使用して細胞を分析する(例えば、”A High−Content Analysis Assay and a Full−Automation Design Soley Using Noncontact Liquid Dispensing,” Rodriguez, et a. Journal of The Association for Laboratory Automation, 2007を参照されたい)。すべての流体移動は、Biomek FX(Beckman Coulter社製)で行う。InCell Analyzer 1000 3.2を使用して12ビットTIFF画像を取得し、Developer Toolbox 1.6ソフトウェアで定量する。シグモイド4ポイント4パラメータ1部位用量反応モデルにおいて、非線形回帰を用いてEC50値を計算する。曲線フィッティングおよび計算は、MathIQベースソフトウェア(AIM社製)を使用して行う。細胞数値は、相対細胞カウント(試験ウェル)/相対細胞カウント(ビヒクルウェル)×100として計算する。相対細胞カウントEC50は、最大有効反応の半分を生成する試験化合物濃度として測定する。活性化カスパーゼ−3を使用して、初期から後期段階のアポトーシスにおける細胞を定量する。このアッセイの出力は、ビヒクルウェル内のアポトーシス細胞に対する試験ウェル内のアポトーシス細胞の増加倍数であり、各ウェル内の相対細胞カウントに正規化される。カスパーゼ−3シグナルの5倍の増加をもたらす試験物質の濃度は、有意なアポトーシス誘導を示す。
【0147】
FUCA1siRNAの投与によるフコシダーゼ活性の阻害は、細胞内のフコシル化タンパク質の増加を引き起こし、フコシダーゼ阻害薬とともに培養された試料中の細胞死およびカスパーゼ−3活性の増加をもたらすことが予測される。
【0148】
正常およびHCC系DNJにおけるフコシダーゼ枯渇の重要性:様々な初代ヒト肝細胞(市販されている、Lonza社)およびヒト肝細胞癌系(市販されている、MDS Pharma、Hep3B、HepG2、HLE、HLF、HuCCT1、HUH−6 Clone 5、PLC/PRF/5、SNU−423)を適切な培地内に播種する。細胞を72時間10μMデオキシフコノジリマイシン中でインキュベートし、上述のような多重化作用機序高コンテンツアッセイ(MOA−HCA)に供する。
【0149】
同所性腫瘍異種移植片モデルにおける機能的有効性:フコシダーゼ阻害薬複合化RAPペプチドの有効性を、以前に説明されているような同所性肝内異種移植片モデルにおいて分析する[18;19]。簡潔には、6〜8週齢の重症複合免疫不全(SCID)マウスを適切な麻酔薬、例えば、ケタミン、ジアゼパムまたはそれらの組み合わせ等で麻酔し、上部正中開腹を行って腹部の正中切開によりマウスの門脈を露出させる。次いで、30ゲージの針を用いて、10個のHepG2細胞の懸濁液を1分間にわたり門脈内に注入する。次いで切開を縫合して閉腹し、完全に目を覚ますまで動物を保温する。
【0150】
RAPペプチド−フコシダーゼ阻害薬処理の有効性を測定するため、2−デオキシ−2−(F−18)−フルオロ−D−グルコース(18F−FDG)等の適切な放射性標識剤を使用した陽電子放出断層撮影法(PET)を行い[18]、非侵襲的方法により処置および対照マウスにおけるHepG2誘導腫瘍の進行を追跡する。また、フコシダーゼ阻害薬−RAPペプチド処置の有効性を、処置および対照動物における腫瘍領域の組織学的分析によりin vivoで測定する。
【0151】
リソソーム、尿および血液中のグリコサミノグリカン(GAG)レベルを含むリソソーム蓄積症指標の測定もまた、同所性腫瘍モデルにおいて分析する。
【0152】
RAPペプチド−フコシダーゼ阻害薬複合体の投与は、フコシダーゼ阻害薬を受けない対象と比較して、腫瘍サイズを減少させるか、または腫瘍成長の進行を抑制することが予測される。また、ペプチド−阻害薬複合体の投与は、GAGアッセイにより測定されるように、ペプチド受容体を通して阻害薬を吸収する細胞のリソソーム内のフコシル化タンパク質のレベルを増加させることが予測される。
【0153】
実施例2
HepG2細胞へのフコシダーゼ阻害薬の投与は、リソソームフコシダーゼを阻害する。
肝細胞に対するフコシダーゼ阻害薬自体の効果を決定するために、in vitroアッセイを行った。
【0154】
HepG2ヒト肝細胞癌細胞を、6ウェル組織培養プレート内で、ウェル当たり4×10で播種した。24時間の時点で細胞に新鮮な培地を供給し、30μMデオキシフコノジリマイシン(DNJ)または緩衝剤で72時間の処置を2回行った。次いで、細胞を低温PBSで洗浄し、微量遠心管内に擦り取り、ペレット化し、溶解した。各試料に対して、総タンパク質濃度をBradfordアッセイにより決定し、溶解物の体積を0.3mg/mLに調節した。100μLの0.5mM 4−MU−フコピラノシドを添加することにより、20μLの各溶解物試料におけるフコシダーゼ活性を測定し、続いて37℃で30分間インキュベートした。反応物を、130μLの600mMクエン酸塩/炭酸塩緩衝剤pH9でクエンチした。放出された4−MUを、蛍光マイクロプレートリーダで分析した(上記実施例1を参照されたい)。結果を図4に示す。2回の試料活性値を平均化してプロットした。
【0155】
これらの結果は、フコシダーゼ阻害薬(非複合体化デオキシフコノジリマイシン)がヒト肝細胞癌系においてリソソームフコシダーゼを50%超阻害することを示しており、RAP複合体化フコシダーゼ阻害薬が肝臓癌の処置に効果的であることを示唆している。
【0156】
実施例3
RAPペプチド複合体のin vivo投与
HCCは、診断される5番目に多い癌であり、世界で年間500,000件近くの死亡件数を占める。腫瘍組織の外科切除、移植および物理的な破壊が、処置の第1の選択であるが、これらの手法に好適な腫瘍罹患患者はわずか5%から10%である(20〜22)。さらに、全身化学治療は15〜20%という低い奏功率を示すが、これは化学療法薬の毒性および腫瘍細胞の耐性の両方に起因する(23〜24)。
【0157】
例えば、ドキソルビシンは、広範な腫瘍に対して高い効率を有する癌化学療法薬であり、特に癌細胞を含む急速成長細胞に対して毒性を有する。しかしながら、肝細胞癌の処置におけるドキソルビシンの使用は、著しい肝臓および心臓毒性ならびに血球産生の抑制により制限されている(25)。さらに、肝細胞癌細胞は、薬物耐性型への高い変換率を示す(26)。
【0158】
代替的な治療手法は、放射線を利用する。例えば、現在試験されている肝臓癌に対する新たな処置は、放射性物質(90Y)で標識化された微小ガラスビーズを主要肝動脈内に注入することであり、そこからその物質が微小血管に入り込んで腫瘍細胞に浸透する。次いで放射線が腫瘍組織を破壊する。しかしながら、肝動脈から肺への血液の大きな短絡が、多くの患者においてガラスビーズの使用を不可能としている。胃腸管に血液供給する動脈へのビーズの大きな還流もまた、深刻な副作用をもたらす可能性がある。したがって、腫瘍組織への治療薬の効果的送達は、血管内に捕捉される大型の材料に依存しない、より方向性のある手法を必要とする。
【0159】
in vivoで細胞毒性化合物を細胞に送達する分子の能力を評価するとともに、in vivoでのRAPペプチドの肝細胞への受容体結合を評価するためには、ヒト肝細胞癌の同所性モデルを使用する。
【0160】
動物における同所性腫瘍を生成するため、ヒト肝臓癌細胞系をヌードマウス、ラット、または他の適切な動物に移植し、腫瘍細胞をin vivoで成長させる。同所性モデルに有用なHCC細胞系は、Heb3B、HepG2およびHuh−7等の上述の細胞系を含むが、これらに限定されない。HCCの同所性腫瘍モデルは、当技術分野において知られており、例えば、Okubo et al. (J Gastroenterol Hepatol. 2007 22:423−8);Armengol et al., (Clin Cancer Res. 2004 10:2150−7);およびYao et al., (Clin Cancer Res. 2003 9:2719−26)に記載されている。
【0161】
まず、in vivoでの複合化RAPペプチドおよび対照の投与のための用量範囲を確立するために、複合化RAPペプチド(例えば、RAPペプチド−DMJ(最大200mg/kg/日)、RAPペプチド−Faz(最大200mg/kg/日))、RAPペプチド単独(最大200mg/kg/日)、DMJまたはFaz単独が与えられた群当たり5匹のマウスを用い、低用量範囲試験を行う。試験薬剤を2週間毎日(QD×14)静脈内または腹腔内投与し、試験エンドポイントにおける体重の変化、任意の臨床的所見、臨床病理学、および組織病理学に関して対象動物を試験する。
【0162】
有効性試験を行うために、群当たり8匹から10匹のマウスを使用し、上記化合物の3つの試験用量範囲を、ヒトHCC細胞が与えられた動物および対照動物に投与する。試験薬剤を、静脈内または腹腔内投与し、適切な頻度で、例えば4週間毎日(QD×28)、3週間毎日(QD×21)または2週間毎日(QD×14)投与する。次いで、当技術分野において知られた技術を使用して、任意の体重の変化、臨床的所見、およびin vivo有効性測定、例えば腫瘍体積、肝臓組織病理学、および全般的臨床病理学等に関して対象動物を評価する。
【0163】
in vivoでの肝細胞癌細胞の成長を低減する複合化RAPペプチドの能力は、ペプチドが腫瘍細胞表面上の細胞受容体に結合し、肝細胞内に薬剤を送達する効果的な手段であり、生物学的に測定可能な効果をもたらすことを実証している。動物モデルにおける腫瘍の効率的な死滅が実証されたことは、複合化RAPペプチドが、肝臓癌または他の肝臓状態に罹患した人間における腫瘍細胞にフコシダーゼ阻害薬を送達するための効率的方法であることを示唆している。
【0164】
治療薬の生体内分布および有効性を試験するための関連する別の肝細胞癌(HCC)動物モデルは、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)感染Easternウッドチャックである(27)。ウイルスに新生児感染したほぼすべてのウッドチャックが、24ヶ月の平均期間内にHCCを発症する。平均寿命は30ヶ月であったが、WHV感染ウッドチャックはHCC患畜の大部分に存在する状態である肝硬変を発症しない。ウッドチャック肝炎ウイルスおよびヒトB型肝炎は、構造、遺伝学、伝播方法、感染経路および肝細胞癌への進行において類似している。このモデルの重要性を強調する大きな類似性が存在する。人間と同様に、生後まもなく肝炎ウイルスに暴露されたすべてのウッドチャックの半数以上が、慢性感染症を発症し、ほぼすべての慢性的に感染したウッドチャックは、暴露から約20〜28ヶ月後に肝細胞癌を発症する。残りの接種された新生児ウッドチャックは、多くの場合急性肝炎を発症するが、ウイルスに対する抗体を発現して回復する。これらの「回復した」動物の17%〜25%は、暴露から29〜56ヶ月の間にHCCを発症する。肝炎感染から明らかに回復した後のHCCの発症は、人間にも見られる。
【0165】
肝臓、特に腫瘍細胞への薬剤の送達に対するRAPペプチド−フコシダーゼ阻害薬複合体の効果を決定するために、対照およびRAPペプチド複合体治療薬の取り込みおよび毒性が、ウッドチャックHCCモデルにおいて試験される。一実施形態において、約1.5〜2歳の慢性的に感染した6匹のウッドチャックおよび感染していない4匹のウッドチャックが使用される。
【0166】
有用な送達化合物は、一般に、1)肝臓のすでに障害のある機能に悪影響を及ぼさないこと、2)肝臓および悪性肝臓組織による測定可能な取り込み、ならびに3)取り込み後、腫瘍細胞に毒性であり、腫瘍の緩解をもたらすこと、という特性を示す。
【0167】
リソソーム、尿および血液中のオリゴ糖レベルを含むリソソーム蓄積症指標の測定もまた、腫瘍モデルにおいて分析する。
【0168】
上記の例示的実施例に記載のように、本発明における数々の修正および変形が生じることが、当業者に予測される。結果として、添付の特許請求の範囲に見られるような限定のみが、本発明に適用されるべきである。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコシダーゼ阻害剤に結合した受容体関連タンパク質(RAP)ペプチドを含むペプチド複合体であって、前記RAPペプチドは、SEQ ID NO:1のRAPのアミノ酸210〜319と少なくとも80%相同性のポリペプチド配列を含む、ペプチド複合体。
【請求項2】
フコシダーゼ阻害剤に結合した受容体関連タンパク質(RAP)ペプチドを含むペプチド複合体であって、前記RAPペプチドは、SEQ ID NO:2に示されるRAPのアミノ酸と少なくとも80%相同性のポリペプチド配列を含む、ペプチド複合体。
【請求項3】
前記RAPペプチドは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のペプチド複合体。
【請求項4】
前記フコシダーゼ阻害剤は、L−デオキシフコノジリマイシン(DFJ)、β−1−C−メチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−エチルデオキシマンノジリマイシン、β−1−C−フェニルデオキシマンノジリマイシンおよび(3R,4R,5S,6S)−1−ブチル−4,5,6−トリヒドロキシアゼパン−3−カルボン酸(Faz)からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のペプチド複合体。
【請求項5】
前記フコシダーゼ阻害剤は、ペプチドリンカーを介して複合化される、請求項1から4のいずれか一項に記載のペプチド複合体。
【請求項6】
前記ペプチドリンカーは、リジンデンドリマーである、請求項5に記載のペプチド複合体。
【請求項7】
前記ペプチドリンカーは、K4K2Kリジンデンドリマーである、請求項6に記載のペプチド複合体。
【請求項8】
RAPペプチド分子当たり少なくとも4つのフコシダーゼ阻害剤が複合化している、請求項1から7のいずれか一項に記載のペプチド複合体。
【請求項9】
RAPペプチド分子当たり少なくとも8つのフコシダーゼ阻害剤が複合化している、請求項1から7のいずれか一項に記載のペプチド複合体。
【請求項10】
それを必要とする対象における肝腫瘍を処置するための方法であって、治療上効果的な量の請求項1から9のいずれか一項に記載のペプチド複合体を投与することを含む方法。
【請求項11】
肝腫瘍は、肝細胞癌、肝炎ウイルス感染、肝硬変、中毒性肝障害、および遺伝性ヘモクロマトーシスの結果である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記肝腫瘍は、肝細胞癌の結果である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処置は、前記対象における肝腫瘍サイズの減少をもたらす、請求項10から12に記載の方法。
【請求項14】
前記処置は、前記対象の血液中のα−フェトプロテインレベルの処置前のレベルと比較した低減をもたらす、請求項10から13に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチド複合体は、静脈内投与される、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチド複合体は、肝臓動脈から投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチド複合体は、第2の薬剤と組み合わせて投与される、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の薬剤は、化学療法薬、細胞毒性薬、放射性同位体、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗炎症薬および抗体からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化学療法薬は、ドキソルビシンおよび5−フルオロウラシルからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の薬剤は、細胞毒性薬である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞毒性薬は、塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、クロランブシル、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジンおよびストレプトゾシンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の薬剤は、放射性同位体である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記同位体は、131I、125I、111In、90Y、67Cu、127Lu、212Bi、213Bi、255Fm、149Tb、223Rd, 213Pb、212Pb、211At、89Sr、153Sm、166Ho、225Ac、186Re、67Ga、68Gaおよび99mTcからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記肝腫瘍は、肝炎ウイルス感染に関連し、前記第2の薬剤は、抗ウイルス薬である、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−518128(P2013−518128A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551318(P2012−551318)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022917
【国際公開番号】WO2011/094536
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512197560)ラプトール ディスカバリーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】