説明

可変容量型タービン

【課題】可変機構の構成に制約を受けることなくスクロールの外径の増大を抑制することができる可変容量型タービンを提供する。
【解決手段】タービン2は、タービンホイール4とスクロール6との間に周方向に並べられ、かつ絞り側の破線で示す第1位置から開き側の実線で示す第2位置までの可動範囲内で翼角を変更可能な状態でタービンハウジング5内に設けられた複数の可変ノズル翼7を有し、各可変ノズル翼7は、第1位置に翼角が設定されたときに前縁部7aがスクロール6から離れ、かつ第2位置に翼角が設定されたときに前縁部7aがスクロール6に突き出るようにしてタービンハウジング5内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンハウジング内に設けられた可変ノズル翼の翼角度を変更することにより容量を変更できる可変容量型タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
可変ノズル翼を備えた可変容量型タービンとして、可変ノズル翼を回転させるためのリンクプレート、ノズル駆動部材及びレバー状部材からなる可変機構をタービンハウジングのスクロールよりも内周側のリンク室内に、可変ノズル翼に対してタービンロータの回転軸線方向に並ぶようにして配置したものが知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−329850号公報
【特許文献2】特許第3411822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のタービンはスクロールの内周側に可変機構を配置することによりスクロールの外径を増大を抑制できる。しかし、スクロールの内周側に可変ノズル機構を配置できるようにしなければならないので可変機構の構成が制約される。
【0005】
そこで、本発明は、可変機構の構成に制約を受けることなくスクロールの外径の増大を抑制することができる可変容量型タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の可変容量型タービンは、複数の翼が周方向に設けられたタービンホイールと、前記タービンホイールを回転自在に支持するタービンハウジングと、前記タービンハウジングに形成された渦巻き状の通路空間として設けられたスクロールと、前記タービンホイールと前記スクロールとの間に周方向に所定間隔で並べられ、かつ絞り側の第1位置から開き側の第2位置までの可動範囲内で翼角を変更可能な状態で前記タービンハウジング内に設けられた複数の可変ノズル翼と、前記複数の可変ノズル翼の翼角が前記可動範囲内で設定されるように前記複数の可変ノズル翼を回転駆動できる可変機構と、を備え、前記複数の可変ノズル翼のそれぞれは、前記可変機構にて前記第1位置に翼角が設定されたときに前記スクロールに近い側の前縁部が前記スクロールから離れ、かつ前記可変機構にて前記第2位置に翼角が設定されたときに前記前縁部が前記スクロールに突き出るようにして、前記タービンハウジング内に設けられていることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
このタービンによれば、可変ノズル翼の翼角が絞り側の第1位置に設定されたときはその前縁部がスクロールから離れるが、可変ノズル翼の翼角が開き側の第2位置に設定されたときには前縁部がスクロールに突き出ることが許容される。そのため、可変ノズル翼の可動範囲とスクロールとの干渉を避けるために可動範囲よりも半径方向外側にスクロールを配置する場合に比べてスクロールの外径を小さくすることができる。本発明のタービンは、可変ノズル翼を駆動する可変機構をスクロールの内周側に配置する必要がないのでスクロールの外径増大を抑制するために可変機構の構成に制約を受けることがない。
【0008】
また、本発明のタービンは、開き側の第2位置において可変ノズル翼の前縁部がスクロールに突き出るが、全ての翼角で前縁部がスクロールに突き出るものではない。第2位置の場合はタービンに流入するガス量が多いため、前縁部がスクロールに突き出ることによる圧力損失の影響は相対的に少ない。従って、可動範囲の全てにおいて前縁部がスクロールに突き出る場合と比べて、前縁部がスクロールに突き出ることによる悪影響を可能な限り抑えることができる。
【0009】
本発明の可変容量型タービンの一態様においては、前記複数の可変ノズル翼を両側から挟むリング状のノズルプレートと支持プレートとが前記タービンハウジングに固定されており、前記複数の可変ノズル翼のそれぞれは、前記可変機構にて前記第1位置に翼角が設定されたときに前記前縁部が前記ノズルプレート及び前記支持プレートのそれぞれの外周よりも半径方向内側に位置することにより前記前縁部が前記スクロールから離れ、かつ前記可変機構にて前記第2位置に翼角が設定されたときに前記前縁部が前記ノズルプレート及び前記支持プレートのそれぞれの外周よりも半径方向外側に位置することにより前記前縁部が前記スクロールに突き出ていてもよい(請求項2)。この場合には、可変ノズル翼が第1位置に設定された場合はスクロールに導かれたガスの全量が前縁部を通過する。他方可変ノズル翼が第2位置に設定された場合は、スクロールに導かれたガスの一部が可変ノズル翼の側面から回り込むようにして流入するようになる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、可変ノズル翼の翼角が開き側の第2位置に設定されたときには前縁部がスクロールに突き出ることが許容される。そのため、可変ノズル翼の可動範囲とスクロールとの干渉を避けるために可動範囲よりも半径方向外側にスクロールを配置する場合に比べてスクロールの外径を小さくすることができる。その結果、タービンハウジングの外径を小さくできるので車両等の適用対象への搭載性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一形態に係る可変容量型タービンが組み込まれた過給機の要部を示している。図2は図1のII−II線に関する断面図である。過給機1は不図示の内燃機関を過給するために用いることができる。過給機1はタービン2を有し、そのタービン2によって不図示のコンプレッサを駆動するように構成されている。タービン2は可変容量型タービンとして構成されている。即ち、タービン2は複数の翼3が周方向に設けられたタービンホイール4と、タービンホイール4を回転自在に支持するタービンハウジング5と、タービンハウジング5に形成されたスクロール6と、タービンホイール4とスクロール6との間に配置された複数の可変ノズル翼7と、可変ノズル翼7を駆動するための可変機構8とを備えている。
【0012】
タービンホイール4は軸線Ax方向に延びる回転軸10の一端部に固定されていて、その回転軸10と一体回転できるように構成されている。回転軸10の他端部には不図示のコンプレッサホイールが固定されていて、コンプレッサホイールも回転軸10と一体回転できる。回転軸10は不図示の軸受を介してタービンハウジング5と一体のセンタハウジング(不図示)に支持されている。これによりタービンホイール4はタービンハウジング5に対して回転自在に支持されることになる。スクロール6は渦巻き状の通路空間としてタービンハウジング5に形成されている。スクロール6はタービンハウジング5に設けられた入口5aと出口5bとにそれぞれ連通している。
【0013】
可変ノズル翼7は周方向に所定間隔で並べられており、各可変ノズル翼7は破線で示す絞り側の第1位置から実線で示す開き側の第2位置までの可動範囲内で翼角を変更できる状態でタービンハウジング5に設けられている。図2に示すように、各可変ノズル翼7は、軸線Axと平行に延びるノズル軸12を持っている。各可変ノズル翼7はその両側がリング状のノズルプレート15と支持プレート16とに挟まれており、それらのプレート15、16はタービンハウジング5に固定されている。ノズル軸12の左側の一端部12aは支持プレート16に形成された貫通孔16aを貫くようにしてタービンハウジング5の外部に露出している。可変機構8はノズル軸12の端部12aに固定されたレバー16と、レバー16の一端をリンク結合するリング状の回転プレート17と、回転プレート17を軸線Axの回りに回転駆動するアクチュエータ18とを備えている。
【0014】
可変機構8がアクチュエータ18にて回転プレート17を回転駆動することにより、回転プレート17の回転がレバー16を介して各ノズル軸12へ伝達される。それにより、ノズル軸12に固定された各可変ノズル翼7は図1に示した可動範囲内で一斉に回転する。可変機構8はアクチュエータ18の操作により各可変ノズル翼7の翼角を可動範囲内において無段階に設定できる。図1に示すように、可変機構8によって翼角が破線の第1位置に設定されている場合、可変ノズル翼7が持つスクロール6に近い側の前縁部7aはスクロール6から離れている。換言すれば、翼角が第1位置に設定されたときには、可変ノズル翼7の前縁部7aがノズルプレート15及び支持プレート16のそれぞれの外周よりも半径方向内側に位置する。即ち、絞り側の第1位置に設定された各可変ノズル翼7はスクロール6と干渉しない。他方、可変機構8によって翼角が実線の第2位置に設定されている場合、前端部7aはスクロール6に突き出ている。換言すれば、翼角が第2位置に設定されたときには、可変ノズル翼7の前縁部7aがノズルプレート15及び支持プレート16のそれぞれの外周よりも半径方向外側に位置する。即ち、開き側の第2位置に設定された各可変ノズル翼7はスクロール6と干渉することになる。
【0015】
周知のように翼角はタービンに流入するガス量に応じて変更される。タービン2はガス量が少ない場合は可変ノズル翼7が絞り側に、ガス量が多い場合は可変ノズル翼7が開き側にそれぞれ翼角が設定されるようになっている。可変ノズル翼7が第1位置に設定された場合は、各プレート15、16の外周よりも半径方向内側に前縁部7aが位置してスクロール6から離れるので、スクロール6に導かれたガスは前縁部7aを通過して全量流入する。他方、可変ノズル翼7が第2位置に設定された場合は各プレート15、16の外周よりも半径方向外側に前縁部7aが位置してスクロール6に突き出るため、スクロール6に導かれたガスの一部は可変ノズル翼7の側面から回り込むようにして流入する。そのため、第2位置に設定された場合には圧力損失が生じる。しかし、第2位置に設定されるときはタービン2に流入するガス量が多いため、前縁部7aがスクロール6に突き出ることによる圧力損失の影響は相対的に少ない。従って、可動範囲の全てにおいて前縁部7aがスクロール6に突き出る場合と比べて、前縁部がスクロールに突き出ることによる悪影響を可能な限り抑えることが可能になる。
【0016】
以上説明したタービン2によれば、可変ノズル翼7が開き側の第2位置に設定されたときにその前縁部7aがスクロール6に突き出ることを許容しているので、スクロール6の外径を小さくすることができる。スクロール6の外径を小さくするためにスクロール6の内周側に可変機構8を配置しなくてもよいので、スクロール6の外径増大を抑制するために可変機構8の構成に制約を受けることがないため、可変機構8の設計自由度が高まる。また、タービン2の小型化が容易になるので、タービン2が組み込まれた過給機1の小型化に貢献できる。それにより、過給機1の搭載性が向上するとともに、軽量化も容易になる。
【0017】
本発明は以上の形態に限定されず、種々の形態にて実施できる。以上の説明では本発明に係る可変容量型タービンを過給機に組み込んだ形態を説明したが、過給機に組み込まずともタービン単独で実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一形態に係る可変容量型タービンが組み込まれた過給機の要部を示した図。
【図2】図1のII−II線に関する断面図。
【符号の説明】
【0019】
2 タービン
3 翼
4 タービンホイール
5 タービンハウジング
6 スクロール
7 可変ノズル翼
7a 前縁部
8 可変機構
15 ノズルプレート
16 支持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の翼が周方向に設けられたタービンホイールと、前記タービンホイールを回転自在に支持するタービンハウジングと、前記タービンハウジングに形成された渦巻き状の通路空間として設けられたスクロールと、前記タービンホイールと前記スクロールとの間に周方向に所定間隔で並べられ、かつ絞り側の第1位置から開き側の第2位置までの可動範囲内で翼角を変更可能な状態で前記タービンハウジング内に設けられた複数の可変ノズル翼と、前記複数の可変ノズル翼の翼角が前記可動範囲内で設定されるように前記複数の可変ノズル翼を回転駆動できる可変機構と、を備え、
前記複数の可変ノズル翼のそれぞれは、前記可変機構にて前記第1位置に翼角が設定されたときに前記スクロールに近い側の前縁部が前記スクロールから離れ、かつ前記可変機構にて前記第2位置に翼角が設定されたときに前記前縁部が前記スクロールに突き出るようにして、前記タービンハウジング内に設けられていることを特徴とする可変容量型タービン。
【請求項2】
前記複数の可変ノズル翼を両側から挟むリング状のノズルプレートと支持プレートとが前記タービンハウジングに固定されており、
前記複数の可変ノズル翼のそれぞれは、前記可変機構にて前記第1位置に翼角が設定されたときに前記前縁部が前記ノズルプレート及び前記支持プレートのそれぞれの外周よりも半径方向内側に位置することにより前記前縁部が前記スクロールから離れ、かつ前記可変機構にて前記第2位置に翼角が設定されたときに前記前縁部が前記ノズルプレート及び前記支持プレートのそれぞれの外周よりも半径方向外側に位置することにより前記前縁部が前記スクロールに突き出ることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型タービン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−138588(P2009−138588A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314404(P2007−314404)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】